説明

DMC触媒作用により超低含水量スターターから製造された短鎖ポリエーテルポリオール

【課題】DMC触媒の不活性化を伴わない、グリセリンのような吸湿性の開始剤からの、250を越え、約500まで、好ましくは約300〜約500のヒドロキシル価を有する短鎖ポリエーテルポリオールの製造。
【解決手段】オキシアルキル化条件をオキシアルキル化反応器において複金属シアン化物(DMC)触媒の存在下で確立する工程、該反応器に少なくとも1つのアルキレンオキシドおよび少なくとも1つの超低含水量の酸性化スターターを連続的に導入する工程、ここで、該スターターが、スターターの重量を基準として、約100ppmを越える酸および500ppm以下の水を含有し、およびオキシアルキル化低分子量ポリエーテルポリオール生成物を回収する工程を含む、スターターのポリオキシアルキル化法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、ポリエーテルポリオールの製造、より具体的には、複金属シアン化物(DMC)触媒作用を用いる、超低含水量の酸性化出発分子からの短鎖ポリエーテルポリオールの製造に関する。本発明は、超低含水量の酸性化スターターを活性化複金属シアン化物触媒の存在下でアルコキシル化することにより製造した短鎖ポリエーテルポリオールに関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第5777177号には、DMC触媒によるポリオキシアルキレンポリエーテルの製造方法におけるスターターの連続添加が記載されている。該方法は、少なくとも1つのスターターをポリオキシアルキレンポリオールの製造方法の間に連続的に添加する。初期スターターを該方法に用いることもできるが、要件ではない。該方法において連続的に添加すべき適当なスターターとして、水または1以上のヒドロキシル基および300未満の数平均分子量を有する低分子量ポリオールが挙げられる。上記「177」特許において製造されたポリオキシアルキレンポリオールは、比較的高い分子量を有し、従って低ヒドロキシル価である。
【0003】
米国特許第5689012号には、アルキレンオキシドの連続添加と同時にスターターおよび触媒の連続オキシアルキル化反応器への連続添加を用いる、DMC触媒をポリオキシアルキル化触媒として用いるポリオキシアルキレンポリエーテルを製造するための連続法が開示されている。Pazos等の活性触媒/スターター混合物を撹拌し、105℃に加熱し、真空下でストリップしてトリオールスターターから痕跡量の水を除去する。製造された全てのポリオキシアルキレンポリオールは、比較的高い分子量および低ヒドロキシル価を有する。
【0004】
米国特許第6359101号には、ポリエーテルポリオールを製造するための方法が開示されている。該方法は、エポキシドをDMC触媒の存在下で第1スターターを用いて重合し、エポキシドおよび第1スターターを、該重合中に反応器に連続的に添加して、ポリオール中間体を形成し、次いでエポキシドとポリオール中間体とを反応させてポリエーテルポリオールを形成する。該方法のために第1スターターとして開示されている適当な化合物は、ポリオキシアルキレンポリオールの製造における典型的なスターターではない。特定の反応条件および不純物濃度が該方法に存在する。
【0005】
米国特許第6835801号には、ポリオキシアルキレンポリオールを製造するために用いることができる活性スターター混合物および低分子量スターター化合物から構成される活性スターター混合物の製造方法が記載されている。該発明は、コストのかかる高分子量スターター化合物の必要性を、KOH触媒作用により、別個の専用反応器において排除する。
【0006】
米国特許第6077978号には、グリセリンおよび他の低分子量スターターのDMC触媒によるCAOS(スターターの連続添加)法における直接ポリオキシアルキル化が記載されている。該特許には、酸に敏感性であるグリセリンのようなスターターが記載され、これらのスターターは、種々の不純物が、DMC触媒を失活化するこれらのスターター中に存在する場合、反応器中に導入する前に酸性化すべきであることが開示されている。触媒不活性化についてのスターター供給流中の水の影響は、米国特許第6077978号に記載されていない。
【0007】
Brownの名における同一出願人による米国特許出願公開第2005/0209438号には、DMC触媒による低分子量ポリオールを製造するために、ポリオール製造供給流の単なる中和を必要とする過剰量の酸の添加が記載されている。しかしながら、該出願には、グリセリンのようなスターターの吸湿性の性質について記載されていない。
【0008】
同一出願人による同時継続の米国特許出願公開第2008/0021191号(Reese等)は、高含水量に対して耐性となるポリオキシアルキレンポリオールの製造方法を対象とする。該方法は、DMC触媒によるスターターの連続添加(CAOS)法である。該方法のための適当な低分子量スターターは、200ppm〜5000ppmの水を含有し、10ppm〜2000ppmの少なくとも1つの無機プロトン鉱酸および有機酸で酸性化される非酸敏感性スターターである。該方法によって製造された全てのポリオキシアルキレンポリオールは、比較的高い分子量および低いヒドロキシル価ポリオールである。
【0009】
