CDO型高シリカゼオライトの前駆体となる層状ケイ酸塩及びその製造方法
【課題】CDO型高シリカゼオライトの前駆体となる結晶性層状ケイ酸塩及びその製造方法等を提供する。
【解決手段】結晶性層状ケイ酸塩カネマイトを酸処理したH型カネマイトに、ジエチルジメチルアンモニウムヒドロキシド(DEDMAOH)水溶液を、モル比がDEDMAOH/Si=0.10−0.15、H2O/Si=5−8の範囲となるように加えたものを圧力容器に入れ、所定の温度、24−48時間の加熱条件にて、水蒸気雰囲気下で固相反応させる、前駆体結晶性層状ケイ酸塩の製造方法、上記前駆体結晶性層状ケイ酸塩を加熱、脱水重縮合させた高比表面積CDO型高シリカゼオライト。
【効果】CDO型高シリカゼオライトの前駆体の新規結晶性層状ケイ酸塩、その製造方法、CDO型高シリカゼオライトの製造方法及び高比表面積の新しいCDO型高シリカゼオライトを提供できる。
【解決手段】結晶性層状ケイ酸塩カネマイトを酸処理したH型カネマイトに、ジエチルジメチルアンモニウムヒドロキシド(DEDMAOH)水溶液を、モル比がDEDMAOH/Si=0.10−0.15、H2O/Si=5−8の範囲となるように加えたものを圧力容器に入れ、所定の温度、24−48時間の加熱条件にて、水蒸気雰囲気下で固相反応させる、前駆体結晶性層状ケイ酸塩の製造方法、上記前駆体結晶性層状ケイ酸塩を加熱、脱水重縮合させた高比表面積CDO型高シリカゼオライト。
【効果】CDO型高シリカゼオライトの前駆体の新規結晶性層状ケイ酸塩、その製造方法、CDO型高シリカゼオライトの製造方法及び高比表面積の新しいCDO型高シリカゼオライトを提供できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規結晶性層状ケイ酸塩に関するものであり、更に詳しくは、CDO型高シリカゼオライトの前駆体となる新規結晶性層状ケイ酸塩及びその製造方法に関するものである。本発明は、分離剤、吸着剤、形状選択性固体触媒、イオン交換剤、クロマトグラフィー充填剤、化学反応場、建築材などに用いることのできる、耐熱性に優れた高シリカゼオライトを得るための前駆体化合物となる新規な結晶性層状ケイ酸塩を提供し、この新規な結晶性層状ケイ酸塩について、既存の結晶性層状ケイ酸塩を原料に用い、固相から固相へ相転移反応させることにより迅速に製造する方法、及び当該結晶性層状ケイ酸塩を前駆体とする高比表面積のCDO型高シリカゼオライトを提供するものである。
【背景技術】
【0002】
ゼオライトは、原子レベルで規則的に配列したマイクロ孔(3−20Å)を有し、骨格構造の構成元素がSi、Al、Oからなるアルミノシリケート型、Si、Oのみからなるハイシリカ(ピュアシリカ)型に主に分類することができる。ゼオライトは、形状選択的な、あるいは骨格構造に起因した、化学的・物理的吸着作用を持つことより、例えば、モレキュラーシーブ(分子ふるい)、分離吸着剤、イオン交換体、触媒反応としての機能を有する。天然及び合成ゼオライトとして、160種類以上の構造が知られており、それと骨格元素の組成を組み合わせることで、目的に合わせた化学的性質や構造安定性、耐熱性を兼ね備えた多孔質材料として、石油化学を中心とする幅広い産業分野で用いられている。
【0003】
それぞれのゼオライトは、規則的な細孔を形成する幾何学的な骨格構造により区別され、一義的なX線回折パターンを与えることから、実験的に区別することができる。すなわち、骨格構造(結晶構造)は、ゼオライトの細孔の形や大きさを規定している。各ゼオライトの吸着特性や機械的強度、固体酸の性能は、部分的には、その細孔の形や大きさ、骨格を構成する組成で決まる。従って、特定の応用を考えた場合、ある特定のゼオライトの有用性は、少なくとも部分的には、その結晶構造や組成に依存する。
【0004】
高シリカ組成のゼオライトは、耐熱性、疎水性という2つの点で、低シリカ組成よりも優れており、一般に、充分な機械的強度を備えている。これらの性質は、ゼオライトを分離剤や触媒として使用する場合に重要である。ゼオライト合成研究の初期の段階では、シリカ/アルミナ比の低い生成物しか得られていなかったが、シリカ源からなる出発ゲル中に有機構造規程剤(Organic Structure Directing Agent: OSDA)を加えることで、シリカ/アルミナ比が非常に高い組成を持つゼオライト合成が可能になった(非特許文献1)。
【0005】
ゼオライトは、一般に、水熱合成法、すなわち、大量の水とシリカ源、アルミニウム源、アルカリ金属、及びアミン類などのOSDAを、所望の化学組成になるように調合し、オートクレーブ等の圧力容器にそれらを封じ込め、加熱することにより、自己圧下で製造されている。ここで、OSDAは、生成するゼオライトの細孔を形成するための鋳型剤として機能し、主にアミン分子が用いられている。近年、触媒・材料分野では、より大孔径の高シリカゼオライトへの要望が高まっており、多くの研究がなされているが、製造コストやOSDAの設計・合成が容易ではないため、実用化可能なものは少ない。
【0006】
一方、多量の水を用いずに、固相から固相への相転移に似た反応を使って層状ケイ酸塩からゼオライト又はマイクロポーラス構造体へ構造変化させる技術が報告されている。研究例は少ないものの、合成可能な既知構造のゼオライトとして、MFI型(シリカライト−1)とMEL型ゼオライト(シリカライト−2)が報告されている(特許文献1、2、非特許文献2〜6)。
【0007】
これらによれば、固相反応では、原料に層状ケイ酸塩の粉末結晶と有機アミン分子、更に僅量の水を加え、オートクレーブを用いて加熱するだけで上記ゼオライトが得られるとされる。また、この反応は、反応時間が数時間から24時間程度と、水熱合成法に比べ、迅速な合成法であることが大きな特徴である。また、この反応では、水熱合成に比べ、必要な原料を最小限に減らすことができることから、低コスト化が期待される。しかしながら、上記相転移に似た反応では、生成物の構造と出発物質である層状ケイ酸塩の構造に類似性や共通性がないものが多いため、どのようなメカニズムで相転移しているのかが明らかではないという問題も指摘されている。
【0008】
また、近年、新しい手法として、結晶性層状ケイ酸塩の層状構造を脱水重縮合反応により架橋することで、高シリカゼオライトを得る方法が報告されている。例えば、結晶性層状ケイ酸塩PLS−1は、CDO型高シリカゼオライトの前駆体として最近見いだされ、このPLS−1を焼成するだけで、CDO型高シリカゼオライトが得られる(特許文献3〜6、非特許文献7)。
【0009】
本発明で得られる、新規結晶性層状ケイ酸塩は、CDO型高シリカゼオライトに変換可能な前駆体であり、先のPLS−1と同様に、焼成するだけで、層間が脱水重縮合反応によって架橋し、そこに、新たに細孔が形成されることで、CDO型高シリカゼオライトへと構造変化する。一方、PLS−1についても、固相反応による迅速合成について報告された。これにより、必要最小限の原料を用いて、合成時間は24時間程度で、PLS−1が得られるようになった(特許文献7)。いずれの製法においても、前駆体PLS−1からのみCDO型高シリカゼオライトが得られ、このCDO型高シリカゼオライトは、一般的な一段式の水熱合成法では得られていない。
【0010】
これまでのPLS−1の製造法では、物質を構成するシリカとアミン分子であるテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAOH)の他に、生成物には殆ど含まれないものの、その結晶化のために、アルカリ源や1,4−dioxaneを必要とし、合成時間も10日以上必要であった。また、従来の水熱法及び先に述べた固相反応法で合成されたPLS−1からのCDS−1への変換では、焼成条件に敏感で、場合によっては、結晶が壊れることも少なくなく、また、得られたCDS−1の結晶性がそれほど高くないことから、利用拡大を進める上で、それらの改善が課題となっている。
【0011】
産業利用を目指した高シリカゼオライトの合成においては、少ない原料消費と高いエネルギー効率で合成可能とすると同時に、再現性の容易さや結晶性の向上、更には、環境への配慮なども十分に考慮することが課題であり、これらを踏まえた、より高性能なCDO型高シリカゼオライトの製造法を確立するために、PLS−1以外の新たな前駆体化合物の探索・合成が必要であると考えられる。
【0012】
【特許文献1】特開2004−276817号公報
【特許文献2】特開平8−319112号公報
【特許文献3】特開2004−175661号公報
【特許文献4】特開2005−041763号公報
【特許文献5】特開2004−339044号公報
【特許文献6】特開2005−194113号公報
【特許文献7】特願2006−168209号
【非特許文献1】R. M. Barrer 1982, Hydrothermal Chemistry of Zeolites, New York: Academic Press inc. pp. 157-170
【非特許文献2】M. Salou, Y. Kiyozumi, F. Mizukami, P. Nair, K. Maeda and S. Niwa, J. Mater. Chem, 8(9), 2125-2132 (1998)
【非特許文献3】F. Kooli, Y. Kiyozumi and F. Mizukami, New J. Chem, 25, 1613-1620 (2001)
【非特許文献4】F. Kooli, Y. Kiyozumi, V. Rives and F. Mizukami, Langmuir, 18, 4103-4110 (2002)
【非特許文献5】F. Kooli, F. Mizukami, Y. Kiyozumia and Y. Akiyama, J. Mater. Chem, 11, 1946-1950 (2001)
【非特許文献6】F. Kooli, J. Mater. Chem, 12, 1374-1380 (2002)
