説明

2,4,4−トリメチル−2’,4’,7−トリヒドロキシフラバンの製造方法

【課題】効率のよい2,4,4−トリメチル−2',4',7−トリヒドロキシフラバンの製造方法を開発すること。
【解決手段】レゾルシンとアセトンとを酸触媒の存在下で反応させる2,4,4−トリメチル−2',4',7−トリヒドロキシフラバンの製造方法において、純度70〜90%の2,4,4−トリメチル−2',4',7−トリヒドロキシフラバンを種晶として用いることを特徴とする2,4,4−トリメチル−2',4',7−トリヒドロキシフラバンの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2,4,4−トリメチル−2',4',7−トリヒドロキシフラバンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2,4,4−トリメチル−2',4',7−トリヒドロキシフラバンの製造方法において、高純度の2,4,4−トリメチル−2',4',7−トリヒドロキシフラバンを種晶として用いることが知られている(例えば、特許文献1(「0066」例8参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−12665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、かかる製造方法は、高純度の2,4,4−トリメチル−2',4',7−トリヒドロキシフラバンを種晶として用いているにもかかわらず、生成物の純度は79%であり、生成物を次の製造における種晶として用いるには、さらに精製を必要とするため、プロセスの改善が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、より効率のよい2,4,4−トリメチル−2',4',7−トリヒドロキシフラバンの製造方法について鋭意検討を重ねた結果、本発明に至った。
【0006】
即ち、本発明は、
1.レゾルシンとアセトンとを酸触媒の存在下で反応させる2,4,4−トリメチル−2',4',7−トリヒドロキシフラバンの製造方法において、純度70〜90%の2,4,4−トリメチル−2',4',7−トリヒドロキシフラバンを種晶として用いることを特徴とする2,4,4−トリメチル−2',4',7−トリヒドロキシフラバンの製造方法;
及び、
2.酸触媒が硫酸である前項1に記載される製造方法;
を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の製造方法によれば、得られる2,4,4−トリメチル−2',4',7−トリヒドロキシフラバンをそのまま次の製造における種晶として用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について、詳細に説明する。
本発明は、レゾルシンとアセトンとを酸触媒の存在下で反応させる2,4,4−トリメチル−2',4',7−トリヒドロキシフラバンの製造方法において、純度70〜90%の2,4,4−トリメチル−2',4',7−トリヒドロキシフラバンを種晶として用いることを特徴とする2,4,4−トリメチル−2',4',7−トリヒドロキシフラバンの製造方法である。尚、2,4,4−トリメチル−2’4’7−トリヒドロキシフラバンは下記の式で示される化合物である。
【0009】
【化1】

【0010】
酸触媒は酸性物質であればよく、例えば、硫酸、p−トルエンスルホン酸、塩酸、リン酸等を用いることができるが、硫酸が好ましい。これら酸触媒はそのまま、又は適当な濃度の水溶液として用いることができる。酸触媒の使用量に特に制限はないが、仕込みレゾルシンに対し、0.1〜10モル%の範囲が好ましく、0.5〜5モル%の範囲が更に好ましい。縮合反応は、水と混和しない有機溶媒中で行うことが好ましい。かかる有機溶媒の例としては、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、芳香族ハロゲン置換炭化水素等が挙げられる。脂肪族炭化水素の具体例は、ヘキサン、へプタン、オクタン、デカン等であり、芳香族炭化水素の具体例は、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等であり、芳香族ハロゲン置換炭化水素の具体例は、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等である。芳香族炭化水素が好ましく、トルエン、キシレンがより好ましい。このような有機溶媒は、仕込みレゾルシンに対し、1〜3重量倍の範囲で存在させることが好ましい。レゾルシンの仕込みモル比は、仕込みアセトンに対し0.6〜1.5モル倍の範囲が好ましく、更に好ましくは0.8〜1.3モル倍である。
【0011】
種晶は、反応の当初から添加しておいてもよいし、縮合反応中に添加してもよいし、縮合反応後に添加してもよいが、反応の当初から添加することが好ましい。その添加量は仕込みレゾルシンに対し、0.5〜10モル%の範囲が好ましい。種晶である2,4,4−トリメチル−2',4',7−トリヒドロキシフラバンの純度は70〜90%であればよく、その他の成分は特に限定されない。
【0012】
反応温度は特に制限はないが、通常30℃から還流温度までの範囲で反応させればよい。こうした反応により得られる反応混合物には、通常、固形物を含んでいる。かかる反応混合物を、塩基で処理した後、ろ過処理して固液分離し、必要に応じて得られた固形物に付着した触媒、中和塩及び未反応原料を十分に水洗し、乾燥することにより、2,4,4−トリメチル−2',4',7−トリヒドロキシフラバンが得られる。塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム等を用いることができるが、水酸化ナトリウムが好ましい。塩基は、適当な濃度の水溶液として用いることが好ましい。
【0013】
かくして得られる2,4,4−トリメチル−2',4',7−トリヒドロキシフラバンの純度は、通常70〜90%の範囲であり、これを次の2,4,4−トリメチル−2',4',7−トリヒドロキシフラバンの製造の種晶として、そのまま用いることができる。
【実施例】
【0014】
以下、実施例、試験例及び参考例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、以下の実施例において、2,4,4−トリメチル−2',4',7−トリヒドロキシフラバンをFVRと略記する。
【0015】
実施例
温度計、攪拌機及びコンデンサーを備えた500ml四つ口フラスコに、レゾルシン75.4g(0.68モル)を仕込み、フラスコ内部を窒素置換した後、アセトン43.7g(0.75モル)及びトルエン138.0gを仕込み、40℃に昇温することにより、レゾルシンを完溶させた。これに2,4,4−トリメチル−2',4',7−トリヒドロキシフラバン(以下、FVRと略記する)7.1g(純度82%)を添加した。さらにフラスコに、98%硫酸0.69gを仕込み、これを内温77℃まで昇温後、76〜79℃で12時間保温した。得られた反応混合物に、10重量%水酸化ナトリウム水溶液5.5gを加え中和した後、室温に冷却し析出物をろ取した。得られた固形物を水200gで洗浄し、1kPa以下の減圧下で80℃、5時間減圧乾燥することにより、固形物94.5gを得た。当該固形物を高速液体クロマトグラフィー外部標準法(以下、LC−ES法と略記する)により分析した結果、FVRの含量は81.3重量%であり、レゾルシンの含量は0.8重量%であった。
【0016】
比較例
上記実施例において、FVRの純度を95%とする以外は、上記実施例と同様に操作を行い、固形物94.0gを得た。当該固形物をLC−ES法により分析した結果、FVRの含量は82.2重量%であり、レゾルシンの含量は0.5重量%であった。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明の製造方法により得られる2,4,4−トリメチル−2’4’7−トリヒドロキシフラバンは、各種ゴム組成物の補強剤及びその中間体として有用な化合物である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レゾルシンとアセトンとを酸触媒の存在下で反応させる2,4,4−トリメチル−2',4',7−トリヒドロキシフラバンの製造方法において、純度70〜90%の2,4,4−トリメチル−2',4',7−トリヒドロキシフラバンを種晶として用いることを特徴とする2,4,4−トリメチル−2',4',7−トリヒドロキシフラバンの製造方法。
【請求項2】
酸触媒が硫酸である請求項1に記載される製造方法。