説明

4−メチルピラゾール−5−カルボン酸エステルの製造方法

【課題】 4−メチルピラゾール−5−カルボン酸エステルの新規製造方法の提供
【解決手段】式(1):
【化1】


(但し、R1、R2およびR3は互いに独立してC1-4アルキル基を示す)で表される化合物を炭化水素溶媒中、溶媒脱水剤存在下、ホルムアルデヒドおよびその等価体から選ばれた1種以上、鉱酸およびルイス酸から選ばれた1種以上の酸触媒、並びに塩化水素の存在下に反応させることによる式(2):(但し、R1、R2およびR3は前記と同じ意味を表す)で表される4−クロロメチルピラゾール−5−カルボン酸エステルの製造方法。並びに、式(2)で表される4−クロロメチルピラゾール−5−カルボン酸エステルを炭化水素溶媒中、還元条件下に脱クロロ化した後に無毒化剤処理することでビス(クロロメチル)エーテルを無毒化することを特徴とする、式(3)で表される4−メチルピラゾール−5−カルボン酸エステルの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農薬や医薬の中間体として有用な化合物である4−メチルピラゾール−5−カルボン酸エステルを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、4−メチルピラゾール−5−カルボン酸エステルを製造する方法としては特許文献1に見られるようにピラゾール−5−カルボン酸化合物をクロロメチル化した後、還元条件で4位にメチル基を導入する方法が知られている。特許文献1によるとピラゾール−5−カルボン酸化合物のクロロメチル化反応はジオキサン中では収率が良いが、特に工業的に利用しやすいトルエンを溶媒に使用した場合には収率が69%と低い。また、副生物生成抑制のために反応系中の水分濃度を20%以下にするとの記載があるが具体的な方法の記載はなく、系内に無機の溶媒脱水剤を使用するという方法は知られていない。さらに特許文献1に見られるようなパラホルムアルデヒド、塩酸、鉱酸存在下のクロロメチル化法では副生物として有毒なビス(クロロメチル)エーテルが生成することが知られているがこのものの処理については記載がなく、還元反応が終了した後に各種無毒化剤と反応し無毒化する方法は知られていない。
【特許文献1】特開2001−342178号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の通り、既存の方法は、4−メチルピラゾール−5−カルボン酸エステルの製造方法としては収率面、有毒物質除去の面で改善の余地を残している。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、このような状況に鑑み、鋭意検討した結果、特に芳香族炭化水素溶媒でクロロメチル化反応を実施する際に、反応系中に溶媒脱水剤を添加することで収率が向上することを見出した。また、反応性の小さい4−メチルピラゾール−5−カルボン酸エステルに誘導した後に無毒化剤処理することで、収率を落とさずにビス(クロロメチル)エーテルを無毒化処理できることを見いだし、発明に至った。
すなわち、本発明は、
〔1〕 式(1):
【0005】
【化1】

【0006】
(但し、R1、R2およびR3は互いに独立してC1-4アルキル基を示す)で表される化合物を炭化水素溶媒中、溶媒脱水剤存在下、ホルムアルデヒドおよびその等価体から選ばれた1種以上、鉱酸およびルイス酸から選ばれた1種以上の酸触媒、並びに塩化水素の存在下に反応させることによる式(2):
【0007】
【化2】

【0008】
(但し、R1、R2およびR3は前記と同じ意味を表す)で表される4−クロロメチルピラゾール−5−カルボン酸エステルの製造方法。
〔2〕 炭化水素溶媒が芳香族炭化水素であり、溶媒脱水剤が硫酸マグネシウムである〔1〕の製造方法。
〔3〕 炭化水素溶媒が芳香族炭化水素であり、溶媒脱水剤が硫酸マグネシウムであり、R1およびR2がメチル基、R3がメチル基またはエチル基である〔1〕の製造方法。
〔4〕 式(2):
【0009】
【化3】

【0010】
(但し、R1、R2およびR3は前記と同じ意味を表す)で表される4−クロロメチルピラゾール−5−カルボン酸エステルを炭化水素溶媒中、還元条件下に脱クロロ化した後に無毒化剤を加えることにより、ビス(クロロメチル)エーテルを無毒化することを特徴とする、式(3)
【0011】
【化4】

