説明

2,4−ジオキソテトラヒドロフラン−3−カルボキシラートを調製するための方法

式(I)および/または式(I’)の2,4−ジオキソテトラヒドロフラン−3−カルボキシラートを調製するための方法であって、好適な塩基の存在下、および場合により溶媒の存在下で、式(II)の塩化ハロアセチル化合物を、式(III)(式中、Hal、RおよびRは本願で記述された定義を有する)のマロン酸エステルと反応させる工程、十分な量の水を反応混合物に添加する工程、および所望の2,4−ジオキソテトラヒドロフラン−3−カルボキシラートを単離する工程を含む、方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2,4−ジオキソテトラヒドロフラン−3−カルボキシラートを調製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2,4−ジオキソテトラヒドロフラン−3−カルボキシラートは、活性成分の調製における重要な中間体である。これらは種々の既知の方法によって調製できる。
【0003】
例えば、Athanasellis et al.(Synlett,2002(10),1736−1738)は、3−メトキシカルボニルテトロン酸、即ち2,4−ジオキソテトラヒドロフラン−3−カルボキシラートを、O−保護されたα−ヒドロキシ酸およびマロン酸エステルを用いてヒドロキシベンゾトリアゾール媒介により多段階合成し、続いて水素化ナトリウムの存在下で環化することについて記載している。この反応により元素状水素(elemental hydrogen)を生じる。
【0004】
Mitsos et al.(Journal of Heterocyclic Chemistry,39(6),1201−1205)は、同様に、2,4−ジオキソテトラヒドロフラン−3−カルボキシラートの調製について記載している。N−ヒドロキシスクシンイミドを用いるO−保護されたα−ヒドロキシ酸のN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド−媒介縮合反応により、まずα―アセトキシ酸のN−スクシンイミジルエステルを調製し、次いでこれをマロン酸エステルの反応によって生じたジアルキルマロナートアニオンおよび水素化ナトリウムと無水ベンゼン中で反応させる。この反応により元素状水素を生じる。反応混合物を水性後処理し、所望の生成物を酸性化によって得る。
【0005】
AthanasellisおよびMitsosによって記載される方法は、産業規模では高いコスト効率で使用できないという欠点を有する。使用される化学品は高価であるとともに、この方法は複雑で、多数の工程を含み、同時に水素化ナトリウムを利用する。水素化ナトリウムを用いる操作は、これが極めて可燃性であり、操作は水を除いて行われなければならないことから、一般に望ましくない。加えて、反応中に生じる元素状水素は、反応系から除去されなければならず、さらなる工程段階および特別な安全対策が必要となる。
【0006】
水素化ナトリウムを用いずに操作される、2,4−ジオキソテトラヒドロフラン−3−エトキシラ−トのエノール形態である3−エトキシカルボニル−4−ヒドロキシフラン−2(5H)−オンを調製するための方法が、Campbell et al.(J.Chem.Soc.Perkin Trans I 1985,1567−1576)によって記載されている(スキーム1)。
【0007】
【化1】

