説明

CO2インキュベータ

【課題】チャンバー内を確実に滅菌でき、安全で低コストのCOインキュベータを提供する。
【解決手段】被培養体を収納するチャンバー4内のCOガスの供給量を制御するCOインキュベータ1であって、ファン6と、オゾン発生器11と、チャンバーに併設されるバイパス路10内のオゾン濃度を測るオゾンセンサ14と、チャンバー内を加熱するヒータ8とは別に設けられるバイパス路ヒータ16と、チャンバー内の温度を測る第1温度センサと、バイパス路内の温度を測る第2温度センサと、制御部とを備え、制御部は、チャンバー内を減菌処理する際、オゾンセンサの検出値に基づいてチャンバー内のオゾン濃度を所定の範囲に制御するとともに、第1温度センサ及び第2温度センサの検出値に基づいてバイパス路内及びオゾン発生器内の温度をチャンバー内の温度より高くなるようにバイパス路ヒータを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、COインキュベータに関する。
【背景技術】
【0002】
被培養体を収納するチャンバーの内部に二酸化炭素(CO)ガスを供給するための手段と、チャンバーの内部のCOガスの濃度を検出するためのセンサとを備え、COガスの濃度に応じて、COガスの供給量を制御するCOインキュベータ(以後「インキュベータ」と略称する)が知られている。
【0003】
このようなインキュベータを用いて被培養体を培養した後にこれを変更する場合、細胞や微生物等の先の被培養体自体又は同被培養体に寄生していた菌やウイルス等がチャンバーの内壁に付着していたり、同チャンバーの内部を浮遊していたりするため、これらによる次の被培養体の汚染を回避するべく、チャンバーの内部に対し滅菌処理を行なう必要がある。
【0004】
このような滅菌処理は、例えば、アルコールや消毒液等でチャンバーの内部を拭き清掃することによって行なわれていた。或いは、例えば、強い酸化作用を有するとされているオゾン(O)ガスをチャンバーの内部に供給することによって、滅菌処理が行われていた。
【0005】
滅菌処理方法のうちの特に後者の例として、オゾンガスを発生させるオゾン発生装置と、このオゾンガスを分解するオゾン分解装置とを備えたインキュベータが開示されている(例えば、特許文献1参照)。このインキュベータでは、オゾン発生装置から発生したオゾンガスが供給ラインを通じてチャンバーの内部に供給される一方、チャンバーの外部に排気ラインを通じて排気されるオゾンガスを含んだ空気がオゾン分解装置を経由して同装置により無害化されるようになっている。
【特許文献1】特開2004−267064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した特許文献1に開示されるインキュベータは、オゾン分解装置を備えている分だけ高価な装置になるという問題がある。
【0007】
そこで、仮にこのインキュベータがオゾン発生装置のみを備え、オゾン分解装置は備えない場合、オゾン発生装置からのオゾンガスの供給によってチャンバーの内部が高圧になるため、外部に有害なオゾンガスを漏らさないという安全上の要請から同チャンバーを耐圧仕様にする必要がある。つまり、インキュベータは、結果的に、高価な装置になるという問題が残る。
【0008】
一方、チャンバーの内部を拭き清掃する方法では、前述したオゾンガスを用いる場合に比べて、滅菌処理が不完全になる虞があるのみならず、同方法は、利用者に大きな作業負担をかけるため、そもそもこのようなインキュベータ自体の導入が敬遠される虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための発明は、被培養体を収納するチャンバーとこのチャンバーに前記被培養体を出し入れするための扉とを備え、前記チャンバー内のCOガス濃度を検出するCOセンサの検出値に基づいて当該チャンバー内に供給するCOガスの量を制御してなるCOインキュベータであって、前記チャンバー内の空気が循環するバイパス路を当該チャンバーと併設して設け、前記チャンバー内の空気を攪拌するファンと、オゾン発生器と、前記バイパス路に設けられ、前記バイパス路内のオゾン濃度を測るオゾンセンサと、前記チャンバー内を加熱するヒータとは別に設けられ、前記バイパス路を加熱するためのバイパス路ヒータと、前記チャンバー内の温度を測る第1温度センサと、前記バイパス路内の温度を測る第2温度センサと、制御部とを備え、前記制御部は、前記チャンバー内を減菌処理する際、前記オゾンセンサの検出値に基づいて前記オゾン発生器を制御して前記チャンバー内のオゾン濃度を所定の範囲に制御するとともに、前記第1温度センサ及び前記第2温度センサの検出値に基づいて前記バイパス路内及び前記オゾン発生器内の温度を前記チャンバー内の温度より高くなるように前記バイパス路ヒータを制御する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、チャンバー内を確実に滅菌できる上に安全で低コストのCOインキュベータを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかになる。
