説明

DSLモデムと変成器

通信回線に接続する為の一次回路(42;52;81;131)および前記通信回線を介して伝送された信号を出力する為の二次回路(44;56;82;132)を有する回線接続変成器(40;50;80;100;130)を備えているデジタル加入回線(DSL)モデムであり、各回路は、連続的な導電材料で形成されており、一次回路は第一平面を規定し、そして二次回路は第二平面を規定し、前記第一および第二平面は実質的に互いに平行である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル加入回線(DSL)モデム、そのようなモデムで使用する為の変成器、電子データを通信する方法、DSLモデムを製造する方法および芯のない変成器に関する。
【背景技術】
【0002】
マイケル・ファラデーは1831年に変成器を発明した。変成器の本来の設計は、主に電力応用を意図していたという点に留意されたい。その設計物は、たくさんの銅線によって巻かれているフェライトの芯を含んでいるので大きく扱いにくい。この設計物は、高電圧から精巧な超小型電子装置までにわたる多様な用途にもかかわらず、一世紀以上かけてもあまり変化のないままである。
【0003】
近年における複雑なDSP技術と暗号化は、高速データ速度(Mbit/sのオーダー)で電子データを伝送する為に、電信ネットワーク、あるいは単純な旧式電信システム(POTS)の電話回線を利用する事で発達している。従来の電話通信回線は、一般的に最も近い中央事業所(COあるいは電話ネットワークオペレーター)に設置してある電話機、加入者線多重伝送装置、遠隔切り替え装置、あるいはCOによって提供されるサービスの拡大に機能を果たすいくつかの別の装置、をつないでいる銅の導線の対を含んでいる。この銅の導線の対は頻繁に“ツイステッド・ペア(撚線対)”と呼ばれている。多くのそのようなツイステッド・ペアは、一般に、同一のケーブルバインダー群内でともに束ねられている。
【0004】
この手段による電子データの送信は、一般にデジタル加入回線あるいは“DSL”と呼ばれる。DSLは、一つはユーザー(消費者家屋装置-CPE)にあり、もう一方はCOにある銅のツイステッド・ペアによって結びついている2つのモデム間で確立される。DSLの下には異なる規格の系統が発展しており、一般に“xDSL”と呼ばれており、また新しい規格が発展下にある。その系統におけるDSL技術のバリエーションは、SHDSL(対称高速ビット速度DSL)、HDSL2(第二世代高速ビット速度DSL)、RADSL(速度適応DSL)、VDSL(超高速ビット速度DSL)、ADSL(非対称DSL)を含んでいる。DSL技術を用いて電子データを送信するのに使用される周波数は、約25kHzから数MHzまでの範囲である。
【0005】
ADSLのような、いくつかのDSL技術には、通常の音声データ送信、すなわちPOTSが、同一のツイステッド・ペアを電子データ送信と共有できる、と言う利点がある。図1は、周波数スペクトルがどのようにADSLに分割されるかを示している。低周波数バンド(0〜4kHz)は音声データに使用され、一方で高周波数側のバンド(25kHz〜1.1MHz)は電子データに使用されている。高周波数側のバンドは、一つはアップストリーム送信(すなわち、ユーザからCOへ)、もう一つはダウンストリーム送信(すなわち、COからユーザへ)とさらに2つのバンドに分けられる。ほとんどのユーザーはアップロードするよりもインターネットから大量のデータをダウンロードするので、ダウンストリーム送信バンドはアップストリーム送信バンドよりもかなり広い。4.3125kHzの間隔で配置される256個の周波数キャリアーは、アップストリームおよびダウンストリーム送信バンドにおおよそ1.1MHzのバンド幅を提供している。ADSLによって達成される実際のダウンストリームのデータ速度は、ツイステッド・ペアの長さ、その巻き線の内径、ブリッジタップの存在、およびクロスカップル干渉を含む多くの要因に依存する。
【0006】
ツイステッド・ペアの各端部におけるモデムは、次の処理をする為にデータ送信バンドあるいは音声バンドのどちらかをフィルターする為のフィルターを使う。
POTSにおいて、長年の間、回線接続変成器(a line interface transformer)は、ユーザーの家庭や事業所内における電話回線と電気回路間の接続(インターフェース)として使用されている。この接続は、ツイステッド・ペアに誘導された高電圧(例えば、雷による電撃)がユーザーの家庭内の回路に送信されるのを防止する為に、ユーザーからツイステッド・ペアを絶縁する事によりユーザーに安全を提供している。
【0007】
DSL技術の到来にともない、その種の回線接続変成器には、かなり広いバンド幅に渡ってのフラットな周波数応答の提供、優れた信号送信特性(理想的には1:1)、インピーダンス整合および最小の挿入損失を含む、幾つかのさらなる要求が課せられている。入力信号を忠実に再現する為の変成器の性能は、DSL信号の感度特性のことを考えると、特に重要である。
【0008】
今日まで、DSLモデムで使用する為の変成器は、銅の一次巻き線から銅の二次巻き線へ磁束を結合する為に鉄芯を使うと言う伝統的なタイプのものであった。これは、DSL周波数そして特に低周波数において、一次巻き線の磁界の1/eあるいは63%が二次巻き線によって吸収されるという表皮の深さ(skin depth)が、銅線において10kHzで0.667mmから1MHzで0.067mmまでの範囲に及んでいるためである。有効エネルギーの残りは、吸収されず、これらのそれぞれの厚さの導体を通り抜ける。したがって、良い磁束鎖交数(flux linkage)あるいは一次と二次巻き線間の結合係数を得る為に、(1)二次巻き線内に一次巻き線からのエネルギーを吸収する為の十分な材料が存在することと、(2)一次巻き線からの磁束が、これが広がって弱くなる(expands and collapses)ように、上記の材料に確実に交差するようにすることが必要である。これは、通常1:1の巻き線比であるDSL変成器で特に重要である。いかなる磁束漏れも、信号が歪みなしでは再現されなくなるので、きわめて望ましくない。
【0009】
上述のように、DSLモデムで使用する為の変成器の分野におけるこの問題に対する伝統的で良く受け入れられている解決策は、鉄芯変成器を使う事である。例えば、ADSL変成器は、数百μHから数mHまでの範囲にあるラインサイド(line-side)のインダクタンスを有している。それらは、DCを搬送する必要はないが、それらのインダクタンスを±5%〜±10%の範囲内に制御する為に隙間が形成されている。漏れインダクタンスはラインサイドのインダクタンスにだいたい比例しており、その範囲は数μHから数十μHである。エコー除去は、歪みが重要な要因となる、アップストリームおよびダウンストリーム信号が重複する周波数範囲のADSLシステムに用いられる。一般的な歪み要求は、CPE端部で最大THDが-85dBおよびCO端部でTHDが-80dBであり、両方とも100kHzでの15Vp-p信号を用いて測定した。
【0010】
DSLは、ビジネスと消費者の両方における高速通信およびインターネットアクセスのための最も一般的な選択となっている。DSL技術の大きい成功は、次世代DSL製品のために、強制的に全ての電話通信業者を全世界に設置することとなる。DSLの普及、サービスの質および性能を維持し改良する為に、優先的になすべき主なことは、信号の高い信頼性および低電力仕様をともなうアナログ回路を設計する事である。従って、アナログ設計分野は、重要な構成要素、回線接続変成器を含む、アナログのフロントエンド構成ブロックの要求における新しい挑戦に直面している。これらの全てのパラメーターは、送信とサービスの質における全性能に大いに影響を与える。
