説明

AFI型鉄アルミノフォスフェート及びその製造方法

【課題】触媒や吸着材として有用な微粒子のFAPO−5及び工業的レベルで製造可能な微粒子のFAPO−5の製造方法を提供する。
【解決手段】AFI型鉄アルミノフォスフェートは、機械的に粉砕することなく得られた微粒子のものあり、平均粒子径が15ミクロン以下である。また、AFI型鉄アルミノフォスフェートの製造方法は、上記の微粒子のAFI型鉄アルミノフォスフェートの製造方法であり、P源、Al源、Fe源およびテンプレートを含む水性出発原料を水熱合成するに際し、0.05m/s以上の攪拌線速で攪拌する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、AFI型鉄アルミノフォスフェート及びその製造方法に関し、詳しくは、触媒や吸着材として有用な微粒子のAFI型鉄アルミノフォスフェート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
AFI型鉄アルミノフォスフェート(以下、「FAPO−5」と適宜称する。)の製造方法としては、テンプレートを使用し、攪拌を行うことなく静置状態で水熱合成する方法が一般的に知られている。
【特許文献1】特開2004−136269号公報
【0003】
一方、触媒や吸着材としてFAPO−5等のゼオライトを使用する場合は、その活性、反応基質、反応物あるいは吸着物などの拡散状態を最適にする必要があり、多くの場合において微粒子のゼオライトであることが必要である。そして、一般的に、微粒子のFAPO−5を製造する方法としては、製造された大きな粒子を粉砕する方法が考えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、微粒子のFAPO−5を製造する従来法では、昇温の困難やゲルの不均一による不純物副生のため、工業的レベルでの製造が困難である。更に、比較的大きな粒子しか得ることが出来ないため、粉砕工程が必要であり、しかも、粉砕により、構造の一部が壊れてしまうため、例えば吸着量などが低下する等の問題が生じる。従って、水熱合成により微粒子を直接合成する新たな手段が望まれる。
【0005】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、触媒や吸着材として有用な微粒子のFAPO−5及び工業的レベルで製造可能な微粒子のFAPO−5の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、所定の水性出発原料を特定の攪拌線速で攪拌しながら水熱合成することにより、粉砕することなく微粒子のFAPO−5が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち本発明の要旨は、機械的に粉砕することなく得られた微粒子のFAPO−5であって、平均粒子径が15ミクロン以下であることを特徴とするFAPO−5に存する。そして、斯かるFAPO−5の好ましい態様においては、35℃の水蒸気吸着等温線における相対湿度0.14と0.3との吸着量の差が0.14g/g以上である。
【0008】
また、本発明の他の要旨は、上記のFAPO−5の製造方法であって、P源、Al源、Fe源およびテンプレートを含む水性出発原料を水熱合成するに際し、0.05m/s以上の攪拌線速で攪拌することを特徴とするFAPO−5の製造方法に存する。なお、攪拌線速は以下の式(1)により求める。
【0009】
【数1】

