説明

EMIノイズ対策用フェライトコアおよびその製造方法

【目的】小形化、薄形化に対応するEMIノイズ対策用フェライトコアおよびその製造方法を提供する。
【構成】断面が略U字状のフェライト基板の両側端の凸部に、平板状のフェライト基板を接合材で接合し、中央にフラットケーブルを挿入するための挿入孔を設けたことを特徴とするものである。また、平面研磨した第一のフェライト基板の表面に複数の溝と凸部を形成し、前記第一のフェライト基板の凸部に平面研磨した第二のフェライト基板を接合することにより、フラットケーブルを挿入するための挿入孔を複数条設け、少なくとも前記第一のフェライト基板の凸部の中心部で切断し製造したことを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電子機器の内部で発生したノイズや、外部で発生し電線を通して電子機器へ流れ込むノイズを除去するEMIノイズ対策用フェライトコア、およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来のEMIノイズ対策用フェライトコア1は、図5に示すように、角柱状のフェライトコア1に挿入孔2を設けた角筒形状のもので、プレス成形や押し出し成形により一体成形される。そして、図6に示すように、挿入孔2にフラットケーブル3を通し、フラットケーブル3を通して流れるノイズを除去する働きをする。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】近年の電子機器の軽薄短小化にともない、EMIノイズ対策用のフェライトコアにも小形化、薄形化が要求されている。しかし、上記従来例のフェライトコア1において小形化、薄形化を実現しようとすると、プレス成形や押し出し成形等の一体成形方式を用いているため、外形の肉厚が薄くなると成形後にそりが発生するとともに、押し出し成形では成形体の密度が下がり強度が低下する。また、薄形のフラットケーブルに対応するために、挿入孔2の高さhを薄くすると、プレス成形では金型の強度が低下するという問題があった。
【0004】本発明は、小形化、薄形化に対応するEMIノイズ対策用フェライトコアおよびその製造方法を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明に於いては、断面が略U字状のフェライト基板の両側端の凸部に、平板状のフェライト基板を接合材で接合し、中央にフラットケーブルを挿入するための挿入孔を設けたことを特徴とするものである。また、平面研磨した第一のフェライト基板の表面に複数の溝と凸部を形成し、前記第一のフェライト基板の凸部に平面研磨した第二のフェライト基板を接合することにより、フラットケーブルを挿入するための挿入孔を複数条設け、少なくとも前記第一のフェライト基板の凸部の中心部で切断し製造したことを特徴とするものである。
【0006】
【作用】上記の構成によれば、フェライト基板は焼成後に平面研磨や溝加工を行うため、焼成時のフェライト基板の板厚は厚めで行うことになり、その結果、フェライト基板の密度の低下が起こらない。また、予め平面研磨したフェライト基板どうしを接合しているため、フェライトコアの平面性が得られる。
【0007】
【実施例】以下、本発明によるEMIノイズ対策用フェライトコアおよびその製造方法の一実施例を図面を用いて説明する。本発明によるEMIノイズ対策用フェライトコア11は、図1に示すように、断面が略U字状のフェライト基板14の両側端の凸部16に対し、接合材7により平板状のフェライト基板18を接合し、中央にフラットケーブルを挿入するための貫通した挿入孔9を設けた角筒状の構造を有している。
【0008】EMIノイズ対策用フェライトコア11の製造方法は、図2に示すように、フェライト原料としてMn−Zn系フェライトやNi−Zn−Cu系フェライト等を用い、例えば、Mn−Zn系フェライトではFe2 3 を52mol%,MnOを26mol%,ZnOを22mol%の割合で組成配合し、また、Ni−Zn−Cu系フェライトではFe2 3 を49mol%,NiOを13mol%,ZnOを32mol%,CuOを6mol%の割合で組成配合したものを800〜900℃で仮焼した後、ボールミル等で粉砕しバインダーを混合してスラリー状にする。
【0009】そして、スラリーをドクターブレード法でシート状に成形するか、あるいは、スプレードライヤーで造粒しプレス成形でシート状に成形し、所定の温度(例えばNi−Zn−Cu系フェライトでは1000〜1200℃)で焼成した後、そりを修正するために上下面を平面研磨して平板状の第一のフェライト基板4を得る。その後、図3に示すように、フェライト基板4にフラットケーブルを挿入するための複数の溝5と凸部6を研磨にて形成しフェライト基板4aを得る。一方、第一のフェライト基板4と同様にしてフェライト原料をシート状に成形し焼成した後、そりを修正するために上下面を平面研磨して平板状に形成した薄板状の第二のフェライト基板8を得る。
【0010】そして、フェライト基板4aの凸部6にエポキシ系樹脂接着剤等の接合材7を塗布し、図4に示すように、第二のフェライト基板8を、フェライト基板4aの溝5を覆うようにして凸部6に重ね合わせ接合材7で接合する。このように、フェライト基板4a、8は、焼成後平面研磨や溝加工を行うため、焼成時は厚めの肉厚で行うことになり、その結果、フェライト基板4a、8の密度は、従来のプレス成形や押し出し成形で薄板状に成形したものよりも高いものが得られる。
【0011】その後、フェライト基板4aの凸部6の中心を通る位置および任意の幅寸法(同図の破線位置)で切断し、図1に示したフェライトコア11を得る。フェライトコア11の具体的なサイズは、外形の幅Wは25mm、長さLは20mm、高さHは3mmで、フラットケーブル挿入孔の幅wは20mm、高さhは0.5mmのものが用いられる。
【0012】
【発明の効果】以上説明したように、本発明にかかるEMIノイズ対策用フェライトコアおよびその製造方法によれば、フェライト基板を厚めの肉厚で焼成することにより密度の低下が防止できるため、フェライト基板の強度が低下しない。また、予め平面研磨されたフェライト基板どうしを接合しているため、薄形のフェライトコアでもソリが発生せず常に平面性が得られ、薄形で信頼性の高いフェライトコアが実現できる。さらに、フラットケーブルを挿入する挿入孔の形成を、金型を使用せず研磨で所定の形状に後加工するため、狭い挿入孔でも金型の強度低下という問題がなく、しかも精度よく加工できるとともに、外形やフラットケーブルの挿入孔等の形状が任意に加工でき、幅広い仕様に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例におけるフェライト基板の斜視図である。
【図2】本発明の実施例における溝加工後のフェライト基板の斜視図である。
【図3】本発明の実施例における切断前のフェライトコアの斜視図である。
【図4】本発明の実施例における切断後のフェライトコアの斜視図である。
【図5】従来例のフェライトコアの斜視図である。
【図6】従来例のフェライトコアの使用状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
4、4a、8、14、18 フェライト基板
5 溝
6、16 凸部
7 接合材
9 挿入孔
11 EMIノイズ対策用フェライトコア

【特許請求の範囲】
【請求項1】断面が略U字状のフェライト基板の両側端の凸部に、平板状のフェライト基板を接合材で接合し、中央にフラットケーブルを挿入するための挿入孔を設けたことを特徴とするEMIノイズ対策用フェライトコア。
【請求項2】平面研磨した第一のフェライト基板の表面に複数の溝と凸部を形成し、前記第一のフェライト基板の凸部に平面研磨した第二のフェライト基板を接合することにより、フラットケーブルを挿入するための挿入孔を複数条設け、少なくとも前記第一のフェライト基板の凸部の中心部で切断したことを特徴とするEMIノイズ対策用フェライトコアの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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