FCレセプター結合親和性およびエフェクター機能の増加を有する抗原結合分子
【課題】FCレセプター結合親和性およびエフェクター機能の増加を有する抗原結合分子の提供。
【解決手段】本発明は、抗原結合分子(ABM)に関する。特定の実施形態において、本発明は、ヒトCD20に特異的であるキメラ抗体、霊長類化抗体、またはヒト化抗体を含む、組換えモノクローナル抗体に関する。さらに、本発明は、このようなABMをコードする核酸分子、ならびにこのような核酸分子を含むベクターおよび宿主細胞に関する。本発明はさらに、本発明のABMを製造するための方法、および疾患の治療においてこれらのABMを使用する方法に関する。さらに、本発明は、Fcレセプター結合の増加およびエフェクター機能の増加を有する抗体を含む改善された治療特性を有する、グリコシル化の修飾を有するABMに関する。
【解決手段】本発明は、抗原結合分子(ABM)に関する。特定の実施形態において、本発明は、ヒトCD20に特異的であるキメラ抗体、霊長類化抗体、またはヒト化抗体を含む、組換えモノクローナル抗体に関する。さらに、本発明は、このようなABMをコードする核酸分子、ならびにこのような核酸分子を含むベクターおよび宿主細胞に関する。本発明はさらに、本発明のABMを製造するための方法、および疾患の治療においてこれらのABMを使用する方法に関する。さらに、本発明は、Fcレセプター結合の増加およびエフェクター機能の増加を有する抗体を含む改善された治療特性を有する、グリコシル化の修飾を有するABMに関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗原結合分子(ABM)に関する。特定の実施形態において、本発明は、ヒトCD20に特異的であるキメラ抗体、霊長類化抗体、またはヒト化抗体を含む、組換えモノクローナル抗体に関する。さらに、本発明は、このようなABMをコードする核酸分子、ならびにこのような核酸分子を含むベクターおよび宿主細胞に関する。本発明はさらに、本発明のABMを製造するための方法、および疾患の治療においてこれらのABMを使用する方法に関する。さらに、本発明は、Fcレセプター結合の増加およびエフェクター機能の増加を有する抗体を含む改善された治療特性を有する、グリコシル化の修飾を有するABMに関する。
【背景技術】
【0002】
免疫系および抗CD20抗体
ヒトを含む脊椎動物の免疫系は、多数の器官および細胞型からなり、これらは、侵入する外来性の微生物(抗原)を正確かつ特異的に認識し、これらに結合し、およびこれらを破壊するように進化してきた。リンパ球は、免疫系の適切な機能のために決定的である。これらの細胞は、胸腺、脾臓、および骨髄(成人)において産生され、そして成人の循環系の中に存在する全体の白血球細胞の約30%を表す。2つの主要なリンパ球の亜集団が存在している。T細胞およびB細胞である。T細胞は細胞媒介性免疫の原因であるのに対して、B細胞は抗体産生(体液性免疫)の原因である。しかし、典型的な免疫応答においては、T細胞およびB細胞は相互依存的に機能する。T細胞は、T細胞レセプターが、抗原提示細胞の表面上の主要組織適合性複合体(「MHC」)糖タンパク質に結合される抗原のフラグメントに結合するときに活性化される;このような活性化は、生物学的メディエーターの放出を引き起こし、これは、分化し、かつその抗原に対する抗体(「免疫グロブリン」)を産生するようにB細胞を刺激する。
【0003】
宿主内の各B細胞は、1つの特定の型および特異性の抗体を発現し、そして異なるB細胞は異なる抗原に特異的である抗体を発現する。B細胞増殖および抗体産生は、外来性抗原に対する応答として急上昇し、両方ともが、典型的には、一旦その外来性抗原が中和されると、停止する(または実質的に減少する)。しかし、時折、特定のB細胞の増殖は除去されずに継続し、このような増殖は「B細胞リンパ腫」と呼ばれる癌を生じ得る。
【0004】
T細胞およびB細胞の両方が、区別および同定のための「マーカー」として利用され得る細胞表面タンパク質を含む。1つのこのようなヒトB細胞マーカーは、「CD20」と呼ばれる、ヒトB細胞リンパ球限定分化抗原Bp35である。CD20は初期前B細胞発生の間に発現され、血漿細胞分化まで残存する。具体的には、CD20分子は、細胞周期の開始および分化のために必要とされる活性化プロセスにおける工程を調節する可能性があり、通常は新生物(「腫瘍」)B細胞上で非常に高いレベルで発現される。CD20細胞は「悪性B細胞」、すなわち、除去されない増殖がB細胞リンパ腫をもたらし得るB細胞上で高レベルで存在するので、CD20表面抗原は、B細胞リンパ腫の「標的化」のための候補として働く潜在能力を有する。
【0005】
本質的に、このような標的化は次のように一般化され得る。B細胞のCD20表面抗原に特異的である抗体が、例えば、注射によって患者に導入される。これらの抗CD20抗体は、(表面上)正常B細胞と悪性B細胞の両方のCD20細胞表面抗原に特異的に結合する;CD20表面抗原に結合した抗CD20抗体は、新生物B細胞の破壊および枯渇を導き得る。さらに、腫瘍を破壊する潜在能力を有する化学薬剤または放射活性標識が抗CD20抗体に結合体化され得、その結果、この薬剤は、例えば、新生物B細胞に特異的に「送達」される。アプローチとは無関係に、主要な目的は腫瘍を破壊することである。具体的なアプローチは、利用される特定の抗CD20抗体によって決定され、および従って、CD20抗原を標的化するための利用可能なアプローチは、顕著に変化し得る。
