説明

2液型ウレタン組成物およびその製造方法ならびにウレタンプレポリマーの製造方法

【課題】本発明は、貯蔵安定性に優れ、硬化遅延、発泡等を抑制可能な2液型ウレタン組成物を提供する。
【解決手段】ウレタンプレポリマーと有機酸ビスマスとを含有する主剤と、活性水素含有化合物を含有する硬化剤とからなる2液型ウレタン組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2液型ウレタン組成物およびその製造方法ならびにウレタンプレポリマーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリイソシアネート(ウレタンプレポリマー)を主剤とし、ポリオール等の活性水素含有化合物を硬化剤の反応成分とする2液型ウレタン組成物においては、一般的にその硬化触媒として有機カルボン酸鉛が広く用いられている。しかし、鉛は環境や人体への悪影響が懸念されており、鉛を含まない2液型ウレタン組成物が望まれている。
【0003】
そこで、有機酸鉛の代わりにオクチル酸ビスマスとオクチル酸カルシウムとを配合した、鉛を含まない2液型ウレタン組成物が提案されている(特許文献1参照。)。
また、特許文献2には、表面・深部硬化性に優れ、被塗装性が良好で、非発泡性に優れ、環境に悪影響を及ぼさないことを目的とした2液型ポリウレタンシーリング材組成物が記載されている。この組成物は、ウレタンプレポリマー(A)を含む主剤と、ポリエーテルポリオール(B)を含む硬化剤とを含み、ウレタンプレポリマー(A)100重量部に対して、硬化触媒としてロジン酸ビスマスを0.6〜4.7重量部、硬化助触媒としてオクチル酸カルシウムおよび/またはネオデカン酸カルシウムを0.03〜1重量部および有機酸錫を0.003〜0.3重量部含有する。
【0004】
【特許文献1】特開2001−89549号公報
【特許文献2】特開2003−165968号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1および2に記載の2液型ウレタン組成物等に硬化触媒として用いられている有機酸ビスマスは、硬化剤の成分に含まれる水分や大気中の湿気の影響で徐々に活性を失い、硬化遅延、発泡等の弊害が生じることがあった。
したがって、本発明は、貯蔵安定性に優れ、硬化遅延、発泡等を抑制可能な2液型ウレタン組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討した結果、硬化触媒として用いられる有機酸ビスマスを、ウレタンプレポリマーを含有する主剤側に配合することにより有機酸ビスマスの失活を回避することができることを見出した。それは、ウレタンプレポリマーの作製時に原料となるポリオールは通常脱水処理されていること、系内に残留した水分はポリイソシアネート化合物により消費されること、および通常水と反応し易いウレタンプレポリマーは密閉性の高い容器内に保管されるので大気中の水分の影響を受け難いことによると考えられる。また、係る密閉容器内では、有機酸ビスマスによるウレタンプレポリマーの高分子量化は進行しない。その結果、貯蔵安定性に優れ、硬化遅延、発泡等を抑制可能な2液型ウレタン組成物が得られることを知見した。
ところで、従来の一般的なウレタンプレポリマーは、ポリオール化合物に対して過剰のポリイソシアネート化合物(すなわち、ヒドロキシ基に対して過剰のイソシアネート基)を混合し、常圧下50〜100℃で6〜72時間程度反応させて得られる。本発明者は、ウレタンプレポリマーの製造時に有機酸ビスマスを添加すると、加熱しなくても自己発熱して60〜85℃程度になり、30分〜60分程度で反応が終了することを知見した。
本発明者は、これらの知見に基づき本発明を完成させた。
【0007】
即ち、本発明は、以下の(1)〜(9)を提供する。
【0008】
(1)ウレタンプレポリマーと有機酸ビスマスとを含有する主剤と、
活性水素含有化合物を含有する硬化剤と
からなる2液型ウレタン組成物。
【0009】
(2)前記有機酸ビスマスが、有機カルボン酸ビスマスおよび/または樹脂酸ビスマスである上記(1)に記載の2液型ウレタン材組成物。
【0010】
(3)前記有機カルボン酸ビスマスが、オクチル酸ビスマス、2−エチルヘキシル酸ビスマスおよびネオデカン酸ビスマスからなる群から選択される少なくとも1種である上記(2)に記載の2液型ウレタン組成物。
【0011】