【0011】
しかしながら、一般的なADSL変成器は、約1cm×1cm×1cm、すなわち、装置全体の縦横比は、だいたい1:1(立方体に似ている形状の3次元物体)である。不幸にも、この装置は、大きく、重く、高価であり、その製造には、大量の原材料と、部品を組み立てる為の熟練労働者とを必要とする。より小さな電子機器への継続的な圧力は、DSLモデムに使用されているような伝統的な変成器の代わりに、フェライト芯には頼らずに、その結果として低性能になることもない、より小さくて、より軽量のものを見つけることを、製造業者に強いている。
【0012】
DSL変成器は、我々のPCT特許出願であるPCT/GB2004/050011で述べられており、すなわち、本発明と同じように適用される2本巻きの変成器であるが、完全に違う構造、複雑さ、そして接続を有しており、従って全く違う装置として考慮される。その2本巻きの変成器は、水平平行分布において一つを一次、もう一つを二次とする2つの30巻きコイルの使用をともなう多くの層を垂直に分布させた多層設計からなる。この構成は、垂直方向の磁気結合とともに内部で巻いてある一次および二次ループ間の水平方向の磁気結合を利用している。本発明による変成器は、多層(積み重なった)設計を実行する多くの60巻き単コイルを使用しており、また、それは主に垂直方向の磁気結合を利用している。
【発明の開示】
【0013】
本発明のより好ましい実施態様は、DSL周波数で動作するように設計された回線接続変成器におけるフェライト芯を、実質的に性能を劣化させることなしに、幾何学的な巻き線構造で置き換える事が可能である、と言う洞察に基づいている。特に利点は、幾何学構造が、同等の従来のDSLフェライト芯変成器より小さく(少なくとも一次元で)かつより軽い事にある。意外にも、本出願人は、ここで開示している積み重なった変成器配置のいくつかの態様における共振効果が、外部の回路要素によってではなく適当な構造および幾何学形状によって軽減可能であり、このことは、この種の変成器を、広いバンド幅に渡ってのフラットな周波数応答が重要であるとしているDSL技術へ応用する上で、魅力的なものにしている、ということを見出した。
【0014】
本発明によれば、少なくとも一つの実質的に平面の一次回路および少なくとも一つの実質的に平面の二次回路の各回路が連続的な導電材料で形成され、そして一次回路及び二次回路は、実質的に平行で、かつ垂直面内で離れて配置されている事を含む変成器を提供する。垂直面とは、便宜上、水平面と呼んでいる一次あるいは二次回路の平面に対して直角をなす面を意味している。
【0015】
変成器は、好ましくは、それぞれ連続した導電材料で形成された一次回路および二次回路を備え、そしてこれらの回路は、上記材料からなる実質的に平行な螺旋状である。その螺旋は、円状、楕円状、正方形状、長方形状、長円状あるいは不規則形状(non-regular)である。
【0016】
その螺旋は好ましくは、極方程式r(θ)=αθによって形成される螺旋に実質的に一致し、ここでのθは、極座標の角度であり、rは半径であり、そしてαは巻き数と隙間で決定する定数である。好ましくは、螺旋の巻き数は少なくとも5回である。
【0017】
複数の一次および二次回路を有する事ができ、かつ全ての一次回路は、互いに隣接する事ができ、そして互いに隣接し並んでいる二次回路から空隙によって分離される事ができる。別の実施態様として、一次と二次回路は、各一次および二次回路間の空隙をともないそれらが交互となるように互いに挟んで並べる事ができる。
【0018】
磁束鎖交数および変成器能力を維持する為の方法は、コンパクトな積み重ねた配列によってなされ、すなわち、一次および二次が2つの垂直方向に分かれている平行な平面であるということである。これは2つの垂直方向に分かれている螺旋コイル(従って、“積み重なった”変成器) を導く。このコイルの直列接続は、積み重なった構造をつくり、そして信号通信を改善する。その配置は装置の高さを増やす。しかし、装置の直径:高さで定義される総縦横比は、比較的大きくなり、このために、それは擬似平面変成器(QPT)となる。
【0019】
この構成物を改良する為に、変成器機能を代行する為の二次元解決法は、強磁性体構成要素の排除によって特徴づけられる、積み重なる設計とされた (一方の上にもう一方を重ね、両方が分離された) 2つのコイルを伴う平面構造からなる。
【0020】
一般的に、一次および二次の両方で少なくとも10層あるいはそれ以上であり、直列配列された単コイルを、一次用に一つ、二次用に一つ使う事で、一般的に層が多いほど変成器の動作が良くなる。
【0021】
本発明の特徴は、強磁性体要素を備えていないこと、そして例えば、1:5あるいはそれ以下の縦横比、そして好ましくは1:10以下あるいは1:20以下の縦横比であるとても低い縦横比の変成器装置の生産である。本発明は、強磁性体(通常はフェライト)要素を持たず、低い縦横比を持つ変成器を提供する。生産工程が平面フィルム技術そしてまた多層製造技術に従うという更なる利点がある。本発明の要点は、3次元フェライト芯をベースとする設計を、全ての平面層が互いに直列に接続された2次元多層設計で置き換えたことである。本発明は、非対称デジタル加入回線ADSLと超高速データ速度DSL(VDSL)への適用に特に有用であるが、これに限定されるものではない。意外にも、装置中の強磁性体要素の除去と低物理縦横比が可能であり、故に変換動作が観測される事がわかった。強磁性体要素(フェライト等)の除去は、構成作業を簡単にしている。
【0022】
本発明の別の観点によると、通信回線に接続する一次回路および前記通信回線を介して伝送される信号を出力する二次回路を有し、各回路が連続した導電材料で形成され、そして一次回路は第一平面を規定し、そして二次回路は第二平面を規定し、前記第一および第二平面は互いに実質平行をなしている回線接続変成器を含んでいるデジタル加入回線(DSL)モデムを提供する。平面は、便宜として用いている用語であり、各回路は、一つの平面内に単独で(solely)位置する事はない。好ましくは、前記第一平面は、前記第二平面から離れて配置される。その結果、一次と二次回路が垂直平面内で離れて配置された構造となる。そのような変成器は、垂直の磁気結合を利用しており、また、それはインダクタンス、容量、そして抵抗を生じる多くの巻き数(数百回)を備えることができる。そのような特徴は、共振周波数を生じ、故に、良いADSL変成器動作を与える共振作用を軽減する事ができる適切な方法が見出されている。これらの方法は、外部回路および/または変成器の幾何学的配列および構造に関している。
【0023】
有利な事には、前記回線接続変成器は、前記一次回路および前記二次回路の交互になっている層を備える。層ごとに各タイプの回路を1つ以上備えていてもよい。
好ましくは、それぞれが層を形成している複数の第一平面および第二平面があって、そこにおいて、前記一次回路は複数の実質平行な層を含んでおり、前記二次回路は、複数の実質平行な層を含んでいる。
【0024】
有利な事には、前記一次回路の層は互いに隣接しており、そして前記二次回路の層も互いに隣接していて、前記一次および二次回路は隙間により分離されている。その隙間は、好ましくはその回路間の分離目的に必要とされる以上には大きくなく、そして0.1mmよりも大きくないほうが好ましい。この隙間は空隙であってもよい。
【0025】
