説明

3−アルコキシプロパン−1−オールの製造法

本発明の対象は、一般式Iの3−アルコキシプロパン−1−オールを、クロム及びニッケル不含の触媒上で、一般式II[式中、基R1及びR2及びR3、R4及びR5は、互いに無関係に、1以上のC1〜C20−アルコキシ基により置換されているか又は鎖中の1以上の酸素原子により中断されていることができる直鎖又は分枝鎖のC1〜C20−アルキル基、C6〜C20−アリール、1以上のC1〜C20−アルコキシ基により置換されているか又はアルキル鎖中の1以上の酸素原子により中断されていることができるC7〜C20−アリールアルキル、1以上のC1〜C20−アルコキシ基により置換されているか又はアルキル鎖中の1以上の酸素原子により中断されていることができるC7〜C20−アルキルアリール、1以上のC1〜C20−アルコキシ基により置換されていてよいC7〜C20−シクロアルキル基を意味することができ、かつ、R2、R3及びR4は、互いに無関係に、水素を意味することもできる]のエステルの接触水素化により製造するための方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、一般式I
【化1】

の3−アルコキシプロパン−1−オールを、クロム及びニッケル不含の触媒上で、一般式II
【化2】

[式中、
基R1及びR2及びR3、R4及びR5は、互いに無関係に、1以上のC1〜C20−アルコキシ基により置換されているか又は鎖中の1以上の酸素原子により中断されていることができる直鎖又は分枝鎖のC1〜C20−アルキル基、C6〜C20−アリール、1以上のC1〜C20−アルコキシ基により置換されているか又はアルキル鎖中の1以上の酸素原子により中断されていることができるC7〜C20−アリールアルキル、1以上のC1〜C20−アルコキシ基により置換されているか又はアルキル鎖中の1以上の酸素原子により中断されていることができるC7〜C20−アルキルアリール、1以上のC1〜C20−アルコキシ基により置換されていてよいC7〜C20−シクロアルキル基を意味することができ、かつ、R2、R3及びR4は、互いに無関係に、水素を意味することもできる]
のエステルの接触水素化により製造するための方法である。
【0002】
3−アルコキシプロパノールは需要の多い溶剤であり、更には、作用物質のための構成単位として多方面にわたって使用可能である。
【0003】
3−アルコキシプロパノールの製造のために、通常C3構成単位から出発する種々の方法が公知である。
【0004】
JP−A−2001247503号から、アリルアルコールへのアルコールのZrO2触媒による付加は公知であるが、しかしながらこのZrO2触媒による付加は、不十分な変換率及び不十分な選択率しか進行しない。
【0005】
JP−A−2004196783号に記載された相応するジオールのエーテル化は、化学量論量の塩基を必要とするか、又はモノエーテルへの変換率及び選択率が不十分である。
【0006】
更に、アクロレインを触媒の存在下にまずアルコキシル化し、その際、3−アルコキシプロピオンアルデヒドを形成し、その後、前記アルデヒドを水素化触媒の存在下に水素化し、3−アルコキシプロパノールに変換することは公知である。例えばEP−A1085003号では、前記水素化のために、ニッケル触媒が特に有効でありかつ廉価であると推奨されている。前記方法は、触媒活性元素が、特にラネーニッケル触媒を使用する際に、少量で、可溶性化合物の形で生成物流を汚染するため、付加的な後処理工程が必要であるという欠点を有する。ニッケル触媒及びアクロレインの使用に対しては、物質の毒性に基づき付加的な懸念がある。工業規模での製造のためには、特に安全対策が必要である。
【0007】
例えばEP−A810194号に記載されている置換されていてもよい1,3−ジオキサンの接触水素化は、確かにニッケル触媒の使用なしで行うことができるが、しかしながら、達成可能な変換率及び選択率に関しては満足し得ない。
【0008】
更に、Mozingo及びFolkersは、J. Am. Chem. Soc. 1948, 70, 227-229において、3−エトキシプロピオン酸エチルをメタノール中で亜クロム酸銅触媒上で290〜438バールで水素化し、3−エトキシプロパノール及びエタノールに変換することを記載している。高額な研究費を必要とする高い反応圧に加えて、毒性が公知であるクロム含有触媒の使用も不利である。
【0009】
従来技術から出発して、本発明の課題は、3−アルコキシプロパン−1−オールを、上記の欠点が生じることなく良好な変換率及び良好な選択率で製造することができ、かつ、毒物学に問題のある物質を使用せずに、技術的に容易に実現可能でありかつ全般的に適用可能である、即ち大工業的な多目的装置においても実施可能である方法を提供することであった。
