説明

5−含窒素不飽和ヘテロ環置換ベンゾ[a]フェノキサチン類またはその塩の製造及び精製方法

【課題】5−含窒素不飽和ヘテロ環置換イミノベンゾ[a]フェノキサチン類またはその塩を工業的に高収率で安価、かつ残留する白金族元素触媒が少ない製造及び精製方法を提供する。
【解決手段】5−イミノベンゾ[a]フェノキサチン類またはその塩を白金族元素触媒、配位子および塩基の存在下、脱離基を有する含窒素ヘテロ環化合物と反応させ、反応終了後に残留する白金族元素を除去する手段を有する一般式(III)で表される化合物の製造及び精製方法。


(式中、Zは5員又は6員の含窒素不飽和ヘテロ環残基を表す)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品、染料、蛍光色素、生体材料のラベル化剤の分野で有用な5−含窒素不飽和ヘテロ環置換イミノベンゾ[a]フェノキサチン類またはその塩の製造及び精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
5−イミノフェノキサチン類またはその塩は古くは癌細胞の染色剤および抗癌剤あるいは結核治療薬として検討され、近年、原虫疾患治療薬、特に抗マラリア薬として有用であることが報告されている(非特許文献1〜3、及び特許文献1)。5−ヘテロ環置換イミノベンゾ[a]フェノキサチン類またはその塩は、対応するベンゾ[a]フェノキサチンの硝酸塩と3当量のヘテロ環アミンをエタノール中反応させることにより合成される(非特許文献1、及び特許文献1)。しかしこの方法は、高価なヘテロ環アミンを3当量使い、しかも収率が低く、工業的製造においては高コストという欠点があった。一方、合成反応において触媒として白金族元素触媒を使用する場合は、医薬品等として用いるために残留する白金族元素を減量する手段が重要であり、その減量方法について報告されている(非特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】 国際公開公報WO2009/113569号パンフレット
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】 “ジャーナル オブ ザ アメリカン ケミカル ソサイエティー(Journal of the American Chemical Society)”1952年 74巻 584〜586頁
【非特許文献2】 “メディシナル リサーチレビュー(Medicinal Research Review)”1991年 11巻 239〜294頁
【非特許文献3】 “メディシナル ケミストリー レターズ(Medicinal Chemistry Letters)”2010年 1巻 360〜364頁
【非特許文献4】 “アドバンスド シンセシス アンド キャタリスト(Advanced Synthesis and Catalyst)”2004年 346号 889〜900頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は医薬品、染料、蛍光色素、生体材料のラベル化剤等の分野で有用な5−含窒素不飽和ヘテロ環置換イミノベンゾ[a]フェノキサチン類またはその塩を工業的に高収率で安価、かつ残留する白金族元素触媒が少ない製造及び精製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記の目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、前期課題を達成する5−ヘテロ環置換イミノベンゾ[a]フェノキサチン類またはその塩の新規な合成法及び精製法を見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の方法によって達成される。
【0007】
<1> 一般式(I)で表される5−イミノベンゾ[a]フェノキサチン類またはその塩を白金族元素触媒、配位子および塩基の存在下、一般式(II)で表される脱離基を有する含窒素不飽和ヘテロ環化合物と反応させ、反応終了後に残留する白金族元素を除去する手段を有することを特徴とする一般式(III)で表される5−含窒素不飽和ヘテロ環置換イミノベンゾ[a]フェノキサチン類またはその塩の製造及び精製方法。
【化1】

(式中、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基を表す。R、R、R、及びRは、それぞれ独立に水素原子、又は置換基を表し、RとR,RとR,RとRは互いに結合して5員、6員又は7員の環を形成してもよい。nは0、1、または2を表し、2の場合Rは同じでも異なっていてもよい。)
【化2】

