説明

AAVベクター産生のための高効率ヘルパー系

【課題】有効なレベルで宿主細胞中で発現され得る改良されたAAVヘルパー機能構築物を提供すること
【解決手段】組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオンの産生においてAAVベクターを補足するために必要なAAV機能を発現し得る、アデノ随伴ウイルス(AAV)コード領域を有する、新規な核酸分子が提供される。この分子は、AAV p5プロモーター領域に実質的に相同であるヌクレオチド配列を特徴とし、このp5プロモーター領域は、野生型AAVゲノム内のAAV repコード領域に対してその天然の位置以外の部位でこの分子中に位置する。AAVヘルパー機能構築物、新規なAAVパッケージング細胞およびAAVプロデューサー細胞、AAVヘルパー構築物を使用してrAAVビリオンの産生のレベルを増加する方法、野生型AAVを顕著なレベルで混入して産生せずにrAAVビリオンを産生するための方法もまた提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター産生における使用のためのヘルパー機能系に関する。より詳細には、本発明は、AAVビリオンの産生に必要な必須のAAV repおよびcap機能の発現を提供するAAVヘルパー機能構築物に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
遺伝子送達は、後天性および遺伝性疾患の処置のために有望な方法である。遺伝子導入の目的のためのウイルスに基づく系(例えば、現在、この目的のための最も広く使用されるウイルスベクター系であるレトロウイルス系)が多数記載されてきた。種々のレトロウイルス系の記載については、例えば、米国特許第5,219,740号(特許文献1);MillerおよびRosman(1989)BioTechniques 7:980-990(非特許文献1);Miller,A.D.(1990)Human Gene Therapy 1:5-14(非特許文献2);Scarpaら(1991)Virology 180:849-852(非特許文献3);Burnsら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:8033-8037(非特許文献4);および、Boris-LawrieおよびTemin(1993)Cur.Opin.Genet.Develop.3:102-109(非特許文献5)を参照のこと。
【0003】
アデノ随伴ウイルス(AAV)系もまた、遺伝子送達のために使用されている。AAVは、Dependovirus属に属するヘルパー依存性DNAパルボウイルスである。AAVは、増殖性感染を生じるためには、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、またはワクシニアのいずれかの、関連のないヘルパーウイルスとの同時感染を必要とする。このような同時感染の非存在下では、AAVは、そのゲノムの宿主細胞染色体への挿入によって潜伏状態を確立する。ヘルパーウイルスによる次の感染は、組み込まれたコピーを救出し、これは次いで感染性のウイルスの子孫を産生するために複製し得る。AAVは広い宿主範囲を有し、そしてこのような細胞が適切なヘルパーウイルスで首尾良く同時感染される限り、任意の種由来の細胞中で複製し得る。従って、例えば、ヒトAAVは、イヌアデノウイルスで同時感染したイヌ細胞中で複製する。AAVは、ヒトまたは動物の疾患のいずれとも関連しておらず、そして組込みの際に宿主細胞の生物学的特性を変えないようである。AAVの総説については、例えば、BernsおよびBohenzky(1987)Advances in Virus Research(Academic Press,Inc.)32:243-307(非特許文献6)を参照のこと。
【0004】
AAVゲノムは、4681塩基を含む直鎖状の一本鎖DNA分子から構成される(BernsおよびBohenzky、同上)。ゲノムは、DNA複製起点としておよびウイルスのパッケージングシグナルとして、cisで機能する逆方向末端反復配列(ITR)を各末端に含む。ITRは約145bpの長さである。ゲノムの内部非反復部分は、それぞれAAV repおよびcap領域として知られる2つの大きなオープンリーディングフレームを含む。これらの領域は、ビリオンの複製およびパッケージングに関連するウイルスタンパク質をコードする。特に、少なくとも4つのウイルスタンパク質のファミリーが、見かけの分子量に従って命名された、AAV rep領域、Rep 78、Rep 68、Rep 52、およびRep 40から合成される。AAV cap領域は、少なくとも3つの部分、VP1、VP2、およびVP3をコードする。AAVゲノムの詳細な記載については、例えば、Muzyczka,N.(1992)Current Topics in Microbiol.and Immunol.158:97-129(非特許文献7)を参照のこと。
【0005】
組換えAAVビリオンの構築が記載されている。例えば、米国特許第5,173,414号(特許文献2)および同第5,139,941号(特許文献3);国際公開番号WO 92/01070(1992年1月23日公開)(特許文献4)およびWO 93/03769(1993年3月4日公開)(特許文献5);Lebkowskiら(1988)Molec.Cell.Biol.8:3988-3996(非特許文献8);Vincentら(1990)Vaccines 90(Cold Spring Harbor Laboratory Press)(非特許文献9);Carter,B.J.(1992)Current Opinion in Biotechnology 3:533-539(非特許文献10);Muzyczka,N.(1992)Current Topics in Microbiol.and Immunol.158:97-129(非特許文献7);およびKotin,R.M.(1994)Human Gene Therapy 5:793-801(非特許文献11)を参照のこと。
【0006】
組換えAAV(rAAV)ビリオンは、一般に、AAVベクタープラスミドおよびヘルパープラスミドを含む2つの構築物でトランスフェクトされている適切な宿主細胞で産生され、従って、それによって宿主細胞は、AAV複製およびパッケージング(AAVヘルパー機能)に必要なAAVタンパク質を発現し得る。次いで、宿主細胞は、適切なヘルパーウイルスで同時感染されて、必要なウイルスヘルパー機能を提供する。AAVヘルパー機能は、AAV repおよび/またはcapコード領域を含むがAAV ITRを欠くAAVヘルパープラスミドで宿主細胞をトランスフェクトすることによって提供され得る。従って、ヘルパープラスミドは、それ自体を複製もパッケージもし得ない。repコード領域を含む多くのベクターが公知であり、ATCC受託番号53222、53223、53224、53225、および53226を有する、米国特許第5,139,941号(特許文献3)に記載されるベクターが含まれる。同様に、AAV repのHHV-6ホモログを含むベクターを得る方法が、Thomsonら(1994)Virology 204:304-311(非特許文献12)に記載される。capコード領域を含む多数のベクターもまた記載されており、米国特許第5,139,941号(特許文献3)に記載されるベクターが含まれる。異種転写プロモーターに作動可能に連結されたAAV rep遺伝子を有するベクターでトランスフェクトされたヒト293細胞に由来するパッケージング細胞株が、1995年5月18日に公開された国際公開番号WO 95/13392(特許文献6)および1995年5月18日に公開された国際公開番号WO 95/13365(特許文献7)に記載されている。
【0007】
rAAVビリオン産生において、AAVベクタープラスミドは、AAV複製機能およびパッケージング機能を提供するAAV ITRに隣接する目的の機能的に関連のあるヌクレオチド配列(例えば、選択された遺伝子、アンチセンス核酸分子、リボザイムなど)を含むように操作され得る。AAVヘルパープラスミドおよびヌクレオチド配列を有するAAVベクタープラスミドの両方とも、一過性のトランスフェクションによってレシピエント細胞に導入される。次いで、トランスフェクトされた細胞を、アデノウイルスで感染し、これは、AAV repおよびcap領域の転写および翻訳を指示するヘルパープラスミドに存在するAAVプロモーターをトランス活性化する。目的のヌクレオチド配列を有するrAAVビリオンが形成され、そして調製物から精製され得る。
【0008】
AAVヘルパー機能をコードするヘルパープラスミドでトランスフェクトされている宿主細胞は、パッケージング細胞を含み、これは、トランスフェクションの効力によって、選択されたAAVベクタープラスミドから欠失した必要な機能を補足するためのAAV遺伝子産物を発現し得る。パッケージング細胞系を樹立するための多くの試みが行われてきた。特に、Mendelsonら(1988)Virology 166:154-165(非特許文献13)は、rep遺伝子を含むプラスミドでのHeLaまたは293細胞の安定なトランスフェクションを使用して、Repの短い形態の1つの低レベルの発現が可能な細胞株を報告した。正常AAVプロモーターから発現される組み込みAAV repおよびcap遺伝子を含む細胞株もまた記載されている。Vincentら(1990)Vaccines 90,Cold Spring Harbor Laboratory Press,353-359頁(非特許文献14)。
【0009】
宿主細胞ゲノムに安定に組み込まれるか、またはエピソームプラスミドとして維持されているかのいずれかのAAVベクターを含むパッケージング細胞株系を樹立するために、他のアプローチが試みられている。次いで、この細胞株をAAV rep、またはrepおよびcap遺伝子を含む構築物のような、AAV機能を補足するtransでトランスフェクトする。例えば、Lebkowskiの米国特許第5,173,414号(特許文献2)、および1995年5月18日に公開された国際公開番号WO 95/13365(特許文献7)および1995年5月18日に公開された国際公開番号WO 95/13392(特許文献6)を参照のこと。
【0010】
しかし、有用性が非常に限定された上記のパッケージング細胞系において、多くの問題に遭遇している。特に、このような系は、顕著なレベルの組換えAAVビリオンを生じ得なかった。どの特定の理論によっても結びつけられないこのような問題は、これらの細胞系において発現されたrep遺伝子産物によるいくつかの阻害効果の一部によるものであり得る。例えば、Labowら(1987)Mol.Cell.Biol.7:1320-1325(非特許文献15)およびTratschinら(1986)Mol.Cell.Biol.6:2884-2894(非特許文献16)を参照のこと。別の問題は、AAVベクターとヘルパープラスミド配列との間の組換え事象による、このようなパッケージング細胞系における、混入している野生型AAV粒子(例えば、複製−コンピテントAAV粒子)を顕著なレベルで産生することであった。Senapathyら(1984)J.Biol.Chem.259:4661-4666(非特許文献17)。
【特許文献1】米国特許第5,219,740号明細書
【特許文献2】米国特許第5,173,414号明細書
【特許文献3】米国特許第5,139,941号明細書
【特許文献4】国際公開第92/01070号パンフレット
【特許文献5】国際公開第93/03769号パンフレット
【特許文献6】国際公開第95/13392号パンフレット
【特許文献7】国際公開第95/13365号パンフレット
【非特許文献1】MillerおよびRosman、BioTechniques、1989年、7、p.980-990
【非特許文献2】Miller,A.D.、Human Gene Therapy、1990年、1、p.5-14
【非特許文献3】Scarpaら、Virology、1991年、180、p.849-852
【非特許文献4】Burnsら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、1993年、90、p.8033-8037
【非特許文献5】Boris-LawrieおよびTemin、Cur.Opin.Genet.Develop.、1993年、3、p.102-109
【非特許文献6】BernsおよびBohenzky、Advances in Virus Research(Academic Press,Inc.)、1987年、32、p.243-307
【非特許文献7】Muzyczka,N.、Current Topics in Microbiol.and Immunol.、1992年、158、p.97-129
【非特許文献8】Lebkowskiら、Molec.Cell.Biol.、1988年、8、p.3988-3996
【非特許文献9】Vincentら、Vaccines、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1990年、90
【非特許文献10】Carter,B.J.、Current Opinion in Biotechnology、1992年、3、p.533-539
【非特許文献11】Kotin,R.M.、Human Gene Therapy、1994年、5、p.793-801
【非特許文献12】Thomsonら、Virology、1994年、204、p.304-311
【非特許文献13】Mendelsonら、Virology、1988年、166、p.154-165
【非特許文献14】Vincentら、Vaccines、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1990年、p.90353-359
【非特許文献15】Labowら、Mol.Cell.Biol.、1987年、7、p.1320-1325
【非特許文献16】Tratschinら、Mol.Cell.Biol.、1986年、6、p.2884-2894
【非特許文献17】Senapathyら、J.Biol.Chem.、1984年、259、p.4661-4666
