説明

ADP−リボシル化外毒素により誘引される経皮免疫応答を促進するための皮膚浸透性エンハンサーおよびバリア崩壊剤の使用

【課題】患者における高められた治療的に有効な免疫応答を誘導する方法の提供。
【解決手段】アジュバントおよび無傷皮膚に対する抗原または抗原をコードする核酸を局所適用して全身的または粘膜の抗体応答を誘引する経皮免疫システム。このように誘引した免疫応答は物理的または化学的な皮膚浸透を高めることにより増大することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗原とADP−リボシル化外毒素または他のアジュバントを用いた経皮的免疫化、および免疫応答を増大するための浸透増強剤およびバリヤー破壊剤の使用に関する。本発明は、誘発される抗原特異的免疫応答を増大するための抗原、アジュバント、皮膚内の標的、またはそれらの組み合わせの活性化にも関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの体の最大の器官である皮膚は、感染物質による侵襲、および有毒な化学薬品との接触に対する身体防御の重要な部分である(ボス(Bos)による1997を参照)。望まない皮膚反応(例えば、アレルギー性皮膚炎またはアトピー性皮膚炎)は知られているが、皮膚へのアジュバントおよび抗原の単なる適用によって、特定の免疫エフェクターを導き出して治療学的な利点を与える、アジュバントおよび抗原の適用による全身免疫応答の誘発は我々の発明の以前には教示も示唆もされていないようである。
【0003】
コレラ毒素(CT)およびE.Coli由来の熱不安定性エンテロトキシンは有毒な化学薬品の例であり、有毒物質による浸透から保護するための皮膚の保護的な層が期待されている。クレイグ(Graig)(1965)は、兎およびモルモットに皮内注射したコレラ患者の糞便ろ液が特有の遅延的、持続的な浮腫硬化(腫大)を産生し、これは皮膚中の毒素の存在によって誘発されることを報告している。腫大および血管の漏出現象は非常に劇的であり、そのため未知の浸透性因子が原因とされ、それは後にCTそのものであることが分かった。従って、CTが皮膚上にあると非常に反応原性(reactogenecity)であり、もしそれが皮膚に入れば、同様な赤みや腫大を引き起こすであろうと合理的に予想できた。皮膚にCTを注射するクレイグ試験は、糞便ろ液または培地中のCTの存在およびその量についての標準的な測定法であった。この皮膚の反応性はコレラ毒素に起因することがデータより確認された(フィンケルスタイン(Finkelstein)およびロスパルト(LoSpallutto)による1969を参照)。
【0004】
クレイグ(1965)は、「十分な濃度で皮膚に適用した場合に、臨床コレラ患者の皮膚病変の無いことは、消化管の損害の原因である病毒が皮膚にも心身に有害な影響を及ぼすという可能性を必ずしも排除するものではない」と注意している。皮膚中のコレラ毒素の非常な反応原性はその毒性の試験として使用され、先行技術は皮膚に適用されればコレラ毒素は反応原性であり、望まない反応を生むであろうという予想を証明している。そのような有害な反応は当該分野の有名な著者によって十分に実証されている(クレイグによる1972)。
【0005】
それに反して、我々は、皮膚上に置いた場合にコレラ毒素が免疫原性であり、抗原およびアジュベントの両方として作用するが、いずれの局所または全身副作用を起こさないことを見出した。コレラ毒素が経皮的免疫化の目的で、皮膚上におかれた場合のこの反応原性の欠落は驚くべきことであり、先行技術から導き出される結論とは矛盾していた。特に、我々の発明に従って皮膚上におかれたCTはクレイグらの予想に反して、無毒で非反応原性のアジュバントとして作用し、一方で皮膚中へのCTの注射は腫大および赤みを引き起こす。従って、我々の発明の以前には、コレラ毒素または他のADP−リボシル化外毒素または局所適用アジュバントが経皮的免疫化に有用であることは自明ではなかった。実際、ヒトの皮膚上におかれた熱不安定性エンテロトキシン(LT)は局所または全身毒性を有することなく、全身免疫応答を誘発することを見出した。
【0006】
この予期しない反応原性の欠如はワクチンの使用にとって非常に重要である。免疫化が有意な望まない反応を伴わずに、保護的な免疫応答を産生する場合には、ワクチン抗原およびアジュバントは有用である。歴史的には、ワクチンの反応原性(例えば、注射部位での腫大、圧痛および痛み)はある場合(例えば、チフスおよび百日咳)には、ワクチンの利便性を理由として許容されてきた。しかしながら、高レベルの反応原性および他の副作用は望ましくなく、また新規なワクチンアジュバントおよび抗原候補の開発に問題となるであろう。刺激的であって且つ望まない反応を誘発しないワクチンアジュバントを製造することに研究努力が注がれている。全細胞チフスワクチンは全身および局所の副作用を誘発し、結果としてこの有用なワクチンおよびワクチン試験時間は、単に反応原性が劣るという理由で、無細胞チフスワクチンに代わられる。
【0007】
本発明は、哺乳動物宿主に生物学的に活性なペプチドをコードした裸プラスミドの使用を教示した特許第5,830,877号の発明とは異なっている。本明細書に記載の発明は、免疫応答を誘発する目的で、皮膚上に一緒に投与するアジュバントおよび、抗原または核酸の使用を教示する。本明細書に記載の発明は更に特許第5,830,877号の発明とは異なっており、生物学的に活性なペプチドが関与する毒性、ペプチドの単離、精製および合成上の問題や費用、および標的組織中に存在するプロテアーゼによる分解から引き起こされるそれらペプチドのインビボ半減期の短さの理由で、核酸中にコードされず且つ宿主細胞によって産生されるペプチドの使用から離れて教示する。これは明らかに、コレラ毒素などのアジュバントの共投与した抗原または核酸への添加から離れて教示している。実際、皮膚からの適用によって、毒性を伴わずに大きな分子(例えば、CT)の免疫応答を誘発する能力の新規性は、本新規性および皮膚への適用によるワクチン処置のためのタンパク質の運搬に関する潜在的なインプリケーション以上の公的な興奮を記載した多数の科学文献を導くことになった。特許第5,830,877号とは違って、本発明は局所的な炎症および過敏状態の刺激にはよらない。特許第5,830,877号とは違って、本発明は抗原、プラスミドまたはRNAの摂取を増大するための細胞膜の浸透性を増大するために、過敏状態または局所的な炎症にはよらない。実際、経皮的免疫化に関する顕著な特徴は、局所的な炎症のないことである。
【0008】
本発明とは違って、特許第5,824,313号では、抗体応答に影響を及ぼす抗原の筋肉注射による、非常に小さい(500ダルトンより少ない)リンパ様器官修飾剤(例えば、1,25−ジヒドロキシ−16−エンビタミンD3およびカルシポトリエン(calcipotriene)またはデヒドロエピアンドロステロン(DEHA)、DEHAコンジナーおよびDEHA−誘導体)の適用を教示している。
【0009】
経皮的免疫化は、皮膚の外部バリヤーを通過する抗原の経路(該経路は不浸透性であると考えられていた)、および抗原への免疫応答の経路の両方を必要とする。フィッシャーの接触皮膚炎は、500ダルトンより大きい分子は通常は皮膚に浸透できないと述べている。トランスフォーマソーム(transferosomes)による免疫応答の誘発、リポソームとの脂質構造の違いについては、ポール(Paul)ら(1995)による報告がある。この文献では、トランスフォーマソームは抗原のためのビヒクル(ウシ血清アルブミンおよび狭間隙(gap)結合タンパク質)として使用され、そして抗原−感作リポソームの補体−媒介溶解についてアッセイされた。抗原による皮膚の浸透の限界は、750ダルトンであると述べられた。それらの研究では、抗原を含有する溶液を皮膚上に置いた場合には免疫応答は誘発されず;トランスファームソームだけが免疫応答を誘発することができた。ポールとクベック(Cvec)(1995)は、「単一のペプチドおよびタンパク質溶液を用いて表皮的に免疫化することは不可能である」とも述べている。
【0010】
それらの文献は、免疫化の際に、抗原またはアジュバントとしてコレラ毒素(85,000ダルトンである)のような分子を使用する我々の成功が、そのような大きな分子は皮膚に浸透しないと予想されており、従って特定の免疫応答を誘発しないと予想されていたので、当該分野によって驚きをもって迎えられた理由を説明している。
【0011】
しかしながら、我々は米国特許出願番号08/749,164(1996年11月14日出願)、米国特許出願番号08/896,085号(1997年7月17日出願)および国際特許出願PCT/US97/21324(1997年11月14日出願)中で、ADP−リボシル化外毒素(例えば、コレラ毒素)を抗原として使用することにより、非常に高い再現性で強い抗体応答を導き出せることを見出した。ADP−リボシル化外毒素(例えば、コレラ毒素)を免疫アジュバントして使用し、別の抗原(例えば、ジフテリアトキソイド)を有する生理食塩水で皮膚に適用させた場合に、全身および粘膜の抗原特異的抗体応答を導き出すことができる。本出願中、我々は浸透増強剤、バリヤー破壊剤、またはそれらの組み合わせを用いた経皮的免疫化がバクテリア外毒素のアジュバント活性を改善可能であることを開示する。
【0012】
我々は、例えば、コレラ毒素(CT)、E.Coli由来の熱不安定性エンテロトキシン(LT)、シュードモナス外毒素A(ETA)、百日咳毒素(PT)および広範囲にわたる様々な抗原例えば不活化狂犬病ウイルス、組換え体(例えば、HIV p55gag)、多糖複合体(例えば、Hib)、音波処置産物、ペルタクチン(pertactin)が皮膚を通過することができ、免疫応答を誘発することができることを見出した。加えて、CT、LT、ETAおよびPT、並びにバクテリアDNAおよびサイトビーン(Cytobines)は皮膚上に一緒に投与された抗原への免疫応答を誘発するためのアジュバントとして作用することができる。従って、破傷風トキソイド(これは皮膚上ではそれ自身は免疫原性ではない)はCTと一緒に皮膚上に置くと強い免疫応答を誘発し得る。我々は、適用部位の下にあるランゲルハンス細胞個体群が免疫系に抗原を運搬するのに好ましい抗原提供細胞であると提案する。アジュバントは直接的であるか、または抗原を認識するリンパ球を通じて抗原提供細胞に作用し得る。
【0013】
我々は、浸透増強の技術に利用できる経皮アジュバントおよび/または抗原に対する免疫応答を増大することを提案する。ハーレー(Hurley)らによれば、「皮膚はその耐久性を真皮に負っているが、その化学的不浸透性を表皮およびほとんど独占的には死んだ外層である角質層に帰する」。例えば、アジュバントしてADP−リボシル化外毒素および溶解性タンパク抗原(例えば、ジフテリアトキソイド)を用いた経皮的免疫化の場合には、角質層の浸透は起こるに違いない。浸透増強技術は、経皮的抗原およびアジュバントが皮膚の角質層を通過する運動を増大するように設計される。
【0014】
更に、我々は定量的および定性的パラメーターによってアッセイされる通り、少なくとも1つの抗原、アジュバントおよび皮膚成分の活性化を用いる経皮的免疫化が免疫応答を増大させるであろうと提案する。製剤中の抗原−アジュバントは、バクテリア外毒素のトリプシン切断によって活性化され得る(例えば、トリプシン−切断LT、還元を伴ったり伴わなかったりする)。製剤の適用部位での皮膚の活性化は、下にあるランゲルハンス細胞個体群の大きさまたは活性化を増大するバリヤー破壊剤(例えば、アセトン、アルコール)を用いることで達成可能であり、またはガングリオシドGM1受容体の量または利用を増大させる酵素もしくは酵素の組み合わせ(例えば、シアリダーゼ活性を有する酵素)によって達成可能である。
【発明の概要】
【0015】
(発明の概要)
本発明の目的は、被験者(被験者は動物またはヒトである)の免疫応答(例えば、体液性および/または細胞性エフェクター)を誘発する経皮的免疫化のための増大システムを提供することである。この運搬システムは、抗原に対する特異的免疫応答を誘発するために、生物体の無傷の皮膚に抗原およびアジュバントからなる製剤の単なる適用を提供する。単純な運搬システムによる免疫応答の誘発には必要ないが、浸透増強またはバリヤー破壊を有する前述のプロセスを補足することは免疫化および/またはワクチン処置を増大可能とする。
【0016】
特に、アジュバントまたは抗原または皮膚は、角質層または表皮の浸透の際に、免疫系の抗原提供細胞(例えば、表皮のランゲルハンス細胞、皮膚の樹状細胞、樹状細胞、小胞の樹状細胞、マクロファージ、B型リンパ球)と遭遇するように、および/または抗原提供細胞が抗原を食するよう誘発するのを助ける。次いで、抗原提供細胞はその抗原をT型およびB型細胞に提供する。ランゲルハンス細胞の場合、次いで抗原提供細胞は皮膚からリンパ節に移動し、抗原をリンパ球(例えば、B型および/またはT型細胞)に提供し、その結果、抗原特異的免疫応答を誘発する。
【0017】
加えて、免疫化プロセスを補足するのに、抗原、アジュバント、皮膚またはそれらの組み合わせの活性化を果たすことができる。
【0018】
抗原特異的B型リンパ球および/またはT型リンパ球(細胞毒性T型リンパ球(CTL)を含む)の発生を導く免疫反応を顕在化することに加えて、本発明の別の目的は抗原特異的ヘルパー(Th−1および/またはTh−2)または遅延型過敏症(DTH)T−細胞族に影響を及ぼす目的で、経皮的免疫化システムを用いることによって、免疫系の成分を正におよび/または負に調節することである。このことはCTおよびLTの弁別的行動によって具現化され、これにより異なるT−ヘルパー応答が生じたり、または経皮的免疫化を用いたインビボ攻撃模型において異なるレベルの保護が生じ得る。
【0019】
(好ましい態様の説明)
本発明の1実施態様において、抗原およびアジュバント(例えば、CTおよびDT)を含有する製剤は、皮膚の浸透増強の後に生物体の無傷の皮膚に適用され、その抗原は免疫細胞に提供され、そして抗原特異的免疫応答は皮膚に穴をあけずに誘発される。その製剤は、製剤の経皮的適用が多数の抗原に対して免疫応答を誘発するような別の抗原または核酸を、または好ましくは2〜20であるが、できるだけ200までの抗原をコードした核酸を含んでもよい。その場合、抗原は同一の出所由来であってもなくてもよいが、抗原は異なる抗原に対して特異的な免疫応答を誘発するために異なる化学構造を有する。抗原特異的リンパ球は免疫応答に関与し、B型リンパ球による関与の場合には、抗原特異的抗体は免疫応答の一部である。
【0020】
本発明の別の態様では、本発明は生物体を処置するのに使用される。抗原が病原体由来である場合、処置は病原による感染、または病原の影響(例えば、毒素分泌物によって引き起こされる該影響)から生物体をワクチン処置する。腫瘍抗原を含む製剤は癌の処置を提供し;アレルゲンを含む製剤はアレルギー性疾患を処置するのに使用され;自己抗原を含む製剤は生物体自身の免疫系によって引き起こされる疾患(例えば、自己免疫疾患)の処置を提供し得る。本発明は、存在する疾患を処置するのに治療学的に使用するか、疾患を予防するのにまたは疾患の発病度および/または持続時間を軽減するのに保護的に使用可能である。
【0021】
本発明の更なる態様において、上記の方法における使用のためのパッチが提供される。パッチは包帯、ならびに有効量の抗原もしくは核酸およびアジュバントを含んでもよい。包帯は密封性であっても、非密封性であってもよい。パッチは浸透増強剤を含有してもよく、または物理的な浸透増強のための装置を含んでもよい。パッチは、パッチの適用により多数の抗原に対して免疫応答を誘発するような別の抗原を含んでもよい。その場合、抗原は同一の出所由来であってもなくてもよいが、抗原は異なる抗原に対して特異的な免疫応答を誘発するために異なる化学構造を有する。有効な処置として、多数のパッチを煩雑な間隔で、または期間中絶え間なく適用してもよい。
【0022】
その上、本発明の更に別の態様では、製剤を1回もしくは多数回の適用、またはアジュバントもしくは抗原/核酸のための別のパッチを用いて、1より多いドレイニングリンパ節領域の上にある無傷の皮膚に適用する。その製剤は、無傷の皮膚に適用することにより多数の抗原に対して免疫応答を誘発するような別の抗原を含んでもよい。そのような場合、抗原は同一の出所由来であっても、なくてもよいが、抗原は異なる抗原に特異的な免疫応答を誘発するために異なる化学構造を有する。
【0023】
製剤を、免疫化の他の経路と合わせて、免疫応答を追加免疫するか(boost)、または初回免疫させる(prime)ために、皮膚に適用可能である。従って、1回または多数回の適用による経皮的免疫化を用いた初回免疫に続いて、同一抗原または改変抗原を用いた免疫化を追加免疫するための経口、鼻または非経口技術を行ってもよい。該製剤は無傷の皮膚に適用させることにより、多数の抗原に対して免疫応答を誘発するような別の抗原を含んでもよい。そのような場合、抗原は同一の出所由来であっても、なくてもよいが、抗原は異なる抗原に特異的な免疫応答を誘発するために異なる化学構造を有する。
【0024】
抗原および活性化アジュバントに加えて、製剤はビヒクルを含んでもよい。例えば、製剤はAQUAPHOR(ペトロラタム、鉱油、鉱蝋、羊毛脂蝋、パンテノール、ビサボール(bisabol)およびグリセリンの乳剤)、乳剤(例えば、水性クリーム)、マイクロエマルジョン、ゲル、o/w型乳剤(例えば、油性クリーム)、無水脂質およびw/o型乳化剤、脂肪、蝋、油、シリコーンおよび湿潤剤(例えば、グリセロール)を含んでもよい。
【0025】
抗原は生物体に感染することができる病原(例えば、バクテリア、ウイルス、菌または寄生虫)、または細胞(例えば、腫瘍細胞または正常な細胞)またはアレルゲンまたは生物兵器剤の由来であってもよい。その抗原は腫瘍抗原であるか、または自己抗原であってもよい。化学的には、抗原は炭水化物、糖脂質、糖タンパク質、脂質、リポタンパク質、リン脂質、ポリペプチドまたは融合タンパク質(組換え型)または上記の化学的複合体であってもよい。抗原の分子量は500ダルトンより多くてもよく、800ダルトンより多いのが好ましく、1000ダルトンよりも多いのが一層好ましい。
【0026】
抗原は組換え手法、化学合成または天然物からの精製によって得ることができる。経皮的免疫化の1利点は、抗原の精製が不必要なことであり、例えば全生物を音波処置し、免疫化に使用することができる。そういった製造からの生成物を注射することに伴う毒性レベルは、許容するにはあまりにも毒であることがよくあり、例えばLPSは注射されれば致命的であるが、皮膚上では無毒である。タンパク質性抗原または多糖複合体が好ましい。抗原は細胞のない形態に少なくとも一部精製することができる。別法として、抗原は生きたウイルス、減毒した生きたウイルス、または失活したウイルス、音波処理もしくは溶解した全バクテリア、寄生虫または界面活性剤で処理したウイルス、またはそれらの画分の形態で得ることができる。
【0027】
アジュバントの封入により、免疫応答の増強またはモジュレーションが可能となる。その上、適当な抗原またはアジュバントを選別することにより、体液性免疫応答、細胞免疫応答もしくは粘膜応答、特異的抗体イソタイプ(例えば、IgM、IgD、IgA1、IgA2、IgE、IgG1、IgG2、IgG3および/またはIgG4)および/または特異的T−細胞群(例えば、CTL、Th1、Th2および/またはTDTH)の優先的な誘発が可能となる。場合により、抗原、アジュバントは、抗原またはアジュバントをコードした核酸(例えば、DNA、RNA、cDNA、cRNA)によって、核酸に加えられた抗原またはアジュバントに応じて、製剤中に与えることができる
この技術は遺伝子的免疫法と呼ばれる。
【0028】
本発明で使用する用語「抗原」とは、生物体の免疫細胞に提供された場合に、特定の免疫応答を誘発する物質を意味する。抗原は、単一免疫原性エピトープまたはB−細胞受容体(すなわち、B細胞の膜上の抗体)またはT−細胞受容によって認識された免疫原性エピトープ多重度を含んでもよい。分子は抗原およびアジュバント(例えば、コレラ毒素)の両方であってもよく、したがって、製剤は1成分のみを含んでもよい。抗原は全生物体(例えば、バクテリアまたはビリオン)として提供され;抗原は抽出物ももしくは溶解物から、全細胞もしくは膜のみから得ることができ;または抗原は化学的に合成するか、もしくは組換え手法によって産生することができる。
【0029】
本発明で用いる用語「アジュバント」とは、抗原に対する免疫応答を誘発するのを助けるために製剤に加える物質を意味する。
【0030】
本発明で用いる用語「有効量」とは、抗原特異的免疫応答を誘発する抗原の量を意味する。そのような免疫応答の誘発は、処置(例えば、免疫保護、脱感作、免疫抑制、自己免疫疾患のモジュレーション、癌免疫監視の強化または確立された感染性疾患に対する治療学的ワクチン処置)を提供し得る。
【0031】
表皮とは、我々はケラチノサイト(kertinoctyes)の基底層および基底板から角質層まで及びそれに及ぶ皮膚の細胞を意味する。
【0032】
経皮の定義は、一般には「皮膚から血流中への吸収形態での薬物療法との関連、そのもの、またはその供給(〜薬物運搬)(〜ニトログリセリン)(〜ニコチンパッチ)」である。2フレデリック(Frederick)C.ミシュ(Mish)らによる編、Merrian-Webster’s Collegiate Dictionary、10刊(スプリングフィールド、MA:Merrian-Webster社、1997),861。
【0033】
本発明で使用する用語「ドレイニングリンパ節領域」とは、集めたリンパ液が決まったリンパ節の組(例えば、頚リンパ節、腋窩リンパ節、鼡径リンパ節、滑車上顆リンパ節、膝窩リンパ節、腹および胸郭のリンパ節)を通してろ過された、解剖学上の領域を意味する。
【0034】
皮膚の浸透は、皮膚の水和作用を増加させる技術を用いて増大させることができる。ロバート(Robert)およびウォルカー(Walker)(1993)らによれば、「角質層(SC)の水和の状態は、ある溶質の浸透性吸収の速度を決定する際の最も重要な要素の1つである。」。水和の状態は、皮膚を通して物質を吸収する速度を決定する際に、拡散の原理(principal)と相互作用する。更に、ハーレー(Hurley)は以下のように述べている。
角質層からの物質の吸収は、フィック(Fick)らの拡散の法則によれば、拡散によって起こると考えられ、該法則とは化学物質の吸収速度は膜の濃度差に比例するというものである。従って、皮膚表面上での溶質の高濃度と角質層下の濃度なしまたは低濃度の間の濃度勾配が本プロセスの推進力である。吸収の貫角膜(transcorneal)運動とは古典的に細胞通過(percelluar)、すなわち高密度な角質層の細胞壁を直接に通過することであって、細胞間での通過ではないことを意味する。細胞内タンパク質フィラメントは、極性(水溶性)化合物の経路として記載され、およびフィラメント間の媒質は非極性(脂質可溶性)物質についての経路として機能する。完全には分類されない多数の細胞物理学機構によって、水和はほとんどの物質についての角質層の浸透性を増加させる。」。従って、皮膚の水和が皮膚の浸透を増大させることは一般的には知られているが、このことが起こる機構は完全には明らかではなく、従って本発明の以前には予想することはできず、大きな分子(7750ダルトン)の浸透が可能であるとは考えられていなかった。
【0035】
水和を増加させるためにビヒクルを使用することはよく知られている。蒸気−不浸透性のプラスチックフィルム(例えば、ポリビニリジン、ポリエチレン)などの密封包帯は、主に角質層の増加した水和による吸収、結果としてのコルネオサイトの膨大、および細胞間コリドー(corridor)への水の摂取を増大させる。親水コロイドパッチも皮膚浸透作用を増大させるのに使用可能である。ステロイドの吸収は、プラスチック密封フィルムを用いた場合、100倍以上増加させることができる。一般的に、グリース、油または不浸透性のプラスチックは密封によって、大部分の水和を誘発する。例えば、イドソン(Idson)(1978)、ホリングスビー(Hollingsbee)(1995)およびマッケンジー(Mckenzie)とストートン(Stoughton)(1969)を参照。水和の使用または抗原およびアジュバントについての水和のためのビヒクルの使用は、我々の発明の以前は浸透としては知られていなかった。水和された状態でさえも、皮膚は小さい分子に限定していると考えられていた。
【0036】
皮膚からの薬物の吸収を増大させることが知られている適当な薬剤については、スローン(Sloan)のUse of Solubility Parameteres from Regular Solution Theory to Describe Partitioning-Driven Processes、5章、「Prodrugs: Topical and Ocular Drug Deliverly」(Marcel Dekkerによる1992)およびその文章内の他の場所に記載されている。
【0037】
これらの技術(および薬物運搬を促進するのに従来使用されていた他の技術)は、当業者が過度な実験を行なわずに、本発明の方法を使用するための核酸の製造に適用させることができると期待される。この適合を例示する具体的な例については以下に述べる。
【0038】
皮膚への浸透の増大に関する分野の現状については、Pharmaceutical Skin Penetrration Enhancement、ケネス(Kenneth)A.ウォルター(Walter)およびジョナサン ハッドグラフト(Jonathan Hadgraft)、Marcel Dekker出版,ニューヨーク,1993に記載されている。
【0039】
皮膚浸透性および/または皮膚水和は、異なる群、例えば湿潤剤(例えば、グリコール、グリセロール)、散剤(例えば、クレー、振とうローション)、油/水(O/W)型乳剤(例えば、水性クリーム)、水/油型乳剤(例えば、油性クリーム)、乳剤性基剤(例えば、無水脂質およびO/W型乳化剤)、吸収性基剤(例えば、無水脂質およびW/O型乳化剤)、親油性基剤(例えば、脂肪、ワックス、油、シリコーン)および密封包帯(例えば、プラスチック包装)から適当なビヒクルを選択することによって、期待することができる。
【0040】
本発明においては、浸透を増進するための、角質層タンパク質を破壊する他の方法を用いることもできる。サリチル酸は、吸収を増加させるケラチン分解剤である。尿素は、皮膚のケラチン分解剤および水和剤の両方として作用し、浸透増進剤として作用することができる。ホスホリパーゼA2およびホスファチジルコリン依存性ホスホリパーゼCは、浸透を増進するための表皮酵素として用いることができる。他の浸透増進剤として、エタノール、アセトン、洗剤、ベース、ネア(コピーライト)、プロピレングリコール、ピリオリドン、ジメチルアセタミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アルキルスルホキシド、酸化ホスフィン、界面活性剤およびアゾンなどのカプロラクタムが挙げられる。浸透増進剤として用いることができる他の化合物として、アミンおよびアミド、アルキルN,N−分配−アミノアセテート、デシルメチルスルホキシド、ピロリドン、ピロチオデカン(HPE−101)、ベンジルアルコニウム、ベンジルアルコニウムクロリドポリマー、シリコンベースポリマー、脂肪酸、環式尿素、テルペン、リポソームおよびシクロデキストリンが挙げられる。浸透増進剤は、当業界で公知であり、たとえば、“医薬的浸透増進”(Marce Dekker、1993)に記載されている。浸透増進用に用い得るたの技術として、イオン導入、超音波、電気穿孔、テープストリッピング、遺伝子銃または他の推進用装置、TBタインテストに用いるようなタイン(Mono−Vaccシステムによって提供されるものなど)または皮膚の外表面を貫通するマイクロニードルの使用、または皮膚の外層を除去する研磨剤および脂質抽出が挙げられる。
【0041】
角質層の破壊に用い得る他の装置(米国においてペンシルバニア州スイフトウォーターのConnaught Laboratories,Inc.によって市販されている)は、一方の端にシリンジプランジャーおよび他方の端にタインディスクを備えるプラスチックコンテナからなる。タインディスクは、表皮細胞の最外層はひっかくが、表皮を貫通しない長さの非常に多数の細い直径のタインを支持する。MONO−VACCキットにおける各タインは、古いツベルクリンで被覆されている;本発明においては、各針を抗原/核酸およびアジュバントを含む医薬組成物で被覆する。本発明を使用して該装置を用いる場合、表皮を貫通しないので、装置の製品に含まれる使用指示書には従わない。この点に関して、該装置は、皮膚の最外層、角質層、上部表皮を破壊して経皮免疫感作を増進するための表面破壊に使用することができる。この具体例において用いることもできる類似した装置は、現在アレルギーテストに用いられている装置である。
他のアプローチは、バリヤー破壊である。全身投与されたHMGCoAレダクターゼインヒビターおよび同様の薬物を用いるコレステロール合成の阻害によって、バリヤー機能が妨げられ、製剤成分の浸透を増進される。
【0042】
皮膚を形質転換して経皮免疫応答を増強しうることも考えられる。CTおよびLTは、Bサブユニットによって結合するガングリオシドGM1を介して効果を発揮する。ガングリオシドGM1は、すべての哺乳動物細胞に見出される遍在性細胞膜糖脂質である。胃腸管内において、五量体のCT Bサブユニットが細胞表面に結合する場合、親水性の孔が形成され、Aサブユニットが脂質二重層を通って浸透することができる。皮膚は、30−35ナノモル NeuAC/gの濃度でガングリオシドを含有する。皮膚ガングリオシドは、上述したランゲルハンス細胞活性化などのメカニズムを介した経皮免疫感作を開始するための可能な標的である。皮膚を活性化するための、ADPリボシル化外毒素による経皮免疫感作の効果を増進するひとつの可能な方法は、皮膚細胞内のGM1ガングリオシド分子の数を増加することによる。これは、毒素をシアリダーゼ−安定コレラ毒結合ガングリオシドGGnSLC(ガングリオシドGM1)内へ結合しないように、ガングリオシドを転換するシアリダーゼを用いて受容体細胞を活性化することによって達成された:
「おそらく最もよく知られたシアリダーゼ(またはノイラミニダーゼと呼ばれることも多い)源がコレラビブリオであることは興味深い。このシアリダーゼは毒素受容に適したより多くの受容体を作ることによる疾患の自然の歴史において一部分を演じることができたか?もしそうなら、いずれの活性な免疫感作剤も、抗ノイラミニダーゼエレメントを含有すべきか?腸内スクラッピングをシアリダーゼとともに培養すると、毒素への結合能力が著しく増するが、このことは、コレラ毒結合ガングリオシドへのシアリダーゼ−不安定ガングリオシドの転換によるだけでなく、おそらく糖タンパク質を破壊することによって、他の点ではアプローチ不能なガングリオシド結合部位の位置曝露によるものである。シアリダーゼでイヌの腸を前処理すると、産物は、コレラ毒に応答して、より液性になる;腎臓細胞をシアリダーゼで処理すると、コレラ毒に対するその応答性が増大する;ハト赤血球細胞をシアリダーゼで前処理すると、コレラ毒によって、その細胞内のアデニル化シクラーゼの活性化が増大する」
コレラの生化学;コレラ:The American Scientific Experience、1947−1980、van Hayningen,W.E.およびSeal,J.R.編、ウォーター・ビュー・プレス、ボールダー、1983、263頁(引例省略)。