(式中、Zは5員又は6員の含窒素不飽和ヘテロ環残基を表し、Y以外の置換基を有してもよい。Yは脱離基を表す。)
【化3】

(式中、R〜R、Zおよびnは前記と同じ意味を有する。)
<2> 反応終了後に残留する白金族元素を除去する手段として、活性炭を用いることを特徴とする請求項1に記載の5−含窒素不飽和ヘテロ環置換イミノベンゾ[a]フェノキサチン類またはその塩の製造及び精製方法。
<3> 反応終了後に残留する白金族元素を除去する手段として、活性炭および水溶性メルカプト化合物を用いることを特徴とする<1>項に記載の5−含窒素不飽和ヘテロ環置換イミノベンゾ[a]フェノキサチン類またはその塩の製造及び精製方法。
<4> 水溶性メルカプト化合物がシステインであることを特徴とする<3>項に記載の5−含窒素不飽和ヘテロ環置換イミノベンゾ[a]フェノキサチン類またはその塩の製造及び精製方法。
<5> 反応終了後に残留する白金族元素を除去する手段として、メタルスカベンジャーを含む担体を用いることを特徴とする<1>項に記載の5−含窒素不飽和ヘテロ環置換イミノベンゾ[a]フェノキサチン類またはその塩の製造及び精製方法。
<6> 一般式(II)のZで表される含窒素不飽和ヘテロ環残基が、置換していてもよいピリジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、またはイミダゾールである<1>〜<5>項のいずれか1項に記載の5−含窒素不飽和ヘテロ環置換イミノベンゾ[a]フェノキサチン類またはその塩の製造及び精製方法。
<7> 一般式(I)のRおよびRがそれぞれエチル基またはプロピル基、Rが水素原子、Rが水素原子またはメチル基、Rが水素原子、Rがメチル基またはメトキシ基、nが0または1、一般式(II)のZがピリジンまたはピリミジン、Yがハロゲン原子である<1>〜<6>項のいずれか1項に記載の5−含窒素不飽和ヘテロ環置換イミノベンゾ[a]フェノキサチン類またはその塩の製造及び精製方法。
<8> 白金族元素触媒が均一系パラジウム触媒または担持されたパラジウム触媒、配位子がホスフィン系リガンドである<1>〜<7>のいずれか1項に記載の5−含窒素不飽和ヘテロ環置換イミノベンゾ[a]フェノキサチン類またはその塩の製造及び精製方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、医薬品、染料、蛍光色素、生体材料のラベル化剤の分野で有用な5−含窒素不飽和ヘテロ環置換イミノベンゾ[a]フェノキサチン類またはその塩を工業的に高収率で安価、かつ残留する白金族元素触媒が少ない製造方法を提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明について更に詳しく説明する。
一般式(I)、一般式(II)及び一般式(III)で表わされる化合物について説明する。
【化1】