【発明の効果】
【0010】
本発明に係るFAPO−5によれば、機械的に粉砕することなく得られた微粒子であるため、構造に破壊がなく、吸脱着性などの特性に優れている。また、本発明に係るFAPO−5の製造方法によれば、水性出発原料を特定の攪拌線速で攪拌しながら水熱合成することにより、その構造を壊さずに微粒子のFAPO−5を工業的レベルで製造することが可能となる。そして、このようなFAPO−5は、工業的に有用な触媒や吸着材として広く使用することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明について更に詳細に説明する。本発明のFAPO−5は、機械的に粉砕することなく得られた微粒子のFAPO−5であって、平均粒子径が15ミクロン以下であることを特徴としている。ここで、機械的粉砕とは、例えば、化学工学便覧(丸善株式会社発行,1988年,第826〜837頁)に記載の粉砕機を使用した粉砕を言う。
【0012】
機械的に粉砕せずに平均粒径15ミクロン以下の微粒子のFAPO−5を得る方法としては、具体的には、水熱合成、酸やアルカリ等の薬品による溶解、電解研磨などによる方法が挙げられる。中でも、微粒子化工程を必要とせず、かつ、微粒子化による結晶構造の破壊がないと言う点から、水熱合成により得る方法が好ましい。
【0013】
本発明において、平均粒径とは、長径、短径のある場合はその平均を指し、粒径は、レーザー回折法により測定できる。本発明に係る微粒子のFAPO−5の平均粒径は、好ましくは下限値が1μm以上であり、上限値が15μm以下である。斯かる上限値は、更に好ましくは10μm以下、より一層好ましくは5μm以下である。平均粒径を上記の範囲に規定する理由は、平均粒径が1μmより小さい場合、ハンドリングが悪くなり、また、平均粒径が15μmより大きい場合、表面積が小さくなるために触媒活性が低くなり、しかも、粉砕工程を必要とするために構造の一部に破壊が生じるからである。
【0014】
上記の粒径の制御は、水熱合成時の攪拌線速度、水性出発原料調製の際の温度管理および水性出発原料の組成調整により行う。なお、本発明において、水性出発原料とは、リン源(P源、)、アルミニウム源(Al源)、鉄源(Fe源)及びテンプレートを混合することにより得られる水熱合成前の混合原料を指す。
【0015】
本発明において、アルミノフォスフェートとは、International Zeolite Association(IZA)の規定による結晶性アルミノシリケート類および結晶性アルミノフォスフェート類を指す。その構造としては、IZAが定めるコードで、AFIであるものを指す。
【0016】
本発明に係る微粒子のFAPO−5は、骨格構造にアルミニウム、リン及び鉄を含む結晶性鉄アルミノフォスフェートであって、鉄は骨格内のアルミニウム及び/又はリンと置換されている。結晶性鉄アルミノフォスフェートは、以下の式(2)、(3)及び(4)で表される原子の存在割合を有するものが好ましい。
【0017】
【数2】

【0018】
【数3】

【0019】
【数4】

【0020】
そして、上記の原子の存在割合のなかでは、鉄の存在割合が以下の式(5)で表されるものが好ましく、以下の式(6)で表されるものが更に好ましい。
【0021】
【数5】

