C型肝炎ウイルスの感染を治療および/または予防するための化合物をスクリーニングするための方法
本発明は、C型肝炎ウイルス(HCV)感染を治療および/または予防するための化合物をスクリーニングするための方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、C型肝炎ウイルス(HCV)の感染を治療および/または予防するための化合物をスクリーニングするための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
C型肝炎ウイルス(HCV)の感染は、慢性化の割合が高いことにより特徴付けられ、世界中で1億7千万人に影響している。慢性的に感染した患者は、肝脂肪症、線維形成、および様々な程度のインスリン耐性に関連する、免疫メカニズムおよび代謝障害により本質的に媒介される肝障害を示す(1、2)。長期にわたり感染している患者は肝硬変および肝細胞癌を発症するリスクが高いが、多大な尽力にもかかわらず、HCV病理の分子的基盤は依然としてほとんど理解されていない。HCVのゲノムは、翻訳後に構造タンパク質(CORE、E1、E2、およびp7)ならびに非構造タンパク質(NS2、NS3、NS4A、NS4B、NS5A、およびNS5B)にプロセシングされるポリタンパク質をコードする、9.6kbのプラス鎖RNAである(3)。
【0003】
現在の治療法は、ペグ化インターフェロン(IFN)アルファおよびリバビリン(1−β−D−リボフラノシル−1,2,4−トリアゾール−3−カルボキサミド)の組み合わせにある。しかし、C型肝炎ウイルス(HCV)の感染の転帰は個体間で多様であり、抗ウイルス治療に対する応答が持続する可能性は、ウイルスおよび宿主の特徴に依存する。HCVの天然に存在する変異体は、6個の主要な遺伝子型に分類される。ウイルスの遺伝子型は、治療の応答に関連する主要な因子の1つである。実際、持続性ウイルス学的著効(SVR)は、遺伝子型1に感染した患者の45%のみで達成され、一方、遺伝子型2または3に感染した患者の最大80%がSVRに達する(Feld JJ.ら、2005年)。
【0004】
したがって、HCV感染の他の治療が必要とされており、HCVタンパク質と宿主(ヒト)タンパク質との間の相互作用に焦点を当てることが奨励されている。細胞タンパク質ネットワークについての、また現在ではウイルス−細胞インタラクトームについての、迅速に増大する知識は、実際、ネットワークに基づいた疾患モデルを提供し始めている。ネットワークアプローチにおいて、ウイルス感染は、細胞インタラクトームの摂動として見ることができる。ウイルスの病原性は、細胞インタラクトームに連結したときにウイルスにより課せられるタンパク質ネットワークに対する新たな制約の発現として現れる。「感染したネットワーク」において喪失しているか、脱調節されているか、または出現する位相的および機能的特性の同定は、感染の複雑な系の分析に対する主要な課題となる。しかし、ヒトタンパク質とウイルスタンパク質との間の相互作用は、依然として完全には記載されていない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、HCV感染を治療および/または予防するための化合物をスクリーニングするための方法であって、
a)ファルネソイドX受容体(FXR)とウイルスHCVタンパク質NS3またはNS5Aとの間の相互作用を阻害する候補化合物の能力を決定するステップ、
b)前記ウイルスファルネソイドX受容体(FXR)と前記ウイルスタンパク質との間の前記相互作用を阻害する候補化合物を選択するステップ
を含む方法に関する。
【0006】
ファルネソイドX受容体(FXR)は、超生理学的レベルのファルネソールにより活性化される核受容体である(Formanら、Cell、1995年、81、687〜693)。FXRはまた、NR1H4、レチノイドX受容体相互作用タンパク質14(RIP14)、および胆汁酸受容体(BAR)としても知られている。
【0007】
本発明はまた、HCV感染を治療および/または予防するための化合物をスクリーニングするための方法であって、
a)ウイルスHCV COREタンパク質と、AGRN、BCAR1、CD68、COL4A2、DDX3Y、EGFL7、FBLN2、FBLN5、GAPDH、GRN、HIVEP2、HOXD8、LPXN、LRRTM1、LTBP4、MAGED1、MEGF6、MMRN2、NR4A1、PABPN1、PAK4、PLSCR1、RNF31、SETD2、SLC31A2、VTN、VWF、およびZNF271からなる群から選択されるヒトタンパク質との間の相互作用を阻害する候補化合物の能力を決定するステップ、ならびに
b)前記ウイルスHCV COREタンパク質と前記ヒトタンパク質との間の前記相互作用を阻害する候補化合物を選択するステップ
を含む方法に関する。
【0008】
本発明はまた、HCV感染を治療および/または予防するための化合物をスクリーニングするための方法であって、
a)ウイルスHCV E1タンパク質と、JUN、NR4A1、PFN1、SETD2、およびTMSB4Xからなる群から選択されるヒトタンパク質との間の相互作用を阻害する候補化合物の能力を決定するステップ、ならびに
b)前記ウイルスE1タンパク質と前記ヒトタンパク質との間の前記相互作用を阻害する候補化合物を選択するステップ
を含む方法に関する。
【0009】
本発明はまた、HCV感染を治療および/または予防するための化合物をスクリーニングするための方法であって、
a)ウイルスHCV E2タンパク質と、HOXD8、ITGB1、KIAA1411、LOC730765、NR4A1、PSMA6、SETD2、およびSMEK2からなる群から選択されるヒトタンパク質との間の相互作用を阻害する候補化合物の能力を決定するステップ、ならびに
b)前記ウイルスE2タンパク質と前記ヒトタンパク質との間の前記相互作用を阻害する候補化合物を選択するステップ
を含む方法に関する。
【0010】
本発明はまた、HCV感染を治療および/または予防するための化合物をスクリーニングするための方法であって、
a)ウイルスHCV NS2タンパク質と、ADFP、APOA1、C7、FBLN5、HOXD8、NR4A1、POU3F2、RPL11、RPN1、SETD2、SMURF2、およびTRIM27からなる群から選択されるヒトタンパク質との間の相互作用を阻害する候補化合物の能力を決定するステップ、ならびに
b)前記ウイルスNS2タンパク質と前記ヒトタンパク質との間の前記相互作用を阻害する候補化合物を選択するステップ
を含む方法に関する。
【0011】
本発明はまた、HCV感染を治療および/または予防するための化合物をスクリーニングするための方法であって、
a)ウイルスHCV NS3タンパク質と、sep−10、A1BG、ABCC3、ACTN1、ACTN2、AEBP1、AHCY、AHSG、ALB、ANKRD12、ANKRD28、APOA1、APOA2、ARFIP2、ARG1、ARHGDIA、ARHGEF6、ARNT、ARS2、ASXL1、ATP5H、AZGP1、B2M、BCAN、BCKDK、BCL2A1、BCL6、BCR、BZRAP1、C10orf18、C10orf6、C12orf41、C14orf173、C16orf7、C1orf165、C1orf94、C1S、C9orf30、CALCOCO2、CAT、CBY1、CCDC21、CCDC37、CCDC52、CCDC66、CCDC95、CCHCR1、CCNDBP1、CD5L、CDC23、CELSR2、CENPC1、CEP152、CEP192、CES1、CFP、CHPF、COL3A1、CORO1B、COX3、CSNK2B、CTGF、CTSD、CTSF、CXorf45、DEAF1、DEDD2、DES、DLAT、DOCK7、DPF1、DPP7、ECHS1、EEF1A1、EFEMP1、EFEMP2、EIF1、EIF4ENIF1、FAM120B、FAM62B、FAM65A、FAM96B、FBF1、FBLN1、FBLN2、FBLN5、FBN1、FBN3、FES、FGA、FGB、FIGNL1、FLAD1、FLJ11286、FN1、FRMPD4、FRS3、FTH1、FUCA2、GAA、GBP2、GC、GFAP、GNB2、GON4L、HIVEP2、HOMER3、HP、HTRA1、IFI44、IQWD1、ITCH、ITGB4、JAG2、JUN、KHDRBS1、KIAA1012、KIAA1549、KIF17、KIF7、KNG1、KPNA1、KPNB1、L3MBTL3、LAMA5、LAMB2、LAMC3、LDB1、LOC728302、LRRC7、LRRCC1、LTBP4、LZTS2、MAGED1、MAPK7、MARCO、MASP2、MEGF8、MLLT4、MLXIP、MORC4、MORF4L1、MPDZ、MVP、MYL6、NAP1L1、NCAN、NDC80、NEFL、NEFM、NELL1、NELL2、NID1、NID2、NOTCH1、N−PAC、NUCB1、NUP133、NUP62、OBSCN、ORM1、OTC、PARP2、PARP4、PCYT2、PDE4DIP、PDLIM5、PGM1、PICK1、PKNOX1、PLEKHG4、PNPLA8、PNPT1、POLDIP2、PRG4、PRRC1、PSMA6、PSMB9、PSME3、PTPRF、PTPRN2、RABEP1、RAI14、RASAL2、RBM4、RCN3、RGNEF、RICS、RING1、RINT1、RLF、RNF31、ROGDI、RP11−130N24.1、RSHL2、RUSC2、SBF1、SDCCAG8、SECISBP2、SELO、SERTAD1、SESTD1、SF3B2、SGCB、SIAH1、SLIT1、SLIT2、SLIT3、SMARCE1、SMURF2、SNX4、SPOCK3、SPON1、SPP2、SRPX2、SSX2IP、STAB1、STAT3、STRAD、SVEP1、SYNE1、SYNPO2、TAF1、TAF15、TBC1D2B、TBN、TBXAS1、TF、TGFB1I1、TH1L、THAP1、TMEM63B、TPST2、TPT1、TRIM23、TRIM27、TRIO、TRIP11、TXNDC11、UBE1C、USHBP1、UXT、VCAN、VIM、VWF、WDTC1、XAB2、XRN2、YY1AP1、ZADH1、ZBTB1、ZCCHC7、ZHX3、ZMYM2、ZNF281、ZNF410、ZNF440、ZXDC、およびZZZ3、APOA1、およびDNAJB1からなる群から選択されるヒトタンパク質との間の相互作用を阻害する候補化合物の能力を決定するステップ、ならびに
b)前記ウイルスNS3タンパク質と前記ヒトタンパク質との間の前記相互作用を阻害する候補化合物を選択するステップ
を含む方法に関する。
【0012】
本発明はまた、HCV感染を治療および/または予防するための化合物をスクリーニングするための方法であって、
a)ウイルスHCV NS4Aタンパク質と、CREB3、ELAC2、HOXD8、NR4A1、TRAF3IP3、UBQLN1、APOA1、およびDNAJB1からなる群から選択されるヒトタンパク質との間の相互作用を阻害する候補化合物の能力を決定するステップ、ならびに
b)前記ウイルスNS4Aタンパク質と前記ヒトタンパク質との間の前記相互作用を阻害する候補化合物を選択するステップ
を含む方法に関する。
【0013】
本発明はまた、HCV感染を治療および/または予防するための化合物をスクリーニングするための方法であって、
a)ウイルスHCV NS4Bタンパク質と、APOA1、ATF6、KNG1、およびNR4A1からなる群から選択されるヒトタンパク質との間の相互作用を阻害する候補化合物の能力を決定するステップ、ならびに
b)前記ウイルスNS4Bタンパク質と前記ヒトタンパク質との間の前記相互作用を阻害する候補化合物を選択するステップ
を含む方法に関する。
【0014】
本発明はまた、HCV感染を治療および/または予防するための化合物をスクリーニングするための方法であって、
a)ウイルスHCV NS5Aタンパク質と、AARS2、ABCC3、ACLY、ACTB、ALDOB、APOB、ARFIP1、ASXL1、AXIN1、C10orf30、C9orf23、CADPS、CADPS2、CCDC100、CCDC90A、CCT7、CEP250、CEP63、CES1、CFH、COL3A1、DDX5、DNAJA3、EFEMP1、EIF3S2、ETFA、FGB、FHL2、GLTSCR2、GOLGA2、GPS2、HRSP12、IGLL1、ITGAL、LDHD、LIMS2、LOC374395、MAF、MBD4、MKRN2、MOBK1B、MON2、NAP1L1、NFE2、NUCB1、OS9、PARVG、PMVK、POMP、PPP1R13L、PSMB8、PSMB9、RLF、RPL18A、RRBP1、SHARPIN、SMYD3、SORBS2、SORBS3、THBS1、TMF1、TP53BP2、TRIOBP、TST、TXNDC11、UBASH3A、UBC、USP19、VPS52、ZGPAT、ZH2C2、ZNF135、ZNF350、ZNF646、ZNHIT1、およびZNHIT4からなる群から選択されるヒトタンパク質との間の相互作用を阻害する候補化合物の能力を決定するステップ、ならびに
b)前記ウイルスNS5Aタンパク質と前記ヒトタンパク質との間の前記相互作用を阻害する候補化合物を選択するステップ
を含む方法に関する。
【0015】
本発明はまた、HCV感染を治療および/または予防するための化合物をスクリーニングするための方法であって、
a)ウイルスHCV NS5Bタンパク質と、APOA1、APOC3、CCNDBP1、CEP250、CEP68、CTSF、HOXD8、MGC2752、MOBK1B、OS9、OTC、PKM2、PSMB9、SETD2、SHARPIN、TAGLN、およびTUBB2Cからなる群から選択されるヒトタンパク質との間の相互作用を阻害する候補化合物の能力を決定するステップ、ならびに
b)前記ウイルスNS5Bタンパク質と前記ヒトタンパク質との間の前記相互作用を阻害する候補化合物を選択するステップ
を含む方法に関する。
【0016】
本発明はまた、HCV感染を治療および/または予防するための化合物をスクリーニングするための方法であって、
a)ウイルスHCV p7タンパク質と、CREB3、FBLN2、FXYD6、LMNB1、RNUXA、SLC39A8、SLIT2、UBQLN1、およびUBQLN4からなる群から選択されるヒトタンパク質との間の相互作用を阻害する候補化合物の能力を決定するステップ、ならびに
b)前記ウイルスHCV p7タンパク質と前記ヒトタンパク質との間の前記相互作用を阻害する候補化合物を選択するステップ
を含む方法に関する。
【0017】
発明の詳細な説明
定義
「C型肝炎ウイルス」または「HCV」という用語は、本明細書において、その病原性株が非A非B型肝炎としても知られているC型肝炎を生じさせるウイルス種を定義するために用いられる。
【0018】
全てのヒトおよびHCVの遺伝子およびタンパク質を表1に定義する。
【0019】
【表1】
【0020】
【表2】
【0021】
【表3】
【0022】
【表4】
【0023】
【表5】
【0024】
【表6】
【0025】
【表7】
【0026】
【表8】
【0027】
【表9】
【0028】
スクリーニング方法:
本発明は、HCV感染を治療および/または予防するための化合物をスクリーニングするための方法であって、
a)上記のウイルスHCVタンパク質とヒトタンパク質との間の相互作用を阻害する候補化合物の能力を決定するステップ、ならびに
b)前記ウイルスタンパク質と前記ヒトタンパク質との間の前記相互作用を阻害する候補化合物を選択するステップ
を含む方法に関する。
【0029】
1つの実施形態において、ステップb)は、前記HCVタンパク質と前記ヒトタンパク質との間の相互作用を阻害するための前記候補化合物の能力を明らかにするかまたはしない物理的値を得ること、および前記値を、前記候補化合物の不存在下で行った同一のアッセイにおいて得られた標準的な物理的値と比較することにある。上述した「物理的値」は、実施される結合アッセイに応じて様々な種類のものであり得るが、特に、吸光値、放射性シグナル、および蛍光シグナルの強度値を包含する。物理的値を標準的な物理的値と比較した後であれば、前記候補化合物が前記HCVタンパク質と前記ヒトタンパク質との間の結合を阻害することが決定され、そしてその候補はステップb)で正の選択をされる。
【0030】
HCVタンパク質とヒトタンパク質との間の相互作用を阻害する化合物は、HCVタンパク質またはヒトタンパク質のいずれかに結合するそのような化合物を包含するが、それは、前記目的の化合物の結合がそれによりHCVタンパク質とヒトタンパク質との間の相互作用を妨害するという条件に限ったものである。
【0031】
標識ポリペプチド:
1つの実施形態において、本発明の任意のタンパク質は、検出可能な分子で標識される。
【0032】
本発明によれば、前記検出可能な分子は、分光的、光化学的、生化学的、免疫化学的、または化学的手段により検出可能な任意の化合物または物質からなり得る。例えば、有用な検出可能な分子には、放射性物質(32P、25S、3H、もしくは125Iを含むものを含む)、蛍光色素(5−ブロモデソシルジン、フルオレセイン、アセチルアミノフルオレン、もしくはジゴキシゲニンを含む)、蛍光タンパク質(GFPおよびYFPを含む)、または検出可能なタンパク質もしくはペプチド(ビオチン、ポリヒスチジン尾部、もしくはHA抗原、FLAG抗原、c−myc抗原、およびDNP抗原などの他の抗原タグを含む)が含まれる。
【0033】
本発明によれば、検出可能な分子は、目的の前記アミノ酸配列の外側に位置するアミノ酸残基に位置するか、または前記残基に結合し、それにより、前記ポリペプチド間の結合、または前記候補化合物および/もしくは前記ポリペプチドのいずれかの間の結合に対する任意の人為的影響を最小にするかまたは予防する。
【0034】
別の特定の実施形態において、本発明のポリペプチドはGSTタグ(グルタチオンS−トランスフェラーゼ)と融合される。この実施形態において、前記融合タンパク質のGST部分を検出可能な分子として用いることができる。前記融合タンパク質において、GSTは、N末端またはC末端のいずれかに位置し得る。検出可能なGST分子は、標識抗GST抗体を含む抗GST抗体とその後に接触すると検出され得る。様々な検出可能な分子で標識された抗GST抗体は、容易に市場で入手することができる。
【0035】
別の特定の実施形態において、本発明のタンパク質はポリヒスチジンタグと融合される。前記ポリヒスチジンタグは、通常は少なくとも4つの連続したヒスチジン残基を含み、ほとんどの場合、少なくとも6個の連続したヒスチジン残基を含む。このようなポリペプチドタグはまた、最大20個の連続したヒスチジン残基を含み得る。前記ポリヒスチジンタグは、N末端またはC末端のいずれかに位置し得る。この実施形態において、ポリヒスチジンタグは、標識抗ポリヒスチジン抗体を含む抗ポリヒスチジン抗体とその後に接触すると検出され得る。様々な検出可能な分子で標識された抗ポリヒスチジン抗体は、容易に市場で入手することができる。
【0036】
さらなる実施形態において、本発明のタンパク質は、転写因子のDNA結合ドメインまたはアクチベータードメインのいずれかからなるタンパク質部分と融合される。転写の前記タンパク質部分ドメインは、N末端またはC末端のいずれかに位置し得る。このようなDNA結合ドメインは、大腸菌に由来するLexAタンパク質の周知のDNA結合ドメインからなり得る。さらに、転写因子の前記アクチベータードメインは、酵母に由来する周知のGal4タンパク質のアクチベータードメインからなり得る。
【0037】
ツーハイブリッドアッセイ:
本発明に従ったスクリーニング方法の1つの実施形態において、本発明のタンパク質は、転写因子の一部分を含む。前記アッセイにおいて、第1および第2の部分が共に結合することで、特異的な調節DNA配列に結合する機能的な転写因子が生じ、それが次にレポーターDNA配列の発現を誘発し、前記発現がさらに検出および/または測定される。前記レポーターDNA配列の発現の正の検出は、前記第1のHCVタンパク質および第2のヒトタンパク質が共に結合することにより、活性な転写因子が形成されることを意味する。
【0038】
通常、ツーハイブリッドアッセイにおいて、転写因子の第1および第2の部分はそれぞれ、(i)転写因子のDNA結合ドメイン、および(ii)転写因子のアクチベータードメインからなる。いくつかの実施形態において、DNA結合ドメインおよびアクチベータードメインは両方とも、同一の天然に存在する転写因子に由来する。いくつかの実施形態において、DNA結合ドメインおよびアクチベータードメインは異なる天然に存在する因子に由来するが、共に結合すると、これらの2つの部分は活性な転写因子を形成する。「部分」という用語は、転写因子について本明細書において用いられる場合、複数のタンパク質転写因子に関与する完全なタンパク質、ならびに完全な転写因子タンパク質の特定の機能的なタンパク質ドメインを包含する。
【0039】
したがって、本発明の1つの実施形態において、本発明のスクリーニング方法のステップa)は、
(1) − (i)上記に定義したHCVタンパク質と(ii)転写因子の第1のタンパク質部分との間の第1の融合ポリペプチド、
− (i)上記に定義したヒトタンパク質と(ii)転写因子の第2の部分との間の第2の融合ポリペプチド、
を発現する宿主細胞を提供するステップであって、
第1および第2のタンパク質部分が共に結合すると、前記転写因子がDNAの標的調節配列に対して活性となり、
前記宿主細胞が、(i)前記活性な転写因子によって活性化され得る調節DNA配列と、(ii)前記調節配列に作動可能に連結しているDNAレポート配列とを含む核酸も含む
ステップ、
(2)ステップ1)で得られた前記宿主細胞を試験される候補化合物と接触させるステップ、
(3)前記DNAレポーター配列の発現レベルを決定するステップ
を含む。
【0040】
上記のステップ(3)で決定された前記DNAレポーター配列の発現レベルは、ステップ(2)が省略された場合の前記DNAレポーター配列の発現と比較される。候補化合物の存在下における前記DNAレポーター配列の発現レベルが低いことは、前記候補化合物がHCVタンパク質とヒトタンパク質との間の結合を効果的に阻害すること、および前記候補化合物がスクリーニング方法のステップb)において正の選択をされ得ることを意味する。
【0041】
適切な宿主細胞には、限定はしないが、原核細胞(細菌など)および真核細胞(酵母細胞、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞など)が含まれる。しかし、好ましい宿主細胞は酵母細胞であり、より好ましくは、Saccharomyces cerevisiae細胞またはSchizosaccharomyces pombe細胞である。
【0042】
ツーハイブリッドアッセイの類似の系が当技術分野において周知であり、したがって、本発明に従ったスクリーニング方法を実施するために用いられ得る(Fieldsら、1989年;Vasavadaら、1991年;Fearonら、1992年;Dangら、1991年;Chienら、1991年、US5,283,173、US5,667,973、US5,468,614、US5,525,490、およびUS5,637,463を参照されたい)。例えば、これらの文献に記載されているように、Gal4アクチベータードメインを、本発明に従ったスクリーニング方法を実施するために用いることができる。Gal4は、2つの物理的に別のモジュールドメインからなり、その1つはDNA結合ドメインとして作用し、残りの1つは転写活性化ドメインとして機能する。前述の文献に記載されている酵母発現系は、この特性を利用したものである。Gal4活性化プロモーターの制御下でのGal1−LacZレポーター遺伝子の発現は、タンパク質−タンパク質相互作用を介したGal4活性の再構成に依存する。相互作用するポリペプチドを含むコロニーは、β−ガラクトシダーゼに対する発色基質を用いて検出される。タンパク質−タンパク質相互作用を同定するための競合キット(MATCHMAKER、商標)は、Clontechから市販されている。
【0043】
したがって、1つの実施形態において、上記で定義された第1のHCVタンパク質はGal4のDNA結合ドメインに融合され、上記で定義された第2のヒトタンパク質はGal4の活性化ドメインに融合される。
【0044】
前記検出可能なマーカー遺伝子の発現は、産生される対応する特異的mRNAの量を定量することにより評価することができる。しかし、通常は、検出可能なマーカー遺伝子の配列は検出可能なタンパク質をコードしており、その結果、前記検出可能なマーカー遺伝子の発現レベルは、産生される対応するタンパク質の量を定量することにより評価される。mRNAまたはタンパク質の量を定量するための技術は、当技術分野において周知である。例えば、調節配列の制御下に置かれた検出可能なマーカー遺伝子は、上述のβ−ガラクトシダーゼからなり得る。
【0045】
ウェスタンブロッティング:
別の1つの実施形態において、ステップa)は、上記で定義された第1のHCVタンパク質および第2のヒトタンパク質の混合物を、試験される候補化合物の存在下または不存在下でゲル移動アッセイに供し、その後、前記ポリペプチド間に形成された複合体の検出を行うことにより前記ポリペプチドの全ての結合を測定するステップを含む。ゲル移動アッセイは、当業者によって知られているようにして実施することができる。
【0046】
したがって、本発明の1つの実施形態において、本発明のスクリーニング方法のステップa)は、
(1)上記で定義された第1のHCVタンパク質および第2のヒトタンパク質を提供するステップ、
(2)試験される候補化合物を前記ポリペプチドに接触させるステップ、
(3)ステップ(2)で得られた前記ポリペプチドおよび前記候補化合物を有する適切な移動基質のゲル移動アッセイを実施するステップ、
(4)ステップ(3)で実施された移動アッセイにおいて前記ポリペプチド間で形成された複合体を検出および定量するステップ
を含む。
【0047】
次に、タンパク質間で形成された複合体の存在または量を、試験される候補化合物の不存在下でアッセイを実施した場合に得られる結果と比較する。したがって、タンパク質間の複合体が検出されない場合、あるいは、これらの複合体が、候補化合物の不存在下で得られる量と比較して少ない量で存在する場合、候補化合物はスクリーニング方法のステップb)で正の選択をされ得る。
【0048】
