説明

6−置換−1−(2H)−イソキノリノンの製造法

本発明は6−置換−1−(2H)−イソキノリノンの製造法を提供することを目的とする。
本発明は式I
【化1】


(式中、R1およびnは本明細書で定義される通りである)の6−置換−1−(2H)−イソキノリノン誘導体の製造法に関する。本発明はさらに本発明の方法において使用される新規中間体およびそのような中間体の製造法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は式(I)
【化1】

(式中、R1およびnは本明細書で定義される通りである)の6−置換−1−(2H)−イソキノリノンの製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明はさらに本発明の方法において有用な新規中間体およびそのような中間体の製造法に関する。式(I)の誘導体はとりわけ高血圧の治療において有益な酵素Rho−キナーゼの阻害剤の製造中間体として有用である。そのような誘導体は例えば特許文献1または2に記載されている。
【0003】
従来技術の合成経路および中間体はそのような化合物を製造するのに適しており、さらに合成の最後にN−ヘテロシクロアルコキシ基をイソキノリノンに付加することにより合成工程の終盤に多様性をもたらすという利点がある。しかしながら、開示されている経路の1つはイソキノリノン環を製造する環化のために高温のクルチウス転位/電子環化反応を行なっており、そこでアシルアジドはこの反応の取り扱いを困難にする高エネルギー化合物であることがわかっている(スキーム1に示される基本的な環生成反応)。
【0004】
スキーム1
【化2】

【0005】
開示されている別の経路は最初にイソキノリンを生成し、それを次にN−オキシドの生成および転位によりイソキノリン−1−オンに変換している。そのようなN−オキシドもまた取り扱いが困難な高エネルギー化合物であることがわかっている。
【0006】
さらに、両方の合成工程は長く、収量が低い。それらはまた、生成物の収率を軽減する保護/脱保護工程の使用を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO 2007/012421
【特許文献2】WO 2007/065916
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的はこれらの誘導体を製造するための別の経路を提供することである。問題は本発明により解決され、記載した反応条件下での幾つかの反応工程により容易に入手できる出発物質および試薬を使用して良好な収率で式(I)の化合物を製造することができる新規な合成経路が提供される。これらの誘導体はそれ自体をRho−キナーゼ阻害剤として使用することができ、あるいは他の置換基をN−原子に加えてこれらの化合物のアミノ基を修飾することにより、またはイソキノリノン系の別の位置を修飾することにより他の阻害剤の合成において中間体として使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施態様において、本発明は
(A) 式(II)
【化3】

(式中、Xはハロゲンである)
の化合物を適当な溶媒中、塩基の存在下で式(III)
【化4】

(式中、R1はHまたは保護基であり、そして
nは1、2、3または4である)の化合物と反応させて式(IV)
【化5】

(式中、R1はHまたは保護基であり、そして
nは1、2、3または4である)の化合物を得、ここでR1がHである場合、アミノ基を保護して式(IV)(式中、R1は保護基である)の化合物を得;
【0010】
(B) 式(IV)(式中、R1は保護基である)の化合物を式(V)
R4−CH[N(R5)2]2 (V)
[式中、R4は−O(C1−C6)アルキルであり、そして
R5は(C1−C6)アルキルである]の化合物と反応させて式(VI)
【化6】

(式中、R1は保護基であり、そして
nは1、2、3または4である)の化合物を得;
【0011】
(C) 式(VI)の化合物を環化し、場合により保護基を適当な溶媒中、ハロゲン化水素酸の存在下で除去して式(I)
【化7】

(式中、R1はHまたは保護基である)の化合物を得;
【0012】
(D) 場合により工程(C)で得られた式(I)(式中、R1は保護基である)の化合物から保護基を除去して式(I)(式中、R1はHである)の化合物を得;そして
【0013】
(E) 場合により式(I)の化合物をその塩に変換する工程からなる式(I)
【化8】

(式中、nは1、2、3または4であり;そして
R1はHまたは保護基である)の化合物またはその塩の製造法に関する。
【0014】
使用されるアルキルおよび相当するアルキレン置換基なる用語は直線状、すなわち直鎖状または分枝鎖状であり、それぞれ1、2、3、4、5または6個の炭素原子を有する炭化水素基、例えば(C1−C6)アルキルまたは(C1−C4)アルキルまたは(C1−C2)アルキルを意味すると理解される。これはアルキル基が他の基、例えばアルコキシ基(O−アルキル)またはアルコキシカルボニル基またはアリールアルキル基において置換基として存在する場合にもあてはまる。アルキル基の例はメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル(アミル)またはヘキシル、すべてのこれらの基のn−異性体、すなわち分枝異性体のイソプロピル、イソブチル、1−メチルブチル、イソペンチル、ネオペンチル、2,2−ジメチルブチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、イソヘキシル、sec−ブチル、t−ブチル(1,1−ジメチルエチル)またはt−ペンチル(1,1−ジメチルプロピル、t−アミル)である。相当するアルキレン基はメチレン、エチレン、プロピレンなどである。
【0015】
ハロゲンはフルオロ(F)、クロロ(Cl)、ブロモ(Br)またはヨード(I)を意味する。
【0016】
アリールは未置換の、あるいはそれぞれ独立して(C1−C4)アルキル、O(C1−C4)アルキルまたはハロゲンから選択される1、2または3個、好ましくは1個の置換基で置換されるフェニルまたはナフチル、好ましくはフェニルを意味する。
【0017】
−(C1−C4)アルキレンアリールまたはメチレンアリールのようなアルキレンアリール基において、アルキレンは同一または異なる炭素原子においてアリールにより1、2または3回置換されうる。アルキレンアリールは例えばフェニルメチレン(ベンジルとも表される)、(トリフェニル)メチレン(トリチルとも表される)、(ジフェニル)メチレン(ベンズヒドリルとも表される)または(4−メトキシフェニル)−ジフェニルメチレンを含む。
【0018】
式(I)の化合物を製造するための本発明の方法をそれ自体も本発明の一実施態様である単一の反応工程(A)、(B)および(C)と共に次のスキームに要約する。場合により、独立した脱保護工程(D)を加えることができる。
【0019】
スキーム2
【化9】