【0008】
しかしここでの出発点は、マロン酸エチルエステルモノカリウム塩(1)であり、これを、第1の工程において、沸騰エタノール中、エチルブロモアセタート(2)と反応させ、エトキシカルボニルメチルエチルマロナート(3)を形成し、次いでこれを、さらに追加的にカリウムtert−ブトキシドとtert−ブタノール中で反応させ、3−エトキシカルボニル−4−ヒドロキシフラン−2(5H)−オンのカリウム塩(4)を形成する。エタノール中に塩酸を添加し、3−エトキシカルボニル−4−ヒドロキシフラン−2(5H)−オン(5)を得る。この方法は、ここでも同じく使用される化学品が高価であり、方法が多数の工程を必要とするので、同様に、コスト効率の良い産業規模での適用に不向きである。
【0009】
同様の意見が、2,4−ジオキソテトラヒドロフラン−3−カルボキシラートの調製のためのWO2009/036899に記載される方法に当てはまる。ここでも同様に、多段階にわたる手順が、マロン酸エチルエステルのモノカリウム塩から開始され、アシル化反応および後続の閉環により、3−アルコキシカルボニル−4−ヒドロキシフラン−2(5H)−オンの塩を製造する。使用される化学品はCampbell et al.の方法で利用されるものより安価であるが、方法中の工程数は同じように多く、これにより産業規模での適用がより困難になり、および/または採算が取れない。
【0010】
上述の方法よりも工程数が少なく操作されるが、産業規模では利用できないエチル2,4−ジオキソテトラヒドロフラン−3−カルボキシラートの調製方法は、Benary(Benary,Berichte der Deutschen Chemischen Gesellschaft(1911),44,1759−1765)によって記載されていた。この方法において、使用されるマロン酸ジメチルは、無水(absolute)−即ち無水(anhydrous)−ジエチルエーテル中のナトリウムと共に反応させ、元素状水素の遊離を伴って、酸化還元反応にて対応するナトリウム化合物を形成する。次いで氷冷却しながら、ジエチルエーテル中の溶液状態での塩化クロロアセチルを添加する。次いで反応混合物を、24時間放置する。元素状水素の発生に加えて、無水溶媒中のナトリウムの使用は非常に複雑で高価であるため、産業規模の適用には有利ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2009/036899号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Athanasellis et al.,Synlett,2002(10),1736−1738
【非特許文献2】Mitsos et al.,Journal of Heterocyclic Chemistry,39(6),1201−1205
【非特許文献3】Campbell et al.,J.Chem.Soc.Perkin Trans I 1985,1567−1576
【非特許文献4】Benary,Berichte der Deutschen Chemischen Gesellschaft(1911),44,1759−1765
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
2,4−ジオキソテトラヒドロフラン−3−カルボキシラートおよび/または対応するエノール互変異性体を調製するための既知の方法に基づいて、生じる問題は、如何にしてこれらの化合物が容易におよび安価に調製でき、この方法を2,4−ジオキソテトラヒドロフラン−3−カルボキシラートの産業規模の調製のためにも使用可能にするかである。安価な方法とは、例えば出発材料が安価であり、および/または無害であるので、高い経費を伴わずに行うことができる方法を意味し、こうした方法は、2、3の工程を用いて操作され、またはさらには「ワンポット」反応として行われることができ、および/または所望の2,4−ジオキソテトラヒドロフラン−3−カルボキシラートが十分な高収率および純度で得られる。
【0014】
2,4−ジオキソテトラヒドロフラン−3−カルボキシラートの調製について、ワンポット反応にて行われることができ、高価なおよび/または有害な化学品を用いずに操作されるので、上記で同定された欠点を避け、容易におよび安価に行うことができる方法を今般見出した。
【課題を解決するための手段】
【0015】
従って、本発明は、式(I)の2,4−ジオキソテトラヒドロフラン−3−カルボキシラートを調製するために、以下に記載される方法を提供する。
【0016】
【化2】

(式中、Rは、以下にて定義される化学基を示す。)
【0017】
ケト−エノール互変異性の結果として、式(I)の化合物は、異なる互変異性形態にて存在し得る。本発明の内容において、一般式(I)の化合物が例示される方法から独立して、一般式(I)のすべての互変異性構造、特に式(I’)の構造を包含する。
【0018】
式(I)の2,4−ジオキソテトラヒドロフラン−3−カルボキシラートを調製するための本発明の方法は、次の工程を含む。
好適な塩基の存在下、および場合により溶媒の存在下で、
(i)式(II)
【0019】
【化3】

