説明

4−アミノメチル安息香酸の製造方法

【課題】4−アミノメチル安息香酸の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、4−カルボキシルベンズアルデヒド又はそのアルキルエステル(メチル4−ホルミル安息香酸塩)を用意する段階と、前記4−カルボキシルベンズアルデヒド又はそのアルキルエステル(メチル4−ホルミル安息香酸塩)をヒドロキシアミンと反応させてオキシム化する段階と、前記オキシム化して得られた4−カルボキシルベンズアルデヒドオキシム又はそのアルキルエステルオキシムを水酸化ナトリウム水溶液中で水素を通じて接触還元する段階とを含んでなることを特徴とする、4−アミノメチル安息香酸の製造方法を提供することにより、メチル4−ヒドロキシイミノメチル安息香酸塩を原料としてアルカリの存在下で反応させるので、比較的低い水素圧力の使用が可能であり、精製過程も簡単であって低費用で高収率の4−アミノメチル安息香酸の製造が可能であるという利点を持つ

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4−アミノメチル安息香酸及びその塩(以下、「4−アミノメチル安息香酸」という)の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
4−アミノメチル安息香酸は、重合体製造用モノマー、又は抗プラスミン薬製造用原料及び胃潰瘍治療剤としてのセトラキサート(Cetraxate)の主要原料として採用される。
【0003】
従来の4−アミノメチル安息香酸及びその低級アルキルエステルの製造法としては、メチル4−ホルミル安息香酸塩をアンモニアの存在下でラネーニッケル触媒を用いて接触還元する方法、又はメチル4−シアノ安息香酸をアンモニアの存在下でラネーニッケル触媒の下に接触還元する方法、又はメチル4−クロロメチル安息香酸塩と液体アンモニアとを反応させる方法などが使われてきた。
【0004】
ところが、このような方法は、2級アミン(アミノ−ジ−4−メチル安息香酸)の発生が多く、収率が低く、特に4−シアノ安息香酸は容易に製造することができない或いは収率が低いという問題点がある。さらに、物性上、毒性が高く、公害を発生させる問題点がある。よって、従来の技術を代替すべき、低い毒性を有し、公害を起さず且つ高い収率を達成することが可能な4−アミノメチル安息香酸の製造方法が求められている。
【0005】
特許文献1では、4−カルボキシベンズアルデヒド又はそのアルキルエステルを原料とし、これをオキシム化して得たオキシムをアンモニアまたは無水酢酸の存在下でニッケル触媒還元して4−アミノメチル安息香酸又は4−アセチルアミノ安息香酸を製造することにより、前述した欠点を防止することができることを開示している。
【0006】
ところが、特許文献1に開示された方法は、アンモニアや無水酢酸、酢酸などの共存の下に触媒還元反応を行い、20気圧以上の高圧で水素反応を行うことにより、反応器の材質が限定される問題と、精製過程における過度な費用発生の問題がある。さらに、高圧により費用が高く、安定した操業が難しいという問題点を持つ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開1981−12350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の目的は、低い毒性を有し、公害を起さず且つ高い収率を達成することが可能な新規の4−アミノメチル安息香酸の製造方法を提供することにある。本発明において、4−アミノメチル安息香酸は、4−アミノメチル安息香酸及びその塩を含む意味で使用される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、4−カルボキシルベンズアルデヒド又はそのアルキルエステル(メチル4−ホルミル安息香酸塩)を用意する段階と、前記4−カルボキシルベンズアルデヒド又はそのアルキルエステル(メチル4−ホルミル安息香酸塩)をヒドロキシアミンと反応させてオキシム化する段階と、前記オキシム化して得られた4−カルボキシルベンズアルデヒドオキシム又はそのアルキルエステルオキシムを水酸化ナトリウム水溶液中で水素を通じて接触還元する段階とを含んでなることを特徴とする、4−アミノメチル安息香酸の製造方法を提供する。