【0020】
スキーム2に示される方法工程を下記で詳細に説明する。
【0021】
工程A
式(IV)の化合物を製造するために、求核性芳香族置換が使用される。2−メチル−4−ハロベンゾニトリル(II)は必要な6−ヘテロシクロアルコキシ−1−(2H)−イソキノリノン(VI)を構成する適当な官能基を含有する。2−メチル−4−ハロ ベンゾニトリルは当該技術分野でよく知られており、多数のメーカー、例えばSigma Aldrichから商業的に入手できる。化合物(II)の一実施態様において、ハロゲンXはフルオロ、クロロまたはブロモ、より好ましくはフルオロまたはクロロから選択され、最も好ましくはXはフルオロである。
【0022】
様々な式(III)のN−ヘテロシクロアルキルアルコール、例えば2−ヒドロキシアゼチジン(nは1である)、3−ヒドロキシピロリジン(nは2である)、3−または4−ヒドロキシピペリジン(n=3)および4−ヒドロキシアゼパン(n=4)は商業的に入手できる。反応工程(A)で使用されるN−保護誘導体は当該技術分野で知られている保護基を第二級アミン窒素に導入するための方法に従って製造することができる。
【0023】
好ましい式(III)のアルコールは1−ベンジル−3−ピロリジノール、3−ヒドロキシ−ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル、1−ベンズヒドリル−アゼチジン−3−オールまたは4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステルである。
【0024】
式(III)の化合物から製造されたR1−置換−N−ヘテロシクロアルキル−アルコキシドによる式(II)の化合物のハロゲン原子Xの求核性芳香族置換は化合物(IV)をもたらす。求核性芳香族置換は知られている反応であり、それは芳香族環が(好ましくは多数の)強力な電子吸引性基、例えばニトロ基を有する限りアミンおよびアリールフッ化物または塩化物により起こり、それぞれ置換アニリンを生成する。
【0025】
しかしながら、これらの条件が満たされない場合、求核性置換は困難になるか、または開始すらしない。式(II)の化合物において、反応性の欠如は電子供与性メチル基の反作用と共にニトリル基の弱い電子吸引性により引き起こされる。結果として、所望の求核性芳香族置換反応の代りに、ニトリルとアルコールの反応が起こり、アルコキシ−カルボキシレートが得られる(Pinner反応)。この加水分解は4−フルオロ−2−メチルベンゾニトリルについてWO 2004/110344(Astra Zeneca)に記載されており、従来の塩基性反応条件は所望の求核性芳香族置換反応の代りにニトリルの反応だけをもたらす。
【0026】
4−ハロ −2−メチル−ベンゾニトリル(II)およびアルコール(III)のアリールエーテル(IV)へのクリーンで高収率の変換を可能にする反応条件が見い出された。式(IV)の化合物を得るための式(II)の化合物と式(III)の化合物の反応は塩基、好ましくは強塩基の存在下で行なわれ、それは無機または有機塩基である。
【0027】
反応が行なわれる実施態様を次のスキーム3で概説する。
【0028】
スキーム3
【化10】

【0029】
式(II)(式中、Xはハロゲンである)の化合物を式(III)のアルコールと反応させる。ここで、アルコールの範囲は上記で定義された通りである。
【0030】
一実施態様において、反応はR1がHである、すなわちアミノ基が保護基により保護されていない式(III)の化合物と行なうことができる。他の実施態様において、R1は保護基である。R1が保護基である場合、その保護基は工程B)が行なわれる前に知られている方法により式(IV)の化合物に導入される。好ましくは、化合物(III)のR1は保護基である。保護基の詳しい実施態様については下記の“保護基”という見出しの後の段落を参照されたい。
【0031】
反応はアルコール(III)が適当な溶媒中で強力な有機または無機塩基を使用してアルコキシドに変換される様々な方法で行なうことができる。好ましい実施態様において、工程A)で使用される塩基はアルカリ金属第三級アルコキシド、アルカリ金属水素化物またはアルカリ金属から選択される。これらの塩基または金属それ自体のアルカリ金属は特にリチウム、ナトリウムまたはカリウムである。適当なアルカリ金属アルコキシドはナトリウムおよびカリウムt−ブトキシドまたはナトリウムおよびカリウムt−アミレートである。相当するアルカリ金属水素化物はNaH、KHまたはLiHから選択することができる。
【0032】
変法a)では、アルカリ金属水素化物、例えばNaHまたはKHを使用することができ、あるいはナトリウムまたはカリウムのような金属を直接、適当な溶媒、例えばエーテルまたは双極性の非プロトン性溶媒中で使用することができる。
【0033】
変法b)では、第三級アルコールのアルコキシドを使用することができ、それらは強力な立体障害により強塩基性であり、非求核性である。例は商業的に入手できる ナトリウムおよびカリウムt−ブトキシドまたはナトリウムおよびカリウムt−アミレートである。アルコラートはまた、水酸化ナトリウムまたはカリウムのような塩基およびt−ブタノールまたはt−アミルアルコールのようなアルコールから製造することもでき、生成した水を直接または共沸蒸留により除去してアルコキシドを直接生成する。
【0034】
一実施態様において、塩基はアルカリ金属第三級アルコキシドである。好ましくは、塩基はナトリウムまたはカリウムt−ブトキシド(KOtBu)、ナトリウムまたはカリウムt−アミレート、またはNaHから選択される。より好ましい実施態様において、カリウムt−ブトキシドまたはカリウムt−アミレートが塩基として使用され、最も好ましくはカリウムt−ブトキシドである。
【0035】
好ましくは、溶媒の使用は最小限に抑えられるが、実際には操作上の容易さおよび利便性のために適当な溶媒が加えられる。上記の変法a)およびb)を含むこの反応工程で使用することができる溶媒はテトラヒドロフラン(THF)、2−メチル−THF、メチル−t−ブチルエーテル(MTBE)、ジオキサン、ジメトキシエタン(DME)またはジメトキシメタンのようなエーテル、およびジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチルピロリドン(NMP)、N−エチルピロリドン、ジメチルホルムアミド(DMF)またはジメチルアセトアミドのような双極性の非プロトン性溶媒である。
【0036】
使用される温度は通常4℃〜220℃の範囲、好ましくは80℃〜200℃の範囲、より好ましくは40℃〜140℃の範囲である。低沸点溶媒を使用する場合、反応をオートクレーブにおいて加圧下で行なうことができる。
【0037】
全体の反応時間は使用される溶媒、塩基および反応温度に依存し、これらのパラメーターに合せて都合よく調整可能である。
【0038】
式(IV)の化合物は標準的な合成手順により、例えば溶液から生成物を沈殿させる貧溶媒を反応混合物に加えることによる反応混合物からの直接沈殿、または有機相への抽出および水相中の塩の除去を伴う標準的な水性処理により単離および精製することができる。その後、生成物を結晶化させることができる。場合によっては、所望の生成物をクロマトグラフィーにより精製および単離することが好ましい。
【0039】
工程B
この方法工程において、式(IV)の化合物のメチル基をホルミル化剤と反応させてメチル基をホルミル−メチル基またはその合成等価体、例えばエナミンまたはエノールエーテルに変換する。
【0040】
ジメチルホルムアミドアセタールによる2−メチル−ニトロベンゼンおよびその誘導体のホルミル化はいわゆるLeimgruber−Batchoインドール合成(Leimgruber, W.、Batcho, A. D.米国特許第3732245号)の知られている出発点であり、強力な電子吸引性のニトロ基がオルト位のメチル基を酸性化する働きをする。N,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタールによる穏やかなホルミル化はメチル基をベータ−ジメチルアミノ−スチレンに変換し、それはニトロ基の還元でインドールに分解してアミンを与える(スキーム4)。
【0041】
スキーム4
【化11】

【0042】
しかしながら、式(IV)の4−ヘテロシクロアルコキシ−2−メチルベンゾニトリルの置換は類似の結果が当業者により予想されないようなことである。
【0043】
第一に、ニトリル基はニトロ基より電子吸引性が有意に低い。さらに、4−ヘテロシクロアルコキシ−2−メチルベンゾニトリルのメチル基の必要な酸性度は前記工程で導入された強力な電子供与性の4−ヘテロシクロアルコキシ基の結果として減少する。
【0044】
スキーム4aに示されるように、米国特許第3732245号からホルミル化反応は強力な活性化ニトロ基でもフェニル置換基に非常に依存することが知られている。
【0045】
スキーム4a
【化12】

