説明

ETC車載装置

【課題】自動料金収受システムにおいて車載装置がICカードの認証エラー検出した場合に、再度認証を行うリトライ処理の実行回数を自車両の走行状態に基づいて変更することができる機能を有する車載装置を提供すること。
【解決手段】車載装置において車載装置に挿入されたICカードの認証エラーを検出するICカード認証エラー検出手段と、自車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、前記走行状態検出手段により検出した自車両の走行状態に基づいて、前記ICカード認証エラー検出手段により検出したICカードの認証エラーに対して、再度認証を行うリトライ処理の実行回数を変更するリトライ処理回数変更手段と、前記リトライ処理回数変更手段により定められたリトライ処理の実行回数を超過した場合に報知を行う報知手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動料金収受システム(以下、ETC(登録商標)とも記載する)においてETC車載装置がICカードの認証エラー検出した場合に、再度認証を行うリトライ処理の実行回数を自車両の走行状態に基づいて変更することができるETC車載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動料金収受システムを利用するため車両に設置されるETC車載装置は、ICカードが挿入されると認証処理を開始するが、ETC車載装置とICカードとの電気的接続に接触不良が発生した場合、ICカードを認証することができない場合がある。
【0003】
上記原因に対しては、ETC車載装置がICカードに対して再度認証を行うリトライ処理を実行することにより、正常にICカードを認証することができる場合が多い。そのため、例えば特許文献1において、ETC車載装置はICカードに対して複数回のリトライ処理を行うことによりICカードの認証率を向上させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4319977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載の従来技術では、リトライ処理の実行回数に予め設定された固定値を用いているため、リトライ処理の実行回数を増やせばICカードの認証率を向上させることができる。しかし、認証エラーの原因がETC車載装置とICカードとの電気的接続の接触不良以外である場合、リトライ処理の実行回数が終了するまでETC車載装置は異常検出を行うことができない。
【0006】
そのため、自動料金収受システムの料金所近辺においてICカードをETC車載装置に挿入した場合、料金所に到達するまでにリトライ処理の実行回数が終了せず異常検出の報知を行うことができないという問題がある。一方、ETC車載装置のリトライ処理の実行回数を少なくした場合、ICカードの認証率が低下するという問題がある。
【0007】
そこで、本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、ETC車載装置がICカードを認証することができない場合、自車両の走行状態に基づいてリトライ処理の実行回数を変更する機能を有するETC車載装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、自動料金収受システムにおいて車両に搭載する車載装置がICカードの認証エラーを検出した場合に、再度認証を行うリトライ処理を実行する車載装置であって、
車載装置に挿入されたICカードの認証エラーを検出するICカード認証エラー検出手段と、自車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、前記走行状態検出手段により検出した自車両の走行状態に基づいて、前記ICカード認証エラー検出手段により検出したICカードの認証エラーに対して、再度認証を行うリトライ処理の実行回数を変更するリトライ処理回数変更手段と、前記リトライ処理回数変更手段により定められたリトライ処理の実行回数を超過した場合に報知を行う報知手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、自車両の走行状態に基づいてICカードの認証エラーに対するリトライ処理の実行回数を変更することができる。その結果、早期に異常検出を行う必要がある場合には、リトライ処理の実行回数を減らすことにより直ちに異常検出の報知を行うことができる。また、早期に異常検出の報知が必要でない場合には、リトライ処理の実行回数を増やすことによりICカードの認証率を向上させることができる。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車載装置であって、前記リトライ処理回数変更手段は、自車両が走行している場合、ICカードの認証エラーに対するリトライ処理の実行回数を少なくすることを特徴とする。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の車載装置であって、前記リトライ処理回数変更手段は、自車両の走行速度が速くなるほど、ICカードの認証エラーに対するリトライ処理の実行回数を少なくすることを特徴とする。