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、有効なレベルで宿主細胞中で発現され得る改良されたAAVヘルパー機能構築物を提供することが必要なままである。さらに、組換え野生型AAV粒子を顕著なレベルでまた混入して産生することなく、組換えAAV粒子の市販品として有意なレベルを産生し得るAAVパッケージング細胞系を提供することが必要なままである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、例えば、以下の手段を提供する。
(項目1)AAVヘルパー機能をコードする核酸分子であって、該分子が、
AAV repコード領域およびAAV capコード領域であって、該AAV repおよびcapコード領域が、その発現を指示する制御配列に作動可能に連結されている、コード領域;および
AAV p5プロモーター領域を含む第1のヌクレオチド配列であって、該第1のヌクレオチド配列は、該p5プロモーター領域が、野生型AAVゲノム中のrepコード領域に対してその天然の位置以外の部位に位置するように、該分子中に配置される、ヌクレオチド配列;
を含む、核酸分子。
(項目2)項目1に記載の核酸分子であって、ここで、前記第1のヌクレオチド配列が、図4(配列番号4)に示される、野生型AAV血清型2ゲノムの塩基対145〜309と実質的に相同である、核酸分子。
(項目3)項目1に記載の核酸分子であって、ここで、前記第1のヌクレオチド配列が、図4(配列番号4)に示される、野生型AAV血清型2ゲノムの塩基対145〜494と実質的に相同である、核酸分子。
(項目4)Flip Recombination Target(FRT)部位と相同である第2のヌクレオチド配列をさらに含む、項目1に記載の核酸分子。
(項目5)5’および3’に隣接するヌクレオチド配列をさらに含む項目1に記載の核酸分子であって、ここで、それぞれの該隣接する配列が、FRT部位に実質的に相同であり、そしてさらに、前記AAV repコード領域、前記AAV capコード領域、および前記AAV p5プロモータ領域を含む前記ヌクレオチド配列が、該隣接するヌクレオチド配列間にはさまれる、核酸分子。
(項目6)介在ヌクレオチド配列をさらに含む項目1に記載の核酸分子であって、ここで、該分子が5’から3’方向に所定の順で、AAV repコード領域、AAV capコード領域、該介在ヌクレオチド配列、およびAAV p5プロモーター領域を含むヌクレオチド配列を含む、核酸分子。
(項目7)項目6に記載の核酸分子であって、ここで、前記介在ヌクレオチド配列が、組換えAAVビリオン産生中に該核酸分子のAAV ITRとの組換えによって産生される分子のAAVビリオンへのパッケージングを妨げるために十分な長さを有する、核酸分子。
(項目8)前記介在ヌクレオチド配列が少なくとも500塩基対を含む、項目7に記載の核酸分子。
(項目9)項目1に記載の核酸分子を含むAAVヘルパー構築物。
(項目10)前記構築物がプラスミドを含む、項目9に記載のAAVヘルパー構築物。
(項目11)前記構築物がプラスミドpGN1909(ATCC受託番号69871)を含む、項目10に記載のAAVヘルパー構築物。
(項目12)項目4に記載の核酸分子を含むAAVヘルパー構築物。
(項目13)前記構築物がプラスミドを含む、項目12に記載のAAVヘルパー構築物。
(項目14)前記構築物がプラスミドpH8を含む、項目13に記載のAAVヘルパー構築物。
(項目15)項目7に記載の核酸分子を含む、AAVヘルパー構築物。
(項目16)前記構築物がプラスミドを含む、項目15に記載のAAVヘルパー構築物。
(項目17)前記構築物がプラスミドpW1909-1を含む、項目16に記載のAAVヘルパー構築物。
(項目18)選択可能な遺伝子マーカーをさらに含む、項目9に記載の構築物。
(項目19)前記選択可能な遺伝子マーカーが抗生物質耐性遺伝子を含む、項目18に記載の構築物。
(項目20)項目9に記載のAAVヘルパー構築物で適切な宿主細胞をトランスフェクトすることによって調製される、AAVパッケージング細胞。
(項目21)項目12に記載のAAVヘルパー構築物で適切な宿主細胞をトランスフェクトすることによって調製される、AAVパッケージング細胞。
(項目22)項目15に記載のAAVヘルパー構築物で適切な宿主細胞をトランスフェクトすることによって調製される、AAVパッケージング細胞。
(項目23)ウイルスヘルパー機能が発現されるときに組換えAAVビリオンを産生し得るAAVプロデューサー細胞であって、該プロデューサー細胞が、AAVベクターでトランスフェクトされている項目20に記載のパッケージング細胞を含む、AAVプロデューサー細胞。
(項目24)ウイルスヘルパー機能が発現されるときに、野生型AAVを顕著なレベルで混入して産生せずに組換えAAVビリオンを産生し得るAAVプロデューサー細胞であって、該プロデューサー細胞が、AAVベクターでトランスフェクトされている項目21に記載のパッケージング細胞を含む、AAVプロデューサー細胞。
(項目25)ウイルスヘルパー機能が発現されるときに、野生型AAVを顕著なレベルで混入して産生せずに組換えAAVビリオンを産生し得るAAVプロデューサー細胞であって、該プロデューサー細胞が、AAVベクターでトランスフェクトされている項目22に記載のパッケージング細胞を含む、AAVプロデューサー細胞。
(項目26)組換えAAVビリオンを産生する方法であって、以下の工程:
(a)AAVベクターを宿主細胞に導入する工程;
(b)項目9に記載のAAVヘルパー構築物が必須のAAV RepおよびCapポリペプチドを提供するように、該AAVヘルパー構築物を該宿主細胞に導入する工程;
(c)該宿主細胞でウイルスヘルパー機能を発現させる工程;および
(d)組換えAAVビリオンを産生するために該細胞を培養する工程
を包含する、方法。
(項目27)前記ウイルスヘルパー機能の発現が、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、およびワクシニアウイルスからなる群より選択されるウイルスで前記宿主細胞を感染することによって提供される、項目26に記載の方法。
(項目28)組換えAAVビリオンを産生する方法であって、以下の工程:
(a)AAVベクターを宿主細胞に導入する工程;
(b)項目12に記載のAAVヘルパー構築物が必須のAAV RepおよびCapポリペプチドを提供するように、該AAVヘルパー構築物を該宿主細胞に導入する工程;
(c)該宿主細胞でウイルスヘルパー機能を発現させる工程;および
(d)組換えAAVビリオンを産生するために該細胞を培養する工程
を包含する、方法。
(項目29)前記ウイルスヘルパー機能の発現が、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、およびワクシニアウイルスからなる群より選択されるウイルスで前記宿主細胞を感染することによって提供される、項目28に記載の方法。
(項目30)野生型AAVを顕著なレベルで混入して産生せずに組換えAAVビリオンを産生する方法であって、
(a)AAVベクターを宿主細胞に導入する工程;
(b)項目15に記載のAAVヘルパー構築物が必須のAAV RepおよびCapポリペプチドを提供するように、該AAVヘルパー構築物を該宿主細胞に導入する工程;
(c)該宿主細胞でウイルスヘルパー機能を発現させる工程;および
(d)組換えAAVビリオンを産生するために該細胞を培養する工程
を包含する、方法。
(項目31)前記ウイルスヘルパー機能の発現が、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、およびワクシニアウイルスからなる群より選択されるウイルスで前記宿主細胞を感染することによって提供される、項目30に記載の方法。
【0013】
(発明の要旨)
本発明は、AAV p5プロモーター領域およびAAVコード領域(例えば、AAV repおよびcapコード領域)に実質的に相同であるヌクレオチド配列を有する新規な核酸分子を提供する。p5プロモーター領域は、野生型AAVゲノムのAAV repコード領域に対して核酸分子中の正常位置以外の部位に配置され得る。(野生型(wt)AAVゲノムのrepコード領域に対して)正常な上流位置から効果的に移動されたp5プロモーター領域を有する本発明の分子は、いくつかの新規な特徴を示す。第1に、p5プロモーター領域の再位置づけによって、repコード領域が発現される場合、少なくとも長い形態のRep産物の産生の減衰が生じ得る。さらに、AAV p19およびp40プロモーターからの発現に必要なcis作用機能は、rep52/40およびcapが正常に発現されるように存在する。また、特定の分子では、rAAV産生中の混入している野生型AAV粒子の望ましくない産生が減少または除去され得る。
【0014】
本明細書中において、AAVコード領域(例えば、AAV repおよびcapコード領域)およびAAV p5プロモーター領域を含むヌクレオチド配列を有する核酸分子もまた提供され、ここで、このヌクレオチド配列は、p5プロモーターが、wt AAVゲノム中のAAV repコード領域に対して、正常な上流位置以外の部位に配置されるように、この分子中に配置される。
【0015】
上記の核酸分子は、1つまたは複数の追加のヌクレオチド配列をさらに含み得る−−ここで、単一の追加のヌクレオチド配列はAAVコード領域およびp5プロモーター領域の5’に配置されるか、または複数の追加のヌクレオチド配列はAAVコード領域およびp5プロモーター領域の隣に配置される。これらの追加のヌクレオチド配列は、酵母FLPリコンビナーゼ基質(例えば、Flip Recombination Target(FRT)部位)に実質的に相同である。5’および3’に隣接するFRT部位を供給(provision)することで、FLPリコンビナーゼ酵素の作用によるベクター構築物からの核酸分子の切り出しが可能になる。
【0016】
本発明はまた、AAV RepおよびCapポリペプチドを提供するように発現され得るAAVヘルパー構築物を提供する。このようなヘルパー構築物は、この構築物に含まれるAAVコード領域の転写および翻訳を指示し得る適切な制御エレメントに、本発明の核酸分子を作動可能に連結することによって形成され得る。本明細書中で提供されるAAVヘルパー構築物は、プラスミドまたは任意の他の適切なベクターを含み得、そして抗生物質耐性遺伝子などのような選択可能遺伝子マーカーを含むようにさらに構築され得る。1つの特定の実施態様では、AAVヘルパー構築物は、プラスミドpGN1909(ACTT受託番号69871)を含む。別の特定の実施態様では、AAVヘルパー構築物は、プラスミドpW1901-1またはプラスミドpH8のいずれかを含む。
【0017】
本発明は、AAVベクターがその中に存在しそしてパッケージング細胞がウイルスヘルパー機能を発現し得る場合、AAVプロデューサー細胞になり得るAAVパッケージング細胞をさらに提供する。本発明のAAVパッケージング細胞は、適切な宿主細胞中に本発明のAAVヘルパー構築物を導入することによって産生される。より詳細には、ヘルパー構築物は、公知の技法を使用して、適切な宿主細胞に一過性または安定にのいずれかにトランスフェクトされ得る。
【0018】
本明細書中では、ウイルスヘルパー機能がそこで発現される場合に、rAAVビリオンを産生し得るAAVプロデューサー細胞も提供される。本発明のプロデューサー細胞は、適切なAAVベクターでの本発明のAAVパッケージング細胞のトランスフェクションによって形成される。本発明によれば、AAVベクターは、一般に機能的AAV ITRに隣接する異種ヌクレオチド配列を含む。(次の形質導入のための)異種ヌクレオチド配列を含むrAAVビリオンの産生は、AAVヘルパー構築物に存在するAAVヘルパー機能をトランス活性化するために、このプロデューサー細胞にウイルスヘルパー機能を導入することによって達成され得る。
【0019】
本発明は、rAAVビリオンを産生する方法をさらに提供し、これは以下の工程を包含する:適切な宿主細胞にAAVベクターを導入する工程;必須のAAVヘルパー機能を発現するために、ここで提供されるものから選択されたAAVヘルパー構築物を上記宿主細胞に導入する工程;この宿主細胞中でウイルスヘルパー機能を発現する工程;およびrAAVビリオンを産生するために上記の細胞を培養する工程。AAVベクターおよびAAVヘルパー構築物は、当業者に公知の技法を使用して、連続的または同時のいずれかで、この宿主細胞中にトランスフェクトされ得る。ウイルスヘルパー機能の発現は、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、およびワクシニアウイルスの群から選択される適切なヘルパーウイルスで宿主細胞を感染させることによって提供され得る。ウイルスヘルパー機能は、AAV repおよびcap領域の転写および翻訳を指示するAAVヘルパー構築物に存在するAAVプロモーターをトランス活性化する。従って、選択された異種ヌクレオチド配列を有するrAAVビリオンが形成され、そして公知の方法を使用して調製物から精製され得る。
【0020】
本発明のこれらおよび他の実施態様は、本明細書の開示によって当業者には容易に想到する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(発明の詳細な説明)
本発明の実施は、他に指示がなければ、当該分野の技術範囲内のウイルス学、微生物学、分子生物学、および組換えDNA技法の従来の方法を使用する。このような技法は、文献に十分に説明される。例えば、Sambrookら Molecular Cloning: A Laboratory Manual(最新版);DNA Cloning: A Practical Approach,第IおよびII巻(D.Glover編);Oligonucleotide Synthesis(N.Gait編,最新版);Nucleic Acid Hybridization(B.HamesおよびS.Higgins編,最新版);Transcription and Translation(B.HamesおよびS.Higgins編,最新版);CRC Handbook of Parvoviruses,第IおよびII巻(P.Tijessen編);Fundamental Virology,第2版,第IおよびII巻(B.N.FieldsおよびD.M.Knipe編)を参照のこと。
【0022】
本明細書中で引用したすべての刊行物、特許、および特許出願は、上記または下記のいずれであれ、その全体が参考として本明細書に援用される。
【0023】
本明細書および添付の請求の範囲で使用される場合、単数形の「a」、「an」、および「the」は、内容が明確に他を指示しない限り、複数の表示を含む。