【0010】
本発明の一具体例において、前記接触還元する段階は触媒を用いることを特徴とする。
【0011】
本発明の一具体例において、前記触媒はパラジウム、白金、ロジウム、イリジウム及びニッケルの少なくとも1種を含むことを特徴とする。
本発明の一具体例において、前記触媒はPd/C触媒であり、Pd含量が全体触媒を基準として1〜15重量%、具体的には1〜10重量%、より具体的には5〜10重量%であることを特徴とする。
【0012】
本発明の一具体例において、前記接触還元する段階は約1〜15気圧の圧力及び約30〜50℃の温度で行われることを特徴とする。
【0013】
本発明の一具体例において、前記方法は、前記接触還元する段階の後に、生成物を濃縮及び濾過させる段階をさらに含むことを特徴とする。
【0014】
本発明の一具体例において、前記接触還元する段階は、少なくとも1200rpmであり、具体的には約1200〜2500rpm、より具体的には約1200〜2000rpm、さらに具体的には1200〜1700rpmの攪拌速度で攪拌されることを特徴とする。
【0015】
本発明の一具体例において、前記4−カルボキシルベンズアルデヒドオキシム又はそのアルキルエステルオキシムは、全体反応物を基準として約8〜18重量%の含量、具体的には約12〜18重量%、より具体的には約12〜15重量%で含まれることを特徴とする。
【0016】
本発明の一具体例において、前記アルカリ溶液は、4−カルボキシルベンズアルデヒドオキシム又はそのアルデヒドオキシムの重量に対して約0.2〜1.0倍、具体的には約0.5〜1.0倍、より具体的には0.7倍〜1.0倍で含まれることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の製造方法によれば、メチル4−ヒドロキシイミノメチル安息香酸塩を原料としてアルカリの存在下で反応させるので、比較的低い水素圧力の使用が可能であり、精製過程も簡単であって低費用で高収率の4−アミノメチル安息香酸の製造が可能であるという利点がある。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の目的、特定の長所及び新規の特徴は以下の詳細な説明及び好適な実施例からさらに明らかになるであろう。
【0019】
本発明の方法によれば、4−アミノメチル安息香酸を製造するために、まず、4−カルボキシルベンズアルデヒドまたはそのアルキルエステル(例えば、メチル4−ホルミル安息香酸塩)を用意する。
【0020】
ここで、4−カルボキシルベンズアルデヒドのアルキルエステルは、韓国登録特許第0814597号(「メチル4−ホルミル安息香酸塩とジメチルテレフタレートの分離方法」)を参照して得られるメチル4−ホルミル安息香酸塩を使用することができる。
【0021】
前記4−カルボキシルベンズアルデヒド又はそのアルキルエステル(例えば、メチル4−ホルミル安息香酸塩)をヒドロキシアミンと反応させてオキシム化する。
【0022】
また、前記オキシム化して得られた4−カルボキシルベンズアルデヒドオキシム又はそのアルキルエステルオキシムは、アルカリの存在下で水素を通じて接触還元されて4−アミノベチル安息香酸を製造する。
【0023】
すなわち、本発明の方法は、メチル4−ホルミル安息香酸(MFB)→メチル−4−ヒドロキシイミノメチル安息香酸(Methyl-4-hydroxyiminomethylbenzoate)(MHB)→4−アミノメチル安息香酸(AMBA)の反応段階を経る。これは、従来の一般的な反応がMFB→MHB→4−ヒドロキシイミノメチル安息香酸(4−hydroxyiminomethylbenzoic acid)(HBA)→AMBAの反応段階を経ることに比べて、反応段階を単純化させることができるものである。
【0024】
すなわち、本発明に係るAMBAの製造方法の反応メカニズムは、下記反応式1のとおりである。
【0025】
[反応式1]

【0026】
ここで、AはMFB、BはMHB、CはAMBAである。
【0027】
本発明によって得られた4−アミノメチル安息香酸の反応収率は使用されるアルカリの種類によって影響されるが、より具体的に、前記アルカリはNaOHであることが好ましい。