【0012】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1ないし請求項3に記載の車載装置であって、前記リトライ処理回数変更手段は、前記自車両の走行状態に加えて自車両の現在位置に基づいて、リトライ処理の実行回数を変更することを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載に発明によれば、自車両の現在位置に応じてリトライ処理の実行回数を変更することができる。その結果、例えば自車両の現在位置の近辺に料金所が存在しており早期に異常検出を行う必要がある場合には、リトライ処理の実行回数を減らすことにより直ちに異常検出の報知を行うことができる。また、自車両の現在位置の近辺に料金所が存在しない場合、早期に異常検出の報知を行う必要がないため、リトライ処理の実行回数を増やすことによりICカードの認証率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明におけるETC車載装置の構成図である。
【図2】本発明におけるETC車載装置のデータ処理部の構成図である。
【図3】本発明における自車両の走行状態に基づいてリトライ処理の実行回数を変更するテーブル表の概要を示す図である。
【図4】本発明における実施形態のフローチャートを示す図である。
【図5】本発明において自車両の走行状態に加えて自車両の現在位置に基づいてリトライ処理の実行回数を変更するテーブル表の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施例について図面を用いて説明する。
【0016】
(実施例)
図1は、本発明の実施形態を実現するETC車載装置10の構成図である。車載用通信装置としてETC車載装置10は、ETCシステムにおいて料金所に設けられる路側機11のアンテナ13aと無線部12に設けられているアンテナ13bとの間で無線通信を行うものであり、ICカード14が挿入できるように構成されている。
【0017】
ETC車載装置10全体のデータ処理を行うデータ処理部15はマイコンやROM、RAMなどを含んで構成されている。本発明では図2に示すように、ICカードの認証エラーを検出するICカード認証エラー検出手段15aと、自車両の走行状態を検出する走行状態検出手段15bと、ICカード認証エラー検出手段15aがICカードの認証エラーを検出した場合に、走行状態検出手段15bにより検出した自車両の走行状態に基づいて再度認証を行うリトライ処理の実行回数を変更するリトライ処理回数変更手段15cとを備える。
【0018】
データ処理部15には、外部接続部16、記憶部17、音声発生部18、入力操作部19、ICカード制御部20、ICカードコネクタ21などが接続されている。
【0019】
外部接続部16は、車両LANを通じてカーナビゲーション装置や自車両のエンジンEUC等と接続し、データの授受を行うことができる構成となっている。記憶部17は、フラッシュメモリに代表される不揮発性の記憶手段であり、図3に示すような自車両の走行状態に対応するリトライ処理の実行回数をテーブル表により記憶している。なお、自車両の走行速度が速くなるほどリトライ処理の実行回数が少なく変更されるのが特徴である。音声発生部18は、報知手段として機能するもので、例えばリトライ処理の実行回数がリトライ処理回数変更手段15cにより定められたリトライ処理の実行回数を超過した場合、異常検出等の警告を音声により発するものである。入力操作部19は、操作ボタンにより各種設定作業を行ったりするための操作入力を受け付けるものである。ICカード制御部20はICカードコネクタ21に挿入されるICカード14を認識し、データの授受を行う。ICカードコネクタ21は、ICカード14に設けられた電極部と電気的に接触する電極部を備えたコネクタである。
【0020】
次に、ETC車載装置10が行う実施形態の動作について、図4のフローチャートを用いて説明する。なお、本処理は、ETC車載装置10にICカードが挿入されることにより開始される。
【0021】
最初に、ICカード認証エラー検出手段15aは、ETC車載装置に挿入されたICカード14が正常に認証されたか否か判定を行う。具体的には、ICカード14が車載装置10のICカードコネクタ21に挿入されると、データ処理部15は、ICカード制御部20を介してICカード14の活性化処理を開始する。活性化処理ではデータ処理部15は、ICカード14に対して電源供給およびクロック供給を行うと共に、リセットを解除することにより活性化する。続いて、データ処理部15は、挿入されたICカード14の種類を判別しETCカードであることを認識すると、ICカード14との相互認証処理を行う。相互認証処理において、ICカード14と車載装置10とが互いに相手から送られる認証データの正当性を確認した場合、ICカード14は車載装置10に認証されたと判断される。認証エラーが検出された場合はステップ420に進み、認証エラーが検出されない場合は処理を終了する(ステップ410)。
【0022】