【0006】
結合体化されていないモノクローナル抗体(mAb)は、CD20ポジティブなB細胞の、軽度な、または濾胞性の非ホジキンリンパ腫の治療のためのリツキシマブ(Rituxan(商標);IDEC Pharmaceuticals,San Diego,CA、およびGenentech Inc.,San Francisco,CA)、進行した乳癌の治療のためのトラスツズマブ(Herceptin(商標);Genentech Inc,)(Grillo−Lopez,A.−J.ら、Semin.Oncol 26:66−73(1999);Goldenberg,M.M.,Clin.Ther.21:309−18(1999))、再発した急性骨髄性白血病の治療のためのゲムツズマブ(Mylotarg(商標)、Celltech/Wyeth−Ayerst)、ならびにB細胞慢性リンパ球性白血病の治療のためのアレムツズマブ(CAMPATH(商標)、Millenium Pharmaceuticals/Schering AG)の、米国食品医薬品局の認可によって実証されているように、癌の治療のための有用な医薬であり得る。これらの製品の成功は、それらの効力に依存するのみならず、それらの卓越した安全プロフィールにもまた、依存している(Grillo−Lopez,A.−J.ら、Semin.Oncol.26:66−73(1999);Goldenberg,M.M.,Clin.Ther.21:309−18(1999))。これらの薬物の業績にも関わらず、結合体化されていないmAb治療によって典型的に与えられるものよりもより特異性が高い抗体活性を得ることに現在大きな関心が存在する。マウスモノクローナル抗体である、B−Ly1は、ヒトCD20に特異的であることが知られている別の抗体である(Poppema,S.およびVisser,L.,Biotest Bulletin 3 :131−139(1987))。
【0007】
多くの研究の結果は、Fc−レセプター依存性メカニズムが腫瘍に対する細胞傷害性抗体の作用に実質的に寄与することを示唆し、そして腫瘍に対する最適な抗体が活性Fcレセプターに優先的に結合し、阻害パートナーFcγRIIBに最小限に結合することを示す(Clynes,R.A.ら、Nature Medicine 6(4):443−446(2000);Kalergis,A.M.およびRavetch,J.V.,J.Exp.Med.195(12):1653−1659(2002年6月)。例えば、少なくとも1つの研究の結果は、FcγRIIIaレセプターが特に抗体治療の効力と強く関連していることを示唆する(Cartron,G.ら、Blood 99(3):754−757(2002年2月))。この研究は、FcγRIIIaについてホモ接合性である患者が、ヘテロ接合性の患者よりも、リツキシマブに対してより良好な応答を有することを示した。著者らは、優れた応答は、FcγRIIIaに対する抗体のインビボ結合により良好に依存し、これは、リンパ腫に対するより良好なADCC活性を生じた(Cartron,G.ら、Blood 99(3):754−757(2002年2月))。
【0008】
CD20表面抗原を標的化するための種々の試みが報告されている。報告によると、ネズミ(マウス)モノクローナル抗体1F5(抗CD20抗体)が、連続的な静脈内注入によってB細胞リンパ腫患者に投与された。報告によると、循環している腫瘍細胞を枯渇させるためには、極度に高いレベル(>2グラム)の1F5が必要であり、そして結果は「一過性」であった。Pressら、「Monoclonal Antibody 1F5(Anti−CD20)Serotherapy of Human B−Cell Lymphomas.」Blood 69/2:584−591(1987)。このアプローチに伴う潜在的な問題は、非ヒトモノクローナル抗体(例えば、マウスモノクローナル抗体)が、典型的には、ヒトエフェクター機能を欠いていること、すなわち、これらは、とりわけ、補体依存性溶解を媒介することができないか、または抗体依存性細胞傷害性もしくはFcレセプター媒介性食作用を通してヒト標的細胞を溶解することができない。さらに、非ヒトモノクローナル抗体は、ヒト宿主によって、外来性タンパク質として認識され得る;それゆえに、このような外来性抗体の反復注射は、有害な過敏性反応をもたらす免疫応答の導入をもたらし得る。マウスベースのモノクローナル抗体については、これは、しばしば、ヒト抗マウス抗体応答、すなわち「HAMA」応答と呼ばれる。さらに、これらの「外来性」抗体は、宿主の免疫系によって攻撃され得、その結果、これらは、事実上、これらが標的部位に到達する前に中和される。
【0009】
