説明

6,6’−ジブロモインジゴの染色液製造取扱法及び染物製造法

【課題】6,6’−ジブロモインジゴ及びその混合物を用いての染色において、光の影響による染色液の劣化、並びに製品の青色化を防止するための調整、保管と染物製造方法。
【解決手段】6,6’−ジブロモインジゴ及びその混合物を用いての染色において、300nmから500nmの波長の光を遮光した状態下で調整、保管そして染物製造を行う事で達せられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は6,6’−ジブロモインジゴ(別名:チリアンパープル、貝紫、古代紫、帝王紫)の染色において、染色液の調整方法、及び染物製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
建染染料である6,6’−ジブロモインジゴを用いた赤紫色染色は以前より行われているが、還元しロイコ体にして染色液とした際、光による劣化が早く、染物が青色に染色されることがある。また、染色後に酸化して発色させる際、青色色調が加わることもある。
【0003】
6,6’−ジブロモインジゴはある種の巻貝(イボニシ貝、アカニシ貝、他)のチリアン腺に前駆体として含まれており、この前駆体を日光照射で酸化させ6,6’−ジブロモインジゴを含む混合物として得られる。若しくは幾つかの既知方法にて合成し6,6’−ジブロモインジゴを得ることが出来る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
6,6’−ジブロモインジゴ及びその混合物の建染染色において、染色液の劣化を防止し、染物の色調変化を防ぐための染色液製造方法及び染物製造方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
【化1】

【0005】
式中(1)は赤紫色色素6,6’−ジブロモインジゴであり、これを適当な還元剤を用いる事で式中(2)で示される還元体(ロイコ体)を得る事ができる。この還元体を布に浸漬させ空気酸化等による酸化で染色を行うことができる。
【0006】
【化2】

【0007】
この式中(2)の還元体は光照射を受ける事で脱臭素化し、式中(3)のインジゴ還元体となりそれを酸化することで青色色素の式中(4)のインジゴとなることが知られている。
【0008】
6,6’−ジブロモインジゴ及びその混合物を用いた染色液の調整、保管、及びそれを用いた染色、酸化による発色時に遮光環境下で行うことにより、染色液の光劣化、染物の色調変化を防ぐことである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、6,6’−ジブロモインジゴ及びその混合物を用いた建染染色において染色液を安定的に製造、保管でき、染物の色調変化を防ぐことにより安定的に染物製品を容易に得ることを可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明者らは鋭意研究の結果、6,6’−ジブロモインジゴ及びその混合物を還元しロイコ体にして染色液を調整し保管する際、その染色液を使用し酸化による発色させる際、ある特定の波長により光劣化を生じ、その波長を遮断することにより光劣化を防止できる方法を見出し、本発明を完成した。
【0011】
6,6’−ジブロモインジゴ及びその混合物を用いた建染染色において染色液の調整方法及び染色方法は従来の建染染料の染色液調整方法で行うことが出来る。
【0012】
染色液はアルカリ性水溶液中、ハイドロサルファイト等の還元剤、6,6’−ジブロモインジゴ及びその混合物を入れ溶解させロイコ体とすることにより容易に調整し、保管することが出来る。染物の染め上がり等を考慮し、必要に応じて添加剤を加える事もできる。
【0013】
染色は、各種生地を染色液に浸漬後、引き上げて空気で酸化させる、あるいは過酸化水素水に浸漬することにより容易に達せられる。
【0014】
6,6’−ジブロモインジゴ及びその混合物の場合、これらの染色液調整、保管並びに染色作業を遮光することにより行い、光劣化することなく安定的に行うことが出来る。
【0015】
6,6’−ジブロモインジゴのロイコ体は300nmから500nmに吸収を持つ。このロイコ体に光照射を行った後の酸化発色後の吸収波形は変化し6,6’−ジブロモインジゴ以外の吸収が見られ色調も青色であるが、同照射にて300nmから500nmの波長を遮光した場合は吸収波形の変化がなく色調も赤紫色である。
【0016】
よって遮光は、300nmから500nmの光を遮光すれば良く、環境としては暗室若しくは300nmから500nmの波長の光を出さない照明器具、窓・ランプ等に300nmから500nmの光の進入を防ぐ遮光フィルムを貼り付けることに行うことができる。作業面を考慮して、好ましくはで300nmから500nmの波長の光に対する遮光照明器具、遮光フィルムを施した環境である。
【実施例】
【0017】
以下、実施例をもって本発明を更に詳細に説明する。なお、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0018】
[実施例1]
300nmから500nmの光を遮断するフィルムで遮光した環境下で以下の調整、染色を行った。6,6’−ジブロモインジゴ0.5g、ハイドロサルファイトナトリウム10g、水酸化ナトリウム8gを50〜80℃の水1kg中で溶解させることにより染色液を調整した。その後、布(シルク、木綿、麻、ウール)を浸し、引き上げた後、同環境下で空気酸化し、水で洗浄し乾燥させた。得られた染物は赤紫色であった。
【0019】
[実施例2]
実施例1の遮光方法を、300nmから500nmの光を出さない遮光ランプにした以外は同様に行った。この結果、得られた染物は赤紫色であった。
【0020】
[比較例1]
実施例1の染色液に1時間太陽光を当て、その間に空気酸化を受けた分を更にハイドロサルファイトナトリウム2gを加え還元して光照射染色液とした。この染色液を用いて、実施例1と同条件で染色を行ったとき、染物の色は赤紫色だけでなく色調変化し青色も認められた。
【0021】
[比較例2]
実施例1の染色液を12時間太陽光を当てたままにし、実施例1と同様に染色を行ったとき、染物は青色であった。本来の赤紫色は見られず、染色液の劣化によるインジゴ特有の色である青変を確認した。
【0022】
[実施例3]
実施例1の還元液を1週間、完全に遮光された場所で保管した。空気酸化を受けたためにハイドロサルファイトナトリウム10gを用い還元体に戻し、実施例1と同じように染色を行ったとき、染物の色は赤紫色となり青色は認められなかった。
【0023】
[比較例4]
実施例1の条件において、布を染色液から引き上げた後、太陽光の下で空気酸化し、水で洗浄及び乾燥を行った。その結果、染物の色は赤紫色だけでなく色調変化による青色も認められた。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、6,6’−ジブロモインジゴによる染色を行う際に波長300mから500nmの範囲の光を遮断することにより、染色液の劣化を防ぎ、安定的な染色色調にし、安定的に染物を製造することを可能とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
6,6’−ジブロモインジゴ及びその混合物の建染染色において、300nmから500nmの波長の光を遮光した状態下で調整、保管を行う染色液製造、保管方法。
【請求項2】
6,6’−ジブロモインジゴ及びその混合物の建染染色において、300nmから500nmの波長の光を遮光した状態下で染色を行う染物製造方法。

【公開番号】特開2008−138151(P2008−138151A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−350598(P2006−350598)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(506071173)
【出願人】(506071162)
【Fターム(参考)】