説明

CADデータ送信方法、CADデータ受信方法、CADデータ送信装置、CADデータ受信装置、CADデータ送信プログラム、およびCADデータ受信プログラム、ならびにデータ構造

【課題】異なるCAD間において、高い精度で、データ量の少ないデータ交換を可能なCADデータ送受信方法、装置、プログラム、ならびにデータ構造を提供する。
【解決手段】第1のCADシステムから第2のCADシステムへCADデータを送信するためのCADデータ送信方法であって、コンピュータが、CADデータに含まれる点群の中から複数の代表点を選定する代表点選定過程と、各代表点とこの代表点周りに存在する点群内の複数の点との位置関係に基づいて、各代表点における主曲率をそれぞれ算出する主曲率算出過程と、各代表点における主曲率に基づいて、曲率線を作成する曲率線作成過程と、曲率線同士が交わる曲率線交点と、曲率線交点近傍の代表点との間で関連付けられる基本量を算出する基本量算出過程と、各曲率線交点の座標値ならびに各曲率線交点における基本量をCADデータとして作成し、送信するCADデータ送信過程とを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なるCADシステム間で三次元CADデータの送受信を行うための送受信方法、送受信装置、送受信プログラム、およびそれらに使用されるCADデータのデータ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
機械系産業において、例えば機械メーカーと部品メーカーとの間で等、異なるCAD(Computer Aided Design)システム間や異なるCADアプリケーション間において三次元CADデータのやりとりが行われている。
その際のCADデータフォーマットとして、現状では、Autodesk社のDXFといったメーカー独自のフォーマットや、IGES,STEPといったIEEE規格のフォーマットが知られている。これらのフォーマットにおけるデータ構造は、プリミティブ形状や多項式近似による幾何情報と、母形状やトリム曲線群といったトリム位置等の位相情報とから構成されている。
【0003】
しかしながら、特に幾何情報は、CAD毎に形状生成モデルが異なるため、幾何情報の扱い方が異なるCADシステム間でデータ交換を行った場合、高い精度でデータ交換を行うことができないという問題がある。例えば、幾何情報としてプリミティブ曲面を扱うCADシステムから、幾何情報としてベジェ曲面(多項式近似)を扱うCADシステムへCADデータを渡す場合、多項式近似による近似誤差が生じる。また、異なるCADシステム間の幾何情報としてプリミティブ形状を扱う場合であっても、そのプリミティブ形状の表現式が異なる場合は、変換誤差が生じてしまう問題があった。
【0004】
このため、自動車工業会では、PDQ(Product Data Quality)ガイドラインを定め、データ交換の際のCADデータ品質問題を改善する取り組みが行われている。このPDQガイドラインは、「エッジ間の隙間」や「面の折れ」などのPDQ評価項目と、各評価項目をどのような値にすれば問題が発生しないかという基準値を示している。
【0005】
しかしながら、上述のPDQガイドラインは、加工や組立て等の製造作業において実用上問題とならない程度の誤差範囲を許容するにすぎず、精確な形状情報を伝えるためのものではない。
【0006】
一方、特許文献1には、三次元形状モデルの自由曲面から生成した法線ベクトル付き三角形メッシュデータに圧縮、保存、転送、伸長等の処理を施すことが可能な、法線ベクトル付きの三角形メッシュを表わすデータ構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−54736号公報
【0008】
しかしながら、上述の特許文献1は、三角形メッシュのデータ構造を保存するものであり、三次元自由曲面の特徴を保存することはできない。三角形メッシュに精確な曲面の特徴情報を持たせるためには、自由曲面(非可展面)を可展面とみなせる程度、すなわち、数学的に等温座標系とみなせる程度にまで三角形メッシュの大きさを細分化する必要があるが、この細分化によって三角形メッシュの数が増えるため、CADデータ量が増大してしまうという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであって、異なるCAD間において、高い精度で、かつデータ量の少ないデータ交換を可能なCADデータ送信方法、CADデータ受信方法、CADデータ送信装置、CADデータ受信装置、CADデータ送信プログラム、およびCADデータ受信プログラム、ならびにデータ構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明の第一の態様は、第1のCADシステムから第2のCADシステムへCADデータを送信するためのCADデータ送信方法であって、コンピュータが、前記CADデータに含まれる三次元座標情報からなる点群の中から複数の代表点を選定する代表点選定過程と、各前記代表点とこの代表点の周りに存在する点群内の複数の点との位置関係に基づいて、各前記代表点における主曲率をそれぞれ算出する主曲率算出過程と、各前記代表点における主曲率に基づいて、曲率線を作成する曲率線作成過程と、前記曲率線同士が交わる曲率線交点と、該曲率線交点近傍の前記代表点との間で関連付けられる第一基本量および第二基本量を算出する基本量算出過程と、各前記曲率線交点の座標値ならびに各前記曲率線交点における前記第一基本量および前記第二基本量をCADデータとして作成し、該CADデータを送信するCADデータ送信過程と、を実行することを特徴とするCADデータ送信方法である。
【0011】
上記本発明の第一の態様によれば、第2のCADシステムに送信されるCADデータに、曲率線交点の座標値と、この曲率線交点および第1のCADシステムに与えられた元のCADデータに含まれる代表点の関連性を表わす位置パラメータ(すなわち、第一基本量および第二基本量)とを送信することができる。したがって、少ないデータ量で元のCADデータから復元される曲面の情報(曲率線格子の交点の座標)を送信することができるとともに、元のCADデータに含まれる与えられた点の情報(座標値)を第二のCADシステムに精確に送信することができる。
【0012】
