説明

3−アルコキシカルボニル−6,7−クロロメチレンジオキシクマリン化合物、及びその製造方法。

【課題】
本発明は、6,7−クロロメチレンジオキシクマリン−3−カルボキシ化合物、及びその製造方法に関する。本発明の6,7−クロロメチレンジオキシクマリン−3−カルボキシ化合物は、例えば、医薬品として有用な6,7−ジヒドロキシカルボン酸誘導体の重要中間体である。
【解決手段】
本発明の課題は、6,7−メチレンジオキシクマリン−3−カルボキシ化合物と分子状塩素とを塩素化合物の存在下にて反応を行うことを特徴とする、6,7−クロロメチレンジオキシクマリン−3−カルボキシ化合物の製造方法によって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、6,7−メチレンジオキシクマリン−3−カルボキシ化合物から、6,7−クロロメチレンジオキシクマリン−3−カルボキシ化合物を中間体として経由して、6,7−ジヒドロキシクマリン−3−カルボキシ化合物を製造する方法に関するものである。6,7−ジヒドロキシ−3−カルボキシ化合物は、医薬品の合成中間体として重要な化合物であり、具体的には、例えば、ペニシリンやセファロスポリン系抗生物質の修飾剤(特許文献1)、カテコール−O−メチルトランスファーゼ阻害活性剤の合成中間体(特許文献2)等として有用な化合物である。
【背景技術】
【0002】
従来、6,7−ジヒドロキシクマリン−3−カルボン酸の製造方法としては、特許文献2に、1,2,4−トリヒドロキシベンゼンとシアノ酢酸エステルから得られる6,7−ジヒドロキシ−2−イミノ−2H−クロメン−3−カルボン酸エチルエステルを塩酸で処理する製造方法が、非特許文献1には、1,2,4−トリヒドロキシベンゼンとマロン酸ジエチルからの製造方法が記載されているが、いずれも工業的に大量に入手することが困難である1,2,4−トリヒドロキシベンゼンを原料としており、また、この化合物は、反応に関与し得る水酸基を複数有するため、副反応が生じるなど問題があった。また、非特許文献2には、6,7−メチレンジオキシクマリン−3−カルボキシ化合物の製造方法が記載されているが、この6,7−メチレンジオキシクマリン−3−カルボキシ化合物を出発原料化合物として用いて6,7−ジヒドロキシクマリン−3−カルボキシ化合物を製造する方法は全く知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許第62328号明細書
【特許文献2】国際公開第2002/2548号パンフレット
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Chem.Ber.,34,1901,p.423.
【非特許文献2】Bull.Chem.Soc.Jp.,1962,p.1321.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、即ち、簡便な方法によって、6,7−メチレンジオキシクマリン−3−カルボキシ化合物から、高収率で6,7−ジヒドロキシクマリン−3−カルボキシ化合物を製造する、工業的に好適な6,7−ジヒドロキシクマリン−3−カルボキシ化合物の製法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の課題は、(A)塩素化合物の存在下、一般式(1)
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、Rは、水素原子又はアルキル基を表す。)で示される6,7−メチレンジオキシクマリン−3−カルボキシ化合物に、分子状塩素を反応させて、一般式(2)
【0009】
【化2】

【0010】
(式中、Rは、前記と同義である。)で示される6,7−クロロメチレンジオキシクマリン−3−カルボキシ化合物を調製する工程、及び(B)前記6,7−クロロメチレンジオキシクマリン−3−カルボキシ化合物を加水分解反応及び/又はアルコーリシス反応に供して、下記一般式(3)
【0011】
【化3】

【0012】
