説明

EndoGalC−hDAFダブルトランスジェニックブタ

【課題】臓器移植手術の練習・訓練に適した超急性拒絶反応及び急性拒絶反応が抑制されたブタ臓器や、末期臓器不全患者に対する移植が期待できるブタ臓器を提供すること。
【解決手段】採取したブタの卵子から除核し、該除核された卵子にEndoGalC遺伝子を導入したブタ胎児線維芽細胞に核を注入することで得られたEndoGalCトランスジェニッククローンブタと、採取したブタの卵子から除核し、該除核された卵子に、hDAF遺伝子を導入したブタ胎児線維芽細胞に核を注入することで得られたhDAFトランスジェニッククローンブタとを、交配して、EndoGalC及びhDAFを共発現するダブルトランスジェニックブタを作出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EndoGalC及びhDAFを共発現するダブルトランスジェニックブタや、該ダブルトランスジェニックブタ由来の臓器や、該臓器を用いた移植方法や、前記臓器が移植された哺乳動物や、該哺乳動物を利用した免疫抑制剤のスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
哺乳類の体細胞からのクローン動物の作出は困難と考えられていたが、1996年にCampbellらのグループは羊の胚由来の培養細胞(継代6〜13代)を血清飢餓状態にして細胞周期をG0期とし、この細胞の核を移植することにより産仔の獲得に成功し、ほぼ無限に増やせる培養細胞でもクローン個体を作出することができることを示した(非特許文献1参照)。1997年、Wilmutらは同様な手法を用いて、培養した乳腺細胞及び胎児線維芽細胞を血清飢餓状態にし、一例ではあるがクローン羊ドーリーの作出を報告した(非特許文献2参照)。クローン羊ドーリーの作出法は、除核した羊の卵母細胞と雌羊由来の細胞を電気的に融合することにより核移植するものであるが、かかる細胞融合による核移植では、ドナー細胞の核だけでなく、その細胞質までも卵子に導入されることが避けられないといわれている。その他、細胞融合による核移植に関しては、乳より分離した乳腺由来の細胞をG0期に同調した後、電気的融合効率を高めるため30〜120分間トリプシン処理を行い、かかる細胞を用いて核移植するクローン牛の作出方法が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
また、体細胞核を除核卵母細胞に直接注入するクローン動物の作出については、若山らがクローンマウスの作出方法について報告している(非特許文献3参照)。このクローンマウスの作出方法は、未受精卵の透明帯に穴を開けてピペットを差し込み、分裂中期の染色体を除去した除核卵母細胞に、過排卵を誘発したマウスから採取した卵丘細胞、セルトリ細胞、神経細胞由来の核を細胞膜を破って直接注入(インジェクション)し、ストロンチウムで活性化処理した後、サイトカラシンBで極体の放出を抑制しながら偽前核を形成させ、この胚を培養した後、偽妊娠雌マウスの子宮に移植する方法である。
【0004】
ブタの心臓や膵臓等の臓器はその大きさからしてヒトの臓器と交換可能性がきわめて高く、クローンブタの作出は異種移植の問題を解決する手段として、また、良質な食肉生産の点からも期待されていたが、少なくとも4匹の受精卵が子宮に存しないと妊娠に失敗することから、活力ある数個の胚を用いる必要があること、ブタ胚は極めて脆く核移植など取扱中に壊れやすいことなど、クローンブタ作出上の特有の問題があり、多くの研究者がチャレンジしたがうまくいかなかった。しかし最近、スコットランドのPPL Therapeutics社のAlan Colmanらは成体細胞からの細胞融合による核移植でクローンブタを作出していたことを報告(非特許文献4参照)し、また本発明者らによっても体細胞核直接導入法によるクローンブタの作出についての報告(非特許文献5参照)がなされている。
【0005】
他方、ブタからヒトへの異種移植における超急性拒絶反応を司る主要異種抗原はブタの血管内皮細胞表面に存在するαGal抗原であり、ヒトにはαGalが存在しないのでαGal抗原に対し強い自然抗体が生じる。そのため異種移植用ブタの開発ではαGal抗原の発現抑制が重要な鍵となっている。EndoGalC(Endo-β-galactosidase C)はガス壊疽菌の培養上清中に分泌される酵素で、生理的条件下でαGal抗原のGalβ1−4GlcNAc結合を切断してGalα1−3Galの二糖を解離する(非特許文献6参照)。EndoGalC遺伝子のクローニングによりEndoGalC酵素の組換え体を得ることができ、インビトロ、エックスビボでブタのαGalを完全に除去することに成功している(非特許文献7参照)。しかしながら、一度消失させたαGal抗原は48時間以内に再生され細胞表面に現れることが報告されている(非特許文献8参照)。
【0006】
超急性拒絶反応を司る主要異種抗原αGalを切断する酵素EndoGalCではαGal抗原を完全に除去することはできず、完全に除去するためにはα1,3GT(α1,3-galactosyltransferase)のノックアウトが必要である。しかし、最近α1,3GT以外の酵素でαGalを生成する酵素がラットで確認されており(非特許文献9参照)、αGal抗原以外の異種抗原の存在が示唆されている。
【0007】
また、本発明者らは、EndoGalCトランスジェニッククローンブタ(非特許文献11参照)と、hDAFトランスジェニッククローンブタ(非特許文献10、11参照)について報告している。
【0008】
【特許文献1】特開平11−341935号公報
【非特許文献1】Nature,380,64-66,1996
【非特許文献2】Nature,385,810-813,1997
【非特許文献3】Nature,394,369-374,1998
【非特許文献4】Nature,407,505-509,2000
【非特許文献5】Science,289,1118-1119,2000
【非特許文献6】THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY. Vol.262. p.10086-92
【非特許文献7】THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY. Vol.275, p.19368-74. 2000
【非特許文献8】Transplantation. Vol.60, p.841-7
【非特許文献9】Glycobiology(2003) vol.13 no.5 pp.327-337
【非特許文献10】第27回日本分子生物学会年会一般演題〔口演〕抄録3PB-502
【非特許文献11】41th The Japan Society for Transplantation 一般演題〔口演〕抄録079