本発明の第二の態様は、前記第2のCADシステムが前記第1のCADシステムから本発明の第一の態様に係るCADデータ送信方法によって作成された前記CADデータを受信するためのCADデータ受信方法であって、コンピュータが、前記CADデータに含まれる各前記曲率線交点から曲率線および曲率線からなる曲率線格子を生成し、該曲率線格子から曲面を再生する曲面再生過程と、前記CADデータに含まれる各前記曲率線の交点と前記代表点との関連性を表わす位置パラメータである前記第一基本量および前記第二基本量に基づいて、前記代表点の座標値を復元する代表点復元過程と、を実行することを特徴とするCADデータ受信方法である。
【0013】
上記本発明の第二の態様によれば、第2のCADシステムにおいて、曲率線格子の交点の座標から曲面を復元することができるとともに、各曲率線の格子交点に設定された第一基本量および第二基本量から、代表点の座標値を精確に同定することができる。すなわち、第1のCADシステムに与えられた元のCADデータに含まれる点列や点群の位置情報を、第2のCADシステムで再生された曲面に対しても補償することができる。
【0014】
本発明の第三の態様は、第1のCADシステムから第2のCADシステムへCADデータを送信するためのCADデータ送信方法であって、コンピュータが、前記CADデータに含まれる三次元座標情報からなる点群の中から複数の代表点を選定する代表点選定過程と、各前記代表点とこの代表点の周りに存在する点群内の複数の点との位置関係に基づいて、各前記代表点における主曲率をそれぞれ算出する主曲率算出過程と、各前記代表点における主曲率に基づいて、曲率線を作成する曲率線作成過程と、前記曲率線同士が交わる曲率線交点と、該曲率線交点に隣接する隣接曲率線交点との間の第一基本量および第二基本量を算出する隣接曲率線格子圧縮過程と、各前記曲率線交点における前記第一基本量および前記第二基本量ならびに各前記曲率線交点の座標値をCADデータとして送信するCADデータ送信過程と、を実行することを特徴とするCADデータ送信方法である。
【0015】
上記本発明の第三の態様によれば、曲率線交点とこの曲率線交点に隣接する隣接曲率線格子の交点との間の第一基本量および第二基本量を算出し、CADデータとして送信するので、隣接曲率線格子の交点における情報(座標値および基本量)を送信する必要がなく、送信データ量の削減を図ることができる。
【0016】
本発明の第四の態様は、前記第2のCADシステムが前記第1のCADシステムから本発明の第三の態様に係るCADデータ送信方法によって作成された前記CADデータを受信するためのCADデータ受信方法であって、コンピュータが、前記CADデータに含まれる各前記曲率線交点に基づいて曲率線格子を生成し、曲面を再生する曲面再生過程と、各前記曲率線の交点における前記第一基本量および前記第二基本量に基づいて、前記隣接曲率線交点の座標値を復元する隣接曲率線交点復元過程と、を実行することを特徴とするCADデータ受信方法である。
【0017】
上記本発明の第四の態様によれば、第2のCADシステムにおいて、送信されたCADデータに含まれる曲率線交点と第一基本量および第二基本量とから、隣接曲率線格子の交点における情報を同定することができる。これにより、送信されていない隣接曲率線格子の交点における情報(座標値および基本量)を復元することができる。
【0018】
本発明の第五の態様は、CADデータに含まれる三次元座標情報からなる点群内の点の座標値と、1以上の第一基本量および第二基本量のデータセットと、を関連付けて格納したことを特徴とする第1のCADシステムと第2のCADシステムとの間でCADデータの送受信に用いられるデータ構造である。
【0019】
上記本発明の第五の態様によれば、座標値と予め算出された第一基本量および第二基本量とをテーブルに格納しCADデータの送受信を行うことができるので、曲面上の点の座標値の情報だけではなく、これに対応する1以上の曲面上の任意の点の情報(第一基本量および第二基本量)を送受信することが可能になり、異なるCADシステム間においても精確に1以上の曲面上の任意の点を復元することができる。
【0020】
本発明の第六の態様は、第1のCADシステムから第2のCADシステムへCADデータを送信するためのCADデータ送信装置であって、コンピュータが、前記CADデータに含まれる三次元座標情報からなる点群の中から複数の代表点を選定する代表点選定手段と、各前記代表点とこの代表点の周りに存在する点群内の複数の点との位置関係に基づいて、各前記代表点における主曲率をそれぞれ算出する主曲率算出手段と、各前記代表点における主曲率に基づいて、曲率線を作成する曲率線作成手段と、前記曲率線同士が交わる曲率線交点と、該曲率線交点近傍の前記代表点との間で関連付けられる第一基本量および第二基本量を算出する基本量算出手段と、各前記曲率線交点の座標値ならびに各前記曲率線交点における前記第一基本量および前記第二基本量をCADデータとして作成し、該CADデータを送信するCADデータ送信手段と、を実行することを特徴とするCADデータ送信装置である。
【0021】
本発明の第七の態様は、前記第2のCADシステムが前記第1のCADシステムから本発明の第六の態様に係るCADデータ送信装置によって作成された前記CADデータを受信するためのCADデータ受信方法であって、コンピュータが、前記CADデータに含まれる各前記曲率線交点から曲率線および曲率線からなる曲率線格子を生成し、該曲率線格子から曲面を再生する曲面再生手段と、前記CADデータに含まれる各前記曲率線の交点と前記代表点との関連性を表わす位置パラメータである前記第一基本量および前記第二基本量に基づいて、前記代表点の座標値を復元する代表点復元手段と、を実行することを特徴とするCADデータ受信装置である。
【0022】
本発明の第八の態様は、第1のCADシステムから第2のCADシステムへCADデータを送信するためのCADデータ送信装置であって、コンピュータが、前記CADデータに含まれる三次元座標情報からなる点群の中から複数の代表点を選定する代表点選定手段と、各前記代表点とこの代表点の周りに存在する点群内の複数の点との位置関係に基づいて、各前記代表点における主曲率をそれぞれ算出する主曲率算出手段と、各前記代表点における主曲率に基づいて、曲率線を作成する曲率線作成手段と、前記曲率線同士が交わる曲率線交点と、該曲率線交点に隣接する隣接曲率線交点との間の第一基本量および第二基本量を算出する隣接曲率線格子圧縮手段と、各前記曲率線交点における前記第一基本量および前記第二基本量ならびに各前記曲率線交点の座標値をCADデータとして送信するCADデータ送信手段と、を実行することを特徴とするCADデータ送信装置である。