【0024】
(A.定義)
本発明を記載する際に、以下の用語が用いられ、そして以下に示すように定義されることが意図される。
【0025】
「遺伝子移入」または「遺伝子送達」は、宿主細胞に外来DNAを確実に挿入するための方法または系をいう。このような方法は、組み込まれていない移入されたDNAの一過性発現、移入されたレプリコン(例えば、エピソーム)の染色体外複製および発現、または宿主細胞のゲノムDNAへの移入された遺伝物質の組込みを生じ得る。遺伝子移入は、後天性疾患および遺伝性疾患の処置への独特のアプローチを提供する。多くの系が、哺乳動物細胞への遺伝子移入について開発されている。例えば、米国特許第5,399,346号を参照のこと。
【0026】
「ベクター」とは、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、染色体、ウイルス、ビリオンなどのような、任意の遺伝エレメントを意味し、これは適切な制御エレメントと結合した場合に複製可能であり、そして細胞間で遺伝子配列を移入し得る。従って、この用語はクローニングビヒクルおよび発現ビヒクル、ならびにウイルスベクターを包含する。
【0027】
「アデノ随伴ウイルス逆方向末端反復配列」または「AAV ITR」とは、AAVゲノムの各末端で見出される当該分野で認識されるパリンドローム領域を意味し、これは、DNAの複製起点としておよびウイルスのパッケージングシグナルとして、cisで一緒に機能する。AAV ITRは、AAV repコード領域とともに、哺乳動物細胞からの効率的な切り出しおよび救出、ならびに2つの隣接するITR間にはさまれたヌクレオチド配列の哺乳動物細胞ゲノムへの組込みを提供する。
【0028】
AAV ITR領域のヌクレオチド配列は公知である。例えば、AAV-2配列についてはKotin,R.M.(1994)Human Gene Therapy 5:793-801;Berns,K.I.「パルボウイルス科およびその複製」Fundamental Virology,第2版,(B.N.FieldsおよびD.M.Knipe編)を参照のこと。本明細書で使用される場合、「AAV ITR」は、示された野生型ヌクレオチド配列を有する必要はないが、例えば、ヌクレオチドの挿入、欠失、または置換によって改変され得る。さらに、AAV ITRは、AAV-1、AAV-2、AAV-3、AAV-4、AAV-5、AAVX7などを含むが限定されない、いくつかのAAV血清型のいずれかに由来し得る。さらに、AAVベクターにおいて、選択されたヌクレオチド配列に隣接する5’および3’ ITRは、これらが意図するように、すなわち、宿主細胞ゲノムまたはベクターから目的の配列の切り出しおよび救出を可能にするように、およびrep遺伝子が細胞中に(同じまたは異なるベクターのいずれかに)存在する場合にレシピエント細胞ゲノムへの異種配列の組込みを可能にするように機能する限り、必ずしも同一である必要がないかまたは同じAAV血清型もしくは単離株に由来する必要はない。
【0029】
「AAVベクター」とは、AAV-1、AAV-2、AAV-3、AAV-4、AAV-5、AAVX7などを含むが限定されないアデノ随伴ウイルス血清型に由来するベクターを意味する。AAVベクターは、全体または一部で欠失した1つ以上のAAV野生型遺伝子、好ましくはrepおよび/またはcap遺伝子を有し得るが、機能的な隣接するITR配列を保持し得る。機能的ITR配列は、AAVビリオンの救出、複製、およびパッケージングに必要である。従って、AAVベクターは、ウイルスの複製およびパッケージングにcisで必要とされる少なくともこれらの配列(例えば、機能的ITR)を含むように、本明細書中で定義される。ITRは、野生型ヌクレオチド配列である必要はなく、そして、配列が機能的救出、複製、およびパッケージングを提供する限り、例えばヌクレオチドの挿入、欠失、または置換によって変更され得る。
【0030】
AAVベクターは、機能的AAV ITRとともに両末端(5’および3’)に隣接した1つ以上の異種ヌクレオチド配列を含むように、当該分野で公知の組換え技法を使用して構築され得る。本発明の実施において、AAVベクターは、少なくとの1つのAAV ITRならびに異種ヌクレオチド配列の上流に位置する適切なプロモーター配列および異種配列の下流に位置する少なくとも1つのAAV ITRを含み得る。5’および3’ のITRは、これらが意図されるように機能する限り、必ずしも同一である必要がないかまたは同じAAV単離株に由来する必要はない。
【0031】
AAVベクターに含まれる選択された異種ヌクレオチド配列は、欠陥があるか、もしくは、レシピエント細胞ゲノムから欠落しているタンパク質をコードするか、または所望の生物学的または治療的な効果(例えば、抗ウイルス機能)を有する非天然タンパク質をコードする任意の所望の遺伝子を含み得るか、あるいはこの配列は、アンチセンス機能またはリボザイム機能を有する分子に対応し得る。適切な遺伝子は、炎症性疾患、自己免疫疾患、慢性疾患、および感染性疾患(AIDS、ガン、神経性疾患、心血管系疾患、高コレステロール血症(hypercholestemia)のような異常を含む);種々の血液の異常(種々の貧血、地中海貧血、および血友病を含む);遺伝的欠損(例えば、嚢胞性線維症、ゴーシェ病、アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症、気腫など)の処置に使用される遺伝子を包含する。ガンおよびウイルス性疾患に対するアンチセンス治療に有用である多くのアンチセンスオリゴヌクレオチド(例えば、mRNAの翻訳開始部位(AUGコドン)の周囲の配列に相補的な短いオリゴヌクレオチド)は当該分野で記載されている。例えば、Hanら(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:4313-4317;Uhlmannら(1990)Chem.Rev.90:543-584;Heleneら(1990)Biochim.Biophys.Acta.1049:99-125;Agarwalら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:7079-7083;およびHeikkilaら(1987)Nature 328:445-449を参照のこと。適切なリボザイムの議論については、例えば、Cechら(1992)J.Biol.Chem.267:17479-17482およびGoldbergらに対する米国特許第5,225,347号を参照のこと。
【0032】
AAVベクターはまた、制御配列(例えば、プロモーターおよびポリアデニル化部位)、ならびに選択マーカーまたはレポーター遺伝子、エンハンサー配列、および転写の誘導を可能にする他の制御エレメントを含み得る。このような制御エレメントは、以下にさらに十分に記載される。このようなAAVベクターは、当該分野で周知の技法を使用して構築され得る。例えば、米国特許第5,173,414号;国際公開番号WO 92/01070(1992年1月23日公開)およびWO 93/03769(1993年3月4日公開);Lebkowskiら(1988)Molec.Cell.Biol.8:3988-3996;Vincentら(1990)Vaccines 90(Cold Spring Harbor Laboratory Press);Carter,B.J.(1992)Current Opinion in Biotechnology 3:533-539;Muzyczka,N.(1992)Current Topics in Microbiol.and Immunol.158:97-129;Kotin,R.M.(1994)Human Gene Therapy 5:793-801;ShellingおよびSmith(1994)Gene Therapy 1:165-169;およびZhouら(1994)J.Exp.Med.179:1867-1875を参照のこと。
【0033】
「AAVヘルパー機能」とは、次には増殖性AAV複製にtransで機能し得るAAV遺伝子産物を提供するように発現され得る、AAV由来コード配列をいう。従って、AAVヘルパー機能は、主なAAVオープンリーディングフレーム(ORF)(repおよびcap)の1つまたは両方を含む。Rep発現産物は、AAVのDNA複製起点の認識、結合、およびニッキング;DNAヘリカーゼ活性;ならびにAAV(または他の異種)プロモーターからの転写の調節を含む多くの機能を有することが示されている。Cap発現産物は、必要なパッケージング機能を供給する。AAVヘルパー機能は、本明細書中では、AAVベクターから欠落している、transでの相補的AAV機能に使用される。
【0034】
用語「ウイルスヘルパー機能」とは、AAVのライフサイクルの種々の局面の間に必要な因子の供給(provision)をいう。AAVは、増殖性AAV感染を生じるためには、関連のないヘルパーウイルス(例えば、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、またはワクシニアウイルス)からのこのようなヘルパー機能を必要とする。特に、アデノウイルスが、AAVプロモーター発現、AAVメッセンジャーRNA安定性、およびAAV翻訳に必要とされる因子を供給することが証明されている。例えば、Muzyczka,N.(1992)Curr.Topics.Microbiol.and Immun.158:97-129を参照のこと。このような機能の非存在下で、AAVは、宿主細胞染色体へのそのゲノムの挿入によって潜伏状態を樹立する。ウイルスヘルパー機能の産生は、組み込まれたコピーを救出し、このコピーは次いで複製して感染性ウイルス子孫を産生し得る。ウイルスヘルパー機能は、適切なヘルパーウイルスでの細胞の感染によって提供され得る。
【0035】
用語「AAVヘルパー構築物」とは、一般的に、AAVベクターから欠失したAAV機能を提供するヌクレオチド配列を含む核酸分子をいい、目的のヌクレオチド配列の送達のための形質導入ベクターを産生するために使用される。AAVヘルパー構築物は、通常、溶菌性AAV複製に必要である、欠落しているAAV機能を相補するためにAAV repおよび/またはcap遺伝子の一過性発現を提供するために使用される;しかし、ヘルパー構築物は、AAV ITRを欠き、そしてそれ自体を複製もパッケージもし得ない。AAVヘルパー構築物は、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、ウイルス、またはビリオンの形態であり得る。多くのAAVヘルパー構築物が記載されている(例えば、RepおよびCap発現産物の両方をコードする通常使用されるプラスミドpAAV/AdおよびpIM29+45)。例えば、Samulskiら(1989)J.Virol.63:3822-3828;およびMcCartyら(1991)J.Virol.65:2936-2945を参照のこと。Repおよび/またはCap発現産物をコードする多くの他のベクターが記載されている。例えば、米国特許第5,139,941号を参照のこと。
【0036】
「組換えウイルス」とは、例えば、粒子への異種核酸構築物の付加または挿入によって、遺伝的に改変されているウイルスを意味する。
【0037】
「AAVビリオン」とは、例えば、野生型(wt)AAVウイルス粒子(AAVカプシドタンパク質コートと結合した直線状の一本鎖AAV核酸ゲノムを含む)、または以下に記載のような組換えAAVウイルス粒子のような、完全なウイルス粒子を意味する。これに関して、例えば、「センス」鎖または「アンチセンス」鎖のいずれかの相補的なセンス鎖の一本鎖AAV核酸分子は、任意の1つのAAVビリオンにパッケージされ得、そして両鎖は等しく感染性である。
【0038】
「組換えAAVビリオン」または「rAAVビリオン」は、本明細書中では、両側にAAV ITRが隣接している、目的の異種ヌクレオチド配列をカプシド化しているAAVタンパク質外皮から構成される感染性の複製欠損性ウイルスとして定義される。
【0039】
用語「プロモーター領域」は、DNA調節配列を含むヌクレオチド領域をいうための通常の意味で本明細書中において使用され、ここで、この調節配列は、RNAポリメラーゼを結合し得、そして下流(3’方向)のコード配列の転写を開始し得る遺伝子に由来する。プロモーター領域内のあるコンセンサス配列は、RNAポリメラーゼの結合に特に重要であると思われ、そして一般的にCATボックスおよびTATAボックスと呼ばれる。プロモーター領域は、遺伝子コード領域の始まりから約40ヌクレオチド〜約5ヌクレオチド上流に広がり、CATボックスおよびTATAボックスは、ヌクレオチド配列の短い範囲としてプロモーター領域内に位置する。TATAボックスは、転写因子の結合部位を含むが、RNAポリメラーゼ酵素の結合部位を含まない。
【0040】
「AAV p5プロモーター領域」は、AAV-1、AAV-2、AAV-3、AAV-4、AAV-5、AAVX7などを含むが限定されないAAV血清型から単離されたp5プロモーター領域に対して同一性を有するプロモーター配列、ならびに(以下に定義されるように)それと実質的に相同であり、そして機能的に等価であるプロモーター配列の両方を包含する。AAV p5プロモーターは、長い形態のRepの発現を指示し、そして記載および特徴づけられている。例えば、Lusbyら(1982)J.Virol.41:518-526;Laughlinら(1979)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 76:5567-5571;Greenら(1980a)J.Virol.36:79-92;Greenら(1980b)Cell 1:231-242を参照のこと。本発明を定義する目的のために、wt AAVゲノムでは、 AAV p5プロモーター領域は、repコード配列の転写開始部位の5’末端で結合し、そしてrep転写開始部位がp5 TATAボックスから約25bp下流(3’方向)である場合には、「その天然の位置に」あり、そのためrep ATGはp5 TATAボックスから約60bp下流(3’方向)である。wt AAV p5プロモーターは、上流(5’方向)に広がり、バックグランドより上の検出可能なレベルで長い形態のRepの転写を開始するために必要な最小数の塩基またはエレメントを含む。
【0041】