【0043】
皮膚をシアリダーゼで皮膚を処理すると、CTなどのADPリボシル化外毒素が経皮免疫感作によって標的化された免疫細胞へ結合するのが増大するという効果が得られる。これは、経皮免疫感作に対する、ある種の皮膚の活性化を表す。その上、ノイラミニダーゼは、同時に浸透を増進する表皮酵素として作用する。
浸透増進剤の使用は、皮膚の活性化に関連して用いられる。経皮免疫感作に対する皮膚の活性化は、アセトンまたはアルコールによる拭き取りなどの処理の後にも起こる。皮膚のアセトンによる拭き取りを用いる皮膚バリヤーの破壊が、ランゲルハンス細胞密度を80%まで増加し、アレルゲンを接触させる反応がインビボで増大することが明らかにされている。もし、ランゲルハンス細胞の密度が増加するならば、次いで、免疫応答の強度が増大する。テープストリッピング、ドデシル硫酸ナトリウム、アルコールによる拭き取り、または水酸化カルシウムなどの脱毛剤の使用によって、同様の化学的破壊がランゲルハンス細胞の数を増加することが予測され、その結果として、経皮免疫感作の皮膚成分の活性化が起こる。浸透増進剤の使用およびアレルギー性接触皮膚炎におけるバリヤー破壊については、ProkschおよびBrasch(1996、1997)を参照せよ。
【0044】
浸透増進は、免疫感作直前のアルコールによる拭き取りといったような単純な方法の実行、浸透増進性化合物または技術の併用、またはランゲルハンス細胞の数を増やす24時間前のアセトンによる拭き取りなどの技術、によって活性化される。医薬製剤を製造する手順は、当業界で公知であり、それによって、抗原およびアジュバントを医薬的に許容しうる担体ビヒクルと合わせる。適当なビヒクルおよびその調製については、E.W.Martinの“レミントンの医薬科学”などに記載されている。ヒトまたは動物に投与するのに適した医薬的に許容しうる組成物を製造するために、このような製剤は、有効量の抗原およびアジュバントならびに適当量のビヒクルを含む。製剤は、クリーム剤、乳剤、ゲル剤、ローション剤、軟膏、ペースト、液剤、懸濁剤、または他の当業界で公知の剤形で適用される。特に、皮膚含水、浸透またはその両方を増進する製剤が好ましい。希釈剤、賦形剤、結合剤、安定剤、保存剤および着色剤などの他の医薬的に許容しうる添加剤を配合してもよい。
【0045】
いずれかの特定の理論に結びつくものではなく、我々の観察を説明するものにすぎないが、経皮免疫感作デリバリースステムが、免疫応答が誘発される免疫系細胞へ抗原を運搬することが仮定される。抗原は、皮膚の正常な保護外層(角質層など)を通過し、直接または加工された抗原をTリンパに提示する抗原提示細胞(マクロファージ、組織マクロファージ、ランゲルハンス細胞、樹状細胞、皮膚樹状細胞、Bリンパ球またはクップファー細胞など)を通して、免疫応答を誘発する(Stingら、1989;StreileinおよびGrammer、1989;Tewら、1997を参照)。必要に応じて、抗原は、小胞または皮膚小器官(汗腺、脂腺など)を介して角質層を通過することができる。
【0046】
細菌のADP−リボシル化外毒素(bARE)による経皮免疫感作は、抗原提示細胞(APC)のうち、最も効率のよいものであることがわかっている、表皮ランゲルハンス細胞を標的とすることができる。我々は、bAREが、生理的食塩水の溶液として皮膚の上皮へ適用した場合に、ランゲルハンス細胞を活性化することを発見した。活性化されたLTなどのアジュバントは、ランゲルハンス細胞の活性化を非常に増進する。ランゲルハンス細胞は、抗原のファゴサイトーシスを介した特異的免疫応答、それらがAPCとして作用して抗原をリンパ球へ提示するリンパ節への移動、およびそれによる強力な抗体応答を指示する。皮膚は一般に、生物侵入に対するバリヤーであるとみなされており、このバリヤーが不完全であるかどうかは、皮膚を介しての生物侵入に対する免疫応答を組織化するように設計されている上皮のいたるところに分配された多数のランゲルハンス細胞によって証明される。Udey(1997)によれば:
「ランゲルハンス細胞は、すべての哺乳動物の層状扁平上皮に存在する骨髄誘導細胞である。それらは、炎症を起こしていない上皮に存在するすべての補助細胞の活性を含み、現在のパラダイムは、上皮的に適用された抗原に対して指示された免疫応答の開始および伝播にとって必須である。ランゲルハンス細胞は、上皮およびソリッド器官ならびにリンパ組織に広く分散しているが、めったに説明されることのない強力な補助細胞(樹枝状細胞)のファミリーのメンバーである。」
「ランゲルハンス細胞(およびおそらく他の樹枝状細胞)は、少なくとも2つの別のステージをもつライフサイクルを有することが今や認識された。上皮に位置するランゲルハンス細胞は、抗原をわなにかける見張り細胞の定常的ネットワークを構成する。上皮ランゲルハンス細胞は、微生物などの異物を摂取することができ、複合抗原の有効な加工者である。しかし、それらは、低レベルのクラスIおよびIIのMHC抗原および共刺激性分子(ICAM−1、B7−1およびB7−2)のみを提示し、準備ができれいないT細胞に対する刺激性は乏しい。抗原に接触した後、幾つかのランゲルハンス細胞は、活性化され、上皮を出て、それらが成熟樹枝状細胞として存在する局所的リンパ節のT細胞依存性領域へ移動する。上皮脱出およびリンパ節への移動の過程において、抗原運搬上皮ランゲルハンス細胞(今や‘メッセンジャー’)は、形態学的、表面表現型および機能において劇的な変化を示す。上皮ランゲルハンス細胞とは逆に、リンパ球樹状細胞は、本質的に非食細胞性であり、タンパク質抗原を加工する効率は悪いが、高レベルのクラスIおよびIIMHC抗原および種々の共刺激性分子を急送し、同定されていないナイーブT細胞の最も強力なスティミュレーターである。」
【0047】
我々は、上皮ランゲルハンス細胞の強力な抗原提示能力が、経皮的にデリバリーされたワクチンにとって活用されうることを構想する。皮膚免疫系を用いる経皮免疫応答は、角質層(角質化した細胞および脂質からなる皮膚の最外層)のランゲルハンス細胞のみへのワクチン抗原の受動的伝播を介したデリバリーおよびそれに続く、抗原を摂取し、B細胞小胞および/またはT細胞依存性領域へ移動し、Bおよび/またはT細胞へ抗原を提示するためのランゲルハンス細胞の活性化を要求する。他のbARE(ジフテリア毒など)抗原が、ランゲルハンス細胞によって食作用される場合、次いでこれらの抗原は、T細胞に提示するためのリンパ節に運ばれ、続いてその抗原(ジフテリア毒など)に特異的な免疫応答を誘発する。したがって、経皮免疫感作の特徴は、ランゲルハンス細胞の活性化、バクテリアADP−リボシル化外毒素、ADP−リボシル化外毒素結合サブユニット(コレラ毒Bサブユニットなど)または他のアジュバントあるいはランゲルハンス細胞活性化物質である。次いで、アセトンによる拭き取りなどの方策を用いるランゲルハンス細胞の皮膚集団の増加が、経皮免疫応答を増大することが予測しえた。
【0048】
より一般的に知られる皮膚免疫応答の範囲は、接触皮膚炎およびアトピーに代表されるものである。LC活性化の病的現れである接触皮膚炎は、抗原に食作用し、リンパ節に移動し、抗原を提示し、皮膚へ移動して、影響を及ぼされた皮膚部位に生じる強い破壊的な細胞応答を引き起こすT細胞を感作するランゲルハンス細胞によって指示される(Dahl、1996;Leung、1997)。アトピー性皮膚炎は、同様の様式でランゲルハンス細胞を用いるが、Th2細胞と結び付けられ、一般的に高レベルのIgE抗体に関連がある(Dahl、1996;Leung、1997)。
これに対して、コレラ毒および関連bARE経皮免疫感作は、免疫感作後24、48および120時間の時点において、リンパ球浸潤がないことによって明らかな、表面上および微視的な免疫感作後の皮膚の所見が見られない(すなわち、非炎症性皮膚)新規な免疫応答である。これは、単純な閉塞性パッチの下でヒトをLTで免疫感作したフェーズトライアルの完了によって著しく明らかである。強力な抗LTおよびIgA抗体が刺激された。2人のボランティアが免疫感作部位で行われる生検を受けた。微視的評価によって炎症が見られないという臨床上の観察が確認された。これは、“非炎症性表皮に存在するすべての補助細胞の活性を含み、現在のパラダイムにおいて、皮膚の上から適用された抗原に対する免疫応答の開始および伝播にとって必須である” ランゲルハンス細胞が、補充されていたかもしれないことを示唆している(Udey、1997)。高レベルの高原特異的IgG抗体および産生される抗体のタイプ(IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3およびIgA)の両方ならびに抗CTIgE抗体がないことによっても、経皮免疫応答の唯一性が示される。しかし、他の免疫細胞は拘束することができ、メカニズム上の推測から本発明を制限すべきではない。
【0049】
したがって、我々は、皮膚の表面に適用された細菌誘導性毒がランゲルハンス細胞を活性化合物することができること、およびTCIが高レベルの抗原特異的循環性IgG抗体として現れる強力な免疫応答を誘発することを見出し、浸透増進剤が免疫応答を強化することを予測した。経皮アジュバントおよび浸透増進剤は、経皮免疫感作に用いて、IgG抗体または、皮膚の上に置いたときに他の点ではそれ自体免疫原生のないタンパク質に対するT細胞応答を強化することができる。
ランゲルハンス細胞の経皮標的化は、それらの抗原提示機能を不活性化するのに用いることもでき、それによって、免疫感作または感作を予防することができる。ランゲルハンス細胞または他の皮膚免疫細胞を起動し、さらに負の方向にそれらを調節する技術として、抗炎症性ステロイドまたは非ステロイド剤(NSAID)、シクロホスファミドまたは他の免疫抑制剤、インターロイキン10、インターロイキン1に対するTGFβモノクローナル抗体、ICEインヒビターまたはスタフィロコッカスエンテロトキシンA(SEA)を介する誘発皮膚ランゲルハンス細胞消耗などのスーパー抗原を介した消耗などが挙げられる。
【0050】
経皮免疫感作は、CT、LTまたはCTBなどのサブユニットのガングリオシドGM1結合活性を介して誘発することができる。ガングリオシドGM1は、すべての哺乳動物細胞にみられる遍在性細胞膜糖脂質である。五量体CTBサブユニットが細胞表面に結合するとき、親水性孔が形成され、Aサブユニットが脂質二重層を貫通できるようになる。
我々は、CTまたはCTBによる経皮免疫感作が、ガングリオシドGM1結合活性を要求することを明らかにしている。CT、CTAおよびCTBでマウスを経皮免疫感作するとき、CTとCTBのみが免疫応答を引き起こす。CTAは、ADP−リボシル化外毒素活性を含むが、結合活性をもつCTとCTBのみが、免疫応答を誘発することができ、このことは、Bサブユニットが皮膚を免疫感作するのに必要十分条件であることを示している。我々は、ランゲルハンス細胞または他の免疫細胞は、細胞表面に結合するCTBによって活性化されるが、Aサブユニットが同時に存在することにより、より強く活性化されるとの結論を下す。
【0051】
本発明の免疫感作プロセスにおける皮膚成分の活性化に加えて、抗原および/またはアジュバントが免疫感作を活性化して免疫感作を増強することができる。CTが分泌されるとき、トリプシン認識部位に開裂が生じ、毒素が活性化される。しかし、LTは、無傷のそのトリプシン認識部位で分泌される。LTが胃腸管内で分泌され、それによってトリプシンなどの胃腸作用剤に曝露されるとき、LTのA1およびA2サブユニットを結合するタンパク質分解的感受性をもつ残基が切断され、A1サブユニットがADP−リボシル化Gタンパク質へ許可され、したがってその毒素効果を発揮する。皮膚におけるトリプシンおよび関連作用剤の欠如は、LTのA1およびA2サブユニットを結合するタンパク質分解的感受性残基のトリプシン切断を防止し、そのアジュバント活性を減少させる。
【0052】
これらの2つの細菌性エンテロトキシンは、共通して多くの特徴をもつ。LTおよびCTは、同じサブユニット数(A2:B5)および配置をもち、同じ生物学的作用機構をもつ。LTとLCを比較すると、75−77%のアミノ酸配列類似性が両方の鎖に見出だされ、最も大きな差異は、それぞれのA鎖の192−195位で起こる。この部位において、トリプシンによるA鎖の切断が起こり、該部位は、A鎖の内部ジスルフィド結合を形成する2つのシステイン残基の間に位置を定められる。Mekalanosら、1979;Spangler、1992;およびSniderman、1995などを参照せよ。我々は、分子間のこれらの構造的差異がそれらのエンテロトキシンとしての特性のみならずアジュバントとして機能する能力にも重大な影響を及ぼすことを提案する。
【0053】
V.choleraeによって産生されたCTとは異なって、最初に細菌の細胞から単離されたとき、LTは、完全には生物学的に活性ではない。細菌毒素のA−Bモデルに一致して、LTは、完全に活性になるために、トリプシンのタンパク質分解およびジスルフィド還元を必要とする(Sniderman、1995)。タンパク質分解的加工の欠如において、酵素的に活性のあるA1部分はA2成分から解離することができず、腸上皮細胞の基底外側表面上にあるその標的(アデニレートシクラーゼ)に到達することができない。単離されたマテリアルの活性化におけるこの差異から、生物学上のシステムにおけるLTおよびCTへの応答閾値の差異が生じる。たとえば、CTは、マウス腸内で、5〜10μgの検出可能な正味流体の分泌を誘発する。LTはこのアッセイにおいて、50〜100μgの検出可能な正味分泌を誘発する。ウサギの結紮されたイリアル(illeal)ループにおいて、差異は、より劇的であり明確である。しかし、重要なことには、LTがトリプシン様特異性をもつタンパク質分解性酵素に曝露されるとき、どのような生物学的アッセイシステムを用いても、分子はCTから区別することができなくなる(ClementおよびFinkelstein、1979;DickensonおよびClements、1995)。
【0054】
Spangler(1992、引例添付せず):
「コレラ菌および大腸菌の両方において、サブユニットAは、一本鎖ポリペプチドとして合成される。CTAは、コレラ菌ヘマグルチニン/プロテアーゼによるコレラ菌からの分泌中に第192および195残基の間でタンパク質分解的にニックされ、第187および199残基の間のジスルフィドブリッジを介して共有的に結合する2つのポリペプチドA1(Mr=28826)およびA2(Mr=5407)になる。逆に、LTは、大腸菌のペリプラズム内に残り、ニックされない。遺伝子工作されたコレラ菌の菌株に導入される場合、LTは、CTと同じ仕方で分泌されたが、ニックされないままである。したがって、タンパク質分解的加工は、分泌にとって必要条件ではない。しかし、精製されたLThはインビトロでニックすることができ、これは、ニックされるLTAの無能性を示すというよりもむしろ、Hirstらによって用いられた突然変異ビブリオが、ニックを触媒するには不十分な可溶性ヘマグルチニンを含むこと示唆している。大腸菌内へ工作されたプラスミドを介して導入される場合、CTは、ニックされないままであり、細胞は大腸菌に結合される。したがって、大腸菌内のCTおよびLTの加工における欠如は、大腸菌がニックおよび毒素分泌不能であることに関連する。この不能であることから、コレラ菌と比較した場合に、大腸菌誘発性腸疾患の重篤度が低くなっているを説明することができる。CTおよびLTの両方において、A1およびA2を結合するジスルフィド結合は、還元されないままであり、したがって、細胞内は入るまで毒素は本質的に不活性である。」
「完全なAサブユニットおよびホロトキシンは、A1ポリペプチドと比べると、相対的に不活性である。触媒活性は、A1およびA2を結合するジスルフィド結合(A1:Cys−187、A2:Cys−199)の還元を必要とする。A1−Arg192およびA2:Met195におけるA2ポリペプチドの開始の間の切断は、ビブリオからのCTの分泌中に起こり、トリプシン消化はLTに対するインビトロでの目的にかなう。CTA2からCTA1を放出する還元は、種々の作用剤(通常、インビトロではジチオスレイトールまたは2−メルカプトエタノールまたはチオール:プロテインオキシレダクターゼ)によって成し遂げられる。外来性還元剤および還元の機構はわかっていない。毒素の膜受容体への見かけの結合と細胞内的に修飾された基質の最初の出現との間で観察された約16分のタイムラグは、挿入またはトランスロケーションに続いてまたはその最中に生じるためにこのステップに要求された時間に関連する。」
【0055】
LThは、LTホロ酵素を表す。したがって、もしトリプシン処理LTが経皮免疫感作に用いられるべきであったなら、我々は、ジスルフィド結合の破壊には、同様のメカニズムが起こっていることを提案する。これは、マウスのY−1バイオアッセイにおいて、LTのトリプシン活性化に対して示されるものであり、CTと比べた場合に、LTは、同様に強力であるかまたはより強力であり、非処理LTに対してさらにより強力である(DickinsonおよびClements、1995)。
我々は、アジュバント活性およびLTの免疫原性を増強するために、皮膚に適用する前に、トリプシンまたは同様の化合物を用いて、LTなどの製剤の成分を活性化することを提案する。LTの活性化は、抗原としてのLTに対する免疫応答を増強することも予測される。経皮免疫感作に対する活性化アジュバントは、ADP−リボシル化外毒素であるのが好ましい。要すれば、アジュバントの活性化に加えて、経皮デリバリーシステムにおいて含水または閉塞性包帯を用いることができる。
【0056】
さらに、LTは、炭水化物含有マトリックスに対して並外れた親和性をもつ。特に、LTは、グリコプロテインおよびリポサッカリドなどのガラクトースを含有する生物学的分子のアレイに結合する。LTのこのレクチン様特性から、GM1のみに結合するCTよりも、LTの方が、哺乳動物細胞において幅の広い受容体分配が得られる。また、2つの分子は、Bサブユニット全全細胞コレラワクチンを受けたボランティアにおけるLT関連大腸菌下痢に対する免疫拡散実験によって証明されたように、多くの免疫学的差異をもつ。LTおよびCTは異なるヘルパーT細胞応答を誘導する。粘膜アジュバントとして用いる場合、インターフェロン2またはγインターフェロンではなく、インターロイキン4および5の生産によって証明されたように、CTは、幾つかの場合に、パイアー斑および脾臓中のTh2型細胞を選択的に誘発する:一方、LTは、Th1とTh2細胞の両方を誘発し、優勢的に抗原特異的IgA応答を誘発する。まとめると、これらの発見は、LTおよびCTは、みかけの構造的類似性にもかかかわらず、独特の分子であることを実証している。このような特異な性質は、毒素それ自体およびにLTをアジュバントとして用い得る抗原の両方に対して産生される免疫応答のタイプを扱うのに有用なCTに類似した効能をもつように、LTを活性化する能力をつくる。トリプシン切断部位の突然変異体などの遺伝子的に改変されたトキソイドを経皮免疫感作によって活性化することも可能である。このような突然変異毒素は、天然の毒素を摂取したり吸い込んだりするリスクを避けうるので有用である。
【0057】
同様の仕方で、PTを活性化してそのアジュバントおよび抗原活性を増強することができる。六量体のPTタンパク質のS1サブユニットは、ADP−リボシルトランスフェラーゼ活性を含むが、残りのサブユニットは、Bドメインを含む。LTに類似して、PTは、S1サブユニットとBオリゴマーの関連において役割を演じるトリプシン切断部位とジスルフィド結合部位の両方をもつ。トリプシン切断による活性化、ジスルフィド結合の破壊またはこれらの両方が、経皮免疫感作という状況において、PTのアジュバントおよび抗原活性を増強することが考えられる。活性化は、標的化という形体をとることもでき、六量体をサブユニットへ破壊することによって達成される。たとえば、PTサブユニットS3は、単球のグリコリピドに排他的に結合し、皮膚におけるランゲルハンス細胞の標的化に用いることができる。
【0058】
抗原またはアジュバントの活性化は、抗原およびアジュバントドメインを含む融合タンパク質の生産による、DNAを用いる経皮免疫感作というコンセプトまで拡張できる。この方法によって、CTあるいはLTといったようなADP−リボシル化外毒素をコードし、マラリアまたはHIV抗原などの別の抗原を同時に発現するように構築されたプラスミドを含水溶液または閉塞性パッチにて皮膚に置き、次いで、ランゲルハンス細胞によって取りこむことができる。CTまたはLTといったような融合タンパク質のADP−リボシル化外毒素成分の発現は、ランゲルハンス細胞を活性化させ、その移動およびリンパ節での抗原提示を引き起こし、それによってコードされた抗原に対する免疫応答が誘発される。他の具体例は、プラスミドとアジュバントのコンジュゲーションを含む;APCを標的化するためのプラスミドへのIgGのFcタンパク質。類似の免疫感作が、CTあるいはLTといったようなADP−リボシル化外毒素を発現するプラスミドおよびマラリアまたはHIV抗原などの抗原を発現するもう1つのプラスミドを用いて達成される。多価免疫感作のために、多数の抗原のための単一構築物上の多数の遺伝子を用いるか、多数のプラスミドを用いて、同時に抗原をデリバリーすることができるということが考えられる。ケモカイン(デフェンシン1または2、RANTES、MIP1−α、MIP−2、インターロイキン8など)またはサイトカイン(インターロイキン1β、2、6、10または12;γインターフェロン;腫瘍壊死因子α;または顆粒球−単球−コロニー刺激因子など)(NohriaおよびRubin、1994)、熱ショックタンパク質もしくは誘導体、森林型熱帯リーシュマニアLeIFの誘導体(Skeikyら、1995)、コレラ毒トキシンB、リポポリサッカリド(LPS)誘導体(脂質Aまたはモノホスホリル脂質Aなど)またはスーパー抗原(Salogaら、1996)または他のADP−リボシル化外毒素などの他の分子または化合物をコードするプラスミドを、タンパク質抗原から誘導することができる。
【0059】
ADP−リボシル化因子によるCT活性を増強するための、製剤への界面活性剤およびホスホリピドの添加(Spangler、1992など)、などの経皮アジュバントを活性化する他の手段も有効である。
アジュバントまたは抗原活性化を利用する免疫感作において、製剤中のアジュバントまたは抗原成分の修飾は、アジュバントおよび/または抗原が活性化されるときに、経皮免疫感作における製剤の有用性を破壊することなく、非経口免疫感作におけるその効果を低減化する。製剤中のアジュバントまたは抗原の望ましくない特性(毒性、アレルギー反応性、他の副作用など)は、修飾によって、経皮免疫感作におけるその有効性を破壊することなく低減化することができる。このような修飾されたアジュバントまたは抗原の活性化には、可逆的化学修飾(タンパク質分解など)または免疫系(すなわち、カプセル製剤)から可逆的に製剤の成分を単離するコーティングの除去などが含まれる。別法として、アジュバントおよび/または抗原を含む製剤を、粒子(マイクロスフィア、ナノパーティクルなど)に封入してもよい。粒子の食作用は、主要組織適合性抗原および/または共刺激分子(クラスIIMHC、B7−2など)の発現をアップレギュレートすることによって、それ単独で、抗原提示細胞の活性化を増強することができる。
【0060】
抗原
本発明の抗原は組換え法により、好ましくはアフィニティータグまたはエピトープタグ(Summers and Smith, 1987; Goeddel, 1990; Ausubel et al., 1996)との融合物として発現させることができ;遊離の、あるいは担体タンパク質と共役したオリゴペプチドの化学合成を用いて、本発明の抗原を得てもよい(Bodanszky, 1993; Wisdom, 1994)。オリゴペプチドは一種のポリペプチドであると考える。6残基〜20残基のオリゴペプチドの長さが好ましい。米国特許第5,229,490号および第5,390,111号に開示されているような分岐状構造としてポリペプチドを合成することもできる。抗原性ポリペプチドには、例えば合成または組換えB細胞およびT細胞エピトープ、ユニバーサルT細胞エピトープおよび、1つの生物または疾患由来の混合T細胞エピトープおよびもう1つのもの由来のB細胞エピトープが含まれる。組換え法またはペプチド合成によって得られた抗原は、天然起源または抽出物から得られた本発明の抗原と同様に、抗原の物理的および化学的性質を用いて、好ましくは分画またはクロマトグラフィーによって精製することができる(Jonson and Ryden, 1989; Deutscher, 1990; Scopes, 1993)。多価抗原製剤を用いて、同時に1つ以上の抗原に対する免疫応答を誘導することができる。共役物を用いて、複数の抗原に対する免疫応答を誘導するか、あるいは免疫応答を促進(追加免疫)し、あるいはその両方を達成することができる。さらに、トキソイドを用いて毒素(トキシン)を促進するか、あるいは毒素を用いてトキソイドを促進することができる。経皮免疫化を用いて、他の免疫化経路、例えば経口、鼻腔または非経口経路によって最初に誘導された応答を促進することができる。抗原には、例えば、毒素、トキソイド、そのサブユニット、またはそれらの混合物(例えば、コレラ毒素、破傷風トキソイド)が含まれ;さらに、毒素、トキソイド、そのサブユニットまたはそれらの混合物は、抗原とアジュバントの両方として作用し得る。
【0061】
抗原はバッファー中に可溶化することができる。適当なバッファーには、Ca2+/Mg2+を含まないリン酸緩衝化塩溶液(PBS)、生理食塩水(150mM NaCl水溶液)およびトリスバッファーが含まれるが、これらに限定されない。グリセロールは、本発明での使用に適当な非水性バッファーであり得る。また、抗原は懸濁液にしてもよい。免疫化溶液に界面活性剤を入れておき、浸透を高めてもよい。
【0062】
疎水性抗原、例えば膜貫通ドメインを含むポリペプチドは、界面活性剤中で可溶化できる。さらに、リポソームを含む製剤用に、界面活性剤溶液中の抗原(例えば細胞膜抽出物)を脂質と混合し、次いで希釈、透析またはカラムクロマトグラフィーによって界面活性剤を除去して、リポソームを形成させることができる。Gregoriadis (1993) を参照のこと。特定の抗原、例えばウイルス(例えばA型肝炎)由来の抗原は本質的に可溶性である必要はないが、ビリオンのみの懸濁物、またはミクロスフェアナノ粒子または熱不活化バクテリアの懸濁物(これは抗原提示細胞に取りこまれて、これを活性化することができる(例えばオプソニン作用))中、脂質膜(例えば Morein and Simons, 1985 に記載のウイロソーム)に直接包含させることができる。
【0063】
Plotkin and Mortimer (1994) は、動物またはヒトにワクチン注射し、特定の病原体に特異的な免疫応答を誘導するのに用いることができる抗原、ならびに抗原の調製方法、抗原の適当な用量の決定方法、免疫応答の誘導に関するアッセイ方法、および病原体(例えばバクテリア、ウイルス、真菌または寄生虫)による感染の処置方法を提供する。
【0064】
バクテリアには、例えば炭疽菌(anthrax)、カンピロバクター、コレラ、クロストリディア、ジフテリア、腸毒素原性大腸菌、ジアルディア、淋菌、ピロリ菌(Helicobacter pylori)またはピロリ菌によって生産されるウレアーゼ(Lee and Chen, 1994)、ヘモフィルス インフルエンザB(Hemophilus influenza B)、分類不能なヘモフィルス インフルエンザ、髄膜炎菌、ミコバクテリウム、百日咳菌、肺炎双球菌、サルモネラ菌、赤痢菌、ブドウ状球菌、連鎖球菌B、破傷風菌、ビブリオコレラ、ボレリア ブルドルフィ(Borrelia burgdorfi)およびエルシニア属;およびその生成物が含まれる。
【0065】
ウイルスには、例えばアデノウイルス、デング熱抗原型1〜4(Delenda et al., 1994; Fonseca et al., 1994; Smucny et al., 1995)、エボラ(Jahrling et al., 1996)、腸内ウイルス、ハンタウイルス、肝炎抗原型A〜E(Blum, 1995; Katkov, 1996; Lieberman and Greenberg, 1996; Mast, 1996; Shafara et al., 1995; Smedila et al., 1994; 米国特許第5,314,808号および第5,436,126号)、単純ヘルペスウイルス1または2、ヒト免疫不全ウイルス(Deprez et al., 1996)、ヒト乳頭腫ウイルス、インフルエンザウイルス、麻疹ウイルス(measles)、ノーウォーク、日本ウマ脳炎ウイルス、乳頭腫ウイルス、パルボウイルスB19、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、呼吸合胞体ウイルス、ロータウイルス、風疹ウイルス、はしかウイルス(rubeola)、セントルイス脳炎ウイルス、ワクシニアウイルス、他の抗原、例えばマラリア抗原、水痘および黄熱をコードする遺伝子を含むワクシニア構築体;およびその生産物が含まれる。
【0066】
寄生虫には、例えば体内寄生性アメーバヒストリティカ(Entamoeba hystolytica)(Zhang et al., 1995);マラリア原虫(Plasmodium)(Bathurst et al., 1993; Chang et al., 1989, 1992, 1994; Fries et al., 1992a, 1992b; Herrington et al., 1991; Khusmith et al., 1991; Malik et al., 1991; Migliorini et al., 1993; Pessi et al., 1991; Tam, 1988; Vreden et al., 1991; White et al., 1993; Wiesmueller et al., 1991)、リーシュマニア(Frankenburg et al., 1996)およびヘルミント(Helminthes);およびその生成物が含まれる。
【0067】
本発明において用いることができる他のウイルスは、Gordon, 1997 に記載されており、これには、例えばアデノウイルス(呼吸器疾患)、コロナウイルス(呼吸器および腸疾患)、サイトメガロウイルス(単球増加症)、デングウイルス(デング熱、ショック症候群)、EBウイルス(Epstein-Barr virus、単球増加症、バーキットリンパ腫)、A、BおよびC型肝炎ウイルス(肝臓疾患)、1型単純ヘルペスウイルス(脳炎、口内炎)、2型単純ヘルペスウイルス(生殖器障害)、ヒトヘルペスウイルス−6(未知、カポジ肉腫の可能性)、1および2型ヒト免疫不全ウイルス(後天性免疫不全症候群−AIDS)、1型ヒトT細胞リンパ親和性ウイルス(T細胞白血病)、インフルエンザA、BおよびC(呼吸器疾患)、日本脳炎ウイルス(肺炎、脳障害)、麻疹ウイルス(亜急性硬化性汎脳炎)、流行性耳下腺炎ウイルス(髄膜炎、脳炎)、乳頭腫ウイルス(いぼ、頸部癌)、パルボウイルス(呼吸器疾患、貧血)、ポリオウイルス(麻痺)、ポリオーマウイルスJC(多病巣性白質脳症)、ポリオーマウイルスBK(出血性膀胱炎)、狂犬病ウイルス(神経機能不全)、RSウイルス(Respiratory syncytial virus、呼吸器疾患)、ライノウイルス(一般かぜ)、ロータウイルス(下痢)、風疹ウイルス(胎児性奇形(fetal malformations))、ワクシニアウイルス(一般化感染)、黄熱ウイルス(黄疸、腎臓および肝臓機能不全)、水痘帯状疱疹ウイルス(水痘)が含まれる。