【0023】
本発明の第九の態様は、前記第2のCADシステムが前記第1のCADシステムから本発明の第八の態様に係るCADデータ送信装置によって作成された前記CADデータを受信するためのCADデータ受信装置であって、コンピュータが、前記CADデータに含まれる各前記曲率線交点に基づいて曲率線格子を生成し、曲面を再生する曲面再生手段と、各前記曲率線の交点における前記第一基本量および前記第二基本量に基づいて、前記隣接曲率線交点の座標値を復元する隣接曲率線交点復元手段と、を実行することを特徴とするCADデータ受信装置である。
【0024】
本発明の第十の態様は、第1のCADシステムから第2のCADシステムへCADデータを送信するためのCADデータ送信プログラムであって、コンピュータが、前記CADデータに含まれる三次元座標情報からなる点群の中から複数の代表点を選定する代表点選定ステップと、各前記代表点とこの代表点の周りに存在する点群内の複数の点との位置関係に基づいて、各前記代表点における主曲率をそれぞれ算出する主曲率算出ステップと、各前記代表点における主曲率に基づいて、曲率線を作成する曲率線作成ステップと、前記曲率線同士が交わる曲率線交点と、該曲率線交点近傍の前記代表点との間で関連付けられる第一基本量および第二基本量を算出する基本量算出ステップと、各前記曲率線交点の座標値ならびに各前記曲率線交点における前記第一基本量および前記第二基本量をCADデータとして作成し、該CADデータを送信するCADデータ送信ステップと、を実行することを特徴とするCADデータ送信プログラムである。
【0025】
本発明の第十一の態様は、前記第2のCADシステムが前記第1のCADシステムから本発明の第十の態様に係るCADデータ送信プログラムによって作成された前記CADデータを受信するためのCADデータ受信プログラムであって、コンピュータが、前記CADデータに含まれる各前記曲率線交点から曲率線および曲率線からなる曲率線格子を生成し、該曲率線格子から曲面を再生する曲面再生ステップと、前記CADデータに含まれる各前記曲率線の交点と前記代表点との関連性を表わす位置パラメータである前記第一基本量および前記第二基本量に基づいて、前記代表点の座標値を復元する代表点復元ステップと、を実行することを特徴とするCADデータ受信プログラムである。
【0026】
本発明の第十二の態様は、第1のCADシステムから第2のCADシステムへCADデータを送信するためのCADデータ送信プログラムであって、コンピュータが、前記CADデータに含まれる三次元座標情報からなる点群の中から複数の代表点を選定する代表点選定ステップと、各前記代表点とこの代表点の周りに存在する点群内の複数の点との位置関係に基づいて、各前記代表点における主曲率をそれぞれ算出する主曲率算出ステップと、各前記代表点における主曲率に基づいて、曲率線を作成する曲率線作成ステップと、前記曲率線同士が交わる曲率線交点と、該曲率線交点に隣接する隣接曲率線交点との間の第一基本量および第二基本量を算出する隣接曲率線格子圧縮ステップと、各前記曲率線交点における前記第一基本量および前記第二基本量ならびに各前記曲率線交点の座標値をCADデータとして送信するCADデータ送信ステップと、を実行することを特徴とするCADデータ送信プログラムである。
【0027】
本発明の第十三の態様は、前記第2のCADシステムが前記第1のCADシステムから本発明の第十二の態様に係るCADデータ送信プログラムによって作成された前記CADデータを受信するためのCADデータ受信プログラムであって、コンピュータが、前記CADデータに含まれる各前記曲率線交点に基づいて曲率線格子を生成し、曲面を再生する曲面再生プログラムと、各前記曲率線の交点における前記第一基本量および前記第二基本量に基づいて、前記隣接曲率線交点の座標値を復元する隣接曲率線交点復元プログラムと、を実行することを特徴とするCADデータ受信プログラムである。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、異なるCAD間において、高い精度で、かつデータ量の少ないデータ交換を可能にすることができる。
また、本発明によれば、曲面形状データや曲面上に定義される特徴線などの曲線情報を曲面の点(座標値)および特徴情報(第一基本量および第二基本量)として送受信することができる。つまり、送受信される形状に係るCADデータは、全て点の情報として扱われ、これらの点の情報のみを用いて曲線や曲面を扱うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第一の実施形態に係るCADシステムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第一の実施形態に係るCADシステムにおける送信方法の手順を示したフローチャートである。
【図3】代表点を説明するための説明図である。
【図4】主曲率算出過程を説明するための説明図である。
【図5】主曲率算出過程の手順を示したフローチャートである。
【図6】主曲率算出過程を説明するための説明図である。
【図7】角度−曲率テーブルの一例を示す図である。
【図8】本発明の第一の実施形態に係るCADシステムにおける受信方法の手順を示したフローチャートである。
【図9】本発明の第一の実施形態に係る曲率線格子と入力点列格子との関係を示す模式図である。
【図10】トーラス面における9つの測定点の三次元座標値を表わす図である。
【図11】図10に示された9つの測定点および基準点からの要素ベクトルを示した図である。
【図12】図10に示された9つの測定点に基づいて算出された基本量、主曲率、ガウス曲率、および平均曲率を示した図である。
【図13】トーラス面における9つの測定点の三次元座標値を表わす図である。
【図14】図13に示された9つの測定点および基準点からの要素ベクトルを示した図である。
【図15】図13に示された9つの測定点に基づいて算出された基本量、主曲率、ガウス曲率、および平均曲率を示した図である。
【図16】本発明の第二の実施形態に係るCADシステムにおける送信方法の手順を示したフローチャートである。
