説明

4−Phosphonooxy−TEMPO又はその誘導体からなる有機ラジカル化合物の製造方法

【課題】エレクトロクロミック装置に使用される有機ラジカル化合物(4-Phosphonooxy-TEMPO)の製造方法及びこれを用いたエレクトロクロミック装置を提供すること。
【解決手段】4-Hydroxy-TEMPOを塩基性化合物の存在下で有機溶媒中で塩化ホスホリル又は臭化ホスホリルと反応させた後、水と反応させて、4-Phosphonooxy-TEMPOを合成する。エレクトロクロミック装置10は、第1の支持基板1、第1の透明電極2、第1の多孔質電極4を含む表示電極構造体11と、第2の支持基板6、第2の透明電極7、第2の多孔質電極8を含む対向電極構造体12と、両構造体によって挟持された電解質層5とを具備し、エレクトロクロミック化合物3が第1の多孔質電極4に担持され、4-Phosphonooxy-TEMPO(13)が第2の多孔質電極8に担持され、第1及び第2の透明電極の間に印加する電圧の制御によって、エレクトロクロミック化合物による可逆的な発消色を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発色効率、応答速度、表示色純度に優れたエレクトロクロミック装置に有用な有機ラジカル化合物の製造方法に関し、特に、4-Phosphonooxy-TEMPO又はその誘導体からなる有機ラジカル化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、明るく色純度に優れ、且つ、省消費電力で、フルカラー表示への応用が容易な表示色素材料やこれを用いた表示素子への要望が高まってきている。従来、CRT(Cathode Ray Tube)、PDP(Plasma Display Panel)、ELD(Electroluminescence Display)VFD(Vacuum Fluorescent Display)、FED(Field Emission Display)、LED(Light Emitting Diode)等の発光型素子、DMD(Digital Micromirror Display)、LCD(Liquid Crystal Display)、ECD(Electrochromic Display)、EPD(Electrophoresis Display)等の非発光型素子に関する多くの技術の提案がなされている。
【0003】
しかし、従来公知の各種発光型素子を用いた表示デバイスは、ユーザーが発光を直視する形式で使用するものであるため、長時間閲覧すると視覚的な疲労を引き起こすという問題があった。
【0004】
特に、LCDは、非発光型素子の中でも需要が拡大している技術であり、大型、小型の、様々なディスプレイ用途に用いられているが、LCDは視野角が狭く、見やすさの観点からは改善すべき課題を有している。また、LCDを使用している携帯電話等のモバイル機器は、屋外で使用される場合が多く、太陽光下では、表示光が相殺されて視認性が悪化するという問題もあった。
【0005】
非発光型素子のうち反射型表示素子に関しては、電子ペーパーの需要向上により、従来から様々な技術の提案がなされている。例えば、反射型LCDや電気泳動方式の表示デバイスが挙げられる。
【0006】
反射型LCDとしては、二色性色素を用いたG−H型液晶方式や、コレステリック液晶等が知られている。これらの方式は、従来の透過型LCDと比較して、バックライトを使用しないため、省消費電力という利点を有しているが、視野角依存性があり、また光反射効率も低いため、必然的に画面が暗くなってしまうという問題がある。
【0007】
他方、電気泳動方式の表示デバイスは、溶媒中に分散された電荷を帯びた粒子が、電界によって移動する現象を利用した方式であり、省消費電力で、視野角依存性がないという利点を有しているが、フルカラー化を行う場合には、カラーフィルターを利用する並置混合法を適用する必要があるため、反射率が低下し、必然的に画面が暗くなってしまうという問題がある。
【0008】
また、近年においては、自動車の調光ミラーや時計等に、エレクトロクロミック(以下、ECと略記する。)素子を用いたものが提案されている。このEC素子は、偏光板等が不要であり、視野角依存性が無く、発色型で視認性に優れ、構造が簡易で且つ大型化も容易で、更には材料の選択によって多様な色調の表示が可能であるという利点を有している。
【0009】
具体的なEC素子を用いた表示装置の例としては、1対の透明電極の少なくとも一方に半導体ナノ多孔質層を設け、この半導体ナノ多孔質層にEC色素を担持させた構成の表示装置が提案されている(例えば、後記する特許文献1、2、非特許文献1、2を参照。)。これらの表示装置は、開回路を構成して電極間の電子の移動を遮断し酸化還元状態を保持するだけで表示状態を静止できるので、表示画像を維持するための電力が不要であり、消費電力が極めて低いという点で優れている。
【0010】
イエロー、シアン、マゼンタの各EC色素をそれぞれ担持させた構造単位を積層させた構成を有し、フルカラー表示を行うことができるEC表示素子は周知である(例えば、後記する特許文献3、4、5を参照。)。
【0011】
後記する特許文献1、2、非特許文献1には、フェノチアジン誘導体を担持させた金属酸化物半導体多孔質電極を設けた構成が記載されており、後記する非特許文献2には、対向電極として、透明電極上にアンチモンドープの酸化錫(ATO)多孔質電極を設けた構成が記載されている。
【0012】
後記する非特許文献3には、有機ラジカル化合物4-Phosphonooxy-TEMPOの合成に関する記載がある。
【0013】
【特許文献1】特開2003−248242号公報(段落0008、段落0025、図1、図2)
【特許文献2】特開2003−270670号公報(段落0008、段落0031、図1〜図4)
【特許文献3】特開2007−10975号公報(段落0028、段落0046)
【特許文献4】特開2007−41259号公報(段落0011〜0012、段落0148、図1〜図4)
【特許文献5】特開2007−121714号公報(段落0071〜0088)
【非特許文献1】H. Petterson et al, “Direct-driven electrochromic displays based on nanocrystalline electrodes”, Displays, 25(2004)223-230(Abstract, 2. Device components)
【非特許文献2】D. Cummins, et al,“Ultrafast Electrochromic Windows Based on Redox-Chomophore Modified Nanostructured Semiconducting and Conducting Films”, J. Phys. Chem. B, 104(2000)11449-11459(Abstract, Experimental Sections)
【非特許文献3】Weiner, Henry,“Interaction of a spin-labeled analog of nicotinamide adenine dinucleotide with alcohol dehydrogenase. I. Synthesis, kinetics, and electron paramagnetic resonance studies.”, Biochemistry, 8(2),(1969)526-533(Experimental section, Figure 1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
非特許文献2に記載の表示装置の対向電極を構成するアンチモンドープの酸化錫(ATO)は、濃い灰色に着色している材料であり、カラー表示を行うための電極材料としては好適な材料ではなかった。
【0015】
また、特許文献1、2、非特許文献1に記載の表示装置の対向電極を構成する金属酸化物半導体多孔質電極に担持させたフェノチアジン誘導体は、酸化反応により赤色発色する性質を有するものであるため、表示電極側でEC色素による目的とする発色表示を妨げてしまうという欠点を有していた。特に、透明な表示デバイスを得ようとする場合や、明瞭なフルカラー画像表示を行うことを目的として、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の3層の発色層を積層させた構成のデバイスを構築する場合には、対向電極は、無色透明の材料により構成されており、且つ、対向電極に担持させた材料が、酸化・還元反応により色相変化を生じないものとすることが理想的である。
【0016】
このようなエレクトロクロミック表示装置では、対向電極をプラスにチャージ(酸化)させることが要求され、即ち、対向電極は蓄電能力が必要となり、蓄電能力がある対向電極を実現するために、(1)多孔質電極として蓄電能力のあるATO(アンチモンドープ酸化錫)電極を使用する方法、(2)蓄電能力をもたない多孔質電極に、酸化可能(蓄電可能)な有機物を担持(吸着)させる方法が考えられるが、方法(1)では、上述のように、ATOは、濃い灰色に着色している材料であり常時着色があり、表示品質を落とすという欠点があり、方法(2)では、電圧印加時に上記有機物の酸化によって生じる発色があり、表示品質を落とすという欠点がある。
【0017】
本発明者は、上述した従来公知の表示装置の問題点に鑑みて、特に、対向電極側の構成について検討を行い、ほぼ無色の多孔質金属酸化物半導体電極に、有機ラジカル化合物である4-Phosphonooxy-TEMPOを担持させることによって、ほぼ無色透明であり、且つ、酸化・還元反応によっても色相変化が生じることのない対向電極構造体を構成することができることを見出した。しかし、有機ラジカル化合物4-Phosphonooxy-TEMPOは、非特許文献3に記載されているように、合成に関しては、カラム精製処理等を含む複数の段階を要するために、工業的に安価に入手することが困難であった。
【0018】
本発明は、上述したような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、エレクトロクロミック装置の対向電極構造体に好適に使用することができる4-Phosphonooxy-TEMPO又はその誘導体からなる有機ラジカル化合物の安価な製造方法を提供することにある
【課題を解決するための手段】
【0019】
即ち、本発明は、式(1)によって表される4-Hydroxy-TEMPO又はその環を構成する炭素原子に結合する水素原子が他の原子又は原子団によって置換された誘導体を、塩基性化合物の存在下において有機溶媒中で塩化ホスホリル又は臭化ホスホリルと反応させた後、水と反応させることによって、式(2)によって表される4-Phosphonooxy-TEMPO、又はその環を構成する炭素原子に結合する水素原子が他の原子又は原子団によって置換された誘導体からなる有機ラジカル化合物の製造方法に係るものである。
【0020】
【化1】