(4)前記樹脂酸ビスマスが、アビエチン酸ビスマスである上記(2)または(3)に記載の2液型ウレタン組成物。
【0012】
(5)前記硬化剤が、更に、有機酸カルシウムを含有する上記(1)〜(4)のいずれかに記載の2液型ウレタン組成物。
【0013】
(6)前記有機酸カルシウムが、有機カルボン酸カルシウムおよび/または樹脂酸カルシウムである上記(5)に記載の2液型ウレタン組成物。
【0014】
(7)前記有機カルボン酸カルシウムが、オクチル酸カルシウム、2−エチルヘキシル酸カルシウムおよびネオデカン酸カルシウムからなる群から選択される少なくとも1種である上記(6)に記載の2液型ウレタン組成物。
【0015】
(8)上記(1)〜(7)のいずれかに記載の2液型ウレタン組成物の製造方法であって、
ポリオール化合物とイソシアネート基含有化合物とを、有機酸ビスマスの存在下で反応させて、前記ウレタンプレポリマーと有機酸ビスマスとを含有する主剤を製造する工程と、
前記活性水素含有化合物を含有する硬化剤を製造する工程と
を含む2液型ウレタン組成物の製造方法。
【0016】
(9)ポリオール化合物とイソシアネート基含有化合物とを、有機酸ビスマスの存在下で反応させて、ウレタンプレポリマーを得る、ウレタンプレポリマーの製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明の2液型ウレタン組成物は、貯蔵安定性に優れ、硬化遅延、発泡等を抑制することができる。
また、本発明のウレタンプレポリマーの製造方法によれば、加熱する手間がかからないうえ、更に、短時間にウレタンプレポリマーを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の2液型ウレタン組成物(以下、「本発明の組成物」ともいう。)は、ウレタンプレポリマーと有機酸ビスマスとを含有する主剤と、活性水素含有化合物を含有する硬化剤とからなる2液型ウレタン組成物である。
【0019】
まず、本発明の組成物の主剤を説明する。
上記主剤は、ウレタンプレポリマーと有機酸ビスマスとを含有する。
本発明に用いられるウレタンプレポリマーは、活性イソシアネート基、即ち、ブロックされていないイソシアネート基を分子内に有するウレタンプレポリマーである。なお、本発明の効果を損なわない範囲であれば、一部のイソシアネート基がブロックされていてもよい。ブロックされたイソシアネート基を有しない場合には、湿気硬化させたときと加熱硬化させたときの物性の差が少ない。
【0020】
このようなウレタンプレポリマーとしては、特に限定されず、ポリオール化合物とイソシアネート基含有化合物とから得られるウレタンプレポリマーを用いることができる。
【0021】
ウレタンプレポリマーに用いられるポリオール化合物は、炭化水素の複数個の水素をヒドロキシ基で置換したアルコール類である。例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン等のアルキレンオキサイドの少なくとも1種を、分子中に活性水素を2個以上有する活性水素含有化合物に付加重合させた生成物が挙げられる。
【0022】
分子中に活性水素を2個以上有する活性水素含有化合物としては、例えば、多価アルコール類、アミン類、アルカノールアミン類、多価フェノール類が挙げられる。
具体的には、多価アルコール類としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、グリセリン、ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
アミン類としては、例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
アルカノールアミン類としては、例えば、エタノールアミン、プロパノールアミン等が挙げられる。
多価フェノール類としては、例えば、レゾルシン、ビスフェノール類等が挙げられる。
【0023】
ポリオール化合物としては、具体的には、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシブチレングリコール等のポリエーテル系ポリオール;ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等のポリオレフィン系ポリオール;アジペート系ポリオール;ラクトン系ポリオール;ヒマシ油等のポリエステル系ポリオールが好適に挙げられる。
これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
ポリオール化合物は、数平均分子量が500〜12000程度であるのが好ましく、2000〜6000程度であるのがより好ましい。
【0025】
ウレタンプレポリマーに用いられるイソシアネート基含有化合物としては、通常のポリウレタン樹脂の製造に用いられる種々のものを用いることができる。具体的には、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート等のTDI;ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート等のMDI;テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHMDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート、ノルボルナン骨格を有するジイソシアネート(NBDI)、および、これらの変成品が挙げられる。
これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
中でも、安価かつ入手し易い点からTDIおよびMDIが好ましい。
【0026】
上記ウレタンプレポリマーの製造時におけるポリオール化合物とイソシアネート基含有化合物とを混合する割合は、ポリオール化合物のヒドロキシ基の数に対するイソシアネート基含有化合物のイソシアネート基の数の比(NCO/OH)が、1.0以上であるのが好ましく、1.5〜2.0であるのがより好ましい。
【0027】
本発明に用いられるウレタンプレポリマーの製造は、例えば、通常のウレタンプレポリマーと同様に、所定の量比でポリオール化合物およびイソシアネート基含有化合物を混合し、通常、常圧下60〜100℃で、撹拌することによって行うことができる。
また、ウレタンプレポリマーの製造時に、有機酸ビスマスを添加してウレタンプレポリマーを製造する方法が好ましく挙げられる。なお、ウレタンプレポリマーの製造時とは、上記ポリオール化合物とイソシアネート基含有化合物との反応を開始する時、または反応を行っている時をいう。特に、反応時間が短縮され、また、反応熱により外部から加える熱量を低減することができるので、反応開始時に有機酸ビスマスが添加されていることが好ましい。具体的には、ポリオール化合物とイソシアネート基含有化合物とを、有機酸ビスマスの存在下で反応させて、ウレタンプレポリマーを得る、ウレタンプレポリマーの製造方法が挙げられる(以下、この製造方法を「本発明のウレタンプレポリマーの製造方法」という。)。
【0028】
本発明のウレタンプレポリマーの製造方法によれば、加熱しなくても自己発熱して60〜85℃程度になり、30分〜60分程度で反応が終了するので、添加しない場合に比べて製造に要する時間が短縮され、かつ、加熱のために必要なコストを低減できる。また、得られた混合物は、ウレタンプレポリマーと有機酸ビスマスとを含有するので、本発明の組成物の主剤として、そのまま用いることができる。更に、ウレタンプレポリマーの製造は、十分に乾燥したポリオール化合物およびイソシアネート基含有化合物を用いて、水分を遮断した環境下で行われるため、有機酸ビスマスが水分と反応して失活することがない。したがって、得られる本発明の組成物は、貯蔵安定性に優れ、更に、有機酸ビスマスの失活を原因とする硬化遅延や発泡等を抑制することができる。
なお、本発明の組成物においては、上述した方法でウレタンプレポリマーを製造した後、有機酸ビスマスを所定の量添加して主剤とすることもできる。
【0029】
本発明のウレタンプレポリマーの製造方法は、具体的には、例えば、十分に乾燥したポリオール化合物を、乾燥した反応容器内に入れ、オクチル酸ビスマスを所定の量添加して、室温で30分程度撹拌する。次に、TDIをNCO/OHが1.0以上になる量添加して、室温で30分〜60分程度撹拌して行われる。
なお、本発明のウレタンプレポリマーの製造に用いられる反応容器は、特に限定されないが、外部の水分の侵入から反応物と触媒とを保護できるガラス製や金属製等の密閉可能なものが好ましい。
【0030】
本発明に用いられる有機酸ビスマスとしては、具体的には、例えば、有機カルボン酸ビスマスおよび樹脂酸ビスマス(ロジン酸ビスマス)が好適に挙げられる。