【非特許文献7】T. Ikeda, Y. Akiyama, Y. Oumi, A. Kawai, F. Mizukami, Angew. Chem. Int. Ed., 43. 4892-4895 (2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、従来の固相合成技術を拡張して、様々な結晶性層状ケイ酸塩とアミン分子との組み合わせを検討し、合成と分析・解析を行っていく過程で、本発明を見いだすに至った。すなわち、本発明は、水蒸気雰囲気下での固相反応によりCDO型高シリカゼオライトの前駆体となる、PLS−1と異なる新規な結晶性層状ケイ酸塩を、より簡便で、短時間で合成できる製造方法を提供し、これにより、新規結晶性層状ケイ酸塩を加熱するだけで、従来法と比べ、よりガス吸着特性の優れた高比表面積のCDO型高シリカゼオライトを得ることが可能となる新規結晶性層状ケイ酸塩の製造方法、その結晶性層状ケイ酸塩、高比表面積のCDO型高シリカゼオライトの製造方法、及びそのCDO型高シリカゼオライトを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
すなわち、本発明は、(1)結晶性層状ケイ酸塩カネマイト(kanemite)を酸処理したH−kanemiteに、ジエチルジメチルアンモニウムヒドロキシド(Diethyldimethylammonium hydroxide[(C2H5)2(CH3)2N(OH)]: DEDMAOH)水溶液を、モル比がDEDMAOH/Si = 0.10−0.15、H2O/Si = 5−8の範囲となるように加えたものを圧力容器(オートクレーブ)に入れ、例えば、170℃程度の温度、24−48時間での加熱条件にて、水蒸気雰囲気下の固相反応させることで得られる新規な結晶性層状ケイ酸塩とその製造方法を提供する。また、本発明は、(2)上記(1)に示す結晶性層状ケイ酸塩において、表2に示される回折ピーク位置と相対強度の関係を持ち、図5に代表される粉末X線回折図形によって示される結晶構造を有した結晶性層状ケイ酸塩を提供し、更に、(3)上記(1)及び(2)に示す結晶性層状ケイ酸塩において、図7に代表されるようなケイ素5員環(酸素5員環)を有するSi−Oの共有結合を有した層状の結晶構造からなる結晶性層状ケイ酸塩を提供する。
【0015】
【表2】
【0016】
また、本発明は、(4)上記(1)から(3)に示す結晶性層状ケイ酸塩を大気中にて、例えば、600℃程度で加熱し、脱水重縮合させることで得られるCDO型高シリカゼオライトの製造方法を提供する。更に、本発明は、(5)上記(4)に示すCDO型高シリカゼオライトにおいて、アルゴンガス吸着測定から平均細孔径5.2Åのミクロ孔及び350m2/g以上の高比表面積を有する高比表面積のCDO型高シリカゼオライトの製造方法、及びそのCDO型高シリカゼオライトを提供するものである。
【0017】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、結晶性層状ケイ酸塩の製造方法であって、結晶性層状ケイ酸塩を酸処理したH型結晶性層状ケイ酸塩に、有機構造規程剤(OSDA)水溶液を加えたものを圧力容器(オートクレーブ)に入れ、水蒸気雰囲気下で固相反応させることにより、CDO型高シリカゼオライトの前駆体結晶性層状ケイ酸塩を合成することを特徴とするものであり、本発明では、上記有機構造規程剤(OSDA)が、有機アミン分子であること、を好ましい実施に態様としている。
【0018】
はじめに、本発明で好適に使用される結晶性層状ケイ酸塩のカネマイトについて述べる。カネマイトの単位格子内における化学組成は、それぞれSi8O16(OH)4・[Na4(H2O)3]8で定義され、図1に代表されるような結晶構造を有している。図の結晶構造モデルは、Si、O、Na(H2O)6で構成される。Si−Oの4面体配位の繰り返し単位をシリケート基本構造に持ち、層間には、Naイオンと水分子を規則的に挟んだ構造を有している(文献:S. Vortmann, J. Rius, B. Marler and H. Gies, European Journal of Mineralogy, 11, 125-134 (1999))。
【0019】
本発明の方法で用いるカネマイトは、いかなる方法で合成されたものでも構わないが、上記の化学組成と文献で定義された結晶構造を有していることが必要条件である。本発明では、カネマイトの合成は、合成例を示すと、例えば、市販される結晶性層状ケイ酸ソーダ、具体的には、株式会社トクヤマシルテック製SKS−6(又はその同等品であるプリフィールド)30gを蒸留水500mlに室温にて3時間浸した後、遠心分離により分離した沈殿物のみを採取し、乾燥機で50℃、12時間乾燥させることで合成することができ、また、この合成例に準じて任意の合成条件で合成することができる。
【0020】
本発明において、固相反応で用いる有機アミン分子は、構造規程剤としての役割を果たすと考えられ、出発源に結晶性層状ケイ酸塩を用いることから、層間内にアクセスでき、層間を広げられる。また、この構造規程剤については、シリケート骨格構造を形成する鋳型としての作用を有するものであれば、従来公知のものが全て使用できる。本発明で好ましく使用される有機構造規程剤は、ジエチルジメチルアンモニウムヒドロキシド(Diethyldimethylammonium hydroxide[(C2H5)2(CH3)2N(OH)]:DEDMAOH)であるが、これに制限されるものではなく、同効のものであれば同様に使用することができる。次に、本発明で目的とする各生成物の製造例について説明するが、本発明は、これらの製造例に制限されるものではなく、当該製造例に準じて製造条件を任意に設定することができる。
【0021】
新規結晶性層状ケイ酸塩:
結晶性層状ケイ酸塩のカネマイトを例に説明すると、カネマイトの酸処理は、カネマイトの結晶を塩酸水溶液中で攪拌するだけで行うことができる。酸処理後のH型カネマイト(H−kanemite)は、化学組成がSi8O16(OH)4となり、層間からナトリウムイオン及び水分子が抜けた状態になっている。この粉末X線回折パターンは、図2に示されるような回折線位置と回折強度を与える。
【0022】
次に、合成例を示すと、例えば、このH型カネマイト粉末0.5gと11wt%濃度のDEDMAOH水溶液(例えば、SIGMA−ALDRICH COrp.SIGMA−ALDRICH Japan K.K.社製、20%水溶液など)1.174g(DEDMAOH/Si=0.15)を、PEFEテフロン(登録商標)内筒容器を持った内容量23mlのオートクレーブ(Parr社製)に加える。オートクレーブ内の状態を模式的に表したものが図4である。
【0023】
なお、DEDMAOH水溶液の濃度からDEDMAOHに付随してH2Oが1.045g(モル比換算してH2O/Si=7.96)が含まれている。このようにして準備したオートクレーブを、例えば、オーブンにて170℃、24時間の加熱を行う。加熱終了後、十分に冷却し、オートクレーブ内の生成物を吸引濾過により分離し、例えば、それを60℃で乾燥させることで、粉末状の最終生成物を得る。収率は、シリカ源に対し、90%以上で、生成物の色は、少し黄みがかった白色である。この生成物の粉末X線回折パターンは、図5のように与えられ、これより、表3に示される回折ピーク位置と相対強度の関係を持つことを特徴としている。上記加熱は、圧力容器(オートクレーブ)により加熱可能な温度範囲で、24−48時間の加熱条件で行うことが好適である。
【0024】
【表3】
【0025】
このようにして作り出した化合物が層状であることの証明は、29Si DDMAS NMR及び粉末XRDからの構造解析から行うことができる。なお、以下の解析データは、後述する実施例1の試料で解析し、得たものである。29Si DDMAS NMRより解析したSi周りのOの配位環境を図6に示す。スペクトル中には、Q3構造に帰属されるピーク(−104.7ppm)とQ4構造に帰属されるピーク(−111.3,−114.5ppm)が観測される。Q3構造は1個のSiのまわりに3個のSi−Oが存在し、Q4構造では4個のSi−Oが存在していることを表す。
【0026】
Siは4官能性であるため、Q3構造の残り1つの官能基はSi−Oではない。この場合は、OがO−もしくはOHとなっている。通常、ゼオライトは、完全に閉じたSi−Oネットワークであるので、全てがQ4構造となる。Q3構造が含まれていることは、部分的にネットワークが途切れていること示し、シリケートが層状構造であることを意味する。また、粉末XRDデータに基づく結晶構造解析から、図7に示される概念構造に類似した結晶構造を得たことによって、ケイ素5員環構造からなる層状構造であることが明らかとなった。この新規な結晶性層状ケイ酸塩化合物を、PLS−4と呼ぶ。
【0027】
更に、このPLS−4について、13C CP/MAS NMR測定によるスペクトルを図8に示す。DEDMAOH分子のメチル基に由来するピークが52.1ppm及び8.8ppmに、また、58.7ppmにエチル基に由来するピークが観測される。このことから、生成物であるPLS−4の結晶内には、DEDMAOH分子が内包されていることが明らかとなる。
【0028】
更に、このPLS−4について、TG−DTAによる熱測定を行うと、図9に示すように、室温から200℃にかけて、吸着水の脱離に由来する緩やかな重量減少(3wt%程)が観測される。その後、250−400℃にかけて発熱ピークが観測され、更に、約17wt%の重量減少となることから、この温度領域で、DEDMAOH分子が燃焼・脱離しているものと理解できる。
【0029】
更に、このPLS−4について、SEM観察を行うと、図10に示されるように、サブミクロンレベルの結晶が凝集し、数ミクロン程度の高次凝集体になっていることが明らかとなる。尚、図10は、新規層状ケイ酸塩PLS−4(上)及びそれを焼成して得られた高シリカCDO型ゼオライト(下)のSEM像である。また、合成条件を検討するために、加熱温度170℃としたときのDEDMAOH/Si−加熱時間の合成条件マップを作成すると、PLS−4の生成領域は、図11に示される結果が得られる。図中、○は結晶性が良、△は結晶性が低、を示す。