B細胞の障害の治療において有効であるマウスモノクローナル抗体の能力を改善する際の別の報告されているアプローチは、放射性標識または毒素が腫瘍部位に局在するように、抗体に放射性標識または毒素を結合体化することであった。例えば、上記に言及された1F5抗体は、ヨウ素−131(「131I」)で標識され、報告によれば、2名の患者において生物分布について評価された。Eary,J.F.ら、「Imaging and Treatment of B−Cell Lymphoma」J.Nuc.Med.31/8:1257−1268(1990)を参照のこと;Press,O.W.ら、「Treatment of Refractory Non−Hodgkin’s Lymphoma with Radiolabeled MB−1(Anti−CD37)Antibody」J.Clin.Onc.7/8:1027−1038(1989)(131I−標識されたIF−5で治療された1名の患者が「部分的応答」を達成したことの指摘);Goldenberg,D.M.ら、「Targeting,Dosimetry and Radioimmunotherapy of B−Cell Lymphomas with Iodine−131−Labeled LL2 Monoclonal Antibody」J.Clin.Onc.9/4:548−564(1991)(複数注射を受けた8名の患者のうちの3名がHAMA応答を発生したことを報告する);Appelbaum,F.R.「Radiolabeled Monoclonal Antibodies in the Treatment of Non−Hodgkin’s Lymphoma」Hem./Onc. Clinics of N.A.5/5:1013−1025(1991)(概説記事);Press,O.W.ら「Radiolabeled−Antibody Therapy of B−Cell Lymphoma with Autologous Bone Marrow Support.」New England J.Med.329/17:1219−1223(1993)(ヨウ素−131標識された抗CD20抗体IF5およびBl);およびKaminski,M.G.ら「Radioimmunotherapy of B−Cell Lymphoma with 131I Anti−B1(Anti−CD20)Antibody」.New England J.Med.329/7(1993)(ヨウ素−131 標識された抗CD20抗体B1;本明細書中以後では「Kaminski」)もまた参照のこと。毒素(すなわち、ドキソルビシンまたはマイトマイシンCなどの抗体)もまた、抗体に結合体化されてきた。例えば、PCT出願公開WO 92/07466(1992年5月14日公開)を参照のこと。
【0010】
2つまたはそれ以上の異なる種(例えば、マウスおよびヒト)からの抗体の部分を含むキメラ抗体は、「結合体化」抗体に対する代替として開発された。例えば、Liu,A.Y.ら、「Production of a Mouse−Human Chimeric Monoclonal Antibody to CD20 with Potent Fc−Dependent Biologic Activity」J.Immun.139/10:3521−3526(1987)は、CD20抗原に対して指向されるマウス/ヒトキメラ抗体を記載している。PCT公開番号WO 88/04936もまた参照されたい。例えば、キメラ抗CD20抗体であるリツキシマブ(RITUXAN(登録商標))は、非ホジキンリンパ腫の治療のために認可されている。
【0011】
B細胞リンパ腫の発現が与えられると、この抗原は、このようなリンパ腫の「標的化」のための候補として働き得る。本質的に、このような標的化は以下のように一般化され得る。B細胞上のCD20表面抗原に特異的な抗体が患者に投与される。これらの抗CD−20抗体は、(表面上)正常B細胞と悪性B細胞の両方のCD20細胞表面抗原に特異的に結合し、細胞表面上のCD20に結合した抗CD20抗体は、腫瘍形成性B細胞の破壊および枯渇を生じる。さらに、化学薬剤、細胞毒素または放射活性標識が、直接的または間接的に抗CD20抗体に結合体化され得、その結果、この薬剤は、CD20抗原を発現するB細胞に選択的に「送達」される。これらの両方のアプローチを用いると、主要な目的は腫瘍を破壊することである。具体的なアプローチは、利用される特定の抗CD20抗体に依存する。従って、CD20抗原を標的化するための種々なアプローチは、顕著に変化し得ることは明らかである。
【0012】
リツキシマブ(RITUXAN(登録商標))抗体は、ヒトCD20抗原に対して指向される、遺伝子操作されたキメラヒトγマウス定常ドメインを含有するモノクローナル抗体である。このキメラ抗体はヒトγ1定常ドメインを含み、名称「C2B8」によって、IDEC Pharmaceuticals Corporationに譲渡された、1998年4月17日に発行された米国特許第5,736,137号(Andersenら)において同定される。RITUXAN(登録商標)は、再発した、または屈折性の軽度の、または濾胞性の、CD20ポジティブの、B細胞非ホジキンリンパ腫を有する患者の治療のために認可される。作用のメカニズムのインビトロ研究は、RITUXAN(登録商標)がヒト補体依存性細胞毒性(CDC)を示すことを示した(Reffら、Blood 83(2):435−445(1994))。さらに、これは、抗体依存性細胞毒性を測定するアッセイ(ADCC)において有意な活性を示す。RITUXAN(登録商標)は、チミジン取り込みアッセイにおける抗増殖性活性、およびアポトーシスを直接的に誘導する限定的な能力を有することが示されたのに対して、CD20抗体はそうではない(Maloneyら、Blood 88(10):637a(1996))。
【0013】
抗体グリコシル化