…(1)
【0021】
【化2】

…(2)
【発明の効果】
【0022】
本発明の有機ラジカル化合物の製造方法によれば、上記式(1)によって表される4-Hydroxy-TEMPO、又はその環を構成する炭素原子に結合する水素原子が他の原子又は原子団によって置換された誘導体を、塩基性化合物の存在下において有機溶媒中で塩化ホスホリル又は臭化ホスホリルと反応させた後、水と反応させることによって、上記式(2)によって表される4-Phosphonooxy-TEMPO又はその環を構成する炭素原子に結合する水素原子が他の原子又は原子団によって置換された誘導体からなる有機ラジカル化合物を合成するので、カラム精製処理を含まず少ない反応工程によって合成することができるので、安価に合成することができる。本発明の有機ラジカル化合物は、エレクトロクロミック装置の対向電極構造体に好適に使用することができ、ほぼ無色の多孔質金属酸化物半導体電極に、有機ラジカル化合物を担持させることによって、ほぼ無色透明であり、且つ、酸化・還元反応によっても色相変化が生じることのない対向電極構造体を構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の有機ラジカル化合物の製造方法では、前記塩基性化合物がトリエチルアミンである構成)とするのがよい。この構成によれば、前記塩基性化合物を加えることによって、本発明の有機ラジカル化合物の合成反応において生成する酸(HX(X=Cl又はBr))を、沈殿する塩(塩酸塩又は臭化水素酸塩)として系外に排出することによって、反応を促進させることができる。特に、トリエチルアミンは、酸(HX(X=Cl又はBr))と塩を作って、反応液中で沈殿して系外に排出され、トリエチルアミンが反応に消費されず系内に残った場合でも、減圧によって除去することができ、純度の高い目的物を得ることができる。
【0024】
また、前記有機溶媒として、前記塩基性化合物の塩酸塩又は臭化水素酸塩をほとんど溶解しない溶媒が使用される構成とするのがよい。4-Phosphonooxy-TEMPOの生成過程中で生じる前記塩基性化合物の塩酸塩又は臭化水素酸塩をほとんど溶解しない有機溶媒を使用するので、前記塩酸塩又は臭化水素酸塩をろ過によって除去することができ、4-Phosphonooxy-TEMPOの精製を容易に行うことができ、純度の高い目的物を得ることができる。
【0025】
また、本発明によって製造される有機ラジカル化合は、物第1の支持基板、この第1の支持基板上に形成された第1の透明電極、及び、この第1の透明電極上に形成された第1の金属酸化物多孔質電極を含む表示電極構造体と、第2の支持基板、この第2の支持基板上に形成された第2の透明電極、及び、この第2の透明電極上に形成された第2の金属酸化物多孔質電極を含む対向電極構造体と、前記表示電極構造体及び前記対向電極構造体によって挟持された電解質層とを具備し、前記第1の透明電極と前記第2の透明電極とが対向するように配置され、エレクトロクロミック化合物が前記第1の金属酸化物多孔質電極に担持され、前記第1の透明電極と前記第2の透明電極の間に印加する電圧の制御によって、前記エレクトロクロミック化合物による可逆的な発消色を行うエレクトロクロミック装置に使用されるものであって、前記第2の金属酸化物多孔質電極に担持される構成とするのがよい。この構成によって、ほぼ無色の前記第2の金属酸化物多孔質電極に、有機ラジカル化合物を担持させることによって、無色透明であり、且つ、酸化・還元反応によっても色相変化が生じない、対向電極構造体を提供することができる。この対向電極構造体を用いたエレクトロクロミック装置は、実用上の耐久性に優れ、明瞭な発消色を多数回繰り返し安定して表示することができる。本発明による有機ラジカル化合物はフルカラー画像の形成に有用であり、耐久性を有し、応答速度、発色効率に優れ、色純度が高く、多数回繰り返し安定にエレクトロクロミック化合物による可逆的な発消色表示を行うことができ、精密な画像制御が可能なエレクトロクロミック装置を提供することができる。
【0026】
本発明のエレクトロクロミック装置について、図を参照して具体的に説明する。但し、本発明は、以下の例に限定されるものではなく、従来公知の構成を適宜付加することができ、本発明の要旨を何ら逸脱しないものとする。
【0027】
実施の形態
本実施の形態による、上記式(2)によって表される4-Phosphonooxy-TEMPO(C919NO3P、((4−(ホスホノオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジノ)オキシ)ラヂカル)は有機ラジカル化合物であり、透明なエレクトロクロミックパネルを作製するために有用な化合物である。しかし、従来、この4-Phosphonooxy-TEMPOは、高価であり、工業的に安価に入手困難であった。
【0028】
本実施の形態による4-Phosphonooxy-TEMPOの製造方法では、上記式(1)によって表される4-Hydroxy-TEMPO(C918NO2、((4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジ二ル)オキシ)ラヂカル)を、塩基性化合物の存在下において有機溶媒中で塩化ホスホリル又は臭化ホスホリルと反応させた後、水と反応させることによって、4-Phosphonooxy-TEMPOを合成することができる。従って、非特許文献3に記載の方法に比較して、反応ステップ数が少なく、容易に製造することが可能な方法であり、カラム精製が必要ない点からも製造時間、費用が節約でき、4-Phosphonooxy-TEMPOを安価に入手することができる。
【0029】
本実施の形態による4-Phosphonooxy-TEMPOの製造方法による収率は40%〜50%と高く、安価に、効率よく、合成をすることができる。なお、4-Phosphonooxy-TEMPOの化学量上の理論収率は100%である。
【0030】
本実施の形態によるエレクトロクロミック装置は、支持基板上に少なくとも、透明電極、エレクトロクロミック化合物が担持された金属酸化物多孔質電極が形成されている表示電極構造体と、支持基板上に少なくとも、透明電極、上記式(2)によって表される4-Phosphonooxy-TEMPOが担持された金属酸化物多孔質電極が形成されている対向電極構造体とを有し、表示電極構造体と対向電極構造体とが、透明電極同士が対向するように、電解質層を挟持して配置されている。
【0031】
本発明によれば、明瞭な発消色を多数回繰り返し安定して表示することが可能な、フルカラー画像形成に寄与し得る有機ラジカル化合物(4-Phosphonooxy-TEMPO)を使用したことにより、応答速度、発色効率に優れ、色純度が高く、精密な画像制御が可能なエレクトロクロミック装置を得ることができた。
【0032】
また、本発明によれば、エレクトロクロミック化合物による多数回の発消色動作の後において、可視吸収スペクトル形状は発消色の動作前の初期状態のスペクトル形状とほぼ同じであり変化を生じることがなく、発色状態が多数回の発消色によって変化して不安定になることがなく、また、発色濃度の低下もなく、多数回の発消色の動作の繰り返しに対して耐久性を有するので、多数回繰り返して発消色動作を行った場合にも、鮮明な発消色を可逆的に行うことができ、極めて安定な発色の画像表示を行うエレクトロクロミック装置を実現することができる。また、精密な画像制御によってフルカラー画像表示を行うエレクトロクロミック装置の場合にも、フルカラー化に寄与し得る有機エレクトロミック色素の発消色によって、フルカラー表示として要求される発色を多数回繰り返しても、明瞭な色表示を安定して行うことができる。
【0033】
図1は、本発明の実施の形態による、エレクトロクロミック装置の一例の概略構成を説明する断面図である。
【0034】
図1に示すエレクトロクロミック装置10は、(a)第1の支持基板(支持基板1)、この第1の支持基板上に形成された第1の透明電極(透明電極2)、及び、この第1の透明電極上に形成された第1の金属酸化物多孔質電極(多孔質電極4)を含む表示電極構造体11と、(b)第2の支持基板(支持基板6)、この第2の支持基板上に形成された第2の透明電極(透明電極7)、及び、この第2の透明電極上に形成された第2の金属酸化物多孔質電極(多孔質電極8)を含む対向電極構造体12と、(c)表示電極構造体11及び対向電極構造体12によって挟持された電解質層5を具備し、第1の透明電極(透明電極2)と第2の透明電極(透明電極7)とが電解質層5を介して対向するように配置され、エレクトロクロミック化合物(有機EC色素)3が第1の金属酸化物多孔質電極(多孔質電極4)に担持され、上記式(2)によって表される4-Phosphonooxy-TEMPO(有機ラジカル化合物13)が第2の金属酸化物多孔質電極(多孔質電極8)に担持され、第1の透明電極(透明電極2)と第2の透明電極(透明電極7)の間に印加する電圧の制御によって、エレクトロクロミック化合物3による可逆的な発消色を行うことができる。