(式中、Halは臭素、塩素またはヨウ素、好ましくは臭素または塩素、より好ましくは塩素である。)
の塩化ハロアセチル化合物を、式(III)
【0020】
【化4】

(式中、
およびRはそれぞれ互いに独立に、C1−12アルキル、C1−12ハロアルキル、C5−18アリール、C5−18ハロアリール、C7−19アルキルアリールまたはC7−19アリールアルキルであり、または式−[A−O]−Bのアルコキシアルキルであり、式中、AはC2−4アルカンジイル(アルキレン)であり、BはC1−6アルキルであり、mは1または2であり、好ましくはRおよびRはそれぞれ互いに独立に、メチル、エチル、イソプロピル、プロピル、ベンジルまたは2−メトキシエチルであり、より好ましくはメチルまたはエチルである)
のマロン酸エステルと反応させる工程、
(ii)反応混合物に十分な量の水を添加する工程、および
(iii)所望の2,4−ジオキソテトラヒドロフラン−3−カルボキシラートを単離する工程。
【0021】
本発明に従う好適な塩基は、式(III)のマロン酸エステルを脱保護する能力を有するすべての塩基である。本発明に従う特に好適な塩基は、アルコキシド塩基であり、一般式X(ORを有し、式中、Xはアルカリ金属カチオン(例えばNaまたはK)であり、またはアルカリ土類金属カチオン(例えば、Mg2+)であり、RはC1−12アルキル、好ましくはメチルおよびエチルであり、yは、Xがアルカリ金属カチオンである場合に1であり、Xがアルカリ土類金属カチオンである場合はyは2である。本発明に従う塩基は、例えばカリウムtert−ブトキシドおよびナトリウムメトキシドであり、好ましくは経済的根拠に基づいてナトリウムメトキシドである。
【0022】
十分な量の水とは、式(I)の所望の2,4−ジオキソテトラヒドロフラン−3−カルボキシラートを得るために、および反応混合物からこの化合物を単離するために十分な水の量を意味する。式(II)の塩化ハロアセチルと水との比は、好ましくは約1:0.5から約1:100、より詳細には約1:0.8から約1:50、特に約1:1から約1:30の範囲である。より高い比率が可能であるが、経済的に合理的ではない。
【0023】
工程(i)において、本発明に従って、溶媒を用いず、即ち単独でまたは好適な溶媒中で、式(III)のマロン酸エステルを加熱するのが好ましい。この後、場合により好適な溶媒中の溶液状態での塩基(例えばメタノール中のナトリウムメトキシド)を添加し、好ましくは形成された化合物H(ORおよび/または溶媒(例えばメタノール)は、同時に蒸留される。塩基は、一般に高温、好ましくは約50℃から約250℃の範囲、より詳細には約80℃から約150℃の範囲の内部温度にて添加される。約90℃から約150℃の範囲の内部温度が特に好ましい。式(II)の化合物の添加および/または得られたマロン酸エステル塩との反応は、好ましくは約5℃から約35℃、より詳細には約10℃から約25℃の範囲の内部温度にて行われる。
【0024】
一般式(I)の所望の2,4−ジオキソテトラヒドロフラン−3−カルボキシラートが反応混合物から単離される方法は、任意である。ろ過および/または相分離が好ましい。
【0025】
式(II)の2−塩化ハロアセチルおよび式(III)のマロン酸エステルは、市販されており、または既知の方法によって調製できる。
【0026】
式(III)の好ましいマロン酸エステルは、Rおよび/またはRはメチル、エチル、イソプロピル、プロピル、ブチル、アリル、ベンジル、アルコキシアルキルまたはC1−12ハロアルキルであり、より詳細にはメチル、エチル、n−プロピルまたはブチルであるエステルである。
【0027】
式(III)の好ましいマロン酸エステルは、さらに、RおよびRが同じ化学基であり、好ましくはメチル、エチル、n−プロピルまたはブチルであるエステルである。
【0028】
本発明の方法は、以下のスキームを用いて例示できる。
【0029】
【化5】

