説明

8−ニトロ−2−シアノ−4H−1−ベンゾピラン−4−オンから8−ニトロ−2−(1H−テトラゾール−5−イル)−4H−1−ベンゾピラン−4−オンを製造し、それを8−アミノ−2−(1H−テトラゾール−5−イル)−4H−1−ベンゾピラン−4−オン塩酸塩に転換するための改良された方法

【課題】本発明は、水中で亜鉛ハロゲン化物とともにアジ化ナトリウムを用いた、8−ニトロ−2−シアノ−4H−1−ベンゾピラン−4−オンから8−ニトロ−2−(1H−テトラゾール−5−イル)−4H−1−ベンゾピラン−4−オンへの転換のための改良された方法に関する。
【解決手段】8−ニトロ−2−(1H−テトラゾール−5−イル)−4H−1−ベンゾピラン−4−オンは、塩酸水溶液中で、塩化第一スズを用いることにより、8−アミノ−2−(1H−テトラゾール−5−イル)−4H−1−ベンゾピラン−4−オン塩酸塩にさらに転換される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、8−ニトロ−2−シアノ−4H−1−ベンゾピラン−4−オン[式1の化合物]から8−ニトロ−2−(1H−テトラゾール−5−イル)−4H−1−ベンゾピラン−4−オン[式2の化合物]を製造した後に、それを、プランルカスト(Pranlukast)の製造における中間体である8−アミノ−2−(1H−テトラゾール−5−イル)−4H−1−ベンゾピラン−4−オン塩酸塩[式3の化合物]に転換するための改良された方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プランルカスト[式4]の重要な中間体は次の通りである:
【化1】

【0003】
プランルカストは、小野薬品工業株式会社によるJP19840172570(1984年8月20日)[EP173516およびUS4780469と同等]で初めて開示されたロイコトリエン拮抗剤(抗ぜんそく剤)である。プランルカストはCAS RN[103177−37−3]であり、以下の名称のいずれかにより化学的に知られている。
1. N−[4−オキソ−2−(1H−テトラゾール−5−イル)−4H−1−ベンゾピラン−8−イル]−4−(4−フェニルブトキシ)ベンズアミド、または
2. 8−[4−(4−フェニルブトキシ)−ベンズアミド]−2−(テトラゾール−5−イル)−4H−1−ベンゾピラン−4−オン、または
3. 8−[p−(4−フェニルブトキシ)ベンゾイル]アミノ−2−(5−テトラゾリル)−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン。
【0004】
プランルカストの重要な中間体(式1、式2、式3)は以下の通りである:
【化2】

