説明

4−ハロゲンピリジンを第二級アミン及び/又は第三級アミンを用いて安定化する方法

本発明は、式(I)の4−ハロゲンピリジンを安定化する方法に関し、式中、Xは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素であり、Yは、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ニトロ、NH2、(C1〜C4)−アルキル、(C1〜C4)−アルカノイルアミン、フェニル−(C1〜C4)−アルカノイルアミン、フェニルカルボニルアミン、(C1〜C4)−アルキルアミン、ジ−(C1〜C4)−アルキルアミン、フェニル−(C1〜C4)−アルキルアミンであり、そしてnは1又は2であり、1つ又はいくつかの式(I)の化合物が、1つ又はいくつかの第二級アミン又は第三級脂肪族アミン若しくは第三級混成脂肪族−芳香族アミンと混合されることを特徴とする。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
4−ハロピリジンは、室温での貯蔵中不安定な化合物であり、そしてそれ自体は公知の方法を介して、例えば対応する4−ヒドロキシピリジンをPCl5又はPOCl3を用いて塩素化することによって合成的に得られる化合物である(Wibaut及びBroekmann、Recueil des Travaux Clinique des Pays−Bas et de la Belgique 7659、78、593〜603)。
【背景技術】
【0002】
製造プロセスに起因した不純物、特に酸の残留物は、4−ハロピリジンの分解及びオリゴマー生成物の形成を導く。4−クロロピリジンの場合に形成される生成物の一例は、塩化N−(4’−ピリジル)−4−クロロピリジニウムダイマーの塩である(Wibaut及びBroeckmann、Recueil des Travaux Clinique des Pays−Bas et de la Belgique 1961、80、309〜312)。
【0003】
Den Hertogら(Wibaut及びBrockmann、Recueil des Travaux Clinique des Pays−Bas et de la Belgique 1951、70、105〜111)は、4−ニトロピリジンは10%重炭酸ナトリウム水溶液の添加によって安定化され得、この場合、4−ニトロピリジンの90%が、60℃で12時間経過しても依然として変化せずに存在したことを述べている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
Wibaut及びBrockmannによれば(Recueil des Travaux Clinique des Pays−Bas et de la Belgique 1961、80、309〜312)、第一級アミンNH2R(R=CH3、CH(CH32、C1225)又は第二級アミンNHR’2(R’=CH3、n−C49)との4−クロロピリジンの混合物において、それぞれ対応する(4−NHR)−ピリジン及び(4−NR’2)−ピリジンの形成が観察されたが、脂肪族第三級アミン又は混成脂肪族−芳香族第三級アミン(NEt3、ジエチルアニリン)は、4−クロロピリジンと反応しなかった。4−クロロピリジンは、芳香族第三級アミンピリジンとN−(4’−ピリジル)ピリジニウム塩を形成する。4−クロロピリジンは、塩酸塩としてしか現在市販されておらず、この塩酸塩において、ピリジニウム塩の変化した電子状態が安定化を確実にしている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、次の式(I)の4−ハロピリジン
【化1】

(式中、Xは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素であり、
Yは、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ニトロ、NH2、(C1〜C4)−アルキル、(C1〜C4)−アルカノイルアミン、フェニル−(C1〜C4)−アルカノイルアミン、フェニルカルボニルアミン、(C1〜C4)−アルキルアミン、ジ−(C1〜C4)−アルキルアミン、フェニル−(C1〜C4)−アルキルアミンであり、そして
nは、1又は2である。)
を安定化する方法であって、1つ又はそれ以上の式(I)の化合物を1つ又はそれ以上の第二級アミン及び/又は第三級脂肪族アミン若しくは第三級混成脂肪族−芳香族アミンと混合することを包含する方法に関する。
【0006】
本発明はさらに、
(a)1つ又はそれ以上の式(I)の4−ハロ置換ピリジン誘導体
(式中、Xは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素であり、
Yは、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ニトロ、NH2、(C1〜C4)−アルキル、(C1〜C4)−アルカノイルアミン、フェニル−(C1〜C4)−アルカノイルアミン、フェニルカルボニルアミン、(C1〜C4)−アルキルアミン、ジ−(C1〜C4)−アルキルアミン、フェニル−(C1〜C4)−アルキルアミンであり、そして
nは、1又は2である。)
並びに
(b)1つ又はそれ以上の第二級アミン及び/又は脂肪族第三級アミン若しくは混成脂肪族−芳香族第三級アミン
を包含する混合物であって、
(a)4−クロロピリジン及び(b)ジメチルアミン、ジ−(n−ブチル)アミン又はトリエチルアミンを包含する混合物を除外する混合物に関する。
【0007】
この方法及び混合物において、各々の場合独立して、
Xは、好ましくはClであり、
Yは、好ましくは水素又はフッ素であり、そして
nは、好ましくは1である。
【0008】
この方法及び混合物において、各々の場合、1つの式(I)の化合物及び1つのアミンを用いることが好ましい。
【0009】
特に、式(I)の化合物が、次の式(II)又は式(III)
【化2】