AAV p5プロモーターが、記載されている特定の核酸分子においてrepコード配列に対してその天然の位置から移動している場合、AAV p5プロモーター領域は「その天然の位置以外」に位置する。例えば、AAV p5プロモーターTATAボックスが同じ分子においてrep転写開始部位の25bp上流(5’方向)でないように、AAV p5プロモーター領域が核酸分子に位置する場合、AAV p5プロモーター領域は「その天然の位置以外に位置する」。
【0042】
「AAV repコード領域」とは、ウイルスゲノムを複製するためにひとまとめにして必要とされるウイルスの複製タンパク質をコードする、当該分野で認識される、AAVゲノムの領域、またはその機能的ホモログ(例えばAAV-2 DNA複製を媒介することも知られているヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)rep遺伝子(Thomsonら(1994)Virology 204:304-311))を意味する。従って、repコード領域は、AAV Rep 78、Rep 68、Rep 52、およびRep 40をコードする遺伝子、またはその機能的ホモログを少なくとも包含する。本明細書中で使用される場合、repコード領域は、AAV p5プロモーター領域を含まない。AAV repコード領域のさらなる記載については、例えば、Muzyczka,N.(1992)Current Topics in Microbiol.and Immunol.158:97-129;およびKotin,R.M.(1994)Human Gene Therapy 5:793-801を参照のこと。repコード領域は、上記のAAV血清型のような任意の血清型に由来し得る。この領域は野生型遺伝子のすべてを含む必要はないが、AAVベクターとともに宿主細胞に存在する場合に、rep遺伝子の存在が十分な複製機能を提供する限り、例えば、ヌクレオチドの挿入、欠失、または置換によって改変され得る。
【0043】
用語「短い形態のRep」とは、AAV repコード領域のRep 52およびRep 40の遺伝子産物をいい、その機能的ホモログを含む。短い形態のRepは、記載および特徴づけられているAAV p19プロモーターの指示下で発現される。例えば、Lusbyら、Laughlinら、Greenら(1980a)、およびGreenら(1980b)、上記を参照のこと。
【0044】
用語「長い形態のRep」とは、AAV repコード領域のRep 78およびRep 68の遺伝子産物をいい、その機能的ホモログを含む。長い形態のRepは、普通は、記載および特徴づけられているAAV p5プロモーターの指示下で発現される。Lusbyら、Laughlinら、Greenら(1980a)、およびGreenら(1980b)、上記を参照のこと。
【0045】
「AAV capコード領域」とは、ウイルスゲノムをパッケージングするためにひとまとめにして必要とされる、ウイルスのコートタンパク質をコードする、AAVゲノムの当該分野で認識される領域を意味する。従って、capコード領域は、コートタンパク質VP1、VP2、およびVP3をコードする遺伝子を少なくとも包含する。capコード領域のさらなる記載については、例えば、Muzyczka,N.(1992)Current Topics in Microbiol.and Immunol.158:97-129;およびKotin,R.M.(1994)Human Gene Therapy 5:793-801を参照のこと。本明細書中で使用される場合、AAV capコード領域は、上記のように、任意のAAV血清型に由来し得る。この領域は野生型cap遺伝子のすべてを含む必要はないが、AAVベクターとともに宿主細胞中に存在する場合に遺伝子が十分なパッケージング機能を提供する限り、例えば、ヌクレオチドの挿入、欠失、または置換によって改変され得る。
【0046】
「AAVコード領域」とは、AAV repおよびcapコード領域に対応する2つの主なAAVオープンリーディングフレームを含む核酸分子(例えば、野生型AAVゲノムの塩基対310〜4,440に実質的に相同なヌクレオチド配列を含む核酸分子)を意味する。例えば、Srivastavaら(1983)J.Virol.45:555-564;Hermonatら(1984)J.Virol.51:329-339;およびTratschinら(1984)J.Virol.51:611-619を参照のこと。従って、本発明の目的のためには、「AAVコード領域」は、AAV p5プロモーター領域に対応する配列を含まず、そしてAAV ITRを含まない。
【0047】
「フリップ組換え標的(Flip Recombination Target)部位」(FRT)とは、部位特異的酵母フリップリコンビナーゼ系において基質として作用するヌクレオチド配列をいう。FRT組換え領域は、2-μm環(Saccharomyces cerevisiae中に通常存在するプラスミド)の599-bp長逆方向反復配列内の約65塩基対(bp)のセグメントにマップされている。組換えを担う酵素(FLP)は2-μm環によってコードされ、そしてヒト細胞において高レベルで発現されている。FLPは、分子の逆方向反復配列内の組換えを触媒して分子内逆位を引き起こす。FLPはまた、2-μm環反復配列を含むプラスミド間の効率的な組換えを、非常に高い効率および特異性で促進し得る。例えば、Jayaram(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:5875-5879;およびO’Gorman(1991)Science 251:1351-1355を参照のこと。「最小FRT部位」(例えば、最小FLP基質)は、当該分野で記載されており、そして本明細書中では、65-bp FRT領域内に位置する13-bpの二回対称+8-bpのコアとして定義される。Jayaramら,上記。FRT部位およびFLP発現プラスミドは両方とも、Stratagene(San,Diego,CA)から市販されている。
【0048】
「トランスフェクション」とは、細胞による外来DNAの取り込みをいい、そして外因性DNAが細胞膜の内側に導入されている場合に、細胞は「トランスフェクト」されている。このように、外因性DNAは、細胞のゲノムを構成する染色体DNAに組み込まれる(共有結合する)ようになってもならなくてもよい。多くのトランスフェクション技法が当該分野で公知である。例えば、Grahamら(1973)Virology,52:456、Sambrookら(1989)Molecular Cloning,a laboratory manual,Cold Spring Harbor Laboratories,New York、Davisら(1986)Basic Methods in Molecular Biology,Elsevier、およびChuら(1981)Gene 13:197を参照のこと。これらの技法のいずれかを使用して、適切な宿主細胞内に1つ以上の外因性DNA部分(例えば、AAVヘルパー構築物、AAVベクタープラスミド、および他のベクター構築物)を導入し得る。一般的に、外因性DNAは、細胞の転写機構および複製機構に曝されるために、レシピエント細胞の原形質膜を横断しなければならない。得られる細胞は、外因性核酸分子で一過性にトランスフェクトされ得るか、または安定にトランスフェクトされ得る−−ここで、核酸分子は、宿主細胞ゲノムに共有結合されるか、または子孫細胞に伝えられ得る(例えば、十分な割合で染色体外複製が可能である)エピソーム性ユニットとして維持および複製され得る。このようなトランスフェクション方法は当該分野で記載されており、これらは、リン酸カルシウム共沈殿(Grahamら(1973)Virol.52:456-467)、培養した細胞中への直接マイクロインジェクション(Capecchi,M.R.(1980)Cell 22:479-488)、エレクトロポレーション(Shigekawaら(1988)BioTechniques 6:742-751)、リポソーム媒介遺伝子移入(Manninoら(1988)BioTechniques 6:682-690)、脂質媒介トランスフェクション(Felgnerら(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:7413-7417)、および高速度マイクロプロジェクタイルを使用する核酸送達(Kleinら(1987)Nature 327:70-73)を包含する。
【0049】
「一過性トランスフェクション」とは、トランスフェクトされた細胞のゲノム内に外因性DNAが組み込まれない場合、例えば、エピソームDNAがmRNAに転写されそしてタンパク質に翻訳される場合をいう。
【0050】
核酸構築物が細胞膜の内側に導入され、そしてAAVコード領域が娘細胞によって受け継がれ得る場合、細胞は、AAVコード領域を含む核酸構築物で「安定にトランスフェクト」されている。
【0051】
用語「宿主細胞」とは、例えば、微生物、酵母細胞、昆虫細胞、および哺乳動物細胞を示し、AAVヘルパー構築物、AAVベクタープラスミド、または他の移入DNAのレシピエントとして使用され得、または使用されており、そしてトランスフェクトされている元の細胞の子孫を含む。従って、本明細書中で使用される場合、「宿主細胞」とは、一般的に、上記のような方法を使用して外因性DNA配列でトランスフェクトされている細胞をいう。単一の親細胞の子孫が、自然変異、偶発的変異、または意図的変異によって、元の親と形態においてまたはゲノムDNA相補物もしくは全DNA相補物において必ずしも完全に同一でないかもしれないことが理解される。
【0052】
本明細書で使用される場合、用語「細胞株」とは、インビトロで連続的または延長した増殖および分裂が可能である細胞の集団をいう。しばしば、細胞株は、単一の始原細胞に由来するクローン集団である。自然変化または誘導された変化が、このようなクローン集団の保存または移入の間に核型に生じ得ることは、当該分野でさらに知られている。従って、言及される細胞株に由来する細胞は、先祖細胞または先祖培養物と正確に同一でないかもしれず、そして言及される細胞株はこのような変異体を含む。
【0053】
「パッケージング細胞」とは、異種ヌクレオチド配列での安定的または一過性のトランスフェクションによって、AAVヘルパー構築物を含む核酸分子を有する宿主細胞をいい、ここで、この構築物は、増殖性AAV複製がtransで提供され得るAAVヘルパー機能の一過性発現を提供し得る。AAVヘルパー機能の発現は、構成的または例えば、ヘルパー機能が誘導性プロモーターの制御下である場合、誘導性のいずれかであり得る。
【0054】
「プロデューサー細胞」とは、AAVヘルパー機能での細胞のトランスフェクションの前に、その次に、または同時にのいずれかで、AAVベクターで安定にまたは一過性にトランスフェクトされているパッケージング細胞をいう。このように、プロデューサー細胞は、cisで複製およびパッケージングのために提供されるAAV配列(例えば、機能的ITR配列)、ならびにAAVベクターから欠落しているヘルパー機能をコードしそしてtransで複製およびパッケージングのために提供されるAAV配列を含む。従って、必須のウイルスヘルパー機能の存在下、プロデューサー細胞は、次の遺伝子送達のための感染性ウイルス粒子に、トランスフェクトしたウイルスDNA(例えば、目的の組換えヌクレオチド配列を含むAAVウイルスベクター)をパッケージングするために必要であるAAVポリペプチドをコードし得る。
【0055】
上で定義されるように、ウイルスヘルパー機能は、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、またはワクシニアウイルスのような1つ以上のヘルパーウイルス部分と一緒のその感染または重感染によって、プロデューサー細胞に導入され得る。
【0056】
用語「異種」は、コード配列および制御配列のような核酸配列に関する場合、通常ともに連結されていない、および/または通常特定の細胞と結合していない配列を示す。従って、核酸構築物の「異種」領域は、天然では他の分子に関して見出されない別の核酸分子の内の、またはこれに結合した核酸のセグメントである。例えば、構築物の異種領域は、天然ではコード配列に関して見出されない配列に隣接したコード配列を含み得た。異種コード配列の別の例は、コード配列自体が天然で見出されない場合の構築物である(例えば、本来の遺伝子とは異なるコドンを有する合成配列)。同様に、細胞内に通常は存在しない構築物で形質転換した宿主細胞は、本発明の目的のために異種であると考えられる。対立遺伝子変異または天然に存在する変異事象は、本明細書で使用される場合、異種DNAを生じない。
【0057】
「コード配列」または特定のポリペプチドを「コードする」配列は、適切な調節配列の制御下におかれる場合、インビトロまたはインビボでポリペプチドに転写され(DNAの場合)そして翻訳される(mRNAの場合)核酸配列である。コード配列の境界は、5’(アミノ)末端での開始コドンおよび3’(カルボキシ)末端での翻訳停止コドンによって決定される。コード配列は、原核生物または真核生物のmRNAからのcDNA、原核生物または真核生物のDNAからのゲノムDNA配列、およびさらに合成DNA配列を包含し得るが、これらに限定されない。転写終結配列は、通常コード配列の3’側に位置する。
【0058】
用語DNA「制御配列」とは、プロモーター配列、ポリアデニル化シグナル、転写終結配列、上流調節ドメイン、複製起点、内部リボソーム侵入部位(「IRES」)、エンハンサーなどを集合的にいい、これはレシピエント細胞においてコード配列の複製、転写、および翻訳を集合的に提供する。選択された遺伝子が適切なレシピエント細胞において複製、転写、および翻訳され得る限り、これらの制御配列のすべてが必ずしも存在する必要はない。
【0059】
「作動可能に連結された」とは、エレメントの配置をいい、ここでこのように記載された成分はそれらの通常の機能を実行するように配置される。従って、コード配列に作動可能に連結された制御配列は、コード配列の発現をもたらし得る。制御配列は、その発現を指示するように機能する限り、コード配列と隣接する必要はない。従って、例えば、介在する翻訳されないが転写される配列が、プロモーター配列とコード配列との間に存在し得、そしてこのプロモーター配列は、依然として、コード配列に「作動可能に連結された」と考えられ得る。
【0060】
ヌクレオチド配列についていう場合、「単離された」とは、指示された分子が、同じタイプの他の生物学的巨大分子の実質的な不在下で存在することを意味する。従って、「特定のポリペプチドをコードする単離された核酸分子」は、対象のポリペプチドをコードしない他の核酸分子を実質的に含まない核酸分子をいう;しかし、この分子は、組成物の基本的特徴に有害な影響を与えないいくつかの追加の塩基または部分を含み得る。