【0046】
米国特許第3732245号は穏やかな活性化Cl(実施例21、試薬としてジメチルホルムアミドジメチルアセタール(DMF−DMA))を不活性化メトキシ基(実施例42、試薬としてジメチルホルムアミド エチレンアセタール(DMF−EA))と交換すると収率の実測値が魅力的な88%(R=Cl)から合成的に殆んど有用ではない14%(R=OMe)まで大幅に減少することを開示している。O−Me基は電子的不活性化のために本発明で使用されるヘテロシクロアルコキシ基(III)と同一である。
【0047】
さらに、ニトロ基の酸性化効果はニトリル基より有意に強いことが知られている。オルト置換についての定量的データは文献に見当たらないが、パラ位がNO2またはCNで置換されたトルエンのメチル基のpka値はそれぞれ実験的に定量されている(J. Org. Chemistry
42, No. 10(1977年);第1818頁の表1)。これらの測定に基づいて、CN基の活性化効果は10pKa単位で大幅に減少し(−NO2 pK20.4;−CN pK30.8)、非常に弱いため殆んど測定することができない。その結果として、2−メチルベンゾニトリルは米国特許第3732245号で使用された相当する2−メチルニトロベンゼンよりも反応性が有意に低いことが予想される。
【0048】
実際に、メチル置換ベンゾニトリルのホルミル化がBredereck, H.らのChem. Berichte,
101, 4048〜4056(1968年)で報告されている。この場合、他のホルミル化試薬(t−BuOCH(NMe2)2)が使用されている。
【0049】
しかしながら、この変換はオルト−およびパラ−トルニトリルについて中程度の収率で行なわれているに過ぎず(第4050/4051頁の表1)、CN基の低い反応性に関する上記見解を裏付けている(スキーム4b、t−ブチルO−CH−N(NMe2)2との反応を参照)。
【0050】
スキーム4b
【化13】

【0051】
幾らか活性化されると(パラ位のCl)、t−ブチルO−CH−N(NMe2)2)との反応は良好に起こる(Widmer, U.のHelv. Chim. Acta, 73, 763(1990年))。スキーム4cを参照。
【0052】
スキーム4c
【化14】

【0053】
一般に、この変換はメチル基が2個のニトリル基(WO 2005/123680;Threadgill, M. D.らのBioorg. Med. Chem., 6, 721(1998年))により、またはニトリル基およびニトロ基(米国特許第6906192号;Glossop, S. C.のSynthesis, 981(2007年);Cannon, J. G.らのJ. Heterocyc. Chem., 20, 149(1983年))により二重に活性化される場合にだけ特定の状況で容認できる反応として文献に記載されている。
【0054】
前記で説明したように、これは式(IV)の4−ヘテロシクロアルキルオキシ−2−メチルベンゾニトリルのように1個のニトリルおよび強力な不活性化アルコキシ基を有するものとはかなり異なる。米国特許第3732245号に記載の例(スキーム4aを参照)から推定して、またCN基はメチル基を活性化するのに非常に弱いことを知っているので、2−メチルベンゾニトリル(スキーム4bを参照)の低下した反応性はニトリルに対してパラ位のN−ヘテロシクリルアルコキシ基によりさらにもっと減少し、反応が 起こらないか、またはあったとしても特に大規模合成において合成的に有用ではない低収率で起こると考えられる。したがって、当業者はそのような種類の化合物の合成において上記文献に記載の試薬によるホルミル化反応を考慮しないであろう(スキーム4d)。
【0055】
スキーム4d
【化15】

【0056】
その結果、この予想に沿って、米国特許第3732245号に従ってLeimgruber−Batcho−インドール合成のような条件下で 様々なジメチルホルムアミドジアルコキシアセタールを使用する本発明者らによる試みは失敗に終わり、より強制的な条件下で変換が起こらないか、または複雑な反応混合物をもたらした。金属化、あるいはLDAまたはカリウムヘキサメチルジシラジド(KHMDS)のような強力な有機塩基の使用およびDMF、Vilsmeyer試薬またはギ酸エチルのようなホルミル化剤でのクエンチによるホルミル化という潜在的な代替法では所望の生成物を微量しか得られず、このことからニトリルのような弱い活性化基とアルコキシ基のような不活性化基の組合せはこの反応を行なうのに不十分であるという結論に達する。
【0057】
驚くべきことに、式(V)の試薬を使用することにより良好な収率で4−ヘテロシクロアルコキシ−2−メチルベンゾニトリル(IV)からジメチルアミノエナミン(VI)への優れた変換を達成することができることを見い出した。
【0058】
この工程の全反応をnが3である式(IV)のアルコールが例として示されるスキーム5に示す。
【0059】
スキーム5
【化16】

【0060】
試薬(V)は式
R4−CH[N(R5)2]2 (V)
[式中、R4は−O(C1−C6)アルキルであり、そして
R5は(C1−C6)アルキルである]の化合物である。
【0061】
化合物(V)において、R4は−O(C1−C6)アルキル、例えばメトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブチルオキシまたは1,1−ジメチルプロピルオキシであり、そしてR5は(C1−C6)アルキル、好ましくは(C1−C4)アルキル、例えばメチルまたはエチルである。好ましくは、R4は−O(C1−C6)アルキルである。
【0062】
試薬(V)の他の実施態様において、R4はt−ブチルオキシまたはエトキシ、好ましくはt−ブチルオキシである。他の実施態様において、R5はメチルである。試薬(V)の他の実施態様において、t−ブチルオキシ−ビス−(ジメチルアミノ)メタンが式(IV)の化合物との反応で使用される。
【0063】
特に好ましい化合物R4−CH[N(R5)2]2 (V)はt−ブチルオキシ−ビス−(ジメチルアミノ)メタンである。この試薬(R4はt−ブチルオキシであり、R5はメチルである)は商業的に入手できる(Bredereck試薬とも表される)。類似の活性ホルミル化試薬(V)、例えばt−ブチルオキシ−ビス−(ジエチルアミノ)メタン(R4はt−ブチルオキシであり、R5はエチルである)またはt−ペントキシ−ビス−(ジメチルアミノ)メタン(R4は1,1−ジメチルプロピルオキシであり、R5はメチルである)もまた本反応で有用であり、使用することができる。そのような試薬はいろいろなメーカー、例えばAldrich、AcrosまたはFlukaから商業的に入手でき、あるいはBredereckのChem. Berichte, 101, 41(1968年)またはWassermanのJ.Org. Chem., 50, 3573(1985年)に記載のような知られている方法により合成することができる。試薬(V)は反応条件下で場合により相互変換することが知られており(例えばBredereckのChem. Berichte, 101, 51〜57を参照(1968年))、これらの中間体または化学種は試薬(V)の定義および範囲に包含される。
【0064】
反応の一実施態様において、ホルミル化試薬R4−CH[N(R5)2]2と式(IV)の化合物の反応により生成するアルコール(例えばR4がt−ブチルオキシである場合はt−ブタノール)は高温で付随して除去される。試薬(V)は高温で不安定である。したがって、反応の他の実施態様において、反応条件は反応が進行すると製造されるアルコール(例えばt−ブタノール)の留去と共に試薬(V)が式(IV)の化合物の熱溶液に継続して加えられるように選択することができる。
【0065】
試薬(V)は式(IV)の化合物を予め溶媒で希釈することなく直接加えることができる溶媒として使用することもできる。別法として、式(IV)の化合物はN−メチルピロリドンまたは低沸点エーテル、例えばMTBE(メチル−t−ブチルエーテル)のような適当な溶媒で希釈することができ、それは蒸留により継続的に除去される。
【0066】
反応を行なうために使用される温度は80℃〜200℃、好ましくは90℃〜180℃、より好ましくは110℃〜170℃の範囲である。ナトリウムまたはカリウムt−ブトキシド、ナトリウムまたはカリウムt−アミレート、またはDBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン)のような塩基を加えて反応を促進することができる。
【0067】
試薬(V)の量は重要ではなく、1〜30モル当量と変動する。より好ましくは、3〜10モル当量の試薬が使用される。
【0068】
得られる生成物は標準的な合成法により単離し、さらに精製することができ、好ましくは反溶剤を熱反応混合物に加えて沈殿した生成物を直接ろ過する。例えば、エタノールを熱反応混合物に加えると所望の生成物が幾らか沈殿する。同様に、反応混合物を蒸発させ、通常の水性処理を行なってから生成物を結晶化することも魅力的である。さらに、生成物は知られている方法に従ってクロマトグラフィーにより単離することができる。
【0069】
別法として、反応混合物に含まれる生成物をさらに精製することなく次の反応工程で使用することもでき、すなわち反応工程(B)および(C)は単一ポット反応として行なうことができる。不純物および全工程のロバスト性を制御するために中間体の単離が有利である。
【0070】
エナミン(VI)の立体化学はE−異性体として示されるが、それは合成的に等価であるEおよびZ異性体の両方として存在することができる。
【0071】
保護基R1は下記の“保護基”で挙げられるような基から選択することができる。
【0072】
工程C、DおよびE
本発明の方法工程C)に従って、式(VI)
【化17】

