説明

6,6−ジメチル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサンを提供するのに有用な中間体調製のための脱塩化水素化プロセス

本発明は、化学式VaおよびVbのピロール化合物を調製するためのプロセスを提供する。本発明は、一様態において、化学式(Va)および(Vb)の化合物の混合物を提供するためのプロセスであって、(a)化学式IVのピロリジン化合物を塩素化剤で処理して、化学式IVaの化合物を形成すること、および(b)ステップ「a」で得られたクロロアミンを脱塩化水素化して、化学式VIaおよびVIbの化合物を生成することを備えるプロセスを提供する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連する出願との相互参照)
本出願は、2007年11月28日に出願された、米国仮出願第61/004601号に基づき、そしてその優先権を主張する。この仮出願は、その全体が本明細書中で参照により、援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、C型肝炎ウイルスプロテアーゼ阻害薬として活性を有する化合物の調製において中間体として有用な、6,6−ジメチル−3−アザ−ビシクロ[3.1.0]ヘキサ−2−エンを調製するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
本節または本出願書のいずれかの節における任意の刊行物の確認は、かかる刊行物が本発明に対する先行技術であることを認めるものではない。
【0004】
化学式Iの化合物、N−[3−アミノ−1−(シクロブチルメチル)−2,3−ジオキソプロピル]−3−{N−[(tert−ブチルアミノ)カルボニル]−3−メチル−L−バリル}−6,6−ジメチル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−カルボキサミドは、C型肝炎および関連障害を治療するために有用である。特に、化学式Iの化合物は、HCV NS3/NS4aセリンプロテアーゼの阻害薬である。
【0005】
【化1】

化学式Iの化合物、(1R,2S,5S)−N−[(1S)−3−アミノ−1−(シクロブチルメチル)−2,3−ジオキソプロピル]−3−[(2S)−2−[[[(1,1−ジメチルエチル)アミノ]カルボニル]−アミノ]−3,3−ジメチル−1−オキソブチル]−6,6−ジメチル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−カルボキサミドをつくるためのプロセスは、特許文献1(「’066特許」)のコラム448から始まる実施例XXIVに記載されている。化学式Iの化合物を調製するためのさらなるプロセスは、特許文献2、2005年11月10日公開;および特許文献3、2005年3月17日公開;並びに米国特許仮出願第60/876,296号および第60/876,447号、いずれも2006年12月20日出願;に記載されており、これらの出願はそれぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0006】
一般に、スキームI:
【0007】
【化2】

において、化学式Iの化合物を調製するためのプロセスが説明される。
【0008】
上図からわかるように、6,6−ジメチル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−カルボン酸のエステル、またはその塩、例えば、上図のスキームIに示される化学式Ibの塩化合物は、HCVプロテアーゼを阻害する化合物の合成において中間体として有用である。参照により本明細書に組み込まれる特許文献4に開示された化学式Ib、(1R,2S,5S)−6,6−ジメチル−3−アザビシクロ[3.1.0]−ヘキサン−2−カルボン酸の塩化合物、メチルエステル塩酸塩は、上述の化学式Iの以下の構造をもつC型肝炎ウイルス(「HCV(hepatitis C virus)」)プロテアーゼ阻害薬の調製において不可欠な中間体である。
【0009】
6,6−ジメチル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−カルボン酸のエステルをつくるための様々な方法が当分野で知られており、例えば、特許文献4は、化合物1
【0010】
【化3】

を、対応するアルコール2
【0011】
【化4】

をジョーンズ酸化して次に保護基をメタノール性塩酸で切断することによって、調製することを開示する。この手順は、非特許文献1の開示を修正したものである。
【0012】
参照により本明細書に組み込まれる特許文献5は、化合物Zの合成における中間体である、3−(アミノ)−3−シクロブチルメチル−2−ヒドロキシ−プロピオンアミドまたはその塩をつくるためのプロセスを開示する。この出願公開も、該合成において調製されるいくつかの中間体を請求している。
【0013】
参照により本明細書に組み込まれる特許文献3は、出発物質として6,6−ジメチル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−カルボン酸メチルを用いることを含む、化学式Zの化合物を調製するための代替プロセスを請求する。
【0014】
参照により本明細書に組み込まれる特許文献6は、スキームII
【0015】
【化5】

に要約されるプロセスにおいて6,6−ジメチル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−カルボン酸のエステルを調製する。
【0016】
特許文献7(’799出願公開)は、対応するイミンからニトリル中間体を経由して、化学式
【0017】
【化6】

の酸化合物を調製するためのプロセスを開示し、ここでRは水素またはアルキル、RからRは、例えば、アルキルである。従って、イミンがシアン化試薬と反応して対応するニトリルが形成され、続いて加水分解されて酸性誘導体が形成される。イミン誘導体は、化学式
【0018】
【化7】

のビシクロピロリジン化合物の直接酸化、またはビシクロピロリジンの対応するハロ−ピロリジン誘導体の脱ハロゲン化水素化によって調製される。この文献は、ニトリルを形成するシアン化ステップが、一般にトランス幾何異性体の形成にもっぱら繋がり、この立体化学は加水分離ステップにおいて維持されることを示唆する。
【0019】
特許文献8は、化学式
【0020】
【化8】

の酸またはエステル誘導体を調製するためのプロセスを開示し、ここでRは水素またはアルキルであり、RおよびRは、例えば、対応するニトリルから、二環系を形成することができる。このプロセスは、酸化剤を銀塩の存在下で用いて、ピロリジン誘導体を対応するΔ−ピロリジン誘導体に転換し、次に該ピロリジン誘導体と、好ましくは鉱酸の存在下で金属シアン化物を反応混合物に加えることによって発生する、HCNとを反応させて、ニトリルを形成することを備える。得られたニトリルを加溶媒分解することにより、生成物が調製される。これらの化合物の特定の異性体を、高い鏡像異性体過剰率でつくるプロセスをこの特許は開示していない。
【0021】
これら前述のプロセスは、多くの労力を要する反応スキームを含み、しかも生成物であるビシクロピリロジン化合物に可能な全ての異性体の統計的な混合物が提供される。C型肝炎の1つまたはそれ以上の症状の治療または予防もしくは改善に有用な化合物の合成に役立つ、中間体を提供するための商業規模のプロセスに適用できる方法が、依然として必要とされている。多くの労力を要する鏡像異性体分離技術、例えば、キラル・クロマトグラフィーを必要とせずに所望の鏡像異性体を豊富に供する、鏡像異性中間生成物を提供するためのプロセスが依然として必要である。
【0022】
アメリカ仮特許出願第60/876,447号(’447出願)および第60/876,296号(’296出願)、それぞれ2006年12月20日に出願;代理人整理番号CD06582(’6582出願)およびCD06583(’6583出願)の下でこれらと共に出願された国際出願(これら4つは、すべて参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)は、スキームIIIに従ってカロン酸無水物から調製された6,6−ジメチル−3−アザ−ビシクロ[3.1.0]ヘキサン(IV)を経由する、6,6−ジメチル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−カルボン酸エステル(VIIaおよびVIIb)のエステルのラセミ混合物の調製について開示する。
【0023】
【化9】

