説明

2,4,6−トリス(3−アミノフェニルアミノ)−1,3,5−トリアジンの製造方法

【課題】 2,4,6−トリス(3−アミノフェニルアミノ)−1,3,5−トリアジンの商業的製造に適したプロセスを提供する。
【解決手段】 m−ニトロアニリンを塩化シアヌールと反応させて得られる2,4,6−トリス(3−ニトロフェニルアミノ)−1,3,5−トリアジンを、水素ガスを用いる接触還元法またはヒドラジン還元法により還元する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
2,4,6−トリス(3−アミノフェニルアミノ)−1,3,5−トリアジンの製造方法に関する。
【0002】
2,4,6−トリス(3−アミノフェニルアミノ)−1,3,5−トリアジンは染料、顔料、合成樹脂、合成樹脂安定剤などの原料として工業的に有用な化合物である。
【背景技術】
【0003】
塩化アンモニウムの存在下にメラミンとm−フェニレンジアミンとを210℃で反応させて2,4,6−トリス(3−アミノフェニルアミノ)−1,3,5−トリアジンを得る方法がドイツ特許第3611420号に記載されているが、高温を要するという不利益のほか、目的物がタール状の物質として得られているに過ぎず、高純度を必要とする用途に適する方法ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】ドイツ特許第3611420号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、高純度の2,4,6−トリス(3−アミノフェニルアミノ)−1,3,5−トリアジンの高温を必要としない商業的な製造方法を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、m−ニトロアニリンを塩化シアヌールと縮合させ、得られる2,4,6−トリス(3−ニトロフェニルアミノ)−1,3,5−トリアジンを還元することにより、容易に高純度の2,4,6−トリス(3−アミノフェニルアミノ)−1,3,5−トリアジンが得られることに着目し、反応条件を鋭意検討した結果、好適な反応条件を見出し本発明に到達した。
【発明の効果】
【0007】
2,4,6−トリス(3−アミノフェニルアミノ)−1,3,5−トリアジンの商業的に有利な製造方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本発明の方法を詳細に説明する。
【0009】
本発明に用いられる2,4,6−トリス(3−ニトロフェニルアミノ)−1,3,5−トリアジンは例えば脱塩酸剤の存在下に塩化シアヌールとm−ニトロアニリンとの縮合反応で容易に得ることができる。
本発明に用いられる前記脱塩酸剤としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N,N’−ジメチルアニリン、ピリジン、ピコリンなどが挙げられる。
本発明に用いられる前記縮合反応を行うに好適な溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル系溶剤、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、キュメンなどの芳香族溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N,N’−ジメチルイミダゾリジノンなどのアミド系溶剤、スルホラン、およびジメチルスルホキシドなどが挙げられる。
【0010】
本発明の2,4,6−トリス(3−ニトロフェニルアミノ)−1,3,5−トリアジンの還元方法としては、有機ニトロ化合物の還元に通常用いられる方法を用いることができ、例えば水素ガスと触媒を用いる接触還元、ヒドラジン還元などが挙げられる。
【0012】
本発明の接触還元またはヒドラジン還元に用いられる触媒としては、例えば活性炭、カーボンブラック、グラファイト、アルミナなどに担持させたパラジウム、白金、ロジウムなどの貴金属触媒、ラネーニッケル触媒、スポンジニッケル触媒、などが挙げられる。
【0013】
本発明の接触還元またはヒドラジン還元に用いられる溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノールなどのアルコール系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N,N’−ジメチルイミダゾリジノンなどのアミド系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル系溶剤などが挙げられる。
以下に実施例により本発明の方法をさらに具体的に説明するが、本発明の方法はこの内容に限定されない。
【実施例1】