【0022】
【数6】

【0023】
本発明において、結晶性鉄アルミノフォスフェートの骨格構造内には、Fe、Al及びP以外の他の元素が含まれていてもよい。他の元素としては、例えば、ケイ素、リチウム、マグネシウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、パラジウム、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、砒素、スズ、カルシウム、硼素などがあげられる。通常、他の元素(M)と鉄(Fe)のモル比(M/Fe)は3以下、好ましくは1.5以下、更に好ましくは0.5以下である。その理由は、M/Feがこの範囲にない場合、十分な吸着性能が発現されないからである。
【0024】
本発明に係る微粒子のFAPO−5は、35℃の水蒸気吸着等温線における相対湿度0.14と0.3での吸着量の差が0.14g/g以上であることが好ましく、0.15g/g以上であることが更に好ましい。上記の様に吸着量の差が大きい場合には、吸着ヒートポンプ等に使用する際に吸着材の量を少なくすることが出来るため、装置をコンパクト化し得ると言うメリットがある。なお、上記の相対湿度は、便宜上、ある特定の値を取っているが、上記のFAPO−5の特性に関しては、この比較的狭い相対湿度範囲で比較的大きな水蒸気吸着量差を示すと言う吸着等温線の形状が重要である。
【0025】
FAPO−5は、一般的には水性出発原料調製の際に温度管理を行い、攪拌の伴わない水熱合成を行うことにより得られている。勿論、水熱合成時に攪拌することにより、粒径が小さくなることは予想され得る。しかしながら、SAPO−34では水熱合成時に攪拌を行っても粒径は小さくならない。そして、FAPO−5では水熱合成時の攪拌と生成する粒子の粒径との関係は公知ではない。
【0026】
本発明の特徴は、水熱合成時に特定の条件で撹拌操作を行うことにより、上記の微粒子のFAPO−5を直接合成し得ることを見出した点にある。すなわち、上記のFAPO−5を得るための本発明の製造方法においては、P源、Al源、Fe源およびテンプレートを含む水性出発原料を攪拌しながら水熱合成するに際し、0.05m/s以上の攪拌線速
で攪拌する。
【0027】
本発明において、攪拌とは、水性出発原料を均一にすることが出来れば良く、撹拌手段としての攪拌羽根の羽根の枚数および形状、攪拌羽根と反応器内壁との間隔、反応器内壁の邪魔板の有無は特に限定されない。攪拌羽根の形状としては、具体的には、化学工学便覧(丸善株式会社発行,1988年,第891〜916頁)に記載のプロペラ、角度付平羽根、ピッチ付平羽根、平羽根ディスクタービン、平羽根、湾曲羽根、ファルドラー型、ブルマージン型、ヘリカル型、ヘリカルリボン型、アンカー型、改良アンカー型などが挙げられる。
【0028】
攪拌線速は、好ましくは0.05m/s以上であり、更に好ましくは0.1m/s以上、より一層好ましくは0.5m/s以上である。攪拌線速の上限はモーターの能力により制限される。攪拌線速の下限を規定する理由は、攪拌線速が0.05m/sより小さい場合は、得られる粒子の粒径が大きくなり、表面積が小さくなるため、触媒活性が低くなり、しかも、粉砕工程を必要とするため、その際に構造の一部に破壊が生じるからである。
【0029】
[水熱合成]
本発明において、水熱合成は、水性出発原料を耐圧容器に入れ、自己発生圧下、または、結晶化を阻害しない気体の加圧下で、攪拌線速0.05m/s以上で攪拌しながら所定温度を保持することにより行われる。水熱合成の際の温度条件は、通常は100〜300℃であり、合成のし易さの観点から、好ましくは150〜250℃、更に好ましくは170〜220℃である。
【0030】
反応時間は、通常は3時間〜30日であり、合成のし易さの観点からは、好ましくは5時間〜15日、更に好ましくは6時間〜7日である。水熱合成後は、生成物を分離し、水洗、乾燥し、空気などを使用した焼成などの方法により、含有する有機物の一部または全部を除去し、上記のFAPO−5を得る。
【0031】
[構成原料]
上記のFAPO−5の水熱合成における出発原料は、以下に示す様なアルミニウム源(Al源)、リン源(P源)、鉄源(Fe源)およびテンプレートである。
【0032】
[アルミニウム源]
Al源としては、特に限定はされないが、通常、擬ベーマイト、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムトリエトキシド等のアルミニウムアルコキシド、水酸化アルミニウム、アルミナゾル、アルミン酸ナトリウム等が挙げられる。中でも、擬ベーマイトが取扱性に優れ、反応性が高い点で好ましい。
【0033】
[リン源]
P源としては通常リン酸が用いられるが、リン酸アルミニウムを使用してもよい。
【0034】
[鉄源]
Fe源としては、これも特に限定はされないが、通常、硫酸鉄、硝酸鉄、リン酸鉄、塩化鉄、臭化鉄等の無機酸鉄、酢酸鉄、シュウ酸鉄、クエン酸鉄等の有機酸鉄、鉄ペンタカルボニル、フェロセン等の鉄有機金属化合物などが挙げられる。これらのうち、無機酸鉄、有機酸鉄が水に溶け易い点で好ましく、中でも、硝酸第二鉄、硫酸第一鉄などの無機酸鉄化合物が更に好ましい。場合によっては、コロイド状の鉄水酸化物などを使用してもよい。
【0035】
[その他の元素]
鉄アルミノフォスフェートの骨格構造内には、前述の吸脱着特性を損なわない限りにおいて、他の元素が含まれていてもよい。他の元素としては、ケイ素、リチウム、マグネシウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、鉄、パラジウム、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、砒素、スズ、カルシウム、硼素などが挙げられる。
【0036】
[テンプレート]