【0024】
【化10】

上述のスキーム2に要約された’447、’296、’6482および’6483特許出願においてそれぞれ記載されたプロセスでは、化学式VIIaの所望の中間体を、ラセミ化合物の溶液からキラル酸塩として沈殿させることによって、化学式VIIbの異性化合物から分離可能なかたちで提供することができる。これらのプロセスはそれぞれ、イミン中間体、例えば、化学式(Va)および(Vb)の化合物を利用する。これらの各プロセスでは、対応するアミン、例えば、6,6−ジメチル−3−アザ−ビシクロ[3.1.0]ヘキサン(IV)を、触媒量の硝酸銀の存在下で、ペルオキソ二硫酸カリウムを利用して酸化することによって、イミン中間体を提供する。このプロセスは、典型的に、イミンのラセミ混合物を約80%未満の通算収率で提供するが、これは、ビシクロアミン、例えば、化学式(IV)の化合物から出発して、所望のイミン異性体の収率が約40%未満であることを意味する。このプロセスにおいて、イミン生成物が、所望の収率で首尾一貫して確実に提供されるためには、様々なプロセス変数、例えば、温度および撹拌速度に対しても細心の注意が必要である。さらに、ペルオキソ二硫酸カリウムは、プロセスにおける基質の損失を最小限に抑えるためにこの酸化剤溶液に導入される酸化基質を溶液中で処理しなくてはならない強力な酸化剤である。加えて、酸化反応を周囲温度以下で行わなくてはならず、基質の酸化を完了するのに長時間を要する。さらに、このプロセスで生成物を得るためには、tert−ブチルメチルエーテルで反応混合物を抽出し、分留することによって反応混合物を後処理する必要がある。
【0025】
C型肝炎ウイルス(「HCV」)プロテアーゼ阻害薬の合成において、化学式Vaのイミン中間体が重要であるとの観点から、これを提供する効率および安全面を改良するための新規な方法に関心が持たれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】米国特許第7,012,066号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0249702号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2005/0059800号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2003/0216325号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2005/0020689号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2005/0059684号明細書
【特許文献7】欧州特許出願公開第0 010 799号明細書
【特許文献8】米国特許第4,691,022号明細書
【非特許文献】
【0027】
【非特許文献1】R.Zhang and J.S.Madalengoitia,J.Org.Chem.,64,pp330−31(1999)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明は、これらおよび他のニーズに応えるものであり、一様態において、化学式(Va)および(Vb)の化合物
【0029】
【化11】

の混合物を提供するためのプロセスであって、
(a)化学式IVのピロリジン化合物
【0030】
【化12】

を塩素化剤で処理して、化学式IVaの化合物
【0031】
【化13】

を形成すること、および
(b)ステップ「a」で得られたクロロアミンを脱塩化水素化して、化学式VIaおよびVIbの化合物を生成することを備えるプロセスを提供する。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態において、カロン酸無水物ベンジルアミンを反応させて、化学式IIBのアザ−ビシクロヘキサンジオン化合物(ベンジルイミド)
【0033】
【化14】