【化2】

【化3】

一般式(I)及び(III)中、R、及びRは、各々独立に水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基を表わし、RとR、RとR、RとRとが互いに結合して5員、6員、又は7員の環を形成してもよい。
【0010】
、R、R、及びRは、各々独立に水素原子、又は置換基を表わし、R、R、R、及びRの置換基は、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、ニトロ基、ヒドロキシ基、シアノ基、カルボキシル基、スルホ基、ホスホン酸基、アルキル基(直鎖、分岐鎖、又は環状の好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは1〜16、更に好ましくは1〜12のアルキル基で、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、2−エチルヘキシル、t−ブチル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘシル、アダマンチル)、アルケニル基(直鎖、分岐鎖、又は環状の好ましくは炭素数2〜36、より好ましくは2〜12、更に好ましくは2〜4のアルケニル基で、例えば、ビニル、アリル、3−ブテン−1−イル)、アリール基(好ましくは炭素数6〜24、より好ましくは6〜14、更に好ましくは6〜10のアリール基で、例えば、フェニル、ナフチル)、ヘテロ環基(窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子の少なくとも1種を含有する、5員、6員又は7員のヘテロ環基で、好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは2〜8、更に好ましくは2〜5のヘテロ環基で、例えば、モルホニル、チエニル、フリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピリジル、ピリダジル、ピリミジニル、ピラジルリジル、ベンゾチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、チサジアゾリル)、シリル基(好ましくは炭素数3〜24、より好ましくは炭素数3〜12のシリル基で、例えば、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリブチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、t−ヘキシルジメチルシリル)、アルコキシ基(炭素数1〜36、好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは1〜8のアルコキシ基で、例えば、メトキシ、エトキシ、1−ブトキシ、2−ブトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、ドデシルオキシ、シクロアルキルオキシ基で、例えば、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ)、アリールオキシ基(炭素数6〜36、より好ましくは炭素数6〜12のアリールオキシ基で、例えば、フェノキシ、1−ナフトキシ)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは炭素数1〜12のヘテロ環オキシ基で、例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、シリルオキシ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜12のシリルオキシ基で、例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ、ジフェニルメチルシリルオキシ)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜36、より好ましくは炭素数2〜12のアシルオキシ基で、例えば、アセトキシ、ピバロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、ドデカノイルオキシ)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜36、より好ましくは炭素数2〜12のアルコキシカルボニルオキシ基で、例えば、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、シクロアルキルオキシカルボニルオキシ基で、例えば、シクロヘキシルオキシカルボニルオキシ)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数7〜32、より好ましくは炭素数7〜12のアリールオキシカルボニルオキシ基で、例えば、フェノキシカルボニルオキシ)、
【0011】
カルバモイルオキシ基(好ましくは炭素数1〜36、よりこの好ましくは炭素数1〜12のカルバモイルオキシ基で、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N−ブチルカルバモイルオキシ、N−フェニルカルバモイルオキシ、N−エチル−N−フェニルカルバモイルオキシ)、スルファモイルオキシ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜12のスルファモイルオキシ基で、例えば、N,N−ジエチルスルファモイルオキシ、N−プロピルスルファモイルオキシ)、アルキルスルホニルオキシ基(好ましくは炭素数1〜38、より好ましくは炭素数1〜12のアルキルスルホニルオキシ基で、例えば、メチルスルホニルオキシ、ヘキサデシルスルホニルオキシ、シクロヘキシルスルホニルオキシ)、アリールスルホニルオキシ基(好ましくは炭素数6〜32、より好ましくは炭素数6〜12のアリールスルホニルオキシ基で、例えば、フェニルスルホニルオキシ)、アシル基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは炭素数1〜12のアシル基で、例えば、ホルミル、アセチル、ピバロイル、ベンゾイル、テトラデカノイル、シクロヘキサノイル)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜36、より好ましくは炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基で、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、オクタデシルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルシクロヘキシルオキシカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜32、より好ましくは炭素数7〜18のアリールオキシカルボニル基で、例えば、フェノキシカルボニル)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは炭素数1〜12のカルバモイル基で、例えば、カルバモイル、N,N−ジエチルカルバモイル、Nーエチル−N−オクチルカルバモイル、N,N−ジブチルカルバモイル、N−プロピルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル、N−メチルN−フェニルカルバモイル、N,N−ジシクロヘキシルカルバモイル)、アミノ基(好ましくは炭素数32以下、より好ましくは炭素数12以下のアミノ基で、例えば、アミノ、メチルアミノ、N,N−ジブチルアミノ、テトラデシルアミノ、2−エチルヘキシルアミノ、シクロヘキシルアミノ)、アニリノ基(好ましくは炭素数6〜32、より好ましくは6〜12のアニリノ基で、例えば、アニリノ、N−メチルアニリノ)、ヘテロ環アミノ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは1〜12のヘテロ環アミノ基で、例えば、4−ピリジルアミノ)、カルボンアミド基(好ましくは炭素数2〜36、より好ましくは2〜12のカルボンアミド基で、例えば、アセトアミド、ベンズアミド、テトラデカンアミド、ピバロイルアミド、シクロヘキサンアミド)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜12のウレイド基で、例えば、ウレイド、N,N−ジメチルウレイド、N−フェニルウレイド)、イミド基(好ましくは炭素数36以下、より好ましくは炭素数12以下のイミド基で、例えば、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜36、より好ましくは炭素数2〜12のアルコキシカルボニルアミノ基で、例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、オクタデシルオキシカルボニルアミノ、シクロヘキシルオキシカルボニルアミノ)、
