説明

4,4’ジアミノジフェニルスルホンと複数の酸モノマーとから誘導された構造を含有するコポリマーを含む繊維およびそれらの製造方法

本発明は、4,4’ジアミノジフェニルスルホンアミンモノマーと複数の酸モノマーとから誘導されたコポリマーを重合液から紡糸することによって得られる繊維であって、前記複数の酸モノマーが、パラ配向芳香族基を含有する55〜85モルパーセントのモノマーと、メタ配向芳香族基を含有する15〜45モルパーセントのモノマーとを有する繊維;ならびにこの繊維を含む糸、布および衣類、ならびにそれらの製造方法に関する。この繊維は、耐熱性の保護衣布および衣類に用途を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4,4’ジアミノジフェニルスルホンアミンモノマーと複数の酸モノマーとから誘導されたコポリマーを重合液から紡糸することによって得られる繊維;ならびにこの繊維を含む糸、布および衣類、ならびにそれらの製造方法に関する。この繊維は、耐熱性の保護衣布および衣類に用途を有する。
【背景技術】
【0002】
Wangらの中国特許出願公開第1389604A号明細書は、ジメチルアセトアミド中で等モル量の塩化テレフタロイルと共重合させられた50〜95重量パーセントの4,4’ジアミノジフェニルスルホンと5〜50重量パーセントの3,3’ジアミノジフェニルスルホンとの混合物から形成されたコポリマー溶液を紡糸することによって製造されたポリスルホンアミド繊維(PSA)として知られる繊維を開示している。
【0003】
Chenらの中国特許出願公開第1631941A号明細書はまた、ジメチルアセトアミド中で等モル量の塩化テレフタロイルと共重合させられた10:90〜90:10の質量比での4,4’ジアミノジフェニルスルホンと3,3’ジアミノジフェニルスルホンとの混合物から形成されたPSAコポリマー紡糸液の調製方法を開示している。
【0004】
これらの両製造において、コポリマー鎖は、より高温構造安定性のための高度のパラ配向を有する。あいにく、高度のパラ配向を有するポリマーおよび/またはコポリマーは、重合中に使用される普通の有機溶媒に溶けない傾向があり、ポリマーおよび/またはコポリマーは溶液から沈殿し、それらが繊維紡糸のための別の溶媒に再溶解されることを必要とする。それ故、メタ配向3,3’ジアミノジフェニルスルホンの添加は、コポリマーをジメチルアセトアミドに可溶にするのに十分な不規則をこのパラ配向系に提供すると考えられる。不都合なことに、3,3’ジアミノジフェニルスルホンは高価であり、広く入手可能ではなく、それ故、共重合化学種として望ましくない。
【0005】
Sokolovらに付与された米国特許第4,169,932号明細書は、重合の速度を上げるために第三級アミンを使用するポリ(パラフェニレン)テレフタルアミド(PPD−T)コポリマーの製造を開示している。この特許は、PPD−Tコポリマーがテレフタル酸二塩化物またはテレフタル酸二塩化物(50〜95モルパーセント)とジフェニルシリーズの芳香族酸二塩化物(50〜5モルパーセント)との混合物で形成されてもよいことを開示している。この特許はまた、PPD−Tコポリマーがパラフェニレンジアミン(PPD)の5〜50モルパーセントを4,4’ジアミノジフェニルスルホンなどの別の芳香族ジアミンで置き換えることによって製造できることを開示しており、95モルパーセントのパラフェニレンジアミンと5モルパーセントの4,4’ジアミノジフェニルスルホンとを含有するかかるコポリマーの例を提供している。Sokolovらのコポリマーから製造された繊維はパラ配向であるが、PSA繊維の便益の一つは、(柔らかさおよび染色性などの)良好な織物美学と関係してきたポリマー鎖中の大量のスルホン基であり、それはSokolovの高PPD含有率ポリマーでは可能ではないであろう優れたものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それ故、必要とされるものは、普通の有機溶媒に可溶であり、高温安定性のための高度のパラ配向ジアミンを有するの両方であり、かつまた、ポリマー鎖中に大量のスルホン基を有するコポリマーである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