【0012】
(但し、R1、R2およびR3は前記と同じ意味を表す)で表される4−メチルピラゾール−5−カルボン酸エステルの製造方法。
〔5〕 炭化水素溶媒が芳香族炭化水素であり、無毒化剤がアミン類またはアンモニアである〔4〕の製造方法。
〔6〕 R1、R2がメチル基、R3がメチル基またはエチル基である〔5〕の方法。
である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の製造方法により、農医薬の製造中間体として重要な4−メチルピラゾール−5−カルボン酸エステル類を収率よく有毒物質を除去しながら製造することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
式(1)−(3)のピラゾール化合物において置換基R1、R2およびR3はそれぞれ独立にC1-4アルキル基を表す。
C1-4アルキル基としては通常、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、セカンダリーブチル基およびターシャリーブチル基が挙げられる。
【0015】
各置換基につき原料事情や合成の簡便さを考慮した場合、R1としてはメチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソブチル基が好ましいが、特にメチル基が好ましい。R2としては、メチル基、エチル基、ノルマルブチル基が好ましいが、特にメチル基、エチル基が好ましい。R3としてはメチル基、エチル基が好ましい。
4−クロロメチルピラゾール合成反応に用いるホルムアルデヒド等価体としてはパラホルムアルデヒド、1,3,5−トリオキサン等が挙げられるが、パラホルムアルデヒドがさらに好ましい。
これらのホルムアルデヒド類の使用量は基質のピラゾール化合物に対して0.8〜10当量が好ましく、特に1〜5当量を用いることが最も好ましい。
反応に用いる塩化水素としては、塩化水素ガス、塩酸等を用いることが出来るが反応系中の水分含量が低いほうが好ましいことから塩化水素ガスを用いることがさらに好ましい。塩化水素の使用量は、基質のピラゾール化合物に対して0.8〜15当量が好ましく、特に1〜5当量が好ましい。
反応に用いる酸触媒は上記塩化水素のほか、その他の酸を単独または組合せで使用することも可能である。例えば硫酸、燐酸、酢酸、クロロスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸等のプロトン酸、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、塩化第二鉄、三フッ化ホウ素、塩化第一スズ、塩化第二スズ等のルイス酸を用いることが出来るが、鉱酸が好ましく、特に硫酸が好ましい。酸触媒の使用量としては、基質のピラゾールに対して0.001〜1.0当量が好ましく、特に0.01〜0.5当量を用いることが好ましい。
【0016】
反応に用いる炭化水素溶媒としては本反応に不活性な溶媒であれば使用可能であるが、具体的にはヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒等水と混和しにくい溶媒が好ましいが、なかでも芳香族炭化水素が好ましい。これらは単独または組み合わせて使用できる。
【0017】
溶媒脱水剤としては工業的に入手しやすい結晶水を持ちうる各種金属塩や水と反応する塩類、例えば、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸亜鉛、硫酸銅、硫酸第二鉄、硫酸アルミニウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化第一銅、塩化亜鉛、塩化鉄等の無機塩やモレキュラーシーブが使用可能であるが、経済性また後処理操作の点から硫酸マグネシウムが好ましい。これらの金属塩は無水品の使用が好ましいが水和物を用いても良い。また脱水剤を使用する代わりに共沸脱水により水を留去しながら反応させることも可能である。
【0018】
溶媒脱水剤の添加量は基質のピラゾールに対し0.3〜3重量部が好ましく0.6〜1.5重量部がさらに好ましい。
【0019】
本反応の反応温度は30〜200℃が好ましく、特に50〜150℃または溶媒の沸点の範囲で行うことが好ましい。
【0020】
反応終了後は必要により冷却後、反応液を水洗浄あるいはアルカリ水溶液で中和洗浄、分液することで次工程に使用することが出来る。冷却する場合は−5〜30℃の範囲が適切である。アルカリ水溶液としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属塩が好ましい。水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の無機塩基粉末を添加して中和しても良い。また、ピリジン類、アニリン類やアルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン等の有機塩基を添加して中和することも可能である。
【0021】
後処理後の有機層は続く接触還元反応に入る前に常圧または減圧下に溶媒を回収することで系中に存在するビス(クロロメチル)エーテルを除去することが可能である。
【0022】
次に、4−クロロメチルピラゾールの還元反応について述べる。
4−クロロメチルピラゾールの還元反応としては、遷移金属触媒を用いた接触還元反応が好ましい。
上記接触還元反応に用いる遷移金属触媒としてはパラジウム、ロジウム、白金、ニッケル等を含む触媒が挙げられるが、生産性、経済性の面からパラジウムまたはニッケルを含む触媒が最も一般的であり好ましい。
【0023】
触媒の形態としては、遷移金属錯体、金属化合物、担持固体触媒等の形態が好ましいが、パラジウム担持シリカ触媒、パラジウム担持アルミナ触媒、パラジウム担持炭素触媒、パラジウム担持硫酸バリウム触媒、パラジウム担持ゼオライト触媒、パラジウム担持シリカ・アルミナ触媒、ラネーニッケル等の担持または固体触媒が操作性、経済性を考慮すると特に好ましい。