【0028】
また、前記接触還元する段階では、触媒が使用できる。前記触媒はパラジウム、白金、ロジウム、イリジウム、及びニッケルの少なくとも1種を含むことができ、これらの中でもNi又はパラジウムが好ましい。より好ましくは、パラジウム触媒が使用できる。前記パラジウム触媒はPd/C触媒が好ましく、パラジウム金属の含量が全体触媒を基準として約1〜15重量%であることが好ましい。好ましくは、Pd含量が約1〜10重量%の触媒が使用でき、より具体的にはPd含量が約5〜10重量%の触媒が使用できる。
【0029】
ここで、水素の添加量は、それぞれの水素添加反応に必要な量であって、当業者によって容易に選択できる。
【0030】
本発明の方法によれば、前記接触還元する段階は約1〜15kg/cmの圧力、好ましくは約5〜10kg/cmの圧力の下で行われる。これは通常のAMBA製造工程で過度に高い圧力、例えば20kg/cm以上の高圧で水素反応が行われて非効率的であったのと比較して、本発明に係る方法によってABMAを製造する場合、相対的に低い圧力で水素反応が行われて効率性が相当改善できることが分かる。
【0031】
また、反応温度は、常温(約25℃)〜約80℃、好ましくは約30〜50℃の温度で行われ得る。温度が常温未満の場合には反応が遅くてAMBAへの転換率が低くなるという欠点があり、温度が80℃超過の場合には不純物が増加してAMBAへの転換率が低くなるという問題点がある。
【0032】
前記接触還元する段階は、少なくとも約1200rpmの攪拌速度、好ましくは約1200〜2500rpm、より好ましくは約1200〜2000rpm、最も好ましくは約1200〜1700rpmで攪拌できる。攪拌速度が1200rpm未満の場合にはAMBAへの転換率が低調であるという問題点がある。
【0033】
本発明に係る方法は、前記接触還元する段階の後に、生成物を濃縮及び濾過させる段階をさらに含むことができる。反応が完了すると、濾過して触媒を除去し、濾過液に酸などを加えてpHを調節する。ここで、添加される酸は、pHを調節することが可能な当業者における公知の酸、例えば塩酸、硫酸、硝酸などを使用することができる。その後、常圧で当業者における公知の乾燥方法、例えば真空乾燥を行って高純度の4−アミノメチル安息香酸を得ることができる。
【0034】
また、本発明に係る4−アミノメチル安息香酸の製造方法において、4−アミノメチル安息香酸の反応収率は反応液内のNaOHの添加量に影響される。NaOHの添加量が多くなるほど、副産物としてのダイマーの量が減少する。これにより、NaOHはメチル4−ヒドロキシイミノメチル安息香酸塩の重量の約0.2〜1.0倍で含まれることが好ましく、より具体的には0.5〜1.0倍で含まれることが好ましい。前記NaOHがメチル4−ヒドロキシイミノメチル安息香酸塩の重量の0.2倍未満で含まれる場合、AMBAの転換率が低く、副産物としてのダイマーの量が高くなるという問題点がある。また、前記NaOHの添加量がメチル4−ヒドロキシイミノメチル安息香酸塩の重量の1.0倍を超過する場合には、反応液内の水素溶解度が低くなって還元反応が減少するにつれて、ABMAの転換率が低くなるという問題点がありうる。
【0035】
また、本発明に係る4−アミノメチル安息香酸の製造において、4−アミノメチル安息香酸の転換率はMHB(メチル4−ヒドロキシイミノメチル安息香酸塩)の反応濃度に影響される。
【0036】
前記MHBの濃度が高くなるほどAMBA転換率が低くなることが、下記の実施例及び比較例から分かる。好ましいMHBの濃度は全体反応物を基準として約8〜18重量%、好ましくは約9〜17重量%、より好ましくは約12〜15重量%でありうる。前記MHBの濃度が8重量%未満の場合には、最終収得可能なAMBAの量が少なくなるという問題点が発生しうる。前記MHBの濃度が18重量%超過の場合には、反応以後にも大部分がAMBAに転換されないため、顕著に低いAMBA転換率を有するという問題点が発生しうる。
【0037】
以下、製造例及び実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。下記実施例は本発明をより具体的に説明するためのもので、本発明の範囲を限定するものではない。