一つの実施態様において、前記一次回路の層は一次回路積み重ね(stack)を形成し、そして前記二次回路の層も二次回路積み重ねを形成し、前記一次回路積み重ねおよび前記二次回路は、一方を他方に隣接して積み重ねられている。二つの積み重ねの間に隙間があってもよい。その隙間は空隙でもよい。隙間の大きさは、変成器が使用されるバンド幅に依存して0.1mmから0.5mmの間であってもよい。隙間の大きさを調整する事によって変成器の電気容量を調整する事ができ、これにより共振をシフトさせる事ができる。
【0026】
別の実施態様においては、前記一次回路の層は前記二次回路の層で挟まれている。
好ましくは、2つの層間の分離は0.5mm以下にする。これは、目的の周波数バンドにおいて良い変成器作用を確実にする事に役立つ。
【0027】
有利な事には、前記一次回路の層は、直列あるいは並列に接続される。各層におけるそれぞれの回路間の直列接続は、インダクタンスの増加に役立つ為により好まれる。
変成器の周波数応答曲線は、回路の層数を増やす事で改善される。有利な事には、その回線接続変成器は、さらに前記一次回路における前記複数の実質平行な層を少なくとも十層備え、かつ前記二次回路における前記複数の実質平行な層を少なくとも十層備える。これは、変成器で信号を伝達するのに良好な結果を生じる事がわかっており、それぞれ20〜40層の間であることが一層好ましく、30層であれば、サイズおよび重さと性能との間に良好な妥協を提示する。
【0028】
好ましくは、各回路の巻き数は少なくとも10回である。より好ましくは、1回路あたりに約50から70巻きであり、約60巻きで良い結果が得られている。
有利な事には、DSLモデムはさらに、前記二次回路での共振を軽減する為の軽減手段を備えている。その軽減手段は、能動的あるいは受動的であるかも知れない。一つの実施形態において、軽減手段は、板あるいは箔のような平面の金属部材である。別の実施態様としては、その軽減手段は、軽減効果を与えるように電圧が誘導される分離した伝導経路を与えるように回路を短絡させた受動的な一次回路および/あるいは二次回路であってもよい。そのような配置は、製造の観点から特に単純さを与える。
【0029】
好ましくは、前記軽減手段を前記回線接続変成器の片側に配置する。片側とは、平面回路の一つに隣接する事を意味する。
有利な事には、前記軽減手段を前記回線接続変成器の両側に配置する。
【0030】
好ましくは、前記軽減手段は、前記一次および二次回路間に配置する。この配置は、とても少ない回路層で素晴らしい結果を生じる事がわかった。一次回路および二次回路に隣接する軽減手段の配置は、変成器構造の全体にわたって繰り返してもよい。一つの実施態様として、そのような構造は、少なくとも10の一次回路層と少なくとも10の二次回路層を有する。一次回路層数は、二次回路層数と同じにしてもしなくとも良い。層数を増やす事は、変成器の周波数バンド幅の上限を広げる。
【0031】
一つの実施態様において、前記軽減手段は、アルミニウムのような金属を備える。別の実施態様として、その金属は、鉄のような強磁性体としてもよい。
有利な事には、前記一次回路と前記二次回路は、実質的に違う平面を規定している、伝導材料からなる実質平行な螺旋形状である。
【0032】
好ましくは、その螺旋は、実質的に円形、楕円形、正方形、長方形、長円形、あるいは不規則形である。
有利な事には、その螺旋が、極方程式r(θ)=αθによって形成される螺旋に実質的に一致している。ここでのθは極座標の角度であり、rは半径であり、そしてαは巻き数と隙間から決まる定数である。
【0033】
好ましくは、回線接続変成器は、直径:幅として定義される縦横比が1:5あるいはそれ以上である。故にその変成器の高さは、現存するDSL変成器に比べかなり低くなっている。
【0034】
有利な事には、前記回線接続変成器が強磁性体の芯を備えていない事である。この要素の除去を可能とする事で、回線接続変成器の重さ、大きさ、費用を大幅に減らし、それによりDSLモデムの重さ、大きさ、費用を大幅に減らすことができる。
【0035】
本発明の別の態様によれば、上述した回線接続変成器の構成のいずれかを有する、DSLモデム内で使用するための回線接続変成器を提供する。
本発明の別の態様によれば、通信回線を介して電子データを送信する方法を提供しており、その方法は、上述した回線接続変成器を使って前記通信回線上に前記電子データを載せるステップを含む。
【0036】
また、本発明の別の態様によれば、DSLモデムの製造方法を提供し、その方法は、上述した回線接続変成器を挿入し、そして前記変成器を電気的に接続するステップを含んでいる。この方法は、DSL接続を利用しているユーザーにデータ(例えば、webページ、電子メール、ファイル)を通信する電信会社によって行われても良い。そのデータは、デジタルデータであってもよく、その方法は、このデータをDMTおよび/あるいはQAMによるような変調形式で回線接続変成器を経由して送信するステップをさらに備えてもよい。その方法は、回線接続変成器を経由し多数の搬送周波数に載せてデータを送信するステップをさらに備えてもよい。一つの実施態様として、その搬送周波数は、約26kHzから2.2MHzまでの約2MHzのバンド幅に渡って離れて配置されている。好ましくは、そのデジタルデータを、ADSL、ADSL2そしてADSL2+のようなxDSL信号を使い、変成器を経由して送信する。
【0037】
本発明の別の態様では、約10kHzから20MHzの間の低周波バンドデジタルデータ信号を通す為の芯のない変成器を提供しており、前記変成器は、各層が全ての一次伝導体あるいは全ての二次伝導体を有している複数の層を備えるように、多くの巻き数を有する一次回路および二次回路を備え、前記周波数バンドにおいて前記一次回路から前記二次回路まで前記デジタルデータ信号を通す為の変成器作用を得るのに十分な前記巻き数および層数の組み合わせを有する。その芯のない変成器は、上述した軽減手段の構成のいずれかを備えていてもよい。変成器のさらに適切な実施態様は、2.5MHzより高い周波数を通過する仕様であってもよい。
【0038】
好ましくは、前記層は、前記変成器の中心から半径方向の外側方向にむけて広がる。故に、その層は1つの平面を規定すると考えてもよい。もちろん、一次および二次回路は3次元であり、上記平面を含むがこの平面内に排他的に位置するものではないというふうに理解されるが、上記のように考えることもできる。
【0039】
有利な事には、前記一次回路の層は一次回路の積み重ねを形成する為に互いに隣接しており、そして前記二次回路の層は二次回路の積み重ねを形成する為に互いに隣接しており、その配置は、前記一次回路の積み重ねと前記二次回路の積み重ねが、前記変成器作用を容易にする為に一方をもう一方の次に積み重ねるようにしている。
【0040】
好ましくは、前記一次回路の層は、前記二次回路の層で挟まれ、その配置は、前記一次および二次回路の層で交互になるようにする。
有利な事には、前記交互の層は、一次および二次回路の一つの層を備える。
【0041】
好ましくは、各層での伝導体間の分離は、約0.02mmから0.075mmの間とする。
有利な事には、各層間の分離は、約0.02mmから0.2mmの間とする。
好ましくは、少なくとも10層であり、各回路を約50から70巻きの間とし、60巻きで良い結果を得る。
【0042】