テンプレートとしては、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム等の4級アンモニウム塩、モルホリン、ジ−n−プロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−イソプロピルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ピペリジン、ピペラジン、シクロヘキシルアミン、2−メチルピリジン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、コリン、N,Nヤ−ジメチルピペラジン、1,4−ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン、N−メチルジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−メチルピペリジン、3−メチルピペリジン、N−メチルシクロヘキシルアミン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、キヌクリジン、N,N’−ジメチル−1,4−ジアザビシクロ−(2,2,2)オクタンイオン、ジ−n−ブチルアミン、ネオペンチルアミン、ジ−n−ペンチルアミン、イソプロピルアミン、t−ブチルアミン、エチレンジアミン、ピロリジン、2−イミダゾリドン、ジ−イソプロピル−エチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、シクロペンチルアミン、N−メチル−n−ブチルアミン、ヘキサメチレンイミン等の1級アミン、2級アミン、3級アミン、ポリアミンが挙げられる。これらは混合して使用してもよい。これらの中でも、トリエチルアミン、イソプロピルアミン、ジ−n−イソプロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、テトラエチルアンモニウムヒドロキシドが反応性の点で好ましく、工業的にはより安価なトリエチルアミンが更に好ましい。これらは単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0037】
[水性出発原料の調製]
水性出発原料は、上記のAl源、Fe源、P源およびテンプレートを混合して調合する。混合順序は、P源とAl源を混合した後、テンプレートを混合する。その場合、先ず、P源とAl源の混合工程(P源とAl源の混合開始からテンプレートの混合開始までの工程)においては、当該混合工程の時間を100%としたとき、その50%以上の時間について、好ましくはその70%以上の時間について、40℃以上70℃以下の温度で混合を行う。更に好ましくは50℃以上60℃以下で混合を行う。混合時の条件を上記の範囲に設定する理由は、上記の範囲を外れた場合、粘度上昇のために混合状態が不均一になり、Al源とP源の反応が十分に促進されない等の不都合が生じるからである。通常、均一な混合状態を得るのに1.5〜3時間程度必要である。
【0038】
次いで、テンプレートの混合工程(テンプレートの混合開始からAl源、P源、Fe源およびテンプレートを均一に混合するまでの工程)においては、当該混合工程の時間を100%としたとき、その50%以上の時間について、好ましくはその70%以上の時間について、冷却操作により5℃以上45℃以下の温度を保持する。温度については、好ましくは15℃以上35℃以下、更に好ましくは20℃以上30℃以下の温度を保持する。混合時の条件を上記の範囲に設定する理由は、上記の範囲を外れた場合、不純物が副生する等の不都合が生じるからである。通常、均一な混合状態を得るのに1〜3時間程度必要である。
【0039】
また、Fe源の混合順序は特に限定されないが、通常、Fe源は、P源とAl源の混合工程の後に混合する。その場合、冷却操作により、P源とAl源の混合物を上記のテンプレート混合工程の温度範囲に予め冷却し、テンプレートの混合開始前に混合する。なお、Fe源の混合工程およびテンプレートの混合工程を行うに当たり、冷却操作においては、冷却手段および冷却速度は特に制限はなく、公知の各種の冷却装置を使用することが出来る。
【0040】
水性出発原料の組成については、好ましくはAl源をAlに換算した時のAlに対するFeのモル比が0.1以上0.3以下であり、かつ、テンプレートのモル比が0.8以上1.3以下である。更に好ましくはFeのモル比が0.15以上0.25以下であり、かつ、テンプレートのモル比が0.9以上1.2以下である。水性出発原料においてFe及びテンプレートのモル比を上記の範囲に設定する理由は、これらのモル比が上記の範囲を外れた場合、水熱合成の際の昇温に伴う粘度上昇により攪拌が出来なくなり、また、不純物の副生、反応器内壁への結晶の著しい付着などの問題が生じるからである。
【0041】
また、水の割合の下限は、Alに対して、モル比で通常は3以上であり、合成のし易さの観点から、好ましくは5以上、更に好ましくは10以上である。一方、水の割合の上限は、Alに対して、モル比で通常は200以下、合成のし易さ、生産性の高さの観点から、好ましくは150以下、更に好ましくは120以下である。更に、水性出発原料のpHは、通常は2〜10であり、合成のし易さの観点から、好ましくは3〜9、更に好ましくは3.5〜8.5である。
【0042】
なお、各水性出発原料中には、所望により、上記の成分以外の成分を共存させてもよい。斯かる成分としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物や塩、アルコール等の親水性有機溶媒が挙げられる。
【0043】
本発明において、水性出発原料の組成は、添加したP源、Al源、Fe源、テンプレートの原料の質量から算出している。そして、実際の水性出発原料の組成は、例えば、元素分析により確認することが出来る。
【実施例】
【0044】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により何等限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例においては、以下の条件によりXRD測定を行った。
【0045】
【表1】