当業者に知られているように、グリセリンのような物質は、極めて吸湿性であり、乾燥し難い。500〜1000ppmの水を通常有するストリップされていないグリセリンを、触媒によるスターターの連続添加(CAOS)法において用いる場合には、ヒドロキシル価の上限は約240である。DMC触媒の不活性化は、これより前に起こる。従って、DMC触媒の不活性化を伴わない、グリセリンのような吸湿性の開始剤からの短鎖ポリエーテルポリオール(すなわち、250を越え、約500までのヒドロキシル価を有するポリオール)の製造方法についての必要性が当分野に存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5777177号明細書
【特許文献2】米国特許第5689012号明細書
【特許文献3】米国特許第6359101号明細書
【特許文献4】米国特許第6835801号明細書
【特許文献5】米国特許第6077978号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2005/0209438号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2008/0021191号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
従って、本発明は、オキシアルキル化条件をオキシアルキル化反応器において複金属シアン化物(DMC)触媒の存在下で確立する工程、該反応器に少なくとも1つのアルキレンオキシドおよび少なくとも1つの超低含水量の酸性化スターターを連続的に導入する工程であって、ここで、スターターの重量を基準として、酸を約100ppmを越えて含み、該スターターが500ppm以下の水、好ましくは約200ppm未満の水を含有し、およびオキシアルキル化低分子量ポリエーテルポリオール生成物を回収する工程を含む、スターターのポリオキシアルキル化法を提供する。本発明の方法は、DMC触媒の不活性化を伴わない、グリセリンのような吸湿性の開始剤からの、250を越え、約500まで、好ましくは約300〜約500のヒドロキシル価を有する短鎖ポリエーテルポリオールの製造を可能とする。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明によるこれらのおよび他の有利性および利益は、以下の発明の詳細な説明から明らかになる。
【0013】
本発明を例示の目的であって、限定の目的でなく記載する。実施例中または特記する場合を除き、本明細書中での量、パーセンテージ、OH価、官能価などで表示される全ての数字は用語「約」によって、全ての場合において修飾されるものとして理解される。ダルトン(Da)でここに与えられる当量および分子量は、特記しない限り、それぞれ数平均当量および数平均分子量である。
【0014】
本発明では、用語「ポリエーテルポリオール」とは、少なくとも1つのエーテル基を含有し、少なくとも1つのヒドロキシル基を含有する化合物のことである。
【0015】
本発明は、オキシアルキル化条件をオキシアルキル化反応器において複金属シアン化物(DMC)触媒の存在下で確立する工程、該反応器に少なくとも1つのアルキレンオキシドおよび少なくとも1つの超低含水量の酸性化スターターを連続的に導入する工程であって、ここで、該スターターが、スターターの重量を基準として、約100ppmを越える酸および500ppm以下の水を含有し、およびオキシアルキル化低分子量ポリエーテル生成物を回収する工程を含む、スターターのポリオキシアルキル化法を提供する。本発明は、オキシアルキル化条件をオキシアルキル化反応器中で複金属シアン化物(DMC)触媒の存在下で確立し、反応器中に少なくとも1つのアルキレンオキシドおよび少なくとも1つの超低含水量の酸性化スターターを連続的に導入し、該スターターが、スターターの重量を基準として、約100ppmを越える酸を含有し、また該スターターは500ppm以下の水、好ましくは約200ppm未満の水を含有し、およびポリエーテルポリオールを回収することによって製造されるポリエーテルポリオールをさらに提供する。本発明の新規なポリエーテルポリオールは、250を越え、約500mgKOH/gまで、好ましくは約300〜約500mgKOH/gまでのヒドロキシル価を有する。
【0016】
本発明では、意外にも、超低含水量を有する酸性化CAOS供給流を用いることによって、高ヒドロキシル価(すなわち250mgKOH/gを越える)を有し、従って低(数平均)分子量(Da)を有するポリエーテルポリオールを製造することが可能である。より具体的には、これらのポリエーテルポリオールは、250を越え約500mgKOH/gまで、好ましくは約300〜約500mgKOH/gのヒドロキシル価を有する。さらに、これらのポリエーテルポリオールの官能価は、1〜8、好ましくは1〜6、より好ましくは2〜4の範囲である。本発明に従えば、該ポリエーテルポリオールは、本発明では、これらの上限および下限の任意の組み合わせの範囲の官能価を有し得る。
【0017】