【0030】
CDO型高シリカゼオライト:
得られたPLS−4を大気中で電気炉を用いて、1℃/minの昇温速度にて600℃まで昇温し、2時間保持の熱処理(焼成)を行うと、図12に特徴づけられる粉末X線回折パターンを示す構造に変化する。同定の結果、この物質は、構造的には、既知構造であるCDO型高シリカゼオライトと同じ構造のものであることが分かった。焼成の際には、有機物アミンの焼成を効率良く行うために、空気を流通させることが好ましい。
【0031】
このようにして作り出した化合物が細孔構造を持ったゼオライトであることの証明は、29Si DDMAS NMR及びガス吸着測定により行うことができる。PLS−4を焼成した後の29Si DDMAS NMRスペクトルを図6に示す。スペクトル中には、Q4構造に帰属されるピークが観測される。通常、ゼオライトは、結晶外表面を除き、完全に閉じたSi−Oネットワーク構造であるのでQ4構造のみしか表れない。このことからも、局所構造がゼオライトに特有な細孔構造に起因したものであることが分かる。このゼオライトのアルゴンガスの等温吸着性を調べた結果を図13に示す。
【0032】
本発明で得られたゼオライトは、気体の吸着性能が高いことを示しており、アルゴンガス吸着からはBET比表面積は350m2/g(STP)、及び、NLDFT(非線形密度汎関数法)による解析から、5.2Åにシャープな細孔分布があることが見積もられる。これは、従来の結晶性層状珪酸塩PLS−1を縮合して作られる従来材のCDO型高シリカゼオライトに比べて、15%以上も比表面積が増加していることになる。一方、100℃で加熱した場合は、殆ど脱水重縮合が進行しておらず、ミクロ孔も形成されていないため、BET比表面積は小さな値しか与えない。
【0033】
更に、焼成した後のPLS−4について、SEM観察を行うと、モルフォロジーは、図10(下)に示されるように、PLS−4の場合と異なり、凝集体ではなく、分散した状態になっていることが分かる。しかし、一つ一つの結晶サイズは、PLS−4と同じく、サブミクロン程度に保持されていることが分かる。
【発明の効果】
【0034】
本発明により、次のような効果が奏される。
(1)本発明により、新しい前駆体結晶性層状ケイ酸塩の製造方法及び新規前駆体結晶性層状ケイ酸塩を提供することができる。
(2)本発明の前駆体結晶性層状ケイ酸塩は、ケイ素5員環構造を持った、新規な結晶構造を有し、シリカ含有量が高く、例えば、金属担持用固体、分離・吸着剤、形状選択性固体触媒、イオン交換剤、クロマトグラフィー充填剤材料及び化学反応場など、広範な用途に利用可能である。
(3)この結晶性層状ケイ酸塩を脱水重縮合反応させることで、容易に産業利用に適したCDO型高シリカゼオライトに交換することができる。
(4)上記前駆体結晶性層状ケイ酸塩から得られるCDO型高シリカゼオライトは、従来材と比べて、高い比表面積を有する新しいCDO型高シリカゼオライトである。
(5)その結果、本発明の方法は、従来の水熱合成法による一段合成によるCDO型高シリカゼオライトの製造法に比べ、合成が容易で、非常に短時間で、結晶が得られ、しかも吸着比表面積が大きいことから、従来法と比べて、効率的な高比表面積のCDO型高シリカゼオライトの製造技術として高い優位性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
以下、粉末X線回折(XRD)パターンは、マックサイエンス社M21Xを使用し、波長にCuKα線を用いて、2θ=3−60゜の範囲を0.02間隔のステップスキャン法で測定した。SEM像観察には、HITACHI S−800を用い、あらかじめ試料をイオンコートした後、加速電圧15kVで観察した。
【0036】
29Si DDMAS NMR、13C CP/MAS NMRの測定には、ブルカーバイオスピン社AVANCE400WBを使用した。全ての測定で7mmプローブを用い、MAS回転数を5kHzとした。ケミカルシフトの補正は、H、Si核にテトラメチルシランを、また、C核にはグリシンを用いて行った。Arガス吸着測定及び窒素ガス吸着測定には、カンタクローム社製のAutosorb 1−MPを用い、液体アルゴン温度87K下で測定を行った。
【0037】
熱分析には、ブルカーエイエックスエス社製のTG−DTA2000を用いた。昇温速度を10℃/minとし、600℃まで加熱した。また、結晶性層状ケイ酸塩PLS−4の結晶構造解析では、高分解能粉末X線回折装置にブルカーエイエックスエス社製D8 ADVANCE Vαrio−1により波長CuKα1の特性X線を用いて測定を行い、得られた回折強度データをプログラムRIETAN−2000を使って、リートベルト法による構造解析を行った。
【実施例1】
【0038】
新規結晶性層状ケイ酸塩PLS−4の合成:
本実施例では、結晶性層状ケイ酸塩のカネマイトを用いた例について説明する。結晶性層状ケイ酸塩のカネマイトの合成は、市販される結晶性層状ケイ酸ソーダ、具体的には、株式会社トクヤマシルテック製SKS−6,30gを、蒸留水500mlに、室温にて、3時間浸した後、遠心分離により分離した沈殿物のみを取りだし、乾燥機で50℃、12時間乾燥させることで得た。
【0039】
カネマイトの酸処理は、カネマイトの粉末結晶10gを1.0M濃度の塩酸水溶液300ml中で2時間攪拌を行って実施した。酸処理後のH型カネマイトは、化学組成がSi8O16(OH)4となり、層間からナトリウムイオン及び水分子が抜けた状態になっている。この粉末X線回折パターンは、図2に示されるような回折ピーク位置と回折強度を与えた。
【0040】
本発明で用いるDEDMAOHは、次のように合成した。まず、ジエチルアミン(和光純薬工業株式会社製14.63g,0.2mol)の酢酸エチル溶液(ナカライテスク社製)を大気下、室温で撹拌しながら、ここにヨードメタン(東京化成工業株式会社製,70.97g,0.5mol)をゆっくり滴下し、混合した。そのまま一晩反応させた後、吸引ろ過し、白色固体生成物を得た。
【0041】
固体生成物をイオン交換水に溶解させ、エバポレータにより低沸点化合物を除去した。残った水溶液を陰イオン交換カラムに2回通し、水酸化ジエチルジメチルアンモニウム水溶液を得た。陰イオン交換樹脂は三菱化学のDIAION SA10Aを用いた。水酸化ジエチルジメチルアンモニウム含有量は、この水溶液を0.05mol/lシュウ酸水溶液により滴定することにより求めた。
【0042】
このようにして得られたDEDMAOHの13C CP/MAS NMR測定によるスペクトルを図3に示す。DEDMAOH分子のメチル基に由来するピークが51.4ppm及び10.9ppmに、また、59.2ppmにエチル基に由来するピークが観測された。
【0043】
この有機アミンDEDMAOHは、市販品も存在し(例えば、SIGMA−ALDRICH COrp.SIGMA−ALDRICH Japan K.K.社製 Fluka、20wt%水溶液)、それを、希釈して用いても構わない。
【0044】
このH型カネマイト粉末0.5gと11wt%濃度のDEDMAOH水溶液1.174g(DEDMAOH/Si=0.15)を、PEFEテフロン(登録商標)内筒容器を持った内容量23mlのオートクレーブ(Parr社製)に加えた。図4に、固相反応におけるオートクレーブ内の状態を模式的に表した概略図を示す。
【0045】
使用したDEDMAOHは、水溶液であることから、その濃度からDEDMAOHに付随してH2Oが1.045g(モル比換算してH2O/Si=7.96)が含まれていることになる。このようにして準備したオートクレーブを、オーブンにて、170℃、24時間の加熱を行った。加熱終了後、十分に冷却し、オートクレーブ内の生成物を吸引濾過により分離し、それを60℃で乾燥させることで、粉末状の最終生成物を得た。収率は、シリカ源に対し90%以上で、生成物の色は、少し黄みがかった白色であった。この生成物の粉末X線回折パターンは、図5のように与えられ、これより、表4に示される回折ピーク位置と相対強度の関係を持つことを特徴としている。なお、この実施例は、表5のRun No.1に対応している。
【0046】
【表4】
【0047】
このようにして作り出した化合物PLS−4が層状であることの証明は、29Si DDMAS NMR及び粉末XRDで行った。なお、以下の解析データは、実施例1の試料で解析し、得たものである。29Si DDMASNMRより解析したSi周りのOの配位環境を図6に示す。スペクトル中には、Q3に帰属されるピーク(−104.7ppm)とQ4構造に帰属されるピーク(−111.3,−114.5ppm)が観測された。
【0048】
通常、ゼオライトは、完全に閉じたSi−Oネットワークであるので、全てがQ4となる。Q3が含まれていることは、部分的にネットワークが途切れていること示し、シリケートが層状構造であることを意味する。更に、粉末XRDデータに基づく結晶構造解析から、図7に示される概念構造に類似した結晶構造を得たことによって、ケイ素5員環構造からなる層状構造であることが明らかとなった。
【0049】
更に、このPLS−4について、13C CPMAS NMR測定によるスペクトルを図8に示す。DEDMAOH分子のメチル基に由来するピークが52.1ppm及び8.8ppmに、また、58.7ppmにエチル基に由来するピークが観測された。このことから、生成物であるPLS−4の結晶内には、DEDMAOH分子が内包されていることが明らかとなった。
【0050】
更に、このPLS−4について、TG−DTA測定を行ったところ、図9に示すように、室温から200℃にかけて、吸着水の脱離に由来する緩やかな重量減少(3wt%程)が観測された。その後、250−400℃にかけて、発熱ピークが観測され、更に、約17wt%の重量減少であったことから、この温度領域で、DEDMAOH分子が燃焼・脱離していることが分かった。
【0051】
更に、このPLS−4について、SEM観察を行ったところ、図10(上)に示されるように、サブミクロンレベルの結晶が凝集し、数ミクロン程度の高次凝集体になっていることが明らかとなった。また、合成条件を検討した。加熱温度170℃としたときのDEDMAOH/Si−加熱時間の合成条件マップを作成したところ、PLS−4の生成領域は、図11に示される結果が得られた。