オリゴサッカリド成分は、物理的安定性、プロテアーゼ攻撃に対する抵抗性、免疫系との相互作用、薬物動態学、および特異的生物学的活性を含む、治療用糖タンパク質の効力に関連する特性に有意に影響を与える。このような特性は、オリゴサッカリドの存在または非存在に依存するのみならず、オリゴサッカリドの特異的構造にもまた依存する可能性がある。オリゴサッカリド構造と糖タンパク質機能との間のある程度の一般化がなされ得る。例えば、特定のオリゴサッカリド構造は、特異的炭水化物結合タンパク質との相互作用を通して血流からの糖タンパク質の急速なクリアランスを媒介するが、他の構造は、抗体によって結合され得、そして望ましくない免疫反応を誘発し得る(Jenkinsら、Nature Biotechnol.14:975−81(1996))
【0014】
哺乳動物細胞は、ヒト適用のための大部分の適合性の型においてタンパク質をグリコシル化するそれらの能力に起因して、治療用糖タンパク質の産生のための好ましい宿主である(Cummingら、Glycobiology1:115−30(1991);Jenkinsら、Nature Biotechnol.14:975−81(1996))。細菌は非常にまれに、タンパク質、ならびに酵母、糸状菌、昆虫、および植物細胞などの一般的な宿主の同様の他の型をグリコシル化し、血流からの迅速なクリアランス、望ましくない免疫相互作用、およびある特定の場合においては、減少した生物学的活性と関連したグリコシレーションパターンを生じる。哺乳動物細胞の間で、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞は、過去20年間の間に最も一般的に使用されてきた。適切なグリコシル化パターンを与えることに加えて、これらの細胞は、遺伝的に安定な、高度に生産的なクローン性細胞系の一貫した生成を可能にする。これらは、無血清培地を使用する単純なバイオリアクター中で高密度で培養され得、安全かつ再生可能なバイオプロセスの開発を可能にする。他の一般的に使用される動物細胞には、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、NS0−およびSP2/0−マウス骨髄腫細胞が含まれる。より最近では、トランスジェニック動物からの産生もまた試験されてきた(Jenkinsら、Nature Biotechnol.14:975−81(1996))。
【0015】
全ての抗体は、重鎖定常領域の保存性位置に糖質構造を含み、各アイソタイプがN連結糖質構造の独特のアレイを有し、これはタンパク質のアセンブリー、分泌または機能的な活性に様々に影響を与える(Wright,A.およびMorrison,S.L.Trends Biotech.15:26−32(1997))。結合したN連結糖質の構造は、プロセシングの程度に依存して顕著に変化し、高マンノース、多分枝ならびに二アンテナ状複合体オリゴサッカリドを含み得る(Wright,A.およびMorrison,S.L.Trends Biotech.15:26−32(1997))。典型的には、特定のグリコシル化部位に結合されたコアオリゴサッカリド構造の均質でないプロセシングが存在し、その結果、モノクローナル抗体さえもが複数の糖型で存在する。同様に、抗体のグリコシル化における主要な違いは細胞系間で起こり、そしてマイナーな違いさえもが異なる培養条件下で増殖された所定の細胞系について見られることが示されてきた(Lifely,M.R.ら、Glycobiology 5(8):813−22(1995))。
【0016】
単純な製造プロセスを維持しながら、かつ有意な、望ましくない副作用を回避しながら、効力の大きな増加を得るための1つの方法は、Umana,P.ら、Nature Biotechnol.17:176−180(1999)および米国特許第6,602,684号(これらの内容はそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)において記載されるような、それらのオリゴサッカリドを操作することによってモノクローナル抗体の天然の、細胞媒介性エフェクター機能を増強することである。癌免疫治療において最も一般的に使用される抗体であるIgG1型抗体は、各CH2ドメイン中のAsn297において保存性N連結型グリコシル化部位を有する糖タンパク質である。Asn297に結合された2つの複合体二アンテナ状オリゴサッカリドは、CH2ドメイン間に包埋されて、ポリペプチドバックボーンとの広範な接触を形成しており、それらの存在は、抗体が、抗体依存的細胞傷害性(ADCC)などのエフェクター機能を媒介するために必須である(Lifely,M.R.ら、Glycobiology 5:813−822(1995);Jefferis,R.ら、Immunol Rev.163:59−76(1998);Wright,A.およびMorrison、S.L.Trends Biotechnol.15:26−32(1997))。
【0017】
以前に本発明者らは、チャイニーズハムスター卵巣細胞における、二分枝オリゴサッカリドの形成を触媒するグリコシルトランスフェラーゼである、β(1,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ III(「GnTIII」)の過剰発現が、操作されたCHO細胞によって産生される抗神経芽細胞腫キメラモノクローナル抗体(chCE7)のインビトロADCC活性を増加させることを示した(Umana,P.ら、Nature Biotechnol.17:176−180(1999);および国際公開番号WO 99/54342を参照のこと、これらの内容は参照により本明細書に組み込まれる)。抗体chCE7は、結合体化されていないmAbの大きなクラスに属し、これは、高い腫瘍親和性および特異性を有するが、GnTIII酵素を欠く標準的な工業用細胞系において産生される場合には、効力が小さすぎて臨床的には有用でない(Umana,P.ら、Nature Biotechnol.17:176−180(1999))。この研究は、ADCC活性の大きな増加が、GnTIIIを発現するために抗体産生細胞を操作することによって得られ得、これはまた、二分枝でフコシル化されていないオリゴサッカリドを含む、定常領域(Fc)結合した二分枝性オリゴサッカリドの割合の増加を、天然に存在する抗体において見いだされるレベルよりも上に導くことを最初に示した。