【0012】
アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜32、より好ましくは炭素数7〜18のアリールオキシカルボニルアミノ基で、例えば、フェノキシカルボニルアミノ)、スルホンアミド基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは炭素数1〜12のスルホンアミド基で、例えば、メタンスルホンアミド、ブタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、ヘキサデカンスルホンアミド、シクロヘキサンスルホンアミド)、スルファモイルアミノ基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは炭素数1〜12のスルファモイルアミノ基で、例えば、N、N−ジプロピルスルファモイルアミノ、N−エチル−N−ドデシルスルファモイルアミノ)、アゾ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のアゾ基で、例えば、フェニルアゾ、3−ピラゾリルアゾ)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは炭素数1〜12のアルキルチオ基で、例えば、メチルチオ、エチルチオ、オクチルチオ、シクロヘキシルチオ)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜36、より好ましくは炭素数6〜18のアリールチオ基で、例えば、フェニルチオ)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜12のヘテロ環チオ基で、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、2−ピリジルチオ、1−フェニルテトラゾリルチオ)、アルキルスルフィニル基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜12のアルキルスルフィニル基で、例えば、ドデカンスルフィニル)、アリールスルフィニル基(好ましくは炭素数6〜32、より好ましくは炭素数6〜12のアリールスルフィニル基で、例えば、フェニルスルフィニル)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは炭素数1〜12のアルキルスルホニル基で、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、ブチルスルホニル、イソプロピルスルホニル、2−エチルヘキシルスルホニル、ヘキサデシルスルホニル、オクチルスルホニル、シクロヘキシルスルホニル)、アリールスルホニル基(好ましくは炭素数6〜36、より好ましくは炭素数6〜12のアリールスルホニル基で、例えば、フェニルスルホニル、1−ナフチルスルホニル)、スルファモイル基(好ましくは炭素数32以下、より好ましくは炭素数12以下のスルファモイル基で、例えば、スルファモイル、N,N−ジプロピルスルファモイル、N−エチル−N−ドデシルスルファモイル、N−エチル−N−フェニルスルファモイル、N−シクロヘキシルスルファモイル)、ホスホニル基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜12のホスホニル基で、例えば、フェノキシホスホニル、オクチルオキシホスホニル、フェニルホスホニル)、ホスフィノイルアミノ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜12のホスフィノイルアミノ基で、例えば、ジエトキシホスフィノイルアミノ、ジオクチルオキシホスフィノイルアミノ)を表す。
【0013】
一般式(I)及び(III)中、RとR、RとR、RとRは互いに結合して、2個の炭素原子と共に5員、6員又は7員の環を形成していてもよい。形成される5員の環としては、シクロペンテン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、チオフェン環、フラン環等が挙げられる。また6員環としては、シクロヘキセン環、、テトラヒドロピリジン環、テトラヒドロピリミジン環、テトラヒドロピラジン環、ベンゼン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ジヒドロピラン環等が挙げられる。更に7員環としては、シクロヘプテン環、テトラヒドロアゼピン環等が挙げられる。これらの形成される5員、6員、及び7員の環は、更に前記R〜Rの置換基で説明した基で置換されていてもよく、2個以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。また、形成される5員、6員、又は7員の環は更に、5員、6員、又は7員の環が縮合していてもよい。
【0014】
一般式(I)及び(III)中、Rの置換基として、好ましくは置換してもよいアルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子を表す。nは0、1、または2を表し、2の場合Rは同じでも異なっていてもよい。
【0015】
一般式(1)及び一般式(III)で表わされる化合物の塩としては、公知の無機酸と形成する塩(例えば、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩)や、公知の有機酸と形成する塩(例えば、酢酸塩、トリフロロ酢酸塩、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、1,5−ナフタレンジスルホン酸塩、蓚酸塩、安息香酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、フマル酸塩)が挙げられる。
【0016】
一般式(II)で表わされる化合物について詳しく説明する。一般式(II)において、Zは5員または6員の含窒素不飽和ヘテロ環残基を表し、Y以外の置換基を有してもよい。Yは離脱基を表す。5員または6員の含窒素不飽和ヘテロ環の具体例としては、ピリジン、ピリミジン、ピペラジン、トリアジン、イミダゾール、オキサゾールまたはチアゾールが挙げられ、好ましくはピリジン、ピリミジンまたはピペラジンであり、特に好ましくはピリジンである。またYで表わされる脱離基としては特に限定されないが、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、スルホニルオキシ基、アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基等が挙げられるが、より好ましくはハロゲン原子であり、特に好ましくは塩素原子である。
【0017】
本発明の方法をより詳しく説明するために本発明の一態様一例として示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0018】
【化4】