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、臓器移植手術の練習・訓練に適した超急性拒絶反応及び急性拒絶反応が抑制されたブタ臓器や、末期臓器不全患者に対する移植が期待できるブタ臓器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、クローンブタ作出技術を既に開発している。そこで、クローンブタ作出技術を利用して、ヒトに移植することが可能なブタ臓器を提供することができるブタの作出について検討した。ブタ臓器をヒトに移植する、ヒトとブタのような異種移植においては、超急性の拒絶反応が問題となる。超急性の拒絶反応は移植直後から発生し、24時間以内に拒絶される激しい拒絶反応である。この拒絶反応には、抗体と補体が関わっており、異種動物組織に対する抗体を除去するか、補体活性化経路を失活させることが解決の手段として考えられた。例えば、αGal抗原を分解することができるEndoGalCのトランスジェニッククローンブタや、補体活性化経路のC3転換酵素の解離失活を促進することにより補体活性化を抑制する補体制御因子の一つであるDAF(decay accelerating factor,CD55)のトランスジェニッククローンブタの作出が異種移植用ブタとしてより有用であると考えた。
【0011】
ブタからヒトへの異種移植における超急性拒絶反応を司る主要異種抗原はブタの血管内皮細胞表面に存在するαGal抗原であることから、このαGal抗原を移植後も継続的に分解できるように、FACS(fluorescence-activated cell sorter)のソーティング技術を用いて、αGalを100%近く除去したブタ胎児線維芽細胞を選抜し、その細胞よりブタの細胞内においてEndoGalCを高発現させることができるEndoGalCトランスジェニッククローンブタを作出した。EndoGalCを導入したクローンブタ由来の細胞は、抗体接着を70〜80%減少させることは可能であるが、細胞傷害はほとんど抑制しないことを見い出した。
【0012】
また、同様にFACSのソーティング技術を用いhDAFを高発現するトランスジェニッククローンブタの作出を試みた。その際、hDAF発現ベクターと共にα1,3GTアンチセンスベクターを導入することによりαGalのノックダウン(抑制)も試みた。hDAF高発現細胞では、抗体接着はコントロール細胞に比べ変化は見られなかったが、細胞傷害はネガティブコントロールと同じレベルまで抑制されていたことを見い出した。
【0013】
次いで、作出したEndoGalCクローンブタとhDAFクローンブタを交配することにより、EndoGalC及びhDAFを共発現するダブルトランスジェニックブタを作出し、このダブルトランスジェニックブタの腎臓をドグエラヒヒに移植したところ、超急性拒絶反応や急性拒絶反応が抑制され、少なくとも15日間生存することを確認し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち本発明は、(1)EndoGalC遺伝子及びhDAF遺伝子からなる導入遺伝子を共発現することを特徴とするダブルトランスジェニックブタ又はその子孫や、(2)採取したブタの卵子から除核し、該除核された卵子にEndoGalC遺伝子を導入したブタ体細胞核を注入することで得られたEndoGalCトランスジェニッククローンブタと、採取したブタの卵子から除核し、該除核された卵子に、hDAF遺伝子を導入したブタ体細胞核を注入することで得られたhDAFトランスジェニッククローンブタとを、交配することにより得られる、EndoGalC及びhDAFを共発現することを特徴とするダブルトランスジェニックブタ又はその子孫や、(3)ブタ体細胞核として、ブタ胎児線維芽細胞を用いることを特徴とする前記(2)記載のダブルトランスジェニックブタ又はその子孫に関する。
【0015】
また本発明は、(4)前記(1)〜(3)のいずれか記載のダブルトランスジェニックブタ又はその子孫に由来し、EndoGalC及びhDAFを共発現することを特徴とするブタ臓器や、(5)腎臓であることを特徴とする前記(4)記載のブタ臓器に関する。
【0016】
さらに本発明は、(6)前記(4)又は(5)記載のブタ臓器を、非ヒト哺乳動物に移植し、被移植非ヒト哺乳動物における超急性拒絶反応又は急性拒絶反応が抑制されたことを特徴とする移植方法や、(7)前記(4)又は(5)記載のブタ臓器が移植され、超急性拒絶反応又は急性拒絶反応が抑制されたことを特徴とする被移植非ヒト哺乳動物や、(8)前記(4)又は(5)記載のブタ臓器を、非ヒト哺乳動物に移植する前後又は同時に、被検物質を前記非ヒト哺乳動物に投与し、被移植非ヒト哺乳動物における超急性拒絶反応又は急性拒絶反応の程度を、被検物質を投与しない場合と比較・評価することを特徴とする免疫抑制剤のスクリーニング方法に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、臓器移植手術の練習・訓練に適した超急性拒絶反応及び急性拒絶反応が抑制されたブタ臓器を提供することができる。また、適切な免疫抑制薬の投与により、移植直後から3ヶ月以内に起こる超急性拒絶反応及び急性拒絶反応を抑制しうる、末期臓器不全患者に対する移植が期待できるブタ臓器を提供することができる。さらに、本発明のブタ臓器を移植した非ヒト哺乳動物に被検物質を投与し、被移植非ヒト哺乳動物における超急性拒絶反応又は急性拒絶反応の程度を比較・評価することにより、新たな免疫抑制剤をスクリーニングすることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明のダブルトランスジェニックブタとしては、EndoGalC遺伝子及びhDAF遺伝子からなる導入遺伝子を共発現することを特徴とするダブルトランスジェニックブタや、採取したブタの卵子から除核し、該除核された卵子にEndoGalC遺伝子を導入したブタ体細胞核を注入することで得られたEndoGalCトランスジェニッククローンブタと、採取したブタの卵子から除核し、該除核された卵子に、hDAF遺伝子を導入したブタ体細胞核を注入することで得られたhDAFトランスジェニッククローンブタとを、交配することにより得られる、EndoGalC及びhDAFを共発現するブタであれば特に制限されず、本発明には、本発明のダブルトランスジェニックブタの子孫も含まれ、本発明のダブルトランスジェニックブタの子孫は、本発明のダブルトランスジェニックブタ同士の交配により作出することができる。
【0019】
上記EndoGalCトランスジェニッククローンブタやhDAFトランスジェニッククローンブタの作出に用いられる、ブタの卵子(レシピエント卵子)としては、ブタの成熟卵子であれば特に制限されるものではなく、PGF2α、PGF2α類縁体クロプロステロール、eCG等のホルモン投与による過排卵処理により得られる体内成熟卵子の他、屠場由来の卵巣から採取した卵子を体外成熟させたものも使用できるが、着床率の点からして体内成熟卵子、特に性成熟した雌ブタ、例えば生後160〜194日齢の春期発動前の雌ブタから採取した体内成熟卵子が好ましい。かかる体内成熟卵子は、過排卵処理により得られる雌ブタの子宮及び卵巣を、PBS溶液等を用いて卵管灌流を行うことにより採取することができるが、卵丘細胞が付着している卵子はヒアルロニダーゼ処理を行って、卵丘細胞を除去することが好ましい。
【0020】
上記ブタのレシピエント卵子からの除核は、細胞骨格形成阻害剤であるサイトカラシンB処理を施したブタの卵子から除核することが好ましく、より具体的にはサイトカラシンBを含有するPZM3液、NCSU23等の培地で体外成熟卵子等のレシピエント卵子を処理した後、除核操作用シャーレのサイトカラシン入りドロップに移してホールディングピペットで保定し、透明帯を迅速・的確に貫通することができる除核用ピペット(外径25〜30μm)を用いて、M(metaphase)II期の染色体を含む第一極体の付近を極体ごと吸引することにより行われる。なお、吸引した極体を調べることにより除核できていることを確認することが好ましく、また除核卵子からはサイトカラシンBを除去することが好ましい。