(式中、Rは、前記と同義である。)で示される6,7−ジヒドロキシクマリン−3−カルボキシ化合物を製造する工程を含むことを特徴とする6,7−ジヒドロキシクマリン−3−カルボキシ化合物の製法によって解決される。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、簡便な方法によって、6,7−メチレンジオキシクマリン−3−カルボキシ化合物から、高収率で6,7−ジヒドロキシクマリン−3−カルボキシ化合物を製造する、工業的に好適な6,7−ジヒドロキシクマリン−3−カルボキシ化合物の製法を提供することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の工程(A)においては、一般式(1)で表される6,7−メチレンジオキシクマリン−3−カルボキシ化合物に、分子状塩素を、塩素化合物の存在下に反応させて、一般式(2)で表される6,7−クロロメチレンジオキシクマリン−3−カルボキシ化合物が、中間体として調製される。
【0015】
次の工程(B)において、前記式(2)の6,7−クロロメチレンジオキシクマリン−3−カルボキシ化合物を加水分解反応及び/又はアルコーリシス反応に供して、一般式(3)で表される目的の6,7−ジヒドロキシクマリン−3−カルボキシ化合物が製造される。
【0016】
本発明の工程(A)に供される6,7−メチレンジオキシクマリン−3−カルボキシ化合物は、前記の一般式(1)で示される。その一般式(1)において、Rは、水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基(なお、これらの基は、各種異性体を含む。)であるが、好ましくは水素原子、メチル基、エチル基である。なお、該6,7−メチレンジオキシクマリン−3−カルボキシ化合物は、非特許文献2に記載の方法に準じて、容易に合成出来る化合物である(参考例1参照)。
【0017】
本発明の工程(A)で用いられる塩素化合物としては、三塩化リン、五塩化リン、塩化スルフリル、塩化チオニル、塩化ニトロシル等が挙げられるが、好ましくは三塩化リン、五塩化リンが使用される。なお、これらの塩素化合物は、単独又は二種以上を混合して使用しても良い。
【0018】
前記塩素化合物の使用量は、6,7−メチレンジオキシクマリン−3−カルボキシ化合物1モルに対して、好ましくは0.05〜10モル、更に好ましくは0.1〜10モルである。
【0019】
本発明の工程(A)において使用する分子状塩素の量は、6,7−メチレンジオキシクマリン−3−カルボキシ化合物1モルに対して、好ましくは1〜50モル、更に好ましくは1〜10モルである。
【0020】
本発明の工程(A)は、溶媒の存在下で行うのが好ましく、使用される溶媒としては反応を阻害せず、それ自体が塩素化され難い溶媒ならば特に限定されず、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、t−ブチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;クロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素類;n−ヘキサン、n−へプタン、n−オクタン、n−デカン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等の脂肪族炭化水素類;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のカルボン酸エステル類が挙げられるが、好ましくは芳香族炭化水素類、ハロゲン化脂肪族炭化水素類、カルボン酸エステル類、更に好ましくは芳香族炭化水素類、カルボン酸エステル類が使用される。なお、これらの溶媒は、単独又は二種以上を混合して使用しても良い。
【0021】
前記溶媒の使用量は、反応液の均一性や撹拌性により適宜調節するが、6,7−メチレンジオキシクマリン−3−カルボキシ化合物1gに対して、好ましくは1〜50ml、更に好ましくは2〜20mlである。
【0022】
本発明の工程(A)は、例えば、6,7−メチレンジオキシクマリン−3−カルボキシ化合物、塩素化合物及び溶媒を混合して、分子状塩素として塩素ガス(窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスで希釈されていても良い)を供給しつつ、撹拌しながら反応させる等の方法によって行われる。その際の反応温度は、好ましくは25〜150℃、更に好ましくは25〜100℃であり、反応圧力及び塩素ガスの供給速度は特に制限されない。
【0023】