次に、走行状態検出手段15bは、自車両の走行状態を検出する。具体的には、外部接続部16に接続されている車両LANを通じて取得する車速パルスから自車両の速度を検出することができる。また、イグニッションスイッチのオフ状態が取得された場合、自車両が停止していると判断することができる(ステップ420)。
【0023】
次に、リトライ処理回数変更手段15cは認証処理のリトライ処理の実行回数を定める。具体的には、走行状態検出手段15bにより検出した自車両の走行状態に基づいて、記憶部17に記憶されている図3に示すテーブル表により再度認証を行うリトライ処理の実行回数が決定される(ステップ430)。
【0024】
次に、データ処理部15はICカード14に対するリトライ処理の実行回数が先に定めたリトライ処理の実行回数を超過したか否か判定を行う(ステップ440)。リトライ処理の実行回数を超過している場合はステップ451に進み、音声発生部18によりICカード14の認証エラー警告が行われ、一連の処理を終了する(ステップ451)。リトライ処理の実行回数を超過していない場合はステップ452に進む。
【0025】
次に、データ処理部15はICカードを認証するためのリトライ処理を行う。具体的には、ステップ410で説明した認証処理が行われる。リトライ処理によりICカードを認証することができない場合、ステップ440に戻り処理を繰り返す。リトライ処理によりICカードを認証することができた場合、一連の処理を終了する(ステップ452)。
【0026】
以上説明したように、本実施例によれば自車両の走行状態に基づいて、ICカードの認証エラーに対するリトライ処理の実行回数を変更することができる。その結果、自車両が高速又は通常速度で走行している場合、認証エラーに対するリトライ処理の実行回数を少なくすることにより、早期にETC車載器の異常を検出し警告を発することができる。また、自車両が停止又は低速で走行している場合、認証エラーに対するリトライ処理の実行回数を多くすることにより、ICカードの認証率を向上させることができる。
【0027】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明は上記実施例に限定されることはなく、本発明の技術的範囲に存在する限り、様々な形態を採りうる。
【0028】
例えば、上記実施例において、リトライ処理回数変更手段15cは図5に示すような自車両の現在位置情報を含んだテーブル表によりリトライ処理の実行回数を定めてもよい。具体的に、自動料金収受システムを採用している駐車場内においては自車両の現在位置から料金所までの距離は短い。そのため、自車両が駐車場内を移動している場合はどのような走行速度であってもリトライ処理の実行回数を少なく設定することにより、早期にETC車載器の異常を検出し警告を発することができる。
【0029】
更に、走行状態検出手段15bは、メータECU等から直接的に速度情報を検出したり、エンジン回転数およびエンジン回転数の継続時間から自車両の速度を検出してもよい。また、パーキングブレーキの動作状態やドアの開閉状態により自車両が停止していることを判断してもよい。
【符号の説明】
【0030】
15a ICカード認証エラー検出手段
15b 走行状態検出手段
15c リトライ処理回数変更手段
17 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動料金収受システムにおいて車両に搭載する車載装置がICカードの認証エラーを検出した場合に、再度認証を行うリトライ処理を実行する車載装置であって、
車載装置に挿入されたICカードの認証エラーを検出するICカード認証エラー検出手段と、
自車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、
前記走行状態検出手段により検出した自車両の走行状態に基づいて、前記ICカード認証エラー検出手段により検出したICカードの認証エラーに対して、再度認証を行うリトライ処理の実行回数を変更するリトライ処理回数変更手段と、
前記リトライ処理回数変更手段により定められたリトライ処理の実行回数を超過した場合に報知を行う報知手段と、
を備えることを特徴とする車載装置。
【請求項2】
請求項1記載の車載装置であって、
前記リトライ処理回数変更手段は、自車両が走行している場合、ICカードの認証エラーに対するリトライ処理の実行回数を少なくすること、
を特徴とする車載装置。
【請求項3】
請求項2記載の車載装置であって、
前記リトライ処理回数変更手段は、自車両の走行速度が速くなるほど、ICカードの認証エラーに対するリトライ処理の実行回数を少なくすること、
を特徴とする車載装置。
【請求項4】
請求項1乃至3記載の車載装置であって、
前記リトライ処理回数変更手段は、前記自車両の走行状態に加えて自車両の現在位置に基づいて、リトライ処理の実行回数を変更すること、
を特徴とする車載装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−118691(P2011−118691A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−275802(P2009−275802)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】