説明

EA材取付用クリップ及びEA材

【課題】フランジと筒部との付け根部に樹脂発泡体が確実に充填されるEA材取付用クリップと、このEA材取付用クリップを備えたEA材を提供する。
【解決手段】EA材を部材に取り付けるためのEA材取付用クリップ30であって、筒部31と、該筒部31の両端に設けられたフランジ32とを有するEA材取付用クリップにおいて、少なくとも一方のフランジ32の付け根部に、該フランジを貫通する貫通部34を設けたEA材取付用クリップ。このEA材取付用クリップ1を備えたEA材20。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EA材(衝撃エネルギー吸収材)の取付用クリップ及びEA材に係り、特に自動車のトリムに適用するのに好適なEA材の取付用クリップ及びEA材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のドアトリムには、側面衝突(側突)時の衝撃エネルギー吸収(Energy Absorption:EA)のために、硬質ウレタンよりなるEA材を取り付けている。このドアトリムに対し、硬質ウレタン製EA材を取り付ける方法として、第7図に記載のEA材取付方法が知られている。
【0003】
この従来例では、硬質ウレタン等よりなるEA材1にクリップ2が一体に設けられている。このクリップ2は、第7図(d)の通り、筒部3の両端にフランジ4,4を設けたものである。このクリップ2はEA材1の張出部1aに設けられている。第7図(a),(b)の通り、トリム5から突設された円柱状の突起6が該クリップ2に内挿されるようにしてEA材1をトリム5に重ね合わせる。この突起6は、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂よりなる。次いで、突起6の先端に溶着治具(図示略)を押し当て、第7図(c)の通り突起6の先端を略円盤状に拡径させてフランジ状押え部6aを形成する。これにより、EA材1がトリム5に固定される。
【0004】
このクリップ2は、EA材1の発泡成形時に金型に取り付けておくことにより、硬質ウレタン等と一体化される。このように金型にクリップを取り付けておいてウレタンの発泡成形を行うことは、特開2005−131959に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−131959
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
第5図に示すクリップ2を金型に取り付けておいてウレタンの発泡成形を行う場合、フランジ4と筒部3との交差隅部にガスが滞留し易いので、この付け根部にウレタンフォームが十分には充填されない可能性がある。この付け根部へのウレタンフォーム充填が不十分であると、クリップの引き抜き強度が低くなる。
【0007】
ガスの滞留防止のためにフランジの直径を小さくすることも考えられるが、クリップの引き抜き強度が低下する。一方のフランジのみ直径を小さくすることも考えられるが、クリップを金型に装着する際にクリップの向きを正しくする必要があり、クリップの金型への装着作業性に劣る。
【0008】
本発明は、このような問題点を解決し、フランジと筒部との付け根部に樹脂発泡体が確実に充填されるEA材取付用クリップと、このEA材取付用クリップを備えたEA材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1のEA材取付用クリップは、EA材を部材に取り付けるためのEA材取付用クリップであって、筒部と、該筒部の両端に設けられたフランジとを有するEA材取付用クリップにおいて、少なくとも一方のフランジの付け根部に、該フランジを貫通する貫通部を設けたことを特徴とするものである。
【0010】
請求項2のEA材取付用クリップは、請求項1において、該貫通部は、前記筒部の外周に沿って延在する長孔であることを特徴とするものである。
【0011】
請求項3のEA材取付用クリップは、請求項2において、該長孔が前記筒部の周方向に間隔をおいて複数個設けられていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項4のEA材取付用クリップは、請求項1ないし3のいずれか1項において、前記貫通部の開口面積がフランジの面積の1/4〜1/2であることを特徴とするものである。
【0013】
請求項5のEA材取付用クリップは、請求項1ないし4のいずれか1項において双方のフランジに前記貫通部が設けられていることを特徴とするものである。
【0014】
請求項6のEA材は、請求項1ないし5のいずれか1項のEA材取付用クリップを備えたものである。
【0015】
請求項7のEA材取付用クリップは、請求項6において、該EA材は、前記EA材取付用クリップが樹脂発泡体に埋設されたものであり、該EA材取付用クリップの一方のフランジがEA材の外面の臨んでおり、前記筒部と他方の前記貫通部を有したフランジが樹脂発泡体内に位置していることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明のEA材取付用クリップでは、少なくとも一方のフランジの付け根部に、フランジを貫通する貫通部が設けられているので、EA材の成形時にガスが該貫通部を通って抜けるようになる。このため、フランジと筒部との交差隅部にガスが溜ることが防止され、フランジ付け根部に樹脂発泡体が十分に充填され、クリップの引き抜き強度が大きいものとなる。
【0017】
この貫通部を長孔とし、さらには筒部の周方向に複数個設けることにより、フランジ付け根部のガス滞留がより十分に防止される。
【0018】
また、貫通部の開口面積をフランジの面積の1/4〜1/2とすることにより、フランジ付け根部のガス滞留がより十分に防止されると共に、フランジやクリップの強度も確保される。
【0019】
この貫通部は、双方のフランジに設けられるのが好ましい。このようにした場合、クリップを金型に装着するときにクリップの向きを確認することが不要となり、成形作業効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施の形態に係るEA材の断面図である。
【図2】実施の形態に係るEA材取付用クリップの斜視図である。
【図3】実施の形態に係るEA材取付用クリップの平面図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】実施の形態に係るEA材の成形方法を示す断面図である。