第1および第2のタンパク質の間で形成される複合体は特定の明らかな分子量を有するため、前記2つのタンパク質間で形成される複合体の検出は、移動ゲルを適切な色素で染色すること、そして分析されるタンパク質に対応するタンパク質バンドを決定することにより容易に実施することができる。ゲルにおけるタンパク質の染色は、標準的なクマシーブリリアントブルー(もしくはPAGEブルー)、アミドブラック、または様々な種類の銀染色試薬を用いて行うことができる。ドデシル(ラウリル)硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲルなどの適切なゲルが、当技術分野において周知である。通常の様式において、ウェスタンブロッティングアッセイが当技術分野において周知であり、広く記載されている(Rybickiら、1982年;Towbinら、1979年;Kurienら、2006年)。
【0049】
特定の実施形態において、ゲル移動アッセイに供されるタンパク質に対応するタンパク質バンドは、特異的な抗体によって検出することができる。HCVタンパク質に対する抗体およびヒトタンパク質に対する特異的な抗体の両方を用いることができる。
【0050】
別の実施形態において、前記2つのタンパク質は、上記の検出可能な抗原で標識される。したがって、タンパク質バンドは、前記検出可能な抗原に対する特異的な抗体によって検出することができる。好ましくは、HCVタンパク質に結合する検出可能な抗原は、ヒトタンパク質に結合する抗原とは異なる。例えば、第1のHCVタンパク質は検出可能なGST抗原に融合され得、第2のヒトタンパク質はHA抗原と融合され得る。そして、2つのタンパク質間で形成されたタンパク質複合体は、それぞれGST抗原およびHA抗原に対する抗体で定量および決定され得る。
【0051】
バイオセンサーアッセイ:
別の実施形態において、ステップa)は、Edwardsら(1997年)およびSzaboら(1995年)により記載されているような光バイオセンサーの使用を含んでいた。この技術により、標識された分子を必要とすることなく、分子間の相互作用をリアルタイムで検出することが可能になる。この技術は実際、表面プラズモン共鳴(SPR)現象に基づくものである。簡潔に述べると、第1のタンパク質パートナーが表面(カルボキシメチルデキストランマトリクスなど)に付着する。次に、第2のタンパク質パートナーが、試験される候補化合物の存在下または不存在下で、事前に固定された第1のパートナーと共にインキュベートされる。次に、前記タンパク質パートナー間の、結合レベルを含む結合、または結合の不存在が検出される。この目的のために、光ビームが、試験される試料を含まない基質の表面領域側に向けられ、前記表面により反射される。SPR現象により、角度および波長の組み合わせで反射光の強さが低減する。第1および第2のタンパク質パートナーの結合により、基質表面での屈折率が変化し、この変化がSPRシグナルにおける変化として検出される。
【0052】
アフィニティークロマトグラフィー:
本発明の別の1つの実施形態において、スクリーニング方法には、アフィニティークロマトグラフィーの使用が含まれる。
【0053】
上記のスクリーニング方法において用いるための候補化合物はまた、上記で定義された(i)第1のHCVタンパク質または(ii)第2のヒトタンパク質が当業者に周知の技術に従って事前に上に固定されている任意のクロマトグラフィー基質を用いる、任意の免疫アフィニティークロマトグラフィー技術によって選択することができる。簡潔に述べると、上記で定義されたHCVタンパク質またはヒトタンパク質は、アガロースであるAffi Gel(登録商標)などの適切なカラムマトリクスまたは当業者に有名な他のマトリクスへの化学的結合を含む従来の技術を用いてカラムに付着させることができる。この方法のいくつかの実施形態において、アフィニティーカラムは、上記で定義されたHCVタンパク質またはヒトタンパク質がグルタチオン−s−トランスフェラーゼ(GST)に融合されているキメラタンパク質を含む。次に、候補化合物を、アフィニティーカラムのクロマトグラフィー基質に、前記第1および第2のタンパク質の間の他のタンパク質より前に、それと同時に、または連続して接触させる。洗浄した後、クロマトグラフィー基質を溶出し、回収された溶出溶液を、後に適用された前記第1または第2のタンパク質の検出および/または定量により分析し、それにより、候補化合物が(i)第1のHCVタンパク質と(ii)第2のヒトタンパク質との間の結合を減少させているかどうか、および/またはその減少の程度を決定する。
【0054】
蛍光アッセイ:
本発明に従ったスクリーニング方法の別の1つの実施形態において、上記で定義された第1のHCVタンパク質および第2のヒトタンパク質は、蛍光分子または蛍光基質で標識される。したがって、上記で定義された第1のHCVタンパク質と第2のヒトタンパク質との間の結合に対する、試験される候補化合物の潜在的な改変効果が、蛍光の定量により決定される。
【0055】
例えば、上記で定義された第1のHCVタンパク質および第2のヒトタンパク質は、上記のGFPまたはYFPなどの自己蛍光ポリペプチドと融合され得る。上記で定義された第1のHCVタンパク質および第2のヒトタンパク質はまた、蛍光エネルギー移動(FRET)アッセイを用いて前記タンパク質間の結合について蛍光の検出および/または定量を実施するために適した蛍光分子で標識され得る。上記で定義された第1のHCVタンパク質および第2のヒトタンパク質は、GFPまたはYFPなどの蛍光分子との化学的共有結合によって、蛍光分子で直接的に標識され得る。上記で定義された第1のHCVタンパク質および第2のヒトタンパク質はまた、例えば前記ポリペプチドと前記蛍光分子との間の非共有結合により、蛍光分子で間接的に標識され得る。実際、上記で定義された前記第1のHCVタンパク質および第2のヒトタンパク質は、受容体またはリガンドと融合することができ、前記蛍光分子は、対応するリガンドまたは受容体と融合することができ、その結果、蛍光分子は、前記第1のHCVタンパク質および第2のヒトタンパク質に非共有結合し得る。適切な受容体/リガンドの対は、ビオチン/ストレプトアビジンの対になったメンバーであり得るか、または、抗原/抗体の対になったメンバーの間で選択され得る。例えば、本発明に従ったタンパク質は、ポリヒスチジン尾部に融合することができ、蛍光分子は、ポリヒスチジン尾部に対する抗体と融合することができる。
【0056】
既に特定されているように、本発明に従ったスクリーニング方法のステップa)は、FRETを用いた蛍光アッセイによる、上記で定義されたHCVタンパク質とヒトタンパク質との間の相互作用を阻害する候補化合物の能力の決定を包含する。したがって、特定の実施形態において、上記で定義された第1のHCVタンパク質は第1のフルオロフォア物質で標識され、第2のヒトタンパク質は第2のフルオロフォア物質で標識される。第1のフルオロフォア物質は、第2のフルオロフォアの励起波長値とほぼ等しい波長値を有し得、それにより、前記第1および第2のタンパク質の結合は、第2のフルオロフォア物質の発光波長で発光される蛍光シグナルの強度を測定することにより検出される。あるいは、第2のフルオロフォア物質はまた、第1のフルオロフォアの発光波長値を有し得、それにより、前記および第2のタンパク質の結合は、第1のフルオロフォア物質の波長で発光される蛍光シグナルの強度を測定することにより検出される。
【0057】
用いられるフルオロフォアは、周知のランタニドキレートなどの様々な適切な種類のものであり得る。これらのキレートは、特異性のバイオアフィニティーアッセイにおいて化学的安定性、生物学的結合後の寿命の長い蛍光(0.1msを超える寿命)、および顕著なエネルギー移動を有していることが記載されている。文献US5,162,508は、ビピリジンクリプテートを開示している。TEKES型の光感作物質(EP0203047A1)およびテルピリジン型の光感作物質(EP0649020A1)を有するポリカルボキシレートキレート剤が知られている。文献WO96/00901は、カルボスチリルを感作物質として用いるジエチレントリアミンペンタ酢酸(DPTA)キレートを開示している。他の感作物質および他のトレーサー金属を有するさらなるDPTキレートが、診断または画像化の使用について知られている(例えば、EP0450742A1)。
【0058】
好ましい実施形態において、スクリーニング方法のステップa)で実施される蛍光アッセイは、文献WO00/01663またはUS6,740,756において記載されているような均一時間分解蛍光(HTRF)アッセイからなり、前記文献の両方の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。HTRFは、TRF(時間分解蛍光)およびFRETの両方の原理を用いる、TR−FRETに基づいた技術である。より具体的には、当業者であれば、Leblancら(2002年)において記載されている時間分解増幅クリプテート発光(TRACE)技術に基づいたHTRFアッセイを用い得る。HTRFドナーフルオロフォアは、ランタニドの長寿命の発光とクリプテートのカプセル封入の安定性とを組み合わせて有する、ユーロピウムクリプテートである。紅藻類から精製された修飾アロフィコシアニンであるXL665は、HTRFの主要なアクセプターフルオロフォアである。これらの2つのフルオロフォアが生体分子相互作用により一緒にされると、励起の間にクリプテートにより捕捉されるエネルギーの一部は620nmでの蛍光発光を介して放出され、一方、残りのエネルギーはXL665に移動する。このエネルギーは次に、665nmでの特異的な蛍光として、XL665により放出される。665nmの光は、ユーロピウムを有するFRETを介してのみ発光される。ユーロピウムクリプテートは常にアッセイ内に存在するため、620nmの光は、生体分子の相互作用がXL665を近接させない場合であっても検出される。
【0059】
したがって、1つの実施形態において、スクリーニング方法のステップa)はしたがって、
(1)− 第1の抗原に融合された第1のHCVタンパク質、
− 第2の抗原に融合された第2のヒトタンパク質、
− 試験される候補化合物
を含むプレアッセイ試料を接触させるステップ、
(2)ステップ(1)の前記プレアッセイ試料に
− 前記第1の抗原に対して特異的な、ヨーロピアンクリプテートで標識された少なくとも1つの抗体、
− 前記第2の抗原に対するXL665で標識された少なくとも1つの抗体
を添加するステップ、
(3)前記ヨーロピアンクリプテートの励起波長でステップ(2)のアッセイ試料を照射するステップ、
(4)XL665の発光波長で発光される蛍光シグナルを検出および/または定量するステップ、
(5)ステップ(4)で得られた蛍光シグナルを、ステップ(1)のプレアッセイ試料が試験される候補化合物の不存在下で調製される場合に得られる蛍光と比較するステップ
を含み得る。
【0060】
上記のステップ(5)において、蛍光シグナルの強度値が、ステップ(1)のプレアッセイ試料が試験される候補化合物の不存在下で調製される場合に見られる蛍光シグナルの強度値よりも低い場合、候補化合物は、スクリーニング方法のステップb)で正の選択をされ得る。
【0061】
ヨーロピアンクリプテートで標識されたかまたはXL665で標識された抗体は、それが含む、GST、ポリヒスチジン尾部、DNP、c−myx、HA抗原、およびFLAGを含む、目的の様々な抗原に対するものであり得る。このような抗体は、CisBio(Bedfors、MA、USA)から市販されているもの、とりわけそれぞれ61GSTKLAまたは61HISKLBと呼ばれるものを包含する。
【0062】
候補化合物:
本発明の1つの実施形態によれば、本発明の候補化合物は、事前に合成された化合物のライブラリー、またはデータベースにおいて構造が決定されている化合物のライブラリー、またはデノボ合成されている化合物のライブラリーから選択され得る。
【0063】
候補化合物は、(a)タンパク質またはペプチド、(b)核酸、および(c)有機または化学的化合物の群から選択され得る。具体的には、事前に選択された候補核酸のライブラリーは、文献US5,475,096およびUS5,270,163において記載されているSELEX方法を実施することにより得ることができる。さらに具体的には、候補化合物は、上記の前記HCVタンパク質および前記ヒトタンパク質に対する抗体の群から選択され得る。
【0064】
インビボでのスクリーニング方法:
本明細書において先に記載したインビトロでのスクリーニングの実施形態のいずれか1つの最後に正の選択をされた候補化合物を、その抗HCV生物学的特性をさらにアッセイすることを考慮したさらなる選択ステップに供することができる。
【0065】
本発明のタンパク質の生産:
本発明のタンパク質は、限定はしないが、単独のまたは組み合わせた、任意の化学的、生物学的、遺伝的、または酵素的技術などの、それ自体が当技術分野において知られている任意の技術によって生産することができる。
【0066】
所望の配列のアミノ酸配列を知ることで、当業者は、標準的な技術によって前記タンパク質を容易に生産することができる。例えば、前記タンパク質は、周知の固相方法を用いて、好ましくは、市販されているペプチド合成装置(Applied Biosystems、Foster City、Californiaにより製造されているものなど)を製造者の指示に従って用いて合成することができる。
【0067】
あるいは、本発明のタンパク質は、当技術分野において現在周知の組換えDNA技術によって合成することができる。例えば、これらの断片は、所望のタンパク質をコードするDNA配列を発現ベクターに組み込み、このようなベクターを、所望のタンパク質を発現するであろう適切な真核宿主または原核宿主内に導入した後に、DNA発現産物として得ることができ、前記宿主から、周知の技術を用いて前記断片を後に単離することができる。
【0068】
宿主/発現ベクターの広範な組み合わせが、本発明のポリペプチドをコードする核酸の発現において採用される。使用され得る有用な発現ベクターには、例えば、染色体断片、非染色体断片、および合成DNA配列が含まれる。適切なベクターには、限定はしないが、SV40およびpcDNAの誘導体、ならびに既知の細菌プラスミド、例えばcol EI、pCR1、pBR322、pMal−C2、pET、pGEX、pMB9、およびその誘導体、RP4などのプラスミド、NM989などのファージIの多数の誘導体などのファージDNA、ならびにM13および糸状一本鎖ファージDNAなどの他のファージDNA;2ミクロンプラスミドまたは2ミクロンプラスミドの誘導体などの酵母プラスミド、ならびにセントロメアおよび組み込み性の酵母シャトルベクター;昆虫細胞または哺乳動物細胞において有用なベクターなどの真核細胞において有用なベクター;ファージDNAまたは発現制御配列を採用するために改変されているプラスミドなどの、プラスミドとファージDNAとの組み合わせに由来するベクターなどが含まれる。
【0069】
したがって、哺乳動物および典型的にはヒトの細胞、ならびに細菌、酵母、真菌、昆虫、線虫、および植物の細胞が本発明において用いられ、本明細書において定義される核酸または組換えベクターによってトランスフェクトされ得る。適切な細胞の例には、限定はしないが、VERO細胞、ATCC番号CCL2などのHELA細胞、ATCC番号CCL61などのCHO細胞系、COS−7細胞およびATCC番号CRL1650の細胞などのCOS細胞、W138、BHK、HepG2、ATCC番号CRL6361などの3T3、A549、PC12、K562細胞、293T細胞、ATCC番号CRL1711などのSf9細胞、ならびにATCC番号CCL70などのCv1細胞が含まれる。本発明において用いることができる他の適切な細胞には、限定はしないが、大腸菌などの原核宿主細胞株(例えば、DH5−[アルファ]株)、Bacillus subtilis、Salmonella typhimurium、またはPseudomonas属、Streptomyces属、およびStaphylococcus属の株が含まれる。本発明において用いることができるさらなる適切な細胞には、Saccharomyces cerevisiaeなどのSaccharomycesのものなどの酵母細胞が含まれる。
【0070】
治療的方法および使用:
さらなる態様において、本発明は、上記のHCVタンパク質とヒトタンパク質との間の相互作用を阻害する治療有効量の化合物を、治療を必要とする対象に投与することを含む、HCV感染を治療するかまたはHCV感染を予防するための方法を提供する。前記化合物は、本発明のスクリーニング方法によって同定することができる。
【0071】
本発明の背景において、本明細書において用いられる「治療する」または「治療」という用語は、このような用語が適用される障害もしくは状態、または、肝障害、肝脂肪症に関連する代謝障害、線維形成、およびインスリン耐性などの、このような障害もしくは状態の1つもしくは複数の症状を回復に向かわせること、軽減すること、その進行を阻害すること、または予防することを意味する。
【0072】
本発明によれば、「患者」または「治療を必要とする対象」という用語は、HCV感染に罹患しているかまたは罹患していると考えられるヒトまたはヒト以外の哺乳動物を意味する。
【0073】
本発明の「治療有効量の」化合物は、任意の医療に適用可能な妥当な利益/リスク比の、HCVの感染を治療するために十分な量の化合物を意味する。しかし、本発明の化合物および本発明の組成物の毎日の使用量の全体は信頼できる医学的判断の範囲内で主治医によって決定されることが理解されよう。あらゆる特定の患者にとっての具体的な治療有効な用量レベルは、治療される障害およびその障害の重症度、採用される特定の化合物の活性、採用される特定の組成物、患者の年齢、体重、全体的な健康、性別、および食事、採用される特定の化合物の投与時間、投与経路、および排出速度、治療の期間、採用される特定の化合物と組み合わせてまたはそれと同時に用いられる薬剤、ならびに医薬分野において周知の類似の因子を含む、様々な因子に依存する。例えば、化合物の用量を、所望の治療効果を得るために必要な用量よりも低いレベルで開始し、所望の効果が得られるまで用量を徐々に増大させることは、当技術分野の技術の範囲内に十分含まれる。
【0074】
別の1つの実施形態において、本発明は、HCV感染を治療することまたはHCV感染を予防することを目的とした医薬品の製造のための、上記のHCVタンパク質とヒトタンパク質との間の相互作用を阻害する少なくとも1つの化合物の使用に関する。
【0075】
上記のHCVタンパク質とヒトタンパク質との間の相互作用を阻害する化合物は、薬学的に許容可能な賦形剤と組み合わせることができる。「薬学的に」または「薬学的に許容可能な」は、哺乳動物、とりわけヒトに必要に応じて投与されたときに副作用、アレルギー反応、または他の有害な反応をもたらさない分子実体および組成物について言う。薬学的に許容可能な担体または賦形剤は、任意のタイプの無毒性の固体、半固体、または液体のフィラー、希釈剤、カプセル封入材料、または製剤補助剤を言う。
【0076】
以下の図面および実施例を考慮して本発明をさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】HCV相互作用ネットワークを示す図である。
【0078】
A.命名。V:ウイルスタンパク質(黒のノード)。HHCV:HCVタンパク質と相互作用するヒトタンパク質(赤のノード)。HNOT−HCV:HCVタンパク質と相互作用しないヒトタンパク質(青のノード)。V−HHCV:HCV−ヒトタンパク質相互作用(赤のエッジ)。HHCV−HHCV:HCVと相互作用するヒトタンパク質間の相互作用(青のエッジ)。H−H:ヒト−ヒトタンパク質相互作用(青のエッジ)。V−HHCVは、HCVタンパク質とヒトタンパク質との間の相互作用を表す(黒の四角)。HHCV−HHCVは、ウイルスタンパク質と相互作用するヒトタンパク質からなる(赤の四角)。H−Hネットワークは、ヒトタンパク質間の相互作用を表す(青の四角)。
【0079】
B.タンパク質およびHCV−ヒト相互作用ネットワークにおける相互作用の数。
HCVタンパク質と相互作用するヒトタンパク質(HHCV)の数、およびタンパク質−タンパク質相互作用(V−HHCV PPI)の対応する数。データは、本発明の酵母ツーハイブリッドスクリーン(IMAP Y2H)および文献をキュレーションした相互作用(IMAP LCI)について示されている。
【0080】
C.コアフィニティー精製アッセイによるY2H相互作用の検証。9回のco−APの正のアッセイが示されており、NS5A−SORBS2(1)、NS3−CALCOCO2(2)、NS5A−BIN1(3)、NS5A−MOBK1B(4)、NS5A−EFEMP1(5)、NS3−PSMB9およびNS5A−PSMB9(6)、NS5A−PPPIRI3L(7)、NS3−RASAL2(8)を表している。GSTタグ付けされたウイルスベイト(+)または陰性対照であるGST単独(−)でのプルダウンの後、細胞プレイを抗Flag抗体で同定する。抗GST抗体は、GST単独またはGSTタグ付けされたウイルスベイトのいずれかを同定する。細胞溶解物における細胞プレイの発現は、抗Flagにより制御される(最下部のパネル)。
【0081】
【図2】HCV−ヒト相互作用ネットワークのグラフィック表示である。
【0082】
A.H−Hネットワークのグラフィック表示。それぞれのノードはタンパク質を表し、それぞれのエッジは相互作用を表す。赤および青のノードはそれぞれHHCVおよびHNOT−HCVである。
【0083】
B.V−HHCV相互作用ネットワークのグラフィック表示。黒のノード:ウイルスタンパク質、赤のノード:ヒトタンパク質、赤のエッジ:ヒトタンパク質とウイルスタンパク質との間の相互作用(V−HHCV)、青のエッジ:ヒトタンパク質間の相互作用(HHCV−HHCV)。196個のタンパク質を含む最大の成分がネットワークの中央部に表されている。3つの他の連結した成分に属する細胞タンパク質の名称もまた表されている。
【0084】
【図3】HCV−ヒト相互作用ネットワークの位相分析を示す図である。
【0085】
A.H−HネットワークにおけるHおよびHHCVの位相分析。IMAP Y2Hデータセットから得られる全てのヒトタンパク質およびHHCVについて、程度(k)、媒介性(b)、および最短経路(l)を計算した。
【0086】
B.H−HネットワークにおけるHタンパク質およびHHCVタンパク質の程度および媒介性の分布。Hタンパク質(青)およびHHCVタンパク質(赤)の、標準化されたlog程度(左)およびlog媒介性(右)の分布。実線は、線形回帰のフィットを表す。垂直な点線は、程度および媒介性の値の平均を示す。それぞれのクラスは、従来の標準誤差と共に表されている。
【0087】
C.H−HネットワークにおけるHの程度および媒介性の相関関係。H−HネットワークにおけるHタンパク質の、標準化されたlog程度(x軸)およびlog媒介性(y軸)。黒の実線は、線形回帰のフィットを表す(R2=0.56)。水平および垂直な点線はそれぞれ、程度および媒介性の値の平均を示す。低い程度(LD)および高い程度(HD)のクラスを、平均の程度でのカットオフを用いることにより定義した。
【0088】
D.低いおよび高い程度のタンパク質についてのHNOT−HCVおよびHHCVの程度および媒介性の平均。上部:HNOT−HCV(青)およびHHCV(赤)の媒介性の平均(logスケール)を、LDおよびHDクラスについて示す。下部:HNOT−HCV(青)およびHHCV(赤)の程度の平均を、LDおよびHDクラスについて示す。従来の標準誤差閾値およびU検定のp値が表されている(***:p値<10−10、NS:有意性なし)。
【0089】
【図4】IJTネットワークを示す図である。
【0090】
A.IJTネットワークのグラフィック表示。KEGGアノテーションに従った、インスリン(青)、Jak/STAT(赤)、およびTGFβ(緑)経路のタンパク質(ノード)メンバー、ならびにそれらの相互作用(エッジ)が示されている(HCVタンパク質と相互作用するタンパク質が指定されている)。2つの経路により共有されるタンパク質は第2の色(ピンク、黄、および青緑)で示されている。灰色および黒のノードは、KEGG経路を連結しHCVタンパク質と相互作用する隣接物である(灰色:IMAP Y2Hデータセットから得られるタンパク質、黒:IMAP LCIデータセットから得られるタンパク質)。HCVと相互作用するがKEGG経路は連結しない隣接物は表されていない。論じられるタンパク質の例であるPLSCR1およびYY1は四角の中にある。インタラクティブな可視化のツールは補足的なファイルで提供される(ネットワークの可視化)。
【0091】
BおよびC.V−HHCVおよびIJTネットワークにおけるそれぞれのウイルスタンパク質の相対的寄与。3つの最も相互作用するウイルスタンパク質のパーセンテージを示す。CORE相互作用の51.3%は、IJTネットワークに集中している。
【0092】
【図5】HCVと接着斑との相互作用を示す図である。
【0093】
A.KEGGから採用された接着斑の略図(ID:Hs04510)。HHCVは、オレンジの四角で表されており、HNOT−HCVは青の四角で表されている。
【0094】
BおよびC.NS3およびNS5Aによる接着斑の摂動の機能的検証。
96ウェルプレートを様々な濃度のフィブロネクチン(B)またはポリ−L−リジン(C)で被覆した。NS2、NS3、NS3/4A、またはNS5Aを発現する293T細胞を、マトリクス上に30分間にわたり播種した。接着細胞をクリスタルバイオレットで染色した。FA50は、最大接着の半分に必要なマトリクス濃度である。値は、3つの独立した実験の平均をその標準偏差と共に表す。
【0095】
【図6】HCVのORFeomeを示す図である。HCVゲノム、およびY2Hのスクリーンのために設計されたORFの定義の略図。HCVのプラス鎖ゲノム(紫)は、10個のタンパク質に共翻訳的にプロセシングされるポリタンパク質(オレンジ)をコードする。赤:完全長タンパク質、青:ドメイン、黄+緑:NS4A+NS3キメラ融合体、ピンク:NS5A膜アンカー。それぞれの構築物のゲノムおよびポリタンパク質の位置が表に示される。
【0096】
【図7】H−HネットワークにおけるH、HHCV、およびHEBVタンパク質の程度および媒介性の分布を示す図である。Hタンパク質(青)、HHCV(赤)、およびHEBV(緑)のlog程度(左)およびlog媒介性(右)の分布。実線は線形回帰のフィットを表す。垂直な点線は、程度および媒介性の値の平均を示す。