【0068】
本発明に用いることができる他のバクテリアは、Gordon, 1997 に記載されており、これには、例えば炭疽菌(Bacillus anthracis)(炭疽)、百日咳菌(Bordetella pertussis)(百日咳)、ボレリア ブルドルフェリ(Borrelia burgdorferi)(ライム病)、カンピロバクター ジェジュニ(Campylobacter jejuni)(胃腸炎)、トラコーマ病原体(Chlamydia trachomatis)(骨盤内炎症性疾患)、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)(ボツリヌス中毒)、ジフテリア菌(Corynebacterium dipththeriae)(ジフテリア)、大腸菌(Escherichia coli)(下痢、尿路感染症)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)(肺炎)、ピロリ菌(Helicobacter pylori)(胃炎、十二指腸潰瘍)、レジオネラ ニューモフィラ(Legionella pneumophila)(在郷軍人病)、リステリア菌(Listeria monocytogenes)(髄膜炎、腐敗症)、ライ菌(Mycobacterium leprae)(ハンセン氏病)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)(結核)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)(淋疾)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)(腐敗症、髄膜炎)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)(院内感染)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)(院内感染)、リケッチア(Rickettsia)(ロッキー山熱)、サルモネラ菌(Salmonella)(腸チフス、胃腸炎)、赤痢菌(Shigella)(赤痢)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(膿痂疹、毒性ショック症候群)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)(肺炎、中耳炎)、ストレプトコッカス ピオジェネス(Streptococcus pyogenes)(リウマチ熱、咽頭炎)、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)(梅毒)、コレラ菌(Vibrio cholerae)(コレラ)、ペスト菌(Yersinia pestis)(腺ペスト)が含まれる。
【0069】
本発明で用いることができる他の寄生虫は、Gordon, 1997 に記載されており、これには、例えばアフリカトリパノソーマ類(African trypanosomes)(トリパノソーマ症)、体内寄生性アメーバヒストリティカ(Entamoeba histolytica)(アメーバ赤痢)、ジアルディア属ラムリア(Giardia lamblia)(下痢疾患)、レーシュマニア(Leishmania)(脾臓機能不全、熱帯性赤膚(tropical sores))、マラリア原虫(Plasmodium)(マラリア)、ミクロフィラリア(Microfilariae)(糸状虫症)、住血吸虫類(Schistosomes)(住血吸虫症)、トキソプラズマ ゴンジ(Toxoplasma gondii)(トキソプラズマ症)、膣トリコモナス症虫(Trichomonas vaginalis)(膣炎)、トリパノソーマ クルジ(Trypanosoma cruzi)(アメリカトリパノソーマ症)が含まれる。
【0070】
本発明で用いることができる真菌は、Gordon, 1997 に記載されており、これには、例えばカンジダ アルビカンス(Candida albicans)(粘膜感染)、ヒストプラズマ(Histoplasma)(肺 リンパ節感染)、ニューモシスチス カリニ(Pneumocystis carinii)(AIDSにおける肺炎)、アスペルギルス フミガティス(Aspergillus fumigatis)(アスペルギルス症)が含まれる。
【0071】
アジュバント
また、本製剤はアジュバントを含み、単一の分子がアジュバント性と抗原性の両方を含んでいてもよい(例えばコレラ毒素)(Elson and Dertzbaugh, 1994)。アジュバントは特異的または非特異的に抗原特異的免疫応答を強化するのに用いられる物質である。通常、抗原を与える前にアジュバントと製剤を混合するが、別法として、短い時間間隔の間に、これらを別々に与えてもよい。
【0072】
アジュバントは通常、バクテリア、寄生虫または、時にはウイルスの生産物、またはバクテリアであるが、他の天然または合成起源から誘導してもよい。アジュバントには、例えば油状エマルジョン(例えば完全または不完全フロインドアジュバント)、ケモカイン(chemokine)(例えばディフェンシン1または2、RANTES、MIP1−α、MIP−2、インターロイキン−8)またはサイトカイン(例えばインターロイキン−1β、−2、−6、−10または−12;γ−インターフェロン;腫瘍壊死因子−α;または顆粒性白血球−単核白血球−コロニー刺激因子)(Nohria and Rubin, 1994 にまとめられている)、ムラミルジペプチド誘導体(例えばムラブチド(murabutide)、スレオニル−MDPまたはムラミルトリペプチド)、熱ショックタンパク質または誘導体、森林型熱帯リーシュマニアLeIFの誘導体(Skeiky et al., 1995)、コレラ毒素またはコレラ毒素B、bARES、リポポリサッカライド(LPS)誘導体(例えば脂質Aまたはモノホスホリル脂質A、合成脂質Aアナログ)またはスーパー抗原(Saloga et al., 1996)遮断コポリマーまたは当分野に既知の他のポリマーが含まれる。また、免疫化に有用な他のアジュバントに関しては Richards et al., (1995) を参照のこと。
【0073】
抗体または細胞性エフェクター、特定の抗体イソタイプ(例えばIgM、IgD、IgA1、IgA2、分泌性IgA、IgE、IgG1、IgG2、IgG3および/またはIgG4)または特定のT細胞サブセット(例えば、CTL、Th1、Th2および/またはTDTH)を選択的に誘導するアジュバントを選択することができる(Munoz et al., 1990; Glenn et al., 1995)。
【0074】
CpGは、免疫系にその病原の起源を認識させ、本来の免疫応答を刺激して適応した免疫応答を生じさせるパターンを有する、1つのクラスの構造に含まれる(Medzhitov and Janeway, 1997)。これらの構造は病原体関連分子パターン(PAMP(群))と称され、これには、例えばリポポリサッカライド、テイコ酸、メチル化されていないCpGモチーフ、二本鎖RNAおよびマンニンズ(maninns)が含まれる。
【0075】
PAMPは、免疫応答を高め、T細胞機能の協同刺激剤(costimulator)として働き、エフェクター機能を制御することができる、内因性の危険シグナルを誘導する。PAMPがこれらの応答を誘導する能力は、そのアジュバントとしての潜在能力において重要な役割を果たし、その標的はAPC、例えばマクロファージおよび樹状細胞である。皮膚の抗原提示細胞は、皮膚を通って輸送されるPAMPによって同様に刺激される。例えば、樹状細胞の1つのタイプであるランゲルハンス細胞は、経皮的な免疫原性に乏しい分子を含む皮膚上の溶液中のPAMPによって活性化され、誘導されて、この免疫原性に乏しい分子を移動させ、リンパ節内でT細胞に提示し、免疫原性に乏しい分子に対する抗体応答を誘導することができる。また、PAMPを他の皮膚アジュバント、例えばコレラ毒素と組み合わせて用い、種々の協同刺激剤分子を誘導し、種々のエフェクター機能を制御して、免疫応答、例えばTh2からTh1の応答を導くことができる。
【0076】
コレラ毒素は、ADPリボソイル化外毒素のファミリー(bARE(群)と称される)由来のバクテリア外毒素である。ほとんどのbAREは、結合BサブユニットおよびADPリボシルトランスフェラーゼを含むAサブユニットを有するA:B二量体として構成される。このような毒素には、ジフテリア、シュードモナス外毒素A、コレラ毒素(CT)、大腸菌熱不安定性腸毒素(LT)、百日咳毒素(PT)、ボツリヌス菌毒素C2、ボツリヌス菌毒素C3、C.リモーサム(C.limosum)外酵素、B.セレウス(B. cereus)外酵素、シュードモナス外毒素S、黄色ブドウ球菌EDINおよびB.スフェリクス(B. sphaericus)毒素が含まれる。
【0077】
コレラ毒素は、AサブユニットとBサブユニットによって構成されるbAREの一例である。Bサブユニットは結合サブユニットであり、Bサブユニット5量体を構成し、Aサブユニットと非共有結合する。B細胞サブユニット5量体は対称ドーナツ型構造に配置され、標的細胞のGM1ガングリオシド(GMI-ganglioside)に結合する。Aサブユニットは、Gsタンパク質を含むヘテロ3量体GTPタンパク質(Gタンパク質)のサブセットのαサブユニットをADPリボシル化し、この結果、環状AMPの細胞内レベルが増加する。コレラの場合では、これは腸細胞からのイオンおよび液の放出を刺激する。
【0078】
コレラ毒素(CT)およびそのBサブユニット(CTB)は、筋肉内免疫原または経口免疫原として用いられた場合にアジュバント性を有する(Elson and Dertzbaugh, 1994; Trach et al., 1997)。大腸菌由来の熱不安定性エンテロトキシン(LT)はCTとアミノ酸レベルで75〜77%の相同性を有し、同様の結合性を有する;また、腸(gut)のGM1ガングリオシドレセプターと結合し、同様のADPリボシル化外毒素活性を有すると思われる。別のbARE、シュードモナス外毒素A(ETA)はα2−マクログロブリンレセプター−低密度リポタンパク質レセプター−関連タンパク質と結合する(Kounnas et al., 1992)。bAREは Krueger and Barbieri (1995) にまとめられている。CT、CTB、LT、ETAおよびPTは、異なる細胞結合部位を有しているにもかかわらず、経皮免疫化についての強力なアジュバントであり、高レベルのIgG抗体を誘導するが、IgE抗体を誘導しない。CTを含まないCTBはまた、高レベルのIgG抗体を誘導可能である。したがって、bAREおよびその誘導体の両者は、単純溶液中で皮膚に上皮(epicutaneously)適用された場合、有効に免疫化することが可能である。
【0079】
すべての許容されるワクチンは、その承認に関してあるレベルの抗体を必要とする−他の免疫成分、例えばT細胞増殖は利用されない。生命を脅かす感染、ジフテリア、百日咳および破傷風(DPT)に対する保護は、高レベルの循環抗毒素抗体を誘導することによって達成可能である。百日咳は、例外であるかもしれず、幾人かの研究者は、その保護には侵入生物の他の部分に対する抗体が必要であると思っており(これは論争の的になっている(Schneerson et al., 1996 を参照のこと))、ほとんどの新しい生成無細胞性百日咳ワクチンはPTをワクチンの成分として有する(Krueger and Barbieri, 1995)。DPTによって引き起こされる疾患の病理学は、その毒素の作用と直接関係し、抗毒素抗体は、保護において最も確実な役割を担っている(Schneerson et al., 1996)。
【0080】
一般に、毒素を化学的に不活化し、より毒性が低いが、免疫原性を有したままであるトキソイドを形成させることができる。我々は、ある態様の経皮免疫化系が毒素に基づく免疫原とアジュバントを用いて、これらの疾患に対する保護に適当な抗毒素レベルを達成すると考える。毒素または、遺伝学的(genetically)に脱毒素化されたトキソイド自体を用いるか、あるいはトキソイドとアジュバント、例えばCTを用いる免疫化によって抗毒素抗体を誘導することができる。遺伝学的に変性毒素化された、変更されたADPリボシル化外毒素活性、またはトリプシン開裂部位突然変異または他の突然変異を有する毒素は、経皮免疫化において用いられる抗原提示細胞の無毒の活性化剤として特に有用であると思われる。遺伝的欠失によってADPリボシルトランスフェラーゼの触媒活性を不活化することに基づく突然変異体は、結合能を維持しているが、天然毒素の毒性を欠いている。このアプローチは、Burnette et al., (1994), Rappuoli et al. (1995), and Rappuoli et al. (1996) に記載されている。このような、遺伝学的に変性毒素化されている外毒素は、トキソイドが有毒であるとは考えないので、安全性の心配を生じさせないであろう点で、経皮免疫化系に有用であり得る。例えばトリシン(trysin)開裂部位の欠失を有し、皮膚に対する無毒性および免疫原性(immunogeneric)の両方を利用するような、遺伝学的に変更された他の毒素も存在する。しかし、トリプシン開裂のような技術を用いる活性化は、本来トリプシン酵素を欠く皮膚を介するLTのアジュバント性を高めることが予想される。さらに、同問題に対処することができる、毒素を化学的に変性毒素化するいくつかの技術が存在する(Schneerson et al., 1996)。これらの技術は特定の適用、特に、取りこまれた毒素(例えばジフテリア毒素)が有害な反応を生じさせ得る、小児への適用に関して重要である。
【0081】
場合により、ランゲルハンス細胞の活性化剤をアジュバントとして用いることもある。このような活性化剤の例には、熱ショックタンパク質の誘導物質;接触感作剤(例えばトリニトロクロロベンゼン、ジニトロフルオロベンゼン、ナイトロジェンマスタード、ペンタデシルカテコール);毒素(例えば、赤痢菌(Shiga)毒素、ブドウ球菌(Staph)腸毒素B);リポポリサッカライド、脂質A、またはその誘導体;バクテリアDNA(Stacey et al., 1996);サイトカイン(例えば腫瘍壊死因子−α、インターロイキン−1β、−10、−12);溶液中のカルシウムイオン;カルシウムイオノフォア、およびケモカイン(例えばディフェンシン1または2、RANTES、MIP−1α、MIP−2、インターロイキン−8)が含まれる。
【0082】
免疫化抗原が十分なランゲルハンス細胞活性化能を有するならば、抗原かつアジュバントであるCTの場合のように、別のアジュバントは必要とされない。全細胞調製物、生ウイルス、弱毒化ウイルス、DNAプラスミドおよびバクテリアDNAが経皮免疫化に十分であり、アジュバントが存在することを想定する。低濃度の接触感作剤またはランゲルハンス細胞の他の活性化剤を用いて、皮膚障害を引き起こさずに免疫応答を誘導することが可能である。
【0083】
経皮免疫化の実施側面
抗原の経皮デリバリーはランゲルハンス細胞(Langerhans cell)を標的とし得るため、本発明を用いて効果的な免疫化を行うことができる。これらの細胞は皮膚中に豊富に見られ、効果的な抗原提示細胞であり、T細胞記憶と強力な免疫応答を生じさせる。皮膚には多数のランゲルハンス細胞が存在するため、経皮デリバリーの効率は抗原およびアジュバントに暴露される表面領域に関連し得る。実際、経皮免疫化が筋肉内免疫化より効率的である理由は、多数のこれらの効果的な抗原提示細胞を標的とするからであり得る。
【0084】
我々は、本発明が免疫化の利用能を高めつつ、強力な免疫応答を誘導すると考える。経皮免疫化は皮膚の物理的透過およびその複雑さおよび困難を含まないため、訓練を受けた職員、滅菌技術および滅菌装置の必要性を減少させる。さらに、複数の部位での免疫化に対する障壁または複数の免疫化に対する障壁を減少させる。また、製剤を1回適用することによって免疫化することを想定するが、追加免疫(免疫の促進;boosting)は一般に必要である。針の再利用は針を媒介する疾患を引き起こすため、針を使わない免疫は世界保健機関(WHO)に優遇されている。
【0085】
免疫化は、閉鎖パッチ下でガーゼに染み込ませた抗原およびアジュバントの単純溶液を経皮適用することによって行ってもよいし、あるいは他のパッチ技術を用いてもよい;クリーム、ゲル、浸漬(immersion)、軟膏およびスプレーは他の可能な適用方法である。この免疫化は、訓練を受けていない職員が行うことができ、自分でも適用しやすい。免疫化を容易に利用できることから、大規模なフィールドでの免疫化を生じさせ得る。さらに、免疫化手法が簡単であるため、小児患者および老人、および第三世界の国の人々の免疫の利用を改善するであろう。
【0086】
以前のワクチンに関しては、皮膚を介してその製剤を針で注射した。針を用いるワクチンの注射は、滅菌針およびシリンジ、ワクチンを投与するための訓練を受けた医療職員の必要性、注射による不快、および針で皮膚に穴をあけることによって起り得る合併症を含む一定の欠点を有する。針を使わずに皮膚を介する免疫化すること(すなわち経皮免疫化)は、前述の欠点を回避することによってワクチンデリバリーに関する主要な進歩を示す。
【0087】
さらに、経皮免疫化は、皮膚の広い表面領域を標的とするいくつかの位置の利用によって、より多くの免疫細胞が標的とされるため、針を用いる免疫化より優れている。免疫応答を誘導するのに十分な治療有効量の抗原を、単一の皮膚部位か、あるいは複数のドレイン領域リンパ節フィールド(例えば、頸部、腋窩部、鼠蹊部、エピトロケリアー(epitrochelear)、膝窩部、腹部および胸郭のもの)をカバーする無傷の皮膚領域にわたって経皮的にデリバリーすることができる。全身にわたって位置する多数の種々のリンパ節に近接する、このような位置は、皮内、皮下または筋肉内注射によって少量の抗原を単一の個所に注射した場合より、広範囲にわたる、免疫系に対する刺激を提供する。
【0088】
皮膚を通るか、あるいは皮膚内へ通過した抗原は、免疫応答を引き起こすように抗原をプロセッシングする抗原提示細胞と遭遇する。複数の免疫化部位は、多数の抗原提示細胞を補充し、補充された抗原提示細胞の大集団は、免疫応答をより強く誘導する。皮膚を通過する吸収は、皮膚の食細胞、例えば皮膚樹状細胞、マクロファージおよび他の皮膚抗原提示細胞に抗原をデリバリーし;また、抗原は、血流またはリンパ系を介して抗原提示細胞として作用することが知られている、肝臓、脾臓および骨髄の食細胞にもデリバリーされることが考えられる。ランゲルハンス細胞、樹状細胞およびマクロファージは、共役しているか、あるいはアジュバントととのタンパク質融合物として組換え的に生産されたFcレセプターを利用して特異的に標的化され得る;また、補体レセプター(C3、C5)を共役させ、あるいはプロテインAまたはプロテインGとのタンパク質融合物として組換え的に生産して、B細胞の表面免疫グロブリンを標的化することができる。この結果、現在の免疫化の実施によっては、達成できたとしてもほとんどまれな程度にまで、抗原が抗原提示細胞に対して標的化されて分配される。
【0089】
経皮免疫化系は以下のようにして適用できる;直接皮膚に適用して空気乾燥する;皮膚または頭皮にすり込む;包帯、パッチ(包帯またはばんそう膏)または吸収剤とともに適所に保持する;浸漬(immersion);さもなければ、デバイス、例えばストッキング、スリッパ、手袋またはスカートによって保持する;または皮膚にスプレーして、皮膚との接触を最大にする。本製剤は吸収包帯(absorbant dressing)またはガーゼ中で適用することができる。閉鎖包帯法、例えばAQUAPHOR(ペトロラタム、鉱油、無機ワックス、ウールワックス、パンテノール(panthenol)、ビサボール(bisabol)およびグリセリンのエマルジョン、Beiersdorf. Inc.)、プラスチックフィルム、COMFEEL(Coloplast)またはワセリン;または非閉鎖包帯法、例えばDUODERM(3M)またはOPSITE(Smith & Napheu)で本製剤を覆ってもよい。閉鎖包帯法は水の透過を完全に排除する。完全浸漬により、単一または複数の部位、単一または複数の肢または皮膚の広い表面領域に本製剤を適用することができる。本製剤を皮膚に直接適用してもよい。
【0090】
遺伝的な免疫化は米国特許第5,589,466号、第5,593,972号および第5,703,055号に記載された。製剤に含まれる核酸(群)は、抗原、アジュバントまたは両者をコードし得る。一般に、アジュバント、例えば、抗原をコードする核酸に対するCT、LTまたはCpG群を同時に投与することによって免疫応答が高められるであろうことが予想される。この核酸は複製能があってもよいし、なくてもよい;これは非組み込み性および非感染性であってよい。例えば、この核酸は、抗原およびユビキチンドメインを含む融合ポリペプチドをコードし、クラスIに限定された応答に対して免疫応答するようにしてもよい。この核酸にはさらに、抗原をコードする配列に作動可能に連結されている調節領域(例えばプロモーター、エンハンサー、サイレンサー、転写開始部位および終結部位、RNAスプライシングアクセプターおよびドナー部位、ポリアデニル化シグナル、内部リボソーム結合部位、翻訳開始および終結部位)を含ませることができる。この核酸を、トランスフェクションを促進する物質、例えばカチオン性脂質、リン酸カルシウム、DEAEデキストラン、ポリブレンDMSO(polybrene-DMSO)またはこれらを組み合わせたものと複合体形成させることができ;また、DNAをFcレセプターまたはプロテインA/Gと共役させることによって、あるいはFcレセプターまたはプロテインA/Gと結合させた物質中にDNAをカプセル化することによって免疫細胞を標的化することができる。この核酸はウイルスゲノム由来の領域を含み得る。このような材料および技術はKreigler (1990) and Murray (1991) に記載されている。
【0091】
免疫応答には、体液性(すなわち抗原特異的抗体)および/または細胞性(すなわち、B細胞、CD4+T細胞、CD8+T細胞、CTL、Th1細胞、Th2細胞および/またはTDTH細胞のような抗原特異的リンパ球)のエフェクターアーム(effector arms)を含み得る。さらに免疫応答は、抗体依存性の細胞媒介性細胞障害性(ADCC)を媒介するNK細胞を含み得る。
【0092】
本製剤によって誘導される免疫応答には、抗原特異的抗体および/または細胞障害性リンパ球(CTL、Alving and Wassef, 1994 にまとめられている)の顕在化または誘導(elicitation)が含まれ得る。抗体は免疫アッセイ技術によって検出可能であり、種々のイソタイプ(例えばIgM、IgD、IgA1、IgA2、分泌性IgA、IgE、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4)の検出が予想される。また、免疫応答は中和アッセイ(neutralizing assay)によっても検出可能である。抗体とは、Bリンパ球によって生産される保護タンパク質である。これらは高度に特異的であり、一般に、抗原の1つのエピトープを標的とする。しばしば抗体は、疾患を引き起こす病原体由来の抗原と特異的に反応することにより、該疾患に対する保護において役割を担う。
【0093】
CTLは、病原体による感染に対して保護するために生産される、特別な保護免疫細胞である。これらもまた高度に特異的である。免疫化は、自身の主要な組織適合性抗原と関連する抗原、例えば、マラリアタンパク質に基づく合成オリゴペプチドに特異的なCTLを誘導する。経皮デリバリー系を用いる免疫化によって誘導されたCTLは病原体感染細胞を殺すことができる。免疫化はまた、抗体およびCTLの応答、抗原で刺激されたリンパ球の培養によるリンパ球の増殖、および抗体単独の皮内皮膚チャレンジ(intradermal skin challenge)に対する、遅延型過剰感作応答を促進することによって示されるような記憶応答を誘導する。
【0094】
ウイルス中和アッセイでは、血清の連続希釈物を宿主細胞に加え、これを感染性ウイルスでのチャレンジ後の感染に関して観察する。別法として、血清の連続希釈物を、動物への接種(免疫化)前に感染性力価のウイルスとインキュベートし、次いで接種された動物を感染の徴候に関して観察してもよい。
【0095】
動物またはヒトにおけるチャレンジモデルを用いて、本発明の経皮免疫化系を評価し、これにより、抗原での免疫化が患者を疾患から保護する能力を評価する。このような保護は抗原特異的免疫応答を示すであろう。チャレンジの代わりに、例えば5IU/mLまたはそれ以上の抗ジフテリア抗体力価を達成することは、一般に最適な保護を示すとされ、これは保護に対する代用マーカーとして働く(Plotkin and Mortimer, 1994)。
【0096】
また、ワクチン処置は癌および自己免疫疾患の処置として用いられてきた。例えば、腫瘍抗原(例えば、前立腺特異的抗原)でワクチン処置すると、抗体、CTLおよびリンパ球増殖の形で免疫応答を誘導し、これにより、身体の免疫系に腫瘍細胞を認識させ、殺させることができる。ワクチン処置に有用な腫瘍抗原は、黒色腫(米国特許第5,102,663号、第5,141,742号および第5,262,177号)、前立腺癌(米国特許第5,538,866号)およびリンパ腫(米国特許第4,816,249号、第5,068,177号および第5,227,159号)に関して記載されている。T細胞レセプターオリゴペプチドでワクチン処置すると、自己免疫疾患の進行を停止させる免疫応答を誘導することができる(米国特許第5,612,035号および第5,614,192号;Antel et al., 1996; Vandenbark et al., 1996)。米国特許第5,552,300号もまた、自己免疫疾患の処置に適当な抗原を記載している。
【0097】
以下の実施例は本発明を例示するためのものである;しかし、本発明の実施はいかなる意味においても、この実施例によって限定あるいは制限されない。
【0098】
実施例
免疫感作方法
免疫感作の24時間前に、マウスの背中を肩甲骨の末端部分から尾の付け根の0.5cm上まで剃毛する。C57BL/6マウスを用いる場合、剃る前に軽く麻酔をかける(塩水中、40mg/kgケタミン:4mg/kgキシラジン混合物)。免疫感作を行う日に動物に、最終用量としておよそ110mg/kgケタミン、及び、11mg/kgキシラジンが与えられる、麻酔混合物(2.3mL滅菌塩水(Sigma):5mLケタミン(100mg/mL,Parke-Davis):0.5mLキシラジン(100mg/mL,Phoenix Pharmaceuticals)).04mlで麻酔する。アルコールによる拭き取りが必要とされる工程では、背中を10回(5回背中を頭部に向かって拭き、アルコールパッドを裏返し、背中をもう5回拭く)、イソプロピルパッドを用いて拭く。5分間、アルコールを蒸発させる。背中を滅菌水で飽和させたガーゼパッドでこすり、背中に水たまりが形成されるようにすることによって背中の含水は達成される。5分間の含水期の後、乾燥したガーゼパッドで吸い取って乾燥する。次に、抗原(一般に、最終容量100μl中に、≦100μgの抗原、及びアジュバント)を背中にピペットとチップを用いて適用し、皮膚上に60〜120分に載せたままにする。定義された免疫期間経過後、免疫感作した部分の全ての過剰な溶液を綿ガーゼで吸い取る。その後、全ての過剰な抗原を除くため、動物を生ぬるい水道水のゆっくりと安定した流水下で10秒間洗浄し、吸い取って乾燥し、洗浄工程を繰り返す。その後、麻酔から完全に回復するまで、檻を電気パッドに載せる。
【0099】
ヒト抗-LT抗体力価の測定
以前、記述されるように抗-LT IgG力価を決定した(Svennerholm A-M.,Holmgren J.,Black R.,Levine M.&Merson M.,"Serologic differentation between antitoxin responses to infection with Vibrio cholerae and enterotoxin-producing Escherichia coli",J.Infect.Dis.,147,541〜522(1983年))。96ウェル(Type-Russell)プレートを、LT(Sigma,St.Louis,MO)のモノシアロガングリオシド-GM1(Sigma)で一晩コートし、PBS-0.05%Tween中の5%粉乳でブロックした。反応は、ヤギ抗-ヒトIgG(γ)-HRP(Kirkegaard and Perry,Gaithersburg,MD.)、及び、基質として2,2'-アジノ-ジ[3-エチルベンズチアゾリン]スルホン酸塩(Kirkegaard and Perry)を用いて検出し、プレートを405nmで読み取った。結果は、1.0のODとなる試料の逆希釈度として定義されるELISA単位(EU)で記録される。抗-LT IgAは、ヤギ抗-ヒトIgA(α)-HRP(Kirkegaard and Perry)を第二抗体として用い、結果がng/mlで明示されるよう、ODを標準IgA曲線に対してプロットした以外は、抗-LT IgGと同じ方法で決定した。標準IgA曲線、及び、総血清IgAは、標識していないヤギ抗-ヒトIgA(Kirkegaard and Perry)の使用に続き、上述のようにブロックを行った後、標準IgAの一連の希釈液を適用することにより決定した。
【0100】
実施例1.
処置または未処置のスワブで皮膚を拭き取ることは、物理的及び化学的に角質層の一部を除き、それによって皮膚への浸透を増すと考えられている。スワブは、例えば、綿、ナイロン、レーヨン及びポリエチレン等の材料製であり得る。アルコールによる拭き取りは、角質層の一部を除くと考えられており、浸透増大のための物理的手段及び化学的手段の両方として働く。上述の例では、経皮免疫感作に対する免疫応答の増幅は、この浸透増大方法により取り計らわれることができる。6〜8週齢のBALB/cマウスを、「免疫感作方法」に記載されるように麻酔し、剃毛した。24時間後、動物の背中を水をしみ込ませたガーゼパッドで拭くか(「水」)、または、70%のイソプロピルアルコールを含むアルコール準備(prep)パッドでおよそ10秒間拭いた(「イソプロパノール」)。アルコールをおよそ5分間かけて蒸発させた。「水」グループの背中から、過剰な水を吸い取って除去した。その後、全ての動物を20μgのCT(0.2mg/ml溶液100μl)で処置した。過剰な抗原の除去は、「免疫感作方法」に記載されるように行った。
【0101】
抗-CT抗体力価は、上述の「ELISA IgG(H+L)」について記載されるようにELISAを用いて、単一の免疫感作の3週間後に決定した。結果を表1に示す。両グループにおいて、CTは明らかに免疫原性であったが、アルコール準備パッドで処置されたグループは、「水」動物よりも6倍高い相乗平均力価を示し、個々の力価もより一致していた。従って、アルコールによる拭き取りによる皮膚表面の化学的、及び、物理的な破壊は、経皮経路による抗原の運搬を増幅するようである。
表1.化学的浸透増大による経皮免疫感作の増幅:抗原の適用前にアルコール準備パッドで処置したマウスにおける抗-CT力価。
【表1】

