説明

5−アミノピラゾール誘導体及びその塩の製造方法

【課題】簡便で高収率かつ高純度に表される5−アミノピラゾール誘導体及びその塩の製造方法の提供。
【解決手段】下記(A)〜(C)の工程を含み、これらの工程を順次行う。(A)一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物とを反応させて一般式(3)で表される中間体を誘導する(B)一般式(3)で表される中間体と一般式(4)で表されるヒドラジン誘導体とを反応させて一般式(5)で表される5−アミノピラゾール誘導体を得る(C)前記(B)工程に連続して、一般式(5)で表される5−アミノピラゾール誘導体に対して酸を用いて造塩処理を行う。


(式中、R、Rは水素原子又は置換基を表し、EWGは電子求引性基を表し、Xはアルキルオキシ基、ハロゲン原子等を表し、L及びLは脱離基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5−アミノピラゾール誘導体及びその塩の製造方法に関するものである。より詳細には、本発明は、5−アミノピラゾール誘導体及びその塩を簡便で高収率かつ高純度に製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
5−アミノピラゾール誘導体は、写真用添加剤,増感色素,染料,顔料,電子材料,医農薬品などの機能性化合物の中間体として有用な化合物であり、合成法は古くから知られている。例えば、特許文献1では、ヒドロキシル基、カルボキシル基又はスルホ基が置換した5−アミノピラゾール誘導体や、ヒドロキシル基、カルボキシル基又はスルホ基が置換した5−アミノ−4−シアノピラゾール誘導体(ジアゾ成分)を製造する方法が開示され、特許文献2では、5−ヒドラジノ−1,3−イソフタル酸とエトキシメチルデンマロノニトリルから定量的に5−アミノピラゾール誘導体を製造する方法が開示されている。しかし、これらの製造法には、置換基によってその反応性、単離収率、純度が大きく低下したり、異性体の生成により反応選択性に劣ったりするなど、その汎用性に課題が残されている。
また、特許文献3では、合成した5−アミノピラゾール誘導体をカラムクロマトグラフィーにより精製する製造例が記載されているが、精製方法が大量生産には適しておらず、またその収率も低いと考えられる。
非特許文献1には、エトキシメチリデンマロノニトリルやエトキシメチルデン酢酸エチル等のメチリデン化合物類の合成が開示されている。記載されている方法は何れも目的のメチリデン化合物の単離に減圧蒸留などの精製を伴い、安価製造には適していない。また反応率向上をねらい触媒の検討がなされているが、顕著な効果が得られていない。
【0003】
このように、5−アミノピラゾール誘導体の製造において、更に安価合成を目指すには、中間体となるメチリデン化合物を定量的に誘導し、続けて5−アミノピラゾールを定量的に誘導し、高純度品を高収率で得ることが望まれるが、このような一貫合成の技術は見出されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−62353号公報
【特許文献2】国際公開第06/082669号
【特許文献3】米国特許第7524840号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Reuben G.Jones,J.Am.Chem.Soc.,74,4889(1952).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、簡便で高収率かつ高純度に以下の一般式(5)で表される5−アミノピラゾール誘導体及びその塩の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従来のこうした課題を克服すべく検討した結果、特定の反応条件を用いることで、副成分の生成を抑制して目的の5−アミノピラゾール誘導体を誘導することができ、更に反応液に酸を添加して塩に変換することで、目的の5−アミノピラゾール誘導体を高収率、高純度にて反応液より単離することができることを見出した。すなわち、以下の一般式(5)で表される化合物を製造する際に、以下の一般式(3)で表される化合物と以下の一般式(4)で表される化合物を特定の条件で反応させることで副成分の生成が抑制された。また一般式(5)で表される化合物を造塩することにより溶剤溶解性が低下するので、単離時の濾過や洗浄によるロスが抑制され、結果として優先的に不純物が除去されるため、高純度品が得られた。
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、Rは水素原子又は置換基を表し、EWGは電子求引性基を表し、Rは水素原子又は置換基を表し、Xはアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アミノ基又はハロゲン原子を表す。)
【0010】
すなわち、上記課題は以下の手段により達成することができる。
以下に具体的手段を以下に示す。
【0011】
〔1〕
下記(A)、(B)及び(C)の工程を含み、これらの工程を順次行うことを特徴とする5−アミノピラゾール誘導体の塩の製造方法。
(A) 一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物とを反応させて一般式(3)で表される中間体を誘導する工程
(B) 一般式(3)で表される中間体と一般式(4)で表されるヒドラジン誘導体とを反応させて一般式(5)で表される5−アミノピラゾール誘導体を得る工程
(C) 一般式(5)で表される5−アミノピラゾール誘導体に対して造塩処理を行う工程
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、Rは水素原子又は置換基を表し、EWGは電子求引性基を表し、Rは水素原子又は置換基を表し、Xはアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アミノ基又はハロゲン原子を表し、L及びLはそれぞれ独立に脱離基を表す。)
〔2〕
前記(A)、(B)及び(C)の工程を連続して行うことを特徴とする〔1〕に記載の5−アミノピラゾール誘導体の塩の製造方法。
〔3〕
前記(A)工程において、反応促進剤として、酸無水物及びpKaが−3〜6の酸からなる群より選ばれた少なくとも1つを用いることを特徴とする〔1〕又は〔2〕の項に記載の5−アミノピラゾール誘導体の塩の製造方法。
〔4〕
前記(A)の工程において、一般式(2)で表される化合物に対する前記反応促進剤のモル比が1:0.01〜1:5.00の範囲であることを特徴とする〔3〕に記載の5−アミノピラゾール誘導体の塩の製造方法。
〔5〕
前記(B)工程において、前記一般式(3)で表される中間体1当量に対する前記一般式(4)で表されるヒドラジン誘導体の当量が1.0〜2.0の範囲であることを特徴とする〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の5−アミノピラゾール誘導体の塩の製造方法。
〔6〕
前記一般式(5)で表される5−アミノピラゾール誘導体1当量に対する前記酸の当量が0.5〜4.0の範囲であることを特徴とする〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載の5−アミノピラゾール誘導体の塩の製造方法。
〔7〕
前記酸が、酢酸、燐酸、塩酸、硫酸、シュウ酸、メタンスルホン酸、より選択される少なくとも1種であることを特徴とする〔3〕〜〔6〕のいずれか1項に記載の5−アミノピラゾール誘導体の塩の製造方法。
〔8〕
前記(C)工程の反応溶媒として、アルコール、炭化水素、酢酸エステル、ケトン及び芳香族炭化水素からなる群より選ばれた少なくとも1種を用いることを特徴とする〔1〕〜〔7〕のいずれか1項に記載の5−アミノピラゾール誘導体の塩の製造方法。
〔9〕
前記(C)工程が、pH0〜4の条件下で行われることを特徴とする〔1〕〜〔8〕のいずれか1項に記載の5−アミノピラゾール誘導体の塩の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の製造方法によれば、一般式(5)で表される5−アミノピラゾール誘導体及びその塩が、簡便で高収率かつ高純度に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例6〜11における濃硫酸の当量と収率の関係の図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施について詳細に説明する。
まず、本明細書において用いられる置換基について若干説明する。本明細書において用いられる置換基としては、以下の基(これらの基を「置換基A」と称する)が挙げられる。
例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、複素環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルキルオキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルキルオキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル又はアリールスルホニルアミノ基、ヒドラジノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル又はアリールスルフィニル基、アルキル又はアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール又は複素環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基が例として挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよく、更なる置換基としては、以上に説明した置換基群Aから選択される基を挙げることができる。
【0017】
本明細書において用いられる脂肪族基とは、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基を意味する。また、本明細書で用いられる芳香族基とは、アリール基及び置換アリール基を意味する。
【0018】
更に詳しくは、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0019】
アルキル基としては、直鎖、分岐、環状の置換若しくは無置換のアルキル基が挙げられ、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えば、アルキルオキシ基、アルキルチオ基のアルキル基)もこのような概念のアルキル基を表す。詳細には、アルキル基としては、好ましくは、炭素数1から30のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−オクチル基、エイコシル基、2−クロロエチル基、2−シアノエチル基、2―エチルヘキシル基等が挙げられ、シクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数3から30の置換又は無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基等が挙げられ、ビシクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数5から30の置換若しくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5から30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基、例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル基、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル基等が挙げられる。
【0020】
アルケニル基としては、直鎖、分岐、環状の置換若しくは無置換のアルケニル基が挙げられ、シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を包含する。詳細には、アルケニル基としては、好ましくは、炭素数2から30の置換又は無置換のアルケニル基、例えば、ビニル基、アリル基、プレニル基、ゲラニル基、オレイル基等が挙げられ、シクロアルケニル基としては、好ましくは、炭素数3から30の置換若しくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3から30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基、例えば、2−シクロペンテン−1−イル基、2−シクロヘキセン−1−イル基等が挙げられ、ビシクロアルケニル基としては、置換若しくは無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5から30の置換若しくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基、例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル基、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル基等が挙げられる。
アルキニル基としては、好ましくは、炭素数2から30の置換又は無置換のアルキニル基、例えば、エチニル基、プロパルギル基、トリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。
【0021】
アリール基としては、好ましくは、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリール基、例えば、フェニル基、p−トリル基、ナフチル基、m−クロロフェニル基、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル基等が挙げられる。
複素環基としては、好ましくは、5又は6員の置換若しくは無置換の芳香族若しくは非芳香族の複素環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、更に好ましくは、炭素数3から30の5又は6員の芳香族の複素環基であり、単環構造であっても、2つ以上の環が縮合した多環構造であってもよい。また、上記複素環基としては、N、O、S原子のいずれかを少なくとも含む複素環基が好ましい。例えば、チエニル基、フリル基、ピロリル基、インドリル基、イミダゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ピラゾリル基、インダゾリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、イソチアゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、イソオキサゾリル基、1,2,4−チアジアゾリル基、1,3,4−チアジアゾリル基、1,2,4−オキサジアゾリル基、1,3,4−オキサジアゾリル基、トリアゾリル基、ピリジル基、ピラジル基、ピリミジル基、ピリダジル基、1,3,5−トリアジル基、キノリル基、イソキノリル基、フタラジニル基等が挙げられる。
アルキルオキシ基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルキルオキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、2−メトキシエトキシ基等が挙げられる。
【0022】
アリールオキシ基としては、好ましくは、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−t−ブチルフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ基等が挙げられる。
シリルオキシ基としては、好ましくは、炭素数0から20の置換若しくは無置換のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ基、ジフェニルメチルシリルオキシ基等が挙げられる。
複素環オキシ基としては、好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換の複素環オキシ基、例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基等が挙げられる。
アシルオキシ基としては、好ましくは、ホルミルオキシ基、炭素数2から30の置換若しくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ基等が挙げられる。
カルバモイルオキシ基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ基、モルホリノカルボニルオキシ基、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ基、N−n−オクチルカルバモイルオキシ基等が挙げられる。
【0023】
アルキルオキシカルボニルオキシ基としては、好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換アルキルオキシカルボニルオキシ基、例えば、メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、t−ブトキシカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基等が挙げられる。
アリールオキシカルボニルオキシ基としては、好ましくは、炭素数7から30の置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ基、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ基、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ基等が挙げられる。
アミノ基としては、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、複素環アミノ基を含み、好ましくは、アミノ基、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアニリノ基、例えば、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N−メチル−アニリノ基、ジフェニルアミノ基等が挙げられる。
アシルアミノ基としては、好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ基等が挙げられる。
【0024】
アミノカルボニルアミノ基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアミノカルボニルアミノ基、例えば、カルバモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ基、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ基、モルホリノカルボニルアミノ基等が挙げられる。
アルキルオキシカルボニルアミノ基としては、好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換アルキルオキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、t−ブトキシカルボニルアミノ基、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ基等が挙げられる。
アリールオキシカルボニルアミノ基としては、好ましくは、炭素数7から30の置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ基、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ基、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ基等が挙げられる。
スルファモイルアミノ基としては、好ましくは、炭素数0から30の置換若しくは無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ基、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ基等が挙げられる。
【0025】
アルキル又はアリールスルホニルアミノ基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルキルスルホニルアミノ基、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールスルホニルアミノ基、例えば、メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ基、p−メチルフェニルスルホニルアミノ基等が挙げられる。
アルキルチオ基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルキルチオ基、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n−ヘキサデシルチオ基等が挙げられる。
アリールチオ基としては、好ましくは、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールチオ基、例えば、フェニルチオ基、p−クロロフェニルチオ基、m−メトキシフェニルチオ基等が挙げられる。
複素環チオ基としては、好ましくは、炭素数2から30の置換又は無置換の複素環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ基、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ基等が挙げられる。
スルファモイル基としては、好ましくは、炭素数0から30の置換若しくは無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル基、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−アセチルスルファモイル基、N−ベンゾイルスルファモイル基、N−(N‘−フェニルカルバモイル)スルファモイル基等が挙げられる。
【0026】
アルキル又はアリールスルフィニル基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換又は無置換のアルキルスルフィニル基、6から30の置換又は無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、p−メチルフェニルスルフィニル基等が挙げられる。
アルキル又はアリールスルホニル基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換又は無置換のアルキルスルホニル基、6から30の置換又は無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、p−メチルフェニルスルホニル基等が挙げられる。
アシル基としては、好ましくは、ホルミル基、炭素数2から30の置換又は無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7から30の置換若しくは無置換のアリールカルボニル基、炭素数2から30の置換若しくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合している複素環カルボニル基、例えば、アセチル基、ピバロイル基、2−クロロアセチル基、ステアロイル基、ベンゾイル基、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル基、2−ピリジルカルボニル基、2−フリルカルボニル基等が挙げられる。
アリールオキシカルボニル基としては、好ましくは、炭素数7から30の置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル基、o−クロロフェノキシカルボニル基、m−ニトロフェノキシカルボニル基、p−t−ブチルフェノキシカルボニル基等が挙げられる。
【0027】
アルキルオキシカルボニル基としては、好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換アルキルオキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、n−オクタデシルオキシカルボニル基等が挙げられる。
カルバモイル基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のカルバモイル基、例えば、カルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル基、N−(メチルスルホニル)カルバモイル基等が挙げられる。
アリール又は複素環アゾ基としては、好ましくは炭素数6から30の置換若しくは無
置換のアリールアゾ基、炭素数3から30の置換若しくは無置換の複素環アゾ基、例えば、フェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ等が挙げられる。
【0028】
イミド基としては、好ましくは、N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基等が挙げられる。
ホスフィノ基としては、好ましくは、炭素数0から30の置換若しくは無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ基、ジフェニルホスフィノ基、メチルフェノキシホスフィノ基等が挙げられる。
ホスフィニル基としては、好ましくは、炭素数0から30の置換若しくは無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル基、ジオクチルオキシホスフィニル基、ジエトキシホスフィニル基等が挙げられる。
ホスフィニルオキシ基としては、好ましくは、炭素数0から30の置換若しくは無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ基、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ基等が挙げられる。
ホスフィニルアミノ基としては、好ましくは、炭素数0から30の置換若しくは無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ基、ジメチルアミノホスフィニルアミノ基が挙げられる。
シリル基としては、好ましくは、炭素数0から30の置換若しくは無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基等が挙げられる。
【0029】
上記の置換基の中で、水素原子を有するものは、該水素原子が上記の置換基で置換されていても良い。そのような置換基の例としては、アルキルカルボニルアミノスルホニル基、アリールカルボニルアミノスルホニル基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基が挙げられる。その例としては、メチルスルホニルアミノカルボニル基、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル基、アセチルアミノスルホニル基、ベンゾイルアミノスルホニル基が挙げられる。
【0030】
本発明における電子求引性基とは、電子効果で電子求引的な性質を有する置換基であり、置換基の電子求引性や電子供与性の尺度であるハメットの置換基定数σp値を用いれば、σp値が大きい置換基である。例えば、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、スルホ基、トリフルオロメチル基、アルキルオキシカルボニル基、アシル基などが挙げられる。
ハメットの置換基定数σp値について若干説明する。ハメット則は、ベンゼン誘導体の反応又は平衡に及ぼす置換基の影響を定量的に論ずるため、1935年にL.P.Hammettより提唱された経験則であるが、これは今日広く妥当性が認められている。ハメット則に求められた置換基定数にはσp値とσm値があり、これらの値は多くの一般的な成書に見出すことができるが、例えば、J.A.Dean編“Lange’s Handbook of Chemistry”第12版、1979年(Mc Graw−Hill)や「化学の領域」増刊、122号、96〜103頁、1979年(南光堂)に詳しく記載されている。
【0031】
本発明の製造方法について説明する。
(1)5−アミノピラゾール誘導体の塩の製造方法
本発明の5−アミノピラゾール誘導体の塩の製造方法は、下記(A)、(B)及び(C)の工程を含み、これらの工程を順次行うことを特徴とする。
(A) 一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物とを反応させて一般式(3)で表される中間体を誘導する工程
(B) 一般式(3)で表される中間体と一般式(4)で表されるヒドラジン誘導体とを反応させて一般式(5)で表される5−アミノピラゾール誘導体を得る工程
(C) 一般式(5)で表される5−アミノピラゾール誘導体に対して造塩処理を行う工程
【0032】
【化3】

