説明

ECU集中収容箱

【課題】ECU集中収容箱の共通回路基板に設ける電源回路の機能を保持しつつ、該電源回路への配線を簡素化すると共にECU基板に供給される電源の電圧降下を防止する。
【解決手段】1つのボックス内に、複数のECU基板と共通回路基板とを収容し、前記共通回路基板に電源回路と信号回路とを設け、前記電源回路に1系統の電源線とグランド線が、前記信号回路に通信線が夫々接続されており、前記信号回路で車両電源状態信号を前記通信線を介して受信し、該車両電源状態信号に応じて前記電源回路に設けた継電部を制御して、所要のタイミングで各ECU基板に電源を供給し、かつ、前記電源回路に電流制限回路を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はECU集中収容箱に関し、詳しくは、自動車に搭載される複数のECU基板(電子制御ユニットの回路基板)を1つの収容箱に集中的に収容するECU集中収容箱への配線を簡素化するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のECU集中収容箱として、本出願人は特開2007−48890号公報で図4に示すECU集中収容箱100を提供している。
該ECU集中収容箱100は、ケース101内に複数のECU基板102と各ECU基板102の回路に接続される共有回路が形成された共通回路基板103とを収容し、共通回路基板103を各ECU基板102に接続バス104で接続している。前記共通回路基板103に、複数の電源線(IGN、ACC、+B、)とグランド線(GND)を接続すると共に過電圧保護回路を含む電源回路105を設け、該電源回路105を各ECU基板102の電源回路に接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−48890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示したECU集中収容箱100では、複数のECU基板102への電源供給は共通回路基板103に設けた電源回路105を介して行い、電源回路に設ける比較的大きな保護部品であるツェナーダイオードを共通回路基板103に設け、個々のECU基板102にツェナーダイオードを設けていないことにより、ECU基板の大型化を抑制している。
【0005】
しかし、共通回路基板103の電源回路105には、前記のように、イグニッション電源を供給する電源線(IGN)と、アクセサリ電源を供給する電源線(ACC)と、常時電源を供給する電源線(+B)とグランド線(GND)を接続しており接続電線数が多く、配線を簡素化する点で改良の余地がある。
また、前記構成のECU集中収容箱100では、ECU基板102に供給される電源の電圧降下を防止する点でも改良の余地がある。
【0006】
本発明は、ECU集中収容箱の共通回路基板に設ける電源回路の機能を保持しつつ、該電源回路への配線を簡素化すると共に、ECU基板に供給される電源の電圧降下を防止することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、
1つのボックス内に、複数のECU基板と共通回路基板とを収容し、
前記共通回路基板に電源回路と信号回路とを設け、
前記電源回路に1系統の電源線とグランド線が、前記信号回路に通信線が夫々接続されており、
前記信号回路で車両電源状態信号を前記通信線を介して受信し、該車両電源状態信号に応じて前記電源回路に設けた継電部を制御して、所要のタイミングで各ECU基板に電源を供給し、かつ、
前記電源回路に電流制限回路を設けていることを特徴とするECU集中収容箱を提供している。
【0008】
前記のように、本発明では、共通回路基板の電源回路に1系統の電源線とグランド線のみを接続し、イグニッション電源やアクセサリ電源を供給する電源線を接続していない。その代わりに、本発明では、共通回路基板の信号回路において、イグニッション電源やアクセサリ電源のON/OFF状態を示す車両電源状態信号を通信線を介して受信し、該車両電源状態信号に応じて前記電源回路に設けた継電部を制御する構成としている。該構成とすることで、従来のように共通回路基板の電源回路にイグニッション電源やアクセサリ電源を供給する電源線を接続しなくても、必要なタイミングでイグニッション電源やアクセサリ電源をECU基板に供給することができる。よって、本発明によれば、共通回路基板における電源回路の機能を保ちつつ該電源回路に接続する電線数を低減し、配線を簡素化することが可能となる。