を形成し、続いてベンジルイミドのカルボニル官能基を両方とも順次還元して、化学式IIIc
【0034】
【化15】

のN−ベンジルピロリジン化合物を生じさせ、次にはそれを(ベンジル部分が脱離した)ピロリジンに還元することによって、化学式IVの化合物を提供することが好ましい。いくつかの実施形態では、該化合物を金属水素化物試薬、好ましくは水素化アルミニウムリチウムで処理することにより化学式IIBのベンジルイミド化合物のケトン官能基を還元して、化学式IICの化合物を得ることが好ましい。いくつかの実施形態において、化学式IIIcのベンジルピロリジン化合物を、第8族金属触媒および水素で還元することが好ましく、該触媒は、好ましくは炭素上のパラジウムである。
【0035】
いくつかの実施形態において、化学式IVaのクロロアミンは、塩素化反応で形成することが好ましく、塩素化試薬は、適切な溶媒中の次亜塩素酸ナトリウムおよびN−クロロスクシンイミド(NCS:N−chlorosuccinamide)から選択される。いくつかの実施形態において、塩素化反応は、塩素化溶媒としてメチル−t−ブチルエーテル(MTBE)中で行うことが好ましい。
【0036】
いくつかの実施形態において、化学式IVaのクロロアミン化合物のイミンへの転換は、化学式IVaの化合物を、金属水酸化物、例えば、水酸化カリウムおよび水酸化ナトリウムで処理することによって行うことが好ましい。いくつかの実施形態では、脱塩化水素化は、親油性相間移動触媒、例えば、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドおよびN−ベンジルシンコニジニウムクロリド(N−benzyl cinchonidinium chloride)を用いて行うことが好ましい。相間移動触媒を利用するいくつかの実施形態において、反応混合物に促進剤、例えば、短炭素鎖アルカノール、例えば、メタノール、エタノール、およびイソプロパノールを加えることが好ましい。
【0037】
本発明の他の様態は、以下の詳細な記載から明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0038】
上述のように、および本明細書を通して、別の指示がなければ、次の用語は次の意味をもつと理解すべきである。
【0039】
「アルキル」は、直鎖でも分岐していてもよく、以下に列挙される任意の部分の1つまたはそれ以上によって任意の位置で随意的に置換され、鎖中に約1から約20炭素原子を備える脂肪族炭化水素基を意味する。好ましいアルキル基は、約1から約12炭素原子を備える炭素鎖を含み、そこに付加された、上記に定義されるような1つまたはそれ以上の置換基をさらに備えてもよい。より好ましいアルキル基は、約1から約6炭素原子を備える炭素鎖を含み、それに付加された1つまたはそれ以上の置換基をさらに備えてもよい。分岐したは、メチル、エチルまたはプロピルのような1つまたはそれ以上の低級アルキル基が、置換基として直鎖アルキル鎖に結合していることを意味する。「低級アルキル」は、鎖中に約1から約6炭素原子をもつ基を意味し、鎖は、直鎖でも分岐していてもよく、それに付加された、以下に定義されるような1つまたはそれ以上の置換基をさらに備えてもよい。適切なアルキル基の非限定の例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、ヘプチル、ノニル、デシル、フルオロメチル、トリフルオロメチルおよびシクロプロピルメチルを含む。
【0040】
「アルケニル」は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含んだ脂肪族炭化水素基を意味し、この炭化水素基は、直鎖でも分岐していてもよく、上記に定義されるような1つまたはそれ以上の置換基を随意的に備えてもよい。好ましくは、アルケニル部分は、約2から約15炭素原子を備え、1つまたはそれ以上の置換基を随意的に含んでもよく、より好ましくは、アルケニル基は、約2から約12炭素原子を備える鎖をもち、1つまたはそれ以上の置換基を随意的にさらに含んでもよく、より好ましくは、アルケニル基は、約2から約6炭素原子を備える鎖をもち、そこに付加された1つまたはそれ以上の置換基を随意的に有してもよい。
【0041】
用語「置換されたアルケニル」は、本明細書に列挙される部分の1つまたはそれ以上が、アルケニル基に付加されたことを意味し、これら置換基のそれぞれは、このリストに定義される部分のいずれか、好ましくは、ハロ、アルキル、アリール、シクロアルキル、シアノおよびアルコキシからなる群から独立に選択される。適切なアルケニル基の非限定の例は、エテニル、プロペニル、n−ブテニル、3−メチルブタ−2−エニル、n−ペンテニル、オクテニルおよびデセニルを含む。
【0042】
「アルキニル」は、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含んだ脂肪族炭化水素基を意味し、この結合は、直鎖でも分岐していてもよく、鎖中に約2から約15炭素原子を備えてもよい。好ましくは、アルキニル基は、鎖中に約2から約12炭素原子、より好ましくは、鎖中に約2から約4炭素原子をもつ。分岐したは、メチル、エチルまたはプロピルのような、1つまたはそれ以上の低級アルキル基が、直鎖アルキニル鎖に付着していることを意味する。「低級アルキニル」は、直鎖でも分岐していてもよい鎖における約2から約6炭素原子を意味する。適切なアルキニル基の非限定の例は、エチニル、プロピニル、2−ブチニル、3−メチルブチニル、n−ペンチニル、およびデシニルを含む。用語「置換されたアルキニル」は、アルキニル基が、同じでも異なってもよい1つまたはそれ以上の置換基によって置換されうることを意味し、それぞれの置換基は、アルキル、アリールおよびシクロアルキルからなる群から独立に選択される。
【0043】
「アリール」は、約6から約14炭素原子、好ましくは約6から約10炭素原子を備える芳香族の単環系または多環系を意味する。アリール基は、同じでも異なってもよく本明細書に定義される1つまたはそれ以上の「環系置換基」によって随意的に置換されていてもよい。適切なアリール基の非限定の例は、フェニルおよびナフチルを含む。
【0044】
「ヘテロアリール」は、約5から約14環原子、好ましくは約5から約10環原子を備え、環原子の1つまたはそれ以上が、炭素以外の元素、例えば、窒素、酸素、または硫黄のそれぞれまたは組み合わせである、芳香族の単環系または多環系を意味する。好ましいヘテロアリール類は、約5から約6環原子を含む。「ヘテロアリール」は、同じでも異なってもよく、本明細書に定義される1つまたはそれ以上の「環系置換基」によって随意的に置換されていてもよい。元来の名称ヘテロアリールの前の接頭辞アザ、オキサまたはチアは、環原子として少なくとも窒素、酸素または硫黄原子が、それぞれ存在することを意味する。ヘテロアリールの窒素原子は、対応するN−オキシドに随意的に酸化されることができる。適切なヘテロアリール類の非限定の例は、ピリジル、ピラジニル、フラニル、チエニル、ピリミジニル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピラゾリル、フラザニル、ピロリル、ピラゾリル、トリアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、ピラジニル、ピリダジニル、キノキサリニル、フタラジニル、イミダゾ[1,2−a]ピリジニル、イミダゾ[2,1−b]チアゾリル、ベンゾフラザニル、インドリル、アザインドリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチエニル、キノリニル、イミダゾリル、チエノピリジル、キナゾリニル、チエノピリミジル、ピロロピリジル、イミダゾピリジル、イソキノリニル、ベンゾアザインドリル、1,2,4−トリアジニル、ベンゾチアゾリルなどを含む。
【0045】
「アラルキル」は、アリール−アルキル基を意味し、アリールおよびアルキルは、先述の通りである。好ましいアラルキル類は、低級アルキル基を備える。適切なアラルキル基の非限定の例は、ベンジル、2−フェネチルおよびナフタレニルメチルを含む。親部分への接合は、アルキルを経由する。
【0046】
「アルキルアリール」は、アルキル−アリール基を意味し、アルキルおよびアリールは、先述の通りである。好ましいアルキルアリール類は、低級アルキル基を備える。適切なアルキルアリール基の非限定の例は、o−トリル、p−トリルおよびキシリルを含む。親部分への結合は、アリール基を経由する。
【0047】
「シクロアルキル」は、約3から約10炭素原子、好ましくは約5から約10炭素原子を備える、非芳香族の単環系または多環系を意味する。好ましいシクロアルキル環は、約5から約7環原子を含む。シクロアルキルは、このリストに定義される部分の1つまたはそれ以上により随意的に置換することができ、それぞれの部分は独立に選択される。適切な単環式シクロアルキル類の非限定の例は、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、およびシクロヘプチルを含む。適切な多環式シクロアルキル類の非限定の例は、1−デカリン、ノルボルニル、およびアダマンチル部分を含む。
【0048】
「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨード基を意味する。「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を意味する。好ましいのは、フッ素、塩素または臭素であり、より好ましいのは、フッ素および塩素である。
【0049】
「環系置換基」は、例えば、環系上で利用できる水素を置き換えて、芳香族または非芳香族の環系に結合した置換基を意味する。環系置換基は、同じでも異なってもよく、それぞれが、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、アルキルアリール、アラルケニル、ヘテロアラルキル、アルキルヘテロアリール、ヘテロアラルケニル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アラルコキシ、アシル、アロイル、ハロ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アラルコキシカルボニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、ヘテロアリールスルホニル、アルキルスルフィニル、アリールスルフィニル、ヘテロアリールスルフィニル、アルキルチオ、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、アラルキルチオ、ヘテロアラルキルチオ、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクリル、ヘテロシクレニル(heterocyclenyl)、YN−、YN−アルキル−、YNC(O)−およびYNSO−からなる群から独立に選択され、ここでYおよびYは同じでも異なってもよく、水素、アルキル、アリール、およびアラルキルからなる群から独立に選択される。
【0050】
「シクロアルケニル」は、約3から約10炭素原子、好ましくは約5から約10炭素原子を備え、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含む、非芳香族の単環系または多環系を意味する。好ましいシクロアルケニル環は、約5から約7環原子を含む。シクロアルケニルは、同じでも異なってもよい、上記に定義されたような1つまたはそれ以上の「環系置換基」によって随意的に置換されていてもよい。適切な単環式シクロアルケニル類の非限定の例は、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニルなどを含む。適切な多環式シクロアルケニル類の非限定の例は、ノルボルニレニルである。
【0051】
「ヘテロシクレニル」は、約3から約10環原子、好ましくは約5から約10環原子を備え、該環系における原子の1つまたはそれ以上が、炭素以外の元素、例えば、窒素、酸素または硫黄原子のそれぞれまたはその組み合わせであり、該環系は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合または炭素−窒素二重結合を含む、非芳香族の単環系または多環系を意味する。該環系に、隣接した酸素および/または硫黄原子は存在しない。好ましいヘテロシクレニル環は、約5から約6環原子を含む。元来の名称ヘテロシクレニルの前の接頭辞アザ、オキサまたはチアは、環原子として少なくとも窒素、酸素または硫黄原子がそれぞれ存在することを意味する。ヘテロシクレニルは、1つまたはそれ以上の環系置換基によって随意的に置換されていてもよく、ここで「環系置換基」は、上記に定義された通りである。ヘテロシクレニルの窒素または硫黄原子は、対応するN−オキシド、S−オキシドまたはS,S−ジオキシドに随意的に酸化されることができる。適切な単環式アザヘテロシクレニル基の非限定の例は、1,2,3,4−テトラヒドロピリジン、1,2−ジヒドロピリジル、1,4−ジヒドロピリジル、1,2,3,6−テトラヒドロピリジン、1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、2−ピロリニル(pyrrolinyl)、3−ピロリニル、2−イミダゾリニル、2−ピラゾリニル(pyrazolinyl)などを含む。適切なオキサヘテロシクレニル基の非限定の例は、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン、ジヒドロフラニル、フルオロジヒドロフラニルなどを含む。適切な多環式オキサヘテロシクレニル基の非限定の例は、7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプテニルである。適切な単環式チアヘテロシクレニル環の非限定の例は、ジヒドロチオフェニル、ジヒドロチオピラニルなどを含む。
【0052】
「ヘテロシクリル」は、約3から約10環原子、好ましくは約5から約10環原子を備え、環系における原子の1つまたはそれ以上が、炭素以外の元素、例えば、窒素、酸素または硫黄のそれぞれまたは組み合わせである、非芳香族の飽和単環系または多環系を意味する。該環系に、隣接した酸素および/または硫黄原子は存在しない。好ましいヘテロシクリル類は、約5から約6環原子を含む。元来の名称ヘテロシクリルの前の接頭辞アザ、オキサまたはチアは、環原子として少なくとも窒素、酸素または硫黄原子がそれぞれ存在することを意味する。ヘテロシクリルは、同じでも異なってもよい、本明細書に定義されるような1つまたはそれ以上の「環系置換基」によって随意的に置換されていてもよい。ヘテロシクリルの窒素または硫黄原子は、対応するN−オキシド、S−オキシドまたはS、S−ジオキシドに随意的に酸化されることができる。適切な単環式ヘテロシクリル環の非限定の例は、ピペリジル、ピロリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、チアゾリジニル、1,3−ジオキソラニル、1,4−ジオキサニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロチオピラニルなどを含む。
【0053】
「アラルケニル」は、アリール−アルケニル基を意味し、アリールおよびアルケニルは先述の通りである。好ましいアラルケニル類は、低級アルケニル基を含む。適切なアラルケニル基の非限定の例は、2−フェネテニル(phenethenyl)、および2−ナフチルエテニルを含む。親部分への結合は、アルケニルを経由する。
【0054】
「ヘテロアラルキル」は、ヘテロアリール−アルキル基を意味し、ヘテロアリールおよびアルキルは先述の通りである。好ましいヘテロアラルキル類は、低級アルキル基を含む。
適切なアラルキル基の非限定の例は、ピリジルメチル、2−(フラン−3−イル)エチルおよびキノリン−3−イルメチルを含む。親部分への結合は、アルキルを経由する。
【0055】
「ヘテロアラルケニル」は、ヘテロアリール−アルケニル基を意味し、ヘテロアリールおよびアルケニルは先述の通りである。好ましいヘテロアラルケニル類は、低級アルケニル基を含む。適切なヘテロアラルケニル基の非限定の例は、2−(ピリド−3−イル)エテニルおよび2−(キノリン−3−イル)エテニルを含む。親部分への結合は、アルケニルを経由する。
【0056】
「ヒドロキシアルキル」は、HO−アルキル基を意味し、アルキルは、先述の通りである。好ましいヒドロキシアルキル類は、低級アルキル基を含む。適切なヒドロキシアルキル基の非限定の例は、ヒドロキシメチルおよび2−ヒドロキシエチルを含む。
【0057】
「アシル」は、カルボキシル基の−OHが、上記に定義されるようないくつかの他の置換基によって置換された有機酸基を意味する。適切な非限定の例は、H−C(O)−、アルキル−C(O)−、アルケニル−C(O)−、アルキニル−C(O)−、シクロアルキル−C(O)−、シクロアルケニル−C(O)−、またはシクロアルキニル−C(O)−基を含み、ここで様々な基は先述の通りである。親部分への結合は、カルボニルを経由する。好ましいアシル類は、低級アルキルを含んでいる。適切なアシル基の非限定の例は、フォルミル、アセチル、プロパノイル、2−メチルプロパノイル、ブタノイルおよびシクロヘキサノイルを含む。アシル基のC=O部分は、カルボキシル部分であり、本明細書において用語「カルボキシル基」は、より大きい分子フラグメントに取り込まれた−C(O)−部分を指す。
【0058】
「アロイル」は、アリール−C(O)−基を意味し、アリール基は、先述の通りである。親部分への接合は、カルボニルを経由する。適切な基の非限定の例は、ベンゾイル、並びに1−および2−ナフトイルを含む。
【0059】
「アルコキシ」は、アルキル−O−基を意味し、アルキル基は、先述の通りである。適切なアルコキシ基の非限定の例は、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシおよびヘプトキシを含む。親部分への結合は、エーテル酸素を経由する。
【0060】
用語「随意的に置換された」は、特定の基、ラジカルまたは部分による随意的な置換を意味する。
【0061】
鏡像体過剰率(「e.e.」)は、1つの鏡像異性体(例えば、R−鏡像異性体)が、他(例えば、S−鏡像異性体)を上回って生成される程度を表す百分率であり、それぞれの鏡像異性体の生成量の差を引き算し、それぞれの鏡像異性体の生成量の合計で除すことによって計算される。
【0062】
一実施形態において、本発明は、化学式VaおよびVbの化合物の混合物を調製するためのプロセスを提供する。本プロセスのいくつかの実施形態において、本化合物は、スキームIIに概略的に提示されるプロセスに従って生成されることが好ましく、カロン酸無水物(II)を反応させてピロリジンジオン(IIBおよびIII)を提供し、それを順次還元してピロリジン(IVおよびIIIB)を提供し、それからクロロアミンを調製し(IVa)、次にはそれを脱塩化水素化してイミン(VaおよびVb)を提供する。
【0063】
【化16】