【図6】比較例に係るEA材取付用クリップの一部の断面図である。
【図7】従来例を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、第1図〜第5図を参照して実施の形態について説明する。
【0022】
第1図は実施の形態に係るEA材の厚み方向の断面図、第2図は、このEA材のクリップの斜視図、第3図はクリップの平面図、第4図は第3図のIV−IV線断面図、第5図はEA材の成形法法を説明する断面図である。
【0023】
第1図に示すEA材20は、それぞれ硬質ウレタンフォームなどの発泡樹脂よりなる盤状の本体部21と、該本体部21の側面から張り出す取付部22とを有する。取付部22には、このEA材20をトリム等に取り付けるための取付孔23が設けられている。この取付部22内にEA材取付用クリップ(以下、クリップと略)30が埋設されている。
【0024】
このクリップ30は、取付孔23の内周面を構成する筒体31と、筒体31の筒軸方向両端に設けられたフランジ32と、各フランジ32に設けられた貫通部としての孔34とを有する。
【0025】
孔34は、筒部31の周方向に延在する長孔であり、この実施の形態では各フランジ32にそれぞれ周方向に間隔をおいて4個ずつ設けられているが、これに限定されない。各孔34は筒部31の外周に沿っており、孔34から筒部31の外周面までの距離はゼロとなっている。
【0026】
このEA材20は、第5図のようにクリップ30を金型の下型50のピン51に嵌合させてセットしておき、上型52の型締め後、キャビティ内にてウレタン原液Uを発泡させることにより成形される。この場合、上側のフランジ32の下側のガスは該フランジ32の孔34を通過するので、上側フランジ32の下側にもウレタンフォームが十分に充填される。なお、この孔34が長孔であり、周方向に延在しているので、付け根部の全周にわたってガスがスムーズに上方へ抜ける。
【0027】
このように構成されたEA材20は、前記第7図と同様にしてトリム等に取り付けられる。即ち、トリム(第1図では図示略)から突設された円柱状の突起が該取付孔23に内挿されるようにしてEA材20をトリムに重ね合わせる。この突起は、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂よりなる。次いで、突起の先端に溶着治具(図示略)を押し当て、突起の先端を略円盤状に拡径させてフランジ状押え部を形成する。これにより、EA材20がトリムに固定される。ただし、スタッドボルト等によってEA材20をトリムに取り付けることも可能である。
【0028】
このEA材20にあっては、フランジ32の付け根部にもウレタンフォームが十分に充填されており、クリップ30の引き抜き強度が高い。なお、フランジ32よりも上側のウレタンフォームと下側のウレタンフォームとが孔34を介して一体化してもよい。この場合には、フランジ32とウレタンフォームとの一体性が向上する。
【0029】
上記実施の形態では、孔34は双方のフランジ32に設けられ、上下双方のフランジ32は同一直径とされ、クリップ30は上下対称であり、第5図において上下逆にしても全く同一形状である。そのため、クリップ30の金型への装着作業時にクリップ30の向きに注意を払う必要がなく、クリップ30の金型への装着作業性に優れる。
【0030】
孔34の合計の開口面積は、フランジ32の孔の1/4〜1/2程度が好適であるが、これに限定されない。孔34の幅Wは、フランジ32の幅Wの1/2〜2/3程度が好適である。自動車用トリムの場合であれば、Wは3〜5mm、Wは5〜10mm程度が好適である。
【0031】
第6図は比較例に係るクリップ30Aのフランジ32付近の断面図である。この比較例では、孔34が筒部31の外周面から距離Lだけ離隔している。この距離Lが過度に大きいと、フランジ32の下側からのガスの抜けが不十分となるので、Lはなるべく1mm以下特に0.3mm以下程度に小さい方が好ましく、上記実施の形態のようにL=0であることが最も好ましい。
【0032】
上記実施の形態では、貫通部は孔とされているが、フランジ32の外周縁から切り込まれた形状の切欠部であってもよい。
【符号の説明】
【0033】
1,20 EA材
2,30 EA材取付用クリップ
31 筒部
32 フランジ
34 孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
EA材を部材に取り付けるためのEA材取付用クリップであって、
筒部と、該筒部の両端に設けられたフランジとを有するEA材取付用クリップにおいて、
少なくとも一方のフランジの付け根部に、該フランジを貫通する貫通部を設けたことを特徴とするEA材取付用クリップ。
【請求項2】
請求項1において、該貫通部は、前記筒部の外周に沿って延在する長孔であることを特徴とするEA材取付用クリップ。
【請求項3】
請求項2において、該長孔が前記筒部の周方向に間隔をおいて複数個設けられていることを特徴とするEA材取付用クリップ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記貫通部の開口面積がフランジの面積の1/4〜1/2であることを特徴とするEA材取付用クリップ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において双方のフランジに前記貫通部が設けられていることを特徴とするEA材取付用クリップ。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項のEA材取付用クリップを備えたEA材。
【請求項7】
請求項6において、該EA材は、前記EA材取付用クリップが樹脂発泡体に埋設されたものであり、
該EA材取付用クリップの一方のフランジがEA材の外面の臨んでおり、前記筒部と他方の前記貫通部を有したフランジが樹脂発泡体内に位置していることを特徴とするEA材取付用クリップ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−92913(P2012−92913A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241209(P2010−241209)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】