によって記載される方法又は混合物が好ましい。
【0010】
上述の安定化方法又は上述の混合物において、当業者に公知のすべての第二級アミン又は好ましくは、脂肪族第三級アミン若しくは混成脂肪族−芳香族第三級アミンが用いられ得る。
【0011】
第二級アミンは、例えば、ジイソプロピルアミン、モルホリン、ピロリジン、ピペリジン、N,N−ジシクロヘキシルアミン、好ましくはジイソプロピルアミンである。
【0012】
第三級脂肪族アミンは、例えば、N−メチルモルホリン、エチルジイソプロピルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン(DBN);1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)、ジシクロヘキシルエチルアミン、ウロトロピン、好ましくはTMEDA、N−メチルモルホリン及びエチルジイソプロピルアミンである。
【0013】
第三級混成脂肪族−芳香族アミンは、例えば、ジメチルアミノピリジン(DMAP)、N,N−ジメチルアニリン、好ましくはDMAPである。
【0014】
本発明の方法において、特に、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、N−メチルモルホリン及びエチルジイソプロピルアミンを用いることが好ましい。
【0015】
式(I)の化合物は、医薬品合成の出発物質として有用である。例えば、欧州特許出願EP 287 982に記載され、そして疼痛及び鬱病の処置に利用され得る化合物の製造において、化合物(II)及び化合物(III)が使用される。4−ハロピリジンの出発物質が、特に第一に長期間の貯蔵に安定であり、第二にこの医薬品を汚染し得る不純物(例えば、分解生成物)の発生源ではなく、そして第三に発熱的に分解する物質としての安全性のリスクが見出されない場合が有利である。
【0016】
神経損傷の処置に用いられることが見出される化合物N−(3−フルオロ−4−ピリジニル)−N−プロピル−3−メチル−1H−インドール−1−アミンの製造において、例えば、4−クロロ−3−フルオロピリジンが用いられ得る。この塩素置換基は、塩基の付加によりアミンで置換される。
【0017】
ハロピリジンを安定化する本発明の方法又はその混合物において、好ましくは、アミンの含有量は、10%まで、好ましくは5%までである。
【0018】
限られた安定性及びその安定性を増大させる本発明の方法は、例として化合物4−クロロピリジン及び4−クロロ−3−フルオロピリジン(4−ClFPy)を用いて本明細書中下記に例示される。4−ClFPyの分解生成物を、より正確に調べた。
【0019】
この分解生成物を明らかにするために、貯蔵中に沈殿した固体を吸引しながら濾過して取り出し、引き続いてクロマトグラフィーにより分離した。この目的のために、この固体をトリエチルアミンに溶解し、そして4:1酢酸エチル/エタノールの溶離剤を用いてシリカゲル上で分離した。これにより、2つの画分、すなわち上記の溶出系においてRf=0.83を有する画分1及びRf=0.53を有する画分2を得た。この2つの画分を、次の二量体化/異性化生成物として明らかにし得た。
【化3】

【0020】
異なる含有量のTMEDAを有する4−ClFPyの2つの装入品を、20〜25℃でそれらの貯蔵安定性について調べた。
【表1】

【0021】
測定精度の範囲内で、4−クロロ−3−フルオロピリジンの含有量は、観察された期間にわたって変化せず、従って脂肪族第三級アミンTMEDAは、4−ハロ置換ピリジンを安定化し得る。
【0022】
この観察された効果をさらなる第三級アミン及び第二級アミンについて確認するために、次のアミン、トリエチルアミン、N−メチルモルホリン、エチルジイソプロピルアミン及びジイソプロピルアミンを、異なる混合で(A:10μl〜5ml;B:10μl〜1ml)4−ClFPyのサンプルに各々添加し、そして室温での貯蔵後の分解生成物の含有量を、ガスクロマトグラフィー(GC)によって測定した(ブランク値:0.097%)。
【0023】
【表2】

【0024】
【表3】

【0025】
コントロール実験の20〜25℃での貯蔵中に、固体を31日目に検出し得、冷蔵庫サンプル(0〜5℃)においては、59日目から同様に固体を観察した。サンプル中に固体が存在するとすぐに、均一系のサンプルを得ることはもはや不可能であり、その結果、二次的な成分はGCにおいて過少表示される。従って、後続の測定において前よりも低い値が実測された。
【0026】
上記の測定の変動は、ガスクロマトグラフの積分(integration)の誤差範囲内である。少量のアミンでさえ、4−クロロ−3−フルオロピリジンを安定化するのに十分である。言及され得る例は、2つの異なる濃度のTMEDAの場合であり、すなわち希釈ケースAにおいて、0.13%のTMEDAのみが検出される。対照的に、濃縮溶液Bは、0.61%のTMEDAを示す。第二級アミン及び/又は第三級脂肪族アミン若しくは第三級混成脂肪族−芳香族アミンを、合計0.05%〜5.0%、好ましくは0.1%〜2.5%の濃度範囲で添加することにより、式(I)の4−ハロピリジン誘導体、好ましくは式(II)及び式(III)の化合物を安定化することが上記の実験から明らかである。
【実施例】
【0027】
実施例1:4−クロロ−3−フルオロピリジンの特性決定(characterization)
【表4】