【0010】
一般式I
【化3】

の3−アルコキシプロパン−1−オールを、クロム及びニッケル不含の触媒上で、一般式II
【化4】

[式中、
基R1及びR2及びR3、R4及びR5は、互いに無関係に、1以上のC1〜C20−アルコキシ基により置換されているか又は鎖中の1以上の酸素原子により中断されていることができる直鎖又は分枝鎖のC1〜C20−アルキル基、C6〜C20−アリール、1以上のC1〜C20−アルコキシ基により置換されているか又はアルキル鎖中の1以上の酸素原子により中断されていることができるC7〜C20−アリールアルキル、1以上のC1〜C20−アルコキシ基により置換されているか又はアルキル鎖中の1以上の酸素原子により中断されていることができるC7〜C20−アルキルアリール、1以上のC1〜C20−アルコキシ基により置換されていてよいC7〜C20−シクロアルキル基を意味することができ、かつ、R2、R3及びR4は、互いに無関係に、水素を意味することもできる]
のエステルの接触水素化により製造するための方法が見出された。
【0011】
本発明による方法によって、アクリル酸エステルへのアルコールの付加により得られる一般式IIの相応するエステルから3−アルコキシプロパン−1−オールへと、良好な変換率で選択的に変換することが可能となる。前記方法は、特別な安全措置なしに、種々の生成物の製造に利用される大工業的な装置においても実施される。
【0012】
本発明による水素化用触媒は、均一系又は不均一系の金属含有触媒であってよく、その際、金属は元素状か又は化合物の形で存在し;クロム及びニッケルを含有しない。
【0013】
有利に、使用可能な触媒は、元素周期律表の第7族、第8族、第9族、第10族、第11族又は第14族からの少なくとも1の金属を含有する。更に有利に、本発明により使用可能な触媒は、Re、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu及びAuからなる群から選択された少なくとも1の元素を含有する。特に有利に、本発明により使用可能な触媒は、Pd、Pt、Ru及びCuからなる群から選択された少なくとも1の元素を含有する。特に有利に、本発明により使用可能な触媒は水素化活性成分としてCuを含有する。
【0014】
水素化活性成分としてCuを含有する特に有利な触媒は、US特許5,403,962号又はWO2004/85356号の開示に従って製造することができ、前記開示はここで明確に参照により取り込まれる。
【0015】
従って特に有利に、WO2004/85356号から公知であり、かつ、
(i)酸化銅、酸化アルミニウム、及び、ランタン、タングステン、モリブデン、チタン又はジルコニウムの酸化物のうち少なくとも1つを含む酸化材料を準備し、
(ii)前記酸化材料に、粉末状の金属銅、銅フレーク、粉末状のセメント又はグラファイト又はこれらの混合物を添加し、かつ
(iii)(ii)から得られた混合物を成形し、成形体とする
という方法に従って製造可能である触媒成形体が使用される。
【0016】
ランタン、タングステン、モリブデン、チタン又はジルコニウムの酸化物のうち、酸化ランタンが有利である。
【0017】
WO2004/85356号に開示されている触媒は特に有利であり、前記開示はここで明確に取り込まれるものとし、その際、酸化材料は、か焼後の酸化材料の全質量に対して、
(a)50≦x≦80質量%、有利に55≦x≦75質量%の範囲内の割合を有する酸化銅、
(b)15≦y≦35質量%、有利に20≦y≦30質量%の範囲内の割合を有する酸化アルミニウム、及び
(c)2≦z≦20質量%、有利に3≦z≦15質量%の範囲内の割合を有する、ランタン、タングステン、モリブデン、チタン又はジルコニウムの酸化物のうち少なくとも1つ
をそれぞれ含み、その際、80≦x+y+z≦100、特に95≦x+y+z≦100が成り立つ。
【0018】
更に、元素周期律表の第8族、第9族又はニッケルを除く第10族の少なくとも1の元素を含有する均一系触媒は好適である。Ru、Rh及び/又はIrを含有する均一系触媒は更に有利である。
【0019】