【0033】
(式中、Rは水素原子又は置換基を表し、EWGは電子求引性基を表し、Rは水素原子又は置換基を表し、Xはアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アミノ基又はハロゲン原子を表し、L及びLはそれぞれ独立に脱離基を表す。)
【0034】
また、前記(A)、(B)及び(C)の工程は、連続して行うことが好ましい。ここで「連続して行う」とは、各工程の間に単離操作や移液を行うことなく一貫して行うことをいう。これらの工程を連続して行うことにより、操作が簡便になり、移液等の操作に伴う中間体及び目的物のロスが抑制され、他にも所要時間の短縮や省スペース等のメリットを生むことができ、結果として製造コスト低減に繋がる。
【0035】
以下、一般式(1)〜(5)で表される化合物について説明する。
【0036】
一般式(1)について説明する。
は水素原子又は置換基を表し、置換基としては、置換基Aが挙げられる。好ましくは、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基若しくはアリール基又は複素環基(例えば、ピリジン環基、ピリミジン環基、ベンゾチアゾール環基、ベンゾオキサゾール環基、ベンズイミダゾール環基、チアゾール環基、チアジアゾール環基、イソチアゾール環基又はトリアジン環基など)であり、より好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、フェニル基、ピリジン環基、ピリミジン環基、ベンゾチアゾール環基、チアゾール環基、イソチアゾール環基、トリアジン環基であり、更に好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基又はフェニル基であり、最も好ましくは、水素原子、メチル基又はフェニル基である。
【0037】
は更に置換基を有することができ、Rが置換基を有する場合は、該置換基として前記置換基Aが挙げられる。置換基Aの中でも原料の入手性に優れる点及び5−アミノピラゾール誘導体の製造におけるろ過性、生産性の観点で炭素数1〜15のアルキル基、炭素数1〜15のアリール基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、炭素数0〜15のアミノ基、炭素数1〜15のアミノカルボニルアミノ基、炭素数1〜15の複素環基、炭素数1〜15のアシルアミノ基、炭素数1〜15のカルバモイル基、炭素数0〜15のスルファモイルアミノ基、炭素数0〜15のスルファモイル基、スルホ基及びカルボキシル基が好ましく、炭素数1〜10のアルキル基、ヒドロキシル基、炭素数0〜10のアミノ基、炭素数1〜10のアミノカルボニルアミノ基、炭素数1〜10の複素環基、炭素数1〜10のアシルアミノ基、炭素数1〜10のカルバモイル基、炭素数0〜10のスルファモイルアミノ基、炭素数0〜10のスルファモイル基、スルホ基及びカルボキシル基が更に好ましく、ヒドロキシル基、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数0〜5のアミノ基、炭素数0〜5のカルバモイル基、炭素数1〜5の複素環基、炭素数1〜5のアシルアミノ基、炭素数1〜5のカルバモイル基、スルホ基及びカルボキシル基が最も好ましい。
【0038】
Xはアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アミノ基又はハロゲン原子を表し、好ましくは炭素数1〜10のアルキルオキシ基、アミノ基又はハロゲン原子、より好ましくは、炭素数1〜4のアルキルオキシ基、アミノ基である。Xがこれらの置換基を表す場合、一般式(3)で表される化合物を誘導する上で、その原料の入手性、一般式(3)で表される化合物を製造する際の生産性に優れており、一般式(5)で表される化合物を製造する上で、生産性が良好でかつろ過性に優れ、製造適性がある。
【0039】
一般式(1)中のL及びLはそれぞれ独立に脱離基を表す。すなわち、一般式(1)と一般式(2)の反応によって容易に脱離する基を表す。
【0040】
脱離基とは、一般式(2)の一般式(1)への求核反応によって新たに共有単結合が形成することによって、一般式(1)の置換基がL、L及びXの置換する炭素原子からLあるいはLが離脱する置換基であることを意味する。一般的にはこれらの基を脱離基という。このLあるいはLはプロトンを受け取って安定なノニオンを形成する。更に反応が進行すると、先の共有単結合が二重結合へ誘導され、これに伴い先の離脱で残存するLあるいはLのどちらかが分子中のプロトンを伴って分子から排除される。上記2種の反応は、脱離基の離脱性によって反応が進行しなかったり、進行に時間を要したりする。すなわち、一般式(1)と一般式(2)の反応は、脱離基L及びLの離脱性でコントロールされ、離脱が容易なほど反応は進行しやすい。
【0041】
及びLの好ましい例としてはそれぞれ独立に、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アミノ基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アルキルスルホニルオキシ基又はアリールスルホニルオキシ基を表し、より好ましくは炭素数1〜6のアルキルオキシ基、炭素数1〜6のアルキルスルホニルオキシ基又は炭素数6〜12のアリールスルホニルオキシ基であり、特に好ましくは、メトキシ基又はエトキシ基である。上記ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アミノ基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、及びアルキルスルホニルオキシ基又はアリールスルホニルオキシ基中のアルキルスルホニル又はアリールスルホニルについては前記置換基Aに例示された好ましいもの等が挙げられる。そして、L及びLは前述の反応時に、置換基Xよりも選択的に優先して脱離する置換基であるか、L及びLはXと同一の置換基を表す。
以上をまとめると、本発明の製造方法で使用される一般式(1)のL及びLは、下記(イ)と(ロ)の組み合わせからなるものが好ましい。
(イ)Lが表す脱離基として、特に好ましくはメトキシ基又はエトキシ基である。
(ロ)Lが表す脱離基として、特に好ましくはメトキシ基又はエトキシ基である。
なお、一般式(1)で表される化合物のL及びLの組み合わせについては、L及びLの少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、全てのL及びLが前記の好ましい基である化合物が最も好ましい。
一般式(1)で表される化合物は一般式(1’)で表される化合物であることがより好ましい。
【0042】
【化4】