【0018】
ヒトを含むがこれに限定されない霊長類におけるB細胞リンパ腫の治療のためにCD20抗原を標的化する、増強された治療アプローチについての必要性が残っている。
【発明の概要】
【0019】
B−Ly1抗体の結合特異性を有し、かつFcレセプター結合親和性およびエフェクター機能を増強するように糖付加操作された抗原結合分子(ABM)の驚異的な治療的潜在能力を認識したので、本発明者らは、このようなABMを産生するための方法を開発した。とりわけ、本発明は、組換えの、キメラ抗体またはそのキメラフラグメント産生する工程を含む。これらのABMの効力は、抗体Fc領域のグリコシル化プロフィールを操作することによってさらに増強される。
【0020】
従って、1つの態様において、本発明は、(a)配列番号5、配列番号6および配列番号7(CDR VH-1)からなる群より選択される配列;(b)配列番号21、配列番号22および配列番号23(CDR VH-2)からなる群より選択される配列;ならびに配列番号24を含む単離されたポリヌクレオチドに向けられる。別の態様において、本発明は、配列番号8、配列番号9および配列番号10(CDR VL)を含む単離されたポリヌクレオチドに向けられる。1つの実施形態において、これらのポリヌクレオチドは融合ポリペプチドをコードする。
【0021】
さらなる態様において、本発明は、配列番号3を含む単離されたポリヌクレオチドに向けられる。別の態様において、本発明は、配列番号4を含む単離されたポリヌクレオチドに向けられる。さらなる態様において、本発明は、配列番号29;配列番号31;配列番号33;配列番号35;配列番号37;配列番号39;配列番号41;配列番号43;配列番号45;配列番号47;配列番号49;配列番号51;配列番号53;配列番号55;配列番号57;配列番号59;配列番号61;配列番号63;配列番号65;配列番号67;配列番号69;および配列番号71からなる群より選択される配列を含む単離されたポリヌクレオチドに向けられる。別の態様において、本発明は、配列番号75を含む単離されたポリヌクレオチドに向けられる。1つの実施形態において、このようなポリヌクレオチドは融合ポリペプチドをコードする。
【0022】
本発明はさらに、配列番号3に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含む単離されたポリヌクレオチドに向けられ、ここで、この単離されたポリヌクレオチドは融合ポリペプチドをコードする。さらなる態様において、本発明は、配列番号4に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含む単離されたポリヌクレオチドに向けられ、ここで、この単離されたポリヌクレオチドは融合ポリペプチドをコードする。本発明はさらに、配列番号29;配列番号31;配列番号33;配列番号35;配列番号37;配列番号39;配列番号41;配列番号43;配列番号45;配列番号47;配列番号49;配列番号51;配列番号53;配列番号55;配列番号57;配列番号59;配列番号61;配列番号63;配列番号65;配列番号67;配列番号69;および配列番号71からなる群より選択される配列に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含む単離されたポリヌクレオチドに向けられ、ここで、この単離されたポリヌクレオチドは融合ポリペプチドをコードする。さらなる態様において、本発明は、配列番号75に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含む単離されたポリヌクレオチドに向けられ、ここで、この単離されたポリヌクレオチドは融合ポリペプチドをコードする。
【0023】
本発明はさらに、配列番号11(全体の重鎖)を含むポリヌクレオチド、または配列番号11に対して80%、85%、90%、95%、もしくは99%の同一性を有するポリヌクレオチドに向けられる。本発明はまた、配列番号12(全体の軽鎖)を含むポリヌクレオチド、または配列番号12に対して80%、85%、90%、95%、もしくは99%の同一性を有するポリヌクレオチドに向けられる。
【0024】
