説明

3,7−ジアザ−ビシクロ[3.3.1]ノナン金属錯体の製造方法

3,7−ジアザ−ビシクロ[3.3.1]ノナン金属錯体の製造方法が特許請求され、該方法は、一つの工程において、配位子としての3,7−ジアザ−ビシクロ[3.3.1]ノナン化合物を、水性の金属(II)塩溶液と反応させる。本発明の本質は、溶媒としての水中で反応工程が遂行されることである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
次式(1)で表される3,7−ジアザ−ビシクロ[3.3.1]ノナン−配位子は、様々な用途で関心を集めている化合物である。とりわけ、その遷移金属錯体は、非常に有効な漂白触媒及び酸化触媒である。
【0002】
【化1】

【背景技術】
【0003】
洗剤及びクリーニング剤における漂白触媒としてのその使用は、中でも、国際公開第02/48301号(特許文献1)、米国特許出願公開第2003/0162681号明細書(特許文献2)及び国際公開第03/104234号(特許文献3)に特許請求されている。
【0004】
その鉄錯体の製造は、中でも、Inorg. Chimica Acta, 337 (2002) 407〜419(非特許文献1)において実験室規模で説明されている。欧州特許第0765381号(特許文献4)、同第0909809号(特許文献5)及び国際公開第02/48301号(特許文献6)のような特許明細書も、同様にそれら金属錯体の合成を示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第02/48301号
【特許文献2】米国特許出願公開第2003/0162681号明細書
【特許文献3】国際公開第03/104234号
【特許文献4】欧州特許第0765381号
【特許文献5】欧州特許第0909809号
【特許文献6】国際公開第02/48301号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Inorg. Chimica Acta, 337 (2002) 407 419
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
それら公知の合成は、アセトニトリルのような有機溶媒中でそのときどきの配位子を金属塩と反応させることによって遂行される。その際に、アルゴン又は窒素及び無水条件下で行われる。その時の収率は中庸でしかなく、40〜70%である。開示されている合成法は、最終生成物の単離に、精製するための多量の溶剤、例えば、メタノール、酢酸エステル、アセトン又はジクロロメタンの添加を必要とする。溶剤の選択及び厳しい無水条件(無水溶剤、アルゴン又は窒素による反応のブランケット)は、大規模での反応の際に問題およびコスト上昇を招く。
【0008】
それ故、本発明の課題は、これらの金属錯体を製造するための向上されたかつ簡素化された方法を見出すことである。驚くべきことに、配位子と金属塩との反応を水性溶液または懸濁液中で行うことができ、その際、所望の金属錯体が高い収率及び純度で得られることがここに見出された。
【0009】
それゆえ本発明の対象は、次式(2)で表される3,7−ジアザ−ビシクロ[3.3.1]ノナン金属錯体の製造方法である。
[M]Y (2)
(式中、Mは、次の金属:Mn(II)−(III)−(IV)、Cu(I)−(II)−(III)、Fe(II)−(III)−(IV)−(V)及びCo(I)−(II)−(III)を示し;
Lは、次式(1)で表される配位子、又はそのプロトン化形又は脱プロトン化形、
【0010】
【化2】