本明細書では、用語「連続的な」とは、反応物の有効な濃度を実質的に連続的に維持できるような方法で、関連する反応物の添加を行う方式を意味する。例えば、連続的なスターターの添加は、真に連続的であってよく、または比較的間隔の短い増量であってよい。次の増加の添加の前に、いくらかの時間、加えた物質の濃度を極めて低い濃度(5〜10ppm)に減少するような方法で、増加的に反応物を加えることは、本発明の方法を損なうものではないであろう。CAOS添加は、生成物の分子量分布を減少する方法としてアルキレンオキシドの添加の完了前に停止し得る。該触媒は、初期に添加してよく、または追加の添加によって添加してよい。生成物の性質に実質的に影響を与えない反応物の追加の添加はなお、本明細書で用いられる用語としての「連続的な」である。
【0018】
本発明の方法では、ポリオキシアルキレンポリオールを、超低含水量の酸性化スターターの活性化複金属シアン化物錯体触媒の存在下でのオキシアルキル化によって製造する。DMC触媒を用いる従来のバッチ法では、まず、全開始剤(またはスターター)を反応器に添加し、DMC触媒を添加し、少ない割合のアルキレンオキシド供給を添加する。かなりの圧力低下は、触媒が活性化したことを示す。あるいは、開始剤で混合した触媒の予備活性化マスターバッチを用い得る。反応器温度を70℃および150℃の間で維持し、プロピレンオキシドの残りを比較的低圧、すなわち10psig未満で添加する。従来法では、200〜700Da以上の範囲の当量を有するオリゴマースターターを通常用いる。
【0019】
通常のCAOS法では、ポリオキシアルキル化を、従来の方法の場合の活性化のための触媒および初期アルキレンオキシドと共に少量のオリゴマースターターの添加により達成する。しかしながら、スターターの連続的添加(CAOS)法では、低分子量スターターを、アルキレンオキシドに加えてポリオキシアルキル化工程を通して添加する。連続的に添加したスターターは、分離流として、または好ましくは混合反応器供給流として添加し得る。連続的に添加したスターターの量は、組み合わせた供給(すなわち、アルキレンオキシドおよびスターター)の全重量を基準として、約0.05重量%〜約30重量%までの範囲であり得る。CAOS法では、低分子量スターターの添加は、生成物の分子量分布を低減する方法としてアルキレンオキシド供給前に中断し得る。ポリオール生成物の多分散性を低減する他の適当な方法は、アルキレンオキシドを添加する非CAOS工程である。
【0020】
スターターの連続添加についてのさらなる詳細は、米国特許第5777177号(この開示を参照によってここに組み込む)に記載されている。
【0021】
本発明に従って連続的に添加すべき適当なスターター化合物として、1以上のOH基を含有する低分子量スターターが挙げられる。より具体的には、これらのスターター化合物は通常、1〜8の官能価を有する。好ましくは、該スターター化合物の官能価は、1〜6、より好ましくは2〜4の範囲である。本発明に従えば、これらの上限および下限の範囲の任意の組み合わせの官能価は、本発明におけるスターター化合物に適している。適当なスターター化合物の例として、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、グリセリン、ジグリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロプレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ソルビトール、スクロース等が挙げられる。
【0022】
本発明では、スターターに関する用語「超低含水量」は、500ppm以下、好ましくは200ppm未満、より好ましくは150ppm未満、さらに好ましくは120ppm未満の含水量を有するスターターを意味する。
【0023】
実質的には任意の有機酸または無機酸は、本発明の方法に用いるのに適当であり、有用な酸として、これらに限定されないが、鉱酸および有機カルボン酸、ホスホン酸、スルホン酸および他の酸が挙げられる。リン酸は鉱酸として好ましいが、クエン酸および1,3,5−ベンゼントリカルボン酸は有機酸として有用であり得る。塩基と反応性の酸誘導体、例えば酸塩化物および酸無水物等も有用である。例えば、p−トルエンスルホン酸等のスルホン酸、ホスホン酸等の有機酸も使用できる。適当な鉱酸の例として、塩酸、臭化水素酸及び硫酸等が挙げられ、とりわけ、有用なカルボン酸またはそれらの酸性誘導体として、ギ酸、シュウ酸、クエン酸、酢酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、コハク酸、コハク酸無水物、アジピン酸、塩化アジポイル、アジピン酸無水物等が挙げられる。本発明では、鉱酸として、塩化チオニル、三塩化リン、塩化カルボニル、三酸化硫黄、塩化チオニル、五酸化リン、オキシ三塩化リン等の無機酸前駆体が考慮される。
【0024】
同出願による米国特許出願公開第2005/0209438に開示されているように、スターターに添加する酸の量は、グリセリンの単なる中和を必要とする過剰の量であり、即ち、100ppmを越え、より好ましくは100ppmを越え、2,000ppmまでの範囲の酸の量、さらに好ましくは200ppm〜300ppmの範囲の酸の量である。酸は、記載した値を含めて、上述の値の任意の組み合わせの間の範囲の量で、本発明の方法において用いるスターターに添加し得る。
【0025】
理論的には、スターターに添加する酸の量についての上限は、得られるポリエーテルポリオールの結果または特性が悪化し始める点によってのみ制限される。