【発明を実施するための形態】
【0097】
表S1:HHCVのリスト。
【0098】
HCVタンパク質は、それらのNCBIの成熟ペプチド生成物名に従って参照される(第1欄)。ヒトタンパク質は、それらの同族のNCBI遺伝子名および遺伝子IDと共に参照される(第2および3欄)。IMAP Y2H(スクリーニング方法に従ってIMAP1およびIMAP2)のISTの数が第4および5欄に示される。テキストマイニングおよびBINDデータベースに関連するPubMed IDから得られたIMAP LCI(文献をキュレーションした相互作用)が第6および7欄に示される。コアフィニティー精製(CoAP)またはY2Hペアワイズマトリクスの検証が第8および9欄に示される(+:IMAP検証、−:検証されず、NA:タンパク質発現の欠損またはGSTと直接的に相互作用する細胞タンパク質のためにアッセイ不可能)。
【0099】
表S2:2つ以上のウイルスタンパク質と相互作用するヒト細胞タンパク質のリスト。
【0100】
ヒトタンパク質は、それらの同族のNCBI遺伝子名と共に参照される(第1欄)。HCVタンパク質は、それらのNCBIの成熟ペプチド生成物名に従って参照される(第2欄)。データセットの由来源(IMAP Y2H、IMAP LCI、第3欄)。
【0101】
表S3:HCV−ヒトネットワークの位相分析
HCV−ヒトネットワークの連結された成分。
【0102】
V−HHCVサブネットワークの最大の成分のサイズおよび連結された成分の数を計算した(IMAPデータセット、第2欄)。観察された値の有意性を検定するために、本発明者らは、ランダムなサブネットワークを1000個のシミュレーションした後の最大の成分のサイズの平均および連結された成分の数の平均を計算した(IMAP Sim、第3欄)。観察された値とシミュレーションされた値との間の差異は非常に有意であった(***:p値<10−10)。
【0103】
ヒトインタラクトームにおけるHHCVタンパク質およびHEBVタンパク質の位相特性。
【0104】
完全なインタラクトーム(A)、信頼性の高いインタラクトーム(B、少なくとも2つのPMIDを有するかまたは2つの異なる方法によって検証されたPPIのみを含む)。タンパク質およびヒトインタラクトーム内に組み込まれ得るPPIの数がHHCVおよびHEBVについて示される。ヒトインタラクトーム内に存在するHHCVおよびHEBVのパーセンテージが、データセットの由来源に従って示される。程度(k)、媒介性(b)、および最短経路(l)の平均を、完全なおよび信頼性の高いインタラクトームの両方においてHHCVおよびHEBVについて計算した(25)。
【0105】
表S4:HHCVについてのKEGG経路の強化。
【0106】
過剰に表されたKEGG経路を、複数の検定調整の後に有意であると同定し(調整されたp値<5×10−2)、ウイルスタンパク質ごとに列挙する。それぞれの経路について、括弧内のIMAP Y2Hデータセットの相対的寄与と共に、HHCVの数が示される。黒の四角は、論じられている経路を強調するものである。
【0107】
表S5:IJTネットワークにおけるHCVタンパク質の分布および強化。
【0108】
A.それぞれのウイルスタンパク質についてのIJTネットワークにおけるHHCVの強化。HHCVの数がV−HHCVおよびIJTネットワークにおいて示される。IJTネットワークにおけるHHCVの強化を、それぞれのウイルスタンパク質についてフィッシャーの正確検定で検定した。関連するオッズ比およびp値が示される。
【0109】
B.それぞれのウイルスタンパク質についてのJak/STAT、TGFβ、およびインスリン経路におけるHHCVの強化。(KEGGデータベースにおいて定義されている)V−HHCVネットワークならびにJak/STAT、TGFβ、およびインスリン経路におけるHHCVの数が示される。Jak/STAT、TGFβ、およびインスリン経路におけるHHCVの強化を、それぞれのウイルスタンパク質についてフィッシャーの正確検定で検定した。関連するオッズ比およびp値が示される。
【0110】
C.それぞれのウイルスタンパク質についてのJak/STAT、TGFβ、およびインスリンの相互経路におけるHHCVの強化。相互経路は、2つまたは3つのKEGG経路を連結するHHCVとして定義される。HHCVの数が、V−HHCVネットワークならびにJak/STAT、TGFβ、およびインスリンの相互経路において示される。Jak/STAT、TGFβ、およびインスリンの相互経路におけるHHCVの強化を、それぞれのウイルスタンパク質についてフィッシャーの正確検定で検定した。関連するオッズ比およびp値が示される。
【実施例】
【0111】
<実施例1>
概説
C型肝炎ウイルスとヒトタンパク質との間の相互作用のプロテオームワイドなマッピングを実施して、細胞感染の包括的な見解を提供した。全部で314の、HCVタンパク質とヒトタンパク質との間のタンパク質−タンパク質相互作用を酵母ツーハイブリッドにより同定し、170の前記相互作用を文献マイニングにより同定した。再構築したヒトインタラクトーム内へのこのデータセットの組み込みにより、HCVと相互作用する細胞タンパク質が、非常に中心的で相互に連結されたタンパク質において強化されていることが示された。機能アノテーションに基づいた全体的な分析は、HCVにより標的化される細胞経路の強化を強調した。慢性的に感染した患者の頻繁な臨床障害に関連するタンパク質のネットワークを、インスリン、Jak/STAT、およびTGFβ経路をHCVにより標的化される細胞タンパク質と連結することにより構築した。COREタンパク質は、このネットワークの主要な摂動付与物質として現れた。接着斑を、HCV、主にNS3およびNS5Aタンパク質により影響される新たな機能として同定した。
【0112】
材料および方法:
HCVのORFeomeの構築。
【0113】
HCVゲノムは、構造タンパク質(CORE、E1、E2、およびp7)および非構造タンパク質(NS2、NS3、NS4A、NS4B、NS5A、およびNS5B)内の細胞プロテアーゼおよびウイルスプロテアーゼにより切断される1つのポリタンパク質をコードするプラス鎖RNA分子である(1)。全てのタンパク質を、euHCVdb設備(http://www.euhcvdb.ibcp.fr(2))を用いて、ドメインが設計されていないNS4Bを除いて、完全長およびドメインでクローニングした(図6)。融合NS4A−NS3タンパク質およびNS4A−NS3プロテアーゼドメインを構築した(3、4)。HCV遺伝子型1bである単離体con1(AJ238799)から得られる全ての27個のORFを(5)、ゲートウェイ組換えクローニング系においてクローニングした。それぞれのORFを、フォワードプライマーおよびリバースプライマーに融合したattB1.1およびattB2.1組換え部位を用いて(KODポリメラーゼ、Novagenを用いて)PCR増幅し、pDONR223内にクローニングした(6)。全てのエントリークローンを配列により検証した。
【0114】
酵母ツーハイブリッド(Y2H)ライブラリーのスクリーン。
【0115】
HCVのORFを、pDONR223から、酵母においてGal4−DB融合体として発現されるベイトベクター(pPC97)内に移した。2つの異なるスクリーニング方法を用いた(IMAP1およびIMAP2)。IMAP1およびIMAP2戦略の両方のために、またベイトが自己転写活性化レポーター遺伝子を構築することがあるため、SD−L−H培地に3−アミノトリアゾール(3−AT)を補った。この薬剤の適切な濃度は、3−ATの濃度を増大させながら補ったSD−L−H培地上でベイト株を成長させることにより決定した。膜アンカーを有さないNS5Aによる自己転写活性化は3−ATで滴定するには高すぎ、さらなる試験は行わなかった。IMAP1では、ベイトベクターをMAV203酵母株に導入し、ヒト脾臓および胎児脳の両方のAD−cDNAライブラリー(Invitrogen)を、記載されているような形質転換によりスクリーニングした(7)。最初に陽性であった全てのクローン(SD−W−L−H+3−AT上で選択された)を、2つのさらなるレポーター遺伝子であるLacZ(X−Gal比色分析)およびURA3(5−FOAを補った培地上での成長アッセイ)を用いたさらなる表現型アッセイにより試験した。3つの陽性表現型のうち少なくとも2つを示した陽性クローンを、新鮮な酵母内で再試験した。再試験しなかったクローンは廃棄した。AD−cDNAをPCR増幅し、インサートを配列決定して相互作用子を同定した。IMAP2のスクリーンを、AH109およびY187酵母株を用いて、酵母の接合によって実施した(Clontech(8))。ベイトベクターをAH109内に形質転換し(ベイト株)、ヒト脾臓および胎児脳のAC−cDNAライブラリー(Invitrogen)をY187内に形質転換した(プレイ株)。単一のベイト株をプレイ株と接合し、2倍体をSD−W−L−H+3−AT培地に播種した。陽性のクローンをこの選択培地上で15日間維持し、あらゆる汚染AD−cDNAプラスミドを除去した(9)。AD−cDNAをPCR増幅し、インサートを配列決定した。
【0116】
IST(相互作用子配列タグ)分析
本発明者らは、それぞれのISTをその天然のヒトゲノム転写産物に割り当てる生物情報学的パイプラインを開発した。まず、ISTを、従来の閾値である20を上回る品質スコア(1%未満の配列誤差)でPHRED(10、11)を用いてフィルタリングした。Gal4モチーフを検索し(GAL4−ADの最後の87塩基)、このモチーフの下流の配列をペプチドに翻訳し、BLASTPを用いてREFSEQ(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/RefSeq/)ヒトタンパク質配列データベース(2007年4月リリース)に対してアラインした。信頼性の低いアラインメント(E値>10−10、同一性<80%)および早期の停止コドンを含む配列を除去した。インフレームのタンパク質および質の高い配列のみをさらに検討した。
【0117】
組み込まれたヒトインタラクトームネットワーク(H−Hネットワーク)
物理的および直接的な異種分子間タンパク質−タンパク質相互作用のみを、BIND(12)、BioGRID(13)、DIP(14)、GeneRIF(15)、HPRD(16)、IntAct(17)、MINT(18)、およびReactome(19)から取り出した。NCBIの正式な遺伝子名を用いて、異なるゲノム参照データベース(すなわち、ENSEMBL、UNIPROT、NCBI、INTACT、HPRDなど)において定義されているタンパク質ACC、タンパク質ID、遺伝子名、記号、または別名を統一し、かつ単一の遺伝子についての異なるタンパク質アイソフォームの存在に起因する相互作用の冗長性を除去した。したがって、遺伝子名は、タンパク質を同定するためにテキストにおいて用いた。最後に、冗長ではないタンパク質−タンパク質相互作用のみを、ヒトインタラクトームデータセットを構築するために維持し、すなわち、AがBと相互作用し、かつBがAと相互作用する場合に、AとBとの相互作用のみが選択された。
【0118】
HCVタンパク質と細胞タンパク質との間の相互作用のテキストマイニング
細胞タンパク質とHCVタンパク質との間の2種分子間相互作用を記載する、文献をキュレーションした相互作用(LCI)を、専門家のキュレーションプロセスにより完成した自動テキストマイニングパイプラインを用いることによって、BINDデータベースおよびPubMed(2007年8月前の刊行物)から抽出した。テキストマイニングアプローチでは、「HCV」および「タンパク質相互作用」というキーワードに関連する全ての要約を取り出し、遺伝子名(NCBI遺伝子名および別名に基づく)ならびに相互作用の動詞(相互作用する、結合する、付着するなど)について、文作成プログラム(文の分割)および品詞タグ付けプログラムに供した(20)。専門家によるキュレーションのために、少なくとも1つのヒト遺伝子名、1つのウイルス遺伝子名、および1つの相互作用項の共起を示す文の優先順位を付けた。
【0119】
コアフィニティー精製による検証
59のIMAP Y2H相互作用のランダムなプールをCoAPアッセイのために選択した。細胞のORF(Y2Hスクリーンにおいて見られる相互作用ドメイン)を、KODポリメラーゼ(Toyobo)を用いて、ヒトcDNAライブラリーのプールまたはMGCのcDNAプラスミドからpDONR207(Invitrogen)内に、組換えクローニングによってクローニングした。配列決定による検証の後、これらのORFをゲートウェイ変換されたpCi−neo−3xFLAGに移し、HCVのORFをpDEST27内に移した(N末端におけるGST融合)。次に、HEK−293T細胞を、相互作用タンパク質をコードするそれぞれのプラスミド対によってコトランスフェクトした(JetPei、Polyplus)。対照は、3xFLAGタグ付けされたプレイに対するGSTのみである。トランスフェクションの2日後、細胞を回収し、溶解した(0.5%のNP−40、20mMのTris−HCl(pH8.0)、180mMのNaCl、1mMのEDTA、および完全プロテアーゼ阻害剤のカクテル)。細胞溶解物を、4℃で13000rpmで20分間にわたり遠心分離することにより清澄化し、可溶性タンパク質複合体をグルタチオンセファロース4Bビーズ(GE Healthcare)を用いて精製した。次に、ビーズを溶解緩衝液で4回十分に洗浄し、タンパク質をSDS−PAGE上で分離し、ニトロセルロース膜に移した。GSTタグ付けされたウイルスタンパク質および3xFLAGタグ付けされた細胞タンパク質を、抗GSTモノクローナル抗体(Covance)および抗FLAG M2モノクローナル抗体(Sigma)を用いて、標準的な免疫ブロッティング技術を用いて検出した(21)。
【0120】
ネットワークの可視化
Large Graph Layout(http://bioinformatics.icmb.utexas.edu/lgl/)を適用して、図2AにおけるH−Hネットワークを視覚化した。推測ツール(http://graphexploration.cond.org/)を用いて、図2BにおけるH−HHCV感染ネットワークおよび図4AにおけるIJTネットワークをグラフィック表示した。図2Bおよび4Aは、SF1.tar.gzにおけるGUESS相互作用フォーマット(GUESSデータフォーマット)において入手可能である(infection_network.propertiesおよびijt_network.properties)。
【0121】
位相分析
R(http://www.r−project.org/)統計環境を用いて統計分析を行い、igraph Rパッケージ(http://cneurocvs.rmki.kfki.hu/igraph/)を用いて、ネットワークの連結された成分、中心性(程度、媒介性)、および最短経路の測定値を計算した。
【0122】
連結された成分:
無方向的なネットワークにおいて、連結された成分は、最大の連結されたサブネットワークである。2つのノード間に経路が存在する場合に2つのノードは同一の連結された成分内にあり、かつ、2つのノードが同一の連結された成分内にあるのは、2つのノード間に経路が存在する場合のみである。本発明者らはまた、igraph Rパッケージに従って、他のタンパク質のいずれにも連結されていないタンパク質を、連結された成分に含めた。
【0123】
程度:
ノードの程度(k)は、ノードに伴うエッジの数である。ヒトタンパク質の程度の平均を計算し、全てのHHCVの程度の平均と比較した。
【0124】
最短経路:
最短経路の問題は、その構成要素であるエッジのウェイトの合計が最小化するような、2つのノード間の経路の発見である。最短経路(I、また測地線とも呼ばれる)を、グラフにおいて幅優先サーチを用いることによってここで計算する。エッジのウェイトはここでは用いておらず、すなわち、全てのエッジウェイトは1である。任意の2つのヒトタンパク質対の間の最短経路の平均を計算し、任意の2つのHHCV対の間の最短経路の平均と比較した。
【0125】
媒介性:
ノードの媒介性(b)を、ノードを通過する最短経路の数により大まかに規定する。全てのヒトタンパク質の媒介性の平均を計算し、任意の2つのHHCV対の間の最短経路の平均と比較した。
【0126】
位相分析の統計的検定:
観察された差異を統計的に確認するために、ウィルコクソン・マン・ホイットニー順位和検定(U検定)を選択した。U検定は、2つの関連するサンプルのためのペアステューデントt検定または1つのサンプルに対する反復測定に対する、ノンパラメトリックな代替物である。一般化された線形モデルおよびANOVA分析を用いて、HCVタンパク質がヒトタンパク質と相互作用する確率に対する、程度および媒介性の個別のおよび追加の効果を、それぞれモデリングおよび検定した。
【0127】
KEGGアノテーションを用いた機能分析
細胞経路のデータを、KEGG(22)、すなわち京都遺伝子ゲノム百科事典(http://www.genome.jp/kegg/)から取り出し、NCBI遺伝子の機能にアノテーションを付すために用いた。それぞれのウイルス−宿主タンパク質相互作用について、特定のKEGG経路の強化を、フィッシャーの正確検定を用いて検定し(p値<5×10−2)、その後、偽発見率を制御するためにBenjaminiおよびHochbergの多重検定補正(23)を行った。
【0128】
細胞接着アッセイ
PBSにおけるフィブロネクチンまたはポリ−L−リジンの連続希釈(10から0.04μg/ml)を、4℃で一晩、96ウェルマイクロタイタープレート上に被覆した。非特異的な結合部位を室温でPBS 1% BSAで1時間にわたり飽和させた。HEK 293T細胞をpCineo3xFlag NS2、NS3、NS3/4A、またはNS5A(JetPei、Polyplus)でトランスフェクトし、2日後にPBS中の2mMのEDTAで回収し、0.1%BSAを含む無血清培地内に細胞1.105個/ウェルで広げることを3回行い、37℃で30分間にわたりインキュベートした。非接着細胞を洗浄して除去し、接着細胞を3.7%のパラホルムアルデヒドで固定した。細胞を20%メタノール内の0.5%クリスタルバイオレットを用いて室温で20分間にわたり染色し、H2O内で5回洗浄した。染色をpH4.5の50mMのクエン酸ナトリウム中の50%エタノールで抽出し、吸光度をELISAリーダー(MRXマイクロプレートリーダー、Dynatech Laboratories)で590nmで読み取った。値は10μg/mlでの100%の接着に対して標準化した。接着のパーセンテージを、それぞれのマトリクス濃度でそれぞれの細胞型について決定した。最大接着の50%(FA50)を曲線から計算した(出典Miaoら(24))。
【0129】
材料および方法において引用される参考文献:
【0130】
【表10】
【0131】
結果
HCV−ヒトインタラクトームマップの構築
HCVタンパク質と細胞タンパク質との間の包括的なインタラクトームマップを、Y2Hスクリーンにより作成した。完全長HCV成熟タンパク質または不連続のドメインをコードする27個の構築物を、組換えに基づいたクローニング系を用いてクローニングした(10)(図6)。4個の独立したスクリーンをそれぞれのHCVベイトタンパク質で実施し、2つの異なるヒトcDNAライブラリーを探査した(補足的な方法)。278個のヒトタンパク質を伴う、314個のHCV−ヒトPPIを同定した(図1B、表S1におけるIMAP Y2Hデータセット)。HCVタンパク質とヒトタンパク質との間のペアワイズ相互作用もまた、自動テキストマイニングにより文献から抽出し、専門家のキュレーションによって確認した(補足的な方法、図6におけるIMAP LCIデータセット)。135個のPPIをPubmedから抽出し、89個をBINDデータベースから抽出した(11)(図1B)。得られるHCV−ヒト相互作用はこのように、11個のHCVタンパク質および421個の個別のヒトタンパク質を伴う、65%の新たな相互作用を有する481個のPPIからなる(図1B)。IMAP Y2HデータベースとIMAP LCIデータベースとの間の冗長性の低さは、Y2H系の偽陰性率の高さを強調するものであり、これは最近の研究と一致している(12、13)。2つの検証方法を用いて、IMAP Y2Hデータセットの信頼性を評価した。3分の2のデータセットをY2Hペアワイズマトリクスによって有効とした。残りの相互作用から、25%をランダムに選択し、85%を超える検証率をもたらすコアフィニティー精製によって試験した(図1Cおよび表S1)。このY2Hデータセットはしたがって、位相的および機能的なレベルで、さらなる分析に対して信頼性が非常に高いものである。HCV感染ネットワークの分析(V−HHCV、図1A)により、NS3、NS5A、およびCOREが、それぞれ214、96、および76個の細胞パートナーを有する、ヒトインタラクトームにおいて最も連結されているタンパク質であることが示され、このことは、感染の間のこれらのタンパク質の潜在的な多機能性を強調するものである(表S1、図4B)。さらに、45個の細胞タンパク質が2つ以上のウイルスタンパク質によって標的化され、このことは、それらがウイルスの生物学に必須であることを示唆するものである(7)(表S2)。
【0132】
ヒトPPIネットワーク(H−Hネットワーク、図1A)を、8個のデータベースから再構築した(14)(補足的な方法)。このネットワークは、9520個の異なるタンパク質の間の44223個の冗長でないPPIからなる(図2A)。興味深いことに、30%のヒトタンパク質のみがこのデータセットに存在する一方で、HCVにより標的化されたヒトタンパク質(HHCV)がこのH−Hネットワークにおいて明らかに過剰に表されている(IMAP Y2Hデータセット:76%、およびIMAP LCIデータセット:92%、フィッシャーの正確検定、p値<2.2×10−16)。このことは、HCVが、タンパク質−タンパク質相互作用に関与することが既に知られている宿主タンパク質を選択的に標的化することを示唆するものである(12、15)。IMAP LCIデータセットでは、ヒトインタラクトームに組み込まれるHHCVのパーセンテージの高さは、よく研究されているタンパク質および生物学的経路の調査のバイアスにより説明することができる。HHCV−HHCVサブネットワークの分析により、HCVと相互作用する細胞タンパク質が、ランダムなサブネットワークについて期待されたものよりも有意に相互連結されていることが示された(図1A、2B、補足的な方法)。実際、ヒトインタラクトームに組み込まれる338個のHHCVは、131個の連結された成分に分配される(ランダムなサブネットワークにより期待される276に対して、p値<10−10、表S3)。最大のものは、1つのタンパク質のみを含む127個の成分とは対照的に、196個のHHCVからなる(ランダムなサブネットワークにより期待される18に対して、p値<10−10)。3つの残りの連結された成分は2つのタンパク質を含んでいた。2つは、機能的に関連するタンパク質を含んでおり(CLEC4MおよびCD209は、ウイルスの侵入に関与するレクチンであり(16)、MVPおよびPARP4は、ヴォールト複合体に関与する(17))、1つは、機能的に関連することが知られていないタンパク質を含んでいた(KIAA1549およびCADPS)。
【0133】
HCV−ヒト相互作用ネットワークの位相分析
HCVタンパク質が細胞タンパク質ネットワークといかにして相互作用するかを評価するために、本発明者らは次に、H−Hインタラクトームに組み込まれるHHCVタンパク質の中心性の測定値に焦点を当てた。局所的な(程度)ならびに全体的な(最短経路および媒介性)の中心性の測定値を計算した。簡潔に述べると、ネットワークにおけるタンパク質の程度(k)は、直接的なパートナーのその数に対応し、したがって、局所的な中心性の測定値である。媒介性(b)は、所与のタンパク質を通過する最短経路(ネットワークにおける2つのタンパク質間の最短距離、l)の数を測定するため、中心性の全体的な測定値である。H−Hネットワークの程度、媒介性、および最短経路の平均はそれぞれ、9.3、1.6×10−4、および4.04であり、これは、これまでの報告とよく一致する(18)(図3A)。バイアスのない分析を提供するために、計算は、ヒトインタラクトームに組み込まれるIMAP Y2Hデータセットから得られる213個のHHCVに基づくものであった。HHCVの程度の平均は、ヒトインタラクトームの程度の平均よりも有意に高い(15.6対9.3、U検定、p値<10−3)。程度の確率分布の比較により、HHCVが程度の平均を超えて全てのクラスにおいて選択的に表されることが明らかになる(図3B、左)。このことは、HCVタンパク質が、高度に連結した細胞タンパク質と相互作用する大きな傾向を有することを示すものである。しかし、程度はタンパク質の局所的な連結性のみを測定するため、ネットワークにおける情報の交換および伝搬を反映し得る全体的な特徴を調べた(19)。全体的な尺度で、HHCVの媒介性の平均は、ヒトインタラクトームの媒介性の平均よりも有意に高かった(3.8×10−4対1.6×10−4、U検定、p値<10−3)。程度に関しては、媒介性の確率分布の比較により、全てのクラスにおいてHHCVが媒介性の平均を超えて過剰であることが示される(図3B、右)。さらに、H−Hネットワークにおける最短経路の平均と比較して、HHCVタンパク質間で見られる最短経路の平均が低いことにより、HHCVが位相的に近いことが明らかになる(3.50対4.04、U検定、p値<10−5)。IMAP LCIデータセットから得られるHHCVの局所的および全体的な中心性の両方は、IMAP Y2Hデータセットについてよりも高く、このことは、文献調査のバイアスの問題を強調し、Y2Hスクリーニングのバイアスのないアプローチを強固にするものである(表S3)。中心のHHCVに対する選択的な付着がH−Hインタラクトームにおける固有のバイアスによるものではないことを保証するために、本発明者らは、信頼性が非常に高いがあまり包括的ではないヒトインタラクトームで同一の分析を実施した(表S3、補足的な方法)。この傾向はこのデータセットで維持され、このことは、HHCVがヒトインタラクトーム内で局所的および全体的に非常に中心的であり、かつこのネットワークにおいて互いに比較的近くに現れることを裏付けるものであった。HCVおよびEBVの比較分析では、中心性の測定値をHEBVについても計算した(Calderwoodらからのデータセット(7))。程度、媒介性、および最短経路は、HEBVタンパク質と同一の傾向に従い(表S3および図7)、これまでの報告とよく一致した(7)。これらの結果は、中心的なタンパク質に対する選択的な付着が、文献の分析により最近示唆されたような、ウイルスタンパク質の一般的な特質であることを示す(9)。これらのタンパク質の中心性の高さはこれまでに、細胞に対するそれらの機能的不可欠性と相関することが示されている(20)。より詳細には、致死タンパク質および疾患に関連するタンパク質は中心的なタンパク質において富んでいることが明らかになった(19、21〜23)。