スキームIIでは、Rは、アラルキル、置換されたアラルキルまたはアルケニル(例えば、アリル)基、好ましくはベンジル基である。
【0064】
スキームIIに示されたプロセスの各ステップ、および各ステップにおいて調製される中間体に関する詳細な議論が以下に続く。
【0065】
ステップ1−イミド形成
いくつかの実施形態において、所望のイミンは、化学式IIBまたは化学式IIIのいずれかのイミド前駆体から得られ得る、化学式IVのアザ−ビシクロ(3.1.0)ヘキサン化合物から提供されることが好ましい。化学式IIBまたはIIIのいずれのイミドも、カロン酸無水酸(II)の出発物質、およびスキームIIに概略的に提示され経路Aおよび経路Bとして確認される2つの手順の1つを用いて、調製することができる。経路Aのプロセスは、化学式IIIのイミドを形成し、このイミドは、金属水素化物、好ましくは水素化アルミニウムリチウムを用いた処理によって、ワンステップで化学式IVの前駆体化合物に還元される。
【0066】
経路Bのプロセスは、カロン酸無水物をベンジルアミンと反応させることによって化学式IIBのイミドを形成し、イミドベンジルピロリジンジオン(IIB)を提供する。このように生成されたベンジルピロリジンジオンは、2ステップで化学式IVの前駆体化合物に還元されることができる。ジオンのカルボニル基は、金属水素化物で還元することができる。ピロリジン環の窒素部分は、第8族金属水素化触媒の存在下で、ピロリジンを水素化処理することによってベンジル部分を除去し、水素化することができる。カルボニル基の還元は、窒素部分の水素化の前か、または後に行うことができる。従って、ベンジルピロリジンジオン(IIB)からベンジルピロリジン(IIIB)を提供することができ、これを次に水素化して、化学式IVのピロリジン化合物が提供される。代わりに、ベンジルピロリジンジオン(IIB)を水素化して、ピロリジンジオン(III)を提供することができ、これを次に金属水素化物で還元して、化学式(IV)のピロリジン化合物を提供する。これらの各プロセスが、以下に説明される。
【0067】
経路A:
カロン酸無水物(化学式II)は、適切な溶媒中で触媒作用により転換することができ、化学式IIIのイミドを生じる。本発明のいくつかの実施形態では、水、テトラヒドロフラン、メタノール、イソプロパノール、メチルイソブチルケトン、キシレン、およびホルムアミドから選択される少なくとも1つの溶媒を用いることが好ましい。この転換を行うのに適した触媒は、例えば、4−N,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)およびルチジンを含む。この触媒は、窒素源の存在下で用いられる。適切な窒素源は、限定なしに、NH、NHOH、HNC(O)NH、HNC(O)H、NHCH、およびNHCCHを含む。いくつかの実施形態において、この反応は、約10℃から約200℃までの温度で行うことが好ましい。化学式IIIのイミドが得られた後、ステップAiiにおいてカルボニル官能基を、好ましくは、金属水素化物、例えばLiAlHを用いて還元し、化学式IVの化合物が得られる。好ましくは、エーテル溶媒、例えば、テトラヒドロフラン(THF)およびメチル−t−ブチルエーテル(MTBE)中で還元が行われる。
【0068】
経路B:
カロン酸無水物(化学式II)から化学式IVの化合物を提供するための第2の方法は、アルキル、アリル、またはアラルキルイミド(例えば、化学式IIBの6,6−ジメチル−3−アザ−ビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,4−ジオンイミド化合物)の形成を含み、次にはジオンの還元およびピロリジン窒素の水素化を含む2ステップ・プロセスを経て、化学式(IV)の化合物が得られる。この第2の方法の2つのステップが、以下に記載される。
【0069】
ステップ Bi:
化学式IIBの中間体イミドは、溶媒の存在下で、アラルキルアミン、置換されたアラルキルアミン、およびアルケニルアミンから選択される少なくとも1つの試薬と反応させることによって、カロン酸無水物から調製される。本発明のいくつかの実施形態において、アリールCHNH(ベンジルアミン)およびアリルNHから選択されるアミンを用いることが好ましい。本発明のいくつかの実施形態において、t−ブチルメチルエーテル(TBME)、テトラヒドロフラン、メタノール、トルエン、キシレンおよびこれらの2つ以上の混合物から選択される溶媒を用いることが好ましい。本発明のいくつかの実施形態において、この反応は、約0℃から約200℃までの温度で行うことが好ましい。
【0070】
ステップ Bii:
ステップBiで調製された化学式IIBの中間体アルキルイミドは、好ましくは、イミド環のカルボニル基を、適切な溶媒中で金属水素化物を用いて還元することにより、化合物IIIBに転換することができる。いくつかの実施形態において、水素化アルミニウムリチウム(「LiAlH」)、二水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム(「Red−Al(登録商標)」)およびボランから選択される試薬を用いて、この還元を行うことが好ましい。本発明のいくつかの実施形態において、還元反応は、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、tert−ブチルメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、トルエンおよびこれらの2つ以上の混合物から選択される溶媒中で行うことが好ましい。いくつかの実施形態において、蒸留により溶媒を除去し、生成物を単離することが好ましい。本発明のいくつかの実施形態において、還元反応は、約−20℃から約80℃までの温度で行うことが好ましい。
【0071】
ステップBiii:
ステップBiiにおけるイミド還元の前、或いは後でも、ピロリジン環の窒素が水素化され、それに伴ってベンジル部分が失われて、対応するピロリジン化合物が生じる。もしジオンのカルボニル部分が還元が実行されれば、水素化により化学式IVのピロリジン(6,6−ジメチル−3−アザ−ビシクロ[3.1.0]ヘキサン)が生じる。もしジオン還元ステップが水素化ステップ後に行なわれば、水素化は化学式IIIのピロリジンジオン(イミド)を生じる。いくつかの実施形態において水素化ステップ(ステップBiii)は、金属が関与した水素化分解反応条件を用いて行うことが好ましい。いくつかの実施形態において、水素ガスの存在下で、カーボン上のパラジウム(Pd/C)を含む触媒を用いることが好ましい。適切な反応条件の一例は、以下の参考文献に見出すことができる:R.C.Bernotas および R.V.Cube,Synthetic Communication,1990,20,1209。
【0072】
随意的に、化学式IVの化合物を酸と反応させることにより、対応する塩(化学式IVBの化合物)に転換することができる。適切な酸は、限定なしに、鉱酸、例えば、HCl、HBr、HI、HNOまたはHSOを含む。いくつかの実施形態において、この処理に用いる鉱酸溶液を提供するために、適切な有機溶媒、例えば、アルコール溶媒、例えば、メタノールおよびイソプロパノールを用いることが好ましい。
【0073】
カロン酸無水物を調製するための方法は、当分野で知られており、この化合物は、例えば、米国特許出願公開第2005/0059648 A1号に開示された合成によりつくることができる。この出願公開に関し、該無水物をエチルクリサンテムマートから、公開された手順に従って調製するための方法が、実施例1に詳述されている。
【0074】
スキームIVに示される代わりの手順は、化学式IIIの化合物
【0075】
【化17】