【0043】
(Xはアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アミノ基又はハロゲン原子を表す。Lは脱離基を表す。Rは脂肪族基、アリール基、複素環基、アルキルスルホニル基又はアリールスルホニル基を表す。)
【0044】
及びXは前述のL、Xと同義であり、好ましい例も同義である。
は脂肪族基、アリール基、複素環基、アルキルスルホニル基又はアリールスルホニル基を表し、より好ましくは脂肪族基であり、更に好ましくはアルキル基であり、特に好ましくは炭素数1〜10のアルキル基であり、最も好ましくは炭素数1〜5のアルキル基である。これらの基を選択することにより、一般式(3)で表される化合物を誘導する上で、高収率化が達成でき、安価製造が可能となる。
【0045】
以上をまとめると、本発明の製造方法で使用される一般式(1’)のX、L及びRは、下記(イ)〜(ハ)の組み合わせからなるものが好ましい。
(イ)Xが表すアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アミノ基又はハロゲン原子として、特に好ましくは、メトキシ基又はエトキシ基である。
(ロ)Lが表す脱離基として、特に好ましくはメトキシ基又はエトキシ基である。
(ハ)Rが表す脂肪族基、アリール基、複素環基、アルキルスルホニル基又はアリールスルホニル基において、特に好ましくは炭素数1〜10のアルキル基であり、最も好ましくは炭素数1〜5のアルキル基である。
【0046】
なお、一般式(1’)で表される化合物のX、L及びRの組み合わせについては、X、L及びRの少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、X、L及びRの2以上が前記の好ましい基である化合物がより好ましく、全てのX、L及びRが前記の好ましい基である化合物が最も好ましい。
一般式(1’)で表される化合物は、一般式(1’’)で表される化合物が更に好ましい。
【0047】
【化5】

【0048】
(Xはアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アミノ基又はハロゲン原子を表す。R及びRはそれぞれ独立に脂肪族基、アリール基、複素環基、アルキルスルホニル基又はアリールスルホニル基を表わす。)
【0049】
Xは前述のXと同義であり、好ましい例も同義である。
及びRはそれぞれ独立に脂肪族基、アリール基、複素環基、アルキルスルホニル基又はアリールスルホニル基を表わす。より好ましくは脂肪族基であり、更に好ましくはアルキル基であり、特に好ましくは炭素数1〜10のアルキル基であり、最も好ましくは炭素数1〜5のアルキル基である。これらの基を選択することにより、一般式(2)で表される化合物を誘導する上で、高収率化が達成でき、安価製造が可能となる。
【0050】
以上をまとめると、本発明の製造方法で使用される一般式(1’’)のX、R及びRは、下記(イ)〜(ハ)の組み合わせからなるものが好ましい。
(イ)Xが表すアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アミノ基又はハロゲン原子として、特に好ましくは、メトキシ基又はエトキシ基である。
(ロ)Rが表す脂肪族基、アリール基、複素環基、アルキルスルホニル基又はアリールスルホニル基において、特に好ましくは最も好ましくは炭素数1〜5のアルキル基である。
(ハ)Rが表す脂肪族基、アリール基、複素環基、アルキルスルホニル基又はアリールスルホニル基において、特に好ましくは最も好ましくは炭素数1〜5のアルキル基である。
【0051】
なお、一般式(1’’)で表される化合物のX、R及びRの組み合わせについては、X、R及びRの少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、X、R及びRの2以上が前記の好ましい基である化合物がより好ましく、全てのX、R及びRが前記の好ましい基である化合物が最も好ましい。
【0052】
以下に、一般式(1)で表される化合物としては下記の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【化6】

【0053】
【化7】

【0054】
次に、一般式(2)について説明する。
【0055】
EWGは、電子求引性基を表し更に置換基を有していてもよい。
EWGにおける電子求引性基としては前記した電子求引性基を挙げることができ、好ましくは、σp値が0.2以上の電子求引性基であり、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アルキル又はアリールスルホニル基、アシル基、カルバモイル基、カルボキシル基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルオキシカルボニル基及びアリールオキシカルボニル基であり、より好ましくは、シアノ基、カルバモイル基、カルボキシル基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルオキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、アルキルオキシカルボニル基及びアリールオキシカルボニル基であり、特に好ましくは、シアノ基、アルキルオキシスルホニル基又はアルキルオキシカルボニル基である。
これらの基は更に置換基を有していても良い。更なる置換基としては、炭素数1〜15のアルキル基、炭素数1〜15のアリール基が好ましく、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアリール基が好ましく、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアリール基が更に好ましい。
【0056】
一般式(2)で表される化合物は一般式(2’)で表される化合物であることがより好ましい。
【0057】
【化8】