上記元素の化合物を使用する場合、例えば、それぞれの金属の塩、例えばハロゲン化物、酸化物、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、アルコキシド及び酸化アリール、カルボン酸塩、アセチルアセトン酸塩又は酢酸塩が好適である。更に、前記塩は、錯化リガンドで変性されていてよい。本発明により使用される触媒は、有利に、酸素、硫黄、窒素又はリンを含有する1以上の錯化リガンドを含有する。有利に、触媒は、それぞれの金属のハロゲン化物、酸化物、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、アルコキシド及び酸化アリール、カルボン酸塩、アセチルアセトン酸塩又は酢酸塩、並びに、CO、CS、有機置換されていてよいアミノリガンド、有機置換されていてよいホスフィンリガンド、アルキル−、アリル−、シクロペンタジエニル−及び/又はオレフィンリガンドを含有する金属の化合物から選択されている。
【0020】
例えば、ここで、RhCl(TPP)3又はRu44(CO)12が挙げられる。Ruを含有する均一系触媒は特に有利である。例えば、US5,180,870号、US5,321,176号、US5,177,278号、US3,804,914号、US5,210,349号、US5,128,296号及びD. R. Fahey著J. Org. Chem. 38 (1973) 第80〜87頁に記載されているような均一系触媒が使用され、前記文献のこれに関する開示は、本願の文脈に完全に取り込まれる。かかる触媒は、例えば(TPP)2(CO)3Ru、[Ru(CO)43、(TPP)2Ru(CO)2Cl2、(TPP)3(CO)RuH2、(TPP)2(CO)2RuH2、(TPP)2(CO)2RuClH又は
(TPP)3(CO)RuCl2である。
【0021】
特に、上記の少なくとも1の金属を、そのままで、ラネーニッケル触媒として、及び/又は、通常の担体上に施与して含むことができる少なくとも1の不均一系触媒を使用するのが好適である。有利な担体材料は、例えば活性炭又は酸化物、例えば酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン又は酸化ジルコニウムである。特に担体材料としてベントナイトも挙げられる。2以上の金属を使用する場合、これらは別個にか又は合金として存在することができる。ここで、少なくとも1の金属をそのままでかつ少なくとも1の他の金属をラネー触媒として、又は、少なくとも1の金属をそのままでかつ少なくとも1の他の金属を少なくとも1の担体上に施与して、又は、少なくとも1の金属をラネー触媒としてかつ少なくとも1の他の金属を少なくとも1の担体上に施与して、又は、少なくとも1の他の金属をそのままでかつ少なくとも1の他の金属をラネー触媒としてかつ少なくとも1の他の金属を少なくとも1の担体上に施与して使用することができる。
【0022】
使用される触媒は、例えば、いわゆる沈降触媒であってもよい。かかる触媒は、その触媒活性成分をその塩溶液から、殊にその硝酸塩及び/又は酢酸塩の溶液から、例えばアルカリ金属−及び/又はアルカリ土類金属水酸化物−及び/又は炭酸塩溶液の添加により、例えば難溶性水酸化物、酸化物水和物、塩基性塩又は炭酸塩として沈殿させ、引き続き、得られた沈殿物を乾燥させ、次いでこの沈殿物を一般に300〜700℃、特に400〜600℃でか焼することにより、相応する酸化物、混合酸化物及び/又は混合原子価酸化物に変換し、該酸化物を水素又は水素含有ガスで一般に50〜700℃、特に100〜400℃の範囲内で処理することにより、より酸化数の低い当該金属及び/又は酸化化合物へと還元し、かつ実際の触媒活性形へと変換することによって製造することができる。この場合通常、水がもはや形成されなくなるまで還元を行う。担体材料を含有する沈降触媒を製造する際に、触媒活性成分の沈降を当該担体材料の存在下に行うことができる。触媒活性成分は、有利に、担体材料と同時に、当該塩溶液から沈殿させることができる。
【0023】
有利に、水素化を触媒する金属又は金属化合物を担体材料上に堆積された状態で含む水素化触媒が使用される。
【0024】
触媒活性成分以外に更に担体材料をも含む上記の沈降触媒以外に、本発明による方法のために、一般に、接触水素化作用を有する成分が例えば担体材料への含浸により施与されている担体材料が好適である。
【0025】
触媒活性金属を担体に施与する方法は、通常は重要ではなく、種々の様式で行うことができる。触媒活性金属は、例えば、当該元素の塩又は酸化物の溶液又は懸濁液を含浸させ、乾燥し、引き続き、金属化合物を、還元剤、有利に水素又は錯体水素化物を用いてより酸化数の低い当該金属又は化合物へと還元することによって前記担体材料上に施与されることができる。触媒活性金属を担体に施与するためのもう1つの可能性は、担体に、容易に熱分解可能な触媒活性金属の塩、例えば硝酸塩、又は、容易に熱分解可能な触媒活性金属の錯体、例えばカルボニル−又はヒドリド−錯体の溶液を含浸させ、そのように含浸させた担体を300〜600℃の範囲内の温度に加熱して、吸着した金属化合物を熱分解することである。この熱分解は有利に保護ガス雰囲気下に行われる。好適な保護ガスは、例えば窒素、二酸化炭素、水素又は希ガスである。更に、触媒活性金属を、触媒担体上に、蒸着又は火炎溶射により堆積させることができる。この担持触媒中での触媒活性金属の含分は、原則的に、本発明による方法の成功にとって重要でない。一般に、この担持触媒中での触媒活性金属の含分が高い場合には、この含分が低い場合に比べて空時収率は高くなる。