【0005】
US4977162A[WO9101123A2、US5082849Aの同等物]は、DMF中でアジ化ナトリウム、塩化ピリジニウムを用いて、100℃3時間処理した後に、水中に反応物を移し、生成物をろ過し、生成物を再結晶化する、式2の化合物の製造を記載している[US4977162Aの実施例34、ステップ2で記載された方法による]。
【0006】
式2の化合物は、炭素上の5%パラジウム及びメタノール中の濃塩酸を用い、18時間、大気圧の水素を用いて、式3の化合物に転換される。生成物は、ろ過、及び減圧下でのろ液の濃縮後に、触媒を分離した後に単離される。この方法は、貴金属触媒を使い、大規模な活性触媒再生を含む。
【0007】
US5990142A[WO97/34885A1、EP888327B1の同等物]は、式1の化合物から式2の化合物の製造を記載している。その反応では、式1の化合物を、N,N−ヂメチルホルムアミド中でアジ化ナトリウム及び塩化アンモニウムと100℃で1.25時間撹拌して反応させた後に後処理を行い、69%の収率を提供する。式2の化合物は、クロロホルムメタノールおよび濃塩酸の混合物における炭素上の5%パラジウムを用いた触媒水素添加により定量的収率で式3の化合物に転換される。
【0008】
この方法によれば、テトラゾール環形成の工程において、生成物の収率は低く、抽出操作が含まれる。次の工程において、金属パラジウムは溶媒の混合物において用いられ、プロセスの循環回数を増加させている。これらの因子のため、この方法は商業的に魅力のないものになっている。
【0009】
JP07−304773には、RCNをヒドラジンと反応させてRC(=NH)NHNH2[アミドラゾン]を形成し、引き続き、亜硝酸塩である式YNO2の化合物[YはH、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはC1−20アルキルである]で処理することによって式1の化合物[R−CN]から式2の化合物を製造することが記載されている。
【0010】
WO95/31445[EP0711762Bとの同等物]には、以下の通り式1の化合物から式2の化合物を製造することが記載されている。
【0011】
トルエン、トリエチルアミンおよびメタノールの混合体中の8−ニトロ−2−シアノ−4H−1−ベンゾピラン−4−オン[式1の化合物][R−CN]を硫化水素と反応させて対応するチオアミド[RC(=S)NH2]を製造し、上記チオアミドは、ヒドラジンとの反応によりアミドラゾン[RC(=NH)NHNH2]に転換され、その後、式ANO2の亜硝酸化合物(式中、Aは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはC1−C20アルキル基である)と反応させて、対応するテトラゾール[式2の化合物]を製造する。
【0012】
この方法は、硫化水素などの有毒ガス、溶媒混合物を用い、そして多段階の抽出操作を含むため、工業的規模での操作は不適切である。
【0013】
ニトリルのテトラゾールへの転換のための亜鉛塩の使用を含む方法は、JOC(2001)66,7945−50で報告されている通りに、安全かつ有効な方法である。ニトリルをテトラゾールに転換するための亜鉛塩の使用はまた、WO96/37481およびUS5502191で公開されている。
【0014】
多段階の抽出および貴金属触媒を回避した、高収率での式2および式3の化合物の製造のための商業的に実用的な方法を提供することの必要性は長く望まれていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の主な目的は、シアノ化合物からテトラゾール環を形成することである。
本発明の別の目的は、水性媒体においてテトラゾール環形成を実施することである。
本発明の別の目的は、亜鉛ハロゲン化物などの触媒およびアジ化ナトリウムを用いて、ニトリルからのテトラゾール環形成を実施することである。
本発明の別の目的は、水中でニトリルからテトラゾール環形成をより高収率で実施することである。
【0016】
さらに本発明の別の目的は、パラジウムなどの貴金属触媒を用いることなしに、ニトロからアミノ基への還元を実施することである。
さらに本発明の別の目的は、代わりの還元剤を用いた、ニトロからアミノ基への還元を実施することである。
さらに本発明の別の目的は、多段階抽出操作を回避した、高純度の生成物を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
即ち、本発明によれば、8−アミノ−2−(1H−テトラゾール−5−イル)−4H−1−ベンゾピラン−4−オン塩酸塩(式3の化合物)が次の工程で製造される:
【0018】
工程[a]
8−ニトロ−2−シアノ−4H−1−ベンゾピラン−4−オン[式1の化合物]を、アジ化ナトリウム、並びに塩化亜鉛および臭化亜鉛などの亜鉛ハロゲン化物、好ましくは塩化亜鉛と、反応がほぼ完了するまで、25〜100℃、好ましくは80〜85℃で水中において反応させ、その後、約25〜30℃まで冷却し、亜硝酸ナトリウム/塩酸水溶液と反応させ、約25〜30℃で撹拌し、固形物をろ過した後に、希HCl、水で洗浄し、乾燥することによって、8−ニトロ−2−(1H−テトラゾール−5−イル)−4H−1−ベンゾピラン−4−オン[式2の化合物]を得る。
【0019】
段階[b]
水中で式2の化合物を、約30%塩酸中の塩化第一スズ二水和物と約10〜50℃、好ましくは30〜35℃で、反応がほぼ完了するまで反応させ、引き続き水で希釈し、20〜25℃で撹拌し、ろ過、洗浄および乾燥することによって、8−アミノ−2−(1H−テトラゾール−5−イル)−4H−1−ベンゾピラン−4−オン塩酸塩[式3の化合物]を得る。
【0020】
工程[a]において、塩化亜鉛、臭化亜鉛などの亜鉛ハロゲン化物を使用できる。好ましい試薬は、塩化亜鉛である。反応用の溶媒は水である。反応は、25〜100℃、好ましくは80〜85℃で実施される。
【0021】