【0058】
(Lは、−C(O)−及び−S(O)−を表す。Rは脂肪族基、アリール基、複素環基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基及びアミノ基を表す。)
【0059】
Lは、−C(O)−及び−S(O)−を表す。好ましくは、−C(O)−である。
は脂肪族基、アリール基、複素環基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基及びアミノ基を表す。これらの基は更なる置換基を有していても良い。Rとして好ましくはアルキルオキシ基、アリールオキシ基及びアミノ基であり、更に好ましくはアルキルオキシ基であり、特に好ましくは炭素数1〜5のアルキルオキシ基である。Rが更なる置換基を有する場合の置換基は、後述のRが置換基を有する場合の置換基と同義である。
【0060】
すなわち、本発明の製造方法で使用される一般式(2’)のL及びRは、下記(イ)と(ロ)の組み合わせからなるものが好ましい。
(イ)Lが表す−C(O)−及び−S(O)−において、より好ましくは、−C(O)−である。
(ロ)Rが表す脂肪族基、アリール基、複素環基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基及びアミノ基において、特に好ましくは炭素数1〜5のアルキルオキシ基である。
なお、一般式(2’)で表される化合物のX、L及びRの組み合わせについては、X、L及びRの少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、全てのX、L及びRが前記の好ましい基である化合物が最も好ましい。
一般式(2’)で表される化合物は一般式(2’’)で表される化合物であることがより好ましい。
【0061】
【化9】

【0062】
(Rは脂肪族基、アリール基、複素環基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基及びアミノ基を表す。)
【0063】
は上記で説明した際のRと同義であり、好ましい例も同義である。
一般式(2)で表される化合物としては下記の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0064】
【化10】

【0065】
次に、一般式(3)について説明する。
【0066】
【化11】

【0067】
一般式(3)のR、X及びEWGは、一般式(1)及び一般式(2)におけるR、X及びEWGと同義であり、また、好ましい例も同義である。
以上をまとめると、本発明の製造方法で使用される一般式(3)のR、X、EWGは、下記(イ)〜(ハ)の組み合わせからなるものが好ましい。
(イ)EWGが表す電子求引性基として、特に好ましくは、シアノ基、アルキルオキシスルホニル基又はアルキルオキシカルボニル基である。
(ロ)Rが表す水素原子又は置換基として、特に好ましくは、水素原子、アルキル基及びアルキルチオ基、アリール基、複素環基である。
(ハ)Xが表すアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アミノ基又はハロゲン原子として、特に好ましくは、メトキシ基又はエトキシ基である。
【0068】
なお、一般式(3)で表される化合物のR、X、EWGの組み合わせについては、R、X、EWGの少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、R、X、EWGの2以上が前記の好ましい基である化合物がより好ましく、全てのR、X、EWGが前記の好ましい基である化合物が最も好ましい。
【0069】
一般式(3)で表される化合物は一般式(3’)で表される化合物であることがより好ましい。
【0070】
【化12】

【0071】
(Xはアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アミノ基又はハロゲン原子を表す。EWGは電子求引性基を表す。)
【0072】
X及びEWGは一般式(3)におけるX及びEWGと同義であり、好ましい例も同様である。
以上をまとめると、本発明の製造方法で使用される一般式(3’)のEWG、Xは、下記(イ)と(ロ)の組み合わせからなるものが好ましい。
(イ)EWGが表す電子求引性基として、特に好ましくは、シアノ基、アルキルオキシスルホニル基又はアルキルオキシカルボニル基である。
(ロ)Xが表すアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アミノ基又はハロゲン原子として、特に好ましくは、メトキシ基又はエトキシ基である。
【0073】
なお、一般式(3’)で表される化合物のEWG、Xの組み合わせについては、EWG、Xの少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、全てのEWG、Xが前記の好ましい基である化合物が最も好ましい。
更に、一般式(3’)で表される化合物は一般式(3’’)で表される化合物であることが更に好ましい。
【0074】
【化13】

【0075】
(Xはアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アミノ基又はハロゲン原子を表す。Lは、−C(O)−及び−S(O)−を表す。Rは脂肪族基、アリール基、複素環基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基及びアミノ基を表す。)
【0076】
Xは一般式(3)におけるXと同義であり、好ましい例も同義である。
【0077】
Lは、好ましくは、−C(O)−である。
は脂肪族基、アリール基、複素環基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基及びアミノ基を表す。これらの基は更なる置換基を有していても良い。Rとして好ましくはアルキルオキシ基、アリールオキシ基及びアミノ基であり、更に好ましくはアルキルオキシ基であり、特に好ましくは炭素数1〜5のアルキルオキシ基である。Rが更なる置換基を有する場合の置換基は、後述のRが置換基を有する場合の置換基と同義である。
上記を選択することにより、安価な原料を調達でき、このため安価に製造することが可能となり、製造における生産性やろ過性が良好となる。
【0078】
以上をまとめると、本発明の製造方法で使用される一般式(4’’)のX、L及びRは、下記(イ)〜(ハ)の組み合わせからなるものが好ましい。
(イ)Xが表すアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アミノ基又はハロゲン原子として、特に好ましくは、メトキシ基又はエトキシ基である。
(ロ)Lが表す−C(O)−及び−S(O)−において、より好ましくは、−C(O)−である。
(ハ)Rが表す脂肪族基、アリール基、複素環基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基及びアミノ基において、特に好ましくは炭素数1〜5のアルキルオキシ基である。
【0079】
なお、一般式(3’’)で表される化合物のX、L及びRの組み合わせについては、X、L及びRの少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、X、L及びRの2以上が前記の好ましい基である化合物がより好ましく、全てのX、L及びRが前記の好ましい基である化合物が最も好ましい。
【0080】
一般式(3)で表される化合物としては下記の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0081】
【化14】

【0082】
【化15】

【0083】
【化16】

【0084】
【化17】

【0085】
【化18】

【0086】
【化19】

【0087】
次に、一般式(4)について説明する。
【0088】
【化20】

【0089】
は水素原子又は置換基を表し、置換基としては、置換基Aが挙げられる。好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基、アリール基又は複素環基(例えば、ピリジン環基、ピリミジン環基、ベンゾチアゾール環基、ベンゾオキサゾール環基、ベンズイミダゾール環基、チアゾール環基、チアジアゾール環基、イソチアゾール環基又はトリアジン環基など)であり、より好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、フェニル基、ピリジン環基、ピリミジン環基、ベンゾチアゾール環基、チアゾール環基、イソチアゾール環基又はトリアジン環基であり、最も好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基又はt−ブチル基である。
【0090】
は更に置換基を有することができ、Rが置換基を有する場合は、該置換基として前記置換基Aが挙げられる。置換基Aの中でも炭素数1〜15のアルキル基、炭素数1〜15のアリール基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、炭素数0〜15のアミノ基、炭素数1〜15のアミノカルボニルアミノ基、炭素数1〜15の複素環基、炭素数1〜15のアシルアミノ基、炭素数1〜15のカルバモイル基、炭素数0〜15のスルファモイルアミノ基、炭素数0〜15のスルファモイル基、スルホ基及びカルボキシル基が好ましく、炭素数1〜10のアルキル基、ヒドロキシル基、炭素数0〜10のアミノ基、炭素数1〜10のアミノカルボニルアミノ基、炭素数1〜10の複素環基、炭素数1〜10のアシルアミノ基、炭素数1〜10のカルバモイル基、炭素数0〜10のスルファモイルアミノ基、炭素数0〜10のスルファモイル基、スルホ基及びカルボキシル基が更に好ましく、ヒドロキシル基、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数0〜5のアミノ基、炭素数0〜5のカルバモイル基、炭素数1〜5の複素環基、炭素数1〜5のアシルアミノ基、炭素数1〜5のカルバモイル基、スルホ基及びカルボキシル基が最も好ましい。
【0091】
以上をまとめると本発明の製造方法で使用される一般式(4)は、下記(イ)と(ロ)の組み合わせからなるものが好ましい。
(イ)Rは、好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基又はt−ブチル基である。
(ロ)Rが置換基を有する場合は、置換基としてヒドロキシル基、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数0〜5のアミノ基、炭素数0〜5のカルバモイル基、炭素数1〜5の複素環基、炭素数1〜5のアシルアミノ基、炭素数1〜5のカルバモイル基、スルホ基及びカルボキシル基が最も好ましい。
なお、一般式(4)で表される化合物のRと、Rが更に有することのできる置換基の組み合わせについては、置換基の少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、全ての置換基が前記の好ましい基である化合物が最も好ましく、特に好ましくは、Rが無置換の場合である。
【0092】
以下、一般式(5)について説明する。
【0093】
【化21】

【0094】
一般式(5)のR、EWG及びRは、一般式(1)及び一般式(2)におけるR、EWG及びRと同義であり、また、好ましい例も同義である。
一般式(5)で表される化合物は、R、EWG及びRを介して複数連結してもよい。この場合、R、EWG及びRは2価の有機基を表すことが好ましい。R、EWG及びRが表す2価の有機基は、オキシ基−O−、チオ基−S−、カルボニル基−CO−、スルホニル基−SO−、イミノ基−NH−、メチレン基−CH−、及びこれらを組み合わせて形成される基であることが好ましい。より好ましくは、オキシ基−O−、カルボニル基−CO−、スルホニル基−SO−、イミノ基−NH−、メチレン基−CH−から選ばれる単独若しくは組合わせであり、更に好ましくはオキシ基−O−、スルホニル基−SO−、イミノ基−NH−、メチレン基−CH−から選ばれる単独若しくは組合わせである。これらの2価の有機基を選択すれば、安価な5−アミノピラゾールを製造することが可能となる。
以上をまとめると、本発明の製造方法で得られる一般式(5)のR、EWG及びRは、下記(イ)〜(ハ)の組み合わせからなるものが好ましい。
(イ)Rが表す水素原子又は置換基として、好ましくは、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基及びフェニル基である。特に好ましくは、水素原子、メチル基及びフェニル基である。
(ロ)EWGが表す電子求引性基として、特に好ましくは、シアノ基、アルキルオキシスルホニル基又はアルキルオキシカルボニル基である。
(ハ)Rは、好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基又はn−ブチル基である。
なお、一般式(5)で表される化合物のR、EWG及びRの組み合わせについては、R、EWG及びRの少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、R、EWG及びRの2以上が前記の好ましい基である化合物がより好ましく、全てのR、EWG及びRが前記の好ましい基である化合物が最も好ましい。
一般式(5)で表される化合物は一般式(5’)で表される化合物であることがより好ましい。
【0095】
【化22】