【0009】
また、前記のように、共通回路基板の電源回路に電流制限回路を設けることにより、共通回路基板に接続されるECU基板を過電流から保護することができ、ECU基板に供給される電源の電圧降下を防止することができる。電流制限回路としては、例えば、オペアンプを用いて反転差動増幅回路を形成した図3に示すような回路を用いることができる。
【0010】
前記共通回路基板の電源回路には、前記電源線および前記グランド線と接続する入力保護回路と、該入力保護回路と接続する降圧回路を設け、前記継電部を前記入力保護回路および前記信号回路の制御部と接続すると共に、前記電流制限回路を前記降圧回路と接続していることが好ましい。
【0011】
前記のように、共通回路基板の電源回路に入力保護回路を設けることにより、共通回路基板に接続する各ECU基板を過電流から保護し、電圧を安定化させることができる。特に本発明では、前記入力保護回路に接続する電線数を低減しているため、該入力保護回路の小型化を図ることができる。
【0012】
また、前記のように、入力保護回路に降圧回路を接続することにより各ECU基板から共通回路基板へ降圧回路を共通化させることができ、前記降圧回路によって、例えば12Vの電圧を9V、5V、3.3V等に降圧することができる。
【0013】
さらに、前記入力保護回路に接続した継電部に前記信号回路の制御部を接続しておくことによって、該制御部において解読された車両電源状態に応じて前記継電部を制御し、12Vのイグニッション電源やアクセサリ電源をECU基板に必要なタイミングで供給することができる。具体的には、前記入力保護回路に前記継電部としてアクセサリ電源用リレーとイグニッション電源用リレーを夫々接続すると共に、前記各リレーに前記制御部としてASICまたはCPUを接続することができる。
【0014】
また、各ECUに供給される降圧後ラインの電圧(例えば5V)はマイコンやASICなどの電源として使用されるため電圧降下は許されないが、前記のように降圧回路に電流制限回路を接続することによって、降圧後ラインにおける電圧降下を効果的に防止することができる。さらに、前記電流制限回路を前記制御部に接続し、イグニッション電源、アクセサリ電源などの車両電源状態によるON/OFF制御を、前記制御部による電流制限回路内のトランジスタ電圧制御によって実施することが好ましい。
【0015】
前記共通回路基板の信号回路と接続する通信線は、例えば、CAN(Controller Area Network)による車内LAN通信を行うCAN通信線(CANバス)と接続している。
なお、CAN通信線に限定されず、LIN(Local Interconnect Network)やFlex Rayに準拠する通信線に接続してもよい。
【0016】
また、前記信号回路を複数のCANバスと接続する場合には、前記信号回路の制御部であるASICまたはCPUにゲートウェイを内蔵しておくことが好ましい。これにより、ゲートウェイ基板を削減することができる。
【発明の効果】
【0017】
前述したように、本発明によれば、共通回路基板の電源回路にバッテリと接続した1系統の電源線とグランド線のみを接続する一方、共通回路基板の信号回路において、イグニッション電源やアクセサリ電源のON/OFF状態を示す車両電源状態信号を通信線を介して受信して、該車両電源状態信号に応じて前記電源回路に設けた継電部を制御する構成としているため、共通回路基板の電源回路にイグニッション電源やアクセサリ電源を供給する電源線を接続しなくても、イグニッション電源やアクセサリ電源を前記共通回路基板からECU基板に必要なタイミングで供給することができる。即ち、共通回路基板における電源回路の機能を保ちつつ、前記電源回路に接続される電線数を低減して配線を簡素化することができる。
【0018】
また、共通回路基板の電源回路に電流制限回路を設けることにより、共通回路基板に接続されるECU基板を過電流から保護することができ、ECU基板に供給される電源の電圧降下を防止することができる。特に、前記のように、降圧回路に電流制限回路を接続することによって、各ECUから共通回路基板へ降圧回路を共通化させ、さらには降圧後ラインにおける電圧降下を効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態のECU集中収容箱の全体構成を示すブロック図である。
【図2】共通回路基板の回路構成を示すブロック図である。
【図3】電流制限回路を示す図面である。