【0021】
本発明においてトランスジェニッククローンブタ作出に使用する体細胞核としては、EndoGalC遺伝子又はhDAF遺伝子を導入したブタ体細胞に由来する核であれば特に制限されるものではないが、胎児線維芽細胞核を好適に例示することができる。以下、体細胞核が胎児線維芽細胞核の場合を例にとって説明する。EndoGalC遺伝子又はhDAF遺伝子を導入したブタ胎児線維芽細胞核としては、EndoGalC又はhDAFを高発現するブタ胎児線維芽細胞から得られる核であれば特に制限されるものではなく、ブタ胎児線維芽細胞にEndoGalC遺伝子又はhDAF遺伝子を導入する方法も電気穿孔法など公知の遺伝子導入方法であれば特に制限されるものではない。上記線維芽細胞はトリプシン処理で細胞を分散させたものが好ましく、また、培養細胞が線維芽細胞であることを、サイトケラチンとSSEA−1との陰性反応、ビメンチンでの陽性反応、線維芽細胞の特異的プライマーによるPCR分析等により確認することが好ましい。また、レシピエントや仮親と毛色の異なる品種のブタを線維芽細胞のドナーとすることが、毛色からクローンブタであるかどうかを簡便に判定する上で好ましい。
【0022】
EndoGalCを高発現するブタ胎児線維芽細胞を選抜するには、線維芽細胞をαGalを認識するFITCで染色し、FACSによるEndoGalCの発現とαGalの切断を解析し、EndoGalCを高発現し、αGalが切断されていると思われる細胞集団をFACSのソーティングにより分離することがきわめて重要である。また、hDAFを高発現するブタ胎児線維芽細胞を選抜するには、線維芽細胞をαGalを認識するFITC、或いはFITC標識された抗hDAF抗体で染色し、FACSによるhDAFの発現とαGalの切断を解析し、hDAFを高発現し、αGalが切断されていると思われる細胞集団をFACSのソーティングにより分離することがきわめて重要である。
【0023】
また、核移植に用いるドナー線維芽細胞の細胞周期は特に制限されるものではないが、細胞周期G0/G01期に同調させた細胞が好ましい。細胞周期G0/G01期に同調させた細胞は、例えばコンフルエントな状態で培養液の交換なしに、線維芽細胞を16日間前後培養し続けることによって得ることができる。
【0024】
採取したブタの卵子から除核し、該除核された卵子にブタ胎児線維芽細胞核を注入する方法としては、EndoGalC又はhDAFを高発現するブタ胎児線維芽細胞の核を除核されたレシピエント卵母細胞に直接注入(インジェクション)する方法を特に好適に例示することができる。かかる核の直接注入には、例えば、プライムテック株式会社製のPMM三次元マイクロマニピュレーションシステムを用いることができる。特に、インジェクションピペットとしては、透明帯の貫通が迅速・精確かつ簡単にでき、細胞質膜へのダメージを最小にすることができるものが好ましく、かかるインジェクションピペットとしてはピエゾマイクロマニピュレーター(プライムテック株式会社製)に取り付けた体細胞注入用ピペット(外径7〜12μm)を具体的に例示することができる。
【0025】
上記のようにして得られた体細胞核が注入された卵子には、活性化処理を施すことが好ましい。かかる活性化処理としては、従来公知の核移植胚の活性化処理方法であれば特に制限されるものではないが、電気パルス活性化処理を好適に例示することができる。電気パルス活性化処理としては、電荷の大きい1回の電気パルス、例えば1.5kV/cm、100μsec、1回を印加する方がそれより小さい電荷の電気パルスを2回印加するよりも胚活性の点で好ましく、また、電気パルス活性化処理における培地としてはNCSU23(J.Reprod.Fertil.Suppl.,48,61,1993)を用いることが高い胚盤胞形成率の点で好ましい。また、電気パルスによる活性化処理の場合、体内成熟卵子の方が体外成熟卵子に比べて胚盤胞の発生能の点で好ましい。さらに、レシピエント細胞として体内成熟卵子を用いる場合には、過排卵処理のために使用した最初のhCG投与後、50〜60時間後、好ましくは54〜55時間後に活性化処理をすることが望ましい。
【0026】
卵細胞からの除核時及び該除核細胞への体細胞核の直接注入時の2回にわたって損傷を受けた核移植胚の胚盤胞への発生率を高め、クローンブタを効率よく作出するために、活性化処理後の核移植胚は、卵管又は子宮への移植前に、包埋剤により包埋処理を施すこともできる。かかる包埋剤による包埋処理は、複数回の包埋処理を行い、複数被膜で包埋した核移植胚とすることが好ましく、特に3重包埋処理を行い、3重被膜核移植胚とすることが好ましい。また、かかる複数回の包埋処理を行うに際しては、包埋剤の濃度を順次高めていく包埋処理、すなわち外層膜ほど高濃度の包埋剤を用いて包埋し、その物理的強度を内層から外層へと順次高めていくことが好ましい。
【0027】
包埋処理に用いられる包埋剤としては、核移植胚を包埋することにより、2回にわたって損傷を受けた核移植胚の桑実胚や胚盤胞への発生率を高め、クローンブタを効率よく作出することができるものであれば特に制限されるものではないが、損傷を受けた透明帯の修復・保護機能を有するものや、包埋処理後の核移植胚を卵管及び子宮に移植した後、生体内での分解機能を有するものや、卵管及び子宮の膜運動による損耗からの保護機能を有するものや、白血球の攻撃からの防御機能を有するものや、包埋皮膜を通しての栄養分の透過・排泄物の排出機能を有するものの他、包埋処理時に核移植胚に影響を与えることなく包埋処理することができるものや、顕微鏡下で包埋皮膜が確認しやすいものや、顕微鏡下で包埋胚の操作がし易くなるものなどが好ましい。かかる包埋剤としては、アルギン酸、寒天等の天然多糖類の他、ムコタンパク質、ポリアミノ酸などの蛋白質、生分解性有機高分子等を例示することができるが、上記包埋剤としての好ましい機能を備えたアルギン酸が特に好ましい。その他、包埋剤の使用濃度についても特に制限されるものではないが、上記包埋剤としての好ましい機能を十分発揮しうる濃度が好ましい。なお、複数回の包埋処理を行う場合、例えばアルギン酸と寒天等、包埋剤の種類を変えて包埋処理をすることもできる。
【0028】
例えば、アルギン酸を包埋剤として3重包埋処理する方法としては、アルギン酸ナトリウムを所定濃度(例えば0.5%、1.5%、2.0%)となるようにリンゲル液等に溶解し、あらかじめ滅菌しておき、この滅菌済みのアルギン酸ナトリウム溶液(例えば0.5%)に核移植胚を浸漬して十分馴染ませた後、塩化カルシウム液等のカルシウムイオン含有液と接触させ、アルギン酸ゲル包埋胚とした後、この包埋胚を前記アルギン酸ナトリウム溶液よりも高濃度のアルギン酸ナトリウム溶液(例えば1.5%)に浸漬して十分馴染ませた後、塩化カルシウム液等のカルシウムイオン含有液と接触させ、アルギン酸ゲル2重包埋胚とし、次いでこの2重包埋胚を上記アルギン酸ナトリウム溶液よりも高濃度のアルギン酸ナトリウム溶液(例えば2.0%)に浸漬して十分馴染ませた後、塩化カルシウム液等のカルシウムイオン含有液と接触させ、アルギン酸ゲル3重包埋核移植胚とする方法を具体的に示すことができる。
【0029】