幾つかの実施形態では、本発明は、アミンモノマーと複数の酸モノマーとの反応から誘導された構造を有するコポリマーを含む繊維であって、アミンモノマーが少なくとも80モルパーセントの4,4’ジアミノジフェニルスルホンであり、複数の酸モノマーには、
Cl−CO−Ar1−CO−Cl & Cl−CO−Ar2−CO−Cl
の構造を有するものが含まれ、複数の酸モノマーが、芳香族基Ar1を含有する55〜85モルパーセントのモノマーと、芳香族基Ar2を含有する15〜45モルパーセントのモノマーとを有し、芳香族基Ar1がパラ配向ベンゼン環を有し、芳香族基Ar2がメタ配向ベンゼン環を有する繊維に関する。
【0008】
幾つかの他の実施形態では、本発明は、a)アミンモノマーと複数の酸モノマーとを反応させることによってコポリマーを形成する工程であって、アミンモノマーが少なくとも80モルパーセントの4,4’ジアミノジフェニルスルホンであり、複数の酸モノマーには、
Cl−CO−Ar1−CO−Cl & Cl−CO−Ar2−CO−Cl
の構造を有するものが含まれ、複数の酸モノマーが、芳香族基Ar1を含有する55〜85モルパーセントのモノマーと、芳香族基Ar2を含有する15〜45モルパーセントのモノマーとを有し、芳香族基Ar1がパラ配向ベンゼン環を有し、芳香族基Ar2がメタ配向ベンゼン環を有する工程と、b)繊維を紡糸するのに好適な溶液でコポリマーを提供する工程と、c)コポリマー溶液から繊維を紡糸する工程とを含む繊維の製造方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、4,4’ジアミノジフェニルスルホンアミンモノマーと複数の酸モノマーとから誘導された、コポリマーを重合液から紡糸することによって得られる繊維に関する。幾つかの好ましい実施形態では、繊維は、21以上の限界酸素指数を有する難燃性繊維である。「難燃性」とは、紡績スフ糸、またはこの糸から製造された布が空気中で火災を支援しないことを意味する。好ましい実施形態では、布は約26以上の限界酸素指数(LOI)を有する。
【0010】
本明細書における目的のためには、用語「繊維」は、長さ対当該長さに垂直の断面積の幅の高い比を有する比較的可撓性の、巨視的に均一の物体と定義される。繊維断面は任意の形状であることができるが、典型的には円形である。本明細書では、用語「フィラメント」または「連続フィラメント」は、用語「繊維」と同じ意味で用いられる。
【0011】
本明細書で用いるところでは、用語「ステープルファイバー」は、フィラメントと比較されたときに長さ対当該長さに垂直の断面積の幅の低い比を有する、所望の長さにカットされているかもしくは牽切されている(are stretch broken)繊維、または天然に存在するかもしくは製造される繊維を意味する。人造ステープルファイバーは、綿、羊毛、または梳毛糸紡績装置で処理するのに好適な長さにカットされるかまたは製造される。ステープルファイバーは、(a)実質的に一様な長さ、(b)可変もしくはランダム長さ、または(c)実質的に一様な長さを有するステープルファイバーの部分集合および異なる長さを有するステープルファイバーの他の部分集合、を有することができ、(c)は各部分集合のステープルファイバーが一緒に混合されて、実質的に一様な分布を形成する。
【0012】
幾つかの実施形態では、好適なステープルファイバーは、約0.25センチメートル(0.1インチ)〜約30センチメートル(12インチ)の長さを有する。幾つかの実施形態では、ステープルファイバーの長さは、約1cm(0.39インチ)〜約20cm(8インチ)である。幾つかの好ましい実施形態では、短ステープル法によって製造されたステープルファイバーは、約1cm(0.39インチ)〜約6cm(2.4インチ)のステープルファイバー長さを有する。用語連続フィラメントは、比較的小さい直径を有する、かつ、その長さがステープルファイバーについて示されたものより長い可撓性繊維を意味する。