本発明の別の態様によれば、上述した芯のない変成器を備えている電気回路を提供する。これは、DSLの周波数バンド、電流および電圧において有益な信号伝達特性を与えることがわかった。それは、DSL信号を通す為に必要な通信作用を達成しながら、巻き数および層数を当業者によって変化させてもよいということが理解できる。DSLモデムにおける良好な信号フィルタリング技術は、巻き数/層数を減らす事を許容するが、実質的に線形の伝達特性の提供が、目的のDSL周波数バンドにおいて維持される。さらに、製造技術が異なることで、同じ結果を達成する為に必要とされる巻き数/層数が異なってくる。例えば、絶縁したワイヤを手動あるいは機械で巻く技術は、PCB製造技術と比較して巻き線が互いに比較的近接しているので、それをわずかばかり少数の巻き/層にすることを許容する。PCBにおいては、伝導トラックが絶縁されていないので、トラック間の隙間は、短絡の危険を抑制する為により大きくする必要がある。
【0043】
本発明の別の態様によれば、上述した芯のない変成器を備えている電気回路を提供する。その回路は、例えば、単独部品やPCカードとして具現化されたDSLモデム回路であってもよい。
【0044】
本発明のより良い理解の為に、一例として添付図面のみを参照して説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
図2および図3Aを参照して、参照番号10によって一般的に示されるADSLは、銅線のツイステッド・ペア(撚線対)16を介して2つのモデム12と14の間に確立されている。機能の点で、モデム12、14は全く同じものであり、従って一つだけが詳しく述べられている。モデム12は、POTS声音周波数バンド(約0〜4kHz)をフィルターする為のローパス(低域通過)フィルター18およびADSL周波数バンド (約26kHz〜1.1MHz)をフィルターする為のハイパス(高域通過)フィルター20を備えている。線を巻いた3次元フェライト芯を備えている広帯域変成器22は、ハイパスフィルター20の下流側(downstream)にあり、上述したツイステッド・ペア16から残りの下流側回路を分離する役目を果たす。ADSLチップセット24は、広帯域変成器22の二次巻き線(不図示)からADSL信号(すなわち、約26kHzより上の周波数)を受け取る。ADSLチップセット24は、後に続く処理のためにADSL信号を増幅し、復号するのに役立つ。ADSLチップセット24は、モデムの配置に依存して、インターネットサービスプロバイダ(ISP)あるいはパーソナルコンピュータ(PC)のどちらかに処理したADSL信号を伝える。ローパスフィルター18は、モデムがCOにあるかCPにあるかに依存して、公共切り替え電話ネットワーク(PSTN)あるいは電話のどちらかに低周波数POTS信号を伝える。図3Bは、両方のモデム12、14の一部分である典型的なADSL回路26内の広域バンド変成器22の配置を示している。
【0046】
図3Cを参照して、DSL信号の性質は、2つのグラフ29と29’により描かれる。ADSLは、電話回線を介してデジタルデータを運ぶ為にDiscrete MultiTone(DMT)変調に頼っている。ADSLスペクトルは、約26kHzから1.1MHzまでの周波数を占有する一方、声音信号(図1参照)のための20kHz以下のスペースを保留している。時間領域内で見られるDMT信号は、疑似ランダムノイズ信号として現れ、そしてグラフ29は、DMT信号が一般的に低いrms(二乗平均値の平方根)電圧レベルを生じることを表している。しかしながら、xDSLラインドライバー増幅器(図3C参照)は、いくつかの副バンドあるいはトーン(tones)内の搬送波の多くが同位相で(in phase)一列に並ぶと言う有限確率によって生じるピーク電圧を配信できなければならない。このような大きいピークが生じる時にそれを再生する為に、けた高(headroom)を動的に差し引かなければならない。
【0047】
DMT変調は、いくつかの個々の周波数副バンドに含まれるパワーとして周波数領域内に現われ、それらは時にはトーン(tones)またはビン(bins)と言われ、そのそれぞれは周波数4.3125kHzの間隔で均一に配置されている(グラフ29’参照)。独自に変調された直交振幅変調(QAM)のような信号は、各副バンドやトーンの中心周波数で起こる。描かれている周波数領域内で、アップストリームのDMT信号は、ぞれぞれのおおよそ1dBmまでの各副バンドでピークを生じる。各副バンドのパワーを組み合わせる事で、13dBmの総パワーが、負荷に配信される。増幅器がひずみのないピークを配信できるように十分な電圧のけた高を維持することは、興味をそそる。DMT波形におけるrmsレベルに対するこれらの不定期なピークの比は、ピーク対平均比(PAR)あるいは“波高率”として知られている。ADSLモデムのラインドライバーハイブリッドを設計する時には、5.3の波高率が一般的に用いられる。
【0048】
DMT副バンドに含まれる情報を復号する時、一つの副バンドからのQAM信号が他の副バンドからのQAM信号により歪ませられるならば、問題が起こるだろう。一般的なxDSLダウンストリームのDMT信号がQAM信号の256個のキャリアー(副バンドあるいはトーン)ほどの数を含んでいるので、相互変調歪みが主な関心事である。xDSLモデムでは、復調器が正確にアナログ信号振幅を検知できるように、DMT信号の忠実度(fidelity)が要求される。次にADCは、各副バンド内に含まれる大きさと符号の情報を、それに対応するデジタルビット列に正確に変換できる。誤差補正法が、DMT信号の忠実度の欠如によって生じたかもしれない1つの歪んだデータを再生できない時に、ビットエラーが起こる。要するに、DSLモデムにおいて、性能を保持し、データ改変を最小化し、データ伝送速度を上げる為に、ADSLラインドライバーおよびハイブリッド結合器を介して、DMT信号の忠実度が維持されなければならない。
【0049】
変成器は、動作中の装置の電流および電圧能力が、違う負荷インピーダンス(load impedance)に適合される必要があるような所への多くの適用を見出す。変成器は、巻き数比の二乗だけ、第二の負荷インピーダンスを反射して第一の負荷インピーダンスに戻すので、電流駆動(current drive)が増加を要求する一方、電圧駆動(voltage drive)が減少する。
【0050】
ADSLモデムは、いくつかの重要な機能を与える為にアナログのハイブリッド結合器回路を必要としている。そのハイブリッド結合器は、電話回線を介してアナログ信号に含まれるデータを送信および受信し、送信信号から受信信号を分離し、正確な回線終端インピーダンス(line termination impedance)を与え、モデムから回線を絶縁する。それは、また回線に配信された電力を最適化するように設計される事もできる。
【0051】
この内容における広帯域変成器22の機能的な要求項目は、ADSL規格に記載されている。その要求項目は下記の表で与えられる。
【0052】
【表1】

従って、広帯域変成器22は、ADSL周波数バンドに渡って、ひずみ、振幅の損失、位相シフト、および高調波を実質的に持たずに、ツイステッド・ペア16からの信号を通過させなければならない。特に、モデム14は、電子データを示す信号を26KHzから138KHzの間で電信会社モデム12へ送り、138KHzから1.1MHzまでの信号を受け取る。図4、5および6を参照して、ADSL、ADSL2、ADSL2+の周波数バンドに渡っての広帯域変成器22(APC限定モデル41199 0040C)の周波数応答グラフは、一般的にそれぞれ参照番号30、32、および34によって確認される。各グラフ30、32、34は、様々なバンド幅全体をとおして7.5Vのテスト信号を用いての、変成器の一次巻き線における応答曲線30a、32a、34aおよび変成器の二次巻き線における応答曲線30b、32b、34bからなる。二次巻き線の周波数応答は、約100kHzと各範囲の上限(すなわち、それぞれ1MHz、1.2MHzそして2.2MHz)の間で比較的に平坦になる。しかしながら、約20kHzから100KHzの間での二次巻き線からの出力電圧は、周波数が下がるにつれて低減する。これは、序論で述べた低周波数での磁束鎖交数問題の為である。特に、周波数が減るにつれて、表皮の深さ(skin depth)は増える。すなわち、他の全てのものは一定のままであると仮定すると、磁束に含まれる有効エネルギーの63%を吸収するのに必要とされる巻き線の材料の量が増加する。もし、エネルギー伝達のより大きな比率がこのより低周波数で要求されるならば、この技術分野で受け入れられる解決策は、二次巻き線の合計材料を増やすか、および/あるいは、磁束を収束する為の鉄芯の大きさを大きくするかのいずれかである。本出願人は、磁束鎖交数の実質的な損失なしで典型的なDSL変成器の鉄芯を除去する方法を発見した。