本発明はまた、配列番号1の配列を有するキメラポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドに向けられる。1つの実施形態において、このポリヌクレオチドは、配列番号1の配列を有するポリペプチドをコードする配列;およびマウス以外の種由来の、抗体Fc領域の配列を有するポリペプチドをコードする配列、またはそのフラグメントを含む。本発明はまた、配列番号30;配列番号32;配列番号34;配列番号36;配列番号38;配列番号40;配列番号42;配列番号44;配列番号46;配列番号48;配列番号50;配列番号52;配列番号54;配列番号56:配列番号58;配列番号60;配列番号62;配列番号64;配列番号66;配列番号68;配列番号70;および配列番号72からなる群より選択される配列を有するキメラポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドに向けられる。1つの実施形態において、このポリヌクレオチドは、配列番号30;配列番号32;配列番号34;配列番号36;配列番号38;配列番号40;配列番号42;配列番号44;配列番号46;配列番号48;配列番号50;配列番号52;配列番号54;配列番号56:配列番号58;配列番号60;配列番号62;配列番号64;配列番号66;配列番号68;配列番号70;および配列番号72からなる群より選択される配列を有するポリペプチドをコードする配列;ならびにマウス以外の種由来の、抗体Fc領域の配列を有するポリペプチドをコードする配列、またはそのフラグメントを含む。
【0025】
なお別の態様において、本発明は、配列番号2の配列を有するキメラポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドに向けられる。1つの実施形態において、このポリヌクレオチドは、配列番号2の配列を有するポリペプチドをコードする配列;およびマウス以外の種由来の、抗体Fc領域の配列を有するポリペプチドをコードする配列、またはそのフラグメントを含む。なお別の態様において、本発明は、配列番号76の配列を有するキメラポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドに向けられる。1つの実施形態において、このポリヌクレオチドは、配列番号76の配列を有するポリペプチドをコードする配列;およびマウス以外の種由来の、抗体Fc領域の配列を有するポリペプチドをコードする配列、またはそのフラグメントを含む。
【0026】
本発明はまた、マウスB−Ly1抗体のVH領域を有するポリペプチドまたはその機能的改変体をコードする配列、およびマウス以外の種由来の、抗体Fc領域の配列を有するポリペプチドをコードする配列またはそのフラグメントを含む単離されたポリヌクレオチドに向けられる。別の態様において、本発明は、マウスB−Ly1抗体のVL領域を有するポリペプチドまたはその機能的改変体をコードする配列、およびマウス以外の種由来の、抗体Fc領域の配列を有するポリペプチドをコードする配列またはそのフラグメントを含む単離されたポリヌクレオチドに向けられる。
【0027】
本発明はさらに、上記の単離されたポリヌクレオチドのいずれかを含む発現ベクター、およびこのような発現ベクターを含む宿主細胞に向けられる。さらなる態様において、本発明は、上記の単離されたポリヌクレオチドのいずれかを含む宿主細胞に向けられる。
【0028】
1つの態様において、本発明は、(a)配列番号15、配列番号16および配列番号17からなる群より選択される配列(CDR VH-1);(b)配列番号25、配列番号26および配列番号27からなる群より選択される配列(CDR VH-2);ならびに配列番号28を含む単離されたポリペプチドに向けられ、ここで、このポリペプチドは融合ポリペプチドである。別の態様において、本発明は、配列番号18、配列番号19および配列番号20を含む単離されたポリペプチドに向けられ、ここで、このポリペプチドは融合ポリペプチドである。
【0029】
本発明はまた、配列番号1の配列もしくはその改変体を含むキメラポリペプチドまたはその改変体に向けられる。本発明はさらに、配列番号2の配列を含むキメラポリペプチドまたはその改変体に向けられる。1つの実施形態において、これらのポリペプチドのいずれか1つが、ヒトFc領域をさらに含む。本発明はまた、配列番号30;配列番号32;配列番号34;配列番号36;配列番号38;配列番号40;配列番号42;配列番号44;配列番号46;配列番号48;配列番号50;配列番号52;配列番号54;配列番号56:配列番号58;配列番号60;配列番号62;配列番号64;配列番号66;配列番号68;配列番号70;および配列番号72からなる群より選択される配列を含むキメラポリペプチド、またはその改変体に向けられる。本発明はさらに、配列番号76の配列を含むキメラポリペプチドまたはその改変体に向けられる。1つの実施形態において、これらのポリペプチドのいずれか1つが、ヒトFc領域をさらに含む。
【0030】
別の態様において、本発明は、マウスB−Ly1抗体に由来する配列および異種ポリペプチドに由来する配列を含むポリペプチド、ならびにこのようなポリペプチドを含む抗原結合分子に向けられる。1つの実施形態において、この抗原結合分子は抗体である。好ましい実施形態において、この抗体はキメラである。別の好ましい実施形態において、この抗体はヒト化または霊長類化されている。
【0031】
さらなる態様において、本発明は、配列番号13を含む単離されたポリペプチドまたはその改変体に向けられる。別の態様において、本発明は、配列番号14を含む単離されたポリペプチドに向けられる。
【0032】