【0026】
CAOS法の連続バージョンにおいて、オリゴマースターターの使用により反応を開始し得るが、一旦開始されると、さらなるスターターにより連続的に開始される。さらなる添加スターター化合物は、本明細書における前述の低分子量スターター化合物である。アルキレンオキシドを、超低含水量の酸性化スターターと共に、例えば管型反応器であり得る反応器に沿って種々の地点で添加し(マルチポイント添加)、連続撹拌容器反応器(CSTR)または逆混合反応器を使用してもよい。本発明のための適当な管反応器の例として、米国特許出願公開第2004/0260056号(この開示を参照によってここに組み込む)に開示されている管反応器が挙げられる。
【0027】
本発明の方法に有用なアルキレンオキシドとして、これらに限定されないが、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、オキセタン、1,2−および2,3−ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、エピクロロヒドリン、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド、およびC〜C30α−アルキレンオキシドのようなより高次のアルキレンオキシドが挙げられる。プロピレンオキシド単独またはプロピレンオキシドとエチレンオキシドまたは他のアルキレンオキシドとの混合物が好ましい。他の重合性モノマーを同様に使用してよく、例えば、米国特許第3404109号、同第3538043号および同第5145883号(これらの開示を参照によってここに組み込む)に開示されているような無水物および他のモノマーを使用し得る。
【0028】
本発明の方法は、任意の複金属シアン化物(DMC)触媒を用い得る。複金属シアン化物錯体触媒は、低分子量有機錯化剤および必要に応じて他の錯化剤と、複金属シアン化物塩との非化学量論的錯体、例えば亜鉛ヘキサシアノコバルテートである。適当なDMC触媒は、当業者に既知である。DMC触媒の例として、例えば米国特許第3427256号、同第3427334号、同第3427335号、同第3829505号、同第4472560号、同第4477589号及び第5158922号(これらの開示を参照によって本明細書に組み込む)に記載されているような、低不飽和ポリオキシアルキレンポリエーテルポリオールの製造に適するDMC触媒が挙げられる。本発明の方法においてより好ましいDMC触媒は、「超低」不飽和ポリエーテルポリオールを製造することができるDMC触媒である。このような触媒は、米国特許第5470813号、同第5,42908号、同第5545601号、同第6689710号および同第6764987号(これらの開示は参照によって本明細書に組み込む)に記載されている。本発明の方法に特に好ましいものは、米国特許第5482908号および同第5712216号(これらの開示は参照によって本明細書に組み込む)に記載されている方法によって製造される亜鉛ヘキサシアノコバルテート触媒である。
【0029】
所定の反応条件下でのポリオキシアルキル化反応の良好な制御を確保するために、DMC触媒の濃度を選択する。触媒濃度は、製造すべきポリエーテルポリオールの量を基準として、好ましくは0.0005重量%〜1重量%の範囲であり、より好ましくは0.001重量%〜0.1重量%の範囲であり、最も好ましくは0.001重量%〜0.01重量%の範囲である。DMC触媒は、記載した値を含む、これらの値の任意の組み合わせの間の範囲の量で本発明の方法に存在し得る。
【0030】
本発明に方法によって作られた短鎖ポリエーテルポリオールは、250を越え、約500までのヒドロキシル価を有し得る。好ましくは、これらのポリエーテルポリオールは、少なくとも約300、より好ましくは少なくとも約350のヒドロキシル価を有する。本発明によって製造された短鎖ポリエーテルポリオールのヒドロキシル価は、記載した値を含む、これらの値の任意の組み合わせの間の範囲であり得る。
【実施例】
【0031】
本発明を以下の実施例によって限定することなく、さらに例示する。「部」および「パーセント」で示される全ての量は、特記しない限り重量によると理解される。実施例に用いた触媒は、米国特許第5482908号に従って製造された複金属シアン化物(「DMC」)触媒であった。
【0032】
実施例1
この実施例では、ストリップされていないグリセリンを用いてヒドロキシル価350mgKOH/gの全プロピレンオキシドトリオールを製造しようとした(すなわち700ppmの含水量を有する)。
【0033】
より具体的には、実施例1に用いたストリップされていないグリセリンは、700ppmの含水量を有し、および240ppmのリン酸で酸性化した。
【0034】
LTH−240(2300g)の投入分を反応器に投入した。LHT−240は、240のヒドロキシル価、および約700Daの数平均分子量を有するトリオールである。次いで、ヘキサシアノコバルテート触媒(150ppm)を、LHT−240を含有する反応器へ投入した。触媒は、少量のプロピレンオキシドを反応器へ供給し、次いで130℃に加熱することにより活性化した。数分後に圧力の低下により、触媒が活性化したことが示された。触媒が活性化すると、2つの異なった流れ(プロピレンオキシドの1つの流れおよびストリップされていないグリセリンの第2の流れ)をそれぞれ連続的に反応器に供給した。プロピレンオキシドの全量は、約12475gであり、これを反応器に約5時間にわたって連続的に供給した。ストリップされていないグリセリンの全量は、約3225gであり、これを反応器に約4時間にわたって連続的に供給した。このようにして、グリセリンの供給流を、プロピレンオキシドの供給流を停止する約1時間前に停止した。