【0024】
触媒の使用量は、触媒上の金属担持量、比表面積等により一定しないが、使用する基質のピラゾール1モルあたり、金属触媒として0.00001〜0.1グラム原子が好ましく、0.0001〜0.05グラム原子がさらに好ましい。
【0025】
反応には水素を共存させることが一般的である。使用する水素としては、純水素ガスでも、反応に不活性な窒素、アルゴン等のガスにより希釈された水素ガスを使用してもよい。
反応形内の水素分圧は、通常0.005〜10MPaの範囲から選択することが好ましく、また水素分圧の高い方が反応そのものは短時間で進行するが、操作性や設備の点から0.01〜5MPaの範囲で反応を行うことが好ましい。希釈水素ガスを用いる場合での全圧も0.01〜5MPaに準じた圧力範囲に設定することが望ましい。いずれの圧力においても量論量以上の水素が反応系内に共存するように制御することが望ましい。
本反応では脱クロロ化反応に伴い、量論量の塩化水素が生成する。この塩化水素は、反応系に存在すると反応の進行を妨げる原因になるので、系内に塩基を存在させて中和を行いながら反応を行うことが好ましい。
【0026】
反応に用いることの出来る塩基類としては、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、2−ピコリン、3−ピコリン、4−ピコリン、メチルエチルピリジン、N,N−ジメチルアニリン等の有機塩基類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムと等の無機塩基類等が使用可能である。これらの塩基は単独はもちろん、有機塩基と無機塩基を組み合わせて使用することも可能である。
【0027】
塩基の使用量は基質のピラゾールに対して0.5〜5当量が好ましく、特に0.9〜2当量用いることがさらに好ましい。有機塩基と無機塩基を組み合わせる場合の使用量も0.9〜2当量が好ましい。
反応に用いる炭化水素溶媒としては本反応に不活性な溶媒であれば使用可能である。具体的にはヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒等水と混和しにくい溶媒が好ましいが、なかでも芳香族炭化水素がさらに好ましい。これらは単独または組み合わせて使用できる。
反応温度の範囲は0〜100℃の範囲が好ましく、10〜80℃がさらに好ましい。
前工程のクロロメチル化反応で生成するビス(クロロメチル)エーテルを無毒化するためには、還元反応終了後に系中に無毒化剤を投入する。
無毒化剤としては、アンモニアやメチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、n−ブチルアミン等の一級アミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン等の2級アミン、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール等のアルコール類、水が好ましいが、アンモニアを用いることが最も好ましい。
使用する無毒化剤量は製造した4−クロロメチルピラゾール−5−カルボン酸エステルに対し、1当量〜大過剰量を使用するが、4〜20当量がさらに好ましい。アンモニアを利用する場合はガス状アンモニア、アンモニア水を使用できる。アンモニア水は市販の濃度28%も使用できるが濃度は任意に設定できる。好ましくは5〜15%の濃度のアンモニア水である。
無毒化処理温度は0〜100℃の範囲で行われることが好ましいが、20〜60℃の範囲がさらに好ましい。
無毒化処理時間は通常3〜10時間程度であるがガスクロマトグラフィーでビス(クロロメチル)エーテルが消失するのを確認できるまで行う必要がある。
無毒化終了後は触媒を除去し、蒸留等の通常の方法で4−メチルピラゾール−5−カルボン酸エステルを単離することが出来る。
以下、本発明を実施例を挙げて具体的に述べるが、本発明はこれによって限定されるものではない。
〔実施例1〕 1,3−ジメチルピラゾール−5−カルボン酸メチル4.0g(26ミリモル)を12.0gのトルエンに溶解し、濃硫酸0.25g(2.6ミリモル)を滴下した。これにパラホルムアルデヒド2.3g(78ミリモル)、無水硫酸マグネシウム4.0gを投入した。上記混合物に室温で塩化水素ガス2.77g(78ミリモル)を45分かけて吹き込んだ後、反応液を85℃に昇温し引き続き3時間反応させた。10℃に冷却後トルエン8gを滴下した後、冷水20gと水酸化マグネシウム1.81gを投入し系内を中和した。塩をろ過し分液後トルエン溶液を冷水12gで洗浄した後、トルエン層の高速液体クロマトグラフィーを用いた定量分析により1,3−ジメチル−4−クロロメチルピラゾール−5−カルボン酸メチル5.01g(収率95.2%)の生成を確認した。
〔実施例2〕 1,3−ジメチルピラゾール−5−カルボン酸メチル4.0g(26ミリモル)を12.0gのトルエンに溶解し、濃硫酸0.25g(2.6ミリモル)を滴下した。これにパラホルムアルデヒド1.6g(52ミリモル)、無水硫酸マグネシウム4.0gを投入した。上記混合物に室温で塩化水素ガス1.84g(52ミリモル)を45分かけて吹き込んだ後、反応液を85℃に昇温し引き続き5時間反応させた。10℃に冷却後トルエン8gを滴下した後、冷水20gと水酸化マグネシウム1.81gを投入し系内を中和した。塩をろ過し分液後トルエン溶液を冷水12gで洗浄した後、トルエン層の高速液体クロマトグラフィーを用いた定量分析により1,3−ジメチル−4−クロロメチルピラゾール−5−カルボン酸メチル5.08g(収率96.6%)の生成を確認した。