【0134】
程度または媒介性のいずれがウイルスタンパク質と細胞タンパク質との間の相互作用の確率に最も影響するかを決定するために、本発明者らは一般化された線形モデルを用いて両方の測定値の分離したおよび追加的な効果を検定した(補足的な方法)。この分析により、媒介性がウイルスタンパク質とヒトタンパク質との間の相互作用の確率をより良好に説明することが明らかになった(ANOVA、p<10−3)。図3Cは、低い程度値で媒介性のばらつきが大きいことにより説明される、kとbの中心性の測定値の間の、部分的な相関関係を示す(R2=56%、p値<10−16)。本発明者らはしたがって、低い程度で観察されたこの大きなばらつきが媒介性の優位な効果を説明し得るかどうかを求めた。この目的のために、データベースを、ヒトインタラクトームの程度の平均に従って、低い程度(LD)および高い程度(HD)のタンパク質クラスに分けた。LDクラスに含まれる細胞タンパク質では、HCVは、それらの程度の特性に関わらず、媒介性が高いタンパク質と選択的に相互作用する(図3D)。HDクラスにおいては、HCVタンパク質との相互作用は、細胞タンパク質の媒介性および程度の両方に依存する。酵母における最近の研究に基づいて(24)、程度が低く媒介性が高いHHCVタンパク質が細胞モジュール間のコネクタまたは障害として作用し得、したがって感染に必須であり得ることが推定され得る。
【0135】
HCV−ヒト相互作用ネットワークの機能的分析
HCVにより標的化される生物学的機能をより良く理解するために、本発明者らは次に、所与のウイルスタンパク質の全ての相互作用子について特定の経路の強化を検定した。これは、HHCVタンパク質をKEGG機能アノテーション経路に関して分析することにより行った(表S4、補足的な方法)。機能はいまだ全てのタンパク質によるものではないため、このアプローチは全体としてはバイアスがないが、それは依然として、システムレベルのデータセットに従来の生物学を組み込む有効な手段である。この分析により、HCVの臨床的症候群に関連する3つの経路についての強化が示され(インスリン、TGFβ、およびJak/STAT経路)、HCVにより影響される新規な経路として接着斑が同定された。
【0136】
HCVによる慢性的な感染は、脂肪症の発症を伴う代謝障害に対するリスクの増大に関連する。インスリン耐性はこのプロセスの共通の特徴である。これはまた、肝線維症の原因ともなり、インターフェロン−α(IFN−α)抗ウイルス療法に対する応答不良の予測因子である(25、26)。逆に、IFN−αは線維症の進行を予防し得る(27)。TGFβは、肝臓における細胞の成長および分化の維持において極めて重要な役割を有する。これは、感染の間に産生が増強されることが多い、強力な線維形成促進性のサイトカインである。低下したTGFβ応答もまた、HCV感染の間に観察される(28)。インスリン、TGFβ、およびJak/STAT経路はこれらの臨床的特徴に関与すると考えられているが(29)、HCV感染の間の、密接に関連するそれらの摂動は、依然としてほとんど説明されていない。本発明者はしたがって、ネットワークアプローチを用いて、HCVにより標的化され、これらの経路の界面に局在する、細胞タンパク質を同定した。得られる相互作用マップを構築して、IJTネットワークを形成した(インスリン−Jak/STAT−TGFβ、図4A)。66個のHHCVタンパク質は2つの経路を連結しており、一方、30個のHHCVタンパク質は3つの経路を連結している。これらのタンパク質とHCVタンパク質との相互作用はしたがって、隣接する経路に広がり得る機能的な摂動を誘発し得る。これらのタンパク質のうち1つは、インスリン経路とJak/STAT経路とを連結するPLSCR1(スクランブラーゼ1)である。原形質膜のリン脂質の再分配に関与することが知られていることで(30)、このタンパク質はまた、インターフェロンに応じた遺伝子の潜在的なアクチベーターであり、siRNAでのそのノックダウンは、ウイルスの複製に有利に働く(31)。興味深いことに、PLSCR1−/−マウスはまた、インスリン耐性の発現を示す(32)。インスリンまたはJak/STAT経路においてはアノテーションを付されていないが、PLSCR1はしたがって、これらの経路の機能性にとって必須であることが分かる。PLSCR1と相互作用することにより、COREはしたがってJak/STAT経路とインスリン経路との両方に干渉し得る。別の例は、3つの経路を連結するためIJTネットワークにおいてより中心的な位置を示す、核因子Yin Yang 1(YY1)である。HCV COREとYY1との相互作用は、NPM1の発現を機能的に軽減することがこれまでに示されている。この所見は、インスリン経路およびTGFβ経路の調節の裏付けとしての、PPARδの発現およびSMADの転写活性に推定することができる(33〜35)。これらは、HCV誘発性の表現型に関与すると考えられる細胞標的のただ2つの例示的な例である。これらの例は、本発明者らを、臨床的症候群に相関する分子メカニズムについてのより良い情報を提供する目的で、C型肝炎の論理的な還元主義的アプローチに戻すものである。病理学のこの分子アプローチは系(この研究においてはタンパク質)の基礎的な要素に適用可能であるが、慢性的なHCV感染において観察される臨床的表現型のいくつかは、IJTネットワークにおいて示されるタンパク質相互作用の統合的な効果の結果であると考えられる。さらに、ネットワークのロバスト性の特性は、異なる摂動に直面してもネットワークの能力が機能的であり続けるようにし得るため、ネットワークの還元主義的アプローチは、系レベルで常に適用可能ではあり得ない。
【0137】
IJTネットワークにおいて明らかになった別の問題は、COREタンパク質が他のHCVタンパク質よりも比例的に多くの相互作用を媒介するということである(図4B、4C)。実際、IJTネットワークとの選択的な相互作用は、COREでのみ観察された(51.3%、表S5)。結果として、COREはIJTネットワークにおける相互作用の27.7%をもたらし、これは有意な増強に対応する(フィッシャーの正確検定、p値<10−4)。より詳細には、このタンパク質は、Jak−STAT経路およびTGFβ経路(フィッシャーの正確検定、p値<0.05)、ならびにインスリン/Jak/STAT経路とインスリン/TGFβ経路とを連結するHHCV(フィッシャーの正確検定、p値<0.05、表S5)において過剰に表される。したがって、COREはIJTネットワークの主要な摂動付与物質として現れる。興味深いことに、COREを発現するトランスジェニックマウスはインスリン耐性を発現する(36、37)。提案されたメカニズムは、CORE誘発性のSOCS3がユビキチン化を介してIRS1およびIRS2のプロテアーソーム分解を促進するというものであった(38)。SOCS3はまたJak/STAT経路の負の調節因子であるため、このことは、IFN−α耐性の発生を説明し得る。明らかに、IJTネットワークは、COREの作用がこれまでに考えられていたよりもはるかに複雑であると考えられることを示す。IJTネットワークはいまだ動的に分析され得ないが、依然として、前記ネットワークは、慢性化に関連する複雑な障害のいくつかを解明する固有の手段を提供するものである。IJTネットワークがウイルス感染の不存在下で脂肪症および線維形成などの疾患に関与する一連の遺伝子を同定し得ることもまた考慮に値する。
【0138】
接着斑は、IMAP Y2Hスクリーンにより生じるデータの主要な寄与と共に、NS3タンパク質およびNS5Aタンパク質により標的化される新たな機能として過剰に表された(表S4)。インテグリンに結合した接着斑複合体は、細胞外マトリクス(ECM)への細胞の接着を制御し、これらの複合体とアクチン−細胞骨格との会合は、細胞の移動において主要な役割を有する。ECMに結合すると、αおよびβインテグリンサブユニットの両方は、アクチン−細胞骨格とシグナル伝達経路との間の物理的結合を確立するタンパク質を動員する。脱調節されると、この機能的プロセスは細胞の可動性の摂動、ECMからの分離、ならびに腫瘍の発生および進行をもたらし得る。図5Aは、HCVにより標的化されるタンパク質、主にNS3およびNS5Aタンパク質を伴うKEGGの接着斑経路を示す。接着斑の機能性に対するNS3、NS3/4A、またはNS5Aの単一の発現の影響を、フィブロネクチンおよびポリ−L−リジンに対する細胞接着アッセイを用いて評価した。これらのウイルスタンパク質は、MOCKまたはNS2を発現する細胞と比較してフィブロネクチンに対する細胞接着を阻害した(図5B)。一方、インテグリンを組み込まないポリ−L−リジンに対する接着は影響されなかった(図5C)。同一の阻害レベルがNS3/4AおよびNS3について観察され、このことは、このプロテアーゼの酵素活性が接着斑の摂動に対して主要な効果を有さないことを示唆するものである。癌の発生および進行に加え、HCVによる接着斑の組み込みは、ウイルスの拡散に対する重要性を有し得る。アクチン−細胞骨格のリモデリングのいくつかのステップへの干渉は、侵入部位に到達するために標的細胞の細胞突起に沿って移動するためにこのプロセスを利用し得るレトロウイルスについて記載されている(39)。インテグリンへのウイルスエンベロープの結合を伴う関連するプロセスが、HCVにより利用されてその伝達を促し得ることは、考えられることである。HCV感染のネットワークアプローチにおいて、相互作用マップは、ウイルスが複製し宿主の防御から逃れるために潜在的に必要な、全ての連結を同定する。
【0139】
<実施例2>
胆汁酸(BA)の血清レベルが高い、C型肝炎ウイルス(HCV)に感染した患者は通常、抗ウイルス療法に対する応答を有さない。したがって、HCVのRNA複製に対するBAの役割を評価した。BA、とりわけケノデオキシコール酸塩およびデオキシコール酸塩は、HCVのRNA複製を10倍以上、上方調節した。遊離しているが抱合していないBAのみが活性であり、このことは、それらの効果が核受容体によって媒介されていたことを示唆するものである。ファルネソイドX受容体(FXR)のリガンドのみがHCVの複製を刺激し、一方、グッグルステロンによるFXRのサイレンシングおよびFXRの拮抗作用は、BAにより誘発される上方調節を遮断した。さらに、グッグルステロンは単独で、基底レベルのHCV複製を10倍阻害した。FXRリガンドによるHCV複製の調節は、I型インターフェロンの存在下または不存在下で同一の割合で生じ、このことは、ウイルス複製のこの制御から独立した作用のメカニズムを示唆するものである。したがって、BAへの曝露は、核受容体FXRの活性化を伴う新規なメカニズムによりHCV複製を増大させる。
【0140】
これにより、ウイルスがFXRに直接的に干渉してその複製を促し得るという可能性が高まる。HCVタンパク質の細胞相互作用子のプロテオームワイドなスクリーニングを完了するために、本発明者らは、FXRに焦点を当てた特異的スクリーニングを実施して、この受容体と任意のウイルスタンパク質との間の全ての潜在的な相互作用を同定した。
【0141】
材料
細菌
大腸菌のコンピテント細菌(OneShot(登録商標)Top10、Invitrogen)(F−mcrA Δ(mrr−hsdRMS−mcrBC)φ80lacZΔM15 ΔlacX74 recA1 araD139 Δ(ara−leu)、7697 galU galK rpsL (StrR) endA1 nupG)。
【0142】
酵母
本発明者らは以下の株を用いた:AH109およびY187(Clontech) 以下の遺伝子型を有するSaccharomyces cerevisiae
AH109:MATa、trp1−901、leu2−3、112、ura3−52、his3−200、gal4Δ、gal80Δ、LYS2::GAL1UAS−GAL1TATA−HIS3、GAL2UAS−GAL2TATA−ADE2、ura3::MEL1UAS−MEL1TATA−lacZ。
Y187:MATα、ura3−52、his3−200、ade2−101、trp1−901、leu2−3、112、met−、gal4Δ、gal80Δ、MEL1、URA3::GAL1UAS−GAL1TATA−lacZ。
【0143】
ヒト細胞
Hek−293T:ラージT抗原を発現するヒト胚腎細胞。
【0144】
酵母ツーハイブリッドマトリクスを用いたFXRと相互作用するHCVタンパク質の同定
本発明者らの以前の研究により、HCVの複製がFXR活性の制御下にあり得ることが示された。FXR活性に干渉し得るウイルス成分を同定するために、本発明者らはウイルスタンパク質とFXRとの間の相互作用を探求した。これは、酵母ツーハイブリッド法を用いるペアワイズ相互作用スクリーニングにより行った。全ての10個のウイルスタンパク質を試験し、データを以下の表にまとめる。
【0145】
【表11】
【0146】
プルダウン実験
データは、哺乳動物細胞におけるGST−プルダウンによって確認されている。GSTと融合しているウイルスタンパク質を、3XFlagでタグ付けされたFXRと共に、Hek−293T細胞にコトランスフェクトした。48時間後、細胞を溶解し、グルタチオンセファロースを用いて沈殿を実施し、電気泳動、および抗Flag(FXRを明らかにするため)またはペルオキシダーゼに結合した抗GST抗体を用いたウェスタンブロットに供した。NS3およびNS5AとのFXRの共沈殿は、これらのウイルスタンパク質とFXRとの直接的な相互作用を肯定的に確認するものであった。FXRと全ての他のウイルスタンパク質との共沈殿は、これらのタンパク質がFXRと相互作用しないことを否定的に確認するものであった。
【0147】
参考文献
この出願を通して、様々な参考文献が、本発明が関連する技術分野の状況を記載している。これらの参考文献の開示は本明細書において、参照により本開示に組み込まれる。
【0148】
【表12】
【0149】
【表13】
【0150】
【表14】
【0151】
【表15】
【0152】
【表16】
【0153】
【表17】
【0154】
【表18】
【0155】
【表19】
【0156】
【表20】
【0157】
【表21】
【0158】
【表22】
【0159】
【表23】
【0160】
【表24】
【0161】
【表25】
【0162】
【表26】
【0163】
【表27】
【0164】
【表28】
【0165】
【表29】
【0166】
【表30】
【0167】
【表31】
【0168】
【表32】
【0169】
【表33】
【0170】
【表34】
【0171】
【表35】
【0172】
【表36】
【技術分野】
【0001】
本発明は、C型肝炎ウイルス(HCV)の感染を治療および/または予防するための化合物をスクリーニングするための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
C型肝炎ウイルス(HCV)の感染は、慢性化の割合が高いことにより特徴付けられ、世界中で1億7千万人に影響している。慢性的に感染した患者は、肝脂肪症、線維形成、および様々な程度のインスリン耐性に関連する、免疫メカニズムおよび代謝障害により本質的に媒介される肝障害を示す(1、2)。長期にわたり感染している患者は肝硬変および肝細胞癌を発症するリスクが高いが、多大な尽力にもかかわらず、HCV病理の分子的基盤は依然としてほとんど理解されていない。HCVのゲノムは、翻訳後に構造タンパク質(CORE、E1、E2、およびp7)ならびに非構造タンパク質(NS2、NS3、NS4A、NS4B、NS5A、およびNS5B)にプロセシングされるポリタンパク質をコードする、9.6kbのプラス鎖RNAである(3)。
【0003】
現在の治療法は、ペグ化インターフェロン(IFN)アルファおよびリバビリン(1−β−D−リボフラノシル−1,2,4−トリアゾール−3−カルボキサミド)の組み合わせにある。しかし、C型肝炎ウイルス(HCV)の感染の転帰は個体間で多様であり、抗ウイルス治療に対する応答が持続する可能性は、ウイルスおよび宿主の特徴に依存する。HCVの天然に存在する変異体は、6個の主要な遺伝子型に分類される。ウイルスの遺伝子型は、治療の応答に関連する主要な因子の1つである。実際、持続性ウイルス学的著効(SVR)は、遺伝子型1に感染した患者の45%のみで達成され、一方、遺伝子型2または3に感染した患者の最大80%がSVRに達する(Feld JJ.ら、2005年)。
【0004】
したがって、HCV感染の他の治療が必要とされており、HCVタンパク質と宿主(ヒト)タンパク質との間の相互作用に焦点を当てることが奨励されている。細胞タンパク質ネットワークについての、また現在ではウイルス−細胞インタラクトームについての、迅速に増大する知識は、実際、ネットワークに基づいた疾患モデルを提供し始めている。ネットワークアプローチにおいて、ウイルス感染は、細胞インタラクトームの摂動として見ることができる。ウイルスの病原性は、細胞インタラクトームに連結したときにウイルスにより課せられるタンパク質ネットワークに対する新たな制約の発現として現れる。「感染したネットワーク」において喪失しているか、脱調節されているか、または出現する位相的および機能的特性の同定は、感染の複雑な系の分析に対する主要な課題となる。しかし、ヒトタンパク質とウイルスタンパク質との間の相互作用は、依然として完全には記載されていない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、HCV感染を治療および/または予防するための化合物をスクリーニングするための方法であって、
a)ファルネソイドX受容体(FXR)とウイルスHCVタンパク質NS3またはNS5Aとの間の相互作用を阻害する候補化合物の能力を決定するステップ、
b)前記ウイルスファルネソイドX受容体(FXR)と前記ウイルスタンパク質との間の前記相互作用を阻害する候補化合物を選択するステップ
を含む方法に関する。
【0006】
ファルネソイドX受容体(FXR)は、超生理学的レベルのファルネソールにより活性化される核受容体である(Formanら、Cell、1995年、81、687〜693)。FXRはまた、NR1H4、レチノイドX受容体相互作用タンパク質14(RIP14)、および胆汁酸受容体(BAR)としても知られている。
【0007】
本発明はまた、HCV感染を治療および/または予防するための化合物をスクリーニングするための方法であって、
a)ウイルスHCV COREタンパク質と、AGRN、BCAR1、CD68、COL4A2、DDX3Y、EGFL7、FBLN2、FBLN5、GAPDH、GRN、HIVEP2、HOXD8、LPXN、LRRTM1、LTBP4、MAGED1、MEGF6、MMRN2、NR4A1、PABPN1、PAK4、PLSCR1、RNF31、SETD2、SLC31A2、VTN、VWF、およびZNF271からなる群から選択されるヒトタンパク質との間の相互作用を阻害する候補化合物の能力を決定するステップ、ならびに
b)前記ウイルスHCV COREタンパク質と前記ヒトタンパク質との間の前記相互作用を阻害する候補化合物を選択するステップ
を含む方法に関する。
【0008】
本発明はまた、HCV感染を治療および/または予防するための化合物をスクリーニングするための方法であって、
a)ウイルスHCV E1タンパク質と、JUN、NR4A1、PFN1、SETD2、およびTMSB4Xからなる群から選択されるヒトタンパク質との間の相互作用を阻害する候補化合物の能力を決定するステップ、ならびに
b)前記ウイルスE1タンパク質と前記ヒトタンパク質との間の前記相互作用を阻害する候補化合物を選択するステップ
を含む方法に関する。
【0009】
本発明はまた、HCV感染を治療および/または予防するための化合物をスクリーニングするための方法であって、
a)ウイルスHCV E2タンパク質と、HOXD8、ITGB1、KIAA1411、LOC730765、NR4A1、PSMA6、SETD2、およびSMEK2からなる群から選択されるヒトタンパク質との間の相互作用を阻害する候補化合物の能力を決定するステップ、ならびに
b)前記ウイルスE2タンパク質と前記ヒトタンパク質との間の前記相互作用を阻害する候補化合物を選択するステップ
を含む方法に関する。
【0010】
本発明はまた、HCV感染を治療および/または予防するための化合物をスクリーニングするための方法であって、
a)ウイルスHCV NS2タンパク質と、ADFP、APOA1、C7、FBLN5、HOXD8、NR4A1、POU3F2、RPL11、RPN1、SETD2、SMURF2、およびTRIM27からなる群から選択されるヒトタンパク質との間の相互作用を阻害する候補化合物の能力を決定するステップ、ならびに
b)前記ウイルスNS2タンパク質と前記ヒトタンパク質との間の前記相互作用を阻害する候補化合物を選択するステップ
を含む方法に関する。
【0011】
本発明はまた、HCV感染を治療および/または予防するための化合物をスクリーニングするための方法であって、
a)ウイルスHCV NS3タンパク質と、sep−10、A1BG、ABCC3、ACTN1、ACTN2、AEBP1、AHCY、AHSG、ALB、ANKRD12、ANKRD28、APOA1、APOA2、ARFIP2、ARG1、ARHGDIA、ARHGEF6、ARNT、ARS2、ASXL1、ATP5H、AZGP1、B2M、BCAN、BCKDK、BCL2A1、BCL6、BCR、BZRAP1、C10orf18、C10orf6、C12orf41、C14orf173、C16orf7、C1orf165、C1orf94、C1S、C9orf30、CALCOCO2、CAT、CBY1、CCDC21、CCDC37、CCDC52、CCDC66、CCDC95、CCHCR1、CCNDBP1、CD5L、CDC23、CELSR2、CENPC1、CEP152、CEP192、CES1、CFP、CHPF、COL3A1、CORO1B、COX3、CSNK2B、CTGF、CTSD、CTSF、CXorf45、DEAF1、DEDD2、DES、DLAT、DOCK7、DPF1、DPP7、ECHS1、EEF1A1、EFEMP1、EFEMP2、EIF1、EIF4ENIF1、FAM120B、FAM62B、FAM65A、FAM96B、FBF1、FBLN1、FBLN2、FBLN5、FBN1、FBN3、FES、FGA、FGB、FIGNL1、FLAD1、FLJ11286、FN1、FRMPD4、FRS3、FTH1、FUCA2、GAA、GBP2、GC、GFAP、GNB2、GON4L、HIVEP2、HOMER3、HP、HTRA1、IFI44、IQWD1、ITCH、ITGB4、JAG2、JUN、KHDRBS1、KIAA1012、KIAA1549、KIF17、KIF7、KNG1、KPNA1、KPNB1、L3MBTL3、LAMA5、LAMB2、LAMC3、LDB1、LOC728302、LRRC7、LRRCC1、LTBP4、LZTS2、MAGED1、MAPK7、MARCO、MASP2、MEGF8、MLLT4、MLXIP、MORC4、MORF4L1、MPDZ、MVP、MYL6、NAP1L1、NCAN、NDC80、NEFL、NEFM、NELL1、NELL2、NID1、NID2、NOTCH1、N−PAC、NUCB1、NUP133、NUP62、OBSCN、ORM1、OTC、PARP2、PARP4、PCYT2、PDE4DIP、PDLIM5、PGM1、PICK1、PKNOX1、PLEKHG4、PNPLA8、PNPT1、POLDIP2、PRG4、PRRC1、PSMA6、PSMB9、PSME3、PTPRF、PTPRN2、RABEP1、RAI14、RASAL2、RBM4、RCN3、RGNEF、RICS、RING1、RINT1、RLF、RNF31、ROGDI、RP11−130N24.1、RSHL2、RUSC2、SBF1、SDCCAG8、SECISBP2、SELO、SERTAD1、SESTD1、SF3B2、SGCB、SIAH1、SLIT1、SLIT2、SLIT3、SMARCE1、SMURF2、SNX4、SPOCK3、SPON1、SPP2、SRPX2、SSX2IP、STAB1、STAT3、STRAD、SVEP1、SYNE1、SYNPO2、TAF1、TAF15、TBC1D2B、TBN、TBXAS1、TF、TGFB1I1、TH1L、THAP1、TMEM63B、TPST2、TPT1、TRIM23、TRIM27、TRIO、TRIP11、TXNDC11、UBE1C、USHBP1、UXT、VCAN、VIM、VWF、WDTC1、XAB2、XRN2、YY1AP1、ZADH1、ZBTB1、ZCCHC7、ZHX3、ZMYM2、ZNF281、ZNF410、ZNF440、ZXDC、およびZZZ3、APOA1、およびDNAJB1からなる群から選択されるヒトタンパク質との間の相互作用を阻害する候補化合物の能力を決定するステップ、ならびに
b)前記ウイルスNS3タンパク質と前記ヒトタンパク質との間の前記相互作用を阻害する候補化合物を選択するステップ
を含む方法に関する。
【0012】
本発明はまた、HCV感染を治療および/または予防するための化合物をスクリーニングするための方法であって、
a)ウイルスHCV NS4Aタンパク質と、CREB3、ELAC2、HOXD8、NR4A1、TRAF3IP3、UBQLN1、APOA1、およびDNAJB1からなる群から選択されるヒトタンパク質との間の相互作用を阻害する候補化合物の能力を決定するステップ、ならびに
b)前記ウイルスNS4Aタンパク質と前記ヒトタンパク質との間の前記相互作用を阻害する候補化合物を選択するステップ
を含む方法に関する。
【0013】
本発明はまた、HCV感染を治療および/または予防するための化合物をスクリーニングするための方法であって、
a)ウイルスHCV NS4Bタンパク質と、APOA1、ATF6、KNG1、およびNR4A1からなる群から選択されるヒトタンパク質との間の相互作用を阻害する候補化合物の能力を決定するステップ、ならびに
b)前記ウイルスNS4Bタンパク質と前記ヒトタンパク質との間の前記相互作用を阻害する候補化合物を選択するステップ
を含む方法に関する。
【0014】
本発明はまた、HCV感染を治療および/または予防するための化合物をスクリーニングするための方法であって、