【0035】
図1において、第1の金属酸化物多孔質電極(透明電極2)に担持されるエレクトロクロミック化合物3は、例えば、シアン、イエロー、マゼンタの何れかとすることができる。
【0036】
有機ラジカル化合物13は、対向電極構造体12において、表示電極構造体11における有機EC色素3の発色時における状態と逆の電荷にチャージする機能を有し、酸化・還元反応により着色しないものを使用する。
【0037】
なお、図1においては、対向する透明電極2、7の何れにも多孔質電極4、8が形成されているが、本発明はこの構成に限定されず、必要に応じて一方の電極にのみ多孔質電極を形成させ、この多孔質電極にエレクトロクロミック化合物3を担持させた構成としてもよい。なお、式(1)によって表される4-Hydroxy-TEMPOに変えてその環(C5N環)を構成するC(炭素)原子に結合する水素原子が他の原子又は原子団によって置換された4-Phosphonooxy-TEMPO誘導体を使用することもできる。以下、構成要素について順次説明する。
【0038】
<支持基板>
支持基板1、6は、耐熱性に優れ、且つ、平面方向の寸法安定性の高い材料が好適であり、具体的には、ガラス材料、透明性樹脂が適用できるが、これに限定されるものではない。
【0039】
透明性樹脂を適用する場合には、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアミド(PA)、ポリサルフォン(PS)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン等の高分子材料が挙げられ、これらの何れかによるプラスチック基板を使用することができる。
【0040】
<透明電極>
透明電極2、7は、所定の透明基板上に透明電極層が積層されたものとする。透明電極2、7を構成する電極材料としては、例えば、In23とSnO2との混合物、いわゆるITO膜(スズ−ドープ酸化インジウム膜)や、SnO2又はIn23をコーティングした膜等が挙げられる。また、上記ITO膜や、SnO2 又はIn23をコーティングした膜にSn、Sb、F等をドーピングしても良く、フッ素−ドープ酸スズ膜はFTO膜と呼ばれている。その他、MgOやZnO等も適用できる。ZnOにAlをドープしたAZO膜、ZnOにガリウム(Ga)をドープしたGZO膜、ZnOにインジウム(In)をドープしたもの等も適用することができる。
【0041】
<多孔質電極>
多孔質電極4、8は、後述するエレクトロクロミック化合物、有機ラジカル化合物の高い担持機能を確保するために、表面積が大きい材料により構成することが好適である。例えば、表面及び内部に微細孔を有した多孔質形状、ロット形状、ワイヤ形状、メソポーラス形状、集合粒子状等となっているものが挙げられる。
【0042】
多孔質電極4、8の材料としては、例えば、金属、真性半導体、有機半導体、カーボン等が適用できるが、酸化物半導体、複合酸化物半導体等が光の透過率が高く好適である。
【0043】
金属酸化物としては、例えば、TiO2、SnO2、SrTiO3、WO3、ZnO、Ta25、Nb25、In23、BaTiO、SrTiO、SnO2−ZnO、Nb25−SrTiO3、Nb25−Ta25、Nb25−ZrO2、Nb25−TiO2、Ti−SnO2、Zr−SnO2、Sb−SnO2、Bi−SnO2、ITO等が挙げられ、特に、TiO2、ZnO、SnO2、SbドープSnO2(ATO)、ITO、NbドープTiO2、AlドープZnO2(AZO)、PドープSnO(PTO)、GaドープZnO(GZO)が好適である。
【0044】
<有機ラジカル化合物>
多孔質電極8については、電極の蓄電容量を向上させるために、多孔質電極上に有機ラジカル化合物を担持させる。有機ラジカル化合物としては、上記式(2)によって表される4-Phosphonooxy-TEMPOを用いる。
【0045】
図2は、本発明の実施の形態による、有機ラジカル化合物である4-Phosphonooxy-TEMPOの製造工程を説明する図である。
【0046】
以下、有機ラジカル、4-Phosphonooxy-TEMPOの製造方法について説明する。4-Phosphonooxy-TEMPO(図2中に式(2−4)で示す。)は、4-Hydroxy-TEMPO(図2中に示す式(2−1)によって示す。)を、塩基性化合物存在下において、有機溶媒中で、塩化ホスホリル又は臭化ホスホリル(図2中に示す式(2−2)で示す。)と反応させて生成する、図2中に式(2−3)によって表される化合物を、水と反応させることによって、得ることができる。
【0047】
塩基性化合物としては、アミン系、ピリジン系、ピペリジン系等の塩基性化合物が使用できる。特に、トリエチルアミン、ピリジン、ピペリジン等が好ましく、更に、トリエチルアミンがより好ましい。トリエチルアミンの使用量は、4-Hydroxy-TEMPOに1モル対して、0.5〜5倍モルが好ましく、特に、1〜3倍モルが好ましく、少なすぎると反応が進行せず、また多すぎると、後で行う4-Phosphonooxy-TEMPOの精製が困難となる。
【0048】
図2中に示す合成反応では、生成する酸(HX(X=Cl又はBr))は塩基性化合物、例えば、トリメチルアミンと反応して、沈殿する塩(塩酸塩又は臭化水素酸塩)を生じるため、図2中に式(2−3)によって表される化合物を生成する反応が促進され、反応に寄与しないトリエチルアミンが残存する場合には、これを減圧操作によって除去することができ、純度の高い目的物を得ることができる。
【0049】
反応溶媒としては、塩化ホスホリル又は臭化ホスホリルに対して不活性で、原料である4-Hydroxy-TEMPOを溶解する有機溶媒を用いることができる。ジエチルエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、THF、ジオキサン、クロロホルム、ジクロロメタン、ベンゼン等が用いられ、特に、反応中に生成する塩基性化合物と塩酸又は臭化水素酸塩を溶解しない溶媒を用いると、この塩酸又は臭化水素酸塩をろ過によって除去することができるため、後で行う4-Phosphonooxy-TEMPOの精製が容易となって好ましい。
【0050】
塩化ホスホリル又は臭化ホスホリルの4-Hydroxy-TEMPOに対するモル比は1.0〜3.0倍モルが好ましく、特に、1.0〜1.5倍モルが好ましい。このモル比が少ないと、2量体が生成し、逆にこのモル比が多すぎると、後で行う4-Phosphonooxy-TEMPOの精製が困難になってしまい好ましくない。
【0051】
4-Hydroxy-TEMPOと塩化ホスホリル又は臭化ホスホリルとの反応は、アルゴンや窒素等、乾燥雰囲気下で行うのが好ましく、氷温等でゆっくり出発原料を混合し、その後氷温〜室温で数時間から数日の間、反応させる。
【0052】
その後、生成した塩をろ取し(「ろ取の操作」=ろ過(濾過)して固形物を得る操作)、ろ液に過剰な水を加え強く撹拌しながら、数十分から数時間反応させる。この反応液を水と有機溶媒で分液し、水層を有機溶媒で洗い乾燥させた後、メタノール、エタノール、アセトン等で再結晶させると、目的物である白色の4-Phosphonooxy-TEMPOを得ることができる。
【0053】
以上説明したように、本発明の製造方法によれば、非特許文献3に記載の方法のようにカラム精製処理を必要としないので、少ない反応工程によって製造時間が短縮でき容易に合成することができ、4-Phosphonooxy-TEMPOを安価に入手することができる。
【0054】
以上の説明では、式(2)によって表される4-Phosphonooxy-TEMPO の合成について説明したが、以上の説明において、式(1)によって表される4-Hydroxy-TEMPOに変えてその環(C5N環)を構成するC(炭素)原子に結合する水素原子が他の原子又は原子団によって置換された4-Hydroxy-TEMPO誘導体を使用することによって、C5N環のC(炭素)原子に結合する水素原子が他の原子又は原子団によって置換された4-Phosphonooxy-TEMPO誘導体を合成することができる。
【0055】
<エレクトロクロミック化合物>
次に、エレクトロクロミック化合物3について説明する。
【0056】
エレクトロクロミック化合物3は、多孔質電極4の表面及び内部の微細孔に担持されているものとし、従来技術によるエレクトロクロミック化合物を適用することができるが、好ましくは、特に、下記式(3)で示される化合物を適用することができる。
【0057】
【化3】