〔実施例3〕 1,3−ジメチルピラゾール−5−カルボン酸メチル2.0g(13ミリモル)を6.0gのトルエンに溶解し、濃硫酸0.13g(1.3ミリモル)を滴下した。これにパラホルムアルデヒド0.6g(19ミリモル)、無水硫酸マグネシウム2.0gを投入した。上記混合物に室温で塩化水素ガス0.69g(19ミリモル)を25分かけて吹き込んだ後、反応液を85℃に昇温し引き続き10時間反応させた。20℃に冷却後トルエン16gを滴下した後、ジ−n−ブチルアミン1.68gを投入した。塩をろ過しトルエン溶液の高速液体クロマトグラフィーを用いた定量分析により1,3−ジメチル−4−クロロメチルピラゾール−5−カルボン酸メチル2.47g(収率93.9%)の生成を確認した。
〔実施例4〕 1,3−ジメチルピラゾール−5−カルボン酸メチル4.0g(26ミリモル)を12.0gのトルエンに溶解し、濃硫酸0.25g(2.6ミリモル)を滴下した。これにパラホルムアルデヒド1.36g(45.5ミリモル)、無水硫酸マグネシウム4.0gを投入した。上記混合物に室温で塩化水素ガス1.61g(45.5ミリモル)を45分かけて吹き込んだ後、反応液を85℃に昇温し引き続き7時間反応させた。40℃に冷却後トルエン20gを滴下し窒素ガスを吹き込んだ。トリ−n−ブチルアミン9.61gを滴下したのちトルエンスラリー層の高速液体クロマトグラフィーを用いた定量分析により1,3−ジメチル−4−クロロメチルピラゾール−5−カルボン酸メチル5.26g(収率100%)の生成を確認した。
〔実施例5〕 1,3−ジメチルピラゾール−5−カルボン酸メチル2.0g(13ミリモル)を6.0gのトルエンに溶解し、濃硫酸0.13g(1.3ミリモル)を滴下した。これにパラホルムアルデヒド0.62g(20.8ミリモル)、無水硫酸マグネシウム2.0gを投入した。上記混合物に室温で塩化水素ガス0.74g(20.8ミリモル)を45分かけて吹き込んだ後、反応液を85℃に昇温し引き続き12時間反応させた。10℃に冷却後トルエン10gを滴下した後、冷却した5%炭酸ナトリウム水溶液13.8gを投入し系内を中和し分液した。トルエン層の高速液体クロマトグラフィーを用いた定量分析により1,3−ジメチル−4−クロロメチルピラゾール−5−カルボン酸メチル2.52g(収率95.8%)の生成を確認した。
〔実施例6〕1,3−ジメチルピラゾール−5−カルボン酸メチル4.0g(26ミリモル)を12.0gのトルエンに溶解し、濃硫酸0.25g(2.6ミリモル)を滴下した。これにパラホルムアルデヒド1.25g(41.6ミリモル)、無水硫酸マグネシウム4.0gを投入した。反応容器の出口にヌジョルポットを敷設し上記混合物に室温で塩化水素ガス1.59g(43.6ミリモル)をポットの様子を見ながら吹き込んだ後、反応液を85℃に昇温し引き続き14時間反応させた。10℃に冷却後トルエン23gを滴下し、冷却した5%炭酸ナトリウム水溶液27.5gを投入し系内を中和し分液した。トルエン層29.4gの高速液体クロマトグラフィーを用いた定量分析により1,3−ジメチル−4−クロロメチルピラゾール−5−カルボン酸メチル4.91g(収率93.3%)の生成を確認した。トルエン溶液中にはガスクロマトグラフィー上0.90%(相対値)のビス(クロロメチル)エーテルが検出された。このトルエン溶液25g(1,3−ジメチル−4−クロロメチルピラゾール−5−カルボン酸メチル4.19g(20.6ミリモル)相当)にトリ−n−ブチルアミン0.38g(2.06ミリモル)、炭酸カリウム2.85g(20.6ミリモル)、5%パラジウム担持炭素触媒(50%含水品)0.20gを加え、気相部を窒素置換した後、室温にて水素ガスを供給し接触還元を行った。反応終了後、8.4%アンモニア水21gを投入し35℃で3時間処理するとガスクロマトグラフィー上ビス(クロロメチル)エーテルは完全に消失していた。
〔比較例1〕 1,3−ジメチルピラゾール−5−カルボン酸メチル10.0g(65ミリモル)を30gのトルエンに溶解し、濃硫酸0.64g(6.5ミリモル)を滴下した。これにパラホルムアルデヒド3.51g(117ミリモル)を投入した。上記混合物に室温で塩化水素ガス4.3g(117ミリモル)を4時間かけて吹き込んだ後、反応液を85℃に昇温し引き続き4時間反応させた。10℃に冷却後、反応液を冷水30gで2回洗浄後得られたトルエン層の高速液体クロマトグラフィーを用いた定量分析により1,3−ジメチル−4−クロロメチルピラゾール−5−カルボン酸メチル9.22g(収率77.3%)の生成を確認した。
〔参考例1〕 4−クロロメチル−1,3−ジメチルピラゾール−5−カルボン酸メチル0.2g(0.98ミリモル)をトルエン2.0gに溶解しトリ−n−ブチルアミン0.18g(0.98ミリモル)、5%パラジウム担持炭素触媒(50%含水品)0.03gを加え、気相部を窒素置換した後、室温にて水素ガスを供給し接触還元を行った。反応終了後、触媒をろ過、水洗しトルエン層の高速液体クロマトグラフィーを用いた定量分析により1,3、4−トリメチルピラゾール−5−カルボン酸メチル0.16g(収率97.1%)の生成を確認した。
〔参考例2〕 4−クロロメチル−1,3−ジメチルピラゾール−5−カルボン酸メチル0.2g(0.98ミリモル)をトルエン1.0gに溶解しトリ−n−ブチルアミン0.018g(0.098ミリモル)、5%パラジウム担持炭素触媒(50%含水品)0.006gを加え、気相部を窒素置換した後、室温にて水素ガスを供給し接触還元を行った。反応終了後、注水し触媒をろ過、分液しトルエン層の高速液体クロマトグラフィーを用いた定量分析により1,3、4−トリメチルピラゾール−5−カルボン酸メチル0.16g(収率97.3%)の生成を確認した。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の製造方法は、農薬や医薬の製造中間体として有用な化合物である4−メチルピラゾール−5−カルボン酸エステル類を収率よく有毒物質を除去しながら製造する方法として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】