【0061】
本出願の全体を通して特定の核酸分子におけるヌクレオチド配列の相対位置を記載する目的で、例えば、特定のヌクレオチド配列が別の配列に関して「上流」、「下流」、「3’」、または「5’」に配置されると記載される場合、これは、当該分野において慣習的にそのようにいわれる、DNA分子の「センス」鎖または「コード」鎖における配列の位置であると理解される。
【0062】
「相同性」とは、2つのポリヌクレオチド間、または2つのポリペプチド部分間の同一性のパーセントをいう。1つの部分の配列と別の部分の配列との間の対応は、当該分野で公知の技法によって決定され得る。例えば、相同性は、配列情報を整列させること、および容易に入手可能なコンピュータプログラムを使用することによる、2つのポリペプチド分子間の配列情報の直接比較によって決定され得る。あるいは、相同性は、相同領域間に安定な二重鎖を形成する条件下でのポリヌクレオチドのハイブリダイゼーション、その後の1または複数の一本鎖特異的ヌクレアーゼでの消化、および消化したフラグメントのサイズ決定によって決定され得る。上記の方法を使用して決定したときに、少なくとも約80%、好ましくは少なくとも約90%、および最も好ましくは少なくとも約95%のヌクレオチドまたはアミノ酸が、規定の長さの分子にわたってマッチする場合、2つのDNAまたは2つのポリペプチド配列は互いに「実質的に相同」である。
【0063】
所定のポリペプチドの「機能的ホモログ」または「機能的等価物」は、本来のポリペプチド配列に由来する分子、ならびに、所望の結果を達成するように参照分子と同様の様式で機能する、組換えにより産生されたか、または化学的に合成されたポリペプチドを包含する。従って、AAV Rep 52またはRep 40の機能的ホモログは、これらのポリペプチドの誘導体およびアナログを包含する(これらには、複製活性が残存する限り、その内部またはアミノ末端もしくはカルボキシ末端で生じる、任意の単一または複数のアミノ酸の付加、置換、および/または欠失が含まれる)。
【0064】
所定のAAVプロモーター領域の「機能的ホモログ」または「機能的等価物」は、AAV血清型に由来するプロモーター、ならびに、所望の結果を達成するように参照プロモーター領域と同様の様式で機能する、組換えにより産生されたかまたは化学的に合成されたポリヌクレオチドを包含する。従って、AAV p5プロモーター領域の機能的ホモログは、このような制御配列の誘導体およびアナログを包含する(これらには、プロモーターホモログがバックグランドより上に検出可能なレベルで長い形態のRepの転写を開始するために十分な最小数の塩基またはエレメントを保持する限り、プロモーター領域内で生じる任意の単一または複数のヌクレオチド塩基の付加、置換、および/または欠失が含まれる)。
【0065】
(B.一般的方法)
本発明の主な目的は、続いて遺伝子移入方法に使用され得る組換えAAV(rAAV)ビリオンの産生に有用な改良されたAAVヘルパー系を提供することである。特に、本発明の目的は、市販で有用なレベルの組換えAAVビリオンの増強された産生を提供するために適切なパッケージング細胞に導入され得るAAVヘルパー構築物を開発することである。
【0066】
1つの特定の実施態様では、AAV repおよびcapコード領域ならびにAAV p5プロモーター領域を有する核酸分子が提供され、このプロモーター領域は、野生型(wt)AAVゲノム中のAAV repコード領域に対してその正常な位置以外の部位で本発明の分子に置かれる。repおよびcapコード領域は、2つの隣接する主要なオープンリーディングフレームとして分子中に配置され得、wt AAVゲノム中のそのコード領域の正常配置のような5’から3’方向での所定の順にそれぞれ配置され得る。例えば、BernsおよびBohenzky(1987)Advances in Virus Research(Academic Press,Inc.)32:243-307;Tratschinら(1984)J.Virol.51:611-619;およびSrivastavaら(1983)J.Virol.45:555-564を参照のこと。
【0067】
あるいは、repおよびcapコード領域は、ヌクレオチドに介在することによって分離される2つの隣接しない領域として核酸分子中に配置され得、そしてrepコード領域がrep52/40の発現を指示し得る少なくとも1つのプロモーター(例えば、AAV p19プロモーター領域に実質的に相同なヌクレオチド配列)を含む限り、任意の順で配置され得、そしてcapコード領域は、Cap発現産物の発現を指示し得る少なくとも1つのプロモーターを含む(例えば、AAV p40プロモーター領域に実質的に相同なヌクレオチド配列)。
【0068】
本発明の分子は、AAV repおよびcapコード領域に対応するヌクレオチド配列(Srivastavaら、前出)をAAV p5プロモーター領域に実質的に相同であるかまたはwt AAVゲノムのbp 145〜309に対応するヌクレオチド配列(図4、(配列番号4))と連結することによって構築され得る−−ここでp5プロモーター領域は、repコード領域に対してその正常な位置以外の任意の位置で分子中に配置される。1つの特定の分子では、AAV p5プロモーター領域を含むヌクレオチド配列は、wt AAVゲノムのbp 145〜494に実質的に相同である(図4、(配列番号4))。他の分子では、AAV p5プロモーター領域に相同であるヌクレオチド配列は、repおよびcapコード領域の両方の下流に配置され、capコード領域の3’末端に実質的に隣接する。3’末端に実質的に隣接することは、本発明のヌクレオチド配列が、capコード領域の3’末端の約0〜500ヌクレオチド以内、より好ましくは約0〜200ヌクレオチド以内、および最も好ましくは約0〜50ヌクレオチド以内であることを意味する。
【0069】
さらに他の実施態様では、AAV p5プロモーター領域は、repおよびcapコード領域の両方の下流に配置され、そして最小の長さ(l)を有する介在ヌクレオチド配列(X)によってそれから分離され、これによって、得られるAAV rep-cap-X-p5フラグメントは、このフラグメントとAAVベクター(ITRの獲得を生じる)との間の組換え事象(組換えAAVビリオン産生中の)が、大きすぎてAAVビリオンとしてパッケージしない組換えた分子を得るようにサイズ分類される。約5100bpフラグメントが、このような粒子にパッケージされ得る遺伝物質の上限を示すことが一般的に認識される(例えば、Lebkowskiへの米国特許第5,173,414号を参照のこと。このように、野生型AAV粒子が混入する可能性のある産生は減少または除去される。1つの特定の分子では、介在ヌクレオチド配列(X)は少なくとも500塩基対を含む。
【0070】
上記の核酸分子は、単離され、そしてAAVヘルパー構築物を提供するためのプラスミドまたはウイルス粒子のような適切なベクターにクローニングされ得、ここで、ベクターは、AAVコード配列の複製および発現に適切な制御エレメントをさらに含み得、そして細胞間の核酸の移入を容易にし得る。
【0071】
本発明のさらなる実施態様では、上記核酸分子は、酵母FLPリコンビナーゼ基質に実質的に相同な1つ以上のヌクレオチド配列を含み得る(例えば、Flip Recombination Target(FRT)部位)。Jayaram(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:5875-5879;およびO’Gorman(1991)Science 251:1351-1355。従って、上記の核酸分子は、FRT部位(または少なくとも最小のFRT部位)に相同な第2のヌクレオチド配列を含み得、ここで第2のヌクレオチド配列は、FRT部位がAAVコード領域およびAAV p5プロモーター領域の上流に位置するように分子中に配置される。好ましい実施態様では、5’〜3’方向に、FRT部位(Jayaram、およびO’Gorman、前出)、AAV repコード領域、AAV capコード領域、およびAAV p5プロモーター領域を含む分子が提供される。なおさらなる実施態様では、AAVp5プロモーター領域を含むヌクレオチド配列がwt AAVゲノムのbp 145〜494に実質的に相同である分子が提供される(図4、(配列番号4))。この第1のヌクレオチド配列はまた、FRT部位を含む挿入されたポリヌクレオチドを有する。より特定すると、ポリヌクレオチド挿入物(FRT部位を含む)は、第1の配列のbp 310と311との間に配置されており、そのため、挿入されたFRT部位は、AAVp5プロモーター領域(bp 145〜310の範囲にわたる)の3’末端にすぐ隣に位置する。次いで、得られた構築物は、上記のように、repコード領域に対してその正常位置以外の任意の位置にAAV p5プロモーター領域を置くように核酸分子中に配置される。上記の分子のすべては、当該分野で公知の組換え技法を使用して構築され得る。
【0072】
関連の実施態様では、上記の核酸分子は、FRT部位に相同な多数のポリヌクレオチドを含むように構築される。より特定すると、2つのFRT部位は、AAVコード領域およびAAV p5プロモーター領域に隣接する、5’および3’に隣接する領域を提供するように分子中に配置され得る。このように、核酸分子は、FRT部位に隣接するカセット(AAV repコード領域、AAV capコード領域、およびAAV p5プロモーター領域を有する)を含む。好ましい実施態様では、核酸分子は、5’〜3’方向に所定の順で、FRT部位、AAV rep、AAV cap、AAV p5プロモーター領域、およびFRT部位を含むように配置される。上記の分子は、集められ、単離され、そして公知の技法を使用する適切なベクター中にクローニングされ得る。FRT-rep-cap-p5-FRTカセットは、所望ならば、酵母FLPリコンビナーゼ酵素の作用によって、容易にベクターに挿入されかまたはベクターから切り出され得る。
【0073】
なおさらなる関連する実施態様では、AAV repおよびcapコード領域、AAV p5プロモーター領域を含むヌクレオチド配列、および複数のFRT部位を有する分子が提供される。この特定の分子では、AAV p5プロモーター領域を含むヌクレオチド配列は、wt AAVゲノムのbp 145〜494に実質的に相同である(図4、(配列番号4))。この第1のヌクレオチド配列内に、FRT部位を含むポリヌクレオチドが挿入されている。より特定すると、ポリヌクレオチド挿入物(FRT部位を含む)は、挿入されたFRT部位がAAV p5プロモーター領域(bp 145〜310の範囲にわたる)の3’末端にすぐ隣りに位置するように、第1の配列のbp 310と311との間に配置されている。次いで、核酸分子は、5’から3’方向に所定の順で、FRT部位、AAV rep、AAV cap、およびAAV p5プロモーター領域を含みそしてAAV p5プロモーター領域の3’のすぐ隣に位置するFRT部位を有するヌクレオチド配列を含むように配置される。
【0074】
さらに、上記核酸分子を含むベクターは、適切な宿主に容易に導入され、そしてそこで発現して機能しているrepおよび/またはcapコード領域を欠くAAVベクターにおいてなくなったAAV機能を補足する。AAVベクター中のrepおよびcap領域は、遺伝物質の欠失、リーディングフレームエラーを引き起こす遺伝物質の挿入、ならびにこれらの遺伝子によって供給される複製およびカプシド化機能を分裂させる点変異によって、弱められ得る。AAVベクター系は、適切な宿主(例えば、アデノウイルス感染した細胞)にベクターをトランスフェクトすること、および複製しているベクターゲノムの存在について、例えば48時間後に、細胞抽出物をアッセイすることによって、機能しているrepコード領域についてスクリーニングされ得る。repコード領域が機能的であるならば、複製しているDNAは、当該分野で公知の技法を使用してサザンブロット分析によって明らかにされ得る。AAVベクター系は、当該分野で公知のウエスタンブロット技法を使用してAAV粒子産生についてアッセイすることによって、機能しているcapコード領域についてスクリーニングされ得る(Samulskiら(1989)J.Virol.63:3822-3828)。
【0075】
本発明の核酸分子は、従来の組換え技法を使用して構築され得る。これに関して、AAV repおよびcapコード領域を置き換えたAAV p5プロモーター領域とともに含む核酸分子は、AAV repコード領域に対して適切な部位に本発明のプロモーター領域を含む制限フラグメントを連結することにより、AAV p5プロモーター領域を含むヌクレオチド配列を、AAVコード領域(repおよびcapコード領域を含む)を有する構築物に挿入することによって、容易に構築され得る。次いで、新しく形成された核酸分子は、所望であれば、制限酵素を使用して構築物から切り出され得る。従って、本発明のこれらおよび他の分子は、当該分野で周知の技法を使用して本明細書で提供され得る。例えば、米国特許第5,173,414号および第5,139,941号;国際公開番号WO 92/01070(1992年1月23日公開)およびWO 93/03769(1993年3月4日公開);Lebkowskiら(1988)Molc.Cell.Biol.8:3988-3996;Vincentら(1990)Vaccines 90(Coled Spring Harbor Laboratory Press);Carter,B.J.(1992)Current Opinion in Biotechnology 3:533-539;Muzyczka,N.(1992)Current Topics in Microbiol.and Immunol.158:97-129;Kotin,R.M.(1994)Human Gene Therapy 5:793-801;ShellingおよびSmith(1994)Gene Therapy 1:165-169;およびZhouら(1994)J.Exp.Med.179:1867-1875を参照のこと。
【0076】
