説明

CHF2又はCHF基を有する化合物の調製

CHF2C(O)-又はCHFC(O)基を有する化合物が、CClF2C(O)-又はCClFC(O)基を有する対応する化合物又は対応する臭素又はヨウ素化合物及び亜鉛から、プロトン源としてのアルコールの存在下生成され得る。CHF2C(O)基を有するモノエステル又は二つのCHFC(O)基又は(O)CCHFC(O)基を有するジエステルが生成され得る。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、対応する臭素、ヨウ素又は塩素化合物、好ましくはCClF2C(O)又はCClFC(O)基を有する化合物からのヒドロ脱ハロゲン化反応、好ましくはヒドロ脱塩素化によるCHF2C(O)又はCHFC(O)を有する化合物の調製方法に関する。
CHF2C(O)又はCHFC(O)基を有する化合物、特にエステル化合物及びジエステル化合物は、化学合成において有用な中間体である。
対応する塩素化合物に由来するような化合物の調製及び塩素原子の水素への変換は、既知である。Takashi Tsukamoto及びTomoya Kitazumeは、J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1993, 1177-1181頁においてジメチルホルムアミド中のエチルクロロジフルオロアセテートと亜鉛及びそれによる酸性加水分解により、定量的にエチルジフルオロアセテートが生じることを述べる(1177頁、左欄を参照のこと)。しかし、どのようにこのエステルが分離され得るのかは記載されていない。
A.Yakubovich 及びS.M.Rozenstheinは、Journal of General Chemistry USSR, Volume 31 (1961),1866-1870頁において、α位及びβ位において塩素及び/又は臭素によって置換されたエステルの塩素原子を水素に変換すること、及びアルコキシ基の添加を示す。
本発明の目的は、特に対応するエステル又はジエステル化合物からのCHF2C(O)又はCHFC(O)基を有する化合物の改良された調製方法を特定することである。この目的は、本発明の方法によって達成される。
【0002】
本発明の方法は、プロトン源としてアルコールの存在下、CFnXC(O)基及び亜鉛からCFnHC(O)基を有する化合物の調製(式中、nは、1又は2及びXは、臭素、ヨウ素又は好ましくは塩素である)であって、Xを水素で変換することにより、α-位及びβ-位両方にXで置換されている化合物を除くことによることを特徴とする調製を予見する。これは、更に(O)CCClFC(O)を有する化合物から調製される(O)CCHFC(O)基を有する化合物も含む。本発明の背景において、Xは、水素に変換され、それによって、Xの水素及びアルコキシ基による変換がある2つ以上のX置換基を有する化合物(アルコール由来の幹(stem)が存在する)は、本発明によって包含されない。もちろん、2以上のCFnXC(O)基を有する化合物から2以上のCFnHC(O)基を有する化合物を調製することも可能である。この場合、相応してより多くの亜鉛及びアルコールが使用される。
アルコールは、プロトン源として反応に役立ち、過剰量で使用され得またそれから溶媒として役立つ。特定の生成化合物は、溶媒として添加され得る。ジメチルホルムアミド又は他のカルボキシアミドは、好ましくは反応混合物に存在しない。
本発明の方法の好ましい態様は、1又は2つのCFnHC(O)を有する化合物は、1又は2つのCFnXC(O)基を有する化合物から調製されることを特徴とし、ここでn及びXは、上記のようにそれぞれ定義される。1又は2つのCFnClC(O)基を有する化合物から1又は2つのCFnHC(O)基を有する化合物を調製することが好ましい。
特に式R1CFHC(O)OR2(式中、R1は、F、C1-C5アルキル、又は少なくとも1つのフッ素原子で置換されたC1-C5アルキルであり、またR2は、C1-C5アルキル、又は少なくとも1つのフッ素原子で置換されたC1-C5アルキルである)のエステルを調製することが好ましい。式R3OC(O)CFHC(O)OR3(式中、R3は、C1-C5アルキル、又は少なくとも1つのフッ素原子で置換されるC1-C5アルキルである)のジエステルを調製することが更に好ましい。好ましい出発化合物は、特に塩素置換化合物である。
【0003】
R1は、最も好ましくはF又は部分的にフッ素化され又は過フッ素化されたC1-C3である。
R2及びR3は、好ましくはそれぞれメチル、エチル、n-プロピル又はイソプロピルである。
R1は、好ましくはF又はCF3である。
(任意に溶媒としても過剰量で使用される)プロトン源として使用されるアルコールは、適当にR2又はR3基に対応する。
一つの態様において、エステルは、現場で相当する塩酸及びアルコールから調製される。この場合、アルコールは、プロトン源でないが、塩酸をエステル化するためにも役立つ。従って、より多くのアルコールが使用されなければならない。しかし、アルコールは、溶媒として過剰で適当に使用されるので、これは問題でない。
非プロトン性溶媒の存在下、反応を実施することが有利であり得る。この場合、使用される非プロトン性溶媒は、好ましくは、少なくとも主に調製されるべき生成物、例えば1つ以上のCHF2C(O)又はCHFC(O)基を有するエステル又はジエステルである。ニトリルは、好ましくは溶媒として存在しない。先に既に述べたように、DMFのようなカルボキシアミドを溶媒として使用しないことが好ましい。
【0004】
変換のされうる塩素原子に対して0.9〜2.1当量の亜鉛を使用することが好ましい。塩素原子に対して約1.1〜2の亜鉛を使用することが好ましく、亜鉛の化学量論的過剰の亜鉛が有利であることが分かった。
臭素、ヨウ素又は塩素含有出発化合物、亜鉛及びアルコールの間の反応がなされる温度は、有利にも50℃と適当なアルコールの沸点との間である。
分離は、慣習的な方法によってなされ得る。
本発明は、さらにメチルジフルオロアセテートとメタノールの共沸混合物であって、メチルクロロジフルオロアセテート、亜鉛及びメタノールの反応の場合に蒸留され得るものを提供する。この共沸混合物が、例えば溶媒又は洗浄剤として有用である。その組成を変化させずに再蒸留によって精製され得ることが有利である。しかし、それは亜鉛及びメチルクロロジフルオロアセテート及びもし適当なれば、メタノールの反応混合物に添加され得る。添加される共沸混合物の量に従って、プロトン源として役立つメタノールの量が、減少され得、適切な場合、プロトン源として必要とされるメタノールは、全く除かれ得る。この場合、この共沸混合物は、溶媒として及びメタノールの存在によりプロトン源として役立つ。
本発明の方法は、高収量及び高選択性が達成されるという利点を有する。DMFのような溶媒は、更に廃棄が困難である。
以下の実施例は、本発明を更に説明するものであるが、その範囲を限定しない。
【実施例1】
【0005】
メチルクロロジフルオロアセテート及び亜鉛からのメチルジフルオロアセテートの調製
一般的な手順:出発化合物、亜鉛及びアルコールを特定の割合で、特定の反応時間の間及び温度で互いに反応させた。メチルエステルの減圧除去によって、周囲圧で64℃の一定の沸点を有するメチルジフルオロアセテートとメタノールの共沸混合物の留分が通常生じる。この混合物を内部標準としてベンゾトリフルオリドと混合しその収量を1H及び19F NMRスペクトルによって確認した。この共沸混合物は、更に反応して他のジフルオロ酢酸化合物を与え得る。NH3が、例えばジフルオロアセトアミドに対して定量的な量で、エステルに変換するために使用され得る。
反応条件は、表1に従う。
略記:
MeCDFA=メチルクロロジフルオロアセテート
EtCDFA=エチルクロロジフルオロ
CDFACl=クロロジフルオロアセチルクロリド
MeOH=メタノール
EtOH=エタノール
Eq.=当量
Zn=亜鉛
【0006】
表1:反応パラメータ及び分析データ