攪拌翼、滴下漏斗および温度計を備えた1L四つ口フラスコにm−ニトロアニリン60.0g(0.434モル)、炭酸カリウム60.0g(0.434モル)、およびN,N−ジメチルアセトアミド350mLを加え、15℃に冷却した。フラスコの内温を15℃に保ちつつ、塩化シアヌール18.4g(0.100モル)をN,N−ジメチルアセトアミド70mLに溶解させた溶液を30分間で滴下した。反応混合物を15℃ないし30℃で2時間攪拌した後、60℃ないし85℃でさらに13時間攪拌した。反応混合物を冷却し、室温で吸引濾過し、水300mLで2回、メタノール300mLで1回洗浄し減圧乾燥し、LC純度95.9%の2,4,6−トリス(3−ニトロフェニルアミノ)−1,3,5−トリアジン粗製品48.6gを得た。この全てを250mLのN,N−ジメチルアセトアミドより再結晶し、水300mLで2回、メタノール100mLで1回洗浄し、乾燥してLC純度99.2%の精製品48.1gを得た。塩化シアヌールからの収率は98.3%であった。
【実施例2】
攪拌翼、滴下漏斗および温度計を備えた1L四つ口フラスコにm−ニトロアニリン60.0g(0.434モル)、炭酸ナトリウム46.0g(0.434モル)、およびN,N−ジメチルアセトアミド350mLを加え、15℃に冷却した。フラスコの内温を15℃に保ちつつ、塩化シアヌール18.4g(0.100モル)をN,N−ジメチルアセトアミド70mLに溶解させた溶液を30分間で滴下した。反応混合物を15℃ないし30℃で2時間攪拌した後、60℃ないし85℃でさらに18時間攪拌した。反応混合物を冷却し、室温で吸引濾過し、水300mLで2回、メタノール300mLで1回洗浄し減圧乾燥し、LC純度95.9%の2,4,6−トリス(3−ニトロフェニルアミノ)−1,3,5−トリアジン粗製品47.5gを得た。この全てを250mLのN,N−ジメチルアセトアミドより再結晶し、水300mLで2回、メタノール100mLで1回洗浄し、乾燥してLC純度99.5%の精製品47.0gを得た。塩化シアヌールからの収率は96.2%であった。
【実施例3】
ステンレススチール製1Lオートクレーブに2,4,6−トリス(3−ニトロフェニルアミノ)−1,3,5−トリアジン37.0g(0.076モル)、N,N−ジメチルアセトアミド250mL、および5%Pd/C触媒(50%含水)3.0gを仕込み、内温90℃、水素圧7.0kg/cm2で水素還元を行った。約20分後に水素吸収が認められなくなったが、さらに20分攪拌を続けた後、攪拌を止め内容物を取り出し、触媒を濾過し、濾液を濃縮してN,N−ジメチルアセトアミドを約200mL回収した後、濃縮液に水100mLを加えて結晶を析出させた。得られた結晶を濾過・乾燥してLC純度99.9%の粗製品29.6gを得た。この全てを100mLのN,N−ジメチルアセトアミドに加熱溶解し、活性炭3.0gで脱色した後、水100mLを加えて晶析し、濾過乾燥して精製品28.2gを得た。2,4,6−トリス(3−ニトロフェニルアミノ)−1,3,5−トリアジンからの収率93.4%、LC純度99.2%、融点204〜207℃であった。
【実施例4】
攪拌翼、滴下漏斗および温度計を備えた500mL四つ口フラスコに2,4,6−トリス(3−ニトロフェニルアミノ)−1,3,5−トリアジン7.0g(0.014モル)、N,N−ジメチルアセトアミド250mL、および5%Pd/C触媒(50%含水)1.0gを仕込み、95℃に昇温した後、内温を95〜100℃に保ちつつ61%水加ヒドラジン水溶液6.8g(0.083モル)を4時間かけて滴下した。さらに1時間100℃に保温した後、放冷し、40℃で触媒を濾別し、減圧蒸留によりN,N−ジメチルアセトアミドを約220mL回収し、水80mLを徐々に添加し、生成物を析出させた。析出した固体を濾過し、30%DMAc水10mLで洗浄した。得られた粗ケーキを20mLのDMAcに加え、80℃に加熱し、固体を溶解させた後、水20mLを加えて30℃に冷却し、析出した結晶を濾過乾燥してLC純度99.8%の精2,4,6−トリス(3−ニトロフェニルアミノ)−1,3,5−トリアジン5.2gを得た。融点205−207℃。2,4,6−トリス(3−ニトロフェニルアミノ)−1,3,5−トリアジンからの収率91%。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
m−ニトロアニリンを塩化シアヌールと反応させて得られる2,4,6−トリス(3−ニトロフェニルアミノ)−1,3,5−トリアジンを還元することを特徴とする2,4,6−トリス(3−アミノフェニルアミノ)−1,3,5−トリアジンの製造方法。
【請求項2】
水素ガスを用いる接触還元法によって還元を行うことを特徴とする1に記載の方法。
【請求項3】
ヒドラジン還元法によって還元を行うことを特徴とする1に記載の方法。