より特定すると、repおよびcap遺伝子を含む選択されたAAVコード領域、およびAAV p5プロモーター領域を含むもののような選択されたヌクレオチド配列は、ウイルスゲノムからまたは同じものを含むAAVベクターから切り出され得、そしてSambrookら、前出に記載されるような標準的連結技法を使用して、p5プロモータ領域がrepおよび/またはcapコード領域の3’であるように連結され得る。これらの分子は、その5’、または5’および3’末端に配置された隣接するFRT配列を有するようにさらに構築され得る。連結は、20 mM Tris-Cl(pH 7.5)、10 mM MgCl、10 mM DTT、33 μg/ml BSA、10 mM-50 mM NaCl、および、0℃にて40μM ATP、0.01-0.02(Weiss)ユニット T4 DNA リガーゼ(「付着末端」連結)または14℃にて1 mM ATP、0.3-0.6(weiss)ユニット T4 DNA リガーゼ(「平滑末端」連結)のいずれかで完了され得る。分子間「付着末端」連結は、通常、30〜100μg/mlの全DNA濃度(5〜100 nMの全末端濃度)で実行される。
【0077】
あるいは、本発明の核酸分子は、固相直接オリゴヌクレオチド合成化学と当該分野で従来の酵素的連結方法との組み合わせを使用して、合成によって誘導され得る。制限酵素部位のような特徴を有する合成配列が構築され得、そしてApplied Biosystems Inc.(Foster City,CA)から入手可能なデバイスのような市販の利用可能なオリゴヌクレオチド合成デバイスで、ホスホルアミダイト法を使用して調製され得る。例えば、Beaucageら(1981)Tetrahedron Lett.22:1859-1862を参照のこと。AAV repおよびcapコード配列、AAV p5、p19およびp40プロモーター領域、ならびにFRT部位のヌクレオチド配列は公知であり、そして既に記載されている。(AAV配列については、例えば、Srivastavaら(1983)J.Virol.45:555-564;Kotin,R.M.(1994)Human Gene Therapy 5:793-801;Berns,K.I.「パルボウイルス科およびその複製」Fundamental Virology,第2版,(B.N.Fields and D.M.Knipe編)を参照のこと;および、FRT配列については、例えば、Jayaramら(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:5875-5879およびO’Gorman(1991)Science 251:1351-1355を参照のこと)。哺乳動物細胞における合成分子の発現に好ましいコドンもまた合成され得る。次いで、完全な核酸分子が、上記の方法によって調製された重複オリゴヌクレオチドから組み立てられる。例えば、Edge,Nature(1981)292:756;Nambairら、Scince(1984)223:1299;Jayら J.Biol.Chem.(1984)259:6311を参照のこと。
【0078】
本発明のさらなる目的は、本発明の核酸分子を含むレプリコンを一般的に含むAAVヘルパー構築物を提供することである。従って、この構築物はAAVヘルパー機能をコードし得る。本明細書では、レプリコンは、DNA合成中に複製の1単位として作用する任意の長さのDNAとして定義される。1つの実施態様では、AAVヘルパー構築物は、宿主ゲノムの独立した自己複製ができるエピソームの形態で提供され、そしてこれは宿主染色体への組込みをさらに可能にし得る。1つの特定の好ましい実施態様では、構築物はプラスミドである。種々の他の実施態様では、AAVヘルパー機能(例えば、repおよびcapコード領域)は、その転写および翻訳を指示する制御配列に作動可能に連結される。
【0079】
本発明の1つの特定の局面では、AAVヘルパー構築物は、宿主細胞で安定な維持ができる染色体外レプリコン(例えば、エピソームまたはプラスミド)として維持され得る発現カセットを提供するように組み立てられる。構築物は、複製している宿主で実質的に安定に維持されることを可能にする適切な複製系を有する。
【0080】
AAVヘルパー構築物は、上記のように、wt AAVゲノム中のrepコード領域に対してその正常位置以外の部位にあるように本発明の構築物に配置されるAAV p5プロモーター領域を有するAAV repおよびcapコード領域、制御配列、および任意の増幅配列を含み、これはまた、選択マーカーを含み得る。適切なマーカーには、核酸構築物でトランスフェクトされている細胞が適切な選択培地中で増殖される場合、抗生物質耐性もしくは感受性を与え、または色を与え、または抗原特徴を変化させる遺伝子が含まれる。本発明の実施に有用な特定の選択マーカー遺伝子は、G418(Sigma,St.Louis,MOから入手可能)に耐性を与えることによって哺乳動物細胞での選択を可能にするハイグロマイシンB耐性遺伝子(アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ(APH)をコードする)を含む。他の適切なマーカーは当業者に公知である。
【0081】
本発明のなおさらなる目的は、AAVベクターが細胞に存在し、そしてパッケージング細胞がウイルスヘルパー機能を発現し得る場合、rAAVビリオンを産生し得るAAVパッケージング細胞を提供することである。1つの特定の実施態様では、AAVパッケージング細胞は、(ウイルスヘルパー機能の規定では)ヘルパーウイルスによる感染を受け得る哺乳動物細胞に由来し得る。これに関して、細胞に適合するヘルパーウイルスが存在する限り、ほとんどの全ての哺乳動物細胞はAAVを受けそしてAAVビリオンを産生し得る。従って、rAAVビリオンを産生するために使用されるパッケージング細胞は、入手可能性、増殖特徴などのような便宜上大きく指示された選択の問題である。適切なパッケージング細胞には、特に、ヒトおよび非ヒト霊長類種、齧歯類、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、ネコ、およびイヌなどの細胞が挙げられるが、これらに限定されない。しかし、便宜のために、ヒト293、HeLa、KB、およびJW-2細胞のようなヒト細胞株が好ましい。これらの細胞は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)から容易に入手可能である(例えば、ヒト293細胞は、受託番号ATCC CRL1573で入手可能である)。
【0082】
1つの特定の実施態様では、AAVパッケージング細胞は、AAVヘルパー機能を発現し得るAAVヘルパー構築物で細胞をトランスフェクトすることによって、適切な宿主細胞(例えば、ヒト293細胞)から形成される。本発明のAAVヘルパー構築物は、AAV repおよびcapコード領域およびAAV p5プロモーター領域を含むヌクレオチド配列を有する核酸分子を含み、ここでヌクレオチド配列は、上記のようなwt AAVゲノムにおけるrepコード領域に対してその正常な位置以外の部位にp5プロモーターを置くように分子中に配置される。ヘルパー構築物は、関連するAAVベクターにおいて欠けているAAV機能を補足するために宿主細胞で有効に転写および翻訳され得る。
【0083】
他の特定の実施態様では、AAVパッケージング細胞は、AAV RepおよびCapポリペプチドを発現し得るAAVヘルパー構築物でのトランスフェクションによって適切な宿主細胞(例えば、ヒト293細胞)から形成される。トランスフェクトしたAAVヘルパー構築物は、AAVコード領域を有する核酸分子およびAAV p5プロモーター領域を含むヌクレオチド配列を含み、このAAVコード領域およびこのAAV p5プロモーター領域はそれぞれ分子中の5’から3’へ配置されそして介在ヌクレオチド配列によって互いに分離される。本発明の構築物は、関連するAAVベクターにおいて欠けているAAV機能を補足するために宿主細胞で有効に転写および翻訳され得る。さらに、介在ヌクレオチド配列は、得られるAAV rep-cap...p5フラグメントをrAAVビリオン産生中の組換え事象においてAAVビリオン粒子としてパッケージされないほど大きくする十分な長さを有するように選択され得る。このように、パッケージング細胞系において混入するwt AAV粒子の顕著なレベルの産生が避けられる。関連の実施態様では、AAVヘルパー構築物はプラスミドを含む。
【0084】
本発明のそれぞれのAAVヘルパー構築物は、エピソームエレメントとしてパッケージング細胞に安定に維持され得るか、またはパッケージング細胞ゲノムに組み込まれ得、そのため無限に維持され得るパッケージング細胞株を生成する。あるいは、AAVヘルパー構築物は、適切なウイルスヘルパー機能の導入の直前、またはその次に、または同時にのいずれかで、パッケージング細胞にトランスフェクトされ得る。
【0085】
本発明の目的はまた、ウイルスヘルパー機能がそこで発現される場合にrAAVビリオンを産生し得るAAVプロデューサー細胞を提供することである。1つの特定の実施態様では、プロデューサー細胞は、機能的AAV ITR間にはさまれる異種ヌクレオチド配列を有するAAVベクター(例えば、プラスミド)で上記のAAVパッケージング細胞の1つを一過性または安定にのいずれかでトランスフェクトすることによって形成される。
【0086】
本発明のなおさらなる目的は、rAAVビリオンの産生のための方法を提供することであり、ここで、この方法は、一般的に、以下の工程を包含する:(1)機能的AAV ITR間にはさまれる形質導入される異種ヌクレオチド配列を有するAAVベクターを宿主細胞に導入する工程;(2)上記のように組み立てられたAAVヘルパー構築物をこの宿主細胞に導入する工程(ここで、この構築物はAAVベクターを欠いているAAVヘルパー機能を発現し得る);(3)この宿主細胞でウイルスヘルパー機能を発現する工程;および(4)この細胞を培養してrAAVビリオンを産生する工程。
【0087】
1つの実施態様では、rAAVビリオンを産生する方法が提供され、ここで上記のように構築されたAAVパッケージング細胞は、AAV ITR間にはさまれる目的の異種ヌクレオチド配列を含むAAVベクターでトランスフェクトされる。AAVパッケージング細胞は、(上記のようなプロデューサー細胞を提供するために)本発明のAAVベクターで一過性または安定にのいずれかでトランスフェクトされ得る。
【0088】
1つの好ましい実施態様では、上記の方法に使用されるAAVパッケージング細胞は、AAV RepおよびCapポリペプチドを提供するように発現され得るAAVヘルパー構築物で適切な宿主細胞をトランスフェクトすることによって産生される。本発明のAAVヘルパー構築物は、AAV repおよびcapコード領域ならびにAAV p5プロモーター領域を含むヌクレオチド配列を有する核酸分子を含み、ここでこの分子のエレメントは、上記のようなwt AAVゲノムにおけるrepコード領域に対してその正常な位置以外の部位にp5プロモーターを置くように配置される。AAVヘルパー構築物は、当業者に公知の方法を使用して、適切なAAVベクターで宿主細胞に同時トランスフェクトされ得る。さらなる関連の実施態様では、AAVヘルパー構築物は、上記のように1つ以上の隣接するFRT部位を含み得る。
【0089】
他の好ましい実施態様では、AAVパッケージング細胞は、rAAVベクター産生中の顕著なレベルの野生型AAVの産生を減少または除去するように設計されたAAVヘルパー構築物で適切な細胞をトランスフェクトすることによって産生される。ヘルパー構築物には、AAV repおよびcapコード領域、介在ヌクレオチド配列、およびAAV p5プロモーター領域を含むヌクレオチド配列を有する核酸分子が含まれる。この分子のエレメントは、AAV p5領域が、repおよびcapコード領域の両方からの下流に位置し、そして介在ヌクレオチド配列(X)によってそれから分離されるように配置される。ヌクレオチド配列(X)は、得られるAAV rep-cap-X-p5フラグメントが、このフラグメントとAAVベクターとの間の(ITRの獲得を生じる)組換え事象(組換えAAVビリオン産生の間の)がAAVビリオンとしてパッケージするには大きすぎる組換えた分子を生じることを確実にするのに有効な、最小の長さを有するように選択される。このように、wt AAV粒子産生の可能性が減少または除去される。
【0090】
本発明の実施において、rAAVビリオンの増強された力価は、上記のパッケージング細胞を用いる方法を使用して得られ得る。いずれの特定の理論によっても結びつけられることなく、このような細胞での増強されたビリオン産生は、一部は、これらの細胞でのRep毒性の減弱によると考えられる。これに関して、repコード領域に対してその正常位置以外の部位でのp5プロモーター領域の置換は、repコード領域が発現される場合、Rep 78およびRep 68の両方の産生(p5プロモーターから正常に転写された長い形態のRep発現産物)を減弱するために作用し得る。いくつかの長い形態のRep産物が本発明のAAVヘルパー構築物から発現されるという事実を考慮すると、再度位置づけしたAAV p5プロモーター領域は、その新しい位置によってエフェクター機能に作用する。
【0091】
上記の方法のそれぞれにおいて、ウイルスヘルパー機能は、当業者に公知である方法を使用して宿主細胞で発現され得る。特に、ウイルスヘルパー機能は、関連のないヘルパーウイルスでの宿主細胞の感染によって提供される。本発明の系において使用されるヘルパーウイルスには、アデノウイルス;1型および2型単純ヘルペスウイルスのようなヘルペスウイルス;およびワクシニアウイルスが含まれる。非ウイルスヘルパーも、任意の公知の薬剤のいずれかを使用して、細胞同調化のように本発明において使用される。例えば、Bullerら(1981)J.Virol.40:241-247;McPhersonら(1985)Virology 147:217-222;Schlehoferら(1986)Virology 152:110-117を参照のこと。宿主細胞の感染の結果として、ウイルスヘルパー機能は、AAV RepおよびCapタンパク質を産生するためにAAVヘルパー構築物をトランス活性化するように発現され得る。このように、Repタンパク質は、組換えAAVベクターから(またはAAVベクターが組み込まれている場合には宿主細胞ゲノムから)組換えDNA(異種ヌクレオチド配列を含む)を切り出すために作用する。Repタンパク質はまた、AAVゲノムを2倍にするために作用する。発現したCapタンパク質はカプシド中に組み立てられ、そして組換えAAVゲノムはカプシド中にパッケージされる。従って、溶菌AAV複製が起こり、そして異種ヌクレオチド配列は生存力のある形質導入ベクター中にパッケージされる。
【0092】