【0035】
反応器圧は、多量の未反応プロピレンオキシドが生じる、触媒が活性を失ったバッチの終了近くでは40psiaに達した。PO(プロピレンオキシド)供給を停止した後、反応器に存在する残存プロピレンオキシドがなくなるのに1時間かかった。これは、触媒が実質的に失活化するため、商業的プロセスにとって受け入れ難い。
【0036】
該実施例は、500ppmを越える水を含有する連続的に添加したスターターの、DMC触媒についてのCAOS法における負の効果を示す。
【0037】
実施例2
グリセリンを窒素ストリップして700ppmの含水量を200ppm未満に低減したことを除いて、上記の実施例1の方法および条件を実施例2において繰り返した。実施例1の通り、触媒濃度は、150ppmであり、供給時間は、プロピレンオキシドについて5時間およびグリセリンについて4時間であった。このようにして、実施例1における通り、グリセリンの供給流を、プロピレンオキシドの供給流を停止した1時間前に停止した。
【0038】
グリセリンは、実施例2において200ppm未満の水を含有し、および240ppmのリン酸で酸性化した。実施例2では、反応器圧は、20psiaに到達せず、触媒は、バッチを通して活性が維持された。未反応プロピレンオキシドは、供給流の中断後に非常に急速に無くなり、このことは、少量の未反応プロピレンオキシドのみが存在し、DMC触媒がプロセスを通して極めて活性であることを示す。
【0039】
実施例2において製造されたポリオキシアルキレンポリオールは、350mgKOH/gのヒドロキシル価を有する全プロピレンオキシドトリオールであった。
【0040】
本発明の上記の実施例は、本発明を制限する目的ではなく、例示の目的のためである。本明細書に記載された実施態様が、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、種々の方法で変形または修正し得ることは当業者には明らかであろう。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって判定すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スターターのポリオキシアルキル化のための方法であって、
(a)オキシアルキル化条件をオキシアルキル化反応器において複金属シアン化物(DMC)触媒の存在下で確立する工程、
(b)前記反応器に少なくとも1つのアルキレンオキシドおよび少なくとも1つの超低含水量の酸性化スターターを連続的に導入する工程であって、ここで、該スターターが、スターターの重量を基準として、約100ppmを越える酸および約500ppm以下の水を含有し、および
(c)オキシアルキル化低分子量ポリエーテル生成物を回収する工程
を含み、前記ポリエーテルポリオールが250を越え、約500までのヒドロキシル価を有する、前記方法。
【請求項2】
前記スターターは、メタノール、エタノール、プロパノール、グリセリン、ジグリセロール、ポリグリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロプレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ソルビトールおよびスクロースからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記スターターを、鉱酸、有機カルボン酸、ホスホン酸、スルホン酸およびこれらの組み合わせからなる群から選択される酸で酸性化する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記酸は、クエン酸、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、ホスホン酸、p−トルエンスルホン酸、塩酸、臭化水素酸、硫酸、ギ酸、リン酸、シュウ酸、クエン酸、酢酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、コハク酸、コハク酸無水物、アジピン酸、塩化アジポイル、アジピン酸無水物、塩化チオニル、三塩化リン、塩化カルボニル、三酸化硫黄、塩化チオニル、五酸化リン、オキシ三塩化リンおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記DMC触媒は、亜鉛ヘキサシアノコバルテートである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記アルキレンオキシドは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−および2,3−ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、エピクロロヒドリン、