【0012】
===第1の実施の形態===
<<<インキュベータの構成>>>
図1及び図2を参照しつつ、本実施の形態のインキュベータ1の構成例について説明する。図1は、インキュベータ1の一例の側面断面図である。図2は、図1のインキュベータ1の制御を司る構成の一例を示すブロック図である。尚、図1の例示では、X軸はインキュベータ1の横幅方向を示し、Y軸はインキュベータ1の奥行方向を示し、Z軸はインキュベータ1の高さ方向を示すものとする。
【0013】
図1及び図2に例示されるように、インキュベータ1は、チャンバー4と、ファン6と、バイパス路10と、循環ポンプ15と、オゾン発生器11と、チャンバー4用のヒータ8と、バイパス路10用のヒータ16(バイパス路ヒータ)と、制御部100とを備えている。
【0014】
チャンバー4は、その内部に培養室を形成する例えばステンレス製の略直方形状の箱であり、その奥行方向の前側の開口にはヒンジ(不図示)を介して開閉可能な内扉5が設けられている。内扉5は、例えば強化ガラス製の平板であり、チャンバー4の開口をパッキン(不図示)を介して閉じると、同チャンバー4の内部が外部に対し気密になるように構成されている。尚、図1に例示されるチャンバー4では、その横幅方向に対をなす内壁に対し、被培養体を載置するための例えばステンレス製の棚41が支持されている。また、チャンバー4は、例えば金属製で同チャンバー4と略相似形状をなす外箱2に収容されている。この外箱2の奥行方向の前側の開口にはヒンジ(不図示)を介して開閉可能な外扉3が設けられている。外扉3は、外箱2の開口をパッキン33を介して閉じると、同外箱2の内部が外部に対し気密になるように構成されている。
【0015】
ファン6は、チャンバー4の例えば天井面の略中央部に設けられるシロッコファンである。培養時及び滅菌処理時の双方において、このファン6が一定方向に回転することにより、例えば、チャンバー4の略中央部において下側から上側へ空気の流れが生じる。これにより、チャンバー4の内部の空気が攪拌される。
【0016】
バイパス路10は、チャンバー4の奥行方向の後側の壁に形成された孔4aと孔4bとを同チャンバー4の外側で繋ぐ例えばステンレス製の管である。本実施の形態では、バイパス路10には、以下述べる循環ポンプ15及びオゾン発生器11の他に、COセンサ12、O(酸素)センサ13、オゾンセンサ14等が設けられている。また、本実施の形態では、バイパス路10は外箱2の壁を貫通して同壁の外側に露出しているが、この露出部分は箱21によって外部から保護されている。但し、このような構成に限定されるものではなく、バイパス路10は、例えば、チャンバー4の奥行方向の後側の壁と、外箱2の奥行方向の後側の壁との間にあってもよい。
【0017】
循環ポンプ15は、バイパス路10の途中に設けられて、培養時及び滅菌処理時の双方において、チャンバー4の内部の空気を、例えば、孔4aを経由してチャンバー4の内側から外側へ導いた後、孔4bを経由してチャンバー4の外側から内側へ戻す(図1の白抜きの矢印参照)。
【0018】
オゾン発生器11は、バイパス路10の途中に設けられており、滅菌処理時において、同バイパス路10の内部を流れる空気から例えば無声放電によってオゾンガスを発生する。オゾン発生器11で発生したオゾンガスは、孔4bを経由してチャンバー4の内部に流れ込むようになっている。尚、本実施の形態では、バイパス路10において、オゾン発生器11は、オゾンセンサ14よりも、空気の流れの下流側に設けられている。これにより、オゾンセンサ14は、チャンバー4の内部のオゾンガスの濃度をより正確に検出できる。
【0019】
チャンバー4用のヒータ8は、チャンバー4の壁と外箱2の壁との間のエアジャケットにおいて、不図示の断熱材とともに、チャンバー4の外壁に熱的に接触するように設けられている。また、このチャンバー4用のヒータ8は、外扉3の内側にも設けられている。このように、内扉5で閉じられたチャンバー4が有する6つの面全てに対向するヒータ8によって、培養時及び滅菌処理時の双方において、チャンバー4の内部の温度を略均一に調節できる。
【0020】
バイパス路10用のヒータ16は、箱21の内側に設けられて、特に滅菌処理時において、バイパス路10の内部の温度を調節するためのものである。
【0021】
制御部100は、図2に例示されるように、前述した、オゾン発生器11、オゾンセンサ14、COセンサ12、Oセンサ13、ヒータ8、16、ファン6を駆動するファンモータ6a、及び循環ポンプ15を統括制御する。