(但し、R1、R2およびR3は互いに独立してC1-4アルキル基を示す)で表される化合物を炭化水素溶媒中、溶媒脱水剤存在下、ホルムアルデヒドおよびその等価体から選ばれた1種以上、鉱酸およびルイス酸から選ばれた1種以上の酸触媒、並びに塩化水素の存在下に反応させることによる式(2):
【化2】


(但し、R1、R2およびR3は前記と同じ意味を表す)で表される4−クロロメチルピラゾール−5−カルボン酸エステルの製造方法。
【請求項2】
炭化水素溶媒が芳香族炭化水素であり、溶媒脱水剤が硫酸マグネシウムである請求項1の製造方法。
【請求項3】
炭化水素溶媒が芳香族炭化水素であり、溶媒脱水剤が硫酸マグネシウムであり、R1およびR2がメチル基、R3がメチル基またはエチル基である請求項1の製造方法。
【請求項4】
式(2):
【化3】


(但し、R1、R2およびR3は前記と同じ意味を表す)で表される4−クロロメチルピラゾール−5−カルボン酸エステルを炭化水素溶媒中、還元条件下に脱クロロ化した後に無毒化剤を加えることにより、ビス(クロロメチル)エーテルを無毒化することを特徴とする、式(3)
【化4】


(但し、R1、R2およびR3は前記と同じ意味を表す)で表される4−メチルピラゾール−5−カルボン酸エステルの製造方法。
【請求項5】
炭化水素溶媒が芳香族炭化水素であり、無毒化剤がアミン類またはアンモニアである請求項4記載の製造方法。
【請求項6】
R1、R2がメチル基、R3がメチル基またはエチル基である請求項5記載の方法。
である。