【0053】
図7を参照して、一般に参照番号40として示される変成器の第一実施態様は、一次回路42および二次回路44の2つの螺旋回路を備える。それには、フェライト芯がない事を留意されたい。各回路は、各平面が他の面に対して平行である平面を規定し、そして各回路は、アルキメデス螺旋(各回路の巻き線間の隙間は、明瞭とする為に大きく誇張する)を形成するように巻かれる。各回路は、積層回路板(不図示)上にエッチングされたものであり、回路板上におおよそ幅0.075mmおよび高さ0.05mmの銅トラック45を備えている。各回路は、60巻きでおおよそ直径18.29mmである。各回路42、44のトラック間の水平隙は、(最も接近している端の間を測定して)0.075mmである。そのコイルの全体の直径は20mmである。変成器40の一つの層の仕様は下記の表で与えている。
【0054】
【表2】

図8を参照して、一般に参考番号50によって示される変成器の第二実施態様は、一次回路において各層が60巻きである14層の積み重ね51を備える。一次回路52は、それらの平面が互いに実質平行となるように重ねられる(図では、明確にする為に離れて配置されるように示してある)。各一次回路52間の隙間は約0.07mmである。各一次回路52は、その半径方向の最内端で、そのすぐ上の一次回路52の半径方向の最内端に接続され、また、その半径方向の最外端で、そのすぐ下の一次回路52の半径方向の最外端に接続され、その逆も同様であり、従って連続伝導経路(すなわち、一次回路間の直列接続)が、入力端子53から出力端子54の間に与えられる。
【0055】
変成器50は、各層が60巻きである二次回路56(14のみを示している)の14層の積み重ね55をさらに備える。二次回路56は、それらの平面が互いに実質平行になるように積み重ねられる(図では、明確にする為に離れて配置されるように示してある)。各二次回路56間の隙間は約0.07mmである。各二次回路56は、その半径方向の最内端で、そのすぐ上の二次回路56の半径方向の最内端に接続され、また、その半径方向の最外端で、そのすぐ下の二次回路56の半径方向の最外端に接続され、その逆も同様であり、従って連続伝導経路(すなわち、二次回路間の直列接続)が、入力端子57から出力端子58の間に与えられる。
【0056】
それらの最も接近している場所で、積み重ね51と積み重ね55の間の隙間は、約0.1mmである。その変成器作用と周波数応答は、層数によって改善し、各層で60巻きで、20から40層の間とすることでDSL応用において良い結果を生じる。
【0057】
図9を参照して、変成器50は、PCB回路形成で示される。各PCB層は、60巻きである一つの一次または二次回路をもち、寸法が20mm×20mmであり、厚さ0.355mm(圧縮前)であり、すなわち高い縦横比(直径:高さ)を有する。製造においては、一次または二次回路のモジュール60を形成する為に、6つのPCB層が積み重ねられ、加熱され、圧縮される。一次回路52および二次回路56のモジュール60は、望まれる回路の層数をともなう変成器50を形成する為に、互いの上に積み重ねてもよい。変成器50は、一次回路52の五つのモジュールと二次回路56の五つのモジュールを含んでおり、従って60の回路層からなる。各モジュール60内での一次回路52(および二次回路56)は、PCBの中央付近あるいはPCBの端付近のどちらかの下方にある層上で、接続部61によって対応する回路に接続される。さらに、各PCB層間の接続部61は、中央部と端部の間に交互にある。各モジュール60の間の分離は0.2mmであり、この分離はPCB積層板62によってなされ、一つのモジュール60の回路をもう一方の回路から絶縁する。PCB変成器50の写真が図10に示されており、この写真から、それは”ほぼ平面(quasi-planar)”であることが明らかである。その小ささはすぐに明らかであり、特に高さに関してそうである。図10のPCB変成器50は、2.3mm×20mm×20mm(高さ×幅×奥行)の寸法であり、典型的なADSL変成器の6.3gに比べて1.9gの重さである。その重さの節減(だいたい70%)は、製造および輸送費用に関する産業に対して十分な利便性がある。
【0058】
一次回路52および二次回路56の幾何学的配置の目的は、その回路の近接しているトラック間の局所的な磁束遷移よりもむしろ、主に全体的な結合(すなわち、一次回路42によって生成される垂直方向の磁束成分の、二次回路44との結合)を介して変成器作用を達成することである。特に、図12を参照して、二つの一次回路および二次回路の伝導体パターンが、”積み重ね1”および“積み重ね2”として描かれている。これらの配置のそれぞれは、一次および二次回路の層を積み重ねている3次元構造からなる。積み重ね1の場合、一次回路は、一次回路積み重ねを形成する為に一方の上にもう一方を重ねており、そして二次回路は、二次回路積み重ねを形成する為に一方の上にもう一方を重ねている。続いて、2つの積み重ねは、一つを別の一つの上に積み重ねている。積み重ね2の場合は、挟み込み構造を形成する為に、一次回路が二次回路の上に交互に積み重ねられている。
【0059】
3次元巻き線構造の特別な利点は、DSLの低周波数においてさえ、一次回路のインダクタンスが増加し、そして二次回路へ向けての磁束鎖交数が改善されることである。その上、構造は、低いQファクターを与え、それによって良い周波数応答が全ADSL周波数範囲にわたってあらわれる。積み重ね構造2の特別な利点は、各一次回路がその上と下に二次回路を有していることである。二次巻き線(あるいはトラック)は、とても良い局所磁束鎖交数が得られるよう、一次巻き線(あるいはトラック)に密接に近接している。一次回路の積み重ねの内側の層と比較して外側の層が二次積み重ね回路からより遠くなっている積み重ね1の配置と違い、積み重ね2の配置は、対称に位置づけられた一次積み重ね回路と二次積み重ね回路を有する。従って、変成器50の本体の隅々にわたっている磁束は、磁束の垂直方向の(すなわち、各回路で規定された平面に対して垂直な)成分が支配的であって、水平方向の磁束成分がより小さいという点において、より均一である。各回路の近接部分が、水平方向に隙間を有するので、自己誘導を減らす為に、磁束の広がっている/歪んでいる水平成分を減らす事が重要である。
【0060】
さらに、大きなスケールで眺めると、その構成は、一次巻き線と二次巻き線間の寄生容量を減らす事に役立つ。巻き線がそのような構成を形成する為に巻かれた時に、巻き線間の分離が、単純に2つの伝導体間の絶縁幅(一般的に0.02mmまで)である。PCB製造技術を用いる時、その伝導トラックが絶縁体によって囲まれないので、その隙間はわずかに大きくなる(0.075mmまで)。回線接続変成器の絶縁安全機能が最高となるように短絡に対する警戒が必要となる。