【0096】
(EWGは電子求引性基を表す。Rは水素原子又は置換基を表す。)
【0097】
及びEWGについては、上述のR、EWGと同義であり、好ましい例も同義である。
以上をまとめると、本発明の製造方法で得られる一般式(5’)のR及びEWGは、下記(イ)と(ロ)の組み合わせからなるものが好ましい。
(イ)Rは、好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基又はn−ブチル基である。
(ロ)EWGが表す電子求引性基として、特に好ましくは、シアノ基、アルキルオキシスルホニル基又はアルキルオキシカルボニル基である。
なお、一般式(5’)で表される化合物のR及びEWGの組み合わせについては、R及びEWGの少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、全てのR及びEWGが前記の好ましい基である化合物が最も好ましい。
更に一般式(5’)で表される化合物は一般式(5’’)で表される化合物が好ましい。
【0098】
【化23】

【0099】
(Rは水素原子又は置換基を表す。Lは、−C(O)−及び−S(O)−を表す。Rは脂肪族基、アリール基、複素環基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基及びアミノ基を表す。)
【0100】
、R及びLについては、上述の一般式(2’)におけるR、R及びLと同義であり、好ましい例も同義である。
以上をまとめると、本発明の製造方法で得られる一般式(5’’)のR、R及びLは、下記(イ)〜(ハ)の組み合わせからなるものが好ましい。
(イ)Rは、好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基又はn−ブチル基である。
(ロ)Lが表す−C(O)−及び−S(O)−において、より好ましくは、−C(O)−である。
(ハ)Rが表す脂肪族基、アリール基、複素環基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基及びアミノ基において、特に好ましくは炭素数1〜5のアルキルオキシ基である。
なお、一般式(5’’)で表される化合物のR、R及びLの組み合わせについては、R、R及びLの少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、R、R及びLの2以上が前記の好ましい基である化合物がより好ましく、全てのR、R及びLが前記の好ましい基である化合物が最も好ましい。
【0101】
次に具体例として一般式(5)の好ましい例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0102】
【化24】