【0028】
実施例2:NMR化学シフトによる二量体化/異性化生成物の特性決定
【表5】

【0029】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の式(I)
【化1】

(式中、Xは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素であり、
Yは、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ニトロ、NH2、(C1〜C4)−アルキル、(C1〜C4)−アルカノイルアミン、フェニル−(C1〜C4)−アルカノイルアミン、フェニルカルボニルアミン、(C1〜C4)−アルキルアミン、ジ−(C1〜C4)−アルキルアミン、フェニル−(C1〜C4)−アルキルアミンであり、そして
nは、1又は2である)
の4−ハロピリジンを安定化する方法であって、1つ又はそれ以上の式(I)の化合物を1つ又はそれ以上の第二級アミン及び/又は第三級脂肪族アミン若しくは第三級混成脂肪族−芳香族アミンと混合することを包含する、方法。
【請求項2】
XがClである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Yが水素又はフッ素である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
nが1である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
式(I)の化合物が、次の式(II)又は式(III)
【化2】

の化合物である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
各々の場合において、1つの式(I)の化合物及び1つのアミンが使用される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
第二級アミンの含有量、及び/又は第三級脂肪族アミン若しくは第三級混成脂肪族−芳香族アミンの含有量が、全体で0.05%〜5.0%である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
第二級アミンが、ジイソプロピルアミン、モルホリン、ピロリジン、ピペリジン又はN,N−ジシクロヘキシルアミンである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
第三級脂肪族アミンが、N−メチルモルホリン、エチルジイソプロピルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン(DBN);1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)、ジシクロヘキシルエチルアミン又はウロトロピンである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
第三級混成脂肪族−芳香族アミンが、ジメチルアミノピリジン(DMAP)又はN,N−ジメチルアニリンである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
(a)1つ又はそれ以上の次の式(I)
【化3】

(式中、Xは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素であり、
Yは、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ニトロ、NH2、(C1〜C4)−アルキル、(C1〜C4)−アルカノイルアミン、フェニル−(C1〜C4)−アルカノイルアミン、フェニルカルボニルアミン、(C1〜C4)−アルキルアミン、ジ−(C1〜C4)−アルキルアミン、フェニル−(C1〜C4)−アルキルアミンであり、そして
nは、1又は2である)
の4−ハロ置換ピリジン誘導体、並びに
(b)1つ又はそれ以上の第二級アミン及び/又は脂肪族第三級アミン若しくは混成脂肪族−芳香族第三級アミン
を包含する混合物であって、(a)4−クロロピリジン及び(b)ジメチルアミン、ジ−(n−ブチル)アミン又はトリエチルアミンを包含する混合物を除外する、混合物。
【請求項12】
XがClである、請求項11に記載の混合物。
【請求項13】
Yが水素又はフッ素である、請求項11または12に記載の混合物。
【請求項14】
nが1である、請求項11〜13のいずれか1項に記載の混合物。
【請求項15】
式(I)の化合物が、次の式(II)又は式(III)
【化4】

の化合物である、請求項11〜14のいずれか1項に記載の混合物。
【請求項16】
各々の場合において、1つの式(I)の化合物及び1つのアミンが使用される、請求項11〜15のいずれか1項に記載の混合物。
【請求項17】
第二級アミンの含有量、及び/又は第三級脂肪族アミン若しくは第三級混成脂肪族−芳香族アミンの含有量が、全体で0.05%〜5.0%である、請求項11〜16のいずれか1項に記載の混合物。
【請求項18】
第二級アミンが、ジイソプロピルアミン、モルホリン、ピロリジン、ピペリジン又はN,N−ジシクロヘキシルアミンである、請求項11〜17のいずれか1項に記載の混合物。
【請求項19】
第三級脂肪族アミンが、N−メチルモルホリン、エチルジイソプロピルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン(DBN);1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)、ジシクロヘキシルエチルアミン又はウロトロピンである、請求項11〜17のいずれか1項に記載の混合物。
【請求項20】
第三級混成脂肪族−芳香族アミンが、ジメチルアミノピリジン(DMAP)又はN,N−ジメチルアニリンである、請求項11〜17のいずれか1項に記載の混合物。

【公表番号】特表2007−517813(P2007−517813A)
【公表日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−548159(P2006−548159)
【出願日】平成16年12月21日(2004.12.21)
【国際出願番号】PCT/EP2004/014530
【国際公開番号】WO2005/068428
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(397056695)サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (456)
【Fターム(参考)】