【図4】従来例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図3は本発明の実施形態を示している。図1に示すECU集中収容箱1はボックス2内に3枚のECU基板3(3A、3B、3C)を収容すると共に1枚の共通回路基板4を収容し、ECU基板3(3A、3B、3C)と共通回路基板4とをバスバーからなる接続バス5(5a、5b)を介して接続している。ECU基板3(3A、3B、3C)は複数の電装機器(図示せず)と接続され、これらを電気的に制御している。なお、本実施形態ではECU基板を3枚収容しているが、3枚に限定されず、2枚でも4枚以上でもよい。
【0021】
ECU基板3としては、例えば、スマートECUやカメラECUなどが挙げられるが、ECU基板の種類はこれらに限定されるものではない。
【0022】
共通回路基板4には電源回路6と信号回路13を設けている。
電源回路6には、図2に示すように、入力保護回路7を設け、バッテリの正極に接続した1系統の電源線(+B)W1とバッテリの負極に接続したグランド線(GND)W2を入力保護回路7に接続している。図示しないが、入力保護回路7には電解コンデンサと共に電圧保護用のツェナーダイオードを実装している。
また、電源回路6には、前記入力保護回路7と接続する降圧回路8を設けている。本実施形態では降圧回路8によって12Vの電圧を5Vに降圧しているが、5Vに限らず複数の電圧に降圧することもできる。
【0023】
一方、電源回路6には、入力保護回路7と接続する継電部としてリレー9、10を実装し、該リレー9、10に信号回路13の制御部であるASIC15を接続している。本実施形態では、12Vのアクセサリ電源の出力をON/OFFするアクセサリ電源用リレー(ACCリレー)9と、12Vのイグニッション電源の出力をON/OFFするイグニッション電源用リレー(IG1リレー、IG2リレー)10(10a、10b)を入力保護回路7に夫々接続すると共に、該アクセサリ電源用リレー9、イグニッション電源用リレー10(10a、10b)にASIC15を夫々接続している。
【0024】
また、前記アクセサリ電源用リレー9、イグニッション電源用リレー10(10a、10b)を経由して、各ECU基板3(3A、3B、3C)に接続される12Vアクセサリ電源ラインおよび12Vイグニッション電源ラインに、保護用のヒューズ11a、11iを夫々接続すると共に、リレーを経由せずに各ECU基板3(3A、3B、3C)に接続される12V常時電源ラインにも保護用のヒューズ11bを接続している。
なお、前記アクセサリ電源用リレー9、イグニッション電源用リレー10(10a、10b)として、過剰電流時の保護回路(シャットダウン回路)を有した半導体リレーを搭載すれば、前記ヒューズ11a、11iは設けなくてよい。
【0025】
また、降圧回路8において5Vに降圧した電源を各ECU基板3(3A、3B、3C)に供給する降圧後ラインに、図3に示すような電流制限回路12を夫々設けている。電流制限回路12は、オペアンプ20を用いて反転差動増幅回路を形成し、オペアンプ20の出力電圧にてトランジスタ21を制御し、該トランジスタ21にて電界効果トランジスタ(FET)22をコントロールすることにより電流を制限する構成としている。例えば、消費電流I1が大となると、低抵抗23での電圧降下が大となり、オペアンプ20の出力電圧、トランジスタ21のベース電圧、コレクタ・エミッタ間の電流I2が小となり、電界効果トランジスタ(FET)22のゲート・ソース間電圧が小となる。これにより消費電流I1が小になり、低抵抗23の電圧降下が小になる。以降、前記大小が逆になったパターンの繰り返しで、一定の電流に制御される。電流制限回路12では、目的とする電流値となるように各種抵抗値を設定している。
【0026】
前記電流制限回路12はあくまでも電流値を制限(上限値を設定)するものであり、回路を遮断する場合には、ASIC15よりラインAを通じて直接トランジスタ21のベース電圧をグランドに落とすことで遮断できる。オペアンプ20の出力電圧はラインBにより確認でき、遮断の判断に用いることができる。また、電流制限回路12が動作するまでの短時間に電圧降下するのを防止するために、5V電源を各ECU基板3(3A、3B、3C)に供給する降圧後ラインの最後段に瞬断保護用コンデンサ24を設けている。
【0027】
一方、前記信号回路13には、図2に示すように、CANインターフェース回路14を設け、車内LAN通信を行うCANバスと接続した通信線W3を前記CANインターフェース回路14に接続している。図示しないが、CANインターフェース回路14にはコイルおよびトランシーバを実装している。