(式中、Hal、R、R、X、Rおよびyは上記で明確にされた定義を有する。)
【0030】
式(III)のマロン酸エステルと塩基、続く式(II)の2−塩化ハロアセチルとの反応は、溶媒の存在下または単独で行うことができる。反応は、好ましくは溶媒中で行われる。溶媒は、反応混合物が方法全体を通して容易に撹拌可能であり続けるような量で使用されるのが好ましい。本発明の方法を実施するために想定される溶媒としては、反応条件下で不活性なあらゆる有機溶媒が挙げられる。本発明に従う溶媒とはまた、純粋な溶媒の混合物を意味する。
【0031】
本発明に従う好適な溶媒は、特にエーテル(例えばエチルプロピルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、n−ブチルエーテル、アニソール、フェネトール、シクロヘキシルメチルエーテル、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジメチルグリコール、ジフェニルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、イソプロピルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、およびエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドのポリエーテル);テトラヒドロチオフェンジオキシドおよびジメチルスルホキシド、テトラメチレンスルホキシド、ジプロピルスルホキシド、ベンジルメチルスルホキシド、ジイソブチルスルホキシド、ジブチルスルホキシド、ジイソアミルスルホキシドのような化合物;スルホン、例えばジメチル、ジエチル、ジプロピル、ジブチル、ジフェニル、ジヘキシル、メチルエチル、エチルプロピル、エチルイソブチルおよびペンタメチレンスルホン;脂肪族、脂環式または芳香族炭化水素(例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、例えば40℃から250℃の範囲の沸点を有する構成成分を有するいわゆる「ホワイトスピリット」、シメン、70℃から190℃の沸点範囲内の石油画分、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、石油エーテル、リグロイン、オクタン、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、キシレン);エステル(例えば、メチル、エチル、ブチル、イソブチルアセタート、ジメチル、ジブチルまたはエチレンカルボナート、プロピレンカルボナート);アミド(例えばヘキサメチレンホスホルアミド、ホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジプロピルホルムアミド、N,N−ジブチルホルムアミド、N−メチルピロリジン、N−メチルカプロラクタム、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジン、オクチルピロリドン、オクチルカプロラクタム、1,3−ジメチル−2−イミダゾリンジオン、N−ホルミルピペリジン、N,N’−1,4−ジホルミルピペラジン)またはこれらの混合物である。
【0032】
本発明に従う反応のために使用される好ましい溶媒は、芳香族および/または脂肪族炭化水素、より詳細にはキシレン、ジイソプロピルベンゼンおよびジクロロベンゼンである。
【0033】
溶媒として、工程(i)の反応条件下、蒸留によって反応混合物から除去できる本発明の溶媒を使用することが可能であり、好ましいものは、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール(即ちn−ブタノール、tert−ブタノール、2−ブタノール)および2−(2−エトキシエトキシ)エタノール等のアルコールである。溶媒の選択は、使用される塩基に依存する。アルコキシド塩基が使用される場合、好ましくは対応するアルコールが溶媒として使用される。
【0034】
本発明の方法は、一般に減圧、常圧または過圧下にて、行われることができる。
【0035】
利用される温度は、出発材料に応じて変動してもよい。本発明の方法は、約0℃から約250℃の範囲の温度、好ましくは約10℃から約180℃の範囲での内部温度にて行われることができる。方法は、好ましくは、常圧下、約20℃から約150℃の範囲の内部温度にて行われる。塩基との反応は、より高い内部温度にて、より詳細には約50℃から250℃の範囲の内部温度にて行われることができ、式(II)の塩化ハロアセチルとの反応は、比較的低い内部温度、より詳細には約0℃から約50℃の範囲の内部温度で行われてもよい。
【0036】
使用される式(III)のマロン酸エステルと利用される塩基との比は、変動してもよい。しかし、極めて過剰な量の塩基は、こうした過剰量が反応収率を低下させ、塩基が式(II)の塩化ハロアセチルと反応するので、回避されるべきである。式(III)のマロン酸エステルと使用される塩基との比は、好ましくは約1:0.8から約1:1.5、より詳細には約1:0.9から約1:1.2、特に約1:1から約1:1.1の範囲である。
【0037】
利用される式(II)の塩化ハロアセチルと使用される式(III)のマロン酸エステルとの比は、変動してもよい。極めて過剰な量は、反応にとって重要ではないが不経済である。使用される式(II)の塩化ハロアセチルと利用される式(III)のマロン酸エステルとの比は、好ましくは約1:1.8から約1:2.5の範囲、より詳細には約1:1.9から約1:2.2の範囲、特に約1:2から約1:2.1の範囲である。