の化合物を環化し、保護基を場合により適当な溶媒中、ハロゲン化水素酸の存在下で除去して式(I)
【化18】

(式中、R1はHまたは保護基である)の化合物を得;
(D) 場合により工程(C)で得られる式(I)(式中、R1は保護基である)の化合物から保護基を除去して式(I)(式中、R1はHである)の化合物を得;そして
(E) 場合により式(I)の化合物をその塩に変換する。
【0073】
式(VI)の4−ヘテロシクロアルコキシ−2−(2'−ジアルキルアミノビニル)ベンゾニトリルの式(I)の6−ヘテロシクロアルコキシ−1−(2H)−イソキノリノンへの変換は文献に記載されていない。所望の6−ヘテロシクロアルコキシ−1−(2H)−イソキノリノン(I)を与える条件および環化試薬が見い出された。これらの環化条件およびそこで使用される試薬は本発明の一部である。
【0074】
一実施態様において、式(VI)の4−ヘテロシクロアルコキシ−2−(2'−ジアルキルアミノビニル)ベンゾニトリルの式(I)の化合物への環化反応は式(VI)の化合物を環化試薬として、すなわち反応を酸性の反応条件下で行なうための強力な酸の存在下で反応させることにより行なうことができる。酸性条件下とは、環化反応をアルコールのような適当な溶媒中、特に溶媒としてメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールまたはペンタノールのような(C1−C6)−アルカノールを使用してハロゲン化水素酸、例えばHCl、HBrまたはHI、好ましくはHClの存在下で行なうと理解される。n−アルコールおよびその異性体は何れも使用することができる。好ましくは、反応はメタノール、エタノール、n−プロパノールまたはn−ブタノール中で行なわれ、n−ブタノールが最も好ましい。
【0075】
一実施態様において、文献に記載のメタノールまたはエタノールの代りに、ブタノールを含む(C4−C6)アルカノールのような(C1−C6)アルカノール群からのより大きなアルコールが使用される。これは式(I)の化合物を製造するのに有利である。そのようなアルコールを使用すれば反応を高温で行なうことができる。温度を上げると反応はより良く進行し、生成する不純物も少ない。アルコールから生成する塩化ジメチルアンモニウムおよび相当する塩化アルキルのような特有の副生成物は溶液中に残留するが、式(I)の生成物またはその塩は溶解度が低く、反応混合物から沈殿する傾向がある。沈殿した生成物は通常、優れた収率および高純度でろ過により単離することができる。
【0076】
ハロゲン化水素酸の供給源としてHCl、HBrまたはHI気体を使用することができ、アルコールに加えることができる。HCl気体を使用する代りに、アルコールと反応して無水アルコール性HCl溶液を生成するTMSClまたはAcCl(塩化アセチル)のような他の試薬を使用することもできる。環化するための一連の好ましい反応条件は溶媒として(C1−C6)−アルカノール、好ましくはn−ブタノール中でHCl気体を使用することを含む。
【0077】
反応は使用されるアルコールの沸点に応じて好ましくは40℃〜140℃の範囲の温度で行なわれ、より好ましい温度範囲は60℃〜120℃である。
【0078】
反応は好ましくは2〜30モル当量、より好ましくは3〜15モル当量のハロゲン化水素酸、例えばHCl気体を使用して行なわれる。工業規模では、過剰のハロゲン化水素酸、例えばHClは簡易排ガス洗浄装置で容易に中和することができる。
【0079】
環化反応において場合により保護基を同時に除去して式(I)(式中、R1はHまたは保護基である)の化合物を得ることもできる。式(I)(式中、R1はHまたは保護基である)の化合物をえるためのR1の保護基または保護基の選択に関しては次の“保護基”の段落を参照。
【0080】
保護基
上記反応工程A)、B)およびC)の何れかと相当する中間体に有用な保護基は例えばT.W. GreeneおよびP.G.M. WutsのProtective Groups in Organic Synthesis, 第3版, 第7章, 第494頁, John Wiley and Sons, New York(1999年)に挙げられている様々な基から選択することができるが、これらに限定されない。
【0081】
R1の保護基は好ましくは工程A)およびB)で使用される塩基性反応条件下で安定なものである。工程A)、さらに工程B)およびC)、並びに中間体(III)、(IV)および(VI)において有用である適当な安定したR1の保護基はt−ブチルオキシカルボニルおよびベンジルオキシカルボニルまたはp−メトキシベンジルカルボニルのようなカルバメート;ホルミルまたはアセチルのようなアミド;ベンジル、(ジフェニル)メチレン、トリチルまたは(4−メトキシフェニル)ジフェニルメチレンのようなN−アルキレンアリール、あるいはホスホロアミド酸ジアルキルおよびp−トルエンスルホニルのようなN−PおよびN−スルホニル保護基から選択することができる。
【0082】
保護基は当該技術分野で知られている方法により導入することができ、式(III)(式中、R1はHである)のN−ヘテロシクロアルキルアルコールを相当する保護基を与える試薬と反応させて保護アミンにする。他の実施態様において、上記のように工程A)の反応においてR1がHである場合、式(IV)の化合物に保護基を導入することができる。
【0083】
したがって、一実施態様において式(III)、(IV)、(VI)または(I)の化合物の保護基R1は−C(O)−R6から選択される基であり、ここでR6はH、CH3、t−ブチルオキシ−、ベンジルオキシ−またはp−メトキシベンジル−であり、あるいはR1は−(C1−C4)アルキレンアリール、好ましくはメチレンアリール、例えばベンジル、(ジフェニル)メチレン、(トリフェニル)メチレンまたは(4−メトキシフェニル)−ジフェニルメチレンであり、あるいはR1は−S(O)2−アリール、例えばp−トルエンスルホニルであり、あるいはR1は−P(O)(O(C1−C6))2または−P(O)(Oアリール)2である。
【0084】
保護基を導入するために使用される適当な試薬は当該技術分野で知られており、商業的に入手できる。例えば、二炭酸ジ−t−ブチルはt−ブチルオキシカルボニル基を導入するために使用することができる。個々の基の選択は出発物質の入手可能性や他の有用な特性、例えば他の反応条件下での安定性、その後の除去の容易さおよび中間体の結晶化度により決定される。
【0085】