a)ウイルスHCV NS5Aタンパク質と、AARS2、ABCC3、ACLY、ACTB、ALDOB、APOB、ARFIP1、ASXL1、AXIN1、C10orf30、C9orf23、CADPS、CADPS2、CCDC100、CCDC90A、CCT7、CEP250、CEP63、CES1、CFH、COL3A1、DDX5、DNAJA3、EFEMP1、EIF3S2、ETFA、FGB、FHL2、GLTSCR2、GOLGA2、GPS2、HRSP12、IGLL1、ITGAL、LDHD、LIMS2、LOC374395、MAF、MBD4、MKRN2、MOBK1B、MON2、NAP1L1、NFE2、NUCB1、OS9、PARVG、PMVK、POMP、PPP1R13L、PSMB8、PSMB9、RLF、RPL18A、RRBP1、SHARPIN、SMYD3、SORBS2、SORBS3、THBS1、TMF1、TP53BP2、TRIOBP、TST、TXNDC11、UBASH3A、UBC、USP19、VPS52、ZGPAT、ZH2C2、ZNF135、ZNF350、ZNF646、ZNHIT1、およびZNHIT4からなる群から選択されるヒトタンパク質との間の相互作用を阻害する候補化合物の能力を決定するステップ、ならびに
b)前記ウイルスNS5Aタンパク質と前記ヒトタンパク質との間の前記相互作用を阻害する候補化合物を選択するステップ
を含む方法に関する。
【0015】
本発明はまた、HCV感染を治療および/または予防するための化合物をスクリーニングするための方法であって、
a)ウイルスHCV NS5Bタンパク質と、APOA1、APOC3、CCNDBP1、CEP250、CEP68、CTSF、HOXD8、MGC2752、MOBK1B、OS9、OTC、PKM2、PSMB9、SETD2、SHARPIN、TAGLN、およびTUBB2Cからなる群から選択されるヒトタンパク質との間の相互作用を阻害する候補化合物の能力を決定するステップ、ならびに
b)前記ウイルスNS5Bタンパク質と前記ヒトタンパク質との間の前記相互作用を阻害する候補化合物を選択するステップ
を含む方法に関する。
【0016】
本発明はまた、HCV感染を治療および/または予防するための化合物をスクリーニングするための方法であって、
a)ウイルスHCV p7タンパク質と、CREB3、FBLN2、FXYD6、LMNB1、RNUXA、SLC39A8、SLIT2、UBQLN1、およびUBQLN4からなる群から選択されるヒトタンパク質との間の相互作用を阻害する候補化合物の能力を決定するステップ、ならびに
b)前記ウイルスHCV p7タンパク質と前記ヒトタンパク質との間の前記相互作用を阻害する候補化合物を選択するステップ
を含む方法に関する。
【0017】
発明の詳細な説明
定義
「C型肝炎ウイルス」または「HCV」という用語は、本明細書において、その病原性株が非A非B型肝炎としても知られているC型肝炎を生じさせるウイルス種を定義するために用いられる。
【0018】
全てのヒトおよびHCVの遺伝子およびタンパク質を表1に定義する。
【0019】
【表1】
【0020】
【表2】
【0021】
【表3】
【0022】
【表4】
【0023】
【表5】
【0024】
【表6】
【0025】
【表7】
【0026】
【表8】
【0027】
【表9】
【0028】
スクリーニング方法:
本発明は、HCV感染を治療および/または予防するための化合物をスクリーニングするための方法であって、
a)上記のウイルスHCVタンパク質とヒトタンパク質との間の相互作用を阻害する候補化合物の能力を決定するステップ、ならびに
b)前記ウイルスタンパク質と前記ヒトタンパク質との間の前記相互作用を阻害する候補化合物を選択するステップ
を含む方法に関する。
【0029】
1つの実施形態において、ステップb)は、前記HCVタンパク質と前記ヒトタンパク質との間の相互作用を阻害するための前記候補化合物の能力を明らかにするかまたはしない物理的値を得ること、および前記値を、前記候補化合物の不存在下で行った同一のアッセイにおいて得られた標準的な物理的値と比較することにある。上述した「物理的値」は、実施される結合アッセイに応じて様々な種類のものであり得るが、特に、吸光値、放射性シグナル、および蛍光シグナルの強度値を包含する。物理的値を標準的な物理的値と比較した後であれば、前記候補化合物が前記HCVタンパク質と前記ヒトタンパク質との間の結合を阻害することが決定され、そしてその候補はステップb)で正の選択をされる。
【0030】
HCVタンパク質とヒトタンパク質との間の相互作用を阻害する化合物は、HCVタンパク質またはヒトタンパク質のいずれかに結合するそのような化合物を包含するが、それは、前記目的の化合物の結合がそれによりHCVタンパク質とヒトタンパク質との間の相互作用を妨害するという条件に限ったものである。
【0031】
標識ポリペプチド:
1つの実施形態において、本発明の任意のタンパク質は、検出可能な分子で標識される。
【0032】
本発明によれば、前記検出可能な分子は、分光的、光化学的、生化学的、免疫化学的、または化学的手段により検出可能な任意の化合物または物質からなり得る。例えば、有用な検出可能な分子には、放射性物質(32P、25S、3H、もしくは125Iを含むものを含む)、蛍光色素(5−ブロモデソシルジン、フルオレセイン、アセチルアミノフルオレン、もしくはジゴキシゲニンを含む)、蛍光タンパク質(GFPおよびYFPを含む)、または検出可能なタンパク質もしくはペプチド(ビオチン、ポリヒスチジン尾部、もしくはHA抗原、FLAG抗原、c−myc抗原、およびDNP抗原などの他の抗原タグを含む)が含まれる。
【0033】
本発明によれば、検出可能な分子は、目的の前記アミノ酸配列の外側に位置するアミノ酸残基に位置するか、または前記残基に結合し、それにより、前記ポリペプチド間の結合、または前記候補化合物および/もしくは前記ポリペプチドのいずれかの間の結合に対する任意の人為的影響を最小にするかまたは予防する。
【0034】
別の特定の実施形態において、本発明のポリペプチドはGSTタグ(グルタチオンS−トランスフェラーゼ)と融合される。この実施形態において、前記融合タンパク質のGST部分を検出可能な分子として用いることができる。前記融合タンパク質において、GSTは、N末端またはC末端のいずれかに位置し得る。検出可能なGST分子は、標識抗GST抗体を含む抗GST抗体とその後に接触すると検出され得る。様々な検出可能な分子で標識された抗GST抗体は、容易に市場で入手することができる。
【0035】
別の特定の実施形態において、本発明のタンパク質はポリヒスチジンタグと融合される。前記ポリヒスチジンタグは、通常は少なくとも4つの連続したヒスチジン残基を含み、ほとんどの場合、少なくとも6個の連続したヒスチジン残基を含む。このようなポリペプチドタグはまた、最大20個の連続したヒスチジン残基を含み得る。前記ポリヒスチジンタグは、N末端またはC末端のいずれかに位置し得る。この実施形態において、ポリヒスチジンタグは、標識抗ポリヒスチジン抗体を含む抗ポリヒスチジン抗体とその後に接触すると検出され得る。様々な検出可能な分子で標識された抗ポリヒスチジン抗体は、容易に市場で入手することができる。
【0036】
さらなる実施形態において、本発明のタンパク質は、転写因子のDNA結合ドメインまたはアクチベータードメインのいずれかからなるタンパク質部分と融合される。転写の前記タンパク質部分ドメインは、N末端またはC末端のいずれかに位置し得る。このようなDNA結合ドメインは、大腸菌に由来するLexAタンパク質の周知のDNA結合ドメインからなり得る。さらに、転写因子の前記アクチベータードメインは、酵母に由来する周知のGal4タンパク質のアクチベータードメインからなり得る。
【0037】
ツーハイブリッドアッセイ:
本発明に従ったスクリーニング方法の1つの実施形態において、本発明のタンパク質は、転写因子の一部分を含む。前記アッセイにおいて、第1および第2の部分が共に結合することで、特異的な調節DNA配列に結合する機能的な転写因子が生じ、それが次にレポーターDNA配列の発現を誘発し、前記発現がさらに検出および/または測定される。前記レポーターDNA配列の発現の正の検出は、前記第1のHCVタンパク質および第2のヒトタンパク質が共に結合することにより、活性な転写因子が形成されることを意味する。
【0038】
通常、ツーハイブリッドアッセイにおいて、転写因子の第1および第2の部分はそれぞれ、(i)転写因子のDNA結合ドメイン、および(ii)転写因子のアクチベータードメインからなる。いくつかの実施形態において、DNA結合ドメインおよびアクチベータードメインは両方とも、同一の天然に存在する転写因子に由来する。いくつかの実施形態において、DNA結合ドメインおよびアクチベータードメインは異なる天然に存在する因子に由来するが、共に結合すると、これらの2つの部分は活性な転写因子を形成する。「部分」という用語は、転写因子について本明細書において用いられる場合、複数のタンパク質転写因子に関与する完全なタンパク質、ならびに完全な転写因子タンパク質の特定の機能的なタンパク質ドメインを包含する。
【0039】
したがって、本発明の1つの実施形態において、本発明のスクリーニング方法のステップa)は、
(1) − (i)上記に定義したHCVタンパク質と(ii)転写因子の第1のタンパク質部分との間の第1の融合ポリペプチド、
− (i)上記に定義したヒトタンパク質と(ii)転写因子の第2の部分との間の第2の融合ポリペプチド、
を発現する宿主細胞を提供するステップであって、
第1および第2のタンパク質部分が共に結合すると、前記転写因子がDNAの標的調節配列に対して活性となり、
前記宿主細胞が、(i)前記活性な転写因子によって活性化され得る調節DNA配列と、(ii)前記調節配列に作動可能に連結しているDNAレポート配列とを含む核酸も含む
ステップ、
(2)ステップ1)で得られた前記宿主細胞を試験される候補化合物と接触させるステップ、
(3)前記DNAレポーター配列の発現レベルを決定するステップ
を含む。
【0040】
上記のステップ(3)で決定された前記DNAレポーター配列の発現レベルは、ステップ(2)が省略された場合の前記DNAレポーター配列の発現と比較される。候補化合物の存在下における前記DNAレポーター配列の発現レベルが低いことは、前記候補化合物がHCVタンパク質とヒトタンパク質との間の結合を効果的に阻害すること、および前記候補化合物がスクリーニング方法のステップb)において正の選択をされ得ることを意味する。
【0041】
適切な宿主細胞には、限定はしないが、原核細胞(細菌など)および真核細胞(酵母細胞、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞など)が含まれる。しかし、好ましい宿主細胞は酵母細胞であり、より好ましくは、Saccharomyces cerevisiae細胞またはSchizosaccharomyces pombe細胞である。
【0042】
ツーハイブリッドアッセイの類似の系が当技術分野において周知であり、したがって、本発明に従ったスクリーニング方法を実施するために用いられ得る(Fieldsら、1989年;Vasavadaら、1991年;Fearonら、1992年;Dangら、1991年;Chienら、1991年、US5,283,173、US5,667,973、US5,468,614、US5,525,490、およびUS5,637,463を参照されたい)。例えば、これらの文献に記載されているように、Gal4アクチベータードメインを、本発明に従ったスクリーニング方法を実施するために用いることができる。Gal4は、2つの物理的に別のモジュールドメインからなり、その1つはDNA結合ドメインとして作用し、残りの1つは転写活性化ドメインとして機能する。前述の文献に記載されている酵母発現系は、この特性を利用したものである。Gal4活性化プロモーターの制御下でのGal1−LacZレポーター遺伝子の発現は、タンパク質−タンパク質相互作用を介したGal4活性の再構成に依存する。相互作用するポリペプチドを含むコロニーは、β−ガラクトシダーゼに対する発色基質を用いて検出される。タンパク質−タンパク質相互作用を同定するための競合キット(MATCHMAKER、商標)は、Clontechから市販されている。
【0043】
したがって、1つの実施形態において、上記で定義された第1のHCVタンパク質はGal4のDNA結合ドメインに融合され、上記で定義された第2のヒトタンパク質はGal4の活性化ドメインに融合される。
【0044】
前記検出可能なマーカー遺伝子の発現は、産生される対応する特異的mRNAの量を定量することにより評価することができる。しかし、通常は、検出可能なマーカー遺伝子の配列は検出可能なタンパク質をコードしており、その結果、前記検出可能なマーカー遺伝子の発現レベルは、産生される対応するタンパク質の量を定量することにより評価される。mRNAまたはタンパク質の量を定量するための技術は、当技術分野において周知である。例えば、調節配列の制御下に置かれた検出可能なマーカー遺伝子は、上述のβ−ガラクトシダーゼからなり得る。
【0045】
ウェスタンブロッティング:
別の1つの実施形態において、ステップa)は、上記で定義された第1のHCVタンパク質および第2のヒトタンパク質の混合物を、試験される候補化合物の存在下または不存在下でゲル移動アッセイに供し、その後、前記ポリペプチド間に形成された複合体の検出を行うことにより前記ポリペプチドの全ての結合を測定するステップを含む。ゲル移動アッセイは、当業者によって知られているようにして実施することができる。
【0046】
したがって、本発明の1つの実施形態において、本発明のスクリーニング方法のステップa)は、
(1)上記で定義された第1のHCVタンパク質および第2のヒトタンパク質を提供するステップ、
(2)試験される候補化合物を前記ポリペプチドに接触させるステップ、
(3)ステップ(2)で得られた前記ポリペプチドおよび前記候補化合物を有する適切な移動基質のゲル移動アッセイを実施するステップ、
(4)ステップ(3)で実施された移動アッセイにおいて前記ポリペプチド間で形成された複合体を検出および定量するステップ
を含む。
【0047】
次に、タンパク質間で形成された複合体の存在または量を、試験される候補化合物の不存在下でアッセイを実施した場合に得られる結果と比較する。したがって、タンパク質間の複合体が検出されない場合、あるいは、これらの複合体が、候補化合物の不存在下で得られる量と比較して少ない量で存在する場合、候補化合物はスクリーニング方法のステップb)で正の選択をされ得る。
【0048】
第1および第2のタンパク質の間で形成される複合体は特定の明らかな分子量を有するため、前記2つのタンパク質間で形成される複合体の検出は、移動ゲルを適切な色素で染色すること、そして分析されるタンパク質に対応するタンパク質バンドを決定することにより容易に実施することができる。ゲルにおけるタンパク質の染色は、標準的なクマシーブリリアントブルー(もしくはPAGEブルー)、アミドブラック、または様々な種類の銀染色試薬を用いて行うことができる。ドデシル(ラウリル)硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲルなどの適切なゲルが、当技術分野において周知である。通常の様式において、ウェスタンブロッティングアッセイが当技術分野において周知であり、広く記載されている(Rybickiら、1982年;Towbinら、1979年;Kurienら、2006年)。
【0049】
特定の実施形態において、ゲル移動アッセイに供されるタンパク質に対応するタンパク質バンドは、特異的な抗体によって検出することができる。HCVタンパク質に対する抗体およびヒトタンパク質に対する特異的な抗体の両方を用いることができる。
【0050】
別の実施形態において、前記2つのタンパク質は、上記の検出可能な抗原で標識される。したがって、タンパク質バンドは、前記検出可能な抗原に対する特異的な抗体によって検出することができる。好ましくは、HCVタンパク質に結合する検出可能な抗原は、ヒトタンパク質に結合する抗原とは異なる。例えば、第1のHCVタンパク質は検出可能なGST抗原に融合され得、第2のヒトタンパク質はHA抗原と融合され得る。そして、2つのタンパク質間で形成されたタンパク質複合体は、それぞれGST抗原およびHA抗原に対する抗体で定量および決定され得る。
【0051】
バイオセンサーアッセイ:
別の実施形態において、ステップa)は、Edwardsら(1997年)およびSzaboら(1995年)により記載されているような光バイオセンサーの使用を含んでいた。この技術により、標識された分子を必要とすることなく、分子間の相互作用をリアルタイムで検出することが可能になる。この技術は実際、表面プラズモン共鳴(SPR)現象に基づくものである。簡潔に述べると、第1のタンパク質パートナーが表面(カルボキシメチルデキストランマトリクスなど)に付着する。次に、第2のタンパク質パートナーが、試験される候補化合物の存在下または不存在下で、事前に固定された第1のパートナーと共にインキュベートされる。次に、前記タンパク質パートナー間の、結合レベルを含む結合、または結合の不存在が検出される。この目的のために、光ビームが、試験される試料を含まない基質の表面領域側に向けられ、前記表面により反射される。SPR現象により、角度および波長の組み合わせで反射光の強さが低減する。第1および第2のタンパク質パートナーの結合により、基質表面での屈折率が変化し、この変化がSPRシグナルにおける変化として検出される。
【0052】
アフィニティークロマトグラフィー:
本発明の別の1つの実施形態において、スクリーニング方法には、アフィニティークロマトグラフィーの使用が含まれる。
【0053】
上記のスクリーニング方法において用いるための候補化合物はまた、上記で定義された(i)第1のHCVタンパク質または(ii)第2のヒトタンパク質が当業者に周知の技術に従って事前に上に固定されている任意のクロマトグラフィー基質を用いる、任意の免疫アフィニティークロマトグラフィー技術によって選択することができる。簡潔に述べると、上記で定義されたHCVタンパク質またはヒトタンパク質は、アガロースであるAffi Gel(登録商標)などの適切なカラムマトリクスまたは当業者に有名な他のマトリクスへの化学的結合を含む従来の技術を用いてカラムに付着させることができる。この方法のいくつかの実施形態において、アフィニティーカラムは、上記で定義されたHCVタンパク質またはヒトタンパク質がグルタチオン−s−トランスフェラーゼ(GST)に融合されているキメラタンパク質を含む。次に、候補化合物を、アフィニティーカラムのクロマトグラフィー基質に、前記第1および第2のタンパク質の間の他のタンパク質より前に、それと同時に、または連続して接触させる。洗浄した後、クロマトグラフィー基質を溶出し、回収された溶出溶液を、後に適用された前記第1または第2のタンパク質の検出および/または定量により分析し、それにより、候補化合物が(i)第1のHCVタンパク質と(ii)第2のヒトタンパク質との間の結合を減少させているかどうか、および/またはその減少の程度を決定する。
【0054】
蛍光アッセイ:
本発明に従ったスクリーニング方法の別の1つの実施形態において、上記で定義された第1のHCVタンパク質および第2のヒトタンパク質は、蛍光分子または蛍光基質で標識される。したがって、上記で定義された第1のHCVタンパク質と第2のヒトタンパク質との間の結合に対する、試験される候補化合物の潜在的な改変効果が、蛍光の定量により決定される。
【0055】
例えば、上記で定義された第1のHCVタンパク質および第2のヒトタンパク質は、上記のGFPまたはYFPなどの自己蛍光ポリペプチドと融合され得る。上記で定義された第1のHCVタンパク質および第2のヒトタンパク質はまた、蛍光エネルギー移動(FRET)アッセイを用いて前記タンパク質間の結合について蛍光の検出および/または定量を実施するために適した蛍光分子で標識され得る。上記で定義された第1のHCVタンパク質および第2のヒトタンパク質は、GFPまたはYFPなどの蛍光分子との化学的共有結合によって、蛍光分子で直接的に標識され得る。上記で定義された第1のHCVタンパク質および第2のヒトタンパク質はまた、例えば前記ポリペプチドと前記蛍光分子との間の非共有結合により、蛍光分子で間接的に標識され得る。実際、上記で定義された前記第1のHCVタンパク質および第2のヒトタンパク質は、受容体またはリガンドと融合することができ、前記蛍光分子は、対応するリガンドまたは受容体と融合することができ、その結果、蛍光分子は、前記第1のHCVタンパク質および第2のヒトタンパク質に非共有結合し得る。適切な受容体/リガンドの対は、ビオチン/ストレプトアビジンの対になったメンバーであり得るか、または、抗原/抗体の対になったメンバーの間で選択され得る。例えば、本発明に従ったタンパク質は、ポリヒスチジン尾部に融合することができ、蛍光分子は、ポリヒスチジン尾部に対する抗体と融合することができる。
【0056】
既に特定されているように、本発明に従ったスクリーニング方法のステップa)は、FRETを用いた蛍光アッセイによる、上記で定義されたHCVタンパク質とヒトタンパク質との間の相互作用を阻害する候補化合物の能力の決定を包含する。したがって、特定の実施形態において、上記で定義された第1のHCVタンパク質は第1のフルオロフォア物質で標識され、第2のヒトタンパク質は第2のフルオロフォア物質で標識される。第1のフルオロフォア物質は、第2のフルオロフォアの励起波長値とほぼ等しい波長値を有し得、それにより、前記第1および第2のタンパク質の結合は、第2のフルオロフォア物質の発光波長で発光される蛍光シグナルの強度を測定することにより検出される。あるいは、第2のフルオロフォア物質はまた、第1のフルオロフォアの発光波長値を有し得、それにより、前記および第2のタンパク質の結合は、第1のフルオロフォア物質の波長で発光される蛍光シグナルの強度を測定することにより検出される。
【0057】
用いられるフルオロフォアは、周知のランタニドキレートなどの様々な適切な種類のものであり得る。これらのキレートは、特異性のバイオアフィニティーアッセイにおいて化学的安定性、生物学的結合後の寿命の長い蛍光(0.1msを超える寿命)、および顕著なエネルギー移動を有していることが記載されている。文献US5,162,508は、ビピリジンクリプテートを開示している。TEKES型の光感作物質(EP0203047A1)およびテルピリジン型の光感作物質(EP0649020A1)を有するポリカルボキシレートキレート剤が知られている。文献WO96/00901は、カルボスチリルを感作物質として用いるジエチレントリアミンペンタ酢酸(DPTA)キレートを開示している。他の感作物質および他のトレーサー金属を有するさらなるDPTキレートが、診断または画像化の使用について知られている(例えば、EP0450742A1)。
【0058】
好ましい実施形態において、スクリーニング方法のステップa)で実施される蛍光アッセイは、文献WO00/01663またはUS6,740,756において記載されているような均一時間分解蛍光(HTRF)アッセイからなり、前記文献の両方の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。HTRFは、TRF(時間分解蛍光)およびFRETの両方の原理を用いる、TR−FRETに基づいた技術である。より具体的には、当業者であれば、Leblancら(2002年)において記載されている時間分解増幅クリプテート発光(TRACE)技術に基づいたHTRFアッセイを用い得る。HTRFドナーフルオロフォアは、ランタニドの長寿命の発光とクリプテートのカプセル封入の安定性とを組み合わせて有する、ユーロピウムクリプテートである。紅藻類から精製された修飾アロフィコシアニンであるXL665は、HTRFの主要なアクセプターフルオロフォアである。これらの2つのフルオロフォアが生体分子相互作用により一緒にされると、励起の間にクリプテートにより捕捉されるエネルギーの一部は620nmでの蛍光発光を介して放出され、一方、残りのエネルギーはXL665に移動する。このエネルギーは次に、665nmでの特異的な蛍光として、XL665により放出される。665nmの光は、ユーロピウムを有するFRETを介してのみ発光される。ユーロピウムクリプテートは常にアッセイ内に存在するため、620nmの光は、生体分子の相互作用がXL665を近接させない場合であっても検出される。
【0059】
したがって、1つの実施形態において、スクリーニング方法のステップa)はしたがって、
(1)− 第1の抗原に融合された第1のHCVタンパク質、
− 第2の抗原に融合された第2のヒトタンパク質、
− 試験される候補化合物
を含むプレアッセイ試料を接触させるステップ、
(2)ステップ(1)の前記プレアッセイ試料に
− 前記第1の抗原に対して特異的な、ヨーロピアンクリプテートで標識された少なくとも1つの抗体、
− 前記第2の抗原に対するXL665で標識された少なくとも1つの抗体
を添加するステップ、
(3)前記ヨーロピアンクリプテートの励起波長でステップ(2)のアッセイ試料を照射するステップ、
(4)XL665の発光波長で発光される蛍光シグナルを検出および/または定量するステップ、
(5)ステップ(4)で得られた蛍光シグナルを、ステップ(1)のプレアッセイ試料が試験される候補化合物の不存在下で調製される場合に得られる蛍光と比較するステップ
を含み得る。
【0060】
上記のステップ(5)において、蛍光シグナルの強度値が、ステップ(1)のプレアッセイ試料が試験される候補化合物の不存在下で調製される場合に見られる蛍光シグナルの強度値よりも低い場合、候補化合物は、スクリーニング方法のステップb)で正の選択をされ得る。
【0061】
ヨーロピアンクリプテートで標識されたかまたはXL665で標識された抗体は、それが含む、GST、ポリヒスチジン尾部、DNP、c−myx、HA抗原、およびFLAGを含む、目的の様々な抗原に対するものであり得る。このような抗体は、CisBio(Bedfors、MA、USA)から市販されているもの、とりわけそれぞれ61GSTKLAまたは61HISKLBと呼ばれるものを包含する。
【0062】
候補化合物:
本発明の1つの実施形態によれば、本発明の候補化合物は、事前に合成された化合物のライブラリー、またはデータベースにおいて構造が決定されている化合物のライブラリー、またはデノボ合成されている化合物のライブラリーから選択され得る。