【図17】本発明の第二の実施形態に係るCADシステムにおける受信方法の手順を示したフローチャートである。
【図18】本発明の第二の実施形態に係る曲率線格子と隣接曲率線格子との関係を示す模式図である。
【図19】本発明の第三の実施形態に係る法線の算出方法を説明するための模式図である。
【図20】本発明の第四の実施形態に係る曲率線格子、隣接曲率線格子、および入力点列格子の関係を示す模式図である。
【図21】船型における特徴線を示す図である。
【図22】本発明の第五の実施形態に係る曲率線格子と特定データ情報との関係を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
[第一の実施形態]
以下に、本発明に係るCADデータの送信方法および受信方法を実現するCADシステムの第一の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第一の実施形態に係るCADシステムの概略構成を示すブロック図である。図1に示されるように、本実施形態に係るCADシステムは、CPU(中央演算処理装置)1、RAM(Random Access Memory)などの主記憶装置2、HDD(Hard Disk Drive)などの補助記憶装置3、キーボードやマウスなどの入力装置4、およびモニタやプリンタなどの出力装置5などを備えて構成されている。
補助記憶装置3には、各種プログラムが格納されており、CPU1が補助記憶装置3からプログラムをRAMなどの主記憶装置2に読み出し、実行することにより、種々の処理を実現させる。
【0031】
上述のような構成を備えたCADシステムにおいて、他のCADシステムにCADデータを送信するCADデータ送受信処理(CADデータ送信方法およびCADデータ受信方法)について、図面を参照して説明する。なお、以下に示す処理は、例えば、CPU1に補助記憶装置3に格納されている点列生成プログラムをRAMなどの主記憶装置2に読みだして実行することにより実現されるものである。
【0032】
まず、CPU1は、与えられたCADデータに含まれる対象物の曲面を表現する三次元座標情報からなる点群データを取得する。この点群データは、予めCADシステムが内蔵する補助記憶装置3などのメモリに格納されていてもよいし、あるいは、他の外部装置からオンラインにて取り込むようにしてもよい。本発明においては、この点群データの取得手法については、特に限定されない。
【0033】
上述のように点群のデータ(以下「点群」という。)を取得すると、これらの点群の中から複数の代表点を選定する(図2のステップSA1:代表点選定過程)。例えば、図3に示すような点群において、代表点P0として複数の点を選定する。続いて、ステップSA1で選定した各代表点P0と、この代表点P0の周りに存在する複数の点との位置関係に基づいて、各代表点P0における主曲率をそれぞれ算出する(図2のステップSA2:主曲率算出過程)。
【0034】
以下、主曲率算出過程の詳細について、図3に示した点群のうち、任意に選択したエリアQに属する点群を例に挙げて説明する。
まず、図4に示すように、代表点P0と、その周りに存在する各点P1、P2、P3、P4とをそれぞれ結ぶことにより要素ベクトルL01、L02、L03、L04をそれぞれ生成する(図5のステップSB1)。
【0035】
続いて、各要素ベクトルL01,L02,L03,L04の外積を全ての組み合わせにおいて算出することにより、代表点P0における法線ベクトル群(図示略)を求める(図5のステップSB2)。続いて、法線ベクトル群の平均ベクトルを求め、この平均ベクトルを代表点P0における法線ベクトルnとして定める(図5のステップSB3)。
【0036】
次に、この法線ベクトルnと要素ベクトルL01,L02,L03,L04とのそれぞれの関係に基づいて主曲率を求める。具体的には、法線nと直交する接線ベクトルtを設定し、この接線ベクトルtと各要素ベクトルL01、L02、L03、L04とが法線n周りに成す角度をそれぞれ算出するとともに、接線ベクトルを含む接平面と各要素ベクトルL01、L02、L04をそれぞれ含む平面とが成す角度を曲率として算出する(図5のステップSB4)。
【0037】
例えば、図4に示した要素ベクトルL02が代表点P0に対して、図6に示すような関係にある場合、要素ベクトルL02の接平面におけるベクトル成分L02(XY)と接線ベクトルtとが成す角θ2を算出するとともに、要素ベクトルL02を含む平面と接線ベクトルtを含む接平面とが成す角度を曲率K2として求める。
同様にして、図4に示した点P1、P3、及びP4についても、角度θ及び曲率Kを算出する。
【0038】
このようにして、代表点P0の周辺に存在する点について算出が終了すると、これらの算出結果を横軸に角度θを、縦軸に曲率Kを表現した角度−曲率テーブルにプロットし、これらのプロットをオイラーの法則を適用して繋ぐことにより、角度−曲率テーブルを作成する(図5のステップSB5)。この結果、例えば、図7に示すような角度−曲率テーブルが得られる。なお、角度−曲率テーブルへのプロットは、算出と平行して行うようにしてもよい。
【0039】
続いて、この角度−曲率テーブルにおいて、最大曲率Kmaxと最小曲率Kminとを主曲率として取得する(図5のステップSB6)。
そして、図3に示した点群において定めた各代表点について、上述した主曲率算出過程をそれぞれ行うことにより、各代表点における最大曲率Kmaxと最小曲率Kminを取得する。
そして、各代表点における主曲率から主方向が決定される(オイラーの公式から主曲率の最大および最小のそれぞれの主方向は直交する)。この各代表点毎に決定される最大および最小の主方向に沿って線を接続することにより、各代表点において互いに直交する曲率線が作成される(図2のステップSA3:曲率線作成過程)。
【0040】
図9は、代表点P0において設定された直交する曲率線および他の代表点において設定された直交する曲率線によって生成された曲率線格子と、送信側CADシステム(第一のCADシステム)に入力された元のCADデータに含まれる入力点列格子との模式図を示している。ここでは、曲率線格子の直交座標系(uv座標)と入力点列格子の座標系(u’v’座標)とが異なる例を示している。曲率線は、各代表点において設定された全ての曲率線が採用されるわけではなく、必要に応じて間引いて採用することが可能である。したがって、入力点列格子の交点と曲率線格子の交点の座標は必ずしも一致するとは限らない。