【0022】
また、インキュベータ1は、以下述べる、流量制御バルブ18、サーミスタ101(第1温度センサ)、サーミスタ102(第2温度センサ)、ROM103、RAM104、タイマ105、コントロールパネル31、及び電気錠32を更に備えており、図2に例示されるように、制御部100は、これらを統括制御する。
【0023】
流量制御バルブ18は、培養時において、チャンバー4の内部でCOやO等のガスの濃度を所定値に維持するために、チャンバー4の壁を貫通して設けられたノズル17を通じて供給されるガスの流量を制御するための電磁バルブである。この流量制御バルブ18は、インキュベータ1の外部に設置されたCOやO等のガスボンベ19と所定の配管を介して接続されている。チャンバー4の内部の空気を所定濃度のCOガス雰囲気に維持する場合、制御部100は、循環ポンプ15を駆動してチャンバー4の内部の空気をバイパス路10に導きつつ、同バイパス路10においてCOセンサ12により検出されるCOガスの濃度が所定値に維持されるように、流量制御バルブ18を制御するようになっている。或いは、チャンバー4の内部の空気を所定濃度のOガス雰囲気に維持する場合も、Oが充填されたガスボンベ19と、Oセンサ13とを用いて、制御部100は、同様の制御を実行するようになっている。
【0024】
サーミスタ101は、チャンバー4の内部の温度を検出するべく同チャンバー4の所定の位置に設けられている。
サーミスタ102は、バイパス路10の内部、好ましくはオゾン発生器11近傍の温度を検出するべく同バイパス路10の所定の位置に設けられている。
ROM103は、培養及び滅菌処理の双方において、制御部100の処理手順を定めるプログラム等を記憶し、RAM104は、同制御部100による処理の際に用いられるデータ等を記憶する。
タイマ105は、例えば滅菌処理の時間等を計時する。
【0025】
コントロールパネル31は、例えば外扉3の正面に設けられており、チャンバー4の内部の温度やCO又はOガスの濃度等を入力するためのキー(不図示)や、現在の温度や濃度等を表示するためのディスプレイ(不図示)等を有している。また、培養及び滅菌処理の開始及び停止も、このコントロールパネル31上の操作を通じて行なわれる。
【0026】
電気錠32は、外扉3に設けられており、コントロールパネル31上の操作を通じて又は制御部100からの直接の命令によって、同外扉3が外箱2の開口を閉じた状態で電気的に施錠したり開錠したりする。
【0027】
尚、インキュベータ1のチャンバー4の底面には、水を収納する水皿7が載置可能となっている。水皿7中の水は、培養時には、空気を所定の湿度に維持するとともに、滅菌処理時には、オゾンガスの滅菌作用を向上させる。つまり、培養時及び滅菌処理時の双方において、水皿7は、チャンバー4の内部の湿度を上昇させるためのものである。尚、オゾンガスは、乾燥した状態よりも、高湿度な状態にある方が、滅菌作用がより高いことが確認されている。
【0028】
<<<制御部の機能>>>
前述した制御部100は、滅菌処理運転において、ファン6、循環ポンプ15、及びオゾン発生器11を駆動しつつ、バイパス路10の内部の温度がチャンバー4の内部の温度より高くなるようにヒータ8、16を個別に駆動するようになっている。
【0029】
循環ポンプ15によってバイパス路10に導かれたチャンバー4の内部の空気は、オゾン発生器11でオゾンガスの原料となる。発生したオゾンガスは、空気とともに、バイパス路10からチャンバー4に戻る。この循環によって、チャンバー4の内部のオゾンガスの濃度は所定範囲に維持される。尚、ファン6、循環ポンプ15、及びオゾン発生器11は、タイマ105で計時される予め定められた時間だけ連続して運転されるが、これに限定されるものではない。例えば、タイマ105で計時される予め定められた時間において、オゾンセンサ14により検出されるオゾンガスの濃度が所定範囲に維持されるようにオゾン発生器11が断続的に運転されてもよい。
【0030】
このように、オゾンガスの原料をチャンバー4の内部の空気に求めることによって、例えば外部からオゾンガスを供給することに伴う内部の高圧化を回避できるため、同チャンバー4を特に耐圧仕様としたり、或いはオゾン分解手段を伴った排気ラインを設けたりしなくても、外部にオゾンガスが漏れる心配はない。よって、チャンバー4の内部を確実に滅菌できる上に安全で低コストのインキュベータ1が提供される。また、循環ポンプ15が設けられたバイパス路10は、培養時におけるCOやO等のガスの濃度を検出する機能も兼ね備えることによって、例えば培養及び滅菌処理の双方のために循環ポンプを2台設ける必要がなくなるため、インキュベータ1がより一層低コストとなる。