【0063】
候補化合物は、(a)タンパク質またはペプチド、(b)核酸、および(c)有機または化学的化合物の群から選択され得る。具体的には、事前に選択された候補核酸のライブラリーは、文献US5,475,096およびUS5,270,163において記載されているSELEX方法を実施することにより得ることができる。さらに具体的には、候補化合物は、上記の前記HCVタンパク質および前記ヒトタンパク質に対する抗体の群から選択され得る。
【0064】
インビボでのスクリーニング方法:
本明細書において先に記載したインビトロでのスクリーニングの実施形態のいずれか1つの最後に正の選択をされた候補化合物を、その抗HCV生物学的特性をさらにアッセイすることを考慮したさらなる選択ステップに供することができる。
【0065】
本発明のタンパク質の生産:
本発明のタンパク質は、限定はしないが、単独のまたは組み合わせた、任意の化学的、生物学的、遺伝的、または酵素的技術などの、それ自体が当技術分野において知られている任意の技術によって生産することができる。
【0066】
所望の配列のアミノ酸配列を知ることで、当業者は、標準的な技術によって前記タンパク質を容易に生産することができる。例えば、前記タンパク質は、周知の固相方法を用いて、好ましくは、市販されているペプチド合成装置(Applied Biosystems、Foster City、Californiaにより製造されているものなど)を製造者の指示に従って用いて合成することができる。
【0067】
あるいは、本発明のタンパク質は、当技術分野において現在周知の組換えDNA技術によって合成することができる。例えば、これらの断片は、所望のタンパク質をコードするDNA配列を発現ベクターに組み込み、このようなベクターを、所望のタンパク質を発現するであろう適切な真核宿主または原核宿主内に導入した後に、DNA発現産物として得ることができ、前記宿主から、周知の技術を用いて前記断片を後に単離することができる。
【0068】
宿主/発現ベクターの広範な組み合わせが、本発明のポリペプチドをコードする核酸の発現において採用される。使用され得る有用な発現ベクターには、例えば、染色体断片、非染色体断片、および合成DNA配列が含まれる。適切なベクターには、限定はしないが、SV40およびpcDNAの誘導体、ならびに既知の細菌プラスミド、例えばcol EI、pCR1、pBR322、pMal−C2、pET、pGEX、pMB9、およびその誘導体、RP4などのプラスミド、NM989などのファージIの多数の誘導体などのファージDNA、ならびにM13および糸状一本鎖ファージDNAなどの他のファージDNA;2ミクロンプラスミドまたは2ミクロンプラスミドの誘導体などの酵母プラスミド、ならびにセントロメアおよび組み込み性の酵母シャトルベクター;昆虫細胞または哺乳動物細胞において有用なベクターなどの真核細胞において有用なベクター;ファージDNAまたは発現制御配列を採用するために改変されているプラスミドなどの、プラスミドとファージDNAとの組み合わせに由来するベクターなどが含まれる。
【0069】
したがって、哺乳動物および典型的にはヒトの細胞、ならびに細菌、酵母、真菌、昆虫、線虫、および植物の細胞が本発明において用いられ、本明細書において定義される核酸または組換えベクターによってトランスフェクトされ得る。適切な細胞の例には、限定はしないが、VERO細胞、ATCC番号CCL2などのHELA細胞、ATCC番号CCL61などのCHO細胞系、COS−7細胞およびATCC番号CRL1650の細胞などのCOS細胞、W138、BHK、HepG2、ATCC番号CRL6361などの3T3、A549、PC12、K562細胞、293T細胞、ATCC番号CRL1711などのSf9細胞、ならびにATCC番号CCL70などのCv1細胞が含まれる。本発明において用いることができる他の適切な細胞には、限定はしないが、大腸菌などの原核宿主細胞株(例えば、DH5−[アルファ]株)、Bacillus subtilis、Salmonella typhimurium、またはPseudomonas属、Streptomyces属、およびStaphylococcus属の株が含まれる。本発明において用いることができるさらなる適切な細胞には、Saccharomyces cerevisiaeなどのSaccharomycesのものなどの酵母細胞が含まれる。
【0070】
治療的方法および使用:
さらなる態様において、本発明は、上記のHCVタンパク質とヒトタンパク質との間の相互作用を阻害する治療有効量の化合物を、治療を必要とする対象に投与することを含む、HCV感染を治療するかまたはHCV感染を予防するための方法を提供する。前記化合物は、本発明のスクリーニング方法によって同定することができる。
【0071】
本発明の背景において、本明細書において用いられる「治療する」または「治療」という用語は、このような用語が適用される障害もしくは状態、または、肝障害、肝脂肪症に関連する代謝障害、線維形成、およびインスリン耐性などの、このような障害もしくは状態の1つもしくは複数の症状を回復に向かわせること、軽減すること、その進行を阻害すること、または予防することを意味する。
【0072】
本発明によれば、「患者」または「治療を必要とする対象」という用語は、HCV感染に罹患しているかまたは罹患していると考えられるヒトまたはヒト以外の哺乳動物を意味する。
【0073】
本発明の「治療有効量の」化合物は、任意の医療に適用可能な妥当な利益/リスク比の、HCVの感染を治療するために十分な量の化合物を意味する。しかし、本発明の化合物および本発明の組成物の毎日の使用量の全体は信頼できる医学的判断の範囲内で主治医によって決定されることが理解されよう。あらゆる特定の患者にとっての具体的な治療有効な用量レベルは、治療される障害およびその障害の重症度、採用される特定の化合物の活性、採用される特定の組成物、患者の年齢、体重、全体的な健康、性別、および食事、採用される特定の化合物の投与時間、投与経路、および排出速度、治療の期間、採用される特定の化合物と組み合わせてまたはそれと同時に用いられる薬剤、ならびに医薬分野において周知の類似の因子を含む、様々な因子に依存する。例えば、化合物の用量を、所望の治療効果を得るために必要な用量よりも低いレベルで開始し、所望の効果が得られるまで用量を徐々に増大させることは、当技術分野の技術の範囲内に十分含まれる。
【0074】
別の1つの実施形態において、本発明は、HCV感染を治療することまたはHCV感染を予防することを目的とした医薬品の製造のための、上記のHCVタンパク質とヒトタンパク質との間の相互作用を阻害する少なくとも1つの化合物の使用に関する。
【0075】
上記のHCVタンパク質とヒトタンパク質との間の相互作用を阻害する化合物は、薬学的に許容可能な賦形剤と組み合わせることができる。「薬学的に」または「薬学的に許容可能な」は、哺乳動物、とりわけヒトに必要に応じて投与されたときに副作用、アレルギー反応、または他の有害な反応をもたらさない分子実体および組成物について言う。薬学的に許容可能な担体または賦形剤は、任意のタイプの無毒性の固体、半固体、または液体のフィラー、希釈剤、カプセル封入材料、または製剤補助剤を言う。
【0076】
以下の図面および実施例を考慮して本発明をさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】HCV相互作用ネットワークを示す図である。
【0078】
A.命名。V:ウイルスタンパク質(黒のノード)。HHCV:HCVタンパク質と相互作用するヒトタンパク質(赤のノード)。HNOT−HCV:HCVタンパク質と相互作用しないヒトタンパク質(青のノード)。V−HHCV:HCV−ヒトタンパク質相互作用(赤のエッジ)。HHCV−HHCV:HCVと相互作用するヒトタンパク質間の相互作用(青のエッジ)。H−H:ヒト−ヒトタンパク質相互作用(青のエッジ)。V−HHCVは、HCVタンパク質とヒトタンパク質との間の相互作用を表す(黒の四角)。HHCV−HHCVは、ウイルスタンパク質と相互作用するヒトタンパク質からなる(赤の四角)。H−Hネットワークは、ヒトタンパク質間の相互作用を表す(青の四角)。
【0079】
B.タンパク質およびHCV−ヒト相互作用ネットワークにおける相互作用の数。
HCVタンパク質と相互作用するヒトタンパク質(HHCV)の数、およびタンパク質−タンパク質相互作用(V−HHCV PPI)の対応する数。データは、本発明の酵母ツーハイブリッドスクリーン(IMAP Y2H)および文献をキュレーションした相互作用(IMAP LCI)について示されている。
【0080】
C.コアフィニティー精製アッセイによるY2H相互作用の検証。9回のco−APの正のアッセイが示されており、NS5A−SORBS2(1)、NS3−CALCOCO2(2)、NS5A−BIN1(3)、NS5A−MOBK1B(4)、NS5A−EFEMP1(5)、NS3−PSMB9およびNS5A−PSMB9(6)、NS5A−PPPIRI3L(7)、NS3−RASAL2(8)を表している。GSTタグ付けされたウイルスベイト(+)または陰性対照であるGST単独(−)でのプルダウンの後、細胞プレイを抗Flag抗体で同定する。抗GST抗体は、GST単独またはGSTタグ付けされたウイルスベイトのいずれかを同定する。細胞溶解物における細胞プレイの発現は、抗Flagにより制御される(最下部のパネル)。
【0081】
【図2】HCV−ヒト相互作用ネットワークのグラフィック表示である。
【0082】
A.H−Hネットワークのグラフィック表示。それぞれのノードはタンパク質を表し、それぞれのエッジは相互作用を表す。赤および青のノードはそれぞれHHCVおよびHNOT−HCVである。
【0083】
B.V−HHCV相互作用ネットワークのグラフィック表示。黒のノード:ウイルスタンパク質、赤のノード:ヒトタンパク質、赤のエッジ:ヒトタンパク質とウイルスタンパク質との間の相互作用(V−HHCV)、青のエッジ:ヒトタンパク質間の相互作用(HHCV−HHCV)。196個のタンパク質を含む最大の成分がネットワークの中央部に表されている。3つの他の連結した成分に属する細胞タンパク質の名称もまた表されている。
【0084】
【図3】HCV−ヒト相互作用ネットワークの位相分析を示す図である。
【0085】
A.H−HネットワークにおけるHおよびHHCVの位相分析。IMAP Y2Hデータセットから得られる全てのヒトタンパク質およびHHCVについて、程度(k)、媒介性(b)、および最短経路(l)を計算した。
【0086】
B.H−HネットワークにおけるHタンパク質およびHHCVタンパク質の程度および媒介性の分布。Hタンパク質(青)およびHHCVタンパク質(赤)の、標準化されたlog程度(左)およびlog媒介性(右)の分布。実線は、線形回帰のフィットを表す。垂直な点線は、程度および媒介性の値の平均を示す。それぞれのクラスは、従来の標準誤差と共に表されている。
【0087】
C.H−HネットワークにおけるHの程度および媒介性の相関関係。H−HネットワークにおけるHタンパク質の、標準化されたlog程度(x軸)およびlog媒介性(y軸)。黒の実線は、線形回帰のフィットを表す(R2=0.56)。水平および垂直な点線はそれぞれ、程度および媒介性の値の平均を示す。低い程度(LD)および高い程度(HD)のクラスを、平均の程度でのカットオフを用いることにより定義した。
【0088】
D.低いおよび高い程度のタンパク質についてのHNOT−HCVおよびHHCVの程度および媒介性の平均。上部:HNOT−HCV(青)およびHHCV(赤)の媒介性の平均(logスケール)を、LDおよびHDクラスについて示す。下部:HNOT−HCV(青)およびHHCV(赤)の程度の平均を、LDおよびHDクラスについて示す。従来の標準誤差閾値およびU検定のp値が表されている(***:p値<10−10、NS:有意性なし)。
【0089】
【図4】IJTネットワークを示す図である。
【0090】
A.IJTネットワークのグラフィック表示。KEGGアノテーションに従った、インスリン(青)、Jak/STAT(赤)、およびTGFβ(緑)経路のタンパク質(ノード)メンバー、ならびにそれらの相互作用(エッジ)が示されている(HCVタンパク質と相互作用するタンパク質が指定されている)。2つの経路により共有されるタンパク質は第2の色(ピンク、黄、および青緑)で示されている。灰色および黒のノードは、KEGG経路を連結しHCVタンパク質と相互作用する隣接物である(灰色:IMAP Y2Hデータセットから得られるタンパク質、黒:IMAP LCIデータセットから得られるタンパク質)。HCVと相互作用するがKEGG経路は連結しない隣接物は表されていない。論じられるタンパク質の例であるPLSCR1およびYY1は四角の中にある。インタラクティブな可視化のツールは補足的なファイルで提供される(ネットワークの可視化)。
【0091】
BおよびC.V−HHCVおよびIJTネットワークにおけるそれぞれのウイルスタンパク質の相対的寄与。3つの最も相互作用するウイルスタンパク質のパーセンテージを示す。CORE相互作用の51.3%は、IJTネットワークに集中している。
【0092】
【図5】HCVと接着斑との相互作用を示す図である。
【0093】
A.KEGGから採用された接着斑の略図(ID:Hs04510)。HHCVは、オレンジの四角で表されており、HNOT−HCVは青の四角で表されている。
【0094】
BおよびC.NS3およびNS5Aによる接着斑の摂動の機能的検証。
96ウェルプレートを様々な濃度のフィブロネクチン(B)またはポリ−L−リジン(C)で被覆した。NS2、NS3、NS3/4A、またはNS5Aを発現する293T細胞を、マトリクス上に30分間にわたり播種した。接着細胞をクリスタルバイオレットで染色した。FA50は、最大接着の半分に必要なマトリクス濃度である。値は、3つの独立した実験の平均をその標準偏差と共に表す。
【0095】
【図6】HCVのORFeomeを示す図である。HCVゲノム、およびY2Hのスクリーンのために設計されたORFの定義の略図。HCVのプラス鎖ゲノム(紫)は、10個のタンパク質に共翻訳的にプロセシングされるポリタンパク質(オレンジ)をコードする。赤:完全長タンパク質、青:ドメイン、黄+緑:NS4A+NS3キメラ融合体、ピンク:NS5A膜アンカー。それぞれの構築物のゲノムおよびポリタンパク質の位置が表に示される。
【0096】
【図7】H−HネットワークにおけるH、HHCV、およびHEBVタンパク質の程度および媒介性の分布を示す図である。Hタンパク質(青)、HHCV(赤)、およびHEBV(緑)のlog程度(左)およびlog媒介性(右)の分布。実線は線形回帰のフィットを表す。垂直な点線は、程度および媒介性の値の平均を示す。
【発明を実施するための形態】
【0097】
表S1:HHCVのリスト。
【0098】
HCVタンパク質は、それらのNCBIの成熟ペプチド生成物名に従って参照される(第1欄)。ヒトタンパク質は、それらの同族のNCBI遺伝子名および遺伝子IDと共に参照される(第2および3欄)。IMAP Y2H(スクリーニング方法に従ってIMAP1およびIMAP2)のISTの数が第4および5欄に示される。テキストマイニングおよびBINDデータベースに関連するPubMed IDから得られたIMAP LCI(文献をキュレーションした相互作用)が第6および7欄に示される。コアフィニティー精製(CoAP)またはY2Hペアワイズマトリクスの検証が第8および9欄に示される(+:IMAP検証、−:検証されず、NA:タンパク質発現の欠損またはGSTと直接的に相互作用する細胞タンパク質のためにアッセイ不可能)。
【0099】
表S2:2つ以上のウイルスタンパク質と相互作用するヒト細胞タンパク質のリスト。
【0100】
ヒトタンパク質は、それらの同族のNCBI遺伝子名と共に参照される(第1欄)。HCVタンパク質は、それらのNCBIの成熟ペプチド生成物名に従って参照される(第2欄)。データセットの由来源(IMAP Y2H、IMAP LCI、第3欄)。
【0101】
表S3:HCV−ヒトネットワークの位相分析
HCV−ヒトネットワークの連結された成分。
【0102】
V−HHCVサブネットワークの最大の成分のサイズおよび連結された成分の数を計算した(IMAPデータセット、第2欄)。観察された値の有意性を検定するために、本発明者らは、ランダムなサブネットワークを1000個のシミュレーションした後の最大の成分のサイズの平均および連結された成分の数の平均を計算した(IMAP Sim、第3欄)。観察された値とシミュレーションされた値との間の差異は非常に有意であった(***:p値<10−10)。
【0103】
ヒトインタラクトームにおけるHHCVタンパク質およびHEBVタンパク質の位相特性。
【0104】
完全なインタラクトーム(A)、信頼性の高いインタラクトーム(B、少なくとも2つのPMIDを有するかまたは2つの異なる方法によって検証されたPPIのみを含む)。タンパク質およびヒトインタラクトーム内に組み込まれ得るPPIの数がHHCVおよびHEBVについて示される。ヒトインタラクトーム内に存在するHHCVおよびHEBVのパーセンテージが、データセットの由来源に従って示される。程度(k)、媒介性(b)、および最短経路(l)の平均を、完全なおよび信頼性の高いインタラクトームの両方においてHHCVおよびHEBVについて計算した(25)。
【0105】
表S4:HHCVについてのKEGG経路の強化。
【0106】
過剰に表されたKEGG経路を、複数の検定調整の後に有意であると同定し(調整されたp値<5×10−2)、ウイルスタンパク質ごとに列挙する。それぞれの経路について、括弧内のIMAP Y2Hデータセットの相対的寄与と共に、HHCVの数が示される。黒の四角は、論じられている経路を強調するものである。
【0107】
表S5:IJTネットワークにおけるHCVタンパク質の分布および強化。
【0108】
A.それぞれのウイルスタンパク質についてのIJTネットワークにおけるHHCVの強化。HHCVの数がV−HHCVおよびIJTネットワークにおいて示される。IJTネットワークにおけるHHCVの強化を、それぞれのウイルスタンパク質についてフィッシャーの正確検定で検定した。関連するオッズ比およびp値が示される。
【0109】
B.それぞれのウイルスタンパク質についてのJak/STAT、TGFβ、およびインスリン経路におけるHHCVの強化。(KEGGデータベースにおいて定義されている)V−HHCVネットワークならびにJak/STAT、TGFβ、およびインスリン経路におけるHHCVの数が示される。Jak/STAT、TGFβ、およびインスリン経路におけるHHCVの強化を、それぞれのウイルスタンパク質についてフィッシャーの正確検定で検定した。関連するオッズ比およびp値が示される。
【0110】
C.それぞれのウイルスタンパク質についてのJak/STAT、TGFβ、およびインスリンの相互経路におけるHHCVの強化。相互経路は、2つまたは3つのKEGG経路を連結するHHCVとして定義される。HHCVの数が、V−HHCVネットワークならびにJak/STAT、TGFβ、およびインスリンの相互経路において示される。Jak/STAT、TGFβ、およびインスリンの相互経路におけるHHCVの強化を、それぞれのウイルスタンパク質についてフィッシャーの正確検定で検定した。関連するオッズ比およびp値が示される。
【実施例】
【0111】
<実施例1>
概説
C型肝炎ウイルスとヒトタンパク質との間の相互作用のプロテオームワイドなマッピングを実施して、細胞感染の包括的な見解を提供した。全部で314の、HCVタンパク質とヒトタンパク質との間のタンパク質−タンパク質相互作用を酵母ツーハイブリッドにより同定し、170の前記相互作用を文献マイニングにより同定した。再構築したヒトインタラクトーム内へのこのデータセットの組み込みにより、HCVと相互作用する細胞タンパク質が、非常に中心的で相互に連結されたタンパク質において強化されていることが示された。機能アノテーションに基づいた全体的な分析は、HCVにより標的化される細胞経路の強化を強調した。慢性的に感染した患者の頻繁な臨床障害に関連するタンパク質のネットワークを、インスリン、Jak/STAT、およびTGFβ経路をHCVにより標的化される細胞タンパク質と連結することにより構築した。COREタンパク質は、このネットワークの主要な摂動付与物質として現れた。接着斑を、HCV、主にNS3およびNS5Aタンパク質により影響される新たな機能として同定した。
【0112】
材料および方法:
HCVのORFeomeの構築。
【0113】
HCVゲノムは、構造タンパク質(CORE、E1、E2、およびp7)および非構造タンパク質(NS2、NS3、NS4A、NS4B、NS5A、およびNS5B)内の細胞プロテアーゼおよびウイルスプロテアーゼにより切断される1つのポリタンパク質をコードするプラス鎖RNA分子である(1)。全てのタンパク質を、euHCVdb設備(http://www.euhcvdb.ibcp.fr(2))を用いて、ドメインが設計されていないNS4Bを除いて、完全長およびドメインでクローニングした(図6)。融合NS4A−NS3タンパク質およびNS4A−NS3プロテアーゼドメインを構築した(3、4)。HCV遺伝子型1bである単離体con1(AJ238799)から得られる全ての27個のORFを(5)、ゲートウェイ組換えクローニング系においてクローニングした。それぞれのORFを、フォワードプライマーおよびリバースプライマーに融合したattB1.1およびattB2.1組換え部位を用いて(KODポリメラーゼ、Novagenを用いて)PCR増幅し、pDONR223内にクローニングした(6)。全てのエントリークローンを配列により検証した。
【0114】
酵母ツーハイブリッド(Y2H)ライブラリーのスクリーン。
【0115】
HCVのORFを、pDONR223から、酵母においてGal4−DB融合体として発現されるベイトベクター(pPC97)内に移した。2つの異なるスクリーニング方法を用いた(IMAP1およびIMAP2)。IMAP1およびIMAP2戦略の両方のために、またベイトが自己転写活性化レポーター遺伝子を構築することがあるため、SD−L−H培地に3−アミノトリアゾール(3−AT)を補った。この薬剤の適切な濃度は、3−ATの濃度を増大させながら補ったSD−L−H培地上でベイト株を成長させることにより決定した。膜アンカーを有さないNS5Aによる自己転写活性化は3−ATで滴定するには高すぎ、さらなる試験は行わなかった。IMAP1では、ベイトベクターをMAV203酵母株に導入し、ヒト脾臓および胎児脳の両方のAD−cDNAライブラリー(Invitrogen)を、記載されているような形質転換によりスクリーニングした(7)。最初に陽性であった全てのクローン(SD−W−L−H+3−AT上で選択された)を、2つのさらなるレポーター遺伝子であるLacZ(X−Gal比色分析)およびURA3(5−FOAを補った培地上での成長アッセイ)を用いたさらなる表現型アッセイにより試験した。3つの陽性表現型のうち少なくとも2つを示した陽性クローンを、新鮮な酵母内で再試験した。再試験しなかったクローンは廃棄した。AD−cDNAをPCR増幅し、インサートを配列決定して相互作用子を同定した。IMAP2のスクリーンを、AH109およびY187酵母株を用いて、酵母の接合によって実施した(Clontech(8))。ベイトベクターをAH109内に形質転換し(ベイト株)、ヒト脾臓および胎児脳のAC−cDNAライブラリー(Invitrogen)をY187内に形質転換した(プレイ株)。単一のベイト株をプレイ株と接合し、2倍体をSD−W−L−H+3−AT培地に播種した。陽性のクローンをこの選択培地上で15日間維持し、あらゆる汚染AD−cDNAプラスミドを除去した(9)。AD−cDNAをPCR増幅し、インサートを配列決定した。
【0116】
IST(相互作用子配列タグ)分析
本発明者らは、それぞれのISTをその天然のヒトゲノム転写産物に割り当てる生物情報学的パイプラインを開発した。まず、ISTを、従来の閾値である20を上回る品質スコア(1%未満の配列誤差)でPHRED(10、11)を用いてフィルタリングした。Gal4モチーフを検索し(GAL4−ADの最後の87塩基)、このモチーフの下流の配列をペプチドに翻訳し、BLASTPを用いてREFSEQ(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/RefSeq/)ヒトタンパク質配列データベース(2007年4月リリース)に対してアラインした。信頼性の低いアラインメント(E値>10−10、同一性<80%)および早期の停止コドンを含む配列を除去した。インフレームのタンパク質および質の高い配列のみをさらに検討した。
【0117】
組み込まれたヒトインタラクトームネットワーク(H−Hネットワーク)
物理的および直接的な異種分子間タンパク質−タンパク質相互作用のみを、BIND(12)、BioGRID(13)、DIP(14)、GeneRIF(15)、HPRD(16)、IntAct(17)、MINT(18)、およびReactome(19)から取り出した。NCBIの正式な遺伝子名を用いて、異なるゲノム参照データベース(すなわち、ENSEMBL、UNIPROT、NCBI、INTACT、HPRDなど)において定義されているタンパク質ACC、タンパク質ID、遺伝子名、記号、または別名を統一し、かつ単一の遺伝子についての異なるタンパク質アイソフォームの存在に起因する相互作用の冗長性を除去した。したがって、遺伝子名は、タンパク質を同定するためにテキストにおいて用いた。最後に、冗長ではないタンパク質−タンパク質相互作用のみを、ヒトインタラクトームデータセットを構築するために維持し、すなわち、AがBと相互作用し、かつBがAと相互作用する場合に、AとBとの相互作用のみが選択された。
【0118】
HCVタンパク質と細胞タンパク質との間の相互作用のテキストマイニング
細胞タンパク質とHCVタンパク質との間の2種分子間相互作用を記載する、文献をキュレーションした相互作用(LCI)を、専門家のキュレーションプロセスにより完成した自動テキストマイニングパイプラインを用いることによって、BINDデータベースおよびPubMed(2007年8月前の刊行物)から抽出した。テキストマイニングアプローチでは、「HCV」および「タンパク質相互作用」というキーワードに関連する全ての要約を取り出し、遺伝子名(NCBI遺伝子名および別名に基づく)ならびに相互作用の動詞(相互作用する、結合する、付着するなど)について、文作成プログラム(文の分割)および品詞タグ付けプログラムに供した(20)。専門家によるキュレーションのために、少なくとも1つのヒト遺伝子名、1つのウイルス遺伝子名、および1つの相互作用項の共起を示す文の優先順位を付けた。