【0038】
製造例1
DMT製造工程の副産物であるMFB約63重量%、DMT約30重量%、MPT約6重量%、MBZ約1重量%、及びその他の微量の不純物を含む混合物100重量部に対してメタノール200重量部を投入し、25℃で0.5時間攪拌する。攪拌が完了すると、DMTのみが固体として残留し、これを濾過してDMTを固体として回収する。この際、固体のDMTはメタノールで洗浄し、こうして得られたDMTは29.5gであり、純度は99.5%であった。
【0039】
前記濾液にp−トルエンスルホン酸0.2重量部を投入し、2時間攪拌してMFBを4−メトキシカルボニルベンズアルデヒドジメチルアセタールに転換させる。4−メトキシカルボニルベンズアルデヒドジメチルアセタールに転換された反応物を−2℃に維持すると、残留DMTが固体として析出し、この析出物を−2℃で濾過して残留DMTを固体として回収する。この際、析出したDMTにメタノールで洗浄し、こうして得られたDMTは2.1gであり、純度は98.5%であった。
【0040】
前記の濾液からメタノールを蒸留で回収し、ヘプタン63重量部と水63重量部を投入して70℃で4時間攪拌する。反応が完了すると、25℃に温度を下げ、濾過して、固体として生成されたMFBを回収する。生成されたMFBを50℃で乾燥させて回収し、回収されたMFBは40.5gであり、純度は99.0%であった。
【0041】
実施例1
前記製造例1から得た純度99.0%のメチル4−ホルミル安息香酸塩886gをメタノール2000gに溶かし、水650gにヒドロキシアミン塩酸塩450g(6.47mole)を溶かした反応液を加え、25〜35℃で2時間800rpmの攪拌速度で攪拌した。反応液内のメチル4−ホルミル安息香酸塩が完全に消耗した後、1300rpmの攪拌速度で強く攪拌しながら、30%の水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを7.5〜8.0に合わせて濾過する。常圧で80℃の温度で4時間乾燥させて純度99.0%のメチル4−ヒドロキシイミノメチル安息香酸塩962g(収率99.5%)を得た。
【0042】
こうして得たメチル4−ヒドロキシイミノメチル安息香酸塩310g、水3000g、水酸化ナトリウム168.5g及び5wt%pd/C(wet50%水)22.5gを4Lのオートクレーブに入れ、水素圧力10kg/cm、常温で1500rpmの攪拌速度で3時間反応を行った。触媒を除去した後、濃い塩酸452gを加えてpHを7に中和し、水を除去して濃縮を行った。
その後、前記濃縮液を濾過し、乾燥させて純度99.9%の4−アミノメチル安息香酸245g(収率93.5%)を得た。この際、融点は351.3℃〜352.5℃であった。
【0043】
実施例2
前記製造例1から得た純度99.0%のメチル4−ホルミル安息香酸塩886gをメタノール2000gに溶かし、水650gにヒドロキシアミン塩酸塩450g(6.47mole)を溶かした反応液を加え、25〜35℃で800rpmの攪拌速度で2時間攪拌した。反応液中のメチル4−ホルミル安息香酸塩が完全に消耗した後、1300rpmの攪拌速度で強く攪拌しながら、30%の水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを7.5〜8.0に合わせて濾過する。常圧で80℃の温度で4時間乾燥させて純度99.0%のメチル4−ヒドロキシイミノメチル安息香酸塩962g(収率99.5%)を得た。
【0044】
こうして得たメチル4−ヒドロキシイミノメチル安息香酸塩80gと水800gをオートクレーブに入れた。ここに水酸化ナトリウム32を添加し、攪拌させて完全に溶解させた。前記溶液に5wt%Pd/C(wet50%水)6gを添加する。水素圧力10kg/cmの下で45℃の温度で加熱しながら4時間攪拌した。反応が完了した後、常温に冷却し、濾過して触媒を除去した。
【0045】
前記濾過液に10%塩酸水溶液をゆっくり加えてpHが4.5となるように調節した。この際、生成された固体を濾過してメタノール/水=1/1の溶液で再結晶させ、常圧で11℃の温度で乾燥させた。これにより、純度99.9%の4−アミノメチル安息香酸塩酸塩52.7g(収率62.9%)を白色固体として得た。この際、融点は282℃〜285℃であった。