を形成するために単離するか、またはin situで使用することができる出発物質を提供するために用いることができる。
【0076】
スキームIIIに示されるように、cis−カロン酸無水物を選択的に形成するために(化学式II)、ラセミの3,3ジメチル−シクロプロパン−1,2−ジカルボン酸(IIa)をトルエン中に溶解/懸濁し、硫酸の存在下において無水酢酸で処理する。cis−カロン酸無水物は、経路Aか、経路Bのいずれかによるプロセスに用いてそれぞれ化学式IIIのイミドまたは化学式IIBを提供するために単離してもよく、或いはin situで水酸化アンモニウム処理して開環中間体を形成し、これをin situで加熱して、ワンポット反応で化学式IIIのイミドを形成してもよい。
【0077】
ステップ2 化学式IVの化合物の塩素化:
化学式IVのピロリジンを調製した後、塩素化剤との反応によって、それをクロロアミン誘導体(化学式IVaの化合物)に転換する。いくつかの実施形態において、塩素化試薬としてN−クロロスクシンアミド(NCS)を選択することが好ましい。いくつかの実施形態において、塩素化剤として次亜塩素酸ナトリウム水溶液、好ましくは13wt%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を選択することが好ましい。次亜塩素酸ナトリウムまたはNCSを塩素化剤として用いるいくつかの実施形態において、反応は、低極性溶媒、好ましくはエーテル、好ましくはメチル−tert−ブチルエーテル(MTBE)中で行う。溶媒がMTBEであり塩素化剤がNCSであるいくつかの実施形態では、反応後に濾過により反応混合物から固体スクシニンイミドを除去し、得られた溶液を濃縮した後に、脱塩化水素ステップを用いて所望のイミン生成物が得られる。随意的に、ステップ2で調製されたクロラミンを単離して後で脱塩化水素反応に用いてもよい。
【0078】
当然のことながら、化学式IVaのクロロアミンを提供する任意の手段を用いることができ、これらは依然として本発明の範囲内にある。
【0079】
ステップ3 化学式VaおよびVbのイミンを得るための脱塩化水素化:
ステップ2で調製された化学式IVaのクロロアミンを、対応する化学式VaおよびVbのイミンを得るために脱塩化水素化する。ピロール環に導入される二重結合は、環上の2つの位置のいずれにも導入できるので、このステップでは、化学式VaおよびVbの異性体を両方とも含んだ生成混合物が得られる。一般に、脱塩化水素化は、化学式IVaの化合物を塩基処理することによって行うことができる。適切な塩基の非限定の例は、金属水酸化物、例えば水酸化カリウムおよび水酸化ナトリウム、金属アルコキシド、例えばナトリウムおよびカリウムアルコキシド、およびアミジン、例えば1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)を含む。
【0080】
いくつかの実施形態において、脱塩化水素化反応は、脱塩化水素基質(化学式IVaの化合物)がその中で調製された反応混合物溶媒の濃縮液をと混合された、水溶液中の塩基を用いて行うことが好ましい。いくつかの実施形態において、塩基をメタノールに溶解させるか、或いは塩基溶媒にメチルアルコールを加えることが好ましい。
【0081】
いくつかの実施形態において、脱塩化水素化反応は、親油性相間移動触媒の存在下で行い、かくして水相および有機相間の損失を最小限に抑えて、反応を準備して仕上げるまでに生じる溶媒の交換量を最小限に抑えることが好ましい。従って、いくつかの実施形態において、脱塩化水素化反応に、高親油性相間移動触媒(PTC)、例えば、テトラオクチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムクロリド、およびテトラブチルアンモニウムヒドロキシドを用いることが好ましい。相間移動触媒を用いるいくつかの実施形態において、反応速度および収率を改善するために、相間移動触媒とともに助触媒、例えば、短炭素鎖アルキルアルコール、例えば、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールを用いることが好ましい。
【0082】
先述のように、脱塩化水素化反応は、イミン生成物の二重結合を2つの異なった位置に導入できるので、その結果として鏡像異性体混合物を含む生成物が提供される。いくつかの実施形態において、化学式Vaの1S,5Rピロール化合物を選択的に得るために、不斉相間移動触媒を反応混合物中で用いて脱塩化水素化反応を行い、ピロリジンを選択的に脱プロトン化することが好ましい。本発明者らは、理論により束縛されることは望まないが、不斉相間移動触媒の利用は、ある特定の異性体を過剰に提供することに繋がるであろうと信じる。不斉相間移動触媒の例は、(8S,9R)−(−)−N−ベンジルシンコニジニウムクロリドを含む。
【0083】
当然のことながら、塩素化試薬の代わりに他のハロゲン化剤を用いて本発明のプロセスを行っても、同様の収率改善が可能であり、かくして、本発明のプロセスは、一般にハロゲン化/脱ハロゲン化プロセス、例えば、臭素化/脱臭化水素化またはよう素化/脱よう化水素化を用いて行うことができ、これらは、依然として本発明の範囲内でありうる。
【0084】
本発明をさらに説明するために、以下の非限定の実施例が示される。本開示への多くの修正、バリエーションおよび変更を、材料、方法および反応条件の両方について行うことができることは、当業者に明らかであろう。すべてのかかる修正、バリエーションおよび変更が、本発明の精神および範囲のうちにあることが意図される。
【実施例】
【0085】
別の記述がなければ、すべての溶媒および試薬は市販品であり、受け取ったままの状態で使われる。別の記述がなければ、次の略語は、実施例において以下に記述された意味をもつ:
mL=ミリリットル
g=グラム
eq=当量
THF=テトラヒドロフラン
MeOH=メタノール
Me=メチル
TBME=メチルtert−ブチルエーテル
ACN=アセトニトリル
Ph=フェニル
実施例1−化学式IVの化合物の調製
ステップ1:6,6−ジメチル−3−アザ−ビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,4−ジオン(III)の調製
手順A
【0086】
【化18】