より具体的には、有機カルボン酸ビスマスとしては、オクチル酸、2−エチルヘキシル酸、ネオデカン酸、ネオドデカン酸等のビスマス塩が挙げられる。これらの中でも、オクチル酸ビスマス、2−エチルヘキシル酸ビスマスおよびネオデカン酸ビスマスが好ましい。
樹脂酸ビスマスとしては、アビエチン酸、ネオアビエチン酸,d−ピマル酸、イソ−d−ピマル酸、ポドカルプ酸等の脂環族系有機酸のビスマス塩、安息香酸、ケイ皮酸、p−オキシケイ皮酸等の芳香族系有機酸のビスマス塩等が挙げられる。これらの中でも、アビエチン酸ビスマスが好ましい。
これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、上記有機酸ビスマスは、液状とするために、通常、オクチル酸、2−エチルヘキシル酸、ネオデカン酸等の有機酸や、ポリオール等の可塑剤、ターペン、トルエン等の溶剤で希釈して用いられる。
【0031】
有機酸ビスマスの添加量は、適宜調整すればよく、特に限定されない。例えば、後述するように硬化剤が有機酸カルシウムを含有する場合は有機酸ビスマスの添加量を少なくすることができる。好ましい有機酸ビスマスの添加量は、ウレタンプレポリマー100質量部に対して、0.01〜10質量部である。この範囲であると、本発明の効果を十分に発揮でき、また、硬化速度が速すぎて可使時間が短くなることがない。この特性により優れる点から、0.1〜5質量部がより好ましく、0.1〜3質量部が更に好ましい。
【0032】
次に、本発明の組成物の硬化剤を説明する。
本発明の組成物の硬化剤は、活性水素含有化合物を含有する。
活性水素含有化合物としては、例えば、上述したウレタンプレポリマーの原料として例示したものを挙げることができ、中でも、ポリオール化合物が好ましい。特に、ポリプロピレングリコール(PPG)が好ましく用いられる。このポリエーテルポリオールに加えて、ポリエステルポリオールを硬化剤の反応成分として用いてもよい。
【0033】
上記硬化剤は、活性水素含有化合物の他に、更に、硬化助触媒として有機酸カルシウムを含有するのが好ましい。硬化剤が有機酸カルシウムを含有する場合、本発明の組成物の硬化速度を速くすることができ、表面・深部硬化性に優れ、更に、上記有機酸ビスマスの添加量を少なくすることができる。また、有機酸ビスマスを多用することにより発生する硬化物の高モジュラス化を抑制し、更に、可使時間を適正化することができる。
有機酸カルシウムとしては、具体的には、例えば、有機カルボン酸カルシウムおよび樹脂酸カルシウム(ロジン酸カルシウム)が好適に挙げられる。
より具体的には、有機カルボン酸カルシウムとしては、オクチル酸、2−エチルヘキシル酸、ネオデカン酸、ネオドデカン酸等のカルシウム塩が挙げられる。これらの中でも、オクチル酸カルシウム、2−エチルヘキシル酸カルシウムおよびネオデカン酸カルシウムが好ましい。
樹脂酸カルシウムとしては、アビエチン酸、ネオアビエチン酸,d−ピマル酸、イソ−d−ピマル酸、ポドカルプ酸等の脂環族系有機酸のカルシウム塩、安息香酸、ケイ皮酸、p−オキシケイ皮酸等の芳香族系有機酸のカルシウム塩等が挙げられる。これらの中でも、アビエチン酸カルシウムが好ましい。
これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、上記有機酸カルシウムは、液状とするために、通常、オクチル酸、2−エチルヘキシル酸、ネオデカン酸等の有機酸や、ポリオール等の可塑剤、ターペン、トルエン等の溶剤で希釈して用いられる。
【0034】
有機酸カルシウムの添加量は、適宜調製すればよく、特に限定されない。好ましい有機酸カルシウムの添加量は、ウレタンプレポリマー100質量部に対して、0.01〜20質量部である。この範囲であると、本発明の効果を十分に発揮でき、また、硬化速度が速すぎて可使時間が短くなることがない。この特性により優れる点から、0.1〜10質量部がより好ましい。
【0035】
また、上記硬化剤は、更に、有機酸スズを含有するのが好ましい。有機酸スズを含有する場合、表面・深部硬化性により優れるため、硬化遅延にならず、タックが残りにくく、被塗装性に優れると共に、非発泡性も向上することができる。
【0036】
有機酸スズとしては、具体的には、例えば、オクチル酸スズ、ジオクチルスズジラウレート、ジブチルスズジラウレート、アセチルアセトナートスズ、ジオクチルスズジネオデカノエート等が挙げられ、中でも、オクチル酸スズ、ジオクチルスズジラウレートが触媒としての安定性があり、表面硬化性に優れるので好ましい。