好ましくは、合成全体を通して同じ保護基が使用される。したがって、好ましくは塩基性反応条件下で安定な保護基が工程A)、B)およびC)で使用される。工程(C)において式(I)(式中、R1はHである)の脱保護生成物を得るために、保護基は酸に不安定であるか、または酸に安定である。
【0086】
式(I)の化合物を得るための式(VI)の化合物の工程C)の環化反応の一実施態様において、保護基を場合により環化反応中に同時に除去して式(I)(式中、R1はHまたは保護基である)の化合物を得ることができる。この実施態様において、好ましくは酸に不安定な保護基が使用される。したがって、式(I)の化合物は保護基を含まず式(I)(式中、R1はHまたは保護基である)の化合物を与える式(VI)の化合物から直接得ることができる。この基は環化反応が起こる同じ反応工程で同時に分解することができ、式(I)(式中、R1はHである)の化合物は工程C)で直接得られる。
【0087】
この実施態様において有用である適当な酸に不安定な保護基はR1がt−ブチルオキシカルボニルまたはベンジルオキシカルボニルのようなカルバメート(R1は−C(O)−R6であり、ここでR6はt−ブチルオキシ、ベンジルオキシまたはp−メトキシベンジルである);N−ホルミル(R6はHである)またはN−アセチル(R6は−CH3である)である基、あるいはR1が−(C1−C4)アルキレンアリール、好ましくはメチレンアリール、例えばトリチル((トリフェニル)メチレン)、(4−メトキシフェニル)ジフェニルメチレンまたはp−メトキシベンジルである基である。そのような基は当該技術分野で知られている方法により除去することができる、すなわちアミノ基に変換することができる。これらの保護基は工程A)およびB)の塩基性反応条件下で安定であるが、工程C)では不安定である。R1のBoc(t−ブチルオキシカルボニル)基はハロゲン化水素酸が上記のような式(VI)の化合物の環化に使用される場合に好ましい。
【0088】
本発明の特定の実施態様において、酸に不安定な保護基、好ましくはt−ブチルオキシカルボニル基は式(III)、(IV)および(VI)の化合物のR1の保護基として使用される。さらに詳しくは、t−ブチルオキシカルボニルがR1で使用される場合、式(VI)の化合物の環化反応は好ましくは適当な溶媒、好ましくはn−ブタノール中でHClのようなハロゲン化水素酸、好ましくはHCl気体を使用して行なわれ、直接式(I)(式中、R1はHまたは保護基である)の化合物が得られる。酸に不安定な基を使用すれば工程(D)を省略することができる。
【0089】
式(VI)の化合物の環化反応の他の実施態様において、保護基を式(I)の化合物の製造で使用することができ、まだ保護基を含む式(I)の環化生成物が得られる。酸性の反応条件下で窒素上に残留し、式(VI)の化合物の環化に使用することができる適当な保護基はR1が(C1−C4)アルキレンアリール、例えばベンジルまたは(ジフェニル)メチレン;カルバメート、例えばメチルまたはエチルオキシカルボニル(R1は−C(O)R6であり、ここでR6は−OCH3または−OCH2CH3である)である基、あるいはR1がp−トルエンスルホニルのような−S(O)2−アリールであるN−スルホニル基である。所望により、相当する保護基は場合により工程(D)で知られている方法により別々に除去され、式(I)(式中、R1はHまたは保護基である)の化合物が得られる。
【0090】
したがって、R1の保護基、および保護基が環化生成物中に、最終的には式(I)の化合物のR1に残留する環化条件が使用される場合、保護基は場合により後で使用される保護基の化学反応性を考慮して当該技術分野でよく知られている標準的な方法により除去することができる。例えば、ベンジル基は水素化分解により除去することができる。
【0091】
保護基が反応工程(C)の後で除去されることが望ましい場合、保護基の除去は保護基を含む中間体を単離する前に別の工程(D)で行なうことができ、または環化反応後に得られる反応混合物を脱保護工程で直接使用することができる。
【0092】
一実施態様において、式(I)(式中、R1はHである)の化合物は本発明の方法により製造される。 他の実施態様において、式(I)(式中、R1はHまたは保護基である)の化合物は工程(C)で保護基を除去することにより直接製造される。
【0093】
式(I)(式中、R1はHまたは保護基、好ましくはHである)の化合物は場合によりその塩に変換される。化合物(I)は酸が遊離塩基を得るための環化工程から除去されない場合は直接塩として得ることができる。環化工程で使用される酸を知られている方法により除去し、他の酸と交換して相当する式(I)の化合物の塩を製造することができる。
【0094】
薬学的に許容される塩を含む式(I)の化合物の塩は塩酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸および硫酸のような無機酸、並びに有機酸、例えば酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グリコール酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、コハク酸、p−トルエンスルホン酸および酒石酸から当該技術分野で知られている方法により製造することができる。
【0095】
本発明の方法の他の実施態様において、本発明の方法により製造されるような式(I)(式中、R1はHまたは保護基である)の化合物はH以外のR1置換基を有するその他の誘導体の合成において中間体として使用することができる。したがって、本発明はまた、Roh−キナーゼ阻害剤を製造するための式(I)(式中、R1はHまたは保護基である)の化合物の使用に関する。本発明は式(I)(式中、R1はHまたは保護基である)の化合物の製造法に関し、第2工程においてR1がR7になる式(I')の化合物はR7基の適当な化学的等価体を式(I)の化合物と反応させることにより製造される。例えば、適当なアルデヒドR7−C(O)H(式中、R7は例えば(C1−C5)アルキルまたは他の置換された(C1−C5)アルキル基である)をWO 2007/012421に記載のような還元的アミノ化法により式(I)(式中、R1はHまたは保護基である)の化合物と反応させて(C1−C6)アルキル置換6−ヘテロシクロアルコキシ−1−(2H)−イソキノリノン(I')を得ることができる。
【0096】
R1に保護基を含む式(I)の化合物はRho−キナーゼ阻害剤としても適当な誘導体を製造するために分子のイソキノリノン部分をさらに変更するための中間体として使用することもできる。
【0097】
他の実施態様において、本発明は式(II)
【化19】