【0019】
本発明で用いられる5−含窒素不飽和ヘテロ環置換イミノベンゾ[a]フェノキサチン類またはその塩は、好ましくは、9位にジアルキル基が置換しており、これらのアルキル基はそれぞれ異なっても5員環または6員環の環を形成してもよく、置換基を有していてもよい。好ましい置換基としては、ヒドロキシ基、アルキルスルホンアミド基が挙げられる。ジアルキル基の好ましい例としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、N−2−ヒドロキシエチル−N−エチル特に好ましくはジエチルアミノ基である。11位は水素原子、メチル基またはメトキシ基であり、より好ましくは水素原子またはメチル基であり、特に好ましくは水素原子である。1,2,3,4位の置換基はゼロまたは2個の置換基を有しており、好ましくはゼロ、モノメチル基、モノメトキシ基またはモノハロゲン原子であり、より好ましくはゼロ、モノメチル基またはモノメトキシ基であり、特に好ましくは置換基が無いものである。
【0020】
次に本発明で製造できる5−含窒素不飽和ヘテロ環置換イミノベンゾ[a]フェノキサチン類またはその塩の具体例を示すが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
【0021】
【化5】

【0022】
【化6】

【化7】

【0023】
次に本発明の製造及び精製方法について述べる。
本発明で用いられる5−イミノベンゾ[a]フェノキサチン類およびその塩は一部市販されており入手可能であるが、開示されている方法、例えば、“ジャーナル オブ ザ アメリカン ケミカル ソサイエティー (Journal of the American Chemical Society)”1952年 72巻 574〜578頁、“ヨーロッペアン ジャーナル オブ オーガニック ケミストリー(European Journal of Organic Chemistry)”1999年 923−930、及び“テトラヘドロン(Tetrahedron)”2006年 62巻 11021〜11037頁に従い、出発原料に所望の置換基を導入したものを用いて容易に合成することが出来る。
【0024】
本発明で脱離基を有する含窒素不飽和ヘテロ環化合物の使用量は5−イミノベンゾ[a]フェノキサチン類またはその塩に対し0.5〜2当量であり、好ましくは0.8〜1.5当量であり、より好ましくは0.9〜1.2当量である。
【0025】
本発明で用いられる白金族元素触媒は、担体に担持された白金族元素触媒または均一系白金族元素触媒を表す。具体的な元素としてはパラジウム、ルテニウム、ロジウム、オスミウム、イリジウムまたは白金が挙げられ、好ましくはパラジウムまたは白金であり、より好ましくはパラジウムである。
【0026】
不均一系白金族元素触媒の担体としては、炭素、シリカゲル、アルミナ、絹フィブロイン等のファイバー、ポリスチレンビーズ等の人口ポリマー等が挙げられる。これらの中でも特に好ましくは容易に入手可能な炭素の担持されたパラジウムである。これらの担体に担持された白金族元素触媒に用いる配位子は特に制限されないが、好ましくはホスフィン系リガンドである。具体的には、トリフェニルホスフィン、トリ−tert−ブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン等のモノホスフィンリガンド、あるいは、1,2−ビス(ジ−tert−ブチルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,1‘−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(以下DPPFと略記する)、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1‘−ビナフチル(以下BINAPと略記する)、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)ビフェニルエーテル(以下DPEPhosと略記する)等のビスホスフィンリガンドが挙げられる。これらの中でより好ましくはビスホスフィンリガンドが挙げられ、さらに好ましくはDPPF、BINAPおよびDPEPhosが挙げられる。これらの不均一系白金族元素触媒の担体に用いられる配位子の使用量は、金属元素とこれに配位する原子比に換算して好ましくは1:0.001〜1:10であり、より好ましくは1:0.01〜1:4であり、特に好ましくは1:0.1〜1:2である。
【0027】
均一系パラジウム触媒として使用されるパラジウム化合物としては、特に限定されるものではないが、PdCl、PdBr、Pd(OCOCH、Pd(CHCOCHCOCH)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、ジクロロビス(エチレン)パラジウム、PdCl(NH、PdCl[N(C、Pd[P(CH、Pd(C)[P(C、PdBr[P(n−C、PdCl[P(OCH、ベンジルビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド、ビス(アセトニトリル)パラジウム(II)ジクロリド、ジクロロ(1,5−シクロオクタジエン)パラジウム(II)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、ビス(トリ−tert−ブチルホスフィン)パラジウム(0)等が挙げられ、より好ましくはトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、ジクロロビス(エチレン)パラジウムまたはビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)であり、特に好ましくはトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムである。これらの均一系パラジウム触媒と同時に使用されるホスフィン系配位子としては特に限定されないが、前述の不均一系パラジウム触媒に使用されるものを同様に使用することが出来る。
【0028】
これらの均一系白金族元素触媒の担体に用いられる配位子の使用量は、金属元素とこれに配位する原子比に換算して好ましくは1:0.001〜1:10であり、より好ましくは1:0.01〜1:4であり、特に好ましくは1:0.1〜1:2である。
【0029】
本発明に用いる塩基としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムヒドリド、ナトリウムtert−ブトキシド、カリウムtert−ブトキシドが挙げられ、より好ましくはナトリウムtert−ブトキシド、カリウムtert−ブトキシドである。
塩基の使用量は用いる塩基の種類や基質によって異なるが、5−イミノ−9−ジアルキルアミノベンゾ[a]フェノキサチン類およびその塩に対し、通常0.5〜5当量、好ましくは0.8〜3当量、より好ましくは1〜2当量である。
【0030】
本発明の反応に使用できる溶媒としては、トルエン、キシレン、アニソール等の芳香族系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン、ジイソピロピルエーテル、イソプロピルメチルエーテル、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルミアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒が挙げられる。これらは単独でも混合溶媒として使用してもよい。溶媒の使用量は特に限定されないが、5−イミノ−9−ジアルキルアミノベンゾ[a]フェノキサチン類およびその塩に対して0.1〜100倍質量であり、より好ましくは1〜50倍質量、特に好ましくは2〜30倍質量である。
【0031】
本発明の反応温度は0℃〜200℃が好ましく、より好ましくは10℃〜150℃、特に好ましくは20℃〜120℃である。反応時間は反応する基質や溶媒によって異なるが、1〜72時間であり、より好ましくは2〜48時間、特に好ましくは3〜24時間である。また本発明は不活性ガス、例えば窒素、アルゴン雰囲気下で実施するのが好ましい。
【0032】
反応終了後に残留する白金族元素を除去する手段として、反応溶液中に残留する白金族元素は、吸着剤に吸着させるか、あるいは沈殿化させた後、吸着剤および沈殿物をフイルターで物理的に分離することにより除去できる。吸着剤として具体的には、活性炭を使用することができる。本発明で使用する活性炭は、好ましくは粉末活性炭であって、さらには木質系の原料をベースにガス割賦法により製造された水蒸気炭がより好ましく。細径直径20オングストローム付近にピークのある高度に発達した活性炭がさらに好ましく、純度の高い活性炭が好ましい。好ましくは強熱残分が2.0質量%以下、さらに好ましくは1.5質量%以下である。本発明に用いられる活性炭としては、例えばNorit Powder Type SX Plus、二村化学工業(株)の太閤などがあげられる。本発明において使用する活性炭の使用量は、5−イミノベンゾ[a]フェノキサチン誘導体に対して0.1〜200質量%の範囲であるが、好ましくは0.5〜50質量%、さらに好ましくは1〜20質量%である。
【0033】
本発明においては、活性炭に併用して、水溶性のメルカプト化合物を用いることが好ましい。メルカプト化合物のメルカプト基(−SH)の水素原子は、金属原子により置換されていてもよい。メルカプト化合物は脂肪族化合物、芳香族化合物および複素環化合物のいずれでもよい。メルカプト化合物が水溶性であるとは、25℃の水への溶解度が1.0質量%以上であることを意味する。メルカプト化合物が水溶性であるため、必要に応じて親水性基または親水性結合を有する比較的低分子の化合物であることが好ましい。親水性基の例には、カルボキシ、スルホ、アミノ、アルコール性水酸基、フェノール性水酸基、アルキル置換アミノ基が含まれる。カルボキシルまたはスルホが塩を形成する場合の対イオンとしては、アルカリ金属イオンが好ましい。アミノまたはアルキル置換アミノ基が塩(4級アンモニウム塩)を形成する場合の対イオンとしては、ハロゲンイオンが好ましい。親水性結合の例には、エーテル結合、アミド結合およびイミド結合が含まれる。以下に水溶性メルカプト化合物の例を示す。
【0034】
【化8】