1)%でのデータ
過剰量の亜鉛及び環流温度のメタノールが収量にポジティブであるように理解され得る。
【実施例2】
【0007】
エチルジフルオロアセテートの調製
反応を沸騰エタノールであることを除き実施例1のように実施した。
反応パラメタ及び解析データは、表2に従う。

表2:反応パラメタ及び分析データ

1)%でのデータ
【実施例3】
【0008】
現場で(in situ)調製されたメチルクロロジフルオロアセテートからのメチルジフルオロアセテートの調製
手順:亜鉛を最初にメタノールにチャージしてクロロジフルオロアセチルクロリドを添加した。この反応は、ガスの放出を伴って発熱で進行する。方法パラメタ及び分析は、表3に従う。










表3:反応パラメタ及び分析データ

1)%でのデータ
1時間の環流の後、反応は終了したように見える。形成したHClは、亜鉛と非常に迅速に反応し、部分的にだけClCF2基を減少させる発生期の水素を形成する。より大過剰にすると、この結果を改良するはずである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロトン源としてのアルコールの存在下、CFnXC(O)基及び亜鉛からCFnHC(O)基を有する化合物を調製する方法であって、式中、nは、1又は2であり、またXは、臭素、ヨウ素又は好ましくは塩素であり、Xを水素に変換して、α-位及びβ-位両方にXで置換されている化合物を除くことによることを特徴とする方法。
【請求項2】
1種以上のCFnHC(O)基を有する化合物が、1種以上のCFnClC(O)基を有する化合物から調製される(式中、n及びXは、それぞれ請求項1に定義されたものである)請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式R1CFHC(O)OR2(式中、R1が、F、C1-C5-アルキル、又は少なくとも1つのフッ素原子で置換されているC1-C5-アルキルであり、かつR2が、C1-C5-アルキル、又は少なくとも1つのフッ素原子で置換されているC1-C5-アルキルである)のエステルが調製され、又は式R3OC(O)CFHC(O)OR3(式中、R3は、C1-C5-アルキル、又は少なくとも1つのフッ素原子で置換されたC1-C5-アルキルである)のジエステルが、調製される請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
R1が、F又は部分的にフッ素化された又は過フッ素化されたC1-C3である請求項3に記載の方法。
【請求項5】
R2及びR3が、それぞれメチル、エチル、n-プロピル又はイソプロピルである請求項3に記載の方法。
【請求項6】
R1が、F又はCF3である請求項3に記載の方法。
【請求項7】
アルコールが、R2又はR3基に相当する請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記エステルが、塩酸及びアルコールから現場で調製される請求項3に記載の方法。
【請求項9】
反応生成物が、溶媒として添加される請求項1に記載の方法。
【請求項10】
メチルジフルオロアセテート及びメタノールの共沸混合物が、溶媒として作用し、またプロトン源として好適な場合は、メチルジフルオロアセテートの調製において添加される請求項9に記載の方法。
【請求項11】
メチルジフルオロアセテート及びメタノールの共沸混合物。

【公表番号】特表2007−527874(P2007−527874A)
【公表日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−502209(P2007−502209)
【出願日】平成17年2月4日(2005.2.4)
【国際出願番号】PCT/EP2005/001123
【国際公開番号】WO2005/085173
【国際公開日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(506305333)ソルヴェイ オーガニックス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1)
【Fターム(参考)】