【0046】
実施例3
前記製造例1から得た純度99.0%のメチル4−ホルミル安息香酸塩886gをメタノール2000gに溶かし、水650gにヒドロキシアミン塩酸塩450g(6.47mole)を溶かした反応液を加え、25〜35℃で800rpmの攪拌速度で2時間攪拌した。反応液中のメチル4−ホルミル安息香酸塩が完全に消耗した後、1300rpmの攪拌速度で強く攪拌しながら、30%の水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを7.5〜8.0に合わせて濾過する。常圧で80℃の温度で4時間乾燥させて純度99.0%のメチル4−ヒドロキシイミノメチル安息香酸塩962g(収率99.5%)を得た。
【0047】
こうして得たメチル4−ヒドロキシイミノメチル安息香酸塩310g、水3000g、及び水酸化ナトリウム168.5g及び5wt%Pd/C(wet50%水)22.5gを4Lのオートクレーブに入れ、水素圧力10kg/cm、常温で1500rpmの攪拌速度で3時間30分反応を行った。触媒を除去した後、濃い塩酸452gを加えてpHを7に中和し、水を除去して濃縮を行った。
【0048】
その後、前記濃縮液を濾過し、乾燥させて4−アミノメチル安息香酸を得た。
【0049】
実施例4及び比較例1〜2
それぞれ攪拌速度を2000rpm、700rpm及び1000rpm、攪拌時間をそれぞれ3時間30分、2時間30分及び8時間30分に変更した以外は、実施例3と同様にした。
【0050】
下記表1は攪拌速度及び攪拌時間による結果を示す。
【0051】
【表1】

【0052】
前記比較例1及び2と実施例1、3及び4とを比較すると、4−アミノメチル安息香酸の反応転換率が攪拌速度及び攪拌時間に影響されることが分かる。攪拌速度が最も低くて水素気体と反応液との接触面積が少ない比較例1の場合は、MHBがHBAに転換されるが、AMBAへの転換率は非常に低く、比較例2の場合は、反応時間及び攪拌速度の増加によりAMBA反応経路がMHB→HBA→AMBAであることが分かる。ところが、実施例1、3及び4に比べてAMBAへの転換率は相対的に非常に低い。
【0053】
すなわち、表1から分かるように、実施例1、3及び4でのように攪拌速度が増加するほどAMBAへの転換率が高くなる。
【0054】
実施例5
前記製造例1から得た純度99.0%のメチル4−ホルミル安息香酸塩886gをメタノール2000gに溶かし、水650gにヒドロキシアミン塩酸塩450g(6.47mole)を溶かした反応液を加え、25〜35℃で800rpmの攪拌速度で2時間攪拌した。反応液中のメチル4−ホルミル安息香酸塩が完全に消耗した後、1300rpmの攪拌速度で強く攪拌しながら、30%の水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを7.5〜8.0に合わせて濾過する。常圧で80℃の温度で4時間乾燥させて純度99.0%のメチル4−ヒドロキシイミノメチル安息香酸塩962g(収率99.5%)を得た。
【0055】
こうして得たメチル4−ヒドロキシイミノメチル安息香酸塩62g、水600g、及び水酸化ナトリウム55.4g(4.0eq)及び5wt%Pd/C(wet50%水)4.5gを1Lのオートクレーブに入れ、水素圧力10kg/cm、常温で1500rpmの攪拌速度で3時間30分反応を行った。触媒を除去した後、濃い塩酸145.2gを加えてpHを7に中和し、水を除去して濃縮を行った。
【0056】
その後、前記濃縮液を濾過し、乾燥させて4−アミノメチル安息香酸を得た。
【0057】
実施例6〜8
水酸化ナトリウムの添加量をそれぞれ48.5g(3.5eq)、33.7g(2.4eq)、41.6g(3.0eq)に変更した以外は、実施例5と同様にした。
【0058】
下記表2は前記NaOHの添加量による結果を示す。
【0059】
【表2】

【0060】
前記表2から分かるように、NaOHの添加量が多くなるほど副産物としてのダイマーの量が減少した。ところが、過度にNaOHを添加した場合は、ダイマーの量は減少するが、不純物の量が増え、AMBAの量が減少することが分かった。また、NaOHは、MHB重量の約0.8倍を添加する場合、AMBAの収率が最も高かった。
【0061】