宿主細胞でのウイルスヘルパー機能の発現およびAAV複製の後、rAAVビリオンは、CsCl勾配のような種々の従来の精製方法を使用して宿主細胞から精製され得る。さらに、感染がウイルスヘルパー機能を発現するために用いられるならば、任意の残りのヘルパーウイルスは、公知の方法を使用して不活性化され得る。例えば、AAVは非常に熱安定でありそしてアデノウイルスは熱不安定なので、アデノウイルスは、例えば、20分以上、約60℃の温度まで加熱することによって不活性化され得る。
【0093】
目的の異種ヌクレオチド配列を含む得られるrAAVビリオンは、次いで、遺伝子治療適用に、トランスジェニック動物の生産に、ワクチン接種、リボザイムおよびアンチセンス治療に、ならびにインビトロでの遺伝子送達におけるような、種々の細胞タイプへの遺伝子送達のために使用され得る。
【0094】
(C.実験)
以下は、本発明を実行するための特定の実施態様の実施例である。実施例は、例示の目的でのみ提供され、そして本発明の範囲をいかなるようにも限定することを意図しない。
【0095】
使用された数字(例えば、量、温度など)に関する精度を確実にする努力が行われたが、いくらかの実験誤差および偏差は、もちろん許容されるべきである。
【実施例】
【0096】
(実施例1)
(pAAVlacZプラスミドの構築)
lacZ遺伝子(pAAV-lacZ)を有するAAVベクターを以下のように構築した。XbaI部位間の、pSub201のAAVコード領域(Samulskiら(1987)J.Virol.61:3096-3101)を、EcoRIリンカーで置換して、プラスミドpAS203を得た。pCMVβ(CLONETECH)のEcoRIからHindIIIフラグメントを平滑末端にし、そしてpAS203のKlenow処理したEcoRI部位にクローニングしてpAAVlacZを得た。
【0097】
(実施例2)
(pGN1909ヘルパープラスミドの構築)
AAVヘルパー構築物pGN1909は、AAV RepおよびCapポリペプチド産物を発現し得、これは、AAV repおよびcapコード領域、ならびに2つのFRT部位間にはさまれる下流のAAV p5プロモーターを含む、約4.8 Kbヌクレオチド長を含む。pGN1909プラスミドを以下のように構築し得る。図1を参照すると、BglII部位を、以前に記載されたpAAV/Ad構築物(Samulskiら(1989)J.Virol.63:3822-3828)におけるrep78/68 ATGの12塩基5’側に導入して、pAAV/Ad-Bglというプラスミドを得る。次いで、50 bpの最小FRT部位(Jayaram(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:5875-5879;およびO’Gorman(1991)Science 251:1351-1355)をpAAV/Ad-BglのBglII部位に挿入し、そして得られるp5プロモーターのないFRT-rep-capフラグメントをpBSII k/s-(Stratagene,San Diego,CA)のポリリンカーにクローニングしてpFRTRepCapというプラスミドを得る。
【0098】
別々の工程において、以前に記載されたpIM29+45プラスミド(McCartyら(1991)J.Virol.65:2936-2945)のSpeIおよびPstI部位によって定義されるフラグメントは、AAV p5プロモーターおよびrep遺伝子の5’末端の部分を含み、これをSpeIおよびPstI部位間のpBSII k/s-のポリリンカーにサブクローニングする。次いで、FRT部位を、rep78/68 ATGの12 bp 5’側に導入し、pGN1901というプラスミドを得る。pGN1901のSpeI-PstIフラグメントを、pFRTRepCapプラスミドのXbaI部位に挿入して、pGN1909プラスミド構築物を得る。pGN1909プラスミドのマップを図2に示す。
【0099】
同様の構築物を以下のように構築し得る。以下の5つのヌクレオチドフラグメントを、5’から3’方向に所定の順で配置し、そしてNotIとPstI部位との間のpBSII k/s-のポリリンカーに連結する:(1)図3(配列番号2)に示す59 bp「最小」FRT部位(JayaramおよびO’Gorman、前出)を含む第1のヌクレオチドフラグメント;(2)AAV repおよびcapコード領域(wt AAVゲノムのbp 310〜4484に対応する、Srivastavaら(1983)J.Virol.45:555-564)を含む第2のヌクレオチドフラグメント;(3)wt AAVゲノムのbp 145〜310に対応するAAV p5プロモーター領域を含む第3のヌクレオチドフラグメント(図4に示す、(配列番号4));(4)図3(配列番号3)に示す76 bp FRT部位(JayaramおよびO’Gorman、前出)を含む第4のヌクレオチドフラグメント;および(5)wt AAVゲノムのbp 310〜494に対応するrepコード領域の5’末端の184 bpセグメントを含む第5のヌクレオチドフラグメント(図4に示す、(配列番号4))。
【0100】
5つのヌクレオチド配列を一緒に連結して、これらの2つの部分の連結を促進するためにフラグメント2と3との間にはさまれる合成接合部を有する、単一の連続した核酸分子を形成する。合成接合部のヌクレオチド配列は以下のとおりである:5’-CTCTAGTGGATCT-3’[配列番号1]。このような接合部は、当該分野で公知の任意の適切なリンカー部分であり得、そして本発明では単に、本発明のAAVヘルパー構築物の組み立てを促進するために使用される。
【0101】
(実施例3)
(pW1909ヘルパープラスミドの構築)
AAVヘルパープラスミドpW1909は、組換えAAVビリオン産生に必須のAAV RepおよびCapポリペプチドを提供し得、これは、一般的に、1909 AAVヘルパー配列(その下流に配置されたAAV p5プロモーターを有するAAV repおよびcapコード領域)を含む。pW1909プラスミドを、pW1909adhLacZプラスミド(以下に記載)から構築し、このプラスミドをSse8387で切断すること、6506 bpのSse8387I-Sse8387Iフラグメントを単離すること、および分子内連結によってフラグメントを再環化することによって構築した。
【0102】
pW1909adhLacZプラスミドを以下のように構築した。プラスミドpUC119(GeneBank Reference Name: U07649,GeneBank Accession Number: U07649)を、AflIIIおよびBspHIで部分的に消化し、klenow酵素で平滑末端に改変し、次いで細菌起点およびamp遺伝子のみ(ポリリンカーおよびF1起点を除去した)を含む環状1732 bpプラスミドを形成するように連結した。平滑化して連結したAflIIIおよびBspHI接合部は独特のNspI部位を形成する。1732 bpプラスミドをNspIで切断し、T4ポリメラーゼで平滑末端改変し、そしてpUC119ポリリンカーから得られた20 bp HinDIII-HinCIIフラグメント(klenow酵素で平滑末端改変した)を、プラスミドの平滑化NspI部位に連結した。平滑化ポリリンカーからのHinDIII部位を再生し、次いで、細菌の複製起点に隣接して配置する。次いで、得られるプラスミドを、独特のPstI/Sse8387I部位で切断し、そしてSse8387I-PvuII-Sse8387Iオリゴヌクレオチド(5’-GGCAGCTGCCTGCA-3’[配列番号5])を連結した。残りの独特のBspHI部位を切断し、klenow酵素で平滑末端改変し、そしてAscIリンカー(5’-GAAGGCGCGCCTTC-3’[配列番号6])を含むオリゴヌクレオチドをそこに連結し、BspHI部位を除去した。得られるプラスミドをpWeeと呼んだ。
【0103】
CMVlacZ発現カセットを、多数の工程を使用してpWeeの独特のPvuII部位に挿入し、そのためCMVプロモーターをpWeeの細菌amp遺伝子の近位に配置した。CMVlacZカセットは、AAV ITRによって5’側および3’側に隣接したヌクレオチド配列を含む。ヌクレオチド配列は以下のエレメントを有する:CMVプロモーター;hGHの第1イントロン;adhlacZフラグメント;およびSV40初期ポリアデニル化部位。
【0104】
プラスミドpsub201(Samulskiら(1987)J.Virol.61:3096-3101)をXbaIで切断し、平滑末端改変し、そしてNotIリンカー(5’-TTGCGGCCGCAA-3’)[配列番号7]を末端に連結して、細菌の複製起点およびamp遺伝子を含むベクターフラグメントを提供した。ここで、ベクターフラグメントはNotI部位が両側に隣接する。NotIでの切断後、第1のCMV発現カセットを、psub201ベクターフラグメントにクローニングして、psub201CMVを作製した。このプラスミドからITRが結合した発現カセットを、PvuIIで切断することによって単離し、そしてプラスミドをPvuIIで切断した後のpWeeに連結し、pWCMVを作製した。次いで、pWCMVをBssHIIで(部分的に)切断し、そしてadhlacZ遺伝子を含む3246 bpフラグメント(プラスミドpCMV-βから得たSmaI-DraIヌクレオチドフラグメント、3246 bpフラグメントを提供するために末端に連結したAscIリンカー(5’-GAAGGCGCGCCTTC-3’)[配列番号6]を有する)を、pWCMVのBssHII部位に連結してpWadhlacZ構築物を得た。
【0105】
プラスミドpW1909adhlacZを、pGN1909からのエレメントとpWadhlacZ構築物とを組み合わせることによって得た。特に、AAV repおよびcapコード領域を含む4723 bp SpeI-EcoRVフラグメントを、プラスミドpGN1909から得た。4723 bpフラグメントを平滑末端改変し、そしてAscIリンカーを平滑末端に連結した。次いで、得られたフラグメントをpWadhlacZの独特のAscI部位に連結し、そしてAAVコード配列をこの構築物中の細菌の複製起点の近位に配置するように配向した。
【0106】
(実施例4)
(組換えAAVビリオンの産生)
ヒト293細胞(Grahamら(1967)J.Gen.Virol.36:59-72、受託番号CRL1573でATCCから入手可能である)を、10%ウシ胎児血清(FCS)、1% pen/strep、および1%グルタミン(Sigma,St.Louis,MO)を補充した滅菌DME/F12培養培地(HEPES緩衝液を含まない)中で、5%COで37℃にて増殖させた。一旦細胞が健康でありそして分割していると、これらをトリプシン処理し、そして10cmの細胞培養プレート当たり1×10〜5×10細胞で播種する。細胞が最初にプレートの表面に付着する場合、50〜75%の単層コンフルエンシーに達する。各プレートの培地の容量は10 mLである。細胞のいずれの凝集の回避および細胞の均等な分布は、組織培養プレートのすべての領域にわたる均等な細胞密度を達成するために必須である(これは高いrAAV粒子収量のために重要である)。次いで、細胞を5%CO中で37℃にて増殖させて、トランスフェクションの24〜48時間前の期間にわたって90%コンフルエンシーに達する。
【0107】
トランスフェクションの1〜4時間前に、組織培養プレート中の培地を10%FCS、1% pen/strep、および1%グルタミンを含む新鮮なDME/F12培養培地で置き換える。それぞれ10μgのpAAVlacZベクターおよびpGN1909ヘルパー構築物(または他の適切なヘルパー構築物)を1mLの滅菌300 mM CaClに添加し、次いで1mLの滅菌2×HBS溶液(280 mM NaCl、50 mM HEPES緩衝液、1.5 mM NaHPOを混合して10 M NaOHでpH 7.1に調節することによって形成した)に添加し、そして穏やかに倒置することによってすぐに混合する。次いで、得られた混合物を、90%コンフルエントの293細胞(10 mLの上記の培養培地中)の10cmプレートにすぐにピペットで入れ、そして撹拌して(swirl)均質な溶液を生成する。
【0108】
プレートを5%COインキュベーターに移し、そして妨げることなく6〜8時間、37℃にて培養する。トランスフェクション後、培地をプレートから除去し、そして単層の細胞を滅菌リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で1回洗浄する。
【0109】
アデノウイルス作動ストックを、アデノウイルス(血清型2)のマスターストックをDME/F12+10%FCS、1% pen/strep、1%グルタミン、および25 mM滅菌HEPES緩衝液(pH 7.4)中で10pfu/mLの濃度に希釈することによって調製する。得られたアデノウイルス作動ストックの10 mLを各10cmプレートに添加し、そして細胞を約72時間インキュベートする。すべての細胞が細胞変性効果(CPE)を示し、そして約30%の細胞が浮遊している場合、細胞を穏やかにピペットで取ることによって細胞を採集して、プレート表面から細胞を脱離させる。細胞懸濁液を集め、そして300×gにて2分間遠心分離する。上清を吸引除去し、そして細胞を1mLの滅菌Tris緩衝化生理食塩水(TBS、100 mL Tris HCL、150mM NaClを混合することによって調製し、そしてpH 8.0に調節した)で再懸濁する。得られた物質を−80℃で凍結し得るか、または凍結/融解溶解物を作成して直ちに使用し得る。
【0110】
凍結/融解溶解物を、ドライアイス/エタノール浴(細胞が完全に凍結するまで)と37℃水浴(完全に融解するまで)との間を交替することによって、TBS:細胞懸濁液を3回凍結および融解することにより調製する。組織の破片を、10,000×gにて10分間の遠心分離によって除去する。上清を集めて、滅菌凍結バイアルに移す。アデノウイルスを、56℃にて1時間水浴に浸すことにより凍結/融解溶解物をインキュベートすることによって、熱不活性化する。熱不活性化中に形成するあらゆる沈殿を、試料を10,000×gにて10分間遠心分離することによって除去する。次いで、組換えAAVビリオンを含む上清を採集する。ビリオンを−70℃にて凍結保存し得る。
【0111】
形質導入ベクター力価を、上記で調製したrAAVビリオンの希釈系列で293細胞を感染することによって決定し得る。24時間後、細胞を固定し、そしてX-Galで染色する(Sanesら(1986)EMBO 5:3133-3142)。力価を、青色細胞の数を定量することによって計算する。