【0035】
本発明において、特に好ましい水溶性メルカプト化合物として、システイン(2−アミノ−3−スルファニルプロピオン酸)が挙げられる。システインは、D,L−システイン、D(+)システイン、及びL(−)システインのいずれでもよいが、特にD,L−システインが好ましい。
【0036】
本発明において、活性炭および水溶性のメルカプト化合物が反応生成物中に含まれる白金族元素の残留量を除去する作用について明確ではないが、活性炭は白金族元素の錯体を吸着する作用、またメルカプト化合物は白金族元素の錯体と反応して白金族元素の硫化物を生成しその析出物がろ過により除去される作用に基づくと考えられる。
【0037】
本発明においては、白金族元素の残留量を減少する別の方法として、メタルスカベンジャーによる吸着を利用することができる。メタルスカベンジャーとしては、Smopex社のグラフト重合したポリオレフィンベースのファイバーに貴金属捕捉に関わる官能基を付けたSmopex−110(Thiouronium)、Smopex−111(Thiol)、Smopex−234(Thiol)、Smopex−103(Quaternary amine)、Smopex−105(Pyridine)、およびSIGMA−ALDRICH社のポリスチレン樹脂担体メタルスカベンジャーとしてQuadraPureTMTU(官能基はthiourea、以下官能基のみを括弧内に示す)、QuadraPureTMIDA(imino diacetate)、QuadraPureTMAMPA(aminomethyl phosphonic)、QuadraPureTMBZA(benzyl amine)、QuadraPureTMBDZ(imidazole)、QuadraPureTMEDA(amine)、QuadraPureTMDET(thiol)、QuadraPureTMIMDAZ(imidazolylpropyl amino)、QuadraPureTMMPA(mercaptophenyl amino)、及びQuadraPureTMAEA(aminoethyl amino)等がある。 また、SIGMA−ALDRICH社の球形シリカ担体メタルスカベンジャーとしてQuadraSilTMAP(官能基はaminopropyl、以下官能基のみを括弧内に示す)、QuadraSilTMMP(mercaptopropyl)、QuadraSilTMMTU(methylthiourea)、及びQuadraSilTMTA(triamine)等がある。さらに、マクロ多孔質ポリスチレン担持Trimercaptotriazineで、2,4,6−trimercaptotriazine(TMT)のレジン等価体であるBiotage社のArgoresin MP−TMT等のメタルスカベンジャーを使用することができる。
【0038】
次に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0039】
(1)9−N,N−ジエチルアミノ−5−(ピリジン−4−イルイミノ)−5H−ベンゾ[a]フェノキサチン(1A)の合成
9−N,N−ジエチルアミノ−5−イミノベンゾ[a]フェノキサチン(Nile Blue A[Free] 12.4g)を500ml二口フラスコに入れ、アルゴン雰囲気下、4−クロロピリジン塩酸塩(8.8g)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.72g)、BINAP(2.0g)を加え、最後にナトリウムtert−ブトキシド(11.3g)を加えた。更にその混合物にトルエン150mlを加え、窒素雰囲気下100℃にて24時間加熱攪拌した。フラスコ内の温度を室温に戻して濃縮した後、4NのHClaq.250mlを摘下し、摘下終了後45℃にて30分攪拌してから室温に冷却しろ過した。室温にて、このろ液にaq.25%NaOH(125ml)を摘下し、摘下終了後室温にて10分間攪拌した。次いで、フラスコ内の沈殿物をろ過し、水(50ml)で洗浄した後、得られた固体を40℃にて2日間乾燥した。乾燥後、得られた生成物をメタノールで洗浄し10.8gの生成物を得た。この生成物のPd含量は320ppmであった。
(2)9−N,N−ジエチルアミノ−5−(ピリジン−4−イルイミノ)−5H−ベンゾ[a]フェノキサチン(1A)の精製
得られた生成物10.8gを300ml三口フラスコに入れ、蒸留水80mLを加え、室温にてメカニカルスターラーで10分間攪拌した後、この三口フラスコを氷水にて冷却後、濃塩酸(20ml)を10分間で滴下して完全に溶解したHCl塩溶液を得た。このHCl溶液にNorit社のNorit Powder Type SX Plus活性炭(3.3g)とD,L−Cysteine/HCl/HO(1.62g)の混合物を加え、そのまま室温にて20時間攪拌を続けた。桐山ロートを用いて活性炭を濾過、水洗し、ろ液を得た。このろ液を氷水で冷却しつつ4NのNaOHaq.(60ml)を10分間で滴下した。析出した固体(粘土状)をろ過し、室温にて20時間送風乾燥した。この室温乾燥した固体とメタノール(100ml)を300ml三口フラスコに入れ、60℃にて1時間攪拌を続けた。濃青色の固体は細かく分散されてオレンジ色に変化した。室温冷却後、更に氷水で冷却、ろ過、約2時間室温にて送風乾燥し6.5g(合成及び精製のトータル収率42%)。このPd含量は10ppmであった。
【0040】
比較例1 9−N,N−ジエチルアミノ−5−(ピリジン−4−イルイミノ)−5H−ベンゾ[a]フェノキサチン(1A)の合成と精製(“ジャーナル オブ ザ アメリカン ケミカル ソサイエティー (Journal of the American Chemical Society)”1952年 72巻 574〜578頁)
9−N,N−ジエチルアミノ−ベンゾ[a]フェノキサチン硝酸塩(14.8g)および4−アミノピリジン(11.0g)をエタノール(200ml)に加え、空気をバブリングしながら24時間加熱還流した。溶媒を留去後、残留物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、1Aを得た(下図参照、3.08g)。合成及び精製のトータル収率20%、Pd含量は10ppmであった。
【化9】