【0038】
単独でまたは他の用語との組み合わせでの「アルキル」とは、例えばアリールアルキルとは、例えば12個までの炭素原子を有する直鎖または分岐の飽和炭化水素鎖、即ちC1−12アルキル、好ましくは6個までの炭素原子を有するもの、即ちC1−6アルキル、より好ましくは4個までの炭素原子を有するもの、即ちC1−4アルキルを指す。こうしたアルキルの例は、メチル、エチル、n−またはイソプロピル、n−、イソ−、sec−、またはtert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシルおよびn−ドデシルである。アルキルは、好適な置換基で置換されていてもよい。
【0039】
単独でまたは他の用語との組み合わせでの「アリール」とは、5から18個の炭素原子を有する環状芳香族融合(cyclic aromatic fused)基または非融合基を指す。好ましいアリールは、6から14個の炭素原子を有する(例えばフェニルまたはナフチル)。アリールのうち、フェニルが特に好ましい。
【0040】
「アリールアルキル」とは、発明的に定義されたラジカル「アリール」および「アルキル」の組み合わせを表し、アリールアルキルは一般にアルキル基を介して結合する。これらの例は、ベンジル、フェニルエチルまたはα−メチルベンジルである。アリールアルキルのうち、ベンジルが好ましい。
【0041】
「アルキルアリール」とは、同様に発明的に定義されたラジカル「アリール」および「アルキル」の組み合わせを表し、アルキルアリールは一般にアリール基を介して結合するもの、例えばトリルである。
【0042】
「アルカンジイル」または「アルキレン」とは、上記で定義されるようなアルキルを指すが、さらに遊離の結合価を有する、即ちこれらは2つの結合部位を保持する。こうしたアルカンジイルの例は、メチレン、エチレン、プロピレンおよびシクロプロピレンである。
【0043】
「ハロゲン」、「ハロ」または「hal」は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素、好ましくは塩素または臭素である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明は、以下の実施例を参照して例示されるが、本発明はこれらの実施例に制限されない。
【実施例】
【0045】
調製例
[実施例1]
0.98kgのキシレン中のマロン酸ジメチル(200g、1.5mol)を90℃に加熱する。1時間にわたって、メタノール中に272g(1.5mol)のナトリウムメトキシドを測定する。遊離したメタノールを蒸留によって除去する。ジャケット温度を110℃(内部温度100℃)に加熱する。続いて25℃に冷却し、キシレン中の284gの塩化クロロアセチル(30%強度)を、逆冷却しながら滴下する(内部温度25℃)。続いて25℃で3時間の撹拌後、567gの水を滴下する。次いで室温、即ち約20℃でさらに3時間撹拌を継続する。次いで有機相を分離し、水相を乾燥するまで濃縮する。これにより、74.8%収率に対応する177gのメチル2,4−ジオキソテトラヒドロフラン−3−カルボキシラート(50.6%純度、44.1%塩化ナトリウム)を得る。
H NMR(DO,298K)δ:3.73(s,3H),4.42(s,2H)
【0046】
[実施例2]
0.77kgのキシレン中のマロン酸ジメチル(143g、1.05mol)を100℃に加熱する。2時間にわたって、メタノール中に180g(1.00mol)のナトリウムメトキシドを測定する。遊離したメタノールを蒸留によって除去する。ジャケット温度を140℃(内部温度125℃)に加熱する。続いて15℃に冷却し、57.6gの塩化クロロアセチルを、逆冷却しながら滴下する(内部温度15℃)。続いて25℃で3時間の撹拌後、18gの水を滴下する。続いて40℃で4時間撹拌し、バッチをろ過し、残渣を減圧下、40℃にて乾燥させる。これにより、74.2%収率に対応する104gのメチル2,4−ジオキソテトラヒドロフラン−3−カルボキシラート(NaClとの混合物として56.9%純度)を得る。
【0047】
[実施例3]
300mlのキシレン中のジエチルマロナート(50g、0.31mol)を110℃に加熱する。1時間にわたって、メタノール中の56g(0.3mol)のナトリウムメトキシドを測定する。遊離したメタノールを蒸留によって除去する。ジャケット温度を140℃(内部温度125℃)に加熱する。続いて15℃に冷却し、17.6gの塩化クロロアセチルを、逆冷却しながら滴下する(内部温度15℃)。続いて25℃で3時間の撹拌後、100gの水を滴下する。続いて40℃で4時間撹拌し、バッチをろ過し、残渣を減圧下、40℃にて乾燥させる。これにより、73%収率に対応する42.6gのメチル2,4−ジオキソテトラヒドロフラン−3−カルボキシラートおよびエチル2,4−ジオキソテトラヒドロフラン−3−カルボキシラート混合物の形態(NaClとの混合物として46%純度)を得る。
H NMR(DO,298K)エチルエステルについてδ:1.28(t,3H),3.73(s,3H),4.21(q,2H),4.42(s,2H)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