【0013】
アミンモノマー4,4’ジアミノジフェニルスルホンから誘導された構造を有するコポリマー繊維とは、コポリマーが一般に構造:
NH2−Ar−SO2−Ar−NH2
(式中、Arは、SO2基とパラ配向の結合を有する、炭素原子の任意の非置換もしくは置換6員環芳香族基である)
を有するモノマーから製造されたことを意味する。好ましい一実施形態では、Arは非置換ベンジル環である。コポリマーは、パラ配向を、そしてその結果として高温安定性をコポリマーに提供するのを助けるために少なくとも80モルパーセントの4,4’ジアミノジフェニルスルホンを有する。一実施形態では、実質的に全て(95モルパーセント以上)のアミンモノマーは4,4’ジアミノジフェニルスルホン構造に由来する。
【0014】
アミンモノマーは、相溶性溶媒中で複数の酸モノマーと共重合してコポリマーを生成する。複数の酸モノマーには、構造:
Cl−CO−Ar1−CO−Cl & Cl−CO−Ar2−CO−Cl
(式中、Ar1およびAr2は、任意の非置換もしくは置換芳香族基構造であり、同じまたは異なるものであるが、それらが同じものである場合には、それらは構造に異なる結合配向を有する)
を有するものが含まれる。幾つかの好ましい実施形態では、Ar1およびAr2は両方とも、炭素原子の非置換6員環芳香族基であり、芳香族基Ar1はパラ配向結合を有し、芳香族基Ar2はメタ配向結合を有する。例えば、Ar1およびAr2は両方ともベンゼン環であるが、Ar1はパラ配向結合を有するベンゼン環であることができ、一方Ar2はメタ配向結合を有する。有用なモノマーの例には、塩化テレフタロイル、塩化イソフタロイルなどが挙げられる。幾つかの好ましい実施形態では、複数の酸モノマーには、塩化テレフタロイルおよび塩化イソフタロイルが含まれる。
【0015】
幾つかの実施形態では、複数の酸モノマーは、芳香族基Ar1を含有する55〜85モルパーセントのモノマーと、芳香族基Ar2を含有する15〜45モルパーセントのモノマーとを有する。幾つかの他の好ましい実施形態では、複数の酸モノマーには、パラ配向芳香族基を有する55〜85モルパーセントの酸モノマーと、メタ配向芳香族基を有する15〜45モルパーセントの酸モノマーとが含まれる。
【0016】
コポリマーを製造するために使用される芳香族モノマーの総量の少なくとも15パーセントは、最終コポリマーが重合溶媒に可溶であり、繊維を紡糸するのに好適であるためにメタ配向官能性を有するモノマーを含有するべきであると考えられる。「芳香族モノマーの総量」とは、一緒に加えられる全てのアミンモノマーおよび酸モノマーの合計を意味する。言い換えれば、酸モノマーの混合物がメタ配向芳香族基を有するたった15モルパーセントの酸モノマーを含有する場合、1対1のアミン−酸化学量論に基づいて、使用される芳香族モノマーの総量を15パーセントであるようにするために、アミンモノマーの少なくとも15モルパーセントはメタ配向芳香族基を持たなければならない。幾つかの実施形態では、コポリマーを製造するために使用される芳香族モノマーの総量の20〜30パーセントは、メタ配向官能性を有するモノマーを含有する。幾つかの実施形態では、パラ配向官能性を有するモノマーの最大量は、コポリマーを製造するために使用される芳香族モノマーの総量の85パーセントである。
【0017】
一実施形態では、これらの繊維は、繊維またはこの繊維から専ら製造された布が空気中で火災を起こさないことを意味する、21以上の限界酸素指数(LOI)を有する。幾つかの好ましい実施形態では、織物ステープルファイバーは少なくとも26以上のLOIを有する。
【0018】
幾つかの実施形態では、繊維は、1デニール当たり少なくとも3グラム(1デシテックス当たり2.7グラム)以上の破壊靱性を有し、幾つかの好ましい実施形態では、繊維は、1デニール当たり少なくとも4グラム(1デシテックス当たり3.6グラム)以上の破壊靱性を有する。