活性化処理後に、必要に応じて包埋剤による包埋処理をした核移植胚を、卵管又は子宮に移植する雌ブタとしては特に制限されるものではないが、人工授精させた後の妊娠21〜40日目にプロスタグランジンF2α等を用いて人工流産させ、同期化を行った雌ブタを用いることが好ましい。また、核移植胚を雌ブタの卵管又は子宮に移植するに際し、複数個の受精卵を核移植胚に混合して雌ブタの卵管又は子宮に移植する追い移植法を用いることが好ましい。
【0030】
また産仔したブタが、EndoGalCトランスジェニッククローンブタやhDAFトランスジェニッククローンブタであることの確認は、産仔の毛色の他、トランスジェニッククローンブタ、トランスジェニッククローンブタの仮親の耳から採取したDNA並びにトランスジェニッククローンブタを作出するために用いた線維芽細胞のDNAを採取し、PCRを行い、トランスジェニッククローンブタが線維芽細胞と同一の遺伝子をもち、EndoGalC遺伝子やhDAF遺伝子をもち、α−Gal抗原の切断能をもつことを確認することにより同定することができる。
【0031】
次いで、上記EndoGalCトランスジェニッククローンブタとhDAFトランスジェニッククローンブタとの交配は、自然交配よりも人工授精によることが、確実に多くの産仔を得ることができる点で好ましい。誕生した仔ブタの略1/4の割合で、本発明のEndoGalC及びhDAFを共発現するダブルトランスジェニックブタが得られるが、EndoGalC遺伝子及びhDAF遺伝子の存在をPCRを利用して確認することが好ましい。
【0032】
本発明のブタ臓器としては、本発明のダブルトランスジェニックブタ又はその子孫に由来し、EndoGalC及びhDAFを共発現することができるブタ臓器であれば特に制限されず、かかるブタ臓器としては、腎臓、肝臓、心臓、膵臓、眼球(角膜)を好適に例示することができるが、中でも、腎臓を特に好適に例示することができる。
【0033】
本発明の移植方法としては、上記本発明のブタ臓器を、非ヒト哺乳動物に常法により移植する方法であれば特に制限されず、本発明の移植方法によると、被移植非ヒト哺乳動物における超急性拒絶反応又は急性拒絶反応を抑制することができる。上記非ヒト哺乳動物としては、ブタ、サル、ヒヒ等を好適に例示することができる。上記のように、本発明の移植方法によると、被移植非ヒト哺乳動物における超急性拒絶反応又は急性拒絶反応を抑制することができるので、本発明のブタ臓器を、同種のブタや異種のヒヒ等に移植することにより、臓器移植手術の練習・訓練を行うことができる。例えば、移植後に超急性拒絶反応が起きると、移植手術の適否を判断することができない。
【0034】
本発明はまた、本発明のブタ臓器が移植され、超急性拒絶反応又は急性拒絶反応が抑制された被移植非ヒト哺乳動物に関し、かかる被移植非ヒト哺乳動物は、免疫抑制剤のスクリーニングに有利に用いることができる。
【0035】
本発明の免疫抑制剤のスクリーニング方法としては、上記本発明のブタ臓器を、非ヒト哺乳動物に移植する前後又は同時に、被検物質を前記非ヒト哺乳動物に投与し、被移植非ヒト哺乳動物における超急性拒絶反応又は急性拒絶反応の程度を、被検物質を投与しない場合と比較・評価する方法であれば特に制限されず、上記超急性拒絶反応の程度とは、移植直後から移植後24時間以内におこる激しい拒絶反応の程度をいい、血管が縫合されて血流を再開した後、数分から数時間以内に、移植臓器の動脈に血栓が形成されるかどうかを比較・評価の基準とすることができる。また、上記急性拒絶反応の程度とは、移植後1週間から3ヶ月の間に起こる拒絶反応の程度をいい、生検により臓器が障害されるかどうかを比較・評価の基準とすることができる。
【0036】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0037】
[EndoGalCトランスジェニッククローンブタの作出]
1.胎児線維芽細胞の採取
梅山雌ブタ×梅山雄ブタによる交配後、妊娠44日目の雌から胎児を採取した。採取した胎児の頭部と内臓をハサミで除去し、残った胴体部分を細切りした。細切りした1gの胎児組織を、10mLの0.25%トリプシン−0.04%EDTA−2Na液に懸濁し、4℃にて一晩冷蔵した。胎児組織を含む縣濁液は、遠心分離処理(1500rpm、5分)により、その上清を除去した後、37℃に保温したウォーターバスにて20〜30分間処理した。保温処理後、胎児組織1g当たり、10mLのDMEM+10%FCSを加えてピペッティングし、セルストレーナーに流し込んで濾過した。濾過液は遠心分離処理され、その上清を除去した後、沈殿物を10mLのDMEM+10%FCSに再懸濁した。細胞数を計測し、適当量になるようDMEM+10%FCSにて調整した後、細胞培養用シャーレにまき、37℃にて、5%CO下で培養し、胎児線維芽細胞を分離した。
【0038】
2.EndoGalC発現細胞の作出
分離した胎児線維芽細胞は、植継ぎを行わずに遺伝子導入に用いた。0.25%トリプシン−0.04%EDTA−2Na液にて胎児線維芽細胞を剥離させ、DMEM+10%FCSに懸濁した。細胞懸濁液は遠心分離処理(1500rpm、5分)した後、その上清を除去し、冷HBSに再懸濁した。再懸濁液は、再度遠心分離処理を行って、その上清を除去し、細胞数が2.5×10cells/mLになるようにHBSにて調整した。キュベットに、細胞溶液0.4mL(1.0×10cells/mL)と、100μLの調整済みDNA液(ネオマイシン耐性遺伝子を繋げて新たに作製したEndoGalC発現ベクター、25nM、図1参照)とを入れた後、良く混和した。遺伝子導入は、電気穿孔法により行い、300V、950μF、抵抗∞の条件のパルスにて行った。パルス付加後、室温にて10分間静置した。静置した細胞は、DMEM+10%FCSにて培養した。パルス印加後2〜3日目に増殖してきた細胞に対して、ネオマイシン(G418)を500μg/mL添加して、5〜12日間薬剤選択を行った。薬剤選択後に生存していた細胞はコロニーピックアップせず、細胞集団として増殖させた。
【0039】
3.FACSによる解析及びソーティング
薬剤選択後、細胞数が十分に増殖したところで、細胞を0.25%トリプシン−0.04%EDTAで剥がし回収した。回収した細胞はPBSで2回洗浄し、細胞数を2×10/tubeになるように調整した。細胞は、αGalを認識するFITC-labelled Griffoniasimplicifolia isolectin IB4(GS-IB4)(FITC)と4℃で30分間染色し、PBSで洗浄した。解析を行う直前に死細胞を判定する為に200μg/mLのPIを10μL/tube添加した。解析対象である凝集した細胞を取り除くためにセルストレーナーキャップ付きのチューブに移した後、FACS(fluorescence-activated cell sorter)にて解析した。αGal発現レベルを計るのに平均蛍光強度(MFI)を用いた。またソーティングを行う場合は上記の過程をすべてクリーンベンチ内で行い出来るだけ4℃を保った。αGal抗原が切断されている細胞のみをFACSのソーティング技術を用いて分離し、細胞数に準じたディッシュ若しくはプレートにまき、培養を続けた。
【0040】
ネオマイシンによる選択後、FACSによりαGalの発現を調べたところ、図2(a)に示されるように2つのピークが現れた。EndoGalCを発現し、αGalが切断されていると思われる細胞集団(図2(a)M1領域)をFACSのソーティングにより分離したところ、図2(b)のような細胞集団(EndoGalC sorted)を得ることができた。