【0061】
図12を参照して、参照番号70によって一般に示されるグラフは、ADSL2+の周波数バンド幅(ADSLおよびADSL2のバンド幅を含む)に渡っての変成器50の周波数応答を示している。7.5Vの入力電圧71が一次回路42に入力され、変成器作用によって二次回路から出力電圧72を生じた。明らかな共振73が、約300kHzで出力電圧72に見られ、それはその後、300kHzから約1.25MHzまでの周波数範囲にかけてゼロへと指数関数的に落ちてゆく。受信側で最小のビット誤差速度を得るために、DSL回線接続変成器はDSL周波数範囲全体で理想的には1:1の電圧伝送特性を有するべきであるので、二次の出力電圧72における共振は特に望ましくない。目的の周波数範囲で損失が実質同じである(すなわち、減衰が入力周波数に依存しない)のならば、信号の減衰は耐えうるものである。従って、変成器50が回線接続(あるいは広帯域)変成器として実際に適用されるのであれば、共振と周波数に依存する減衰を軽減することが不可欠である。これは、変成器のインダクタンス特性および/あるいは容量特性を変えて周波数応答を平坦にする事によって(例えば、目的の周波数バンドの外側に共振を遷移させる事によって)達成されることができる。この場合、本発明は、これらの調整を(巻き数、層の数、層間の隙間などのような)変成器の幾何学形状を変える事によって行なう。これに加えて、またはその代わりに、別の回路構成(例えば、コンデンサー)を、この目的のために変成器とともに使ってもよい。
【0062】
図13を参照して、参照番号80によって一般に示されている変成器の第二の実施態様は、一次回路81と二次回路82の挟んだ構造からなる。一次回路81は、平面が平行となるように二次回路82の上に重ねられることで、各一次回路81は、そのどちらか一方側の上に二次回路82を有し、その逆もまた同じである。一次回路が第一の回路内で端子83、84に直列接続され、二次回路が第二の回路内で端子85、86に直列接続されるように、電気的な接続が交互の層の間でなされる。その挟んだ構造は、一次および二次回路間の結合を改善する事を意図しており、これにより、変成器の容量特性を変え、DSLバンド幅内の周波数における共振効果を軽減する。これに加えて、あるいはその代わりに、コンデンサーを変成器80(あるいは本明細書で述べた他の変成器)と平行に配置して、目的の周波数バンド幅の外側に共振を遷移させてもよい。そのDSLバンド幅において、変成器80の結合係数は約0.9と高い。この配置の特別な利点は、一次および二次回路間の容量結合が減少し、ADSL2+のような一層高い周波数で変成器80を使用できるという事である。
【0063】
変成器80のPCB構造は、参考として先に変成器50に関連して述べたものと同様である。変成器80は、回路層ごとに60巻きになっている。その変成器が、ADSL2のバンド幅(すなわち、約1.1MHzまで)において使われるならば、理想的には少なくとも20の一次回路層と20の二次回路層があるべきであり、その変成器80がADSL2+バンド幅(すなわち、約2.2MHz)で使われるならば、理想的には少なくとも30の一次回路層と30の二次回路層があるべきである。層間の分離は、前述のようにすべきである。
【0064】
図14を参照して、参照番号90で一般に示されるグラフは、(ADSLおよびADSL2のバンド幅を含んでいる)ADSL2+の周波数バンド幅における5つの一次回路層81および5つの二次回路層82を有する変成器80の手作り版の周波数応答を示している。7.5Vの入力電圧91が一次回路81に入力され、変成器作用によって二次回路82から出力電圧92を生じた。ADSL/ADSL2の周波数バンド幅(すなわち、1.1MHzまで)に渡って、変成器80の周波数応答は、750kHz および1.1MHz間の入力周波数で出力電圧92に現れる共振93をともない比較的に平坦である。その共振93は約1.1MHzにピークをもち、二次回路82は入力電圧の4倍の電圧を出力し、そしてその出力電圧92は、これよりも大きい入力周波数で減っていく。約1.6MHzよりも大きい入力周波数において、出力電圧92は入力電圧91よりも低い。これらの特性は、DSL適用において満足のゆくものではない。
【0065】
本出願人は、この問題について検討し、意外にも、変成器の層内および/またはその片側あるいは両側に電磁シールド部材を用いることが、共振/減衰問題を解消することがわかった。意外にも、片側だけに金属部材を使う事で良い結果を生じると言う事が実験的にわかった。意外にも、その種の金属部材を変成器の層全体に配置することで、さらに良好な結果が得られた。その金属部材は、例えば、板、箔、あるいは連続した伝導体トラックの形であってもよい。その金属物の形状は、理想的には、不可欠という訳ではないけれども、変成器の層と同じであるべきであり、この場合では実質的に円形である。その金属部材の厚さは、約0.2mmよりも薄くするべきであり、層の数は、1から10の間にすることができ、5層がDSL適用において役に立つ。
【0066】
図15を参照して、参照番号100で一般に示されている変成器の第四実施態様は、変成器80と、互いに当接して変成器80の片側に位置するアルミニウム箔の4つの層101とを備え、層101によって規定される平面が、変成器80の回路層によって規定される平面に実質平行になるようにする。各アルミニウム箔は、0.05mmの厚さであり、同じ形状にする事は不可欠ではないが、変成器80の足跡形状(footprint)に一致するように円形に切られている。各層の内部の巻き線は省略している事に留意されたい。各層の内部の10回の巻き線は、変成器のインダクタンスにほとんど寄与せず、したがって、これらの省略は、変成器80の特性に大きくは影響しない。しかしながら、いくつかの製造上の利点が得られ、そして層間の寄生容量が減少する。本明細書で述べた変成器のいずれかは、たくさんの(例えば、5〜10本の)内部巻き線を省略してもよい。
【0067】
使用において、層101の機能は、変成器80のまわりで変化する磁場を介して渦電流を生じさせ、共振効果を軽減することである。レンツの法則により、これらの渦電流は、変圧器80の磁束の変化を妨げる。したがって、層101は、二次回路82で生じるより高い電圧を妨げることによって共振ピークを和らげる。出力信号が減衰する時に、層101の渦電流は、二次回路内で高電圧を維持するように努める。DSLの周波数範囲で、磁場の1/eあるいは63%を吸収する表皮の深さは、アルミニウムにおいて約0.5mm〜0.086mmの間である。したがって、層101の全体の厚さの適切な選択をすることによって、低周波数では、渦電流を小さくして、それに対応する効果を二次回路の出力電圧に与える事を確実に行うことが可能であり、一方、共振が観測された高周波数では、渦電流がかなり大きくなることで、共振を弱めて減衰を妨げる。このようにして、変成器80の周波数応答曲線は、DSLの周波数範囲に渡って平坦にさせることができる。
【0068】
図16を参照して、参照番号110によって一般に示されるグラフは、ADSL/ADSL2の周波数バンド幅における10個の回路層(5つの一次回路層、5つの二次回路層)を含む手巻き形式の変成器100の周波数応答を示している。7.5Vの入力電圧111が一次回路に入力され、変成器作用によって二次回路82から出力電圧112を生じた。出力電圧102は、ほとんどのADSL/ADSL2周波数範囲で実質平坦であり、特に、上限で見られる大きな共振はかなり軽減されている。
【0069】