【0019】
布は、繊維から、またはこれらの繊維を含む紡績スフ糸もしくはマルチフィラメント連続糸から製造することができ、かかる布には、織布または編布が含まれるが、それらに限定されない。かかる布は当業者に周知である。「織」布とは、たて糸または縦方向糸と、よこ糸または横方向糸とを互いに織り合わせて、平織、千鳥綾織、バスケット織、繻子織、綾織等々の、任意の布織を生み出すことによって織機で通常形成される布を意味する。平織および綾織が取引に用いられる最も一般的な織り方であると考えられ、多くの実施形態において好ましい。
【0020】
「編」布とは、針を用いて糸ループを編成することによって通常形成される布を意味する。多くの場合、編布を製造するために、紡績スフ糸は、糸を布に変換する編機に供給される。必要ならば、多数のエンドまたは糸を、合撚か未合撚かのどちらかで編機に供給することができる;すなわち、糸の束または合撚糸の束を編機に共供給し、従来技法を用いて、布へ、または手袋などの衣服物品へ直接編むことができる。幾つかの実施形態では、繊維の均質ブレンドを有する1つ以上の紡績スフ糸と共に1つ以上の他のスフ糸または連続フィラメント糸を共供給することによって編布に機能性を付加することが望ましい。ニットの緻密度は、任意の具体的なニーズに合うように調節することができる。保護衣向け特性の非常に有効な組み合わせは、例えば、シングルジャージニットおよびテリーニットパターンに見いだされてきた。
【0021】
幾つかの特に有用な実施形態では、繊維および繊維を含有する糸は、難燃性衣類を製造するために使用することができる。幾つかの実施形態では、衣類は、紡績スフ糸から製造された保護布の本質的に1つの層を有することができる。この種の例示的な衣類には、消防士用のまたは軍人用のジャンプスーツおよびカバーオールが含まれる。かかるスーツは典型的には消防士被服上に使用され、森林火災と戦うべき区域へパラシュートで降りるために使用することができる。他の衣類には、極度の熱事象が起こる可能性がある化学処理工業または工業電気/用役などの状況で着用することができるズボン、シャツ、手袋、袖などが含まれ得る。幾つかの好ましい実施形態では、布は、1平方ヤード当たりオンスによって1平方センチメートル当たり少なくとも0.8カロリーの耐アーク性を有する。
【0022】
他の実施形態では、繊維およびこれらの繊維を含有する糸は、米国特許第5,468,537号明細書に開示されているなどの一般構成を有する多層難燃性衣類の任意の層に使用することができる。かかる衣類は一般に、各層または布構成が異なる機能を果たす、3層または3種の布構成を有する。消防士のために火炎保護を提供し、かつ、火炎からの一次防御としての機能を果たす外殻布が存在する。典型的には液体障壁であるが水蒸気にこの障壁を通過させるように選択することができる防湿層が外殻に隣接する。繊維状不織または織メタ−アラミドスクリム布上のGore−Tex(登録商標)PTFE膜またはNeoprene(登録商標)膜のラミネートが、かかる構成に典型的に使用される防湿層である。内側面クロスに貼り付けられた耐熱性繊維のバットを一般に含む、サーマルライナーが防湿層に隣接する。防湿層はサーマルライナーを乾燥して保ち、サーマルライナーは、着用者によって対処されつつある火災または熱脅威からの熱応力から着用者を守る。
【0023】
別の実施形態では、本発明は、a)アミンモノマーと複数の酸モノマーとを反応させることによってコポリマーを形成する工程であって、アミンモノマーが少なくとも80モルパーセントの4,4’ジアミノジフェニルスルホンであり、複数の酸モノマーには、
Cl−CO−Ar1−CO−Cl & Cl−CO−Ar2−CO−Cl
の構造を有するものが含まれ、芳香族基Ar1が芳香族基Ar2とは異なる工程と;b)繊維を紡糸するのに好適な溶液でコポリマーを提供する工程と;c)コポリマー溶液から繊維を紡糸する工程とを含む繊維の製造方法に関する。
【0024】