【0028】
また、信号回路13には、CANインターフェース回路14と接続すると共に、前記のように、電源回路6のアクセサリ電源用リレー9およびイグニッション電源用リレー10(10a、10b)と接続するASIC15を設けている。ASIC15は、CAN調停を行うとともに、イグニッション電源やアクセサリ電源のON/OFF状態を示す車両電源状態信号を通信線W3を介して受信、解読し、電源状態に応じてアクセサリ電源用リレー9およびイグニッション電源用リレー10(10a、10b)の制御を行っている。
なお、本発明では制御部としてASIC15を設けているが、ASICの代わりにCPUを設けてもよい。
【0029】
5V電源、12V常時電源(+B)、12Vイグニッション電源(IG1、IG2)、12Vアクセサリ電源(ACC)は、接続バス5を構成する電源供給ライン5aを介して、ECU基板3(3A、3B、3C)に供給される。また、共通回路基板4の信号回路13が通信線W3を介して送受信する情報は、接続バス5を構成する信号ライン5bを介してECU基板3(3B、3C)のCANコントローラ16(16B、16C)に入出力される。なお、本実施形態ではCAN接続されるECU基板が3B、3Cの2枚の場合を示しているが、CAN接続されるECU基板の枚数はECU基板の種類に応じて適宜設定される。
【0030】
前記のように、共通回路基板4に電源回路6と信号回路13を設け、電源回路6の入力保護回路7にバッテリと接続した1系統の電源線W1とグランド線W2のみを接続する一方、信号回路13においてイグニッション電源やアクセサリ電源のON/OFF状態を示す車両電源状態信号を通信線W3を介して受信し、制御部であるASIC15が前記車両電源状態信号に応じて継電部であるアクセサリ電源用リレー9およびイグニッション電源用リレー10(10a、10b)を制御する構成としている。よって、入力保護回路7にイグニッション電源やアクセサリ電源を供給する電源線を接続しなくても、イグニッション電源(IG1、IG2)やアクセサリ電源(ACC)を前記共通回路基板4からECU基板3(3A、3B、3C)に必要なタイミングで供給することができ、共通回路基板4における電源回路6の機能を保ちつつ、入力保護回路7に接続される電線数を低減して配線を簡素化することができると共に、入力保護回路7の小型化を図ることができる。
【0031】
また、前記のように、降圧回路8に電流制限回路12を接続することによって、各ECU3(3A、3B、3C)から共通回路基板4へ降圧回路8を共通化させ、さらには各ECU基板3(3A、3B、3C)への過電流を防止し、5Vの電源を各ECU基板3(3A、3B、3C)に供給する降圧後ラインにおける電圧降下を効果的に防止することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 ECU集中収容箱
2 ボックス
3(3A、3B、3C) ECU基板
4 共通回路基板
5 接続バス
6 電源回路
7 入力保護回路
8 降圧回路
9 アクセサリ電源用リレー
10(10a、10b) イグニッション電源用リレー
11 ヒューズ
12 電流制限回路
13 信号回路
14 CANインターフェース回路
15 ASIC
16 CANコントローラ
W1 電源線
W2 グランド線
W3 通信線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つのボックス内に、複数のECU基板と共通回路基板とを収容し、
前記共通回路基板に電源回路と信号回路とを設け、
前記電源回路に1系統の電源線とグランド線が、前記信号回路に通信線が夫々接続されており、
前記信号回路で車両電源状態信号を前記通信線を介して受信し、該車両電源状態信号に応じて前記電源回路に設けた継電部を制御して、所要のタイミングで各ECU基板に電源を供給し、かつ、
前記電源回路に電流制限回路を設けていることを特徴とするECU集中収容箱。
【請求項2】
前記共通回路基板の電源回路に、前記電源線および前記グランド線と接続する入力保護回路と、該入力保護回路と接続する降圧回路を設け、前記継電部を前記入力保護回路および前記信号回路の制御部と接続すると共に、前記電流制限回路を前記降圧回路と接続している請求項1に記載のECU集中収容箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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