【0046】
また、粒度分布の測定は、セイシン企業社製の「LASER MICRON SIZER LMS−24」(商品名)を使用し、レーザー回折法により行った。その際、少量の試料を水に分散させて測定部に投入し、以下の条件により自動測定を行った。
【0047】
【表2】

【0048】
実施例1:
水243.6gと85%リン酸110.1gの混合物に擬ベーマイト(25%水含有、コンデア製)58.4gをゆっくりと加えて1.5時間攪拌した。これに、硫酸第一鉄7水和物26.6gを水136.6gに溶かした水溶液を加え、更に、トリエチルアミン67.6gを混合して1時間攪拌した。温度管理を行わずにゲルの調製を行い、以下の組成を有する出発反応物を得た。
【0049】
【化1】

【0050】
次いで、テフロン(登録商標)製の内筒が装入された1リットルのステンレス製オートクレーブに上記の出発反応物を仕込み、攪拌線速0.60m/s、温度180℃で12時間反応させた。反応終了後は、オートクレーブ中の蒸気をパージして冷却し、セントルろ過により固形分を回収した。固形分は、水200mlを振り掛け洗浄し、90℃で乾燥した。収量は108.2gであった。続いて、得られたテンプレート含有のサンプルを1.5g採取し、縦型の石英焼成管に入れ、30ml/分で供給した5%O2/95%N混合ガスの気流下、1.5℃/分の昇温速度で550℃まで昇温し、550℃を保持して6時間焼成を行った。こうして得られた結晶性アルミノフォスフェートのXRDを測定したところ、AFI型のいわゆるFAPO−5であった。
【0051】
上記のFAPO−5を水に分散させ、粒度分布計により平均粒径を求めた結果、平均粒径は6.9μmであった。また、吸着等温線測定装置として日本ベル株式会社製の「ベルソープ18」(商品名)を使用し、上記のFAPO−5の35℃における水蒸気吸着等温線を測定した。その結果、相対湿度0.14と0.3での吸着量の差は0.155g/gであった。なお、吸着等温線の測定は、空気高温槽温度55℃、吸着温度35℃、初期導入圧力0.400kPa、導入圧力設定点数0、飽和蒸気圧5.622kPa、平衡時間500秒で行った。
【0052】
実施例2:
実施例1において、水と85%リン酸の混合物を50℃に加温し、擬ベーマイトを加え、50℃のままゲル調整を行った以外は同様の操作を行い、実施例1と同じ組成を有する出発反応物を得た。
【0053】
上記の出発反応物を攪拌線速0.62m/sにて反応させた以外は実施例1と同様の操作を行った(乾燥後のテンプレートが含まれたサンプルの収量は、105.2gであった)。得られた結晶性アルミノフォスフェートのXRDを測定したところ、AFI型のいわゆるFAPO−5であった。これを水に分散させ、粒度分布計により平均粒径を求めた結果、平均粒径は6.3μmであった。
【0054】
また、上記のゼオライトの35℃における水蒸気吸着等温線を吸着等温線測定装置により測定した。その結果、相対湿度0.14と0.3での吸着量の差は0.163g/gであった。
【0055】
実施例3:
実施例2において、擬ベーマイトを加えて1.5時間攪拌した後、25℃に冷却した以外は同様の操作を行い、実施例2と同じ組成を有する出発反応物を得た。次いで、上記の出発反応物に対して実施例1と同様の操作を行い、固形分を回収した。乾燥後のテンプレート含有のサンプルの収量は94.7gであった。そして、実施例1と同様に固形分を焼成し、結晶性アルミノフォスフェートを得た。そして、得られた結晶性アルミノフォスフェートのXRDを測定したところ、AFI型のいわゆるFAPO−5であった。
【0056】
上記のFAPO−5を水に分散させ、粒度分布計により平均粒径を求めた結果、平均粒径は5.2μmであった。また、実施例1と同様に、35℃における水蒸気吸着等温線を測定した結果、相対湿度0.14と0.3での吸着量の差は0.153g/gであった。
【0057】
実施例4:
添加するトリエチルアミンを58.0gとした以外は実施例2と同様の操作を行い、以下の組成を有する出発反応物を得た。
【0058】
【化2】