…(3)
【0058】
但し、式(3)において、a、bはa×b=2を満たす整数であり、Yb-はb価アニオンを表している。これは弗素イオン、塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン、過塩素酸イオン、過沃素酸イオン、六弗化燐酸イオン、六弗化アンチモン酸イオン、六弗化錫酸イオン、燐酸イオン、硼弗化水素酸イオン、四弗硼素酸イオン等の無機酸イオン、チオシアン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、ナフタレンスルホン酸イオン、ナフタレンジスルホン酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、アルキルスルホン酸イオン、ベンゼンカルボン酸イオン、アルキルカルボン酸イオン、トリハロアルキルカルボン酸イオン、アルキル硫酸イオン、トリハロアルキル硫酸イオン、ニコチン酸イオン、テトラシアノキノジメタンイオン等の有機酸イオンから選択されるものとする。
【0059】
1、A2は、置換されていてもよい脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基であり、A1、A2のうち少なくとも何れか一方は、エレクトロクロミック化合物を多孔質電極へ担持させるための官能基を有している。エレクトロクロミック化合物を多孔質電極に吸着させる吸着基として作用する官能基として、ホスホン酸基、カルボン酸基、水酸基、スルホン酸基等の酸性基が好ましい。アミノ基をこのような官能基とすることもできる。また、金属ハロゲン化物を用いて、多孔質電極表面に共有結合させることも可能である。
【0060】
Bは、共役構造(単結合1個を隔てて相対する2重結合)を有する化合物を表しており、この化合物として、ビニル、ベンゼン、チオフェン、フラン、ピロール、オキサジン、チオジアゾール、トリアゾール等を適用することができ、それぞれの化合物の構造は置換基を有していてもよく、誘導体化合物であってもよい。また、上記式(3)におけるC5N環のC(炭素)原子に結合する水素原子が、他の原子又は原子団によって置換されたものであってもよい。
【0061】
上記式(3)によって表されるエレクトロクロミック化合物の具体例を下記式(4)〜(14)に示す。下記式(4)によって表される化合物は,2,5−ビス(4−ピリジル)−1,3,4−チアジアゾール誘導体、下記式(5)によって表される化合物は2,5−ビス(4−ピリジル)−1,3,4−オキサジアゾール誘導体、下記式(6)によって表される化合物は2、5−ビス(4−ピリジル)フラン誘導体、下記式(7)、(8)、(9)、(10)によって表される化合物は2、5−ビス(4−ピリジル)チオフェン誘導体、下記式(11)、(12)、(13)、(14)によって表される化合物は4,4’−(1,4−フェニレン)ジピリジン誘導体であると、それぞれ見なすことができる。
【0062】
【化4】