【0119】
コアフィニティー精製による検証
59のIMAP Y2H相互作用のランダムなプールをCoAPアッセイのために選択した。細胞のORF(Y2Hスクリーンにおいて見られる相互作用ドメイン)を、KODポリメラーゼ(Toyobo)を用いて、ヒトcDNAライブラリーのプールまたはMGCのcDNAプラスミドからpDONR207(Invitrogen)内に、組換えクローニングによってクローニングした。配列決定による検証の後、これらのORFをゲートウェイ変換されたpCi−neo−3xFLAGに移し、HCVのORFをpDEST27内に移した(N末端におけるGST融合)。次に、HEK−293T細胞を、相互作用タンパク質をコードするそれぞれのプラスミド対によってコトランスフェクトした(JetPei、Polyplus)。対照は、3xFLAGタグ付けされたプレイに対するGSTのみである。トランスフェクションの2日後、細胞を回収し、溶解した(0.5%のNP−40、20mMのTris−HCl(pH8.0)、180mMのNaCl、1mMのEDTA、および完全プロテアーゼ阻害剤のカクテル)。細胞溶解物を、4℃で13000rpmで20分間にわたり遠心分離することにより清澄化し、可溶性タンパク質複合体をグルタチオンセファロース4Bビーズ(GE Healthcare)を用いて精製した。次に、ビーズを溶解緩衝液で4回十分に洗浄し、タンパク質をSDS−PAGE上で分離し、ニトロセルロース膜に移した。GSTタグ付けされたウイルスタンパク質および3xFLAGタグ付けされた細胞タンパク質を、抗GSTモノクローナル抗体(Covance)および抗FLAG M2モノクローナル抗体(Sigma)を用いて、標準的な免疫ブロッティング技術を用いて検出した(21)。
【0120】
ネットワークの可視化
Large Graph Layout(http://bioinformatics.icmb.utexas.edu/lgl/)を適用して、図2AにおけるH−Hネットワークを視覚化した。推測ツール(http://graphexploration.cond.org/)を用いて、図2BにおけるH−HHCV感染ネットワークおよび図4AにおけるIJTネットワークをグラフィック表示した。図2Bおよび4Aは、SF1.tar.gzにおけるGUESS相互作用フォーマット(GUESSデータフォーマット)において入手可能である(infection_network.propertiesおよびijt_network.properties)。
【0121】
位相分析
R(http://www.r−project.org/)統計環境を用いて統計分析を行い、igraph Rパッケージ(http://cneurocvs.rmki.kfki.hu/igraph/)を用いて、ネットワークの連結された成分、中心性(程度、媒介性)、および最短経路の測定値を計算した。
【0122】
連結された成分:
無方向的なネットワークにおいて、連結された成分は、最大の連結されたサブネットワークである。2つのノード間に経路が存在する場合に2つのノードは同一の連結された成分内にあり、かつ、2つのノードが同一の連結された成分内にあるのは、2つのノード間に経路が存在する場合のみである。本発明者らはまた、igraph Rパッケージに従って、他のタンパク質のいずれにも連結されていないタンパク質を、連結された成分に含めた。
【0123】
程度:
ノードの程度(k)は、ノードに伴うエッジの数である。ヒトタンパク質の程度の平均を計算し、全てのHHCVの程度の平均と比較した。
【0124】
最短経路:
最短経路の問題は、その構成要素であるエッジのウェイトの合計が最小化するような、2つのノード間の経路の発見である。最短経路(I、また測地線とも呼ばれる)を、グラフにおいて幅優先サーチを用いることによってここで計算する。エッジのウェイトはここでは用いておらず、すなわち、全てのエッジウェイトは1である。任意の2つのヒトタンパク質対の間の最短経路の平均を計算し、任意の2つのHHCV対の間の最短経路の平均と比較した。
【0125】
媒介性:
ノードの媒介性(b)を、ノードを通過する最短経路の数により大まかに規定する。全てのヒトタンパク質の媒介性の平均を計算し、任意の2つのHHCV対の間の最短経路の平均と比較した。
【0126】
位相分析の統計的検定:
観察された差異を統計的に確認するために、ウィルコクソン・マン・ホイットニー順位和検定(U検定)を選択した。U検定は、2つの関連するサンプルのためのペアステューデントt検定または1つのサンプルに対する反復測定に対する、ノンパラメトリックな代替物である。一般化された線形モデルおよびANOVA分析を用いて、HCVタンパク質がヒトタンパク質と相互作用する確率に対する、程度および媒介性の個別のおよび追加の効果を、それぞれモデリングおよび検定した。
【0127】
KEGGアノテーションを用いた機能分析
細胞経路のデータを、KEGG(22)、すなわち京都遺伝子ゲノム百科事典(http://www.genome.jp/kegg/)から取り出し、NCBI遺伝子の機能にアノテーションを付すために用いた。それぞれのウイルス−宿主タンパク質相互作用について、特定のKEGG経路の強化を、フィッシャーの正確検定を用いて検定し(p値<5×10−2)、その後、偽発見率を制御するためにBenjaminiおよびHochbergの多重検定補正(23)を行った。
【0128】
細胞接着アッセイ
PBSにおけるフィブロネクチンまたはポリ−L−リジンの連続希釈(10から0.04μg/ml)を、4℃で一晩、96ウェルマイクロタイタープレート上に被覆した。非特異的な結合部位を室温でPBS 1% BSAで1時間にわたり飽和させた。HEK 293T細胞をpCineo3xFlag NS2、NS3、NS3/4A、またはNS5A(JetPei、Polyplus)でトランスフェクトし、2日後にPBS中の2mMのEDTAで回収し、0.1%BSAを含む無血清培地内に細胞1.105個/ウェルで広げることを3回行い、37℃で30分間にわたりインキュベートした。非接着細胞を洗浄して除去し、接着細胞を3.7%のパラホルムアルデヒドで固定した。細胞を20%メタノール内の0.5%クリスタルバイオレットを用いて室温で20分間にわたり染色し、H2O内で5回洗浄した。染色をpH4.5の50mMのクエン酸ナトリウム中の50%エタノールで抽出し、吸光度をELISAリーダー(MRXマイクロプレートリーダー、Dynatech Laboratories)で590nmで読み取った。値は10μg/mlでの100%の接着に対して標準化した。接着のパーセンテージを、それぞれのマトリクス濃度でそれぞれの細胞型について決定した。最大接着の50%(FA50)を曲線から計算した(出典Miaoら(24))。
【0129】
材料および方法において引用される参考文献:
【0130】
【表10】
【0131】
結果
HCV−ヒトインタラクトームマップの構築
HCVタンパク質と細胞タンパク質との間の包括的なインタラクトームマップを、Y2Hスクリーンにより作成した。完全長HCV成熟タンパク質または不連続のドメインをコードする27個の構築物を、組換えに基づいたクローニング系を用いてクローニングした(10)(図6)。4個の独立したスクリーンをそれぞれのHCVベイトタンパク質で実施し、2つの異なるヒトcDNAライブラリーを探査した(補足的な方法)。278個のヒトタンパク質を伴う、314個のHCV−ヒトPPIを同定した(図1B、表S1におけるIMAP Y2Hデータセット)。HCVタンパク質とヒトタンパク質との間のペアワイズ相互作用もまた、自動テキストマイニングにより文献から抽出し、専門家のキュレーションによって確認した(補足的な方法、図6におけるIMAP LCIデータセット)。135個のPPIをPubmedから抽出し、89個をBINDデータベースから抽出した(11)(図1B)。得られるHCV−ヒト相互作用はこのように、11個のHCVタンパク質および421個の個別のヒトタンパク質を伴う、65%の新たな相互作用を有する481個のPPIからなる(図1B)。IMAP Y2HデータベースとIMAP LCIデータベースとの間の冗長性の低さは、Y2H系の偽陰性率の高さを強調するものであり、これは最近の研究と一致している(12、13)。2つの検証方法を用いて、IMAP Y2Hデータセットの信頼性を評価した。3分の2のデータセットをY2Hペアワイズマトリクスによって有効とした。残りの相互作用から、25%をランダムに選択し、85%を超える検証率をもたらすコアフィニティー精製によって試験した(図1Cおよび表S1)。このY2Hデータセットはしたがって、位相的および機能的なレベルで、さらなる分析に対して信頼性が非常に高いものである。HCV感染ネットワークの分析(V−HHCV、図1A)により、NS3、NS5A、およびCOREが、それぞれ214、96、および76個の細胞パートナーを有する、ヒトインタラクトームにおいて最も連結されているタンパク質であることが示され、このことは、感染の間のこれらのタンパク質の潜在的な多機能性を強調するものである(表S1、図4B)。さらに、45個の細胞タンパク質が2つ以上のウイルスタンパク質によって標的化され、このことは、それらがウイルスの生物学に必須であることを示唆するものである(7)(表S2)。
【0132】
ヒトPPIネットワーク(H−Hネットワーク、図1A)を、8個のデータベースから再構築した(14)(補足的な方法)。このネットワークは、9520個の異なるタンパク質の間の44223個の冗長でないPPIからなる(図2A)。興味深いことに、30%のヒトタンパク質のみがこのデータセットに存在する一方で、HCVにより標的化されたヒトタンパク質(HHCV)がこのH−Hネットワークにおいて明らかに過剰に表されている(IMAP Y2Hデータセット:76%、およびIMAP LCIデータセット:92%、フィッシャーの正確検定、p値<2.2×10−16)。このことは、HCVが、タンパク質−タンパク質相互作用に関与することが既に知られている宿主タンパク質を選択的に標的化することを示唆するものである(12、15)。IMAP LCIデータセットでは、ヒトインタラクトームに組み込まれるHHCVのパーセンテージの高さは、よく研究されているタンパク質および生物学的経路の調査のバイアスにより説明することができる。HHCV−HHCVサブネットワークの分析により、HCVと相互作用する細胞タンパク質が、ランダムなサブネットワークについて期待されたものよりも有意に相互連結されていることが示された(図1A、2B、補足的な方法)。実際、ヒトインタラクトームに組み込まれる338個のHHCVは、131個の連結された成分に分配される(ランダムなサブネットワークにより期待される276に対して、p値<10−10、表S3)。最大のものは、1つのタンパク質のみを含む127個の成分とは対照的に、196個のHHCVからなる(ランダムなサブネットワークにより期待される18に対して、p値<10−10)。3つの残りの連結された成分は2つのタンパク質を含んでいた。2つは、機能的に関連するタンパク質を含んでおり(CLEC4MおよびCD209は、ウイルスの侵入に関与するレクチンであり(16)、MVPおよびPARP4は、ヴォールト複合体に関与する(17))、1つは、機能的に関連することが知られていないタンパク質を含んでいた(KIAA1549およびCADPS)。
【0133】
HCV−ヒト相互作用ネットワークの位相分析
HCVタンパク質が細胞タンパク質ネットワークといかにして相互作用するかを評価するために、本発明者らは次に、H−Hインタラクトームに組み込まれるHHCVタンパク質の中心性の測定値に焦点を当てた。局所的な(程度)ならびに全体的な(最短経路および媒介性)の中心性の測定値を計算した。簡潔に述べると、ネットワークにおけるタンパク質の程度(k)は、直接的なパートナーのその数に対応し、したがって、局所的な中心性の測定値である。媒介性(b)は、所与のタンパク質を通過する最短経路(ネットワークにおける2つのタンパク質間の最短距離、l)の数を測定するため、中心性の全体的な測定値である。H−Hネットワークの程度、媒介性、および最短経路の平均はそれぞれ、9.3、1.6×10−4、および4.04であり、これは、これまでの報告とよく一致する(18)(図3A)。バイアスのない分析を提供するために、計算は、ヒトインタラクトームに組み込まれるIMAP Y2Hデータセットから得られる213個のHHCVに基づくものであった。HHCVの程度の平均は、ヒトインタラクトームの程度の平均よりも有意に高い(15.6対9.3、U検定、p値<10−3)。程度の確率分布の比較により、HHCVが程度の平均を超えて全てのクラスにおいて選択的に表されることが明らかになる(図3B、左)。このことは、HCVタンパク質が、高度に連結した細胞タンパク質と相互作用する大きな傾向を有することを示すものである。しかし、程度はタンパク質の局所的な連結性のみを測定するため、ネットワークにおける情報の交換および伝搬を反映し得る全体的な特徴を調べた(19)。全体的な尺度で、HHCVの媒介性の平均は、ヒトインタラクトームの媒介性の平均よりも有意に高かった(3.8×10−4対1.6×10−4、U検定、p値<10−3)。程度に関しては、媒介性の確率分布の比較により、全てのクラスにおいてHHCVが媒介性の平均を超えて過剰であることが示される(図3B、右)。さらに、H−Hネットワークにおける最短経路の平均と比較して、HHCVタンパク質間で見られる最短経路の平均が低いことにより、HHCVが位相的に近いことが明らかになる(3.50対4.04、U検定、p値<10−5)。IMAP LCIデータセットから得られるHHCVの局所的および全体的な中心性の両方は、IMAP Y2Hデータセットについてよりも高く、このことは、文献調査のバイアスの問題を強調し、Y2Hスクリーニングのバイアスのないアプローチを強固にするものである(表S3)。中心のHHCVに対する選択的な付着がH−Hインタラクトームにおける固有のバイアスによるものではないことを保証するために、本発明者らは、信頼性が非常に高いがあまり包括的ではないヒトインタラクトームで同一の分析を実施した(表S3、補足的な方法)。この傾向はこのデータセットで維持され、このことは、HHCVがヒトインタラクトーム内で局所的および全体的に非常に中心的であり、かつこのネットワークにおいて互いに比較的近くに現れることを裏付けるものであった。HCVおよびEBVの比較分析では、中心性の測定値をHEBVについても計算した(Calderwoodらからのデータセット(7))。程度、媒介性、および最短経路は、HEBVタンパク質と同一の傾向に従い(表S3および図7)、これまでの報告とよく一致した(7)。これらの結果は、中心的なタンパク質に対する選択的な付着が、文献の分析により最近示唆されたような、ウイルスタンパク質の一般的な特質であることを示す(9)。これらのタンパク質の中心性の高さはこれまでに、細胞に対するそれらの機能的不可欠性と相関することが示されている(20)。より詳細には、致死タンパク質および疾患に関連するタンパク質は中心的なタンパク質において富んでいることが明らかになった(19、21〜23)。
【0134】
程度または媒介性のいずれがウイルスタンパク質と細胞タンパク質との間の相互作用の確率に最も影響するかを決定するために、本発明者らは一般化された線形モデルを用いて両方の測定値の分離したおよび追加的な効果を検定した(補足的な方法)。この分析により、媒介性がウイルスタンパク質とヒトタンパク質との間の相互作用の確率をより良好に説明することが明らかになった(ANOVA、p<10−3)。図3Cは、低い程度値で媒介性のばらつきが大きいことにより説明される、kとbの中心性の測定値の間の、部分的な相関関係を示す(R2=56%、p値<10−16)。本発明者らはしたがって、低い程度で観察されたこの大きなばらつきが媒介性の優位な効果を説明し得るかどうかを求めた。この目的のために、データベースを、ヒトインタラクトームの程度の平均に従って、低い程度(LD)および高い程度(HD)のタンパク質クラスに分けた。LDクラスに含まれる細胞タンパク質では、HCVは、それらの程度の特性に関わらず、媒介性が高いタンパク質と選択的に相互作用する(図3D)。HDクラスにおいては、HCVタンパク質との相互作用は、細胞タンパク質の媒介性および程度の両方に依存する。酵母における最近の研究に基づいて(24)、程度が低く媒介性が高いHHCVタンパク質が細胞モジュール間のコネクタまたは障害として作用し得、したがって感染に必須であり得ることが推定され得る。
【0135】
HCV−ヒト相互作用ネットワークの機能的分析
HCVにより標的化される生物学的機能をより良く理解するために、本発明者らは次に、所与のウイルスタンパク質の全ての相互作用子について特定の経路の強化を検定した。これは、HHCVタンパク質をKEGG機能アノテーション経路に関して分析することにより行った(表S4、補足的な方法)。機能はいまだ全てのタンパク質によるものではないため、このアプローチは全体としてはバイアスがないが、それは依然として、システムレベルのデータセットに従来の生物学を組み込む有効な手段である。この分析により、HCVの臨床的症候群に関連する3つの経路についての強化が示され(インスリン、TGFβ、およびJak/STAT経路)、HCVにより影響される新規な経路として接着斑が同定された。
【0136】
HCVによる慢性的な感染は、脂肪症の発症を伴う代謝障害に対するリスクの増大に関連する。インスリン耐性はこのプロセスの共通の特徴である。これはまた、肝線維症の原因ともなり、インターフェロン−α(IFN−α)抗ウイルス療法に対する応答不良の予測因子である(25、26)。逆に、IFN−αは線維症の進行を予防し得る(27)。TGFβは、肝臓における細胞の成長および分化の維持において極めて重要な役割を有する。これは、感染の間に産生が増強されることが多い、強力な線維形成促進性のサイトカインである。低下したTGFβ応答もまた、HCV感染の間に観察される(28)。インスリン、TGFβ、およびJak/STAT経路はこれらの臨床的特徴に関与すると考えられているが(29)、HCV感染の間の、密接に関連するそれらの摂動は、依然としてほとんど説明されていない。本発明者はしたがって、ネットワークアプローチを用いて、HCVにより標的化され、これらの経路の界面に局在する、細胞タンパク質を同定した。得られる相互作用マップを構築して、IJTネットワークを形成した(インスリン−Jak/STAT−TGFβ、図4A)。66個のHHCVタンパク質は2つの経路を連結しており、一方、30個のHHCVタンパク質は3つの経路を連結している。これらのタンパク質とHCVタンパク質との相互作用はしたがって、隣接する経路に広がり得る機能的な摂動を誘発し得る。これらのタンパク質のうち1つは、インスリン経路とJak/STAT経路とを連結するPLSCR1(スクランブラーゼ1)である。原形質膜のリン脂質の再分配に関与することが知られていることで(30)、このタンパク質はまた、インターフェロンに応じた遺伝子の潜在的なアクチベーターであり、siRNAでのそのノックダウンは、ウイルスの複製に有利に働く(31)。興味深いことに、PLSCR1−/−マウスはまた、インスリン耐性の発現を示す(32)。インスリンまたはJak/STAT経路においてはアノテーションを付されていないが、PLSCR1はしたがって、これらの経路の機能性にとって必須であることが分かる。PLSCR1と相互作用することにより、COREはしたがってJak/STAT経路とインスリン経路との両方に干渉し得る。別の例は、3つの経路を連結するためIJTネットワークにおいてより中心的な位置を示す、核因子Yin Yang 1(YY1)である。HCV COREとYY1との相互作用は、NPM1の発現を機能的に軽減することがこれまでに示されている。この所見は、インスリン経路およびTGFβ経路の調節の裏付けとしての、PPARδの発現およびSMADの転写活性に推定することができる(33〜35)。これらは、HCV誘発性の表現型に関与すると考えられる細胞標的のただ2つの例示的な例である。これらの例は、本発明者らを、臨床的症候群に相関する分子メカニズムについてのより良い情報を提供する目的で、C型肝炎の論理的な還元主義的アプローチに戻すものである。病理学のこの分子アプローチは系(この研究においてはタンパク質)の基礎的な要素に適用可能であるが、慢性的なHCV感染において観察される臨床的表現型のいくつかは、IJTネットワークにおいて示されるタンパク質相互作用の統合的な効果の結果であると考えられる。さらに、ネットワークのロバスト性の特性は、異なる摂動に直面してもネットワークの能力が機能的であり続けるようにし得るため、ネットワークの還元主義的アプローチは、系レベルで常に適用可能ではあり得ない。
【0137】
IJTネットワークにおいて明らかになった別の問題は、COREタンパク質が他のHCVタンパク質よりも比例的に多くの相互作用を媒介するということである(図4B、4C)。実際、IJTネットワークとの選択的な相互作用は、COREでのみ観察された(51.3%、表S5)。結果として、COREはIJTネットワークにおける相互作用の27.7%をもたらし、これは有意な増強に対応する(フィッシャーの正確検定、p値<10−4)。より詳細には、このタンパク質は、Jak−STAT経路およびTGFβ経路(フィッシャーの正確検定、p値<0.05)、ならびにインスリン/Jak/STAT経路とインスリン/TGFβ経路とを連結するHHCV(フィッシャーの正確検定、p値<0.05、表S5)において過剰に表される。したがって、COREはIJTネットワークの主要な摂動付与物質として現れる。興味深いことに、COREを発現するトランスジェニックマウスはインスリン耐性を発現する(36、37)。提案されたメカニズムは、CORE誘発性のSOCS3がユビキチン化を介してIRS1およびIRS2のプロテアーソーム分解を促進するというものであった(38)。SOCS3はまたJak/STAT経路の負の調節因子であるため、このことは、IFN−α耐性の発生を説明し得る。明らかに、IJTネットワークは、COREの作用がこれまでに考えられていたよりもはるかに複雑であると考えられることを示す。IJTネットワークはいまだ動的に分析され得ないが、依然として、前記ネットワークは、慢性化に関連する複雑な障害のいくつかを解明する固有の手段を提供するものである。IJTネットワークがウイルス感染の不存在下で脂肪症および線維形成などの疾患に関与する一連の遺伝子を同定し得ることもまた考慮に値する。
【0138】
接着斑は、IMAP Y2Hスクリーンにより生じるデータの主要な寄与と共に、NS3タンパク質およびNS5Aタンパク質により標的化される新たな機能として過剰に表された(表S4)。インテグリンに結合した接着斑複合体は、細胞外マトリクス(ECM)への細胞の接着を制御し、これらの複合体とアクチン−細胞骨格との会合は、細胞の移動において主要な役割を有する。ECMに結合すると、αおよびβインテグリンサブユニットの両方は、アクチン−細胞骨格とシグナル伝達経路との間の物理的結合を確立するタンパク質を動員する。脱調節されると、この機能的プロセスは細胞の可動性の摂動、ECMからの分離、ならびに腫瘍の発生および進行をもたらし得る。図5Aは、HCVにより標的化されるタンパク質、主にNS3およびNS5Aタンパク質を伴うKEGGの接着斑経路を示す。接着斑の機能性に対するNS3、NS3/4A、またはNS5Aの単一の発現の影響を、フィブロネクチンおよびポリ−L−リジンに対する細胞接着アッセイを用いて評価した。これらのウイルスタンパク質は、MOCKまたはNS2を発現する細胞と比較してフィブロネクチンに対する細胞接着を阻害した(図5B)。一方、インテグリンを組み込まないポリ−L−リジンに対する接着は影響されなかった(図5C)。同一の阻害レベルがNS3/4AおよびNS3について観察され、このことは、このプロテアーゼの酵素活性が接着斑の摂動に対して主要な効果を有さないことを示唆するものである。癌の発生および進行に加え、HCVによる接着斑の組み込みは、ウイルスの拡散に対する重要性を有し得る。アクチン−細胞骨格のリモデリングのいくつかのステップへの干渉は、侵入部位に到達するために標的細胞の細胞突起に沿って移動するためにこのプロセスを利用し得るレトロウイルスについて記載されている(39)。インテグリンへのウイルスエンベロープの結合を伴う関連するプロセスが、HCVにより利用されてその伝達を促し得ることは、考えられることである。HCV感染のネットワークアプローチにおいて、相互作用マップは、ウイルスが複製し宿主の防御から逃れるために潜在的に必要な、全ての連結を同定する。
【0139】
<実施例2>
胆汁酸(BA)の血清レベルが高い、C型肝炎ウイルス(HCV)に感染した患者は通常、抗ウイルス療法に対する応答を有さない。したがって、HCVのRNA複製に対するBAの役割を評価した。BA、とりわけケノデオキシコール酸塩およびデオキシコール酸塩は、HCVのRNA複製を10倍以上、上方調節した。遊離しているが抱合していないBAのみが活性であり、このことは、それらの効果が核受容体によって媒介されていたことを示唆するものである。ファルネソイドX受容体(FXR)のリガンドのみがHCVの複製を刺激し、一方、グッグルステロンによるFXRのサイレンシングおよびFXRの拮抗作用は、BAにより誘発される上方調節を遮断した。さらに、グッグルステロンは単独で、基底レベルのHCV複製を10倍阻害した。FXRリガンドによるHCV複製の調節は、I型インターフェロンの存在下または不存在下で同一の割合で生じ、このことは、ウイルス複製のこの制御から独立した作用のメカニズムを示唆するものである。したがって、BAへの曝露は、核受容体FXRの活性化を伴う新規なメカニズムによりHCV複製を増大させる。
【0140】
これにより、ウイルスがFXRに直接的に干渉してその複製を促し得るという可能性が高まる。HCVタンパク質の細胞相互作用子のプロテオームワイドなスクリーニングを完了するために、本発明者らは、FXRに焦点を当てた特異的スクリーニングを実施して、この受容体と任意のウイルスタンパク質との間の全ての潜在的な相互作用を同定した。
【0141】
材料
細菌
大腸菌のコンピテント細菌(OneShot(登録商標)Top10、Invitrogen)(F−mcrA Δ(mrr−hsdRMS−mcrBC)φ80lacZΔM15 ΔlacX74 recA1 araD139 Δ(ara−leu)、7697 galU galK rpsL (StrR) endA1 nupG)。