【0052】
【表5】
【実施例2】
【0053】
新規結晶性層状ケイ酸塩PLS−4の合成:
実施例1で示される製造法において、表5のRun No.1からNo.9で示される条件で合成を試みたところ、Run No.1からNo.4、及びRun No.7からNo.9の条件で、生成物として、新規結晶性層状ケイ酸塩PLS−4が得られた。このときの一連の粉末X線回折パターンを図14に示す。Run No.5、No.6では、DEDMAOHの量が少なく、結晶化が不十分な状態であった。
【実施例3】
【0054】
CDO型高シリカゼオライトの調製:
上記実施例1で得られた新規結晶性層状ケイ酸塩PLS−4を、大気中で電気炉を用いて、1℃/minの昇温速度にて、600℃まで昇温し、2時間保持の熱処理(焼成)を行ったところ、図15に特徴づけられる粉末X線回折パターンを示す構造に変化した。同定の結果、この物質は、構造的には、既知構造であるCDO型高シリカゼオライトと同じ構造のものであることが分かった。焼成の際には、有機物アミンの焼成を効率よく行うために、空気を流通(5L/min)させた。
【0055】
このようにして作り出した化合物が細孔構造を持ったゼオライトであることの証明は、29Si DDMAS NMR及びガス吸着測定により行った。PLS−4を焼成後の29Si DDMAS NMRスペクトルを図6に示す。スペクトル中には、Q4構造に帰属されるピークが−113.6ppmに観測された。通常、ゼオライトは、結晶外表面を除き、完全に閉じたSi−Oネットワーク構造であるので、Q4構造のみしか表れない。このことからも、局所構造がゼオライトに特有な細孔構造に起因したものであることが分かる。
【0056】
このゼオライトのアルゴンガスの等温吸着性を調べた結果を図13に示す。本発明で得られたゼオライトは、気体の吸着性能が高いことを示しており、アルゴンガス吸着からは、BET比表面積は350m2/g(STP)、及び、NLDFT(非線形密度汎関数法)による解析から、5.2Åにシャープな細孔分布があることが見積もられた。これは、従来の結晶性層状珪酸塩PLS−1を縮合して作られる従来材のCDO型高シリカゼオライトに比べて、15%以上も比表面積が増加していることになる。一方、100℃で加熱した場合は、吸着等温線はI型にはならずBET比表面積も小さな値であったことから、殆ど脱水重縮合が進行しておらずミクロ孔も形成されていないことが示された。
【0057】
更に、焼成後のPLS−4について、SEM観察を行ったところ、モルフォロジーは、図10(下)に示されるように、PLS−4の場合と異なり、凝集体ではなく、分散した状態であった。しかし、一つ一つの結晶サイズは、PLS−4と同じく、サブミクロン程度に保持されていた。
【実施例4】
【0058】
新規結晶性層状ケイ酸塩PLS−4の合成:
上記実施例1で示される製造法に基づき、DEDMAOHに市販の試薬(SIGMA−ALDRICH Corp.SIGMA−ALDRICH Japan K.K.社製 Fluka、20wt%水溶液)を、超純水にて11wt%まで希釈したものを用い、表6に示されるRun No.10からNo.16の条件に変えて合成を試みた。その結果、生成物として、新規結晶性層状ケイ酸塩PLS−4が得られた。このときの一連の粉末X線回折パターンを図16に示す。また、Run No.10を除き、非常に良い結晶性と高い結晶化度を有することが分かった。
【0059】
更に、このPLS−4(Run No.14、No.15)について、SEM観察を行ったところ、図17に示されるように、サブミクロンレベルの板状の結晶外形になっていることが明らかとなった。図10と比較すると、結晶のサイズや形状は良く似ているものの、高次の凝集は見られなかった。用いたアミン(DEDMAOH)水溶液の純度(精製度)や陰イオン交換率の違いに起因していると考えられる。
【0060】
【表6】
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上詳述したように、本発明は、CDO型高シリカゼオライトの前駆体となる結晶性層状ケイ酸塩及びその製造方法に係るものであり、本発明により、CDO型高シリカゼオライトの前駆体となる新規結晶性層状ケイ酸塩及びその製造方法を提供することができる。本発明の結晶性層状ケイ酸塩は、ケイ素5員環構造を持った、新規な結晶構造を有し、シリカ含有量が高く、例えば、金属担持用固体、分離・吸着剤、形状選択性固体触媒、イオン交換剤、クロマトグラフィー充填剤材料及び化学反応場など、広範な用途に利用可能である。また、この結晶性層状ケイ酸塩を脱水重縮合反応させることで、容易に産業利用に適した、しかも高比表面積を有する新しいCDO型高シリカゼオライトが得られる。本発明は、従来の水熱合成法による一段合成によるCDO型高シリカゼオライトの製造法に比べ、合成が容易で、非常に短時間で、結晶が得られ、しかも吸着比表面積が大きいことから、従来法と比べて効率的な製造技術として高い優位性を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】結晶性層状ケイ酸塩kanemiteの結晶構造モデル(Si,O,Na(H2O)6で構成される)を示す。
【図2】H−kanemiteの粉末X線回折パターンを示す。
【図3】合成したDEDMAOHの13C CP/MAS NMRスペクトルを示す。
【図4】水蒸気雰囲気下での固相合成におけるオートクレーブ内の状態を示す概略図を示す。
【図5】固相合成(Run No.1)により得られた生成物の粉末X線回折パターンを示す。
【図6】新規層状ケイ酸塩PLS−4(Run No.1)(下)及びそれを焼成して得られた高シリカCDO型ゼオライト(上)の29Si DDMAS NMRスペクトルを示す。
【図7】新規層状ケイ酸塩PLS−4の結晶構造を表す概略図を示す。(上)はb軸から見た図、(下)はa軸から見た図を表す。
【図8】新規層状ケイ酸塩PLS−4(Run No.2)の13C CPMAS NMRスペクトルを示す。
【図9】新規層状ケイ酸塩PLS−4のTG−DTAカーブ(Run No.2)を示す。太線はTGカーブ、細線はDTAカーブを表す。
【図10】新規層状ケイ酸塩PLS−4(上)及びそれを焼成して得られた高シリカCDO型ゼオライト(下)のSEM像を示す。
【図11】新規層状ケイ酸塩PLS−4の合成条件と生成物を示すマップを示す。ここで、R=DEDMAOHを示し、○は結晶性が良、△は結晶性が低、×はアモルファスを表す。
【図12】新規結晶性層状ケイ酸塩PLS−4を焼成した後の粉末X線回折パターン(上)と高シリカCDO型ゼオライトのシミュレーションパターン(下)を示す。
【図13】層状ケイ酸塩PLS−4を加熱温度が100℃及び600℃で焼成したときのArガス吸着等温曲線を示す。600℃で焼成したものはCDO型ゼオライトに変化している。
【図14】実施例に基づいて表5記載のRun No.1−No.9の条件に基づいて合成した生成物の粉末X線回折パターンを示す。
【図15】結晶性層状ケイ酸塩PLS−4(Run No.1)を焼成して得られた高シリカCDO型ゼオライトの粉末X線回折パターンを示す。
【図16】実施例に基づいて表6記載のRun No.10−No.16の条件に基づいて合成した生成物の粉末X線回折パターンを示す。
【図17】新規層状ケイ酸塩PLS−4のSEM像を示す。(上)はRun No.14、(下)はRun No.15を表す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規結晶性層状ケイ酸塩に関するものであり、更に詳しくは、CDO型高シリカゼオライトの前駆体となる新規結晶性層状ケイ酸塩及びその製造方法に関するものである。本発明は、分離剤、吸着剤、形状選択性固体触媒、イオン交換剤、クロマトグラフィー充填剤、化学反応場、建築材などに用いることのできる、耐熱性に優れた高シリカゼオライトを得るための前駆体化合物となる新規な結晶性層状ケイ酸塩を提供し、この新規な結晶性層状ケイ酸塩について、既存の結晶性層状ケイ酸塩を原料に用い、固相から固相へ相転移反応させることにより迅速に製造する方法、及び当該結晶性層状ケイ酸塩を前駆体とする高比表面積のCDO型高シリカゼオライトを提供するものである。
【背景技術】
【0002】
ゼオライトは、原子レベルで規則的に配列したマイクロ孔(3−20Å)を有し、骨格構造の構成元素がSi、Al、Oからなるアルミノシリケート型、Si、Oのみからなるハイシリカ(ピュアシリカ)型に主に分類することができる。ゼオライトは、形状選択的な、あるいは骨格構造に起因した、化学的・物理的吸着作用を持つことより、例えば、モレキュラーシーブ(分子ふるい)、分離吸着剤、イオン交換体、触媒反応としての機能を有する。天然及び合成ゼオライトとして、160種類以上の構造が知られており、それと骨格元素の組成を組み合わせることで、目的に合わせた化学的性質や構造安定性、耐熱性を兼ね備えた多孔質材料として、石油化学を中心とする幅広い産業分野で用いられている。
【0003】
それぞれのゼオライトは、規則的な細孔を形成する幾何学的な骨格構造により区別され、一義的なX線回折パターンを与えることから、実験的に区別することができる。すなわち、骨格構造(結晶構造)は、ゼオライトの細孔の形や大きさを規定している。各ゼオライトの吸着特性や機械的強度、固体酸の性能は、部分的には、その細孔の形や大きさ、骨格を構成する組成で決まる。従って、特定の応用を考えた場合、ある特定のゼオライトの有用性は、少なくとも部分的には、その結晶構造や組成に依存する。
【0004】
高シリカ組成のゼオライトは、耐熱性、疎水性という2つの点で、低シリカ組成よりも優れており、一般に、充分な機械的強度を備えている。これらの性質は、ゼオライトを分離剤や触媒として使用する場合に重要である。ゼオライト合成研究の初期の段階では、シリカ/アルミナ比の低い生成物しか得られていなかったが、シリカ源からなる出発ゲル中に有機構造規程剤(Organic Structure Directing Agent: OSDA)を加えることで、シリカ/アルミナ比が非常に高い組成を持つゼオライト合成が可能になった(非特許文献1)。