【0041】
4.ホルモン処理による採卵方法
ランドレース(L)、及びランドレース×大ヨークシャー(W)×デュロック(D)の三元交雑種(LWD)の生後160〜194日齢の春期発動前の雌ブタを用いた。供試ブタにeCG(ピーメックス、三共ライフテック株式会社製)を1500IU投与し、その72時間後にhCG(プペローゲン、三共ライフテック株式会社製)を500IU投与した。hCG投与48時間後に屠殺し、卵巣、卵管、及び子宮の結合組織を摘出した。また、性成熟に達した雌ブタからの採卵は、予め発情時に雄希釈精液を用いて人工授精を行い、妊娠21〜50日後に人工流産処置することにより行った。核移植予定5日前にPGF2α類縁体クロプロステロール約0.2mg(プラネート、武田社製:2mL量)を臀部筋肉内に投与した。その24時間後に、同様にPGF2α類縁体クロプロステロールを注射し、同時にeCGを臀部筋肉内に1500IU投与した。PGF2αとeCGとを投与してから72時間後にhCGを500IU投与した。hCG投与46時間後に屠殺し、卵巣、卵管、及び子宮の結合組織を摘出した。
【0042】
5.体内成熟卵子の準備
摘出した卵巣、卵管、及び子宮の結合組織を直ちに実験室に持ち帰り、灌流液(PBS:Ca2+、Mg2+不含(タカラバイオ株式会社製)+0.1%ウシ血清アルブミン:BSA(Sigma社製、Cat.No.A-4503)+100mL当たり1mL添加抗生物質:Antibiotic,Antimycotic,(Sigma社製A-7292))で卵管を灌流し、卵子を採取した。得られた卵子は0.1%ヒアルロニダーゼを含む、灌流液を用いて卵丘細胞を裸化し、卵細胞質の均一な卵子を選抜した後、ヒアルロニダーゼを含まない灌流液中で洗浄した。その後、PZM−3液を用いてインキュベーター(38.5℃、5%CO、5%O、90%N)内で供試するまで体外培養を行った。
【0043】
6.屠場卵巣由来卵胞卵子の採卵方法
屠場にて食肉用として屠殺された春期発動前の未経産雌ブタより卵巣を採取し、PBS(−)液にて35℃保温下で研究室に持ち帰った。持ち帰った卵巣は直ちに、37℃に保温したPBS(−)にて洗浄し、卵巣結合組織を除去した後、採卵作業を行った。直径2〜6mmの卵胞を選び、メスによりTCM199(Hanks’salts、Gibco社製)に10%FCS、20mMHEPES、100IU/mLペニシリン(Sigma社製)、及び0.1mg/mLストレプトマイシン(Sigma社製)を添加した培養液中で切開した。卵丘細胞が3層以上密に付着した卵丘細胞卵子複合体(COC)とCOCに壁側顆粒層細胞が付着した壁側顆粒層細胞−卵丘細胞卵子複合体(GCOC)を選別し、採卵をした。
【0044】
7.体外成熟培養
採取したCOC及びGCOCは、約30〜40個/穴で改変NCSU37を500μL分注した4穴ディッシュを用いて成熟培養した。改変NCSU−37は、10%ブタ卵胞液、0.6mMシステイン、50μMβメルカプトエタノール、1mMジブチリルcAMP、10IU/mLPMSG(ピーメックス;1000IU)、及び10IU/mLhCG(プペローゲン;1500IU)を添加して作製した。20〜22時間培養後、ホルモン及びジブチリルcAMP無添加改変NCSU37に移して供試時まで培養した。成熟培養は39℃、気相条件は、5%CO、5%O、90%Nの条件で実施した。成熟培養時間は42〜44時間で行い、成熟卵子(第一極体放出卵子)のみを試験に使用した。
【0045】
8.卵子核の除去操作(除核操作)
除核操作前に、体内成熟卵子や屠殺採卵した未受精卵子を、サイトカラシンB(Sigma社製Cat.No.C-6762)を5μg/mL含むPZM3液に移し、15分間以上処理した。除核操作も同濃度のサイトカラシンBが含まれるPZM3液で作製したドロップ内(10cmプラスチックシャーレの中心付近に50μLでドロップを作製し、ミネラルオイル20mLで被った)で行った。卵子は、第一極体が、12時から3時方向の位置になるようにホールディングピペットで保定した。ピエゾマイクロマニピュレーター(プライムテック社製)に取り付けた除核用ピペット(外径25−30μm、先端を30〜45度の角度で研磨)により、第一極体ごと細胞質を1/4〜1/3量程吸引した。除核用ピペットの操作性が悪くなった場合は、20%PVP液(Sigma社製Cat.No.PVP-360)ドロップにて、吸引と排出とを繰り返し、洗浄を行った。除核操作終了後、直ちにサイトカラシンBが含まれないPZM3液に移し、洗浄を行った。洗浄には、PZM3液が3mL入った35mmディッシュ(Falcon社製1008)で2回以上、丁寧に洗浄し、サイトカラシンBを除去した。その後、注入操作まで、PZM3液ドロップ(35mmディッシュ(Falcon社製3001)に100μLのドロップを作製し、4mLミネラルオイルで被った)に移し、インキュベーター内で培養した。
【0046】
9.ドナー組換え体細胞の準備
FACSのソーティングによりα−gal抗原を100%近く切断した梅山ブタ雌の胎児の線維芽細胞を核移植ドナー細胞として用いた。培養液にはDMEM+10%FCSを用い、植継ぎ回数は2〜12回の細胞を用いた。核移植予定日に合わせて、植継ぎを行った後、コンフルエント状態から培養液の交換を行わず、10〜16日間放置し(核移植予定日約16日前に植え継ぐ)、細胞周期をG1/G0期に同調した。核移植に用いる約1時間前にドナー体細胞の準備を行った。細胞処理は、培養容器の培養液を除去した後に、PBS(−)にて3回以上洗浄を行い、0.25%トリプシン+0.04%EDTA−2Na液にて細胞剥離処理を行った。剥離した細胞に10%FCS添加DMEMを加え、懸濁した後、遠心分離処理(1500rpm、5分、室温)を行った。遠心分離処理後、上清を除去し、PZM3液を適量加えて懸濁し、核移植に用いるまで室温で放置した。体細胞核注入操作時に、適当な細胞数を注入操作用チャンバーのドロップに添加して使用した。
【0047】
10.体細胞核の注入操作
注入用チャンバー(10cmシャーレにPZM3液50μLでドロップを作製し、ミネラルオイル20mLで被った)のドロップに適量のドナー細胞を添加し、除核済み卵子30〜50個を入れて操作した。注入操作には、ピエゾマイクロマニュピレーターに体細胞核注入用ピペット(外径7−10μm、鈍端)を用いた。注入用ピペットをピエゾマイクロマニュピレーターに取り付ける前に、ピペット後端より5mmの位置にフロリナートを3〜5mm幅になるように、充填して使用した。そのピペットをピエゾに取り付けて使用する時は、先端より培養液、フロリナート、空気、ミネラルオイルの順で満たされている状態にして操作した。注入操作を行う前に、必ず20%PVP液ドロップ内で注入用ピペットを洗浄(ピペッティングやPVPドロップへのピペット先端の出し入れ)した。浮遊している体細胞を吸引し、数回ピペッティングを行い、細胞膜を壊し、ホールディングピペットにて保定した除核済み卵子細胞質内へ注入した。体細胞核を注入した卵子は、活性化処理まで1〜3時間インキュベーターで培養を行った。
【0048】
11.卵子の活性化処理
体細胞核を注入した卵子の活性化処理は、直流パルス刺激(SSH-2,島津製作所)を、1.5kV/cm100μsec.×1回にて行った。チャンバーには2mm幅のステンレスワイヤー電極を用い、電気刺激用の電解質溶液には0.05mMCaCl、0.1mMMgSO、及び0.02%BSAを含む0.28Mマンニトール溶液を用いた。