【0112】
(実施例5)
(AAVヘルパープラスミド効率の比較)
pGN1909構築物によって提供されるヘルパー機能の効率を、上記のpAAV/AdおよびpIM29+45AAVヘルパープラスミド(Samulskiら、およびMcCartyら、前出)に対して比較した。rAAVlacZビリオンを、pAAVlacZ(実施例1に上記のように調製した)および以下の3つのヘルパープラスミドのうちの1つでのヒト293細胞の同時トランスフェクションによって調製した:pGN1909、pAAV/Ad、およびpIM29+45。3つの調製物からの組換え調製物の力価を決定した(実施例4に上記のように)。結果を表1に示す。
【0113】
(表1)
【0114】
【表1】

上記の結果で見られ得るように、AAVヘルパー構築物としてpGN1909構築物を使用して産生した組換え調製物の力価は、2つの上記のヘルパープラスミドのいずれかを使用する調製物よりも5〜10倍大きい。
【0115】
(実施例6)
(延長した1909 AAVヘルパー配列の調製)
組換えAAVビリオン産生中、望ましくない組換え事象がAAVベクターと複製コンピテントAAV野生型ウイルスの産生を生じるAAVヘルパーDNAとの間で生じ得る(ここで、AAVヘルパーフラグメントはAAV ITRを獲得している)。野生型AAVウイルス生成を減少または除去するために、介在ヌクレオチド配列(X)を、AAV capコード領域とAAV p5プロモーターを含むヌクレオチド配列との間のpW1909ヘルパー構築物中に挿入した。介在配列(X)を、野生型組換え体が大きすぎてAAVビリオンとしてカプシド化されない長さ(l)を有するように選択した。
【0116】
特に、4つのヘルパープラスミドのセットは、ポリアデニル化部位(構築物中のAAV capコード領域の3’側)とAAV p5プロモーター配列との間のAAVヘルパー配列に4つの段階的により長い介在ヌクレオチド配列(X1〜X4)を挿入することによって、pW1909から得られた。pW1909プラスミドを、5060位でEcl136IIにて部分的に消化した。X1ヌクレオチド配列(phi X174,2から得られる603 bpフラグメント)を、pW1909のEcl136II部位に連結してpW1909-0.6を得た。603 bp X1フラグメントの付加で、pW1909-0.6構築物は5349 bp AAVヘルパー配列を含む。X2ヌクレオチド配列(phi X174,3から得られる1078 bpフラグメント)を、pW1909のEcl136II部位に連結してpW1909-1を得た。1078 bp X2フラグメントの付加で、pW1909-1構築物は5824 bp AAVヘルパー配列を含む。X3ヌクレオチド配列(ファージλから得られる2027 bpフラグメント)を、pW1909のEcl136II部位に連結してpW1909-2を得た。2027 bp X3フラグメントの付加で、pW1909-2構築物は6773 bp AAVヘルパー配列を含む。X4ヌクレオチド配列(ファージλから得られる4361 bpフラグメント)を、pW1909のEcl136II部位に連結してpW1909-4を得た。4361 bp X4フラグメントの付加で、pW1909-4構築物は9107 bp AAVヘルパー配列を含む。
【0117】
pW1909-0.6、pW1909-1、pW1909-2、またはpW1909-4の延長したAAVヘルパー配列のいずれかに対する2つの最小(145 bp)AAV ITR配列の付加により、それぞれ5639 bp、5824 bp、6773 bp、および9107 bpのAAV配列長になる。このように、AAVヘルパー構築物のいずれかから生成した野生型組換え体のサイズは、約5100 bpのAAVパッケージング限界を越える。
【0118】
pW1909-0.6、pW1909-1、pW1909-2、およびpW1909-4構築物を、rAAVビリオン産生における増強したAAVヘルパー活性を提供するそれらの能力について評価した。pW1909ヘルパー構築物およびpAAV/Adヘルパープラスミドをコントロールとして使用した。
【0119】
AAVヘルパー活性を以下のように評価した。rAAVlacZビリオンを、pAAVlacZ(実施例1で上記のように調製した)および以下のヘルパープラスミドのうちの1つとヒト293細胞(10cmディッシュ当たり5×10細胞)との同時トランスフェクションによって調製した:pAAV/AdまたはpW1909(コントロールとして); pW1909-0.6;pW1909-1;pW1909-2;またはpW1909-4。ウイルスヘルパー機能(通常アデノウイルス感染によって提供される)がプラスミドの形態で提供されることを除いて、rAAVビリオン産生を、実施例4に上記のように行った。より詳細には、293細胞培養物を、以下のベクターのそれぞれ5μgで同時トランスフェクトした:pAAVlacZベクター;選択されたAAVヘルパープラスミド;および、アデノウイルスヘルパー機能を供給した選択されたアデノウイルス遺伝子または遺伝子領域(E2a、E4、およびVA RNA)を含む第3のプラスミド。細胞を約72時間インキュベートした。次いで、凍結/融解溶解物の調製および調製物からのrAAVLacZ力価の決定を、実施例4に記載のように行った。結果を表2に示す。
【0120】
(表2)
【0121】
【表2】

示され得るように、pW1909ヘルパー構築物を使用して産生した組換え調製物の力価は、既に記載した「従来の」ヘルパープラスミドpAAV/Adを使用して得られた調製物よりも4倍大きい。延長したAAVヘルパー配列を有する1909構築物(pW1909-0.6、pW1909-1、pW1909-2、およびpW1909-4)は、種々の量のビリオンを提供し、ここで、pW1909-1は、pW1909の実質的に60%の効果であるヘルパー活性を示した。
【0122】
(実施例7)
(pW1909ヘルパープラスミドの改変型の調製)
pW1909ヘルパープラスミドの2つの改変型、pH4およびpH8を以下のように提供した。最初に、AAVヘルパープラスミド、pUC4391を、AAV血清型2ゲノムの塩基対146〜4530を含むヌクレオチド配列(Srivastavaら(1983)J.Virol.45:555-564)をpUC119のSmaI部位に挿入することによって組み立てた。プラスミドを、SmaI部位が、2つの145塩基対ITR配列以外はAAV血清型2ゲノム配列のすべてを含む4391 bpヌクレオチドフラグメントに隣接するように配置した。特に、pSM620から得られた4567 bp SmaIフラグメント(Samulskiら(1982)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 79:2077-2081)を、pUC119(GeneBank Reference Name: U07649,GeneBank Accession Number: U07649)のSmaI部位にサブクローニングして、pUC4567を得た。次いで、M13に基づく変異誘発を使用して、全てのAAV ITR配列を除去し、そしてそれによってpUC4391を得た。以下の変異原性オリゴヌクレオチドを、M13変異誘発において使用した:5’-AGCTCGGTACCCGGGCGGAGGGGTGGAGTCG-3’[配列番号9];および5’-TAATCATTAACTACAGCCCGGGGATCCTCTA-3’[配列番号10]。
【0123】
pBSII k/s-(Stratagene,San Diego)のポリリンカーを、BssHIIで切断することによって除去し、そして以下の合成ポリリンカーで置き換えた:5’-GCGCGCCGATATCGTTAACGCCCGGGCGTTTAAACAGCGCTGGCGCGC-3’[配列番号8]。合成ポリリンカーは、以下の制限部位を含む:BssHII;EcoRV;HpaI;SrfI;PmeI;Eco47III;およびBssHII。得られる構築物を「bluntscript」と称した。
【0124】
pUC4391からの4399 bp SmaIフラグメントを、AAVヘルパー配列のrepコード領域の5’末端が合成ポリリンカーのHpaI部位に近位であるように、bluntscriptのSrfI部位にクローニングした。得られるプラスミドをpH1と称した。pH1のAAV p5プロモーター領域およびAAV rep 5’非翻訳配列を、pW1909ヘルパープラスミドから得たプロモーターのない5’非翻訳配列と置き換えた。特に、pW1909からの323 bp BssHII(平滑化)-SrfIフラグメントを、pH1から得た7163 bp SrfI-SmaI(部分的)フラグメントにクローニングして、pH2を得た。pH2構築物を使用して、2つのAAVヘルパープラスミド、pH4およびpH8を得た。これらは、AAVヘルパー配列の3’末端に配置されたAAV p5プロモーター領域の2つの異なる型を含む。
【0125】
特に、pW1909からの727 bp BglI-PstI(平滑化)フラグメントをpH2のEco47III部位にクローニングすることによって、pH4ヘルパープラスミドを構築した。pW1909からの727 bp配列は、AAV p5プロモーター領域、FRT部位、およびN-末端repコード配列の一部を含む。3’ AAV p5プロモーター領域からの転写の方向は、AAV p19およびAAV p40プロモーター領域の転写の方向と同じである。
【0126】
AAV p5プロモーター領域を含む172 bp核酸フラグメントをpH2のEco47III部位に挿入することによって、pH8ヘルパープラスミドを構築した。従って、pH8ヘルパープラスミドは、FRT組換え部位、または3’ AAV p5プロモーター領域に関連するさらなるAAVヌクレオチド配列を有さない。さらに、3’ AAV p5プロモーター領域は、AAV p19およびAAV p40プロモーター領域と同じ方向で転写する。
【0127】
rAAVlacZビリオン産生の産生においてpH4およびpH8ヘルパープラスミドによって提供されるヘルパー機能の効率を、pW1909プラスミドに対して比較した。ウイルスヘルパー機能(通常アデノウイルス感染によって提供される)がプラスミドの形態で提供される以外は、rAAVビリオン産生を実施例4で上記のように行った。より詳細には、293細胞培養物を、以下のベクターのそれぞれ5μgで同時トランスフェクトした:pAAVlacZベクター;選択されたAAVヘルパープラスミド;および、アデノウイルスヘルパー機能を供給した選択されたアデノウイルス遺伝子または遺伝子領域(E2a、E4、およびVA RNA)を含む第3のプラスミド。細胞を約72時間インキュベートした。次いで、凍結/融解溶解物の調製および調製物からのrAAVLacZ力価の決定を、実施例4に記載のように行った。結果を表3に示す。
【0128】
(表3)
【0129】
【表3】

示され得るように、pH4およびpH8の両方とも、pW1909ヘルパープラスミドとほとんど同じ活性を有し、これは、3’ FRT部位および3’ AAV rep配列の欠失がpW1909由来のpH8ヘルパープラスミドの機能に悪い影響を与えなかったことを示す。
【0130】
(本発明の実施において有用な株の寄託)
以下の株の生物学的に純粋な培養物の寄託を、ブダペスト条約の規定に従って、アメリカンタイプカルチャーコレクション、12301 Parklawn Drive,Rockville,Marylandで行った。指定された受託番号を、成功した生存性試験後に割り当てられ、そして必要な費用を払った。この培養物へのアクセスは、米国特許施行規則1.14および米国特許法112条に基づいて権利を与えられる特許庁長官によって決定されたものへの特許出願の係属中、利用可能である。公衆へのこの培養物の利用可能性のすべての制限は、出願に基づく特許の譲渡によって改変可能に除去されない。さらに、指定された寄託物は、寄託日から30年の期間、または寄託物の最終請求後5年間;あるいは米国特許の存続期間の、どの長い期間も維持される。培養物が生存不可能になり、または不注意で破壊され、あるいはプラスミド含有株の場合は、そのプラスミドがなくなるならば、同じ分類の記載の生存培養物と置き換えられる。
【0131】
これらの寄託物は、当業者への便宜上のみで提供され、そして寄託が必要とされる承認ではない。これらのプラスミドの核酸配列、ならびにそれによってコードされるポリペプチドのアミノ酸配列は、本明細書の記載と何らかの矛盾がある場合はコントロールしている。ライセンスは、寄託物質を製造、使用、または販売するために必要であり得、そしてこのようなライセンスはこれによって譲渡されない。
【0132】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】図1は、pGN1909プラスミド構築物の構築を示す。
【図2】図2は、プラスミドpGN1909の表示である。
【図3】図3は、本発明のAAVヘルパー構築物の構築に有用である、76bp FRT部位(配列番号3)および59bp「最小」FRT部位(配列番号2)のヌクレオチド配列を示す。
【図4】図4は、野生型AAV血清型2ゲノムの塩基対145〜494(配列番号4)からなるポリヌクレオチド配列を示す。
【0134】
[配列表]
【表5】





【特許請求の範囲】
【請求項1】
AAVヘルパー機能をコードする核酸分子であって、該分子が、
AAV repコード領域およびAAV capコード領域であって、該AAV repおよびcapコード領域が、その発現を指示する制御配列に作動可能に連結されている、コード領域;および
AAV p5プロモーター領域を含む第1のヌクレオチド配列であって、該第1のヌクレオチド配列は、該p5プロモーター領域が、野生型AAVゲノム中のrepコード領域に対してその天然の位置以外の部位に位置するように、該分子中に配置される、ヌクレオチド配列;
を含む、核酸分子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−223315(P2006−223315A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−152816(P2006−152816)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【分割の表示】特願平9−508599の分割
【原出願日】平成8年8月1日(1996.8.1)
【出願人】(500544200)アビジェン, インコーポレイテッド (14)
【Fターム(参考)】