【0102】
実施例2.
化学的浸透増大のみにより経皮免疫感作が増大されるかどうかを評価するために、皮膚に対して界面活性剤を用いた。6〜8週齢のBALB/cマウスを、「免疫感作方法」に記載されるように麻酔し、剃毛した。24時間後、「水」グループの背中を水をしみ込ませたガーゼパッドで拭き、背中に水たまりを作った。およそ5分後、全ての過剰な水を除き、25μgのCT(0.5mg/ml溶液50μl)を背中に適用した。或いは、「5%SDS」グループの背中を、剃毛24時間後、界面活性剤である300μlの5%SDS(硫酸ドデシルナトリウム;脱イオン水、及び、市販品の10%SDSの1対1混合物)をおよそ12分間のしたたらせることにより処理し、続いて過剰のSDSを乾燥したガーゼパッドで吸い取った。SDSは、例えば、パッド等の担体中に含ませて皮膚に適用し得、その後、過剰なSDSは乾燥したガーゼパッドによって除去し得る。その後、動物は「水」グループと同じように含水、及び、免疫感作した。過剰な抗原の除去は、「免疫感作方法」に記載されるように行った。
【0103】
抗-CT抗体力価は、上述の「ELISA IgG(H+L)」について記載されるようにELISAを用いて、単一の免疫感作の2週間後に決定した。結果を表2a及び2bに示す。両グループにおいてCTは明らかに免疫原性であったが、5%SDSで処置されたグループの相乗平均力価は「水」動物と比べて2倍高く、各動物間の力価は前者の動物でより一致していた。従って、界面活性剤(5%SDS)による皮膚表面の化学的な破壊は、経皮経路による抗原の運搬を増幅するようである。
表2a.化学的浸透増大による経皮免疫感作の増幅:抗原の適用前に界面活性剤(5%SDS)で皮膚を処置したマウスにおける抗-CT力価
【表2】