【0049】
12.活性化卵子の第2極体放出抑制処理
活性化処理卵子や屠殺採卵した未受精卵子は、5μg/mLサイトカラシンB(Sigma社製Cat.No.C-6762)を含むPZM3液で2時間培養し、第2極体の放出を抑制させる処理を行った。
【0050】
13.活性化卵子の体外培養
活性化後サイトカラシンB液で2時間処理した卵子は、サイトカラシンBを含まないPZM3液にて複数回洗浄し、PZM3液にて体外培養を行い、活性化処理後2日目に分割した胚のみ胚移植に用いた。
【0051】
14.ホルモン処理による仮腹の同期化と胚移植方法
仮腹の同期化は妊娠ブタを人工流産処置することで行った。また、仮腹の発情は、採卵ブタのものより、1日遅れるように発情同期化処置を行った。供試予定の雌ブタは、発情時に、雄ブタ希釈精液を用いて人工授精を行い妊娠させた。妊娠後21〜50日目の妊娠ブタを用いた。核移植予定6日前にPGF2α類縁体クロプロステロール約0.2mgを臀部に注射した。その24時間後に、同様にPGF2α類縁体クロプロステロールを注射し、同時にeCGを1000IU投与した。PGF2αとeCGとを投与してから72時間後にhCGを500IU投与した。hCGを投与してから約68時間目に仮腹へケタラールを投与後、ハロセン麻酔下で外科的に胚移植手術を行った。胚移植はPPカテーテル(フジヒラ社製)を卵管へ挿入して行った。
【0052】
ソーティングにより得られたEndoGalC遺伝子導入細胞による核移植、胚移植の結果を表1に示す。表1に示すように、EndoGalC遺伝子導入細胞を用いて、核移植試験6回行い、分割胚1144個を7頭の仮腹へ移植した結果、2頭が妊娠し、内1頭は流産したが(2頭の流産胎児)、残り1頭は1頭分娩した(図3参照)。
【0053】
【表1】

【0054】
15.誕生したブタのPCR判定
誕生したブタから採取可能な組織(耳及び臍帯組織)や血液等からDNAを抽出し、PCR解析を行った。図1のベクターにおけるORF(Open Reading Frame)の5’側と3’側でプライマーを2組設計し、判別に用いた。プライマーはフォワード(5'-ttacatccagattcagcaac-3';配列番号1)及びリバース(5'-ggaacattagccataacttc-3';配列番号2)、フォワード(5'-tagagacacaagttggagatggt-3';配列番号3)及びリバース(5'-gctaattgaatatcagtatttttcac-3';配列番号4)の2組を用いた。PCRサイクルの条件は、94℃にて5分の後、94℃にて1分、55℃にて1分、72℃にて1分を40サイクルした後、72℃にて5分処理し、4℃で保存した。PCR産物を5μL採取し、PAGEゲルにて電気泳動(200V、30分間)を行った。2本バンドを検出した場合にEndogalC遺伝子の導入の有無を判別した。
【0055】
流産胎児及び梅山ブタEndoGalCトランスジェニッククローンブタ雌の組織からゲノムを抽出してPCR解析を行った結果、EndoGalC遺伝子が組み込まれていることが確認できた(図4(a)及び(b)参照)。
【0056】
16.誕生したEndoGalCトランスジェニッククローンブタのFACS解析
誕生したクローンブタの耳組織より細胞を採取し、上記「3・FACSによる解析及びソーティング」記載の方法によりα−Gal抗原の切断の有無を解析した。
【0057】
FACSによりαGalの発現を調べたところ、2頭の流産胎児及び梅山ブタEndoGalCトランスジェニッククローンブタ雌は、約98%のαGalが切断されていた(図5(a)(b)参照)。図5において、ML/EndoGalCclonedpigは、今回誕生したEndoGalCトランスジェニッククローンブタを示し、EndoGalC−1及びEndoGalC−2は、以前に作出したEndoGalCトランスジェニッククローンブタを示す。ML8は、EndoGalCトランスジェニッククローンブタを作出するのに用いた元のブタ胎児の非組換え細胞である。M新生児は、非組換えブタである。(−)はαGalを染色していないコントロールを示す。
【実施例2】
【0058】
[hDAFトランスジェニッククローンブタの作出]
1.胎児線維芽細胞の採取
ランドレース種雌×大ヨーク種雄による交配後、妊娠71日目の雌から雄胎児を採取した。採取した胎児の筋肉組織をハサミで採取し、細切りした。その後の処理は、実施例1−1に記載された胎児線維芽細胞の採取の方法に準じて行った。
【0059】
2.hDAF発現細胞の作出
分離した胎児線維芽細胞は、植継ぎを行わず、遺伝子導入に用いた。遺伝子導入前日に胎児線維芽細胞を0.25%トリプシン−0.04%EDTA−2Na液にて剥離させ、翌日50〜90%コンフルエントになるように10cmディッシュに継代した(1.0×10/ディッシュ)。遺伝子導入には、Lipofectamine PLUS Reagent(invitrogen社製)を用いた。hDAF発現ベクター(図6参照)2.0μgを750μLのD−MEMに溶解した。次に30μLのPLUS Reagentを混合し、15分間、室温で放置した。その後、別に750μLのD−MEMに溶かしておいたLipofectamine45μLをタッピングしながら加え、さらに15分間、室温で放置した。その間、細胞にD−MEMを加え洗浄後、除去し、再度D−MEMを加えてインキュベーター内で培養した。ベクターは室温放置後、分散するように細胞に滴下し、37℃、5%CO下で3時間培養した。3時間後、20%FCS添加D−MEMを加え、メディウムが10%FCS添加D−MEMになるよう調整した。遺伝子導入から48時間以降にそれぞれの細胞に適した濃度(1.0〜2.0μg/mL)でピューロマイシンを溶かした10%FCS−DMEMに交換した。その後、2〜3日に1回の割合でピューロマイシンを含む培養液の交換を行った。薬剤選択後、生存していた細胞はコロニーピックアップせず、細胞集団として増殖させた。
【0060】
3.FACSによる解析及びソーティング
トリプシン−EDTAで剥がした細胞を2%FCS−PBSで洗浄し、細胞数を5×10/tubeになるように調整した。細胞はαGalを認識するFITC、或いはFITC標識された抗hDAF抗体で染色し(4℃、30分間)、2%FCS−PBSで2回洗浄した。解析を行う直前に死細胞を判定する為に200μg/mLのPIを10μL/tube添加した。凝集細胞を取り除くためにセルストレーナーキャップ付きのチューブに移した後、FACSで解析した。αGal発現レベル及びhDAF発現レベルを計るのに平均蛍光強度(MFI)を用いた。またソーティングを行う場合は上記の過程をすべてクリーンベンチ内で行い出来るだけ4℃を保った。ソーティング技術を用いて分離された細胞は、細胞数に準じたディッシュ若しくはプレートにまき、培養を続けた。
【0061】
ブタ胎児線維芽細胞にhDAF発現ベクター(図6参照)を導入し、薬剤選択直後はhDAFを高発現している細胞は3.19%しか存在しなかったが(図7(a)参照)、M1領域(図7(a)参照)をソーティングすると、hDAFを高発現している細胞が79.71%まで増加した(図7(b)参照)。
【0062】
4.ホルモン処理による採卵方法
実施例1の「4.ホルモン処理による採卵方法」記載の方法に準じて行った。
【0063】
5.体内成熟卵子の準備