【0031】
ヒータ8、16は、タイマ105で計時される予め定められた時間において、サーミスタ102によって検出されるバイパス路10の内部の温度が、サーミスタ101によって検出されるチャンバー4の内部の温度よりも所定の温度差をもって高くなるように、個別に制御される。但し、これに限定されるものではなく、ヒータ8、16は、例えば、バイパス路10及びチャンバー4の間に所定の温度差が生じるように予め定められた電流をもって、タイマ105で計時される予め定められた時間だけ連続して運転されてもよい。
【0032】
一般に、チャンバー4の内部の湿度は、例えば外部の大気に比べて高いため、このような高湿度の空気がバイパス路10に導かれてオゾン発生器11でもし結露した場合、これは、オゾンガスの発生効率を低下させるだけでなく、同オゾン発生器11の故障の原因となる。しかし、本実施の形態のインキュベータ1では、ヒータ8、16の制御によって、バイパス路10の内部がチャンバー4の内部よりも高温に維持されているため、チャンバー4の内部の空気がバイパス路10の内部において結露する事態が抑制される。
【0033】
また、前述した制御部100は、滅菌処理運転を終了すると、オゾンセンサ14により検出されるオゾンガスの濃度を参照し、オゾンガスの濃度が予め定められた所定値以上であると判断している間は電気錠32の施錠を維持し、オゾンガスの濃度が所定値未満であると判断した時点で開錠する。尚、この所定値は、例えば、オゾンガスが人体にとって無害とされるような同ガスの空気中の許容濃度である。但し、これに限定されるものではなく、例えば、制御部100は、滅菌処理運転を終了すると、例えばタイマ105で計時される予め定められた時間だけ電気錠32の施錠を維持した後に開錠してもよい。空気中のオゾンガスが自然に分解する速度は周知であるため、滅菌処理運転の終了から電気錠32の開錠までの時間は、この自然分解速度に基づいて設定すればよい。
【0034】
これにより、少なくとも外箱2の外部に有害なオゾンガスが漏れる事態はより確実に防止される。また、電気錠32の施錠により外扉3は確実に外箱2の開口を閉じているため、例えばチャンバー4の内扉5を開錠した状態にして、滅菌処理を行うことにより、内扉5及びチャンバー4の接触部分のパッキン(不図示)等も滅菌できる。
【0035】
===第2の実施の形態===
図3を参照しつつ、本実施の形態のインキュベータ1’の構成例について説明する。同図は、インキュベータ1’の一例の側面断面図である。尚、同図の例示では、X軸はインキュベータ1’の横幅方向を示し、Y軸はインキュベータ1’の奥行方向を示し、Z軸はインキュベータ1’の高さ方向を示すものとする。また、同図に例示される構成のうち、前述した図1に例示される構成と略同一の構成には同一の番号が付されている。
【0036】
インキュベータ1’は、チャンバー4と、ファン6と、バイパス路10’と、オゾン発生器11と、チャンバー4用のヒータ8と、バイパス路10’用のヒータ16(バイパス路ヒータ)と、オゾンセンサ14と、図2の例示と略同一のサーミスタ101(第1温度センサ)、サーミスタ102(第2温度センサ)、及び制御部100とを備えている。
【0037】
図3の例示における図1の例示との主な相違点は、バイパス路10’がチャンバー4の内部に形成されていることと、ファン6が同バイパス路10’の内部に設けられて空気の流路を形成することと、これにより前述した循環ポンプ15を備えていないこととである。以下、図3の例示について、図1の例示との相違点を中心に説明し、共通点に関する説明を省略する。
【0038】
バイパス路10’は、チャンバー4の例えば奥行方向の後側の壁と、同チャンバー4の内部にあって同壁と対向する例えばステンレス製の壁板9との間に形成されている。この構成により、チャンバー4の内部は、棚41が配置されている培養室と、バイパス路10’とに分けられる。本実施の形態では、バイパス路10’には、ファン6、オゾンセンサ14、Oセンサ13、COセンサ12、オゾン発生器11等が設けられている。また、本実施の形態では、オゾンセンサ14、Oセンサ13、COセンサ12、及びオゾン発生器11のそれぞれにおける配線側(ヘッドと反対側)部分は、外箱2の壁を貫通して同壁の外側に露出しているが、この露出部分は箱21によって外部から保護されている。但し、このような構成に限定されるものではなく、配線側部分は、例えば、チャンバー4の奥行方向の後側の壁と、外箱2の奥行方向の後側の壁との間にあってもよい。
【0039】