【0026】
一般に、触媒活性金属の含分が、触媒の全質量に対して0.1〜90質量%の範囲内、有利に0.5〜80質量%の範囲内である担持触媒が使用される。この含分の数値は、担体材料を含めた全触媒に対するものであるが、種々の担体材料は極めて種々の比重及び比表面積を有しているため、本発明による方法の結果に不利な影響を及ぼさない限り、前記数値を下回るか又は上回ることも考えられる。当然のことながら、複数の触媒活性金属がそれぞれの担体材料上に施与されていてもよい。更に、触媒活性金属は、例えばDE−OS2519817号又はEP0285420A1号の方法によって担体上に施与されてよい。上記刊行物に記載の触媒中では、触媒活性金属が合金として存在しており、その際、この合金は、例えば上記金属の塩又は錯体を含浸させた担体材料を熱処理及び/又は還元することにより製造されたものである。
【0027】
沈降触媒の活性化のみならず、担持触媒の活性化も、現場で、反応の開始時に、存在する水素により行うことができる。有利に、前記触媒はその使用前に別個に活性化される。担体材料として、一般に、亜鉛、アルミニウム及びチタンの酸化物、二酸化ジルコニウム、二酸化ケイ素、酸化ランタン、クレー、例えばモンモリロナイト、ケイ酸塩、例えばケイ酸マグネシウム又はケイ酸アルミニウム、ゼオライト、例えば構造タイプZSM−5又はZSM−10のゼオライト、又は活性炭を使用することができる。有利な担体材料は、酸化アルミニウム、二酸化チタン、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウム、酸化ランタン及び活性炭である。当然のことながら、種々の担体材料の混合物を、本発明による方法において使用可能な触媒のための担体として使用することもできる。触媒の酸性、又は特に塩基性の特性を狙い通りに調節するための添加物として、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属含有化合物が、有利に酸化物として含まれていてもよい。可能な触媒は、更に、活性成分として酸化亜鉛又は酸化ジルコニウムを含む触媒である。
【0028】
本発明による方法において、不均一系触媒は、例えば懸濁触媒として及び/又は固定層触媒として使用することができる。
【0029】
例えば本発明による方法の範囲内で、水素化を少なくとも1の懸濁触媒を用いて実施する場合、有利に、少なくとも1の撹拌反応器中で、又は少なくとも1の気泡塔中で、又は少なくとも1の充填気泡塔中で、又は2以上の同じか又は異なる反応器からなる組合せ物中で水素化される。
【0030】
"異なる反応器"という概念は、異なる反応器型のみならず、例えばその形状、例えばその体積及び/又はその横断面及び/又は反応器中の水素化条件が異なる同種の反応器をも表す。
【0031】
水素化の際の触媒として、例えば不均一系触媒が懸濁触媒として使用される場合、前記触媒は本発明の範囲内で有利に少なくとも1の濾過工程により分離される。このように分離された触媒を、水素化に返送するか、又は少なくとも1の任意の他の方法に供給することができる。同様に、触媒を後処理し、例えば触媒中に含まれる金属を回収することも可能である。
【0032】
特に有利に、本発明による方法の範囲内で、水素化は少なくとも1の固定層触媒を用いて実施される。そのために、有利に少なくとも1の管型反応器、例えば少なくとも1のシャフト型反応器及び/又は少なくとも1の管束型反応器が使用され、その際、個々の反応器を昇流運転方式又は流下運転方式で運転することができる。2以上の反応器を使用する場合、少なくとも1は昇流運転方式で運転され、少なくとも1は流下運転方式で運転される。
【0033】
一実施態様において、水素化すべき溶液はシングルパスで触媒層にポンプ搬送される。本発明による方法の別の実施態様において、生成物の一部は反応器を導通した後に生成物流として連続的に排出され、かつ場合により第二の反応器を導通する。生成物の他の部分(循環流)は、新鮮な出発材料(フィード流)と共に反応器に再度供給される。この液体循環は特に熱排出に役立つ。前記方法様式は、循環方式とも呼称される。本発明による方法において、有利に、フィード流対循環流の比は3:1〜1:40、特に有利に2:1〜1:10に調節される。