…(4)
【0063】
【化5】

…(5)
【0064】
【化6】

…(6)
【0065】
【化7】

…(7)
【0066】
【化8】

…(8)
【0067】
【化9】

…(9)
【0068】
【化10】

…式(10)
【0069】
【化11】

…(11)
【0070】
【化12】

…(12)
【0071】
【化13】

…(13)
【0072】
【化14】

…(14)
【0073】
なお、上記式(4)〜(14)によって表される化合物において、C5N環のC(炭素)原子に結合する水素原子が他の原子又は原子団によって置換されたものであってもよいことは言うまでもない。
【0074】
<エレクトロクロミック化合物の多孔質電極への担持>
次に、上記エレクトロクロミック化合物を、多孔質電極4に担持する方法について説明する。例えば、多孔質電極4の表面に吸着させる方法を適用できる。この具体的方法としては、スピンコート等の塗布法や担持させる化合物の溶液に浸す自然吸着法等が適用でき、特に、特別な装置を必要としない自然吸着法が好適である。
【0075】
自然吸着法としては、所定のエレクトロクロミック化合物を所定の溶媒に溶解して溶液を作製し、この溶液に、予め乾燥処理を施した多孔質電極4を形成しておいた透明基板を浸漬する方法や、所定のエレクトロクロミック化合物を溶解した溶液を多孔質電極4に塗布する方法が挙げられる。この自然吸着法において、本発明の化合物は、その構造中にホスホン酸基を有しており、多孔質電極4に確実に担持させることができる。
【0076】
なお、エレクトロクロミック化合物を溶解する溶媒としては、例えば、水、アルコール、アセトニトリル、プロピオニトリル、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、エステル類、炭酸エステル類、ケトン類、炭化水素等が適用でき、これらは、単独で用いてもよく、適宜混合して用いてもよい。特に、溶解度の観点から、水を用いることが好適である。
【0077】
エレクトロクロミック化合物を多孔質電極の表面へ化学結合によって担持させる方法も好適である。多孔質電極の表面とエレクトロクロミック化合物骨格との間に、所定の官能基、例えば、アルキル基、フェニル基、エステル基、アミド基等を介在させて、エレクトロクロミック化合物を多孔質電極の表面に化学結合によって担持させることもできる。
【0078】
また、多孔質電極の表面をシランカップリング剤等によって表面改質した後に、エレクトロクロミック化合物を化学結合させて担持させることもできる。このような化学結合による強い力によって、エレクトロクロミック化合物が多孔質電極の表面に強固に担持されるので、エレクトロクロミック装置の耐久性を向上させることができる。また、エレクトロクロミック化合物の溶解性の高い材料からなる電界質層も使用することができるようになり、使用するエレクトロクロミック化合物の範囲が広くなり、選択の自由度が大きくなる。
【0079】
なお、図1においては、有機EC色素3を表示電極構造体11側の多孔質電極4のみに担持させた構成を示したが、本発明は図1の構成例に限定されるものではなく、対向電極構造体12側の多孔質電極8にも同様に有機EC色素を担持させた構成としてもよい。但し、かかる場合においては、有機EC色素の発消色反応における酸化・還元反応は、両電極において逆となる材料を選定する。
【0080】
例えば、多孔質電極材料4に担持させた有機EC色素が還元反応によってラジカル状態となり発色する場合には、多孔質電極8には定常状態で多孔質電極4に担持させた色素と同色調であり、酸化反応によって発色する有機EC色素を選定する。
【0081】
このように、両電極構造体11、12において有機EC色素を担持させた構成とすることにより、色表示濃度を十分に高くすることができるので、最終的に得られるエレクトロクロミック装置において、発色が明瞭化し、画像の鮮明さを向上させることができる。
【0082】
<有機ラジカル化合物の多孔質電極への担持>
エレクトロクロミック化合物と同様に、有機ラジカル化合物は吸着基として作用する官能基を有しているので、上述したエレクトロクロミック化合物の多孔質電極への担持の方法と同様にして行うことができる。
【0083】
<電解質層>
電解質層5は、溶媒に支持電解質が溶解された構成を有している。支持電解質としては、例えば、LiCl、LiBr、LiI、LiBF4、LiClO4、LiPF6、LiCF3SO3等のリチウム塩や、例えば、KCl、KI、KBr等のカリウム塩や、例えば、NaCl、NaI、NaBr等のナトリウム塩や、例えば、ほうフッ化テトラエチルアンモニウム、過塩素酸テトラエチルアンモニウム、ほうフッ化テトラブチルアンモニウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムハライド等のテトラアルキルアンモニウム塩が挙げられる。
【0084】
電解質層5には、必要に応じて公知の酸化還元化合物を添加してもよい。酸化還元物質としては、例えば、フェロセン誘導体、テトラシアノキノジメタン誘導体、ベンゾキノン誘導体、フェニレンジアミン誘導体等が適用できる。
【0085】
上記の溶媒としては、支持電解質を溶解し、上述したエレクトロクロミック化合物を溶解しないものを選択する。例えば、水、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、プロピレンカーボネート、ジメチルスルホキシド、炭酸プロピレン、ガンマブチロラクトン、3−メトキシプロピオニトリル等から適宜選定する。
【0086】
また、電解質層5には、いわゆるマトリックス材を適用してもよい。マトリックス材は、目的に応じて適宜選択でき、例えば、骨格ユニットがそれぞれ、−(C−C−O)n−、−(CC(CH3)−O)n−、−(C−C−N)n−、若しくは−(C−C−S)n−によって表されるポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリエチレンイミン、ポリエチレンスルフィドが挙げられる。なお、これら骨格ユニットを主鎖構造として、適宜枝分かれ構造を有していてもよい。また、ポリメチルメタクリレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート等も好適である。
【0087】
電解質層5は、高分子固体電解質層としてもよい。なお、この場合、マトリックス材のポリマーに所定の可塑剤を添加することが好ましい。可塑剤としては、マトリックスポリマーが親水性の場合には、水、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、及びこれらの混合物が好適であり、疎水性の場合には、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、アセトニトリル、スルフォラン、ジメトキシエタン、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン、及びこれらの混合物が好適である。
【0088】
本発明のエレクトロクロミック装置の製造方法について説明する。表示電極構造体11を作製する。所定の材料と膜厚の支持基板1上に透明電極2を形成し、その後、多孔質電極4を形成する。その後、例えば、有機EC色素水溶液に浸漬させることにより色素の担持を行い、エタノール溶液で洗浄処理、乾燥処理を行う。
【0089】
続いて、対向電極構造体12を、所定の材料と膜厚の支持基板6上に透明電極7を形成し、その後、多孔質電極8を形成することにより作製する。但し、多孔質電極4、8の詳細な形成方法については上述した方法に従うものとする。有機EC色素を担持させる電極についても、双方とするか一方とするか適宜選定する。双方の多孔質電極に有機EC色素を担持させる場合には、EC色素は異なる種類のもの使用し、多孔質電極4には還元で発色するものを担持させ、多孔質電極8には酸化で発色するものを担持させる。
【0090】
次に、電解質層用の溶液の調製を行う。続いて、表示電極構造体11と、対向電極構造体12とを、所定の接着剤を用いて貼り合わせるが、このとき後工程で電解液を注入できるように一部分に注入口を形成しておく。その後、電解液を注入口から注入し、樹脂接着材で封止することにより、対向した電極構造体を具備するエレクトロクロミック装置が作製される。
【0091】
次に、本発明のエレクトロクロミック装置10を用いた表示方法について説明する。
【0092】
図1のエレクトロクロミック装置10において、多孔質電極4の表面には、定常状態において可視域に吸収をもたない上記式(3)に示すエレクトロクロミック化合物が担持されている。
【0093】
エレクトロクロミック装置10を構成する対の電極構造体11、12に、所定のリード線を結線し表示装置として構成する。所定のリード線を通じて所定の電圧を印加すると、多孔質電極4とこれに担持されたエレクトロクロミック化合物材料との間に電子の授受がなされ、エレクトロクロミック化合物において電気化学的な還元反応が起き、ラジカル状態となってシアンに発色する。
【0094】