ファン6は、バイパス路10’の上側に設けられるシロッコファンである。培養時及び滅菌処理時において、このファン6が一定方向に回転することにより、例えば、培養室側には下側から上側へ空気の流れが生じるとともに、バイパス路10’の上側から下側へ空気の流れが生じる(図3の白抜きの矢印参照)。このファン6の回転によって壁板9の孔9aを通じてバイパス路10’に流れた培養室側の空気は、オゾン発生器11でオゾンガスの原料となる。発生したオゾンガスは、空気とともに、バイパス路10’から培養室側に流れる。この循環によって、チャンバー4の内部の空気が攪拌されて、培養室側のオゾンガスの濃度は所定範囲に維持される。
【0040】
このインキュベータ1’は、前述したインキュベータ1と同様に、チャンバー4の内部を確実に滅菌できる上に安全で低コストである。
【0041】
===その他の実施の形態===
前述した実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく変更や改良等が可能であり、また本発明はその等価物も含むものである。
【0042】
前述した実施の形態では、バイパス路10、10’は、チャンバー4の奥行方向の後側に設けられていたが、これに限定されるものではない。バイパス路10、10’は、要するに、チャンバー4の外部又は内部にあって同チャンバー4と併設されていれば、何れの側に設けられていてもよい。
【0043】
また、前述した実施の形態では、チャンバー4の内部と、バイパス路10、10’の内部との温度差をヒータ8、16によって形成していたが、これに限定されるものではない。要するに、このような温度差を形成できる加熱手段であれば、如何なる手段を用いてもよい。
【0044】
また、前述した実施の形態では、電気錠32は、外扉3に設けられていたが、これに限定されるものではなく、例えば内扉5に設けられていてもよい。
【0045】
また、前述した実施の形態では、滅菌処理にオゾンガスが用いられていたが、これに限定されるものではなく、例えば過酸化水素(H)ガス等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】インキュベータの一例の側面断面図である。
【図2】図1のインキュベータの制御を司る構成の一例を示すブロック図である。
【図3】インキュベータのもう一例の側面断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1、1’ インキュベータ 2 外箱 3 外扉
4 チャンバー 4a、4b 孔 5 内扉
6 ファン 6a ファンモータ 7 水皿
8、16 ヒータ 9 壁板 9a 孔
10、10’ バイパス路 11 オゾン発生器 12 COセンサ
13 Oセンサ 14 オゾンセンサ 15 循環ポンプ
17 ノズル 18 流量制御バルブ 19 ガスボンベ
21 箱 31 コントロールパネル 32 電気錠
33 パッキン 41 棚 100 制御部
101、102 サーミスタ 103 ROM 104 RAM
105 タイマ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被培養体を収納するチャンバーとこのチャンバーに前記被培養体を出し入れするための扉とを備え、前記チャンバー内のCOガス濃度を検出するCOセンサの検出値に基づいて当該チャンバー内に供給するCOガスの量を制御してなるCOインキュベータにおいて、
前記チャンバー内の空気が循環するバイパス路を当該チャンバーと併設して設け、
前記チャンバー内の空気を攪拌するファンと、
オゾン発生器と、
前記バイパス路に設けられ、前記バイパス路内のオゾン濃度を測るオゾンセンサと、
前記チャンバー内を加熱するヒータとは別に設けられ、前記バイパス路を加熱するためのバイパス路ヒータと、
前記チャンバー内の温度を測る第1温度センサと、
前記バイパス路内の温度を測る第2温度センサと、
制御部とを備え、
前記制御部は、前記チャンバー内を減菌処理する際、前記オゾンセンサの検出値に基づいて前記オゾン発生器を制御して前記チャンバー内のオゾン濃度を所定の範囲に制御するとともに、前記第1温度センサ及び前記第2温度センサの検出値に基づいて前記バイパス路内及び前記オゾン発生器内の温度を前記チャンバー内の温度より高くなるように前記バイパス路ヒータを制御することを特徴とするCOインキュベータ。
【請求項2】
前記チャンバー内に水皿を設け、当該チャンバー内の湿度を高くすることを特徴とする請求項1に記載のCOインキュベータ。
【請求項3】
前記扉に前記制御部により施錠/開錠可能な電気錠を設け、前記制御部は、前記チャンバー内のオゾン濃度が所定の濃度より高いときには、前記電気錠の施錠を維持することを特徴とする請求項1又は2に記載のCOインキュベータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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