【0005】
ゼオライトは、一般に、水熱合成法、すなわち、大量の水とシリカ源、アルミニウム源、アルカリ金属、及びアミン類などのOSDAを、所望の化学組成になるように調合し、オートクレーブ等の圧力容器にそれらを封じ込め、加熱することにより、自己圧下で製造されている。ここで、OSDAは、生成するゼオライトの細孔を形成するための鋳型剤として機能し、主にアミン分子が用いられている。近年、触媒・材料分野では、より大孔径の高シリカゼオライトへの要望が高まっており、多くの研究がなされているが、製造コストやOSDAの設計・合成が容易ではないため、実用化可能なものは少ない。
【0006】
一方、多量の水を用いずに、固相から固相への相転移に似た反応を使って層状ケイ酸塩からゼオライト又はマイクロポーラス構造体へ構造変化させる技術が報告されている。研究例は少ないものの、合成可能な既知構造のゼオライトとして、MFI型(シリカライト−1)とMEL型ゼオライト(シリカライト−2)が報告されている(特許文献1、2、非特許文献2〜6)。
【0007】
これらによれば、固相反応では、原料に層状ケイ酸塩の粉末結晶と有機アミン分子、更に僅量の水を加え、オートクレーブを用いて加熱するだけで上記ゼオライトが得られるとされる。また、この反応は、反応時間が数時間から24時間程度と、水熱合成法に比べ、迅速な合成法であることが大きな特徴である。また、この反応では、水熱合成に比べ、必要な原料を最小限に減らすことができることから、低コスト化が期待される。しかしながら、上記相転移に似た反応では、生成物の構造と出発物質である層状ケイ酸塩の構造に類似性や共通性がないものが多いため、どのようなメカニズムで相転移しているのかが明らかではないという問題も指摘されている。
【0008】
また、近年、新しい手法として、結晶性層状ケイ酸塩の層状構造を脱水重縮合反応により架橋することで、高シリカゼオライトを得る方法が報告されている。例えば、結晶性層状ケイ酸塩PLS−1は、CDO型高シリカゼオライトの前駆体として最近見いだされ、このPLS−1を焼成するだけで、CDO型高シリカゼオライトが得られる(特許文献3〜6、非特許文献7)。
【0009】
本発明で得られる、新規結晶性層状ケイ酸塩は、CDO型高シリカゼオライトに変換可能な前駆体であり、先のPLS−1と同様に、焼成するだけで、層間が脱水重縮合反応によって架橋し、そこに、新たに細孔が形成されることで、CDO型高シリカゼオライトへと構造変化する。一方、PLS−1についても、固相反応による迅速合成について報告された。これにより、必要最小限の原料を用いて、合成時間は24時間程度で、PLS−1が得られるようになった(特許文献7)。いずれの製法においても、前駆体PLS−1からのみCDO型高シリカゼオライトが得られ、このCDO型高シリカゼオライトは、一般的な一段式の水熱合成法では得られていない。
【0010】
これまでのPLS−1の製造法では、物質を構成するシリカとアミン分子であるテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAOH)の他に、生成物には殆ど含まれないものの、その結晶化のために、アルカリ源や1,4−dioxaneを必要とし、合成時間も10日以上必要であった。また、従来の水熱法及び先に述べた固相反応法で合成されたPLS−1からのCDS−1への変換では、焼成条件に敏感で、場合によっては、結晶が壊れることも少なくなく、また、得られたCDS−1の結晶性がそれほど高くないことから、利用拡大を進める上で、それらの改善が課題となっている。
【0011】
産業利用を目指した高シリカゼオライトの合成においては、少ない原料消費と高いエネルギー効率で合成可能とすると同時に、再現性の容易さや結晶性の向上、更には、環境への配慮なども十分に考慮することが課題であり、これらを踏まえた、より高性能なCDO型高シリカゼオライトの製造法を確立するために、PLS−1以外の新たな前駆体化合物の探索・合成が必要であると考えられる。
【0012】
【特許文献1】特開2004−276817号公報
【特許文献2】特開平8−319112号公報
【特許文献3】特開2004−175661号公報
【特許文献4】特開2005−041763号公報
【特許文献5】特開2004−339044号公報
【特許文献6】特開2005−194113号公報
【特許文献7】特願2006−168209号
【非特許文献1】R. M. Barrer 1982, Hydrothermal Chemistry of Zeolites, New York: Academic Press inc. pp. 157-170
【非特許文献2】M. Salou, Y. Kiyozumi, F. Mizukami, P. Nair, K. Maeda and S. Niwa, J. Mater. Chem, 8(9), 2125-2132 (1998)
【非特許文献3】F. Kooli, Y. Kiyozumi and F. Mizukami, New J. Chem, 25, 1613-1620 (2001)
【非特許文献4】F. Kooli, Y. Kiyozumi, V. Rives and F. Mizukami, Langmuir, 18, 4103-4110 (2002)
【非特許文献5】F. Kooli, F. Mizukami, Y. Kiyozumia and Y. Akiyama, J. Mater. Chem, 11, 1946-1950 (2001)
【非特許文献6】F. Kooli, J. Mater. Chem, 12, 1374-1380 (2002)
【非特許文献7】T. Ikeda, Y. Akiyama, Y. Oumi, A. Kawai, F. Mizukami, Angew. Chem. Int. Ed., 43. 4892-4895 (2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、従来の固相合成技術を拡張して、様々な結晶性層状ケイ酸塩とアミン分子との組み合わせを検討し、合成と分析・解析を行っていく過程で、本発明を見いだすに至った。すなわち、本発明は、水蒸気雰囲気下での固相反応によりCDO型高シリカゼオライトの前駆体となる、PLS−1と異なる新規な結晶性層状ケイ酸塩を、より簡便で、短時間で合成できる製造方法を提供し、これにより、新規結晶性層状ケイ酸塩を加熱するだけで、従来法と比べ、よりガス吸着特性の優れた高比表面積のCDO型高シリカゼオライトを得ることが可能となる新規結晶性層状ケイ酸塩の製造方法、その結晶性層状ケイ酸塩、高比表面積のCDO型高シリカゼオライトの製造方法、及びそのCDO型高シリカゼオライトを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
すなわち、本発明は、(1)結晶性層状ケイ酸塩カネマイト(kanemite)を酸処理したH−kanemiteに、ジエチルジメチルアンモニウムヒドロキシド(Diethyldimethylammonium hydroxide[(C2H5)2(CH3)2N(OH)]: DEDMAOH)水溶液を、モル比がDEDMAOH/Si = 0.10−0.15、H2O/Si = 5−8の範囲となるように加えたものを圧力容器(オートクレーブ)に入れ、例えば、170℃程度の温度、24−48時間での加熱条件にて、水蒸気雰囲気下の固相反応させることで得られる新規な結晶性層状ケイ酸塩とその製造方法を提供する。また、本発明は、(2)上記(1)に示す結晶性層状ケイ酸塩において、表2に示される回折ピーク位置と相対強度の関係を持ち、図5に代表される粉末X線回折図形によって示される結晶構造を有した結晶性層状ケイ酸塩を提供し、更に、(3)上記(1)及び(2)に示す結晶性層状ケイ酸塩において、図7に代表されるようなケイ素5員環(酸素5員環)を有するSi−Oの共有結合を有した層状の結晶構造からなる結晶性層状ケイ酸塩を提供する。
【0015】
【表2】
【0016】
また、本発明は、(4)上記(1)から(3)に示す結晶性層状ケイ酸塩を大気中にて、例えば、600℃程度で加熱し、脱水重縮合させることで得られるCDO型高シリカゼオライトの製造方法を提供する。更に、本発明は、(5)上記(4)に示すCDO型高シリカゼオライトにおいて、アルゴンガス吸着測定から平均細孔径5.2Åのミクロ孔及び350m2/g以上の高比表面積を有する高比表面積のCDO型高シリカゼオライトの製造方法、及びそのCDO型高シリカゼオライトを提供するものである。
【0017】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、結晶性層状ケイ酸塩の製造方法であって、結晶性層状ケイ酸塩を酸処理したH型結晶性層状ケイ酸塩に、有機構造規程剤(OSDA)水溶液を加えたものを圧力容器(オートクレーブ)に入れ、水蒸気雰囲気下で固相反応させることにより、CDO型高シリカゼオライトの前駆体結晶性層状ケイ酸塩を合成することを特徴とするものであり、本発明では、上記有機構造規程剤(OSDA)が、有機アミン分子であること、を好ましい実施に態様としている。
【0018】
はじめに、本発明で好適に使用される結晶性層状ケイ酸塩のカネマイトについて述べる。カネマイトの単位格子内における化学組成は、それぞれSi8O16(OH)4・[Na4(H2O)3]8で定義され、図1に代表されるような結晶構造を有している。図の結晶構造モデルは、Si、O、Na(H2O)6で構成される。Si−Oの4面体配位の繰り返し単位をシリケート基本構造に持ち、層間には、Naイオンと水分子を規則的に挟んだ構造を有している(文献:S. Vortmann, J. Rius, B. Marler and H. Gies, European Journal of Mineralogy, 11, 125-134 (1999))。
【0019】