【0104】
表2b.化学的浸透増大による経皮免疫感作の増幅:抗原の適用前に界面活性剤(5%SDS)で皮膚を処置したマウスにおける抗-CT力価。
【表3】

【0105】
実施例3.
別の化学的浸透増大の形体である除毛剤(例えば、水酸化カルシウム等)が皮膚科学実験で広く使われており、経皮免疫感作を増幅することが示されている。6〜8週齢のBALB/cマウスを、「免疫感作方法」に記載されるように麻酔し、剃毛した。24時間後、「水」グループの背中を水をしみ込ませたガーゼパッドで拭き、背中に水たまりを作った。およそ5分後、全ての過剰な水を除き、25μgのCT(0.5mg/ml溶液50μl)を背中に適用した。「nair(登録商標)」グループの背中は代わりに、剃毛24時間後、100μlのnair(登録商標)クリームでおよそ12分間の処置し、製剤を水をしみ込ませたガーゼパッドで拭き取った。この処置は、約0.1〜30分、好ましくは約20分、そしてより好ましくは約12分間続けられる。その後、動物は「水」グループと同じように含水、及び、免疫感作した。過剰な抗原の除去は、「免疫感作方法」に記載されるように行った。
【0106】
抗-CT抗体力価は、上述の「ELISA IgG(H+L)」について記載されるようにELISAを用いて、単一の免疫感作の2週間後に決定した。結果を表3a及び3bに示す。両グループにおいて、CTは明らかに免疫原性であったが、nairで処置されたグループの相乗平均力価は「水」動物と比べて3倍高く、各動物間の力価は前者の動物でより一致していた。従って、nair(登録商標)クリーム中の活性成分である水酸化カルシウムによる皮膚表面の化学的な破壊は、経皮経路による抗原の運搬を増幅するようである。
表3a.化学的浸透増大による経皮免疫感作の増幅:抗原の適用前に水酸化カルシウム(nair(登録商標))で皮膚を処置したマウスにおける抗-CT力価。
【表4】

【0107】
表3b.化学的浸透増大による経皮免疫感作の増幅:抗原の適用前に水酸化カルシウム(nair(登録商標))で皮膚を処置したマウスにおける抗-CT力価。
【表5】

【0108】
実施例4.
ケラチン分解性製剤(サリチル酸塩等)を用いて、化学的浸透増大の効果を評価するための試験をさらに行った。6〜8週齢のBALB/cマウスを、「免疫感作方法」に記載されるように麻酔し、剃毛した。24時間後、「水」グループの背中を水をしみ込ませたガーゼパッドで拭き、背中に水たまりを作った。およそ5分後、全ての過剰な水を除き、25μgのCT(0.5mg/ml溶液50μl)を背中に適用した。「サリチル酸塩/水」グループの背中は代わりに、剃毛24時間後、10%サリチル酸塩懸濁液(3.25mlの脱イオン水に溶解した、認定された銘柄の1錠のアスピリン(325mg))をしみ込ませたガーゼパッドで処置した。この処置は、約0.1〜30分、好ましくは約20分、そしてより好ましくは約10分間続けられる。およそ10分後、全ての残っている溶液を吸い取り、動物の背中を5分間含水させ、続いて過剰な水を除去し、その後、25μgのCTを局所適用した。過剰な抗原の除去は、「免疫感作方法」に記載されるように行った。
【0109】
抗-CT抗体力価は、上述の「ELISA IgG(H+L)」について記載されるようにELISAを用いて、単一の免疫感作の2週間後に決定した。結果を表4に示す。両グループにおけるCTは明らかに免疫原性であったが、サリチル酸塩処置グループにおける相乗平均力価は、「水」動物と比べて4倍高く、各動物間の力価は前者の動物でより一致していた。従って、サリチル酸塩による皮膚表面の化学的な破壊は、経皮経路による抗原の運搬を増幅するようである。
表4.化学的浸透増大による経皮免疫感作の増幅:抗原の適用前にサリチル酸塩(アスピリン)で皮膚を処置したマウスにおける抗-CT力価。
【表6】