実施例1の「5.体内成熟卵子の準備」記載の方法に準じて行った。
【0064】
6.屠場卵巣由来卵胞卵子の採卵方法
実施例1の「6.屠場卵巣由来卵胞卵子の採卵方法」記載の方法に準じて行った。
【0065】
7.体外成熟培養
実施例1の「7.体外成熟培養」記載の方法に準じて行った。
【0066】
8.卵子核の除去操作(除核操作)
実施例1の「8.卵子核の除去操作(除核操作)」記載の方法に準じて行った。
【0067】
9.ドナー組換え体細胞の準備
実施例1の「9.ドナー組換え体細胞の準備」記載の方法に準じて行った。その際、FACSのソーティングによりhDAFを高発現しているLW雄の胎児の線維芽細胞を核移植ドナー細胞として用いた。
【0068】
10.体細胞核の注入操作
実施例1の「10.体細胞核の注入操作」記載の方法に準じて行った。
【0069】
11.卵子の活性化処理
実施例1の「11.卵子の活性化処理」記載の方法に準じて行った。
【0070】
12.活性化卵子の第2極体放出抑制処理
実施例1の「12.活性化卵子の第2極体放出抑制処理」記載の方法に準じて行った。
【0071】
13.活性化卵子の体外培養
実施例1の「13.活性化卵子の体外培養」記載の方法に準じて行った。
【0072】
14.ホルモン処理による仮腹の同期化と胚移植方法
実施例1の「14.ホルモン処理による仮腹の同期化と胚移植方法」記載の方法に準じて行った。
【0073】
15.誕生したブタのPCR判定
誕生したブタから採取可能な組織(耳及び臍帯組織)や血液等からDNAを抽出し、PCR解析を行った。プライマーはフォワード(5'-aaggccgtacaagttttccc-3';配列番号5)、リバース(5'-gaactgttggtgggaccttg-3';配列番号6)の1組を用いた。PCRサイクルの条件は、94℃にて5分の後、94℃にて1分、60℃にて1分、72℃にて1分を40サイクルした後、72℃にて5分処理し、4℃で保存した。PCR産物を5μL採取し、PAGEゲルにて電気泳動(200V、30分間)を行った。2本バンドを検出した場合にEndogalC遺伝子の導入の有無を判別した。
【0074】
ソーティングにより得られたhDAF遺伝子導入細胞による核移植、胚移植の結果を表2に示す。表2に示すように、試験回数9回から1711個の分割胚を得られ、11頭の仮腹へ移植した結果、2頭のクローンブタを得ることに成功した。
【0075】
【表2】

【0076】
2004年8月1日に誕生した2頭(図8参照)の内1頭(hDAFクローンブタ−2)は死亡したが、もう1頭(hDAFクローンブタ−1)は現在も生存している。ゲノミックPCRの結果、2頭ともhDAFが組み込まれていた(図9参照)。
【0077】
16.誕生したhDAFトランスジェニッククローンブタのFACS解析
誕生したクローンブタの耳組織より細胞を採取して、上記「3・FACSによる解析及びソーティング」記載の方法によりhDAFの発現を解析した。
【0078】
2頭のhDAFトランスジェニッククローンブタの耳より細胞を分離し、hDAFの発現をHAEC(ヒト大動脈血管内皮細胞)とMFI値で比較したところ、約20〜30倍のhDAFの発現が認められた(図10a)参照)。また、死亡したhDAFクローンブタ−2からは血管壁由来細胞を分離し、HAECやHUVEC(ヒト臍帯静脈血管内皮細胞)とhDAFの発現比較を行ったところ、90倍近い発現が認められた(図10b)参照)。
【0079】
死亡したhDAFクローンブタ−2の組織でのhDAFの発現を、心臓、腎臓、肝臓について組織染色を行った結果、心臓では非常に強い染色が認められた。腎臓でも強く染色されていたが、肝臓に関しては腎臓に比べ若干染色が弱かった(図11参照)。
【0080】
HUVEC、PAEC(ブタ大動脈血管内皮細胞)、LWD耳、hDAFクローンブタ−2血管壁由来細胞の各細胞にヒト血清を添加し、ヒトIgG及びヒトIgMに対する抗体接着をフローサイトメトリーで解析したところ、hDAFクローンブタ−2の細胞では抗体接着の低下は認められなかった(図12(a)(b)参照)。しかし、hDAFクローンブタ−2の細胞では細胞傷害に関して高い抑制効果が得られた(図12(c))。
【0081】
17.細胞傷害の計測方法
細胞障害試験を行う2〜3日前に96wellプレートに細胞(通常の非組換えブタ由来耳細胞=LWD、PAEC=通常の非組換えブタ由来血管内皮細胞、hDAFクローン由来耳細胞、ヒト由来血管内皮細胞=HUVEC)をまく。障害試験は、ヒト血清を用いる。ヒト血清は、新鮮な血清と、補体不活化処理(56℃、30分)した血清の2種類を用いる。それぞれの細胞に対して、新鮮な血清で感作させた区と補体不活化処理した血清で感作させた区の2つの試験区を設けた。96wellプレートの培養液を除去した後、PBS(−)で洗浄し、ヒト血清(新鮮血清または補体不活化処理血清)を含む培養液を添加して、37℃、30分間、インキュベーター内で培養する。ヒト血清感作後(30分間処理後)、培養液を除去し、PBS(−)で2回洗浄し、MTT試薬(0.1Mコハク酸2Na、0.4%MTTを含むPBS(−)=生存しているミトコンドリアを染色する方法)を1well当たり20μl加えて37℃、4時間培養する。DMSOを100μl添加して、プレートミキサーで良く混合する。マイクロプレートリーダー(吸光度測定装置)を用いて、測定する。各サンプルの吸光度(O.D.値)を用いて以下の計算式で細胞障害度を計算した。
細胞障害度(%)=(補体不活化処理血清にて感作させたO.D.値−新鮮血清にて感作させたO.D.値)/補体不活化処理血清にて感作させたO.D.値
【実施例3】
【0082】
[ダブルトランスジェニックブタの作出]
1.EndoGalCトランスジェニッククローンブタとhDAFトランスジェニッククローンブタの交配
hDAFクローンブタ雄の精液を採取し、モデナ(ブタ精液希釈液)にて希釈後、誕生したEndoGalCトランスジェニッククローンブタ雌の発情時に人工授精を行った。
【0083】
2.誕生したブタのPCR判定
誕生したブタのPCR判定は、実施例1の「15.誕生したブタのPCR判定
」及び実施例2の「15.誕生したブタのPCR判定」記載の方法に準じて行った。
【0084】
EndoGalCトランスジェニッククローンブタとhDAFトランスジェニッククローンブタの交配の結果を表3に示す。合計25頭の子ブタが誕生した。誕生した子ブタは正常に発育し、離乳後も異常は見られなかった。仔ブタの耳組織より細胞を分離し、PCR解析を行ったところ、ダブルトランスジェニックブタ合計6頭が確認できた。
【0085】
【表3】

【実施例4】
【0086】
[ダブルトランスジェニックブタ臓器を用いたヒヒへの移植試験]
1.ダブルトランスジェニックブタの臓器摘出
PCR解析及びFACS解析によりEndoGalC及びhDAF遺伝子が組み込まれていることが確認されたブタは体重23.5kgまで発育させた。発育したダブルトランスジェニックブタ(ドナー)は、ケタラール筋中麻酔後、ハロセン麻酔下で、外科的手術により腎臓を摘出した。摘出した腎臓は、氷冷し、通常のドナー手術に従い、摘出時及びバックテーブルにおいてビアスパン(University of Wisconsin液)で灌流し4℃にて保存した。
【0087】
2.ヒヒへの腎臓移植
レシピエントには、雌のドグエラヒヒ(体重12kg)を用いた。ケタラール筋中麻酔後、ハロセン麻酔下で、外科的手術により、上記ダブルトランスジェニックブタより摘出した腎臓を移植した。