本発明の工程(A)において反応溶媒を用いた場合、生成物として6,7−クロロメチレンジオキシクマリン−3−カルボキシ化合物を含んだ溶液が得られるが、本発明においては、通常、この溶液をそのまま又は濃縮した後に次の工程(B)に供する。しかし、場合によっては、生成した6,7−クロロメチレンジオキシクマリン−3−カルボキシ化合物を、例えば、濾過、濃縮、晶析、再結晶、蒸留、及び/又はカラムクロマトグラフィー等による一般的な方法によって一旦単離した後に、次の工程(B)に供しても良い。
【0024】
本発明の工程(B)において、前記式(2)で表される6,7−クロロメチレンジオキシクマリン−3−カルボキシ化合物を加水分解反応及び/又はアルコーリシス反応に供して、前記式(3)で表される6,7−ジヒドロキシクマリン−3−カルボキシ化合物が製造される。
【0025】
本発明の工程(B)において施される加水分解反応及び/又はアルコーリシス反応は、一般的に行われる加水分解及び/又はアルコーリシスの方法、条件、装置を用いることができる。好ましくは、加水分解反応の場合は酸と水とを含む酸性条件下で行われる。なお、工程(A)において得られた反応液(該工程の生成物である6,7−クロロメチレンジオキシクマリン−3−カルボキシ化合物を含む溶液であり、濃縮されていても良い)をそのまま用いる場合には、新たに酸を添加する必要はなく、水のみを加えれば良い。
【0026】
前記水の使用量は、反応液の均一性や撹拌性により適宜調節するが、工程(A)で使用した6,7−メチレンジオキシクマリン−3−カルボキシ化合物1gに対して、好ましくは1〜50g、更に好ましくは2〜20gである。
【0027】
本発明の工程(B)において、アルコーリシス反応が行われる場合、アルコールとしては、炭素原子数1〜4の脂肪族飽和アルコール、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコールなどが用いられ、好ましくはメタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコールが用いられる。
【0028】
前記アルコーリシス反応に用いられるアルコールの量は、前記工程(A)における6,7−メチレンジオキシクマリン−3−カルボキシ化合物の使用量1gに対して、好ましくは1〜50g、更に好ましくは2〜20gである。
【0029】
本発明の工程(B)は、例えば、工程(A)で得られた6,7−クロロメチレンジオキシクマリン−3−カルボキシ化合物又はこれを含む反応液(濃縮されていても良い)に水及び/又はアルコールを混合して(必要ならば酸を添加しても良い)、必要により、撹拌しながら反応させればよい。その際の反応温度は、好ましくは5〜100℃、更に好ましくは25〜70℃であり、反応圧力は特に制限されない。また、反応系に対して反応性のないガス、例えば窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスの雰囲気中において、本工程を行っても良い。
【0030】
なお、上記の工程(B)終了後、最終生成物である6,7−ジヒドロキシクマリン−3−カルボキシ化合物は、濾過、濃縮、晶析、再結晶、蒸留、及び/又はカラムクロマトグラフィー等による一般的な方法によって単離・精製される。
【実施例】
【0031】
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0032】
参考例1(3−メトキシカルボニル−6,7−メチレンジオキシクマリンの合成)
撹拌装置、温度計、滴下漏斗及びDean−Stark装置を備えた内容積50mlのフラスコに、窒素雰囲気中において、ピペリジン2.56g(30.06mmol)、及びシクロヘキサン25mlを入れて混合し、この混合物を撹拌しながら、これに酢酸1.81g(30.14mmol)をゆるやかに滴下した。さらに、この混合物に、2−ヒドロキシ−4,5−メチレンジオキシベンズアルデヒド5.00g(30.10mmol)を添加し、生成する水を還流(70〜80℃)により留去しながら2時間反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、酢酸エチル50g及び氷水50gを加えて撹拌させた。析出した結晶を濾過により分離し、これを水で洗浄した後に、減圧下50℃で乾燥して、黄色結晶である3−メトキシカルボニル−6,7−メチレンジオキシクマリン0.899gを得た(単離収率:95%)。なお、3−メトキシカルボニル−6,7−メチレンジオキシクマリンは、以下の物性値で示される新規な化合物である。