【0103】
【化25】

【0104】
【化26】

【0105】
【化27】

【0106】
本発明の化合物には、その置換基の種類により、互変異性体又は幾何異性体が存在することがある。純粋な形態の任意の互変異性体又は幾何異性体、互変異性体又は幾何異性体の任意の混合物は、いずれも本発明の化合物に包含される。
【0107】
また、本発明では、一般式(1)から一般式(5)で表される化合物は、構造中に同位元素(例えば、H、H、13C、15N)を含有していてもよい。
【0108】
以下、本発明の各工程について説明する。
【0109】
工程(A)について説明する。
工程(A)は、一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物とを反応させて一般式(3)で表される中間体を誘導する工程である。
【0110】
一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物の仕込みにおける温度は、150℃以下であることが好ましく、0〜100℃であることが更に好ましく、20〜50℃であることが最も好ましい。この範囲にて操作すれば、混合時の発熱による原料の突沸又は蒸発による原料のロスを抑制し易い。
【0111】
工程(A)における一般式(1)で表される化合物の一般式(2)で表される化合物に対する使用比率(モル比)は好ましくは1〜3であり、より好ましくは1〜2.5であり、更に好ましくは1〜2.0である。この条件を選択することで反応を定量的に進行させることが可能となる。
【0112】
工程(A)の反応における溶媒は、特に必要ではないが、製造において攪拌性が必要となる等の場合、反応に不活性であれば使用が可能である。その場合、例えば、炭素数1〜10の有機酸、水、炭素数1〜10のケトン、炭素数1〜10のニトリル、炭素数1〜10のアルキルアルコール、炭素数1〜10のアルキレングリコール、炭素数1〜10のエーテル、炭素数1〜10のアミド、炭素数1〜10のスルホキシド、炭素数1〜10のエステルが挙げられる。より好ましくは、炭素数1〜5の有機酸、水、炭素数1〜5のケトン、炭素数1〜5のニトリル、炭素数1〜5のアルキルアルコール、炭素数1〜5のアルキレングリコール、炭素数1〜5のエーテル、炭素数1〜5のアミド、炭素数1〜5のスルホキシド、炭素数1〜5のエステルが挙げられる。具体的には、ギ酸、酢酸、プロピオン酸等の有機酸や、水、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等)、酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステルや、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド(ジメチルホルムアミド)、N,N−ジメチルアセトアミド(ジメチルアセトアミド)、N,N−ジメチルイミダゾリジノン(DMI)、スルホラン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチルピロリドン(NMP)等の親水性有機溶媒が挙げられる。また、これらの溶媒を混合して用いることも可能である。
【0113】
溶媒として好ましくは、アルコール、有機酸、アセトニトリル又はアセトンであり、特に好ましくは、メタノール、イソプロパノール、アセトン、アセトニトリル、酢酸、ジメチルホルムアミド又はジメチルアセトアミドである。一般式(5)に対する溶媒量は質量比で100倍以下が好ましく、より好ましくは50倍以下であり、更に好ましくは10倍以下である。100倍以上であると生産性が悪く不経済となる場合がある。これらの溶媒及び溶媒量を選択することで、5−アミノピラゾールを生産性よくかつろ過性よく安価に製造し得る。
【0114】
工程(A)の反応は、無溶媒(ニート)でも達成される。その際、塩基を伴っても良い。例えば、炭素数1〜10のアルキルアミン、炭素数1〜10の複素環アミン、炭素数1〜10の芳香族アミン等の有機塩基や無機塩基が好ましい。より好ましくは、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン)などの有機塩基や炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基が挙げられる。他に有機酸と強塩基の塩として、酢酸リチウム、酢酸カリウム、シュウ酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩等も挙げられる。好ましくは水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、トリエチルアミン又はピリジンであり、更に好ましくは、トリエチルアミン、ピリジン、水酸化リチウム、水酸化カリウム、酢酸リチウム、酢酸カリウムである。
これらの塩基を用いることで、反応を加速することが可能となり、製造への負荷を軽減することが可能となる。
【0115】
一般式(2)に対する塩基の量は、一般式(2)に対するモル(mol)比で好ましくは0〜5倍であり、より好ましくは、0〜2倍であり、更に好ましくは0〜1倍である。
【0116】
反応温度は、特に限定されず、反応種の化合物の濃度などに応じて適宜選択できるが、(A)工程の場合、70℃〜140℃が好ましく、80℃〜130℃がより好ましく、85℃〜120℃が更に好ましい。この温度条件を選択することで、反応が定量的で時間短縮が可能となり製造の負荷が小さく、かつ原料の分解を抑制することが可能となる。
工程(A)では、副成分を常圧で留去することが好ましく、また、ガスのフロー又はバブリング、減圧による副成分の留去を行うことが好ましい。フロー又はバブリングに使用するガスとしては不活性ガスなどの窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスや空気の使用が好ましく、窒素ガスや乾燥空気がより好ましく、窒素ガスを用いることが更に好ましい。
副成分を留去するタイミングは特に限定されず、反応中又は反応後に実施することができ、反応中に実施することが好ましい。
上記の副成分を留去する際のフロー又はバブリングにおけるガスの流量は0.01〜200mL/minが好ましい。より好ましくは1〜180mL/minであり、更に好ましくは10〜150mL/minである。これらの条件を選択することで経済的、かつ高速で副成分の留去が可能となる。
【0117】
反応時間は、30分〜12時間が好ましく、1時間〜11時間がより好ましく、2時間〜10時間が更に好ましい。反応時間が30分以上であれば反応が十分に進行し、10時間以下であれば目的の一般式(3)で表される化合物の分解を防ぐことができ好ましい。
以上をまとめると、一般式(3)で表される化合物の製造条件としては(イ)〜(チ)の組み合わせからなるものが好ましい。
(イ)工程(A)の反応における一般式(1)で表される化合物の一般式(2)で表される化合物に対する使用比率(モル比)は好ましくは1〜3であり、より好ましくは1〜2.5であり、更に好ましくは1〜2.0である。
(ロ)工程(A)の反応において、溶媒を使用する場合は、メタノール、イソプロパノール、アセトン、アセトニトリル、酢酸、ジメチルホルムアミド又はジメチルアセトアミドを用いることが好ましい。
(ハ)溶媒を使用する場合には、溶媒量は一般式(2)の化合物に対し、質量比で10倍以下が好ましい。
(ニ)併用できる塩基としては、特に好ましくはトリエチルアミン、ピリジン、水酸化リチウム、水酸化カリウム、酢酸リチウム、酢酸カリウムである。
(ホ)該塩基の量は、一般式(2)に対するモル(mol)比で0〜1倍が好ましい。
(ヘ)反応温度として特に好ましくは85℃〜120℃である。
(ト)反応時間は2時間〜10時間が好ましい。
(チ)反応に使用するガスとしては、窒素ガスが好ましく、その流量は10〜150mL/minが好ましい。
なお、一般式(3)で表される化合物の製造における条件の組み合わせについては、条件の少なくとも1つが前記の好ましい条件である製造が好ましく、2以上の条件が前記の好ましい条件である製造がより好ましく、全てが前記の条件である製造が最も好ましい。
【0118】
更に(A)の工程において、反応促進剤として、酸無水物、pKaが−3〜6の酸又はこれらを任意に組み合わせた混合物を用いることが好ましい。この反応促進剤を添加することで、反応を促進することが可能となり、製造時間が短縮でき5−アミノピラゾールを安価に製造することが可能となる。
酸無水物としては、炭素数2〜10の酸無水物が好ましい。より好ましくは炭素数4〜8の酸無水物が好ましい。例えば、無水酢酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水プロピオン酸、無水フタル酸、ピロ硫酸、五酸化二窒素、ピロリン酸(二リン酸)、五酸化二リン(十酸化四リン)及び三酸化二リンが挙げられ、好ましくは、無水酢酸、無水コハク酸、無水プロピオン酸及びピロ硫酸であり、更に好ましくは、無水酢酸、無水コハク酸及び無水プロピオン酸である。
pKaが−3〜6の酸としては、この範囲のものであれば特に限定はされないが、無機酸(鉱酸とも呼ばれる)及び有機酸が使用できる。無機酸としては塩酸、リン酸、硫酸が挙げられ、有機酸には蟻酸、酢酸、プロピオン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、クエン酸、クロロ酢酸及びトリフルオロ酢酸が挙げられ、好ましくは酢酸、プロピオン酸、メタンスルホン酸であり、更に好ましくは酢酸、メタンスルホン酸である。また、これらの酸は単独で用いても良いし、混合して用いても良い。
本発明における反応促進剤としては、無水酢酸若しくは酢酸、又は無水酢酸と酢酸の併用が特に好ましい。
【0119】
(A)の工程において、一般式(2)で表される化合物と上記反応促進剤(複数種併用の場合はその総量)のモル比を1:0.50〜1:5.00の範囲で用いることが好ましい。
好ましくは1:1.00〜1:4.50であり、更に好ましくは1:1.20〜1:4.00である。この範囲の量の反応促進剤により、中間体(4)を定量的に、短時間で、その結果として経済的に製造することが可能となる。
【0120】
次に、工程(B)について説明する。
工程(B)は、一般式(3)で表される中間体と一般式(4)で表されるヒドラジン誘導体とを反応させて一般式(5)で表される5−アミノピラゾール誘導体を得る工程である。
本工程において、一般式(3)で表される中間体と一般式(4)で表されるヒドラジン化合物の仕込みにおける添加順序は任意であり、特に限定されないが、好ましくは、一般式(3)で表される中間体に、水、アルコール性溶媒、芳香族炭化水素又はそれらの混合溶媒を添加し、その中に、一般式(4)で表されるヒドラジン誘導体又はその溶液を添加(又は滴下)する。
【0121】
工程(B)において、一般式(3)で表される中間体1当量に対する一般式(4)で表されるヒドラジン誘導体の当量比が、1.0〜2.0の範囲あることが好ましく、より好ましくは1.0〜1.4の範囲であり、より好ましくは1.0〜1.2の範囲である。
この範囲とすることで、(構造)異性体の生成を抑制し、かつ、未反応中間体の残存が抑制され、一般式(5)で表される化合物を高収率で得ることができ好ましい。なお、ヒドラジン誘導体の未反応残存物は廃液処理の観点で安全上及び経済上好ましくないので、限りなく低く抑えるのが好ましい、つまり使用量は1.0当量に近いほど好ましい。
【0122】
工程(B)においては、反応溶媒を用いてもよく、該反応溶媒としては、水、アルコール、炭化水素、芳香族炭化水素、ケトン、ニトリル化合物、アミド化合物、エーテル、カルボン酸エステル、又はこれらの混合溶媒であることが好ましい。より好ましくは、炭素数1〜10のアルコール、炭素数1〜10の炭化水素、炭素数6〜20の芳香族炭化水素、炭素数1〜10のエーテル、炭素数1〜10のカルボン酸エステル、炭素数1〜10のアミド、又は炭素数1〜10のニトリル溶媒である。
更に好ましくは、水、メタノール、エタノール、i−プロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール及びトリエチレングリコール、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、トルエン、キシレン、アセトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、ジオキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル又はこれらの混合溶媒、最も好ましくは水、メタノール、i−プロパノール、アセトン、アセトニトリル、トルエン、酢酸エチル、又はこれらの混合溶媒である。
これらの混合溶媒を選択することで、安価製造が可能となるばかりでなく、5−アミノピラゾールを結晶として取り出す際のろ過性が良好となり、5−アミノピラゾール誘導体を高純度かつ高収率で得ることが可能となる。
【0123】
混合溶媒を用いる場合、その混合比は特に制限はないが、重量比で1:99〜99:1の範囲であることが好ましく、1:4〜4:1の範囲であることがより好ましい。この条件を選択することで目的物の収率を向上させることができる。
また混合溶媒の場合、均一状態であっても層分離するような不均一状態であっても、どちらも選択できる。
【0124】
また、反応に用いる混合溶媒の使用量は特に限定されず、反応系の種類などに応じて適宜選択することができるが、通常は一般式(4)のヒドラジン誘導体に対して溶媒を質量比でそれぞれ0.5〜100倍程度が適当であり、1〜50倍が好ましく、特に好ましくは、1〜20倍である。この条件を選択することで、生産性が増すため安価製造が可能となる。また廃溶剤が少なくなるため環境への付加を低減できる。
【0125】
仕込みにおける温度は、100℃以下であることが好ましく、0〜70℃であることが更に好ましく、20〜50℃であることが最も好ましい。この範囲とすることにより、異性体等の不純物の生成を抑制し易くなる。また滴下時の発熱によるヒドラジン化合物(3)の突沸・蒸発によるロスや急な温度上昇により高温下での副反応を抑制することが出来る。
工程(B)において、反応温度は、0℃〜150℃が好ましい。より好ましくは20℃〜100℃であり、更に好ましくは30℃〜70℃である。この条件を選択することで、5−アミノピラゾールの分解や異性体等の不純物の副生が抑制され、特に適度な加熱下においては目的の反応が促進され、所要時間を短縮できるため安価製造が可能となる。
【0126】
反応時間は、20分〜6時間が好ましい。より好ましくは30分〜5時間であり、更に好ましくは1時間〜3時間である。この条件を選択すると、定量的に5−アミノピラゾールを誘導することができ、かつ反応時間も長すぎず、結果的に製造上好ましい。
【0127】
以上をまとめると、工程(B)の条件としては(イ)〜(ヘ)の組み合わせからなるものが好ましい。
(イ)一般式(3)で表される中間体1当量に対する一般式(4)で表されるヒドラジン誘導体の当量比が、1.0〜2.0の範囲あることが好ましく、より好ましくは1.0〜1.4の範囲であり、より好ましくは1.0〜1.2の範囲である。
(ロ)反応溶媒としては、水、アルコール、炭化水素、芳香族炭化水素、ケトン、ニトリル化合物、アミド化合物、エーテル、カルボン酸エステル、又はこれらの混合溶媒であることが好ましく、より好ましくは水、メタノール、エタノール、i−プロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール及びトリエチレングリコール、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、トルエン、キシレン、アセトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、ジオキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル又はこれらの混合溶媒、最も好ましくは、メタノール、i−プロパノール、アセトン、アセトニトリル、トルエン、酢酸エチル、又はこれらの混合溶媒である。
(ハ)上記(ロ)の混合溶媒の混合比は任意である。
(ニ)溶媒量として一般式(4)のヒドラジン誘導体に対して、質量比で1〜20倍が好ましい。
(ホ)反応温度として特に好ましくは30℃〜70℃である。
(ヘ)反応時間として特に好ましくは1時間〜4時間である。
【0128】
一般式(4)で表される化合物を製造における条件の組み合わせについては、条件の少なくとも1つが前記の好ましい条件である製造が好ましく、2以上の条件が前記の好ましい条件である製造がより好ましく、全てが前記の条件である製造が最も好ましい。
【0129】
なお、Rが水素原子の場合には(B)工程における環化後に得られた一般式(5)で表される5−アミノピラゾール誘導体について、更にピラゾール環の1位窒素原子のアルキル化、アリール化又はヘテリル化(複素環基導入)を行うこともできる。
【0130】
ここで、上記工程(B)の反応機構として以下が考えられる。本発明者らは反応の詳細は以下のとおりであると推定している。
スキーム1は一般式(5)で表される化合物が誘導される推定反応機構を表す。一般式(4)で表される化合物の1級窒素原子が一般式(3)で表される化合物のXが結合する炭素原子へ求核攻撃して中間体1が誘導される。続いて(3)由来の2級窒素原子がニトリル基の炭素原子に求核攻撃する結果、一般式(5)で表される化合物に誘導される。
【0131】
スキーム2は異性体である一般式(5’)で表される化合物が誘導される推定反応機構を表す。一般式(4)で表される化合物のRの結合する2級窒素原子が、一般式(3)で表される化合物のXが結合する炭素原子へ求核攻撃(マイケル付加)し、中間体2が誘導される。続いて(3)由来の1級窒素原子がニトリル基の炭素原子に求核攻撃する結果、一般式(5’)で表される異性体が生成する。
【0132】
(3)と(4)の反応は、上記スキーム1,2の機構が並行して進行していると考えられる。
そして、一般式(4)で表される化合物が(3)に対して過剰量使用される条件では、スキーム1,2に並行して、スキーム3での反応が進行することで、結果として(5)がほぼ選択的に誘導されると推定される。すなわち、1分子目の一般式(4)で表される化合物が付加し中間体2が生成した後、過剰分の2分子目の一般式(4)による求核攻撃が起こり、先に付加した1分子目の(4)で表される化合物が脱離しながら中間体1が誘導され、結果的にスキーム1と同様に一般式(5)で表される化合物へ誘導される。
【0133】
以上のことから一般式(4)で表される化合物が一般式(3)で表される化合物よりも、過剰な当量分用いられる条件では、一般式(5’)で表される化合物の異性体の生成が抑制され、所望の一般式(5)で表される化合物を選択的に誘導することが可能となったと考えられる。
なお、以下のスキームは本発明の内容をなんら限定するものではなく、他の反応ルートによる一般式(4)で表される化合物の製造方法も本発明に含まれる。
【0134】
【化28】