【0110】
実施例5.
物理的/機械的な浸透増大の役割を評価するため、一般的なエメリーボード(emory board)の形体の研磨剤を、角質層の一部を除去するのに用いた。6〜8週齢のBALB/cマウスを、「免疫感作方法」に記載されるように麻酔し、剃毛した。24時間後、動物の背中を水をしみ込ませたガーゼパッドで拭くか(「水」グループ)、または、中間砥粒(medium grain)のエメリーボードで10回擦った後、水をしみ込ませたガーゼパッドで拭いた(「エメリーボード」)。水処理からおよそ5分後、全ての過剰な水を除き、背中に20μgのCT(0.2mg/ml100μl)溶液を適用した。過剰な抗原の除去は、「免疫感作方法」に記載されるように行った。
【0111】
抗-CT抗体力価は、上述の「ELISA IgG(H+L)」について記載されるようにELISAを用いて、単一の免疫感作の3週間後に決定した。結果を表5に示す。両グループにおけるCTは明らかに免疫原性であったが、エメリーボード処置グループの相乗平均力価は、「水」動物と比べて10倍高く、各動物間の力価は前者の動物より一致していた。従って、エメリーボードを用いた皮膚の外表面の物理的な破壊は、経皮経路による抗原の運搬を増幅するようである。これは、皮下注射、皮内注射、または筋肉内注射等の皮膚を貫通することを必要とする、皮膚を通して抗原を運ぶ技術と区別することができる。
【0112】
この簡単な装置を、角質層または表面の表皮のみを壊す長さのマイクロニードル、ツベルクリン試験(TB tine testing)に用いられる装置、真皮に貫通しない空気銃、テープストリッピング(tape stripping)のための粘着テープ、または、角質層若しくは表面の表皮のみを壊すことが知られている他の皮膚破壊装置等の抗原及びアジュバントを表皮内に運ぶ他の物理的破壊装置により置換し得る。
表5.物理的浸透増大による経皮免疫感作の増幅:抗原の適用前にエメリーボードで皮膚を処置したマウスにおける抗-CT力価。
【表7】

【0113】
実施例6.
角質層の一部を除去し、その下にある表皮への接触を可能にするのに、研磨用パッド(abrasive pad)を用いた、別の物理的/機械的な浸透増大方法を用いた。6〜8週齢のBALB/cマウスを、「免疫感作方法」に記載されるように麻酔し、剃毛した。24時間後、動物の背中を水をしみ込ませたガーゼパッドで拭く(「水」グループ)か、水をしみ込ませたガーゼパッドでふいた後、ナイロンスポンジ(buf puf(登録商標))で角質層の最外層を除くために10秒間擦った(「buf puf(登録商標)」)。「水」グループの背中から過剰の水を除き、全ての動物の背中に20μgのCT(0.2mg/ml100μl)溶液を適用した。過剰な抗原の除去は、「免疫感作方法」に記載されるように行った。
【0114】
抗-CT抗体力価は、上述の「ELISA IgG(H+L)」について記載されるようにELISAを用いて、単一の免疫感作の3週間後に決定した。結果を表6に示す。両グループにおけるCTは明らかに免疫原性であったが、buf puf処置グループの相乗平均力価は、「水」動物と比べて2倍高く、各動物間の力価は前者の動物でより一致していた。従って、buf puf(登録商標)を用いた皮膚の外表面の物理的な破壊は、経皮経路による抗原の運搬を増幅するようである。
【0115】
この簡単な装置を、皮内注射で用いられる針及びツベルクリン注射、角質層または表面の表皮のみを壊す長さのマイクロニードル、ツベルクリン試験に用いられる装置、パッチを固定する前に皮膚に擦り込まれ、結晶若しくは基材中に抗原を含む、ショ糖若しくは塩化ナトリウム等の溶解性の結晶を有する研磨パッチ(abarding patch)、若しくは、生分解性のポリマーが含浸されたパッチ、空気銃、テープストリッピングのための粘着テープ、または、角質層若しくは表面の表皮のみを壊すことが知られている他の皮膚破壊装置等の抗原、及び、アジュバントを表皮内に運ぶ他の物理的浸透装置により置換し得る。
表6.物理的浸透増大による経皮免疫感作の増幅:抗原の適用前に研磨パッド(例えば、buf-puf(登録商標)等)で皮膚を処置したマウスにおける抗-CT力価。
【表8】

【0116】
実施例7
CTおよびLTなどの細菌ADPリボシル化外毒素による経皮免疫化は、有意に「危険な」シグナルを免疫系にもたらし、強い免疫応答を刺激すると考えられる。このような化合物はアジュバントとしてはたらく。意外にも、皮膚を水和するようにして皮膚上に適用したそのようなアジュバントの単純な混合物が、強い免疫応答をもたらすことがわかった。このことは、以前の特許(PCT/US97/21324)に記載されている。しかし、CT(86KD)のようなアジュバントが皮膚上でアジュバントとしてはたらくと仮定すれば、特に細菌産生物またはモチーフに基づいたその他のアジュバントは、皮膚を水和するようにしておよび/または浸透増強剤を使用して皮膚上に適用した時、刺激となるであろうと予想される。
【0117】
我々は、細菌DNAを使用してこの予想が正しいかどうかを確認した。6〜8週齢のBALB/cマウスを、上記「免疫感作方法」に記載のとおり、剃毛および麻酔した。免疫化を行なう日に、浸透を良くするためマウスの背中をイソプロパノールで拭いた。アルコールを蒸発させた後(約5分)、100μgのDNA(CpG1またはCpG2)と100μgのジフテリアトキソイド(DT)を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)100μLを、90〜120分間背中に適用した。安定性を改善するため、ホスホロチオエート骨格を有するOligos Etcによりオリゴヌクレオチドを合成した。過剰な抗原の除去は、「免疫感作方法」に記載のとおり行なった。4週間後および8週間後に免疫化を再び行なった。最初の免疫化から10週間後、マウスより採血し、「ELISA IgG(H+L)」について上記したとおり、ELISAを用いて抗DT力価を測定した。結果を表7Aに示す。
【0118】
DTと対照DNA配列(CpG2:TCCAATGAGCTTCCTGAGTCT)の同時投与では、抗DT力価における検出可能な上昇は誘発できなかった。対照的に、2つの5’プリンと2つの3’ピリミジンが結合した、非メチル化CpGジヌクレオチドを含むDNA配列(CpG1(免疫刺激性DNA):TCCATGACGTTCCTGACGTTを添加すると、5匹のマウスのうちの5匹とも、血清中の抗DTIgG力価に検出可能な増加を生じた。したがって、CpG(6KD)のような適当なモチーフを含む細菌DNAは、抗原特異的抗体応答を誘発するための、皮膚を介した抗原送達を増強するアジュバントとして使用することができると考えられる。
【0119】
表7A.浸透増強を用いて皮膚へ適用した細菌DNAのアジュバント活性:体液性免疫応答
【表9】

【0120】
経皮免疫化処置の経皮効果は、T細胞増殖によって検出することもできる。6〜8週齢のBALB/cマウスを、上記「免疫感作方法」に記載のとおり、剃毛および麻酔した。免疫化を行なう日に、マウスの背中をイソプロパノールで拭いた。アルコールを蒸発させた後(約5分)、100μgのDNA(CpG1またはCpG2)と100μgのジフテリアトキソイド(DT)を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)100μLを、90〜120分間背中に適用した。安定性を改善するため、ホスホロチオエート骨格を有するOligo Etcによりオリゴヌクレオチドを合成した。過剰な抗原の除去は、「免疫感作方法」に記載のとおり行なった。4週間後および8週間後に免疫化を再び行なった。最初の免疫化から12週間後に、ドレイニング(draining)(鼡径)LNを免疫化したマウス5匹から採取し、プールした。媒質または抗原(DT)に応答する増殖能力を、3−H取り込みを読み出しとして用いる標準4日間増殖分析で調べた。結果を表7Bに示す。DTと、2個の5’プリンおよび2個の3’ピリミジンが結合した、非メチル化CpGジヌクレオチドを含むDNA配列(CpG1(免疫刺激性DNA):TCCATGACGTTCCTGACGTTとの同時投与は、抗原特異的な増殖応答における検出可能な増大をもたらした。したがって、適当なモチーフを含む細菌DNAは、増殖応答を誘発するための、皮膚を介した抗原送達を増強するアジュバントとして使用することができると考えられる。
【0121】
表7B.皮膚へ適用した細菌DNAのアジュバント効果:LN細胞増殖
【表10】

【0122】
実施例8
CTおよびLTなどの細菌ADPリボシル化外毒素による経皮免疫化は、有意に「危険な」シグナルを免疫系にもたらし、強い免疫応答を刺激すると考えられる。このような化合物はアジュバントとしてはたらく。意外にも、皮膚を水和するようにして皮膚上に適用したそのようなアジュバントの単純な混合物が、強い免疫応答をもたらすことがわかった。このことは、以前の特許(PCT/US97/21324)に記載されている。しかし、CT(86KD)のようなアジュバントが皮膚上でアジュバントとしてはたらくと仮定すれば、特に細菌産生物またはモチーフに基づいたその他のアジュバントは、皮膚を水和するようにしておよび/または浸透増強剤を使用して皮膚上に適用した時、刺激となるであろうと予想される。遺伝的に改変した毒素を使用し、この予想について確認した。6〜8週齢のBALB/cマウスを、「免疫感作方法」に記載のとおり、麻酔、剃毛および免疫化した。最初の免疫化から3週間後および5週間後に追加抗原刺激を行ない、最後の免疫化から2週間後に血清を採取した。アジュバントとして遺伝的に改変した毒素:LTK63(酵素により不活化したLT誘導体)およびLTR72(0.6%の酵素活性を保持するLT誘導体)を用いた。ジフテリアドキソイド(DT)100μgを抗原として用いた。
【0123】
抗DT抗体価は、「ELISA IgG(H+L)」について上記したとおり、ELISAを用いて測定した。結果を表8に示す。LTK63またはLTR72のいずれか一方とDTにより免疫された動物の血清は、免疫前(前採血)に採取した血清中の力価と比較して、抗DT力価が明らかに上昇していた。したがって、遺伝的に解毒化された熱不安定性エンテロトキシン(LT)の突然変異体は、皮膚上のアジュバントとして使用することができると考えられる。
【0124】
表8. 皮膚上のアジュバントとしての遺伝的に改変した毒素LTK63およびLTR72の使用
【表11】

【0125】
実施例9
アジュバントとして作用することが知られている別のクラスの化合物であるサイトカインは、アジュバントが、一般的に、コレラ毒素と同じ様式で作用すると期待できるという原則を例証する。TNFαは、ランゲルハンス細胞活性化化合物としても知られている。
【0126】
6〜8週齢のBALB/cマウスを、「免疫感作方法」において上記したとおり、剃毛および麻酔した。免疫化を行なう日に、マウスの背中をイソプロパノールで拭いた。アルコールを蒸発させた後(約5分)、0.83μgのTNFα(組換えマウスTNFα、Endogen)、IL−2(1μg組換えマウスIL−2(Sigma))または模擬アジュバント(CpG2)を、100μgのジフテリアトキソイド(DT)と共に、背中の皮膚に90〜120分間適用した。安定性を改善するため、ホスホロチオエート骨格を有するOligos Etcによりオリゴヌクレオチドを合成した。過剰な抗原の除去は、「免疫感作方法」に記載のとおり行なった。4週間後および8週間後に免疫化を再び行なった。最初の免疫化から10週間後に、マウスより採血し、「ELISA IgG(H+L)」について上記したとおり、ELISAを用いて抗DT力価を測定した。結果を表9に示す。
【0127】
DTと模擬アジュバント(CpG2)の同時投与は、抗DT力価における検出可能な上昇を誘発できなかった。対照的に、TNFαの局所適用(0.8μg)は、5匹のマウスのうち3匹について、模擬アジュバントで処置したマウスにおける抗DT力価または免疫前(前採血)に採取した血清中の抗DT力価のいずれと比較しても、血清の抗DTIgG力価における検出可能な増大をもたらした。同様に、IL−2の局所適用(1μg)は、5匹のマウスのうち4匹について、模擬アジュバントで処置したマウスにおける抗DT力価または免疫前(前採血)に採取した血清中の抗DT力価のいずれと比較しても、血清の抗DTIgG力価における検出可能な増大をもたらした。したがって、IL−2やTNFなどのサイトカインは、皮膚上のアジュバントとして使用することができ、ランゲルハンス細胞活性化化合物は経皮免疫化に使用することができると考えられる。
【0128】
表9.皮膚に適用したサイトカインTNFαのアジュバント活性
【表12】

【0129】
実施例10
コレラ毒素のBサブユニットは、別のクラスに属するアジュバントであり、A−サブユニットを欠くためCTのADPリボシルトランスフェラーゼ活性を欠いている。CTBそのものは、摂取時に毒性がないため独特で有用なアジュバントとなる。
【0130】
6〜8週齢のC57BL/6マウスを、「免疫感作方法」に記載したとおり、麻酔および剃毛した。免疫化を行なう日に、マウスの背中をイソプロパノールで拭いた。アルコールを蒸発させた後(約5分)、100μgの精製コレラ毒素Bサブユニット(CTB)および/または100μgのジフテリアトキソイド(DT)を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)100μLを、90〜120分間背中に適用した。過剰な抗原の除去は、「免疫感作方法」に記載のとおり行なった。4週間後および8週間後に免疫化を再び行なった。最初の免疫化処置から10週間後、マウスより採血し、「ELISA IgG(H+L)」について上記したとおり、ELISAを用いて抗DT力価を測定した。結果を表10に示す。
【0131】
表10に示すように、CTBおよびDTにより免疫化された動物の血清は、DT単独で処置した動物の血清または前採血の血清試料における力価と比較して、抗DT力価が明らかに上昇した。したがって、精製CTBは、皮膚上のアジュバントとして使用することができると考えられる。
【0132】
表10. 皮膚上のアジュバントとしてのV.cholerae由来コレラ毒素Bサブユニットの使用
【表13】

【0133】
実施例11
構造が異なるアジュバントは、異なった効果によって、その増大効果を発揮すると思われる。異なる機構によりその効果を発揮するアジュバントは、免疫応答の増大に対し、付加的なまたは相乗的な効果を有する。我々は、個々のアジュバント単独と比較して、2種類のアジュバントの同時使用が、経皮免疫化に対する応答を増大するということを見い出した。
【0134】
6〜8週齢のBALB/cマウスを、「免疫感作方法」について上記したとおり、剃毛および麻酔した。免疫化を行なう日に、マウスの背中をイソプロパノールで拭いた。アルコールを蒸発させた後(約5分)、100μgの免疫刺激性DNA(CpG1)および/またはコレラ毒素(CT)100μgを含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)100μLを、可溶性リーシュマニア抗原抽出物(SLA)100μgと共に、90〜120分間背中に適用した。SLAは、Walter Reed Army Institute of Research にて、Leishmania major 前鞭毛型抽出物の超音波処理物中の可溶性タンパク質を90〜120分間遠心して単離することにより製造された抗原抽出物である。過剰な抗原の除去は、「免疫感作方法」に記載のとおり行なった。4週間後および8週間後に免疫化を再び行なった。最初の免疫化から12週間後に、免疫化したマウス2匹からドレイニング(draining)(鼡径)LNを採取し、プールした。媒質または抗原(SLA)に応答する増殖能力を、3−H取り込みを読み出しに用いる標準4日間増殖分析で調べた。結果を表11に示す。
【0135】
SLAと、CpG1(2個の5’プリンおよび2個の3’ピリミジンが結合した、非メチル化CpGジヌクレオチドを含む免疫刺激性DNA配列:TCCATGACGTTCCTGACGTT)またはCTとの同時投与は、抗原特異的な増殖応答における検出可能な増大をもたらした。しかし、CpG1とCTの両方に同時に曝した動物のリンパ節培養細胞における抗原(SLA)特異的増殖応答は、いずれか一方のアジュバントのみに曝した動物由来の培養細胞と比較して約20倍高かった。したがって、適当なモチーフを含む細菌DNAは、CTのようなADPリボシル化外毒素と、皮膚上のアジュバントとして相乗的に作用し、いずれか一方のアジュバント単独と比較して、より高い免疫応答を誘発すると考えられる。
【0136】
表11.皮膚適用時における、アジュバントとしての免疫刺激性DNAとADPリボシル化外毒素(CT)の相乗効果
【表14】

【0137】
実施例12
経皮免疫化は、1つの送達方法として単独で使用したときに強い免疫応答を誘発する。我々は、経皮免疫化は、他の送達経路に連続して使用し、免疫応答を刺激することができるということを見出した。
【0138】
0日目に、6〜8週齢のBALB/cマウスの両群に、ミョウバン(Rehydrogel:NaCl中25μg)と混合したDT(5μg)を50μLの筋肉内(im.)注射により後部大腿内へ投与した。im/tc/tc群のマウスでは、8週間後および16週間後に「免疫感作方法」について上記したとおり剃毛、麻酔し、アジュバントとして100μgのコレラ毒素と、抗原として100μgのジフテリアトキソイドを用いて経皮経路により免疫化した。免疫化溶液を背中へ90〜120分間適用した。過剰な抗原の除去は、「免疫感作方法」に記載のとおり行なった。最初の免疫化より22週間後、マウスより採血し、「ELISA IgG(H+L)」について上記したとおり、ELISAを用いて抗DT力価を測定した。結果を表12に示す。
【0139】
DT5μgの1回の筋肉内注射は、免疫前(前採血)に同じ動物から採取した血清中の力価と比較して、血清抗DT力価における検出可能な増大を誘発した。筋肉内注射により初回抗原刺激した動物の、経皮免疫化法を用いた追加抗原刺激は、相乗平均力価において60倍の上昇をもたらし、経皮追加抗原刺激を行なった動物はすべて、筋肉内注射で初回抗原刺激した群で観察された力価と比較して抗DT力価が明らかに高かった。したがって、経皮免疫化処置は、抗原を用いた最初の免疫化が筋肉内経路であったマウスにおいて、抗原特異的力価をさらに高めるために使用することができる。我々はさらに、筋肉内投与で初回抗原刺激を行なった動物を経皮免疫化(TCI)によって追加抗原刺激することができるということを見出した。TCI初回抗原刺激、または噴霧器(gun)もしくは他の送達手段による経口、バッカル、鼻、直腸、膣、皮内を含む他の経路とスケジュールによる追加抗原刺激の様々な組合せを想到することができる。さらに、抗原は、糖タンパク質でのタンパク質改変、ホロトキシン(holotoxin)を有するサブユニット、DNA初回免疫刺激(priming)次いでタンパク質、核酸の筋肉内投与次いで核酸のTCI適用を含め、経路や構成が異なっていてもよい。経皮免疫化処置は、幼児期において初回抗原刺激を受けた子供または子供のときに初回抗原刺激を受けた大人に追加抗原刺激を行なうのに使用することができる。送達が容易なことから、パッチ使用する複数回の追加抗原刺激が可能であり、インフルエンザワクチンなどのワクチンの効力を増大し得る。
【0140】
表12.筋肉内投与で初回抗原刺激した動物の、経皮免疫化法を用いた追加抗原刺激
【表15】