(式中、Rは、水素、ヒドロキシル、C−Cアルキル;Rは、C−Cアルキル、C−C10アリール、ピリジニル−C−C−アルキル、(CHn1N(CH(ここで、n1は好ましくは1〜10である。);Rは、C−Cアルキル、C−C10アリール;Rは、C−Cアルキル、Xは、C=O又はC(OH)であることができる。)を示し、
Zは、一価、二価又は三価のアニオン、又は中性分子から選択される、金属に一座、二座又は三座で配位できる、配位化合物、例えば、OH、NO、NO、S2−、RS、PO3−、HO、CO2−、ROH、Cl、Br、CN、ClO、RCOO、SO2−であり;
Yは、錯体の電荷を相殺するアニオンであり;
aは、1〜10、好ましくは1〜4の整数であり;
kは、1〜10の整数であり;
nは、1〜10、好ましくは1〜4の整数であり;
mは、1〜20、好ましくは1〜8の整数である。)
【0011】
上記の式(2)における対イオンYは、配位子L、金属M及び配位種Zによって生じる錯体の電荷zを相殺する。好ましい対イオンは、例えば、RSO、SO2−、NO、Cl、Br、I、ClO、BF、PF、RSOである。
【0012】
本発明による方法は、非常に大まかに言うと、配位子を水中に溶解するか又は懸濁し、好ましくは懸濁し、そして金属塩と錯化させることからなる。金属塩は、金属としての金属M及びアニオンとしてのアニオンYを含む。金属塩としては、好ましくは金属(II)塩が使用され、塩化Fe(II)が特に好ましく使用される。特に好ましくは、化合物、鉄(1+),クロロ[ジメチル9,9−ジヒドロキシ−3−メチル−2,4−ジ(2−ピリジニル−N)−7−[(2−ピリジニル−N)メチル]−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン−1,5−ジカルボキシレート−N3,n7]−,クロリド(1:1)の製造である。
【0013】
配位子Lを錯化するには、金属塩を、好ましくは固体としてか、あるいは水性の金属塩溶液として、配位子Lの水性の溶液又は懸濁液に加える。
【0014】
本発明の方法は、好ましくは室温で実施される。
【0015】
合成は、好ましくは次のように行われる。配位子(1)を、30〜60分以内で、強く混合しながら水中に懸濁し、そして撹拌下で、好ましくは30重量%Fe(II)塩の濃度を有する当モル量の水性の鉄(II)塩溶液と混ぜ合わせる。その際に、溶解過程における水と配位子との重量比は、およそ4:1〜1:1、好ましくは1.6:1である。配位子と鉄(II)塩とのモル比は、約0.9:1.2〜1.2:0.9、好ましくは1:1.05である。室温で3〜5時間撹拌した後、その溶液を、噴霧造粒又はろ過及び乾燥により分離する。収率は、純度95〜98%で約98%である。
【0016】
本発明の方法は水中で行われる。従来技術の方法と比較して、本発明方法の場合には、より高い収率が達成される。それに加えて、本発明の方法は、有機溶剤無しで非常に費用効率よく働く。
【0017】
以下の例は、それらに制限されることなく本発明をより詳細に説明するものである。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0018】
例1:
反応容器中に、水を33.6kg(2,000モル)及び2,4ジ−(2−ピリジル)−3−メチル−7−(ピリジン−2−イルメチル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン−9−オン−1,5−ジメチル−ジカルボキシレート(N2Py3o)を20.6kg(40モル)を装填し、そして30分以内で均質な溶液になるまで撹拌した。反応容器を閉じて、窒素を充填した。窒素で不活性化した後、水性の塩化鉄(II)溶液(30.2%濃度)17kg(40.6モル)を30分以内で加え、そしてその滴下漏斗を水5kgで後洗浄した。この反応溶液を室温で5時間撹拌し、その後、好ましくは噴霧乾燥法により乾燥させた。この方法で、鉄(1+),クロロ[ジメチル 9,9−ジヒドロキシ−3−メチル−2,4−ジ(2−ピリジニル−ΚN)−7−[(2−ピリジニル−ΚN)メチル]−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン−1,5−ジカルボキシレート−ΚN3,Κn7]−,クロリド(1:1)の名称の化合物が得られた。
【0019】
この生成物は、>95%の純度(HPLC)及び28.2kgの収量(98%)の黄色い粉末として得られた。
【0020】
例2:
例1におけるのと同じ3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン化合物64.45g(0.125モル)を粉末化し、そしてこの形態で水107.5g(5.97モル)中に懸濁させた。それから、30.2%濃度の塩化鉄(II)溶液52.28gを加え、そしてその反応混合物を3時間室温で撹拌した。生成物の微細な懸濁物は、ここで、ろ過及び真空乾燥棚中での乾燥によって、粉末状の黄色い最終生成物にした。この方法で、>95%の純度(HPLC)で81gの収量(98%)で、例1におけるのと同じ生成物が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式(2)で表される3,7−ジアザ−ビシクロ[3.3.1]ノナン−金属錯体の製造方法、
[M]Y (2)
(式中、
Mは次の金属、Mn(II)−(III)−(IV)、Cu(I)−(II)−(III)、Fe(II)−(III)−(IV)−(V)及びCo(I)−(II)−(III)を示し;
Lは、次式(1)で表される配位子、又はそのプロトン化形又は脱プロトン化形、
【化1】

(式中、Rは、水素、ヒドロキシル、C−Cアルキル;Rは、C−Cアルキル、C−C10アリール、ピリジニル−C−C−アルキル、(CHn1N(CH;Rは、C−Cアルキル、C−C10アリール;Rは、C−Cアルキル、Xは、C=O又はC(OH)を意味する。)を示し;
Zは、一価、二価又は三価のアニオン、又は中性分子から選択される、金属に一座、二座又は三座で配位できる、配位化合物、例えば、OH、NO、NO、S2−、RS、PO3−、HO、CO2−、ROH、Cl、Br、CN、ClO、RCOO、SO2−であり;
Yは、錯体の電荷を相殺するアニオンであり;
aは、1〜10、好ましくは1〜4の整数であり;
kは、1〜10の整数であり;
nは、1〜10、好ましくは1〜4の整数であり;
mは、1〜20、好ましくは1〜8の整数である。)、
であって、該配位子Lを水中に溶解または懸濁し、そして金属塩で錯化することを特徴とする、上記の方法。
【請求項2】
前記金属塩が、塩化Fe(II)であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
鉄(1+),クロロ[ジメチル9,9−ジヒドロキシ−3−メチル−2,4−ジ(2−ピリジニル−N)−7−[(2−ピリジニル−N)メチル]−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン−1,5−ジカルボキシレート−N3,N7]−,クロリドが製造されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記配位子Lを錯化させるために、前記金属塩を固体としてかあるいは水性の金属塩溶液として、該配位子Lの水性の溶液又は懸濁液に加えることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
室温で遂行されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つに記載の方法。

【公表番号】特表2012−512210(P2012−512210A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541179(P2011−541179)
【出願日】平成21年12月12日(2009.12.12)
【国際出願番号】PCT/EP2009/008907
【国際公開番号】WO2010/069524
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(398056207)クラリアント・ファイナンス・(ビーブイアイ)・リミテッド (182)
【Fターム(参考)】