【0041】
ここで、曲率線格子の各交点の座標値および入力点列格子の各交点の座標値に基づいて、両者の位置関係を示すパラメータに相当する第一基本量および第二基本量を算出する(図2のステップSA4:基本量算出過程)。第一基本量は、曲面s(u,v)における基本ベクトルをs=∂s/∂u、s=∂s/∂vとすると、E=s、F=s・s、G=sで定義される3つのパラメータである。第二基本量は、曲面上における単位法線ベクトルをn=(s×s)/|s×s|、suu=∂s/∂u、suv=∂s/∂u∂v、svv=∂s/∂vとすると、L=n・suu、M=n・suv、N=n・svvで定義される3つのパラメータである。
このように、基本量は、主曲率などのように曲面形状から一意に決定されるものではなく、基準点と参照点との位置関係によって値が異なる性質を有する。しかし、逆に、基本量は、基準点と参照点とが定まれば、その値は一意に決定されるものである。このような基本量の特徴から、基準点と参照点との位置関係を表わすパラメータとして、基本量を利用することができる。
【0042】
以下、上述した第一基本量および第二基本量、ならびにこれらの基本量に基づいて算出される主曲率、ガウス曲率、および平均曲率の特徴について、図10〜図12および図13〜図15を参照して具体的に説明しておく。
【0043】
図10は、小円半径が2000mm、大円半径が4000mmのトーラス面上のある一点を基準点(図10の点列No.5)とし、この基準点と近傍の8点(参照点)とをそれぞれ測定した測定データの三次元座標値である。これらの9つの測定データは、図11に示されるように、主方向に沿って並んでおり、基準点からの要素ベクトルdu,dvは直交している。
図12は、図10の測定データから算出された第一基本量E,F,Gおよび第二基本量L,M,Nと、これらの基本量から算出された2つの主曲率c11,κ21、ガウス曲率κG1、および平均曲率κm1を示している。
【0044】
一方、図13は、上述した図10と同様に、小円半径が2000mm、大円半径が4000mmのトーラス面上のある一点を基準点(図13の点列No.5)とし、この基準点と近傍の8点(参照点)とをそれぞれ測定した測定データの三次元座標値である。図13における基準点は図10における基準点と等しいが、図13における9つの測定データは、図14に示されるように、基準点からの要素ベクトルdu,dvは斜交している。
図15は、図13の測定データから算出された第一基本量E,F,Gおよび第二基本量L,M,Nと、これらの基本量から算出された2つの主曲率κ12,κ22、ガウス曲率κG2、および平均曲率κm2を示している。
【0045】
図10〜図12と図13〜図15とを比較すればわかるように、同一曲面における基準値の座標値が等しくても、基準点と参照点との位置関係によって、第一基本量および第二基本量の値は変化するが、これらの基本量から算出される主曲率などの値は等しくなる。
【0046】
図9において、曲率線格子である基準点P’0およびこの基準点P’0の近傍にある入力点列格子である参照点R0を例にして説明すると、基準点P’0から参照点R0に向かう要素ベクトルdrおよび基準点P’0から曲率線のv方向に沿う要素ベクトルdvを用いることによって、基準点R0と参照点P’0との位置関係を表わすパラメータである第一基本量および第二基本量を算出することができる。
【0047】
同様にして、曲率線格子の各交点において、近傍にある入力点列格子との間で第一基本量および第二基本量を算出する。図9においては、曲率線格子の各交点につき一つの入力点列格子が対応しているが、これに限定されるわけではなく、一つの曲率線格子の交点につき、複数の入力点列格子を対応させてもよい。
【0048】
上述のようにして得られた曲率線格子の各交点の座標値と、これらの各交点に対応する第一基本量および第二基本量とをセットにして、表1に示されるようなデータ構造を有するテーブルに格納し、受信側CADシステム(第二のCADシステム)に送信する(図2のステップSA5:CADデータ送信過程)。
【0049】
なお、表1において、P#1〜#nは、各代表点に相当するインデックス、X1〜n,Y1〜n,Z1〜nは座標値を表わしている。また、E1〜n,F1〜n,G1〜nは第一基本量を、L1〜n,M1〜n,N1〜nは第二基本量を表わしている。Kind1〜nは、例えば、座標値が曲率線格子の交点の座標データなのか、あるいは入力点列格子の交点の座標データなのか等の種類区分に利用する。本実施形態の場合は、Kind1〜nには曲率線格子の交点の座標データであることを示す種類区分がセットされる。FLGは、例えば機能選択等に使用することができる。表1では、各座標値に対してひとつの第一基本量および第二基本量がセットされているが、これに限られるものではなく、ひとつの座標値に対して複数の第一基本量および第二基本量がセットされてもよい。
【0050】
【表1】

【0051】
受信側CADシステムでは、まず、上記のデータ構造を有するテーブルを受信する(図8のステップSC1:CADデータ受信過程)。上記テーブルにおける曲率線格子の交点の座標値および当該交点の周りの曲率線格子の交点に基づいて、曲率線を復元する(図8のステップSC2:曲率線復元過程)。
そして、この曲率線を用いて曲面再生技術によって、曲面を復元する(図8のステップSC3:曲面復元過程)。例えば、曲率線に基づいて、ガウス写像・逆写像を行い、曲面を復元する。具体的には、ユークリッド幾何が成り立つパラメータ空間への座標変換を行った後、曲面の補間をすることにより曲面を復元する。
【0052】
その後、曲率線格子の各交点に設定された第一基本量および第二基本量から入力点列格子の各代表点を復元する(図8のステップSC4:代表点復元過程)。具体的には、曲面復元過程において復元された曲面上において各曲率線格子近傍を検索し、各曲率線格子近傍における第一基本量および第二基本量が、上記テーブル内に格納された各曲率線格子に対応する第一基本量および第二基本量と一致する点を同定する。一致した点が入力格子点列に含まれる座標となる。
【0053】