【0059】
次いで、上記の出発反応物に対し、攪拌線速0.94m/sとして反応を行った以外は実施例2と同様の操作を行い、固形分を回収した。乾燥後のテンプレート含有のサンプルの収量は119.2gであった。そして、実施例1と同様に固形分を焼成し、結晶性アルミノフォスフェートを得た。得られた結晶性アルミノフォスフェートのXRDを測定したところ、AFI型のいわゆるFAPO−5であった。
【0060】
上記のFAPO−5を水に分散させ、粒度分布計により平均粒径を求めた結果、粒度分布は図1に示す通りであり、平均粒径は4.0μmであった。また、日立社製のSEM「S−4100」(商品名)を使用し、粒子を観察したところ、粒子の観察像(倍率×6000)は図2に示す通りであった。更に、実施例1と同様に、35℃における水蒸気吸着等温線を測定した結果、水蒸気吸着等温線は図3に示す通りとなり、相対湿度0.14と0.3での吸着量の差は0.164g/gであった。
【0061】
比較例1:
実施例4と同様の操作を行い、実施例4と同様の組成の出発反応物を得た。次いで、斯かる出発反応物に対し、攪拌線速0.040m/sとして反応を行った以外は実施例4と同様の操作を行い、固形分を回収した。乾燥後のテンプレート含有のサンプルの収量は105.4gであった。そして、実施例1と同様に固形分を焼成し、結晶性アルミノフォスフェートを得た。得られた結晶性アルミノフォスフェートのXRDを測定したところ、AFI型のいわゆるFAPO−5であった。
【0062】
上記のFAPO−5を水に分散させ、粒度分布計により平均粒径を求めた結果、粒度分布は図4に示す通りであり、平均粒径は27.6μmであった。また、実施例1と同様に、35℃における水蒸気吸着等温線を測定した結果、水蒸気吸着等温線は図5に示す通りとなり、相対湿度0.14と0.3での吸着量の差は0.167g/gであった。
【0063】
比較例2:
水210.7gと85%リン酸83.7gの混合物を50℃に加温し、これに擬ベーマイト(25%水含有、コンデア製)56.4gをゆっくりと加えた。3時間攪拌した後、fumedシリカ(商品名;アエロジル200)6.2gと水210.7gを混合し、更に、モルホリン32.5gとトリエチルアミン42.0gを混合して1時間攪拌し、以下の組成を有する出発反応物を得た。
【0064】
【化3】

【0065】
次いで、上記の出発反応物を攪拌線速0.40m/sとして48時間反応させた以外は実施例1と同様の操作を行い、固形分を回収した。乾燥後のテンプレート含有のサンプルの収量は70.6gであった。そして、実施例1と同様に固形分を焼成してゼオライトを得た。得られたゼオライトのXRDを測定したところ、CHA型のいわゆるSAPO−34であった。そして、これを水に分散させ、粒度分布計により平均粒径を求めた結果、平均粒径は15.6μmであった。
【0066】
比較例3:
比較例2と同様の操作を行い、比較例2と同様の出発反応物を得た。次いで、斯かる出発反応物を攪拌線速0.94m/sとして48時間反応させた以外は実施例1と同様の操作を行い、固形分を回収した。乾燥後のテンプレート含有のサンプルの収量は71.2gであった。そして、実施例1と同様に固形分を焼成してゼオライトを得た。得られたゼオライトのXRDを測定したところ、CHA型のいわゆるSAPO−34であった。そして、これを水に分散させ、粒度分布計により平均粒径を求めた結果、平均粒径は16.4μmであった。
【0067】
比較例4:
水239.8gと85%リン酸110.1gの混合物を50℃に加温し、これに擬ベーマイト(25%水含有、コンデア製)58.4gをゆっくりと加えて1.5時間攪拌した。これを25℃まで冷却した後、これに、硫酸第一鉄7水和物39.8gを水140.8gに溶かした水溶液を加え、更に、トリエチルアミン67.6gを混合して1時間攪拌し、以下の組成を有する出発反応物を得た。
【0068】
【化4】