なお、対向電極構造体12側の多孔質電極8は、上記有機EC色素と逆の電荷をチャージし(有機EC色素が還元反応によって−の電荷をチャージしているときには、多孔質電極8は+の電荷をチャージする)、色素による発色機能を高め、且つ、安定化させる。
【0095】
図1に示すエレクトロクロミック装置を構成する各層の厚さを例示すれば、以下の通りである。
【0096】
支持基板1の厚さ=10μm〜10mm、
支持基板6の厚さ=10μm〜10mm、
透明電極2の厚さ=40nm〜1000nm、
透明電極7の厚さ=40nm〜1000nm、
多孔質電極4の厚さ=1.5μm〜30μm、
多孔質電極8の厚さ=1.5μm〜30μm、
表示電極構造体11の厚さ=11μm〜11mm、
対向電極構造体12の厚さ=11μm〜11mm、
透明電極2と透明電極7との間隔=1μm〜1mmである。
【0097】
なお、本発明のエレクトロクロミック装置は、図1に示した構成に限定されるものではなく、多色表示が可能な装置構成に応用することができる。即ち、図1に示すエレクトロクロミック構成と同様の構造であって、電気化学的な反応によりラジカル状態となって、マゼンダ(M)、イエロー(Y)、シアン(C)に発色するエレクトロクロミック化合物を所定の多孔質電極に担持させて電極構造体を作製し、これら三層を用いて、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、シアン(C)の積層構造とすることにより、発消色表示を可逆的に行うことができるフルカラー表示のエレクトロクロミック装置が得られる。
【0098】
エレクトロクロミック化合物(有機EC色素)としては、イエロー域(430〜490nmの範囲)、マゼンタ域(500〜580nmの範囲)、シアン域(600〜700nmの範囲)に吸収極大をもつ色素を使用することが望ましい。
【0099】
フルカラー表示のエレクトロクロミック装置は、支持基板上に少なくとも透明電極が形成されている一対の電極構造体(表示電極構造体と対向電極構造体)が、透明電極同士が対向するように電解質層を挟持して配置されており、一対の電極構造体を構成する透明電極のうちの、少なくとも表示電極構造体の上に、エレクトロクロミック化合物が担持された金属酸化物多孔質電極が形成されており、一対の電極構造体間に印加する電圧の制御によって発消色を行うことができ、(a)上記式(2)によって表されるエレクトロクロミック化合物が担持された金属酸化物多孔質電極が形成されており、シアンの可逆的な発消色を行うことができるエレクトロクロミック素子構造体、(b)イエローの可逆的な発色を行うことができるエレクトロクロミック素子構造体、(c)マゼンタの可逆的な発色を行うことができるエレクトロクロミック素子構造体の3つの素子構造体を積層することによって形成され、各エレクトロクロミック素子構造体に印加する電圧を制御することによって、全体としてフルカラーの画像を表示することができる。
【0100】
図3は、本発明の実施の形態による、カラー表示を行うことができるエレクトロクロミック装置の一例の概略構成を説明する断面図である。
【0101】
図3に示すエレクトロクロミック素子構造体10A、10B、10Cのそれぞれは、図1に示すエレクトロクロミック装置と同様の構成を有している。
【0102】
図3に示す、カラー表示を行うことができるエレクトロクロミック装置は、(a)第1の支持基板(支持基板1a、1b、1c)、この第1の支持基板上に形成された第1の透明電極(透明電極2a、2b、2c)、及び、この第1の透明電極上に形成された第1の金属酸化物多孔質電極(多孔質電極4a、4b、4c)を含む表示電極構造体11a、11b、11cと、(b)第2の支持基板(支持基板6a、6b、6c)、この第2の支持基板上に形成された第2の透明電極(透明電極7a、7b、7c)、及び、この第2の透明電極上に形成された第2の金属酸化物多孔質電極(多孔質電極8a、8b、8c)を含む対向電極構造体12a、12b、12cと、(c)表示電極構造体11a、11b、11及び対向電極構造体12a、12b、12cによって挟持された電解質層5a、5b、5cとを具備している。
【0103】
電解質層5a、5b、5cを介して第1の透明電極(2a、2b、2c)と第2の透明電極(7a、7b、7c)とが対向するように配置され、エレクトロクロミック化合物(有機EC色素3a、3b、3c)が第1の金属酸化物多孔質電極(4a、4b、4c)に担持され、式(3)によって表される4-Phosphonooxy-TEMPO(有機ラジカル化合物13a、13b、13c)が第2の金属酸化物多孔質電極(8a、8b、8c)に担持されて、エレクトロクロミック素子構造体10A、10B、10Cが形成されている。
【0104】
エレクトロクロミック素子構造体10A、10B、10Cが積層されており、エレクトロクロミック素子構造体10A、10B、10Cのそれぞれの第1の透明電極(2a、2b、2c)と第2の透明電極(7a、7b、7c)の間に印加する電圧の制御によって、エレクトロクロミック化合物による可逆的な発消色を行うことができる。
【0105】
エレクトロクロミック素子構造体10A、10B、10Cのそれぞれの第1の金属酸化物多孔質電極(4a、4b、4c)にそれぞれ担持されるエレクトロクロミック化合物(有機EC色素3a、3b、3c)は、図3の上方を目視方向とすると、マゼンタ、イエロー、シアンとする。
【0106】
図1、図3に示すエレクトロクロミック装置において使用されるエレクトロクロミック化合物としては、電圧が印加されていない状態では可視光領域に吸収を示さず消色状態にあり、電圧が印加された状態では可視光領域に吸収を示し発色状態となる化合物、逆に、電圧が印加された状態では可視光領域に吸収を示さず消色状態にあり、電圧が印加されていない状態では可視光領域に吸収を示し発色状態となる化合物、或いは、印加される電圧の大きさによって発色が異なる多発色状態が可能な化合物の何れであってもよく、目的に応じて適宜選択することができ、エレクトロクロミック素子構造体10A、10B、10Cのそれぞれに印加する電圧を制御することによって、フルカラーの画像を表示することができる。
【0107】
また、図1、図3に示すエレクトロクロミック装置において、アクティブマトリックス駆動を行うために、第1の支持基板(支持基板1、1a、1b、1c)に第1の透明電極(透明電極2、2a、2b、2c)を分画として形成し、即ち、各画素に対応するように相互に独立させた分画の複数個をマトリックス状に形成し、各分画上に第1の金属酸化物多孔質電極(多孔質電極4、4a、4b、4c)を形成して、各分画に対応して、ゲート線及びソース線によって接続される薄膜トランジスタ(TFT)を第1の透明電極上に形成配置する構成を有する装置とすることもできる。この装置によれば、薄膜トランジスタに印加する電圧を制御することによって、エレクトロクロミック素子構造体10A、10B、10Cのそれぞれの各画素に対応する分画における発消色を制御することができる。
【0108】
更に、上記構成を有する、図1に示すエレクトロクロミック装置において、透明電極2が分画され画素に対応するよう形成され、即ち、アクティブマトリックス駆動を行うために、シアン、マゼンタ、イエローに対応する第1、第2及び第3分画からなる分画の複数個からなるマトリックス状の透明電極2を支持基板1上に形成し、第1、第2及び第3分画上に多孔質電極4を形成して、第1、第2及び第3分画上に形成された多孔質電極4上にそれぞれ、シアン、マゼンタ、イエローの発色が可能なエレクトロクロミック化合物を担持させ、第1、第2及び第3分画に対応して、ゲート線及びソース線によって接続される薄膜トランジスタを透明電極2上に形成配置する構成を有する装置とすることもできる。この装置によれば、薄膜トランジスタに印加する電圧を制御することによって、それぞれの各画素に対応する第1、第2及び第3分画における発消色を制御することができる。
る。
【0109】
次に、本発明のエレクトロクロミック装置についての具体的な実施例と、これとの比較例を挙げて説明する。
【0110】
実施例
合成例1:(有機ラジカル化合物4-Phosphonooxy-TEMPO(式(2)、図2中の式(2−4))の合成)
三口フラスコに、塩化ホスホリル(3.3g、0.0215mol)、ジエチルエーテル100mLを仕込んだ。ジエチルエーテル50mLに溶かした4-Hydroxy-TEMPO(式(1)、図2中の式(2−1)、3.4g、0.02mol)、トリエチルアミン(2g、0.02mol)を窒素雰囲気下、氷温で滴下した。反応液を室温で24時間反応させた。析出物をろ過によって除去し、ろ液に、10mLの水を加え、強く撹拌しながら2時間反応させた。更に、水を加えて、分液し、水層をジエチルエーテルで洗い、よく乾燥させた。エタノールで再結晶を行い、得られた結晶を、アセトン、エタノールでよく洗い乾燥させた。白色粉末4-Phosphonooxy-TEMPO、2.5g(収率=50%)を得た。IRスペクトル、LC/MS、H−NMRによって、目的物であることが確認された。