本実施形態によれば、受信側CADシステムに送信されるCADデータに、曲率線交点の座標値と、曲率線交点および元のCADデータの関連性を表わす位置パラメータ(すなわち、第一基本量および第二基本量)とを格納して送信することができる。したがって、少ないデータ量で元のCADデータに含まれる点の座標値を送信することができるとともに、元のCADデータから復元される曲面の情報を受信側CADシステムに精確に送信することができる。また、受信側CADシステムでは、送信側CADシステムから送信されたCADデータに基づいて、精確な曲面を復元することができるとともに、元のCADデータに含まれる点の座標値あるいは実測した点の座標値を復元することができる。
【0054】
[第二の実施形態]
次に、本発明の第二の実施形態に係るCADデータ送受信方法について、図面を参照して説明する。
本実施形態に係るCADデータ送受信方法が第一の実施形態に係るCADデータ送受信方法と異なる点は、送信側CADシステムの隣接曲率線格子圧縮処理(図16のステップSA4’:隣接曲率線格子圧縮過程)において曲率線格子の情報を圧縮し、受信側CADシステムの隣接曲率線格子復元処理(図17のステップSC4’:隣接曲率線格子復元過程)において、圧縮された曲率線格子を復元することである。本実施形態における基本量算出過程では、曲率線格子の交点とこの交点に隣接する曲率線の交点とに基づいて、第一基本量および第二基本量を算出する。
【0055】
図18は、送信側CADシステムにおいて、曲率線作成処理までが終了した状態を示している。図18において、曲率線は直交するuv座標系を形成している。
以下に、例として図18の曲率線格子点Pf1について具体的に説明する。
曲率線格子点Pf1において、隣接する曲率線格子点R1に対する要素ベクトルdrと、曲率線のv方向に沿う要素ベクトルdvとに基づいて、第一基本量および第二基本量を算出する。ここで算出された第一基本量および第二基本量は、曲率線格子点Pf1に対する参照点R1の位置関係を表わすパラメータに相当する。したがって、曲率線格子点Pf1が、隣接する曲率線格子点R1との間の第一基本量および第二基本量を対応づけて送信用テーブルに格納することにより、受信側CADシステムでは隣接曲率線格子点R1の座標値情報がなくても、送信された曲率線格子点および対応する第一基本量および第二基本量から、隣接曲率線格子点R1を復元することができる。
【0056】
本実施形態によれば、上述したように、曲率線格子の交点の座標と、この曲率線格子の交点に隣接する曲率線格子の交点の位置関係を示す第一基本量および第二基本量とを送信するので、送信する曲率線格子の点数を削減することができる。これにより、転送データの圧縮が高精度に可能となり、データ量の削減および計算時間の削減を図ることができる。
【0057】
[第三の実施形態]
本実施形態に係るCADデータ送受信方法が第二の実施形態に係るCADデータ送受信方法と異なる点は、受信側CADシステムにおいて、曲面再生の際に用いられる法線の算出方法が改良されている点である。
図19に示されるように、曲率線格子点である基準点Pにおける法線Nを算出するに際し、まず、送信側CADシステムから送信されたCADデータに含まれる基準点Pf1近傍の曲率線格子点Pf2、Pf3、Pf4、およびPf5に基づいて、それぞれの要素ベクトルの外積により法線ベクトルncを算出する。さらに、基準点Pf1と基準点Pf1近傍の曲率線格子点に格納された第一基本量および第二基本量とによって復元された点Qr1、Qr2、Qr3、およびQr4に基づいて、それぞれの要素ベクトルの外積により法線nrを算出する。これらの法線nr、ncによって平均法線Nを算出する。
【0058】
本実施形態によれば、受信側CADシステムにおいて、曲率線格子によって形成される要素ベクトルから法線を求めるだけでなく、基準となる曲率線格子点とこの曲率線格子点に隣接する曲率線格子点の第一基本量および第二基本量とから圧縮された(間引かれた)点を復元して新たに作成された要素ベクトルを用いて法線を求めることが可能になる。
これにより、要素ベクトルの数が増加するので、法線精度をより高めることができる。また、基準となる曲率線格子点と第一基本量および第二基本量から復元する点との間隔が、基準となる曲率線格子点と隣接する4つの曲率線格子点との間隔よりも短くなるため、要素ベクトルの長さをより略均等にすることができるため、法線精度を高めることができる。
なお、この法線算出方法は、上述の第一の実施形態とも組み合わせて用いることが可能である。
【0059】
[第四の実施形態]
第四の実施形態に係るCADデータの送受信方法は、上述の第一の実施形態および第二の実施形態に係るCADデータの送受信方法を組み合わせた方法である。すなわち、図20に示されるように、曲率線格子上のある基準点P0において、基準点P0およびこの基準点P0に隣接する曲率線格子の交点P’1に基づく第一基本量および第二基本量を算出するとともに、隣接曲率線格子点P’1およびこの隣接曲率線格子点P’1近傍の入力点列格子点R1に基づく第一基本量および第二基本量とを算出し、これらをCADデータとして送信用テーブルにセットし、受信側CADシステムに送信する。
【0060】
なお、ここで使用される送信用テーブルとして、表1のデータ構造を有するテーブルを使用することができる。ただし、この場合、ひとつの基準点につき複数の第一基本量および第二基本量を対応させる必要があるため、ひとつのインデックスに対して複数の第一基本量および第二基本量が格納されることとなる。
【0061】
本実施形態によれば、曲率線格子点に隣接する点との位置関係を第一基本量および第二基本量として与えて隣接曲率線格子点を圧縮して(間引いて)データを送信しても、受信側CADシステムにおいて曲面再生時に隣接曲率線格子点を復元することができるので、データ量と計算量を少なくしつつ、高精度に曲面を再生することができる。さらに、この隣接曲率線格子点の近傍の入力点列格子として与えられた点列・点群の補償も可能となる。
【0062】
[第五の実施形態]
第五の実施形態に係るCADデータの送受信方法が上述の第一の実施形態に係るCADデータの送受信方法と異なる点は、基本量算出過程において、特定データ情報の埋込処理を行う点である。
特定データ情報とは、輪郭線、縦断面線、水平断面線、および横断面線のような特徴線に関する情報である。図21に船型の特定データ情報の例を示す。
【0063】
以下、特定データ情報の埋込処理について、図22を用いて説明する。図22は、送信側CADシステムにおいて生成された曲面の一部を抜粋した模式図である。5×5点の曲率線格子点があり、各曲率線格子点間は曲率線で接続されている。図22において、略左右に走る太い3本の点線が特徴線(図21におけるWL(水平断面線)に相当)を表わしている。