【0041】
上記の比較例と比べ、本発明の方法は、従来知られている方法に比べて収率がよく、又シリカゲルクロマトグラフィーによる精製を必要としない。本発明の方法により高品質の9−N,N−ジエチルアミノ−5−(ピリジン−4−イルイミノ)−5H−ベンゾ[a]フェノキサチン(1A)を容易に得ることができる。
【実施例2】
【0042】
9−N,N−ジプロピルアミノ−2−メトキシ−5−(ピリジン−4−イルイミノ)−5H−ベンゾ[a]フェノキサチン(1N)の合成
9−N,N−ジエチルアミノ−2−メトキシ−5−イミノベンゾ[a]フェノキサチン(13.6g)を500ml二口フラスコに入れ、アルゴン雰囲気下、4−クロロピリジン塩酸塩(8.8g)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.72g)、BINAP(2.0g)を加え、最後にナトリウムtert−ブトキシド(3.3g)を加えた。更にその混合物にトルエン150mlを加え、窒素雰囲気下100℃にて24時間加熱攪拌した。フラスコ内の温度を室温に戻して濃縮した後、4NのHClaq.250mlを摘下し、摘下終了後45℃にて30分攪拌してから室温に冷却しろ過した。室温にて、このろ液にaq.25%NaOH(125ml)を摘下し、摘下終了後室温にて10分間攪拌した。次いで、フラスコ内の沈殿物をろ過し、水(50ml)で洗浄した後、得られた固体を40℃にて2日間乾燥した。乾燥後、得られた生成物をメタノールで洗浄し11.6gの生成物を得た。
(2)9−N,N−ジエチルアミノ−2−メトキシ−5−(ピリジン−4−イルイミノ)−5H−ベンゾ[a]フェノキサチン(1N)の精製
得られた生成物11.6gを300ml三口フラスコに入れ、蒸留水80mLを加え、室温にてメカニカルスターラーで10分間攪拌した後、この三口フラスコを氷水にて冷却後、濃塩酸(20ml)を10分間で滴下して完全に溶解したHCl塩溶液を得た。このHCl溶液にSmopex社のSmopex−110(0.26g)を加え、そのまま室温にて24時間攪拌を続けた。桐山ロートを用いてSmopex −110を濾過、水洗し、ろ液を得た。このろ液を氷水で冷却しつつ4NのNaOHaq.(60ml)を1分間で滴下した。析出した固体(粘土状)をろ過し、室温にて20時間送風乾燥した。この室温乾燥した固体とメタノール(100ml)300ml三口フラスコに入れ、60℃にて1時間攪拌を続けた。室温冷却後、更に氷水で冷却、ろ過、約2時間室温にて送風乾燥し8.0gの精製品を得た。精製品のPd含量は5ppmであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)で表される5−イミノベンゾ[a]フェノキサチン類またはその塩を白金族元素触媒、配位子および塩基の存在下、一般式(II)で表される脱離基を有する含窒素不飽和ヘテロ環化合物と反応させ、反応終了後に残留する白金族元素を除去する手段を有することを特徴とする一般式(III)で表される5−含窒素不飽和ヘテロ環置換イミノベンゾ[a]フェノキサチン類またはその塩の製造及び精製方法。
【化1】