【0135】
(スキーム中、Rは水素原子又は置換基を表し、EWGは電子求引性基を表し、Rは水素原子又は置換基を表し、Xはアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アミノ基又はハロゲン原子を表す。)
【0136】
次に、工程(C)について説明する。
工程(C)は、前記(B)工程の後に、一般式(5)で表される5−アミノピラゾール誘導体に対して酸を用いて造塩処理を行う工程である。
【0137】
酸の一般式(5)で表される5−アミノピラゾール誘導体に対する当量は、形成される塩の組成に依存するが、0.5〜4.0が好ましく、0.75〜3.0がより好ましく、1.0〜2.0が最も好ましい。この範囲とすることで、5−アミノピラゾール誘導体を効率よく塩へと変換出来る。
用いられる酸としては、有機酸及び無機酸を挙げることができ、好ましくは酢酸、燐酸、塩酸、硫酸、シュウ酸、メタンスルホン酸、安息香酸、フタル酸及びテレフタル酸であり、より好ましくは塩酸、硫酸及びシュウ酸であり、更に好ましくは塩酸又は硫酸である。これらの酸を使用することにより、溶剤への溶解度を低下(=精製・濾過時のロスを抑制する)させ、結果として目的物を高収率にて得られ、それに伴い製造コストの低減出来る、という利点がある。
工程(C)では、反応溶媒を使用することができる。使用される溶媒としては、好ましくはアルコール、炭化水素、酢酸エステル、ケトン、芳香族炭化水素及びこれらを任意に組み合わせた混合物であり、好ましくは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、アセトニトリル、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、トルエン、キシレン、より好ましくは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ヘプタン、トルエン、酢酸エチル、アセトン、トルエンであり、最も好ましくは、メタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、アセトンである。これらの溶媒を使用することにより、不純物(反応副生成物・未反応物・異性体等)を優先的に取り除き、目的物を高純度・高収率にて得られる。なお、ここで言う「異性体」は「構造異性体」である。
【0138】
また、反応溶媒の使用量は特に限定されず、反応系の種類などに応じて適宜選択することができるが、通常は一般式(5)で表される5−アミノピラゾール誘導体に対して溶媒を質量比でそれぞれ0.5〜100倍程度が適当であり、1〜50倍が好ましく、特に好ましくは、1〜20倍である。溶媒を上記の質量比とすることで、生産性が向上するため安価製造が可能となる。また廃溶剤が少なくなるため環境にもやさしい。
工程(C)において、反応温度は、100℃以下が好ましい。より好ましくは0℃〜60℃であり、更に好ましくは0℃〜50℃である。また反応時間は、5分〜8時間が好ましい。より好ましくは15分〜5時間であり、更に好ましくは30分〜3時間である。反応温度及び反応時間をそれぞれ上記の範囲とすることにより、ほぼ定量的に5−アミノピラゾール誘導体を対応する塩に変換し、得ることができる。
【0139】
なお、工程(C)は、pH0〜4.0の条件下で行われることが好ましく、より好ましくはpH0〜2.0、最も好ましくはpH0〜1.0である。
【0140】
本発明の製造方法により得られた5−アミノピラゾール誘導体の塩は、脱塩処理にて更に精製することもできる。
脱塩処理は、当該技術分野で公知のいずれの方法も使用することができる。例えば、上記工程(C)において塩を分離し、更にこの塩を塩基性の水溶液と有機溶媒とで分液処理して、一般式(5)で表される5−アミノピラゾール誘導体を抽出し、濃縮することで行うことができる。
【0141】
脱塩処理で用いられる塩基としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア等の無機塩基又はトリエチルアミン、DBU、ピロール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン等の有機塩基を挙げることができる。
脱塩反応の溶媒としては水、メタノール、エタノール等のプロトン性溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジグリム等のエーテル類等が挙げられ、これらは単独又は混合して用いられる。
脱塩温度としては通常0℃〜溶媒の沸点の範囲であり、脱塩時間は1〜48時間の範囲で反応させることができる。
【実施例】
【0142】
次に実施例により本発明を更に詳細に説明する。なお、スキーム中のEtはエチル基、Meはメチル基、Buはt−ブチル基、Prはイソプロピル基、Phはフェニル基を表す。
【0143】
以下に一般式(5)で表される5−アミノピラゾール誘導体の塩(例示化合物6−1)の合成スキームを以下に示す。
【0144】
【化29】

【0145】
<参考例1:化合物(5−1)の合成>
100ml三口フラスコにイソプロパノール5.09g(6.45ml)を注ぎ、室温下(4−1)を所定の当量分、滴下し、攪拌・混合する。
この溶液に、予め調整しておいた(3−1)9.98g(0.064モル;1.0当量)とイソプロパノール5.55g(7.03ml)からなる溶液を内温5℃以下で滴下し、その後0−5℃にて30分攪拌した。その後、内温が45℃になるまで加熱し、45℃下攪拌(反応)した。反応追跡は(3−1)が無くなり、(5−1)の生成反応の進行が終わるまでHPLC測定にて行った。結果を下記表1に示した。
(4−1)の当量が1当量でも反応選択性(5−1)>(5’−1)は確認されるが、1当量を超える小過剰量使用すると、ほぼ完全に選択的に目的物(5−1)を得ることが出来る。また、反応率は高く、所要時間も短縮される。
【0146】
【化30】