【0064】
図22において、一番上に位置する特徴線について着目して説明する。4つの曲率線格子によって形成された曲率線メッシュの内部にある特徴線上の特定データ情報を有する点Pc2を選択し、特徴線上にある曲率線格子点Pc3を挟み対向する位置にある特徴線上の特定データPc4を選択する。他の特徴線についても同様に選択し、全体として9点の組を選択する。これらを与えられた点列・点群の情報として利用するために、これらの9点の組を用いて曲面解析を行い、Pc0における第一基本量および第二基本量を算出する。これらの第一基本量および第二基本量を曲率線交点Pc0の情報として加え、送信用テーブルに格納する。この処理は曲面全体にわたって行われる。
【0065】
本実施形態における第一基本量および第二基本量の算出方法は、上記のような9点の組を用いて算出する方法に限定されず、例えば第一の実施形態に記載した方法により算出してもよい。すなわち、基準点Pc0からPc1へ向かう要素ベクトルと、曲率線の一つの方向に沿う要素ベクトルとを用いて、第一基本量および第二基本量を算出してもよい。
【0066】
なお、特徴線上の特定データ情報を選択するのに際し、この処理の時点で既に曲面が生成されているので、曲面上の任意の位置において曲率線を設定することが可能である。したがって、特徴線上で特定データとして3点を選択し、その中央の点(本実施例の場合、Pc0,Pc3,Pc7)が曲率線格子となるように曲率線を設定することが可能となる。
これにより、再生側CADシステムにおいて曲率線格子点と第一基本量および第二基本量とを用いて、予め与えられた特徴線上の特徴データ情報を復元することができる。
【0067】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
上記の実施形態においては、本発明を主曲率がゼロ、すなわち、曲率が接平面に対して全てゼロである平面を除く可展面と、主曲率が同一となる球面を除く非可展面を含む、自由曲面に対して適用してきたが、例えば、曲率線の代わりに平面に対しては直線を、球面に対しては測地線を用いて、それぞれの線の交点が直交するように、直線あるいは測地線を選択することによって、平面および球面にも適用することができる。
なお、主曲率とは、法断面の曲率である法曲率が最大と最小となるそれぞれの法曲率のことである。
【符号の説明】
【0068】
1 CPU
2 主記憶装置
3 補助記憶装置
4 入力装置
5 出力装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のCADシステムから第2のCADシステムへCADデータを送信するためのCADデータ送信方法であって、
コンピュータが、
前記CADデータに含まれる三次元座標情報からなる点群の中から複数の代表点を選定する代表点選定過程と、
各前記代表点とこの代表点の周りに存在する点群内の複数の点との位置関係に基づいて、各前記代表点における主曲率をそれぞれ算出する主曲率算出過程と、
各前記代表点における主曲率に基づいて、曲率線を作成する曲率線作成過程と、
前記曲率線同士が交わる曲率線交点と、該曲率線交点近傍の前記代表点との間で関連付けられる第一基本量および第二基本量を算出する基本量算出過程と、
各前記曲率線交点の座標値ならびに各前記曲率線交点における前記第一基本量および前記第二基本量をCADデータとして作成し、該CADデータを送信するCADデータ送信過程と、
を実行することを特徴とするCADデータ送信方法。
【請求項2】
前記第2のCADシステムが前記第1のCADシステムから請求項1に記載のCADデータ送信方法によって作成された前記CADデータを受信するためのCADデータ受信方法であって、
コンピュータが、
前記CADデータに含まれる各前記曲率線交点から曲率線および曲率線からなる曲率線格子を生成し、該曲率線格子から曲面を再生する曲面再生過程と、
前記CADデータに含まれる各前記曲率線の交点と前記代表点との関連性を表わす位置パラメータである前記第一基本量および前記第二基本量に基づいて、前記代表点の座標値を復元する代表点復元過程と、
を実行することを特徴とするCADデータ受信方法。
【請求項3】
第1のCADシステムから第2のCADシステムへCADデータを送信するためのCADデータ送信方法であって、
コンピュータが、
前記CADデータに含まれる三次元座標情報からなる点群の中から複数の代表点を選定する代表点選定過程と、
各前記代表点とこの代表点の周りに存在する点群内の複数の点との位置関係に基づいて、各前記代表点における主曲率をそれぞれ算出する主曲率算出過程と、
各前記代表点における主曲率に基づいて、曲率線を作成する曲率線作成過程と、
前記曲率線同士が交わる曲率線交点と、該曲率線交点に隣接する隣接曲率線交点との間の第一基本量および第二基本量を算出する隣接曲率線格子圧縮過程と、
各前記曲率線交点における前記第一基本量および前記第二基本量ならびに各前記曲率線交点の座標値をCADデータとして送信するCADデータ送信過程と、
を実行することを特徴とするCADデータ送信方法。
【請求項4】
前記第2のCADシステムが前記第1のCADシステムから請求項3に記載のCADデータ送信方法によって作成された前記CADデータを受信するためのCADデータ受信方法であって、
コンピュータが、
前記CADデータに含まれる各前記曲率線交点に基づいて曲率線格子を生成し、曲面を再生する曲面再生過程と、
各前記曲率線の交点における前記第一基本量および前記第二基本量に基づいて、前記隣接曲率線交点の座標値を復元する隣接曲率線交点復元過程と、
を実行することを特徴とするCADデータ受信方法。
【請求項5】
CADデータに含まれる三次元座標情報からなる点群内の点の座標値と、
1以上の第一基本量および第二基本量のデータセットと、
を関連付けて格納したことを特徴とする第1のCADシステムと第2のCADシステムとの間でCADデータの送受信に用いられるデータ構造。
【請求項6】
第1のCADシステムから第2のCADシステムへCADデータを送信するためのCADデータ送信装置であって、
コンピュータが、
前記CADデータに含まれる三次元座標情報からなる点群の中から複数の代表点を選定する代表点選定手段と、
各前記代表点とこの代表点の周りに存在する点群内の複数の点との位置関係に基づいて、各前記代表点における主曲率をそれぞれ算出する主曲率算出手段と、