実施例A1
フラスコに300gのII(2.1モル、1eq.)および300mLの水を入れた。撹拌しながら混合物を0〜10℃に冷却した。撹拌しながら、225mLのNHOH溶液(水中に14.8M NH)(3.3モル、1.5eq.)を反応混合物にゆっくりと加えた。添加する間、反応混合物の温度を40℃未満に保った。添加が完了した後、バッチを105〜115℃まで暖めて、生成物の水蒸気蒸留を回避しながら、蒸留により水を収集した。蒸留が完了した時点で、環化を完了するために、反応混合物を165〜180℃の間まで次第に加熱した。反応混合物を次に60〜70℃の間の温度まで冷却して、200mLのTHFを加えた。反応混合物を135〜140℃まで再加熱して、蒸留により溶媒を収集した。反応混合物を60〜70℃の間の温度まで再冷却して、200mLのTHF、および500mLのn−ヘプタンを加えた。反応混合物を0〜10℃まで5時間にわたって冷却し、次に0.5から1時間撹拌して生成物を結晶化させた。結晶の収集、洗浄および乾燥を行い、化合物IIIを白色結晶粉末として得た(収率90〜95%)。H NMR(CDCl) δ 7.55(bs,1H),2.31(d,J=1.12Hz,2H),1.35(s,3H),1.24(s,3H)。
【0087】
実施例A2
温度プローブ、蒸留装置および機械的撹拌器を装備した12Lフラスコ中に、1500.0gのカロン酸無水物(化学式II、10.7モル)を入れた。フラスコに水1500mLを加え、続いてNHOH(273.4g、16.1モル)を滴下して加えた。大気圧で2時間の蒸留により、水を収集した。混合物を次に155℃まで加熱して、さらに22時間撹拌した。H NMRおよびHPLCによる分析は、生成物への転換が不完全なことを示した。次に、さらにNHOH(50.4g、3.0モル)を混合物に加えた。混合物を155℃まで1時間加熱した。反応混合物を120℃まで冷却し、フラスコに7500mLのn−ブチルアセテート(n−BuOAc)を滴下して加えた。混合物を加熱して、120℃〜130℃の間の温度に保った。大気圧での蒸留によって、n−BuOAc(6000mL)および水(200mL)を収集した。混合物を次に100℃まで冷却して、n−ヘプタン(6000mL)を滴下して加え、内部温度を90〜98℃の間に保った。反応混合物を一晩かけて室温まで冷却した。白色懸濁液を濾過して、固形物をn−ヘプタン(4500mL)で洗った。濡れた生成物を真空オーブン中において40℃で乾燥させて、化学式IIIのアザ−ジオン化合物(1413.3g、95%)をオフホワイトの固体として得た。
【0088】
実施例A3
【0089】
【化19】