一実施形態では、スルホンモノマーから誘導されるポリマーおよびコポリマーは、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、またはそれらの混合物などのジアルキルアミド溶媒中での1種以上のジアミンモノマーと1種以上の酸塩化物モノマーとの重縮合によって好ましくは製造することができる。この種の重合の幾つかの実施形態では、塩化リチウムまたは塩化カルシウムなどの無機塩もまた存在する。必要ならば、ポリマーは、水などの非溶媒での沈殿によって単離し、中和し、洗浄し、乾燥させることができる。Wangらの中国特許出願公開第1389604A号明細書、およびChenらの同第1631941A号明細書に開示されている一般的な重合技法をこれらの溶液に適用することができ、必要ならば、Sokolovらに付与された米国特許第4,169,932号明細書に開示されている技法に従うこともできる。ポリマーはまた、直接にポリマー粉末を生成する界面重合によっても製造することができ、ポリマー粉末は次に繊維製造のための溶媒に溶解させることができる。
【0025】
ポリマーまたはコポリマーは、重合溶媒か、ポリマーまたはコポリマー用の別の溶媒かのどちらか中のポリマーまたはコポリマーの溶液を使用する、溶液紡糸によって繊維へ紡糸することができる。繊維紡糸は、当該技術分野において公知であるように、マルチフィラメント糸もしくはトウを生み出すために乾式紡糸、湿式紡糸、または乾式ジェット湿式紡糸(空隙紡糸としても知られる)により多孔紡糸口金によって成し遂げることができる。紡糸後のマルチフィラメント糸もしくはトウ中の繊維は次に、必要に応じて、安定し有用な繊維を製造するための従来技法を用いて中和する、洗浄する、乾燥させる、または熱処理するために処理することができる。例示的な乾式、湿式、および乾式ジェット湿式紡糸法は、米国特許第3,063,966号明細書;同第3,227,793号明細書;同第3,287,324号明細書;同第3,414,645号明細書;同第3,869,430号明細書;同第3,869,429号明細書;同第3,767,756号明細書;および同第5,667,743号明細書に開示されている。
【0026】
連続フィラメント繊維および連続フィラメントのマルチフィラメント糸は、当業者に周知の方法によって製造することができる。例えば、マルチフィラメント連続フィラメント糸は、撚りありもしくはなしで;または必要ならば、より高いデニール糸を形成するためにマルチプルフィラメント繊維を組み合わせて、フィラメント繊維をボビン上に直接巻き付けることによって製造することができる。
【0027】
あるいはまた、連続フィラメントは、連続フィラメントの多数のボビンをクリールに入れ(creel)、同時にフィラメントをカットしてステープルファイバーを形成する方法をはじめとする、当該技術分野で公知の様々な方法によってステープルファイバーへ変換することができる。例えば、ステープルファイバーは、真っ直ぐな(すなわち、非捲縮の)ステープルファイバーをもたらす回転カッターまたはギロチンカッターを用いて連続の真っ直ぐな繊維からカットすることができるか、またはさらに、1センチメートル当たり好ましくは8以下の捲縮の捲縮(または繰り返し屈曲)頻度の、鋸歯状捲縮をステープルファイバーの長さに沿って有する捲縮連続繊維からカットすることができる。
【0028】
ステープルファイバーはまた、捲縮としての機能を果たす変形部分を持ったステープルファイバーをもたらす連続繊維を牽切すること(stretch breaking)によって形成することができる。牽切されたステープルファイバーは、切断ゾーン調節によって制御される平均カット長を有する繊維のランダム可変マスを生成する規定の距離である1つ以上の切断ゾーンを有する牽切操作中に、連続フィラメントのトウまたは束を切断することによって製造することができる。
【0029】