の2,4−ジオキソテトラヒドロフラン−3−カルボキシラートを調製するための方法であって、次の工程:
好適な塩基の存在下、および場合により溶媒の存在下で、
(i)式(II)
【化2】

の塩化ハロアセチル化合物
(式中、Halは臭素、塩素またはヨウ素である)
を、式(III)
【化3】

(式中、
およびRはそれぞれ互いに独立に、C1−12アルキル、C1−12ハロアルキル、C5−18アリール、C5−18ハロアリール、C7−19アルキルアリールまたはC7−19アリールアルキルであり、
または式−[A−O]−Bのアルコキシアルキルであり、式中
AはC2−4アルカンジイルであり、
BはC1−6アルキルであり、
mは1または2である)
のマロン酸エステルと反応させる工程、
(ii)反応混合物に十分な量の水を添加する工程、および
(iii)所望の2,4−ジオキソテトラヒドロフラン−3−カルボキシラートを単離する工程
を含む方法。
【請求項2】
およびRがそれぞれ互いに独立に、メチル、エチル、イソプロピル、プロピルおよびベンジルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
好適な塩基が、式X(ORのアルコキシド塩基から選択される、請求項1または2に記載の方法であって、式中、
Xはアルカリ金属カチオンであり、またはアルカリ土類金属カチオンであり、
はC1−12アルキルであり、
yは、Xがアルカリ金属カチオンである場合に1であり、またはXがアルカリ土類金属カチオンである場合は2であり、
好適な塩基が、場合により溶媒中の溶液状態で存在する、方法。
【請求項4】
好適な塩基がカリウムtert−ブトキシドまたはナトリウムメトキシドである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
式(III)のマロン酸エステルと使用される塩基との比が、約1:0.8から約1:1.5の範囲である、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
塩化ハロアセチルと水との比が、約1:0.5から約1:100の範囲である、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
塩基が、約50℃から約250℃の範囲の内部温度にて、工程(i)の化合物(III)に添加される、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
化合物(II)が、約0℃から約50℃の範囲の内部温度にて、工程(i)において添加される、請求項1から7のいずれかに記載の方法。

【公表番号】特表2013−501738(P2013−501738A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524132(P2012−524132)
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【国際出願番号】PCT/EP2010/004777
【国際公開番号】WO2011/018180
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(507203353)バイエル・クロップサイエンス・アーゲー (172)
【氏名又は名称原語表記】BAYER CROPSCIENCE AG
【Fターム(参考)】