実施例9
前記製造例1から得た純度99.0%のメチル4−ホルミル安息香酸886gをメタノール2000gに溶かし、水650gにヒドロキシアミン塩酸塩450g(6.47mole)を溶かした反応液を加え、25〜35℃で800rpmの攪拌速度で2時間攪拌した。反応液中のメチル4−ホルミル安息香酸塩が完全に消耗した後、1300rpmの攪拌速度で強く攪拌しながら、30%の水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを7.5〜8.0に合わせて濾過する。常圧で80℃の温度で4時間乾燥させて純度99.0%のメチル4−ヒドロキシイミノメチル安息香酸塩962g(収率99.5%)を得た。
【0062】
こうして得たメチル4−ヒドロキシイミノメチル安息香酸塩62g(15wt%)、水320g、及び水酸化ナトリウム33.7g(2.4eq)及び5wt%Pd/C(wet50%水)4.5gを1Lのオートクレーブに入れ、水素圧力10kg/cm、常温で1500rpmの攪拌速度で3時間30分反応を行った。触媒を除去した後、濃い塩酸89.1gを加えてpHを7に中和し、水を除去して濃縮を行った。
【0063】
その後、前記濃縮液を濾過し、乾燥させて4−アミノメチル安息香酸を得た。
【0064】
比較例3
MHBの濃度による影響を調べるために、水の含量を調節してMHBの濃度を全体反応物の総質量を基準として20wt%に調節した以外は、前記実施例7と同様にした。
【0065】
下記表3は前記MHBの濃度による結果を示す。
【0066】
【表3】

【0067】
前記表3から分かるように、MHBの濃度が高い場合にはAMBAへの転換率が低く、MHBの濃度が低い場合には最終収得可能なAMBAの量が少なかった。したがって、MHBの濃度が約9及び15wt%の実施例7及び9の場合、AMBAの量が多いながらAMBAへの転換率が高いことを確認することができた。前記実験から分かるように、実施例9は水の使用量が少なくてワーキングボリューム(working volume)の効率性が高くなるが、比較例3でのようにMHBの濃度があまり高い場合は水素溶解力が低くなって反応が行われない。
【0068】
実施例10
前記製造例1から得た純度99.0%のメチル4−ホルミル安息香酸塩886gをメタノール2000gに溶かし、水650gにヒドロキシアミン塩酸塩450g(6.47mole)を溶かした反応液を加え、25〜35℃で800rpmの攪拌速度で2時間攪拌した。反応液中のメチル4−ホルミル安息香酸塩が完全に消耗した後、1300rpmの攪拌速度で強く攪拌しながら、30%の水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを7.5〜8.0に合わせて濾過する。常圧で80℃の温度で4時間乾燥させて純度99.0%のメチル4−ヒドロキシイミノメチル安息香酸塩962g(収率99.5%)を得た。
【0069】
こうして得たメチル4−ヒドロキシイミノメチル安息香酸塩6.2g、水60g、及び水酸化ナトリウム4.85g(3.5eq)及び5wt%Pd/C(wet50%水)0.45gを100mLのオートクレーブに入れ、水素圧力10kg/cm、常温で1500rpmの攪拌速度で3時間30分反応を行った。触媒を除去した後、濃い塩酸1.8gを加えてpHを7に中和し、水を除去して濃縮を行った。
【0070】
その後、前記濃縮液を濾過し、乾燥させて4−アミノメチル安息香酸を得た。
【0071】
比較例4及び5
アルカリの種類をそれぞれKOH及びNaCOにした以外は、実施例10と同様にした。
【0072】
下記表4は前記アルカリの種類による結果を示す。
【0073】
【表4】

【0074】
前記表4の結果から分かるように、4−アミノメチル安息香酸の製造工程におけるアルカリの種類がMHBからAMBAへの転換率に影響を及ぼす。より具体的に、アルカリとしてKOH及びNaCOを用いた場合がNaOHを用いた場合より高くないAMBAの収率を有することが分かる。よって、最も好ましいアルカリはNaOHであることが分かる。
【0075】
以上、本発明を具体的な実施例に基づいて詳細に説明したが、これは本発明を具体的に説明するためのものであり、本発明による製造方法はこれに限定されず、当該分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の技術的思想内にての変形や改良が可能であることは明白であろう。