MS+=252.1、H-NMR(D2O)δ:4.44(1H),δ:2.24(2H),δ:1.76(2H),δ:1.33(12H)。
【0111】
合成例2:(有機ラジカル化合物4-Phosphonooxy-TEMPO(式(2)、図2中の式(2−4))の合成)
合成例1の溶媒を、ジエチルエーテルからTFHに代え、あとは合成例1と同様にして合成を行った。白色粉末4-Phosphonooxy-TEMPO、2.0g(収率=40%)を得た。IRスペクトル、LC/MS、H−NMRによって、目的物であることが確認された。
MS+=252.1、H-NMR(D2O)δ:4.44(1H),δ:2.24(2H),δ:1.76(2H),δ:1.33(12H)。
【0112】
〔エレクトロクロミック装置の作製例:評価例〕
(表示電極構造体の作製)
厚さ1.1mmのガラス製の支持基板1上に、平面的に15Ω/□のFTO膜(透明電極2)を形成した。次に、pH=約1.0の塩酸水溶液に1次粒径20nmの酸化チタンナノ粒子を15重量%分散させたスラリーに、ポリエチレングリコールを5重量%の割合で溶解させて塗料を作製した。この塗料を、上記FTO膜上にスキージ法によって塗布した。次に、ホットプレート上で80℃、15分間の乾燥処理を行い、更に、電気炉で500℃、1時間焼結を行い、膜厚5μmの酸化チタン多孔質電極4が形成されたFTO基板が得られた。
【0113】
(エレクトロクロミック化合物の多孔質電極への担持)
上記酸化チタン膜よりなる多孔質電極4が形成されたFTO基板を、上記式(11)によって表されるエレクトロクロミック化合物5mM水溶液に24時間浸漬させ、酸化チタン多孔質電極4にエレクトロクロミック化合物を担持させた。その後、エタノール溶液で洗浄処理、乾燥処理を行った。
【0114】
(対向電極構造体の作製)
厚さ1.1mmのガラス製の支持基板6上に、平面的に15Ω/□のFTO膜(透明電極7)を形成した。次に、酸性水溶液に1次粒径30nmのITOナノ粒子を20重量%分散させたスラリーに、ポリエチレングリコールを5重量%の割合で溶解させて塗料を作製した。この塗料を、上記FTO膜上にスキージ法によって塗布した。次に、ホットプレート上で80℃、15分間の乾燥処理を行い、更に、電気炉で500℃、1時間焼結を行い、膜厚4μmのITO多孔質電極8が形成されたFTO基板が得られた。
【0115】
(有機ラジカル化合物の多孔質電極への担持)
上記ITOよりなる多孔質電極8が形成されたFTO基板を4-Phosphonooxy-TEMPO、10mM水溶液に24時間浸漬させ、ITO多孔質電極8に担持させた。その後、エタノール溶液で洗浄処理、乾燥処理を行った。
【0116】
(電解質層用の溶液の調製)
電解質層5の形成用溶液は、ガンマブチロラクロンに、過塩素酸リチウムを0.1mol/L溶解させ、脱水、脱気したものを適用した。
【0117】
(電極構造体の貼り合わせ)
上述のようにして作製した表示電極構造体(エレクトロクロミック化合物担持酸化チタン多孔質電極付き基板)と、対向電極構造体(有機ラジカル化合物担持ITO多孔質電極付き基板)とを、厚さ50μmの熱可塑性フィルム接着剤を用いて、90℃で熱融着によって貼り合わせた。この際、後述の工程により電解液を注入できるように、一部分に注入口を形成した。表示及び対向電極構造体の透明電極の間の距離は50μmであった。
【0118】
(電解質溶液の注入)
電解液を、注入口から真空注入した。その後、注入口をエポキシ系の熱硬化樹脂で封止することにより、電解質層を挟持した状態で対向した電極構造体を具備するエレクトロクロミック装置が完成した。
【0119】
(エレクトロクロミック装置の評価)
このエレクトロクロミック装置の、表示及び対向電極構造体の透明電極の間に、−1.4Vの電圧を印加すると、直ちにシアンに発色した。
【0120】
図4は、本発明の実施例におけるエレクトロクロミック装置の発色時の可視吸収スペクトルを示す図である。図4おいて、縦軸は吸光度(任意単位)、横軸は波長(nm)を示す。
【0121】
この実施例におけるエレクトロクロミック装置では、発消色による色表示変更の応答速度は約150msであり、実用上充分に良好な速度であった。更に、表示及び対向電極構造体の透明電極の間に0.5Vを印加すると再び直ちに透明となった。発消色による色表示変更の応答速度は約90msであった。更に、この実施例におけるエレクトロクロミック装置の表示及び対向電極構造体の透明電極の間に、−1.4Vと0.5Vを交互に1Hzで100万回繰返し印加したが、100万回電圧印加を繰り返した後においても、可視吸収スペクトルの形状は初期の状態と殆ど変化が見られず、実用上充分に優れた耐久性を有していることが確認された。
【0122】
比較例
(エレクトロクロミック装置の作製:比較例)
上述のエレクトロクロミック装置(評価例)の作製例において、4-Phosphonooxy-TEMPOを用いない以外は、すべて同じ手順で、エレクトロクロミック装置を作製した。
【0123】
(エレクトロクロミック装置の評価)
このエレクトロクロミック装置の、表示及び対向電極構造体の透明電極の間の間に、−1.4Vの電圧を印加したが、有機ラジカル化合物を使用していないため、実施例と同じ駆動電圧では、発色は見られなかった。また、表示及び対向電極構造体の透明電極の間に−3.5Vの電圧を加えると、シアンの発色が見られた。電極間に1.5Vの電圧を印加すると再び透明となった。更に、表示及び対向電極構造体の透明電極の間に、−3.5Vと1.5Vを交互に1Hzで繰返し印加したが、100回程度の繰り返しで、発色が見られなくなった。比較例では、駆動電圧が上昇し、実用上の耐久性が得られないことが確認された。
【0124】
上記した実施例と比較例によるエレクトロクロミック装置に関する、必要な駆動電圧の大きさ、発消色の繰り返しの耐久性の比較から、対向電極構造体の多孔質電極に有機ラジカル化合物として4-Phosphonooxy-TEMPOを担持させることによって、より小さな駆動電圧によって、発消色の繰り返しの耐久性を格段に向上させることができることが、明らかである。
【0125】
以上の結果から、本発明の方法によれば、蓄電能力のないほぼ透明な多孔質電極にラジカル化合物を担持(吸着)させるので、表示品質を落とすという欠点が生じることなく、極めて応答反応に優れ、鮮鋭な色調で、可逆的なエレクトロクロミック化合物による発消色表示を安定して行うことができるエレクトロクロミック装置と、それに有用である有機ラジカル化合物の合成法を得ることができた。
【0126】
本発明による有機ラジカル化合物を用いたエレクトロクロミック装置は、各種の用途に使用される表示素子や表示板、防眩ミラー、調光素子、光スイッチ、光メモリ等に使用することができる。
【0127】
以上、本発明を実施の形態について説明したが、本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0128】
例えば、有機エレクトロクロミック化合物は上記(4)〜(14)に示すものに限定されことなく、必要に応じて任意に変更可能であり、図1、図3に示すクロミック装置に使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0129】
以上説明したように、本発明によれば、エレクトロクロミック装置の性能の向上に有用な有機ラジカル化合物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】本発明の実施の形態による、エレクトロクロミック装置の一例の概略構成を説明する断面図である。
【図2】同上、4-Phosphonooxy-TEMPOの製造工程を説明する図である。
【図3】同上、カラー表示を行うことができるエレクトロクロミック装置の一例の概略構成を説明する断面図である。
【図4】同上、実施例におけるエレクトロクロミック装置の発色時の可視吸収スペクトルを示す図である。
【符号の説明】
【0131】
1、1、1a、1b、1c、6、6a、6b、6c…支持基板、
2、2a、2b、2c、7、7a、7b、7c…透明電極、
3、3a、3b、3c…有機EC色素、5、5a、5b、5c…電解質層、
4、4a、4b、4c、8、8a、8b、8c…多孔質電極、
10A、10B、10C…エレクトロクロミック素子構造体、
10…エレクトロクロミック装置、12、12a、12b、12c…対向電極構造体、
11、11、11a、11b、11c…表示電極構造体、
13、13a、13b、13c…有機ラジカル化合物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)によって表される4-Hydroxy-TEMPO又はその環を構成する炭素原子に結合する水素原子が他の原子又は原子団によって置換された誘導体を、塩基性化合物の存在下において有機溶媒中で塩化ホスホリル又は臭化ホスホリルと反応させた後、水と反応させることによって、式(2)によって表される4-Phosphonooxy-TEMPO、又はその環を構成する炭素原子に結合する水素原子が他の原子又は原子団によって置換された誘導体からなる有機ラジカル化合物の製造方法。
【化1】