図17を参照して、参照番号120によって一般に示されるグラフは、ADSL2+の周波数バンド幅における手巻き変成器100の周波数応答を示している。7.5Vの入力電圧121が一次回路に入力され、変成器作用によって二次回路から出力電圧122を生じた。出力電圧122は、ほとんどのADSL2+周波数範囲で実質平坦であり、そして特に中間領域で見られる大きな共振は大きく軽減され(入力電圧121よりも約30%だけ高いにすぎず、図15のような400%にはならない)、領域の上限にまで押し込まれている。2MHzでの小さい共振は、より多くの回路層の付加、例えば各タイプにおいて約30層まで、によってADSL2+周波数バンドの外側に移動させることができる。
【0070】
図18を参照して、参照番号130によって一般に示される変成器の第五実施態様は、一次回路の層131と二次回路の層132とアルミニウムプレート133との交互に繰り返す層を備えることで、2つのアルミニウムプレート133よって分割された6つの回路層を形成するようにしたものである。各アルミニウムプレート133は、上述したものと同様の寸法である。各一次回路層131は60巻きであり、そして各二次回路層132は60巻きである。変成器130は手巻きであって(この構造は、適当ないずれの自動化製造プロセスにも対応可能であるが)、そして各回路の伝導体間および各層間の分離は2つの絶縁厚みとなる。変成器130の電気的な特性は、

Lpri=1.33mH
Lsec=1.39mH
Rpri=3.49Ω
Rsec=3.55Ω
Cpri=Csec=19μF
である。
【0071】
図19を参照して、参照番号140によって一般に示されるグラフは、変成器130のADSL2+周波数バンド幅における周波数応答を示している。7.5Vの入力電圧141が一次回路に入力され、変成器作用によって二次回路から出力電圧142を生じた。変成器130は、ADSL2+のバンド幅においてとても平坦な周波数応答を示し、実質的に周波数に依存しない減衰をともなう。これは、層数が少数であることを考えると、とても驚くべきことである。アルミニウム板133によって分けられる変成器130の層をさらに付加することは、減衰の量を軽減し、変成器の平坦な周波数応答をより高周波数へと広げる。特に、より多くの一次および二次回路層の付加は、変成器130のインダクタンスを増やし、それにより出力電圧142の減衰を軽減する。しかしながら、それに対応して、出力電圧142におけるいくつかの周波数でみられる共振効果が増大する。より多くのアルミニウム板133が加えられるならば、いずれの共振も、より高い周波数に遷移するが、出力電圧142の減衰は増加する。したがって、回路層の数およびアルミニウム板133の数の間でバランスをとらなければならない。本出願人は、上述の組み合わせが良い結果を得る事を見出した。DSL適用において、一次回路、二次回路、アルミニウムプレートの配列パターンは、一次および二次回路のそれぞれにおいて10から20層の間までで繰り返してもよい。そのような配置は、数十MHz内のDSL適用、例えばVDSL、に役立つかもしれない。
【0072】
一つの代用として、アルミニウム板/箔は、受動回路、すなわち、一次および二次回路と同様の螺旋回路により代用してもよいが、それは回路を短絡することになる。そのような受動回路は、アルミニウム板と同じ機能を果たすが、層が他の一次あるいは二次回路に接続されるのではなく単純に短絡されるという、特にPCBにおいて製造利点を提供する。
【0073】
別の代用として、アルミニウム板の層(あるいは他の減衰緩和手段として用いられるものは何でも)の間に各タイプの回路を一つ以上設けるようにしてもよい。
本明細書中で述べられている変成器は、エッチング、プリント回路基板、薄膜蒸着、そして自動機械巻きを含む様々な製造プロセスに対応可能である。そのような変成器は、これらの方法を使うことによって、原材料の量の削減をともない早く、安く生産する事ができる。その最終生産品は、従来のDSL変成器よりも軽くて小さい。
【0074】
巻き線(あるいはトラックの幅)の材料および直径、巻き線の間の隙間、層の間の隙間、各回路の巻き数、層の数、そして厚み、層の数、そして金属部材の配置におけるバリエーションは、その全てが、本明細書で述べた変成器の性能に影響を与える。しかしながら、本明細書で述べた積み重ね構造を伴う変成器の作成原理が提供されているので、当業者は、上述の様々なパラメーターを調整することにより、重さと場所を減らす一方で、所望の低い周波数広域バンド信号伝送特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】図1は、POTSおよびADSLによって使用される周波数バンドを示す、周波数対振幅の概略的なグラフである。
【図2】図2は、ツイステッド・ペアによって接続された、本発明に係る二つのADSLモデムのブロック図である。
【図3A】図3Aは、図2中のADSLモデムの一つの更なる詳細を示している。
【図3B】図3Bは、回線接続変成器の位置を表す、DSLモデム回路の一部分の概略的な回路図である。
【図3C】図3Cは、DSL信号の性質を描いている2つのグラフである。
【図4】図4は、ADSLバンド幅における標準のDSL変成器の周波数対振幅のグラフである。
【図5】図5は、ADSL2バンド幅における標準のDSL変成器の周波数対振幅のグラフである。
【図6】図6は、ADSL2+バンド幅における標準のDSL変成器の周波数対振幅のグラフである。
【図7】図7は、本発明に係る変成器の第一実施態様の概略的な斜視図である。
【図8】図8は、本発明に係る変成器の第二実施態様の概略的な斜視図である。
【図9】図9は、図8のものと同様の変成器を構成する為の2つのPCBモジュールの概略的な断面図である。
【図10】図10は、図8のPCB変成器の写真である。
【図11】図11は、本発明に係る2つの導体構造の概略的な断面図である。
【図12】図12は、ADSL、ADSL2、ADSL2+のバンド幅における図8の変成器の周波数対振幅のグラフである。
【図13】図13は、本発明に係る変成器の第三実施態様の概略的な斜視図である。
【図14】図14は、ADSL、ADSL2、ADSL2+のバンド幅における図13の変成器の周波数対振幅のグラフである。
【図15】図15は、本発明に係る変成器の第四実施態様の概略的な斜視図である。
【図16】図16は、ADSL2バンド幅における図15の変成器の周波数対振幅のグラフである。
【図17】図17は、ADSL2+バンド幅における図15の変成器の周波数対振幅のグラフである。
【図18】図18は、本発明に係る変成器の第五実施態様の概略的な断面図である。
【図19】図19は、ADSL2+バンド幅における図18の変成器の周波数対振幅のグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信回線と接続するための一次回路および前記通信回線を介して伝送された信号を出力するための二次回路を有する回線接続変成器を備え、前記回路のそれぞれが連続的な導電材料で形成され、前記一次回路が第一平面を規定し、前記二次回路が第二平面を規定し、前記第一および第二平面は互いに実質平行であるデジタル加入回線(DSL)モデム。
【請求項2】
前記第一平面が、前記第二平面から離れて配置されている
ことを特徴とする請求項1記載のDSLモデム。
【請求項3】
前記回線接続変成器が前記一次回路および前記二次回路の交互になっている層を含む、
ことを特徴とする請求項1あるいは請求項2記載のDSLモデム。
【請求項4】
それぞれが層を形成している複数の第一平面および第二平面があり、前記一次回路は複数の実質平行である層を含み、また前記二次回路は複数の実質平行である層を含む