(式中、Xはハロゲンである)の化合物を適当な溶媒中、塩基、好ましくは強力な塩基の存在下で式(III)
【化20】

(式中、R1はHまたは保護基であり、そして
nは1、2、3または4である)の化合物と反応させることからなる式(IV)
【化21】

(式中、R1はHまたは保護基であり、そして
nは1、2、3または4である)の化合物の製造法に関する。
【0098】
本法は上記の式(I)の化合物の合成における方法工程(A)に相当する。驚くべきことに、反応条件は4−ハロ−2−メチル−ベンゾニトリル(II)およびアルコール(III)のアリールエーテル(IV)へのクリーンで高収率の安全な変換を可能にすることがわかった。一実施態様において、式(IV)の化合物を得るための式(II)の化合物と式(III)の化合物の反応は第3アルカリ金属アルコキシドから選択される塩基の存在下で行なわれる。
【0099】
一実施態様において、この反応工程で使用することができる第3アルカリ金属アルコキシドはナトリウムまたはカリウムt−ブトキシド(KOtBu)、ナトリウムまたはカリウムt−アミレートである。好ましい実施態様において、カリウムt−ブトキシドまたはカリウムt−アミレート、最も好ましくはカリウムt−ブトキシドが塩基として使用される。
【0100】
相当するアルコラートは水酸化ナトリウムまたはカリウムのような塩基およびt−ブタノールまたはt−アミルアルコールのようなアルコールから製造することもでき、生成した水を直接または共沸蒸留により除去してアルコキシドを直接生成する。
【0101】
さらに、反応工程(A)の性能に関する上記の説明および他の実施態様は本法にも当てはまる。
【0102】
他の実施態様において、本発明は式(IV)
【化22】

(式中、R1は保護基であり、そして
nは1、2、3または4である)の化合物を式(V)
R4−CH[N(R5)2]2 (V)
[式中、R4は−O(C1−C6)アルキルであり、そして
R5は(C1−C6)アルキルである]の化合物と反応させることからなる式(VI)
【化23】

(式中、R1は保護基であり、そして
nは1、2、3または4である)の化合物の製造法に関する。
【0103】
本法は上記の式(I)の化合物の合成における方法工程(B)に相当する。したがって、工程(B)に関する上記の説明および実施態様はこの実施態様にも当てはまる。R4−CH[N(R5)2]2 (V)の好ましい実施態様において、R4およびR5は前記の通りである。t−ブチルオキシ−ビス−(ジメチルアミノ)メタンは好ましい化合物(V)である。
【0104】
他の実施態様において、本発明は
C) 式(VI)
【化24】

(式中、R1は保護基であり、そして
nは1、2、3または4である)の化合物を環化し、場合により保護基を適当な溶媒中、ハロゲン化水素酸の存在下で除去して式(I)
【化25】

(式中、R1はHまたは保護基である)の化合物を得;
【0105】
(D) 場合により工程(C)で得られた式(I)(式中、R1は保護基である)の化合物から保護基を除去して式(I)(式中、R1はHである)の化合物を得;そして
【0106】
(E) 場合により式(I)の化合物をその塩に変換することからなる式(I)
【化26】

(式中、R1はHまたは保護基であり;そして
nは1、2、3または4である)の化合物またはその塩の製造法に関する。
【0107】
本法は式(I)の化合物の上記合成における環化工程(C)に相当する。したがって、工程(C)、(D)および(E)に関する上記の説明および他の実施態様は本法の実施態様にも当てはまる。
【0108】
他の実施態様において、本発明は式(IV)
【化27】

(式中、R1はHまたは保護基であり、そして
nは1、2、3または4である)の化合物に関する。
【0109】
式(IV)の化合物は本発明の他の実施態様である。特に、式(IV)の化合物は
4−(1−ベンジル−ピロリジン−3−イルオキシ)−2−メチル−ベンゾニトリル、
3−(4−シアノ−3−メチル−フェノキシ)−ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル、
4−(1−ベンズヒドリル−アゼチジン−3−イルオキシ)−2−メチル−ベンゾニトリルまたは
4−(4−シアノ−3−メチル−フェノキシ)−ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステルから選択される。
【0110】
他の実施態様において、本発明は式(VI)
【化28】

(式中、R1はHまたは保護基であり、そして
nは1、2、3または4である)の化合物に関する。好ましくは、R1は保護基である。
【0111】
前記の保護基の特徴および実施態様は化合物(VI)にも当てはまる。好ましくは、保護基はt−ブチルオキシカルボニルである。
【0112】
式(VI)の化合物の他の実施態様において、本化合物は
4−(1−ベンジル−ピロリジン−3−イルオキシ)−2−(2−ジメチルアミノ−ビニル)−ベンゾニトリル、
3−[4−シアノ−3−(2−ジメチルアミノ−ビニル)−フェノキシ]−ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル、
4−(1−ベンズヒドリル−アゼチジン−3−イルオキシ)−2−(2−ジメチルアミノ−ビニル)−ベンゾニトリルまたは
4−[4−シアノ−3−(2−ジメチルアミノ−ビニル)−フェノキシ]−ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステルからなる群より選択される。
【0113】
式(IV)または(VI)の化合物の一実施態様において、R1は保護基に関して上記で挙げた特徴を有し、酸性に不安定な保護基であることを含む保護基であり、好ましくはカルバメート、例えばt−ブチルオキシカルボニル 基、ベンジルオキシカルボニル基またはp−メトキシベンジルカルボニル、より好ましくはt−ブチルオキシカルボニルである。
【0114】
本発明の他の実施態様の式(I)、(III)、(IV)または(VI)の何れかの化合物において、
nは2または3であり、より好ましくはnは3である。
【0115】
式(I)、(III)、(IV)または(VI)の何れかの化合物において酸素(O)を環の炭素原子を通して何れかの位置でNを含有する環に結合させることができる。一実施態様において、nは3であり、そしてOは得られるピペリジン環の4−位に結合して式(Ic)
【化29】

の化合物を得るか、または
【0116】
他の実施態様において、Oはピペリジン環の3−位に結合して式(Id)
【化30】

の化合物をすべての立体異性体として得る。
【0117】
他の実施態様において、Oはピロリジン環の3−位に結合して式(Ie)
【化31】

の化合物をすべての立体異性体として得る。
【0118】
また、スキームに示される式(I)の2H−イソキノリン−1−オンはそれらの互変異性形態で1−ヒドロキシ−イソキノリンとして存在することもでき、これらの互変異性体は本発明の範囲内に包含されることは当該技術分野でよく知られている。さらに、式(I)、(IV)または(VI)の化合物はキラルな炭素原子を含有することができる。したがって、これらの化合物はエナンチオマーまたはジアステレオマーを含む立体異性体として存在する。これらの立体異性体およびすべての比率の立体異性体の混合物は本発明の範囲内に包含される。
【0119】
本発明の方法の一実施態様において、6−(ピペリジン−4−イルオキシ)−2H−イソキノリン−1−オンまたはその塩が製造される。他の実施態様において、6−(ピペリジン−3−イルオキシ)−2H−イソキノリン−1−オンまたはその塩が製造される。他の実施態様において、 6−(ピロリジン−3−イルオキシ)−2H−イソキノリン−1−オンまたはその塩が製造される。好ましい塩は塩酸塩である。
【0120】
式(IV)および(VI)の化合物はRho−キナーゼ阻害剤の製造において中間体として使用することができる。
【0121】
本発明はまた、式(I)
【化32】