【0069】
次いで、上記の出発反応物を攪拌線速0.84m/sとして反応させた以外は実施例1と同様の操作を行い、固形分を回収した。乾燥後のテンプレート含有のサンプルの収量は77.9gであった。そして、実施例1と同様に固形分を焼成してゼオライトを得た。得られたゼオライトのXRDを測定したところ、AFI型のいわゆるFAPO−5であった。そして、これを水に分散させ、粒度分布計により平均粒径を求めた結果、平均粒径は12.1μmであった。また、実施例1と同様に、35℃における水蒸気吸着等温線を測定した結果、水蒸気吸着等温線は図6に示す通りとなり、相対湿度0.14と0.3での吸着量の差は0.150g/gであった。
【0070】
更に、上記のFAPO−5をジェットミルにて粉砕し、平均粒径を5.1μmとした。そして、実施例1と同様に、35℃における水蒸気吸着等温線を測定した結果、水蒸気吸着等温線は図6に示す通りとなり、相対湿度0.14と0.3での吸着量の差は0.132g/gであった。図6は、ジェットミルによる粉砕前後の水蒸気吸着等温線を示している。
【0071】
実施例1は、請求項4の要件(具体的にはP源とAl源の混合工程の温度条件)を満たさなくとも、請求項3の要件を満足する場合があることを検証したデータである。また、実施例2は、請求項6の要件(具体的には特定原料同士のモル比)を満たさなくとも、請求項4や5の要件を満足する場合があることを検証したデータである。そして、実施例3は、請求項6の要件を満足する場合のデータである。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】実施例4で得られたゼオライト(FAPO−5)の粒度分布を示すグラフである。
【図2】実施例4で得られたゼオライト(FAPO−5)粒子のSEM観察像(図面代用写真)である。
【図3】実施例4で得られたゼオライト(FAPO−5)の水蒸気吸着等温線である。
【図4】比較例1で得られたゼオライト(FAPO−5)の粒度分布を示すグラフである。
【図5】比較例1で得られたゼオライト(FAPO−5)の水蒸気吸着等温線である。
【図6】比較例4で得られたゼオライト(FAPO−5)の粉砕前後の水蒸気吸着等温線である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械的に粉砕することなく得られた微粒子のAFI型鉄アルミノフォスフェートであって、平均粒子径が15ミクロン以下であることを特徴とするAFI型鉄アルミノフォスフェート。
【請求項2】
35℃の水蒸気吸着等温線における相対湿度0.14と0.3での吸着量の差が0.14g/g以上である請求項1に記載のAFI型鉄アルミノフォスフェート。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のAFI型鉄アルミノフォスフェートの製造方法であって、P源、Al源、Fe源およびテンプレートを含む水性出発原料を水熱合成するに際し、0.05m/s以上の攪拌線速で攪拌することを特徴とするAFI型鉄アルミノフォスフェートの製造方法。
【請求項4】
P源とAl源の混合工程の後にテンプレートの混合工程を含むAFI型鉄アルミノフォスフェートの製造方法であって、P源とAl源の混合工程の50%以上の時間について40℃以上70℃以下の温度で混合を行う請求項3に記載のAFI型鉄アルミノフォスフェートの製造方法。
【請求項5】
P源とAl源の混合工程の後にテンプレートの混合工程を含むAFI型鉄アルミノフォスフェートの製造方法であって、テンプレート混合工程の50%以上の時間について冷却操作により5℃以上45℃以下の温度を保持する請求項3又は4に記載のAFI型鉄アルミノフォスフェートの製造方法。
【請求項6】
P源、Al源、Fe源およびテンプレートを混合して得られる水性出発原料の組成において、Al源をAlに換算した時のAlに対するFeのモル比が0.1以上0.3以下であり、かつ、テンプレートのモル比が0.8以上1.3以下である請求項3〜5の何れかに記載のAFI型鉄アルミノフォスフェートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−246386(P2007−246386A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−353855(P2006−353855)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】