別の態様において、本発明はABMに向けられ、これは、CD20への結合についてマウスB−Ly1抗体と競合することが可能であり、かつこれはキメラである。1つの実施形態において、このABMは抗体またはそのフラグメントである。さらなる実施形態において、このABMは、配列番号1;配列番号30;配列番号32;配列番号34;配列番号36;配列番号38;配列番号40;配列番号42;配列番号44;配列番号46;配列番号48;配列番号50;配列番号52;配列番号54;配列番号56:配列番号58;配列番号60;配列番号62;配列番号64;配列番号66;配列番号68;配列番号70;および配列番号72からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するVH領域を含む組換え抗体である。別の実施形態において、このABMは、配列番号2および配列番号76からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するVL領域を含む組換え抗体である。さらなる実施形態において、このABMは霊長類化されている組換え抗体である。なおさらなる実施形態において、このABMはヒト化されている組換え抗体である。別の実施形態において、このABMはヒトFc領域を含む組換え抗体である。さらなる実施形態において、上記に議論されたABMのいずれかは、毒素または放射性標識などの部分に結合体化されてもよい。
【0033】
本発明はさらに、本発明のABMに関し、このABMは修飾オリゴサッカリドを有する。1つの実施形態において、この修飾オリゴサッカリドは、非修飾オリゴサッカリドと比較した場合に、フコシル化の減少を有する。他の実施形態において、この修飾オリゴサッカリドはハイブリッドまたは複合体である。さらなる実施形態において、このABMは、この分子のFc領域におけるフコシル化されていないオリゴサッカリド、または二分枝でフコシル化されていないオリゴサッカリド割合の増加を有する。1つの実施形態において、二分枝でフコシル化されていないオリゴサッカリドはハイブリッドである。さらなる実施形態において、二分枝でフコシル化されていないオリゴサッカリドは複合体である。1つの実施形態において、このポリペプチドのFc領域における少なくとも20%のオリゴサッカリドがフコシル化されていないか、または二分枝でフコシル化されていない。より好ましい実施形態において、少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、または75%またはそれ以上のオリゴサッカリドがフコシル化されていないか、または二分枝でフコシル化されていない。
【0034】
本発明はさらに、上記で議論したABMのいずれかをコードするポリヌクレオチド、ならびにこのようなポリヌクレオチドを含む発現ベクターおよび細胞に関する。
【0035】
本発明はさらに、CD20に結合することについてマウスB−Ly1抗体と競合することが可能であるABMを産生する方法に関し、ここで、このABMはキメラであり;この方法は、(a)本発明のABMをコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞を、ABMをコードするこのポリヌクレオチドの発現を可能にする条件下で、培地中で培養する工程;および(b)得られる培養液からこのABMを回収する工程を含む。
【0036】
別の態様において、本発明は、本発明のABMを含む薬学的組成物に関する。この薬学的組成物は、薬学的に受容可能なキャリア、アジュバント、またはそれらの組み合わせをさらに含んでもよいことが意図される。
【0037】
さらなる態様において、本発明は、B細胞枯渇によって治療可能である疾患を治療する方法に関する。この方法は、その必要があるヒト被験体に本発明のABMの治療有効量を投与する工程を含む。好ましい実施形態において、この疾患は、キメラ抗体またはキメラ抗体のフラグメントであるABMを投与することによって治療される。
【0038】
なお別の態様において、本発明は、宿主細胞によって産生されるFc領域におけるオリゴサッカリドを修飾するために十分な量で、GnTIII活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1種の核酸を発現するように操作された宿主細胞に関し、ここで、ABMはCD20に結合することについてマウスB−Ly1抗体と競合することが可能であり、ここで、ABMはキメラである。1つの実施形態において、GnTIII活性を有するポリペプチドは融合ポリペプチドである。別の実施形態において、宿主細胞によって産生されるABMは抗体または抗体フラグメントである。さらなる実施形態において、このABMは、ヒトIgGのFc領域に対して等価である領域を含む。
【0039】
本発明はまた、相補性決定領域についての少なくとも特異性決定残基を含む、マウスB−Ly1抗体、またはその改変体もしくは短縮型の少なくとも1つの相補性決定領域を含む単離されたポリヌクレオチドに向けられ、ここで、この単離されたポリヌクレオチドは融合ポリペプチドをコードする。好ましくは、このような単離されたポリヌクレオチドは、抗原結合分子である融合ポリペプチドをコードする。1つの実施形態において、このポリヌクレオチドは、3つの相補性決定領域の各々についての少なくとも特異性決定残基を含む、マウスB−Ly1抗体、またはその改変体もしくは短縮型の3つの相補性決定領域を含む。別の実施形態において、このポリヌクレオチドは、キメラ(例えば、ヒト化)抗体の軽鎖または重鎖の全体の可変領域をコードする。本発明はさらに、このようなポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドに向けられる。
【0040】