【0033】
1H−NMR(CDCl3,δ(ppm));3.805(3H,s)、6.218(2H,s)、7.166(1H,s)、7.410(1H,s)、8.691(1H,s)
CI−MS(m/e);249(MH+)
元素分析;炭素57.85%、水素3.24%(理論値(C12H8O6);炭素58.07%、水素3.25%)。
【0034】
参考例2(3−メトキシカルボニル−6,7−ジヒドロキシクマリンの合成)
撹拌装置、温度計、滴下漏斗及びガス導入管を備えた内容積25mlのフラスコに、窒素雰囲気において、参考例1と同様な方法で合成した3−メトキシカルボニル−6,7−メチレンジオキシクマリン1000mg(4.03mmol)及びトルエン10mlを入れて混合し、この混合物を撹拌しながら三塩化リン170mg(1.21mmol)をゆるやかに滴下混合した。更に、この混合液を50℃まで昇温させた後、これに塩素ガスを3時間かけて0.4g/時間の供給量で供給しながら反応させた。次いで、この反応液を室温まで冷却し、これに氷水10gを加え、この反応液を再び50℃まで昇温して3時間加水分解反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却すると結晶が析出したので濾過し、水で洗浄した後に減圧下50℃で乾燥させ、黄色結晶である3−メトキシカルボニル−6,7−ジヒドロキシクマリン899mgが得られた(単離収率:94%)。
【0035】
参考例3(3−エトキシカルボニル−6,7−ジヒドロキシクマリンの合成)
参考例2において、原料を3−エトキシカルボニル−6,7−メチレンジオキシクマリン1000mg(3.82mmol)に変えたこと以外は、参考例2と同様に反応を行った。その結果、黄色結晶である3−エトキシカルボニル−6,7−ジヒドロキシクマリン904mgを得た(単離収率:95%)。なお、3−エトキシカルボニル−6,7−ジヒドロキシクマリンは、以下の物性値で示される新規な化合物である。
【0036】
1H−NMR(DMSO−d6,δ(ppm));1.289(3H,t,J=7.08Hz)、4.251(2H,q,J=7.08Hz)、6.761(1H,s)、7.170(1H,s)、8.547(1H,s)、8.609(1H,s)、9.00〜11.00(2H,brs)。
CI−MS(m/e);251(MH +)。
【0037】
参考例4(3−カルボキシ−6,7−ジヒドロキシクマリンの合成)
撹拌装置、温度計、滴下漏斗及びガス導入管を備えた内容積25mlのフラスコに、窒素雰囲気中において、3−カルボキシ−6,7−メチレンジオキシクマリン1000mg(4.29mmol)及びトルエン10mlを入れて混合し、この混合物を攪拌しながら三塩化リン1.38g(10.05mmol)をゆるやかに滴下混合した。更に、この混合液を50℃まで昇温させた後、これに塩素ガスを5.5時間かけて0.4g/時間の供給量で供給しながら反応させた。得られた反応液を室温まで冷却し、これに氷水10gを加え、この反応液を再び50℃まで昇温して0.5時間加水分解反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却すると結晶が析出したので濾過し、水で洗浄した後に減圧下50℃で乾燥させ、黄色結晶である3−カルボキシ−6,7−ジヒドロキシクマリン980mgを得た(単離収率:100%)。
【0038】
実施例1(3−メトキシカルボニル−6,7−クロロメチレンジオキシクマリンの合成)
撹拌装置、温度計、滴下漏斗及びガス導入管を備えた内容積25mlのフラスコに、窒素雰囲気中において、参考例1と同様な方法で合成した3−メトキシカルボニル−6,7−メチレンジオキシクマリン1000mg(4.03mmol)及びトルエン10mlを入れて混合し、この混合物を撹拌しながら三塩化リン170mg(1.21mmol)をゆるやかに滴下混合した。更に、この混合液を50℃まで昇温させた後、これに塩素ガスを4時間かけて0.4g/時間の供給量で供給しながら反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却すると結晶が析出したので濾過し、トルエン、n−ヘキサンの順で洗浄した後に減圧下25℃で乾燥させ、黄色結晶である3−メトキシカルボニル−6,7−クロロメチレンジオキシクマリン762mgを得た(単離収率:64%)。なお、3−メトキシカルボニル−6,7−クロロメチレンジオキシクマリンは、下記の物性値により特定される新規な化合物である。