本発明の方法で用いるカネマイトは、いかなる方法で合成されたものでも構わないが、上記の化学組成と文献で定義された結晶構造を有していることが必要条件である。本発明では、カネマイトの合成は、合成例を示すと、例えば、市販される結晶性層状ケイ酸ソーダ、具体的には、株式会社トクヤマシルテック製SKS−6(又はその同等品であるプリフィールド)30gを蒸留水500mlに室温にて3時間浸した後、遠心分離により分離した沈殿物のみを採取し、乾燥機で50℃、12時間乾燥させることで合成することができ、また、この合成例に準じて任意の合成条件で合成することができる。
【0020】
本発明において、固相反応で用いる有機アミン分子は、構造規程剤としての役割を果たすと考えられ、出発源に結晶性層状ケイ酸塩を用いることから、層間内にアクセスでき、層間を広げられる。また、この構造規程剤については、シリケート骨格構造を形成する鋳型としての作用を有するものであれば、従来公知のものが全て使用できる。本発明で好ましく使用される有機構造規程剤は、ジエチルジメチルアンモニウムヒドロキシド(Diethyldimethylammonium hydroxide[(C2H5)2(CH3)2N(OH)]:DEDMAOH)であるが、これに制限されるものではなく、同効のものであれば同様に使用することができる。次に、本発明で目的とする各生成物の製造例について説明するが、本発明は、これらの製造例に制限されるものではなく、当該製造例に準じて製造条件を任意に設定することができる。
【0021】
新規結晶性層状ケイ酸塩:
結晶性層状ケイ酸塩のカネマイトを例に説明すると、カネマイトの酸処理は、カネマイトの結晶を塩酸水溶液中で攪拌するだけで行うことができる。酸処理後のH型カネマイト(H−kanemite)は、化学組成がSi8O16(OH)4となり、層間からナトリウムイオン及び水分子が抜けた状態になっている。この粉末X線回折パターンは、図2に示されるような回折線位置と回折強度を与える。
【0022】
次に、合成例を示すと、例えば、このH型カネマイト粉末0.5gと11wt%濃度のDEDMAOH水溶液(例えば、SIGMA−ALDRICH COrp.SIGMA−ALDRICH Japan K.K.社製、20%水溶液など)1.174g(DEDMAOH/Si=0.15)を、PEFEテフロン(登録商標)内筒容器を持った内容量23mlのオートクレーブ(Parr社製)に加える。オートクレーブ内の状態を模式的に表したものが図4である。
【0023】
なお、DEDMAOH水溶液の濃度からDEDMAOHに付随してH2Oが1.045g(モル比換算してH2O/Si=7.96)が含まれている。このようにして準備したオートクレーブを、例えば、オーブンにて170℃、24時間の加熱を行う。加熱終了後、十分に冷却し、オートクレーブ内の生成物を吸引濾過により分離し、例えば、それを60℃で乾燥させることで、粉末状の最終生成物を得る。収率は、シリカ源に対し、90%以上で、生成物の色は、少し黄みがかった白色である。この生成物の粉末X線回折パターンは、図5のように与えられ、これより、表3に示される回折ピーク位置と相対強度の関係を持つことを特徴としている。上記加熱は、圧力容器(オートクレーブ)により加熱可能な温度範囲で、24−48時間の加熱条件で行うことが好適である。
【0024】
【表3】
【0025】
このようにして作り出した化合物が層状であることの証明は、29Si DDMAS NMR及び粉末XRDからの構造解析から行うことができる。なお、以下の解析データは、後述する実施例1の試料で解析し、得たものである。29Si DDMAS NMRより解析したSi周りのOの配位環境を図6に示す。スペクトル中には、Q3構造に帰属されるピーク(−104.7ppm)とQ4構造に帰属されるピーク(−111.3,−114.5ppm)が観測される。Q3構造は1個のSiのまわりに3個のSi−Oが存在し、Q4構造では4個のSi−Oが存在していることを表す。
【0026】
Siは4官能性であるため、Q3構造の残り1つの官能基はSi−Oではない。この場合は、OがO−もしくはOHとなっている。通常、ゼオライトは、完全に閉じたSi−Oネットワークであるので、全てがQ4構造となる。Q3構造が含まれていることは、部分的にネットワークが途切れていること示し、シリケートが層状構造であることを意味する。また、粉末XRDデータに基づく結晶構造解析から、図7に示される概念構造に類似した結晶構造を得たことによって、ケイ素5員環構造からなる層状構造であることが明らかとなった。この新規な結晶性層状ケイ酸塩化合物を、PLS−4と呼ぶ。
【0027】
更に、このPLS−4について、13C CP/MAS NMR測定によるスペクトルを図8に示す。DEDMAOH分子のメチル基に由来するピークが52.1ppm及び8.8ppmに、また、58.7ppmにエチル基に由来するピークが観測される。このことから、生成物であるPLS−4の結晶内には、DEDMAOH分子が内包されていることが明らかとなる。
【0028】
更に、このPLS−4について、TG−DTAによる熱測定を行うと、図9に示すように、室温から200℃にかけて、吸着水の脱離に由来する緩やかな重量減少(3wt%程)が観測される。その後、250−400℃にかけて発熱ピークが観測され、更に、約17wt%の重量減少となることから、この温度領域で、DEDMAOH分子が燃焼・脱離しているものと理解できる。
【0029】
更に、このPLS−4について、SEM観察を行うと、図10に示されるように、サブミクロンレベルの結晶が凝集し、数ミクロン程度の高次凝集体になっていることが明らかとなる。尚、図10は、新規層状ケイ酸塩PLS−4(上)及びそれを焼成して得られた高シリカCDO型ゼオライト(下)のSEM像である。また、合成条件を検討するために、加熱温度170℃としたときのDEDMAOH/Si−加熱時間の合成条件マップを作成すると、PLS−4の生成領域は、図11に示される結果が得られる。図中、○は結晶性が良、△は結晶性が低、を示す。
【0030】
CDO型高シリカゼオライト:
得られたPLS−4を大気中で電気炉を用いて、1℃/minの昇温速度にて600℃まで昇温し、2時間保持の熱処理(焼成)を行うと、図12に特徴づけられる粉末X線回折パターンを示す構造に変化する。同定の結果、この物質は、構造的には、既知構造であるCDO型高シリカゼオライトと同じ構造のものであることが分かった。焼成の際には、有機物アミンの焼成を効率良く行うために、空気を流通させることが好ましい。
【0031】
このようにして作り出した化合物が細孔構造を持ったゼオライトであることの証明は、29Si DDMAS NMR及びガス吸着測定により行うことができる。PLS−4を焼成した後の29Si DDMAS NMRスペクトルを図6に示す。スペクトル中には、Q4構造に帰属されるピークが観測される。通常、ゼオライトは、結晶外表面を除き、完全に閉じたSi−Oネットワーク構造であるのでQ4構造のみしか表れない。このことからも、局所構造がゼオライトに特有な細孔構造に起因したものであることが分かる。このゼオライトのアルゴンガスの等温吸着性を調べた結果を図13に示す。
【0032】
本発明で得られたゼオライトは、気体の吸着性能が高いことを示しており、アルゴンガス吸着からはBET比表面積は350m2/g(STP)、及び、NLDFT(非線形密度汎関数法)による解析から、5.2Åにシャープな細孔分布があることが見積もられる。これは、従来の結晶性層状珪酸塩PLS−1を縮合して作られる従来材のCDO型高シリカゼオライトに比べて、15%以上も比表面積が増加していることになる。一方、100℃で加熱した場合は、殆ど脱水重縮合が進行しておらず、ミクロ孔も形成されていないため、BET比表面積は小さな値しか与えない。
【0033】
更に、焼成した後のPLS−4について、SEM観察を行うと、モルフォロジーは、図10(下)に示されるように、PLS−4の場合と異なり、凝集体ではなく、分散した状態になっていることが分かる。しかし、一つ一つの結晶サイズは、PLS−4と同じく、サブミクロン程度に保持されていることが分かる。
【発明の効果】
【0034】
本発明により、次のような効果が奏される。
(1)本発明により、新しい前駆体結晶性層状ケイ酸塩の製造方法及び新規前駆体結晶性層状ケイ酸塩を提供することができる。
(2)本発明の前駆体結晶性層状ケイ酸塩は、ケイ素5員環構造を持った、新規な結晶構造を有し、シリカ含有量が高く、例えば、金属担持用固体、分離・吸着剤、形状選択性固体触媒、イオン交換剤、クロマトグラフィー充填剤材料及び化学反応場など、広範な用途に利用可能である。
(3)この結晶性層状ケイ酸塩を脱水重縮合反応させることで、容易に産業利用に適したCDO型高シリカゼオライトに交換することができる。
(4)上記前駆体結晶性層状ケイ酸塩から得られるCDO型高シリカゼオライトは、従来材と比べて、高い比表面積を有する新しいCDO型高シリカゼオライトである。
(5)その結果、本発明の方法は、従来の水熱合成法による一段合成によるCDO型高シリカゼオライトの製造法に比べ、合成が容易で、非常に短時間で、結晶が得られ、しかも吸着比表面積が大きいことから、従来法と比べて、効率的な高比表面積のCDO型高シリカゼオライトの製造技術として高い優位性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
以下、粉末X線回折(XRD)パターンは、マックサイエンス社M21Xを使用し、波長にCuKα線を用いて、2θ=3−60゜の範囲を0.02間隔のステップスキャン法で測定した。SEM像観察には、HITACHI S−800を用い、あらかじめ試料をイオンコートした後、加速電圧15kVで観察した。
【0036】
29Si DDMAS NMR、13C CP/MAS NMRの測定には、ブルカーバイオスピン社AVANCE400WBを使用した。全ての測定で7mmプローブを用い、MAS回転数を5kHzとした。ケミカルシフトの補正は、H、Si核にテトラメチルシランを、また、C核にはグリシンを用いて行った。Arガス吸着測定及び窒素ガス吸着測定には、カンタクローム社製のAutosorb 1−MPを用い、液体アルゴン温度87K下で測定を行った。