各前記代表点における主曲率に基づいて、曲率線を作成する曲率線作成手段と、
前記曲率線同士が交わる曲率線交点と、該曲率線交点近傍の前記代表点との間で関連付けられる第一基本量および第二基本量を算出する基本量算出手段と、
各前記曲率線交点の座標値ならびに各前記曲率線交点における前記第一基本量および前記第二基本量をCADデータとして作成し、該CADデータを送信するCADデータ送信手段と、
を実行することを特徴とするCADデータ送信装置。
【請求項7】
前記第2のCADシステムが前記第1のCADシステムから請求項6に記載のCADデータ送信装置によって作成された前記CADデータを受信するためのCADデータ受信方法であって、
コンピュータが、
前記CADデータに含まれる各前記曲率線交点から曲率線および曲率線からなる曲率線格子を生成し、該曲率線格子から曲面を再生する曲面再生手段と、
前記CADデータに含まれる各前記曲率線の交点と前記代表点との関連性を表わす位置パラメータである前記第一基本量および前記第二基本量に基づいて、前記代表点の座標値を復元する代表点復元手段と、
を実行することを特徴とするCADデータ受信装置。
【請求項8】
第1のCADシステムから第2のCADシステムへCADデータを送信するためのCADデータ送信装置であって、
コンピュータが、
前記CADデータに含まれる三次元座標情報からなる点群の中から複数の代表点を選定する代表点選定手段と、
各前記代表点とこの代表点の周りに存在する点群内の複数の点との位置関係に基づいて、各前記代表点における主曲率をそれぞれ算出する主曲率算出手段と、
各前記代表点における主曲率に基づいて、曲率線を作成する曲率線作成手段と、
前記曲率線同士が交わる曲率線交点と、該曲率線交点に隣接する隣接曲率線交点との間の第一基本量および第二基本量を算出する隣接曲率線格子圧縮手段と、
各前記曲率線交点における前記第一基本量および前記第二基本量ならびに各前記曲率線交点の座標値をCADデータとして送信するCADデータ送信手段と、
を実行することを特徴とするCADデータ送信装置。
【請求項9】
前記第2のCADシステムが前記第1のCADシステムから請求項8に記載のCADデータ送信装置によって作成された前記CADデータを受信するためのCADデータ受信装置であって、
コンピュータが、
前記CADデータに含まれる各前記曲率線交点に基づいて曲率線格子を生成し、曲面を再生する曲面再生手段と、
各前記曲率線の交点における前記第一基本量および前記第二基本量に基づいて、前記隣接曲率線交点の座標値を復元する隣接曲率線交点復元手段と、
を実行することを特徴とするCADデータ受信装置。
【請求項10】
第1のCADシステムから第2のCADシステムへCADデータを送信するためのCADデータ送信プログラムであって、
コンピュータが、
前記CADデータに含まれる三次元座標情報からなる点群の中から複数の代表点を選定する代表点選定ステップと、
各前記代表点とこの代表点の周りに存在する点群内の複数の点との位置関係に基づいて、各前記代表点における主曲率をそれぞれ算出する主曲率算出ステップと、
各前記代表点における主曲率に基づいて、曲率線を作成する曲率線作成ステップと、
前記曲率線同士が交わる曲率線交点と、該曲率線交点近傍の前記代表点との間で関連付けられる第一基本量および第二基本量を算出する基本量算出ステップと、
各前記曲率線交点の座標値ならびに各前記曲率線交点における前記第一基本量および前記第二基本量をCADデータとして作成し、該CADデータを送信するCADデータ送信ステップと、
を実行することを特徴とするCADデータ送信プログラム。
【請求項11】
前記第2のCADシステムが前記第1のCADシステムから請求項10に記載のCADデータ送信プログラムによって作成された前記CADデータを受信するためのCADデータ受信プログラムであって、
コンピュータが、
前記CADデータに含まれる各前記曲率線交点から曲率線および曲率線からなる曲率線格子を生成し、該曲率線格子から曲面を再生する曲面再生ステップと、
前記CADデータに含まれる各前記曲率線の交点と前記代表点との関連性を表わす位置パラメータである前記第一基本量および前記第二基本量に基づいて、前記代表点の座標値を復元する代表点復元ステップと、
を実行することを特徴とするCADデータ受信プログラム。
【請求項12】
第1のCADシステムから第2のCADシステムへCADデータを送信するためのCADデータ送信プログラムであって、
コンピュータが、
前記CADデータに含まれる三次元座標情報からなる点群の中から複数の代表点を選定する代表点選定ステップと、
各前記代表点とこの代表点の周りに存在する点群内の複数の点との位置関係に基づいて、各前記代表点における主曲率をそれぞれ算出する主曲率算出ステップと、
各前記代表点における主曲率に基づいて、曲率線を作成する曲率線作成ステップと、
前記曲率線同士が交わる曲率線交点と、該曲率線交点に隣接する隣接曲率線交点との間の第一基本量および第二基本量を算出する隣接曲率線格子圧縮ステップと、
各前記曲率線交点における前記第一基本量および前記第二基本量ならびに各前記曲率線交点の座標値をCADデータとして送信するCADデータ送信ステップと、
を実行することを特徴とするCADデータ送信プログラム。
【請求項13】
前記第2のCADシステムが前記第1のCADシステムから請求項12に記載のCADデータ送信プログラムによって作成された前記CADデータを受信するためのCADデータ受信プログラムであって、
コンピュータが、
前記CADデータに含まれる各前記曲率線交点に基づいて曲率線格子を生成し、曲面を再生する曲面再生プログラムと、
各前記曲率線の交点における前記第一基本量および前記第二基本量に基づいて、前記隣接曲率線交点の座標値を復元する隣接曲率線交点復元プログラムと、
を実行することを特徴とするCADデータ受信プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2011−180786(P2011−180786A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−43516(P2010−43516)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(591099186)株式会社パル構造 (10)
【Fターム(参考)】