【0034】
場合により、液体の循環流の他に、排出物の気相の一部も相分離の後に返送することができ、即ち、フィード及び新鮮水素ガスと任意の箇所で反応器入口前で混合することができる。これは、排出物の液相を第二の別個のポンプを介して分離した後に、又は液体循環流と一緒にポンプを介して実現することができる。フィード流:循環流=3:1〜1:10の特に有利な少量の液体の循環比の場合には、気相(循環ガス)の返送が特に有利である。
【0035】
任意の方法における使用の前に、例えば本発明による方法への返送の前に、少なくとも1の均一系触媒のみならず少なくとも1の不均一系触媒をも、必要に応じて、少なくとも1の好適な方法により再生することができる。
【0036】
水素化のためには、ペレット、リング、円筒体、球体、三葉状体(Trilobes)又は押出物の形の成形体で存在する不均一系触媒が有利である。
【0037】
不均一系触媒は、必要な場合には、一般に、その使用前に有利に水素で活性化される。このための方法は当業者に公知である。
【0038】
本発明による接触水素化は、10〜400バール、有利に120〜280バール、特に有利に130〜250バールで、かつ100〜300℃、有利に120〜200℃、特に有利に130〜190℃の温度で実施される。
【0039】
本発明による水素化のための出発材料として使用されるエステルIIは、自他公知の方法により製造可能である。例えば、エステルIIは、式R1−OHのアルコールを式III
【化5】

[式中、
基R1及びR2及びR3、R4及びR5は、互いに無関係に、1以上のC1〜C20−アルコキシ基により置換されているか又は鎖中の1以上の酸素原子により中断されていることができる直鎖又は分枝鎖のC1〜C20−アルキル基、C6〜C20−アリール、1以上のC1〜C20−アルコキシ基により置換されているか又はアルキル鎖中の1以上の酸素原子により中断されていることができるC7〜C20−アリールアルキル、1以上のC1〜C20−アルコキシ基により置換されているか又はアルキル鎖中の1以上の酸素原子により中断されていることができるC7〜C20−アルキルアリール、1以上のC1〜C20−アルコキシ基により置換されていてよいC7〜C20−シクロアルキル基を意味することができ、かつ、R2、R3及びR4は、互いに無関係に、水素を意味することもできる]
のアクリル酸エステルに付加することにより製造することができる。
【0040】
アクリル酸エステルへのアルコールの付加は、不活性溶剤、例えばテトラヒドロフラン又はエチレングリコールジメチルエーテル中で実施することができる。これは特に、使用されるアルコールR1−OH又はアクリル酸エステルIIIが付加反応条件下で液状でない場合に必要である。
【0041】
本発明による水素化のための出発材料IIを製造するための有利な変法において、付加反応の際に、アクリル酸エステルの量に対して0.001〜10モルの、反応混合物中に可溶な金属アルコラート、例えばナトリウムメチラートを触媒として使用することができる。特に有利な実施態様において、金属アルコラートのアニオンは、付加すべきアルコールR1−OHのアニオンに相応する。
【0042】
もう1つの有利な実施態様において、アクリル酸エステルIII及びアルコールR1−OHは、基R5及びR1が同じ基を意味するように選択される。このようにして、エステル交換反応及びそれに伴うアルコールR5−OHの遊離により生じるIIの収率の低下を回避することができる。
【0043】
本発明の有利な変法において、エステルIIを、物質の自他公知の精製方法、例えば蒸留により精製するのではなく、付加反応からの反応混合物を、付加触媒の分離ないし中和後に、エステルIIを更に精製することなく水素化において直接使用する。
【0044】
エステルIIの製造のために塩基性又は酸性の均一系触媒が使用された場合、この触媒は有利に有機酸又は無機酸、例えばギ酸、酢酸又は他のモノカルボン酸又はジカルボン酸又は有機塩基又は無機塩基で中和され、かつ/又は場合により濾別される。更に、付加反応のために使用された触媒を、好適なイオン交換体、特に市販のアニオン−又はカチオン交換樹脂を用いて除去することもできる。
【0045】
不均一系触媒を使用する場合、反応混合物を、本発明による水素化において出発材料として使用する前に濾過しなければならない。
【0046】
本発明による水素化法において、アルコキシプロパン−1−オールの他に、特にn−プロパノールが、分解により生じたアクリル酸エステルの水素化によって副生成物として形成され、このn−プロパノールは蒸留により容易に分離することができ、かつ再使用又は他の使用が可能である。