一般に、これらのステープルファイバーはベールにされ;ステープルファイバーは次に、先ずステープルファイバーのベールを解く工程と、次にさらにオープナー、ブレンダー、およびカードでステープルファイバーの塊を加工してステープルファイバーのスライバーを形成する工程とを含む方法によって紡績スフ糸にされる。一般に、個々のステープルファイバーは、ステープルファイバーの不十分な解放による繊維ノットまたはスラブおよび他の主要な欠陥が最終布品質を損なう量で存在しないように、有用な布を製造するための繊維処理において標準的である程度まで解かれるかまたは分離される。カード機は、普通カードスライバーとして知られる、実質的な撚りなしのゆるく集合した繊維の連続撚糸へと繊維を分離し、整列させ、配送するために一般に用いられる。カードスライバーは、典型的には2段階延伸法によって、しかしそれに限定されずに、延伸スライバーへと処理される。
【0030】
紡績スフ糸は次に、従来の技法を用いて延伸スライバーから形成される。これらの技法には、従来の綿システム、例えば、オープンエンド紡績、リング紡績などの、短ステープル紡績法、またはステープルファイバーを糸へ撚るために空気が使用されるMurata空気ジェット紡績などのより高速の空気紡績が含まれる。布に有用な紡績糸の形成はまた、従来の羊毛システム、例えば、梳毛もしくは半梳毛リング紡績などの、長ステープルまたは牽切紡績法の使用によって達成することができる。
【0031】
加工システムにかかわらず、リング紡績は一般に、当該技術分野で周知である伝統的な長および短ステープルリング紡績法を用いて紡績スフ糸を製造するための好ましい方法である。短ステープルについては、約1.9〜5.7cm(0.75インチ〜2.25インチ)の綿システム紡績繊維長が典型的には使用される。長いステープルについては、約16.5cm(6.5インチ)以下の梳毛または羊毛システム紡績繊維が典型的には使用される。
【0032】
紡績スフ糸はまた、牽切トウ−トップステープル法(stretch−broken tow to top staple process)を用いて牽切することによって直接製造することができる。伝統的な牽切法によって形成された糸中のステープルファイバーは、典型的には長さ約18cm(7インチ)以下の長さを有する。しかしながら、牽切することによって製造された紡績スフ糸はまた、例えばPCT特許出願国際公開第00/77283号パンフレットに記載されているような方法によって約50cm(20インチ)以下の最大長さを持つステープルファイバーを有することができる。牽切されたステープルファイバーは、牽切プロセスがある程度の捲縮を繊維に与えるので、普通は捲縮を必要としない。
【0033】
試験方法
坪量値は、FTMS 191A;5041に従って得られた。
【0034】
耐アーク性試験。布の耐アーク性は、ASTM F−1959−99「被服用材料のアーク熱性能値を測定するための標準試験方法(Standard Test Method for Determining the Arc Thermal Performance Value of Materials for Clothing)」に従って測定される。各布のアーク熱性能値(ATPV)、それは当該織物を着用する人が暴露され、50%の時間のかかる暴露から第2度の火傷に相当するであろうエネルギーの量の尺度である。
【0035】
グラブ試験。布の耐グラブ性(破壊引張強度)は、ASTM D−5034−95「布の破壊強度および伸びについての標準試験方法(グラブ試験)(Standard Test Method for Breaking Strength and Elongation of Fabrics(Grab Test)」に従って測定される。
【0036】
熱保護性能(TPP)試験。布の熱保護性能は、NFPA 2112「突発的火事からの工業要員の保護のための難燃性衣類に関する基準(Standard on Flame Resistant Garments for Protection of Industrial Personnel Against Flash Fire)」に従って測定される。熱保護性能は、布が直火または放射熱に曝されるときに布の下の着用者の皮膚に連続的なおよび信頼できる保護を提供する布の能力に関する。
【0037】