50グラムのcis/trans−3,3−ジメチル−1,2−シクロプロパンジカルボン酸(IIa)をトルエン(75ml)でスラリー化して、無水酢酸(60mL)を加えることにより、カロン酸無水物IIを経由して、3,3ジメチル−シクロプロパン−1,2−ジカルボン酸(IIa)からイミドIIIを調製した。その後、濃硫酸(0.5mL)を入れてトルエンをゆっくり留去した。反応混合物を約190℃まで加熱し、残った揮発性化合物をその間に蒸留により収集した。反応を50℃未満まで冷却して、THF(50mL)を加えた。約0℃まで冷却した後、温度を15℃未満に保ちながら水酸化アンモニウム(32mL、約14.8N)をゆっくり加えた。混合物を次に110℃までゆっくり加熱し、その間にTHFを蒸留により除去した。反応を180℃まで段階的にさらに加熱した。冷却してTHF(15mL)を加えた後、反応を140℃まで再加熱して、その間に溶媒を蒸留により収集した。混合物を冷却して、THF(15mL)およびn−ヘプタン(30mL)を加えた。溶媒の蒸留とそれに続く冷却により、結晶性イミドIIIを得た(収率:85%)。
【0090】
実施例A4
【0091】
【化20】

温度プローブ、冷却器、および機械的撹拌器を装備した三口丸底フラスコ中に、化学式IIの化合物(カロン酸無水物)25.0gを置いた。フラスコに9.37mLのホルムアミド(10.61g、無水物の0.424当量)、続いて2.43gの4−N,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP、0.1当量)を加えた。容器を窒素でパージして、反応混合物を撹拌するとともに145℃まで加熱して、加熱を2.5時間続けた。無水物が完全に消費されたことをプロトンNMR測定が示した後、溶液を90℃まで冷却して、容器に50mLのキシレン(2容量)を入れた。次に、反応混合物を撹拌しながら145℃まで加熱した。加温を2.5時間続け、その間にディーン−スターク冷却器を動作させて、水/ホルムアミド共沸混合物を収集した。過剰なホルムアミドを反応混合物から除去し、すべての中間体を転換した後、反応混合物を80℃まで冷却した。次に、反応フラスコに18.75mlのヘプタン(0.75容量)を入れて、反応混合物の温度を80℃に保った。ヘプタンの添加が完了し後、反応混合物を2時間にわたって0℃まで冷却し、撹拌しながら30分間、0℃〜5℃の温度に保った。反応の終わりに、混合物を30分間撹拌しながらこの温度範囲に保ち、その間に沈殿物が形成された。濾過により固体を収集して、冷たいヘプタン50mLの2アリコットで洗い、真空オーブン中、50℃で24時間にわたって乾燥させた。
【0092】
代わりの手順−ベンジルイミドの調製、およびそれに続くイミドへの還元:
【0093】
【化21】

フラスコに51.32gのII(0.37モル、1eq.)、および50mLのTBMEを入れた。撹拌しながら混合物を0〜10℃の間まで冷却した。40.0mLのベンジルアミン(39.24g、0.37モル、1eq.)をおよそ30分にわたって滴下して加えた。添加が完了した後、TBMEを60〜70℃の間の蒸留により除去して、混合物を170〜180℃の間の内部温度まで次第に加熱した。環化を完了するために、溶液を170〜180℃の間でおよそ3から5時間保った。得られた溶液を60〜70℃の間まで冷却し、水5%のイソプロパノール溶液100mLを加えて、混合物を室温まで冷却した。さらに0〜10℃の間まで冷却した後、生成物を濾過により単離し、純粋な冷たいイソプロパノールですすいで、真空オーブン中で乾燥させ70.99gのベンジルイミド、IIB、(85%)を得た。H NMR(CDCl)δ7.39(m,2H);7.28(m,3H);4.53(s,2H);2.31(s,2H);1.20(s,3H);1.01(s,3H)。従来の水素化分解条件(H、Pd/C)を用いてこの生成物を脱保護し、IIIを提供することができる。
【0094】
実施例2:6,6−ジメチル−3−アザ−ビシクロ[3.1.0]ヘキサン(IV)の調製
【0095】
【化22】

LiAlHのTHF溶液(500mL、2.4M、1.2モル、1.67eq.)を、N注入口を装着した三口フラスコに入れた。窒素でパージしながら、フラスコの内容物を40℃まで暖めた。100gのIII(0.72モル、1eq.)、および400mLのTHFを第2のフラスコに加えて、澄んだ溶液が形成されるまで撹拌した。次に、およそ0.5から1時間にわたって、およそ70℃まで昇温しながら(還流)、第1の三口フラスコ中にLiAlHを含んだ反応混合物に、含んでいる第2の三口フラスコ中にIIIを含んだ溶液を加えた。第2のフラスコを100mLのTHFですすぎ、IIIが確かにすべて移されるように、それを反応混合物に加えた。溶液の添加が完了した時点で、反応混合物を還流温度に保ち、反応が完了するまで(およそ3時間)撹拌した。
【0096】
窒素流入口を装備した三口フラスコに674gの酒石酸カリウムナトリウム・4水和物(2.39モル、3.32eq.)、および191gの水酸化ナトリウム(4.78モル、6.64eq.)、800mLのHOおよび300mLのTBMEを入れた。混合物を15〜25℃の間でおよそ1時間、または固体がすべて溶解してしまうまで撹拌した。反応混合物を、およそ10〜20分にわたって、カニューレ経由で二相性クエンチ混合物に移した。反応フラスコを30mLのTBMEですすぎ、このTBMEもカニューレ経由でクエンチフラスコに移した。二相性混合物をさらに15〜30分間撹拌し、40℃で層を分離させた。100mLのTBMEを用いて、水層を2回抽出した。次に、混合有機層を分留し、IVを無色液体(64.5g、88%)として得た。H NMR(CDCl、400MHz): δ 3.07(m,2H),2.89(d,2H,J=11.6Hz),1.56(br s,1H),1.25(m,2H),1.00(s,3H),0.98(s,3H)。
【0097】
代わりに、上記TBME溶液中の化合物IVを、それに対応する塩酸塩に転換した。最初に、TBMEを蒸留によって除去した。第2に、化合物IVを含んだ濃縮溶液の18.6gアリコットをとり、機械的撹拌器、Nライン、24−40セプタムを介して固定されたガラス管、および3N NaOHバブラー用アダプターを装備した500mLの三口フラスコに加えた。溶液を−20℃に冷却して−20〜−23℃の間に保ち、撹拌しながら10分間、気体HClを溶液全体にバブリングした。すぐに白色沈殿が見られた。NMRによって反応をモニターし、必要であればさらに気体HClをバブリングした。沈殿物をNブランケット下で濾過し、冷却ヘプタン(−60℃、40mL)を用いてN下で洗い、乾燥後に13.9g、(70%)IV*HCl塩を得た。H NMR(CDCl、400MHz):δ 7.90(BS,1H),3.55(d,J=16.4,2H),3.15(d,J=16.4,2H),1.60(m,2H),1.10(s,3H),1.02(s,3H)。
【0098】
実施例3:クロロアミン(IVa)を経由してのアミン(IV)から6,6−ジメチル−3−アザ−ビシクロ[3.1.0]ヘキサ−2−エン(V)の調製
【0099】
【化23】