(式中、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基を表す。R、R、R、及びRは、それぞれ独立に水素原子、又は置換基を表し、RとR,RとR,RとRは互いに結合して5員、6員又は7員の環を形成してもよい。nは0、1、または2を表し、2の場合Rは同じでも異なっていてもよい。)
【化2】

(式中、Zは5員又は6員の含窒素不飽和ヘテロ環残基を表し、Y以外の置換基を有してもよい。Yは脱離基を表す。)
【化3】

(式中、R〜R、Zおよびnは前記と同じ意味を有する。)
【請求項2】
反応終了後に残留する白金族元素を除去する手段として、活性炭を用いることを特徴とする請求項1に記載の5−含窒素不飽和ヘテロ環置換イミノベンゾ[a]フェノキサチン類またはその塩の製造方法。
【請求項3】
反応終了後に残留する白金族元素を除去する手段として、活性炭および水溶性メルカプト化合物を用いることを特徴とする請求項1に記載の5−含窒素不飽和ヘテロ環置換イミノベンゾ[a]フェノキサチン類またはその塩の製造及び精製方法。
【請求項4】
水溶性メルカプト化合物がシステインであることを特徴とする請求項3に記載の5−含窒素不飽和ヘテロ環置換イミノベンゾ[a]フェノキサチン類またはその塩の製造及び精製方法。
【請求項5】
反応終了後に残留する白金族元素を除去する手段として、メタルスカベンジャーを含む担体を用いることを特徴とする請求項1に記載の5−含窒素不飽和ヘテロ環置換イミノベンゾ[a]フェノキサチン類またはその塩の製造及び精製方法。
【請求項6】
一般式(II)のZで表される含窒素不飽和ヘテロ環残基が、置換していてもよいピリジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、またはイミダゾールである請求項1〜5のいずれか1項に記載の5−含窒素不飽和ヘテロ環置換イミノベンゾ[a]フェノキサチン類またはその塩の製造及び精製方法。
【請求項7】
一般式(I)のRおよびRがそれぞれエチル基またはプロピル基、Rが水素原子、Rが水素原子またはメチル基、Rが水素原子、Rがメチル基またはメトキシ基、nが0または1、一般式(II)のZがピリジンまたはピリミジン、Yがハロゲン原子である請求項1〜6のいずれか1項に記載の5−含窒素不飽和ヘテロ環置換イミノベンゾ[a]フェノキサチン類またはその塩の製造及び精製方法。
【請求項8】
白金族元素触媒が均一系パラジウム触媒または担持されたパラジウム触媒、配位子がホスフィン系リガンドである請求項1〜7のいずれか1項に記載の5−含窒素不飽和ヘテロ環置換イミノベンゾ[a]フェノキサチン類またはその塩の製造及び精製方法。

【公開番号】特開2012−167075(P2012−167075A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43001(P2011−43001)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(508075834)株式会社 シンスター・ジャパン (4)
【Fターム(参考)】