【0088】
3.免疫抑制処理
ブタ腎臓を移植したヒヒの免疫抑制剤処理は、タクロリムス(FK)0.15mg/kg/日、シクロホスファミド1〜2mg/kg/日、メチルプレドニゾロン2mg/kg/日量で投与することにより行った。
【0089】
ダブルトランスジェニックブタの腎臓を摘出し、ヒヒへ移植した結果、血流再開直後から腎臓の色調は良好で尿の流出も観察され、超急性拒絶反応の所見は認められなかった(図13(a)及び図13(b)参照)。
【0090】
移植手術3日後の開腹の腎生検(図14参照)による病理鑑定の結果、糸球体の血栓、尿細管炎および毛細血管炎は認められず、拒絶反応の所見は認められなかった(図15参照)。また、移植手術7日後の開腹の腎生検(図16参照)による病理鑑定の結果、糸球体のわずかな血栓形成は認められたが、間質の血管には血栓形成、尿細管炎及び毛細血管炎は認められず、拒絶反応の所見は認められなかった(図17参照)。さらに、移植手術8日後の腎生検(図18参照)による病理鑑定の結果、糸球体に明らかな血栓形成が認められたが、尿細管炎や毛細血管炎は認められず、明らかな進行性拒絶反応の所見は認められなかった(図19参照)。
【0091】
これらの結果から、EndoGalC及びhDAF遺伝子高発現ダブルトランスジェニックブタを用いることにより、異種間移植における超急性拒絶反応を回避することが可能であることが明らかとなった。
【0092】
なお、実施例2で得られたhDAFクローンブタ−2の腎臓を、同様にドグエラヒヒに移植したところ、移植後5分以内に超急性拒絶反応が生じ、図20に示すように、移植した腎臓が黒褐色に変異していた。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】ネオマイシン耐性遺伝子を繋げて新たに作製したEndoGalC発現ベクターを示す図である。
【図2】EndoGalC発現ベクター導入後(a)、及びソーティング後(b)のαGalの発現を示す図である。
【図3】EndoGalC遺伝子導入細胞を用いて、核移植試験6回行い、分割胚1144個を7頭の仮腹へ移植した結果、出産した1頭の写真である。
【図4】流産胎児及び梅山ブタEndoGalCトランスジェニッククローンブタ雌の組織からゲノムを抽出してPCR解析を行った結果を示す図である。
【図5】流産胎児および梅山ブタEndoGalCクローンのαGalの発現における、(a)流産胎児及び核移植に供試したソーティング細胞、及び(b)今回誕生した梅山ブタクローンとこれまで作出したEndoGalCクローンの比較を示す図である。
【図6】hDAF発現ベクター及びα1,3GTアンチセンスベクターを示す図である。
【図7】hDAF発現ベクター導入後(a)、及びソーティング後(b)のhDAFの発現を示す図である。
【図8】誕生したhDAF遺伝子発現トランスジェニッククローンブタの写真である。
【図9】hDAFトランスジェニッククローンブタの組織からゲノムを抽出してPCR解析を行った結果を示す図である。
【図10】フローサイトメトリーによる解析でのhDAF発現比較を示す図である。a)は、耳由来線維芽細胞でのhDAF発現比較を示し、b)ヒト血管内皮細胞とのhDAF発現比較を示す。
【図11】hDAFトランスジェニッククローンブタと対照の組織染色図を示す。
【図12】各細胞におけるヒト抗体接着とヒト血清に対する細胞障害の結果を示す図である。(a)ヒトIgGに対する抗体接着をフローサイトメトリーで解析した結果、(b)ヒトIgMに対する抗体接着をフローサイトメトリーで解析した結果、(c)ヒト血清に対する細胞傷害の結果を示す。
【図13】本発明のブタ腎臓をヒヒへ移植した直後(a)、及び90分後(b)の腎臓の写真である。
【図14】ヒヒへ移植した本発明のダブルトランスジェニックブタの腎臓移植手術3日後に開腹したダブルトランスジェニックブタの腎臓の写真である。
【図15】本発明のブタ腎臓の移植手術3日目の開腹の腎生検による病理鑑定結果を示す図である。
【図16】ヒヒへ移植した本発明のダブルトランスジェニックブタの腎臓移植手術7日後に開腹したダブルトランスジェニックブタの腎臓の写真である。
【図17】本発明のブタ腎臓の移植手術7日目の開腹の腎生検による病理鑑定結果を示す図である。
【図18】ヒヒへ移植した本発明のダブルトランスジェニックブタの腎臓移植手術8日後に開腹したダブルトランスジェニックブタの腎臓の写真である。
【図19】本発明のブタ腎臓の移植手術8日目の開腹の腎生検による病理鑑定結果を示す図である。
【図20】hDAFトランスジェニッククローンブタ腎臓の移植5分後の超急性拒絶反応を起こして黒褐色に変異した写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
EndoGalC遺伝子及びhDAF遺伝子からなる導入遺伝子を共発現することを特徴とするダブルトランスジェニックブタ又はその子孫。
【請求項2】
採取したブタの卵子から除核し、該除核された卵子にEndoGalC遺伝子を導入したブタ体細胞核を注入することで得られたEndoGalCトランスジェニッククローンブタと、採取したブタの卵子から除核し、該除核された卵子に、hDAF遺伝子を導入したブタ体細胞核を注入することで得られたhDAFトランスジェニッククローンブタとを、交配することにより得られる、EndoGalC及びhDAFを共発現することを特徴とするダブルトランスジェニックブタ又はその子孫。
【請求項3】
ブタ体細胞核として、ブタ胎児線維芽細胞を用いることを特徴とする請求項2記載のダブルトランスジェニックブタ又はその子孫。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか記載のダブルトランスジェニックブタ又はその子孫に由来し、EndoGalC及びhDAFを共発現することを特徴とするブタ臓器。
【請求項5】
腎臓であることを特徴とする請求項4記載のブタ臓器。
【請求項6】
請求項4又は5記載のブタ臓器を、非ヒト哺乳動物に移植し、被移植非ヒト哺乳動物における超急性拒絶反応又は急性拒絶反応が抑制されたことを特徴とする移植方法。
【請求項7】
請求項4又は5記載のブタ臓器が移植され、超急性拒絶反応又は急性拒絶反応が抑制されたことを特徴とする被移植非ヒト哺乳動物。
【請求項8】
請求項4又は5記載のブタ臓器を、非ヒト哺乳動物に移植する前後又は同時に、被検物質を前記非ヒト哺乳動物に投与し、被移植非ヒト哺乳動物における超急性拒絶反応又は急性拒絶反応の程度を、被検物質を投与しない場合と比較・評価することを特徴とする免疫抑制剤のスクリーニング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2008−220222(P2008−220222A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−61011(P2007−61011)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(500362442)プライムテック株式会社 (5)
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【出願人】(501167644)独立行政法人農業生物資源研究所 (200)
【Fターム(参考)】