【0037】
有機酸スズの添加量は、他の成分との関係に応じて適宜調製すればよく、特に限定されない。好ましい有機酸スズの添加量は、ウレタンプレポリマー100質量部に対して、0.0001〜10質量部である。この範囲であると、本発明の効果を十分に発揮でき、また、硬化速度が速すぎて可使時間が短くなるようなことがない。この特性により優れる点から、0.003〜3質量部がより好ましい。
【0038】
本発明の組成物は、上記各成分に加えて、本発明の効果を損なわない範囲で、充填剤、チクソトロピー付与剤、顔料、染料、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、接着付与剤、分散剤等の添加剤を含有していてもよい。これらの添加剤を、主剤および/または硬化剤に必要に応じて含ませることができる。
【0039】
充填剤としては、各種形状の有機または無機のものがあり、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ;けいそう土;酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛;カーボンブラック、これらの脂肪酸、脂肪酸エステル処理物等が挙げられる。充填剤の配合量は、ウレタンプレポリマー100質量部に対して、100〜500質量部であることが、良好な物性と作業性が得られるので好ましい。
【0040】
酸化防止剤としては、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ジフェニルアミン、フェニレンジアミン;亜リン酸トリフェニル等が挙げられる。
老化防止剤としては、ヒンダードフェノール系、ベンゾトリアゾール系、ヒンダードアミン系等の化合物が挙げられる。
【0041】
顔料には、無機顔料と有機顔料とがあり、無機顔料としては、カーボンブラック、二酸化チタン、酸化亜鉛、群青、ベンガラ、リトポン、鉛、カドミウム、鉄、コバルト、アルミニウム等の金属の塩酸塩、硫酸塩、酸化物、水酸化物等が挙げられる。有機顔料としては、アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料等が挙げられる。
【0042】
本発明の2液型ウレタン組成物の製造方法は、上記ウレタンプレポリマーの製造時に、上記有機酸ビスマスを添加し、ウレタンプレポリマーを製造して、ウレタンプレポリマーと有機酸ビスマスとを含有する主剤を製造する工程と、上記活性水素含有化合物を含有する硬化剤を製造する工程とを含む。具体的には、ポリオール化合物とイソシアネート基含有化合物とを、有機酸ビスマスの存在下で反応させて、前記ウレタンプレポリマーと有機酸ビスマスとを含有する主剤を製造する工程と、前記活性水素含有化合物を含有する硬化剤を製造する工程とを含む。
主剤を製造する工程は、上述した本発明のウレタンプレポリマーの製造方法と同様に行われる。
また、硬化剤を製造する工程は、公知の方法で製造されたまたは市販の上記活性水素含有化合物、所望により上記有機酸カルシウム、各種添加剤を混合し、撹拌機等を用いて十分に分散させる工程である。
【0043】
本発明の組成物の製造方法によれば、主剤を製造する工程においては、加熱しなくても自己発熱して60〜85℃程度になり、30分〜60分程度で反応が終了するので、有機酸ビスマスを添加しない場合に比べて製造に要する時間が短縮され、コストを低減できる。また、得られた混合物は、ウレタンプレポリマーと有機酸ビスマスとを含有するので、本発明の組成物の主剤として、そのまま用いることができる。更に、通常ウレタンプレポリマーの製造は、十分に乾燥したポリオール化合物およびイソシアネート基含有化合物を用いて、水分を遮断した環境下で行われるため、有機酸ビスマスが水分と反応して失活することがない。したがって、得られる本発明の組成物は、貯蔵安定性に優れ、更に、有機酸ビスマスの失活を原因とする硬化遅延や発泡等を抑制することができる。
【0044】
従来の有機カルボン酸鉛を用いた2液型ウレタン組成物においては、有機カルボン酸鉛は硬化剤側に配合されている。その理由は、有機カルボン酸鉛を主剤側に配合した場合、ウレタンプレポリマーの硬化が進行し貯蔵安定性が著しく損なわれるためである。また、特許文献1および特許文献2に記載されている、有機カルボン酸鉛の代わりに有機酸ビスマスを用いた2液型ウレタン組成物等においても、硬化剤側に有機酸ビスマスが配合されている。