【0037】
熱分析には、ブルカーエイエックスエス社製のTG−DTA2000を用いた。昇温速度を10℃/minとし、600℃まで加熱した。また、結晶性層状ケイ酸塩PLS−4の結晶構造解析では、高分解能粉末X線回折装置にブルカーエイエックスエス社製D8 ADVANCE Vαrio−1により波長CuKα1の特性X線を用いて測定を行い、得られた回折強度データをプログラムRIETAN−2000を使って、リートベルト法による構造解析を行った。
【実施例1】
【0038】
新規結晶性層状ケイ酸塩PLS−4の合成:
本実施例では、結晶性層状ケイ酸塩のカネマイトを用いた例について説明する。結晶性層状ケイ酸塩のカネマイトの合成は、市販される結晶性層状ケイ酸ソーダ、具体的には、株式会社トクヤマシルテック製SKS−6,30gを、蒸留水500mlに、室温にて、3時間浸した後、遠心分離により分離した沈殿物のみを取りだし、乾燥機で50℃、12時間乾燥させることで得た。
【0039】
カネマイトの酸処理は、カネマイトの粉末結晶10gを1.0M濃度の塩酸水溶液300ml中で2時間攪拌を行って実施した。酸処理後のH型カネマイトは、化学組成がSi8O16(OH)4となり、層間からナトリウムイオン及び水分子が抜けた状態になっている。この粉末X線回折パターンは、図2に示されるような回折ピーク位置と回折強度を与えた。
【0040】
本発明で用いるDEDMAOHは、次のように合成した。まず、ジエチルアミン(和光純薬工業株式会社製14.63g,0.2mol)の酢酸エチル溶液(ナカライテスク社製)を大気下、室温で撹拌しながら、ここにヨードメタン(東京化成工業株式会社製,70.97g,0.5mol)をゆっくり滴下し、混合した。そのまま一晩反応させた後、吸引ろ過し、白色固体生成物を得た。
【0041】
固体生成物をイオン交換水に溶解させ、エバポレータにより低沸点化合物を除去した。残った水溶液を陰イオン交換カラムに2回通し、水酸化ジエチルジメチルアンモニウム水溶液を得た。陰イオン交換樹脂は三菱化学のDIAION SA10Aを用いた。水酸化ジエチルジメチルアンモニウム含有量は、この水溶液を0.05mol/lシュウ酸水溶液により滴定することにより求めた。
【0042】
このようにして得られたDEDMAOHの13C CP/MAS NMR測定によるスペクトルを図3に示す。DEDMAOH分子のメチル基に由来するピークが51.4ppm及び10.9ppmに、また、59.2ppmにエチル基に由来するピークが観測された。
【0043】
この有機アミンDEDMAOHは、市販品も存在し(例えば、SIGMA−ALDRICH COrp.SIGMA−ALDRICH Japan K.K.社製 Fluka、20wt%水溶液)、それを、希釈して用いても構わない。
【0044】
このH型カネマイト粉末0.5gと11wt%濃度のDEDMAOH水溶液1.174g(DEDMAOH/Si=0.15)を、PEFEテフロン(登録商標)内筒容器を持った内容量23mlのオートクレーブ(Parr社製)に加えた。図4に、固相反応におけるオートクレーブ内の状態を模式的に表した概略図を示す。
【0045】
使用したDEDMAOHは、水溶液であることから、その濃度からDEDMAOHに付随してH2Oが1.045g(モル比換算してH2O/Si=7.96)が含まれていることになる。このようにして準備したオートクレーブを、オーブンにて、170℃、24時間の加熱を行った。加熱終了後、十分に冷却し、オートクレーブ内の生成物を吸引濾過により分離し、それを60℃で乾燥させることで、粉末状の最終生成物を得た。収率は、シリカ源に対し90%以上で、生成物の色は、少し黄みがかった白色であった。この生成物の粉末X線回折パターンは、図5のように与えられ、これより、表4に示される回折ピーク位置と相対強度の関係を持つことを特徴としている。なお、この実施例は、表5のRun No.1に対応している。
【0046】
【表4】
【0047】
このようにして作り出した化合物PLS−4が層状であることの証明は、29Si DDMAS NMR及び粉末XRDで行った。なお、以下の解析データは、実施例1の試料で解析し、得たものである。29Si DDMASNMRより解析したSi周りのOの配位環境を図6に示す。スペクトル中には、Q3に帰属されるピーク(−104.7ppm)とQ4構造に帰属されるピーク(−111.3,−114.5ppm)が観測された。
【0048】
通常、ゼオライトは、完全に閉じたSi−Oネットワークであるので、全てがQ4となる。Q3が含まれていることは、部分的にネットワークが途切れていること示し、シリケートが層状構造であることを意味する。更に、粉末XRDデータに基づく結晶構造解析から、図7に示される概念構造に類似した結晶構造を得たことによって、ケイ素5員環構造からなる層状構造であることが明らかとなった。
【0049】
更に、このPLS−4について、13C CPMAS NMR測定によるスペクトルを図8に示す。DEDMAOH分子のメチル基に由来するピークが52.1ppm及び8.8ppmに、また、58.7ppmにエチル基に由来するピークが観測された。このことから、生成物であるPLS−4の結晶内には、DEDMAOH分子が内包されていることが明らかとなった。
【0050】
更に、このPLS−4について、TG−DTA測定を行ったところ、図9に示すように、室温から200℃にかけて、吸着水の脱離に由来する緩やかな重量減少(3wt%程)が観測された。その後、250−400℃にかけて、発熱ピークが観測され、更に、約17wt%の重量減少であったことから、この温度領域で、DEDMAOH分子が燃焼・脱離していることが分かった。
【0051】
更に、このPLS−4について、SEM観察を行ったところ、図10(上)に示されるように、サブミクロンレベルの結晶が凝集し、数ミクロン程度の高次凝集体になっていることが明らかとなった。また、合成条件を検討した。加熱温度170℃としたときのDEDMAOH/Si−加熱時間の合成条件マップを作成したところ、PLS−4の生成領域は、図11に示される結果が得られた。
【0052】
【表5】
【実施例2】
【0053】
新規結晶性層状ケイ酸塩PLS−4の合成:
実施例1で示される製造法において、表5のRun No.1からNo.9で示される条件で合成を試みたところ、Run No.1からNo.4、及びRun No.7からNo.9の条件で、生成物として、新規結晶性層状ケイ酸塩PLS−4が得られた。このときの一連の粉末X線回折パターンを図14に示す。Run No.5、No.6では、DEDMAOHの量が少なく、結晶化が不十分な状態であった。
【実施例3】
【0054】
CDO型高シリカゼオライトの調製:
上記実施例1で得られた新規結晶性層状ケイ酸塩PLS−4を、大気中で電気炉を用いて、1℃/minの昇温速度にて、600℃まで昇温し、2時間保持の熱処理(焼成)を行ったところ、図15に特徴づけられる粉末X線回折パターンを示す構造に変化した。同定の結果、この物質は、構造的には、既知構造であるCDO型高シリカゼオライトと同じ構造のものであることが分かった。焼成の際には、有機物アミンの焼成を効率よく行うために、空気を流通(5L/min)させた。
【0055】
このようにして作り出した化合物が細孔構造を持ったゼオライトであることの証明は、29Si DDMAS NMR及びガス吸着測定により行った。PLS−4を焼成後の29Si DDMAS NMRスペクトルを図6に示す。スペクトル中には、Q4構造に帰属されるピークが−113.6ppmに観測された。通常、ゼオライトは、結晶外表面を除き、完全に閉じたSi−Oネットワーク構造であるので、Q4構造のみしか表れない。このことからも、局所構造がゼオライトに特有な細孔構造に起因したものであることが分かる。
【0056】
このゼオライトのアルゴンガスの等温吸着性を調べた結果を図13に示す。本発明で得られたゼオライトは、気体の吸着性能が高いことを示しており、アルゴンガス吸着からは、BET比表面積は350m2/g(STP)、及び、NLDFT(非線形密度汎関数法)による解析から、5.2Åにシャープな細孔分布があることが見積もられた。これは、従来の結晶性層状珪酸塩PLS−1を縮合して作られる従来材のCDO型高シリカゼオライトに比べて、15%以上も比表面積が増加していることになる。一方、100℃で加熱した場合は、吸着等温線はI型にはならずBET比表面積も小さな値であったことから、殆ど脱水重縮合が進行しておらずミクロ孔も形成されていないことが示された。
【0057】
更に、焼成後のPLS−4について、SEM観察を行ったところ、モルフォロジーは、図10(下)に示されるように、PLS−4の場合と異なり、凝集体ではなく、分散した状態であった。しかし、一つ一つの結晶サイズは、PLS−4と同じく、サブミクロン程度に保持されていた。
【実施例4】
【0058】
新規結晶性層状ケイ酸塩PLS−4の合成:
上記実施例1で示される製造法に基づき、DEDMAOHに市販の試薬(SIGMA−ALDRICH Corp.SIGMA−ALDRICH Japan K.K.社製 Fluka、20wt%水溶液)を、超純水にて11wt%まで希釈したものを用い、表6に示されるRun No.10からNo.16の条件に変えて合成を試みた。その結果、生成物として、新規結晶性層状ケイ酸塩PLS−4が得られた。このときの一連の粉末X線回折パターンを図16に示す。また、Run No.10を除き、非常に良い結晶性と高い結晶化度を有することが分かった。
【0059】
更に、このPLS−4(Run No.14、No.15)について、SEM観察を行ったところ、図17に示されるように、サブミクロンレベルの板状の結晶外形になっていることが明らかとなった。図10と比較すると、結晶のサイズや形状は良く似ているものの、高次の凝集は見られなかった。用いたアミン(DEDMAOH)水溶液の純度(精製度)や陰イオン交換率の違いに起因していると考えられる。
【0060】
【表6】