【0047】
本発明を以下の実施例により詳説するが、これに限定されるものではない。
【実施例】
【0048】
実施例1:6−エチル−4−オキサデカン−1−オールの製造
60℃で、2−エチルヘキサノール1670gをナトリウム640mgと反応させた。均質な溶液が形成した後に、6時間以内に、2−エチルヘキシルアクリレート1160gを供給した。60℃で更に6時間経過した後、反応混合物を酸性カチオン交換体(Darmstadt在のMerck社製Amberlite IR-120)に導通させ、その際、前記の酸性カチオン交換体は、新たに2N硫酸で再生し、かつメタノールで洗浄し、次いで2−エチルヘキサノールで洗浄したものである。2−エチルヘキサノール中の2−エチルヘキシル−[6−エチル−4−オキサデカノエート]の67質量%溶液が得られた(収率96%)。
【0049】
WO−A2004/85356号の実施例1に従って製造された3×3mmのペレット状の、組成:CuO57%/Al23 28.5%/La23 9.5%/Cu 5%の銅触媒80gを、水素流中で180℃で還元した。引き続き、180℃、200バールで、上記の通り製造した2−エチルヘキシル−[6−エチル−4−オキサデカノエート]を含有する反応混合物の供給速度12g/hで、反応器入口への排出物返送量80g/hで、かつ水素供給速度40NL/hで水素化した。排出物は、変換率99%で、2−エチルヘキサノール68質量%、6−エチル−4−オキサデカン−1−オール24質量%(収率59%)、プロパノール5質量%、2−エチルヘキシル−[6−エチル−4−オキサデカノエート]1質量%並びに他の化合物合計で2質量%を含有していた。
【0050】
実施例2:3−メトキシプロパン−1−オールの製造
60℃で、メタノール1160g及びメタノール中のナトリウムメチラート30%溶液5gを6時間以内でアクリル酸メチル1160gと混合し、引き続き、この混合物を60℃で2時間更に撹拌した。ガスクロマトグラフィーにより、99%を上回るアクリル酸メチル変換率(収率99%に相当)を確認した。この混合物を、ナトリウムメチラートの量に対して当量の酢酸で室温で中和し、反応溶液を、連続的な水素化のためのフィードとして直接使用した。
【0051】
WO−A2004/85356号の実施例1に従って製造された3×3mmのペレット状の、組成:CuO57%/Al23 28.5%/La23 9.5%/Cu 5%の銅触媒80gを、水素流中で180℃で還元した。引き続き、装置を以下の条件下に運転した:反応器中の温度170℃、圧力200バール、上記の通り製造されたエステルを含有する反応混合物の供給速度16g/h、反応器入口への排出物返送量80g/h及び水素供給速度40NL/h。排出物は、変換率99%で、メタノール57質量%、3−メトキシプロパン−1−オール27質量%(収率51%に相当)、プロパノール14質量%、3−メトキシプロピオン酸メチル1質量%並びに他のエステル合計で1質量%を含有していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式I
【化1】

の3−アルコキシプロパン−1−オールを、クロム及びニッケル不含の触媒上で、一般式II
【化2】

[式中、
基R1及びR2及びR3、R4及びR5は、互いに無関係に、1以上のC1〜C20−アルコキシ基により置換されているか又は鎖中の1以上の酸素原子により中断されていることができる直鎖又は分枝鎖のC1〜C20−アルキル基、C6〜C20−アリール、1以上のC1〜C20−アルコキシ基により置換されているか又はアルキル鎖中の1以上の酸素原子により中断されていることができるC7〜C20−アリールアルキル、1以上のC1〜C20−アルコキシ基により置換されているか又はアルキル鎖中の1以上の酸素原子により中断されていることができるC7〜C20−アルキルアリール、1以上のC1〜C20−アルコキシ基により置換されていてよいC7〜C20−シクロアルキル基を意味することができ、かつ、R2、R3及びR4は、互いに無関係に、水素を意味することもできる]
のエステルの接触水素化により製造するための方法。
【請求項2】
元素周期律表の第8族、第9族及びニッケルを除く第10族の金属の塩及び/又は酸素、硫黄、窒素又はリンを含有する1以上の錯化リガンドを含有する化合物である均一系触媒を使用する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