撹拌器を装備した2L丸底フラスコ中に、13%のNaOCl(592g、1.15eq.)、および250mlのMTBEを入れた。撹拌を開始して、反応混合物を10℃〜30℃の間の温度に維持しながら、上記の実施例2に従って調製された、化学式IVの化合物100gをゆっくり加えた。温度を保ちながら、バッチを1時間撹拌し、99%以上が転換されたことをGCが示すまでサンプリングした。反応混合物にさらにMTBE(200mL)を加え、温度を20℃〜30℃の間に保ちながら20分間バッチを撹拌して、次に撹拌を停止し、バッチを放置して静置させた。水層が分離した。撹拌装置およびヒーターを装備した2L丸底フラスコ中に、58mL(720g)の25wt% NaOH水溶液、25gの40wt% BuNOH水溶液、および50mLのMeOHを入れた。反応混合物を周囲温度、約20〜25℃に保ちつつ、先に得られたクロラミンIVa含有有機層(50ml)を撹拌しながらゆっくり第2の反応容器に入れた。バッチを20〜30分にわたって加熱し、反応時間中の反応混合物を50℃〜55℃の間の温度に保った。反応混合物を8時間撹拌し、その結果99%超のクロロアミンがピロールに転換されたことをGCが示した。反応混合物を周囲温度、約20℃〜25℃まで冷却して、撹拌を停止し、バッチを静置させた。水層を除去し、Bu4NOHを除去するために(GCによるモニター<0.3% BuNOH)有機層を20%塩水で2回(400ml、次に200ml)洗った。真空下の有機溶媒除去により、純粋な生成物(収率90%、純度>98%)が提供された。H NMR(CDCl、400MHz) δ 7.37(m,1H),3.85(m,1H),3.60(m,1H),2.14(m,1H),1.68(m,1H),1.10(s,3H),0.76(s,3H)。
【0100】
実施例3A:不斉PTC(相間移動触媒)を用いたイミン(V)の調製
【0101】
【化24】

撹拌器を装備した2L丸底フラスコに、13%のNaOCl(592g、1.15eq.)、および250mlのMTBEを入れた。撹拌を開始し、反応混合物を10℃〜30℃の間の温度に保ちながら、上記の実施例2に従って調製された化学式IVの化合物100gをゆっくり加えた。温度を保ちながらバッチを1時間撹拌し、99%超が転換されたことをGCが示すまでサンプリングした。反応混合物にさらにMTBE(200mL)を加え、温度を20℃〜30℃の間に保ちながら20分間バッチを撹拌して、次に撹拌を停止し、バッチを放置して静置させた。水層が分離した。撹拌装置およびヒーターを装備した第2の2L丸底フラスコ中に、58mL(72g)の25wt% NaOH水溶液、(8S,9R)−(−)−N−ベンジルシンコニジニウムクロリド(19g)、および50mLのMeOHを入れた。反応混合物を周囲温度、約20℃〜25℃に保ちつつ、先に得られたクロラミンIVaを含んだ有機層(50ml)を、撹拌しながら第2の反応容器にゆっくり加えた。92%超のクロロアミンがピロールに転換されたことをGCが示すまで、反応混合物を撹拌した。反応混合物を周囲温度、約20℃〜25℃まで冷却して、撹拌を停止し、バッチを静置させた。水層を除去し、不斉PTC触媒を除去するために、有機層を20%塩水で2回(400ml、次に200ml)洗った。真空下での有機溶媒除去により、純粋な生成物(収率80%、純度>98%、20% ee)が提供された。かくして反応混合物が、約60モル%の化学式Vaの化合物、および40モル%の化学式Vbの化合物を含むことがわかった。H NMR(CDCl、400MHz) δ7.37(m,1H),3.85(m,1H),3.60(m,1H),2.14(m,1H),1.68(m,1H),1.10(s,3H),0.76(s,3H)。
【0102】
比較例:銀が関与する過硫酸酸化を用いたイミン(V)の調製
【0103】
【化25】

フラスコに、39.6gのNaOH(0.99モル、2.2eq.)および158.1gのK、750mLの水および80mLのアセトニトリルを−5℃で入れた。50gのIV(0.45モル、1.0eq.)を加えて、−5℃まで再冷却した。反応温度を−5〜0℃の間に保ちながら、20mLのAgNO水溶液(2.29g、0.0135モル、0.03eq.)を1〜2時間にわたって加えた。反応混合物を0〜2℃まで温めて、反応を完了に向かわせた。完了した時点で、混合物を室温まで暖めて360mLのTBMEで希釈した。層を分離して、水層をTBMEで抽出した。混合有機層を無水NaSOで乾燥させて濾過した。溶液を分留により精製し、無色油としてVを得た。これを静置すると固化して、化学式VaおよびVbの化合物のラセミ混合物からなる白色結晶性固体が形成された(化学式IVの出発化合物ベースの収率65〜75モル%、HPLCによる純度92%)。H NMR(CDCl) δ 7.30(t,J=2.2Hz,1H),3.80(ddd,J=6.8,1.4,0.6Hz,1H),3.49(dd,J=4.7,2.8Hz,1H),2.06(dd,J=6.0,1.7Hz,1H),1.61(dd,J=6.6,1.8Hz,1H),1.03(s,3H),0.68(s,3H)。
【0104】
本発明は、以上に提示された特定の実施形態により、かつそれらとともに記載されてきたが、当業者には、その多くの代替手段、修正および他のバリエーションが明らかであろう。すべてのかかる代替手段、修正およびバリエーションは、本発明の意図および範囲のうちにあることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前記化学式(Va)および(Vb)の化合物
【化26】

の混合物を提供するためのプロセスであって、前記プロセスは、
(a)化学式IVのピロリジン化合物
【化27】

を塩素化剤で処理して、化学式IVaの前記化合物
【化28】

を形成するステップ、および
(b)ステップ「a」で得られた前記クロロアミンを脱塩化水素化して、化学式VIaおよびVIbの前記化合物を生成するステップ
を備えるプロセス。
【請求項2】
前記塩素化剤は、次亜塩素酸ナトリウムおよびN−クロロスクシンイミドから選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記反応は、(8S,9R)−(−)−N−ベンジルシンコニジニウムクロリド、テトラオクチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムクロリド、およびテトラブチルアンモニウムヒドロキシドから選択される相間移動触媒を備える反応混合物中で行われる、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記反応混合物は、促進剤をさらに含有する、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記促進剤は、メタノールである、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
化学式IVの前記ピロリジン化合物は、
(a)Rがアラルキル、置換されたアラルキル、またはアルケニルである化学式IIBの前記化合物
【化29】

を提供すること;および
(b)化学式IVの前記化合物を提供するために、前記カルボニル基の還元、および前記ピロリジン窒素の水素化をいずれかの順序で行うこと
を包含するプロセスによって調製される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
は、ベンジルまたはアリルである、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記塩素化試薬は、よう素化試薬および臭素化試薬から選択される試薬に置き換えられ、それによって、脱よう化水素化および脱臭化水素化によりそれぞれ、ステップ2における化学式VIaおよびVIbの化合物に転換される中間体ハロアミンを提供する、請求項1に記載のプロセス。

【公表番号】特表2011−504929(P2011−504929A)
【公表日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536069(P2010−536069)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際出願番号】PCT/US2008/084174
【国際公開番号】WO2009/073380
【国際公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(596129215)シェーリング コーポレイション (785)
【氏名又は名称原語表記】Schering Corporation
【Fターム(参考)】