反応の進行は、TLC/HPLCでモニターされ、98%の転換後、反応物は約30℃に冷却され、亜硝酸ナトリウムで処理した後に、約30〜45℃において、25〜30℃のHCl水溶液を滴下添加する。反応物は、さらに25〜30℃で約30分間撹拌し、そしてろ過する。ろ過残渣を1N HClで洗浄し、引き続き水で洗浄し、乾燥する。収率は約87%であり、純度は98%より大きい。
【0022】
工程[b]において、工程[a]の生成物を、塩酸水溶液中で塩化第一スズ二水和物と反応させて、式3の化合物を得る。この反応の媒体は水である。ニトロ化合物[式2の化合物]は、水中に入れられ、その中に、30%HCl中の塩化第一スズ溶液を攪拌しながら、約10〜60℃、好ましくは30〜35℃で約1時間かけて添加し、さらにこの温度で4時間撹拌する。反応の進行はTLCでモニターする。反応物は水で希釈し、約20〜25℃に冷却し、約1時間撹拌する。反応物をろ過し、水で洗浄し、含水%が0.5%未満になるまで乾燥することによって、8−アミノ−2−(1H−テトラゾール−5−イル)−4H−1−ベンゾピラン−4−オン塩酸塩が得られる。
【0023】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明は実施例により限定されるものではない。
【実施例】
【0024】
実施例1:8−ニトロ−2−(1H−テトラゾール−5−イル)−4H−1−ベンゾピラン−4−オンの製造
8−ニトロ−2−シアノ−4H−1−ベンゾピラン−4−オン(100gm)、ZnCl2(34.7gm)、アジ化ナトリウム(33gm)および水(1.20リットル)を、機械スターラー、コンデンサー、温度計、およびヒーター付油浴を備えた2リットルの多口フラスコに加えた。反応物を80まで加熱し、80〜85℃で約5時間撹拌した。反応の進行は、TLC/HPLCでモニターした。出発化合物[式1]を>99%まで転換した後、反応物を30℃に冷却した。亜硝酸ナトリウム(9.58gm)を25〜30℃で上記反応物に加えた。濃塩酸(72ml)を25〜30℃で30〜45分かけて滴下添加した。反応物を25〜30℃で30分間撹拌した。反応物をろ過し、100mlの1N HClで2回洗浄し、最後に100mlの水で2回洗浄した。
【0025】
ろ過生成物(即ち、8−ニトロ−2−(1H−テトラゾール−5−イル)−4H−1−ベンゾピラン−4−オン)を60℃で24時間乾燥した。HPLCで98%を越える純度を有し、重量は104gms[87%]であった。
【0026】
実施例2:8−アミノ−2−(1H−テトラゾール−5−イル)−4H−1−ベンゾピラン−4−オンの製造
8−ニトロ−2−(1H−テトラゾール−5−イル)−4H−1−ベンゾピラン−4−オン(100gm)、水(300ml)を、25−30℃で、機械スターラー、温度計、添加漏斗、および水浴を備えた1リットル容量の三口フラスコに加えた。30% HCl(500ml)中の塩化第一スズ二水和物(274gm)溶液を、30〜35℃で約1時間かけて添加した。
【0027】
添加が終わった後、反応物を30〜35℃で4時間撹拌した。反応物は、TLCを実施することにより、転換の完了を確認した。水(200ml)を30−35℃で約30分かけて添加した。反応物を25℃まで冷却し、20〜25℃で約1時間撹拌した。反応物をろ過し、ろ過残渣を水(100ml)で洗浄した。湿潤したろ過残渣を50〜55℃で18〜24時間、含水率が0.5%未満になるまで乾燥した。得られた生成物は、8−アミノ−2−(1H−テトラゾール−5−イル)−4H−1−ベンゾピラン−4−オン塩酸塩であった。HPLCで99%を越える純度を有し、重量は64〜67gm[62〜65%の収率]であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)8−ニトロ−2−シアノ−4H−1−ベンゾピラン−4−オンを、水中で亜鉛ハロゲン化物を用いてアジ化ナトリウムと反応させ、引き続き亜硝酸ナトリウムおよび塩酸と反応させ、8−ニトロ−2−(1H−テトラゾール−5−イル)−4H−1−ベンゾピラン−4−オンを分離し、水で洗浄して乾燥する工程;および
(b)約30%塩酸中の塩化第一スズ二水和物溶液を加えることにより前記工程(a)の8−ニトロ−2−(1H−テトラゾール−5−イル)−4H−1−ベンゾピラン−4−オンを反応させ、引き続き約3〜4時間撹拌し、水で希釈し、撹拌し、および固形物を分離し、引き続き乾燥して、8−アミノ−2−(1H−テトラゾール−5−イル)−4H−1−ベンゾピラン−4−オン塩酸塩を得る工程を含む、8−アミノ−2−(1H−テトラゾール−5−イル)−4H−1−ベンゾピラン−4−オン塩酸塩の製造方法。
【請求項2】
使用される亜鉛ハロゲン化物が塩化亜鉛または臭化亜鉛である、請求項1に記載の8−アミノ−2−(1H−テトラゾール−5−イル)−4H−1−ベンゾピラン−4−オン塩酸塩の製造方法。
【請求項3】
工程(a)における反応が、25℃〜100℃で実施される、請求項1に記載の8−アミノ−2−(1H−テトラゾール−5−イル)−4H−1−ベンゾピラン−4−オン塩酸塩の製造方法。
【請求項4】
段階(a)における反応が、好ましくは80℃から85℃で実施される、請求項1に記載の8−アミノ−2−(1H−テトラゾール−5−イル)−4H−1−ベンゾピラン−4−オン塩酸塩の製造方法。
【請求項5】
段階(b)における約30%塩酸中の塩化第一スズ二水和物溶液が30〜35℃で約1時間かけて加えられる、請求項1に記載の8−アミノ−2−(1H−テトラゾール−5−イル)−4H−1−ベンゾピラン−4−オン塩酸塩の製造方法。
【請求項6】
段階(b)において、約30%塩酸中の塩化第一スズの添加が終わった後に、反応物が30〜35℃で約3−4時間撹拌される、請求項1に記載の8−アミノ−2−(1H−テトラゾール−5−イル)−4H−1−ベンゾピラン−4−オン塩酸塩の製造方法。

【公開番号】特開2008−163026(P2008−163026A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−331615(P2007−331615)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(507421393)カディラ ファーマシューティカルズ リミテッド (7)
【Fターム(参考)】