【0147】
【表1】

【0148】
<実施例1:例示化合物(6−1)の製造方法1>
[例示化合物(3−1)の製造方法]
2L3つ口フラスコにシアノ酢酸メチル(例示化合物(2−1))207.3g(2.1モル;1.0当量)及びオルトぎ酸トリエチル(例示化合物(1−1))620.0g(4.2モル;2.0当量)を内温20〜30℃下注入し、攪拌・混合する。更に、氷酢酸56.5g(0.94モル;0.45当量)及び無水酢酸533.9g(5.2モル;2.5当量)を内温20〜30℃下、注入し攪拌・混合する。
窒素バブリング(流量123ml/min)下、昇温し、常圧にて揮発成分を留去しながら(ディーンスターク管等で回収する)、110℃にて4時間攪拌する。反応追跡はH−NMR測定により行い、(2−1)が完全に消費されるのを確認する。
その後、酢酸及び無水酢酸が留去されるまで更に攪拌を続け、定量的に例示化合物(3−1)を得た。
H−NMR同定データ(化学シフト値)の結果は以下の通りである。
H−NMR(300MHz,DMSO−d):8.4(1H,s)、4.5(2H,q,OCH−)、3.7(3H,s,COCH)、1.3(3H,t,OCHCH
【0149】
[例示化合物(6−1)の製造方法]
1L3つ口フラスコに、イソプロパノール51.0g(64.6ml)を注ぎ、更にモノメチルヒドラジン36.4g(0.77mol;1.20当量)を内温20〜25℃下で加え、攪拌した。この溶液に、例示化合物:(3−1)の中間体100.0g(0.64mol;1.0当量)を、予めイソプロパノール55.7g(70.5ml)に溶解させた溶液を内温が20〜25℃(30℃まで上昇しても問題ない)を保ちながら滴下した。その後、約15分攪拌し、内温20〜25℃に安定させた。次いで、内温45℃まで加熱し、45℃にて60〜90分攪拌した((5−1)97.0%、異性体0.31%;pH8.8;45℃)。反応追跡はHPLC測定により行い、(4−1)及び中間体が消費されるのを確認するまで反応させた。なお、pHはpHメーター(横河電機株式会社製 パーソナルpHメーター PH71)により測定した。
反応終了を確認後、濃硫酸79.9g(0.77mol)を上記反応液に滴下し(内温:45〜55℃)、10℃以下に冷却し、60分攪拌した。その後、吸引濾過(アドバンテック2型濾紙;125mmヌッチェ使用)を行い、予め0〜5℃に冷却したノルマルヘプタン99.1g(145.8ml)/イソプロパノール19.9g(29.2ml)の混合溶媒にて洗浄した。その後、ウェットケーキを乾燥し、155.0gの(6−1)を得た。収率95%、純度(6−1)/(6’−1)=100/0(HPLC測定より)であった。
H−NMR同定データ(化学シフト値)の結果は以下の通りである。
H−NMR(300MHz,CDOD):8.0(1H,s,H),3.8(3H,s,OMe),3.7(3H,s,NMe)
【0150】
<比較例1の製造方法>
造塩処理を行わず、反応液を減圧濃縮したこと以外は、上記実施例1の方法と同様に5−アミノピラゾール誘導体(5−1)を得た。得られた混合物の純度は(6−1)/(6’−1)=93.9/0.2(HPLC測定より)であった。実施例1で濾過により分離可能な、不純物が完全に残存している。
<比較例2の製造方法>
造塩処理を行わず、反応液に貧溶媒(n−ヘプタン)をイソプロパノールの3倍体積分だけ添加して5−アミノピラゾール誘導体(5−1)の結晶を析出させたこと以外は、上記実施例1の方法と同様に5−アミノピラゾール誘導体(5−1)を得た。得られた混合物の純度は(5−1)/(5’−1)=99.2/0.8(HPLC測定より)で、収率は70%であった。
この他、反応液から分液抽出により、5−アミノピラゾール誘導体(5−1)を単離する方法も可能であるが、(5−1)が水及び飽和食塩水にも可溶で、目的物の精製ロスが生じる。また、大量の有機溶剤・水を使用するため、安価製造には適さない。
【0151】
以上のように、本発明の5−アミノピラゾール誘導体を得る上で、造塩処理を経ることによって、5−アミノピラゾール誘導体(5−1)の溶剤溶解性が低減され、溶解ロスを抑制することができたので、濾過時に充分な洗浄が可能になった。更に予想外の効果として、異性体等の不純物を効率的に除去することができた。以上より、実施例1の製造方法は、より高純度、高収率な製造方法であることが確認された。
【0152】
<実施例2:例示化合物(6−1)の製造方法2>
1L3つ口フラスコに、例示化合物:(3−1)の中間体100.0g(0.64mol;1.0当量)及びイソプロパノール294.0g(370.8ml)を注入し、攪拌・混合する(内温25度)。この溶液に、予めモノメチルヒドラジン(4−1)36.4g(0.77mol;1.20当量)をイソプロパノール51.0g(64.6ml)に溶解させた溶液を内温が20〜25℃(30℃まで上昇しても問題ない)を保ちながら滴下した。その後、約15分攪拌し、内温20〜25℃に安定させた。次いで、内温45℃まで加熱し、45℃にて90〜120分攪拌した。反応追跡はHPLC測定により行い、(3−1)及び中間体が消費されるのを確認するまで反応させた(最終的なHPLC面積%:(5−1)98.6%、異性体(5−1)’0.21%;pH8.8;45℃)。なお、pHはpHメーター(横河電機株式会社製 パーソナルpHメーター PH71)により測定した。
反応終了を確認後、濃硫酸79.9g(0.77mol)をメタノール79.0g(100ml)にて希釈した溶液を、上記反応液に滴下し(内温:45〜55℃)、昇温し、内温60℃下45分攪拌後、内温10℃以下に冷却し、60分攪拌した。その後、吸引濾過(アドバンテック2型濾紙;125mmヌッチェ使用)を行い、予め0〜5℃に冷却したノルマルヘプタン99.1g(145.8ml)/イソプロパノール19.9g(29.2ml)の混合溶媒にて洗浄した。その後、ウェットケーキを乾燥し、159.72gの(6−1)を得た。収率98%、純度(6−1)/(6’−1)=100/0(HPLC測定より)であった。
H−NMR同定データ(化学シフト値)の結果は以下の通りである。
H−NMR(300MHz,CDOD):8.0(1H,s,H),3.8(3H,s,OMe),3.7(3H,s,NMe)
上記のように、例示化合物(3)を製造後、その反応液に直接ヒドラジン誘導体(4)若しくはその溶液を添加することで、実施例1と同様に化合物(5)更には(6)を製造することが出来る。
この方法によれば、化合物(1)と(2)から移液や単離の工程を省略して、(A)(B)(C)の工程を一貫化でき、これは工程経費の低減、仕掛かり時間の短縮に繋がり、製造コストの低減に繋がる。
【0153】
<実施例3:例示化合物(6−2)の製造方法>
モノメチルヒドラジンの代わりにt−ブチルヒドラジン塩酸塩を用いた以外は、実施例1と同様に操作することにより、例示化合物(6−2)を得ることが出来る。
収率89%、純度(6−2)/(6’−2)=100/0(HPLC測定より)であった。
H−NMR同定データ(化学シフト値)の結果は以下の通りである。
H−NMR(300MHz,CDOD):7.6(1H,s,H),5.2(2H,s,NH)、3.8(3H,s,OMe),1.6(9H,s,Bu)
【0154】
【化31】

【0155】
<実施例4:例示化合物(6−3)の製造方法>
モノメチルヒドラジンの代わりにフェニルヒドラジンを用いた以外は、実施例1と同様に操作することにより、例示化合物(6−3)を得ることが出来る。
収率82%、純度(6−3)/(6’−3)=100/0(HPLC測定より)であった。
H−NMR同定データ(化学シフト値)の結果は以下の通りである。
H−NMR(300MHz,CDCl):7.8(1H,s)、7.6−7.5(4H,m,aromatic)、7.5−7.4(1H,m,aromatic)、5.3(2H,s,NH)、3.8(3H,s,OMe)、3.5(3H,s,NMe)
【0156】
【化32】

【0157】
<実施例5:例示化合物(6−4)の製造方法>
原料(1−1)の替わりに(1−4)を用い、得られた中間体(4−4)を用いた以外は、実施例1と同様に操作することにより、例示化合物(6−4)を得ることが出来る。
収率78%、純度(6−4)/(6’−4)=100/0(HPLC測定より)であった。
H−NMR同定データ(化学シフト値)の結果は以下の通りである。
H−NMR(300MHz,DMSO−d):7.8−7.3(5H,m,aromatic)、3.7(3H,s,OMe)、3.7(3H,s,NMe)
【0158】
【化33】

【0159】
<実施例6:例示化合物(6−5)の製造方法>
原料(2−1)の替わりに(2−5)を用い、得られた中間体(4−5)を用いた以外は、実施例1と同様に操作することにより、例示化合物(6−5)を得ることが出来る。
収率93%、純度(6−5)/(6’−5)=100/0(HPLC測定より)であった。
H−NMR同定データ(化学シフト値)の結果は以下の通りである。
H−NMR(300MHz,CDOD):8.0(1H,s,H),5.1(1H,m,H),1.3(6H,s,(CH
【0160】
【化34】

【0161】
<実施例7〜12:用いる濃硫酸の当量と収率>
実施例1と濃硫酸の当量を変更した以外は実施例1と同様の方法を用いて例示化合物(6−1)を合成した場合の濃硫酸の当量と収率の関係を検討した。その結果を表2及び図1に示す。
【0162】
【表2】

【0163】
表2より、用いる酸が1.0〜2.0当量の範囲であれば、目的の化合物が収率良く製造し得ることがわかった。更に、1.5〜2.0当量であれば、特に高収率で目的の化合物が得られることが示された。これは、1.5〜2.0当量、特に1.8〜2.0当量であれば、化合物(5)を(6)へと変換(造塩)するのに充分な酸を反応系内に供給できるためと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)、(B)及び(C)の工程を含み、これらの工程を順次行うことを特徴とする5−アミノピラゾール誘導体の塩の製造方法。
(A) 一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物とを反応させて一般式(3)で表される中間体を誘導する工程
(B) 一般式(3)で表される中間体と一般式(4)で表されるヒドラジン誘導体とを反応させて一般式(5)で表される5−アミノピラゾール誘導体を得る工程
(C) 一般式(5)で表される5−アミノピラゾール誘導体に対して造塩処理を行う工程
【化1】

(式中、Rは水素原子又は置換基を表し、EWGは電子求引性基を表し、Rは水素原子又は置換基を表し、Xはアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アミノ基又はハロゲン原子を表し、L及びLはそれぞれ独立に脱離基を表す。)
【請求項2】
前記(A)、(B)及び(C)の工程を連続して行うことを特徴とする請求項1に記載の5−アミノピラゾール誘導体の塩の製造方法。
【請求項3】
前記(A)工程において、反応促進剤として、酸無水物及びpKaが−3〜6の酸からなる群より選ばれた少なくとも1つを用いることを特徴とする請求項1又は2の項に記載の5−アミノピラゾール誘導体の塩の製造方法。
【請求項4】
前記(A)の工程において、一般式(2)で表される化合物に対する前記反応促進剤のモル比が1:0.01〜1:5.00の範囲であることを特徴とする請求項3に記載の5−アミノピラゾール誘導体の塩の製造方法。
【請求項5】
前記(B)工程において、前記一般式(3)で表される中間体1当量に対する前記一般式(4)で表されるヒドラジン誘導体の当量が1.0〜2.0の範囲であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の5−アミノピラゾール誘導体の塩の製造方法。
【請求項6】
前記一般式(5)で表される5−アミノピラゾール誘導体1当量に対する前記酸の当量が0.5〜4.0の範囲であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の5−アミノピラゾール誘導体の塩の製造方法。
【請求項7】
前記酸が、酢酸、燐酸、塩酸、硫酸、シュウ酸、メタンスルホン酸、より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項3〜6のいずれか1項に記載の5−アミノピラゾール誘導体の塩の製造方法。
【請求項8】
前記(C)工程の反応溶媒として、アルコール、炭化水素、酢酸エステル、ケトン及び芳香族炭化水素からなる群より選ばれた少なくとも1種を用いることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の5−アミノピラゾール誘導体の塩の製造方法。
【請求項9】
前記(C)工程が、pH0〜4の条件下で行われることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の5−アミノピラゾール誘導体の塩の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−201794(P2011−201794A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68953(P2010−68953)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)