垂直火炎試験。布の焦げ長さは、ASTM D−6413−99「織物の難燃性についての標準試験方法(垂直法)(Standard Test Method for Flame Resistance of Textiles(Vertical Method)」に従って測定される。
【0038】
限界酸素指数(LOI)は、ASTM G125/D2863の条件下に最初は室温で材料の火炎燃焼をちょうど起こす酸素と窒素との混合物中の、容量パーセントとして表される、酸素の最低濃度である。
【実施例】
【0039】
本発明は、以下の実施例によって例示されるが、それらによって限定されることを意図されない。
【0040】
実施例1
溶媒ジメチルアセトアミドは、使用前にP25の存在下での蒸留によって精製し、乾燥させる。機械撹拌機および窒素注入口を備えたフラスコに200グラムのこの溶媒を入れる。24.8グラムの4,4’−ジアミノジフェニルスルホンを溶媒に溶解させ、水/氷浴によって溶液を0℃に冷却する。ドライボックス中で、14.21グラムの塩化テレフタロイル(TCL)と6.09グラムの塩化イソフタロイル(ICL)との70%/30%モル混合物を混合する。かき混ぜながら酸塩化物の混合物をフラスコに加える。冷却浴を取り除き、重合を30分間続行させる。その時点で、7.4グラムの水酸化カルシウムを加えて重合の副産物であるHClを中和する。生じた材料は粘稠な溶液であり、それを繊維に紡糸し、繊維を布および衣類に加工する。
【0041】
比較例A
TCLとICLとの混合物の代わりに唯一の酸モノマーとして20.3グラムの塩化テレフタロイル(TCL)を使用することを除いて実施例1を繰り返す。TCLを加えると、ポリマーが溶液から沈殿する。生じた重合混合物はかすんだものになり、粒子を含有するので繊維を紡糸するために有用ではない。
【0042】
実施例2
酸塩化物を最初に混合せず、かき混ぜながらフラスコに別々に加えることを除いて実施例1を繰り返す。粘稠なコポリマー溶液は、その後布および衣類へ加工される繊維を形成するために脱ガス後に使用されるという結果となる。
【0043】
実施例3
手順の変更なしに溶媒ジメチルアセトアミドをN−メチルピロリドンと置き換えることを除いて実施例1を繰り返す。粘稠なコポリマー溶液は、その後布および衣類へ加工される繊維を形成するために脱ガス後に使用されるという結果となる。
【0044】
実施例4
当該実施例で加えられる酸モノマーの総重量を基準として45重量部のICLと55重量部のTCLとを使用することを除いて実施例1を繰り返す。粘稠なコポリマー溶液は、その後布および衣類へ加工される繊維を形成するために脱ガス後に使用されるという結果となる。
【0045】
実施例6
実施例1の方法のステープルファイバーを含むリング紡績糸をたて糸およびよこ糸の両方に有する、熱保護的なおよび耐久性のある布を製造する。スライバーを製造し、従来の綿システム装置によって加工し、次にリング紡績機を用いて4.0の撚り係数および約21テックス(28綿番手)の単糸サイズを有する紡績スフ糸へ紡績する。2つの単糸を次に合撚機で合撚して難燃性の二重たて糸を製造する。類似の方法および同じ撚りを用いて、24テックス(24綿番手)糸をよこ糸に使用するために製造する。前述同様に、2つのこれらの単糸を合撚して難燃性の二重よこ糸を形成する。
【0046】
糸を次にたて糸およびよこ糸として使用し、シャトル織機で布へと織り、2×1綾織および1cm当たり26エンド×17ピック(1インチ当たり72エンド×52ピック)の構成、および約215g/m2(6.5オンス/平方ヤード)の坪量を有する生機布を製造する。生機綾織布を次に熱水中で洗濯し、低い張力下に乾燥させる。洗濯した布を次に、塩基性染料を使用してジェット染色する。完成布は約231g/m2(7オンス/平方ヤード)の坪量を有する。布は、火炎または高温の近くで作業する人に好適な防護服を製造するために使用される。
【0047】
実施例7