元素周期律表の第7族、第8族、第9族、ニッケルを除く第10族、第11族及び第14族から選択された少なくとも1の金属を含有する不均一系触媒を使用する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
触媒として、
(i)酸化銅、酸化アルミニウム、及び、ランタン、タングステン、モリブデン、チタン又はジルコニウムの酸化物のうち少なくとも1つを含む酸化材料を準備し、
(ii)前記酸化材料に、粉末状の金属銅、銅フレーク、粉末状のセメント、グラファイト又はこれらの混合物を添加し、かつ
(iii)(ii)から得られた混合物を成形し、成形体とする
という方法に従って製造可能である成形体を使用する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
酸化材料が、か焼後の酸化材料の全質量に対して、
(a)50≦x≦80質量%、有利に55≦x≦75質量%の範囲内の割合を有する酸化銅、
(b)15≦y≦35質量%、有利に20≦y≦30質量%の範囲内の割合を有する酸化アルミニウム、及び
(c)2≦z≦20質量%、有利に3≦z≦15質量%の範囲内の割合を有する、ランタン、タングステン、モリブデン、チタン又はジルコニウムの酸化物のうち少なくとも1つ
をそれぞれ含み、その際、80≦x+y+z≦100、特に95≦x+y+z≦100が成り立ち、その際、セメントは上記意味での酸化材料には分類されないものとする、請求項4記載の方法。
【請求項6】
100バール〜400バールの圧力でかつ100〜300℃の温度で液相中で水素化を行う、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
方法を循環運転方式で1:3〜40:1の循環:フィードの比で運転する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
出発材料として、式R1−OHのアルコールを式III
【化3】

[式中、
基R1及びR2及びR3、R4及びR5は、互いに無関係に、1以上のC1〜C20−アルコキシ基により置換されているか又は鎖中の1以上の酸素原子により中断されていることができる直鎖又は分枝鎖のC1〜C20−アルキル基、C6〜C20−アリール、1以上のC1〜C20−アルコキシ基により置換されているか又はアルキル鎖中の1以上の酸素原子により中断されていることができるC7〜C20−アリールアルキル、1以上のC1〜C20−アルコキシ基により置換されているか又はアルキル鎖中の1以上の酸素原子により中断されていることができるC7〜C20−アルキルアリール、1以上のC1〜C20−アルコキシ基により置換されていてよいC7〜C20−シクロアルキル基を意味することができ、かつ、R2、R3及びR4は、互いに無関係に、水素を意味することもできる]
のアクリル酸エステルに付加することにより製造され、かつ一般式IIのエステルを含む反応混合物を使用する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
式IIIのアクリル酸エステルへのアルコールR1−OHの付加を、触媒量の金属アルコラートの存在下に行う、請求項8記載の方法。
【請求項10】
金属アルコラートが、該金属アルコラートのアニオンが、付加すべきアルコールR1−OHのアニオンに相応するように選択されている、請求項8又は9記載の方法。
【請求項11】
式IIIのアクリル酸エステル及び式R1−OHのアルコールを使用し、その際、基R5及びR1が同じである、請求項8から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
エステルIIを含む反応混合物を、請求項1から5のいずれか1項記載の本発明による水素化において使用する前に精製しない、請求項8から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
エステルIIを含む反応混合物を、請求項1から5のいずれか1項記載の本発明による水素化において使用する前に、カチオン交換体で処理するか、又は有機酸又は無機酸で中和する、請求項8から12までのいずれか1項記載の方法。

【公表番号】特表2010−511006(P2010−511006A)
【公表日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−538675(P2009−538675)
【出願日】平成19年11月12日(2007.11.12)
【国際出願番号】PCT/EP2007/062194
【国際公開番号】WO2008/064991
【国際公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】