【0076】
本発明の単純な変形乃至変更はいずれも本発明の領域に属するものであり、本発明の具体的な保護範囲は添付の特許請求の範囲により明確になるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4−カルボキシルベンズアルデヒド又はそのアルキルエステル(メチル4−ホルミル安息香酸塩)を用意する段階と、
前記4−カルボキシルベンズアルデヒド又はそのアルキルエステル(メチル4−ホルミル安息香酸塩)をヒドロキシアミンと反応させてオキシム化する段階と、
前記オキシム化して得られた4−カルボキシルベンズアルデヒドオキシム又はそのアルキルエステルオキシムを水酸化ナトリウム水溶液中で水素を通じて接触還元する段階とを含んでなることを特徴とする、
4−アミノメチル安息香酸の製造方法。
【請求項2】
前記接触還元する段階は触媒を用いることを特徴とする、
請求項1に記載の4−アミノメチル安息香酸の製造方法。
【請求項3】
前記触媒はパラジウム、白金、ロジウム、イリジウム及びニッケルのいずれか1種を含むことを特徴とする、
請求項2に記載の4−アミノメチル安息香酸の製造方法。
【請求項4】
前記触媒はPd/C触媒であり、Pd含量が全体触媒を基準として1〜15重量%であることを特徴とする、
請求項2に記載の4−アミノメチル安息香酸の製造方法。
【請求項5】
前記接触還元する段階は1〜15気圧の圧力及び30〜50℃の温度で行われることを特徴とする、
請求項1に記載の4−アミノメチル安息香酸の製造方法。
【請求項6】
前記方法は、前記接触還元する段階の後に、生成物を濃縮及び濾過させる段階をさらに含むことを特徴とする、
請求項1に記載の4−アミノメチル安息香酸の製造方法。
【請求項7】
前記接触還元する段階では1200rpmの攪拌速度で攪拌されることを特徴とする、請求項1に記載の4−アミノメチル安息香酸の製造方法。
【請求項8】
前記4−カルボキシルベンズアルデヒドオキシム又はそのアルキルエステルオキシムは全体反応物を基準として8〜18重量%の含量で含まれることを特徴とする、
請求項1に記載の4−アミノメチル安息香酸の製造方法。
【請求項9】
前記アルカリの重量は4−カルボキシルベンズアルデヒドオキシム又はそのアルキルエステルオキシムの重量の0.2倍〜1.0倍で添加されることを特徴とする、
請求項8に記載の4−アミノメチル安息香酸の製造方法。

【公表番号】特表2013−517266(P2013−517266A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−548874(P2012−548874)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際出願番号】PCT/KR2010/008774
【国際公開番号】WO2011/087211
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(512184973)ナフ カンパニー リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】NAF CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】404, Business Incubator Center, Korea Institute ofEnergy Research, 71−2,   Jang−dong, Yuseong−gu, Daejeon, Republic of Korea
【出願人】(512184984)エスケー ペトロケミカル カンパニー リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】SK PETROCHEMICAL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】600, Hwangseong−dong, Nam−gu, Ulsan, Republic of Korea
【Fターム(参考)】