…(1)
【化2】

…(2)
【請求項2】
前記塩基性化合物がトリエチルアミンである、請求項1に記載の有機ラジカル化合物の製造方法。
【請求項3】
前記有機溶媒として、前記塩基性化合物の塩酸塩又は臭化水素酸塩をほとんど溶解しない溶媒が使用される、請求項1に記載の有機ラジカル化合物の製造方法。
【請求項4】
第1の支持基板、この第1の支持基板上に形成された第1の透明電極、及び、この第1の透明電極上に形成された第1の金属酸化物多孔質電極を含む表示電極構造体と、第2の支持基板、この第2の支持基板上に形成された第2の透明電極、及び、この第2の透明電極上に形成された第2の金属酸化物多孔質電極を含む対向電極構造体と、前記表示電極構造体及び前記対向電極構造体によって挟持された電解質層とを具備し、前記第1の透明電極と前記第2の透明電極とが対向するように配置され、エレクトロクロミック化合物が前記第1の金属酸化物多孔質電極に担持され、前記第1の透明電極と前記第2の透明電極の間に印加する電圧の制御によって、前記エレクトロクロミック化合物による可逆的な発消色を行うエレクトロクロミック装置に使用され、前記第2の金属酸化物多孔質電極に担持される、請求項1に記載の有機ラジカル化合物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−42466(P2009−42466A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−206783(P2007−206783)
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】