本発明の組成物は、有機酸ビスマスを主剤側に含有するので、有機酸ビスマスの存在によってウレタンプレポリマーの硬化が進行することなく、系内に存在する水分によって有機酸ビスマスが失活するのを防ぐことができ、その結果、貯蔵安定性に優れ、更に、有機酸ビスマスの失活を原因とする硬化遅延や発泡等を抑制することができる。
また、ウレタンプレポリマーの製造時に有機酸ビスマスを添加した場合、加熱する手間がかからないうえ、更に短時間で製造でき、コストを低減できる。
また、本発明の組成物は、硬化剤が有機酸カルシウムを含有する場合、本発明の組成物の硬化速度を速くすることができ、表面・深部硬化性に優れ、更に、有機酸ビスマスの添加量を少なくすることができる。また、有機酸ビスマスによる硬化物の高モジュラス化を抑制し、更に可使時間を適正化できる。
また、本発明の組成物は、硬化剤が有機酸スズを含有する場合、表面・深部硬化性により優れるため、硬化遅延にならず、タックが残りにくく、被塗装性に優れると共に、非発泡性も向上することができる。
【0045】
本発明の組成物は、上述したような優れた特性を有することから、シーリング材、防水材、接着剤、塗料、床材、注型用材料等に好適に用いられる。特に、低モジュラスで可使時間が長いという理由からシーリング材に好適に用いられる。
【実施例】
【0046】
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
<ウレタンプレポリマー(主剤)の製造>
(実施例1a)
乾燥したフラスコに、2官能ポリプロピレングリコール(エクセノール1020、数平均分子量1000、旭硝子(株)製、以下「EXL1020」という。)200g、2官能ポリプロピレングリコール(エクセノール2020、数平均分子量2000、旭硝子(株)製、以下「EXL2020」という。)200g、3官能ポリプロピレングリコール(エクセノール4030、数平均分子量4000、旭硝子(株)製、以下「EXL4030」という。)600gを加え、110℃で5時間真空撹拌を行い、脱水した。次に、TDI(コスモネートT80、三井武田ケミカル(株)製)169.5gを加えて、室温(20℃)で30分撹拌した。その後、オクチル酸ビスマスをビスマスの金属量として3質量%含む、ミネラルターペン/オクチル酸混合溶液(ネオスタンU660、日東化成(株)製、以下「U660」という)16.0gを添加し、室温(20℃)で撹拌を開始したところ、発熱して、下記第2表に示すように、撹拌開始から1分後には77℃になり、30分後にはNCO%が3.29、60分後には3.21となった。上記の組成により得られるウレタンプレポリマーの理論NCO%は3.21であるので、60分経過時には、ほぼ反応が終了していたことが分かった。このようにして得られた撹拌開始から110分後のウレタンプレポリマーとオクチル酸ビスマスとの混合物を主剤とした。
次に、上記主剤の一部を乾燥したガラス瓶に分注し、窒素ガスを封入した後密栓したものを、60℃に加熱して3日間保持した後のNCO%は3.19であった。
第2表に示す結果から、TDIを添加して撹拌を開始してから30分〜60分で反応はほとんど終了することが分かった。
また、貯蔵中のNCO%の低下や、著しい粘度上昇もないものと考えられる。
【0047】
(実施例2aおよび3a)
下記第1表に示す各成分を、第1表に示す組成(g)で混合し、実施例1aと同様にウレタンプレポリマーを製造し、主剤とした。
【0048】
(実施例4a)
乾燥したフラスコに、EXL1020を200g、EXL2020を200g、EXL4030を600g加え、110℃で5時間真空撹拌を行い、脱水し、50℃まで冷却した。次に、TDI(コスモネートT80、三井武田ケミカル(株)製)169.5gを加えて、30分撹拌し、更に80℃で約27時間撹拌し、ウレタンプレポリマーを製造した。ここで、NCO%が理論値の3.21と概ね一致したことを確認した。その後、U660を16.0g添加し、30分撹拌して均一に分散させ、主剤とした。
【0049】
(実施例5a)
乾燥したフラスコにて110℃で5時間真空撹拌し脱水を行ったEXL4030を、乾燥した18L缶に8000g計り取り、窒素ガスを封入し、密栓した後、室温まで冷却した。
次に、TDI(コスモネートT80、三井武田ケミカル(株)製)1000gを添加し、密栓した後、ジャイロミキサー(COROB社製)に設置し、撹拌速度90rpmで5分間撹拌した。