(式中、nは1、2、3または4であり、そして
R1はHまたは保護基であり、好ましくはR1はHである)
の化合物の製造における式(IV)
【化33】

または式(VI)
【化34】

(式中、R1はHまたは保護基であり、好ましくはR1は保護基であり、そして
nは1、2、3または4である)の化合物の使用に関する。
【実施例】
【0122】
次の実施例において本発明の方法および中間体をより詳細に説明する。したがって、次の実施例は本発明の一部である。これらは例示するためのものであって本発明を制限するものではない。
【0123】
略語
rt 室温
DMF ジメチルホルムアミド
g グラム
ml ミリリットル
H 時間
【0124】
一般手順(GP)工程A:
DMFに溶解した適当な4−フルオロ−2−メチル−ベンゾニトリルをDMF中における式(III)の適当なN−ヘテロシクロアルコールおよび水素化ナトリウムの混合物に加えた。混合物を室温(rt)で攪拌して反応を完了させた。反応混合物を水でクエンチした。水層を酢酸エチル(AcOEt)またはメチルt−ブチルエーテル(MTBエーテル)で抽出した。合一した有機
層をブラインで洗浄し、乾燥し、濃縮して適当なN−ヘテロシクロアルコキシ−2−メチル−ベンゾニトリルを得た。
A1) 85mLのDMF中で5.0gの4−フルオロ−2−メチル−ベンゾニトリル、6.6gの1−ベンジル−ピロリジン−3−オールおよび1.2gの水素化ナトリウムをGP Aに従って反応させて9.7g(90%)の4−(1−ベンジル−ピロリジン−3−イルオキシ)−2−メチル−ベンゾニトリルを得た。質量分析:計算値(C19H20N2O)=292、実測値:293(M+H+)。
A2) 85mLのDMF中で5.0gの4−フルオロ−2−メチル−ベンゾニトリル、7.5gの3−ヒドロキシ−ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステルおよび1.2gの水素化ナトリウムをGP Aに従って反応させて11.1g(95%)の3−(4−シアノ−3−メチル−フェノキシ)−ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステルを得た。質量分析:計算値(C18H24N2O3)=316、実測値:261[M+H−t(C4H9)]+
A3) 85mLのDMF中で5.0gの4−フルオロ−2−メチル−ベンゾニトリル、8.9gの1−ベンズヒドリル−アゼチジン−3−オールおよび1.2gの水素化ナトリウムをGP Aに従って反応させて11.9g(91%)の4−(1−ベンズヒドリル−アゼチジン−3−イルオキシ)−2−メチル−ベンゾニトリルを得た。質量分析:計算値(C24H22N2O)=354、実測値:355(M+H+)。
A4) 30mLのDMF中で1.35gの4−フルオロ−2−メチル−ベンゾニトリル、2.11gの4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステルおよび0.6gの水素化ナトリウムをGP Aに従って反応させて2.6g(81%)の4−(4−シアノ−3−メチル−フェノキシ)−ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステルを得た。質量分析:(C18H24N2O3):計算値316、実測値261[M+H−t(C4H9)]+
【0125】
工程Aの別法
A5) 4−ヒドロキシ−ピペリジン(1.05g)を7mLのMTBEおよび5mLのTHFに溶解した。カリウムt−ブチレート(1.43g)を加え、混合物を50℃まで30分間加熱した。室温まで冷却した後、4−フルオロ−2−メチル−ベンゾニトリル(1.32g)を少しずつ加えた。室温で2時間攪拌した後、反応混合物を水でクエンチした。相を分離し、水層を酢酸エチル(3×10mL)で抽出した。合一した有機層をブライン(10mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥し、濃縮して1.92g(94%)の2−メチル−4−(ピペリジン−4−イルオキシ)−ベンゾニトリルを得た。質量分析(ESI)(C13H16N2O):計算値216、実測値217[M+H]+
【0126】
一般手順(GP)工程B:
適当なN−ヘテロシクロアルコキシ−2−メチル−ベンゾニトリルを2モル当量のt−ブチルオキシビス(ジメチルアミノ)メタン中で懸濁し、混合物を120〜170℃に加熱した。追加量のt−ブチルオキシ−ビス(ジメチルアミノ)−メタンを反応が完了するまで加えた。冷却後、エタノールを加え、結晶性生成物をろ過して適当なN−ヘテロシクロアルコキシ−2−((E)−2−ジメチルアミノ−ビニル)−ベンゾニトリルを得た。別法として、溶液を蒸発乾固し、粗生成物を次の工程C)で直接使用した。
B1) 9.7gの4−(1−ベンジル−ピロリジン−3−イルオキシ)−2−メチル−ベンゾニトリル、3.2gのナトリウムt−ブチレートおよび37mLのt−ブチルオキシビス(ジメチルアミノ)メタンをGP Bに従って反応させて15.2gの粗製4−(1−ベンジル−ピロリジン−3−イルオキシ)−2−((E)−2−ジメチルアミノ−ビニル)−ベンゾニトリルを得た。
B2) 11.1gの3−(4−シアノ−3−メチル−フェノキシ)−ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステルおよび37mLのt−ブチルオキシビス(ジメチルアミノ)メタンをGP Bに従って反応させて13.3gの粗製3−[4−シアノ−3−((E)−2−ジメチルアミノ−ビニル)−フェノキシ]−ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステルを得た。
B3) 11.9gの4−(1−ベンズヒドリル−アゼチジン−3−イルオキシ)−2−メチル−ベンゾニトリル、3.2gのナトリウムt−ブチレートおよび27mLのt−ブチルオキシビス(ジメチルアミノ)メタンをGP Bに従って反応させて13.9gの粗製4−(1−ベンズヒドリル−アゼチジン−3−イルオキシ)−2−((E)−2−ジメチルアミノ−ビニル)−ベンゾニトリルを得た。
B4) 20gの4−(4−シアノ−3−メチル−フェノキシ)−ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステルおよび37mLのt−ブチルオキシビス(ジメチルアミノ)メタンをGP Bに従って反応させて17g(73%)の4−[4−シアノ−3−((E)−2−ジメチルアミノ−ビニル)−フェノキシ]−ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステルを得た。融点:135〜137℃(EtOH)。
【0127】
一般手順(GP)工程C:
適当なN−ヘテロシクロアルコキシ−2−((E)−2−ジメチルアミノ−ビニル)−ベンゾニトリル(VI)をメタノール性HClに溶解し、混合物を還流して反応を完了させた。冷却し、溶媒を部分的に蒸発させた後、所望のN−ヘテロシクロアルコキシ−2H−イソキノリン−1−オンを溶液から塩酸塩として沈殿させ、ろ過により単離した。別法として、反応混合物を蒸発乾固し、粗生成物をクロマトグラフィーにより精製し、その後1M HClに2回取り、凍結乾燥することにより塩酸塩に変換した。
C1) 140mLのメタノール性HCl中で15.2gの 4−(1−ベンジル−ピロリジン−3−イルオキシ)−2−((E)−2−ジメチルアミノ−ビニル)−ベンゾニトリルをGP Cに従って反応させて4.9g(41%)の6−(1−ベンジル−ピロリジン−3−イルオキシ)−2H−イソキノリン−1−オン塩酸塩を2段階で得た。質量分析:計算値(C20H20N2O2)=320、実測値:321(M+H+)。
このようにして得られた生成物は知られている条件を使用して、例えばPd/C上の水素化分解で保護基を除去することによりさらに変更することができる。
C2) 140mLのメタノール性HCl中で13.3gの3−[4−シアノ−3−((E)−2−ジメチルアミノ−ビニル)−フェノキシ]−ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステルをGP Cに従って反応させて5.1g(52%)の6−(ピペリジン−3−イルオキシ)−2H−イソキノリン−1−オン塩酸塩を2段階で得た。質量分析:計算値(C14H16N2O2)=244、実測値:245(M+H+)。
C3) 100mLのメタノール性HCl中で13.9gの4−(1−ベンズヒドリル−アゼチジン−3−イルオキシ)−2−((E)−2−ジメチルアミノ−ビニル)−ベンゾニトリルをGP Cに従って反応させて4.5g(32%)の6−(1−ベンズヒドリル−アゼチジン−3−イルオキシ)−2H−イソキノリン−1−オン塩酸塩を2段階で得た。質量分析:計算値(C25H22N2O2)=382、実測値:383(M+H+)。
このようにして得られた生成物は知られている条件を使用して、例えばPd/C上の水素化分解で保護基を除去することによりさらに変更することができる。
C4) 300mLのメタノール性HCl中で25gの4−[4−シアノ−3−((E)−2−ジメチルアミノ−ビニル)−フェノキシ]−ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステルをGP Cに従って反応させて9.6g(51%)の6−(ピペリジン−4−イルオキシ)−2H−イソキノリン−1−オン塩酸塩を得た。質量分析:計算値(C14H16N2O2)=244、実測値:245(M+H+)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A) 式(II)
【化1】