【0142】
酵母
本発明者らは以下の株を用いた:AH109およびY187(Clontech) 以下の遺伝子型を有するSaccharomyces cerevisiae
AH109:MATa、trp1−901、leu2−3、112、ura3−52、his3−200、gal4Δ、gal80Δ、LYS2::GAL1UAS−GAL1TATA−HIS3、GAL2UAS−GAL2TATA−ADE2、ura3::MEL1UAS−MEL1TATA−lacZ。
Y187:MATα、ura3−52、his3−200、ade2−101、trp1−901、leu2−3、112、met−、gal4Δ、gal80Δ、MEL1、URA3::GAL1UAS−GAL1TATA−lacZ。
【0143】
ヒト細胞
Hek−293T:ラージT抗原を発現するヒト胚腎細胞。
【0144】
酵母ツーハイブリッドマトリクスを用いたFXRと相互作用するHCVタンパク質の同定
本発明者らの以前の研究により、HCVの複製がFXR活性の制御下にあり得ることが示された。FXR活性に干渉し得るウイルス成分を同定するために、本発明者らはウイルスタンパク質とFXRとの間の相互作用を探求した。これは、酵母ツーハイブリッド法を用いるペアワイズ相互作用スクリーニングにより行った。全ての10個のウイルスタンパク質を試験し、データを以下の表にまとめる。
【0145】
【表11】
【0146】
プルダウン実験
データは、哺乳動物細胞におけるGST−プルダウンによって確認されている。GSTと融合しているウイルスタンパク質を、3XFlagでタグ付けされたFXRと共に、Hek−293T細胞にコトランスフェクトした。48時間後、細胞を溶解し、グルタチオンセファロースを用いて沈殿を実施し、電気泳動、および抗Flag(FXRを明らかにするため)またはペルオキシダーゼに結合した抗GST抗体を用いたウェスタンブロットに供した。NS3およびNS5AとのFXRの共沈殿は、これらのウイルスタンパク質とFXRとの直接的な相互作用を肯定的に確認するものであった。FXRと全ての他のウイルスタンパク質との共沈殿は、これらのタンパク質がFXRと相互作用しないことを否定的に確認するものであった。
【0147】
参考文献
この出願を通して、様々な参考文献が、本発明が関連する技術分野の状況を記載している。これらの参考文献の開示は本明細書において、参照により本開示に組み込まれる。
【0148】
【表12】
【0149】
【表13】
【0150】
【表14】
【0151】
【表15】
【0152】
【表16】
【0153】
【表17】
【0154】
【表18】
【0155】
【表19】
【0156】
【表20】
【0157】
【表21】
【0158】
【表22】
【0159】
【表23】
【0160】
【表24】
【0161】
【表25】
【0162】
【表26】
【0163】
【表27】
【0164】
【表28】
【0165】
【表29】
【0166】
【表30】
【0167】
【表31】
【0168】
【表32】
【0169】
【表33】
【0170】
【表34】
【0171】
【表35】
【0172】
【表36】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
HCV感染を治療および/または予防するための化合物をスクリーニングするための方法であって、
a)ファルネソイドX受容体(FXR)とウイルスHCVタンパク質NS3またはNS5Aとの間の相互作用を阻害する候補化合物の能力を決定するステップと、
b)前記ウイルスファルネソイドX受容体(FXR)と前記ウイルスタンパク質との間の前記相互作用を阻害する候補化合物を選択するステップと
を含む方法。
【請求項2】
HCV感染を治療および/または予防するための化合物をスクリーニングするための方法であって、
a)ウイルスHCV COREタンパク質と、AGRN、BCAR1、CD68、COL4A2、DDX3Y、EGFL7、FBLN2、FBLN5、GAPDH、GRN、HIVEP2、HOXD8、LPXN、LRRTM1、LTBP4、MAGED1、MEGF6、MMRN2、NR4A1、PABPN1、PAK4、PLSCR1、RNF31、SETD2、SLC31A2、VTN、VWF、およびZNF271からなる群から選択されるヒトタンパク質との間の相互作用を阻害する候補化合物の能力を決定するステップ、ならびに
b)前記ウイルスHCV COREタンパク質と前記ヒトタンパク質との間の前記相互作用を阻害する候補化合物を選択するステップ
を含む方法。
【請求項3】
HCV感染を治療および/または予防するための化合物をスクリーニングするための方法であって、
a)ウイルスHCV E1タンパク質と、JUN、NR4A1、PFN1、SETD2、およびTMSB4Xからなる群から選択されるヒトタンパク質との間の相互作用を阻害する候補化合物の能力を決定するステップ、ならびに
b)前記ウイルスE1タンパク質と前記ヒトタンパク質との間の前記相互作用を阻害する候補化合物を選択するステップ
を含む方法。
【請求項4】
HCV感染を治療および/または予防するための化合物をスクリーニングするための方法であって、
a)ウイルスHCV E2タンパク質と、HOXD8、ITGB1、KIAA1411、LOC730765、NR4A1、PSMA6、SETD2、およびSMEK2からなる群から選択されるヒトタンパク質との間の相互作用を阻害する候補化合物の能力を決定するステップ、ならびに
b)前記ウイルスE2タンパク質と前記ヒトタンパク質との間の前記相互作用を阻害する候補化合物を選択するステップ
を含む方法。
【請求項5】
HCV感染を治療および/または予防するための化合物をスクリーニングするための方法であって、
a)ウイルスHCV NS2タンパク質と、ADFP、APOA1、C7、FBLN5、HOXD8、NR4A1、POU3F2、RPL11、RPN1、SETD2、SMURF2、およびTRIM27からなる群から選択されるヒトタンパク質との間の相互作用を阻害する候補化合物の能力を決定するステップ、ならびに
b)前記ウイルスNS2タンパク質と前記ヒトタンパク質との間の前記相互作用を阻害する候補化合物を選択するステップ
を含む方法。
【請求項6】
HCV感染を治療および/または予防するための化合物をスクリーニングするための方法であって、
a)ウイルスHCV NS3タンパク質と、sep−10、A1BG、ABCC3、ACTN1、ACTN2、AEBP1、AHCY、AHSG、ALB、ANKRD12、ANKRD28、APOA1、APOA2、ARFIP2、ARG1、ARHGDIA、ARHGEF6、ARNT、ARS2、ASXL1、ATP5H、AZGP1、B2M、BCAN、BCKDK、BCL2A1、BCL6、BCR、BZRAP1、C10orf18、C10orf6、C12orf41、C14orf173、C16orf7、C1orf165、C1orf94、C1S、C9orf30、CALCOCO2、CAT、CBY1、CCDC21、CCDC37、CCDC52、CCDC66、CCDC95、CCHCR1、CCNDBP1、CD5L、CDC23、CELSR2、CENPC1、CEP152、CEP192、CES1、CFP、CHPF、COL3A1、CORO1B、COX3、CSNK2B、CTGF、CTSD、CTSF、CXorf45、DEAF1、DEDD2、DES、DLAT、DOCK7、DPF1、DPP7、ECHS1、EEF1A1、EFEMP1、EFEMP2、EIF1、EIF4ENIF1、FAM120B、FAM62B、FAM65A、FAM96B、FBF1、FBLN1、FBLN2、FBLN5、FBN1、FBN3、FES、FGA、FGB、FIGNL1、FLAD1、FLJ11286、FN1、FRMPD4、FRS3、FTH1、FUCA2、GAA、GBP2、GC、GFAP、GNB2、GON4L、HIVEP2、HOMER3、HP、HTRA1、IFI44、IQWD1、ITCH、ITGB4、JAG2、JUN、KHDRBS1、KIAA1012、KIAA1549、KIF17、KIF7、KNG1、KPNA1、KPNB1、L3MBTL3、LAMA5、LAMB2、LAMC3、LDB1、LOC728302、LRRC7、LRRCC1、LTBP4、LZTS2、MAGED1、MAPK7、MARCO、MASP2、MEGF8、MLLT4、MLXIP、MORC4、MORF4L1、MPDZ、MVP、MYL6、NAP1L1、NCAN、NDC80、NEFL、NEFM、NELL1、NELL2、NID1、NID2、NOTCH1、N−PAC、NUCB1、NUP133、NUP62、OBSCN、ORM1、OTC、PARP2、PARP4、PCYT2、PDE4DIP、PDLIM5、PGM1、PICK1、PKNOX1、PLEKHG4、PNPLA8、PNPT1、POLDIP2、PRG4、PRRC1、PSMA6、PSMB9、PSME3、PTPRF、PTPRN2、RABEP1、RAI14、RASAL2、RBM4、RCN3、RGNEF、RICS、RING1、RINT1、RLF、RNF31、ROGDI、RP11−130N24.1、RSHL2、RUSC2、SBF1、SDCCAG8、SECISBP2、SELO、SERTAD1、SESTD1、SF3B2、SGCB、SIAH1、SLIT1、SLIT2、SLIT3、SMARCE1、SMURF2、SNX4、SPOCK3、SPON1、SPP2、SRPX2、SSX2IP、STAB1、STAT3、STRAD、SVEP1、SYNE1、SYNPO2、TAF1、TAF15、TBC1D2B、TBN、TBXAS1、TF、TGFB1I1、TH1L、THAP1、TMEM63B、TPST2、TPT1、TRIM23、TRIM27、TRIO、TRIP11、TXNDC11、UBE1C、USHBP1、UXT、VCAN、VIM、VWF、WDTC1、XAB2、XRN2、YY1AP1、ZADH1、ZBTB1、ZCCHC7、ZHX3、ZMYM2、ZNF281、ZNF410、ZNF440、ZXDC、およびZZZ3、APOA1、およびDNAJB1からなる群から選択されるヒトタンパク質との間の相互作用を阻害する候補化合物の能力を決定するステップ、ならびに
b)前記ウイルスNS3タンパク質と前記ヒトタンパク質との間の前記相互作用を阻害する候補化合物を選択するステップ
を含む方法。
【請求項7】
HCV感染を治療および/または予防するための化合物をスクリーニングするための方法であって、
a)ウイルスHCV NS4Aタンパク質と、CREB3、ELAC2、HOXD8、NR4A1、TRAF3IP3、UBQLN1、APOA1、およびDNAJB1からなる群から選択されるヒトタンパク質との間の相互作用を阻害する候補化合物の能力を決定するステップ、ならびに
b)前記ウイルスNS4Aタンパク質と前記ヒトタンパク質との間の前記相互作用を阻害する候補化合物を選択するステップ
を含む方法。
【請求項8】
HCV感染を治療および/または予防するための化合物をスクリーニングするための方法であって、
a)ウイルスHCV NS4Bタンパク質と、APOA1、ATF6、KNG1、およびNR4A1からなる群から選択されるヒトタンパク質との間の相互作用を阻害する候補化合物の能力を決定するステップ、ならびに
b)前記ウイルスNS4Bタンパク質と前記ヒトタンパク質との間の前記相互作用を阻害する候補化合物を選択するステップ
を含む方法。
【請求項9】
HCV感染を治療および/または予防するための化合物をスクリーニングするための方法であって、
a)ウイルスHCV NS5Aタンパク質と、AARS2、ABCC3、ACLY、ACTB、ALDOB、APOB、ARFIP1、ASXL1、AXIN1、C10orf30、C9orf23、CADPS、CADPS2、CCDC100、CCDC90A、CCT7、CEP250、CEP63、CES1、CFH、COL3A1、DDX5、DNAJA3、EFEMP1、EIF3S2、ETFA、FGB、FHL2、GLTSCR2、、GOLGA2、GPS2、HRSP12、IGLL1、ITGAL、LDHD、LIMS2、LOC374395、MAF、MBD4、MKRN2、MOBK1B、MON2、NAP1L1、NFE2、NUCB1、OS9、PARVG、PMVK、POMP、PPP1R13L、PSMB8、PSMB9、RLF、RPL18A、RRBP1、SHARPIN、SMYD3、SORBS2、SORBS3、THBS1、TMF1、TP53BP2、TRIOBP、TST、TXNDC11、UBASH3A、UBC、USP19、VPS52、ZGPAT、ZH2C2、ZNF135、ZNF350、ZNF646、ZNHIT1、およびZNHIT4からなる群から選択されるヒトタンパク質との間の相互作用を阻害する候補化合物の能力を決定するステップ、ならびに
b)前記ウイルスNS5Aタンパク質と前記ヒトタンパク質との間の前記相互作用を阻害する候補化合物を選択するステップ
を含む方法。
【請求項10】
HCV感染を治療および/または予防するための化合物をスクリーニングするための方法であって、
a)ウイルスHCV NS5Bタンパク質と、APOA1、APOC3、CCNDBP1、CEP250、CEP68、CTSF、HOXD8、MGC2752、MOBK1B、OS9、OTC、PKM2、PSMB9、SETD2、SHARPIN、TAGLN、およびTUBB2Cからなる群から選択されるヒトタンパク質との間の相互作用を阻害する候補化合物の能力を決定するステップ、ならびに
b)前記ウイルスNS5Bタンパク質と前記ヒトタンパク質との間の前記相互作用を阻害する候補化合物を選択するステップ
を含む方法。
【請求項11】
HCV感染を治療および/または予防するための化合物をスクリーニングするための方法であって、
a)ウイルスHCV p7タンパク質と、CREB3、FBLN2、FXYD6、LMNB1、RNUXA、SLC39A8、SLIT2、UBQLN1、およびUBQLN4からなる群から選択されるヒトタンパク質との間の相互作用を阻害する候補化合物の能力を決定するステップ、ならびに
b)前記ウイルスHCV p7タンパク質と前記ヒトタンパク質との間の前記相互作用を阻害する候補化合物を選択するステップ
を含む方法。
【請求項1】
HCV感染を治療および/または予防するための化合物をスクリーニングするための方法であって、
a)ファルネソイドX受容体(FXR)とウイルスHCVタンパク質NS3またはNS5Aとの間の相互作用を阻害する候補化合物の能力を決定するステップと、
b)前記ウイルスファルネソイドX受容体(FXR)と前記ウイルスタンパク質との間の前記相互作用を阻害する候補化合物を選択するステップと
を含む方法。
【請求項2】
HCV感染を治療および/または予防するための化合物をスクリーニングするための方法であって、
a)ウイルスHCV COREタンパク質と、AGRN、BCAR1、CD68、COL4A2、DDX3Y、EGFL7、FBLN2、FBLN5、GAPDH、GRN、HIVEP2、HOXD8、LPXN、LRRTM1、LTBP4、MAGED1、MEGF6、MMRN2、NR4A1、PABPN1、PAK4、PLSCR1、RNF31、SETD2、SLC31A2、VTN、VWF、およびZNF271からなる群から選択されるヒトタンパク質との間の相互作用を阻害する候補化合物の能力を決定するステップ、ならびに
b)前記ウイルスHCV COREタンパク質と前記ヒトタンパク質との間の前記相互作用を阻害する候補化合物を選択するステップ
を含む方法。
【請求項3】
HCV感染を治療および/または予防するための化合物をスクリーニングするための方法であって、
a)ウイルスHCV E1タンパク質と、JUN、NR4A1、PFN1、SETD2、およびTMSB4Xからなる群から選択されるヒトタンパク質との間の相互作用を阻害する候補化合物の能力を決定するステップ、ならびに
b)前記ウイルスE1タンパク質と前記ヒトタンパク質との間の前記相互作用を阻害する候補化合物を選択するステップ
を含む方法。
【請求項4】
HCV感染を治療および/または予防するための化合物をスクリーニングするための方法であって、
a)ウイルスHCV E2タンパク質と、HOXD8、ITGB1、KIAA1411、LOC730765、NR4A1、PSMA6、SETD2、およびSMEK2からなる群から選択されるヒトタンパク質との間の相互作用を阻害する候補化合物の能力を決定するステップ、ならびに
b)前記ウイルスE2タンパク質と前記ヒトタンパク質との間の前記相互作用を阻害する候補化合物を選択するステップ
を含む方法。
【請求項5】
HCV感染を治療および/または予防するための化合物をスクリーニングするための方法であって、
a)ウイルスHCV NS2タンパク質と、ADFP、APOA1、C7、FBLN5、HOXD8、NR4A1、POU3F2、RPL11、RPN1、SETD2、SMURF2、およびTRIM27からなる群から選択されるヒトタンパク質との間の相互作用を阻害する候補化合物の能力を決定するステップ、ならびに
b)前記ウイルスNS2タンパク質と前記ヒトタンパク質との間の前記相互作用を阻害する候補化合物を選択するステップ
を含む方法。
【請求項6】
HCV感染を治療および/または予防するための化合物をスクリーニングするための方法であって、
a)ウイルスHCV NS3タンパク質と、sep−10、A1BG、ABCC3、ACTN1、ACTN2、AEBP1、AHCY、AHSG、ALB、ANKRD12、ANKRD28、APOA1、APOA2、ARFIP2、ARG1、ARHGDIA、ARHGEF6、ARNT、ARS2、ASXL1、ATP5H、AZGP1、B2M、BCAN、BCKDK、BCL2A1、BCL6、BCR、BZRAP1、C10orf18、C10orf6、C12orf41、C14orf173、C16orf7、C1orf165、C1orf94、C1S、C9orf30、CALCOCO2、CAT、CBY1、CCDC21、CCDC37、CCDC52、CCDC66、CCDC95、CCHCR1、CCNDBP1、CD5L、CDC23、CELSR2、CENPC1、CEP152、CEP192、CES1、CFP、CHPF、COL3A1、CORO1B、COX3、CSNK2B、CTGF、CTSD、CTSF、CXorf45、DEAF1、DEDD2、DES、DLAT、DOCK7、DPF1、DPP7、ECHS1、EEF1A1、EFEMP1、EFEMP2、EIF1、EIF4ENIF1、FAM120B、FAM62B、FAM65A、FAM96B、FBF1、FBLN1、FBLN2、FBLN5、FBN1、FBN3、FES、FGA、FGB、FIGNL1、FLAD1、FLJ11286、FN1、FRMPD4、FRS3、FTH1、FUCA2、GAA、GBP2、GC、GFAP、GNB2、GON4L、HIVEP2、HOMER3、HP、HTRA1、IFI44、IQWD1、ITCH、ITGB4、JAG2、JUN、KHDRBS1、KIAA1012、KIAA1549、KIF17、KIF7、KNG1、KPNA1、KPNB1、L3MBTL3、LAMA5、LAMB2、LAMC3、LDB1、LOC728302、LRRC7、LRRCC1、LTBP4、LZTS2、MAGED1、MAPK7、MARCO、MASP2、MEGF8、MLLT4、MLXIP、MORC4、MORF4L1、MPDZ、MVP、MYL6、NAP1L1、NCAN、NDC80、NEFL、NEFM、NELL1、NELL2、NID1、NID2、NOTCH1、N−PAC、NUCB1、NUP133、NUP62、OBSCN、ORM1、OTC、PARP2、PARP4、PCYT2、PDE4DIP、PDLIM5、PGM1、PICK1、PKNOX1、PLEKHG4、PNPLA8、PNPT1、POLDIP2、PRG4、PRRC1、PSMA6、PSMB9、PSME3、PTPRF、PTPRN2、RABEP1、RAI14、RASAL2、RBM4、RCN3、RGNEF、RICS、RING1、RINT1、RLF、RNF31、ROGDI、RP11−130N24.1、RSHL2、RUSC2、SBF1、SDCCAG8、SECISBP2、SELO、SERTAD1、SESTD1、SF3B2、SGCB、SIAH1、SLIT1、SLIT2、SLIT3、SMARCE1、SMURF2、SNX4、SPOCK3、SPON1、SPP2、SRPX2、SSX2IP、STAB1、STAT3、STRAD、SVEP1、SYNE1、SYNPO2、TAF1、TAF15、TBC1D2B、TBN、TBXAS1、TF、TGFB1I1、TH1L、THAP1、TMEM63B、TPST2、TPT1、TRIM23、TRIM27、TRIO、TRIP11、TXNDC11、UBE1C、USHBP1、UXT、VCAN、VIM、VWF、WDTC1、XAB2、XRN2、YY1AP1、ZADH1、ZBTB1、ZCCHC7、ZHX3、ZMYM2、ZNF281、ZNF410、ZNF440、ZXDC、およびZZZ3、APOA1、およびDNAJB1からなる群から選択されるヒトタンパク質との間の相互作用を阻害する候補化合物の能力を決定するステップ、ならびに
b)前記ウイルスNS3タンパク質と前記ヒトタンパク質との間の前記相互作用を阻害する候補化合物を選択するステップ
を含む方法。
【請求項7】
HCV感染を治療および/または予防するための化合物をスクリーニングするための方法であって、
a)ウイルスHCV NS4Aタンパク質と、CREB3、ELAC2、HOXD8、NR4A1、TRAF3IP3、UBQLN1、APOA1、およびDNAJB1からなる群から選択されるヒトタンパク質との間の相互作用を阻害する候補化合物の能力を決定するステップ、ならびに
b)前記ウイルスNS4Aタンパク質と前記ヒトタンパク質との間の前記相互作用を阻害する候補化合物を選択するステップ
を含む方法。
【請求項8】
HCV感染を治療および/または予防するための化合物をスクリーニングするための方法であって、
a)ウイルスHCV NS4Bタンパク質と、APOA1、ATF6、KNG1、およびNR4A1からなる群から選択されるヒトタンパク質との間の相互作用を阻害する候補化合物の能力を決定するステップ、ならびに
b)前記ウイルスNS4Bタンパク質と前記ヒトタンパク質との間の前記相互作用を阻害する候補化合物を選択するステップ
を含む方法。
【請求項9】
HCV感染を治療および/または予防するための化合物をスクリーニングするための方法であって、
a)ウイルスHCV NS5Aタンパク質と、AARS2、ABCC3、ACLY、ACTB、ALDOB、APOB、ARFIP1、ASXL1、AXIN1、C10orf30、C9orf23、CADPS、CADPS2、CCDC100、CCDC90A、CCT7、CEP250、CEP63、CES1、CFH、COL3A1、DDX5、DNAJA3、EFEMP1、EIF3S2、ETFA、FGB、FHL2、GLTSCR2、、GOLGA2、GPS2、HRSP12、IGLL1、ITGAL、LDHD、LIMS2、LOC374395、MAF、MBD4、MKRN2、MOBK1B、MON2、NAP1L1、NFE2、NUCB1、OS9、PARVG、PMVK、POMP、PPP1R13L、PSMB8、PSMB9、RLF、RPL18A、RRBP1、SHARPIN、SMYD3、SORBS2、SORBS3、THBS1、TMF1、TP53BP2、TRIOBP、TST、TXNDC11、UBASH3A、UBC、USP19、VPS52、ZGPAT、ZH2C2、ZNF135、ZNF350、ZNF646、ZNHIT1、およびZNHIT4からなる群から選択されるヒトタンパク質との間の相互作用を阻害する候補化合物の能力を決定するステップ、ならびに
b)前記ウイルスNS5Aタンパク質と前記ヒトタンパク質との間の前記相互作用を阻害する候補化合物を選択するステップ
を含む方法。
【請求項10】
HCV感染を治療および/または予防するための化合物をスクリーニングするための方法であって、
a)ウイルスHCV NS5Bタンパク質と、APOA1、APOC3、CCNDBP1、CEP250、CEP68、CTSF、HOXD8、MGC2752、MOBK1B、OS9、OTC、PKM2、PSMB9、SETD2、SHARPIN、TAGLN、およびTUBB2Cからなる群から選択されるヒトタンパク質との間の相互作用を阻害する候補化合物の能力を決定するステップ、ならびに
b)前記ウイルスNS5Bタンパク質と前記ヒトタンパク質との間の前記相互作用を阻害する候補化合物を選択するステップ
を含む方法。
【請求項11】
HCV感染を治療および/または予防するための化合物をスクリーニングするための方法であって、
a)ウイルスHCV p7タンパク質と、CREB3、FBLN2、FXYD6、LMNB1、RNUXA、SLC39A8、SLIT2、UBQLN1、およびUBQLN4からなる群から選択されるヒトタンパク質との間の相互作用を阻害する候補化合物の能力を決定するステップ、ならびに
b)前記ウイルスHCV p7タンパク質と前記ヒトタンパク質との間の前記相互作用を阻害する候補化合物を選択するステップ
を含む方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7】
【公表番号】特表2011−517779(P2011−517779A)
【公表日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−504468(P2011−504468)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際出願番号】PCT/EP2009/054536
【国際公開番号】WO2009/127693
【国際公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(599176506)アンセルム(アンスチチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル) (23)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際出願番号】PCT/EP2009/054536
【国際公開番号】WO2009/127693
【国際公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(599176506)アンセルム(アンスチチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル) (23)
【Fターム(参考)】
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