次に、U660(オクチル酸ビスマス)を117.8g添加し、撹拌速度90rpmで5分間撹拌した。
その後、室温で10時間静置した。そのときのNCO%は2.53で、E型粘度計を用いて粘度を測定したところ15.29Pa・s(20℃)であった。このようにして得られたウレタンプレポリマーとオクチル酸ビスマスとの混合物を主剤とした。
次に、上記主剤の一部を、乾燥したガラス瓶に分注し、窒素ガスを封入し、密栓した後、60℃で3日間静置した。そのときのNCO%は2.51で、E型粘度計を用いて粘度を測定したところ16.04Pa・s(20℃)であった。この結果から、得られたウレタンプレポリマーは貯蔵安定性に優れることが分かった。
なお、上記ジャイロミキサーは、天地回転と自転回転の2軸回転にて撹拌するミキサーである。
【0050】
(比較例1a)
オクチル酸ビスマス(U660)を添加しなかった以外は、実施例4aと同様の方法でウレタンプレポリマーを製造し、主剤とした。
【0051】
(比較例2a)
乾燥したフラスコに、EXL4030を8000g加え、110℃で5時間真空撹拌を行い、脱水した。次に、TDI(コスモネートT80、三井武田ケミカル(株)製)1000gを加えて、30分撹拌後、80℃に昇温して約24時間撹拌した。このようにして得られたウレタンプレポリマーを主剤とした。
下記第3表に示すように、撹拌開始から30分後のNCO%は5.35であり、80℃に昇温して21時間後にはNCO%が2.58となった。更に撹拌し、24時間後のNCO%は2.55であった。なお、上記組成により得られるウレタンプレポリマーの理論NCO%は2.54である。
次に、上記主剤の一部を、乾燥したガラス瓶に分注し、窒素ガスを封入した後密栓したものを、60℃に加熱して3日間保持した後のNCO%は2.53であった。
【0052】
【表1】

【0053】
上記第1表に示す各成分は下記のとおりである。
・ネオデカン酸ビスマス:試作品、日本化学産業(株)製、金属量としてビスマス16質量%
・アビエチン酸ビスマス:プキャットB−3、日本化学産業(株)製、金属量としてビスマス3質量%
【0054】
【表2】

【0055】
【表3】

【0056】
上記第2表および第3表に示す結果から明らかなように、比較例2aはTDIを添加して撹拌を開始してから反応が終了するのにおよそ24時間必要であるのに対し、実施例1aはTDIを添加してから30〜60分で反応がほぼ終了した。したがって、オクチル酸ビスマス存在下でウレタンプレポリマーの製造を行った場合は、オクチル酸ビスマス未添加の場合に比べて格段に反応速度が向上した。
【0057】
<2液型ウレタン組成物の調製>
(実施例1〜5および比較例1〜2)
(初期)
上記第1表に示す実施例1a〜5aおよび比較例1a〜2aの主剤と、下記第4表に示す成分を、第4表に示す組成(g)で混合して得られた硬化剤とを、撹拌機を用いて十分に混合して、シーリング材組成物(初期)を得た。
【0058】
(貯蔵後)
上記第1表に示す実施例1a〜5aおよび比較例1a〜2aの主剤と、第4表に示す組成(g)で混合して得られた硬化剤とを、それぞれ60℃で3日間促進劣化させた後、主剤および硬化剤を撹拌機を用いて十分に混合して、シーリング材組成物(貯蔵後)を得た。
得られた初期および貯蔵後の各シーリング材組成物について、下記の方法により発泡性、内部硬化性、物性および接着性を評価した。
結果を第5表に示す。
【0059】
<発泡性試験>
得られた各シーリング材組成物を30℃、80%RHの恒温恒湿槽内に7日間放置した後、表面状態を観察し、以下のように評価した。
シーリング材の表面に、発泡が認められなかったものを「○」、シーリング材の表面に直径3mm未満の発泡が認められたものを「△」、シーリング材の表面に直径3mm以上の発泡が認められたものを「×」とした。
【0060】
<内部硬化性試験>
得られた各シーリング材組成物を30mm×15mm×100mmのアルミチャンネルに打設し、へらで表面をならしたものを20℃、65%RH環境下で2日間養生した後、硬化したシーリング材をアルミチャンネルより脱型して、内部硬化性を評価した。
全体が硬化していたものを「○」、表面または内部が未硬化であったものを「×」とした。
【0061】
<引張特性試験>