(式中、Xはハロゲンである)
の化合物を適当な溶媒中、アルカリ金属第三級アルコキシド、アルカリ金属水素化物またはアルカリ金属から選択される塩基の存在下で式(III)
【化2】

(式中、R1はHまたは保護基であり、そして
nは1、2、3または4である)の化合物と反応させて式(IV)
【化3】

(式中、R1はHまたは保護基であり、そして
nは1、2、3または4である)の化合物を得、ここでR1がHである場合、アミノ基を保護して式(IV)(式中、R1はアミノ保護基である)の化合物を得;
(B) 式(IV)(式中、R1は保護基である)の化合物を式(V)
R4−CH[N(R5)2]2 (V)
[式中、R4は−O(C1−C6)アルキルであり、そして
R5は(C1−C6)アルキルである]の化合物と反応させて式(VI)
【化4】

(式中、R1は保護基であり、そして
nは1、2、3または4である)の化合物を得;
(C) 式(VI)の化合物を環化し、場合により保護基を適当な溶媒中、ハロゲン化水素酸の存在下で除去して式(I)
【化5】

(式中、R1はHまたは保護基である)の化合物を得;
(D) 場合により工程(C)で得られた式(I)(式中、R1は保護基である)の化合物から保護基を除去して式(I)(式中、R1はHである)の化合物を得;そして
(E) 場合により式(I)の化合物をその塩に変換する工程からなる式(I)
【化6】

(式中、nは1、2、3または4であり;そして
R1はHまたは保護基である)の化合物またはその塩の製造法。
【請求項2】
Xはフルオロである請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程(A)で使用される塩基はアルカリ金属第三級アルコキシドから選択される請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
塩基はカリウムt−アミレートまたはカリウムt−ブトキシドである請求項3記載の方法。
【請求項5】
試薬(V)のR4はt−ブチルオキシまたはエトキシである請求項1記載の方法。
【請求項6】
試薬(V)のR5はメチルである請求項1記載の方法。
【請求項7】
工程(B)で使用される試薬(V)はt−ブトキシ−ビス−(ジメチルアミノ)メタンである請求項5または6記載の方法。
【請求項8】
工程(C)の環化反応で使用されるハロゲン化水素酸はHClである請求項1記載の方法。
【請求項9】
nは3である請求項1〜8の何れかの項記載の方法。
【請求項10】
保護基は酸に不安定な基である請求項1〜9の何れかの項記載の方法。
【請求項11】
R1の保護基はt−ブトキシカルボニルである請求項1〜10の何れかの項記載の方法。
【請求項12】
式(IV)
【化7】

(式中、R1は保護基であり、そしてnは1、2、3または4である)の化合物を式(V)
R4−CH[N(R5)2]2 (V)
[式中、R4は−O(C1−C6)アルキルであり、そして
R5は(C1−C6)アルキルである]の化合物と反応させることからなる式(VI)
【化8】

(式中、R1は保護基であり、そして
nは1、2、3または4である)の化合物の製造法。
【請求項13】
化合物(V)はt−ブトキシ−ビス−(ジメチルアミノ)メタンである請求項12記載の方法。
【請求項14】
式(IV)
【化9】

(式中、R1はHまたは保護基であり、そして
nは1、2、3または4である)の化合物。
【請求項15】
4−(1−ベンジル−ピロリジン−3−イルオキシ)−2−メチル−ベンゾニトリル、
3−(4−シアノ−3−メチル−フェノキシ)−ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル、
4−(1−ベンズヒドリル−アゼチジン−3−イルオキシ)−2−メチル−ベンゾニトリルまたは
4−(4−シアノ−3−メチル−フェノキシ)−ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステルから選択される請求項14記載の化合物。
【請求項16】
式(VI)
【化10】

(式中、R1はHまたは保護基であり、そして
nは1、2、3または4である)の化合物。
【請求項17】
化合物は4−(1−ベンジル−ピロリジン−3−イルオキシ)−2−(2−ジメチルアミノ−ビニル)−ベンゾニトリル、
3−[4−シアノ−3−(2−ジメチルアミノ−ビニル)−フェノキシ]−ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル、
4−(1−ベンズヒドリル−アゼチジン−3−イルオキシ)−2−(2−ジメチルアミノ−ビニル)−ベンゾニトリルまたは
4−[4−シアノ−3−(2−ジメチルアミノ−ビニル)−フェノキシ]−ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステルからなる群より選択される請求項16記載の化合物。
【請求項18】
保護基は酸に不安定な保護基である請求項14または16記載の化合物。
【請求項19】
酸に不安定な保護基はt−ブチルオキシカルボニルである請求項18記載の化合物。
【請求項20】
nは3である請求項14または16記載の化合物。
【請求項21】
式(I)
【化11】

(式中、nは1、2、3または4であり、そして
R1はHまたは保護基である)の化合物またはその塩の製造における請求項14〜20の何れかの項記載の化合物の使用。

【公表番号】特表2011−507921(P2011−507921A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−540061(P2010−540061)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【国際出願番号】PCT/EP2008/010998
【国際公開番号】WO2009/080335
【国際公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(399050909)サノフィ−アベンティス (225)
【Fターム(参考)】