ことを特徴とする請求項1、請求項2あるいは請求項3記載のDSLモデム。
【請求項5】
前記一次回路の層が互いに隣接しており、前記二次回路の層が互いに隣接しており、前記一次および二次回路が隙間によって分離されている
ことを特徴とする請求項4記載のDSLモデム。
【請求項6】
前記一次回路の層は一次回路の積み重ねを形成し、前記二次回路層は二次回路の積み重ねを形成し、前記一次回路の積み重ねおよび前記二次回路は、一方を他方に隣接して積み重ねられている
ことを特徴とする請求項5記載のDSLモデム。
【請求項7】
前記一次回路の層は前記二次回路の層で挟まれている
ことを特徴とする請求項3あるいは請求項4記載のDSLモデム。
【請求項8】
前記層間の隙間は、0.5mm以下である
ことを特徴とする請求項4から請求項7のいずれか一つ記載のDSLモデム。
【請求項9】
前記一次回路の層が、直列あるいは並列に接続されている
ことを特徴とする請求項4から請求項8のいずれか一つ記載のDSLモデム。
【請求項10】
前記二次回路の層が、直列あるいは並列に接続されている
ことを特徴とする請求項4から請求項9のいずれか一つ記載のDSLモデム。
【請求項11】
前記一次回路の前記複数の実質平行な層を少なくとも10層、前記二次回路の前記複数の実質平行な層を少なくとも10層、さらに含む、
ことを特徴とする請求項4から請求項10のいずれか一つ記載のDSLモデム。
【請求項12】
各回路の巻き数は少なくとも10回である
ことを特徴とする前述の請求項のいずれか記載のDSLモデム。
【請求項13】
前記二次回路での共振を軽減するための軽減手段をさらに含む
ことを特徴とする前述の請求項のいずれか記載のDSLモデム。
【請求項14】
前記軽減手段が、前記回線接続変成器の片側にある
ことを特徴とする請求項13記載のDSLモデム。
【請求項15】
前記軽減手段が、前記回線接続変成器の両側にある
ことを特徴とする請求項13あるいは請求項14記載のDSLモデム。
【請求項16】
前記軽減手段が、前記一次および二次回路間にある
ことを特徴とする請求項13、請求項14、あるいは請求項15記載のDSLモデム。
【請求項17】
前記軽減手段が、金属を含む
ことを特徴とする請求項13、請求項14、請求項15、あるいは請求項16記載のDSLモデム。
【請求項18】
前記軽減手段が、板あるいは箔を含む
ことを特徴とする請求項17記載のDSLモデム。
【請求項19】
前記一次回路および二次回路は、実質的に違う平面を規定する、伝導材料からなる実質平行な螺旋形状である
ことを特徴とする前述の請求項のいずれかのDSLモデム。
【請求項20】
前記螺旋が実質的に、円形、楕円形、正方形、長方形、長円形あるいは不規則形である
ことを特徴とする請求項19記載のDSLモデム。
【請求項21】
前記螺旋は、極方程式r(θ)=αθにしたがって作られる螺旋に実質的に一致し、
ここでのθは極座標の角度であり、rは半径であり、そしてαは巻き数と隙間で決定する定数である
ことを特徴とする請求項19あるいは請求項20記載のDSLモデム。
【請求項22】
直径:幅として定義される縦横比が1:5あるいはそれ以上である
ことを特徴とする前述の請求項のいずれかのDSLモデム。
【請求項23】
前記回線接続変成器が、強磁性体の芯を含んでいない
ことを特徴とする前述の請求項のいずれか記載のDSLモデム。
【請求項24】
DSLモデムに使用するための、いずれかの前述した請求項に記載の回線接続変成器の構成のいずれかを有する回線接続変成器。
【請求項25】
通信回線を介して電子データを伝送する方法であって、請求項24に記載の回線接続変成器を使って前記通信回線に前記電子データを載せるステップを含む方法。
【請求項26】
DSLモデムを生産する方法であって、請求項24に記載の回線接続変成器を挿入し、該変成器を電気的に接続するステップを含む方法。
【請求項27】
約10kHzから20MHzの間の低周波バンドデジタルデータ信号を通過するための芯のない変成器であって、各層が全て一次伝導体あるいは全て二次伝導体を有する複数の層を備えるように、多くの巻き数を有する一次回路および二次回路を備え、前記周波数バンドにおいて前記一次回路から前記二次回路まで前記デジタルデータ信号を通すための変成器作用を得るのに十分な前記巻き数と層数の組み合わせを有する変成器。
【請求項28】
前記層が、前記変成器の中央から半径方向の外側にむけて広がっている、
ことを特徴とする請求項27記載の芯のない変成器。
【請求項29】
前記一次回路の層が一次回路の積み重ねを形成するために互いに隣接しており、そして前記二次回路の層も二次回路の積み重ねを形成するために互いに隣接しており、その配置は、前記一次回路の積み重ねおよび前記二次回路の積み重ねが、前記変成器作用を容易にするために一方を他方の隣りに積み重ねるようになされている、
ことを特徴とする請求項27もしくは請求項28記載の芯のない変成器。
【請求項30】
前記一次回路の層が前記二次回路の層で挟まれ、その配置は、前記一次および二次回路の層が交互になるようになされている、
ことを特徴とする請求項27もしくは請求項28記載の芯のない変成器。
【請求項31】
前記交互になっている層が、前記一次および二次回路の単一の層を備える、
ことを特徴とする請求項30記載の芯のない変成器。
【請求項32】
各層の伝導体間の分離が約0.02mmから0.075mmの間である、
ことを特徴とする請求項27から請求項31記載のいずれかの芯のない変成器。
【請求項33】
各層間の分離が約0.02mmから0.2mmの間である、
ことを特徴とする請求項27から請求項32のいずれか記載の芯のない変成器。
【請求項34】
少なくとも10層である、
ことを特徴とする請求項27から請求項33記載のいずれかの芯のない変成器。
【請求項35】
請求項27から請求項34のいずれか記載の芯のない変成器を備えている電気回路。
【請求項36】
請求項35に記載の電気回路を備えるDSLモデム。

【図7】
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【図10】
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【図13】
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【図15】
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【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図14】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2007−513513(P2007−513513A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−542027(P2006−542027)
【出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【国際出願番号】PCT/GB2004/050035
【国際公開番号】WO2005/055253
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(501010546)サウス バンク ユニバーシティー エンタープライジズ リミテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】SOUTH BANK UNIVERSITY ENTERPRISES LIMITED
【Fターム(参考)】