【0141】
TCIはこのような強力に免疫系を刺激することが明らかであるので、ある部位の皮膚上のアジュバント添加が他の部位に添加された抗原のためのアジュバントとして作用することができる。6〜8週令のBALB/cマウスを麻酔し、"免疫感作方法"に記載と同様にして毛を剃った。動物は耳にタグはつけなかったが、A、CまたはGと名付けたカゴの中に収容した。免疫刺激当日にマウスの耳の背側の皮膚を70%ソプロパノールを含む綿棒で皮膚表面を緩やかにこする処置をした。5分後に、過剰の水を水−処理した耳から吸い取り紙で吸い取り、アジュバント(CT50μg)および/またはリン酸緩衝食塩水50μl中抗原(牡牛血清アルブミン(BSA)100μg)を左または右耳表面(表に記載)に塗抹した。2時間半後に耳を濯ぎ、2回ふき取って乾燥させた。マウスは4および8週後に追加免疫した。最初の免疫刺激の12週後に動物を放血させ、抗−BSA力価を、上記"ELISA IgG(H+L)"に記載と同様にしてELISAを用いて測定した。結果を表13に示す。
【0142】
皮膚に対するBSAのみの塗抹は5匹のうち1匹のみに100EU以上のELISA力価を発現させ、殆ど免疫原性がなかった。これに対して、皮膚にCTおよびBSAを投与した9匹のうち9匹ともが100EU以上の力価を発現させた。抗原およびアジュバントを投与した動物のうち、同一部位(左耳)に試験材料を投与されたマウスは、別々の部位(左および右耳)に抗原およびアジュバントを投与された動物より、より高い(10倍の)抗−BSAを発現させた。しかし、一方の耳に抗原、他方の耳にアジュバントを投与された動物は、BSAのみを投与された動物より、約30倍高い抗−BSA免疫応答を発現させた。すなわち、抗原およびアジュバントは別々の部位にTCIで局所的に投与されると、体液性免疫応答を誘発させることができる。この免疫刺激は他の経路で送達された抗原によって生じると考えられ、経口、バッカル、点鼻、直腸、膣、皮内を含み、皮下注射器または他の投与手段による投与スケジュールを考えることができる。さらに、アジュバントは応答を増強させるために、核酸免疫刺激とともに用いることができる。このような投与は免疫応答を増強するために同時である必要がない。例えば、プラスミドDNAの筋肉内投与の後にアジュバントの経皮投与をしてもよい。分子量500ダルトンは皮膚を通過できないと考えられているから、CT、LT、TNF∝、CpGsまたは同類のアジュバントによる免疫刺激は驚くべき結果である。
【0143】
【表16】

【表17】

【0144】
実施例14.ヒトの経皮免疫
本発明は適当な賦形剤または担体を用いて実施することができる。例えば、パッチを賦形剤として用いて、本発明の製剤とともに処置することができ、また、本発明の製剤で処置された皮膚領域を覆うのに用いることができる。適当なパッチは、例えば、木綿、ナイロン、レーヨン、ポリエステルまたはそれらの組合せから作製することができる。このようなパッチには接着剤や非接着性裏当てを付加することができる。非接着性裏当てのパッチは非接着性手段、例えば、包装材料で動物に固定することができる。適当な裏当ては例えば、シリコーン、アクリルエステルまたはゴムなどの材料で作製することができる。用いることができる他の賦形剤および担体としては上記のもの;例えば、粉末類、油類、水、クリームなどを挙げることができる。ヒトにおけるTCIの潜在能力を評価するために、第1相試験をLTを用いて行い、抗−LT抗体を誘導しようと試みた。6人の志願者にLT500μg、コレラワクチン(CTB 1mg)に用いられた経口アジュバント投与量と同様の投与量が投与された。LTはスイス血清・ワクチン研究所(ベルン、スイス)にてGMP条件下で製造され、オラバックスインコーポレーテッド、ケンブリッジ、マサチューセッツから販売された。志願者は滅菌食塩水500μlと混合したLT500μgが投与され、これはボリビニルで裏うちされた2インチ四方の綿ガーゼパッドにしみこませ、4インチ四方のテガデルム(商品名)包帯で覆われている。免疫は未処置皮膚上にパッチを6時間あてて行われ、その後その部位を滅菌食塩水500mlで完全に濯いだ。志願者は同様にして12週後追加免疫された。志願者は免疫部位の炎症の徴候について1、2、3および7日目に検査され、予防接種に関する徴候について聞かれた。免疫は未処置皮膚上にパッチを6時間あてて行われ、その後パッチをはがし、その部位を滅菌食塩水500mlで完全に濯いだ。志願者は12週後追加免疫された。第1回または第2回の免疫の後に全身および免疫部位のいずれにも副作用は見られなかった。抗−LT IgG力価を前記と同様にして測定した。結果をELISA単位(EU)で示し、これは1.0のODを生じさせる試料の逆希釈として定義された。抗−LT IgAは、ヒトIgA(ICN)を用いて作製したIgA標準曲線を用いて、ヤギ抗−ヒトIgA(α)−HRP(キルケガールド・アンド・ペリー、ゲティスバーグ、メリーランド)を用いて、抗−LT IgGと同様にして測定した。表14に示すように、6人の志願者は血清抗−LT IgGまたはIgA抗体の産生を上昇させる応答をし、これは抗体力価において4倍増であった。抗−LT IgGの平均上昇倍数は10.2であり、抗−LT IgAの平均上昇倍数は7.2でった。免疫部位および反対側の腕の生検は皮膚の炎症の徴候を示さなかった。これらの結果はTCIがヒトに皮膚の刺激作用や炎症がなく行われ得ることを立証するものである。
【0145】
適当なパッチ材料は前記に記載した。一般に、パッチは例えば、感圧性包帯、ワクチンおよびアジュバントを坦持するためのマトリックスまたは吸収層、ワクチン不透過性裏当ておよび放出インナーから構成することができる。これ自体または適当なパッチの例は米国特許第4915950および3734097号に記載されている。
【0146】
パッチは、例えばポリエステル/セルロース、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエステル/レーヨンなどを含む織布または不織材料を含んで作製される。
【0147】
不織性パッチ材の例には次のようなものが含まれる:
BBA不織布
a.グレード番号1313290、湿性積層不織布、組成物=ポリエステル/
セルロース、重量(gsy)=35.4、重量(gsm)=42.3、厚さ(mils)=
7.9、伸帳性MD=3.4、伸張性CD=2.4。
【0148】
b.グレード番号2006086、熱接着性不織布、組成物=ポリエチレン、
重量(gsy)=16.0、重量(gsm)=19.1、厚さ(mils)=10.2
伸張性MD=3.3、伸張性CD=0.7。
【0149】
c.グレード番号149146、熱接着性不織布、組成物=ポリエステル、
重量(gsy)=25.6、重量(gsm)=30.6、厚さ(mils)=6.5、
伸張性MD=5.3、伸張性CD=0.9。
【0150】
d.グレード番号149024、熱接着性不織布、組成物=ポリエステル/
レーヨン、重量(gsy)=30.5、重量(gsm)=36.4、厚さ(mils)=
13.2、伸張性MD=5.5、伸張性CD=1.1。
【0151】
e.グレード番号140−027、ハイドロジェンタングル不織布、組成物=
ポリエステル/レーヨン、重量(gsy)=28.0、重量(gsm)=33.5、
厚さ(mils)=22.4、伸張性MD=10.4、伸張性CD=3.8。
【0152】
本発明において用いられ得る感圧接着剤は例えば、アクリルエステル、シリコーン、ゴムなどである。
【0153】
【表18】

【0154】
実施例15
LTは経皮投与によるヒトの免疫に有効であることが示されている。今回発明者らもまたLTがTCIのアジュバントとして作用するとの知見を得た。6〜8週令のC57BL/6マウスを麻酔し、"免疫感作方法"に記載と同様にして毛を剃った。免疫刺激当日にマウスの背中をイソプロピルアルコールで拭いた。アルコールを飛ばした後(約5分)、熱不安定性エンテロトキシン(LT)100μgおよび/またはジフテリアトキソイド(DT)100μgを含むリン酸緩衝食塩水(PBS)100μlを90〜120分間背中に接触させた。過剰の抗原を"免疫感作方法"に記載と同様にして除去した。免疫を4および8週目に繰り返した。最初の免疫から10週後、動物を放血させ、抗−DT力価を上記"ELISA IgG(H+L)"に記載と同様にしてELISAを用いて測定した。結果を表15に示す。
【0155】
DTのみで処置された動物からの血清の力価または前採血試料の力価と比較すると、LTおよびDTで免疫した動物からの抗−DT力価は明らかに上昇していた。すなわち、熱不安定性エンテロトキシン(LT)は皮膚のアジュバントとして用いることができるのは明らかである。
【0156】
【表19】

【0157】
実施例16
物理的/機械的浸透増加の役割を評価するために、角質層の表在層をテープストリッピングで除いた。テープストリッピングは角質層の外層を除くためにこの分野で良く知られた介在(intervention)である。6〜8週齢のC57BL/6マウスを麻酔し、「免疫感作方法」で述べたように毛を剃った。24時間後、25μgのCTをリン酸緩衝生理食塩水50μlに溶解してマウスの背中に塗布し、非介在群とした。別に、第2群の動物の背中の皮膚を穏やかにテープストリッピングし、“テープストリッピング”介在群とした。テープストリッピング工程はセロファンスコッチテープを背中に貼って、3分間皮膚表面に接着させ、ついでやさしくテープを除いて行った。接着/剥がす工程は3回繰り返して行った。ついで25μgのCTをリン酸緩衝生理食塩水の50μl溶液でマウスの背中に塗布した。抗原は約1.5時間背中に残留し、そして過剰の抗原除去を「免疫感作方法」に述べたように行った。
【0158】
抗CT抗体力値は、1次免疫11日後に採取した血清を用いる「ELISA IgG(H+L)」で上述したように、ELISAを用いて測定した。結果を表16に示す。免疫前に同じ動物から採取した血清(前採血、prebleed)と比べ、CTは両群において免疫原性であった。しかしながら、テープストリッピング群の相乗平均力値は100倍高く、力値は非介在群の動物と比べ、後者の動物間でさらに一致していた。よって、テープストリッピングを用いた皮膚表面の物理的破壊は経皮投与による抗原輸送を増強させるようである。
【0159】
この簡単なデバイスは、抗原とアジュバントを表皮に輸送する他の物理的浸透デバイス、例えば皮内注射に用いられる針やツベルクリンシリンジ、角質層や表皮にのみ浸透する長さのマイクロニードル、ツベルクリン試験(TB tine testing)に用いられるデバイス、気体動力銃、テープストリッピング用粘着テープ、あるいは表皮あるいは表面表皮にのみ貫通することで知られている他のデバイスで置き換えることができる。テープストリッピングデバイスは他の浸透増強剤と共に用いることができる。テープストリッピングデバイスはパッチ配置箇所を示すマーカーと共に用いることができ、ロール状あるいは個別の単位形に分散することができる。
【0160】
表16
物理的浸透増強による経皮免疫の増強:
抗原投与前にセロファンテープを用いて皮膚が剥がされたマウスにおける抗CT力値:
【表20】

【0161】
実施例17
プラスミドDNAあるいはRNAなどの核酸は免疫応答を誘発するために用いることができ、本分野では良く知られている。経皮免疫における核酸の使用は先の特許(PCT/US97/21324)に記載された。浸透増強技術と共に皮膚への核酸(遺伝免疫としても知られている)の使用は以下の実施例に例示する。
【0162】
6〜8週齢のC57BL/6マウスを麻酔し、「免疫感作方法」で述べたように毛を剃った。“NP DNA”群では、マウスはイソプロパノールで拭き、アルコールが蒸発後(約10分後)、背中を飽和ガーゼパッドを用いて水に浸した。約10分後、過剰の水を吸い取り、100μgのインフルエンザ核蛋白質をコードするDNAプラスミド(pCMV−NP)を、100μlの生理食塩水に溶解して、背中に塗布した。NP−DNAマウスの第2群は、背中をアルコール拭きの前に3回テープストリッピングする以外は、同様の免疫プロトコールを行い、“NP−DNA−テープストリッピング”群とした。テープストリッピング工程はセロファンスコッチテープを背中に貼って、5分間皮膚表面に接着させ、ついでやさしくテープを剥がして行った。マウスの第3群は上記のテープストリッピング/免疫プロトコールを行い、100μgのアジュバント熱不安定性エンテロトキシン(LT)を免疫溶液に含めた。1次免疫16日後、動物を放血し、抗インフルエンザNP力値を、「ELISA IgG(H+L)]で上述したELISAを用いて測定した。結果を表17に示す。
【0163】
抗インフルエンザ力値をスプリットウィルス抗原(フルゾン、Fluzone)標品を用いてELSAプレートを被覆して測定した。ELISA力値は5匹の個々の動物で測定し、各群で読まれた平均光学濃度を示す。3群の免疫群すべてにおいて、免疫前に同じ動物から採取した血清(前採血、prebleed)の力値と比べ、高い抗インフルエンザ力値を発現した。NP DNAのみのグループと比べ、免疫前のテープストリッピングはすべての3血清希釈試験(1:100、1:200、1:400)において抗インフルエンザ力値を増強し、アジュバント(LT)の追加によりこの応答をさらに増強した。よって、DNAはワクチン抗原に対する免疫応答を誘発するために皮膚に使用でき、その効果はアジュバントの添加と、テープストリッピングなどの浸透増強により、さらに強化され得る。
【0164】
表17
アルコール浸透増強を用いた皮膚へ抗原として塗布したDNAの免疫原性:
【表21】

【0165】
実施例18
輸送の簡便さのため、経皮免疫(TCI)は異なる排膿リンパ節への適用が可能である。このことは免疫応答を増強する点において、さらなる有利さを持つ。ウサギを麻酔し、毛を剃り、上記のように免疫した。動物を100μgのコレラ毒素(CT)と100μgのインフルエンザ血球凝集素(HA)で背中の1箇所あるいは2箇所に免疫した。HAおよびCTは0、3および5週目に投与した。1次免疫7週後、動物を放血させ、抗HA力値を、「ELISA IgG(H+L)]で上述したELISAを用いて測定した。結果を表18に示す。
【0166】
抗HA力値は、CTおよびHAで免疫した10動物中の10動物から得た血清において、同じ動物から免疫前に採取した血清(前採血、prebleed)の力値と比べ、上昇した。2箇所免疫群の相乗平均力値は1箇所免疫群のものに比べ3倍高く、これは複数箇所での抗原輸送が、TCIの増強に用いることができることを示唆している。よって、抗原は皮膚の1箇所あるいは複数箇所へのTCIにより輸送できる。
【0167】
表18
単一あるいは複数箇所への抗原の経皮投与:
【表22】

【0168】
実施例19
TCIにより輸送できる様々な抗原を、抗多糖類抗体を誘発するために、多糖類複合ワクチンの使用によりさらに例示する。6〜8週齢のBALB/cマウスを麻酔し、毛を剃り、「免疫感作方法」で述べたように免疫した。マウスはコレラ毒素(CT)およびヘモフィルスインフルエンザB(Haemophilus influenza B)多糖類(Hib−PS)で0、3および5週後に免疫した。1次免疫7週後、動物を放血させ、抗Hib−PS力値を「ELISA IgG(H+L)]で上述したELISAを用いて測定した。結果を表19に示す。
【0169】
抗Hib−PS力値はCTおよびHib−PSで免疫した10動物中、4動物の血清中で、同じ動物から免疫前に採取した血清(前採血、prebleed)の力値と比べ、上昇した。よって、TCIは抗多糖類抗原を皮膚を介して誘発するために使用することができる。これは一般的ヒト使用ワクチン抗原であり、免疫の重要な戦略を代表する。
【0170】
表19
経皮免疫による複合多糖類の輸送:
【表23】

【0171】
実施例20
ヒト用ワクチン抗原を用いるマウスの経皮免疫化
CTは単一のトキソイド(変性毒素)及びBSAを用いる経皮免疫のためのアジュバントとして作用することが示されている。我々は表20に記載のように、アジュバントとしてCTを用いて、多価トキソイドワクチン(破傷風及びジフテリア毒素)、酵母で発現した組換え蛋白(HIV p55 gag)及び完全に死滅させた狂犬病ウイルスを含む様々なヒト用ワクチン抗原でマウスを経皮免疫化した。文献(Glenn.G.M., Scharton-Kereten, T., Vassell, R., Matyas, G. & Alving. C. R. Transcutaneous immunization using bacterial ADP-ribosylating exotoxins as antigens and adjuvants, Infect. Immun. (印刷中))に先に記載されたように BALB/cマウス(n=5)を免疫化し、2回追加免疫した。免疫化の用量は100/50/50 μg CT/TT/DT via TCI 対 3/1/1 alum/TT/DT IM; 100/100 μg LT+DT 対100μgDT単独を含む。死滅狂犬病ウイルス17IEで免疫化したマウス(n=10)は、筋肉内に初回抗原刺激(2x)した後、軽くアルコールで皮膚を拭いてから、経皮的に追加免疫刺激し、3xIM狂犬病ウイルス免疫化と比較した。DT,TT,p55及び狂犬病に対する抗体レベルは、文献記載のようにしてELISAを用いて決定した(Grassi, M., Wandler, A. & Peterhans, E., Enzyme-linked immunoabsorbant assay for determination of antibodies to the envelope glycoprotein of rabies virus, J. Clin. Microbiol., 27, 899-902 (1989)), Miyamura, K., Tajiri, E., Ito, A., Murata, R. & Kono, R. Micor cell culture method for determination of diphtheria toxin and antitoxin titers using VERO cells II, Comparison with the rabbit skin method and practical application for seroepidemiological studies, J. Biol. Satand., 2, 203-209 (1974))。 TCIは、TT及びDTに対する抗体応答において同様の増加をもたらし、抗DT中和力価は筋肉内免疫化(IM)によるものに匹敵していた。これらのデータはTCIが既存の免疫化プラクティスに匹敵する程度の大きさの免疫応答を誘導させるのに用いることができることを示している。IMで初回免疫刺激された動物のTCI追加免疫刺激も試験した10頭の動物全てで、有意な抗狂犬病力価をもたらした(0.53〜1.03 IU, p<0.02, Student's t-test)。アジュバントなしに投与された抗原DT及びp55に対する抗体は、アジュバントなしに投与した場合、抗原の免疫原性は極めて弱いという我々の事前の観察と一致して、極めて低いか検出不可能であった。LTも、CTを用いる先の研究(1、2)と同じ様にアジュバントとして作用した(表20)。免疫化は筋肉内投与との比較で最適化していないが、これらの抗原−特異的応答から、種々の起源の、種々のサイズの、様々なヒト用ワクチンにTCIを使用しうること、及びLTが同時に投与(coadminister)されるワクチン抗原のためのアジュバントとして作用することができることが確認できる。
【0172】
表20
【表24】