【0039】
1H−NMR(CDCl3,δ(ppm));3.962(3H,s)、7.113(1H,s)、7.246(1H,s)、8.049(1H,s)、8.544(1H,s)。
CI−MS(m/e);283(MH+)。
【0040】
実施例2(3−エトキシカルボニル−6,7−クロロメチレンジオキシクマリンの合成)
実施例1において、原料を3−エトキシカルボニル−6,7−メチレンジオキシクマリン1000mg(3.82mmol)に変えたこと以外は、実施例1と同様に反応を行った。その結果、黄色結晶である3−エトキシカルボニル−6,7−クロロメチレンジオキシクマリン669mgを得た(単離収率:60%)。なお、3−エトキシカルボニル−6,7−クロロメチレンジオキシクマリンは、以下の物性値により特定される新規な化合物である。
【0041】
1H−NMR(DMSO−d6,δ(ppm));1.295(3H,t,J=7.08Hz)、4.272(2H,q,J=7.08Hz)、6.957(1H,s)、7.739(1H,s)、8.547(1H,s)、8.667(1H,s)。
【0042】
参考例5(アルコーリシス反応を用いる3−メトキシカルボニル−6,7−ジヒドロキシクマリンの合成)
撹拌装置、温度計、滴下漏斗及びガス導入管を備えた内容積25mlのフラスコに、窒素雰囲気において、参考例1と同様な方法で合成した3−メトキシカルボニル−6,7−メチレンジオキシクマリン1000mg(4.03mmol)、及びトルエン10mlを入れて混合し、この混合物を撹拌しながら三塩化リン166mg(1.21mmol)をゆるやかに滴下混合した。更に、この反応液を50℃まで昇温させた後、これに塩素ガスを3時間かけて0.4g/時間の供給量で供給しながら反応させた。得られた反応液を室温まで冷却し、これにメタノール10mlを加え、再び反応液を50℃まで昇温して3時間反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、これにジメチルホルムアミド10mlを加え均一溶液とした後、これを高速液体クロマトグラフィーを用い、絶対検量線法で定量したところ、この反応溶液中に3−メトキシカルボニル−6,7−ジヒドロキシクマリン894mgが含まれていることが確認された(収率:94%)。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、6,7−メチレンジオキシクマリン−3−カルボキシ化合物から、6,7−クロロメチレンジオキシクマリン−3−カルボキシ化合物を製造する方法に関するものである。本発明の6,7−クロロメチレンジオキシクマリン−3−カルボキシ化合物は、例えば、医薬品のとして有用な6,7−ジヒドロキシクマリン−3−カルボキシ化合物を製造する際の重要中間体である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1):
【化1】

(式(1)中、Rは、水素原子又はアルキル基を表す。)
で表される6,7−メチレンジオキシクマリン−3−カルボキシ化合物に、分子状塩素を、塩素化合物の存在下に反応させることを特徴とする、下記一般式(2):
【化2】

(式(2)中、Rは、前記と同様である。)
で表される6,7−クロロメチレンジオキシクマリン−3−カルボキシ化合物の製造方法。
【請求項2】
下記一般式(2):
【化3】

(式(2)中、Rは、前記と同様である。)
で表される6,7−クロロメチレンジオキシクマリン−3−カルボキシ化合物。

【公開番号】特開2009−256376(P2009−256376A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−182199(P2009−182199)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【分割の表示】特願2003−62041(P2003−62041)の分割
【原出願日】平成15年3月7日(2003.3.7)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】