22.3グラムの4,4’−ジアミノジフェニルスルホンと2.5グラムのパラフェニレンジアミンとのおおよそ90%/10%モル混合物を使用することを除いて実施例1を繰り返す。生じた材料は粘稠な溶液であり、それを繊維へ紡糸し、繊維を布および衣類へ加工する。
【0048】
実施例8
22.3グラムの4,4’−ジアミノジフェニルスルホンと2.5グラムのメタフェニレンジアミンとのおおよそ90%/10%モル混合物を使用し、かつ、16.89グラムの塩化テレフタロイル(TCL)と4.22グラムの塩化イソフタロイル(ICL)との80%/20%モル混合物を混合することを除いて実施例1を繰り返す。生じた材料は粘稠な溶液であり、それを繊維へ紡糸し、繊維を布および衣類へ加工する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミンモノマーと複数の酸モノマーとの反応から誘導された構造を有するコポリマーを含む繊維であって、
i)前記アミンモノマーが少なくとも80モルパーセントの4,4’ジアミノジフェニルスルホンであり、
ii)前記複数の酸モノマーには、
Cl−CO−Ar1−CO−Cl 及び Cl−CO−Ar2−CO−Cl
の構造を有するものが含まれ、
前記複数の酸モノマーが、芳香族基Ar1を含有する55〜85モルパーセントのモノマーと、芳香族基Ar2を含有する15〜45モルパーセントのモノマーとを有し、そして、
前記芳香族基Ar1がパラ配向結合を有する芳香族基であり、芳香族基Ar2がメタ配向結合を有する芳香族基である
繊維。
【請求項2】
前記複数の酸モノマーには、塩化テレフタロイル、塩化イソフタロイルおよびそれらの混合物が含まれる請求項1に記載の繊維。
【請求項3】
21以上の限界酸素指数を有する請求項1に記載の繊維を含む難燃性糸。
【請求項4】
26以上の限界酸素指数を有する請求項3に記載の繊維を含む難燃性糸。
【請求項5】
請求項3に記載の繊維を含む難燃性糸であって、1デニール当たり3グラム(1デシテックス当たり2.7グラム)以上の靱性を有する糸。
【請求項6】
請求項5に記載の繊維を含む難燃性糸であって、1デニール当たり4グラム(1デシテックス当たり3.6グラム)以上の靱性を有する糸。
【請求項7】
前記繊維が連続フィラメントとして糸中に存在する請求項3に記載の難燃性糸。
【請求項8】
前記繊維がステープルファイバーとして糸中に存在する請求項3に記載の難燃性糸。
【請求項9】
請求項1に記載の繊維を含む布。
【請求項10】
請求項1に記載の繊維を含む防護服。
【請求項11】
a)アミンモノマーと複数の酸モノマーとを反応させることによってコポリマーを形成する工程であって、
i)前記アミンモノマーが少なくとも80モルパーセントの4,4’ジアミノジフェニルスルホンであり、
ii)前記複数の酸モノマーには、
Cl−CO−Ar1−CO−Cl 及び Cl−CO−Ar2−CO−Cl
の構造を有するものが含まれ、
前記複数の酸モノマーが、芳香族基Ar1を含有する55〜85モルパーセントのモノマーと、芳香族基Ar2を含有する15〜45モルパーセントのモノマーとを有し、前記芳香族基Ar1がパラ配向結合を有する芳香族基であり、芳香族基Ar2がメタ配向結合を有する芳香族基である
工程と、
b)繊維を紡糸するのに好適な溶液で前記コポリマーを提供する工程と、
c)前記コポリマー溶液から繊維を紡糸する工程と
を含む繊維の製造方法。
【請求項12】
前記複数の酸モノマーには、塩化テレフタロイルおよび塩化イソフタロイルが含まれる請求項11に記載の繊維の製造方法。

【公表番号】特表2010−537076(P2010−537076A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−522060(P2010−522060)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【国際出願番号】PCT/US2008/073967
【国際公開番号】WO2009/026489
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】