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシドおよびC−C30α−アルキレンオキシドからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記スターターは、約200ppm未満の水を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記スターターは、約120ppmの水を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリエーテルポリオール生成物は、約300〜約500のヒドロキシル価を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの超低含水量の酸性化スターターの反応器への工程(b)における導入を停止する工程、および少なくとも1つのアルキレンオキシドを反応器へ導入することを継続する工程をさらに含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
(a)オキシアルキル化条件をオキシアルキル化反応器において複金属シアン化物(DMC)触媒の存在下で確立し、
(b)前記反応器に少なくとも1つのアルキレンオキシドおよび少なくとも1つの超低含水量の酸性化スターターを連続的に導入し、ここで、該スターターが、スターターの重量を基準として、約100ppmを越える酸および約500ppm以下の水を含有し、および
(c)得られるポリエーテルポリオール生成物を回収すること
によって製造され、250を越え、約500までのヒドロキシル価を有する、ポリエーテルポリオール。
【請求項12】
前記スターターは、メタノール、エタノール、プロパノール、グリセリン、ジグリセロール、ポリグリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロプレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ソルビトール、スクロースおよびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項11に記載のポリエーテルポリオール。
【請求項13】
前記スターターは、鉱酸、有機カルボン酸、ホスホン酸、スルホン酸およびこれらの組み合わせからなる群から選択される酸で酸性化される、請求項11に記載のポリエーテルポリオール。
【請求項14】
前記酸は、クエン酸、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、ホスホン酸、p−トルエンスルホン酸、塩酸、臭化水素酸、硫酸、ギ酸、リン酸、シュウ酸、クエン酸、酢酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、コハク酸、コハク酸無水物、アジピン酸、塩化アジポイル、アジピン酸無水物、塩化チオニル、三塩化リン、塩化カルボニル、三酸化硫黄、塩化チオニル、五酸化リン、オキシ三塩化リンおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項11に記載のポリエーテルポリオール。
【請求項15】
前記複金属シアン化物(DMC)触媒は、亜鉛ヘキサシアノコバルテートである、請求項11に記載のポリエーテルポリオール。
【請求項16】
前記アルキレンオキシドは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−および2,3−ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、エピクロロヒドリン、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシドおよびC−C30α−アルキレンオキシドからなる群から選択される、請求項11に記載のポリエーテルポリオール。
【請求項17】
前記スターターは、約200ppm未満の水を含有する、請求項11に記載のポリエーテルポリオール。
【請求項18】
前記スターターは、約120ppm未満の水を含有する、請求項11に記載のポリエーテルポリオール。
【請求項19】
約300〜約500のヒドロキシル価を特徴とする、請求項11に記載のポリエーテルポリオール。
【請求項20】
前記少なくとも1つの超低含水量の酸性化スターターの反応器への工程(b)における導入が停止され、および少なくとも1つのアルキレンオキシドの反応器への導入が継続される、請求項11に記載のポリエーテルポリオール。

【公開番号】特開2011−6682(P2011−6682A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−142208(P2010−142208)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(503349707)バイエル・マテリアルサイエンス・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (178)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience LLC
【Fターム(参考)】