ND=実施せず、ELISA単位(EU)は幾何学的平均値であり、範囲を括弧内に示す。
【0173】
実施例21
ランゲルハンス細胞活性化
2対象で、免疫化した側と、その反対側の腕のバイオプシー(生検)を、1つは免疫化後24時間、他は第二の免疫化の48時間後に行った。標本のヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色により、免疫化後の炎症が無いことを示唆する臨床所見を得た(図1A,B)。慣例の組織学的切片では目立たないが、免疫化部位から得た標本の抗CD1a染色を用いてLC類を可視化すると、反対側の腕から得た対照生検と比較して、大いに拡大された細胞体があるが、それ以外は正常な細胞数が存在することが確認された(図1C,D,E,F)。同様の所見が、LC類の可視化に抗HLA-DR及び抗S‐100を持った場合も得られた(図示せず)。TCI免疫化皮膚のLC形態学は口内の叢由来のリポ多糖類によって慢性的に活性化されていると考えられる扁桃腺窩LC類と外観上同様であった(Noble)。
【0174】
試験するヒト皮膚生検標本の大きさ及び数に制限があるために、補足的にネズミでの研究を行った。接触増感薬、LPS、及び炎症誘発性サイトカインを用いるネズミ系におけるLC活性化は、形態学における両方の変化(Aiba)と表面マーカー発現の増加(Jakob and Udey)を通して、特性化された。マウスの耳の皮膚はしばしばLC活性化研究に用いられるが、経皮免疫化の優れた部位であるとが示されている(Scharton-Kersten)。耳へのCT適用後24時間目に表皮シートを調製しMIICクラスII、ネズミ皮膚のLC-拘束性マーカー、のために染色した。PBS処置耳に比較して(図2A)、CT処置耳におけるLCは、樹脂状プロセスの喪失、拡大された細胞体、及び細胞の強い染色−LC活性化の特徴、を伴うLC形態における顕著な変化を示した(Aiba)(図2B,C)。CTのLC活性化能はフローサイトメトリーによって確認された。CT‐処理皮膚由来のLCは、MHCクラスII抗原及びCD86(B7-2)レベルの増加と、E-カドヘリンレベルの減少を表し、これは他に記載されたLC活性化と一致していた(Pierre, Aiba, Jakob)。
【0175】
実施例22で使用しうる免疫化の方法
BALB/cマウスを#40バリカンで刈り込む(毛剃りする)ことができる。このシェービングは皮膚になんらの外傷兆候を与えずに行うことができる。シェービングは、胸郭中央から首筋の真下まで行う。次いでマウスを24時間休ませる。この前に、マウスの同定のために耳タグをつけ、免疫前血清サンプルを得るために予備採血するとよい。マウスは、シェービングせずに各耳に5−500μlの免疫化溶液を適用することにより、経皮的に免疫化することもできる。マウスの免疫化は以下の方法で行うことが出来る。20mg/mlキシラジン溶液0.03-0.06mlと100mg/mlケタミン 0.5 mlとでマウスを麻酔し、この用量の麻酔薬で約1‐3時間固定しておく。マウスを温ブランケット上に腹部を下にして置く。
【0176】
免疫化溶液と浸透促進化合物(または技術)を毛を剃った背面皮膚に、以下の要領で載置する:1.2 cm x 1.6 cm ポリスチレン製ステンシルを静かに背中に置き、食塩水で湿らせた滅菌ガーゼを用いて部分的に皮膚を湿らし(免疫化溶液が均一に適用されるよう)、免疫化溶液をステンシルで囲んだ範囲内にピペットで適用し2cm2の免疫化溶液のパッチを得る。ピペットで皮膚を削り取ったり、摩擦しないように注意する。ピペットチップの円滑な側で被うべき範囲に免疫化溶液を広げることができる。別法として、皮膚を湿らせることなく、又は皮膚を湿らせるがステンシルを用いずに皮膚に免疫化溶液を直接置くことができる。
【0177】
免疫化溶液(約5μl〜約200μl)はマウスの背部に60−120分間残存させることができる。免疫化期間の終了時に、マウスを首筋及び尾で静かに、多量の微体温の水道水流の下に維持し、10秒間洗浄する。マウスを滅菌ガーゼで軽くたたいて乾かし、10秒間、第2の洗浄を行う;次いで、マウスを第2回目の乾燥(軽くたたいて)に付し、ケージに放置する。マウスは、麻酔、免疫化、洗浄工程による悪影響又は又は外毒素に起因する毒性を示さなかった。免疫化後の、皮膚の刺激、膨潤、又は赤化も認められず、マウスは成長していると思われた。耳からの免疫化は免疫化前に毛を除去しない点を除いて上記のようにして行うことができる。
【0178】
抗原
以下の抗原を免疫化及びELISAに用いることができ、滅菌PBS又は生理食塩水を用いて混合することができる。コレラ毒素又はCT(List Biologicals, Cat. # 101B, lot # 10149CB)、CTBサブユニット(List Biologicals, Cat. # BT01, lot # CVXG-14E)、CTAサブユニット(List Biologicals, Cat. # 102A, lot # CVXA-17B)、CTAサブユニット(Calbiochem, Cat. # 608562); 百日咳毒素、塩不含(List Biologicals, lot # 181120a);破傷風毒素(List Biologicals, lot # 1913a, #1915a);シュードモナス外毒素A(List Biologicals, lot # ETA25a); ジフテリアトキソイド(List Biologicals, lot # 1515I); 大腸菌由来の熱不安定性エンテロトキシン(Sigma, lot # 9640625);ウシ血清アルブミン又はBSA(Sigma, Cat # 3A-4503, lot #31F-0116); 及びHemophilus influenza B抱合体(Connaught, lot # 6J81401)。
【0179】
ELISA‐IgG(H+L)
CT、LT、ETA、百日咳毒素、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、Hemophilus influenza B抱合体、及びBSAはGlennら(1995)と同様の方法でELISAを用いて測定することができる。
【0180】
実施例22
LTの活性化は、LTをトリプシン(またはビーズに固定したトリプシン)と共に、還元剤(例えばジチオスレイトール)を用いまたは用いずに、標準の反応条件下にインキュベートして、トリプシン開裂部位近くのジスルフィド結合を切ることにより行なわれる。天然のLTは、蛋白質100μgをトリプシン0.1μgで全反応液量100μlにて37℃で45分間インキュベートすることにより活性化される。別法として、トリプシンをビーズに固定し、LTをトリプシンビーズ上に流す方法でもよい。
【0181】
トリプシン開裂は、SDS−PAGEにより示すこともできる〔レミリ(Laemilli),U.K.1970,バクテリオファージT4のヘッドの組立て中の構造蛋白の開裂、Nature 227:680−685〕。トリプシンで処理または非処理のLTを、ジチオスレイトール含有緩衝液と混合し、SDS−PAGE分析の前に100℃で5分間加熱する。トリプシン処理LTは、A1およびA2のトリプシン開裂に一致する21Kダルトンの蛋白分解フラグメントを有し、A1サブユニットがADP−リボシル化G蛋白質に影響し、毒作用を示す。非処理LTは完全なAサブユニットからなる28Kダルトンのバンドを示す。活性化は、さらに、マウスY−1細胞アッセイでも示され、そこでは天然LTはCTよりも1000分の1と活性が少ない。しかし、トリプシン処理LTはCTと同様の活性を有する。活性化はまた酵素アッセイ、NAD:アグマリンADP−リボシルトランフェラーゼアッセイを用いても示され得る。そのようなアッセイでは、非トリプシン処理LTは低活性または測定できない程度の活性しか示さないと考えられるが、トリプシン処理LTはCTが示すものと同様の活性を示すものと予想される。
【0182】
実施例23
経皮免疫は、もし免疫が短時間でなされるならば、より有益である。例えば、免疫が通常の通院30分の間に達成できれば有益である。この例では、水和アルコール交換した皮膚では、そのような短時間で経皮免疫が達成されることを示した。
C57BL/6マウス(6〜8週令)を、「免疫操作法(immunization procedure)」に記載のようにして、麻酔し、毛ぞりをした。免疫した日にマウスの背をイソプロパノールでふいた。アルコールが蒸発したのち(約10分)、水200μを背中につけて水和した。15分後、免疫溶液を背中につけ、一定期間放置した。「免疫操作法」に記載と同様にして過剰の抗原を除いた。マウスをdOにてCT単独(50μl中100μg)で免疫し、4、6および9週間でCT+DT(100μl容量中各々100μg)で免疫した。初期免疫後12週間して動物を採血し、ELISA IgG(H+L)について前期したようにELISAにて抗DT力価を測定した。その結果を表23に示す。
【0183】
抗DT力価は、免疫前に採血した血清(前採血)の力価に比べて、CTおよびDTで免疫した動物全ての血清中で明らかに上昇していた。免疫の最大効果は、動物を60分間免疫処理した場合に得られた。しかし、力価は30分でも120分でも同様であった。15分間免疫では効果が劣り、その力価は、30分、60分および120分処理グループに比べて約10分の1であった。これは、TCIが、15分抗原適用で達成されるものに似ている。
【0184】
表23 経皮免疫により低減された液性免疫に対する抗原適用時間の効果
【表25】

【0185】
【表26】

【0186】
【表27】

【0187】
【表28】

【0188】
【表29】

【0189】
【表30】

【0190】
【表31】

【0191】
【表32】

【0192】
【表33】

【0193】
【表34】

【図面の簡単な説明】
【0194】
【図1】図1a〜fは免疫化の部位で炎症がないこと(A,B)、免疫化の側のヒトの皮膚中のLTによるランゲルハンス細胞の活性化(C,E)、および対側性の腕からの皮膚中でのランゲルハンス細胞の活性化の欠落を示す図である(D,F)。
【図2】図2a〜dはマウスの皮膚中の正常なランゲルハンス細胞(A,B,200および400倍)およびマウスの皮膚中のコレラ毒素によるランゲルハンス細胞の活性化(C,D,200および400倍)を示す図である。
【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図1D】

【図1E】

【図1F】

【図2A】

【図2B】

【図2C】

【図2D】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者における高められた治療的に有効な免疫応答を誘導する方法であって、
a.患者の皮膚のある領域を前処置し;そして
b.前処置した領域に、
1)治療的有効量の少なくとも1つの抗原
2)該少なくとも1つの抗原に対する免疫応答を促進するのに有効な量存在する少なくとも1つのアジュバント、及び
3)患者の皮膚に対する医薬的に許容できる担体、
を含む製剤を適用すことを含み、
該前処置した領域は穿孔されていない方法。
【請求項2】
前処置が該製剤の皮膚浸透を高める請求項1に記載の方法。
【請求項3】
担体がパッチである請求項1に記載の方法。
【請求項4】
パッチが、閉鎖性の包帯、非閉鎖性の包帯、ハイドロゲル包帯、及びリザーバー包帯よりなる群から選択される請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前処置がスワブで前処置する領域をぬぐうことを含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
スワブが、木綿、ナイロン、ウール、及びその組み合わせよりなる群から選択される材料よりなる請求項5に記載の方法。
【請求項7】
スワブが、アルコール又はアルコールを含む組成物で処理される請求項5に記載の方法。
【請求項8】
スワブが、アセトン又はアセトンを含む組成物で処理される請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前処置が前処置する領域に界面活性剤又は界面活性剤溶液を塗布することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項10】
スワブが界面活性剤又は界面活性剤溶液で処理される請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前処置が脱毛製剤を塗布し、前処置する領域に該製剤を約0.1−30分の期間残すことを含む請求項5に記載の方法。
【請求項12】
該期間が好ましくは約4−20分である請求項11に記載の方法。
【請求項13】
該期間がより好ましくは約12分である請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前処置がケラチン分解製剤を塗布し、前処置する領域に該製剤を約0.1−30分の期間残すことを含む請求項1に記載の方法。
【請求項15】
ケラチン分解製剤がサリチレートである請求項14に記載の方法。
【請求項16】
該期間が約4−20分である請求項14に記載の方法。
【請求項17】
該期間が約10分である請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前処置が、破壊装置で前処置する領域の表面層を破壊することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項19】
破壊装置が、エメリーボード、研磨パッド、ツベルクリン試験用装置気体動力銃マイクロニードル装置、及び粘着テープよりなる群から選択される請求項18に記載の方法。
【請求項20】
アジュバントが、細菌DNA,サイトカイン、ケモカイン、腫瘍壊死因子α、遺伝的に改変された毒素、化学的に結合した毒素、及びリポ多糖よりなる群から選択される少なくとも一つである請求項1に記載の方法。
【請求項21】
治療的に有効な免疫応答がLN細胞増殖をもたらす請求項20に記載の方法。
【請求項22】
アジュバントが、細菌DNA,CpG,サイトカイン、ケモカイン、腫瘍壊死因子α、遺伝的に改変された毒素、化学的に結合した毒素、及びリポ多糖よりなる群から選択されるアジュバントの少なくとも二つの組み合わせである請求項20に記載の方法。
【請求項23】
患者における高められた治療的に有効な免疫応答を誘導する方法であって、
a.前処置した領域に、
1)治療的有効量の少なくとも1つの抗原
2)該抗原に対する免疫応答を促進するのに有効な量存在する少なくとも1つのアジュバント、及び
3)患者の皮膚に対して医薬的に許容できる担体
を含む製剤を適用し(前処置した領域は穿孔されていない)、そして
b.患者に別の抗原製剤を投与する、
ことを含む方法。
【請求項24】
該別の抗原製剤が、前処置した領域への該製剤の適用後の時間に投与され、該別の抗原製剤が患者における更なる免疫応答を提供する請求項23に記載の方法。
【請求項25】
該別の抗原製剤が、前処置した領域への該製剤の適用前の時間に投与され、該別の抗原製剤が患者における更なる免疫応答を提供する請求項23に記載の方法。
【請求項26】
アジュバントが患者の皮膚の一部位に適用され、該抗原が患者の皮膚の第2の部位に適用され、該第1部位及び第2部位の少なくとも1つは前処置した領域にある請求項1に記載の方法。
【請求項27】
抗原及びアジュバントの適用がほぼ同時に行なわれる請求項26に記載の方法。
【請求項28】
患者における高められた治療的に有効な免疫応答を誘導する方法であって、
a.患者の皮膚の領域を前処置し;
b.治療的有効量の少なくとも1つの抗原を投与し;そして
有効量の少なくとも1つのアジュバントを投与する、
ことを含み、
該抗原及び該アジュバントの少なくとも1つは該前処置した領域に投与され、前処置した領域は穿孔されていない方法。
【請求項29】
該抗原は該前処置した領域に投与され、該アジュバントは筋肉内注射、経口、鼻、及び直腸よりなる群から選択される方法により投与される請求項28に記載の方法。
【請求項30】
該アジュバントは該前処置した領域に投与され、該抗原は筋肉内注射、経口、鼻、及び直腸よりなる群から選択される方法により投与される請求項28に記載の方法。
【請求項31】
該抗原はリンパ球に対するランゲルハンス細胞の細胞表面に存在し、それにより生体における免疫応答を誘導する請求項1に記載の方法。
【請求項32】
該アジュバントへの暴露がリンパ節へのランゲルハンス細胞の移動を起す請求項1に記載の方法。
【請求項33】
該アジュバントへの暴露がランゲルハンス細胞に樹状細胞へ成熟する信号を送る請求項1に記載の方法。
【請求項34】
抗原が病原体、腫瘍細胞および正常細胞からなる群から選ばれる1つの起源から誘導される、請求項1の方法。
【請求項35】
抗原がバクテリア、ウイルス、真菌および寄生虫からなる群から選ばれる1つの起源から誘導される、請求項1の方法。
【請求項36】
抗原が腫瘍抗原、自己抗原、アレルゲンおよび生物兵器剤からなる群から選ばれる、請求項1の方法。
【請求項37】
抗原が炭水化物、糖脂質、糖蛋白、脂質、リポ蛋白、リン脂質およびポリペプチドからなる群から選ばれる、請求項1の方法。
【請求項38】
組成(formulation)が、さらに弱毒化生ウイルスを含み、そして抗原が弱毒化生ウイルスによって発現された、請求項1の方法。
【請求項39】
抗原が、多価(multivalent)である、請求項1の方法。
【請求項40】
主要組織適合性コンプレックスクラスII発現を増加させるために、さらにランゲルハンス細胞を活性化することを含む、請求項31の方法。
【請求項41】
アジュバントがランゲルハンス細胞を活性化する、請求項31の方法。
【請求項42】
アジュバントがリンパ球に抗原の存在を増強する、請求項1の方法。
【請求項43】
アジュバントがADP−リボシル化外毒素である、請求項1の方法。
【請求項44】
アジュバントがコレラ毒素(CT)またはコレラ毒素Bサブユニット(CTB)である、請求項43の方法。
【請求項45】
アジュバントが大腸菌熱不安定性エンテロトキシン(LT)または百日咳毒素である、請求項43の方法。
【請求項46】
当該組成におけるアジュバントがADP−リボシル化外毒素をコードする核酸として提供される、請求項43の方法。
【請求項47】
当該組成(formulation)における抗原が該抗原をコードする配列を含む核酸として提供される、請求項1の方法。
【請求項48】
該核酸が非組込み、かつ非感染である、請求項47の方法。
【請求項49】
該核酸が、さらに該抗原をコードする配列にオペラブリーに連結した調節領域を含む、請求項1の方法。
【請求項50】
組成(formulation)がゲル、エマルジョンまたは軟膏である請求項1の方法。
【請求項51】
組成(formulation)が1つ以上のドレインイング(draining)リンパ節領域をカバーする無傷の皮膚に適用される、請求項1の方法。
【請求項52】
皮膚に接着するに適したパッチ、少なくとも1種のアジュバント、少なくとも1種の抗原と皮膚浸透増強剤を含むワクチン組成からなるワクチン投与用製品。
【請求項53】
皮膚浸透増強剤がアルコール、アセトン、界面活性剤、脱毛剤およびケラチン分解剤(keratinolytic)からなる群から選ばれる、請求項52の製品。
【請求項54】
アルコールとアセトンがスワブに結合している、請求項52の製品。
【請求項55】
以下の方法からなる患者の病気の治療方法:
a.患者の皮膚領域を前処置し、その際の該前処置は該治療の効果を増強するものであり、そして
b. 該前処置領域に以下の組成の組成物を適用することからなる方法。ただし、該前処置の領域はせん孔されていない。
1)少なくとも1種の抗原の治療的有効量、
2)上記少なくとも1種の抗原に対し免疫応答を促進するに有効量存する少なくとも1種のアジュバント、および
3)該患者皮膚への薬学的に許容されるキャリアー。
【請求項56】
以下の方法からなる患者の病気の予防方法:
a.患者の皮膚領域を前処置し、その際の該前処置は該治療の効果を増強するものであり、そして
b. 該前処置領域に以下の組成の組成物を適用することからなる方法。ただし、該前処置の領域はせん孔されていない。
1)少なくとも1種の抗原の治療的有効量、
2)上記少なくとも1種の抗原に対し免疫応答を促進するに有効量存する少なくとも1種のアジュバント、および
3)該患者皮膚への薬学的に許容されるキャリアー。
【請求項57】
以下の方法からなる、患者を抗原に曝す患者の保護方法:
a.患者の皮膚領域を前処置し、その際の該前処置は該治療の効果を増強するものであり、そして
b. 該前処置領域に以下の組成の組成物を適用することからなる方法。ただし、該前処置の領域はせん孔されていない。
1)少なくとも1種の抗原の治療的有効量、
2)上記少なくとも1種の抗原に対し免疫応答を促進するに有効量存する少なくとも1種のアジュバント、および
3)該患者皮膚への薬学的に許容されるキャリアー。
【請求項58】
以下の組成からなる組成物で、該組成物を無傷の皮膚に適用したとき、該抗原に特異的な免疫応答を惹起する組成物:
少なくとも1種の抗原、
少なくとも1種のアジュバントおよび
少なくとも1種の皮膚浸透増強剤。
【請求項59】
該皮膚浸透増強剤がアルコール、アセトン、界面活性剤、脱毛剤およびケラチン分解剤(keratinolytic)からなる群から選ばれる、請求項58の組成物。

【公開番号】特開2012−41355(P2012−41355A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−225680(P2011−225680)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【分割の表示】特願2000−533145(P2000−533145)の分割
【原出願日】平成11年2月25日(1999.2.25)
【出願人】(502443851)アメリカ合衆国 (2)
【氏名又は名称原語表記】The United States of America
【Fターム(参考)】