JIS A1439−2004に準じて、各シーリング材組成物を用いて、23℃、50%RHで3日間養生し、更に50℃で4日養生し、H型試験体を作製した。この試験体に用いられるアルミ片として、シーリング材と接触する部分に予めプライマー(プライマーNo.30、横浜ゴム(株)製)を塗布し、塗布後30〜60分風乾させたものを用いた。
上記のように作製した試験体を、50mm/分の速度で引張り、50%モジュラス(M50)〔N/cm2〕、150%モジュラス(M150)〔N/cm2〕、破断強度(TB)〔N/cm2〕、破断時の伸び率(EB)〔%〕を測定した。
【0062】
<接着性試験>
上記引張り試験に供した試験片に付着したシーリング材の状態により、破壊の状態をCF(凝集破壊)、TCF(薄層凝集破壊)、AF(界面剥離)で分類し、各試験体の凝集破壊(CF)状態の占める面積の割合(CF%)を示した。
【0063】
【表4】

【0064】
上記第4表に示す各成分は、以下のとおりである。なお、オクチル酸ビスマスは上記第1表に示すものと同様である。
・EXL5030(3官能ポリプロピレングリコール):エクセノール5030、数平均分子量約5000、旭硝子(株)製
・EXL3020:(2官能ポリプロピレングリコール):エクセノール3020、数平均分子量約3000、旭硝子(株)製
・表面処理沈降炭酸カルシウム:MS−700、丸尾カルシウム(株)製
・重質炭酸カルシウム:ライトンA−4、備北粉化工業(株)製
・オクチル酸Ca/ネオデカン酸Ca(オクチル酸カルシウムとネオデカン酸カルシウムとの混合物):プキャットCa−5B、日本化学産業(株)製
【0065】
【表5】

【0066】
上記第5表に示す結果から明らかなように、比較例1および2の組成物は発泡を生じ、貯蔵後の硬化性が低かったのに対して、実施例1〜5の組成物はいずれも発泡が少なく、硬化性が良好だった。また、初期と比較した貯蔵後の物性は、実施例1〜5の組成物については、特にM50、M150において良く保持されていることが示された。これは、主剤と硬化剤が混合されて硬化するまでの間に触媒活性が維持されていることに起因すると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタンプレポリマーと有機酸ビスマスとを含有する主剤と、
活性水素含有化合物を含有する硬化剤と
からなる2液型ウレタン組成物。
【請求項2】
前記有機酸ビスマスが、有機カルボン酸ビスマスおよび/または樹脂酸ビスマスである請求項1に記載の2液型ウレタン組成物。
【請求項3】
前記有機カルボン酸ビスマスが、オクチル酸ビスマス、2−エチルヘキシル酸ビスマスおよびネオデカン酸ビスマスからなる群から選択される少なくとも1種である請求項2に記載の2液型ウレタン組成物。
【請求項4】
前記樹脂酸ビスマスが、アビエチン酸ビスマスである請求項2または3に記載の2液型ウレタン組成物。
【請求項5】
前記硬化剤が、更に、有機酸カルシウムを含有する請求項1〜4のいずれかに記載の2液型ウレタン組成物。
【請求項6】
前記有機酸カルシウムが、有機カルボン酸カルシウムおよび/または樹脂酸カルシウムである請求項5に記載の2液型ウレタン組成物。
【請求項7】
前記有機カルボン酸カルシウムが、オクチル酸カルシウム、2−エチルヘキシル酸カルシウムおよびネオデカン酸カルシウムからなる群から選択される少なくとも1種である請求項6に記載の2液型ウレタン組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の2液型ウレタン組成物の製造方法であって、
ポリオール化合物とイソシアネート基含有化合物とを、有機酸ビスマスの存在下で反応させて、前記ウレタンプレポリマーと有機酸ビスマスとを含有する主剤を製造する工程と、
前記活性水素含有化合物を含有する硬化剤を製造する工程と
を含む2液型ウレタン組成物の製造方法。
【請求項9】
ポリオール化合物とイソシアネート基含有化合物とを、有機酸ビスマスの存在下で反応させて、ウレタンプレポリマーを得る、ウレタンプレポリマーの製造方法。

【公開番号】特開2006−249344(P2006−249344A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−70478(P2005−70478)
【出願日】平成17年3月14日(2005.3.14)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】