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上詳述したように、本発明は、CDO型高シリカゼオライトの前駆体となる結晶性層状ケイ酸塩及びその製造方法に係るものであり、本発明により、CDO型高シリカゼオライトの前駆体となる新規結晶性層状ケイ酸塩及びその製造方法を提供することができる。本発明の結晶性層状ケイ酸塩は、ケイ素5員環構造を持った、新規な結晶構造を有し、シリカ含有量が高く、例えば、金属担持用固体、分離・吸着剤、形状選択性固体触媒、イオン交換剤、クロマトグラフィー充填剤材料及び化学反応場など、広範な用途に利用可能である。また、この結晶性層状ケイ酸塩を脱水重縮合反応させることで、容易に産業利用に適した、しかも高比表面積を有する新しいCDO型高シリカゼオライトが得られる。本発明は、従来の水熱合成法による一段合成によるCDO型高シリカゼオライトの製造法に比べ、合成が容易で、非常に短時間で、結晶が得られ、しかも吸着比表面積が大きいことから、従来法と比べて効率的な製造技術として高い優位性を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】結晶性層状ケイ酸塩kanemiteの結晶構造モデル(Si,O,Na(H2O)6で構成される)を示す。
【図2】H−kanemiteの粉末X線回折パターンを示す。
【図3】合成したDEDMAOHの13C CP/MAS NMRスペクトルを示す。
【図4】水蒸気雰囲気下での固相合成におけるオートクレーブ内の状態を示す概略図を示す。
【図5】固相合成(Run No.1)により得られた生成物の粉末X線回折パターンを示す。
【図6】新規層状ケイ酸塩PLS−4(Run No.1)(下)及びそれを焼成して得られた高シリカCDO型ゼオライト(上)の29Si DDMAS NMRスペクトルを示す。
【図7】新規層状ケイ酸塩PLS−4の結晶構造を表す概略図を示す。(上)はb軸から見た図、(下)はa軸から見た図を表す。
【図8】新規層状ケイ酸塩PLS−4(Run No.2)の13C CPMAS NMRスペクトルを示す。
【図9】新規層状ケイ酸塩PLS−4のTG−DTAカーブ(Run No.2)を示す。太線はTGカーブ、細線はDTAカーブを表す。
【図10】新規層状ケイ酸塩PLS−4(上)及びそれを焼成して得られた高シリカCDO型ゼオライト(下)のSEM像を示す。
【図11】新規層状ケイ酸塩PLS−4の合成条件と生成物を示すマップを示す。ここで、R=DEDMAOHを示し、○は結晶性が良、△は結晶性が低、×はアモルファスを表す。
【図12】新規結晶性層状ケイ酸塩PLS−4を焼成した後の粉末X線回折パターン(上)と高シリカCDO型ゼオライトのシミュレーションパターン(下)を示す。
【図13】層状ケイ酸塩PLS−4を加熱温度が100℃及び600℃で焼成したときのArガス吸着等温曲線を示す。600℃で焼成したものはCDO型ゼオライトに変化している。
【図14】実施例に基づいて表5記載のRun No.1−No.9の条件に基づいて合成した生成物の粉末X線回折パターンを示す。
【図15】結晶性層状ケイ酸塩PLS−4(Run No.1)を焼成して得られた高シリカCDO型ゼオライトの粉末X線回折パターンを示す。
【図16】実施例に基づいて表6記載のRun No.10−No.16の条件に基づいて合成した生成物の粉末X線回折パターンを示す。
【図17】新規層状ケイ酸塩PLS−4のSEM像を示す。(上)はRun No.14、(下)はRun No.15を表す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性層状ケイ酸塩を酸処理したH型結晶性層状ケイ酸塩に、有機構造規程剤(OSDA)水溶液を加えたものを圧力容器(オートクレーブ)に入れ、水蒸気雰囲気下で固相反応させることにより、CDO型高シリカゼオライトの前駆体結晶性層状ケイ酸塩を合成することを特徴とするケイ素5員環を持った結晶性層状ケイ酸塩の製造方法。
【請求項2】
有機構造規程剤(OSDA)が、有機アミン分子である、請求項1記載の結晶性層状ケイ酸塩の製造方法。
【請求項3】
結晶性層状ケイ酸塩カネマイト(kanemite)を酸処理したH−kanemiteに、ジエチルジメチルアンモニウムヒドロキシド(Diethyldimethylammonium hydroxide[(C2H5)2(CH3)2N(OH)]:DEDMAOH)水溶液を加えたものを圧力容器(オートクレーブ)に入れ、所定の温度、24−48時間の加熱条件にて、水蒸気雰囲気下で固相反応させる、請求項1記載の結晶性層状ケイ酸塩の製造方法。
【請求項4】
DEDMAOH水溶液を、モル比がDEDMAOH/Si=0.10−0.15、H2O/Si=5−8の範囲となるように加える、請求項3記載の結晶性層状ケイ酸塩の製造方法。
【請求項5】
得られる結晶性層状ケイ酸塩が、図7に代表されるケイ素5員環(酸素5員環)を有するSi−Oの共有結合を有した層状の結晶構造からなる、請求項1から4のいずれかに記載の結晶性層状ケイ酸塩の製造方法。
【請求項6】
表1に示される回折ピーク位置と相対強度の関係を持ち、図5に代表される粉末X線回折図形によって示される結晶構造を有することを特徴とする結晶性層状ケイ酸塩。
【表1】
【請求項7】
図7に代表されるケイ素5員環(酸素5員環)を有するSi−Oの共有結合を有した層状の結晶構造からなる、請求項6記載の結晶性層状ケイ酸塩。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の前駆体結晶性層状ケイ酸塩を、大気中にて、加熱し、脱水重縮合させることを特徴とするCDO型高シリカゼオライトの製造方法。
【請求項9】
請求項6又は7に記載の前駆体結晶性層状ケイ酸塩を脱水重縮合させたことを特徴とする、従来材に比べて比表面積が少なくても15%増加した高比表面積のCDO型高シリカゼオライト。
【請求項10】
上記CDO型高シリカゼオライトにおいて、アルゴンガス吸着測定から、平均細孔径5.2Åのミクロ孔及びBET350m2/g以上の高比表面積を有する、請求項9記載の高比表面積のCDO型高シリカゼオライト。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の高比表面積のCDO型高シリカゼオライトからなることを特徴とする高耐熱性ゼオライト部材。
【請求項1】
結晶性層状ケイ酸塩を酸処理したH型結晶性層状ケイ酸塩に、有機構造規程剤(OSDA)水溶液を加えたものを圧力容器(オートクレーブ)に入れ、水蒸気雰囲気下で固相反応させることにより、CDO型高シリカゼオライトの前駆体結晶性層状ケイ酸塩を合成することを特徴とするケイ素5員環を持った結晶性層状ケイ酸塩の製造方法。
【請求項2】
有機構造規程剤(OSDA)が、有機アミン分子である、請求項1記載の結晶性層状ケイ酸塩の製造方法。
【請求項3】
結晶性層状ケイ酸塩カネマイト(kanemite)を酸処理したH−kanemiteに、ジエチルジメチルアンモニウムヒドロキシド(Diethyldimethylammonium hydroxide[(C2H5)2(CH3)2N(OH)]:DEDMAOH)水溶液を加えたものを圧力容器(オートクレーブ)に入れ、所定の温度、24−48時間の加熱条件にて、水蒸気雰囲気下で固相反応させる、請求項1記載の結晶性層状ケイ酸塩の製造方法。
【請求項4】
DEDMAOH水溶液を、モル比がDEDMAOH/Si=0.10−0.15、H2O/Si=5−8の範囲となるように加える、請求項3記載の結晶性層状ケイ酸塩の製造方法。
【請求項5】
得られる結晶性層状ケイ酸塩が、図7に代表されるケイ素5員環(酸素5員環)を有するSi−Oの共有結合を有した層状の結晶構造からなる、請求項1から4のいずれかに記載の結晶性層状ケイ酸塩の製造方法。
【請求項6】
表1に示される回折ピーク位置と相対強度の関係を持ち、図5に代表される粉末X線回折図形によって示される結晶構造を有することを特徴とする結晶性層状ケイ酸塩。
【表1】
【請求項7】
図7に代表されるケイ素5員環(酸素5員環)を有するSi−Oの共有結合を有した層状の結晶構造からなる、請求項6記載の結晶性層状ケイ酸塩。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の前駆体結晶性層状ケイ酸塩を、大気中にて、加熱し、脱水重縮合させることを特徴とするCDO型高シリカゼオライトの製造方法。
【請求項9】
請求項6又は7に記載の前駆体結晶性層状ケイ酸塩を脱水重縮合させたことを特徴とする、従来材に比べて比表面積が少なくても15%増加した高比表面積のCDO型高シリカゼオライト。
【請求項10】
上記CDO型高シリカゼオライトにおいて、アルゴンガス吸着測定から、平均細孔径5.2Åのミクロ孔及びBET350m2/g以上の高比表面積を有する、請求項9記載の高比表面積のCDO型高シリカゼオライト。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の高比表面積のCDO型高シリカゼオライトからなることを特徴とする高耐熱性ゼオライト部材。
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図1】
【図4】
【図7】
【図10】
【図11】
【図17】
【図3】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図1】
【図4】
【図7】
【図10】
【図11】
【図17】
【公開番号】特開2008−137856(P2008−137856A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−326395(P2006−326395)
【出願日】平成18年12月3日(2006.12.3)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月3日(2006.12.3)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】
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