別の実施形態において、本発明は、相補性決定領域についての少なくとも特異性決定残基を含む、マウスB−Ly1抗体、またはその改変体もしくは短縮型の少なくとも1つの相補性決定領域を含み、および異種ポリペプチドに由来する配列を含む単離された抗原組み合わせ分子に向けられる。1つの実施形態において、この抗原結合分子は、3つの相補性決定領域の各々についての少なくとも特異性決定残基を含む、マウスB−Ly1抗体、またはその改変体もしくは短縮型の3つの相補性決定領域を含む。別の態様において、この抗原結合分子は抗体の軽鎖または重鎖の可変領域を含む。1つの特に有用な実施形態において、抗原結合分子は、キメラ抗体、例えば、ヒト化抗体である。本発明はまた、このような抗原結合分子を作製する方法、およびB細胞リンパ腫を含む疾患の治療におけるこのような抗原結合分子の使用に向けられる。
【0041】
本発明は、なお強力なアポトーシスの能力を保持しながらII型抗CD20抗体がADCCなどのエフェクター機能の増加を有するように操作された最初の知られている例である。従って、本発明は、捜査の結果として、およびアポトーシスを誘導する実質的な能力の喪失を伴わずに、ADCCの増加を有する操作されたII型抗CD20抗体に向けられる。1つの実施形態において、II型抗CD20抗体は、Fc領域におけるグリコシル化のパターンの変化を有するように操作されている。特定の実施形態において、グリコシル化の変化には、Fc領域における二分枝複合体残基のレベルの増加が含まれる。別の特定の実施形態において、グリコシル化の変化には、Fc領域におけるフコース残基のレベルの減少が含まれる。別の実施形態において、II型抗CD20抗体はポリペプチド操作を受けている。本発明はさらに、このような操作されたII型抗体を作製する方法、およびB細胞リンパ腫を含む、種々のB細胞障害の治療においてこのような抗体を使用する方法に向けられる。
【0042】
本発明の宿主細胞は、CHO細胞、BHK細胞、NSO細胞、SP2/0細胞、YO骨髄腫細胞、P3X63マウス骨髄腫細胞、PER細胞、PER.C6細胞またはハイブリドーマ細胞を含むがこれらに限定されない群より選択されてもよい。1つの実施形態において、本発明の宿主細胞は、マウスB−Ly1抗体のVL領域またはその改変体をコードするポリヌクレオチド、およびヒト免疫グロブリンのFc領域に等価である領域をコードする配列を含むトランスフェクトされたポリヌクレオチドをさらに含む。別の実施形態において、本発明の宿主細胞は、マウスB−Ly1抗体のVH領域またはその改変体をコードするポリヌクレオチド、およびヒト免疫グロブリンのFc領域に等価である領域をコードする配列を含むトランスフェクトされたポリヌクレオチドをさらに含む。
【0043】
さらなる態様において、本発明は、そのオリゴサッカリドの修飾の結果として、Fcレセプター結合親和性の増加および/またはエフェクター機能の増加を示すABMを産生する宿主細胞に向けられる。1つの実施形態において、結合親和性の増加は、Fcレセプター、特にFcγAレセプターへのものである。本明細書で意図されるエフェクター機能は、Fc媒介性細胞傷害性;NK細胞への結合の増加;マクロファージへの結合の増加;多形核細胞への結合の増加;単球への結合の増加;直接的シグナル伝達誘導性アポトーシスの増加;樹状細胞成熟の増加;およびT細胞プライミングの増加を含むがこれらに限定されない群より選択されてもよい。
【0044】
さらなる実施形態において、本発明の宿主細胞は、構成的プロモーターエレメントに作動可能に連結された、GnTIII活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸を含む。
【0045】
別の態様において、本発明は、宿主細胞におけるABMを産生するための方法に向けられ、この方法は、(a)このABMの産生を可能にし、かつこのABMのFc領域上に存在するオリゴサッカリドの修飾を可能にする条件下で、GnTIII活性を有する融合ポリペプチドをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを発現するように操作された宿主細胞を培養する工程;および(b)このABMを単離する工程を含み、ここで、このABMは、CD20に結合することについて、マウスB−Ly1抗体と競合することが可能であり、そしてこのABMはキメラである。1つの実施形態において、GnTIII活性を有するポリペプチドは、好ましくは、GnTIIIの触媒ドメイン、ならびにマンノシダーゼIIの局在化ドメイン、β(1,2)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼI(「GnTI」)の局在化ドメイン、マンノシダーゼIの局在化ドメイン、β(1,2)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼII(「GnTII」)の局在化ドメイン、およびα1−6コアフコシルトランスフェラーゼの局在化ドメインからなる群より選択される異種ゴルジ存在性ポリペプチドのゴルジ局在化ドメインを含む誘導ポリペプチドである。好ましくは、このゴルジ局在化ドメインは、マンノシダーゼIIまたはGnTI由来である。
【0046】
さらなる態様において、本発明は、本発明の少なくとも1つの核酸または発現ベクターを宿主細胞に導入する工程を含む、宿主細胞によって産生される抗CD20 ABMのグリコシル化プロフィールを修飾するための方法に向けられる。1つの実施形態において、このABMは、好ましくはIgGのFc領域を含む抗体またはそのフラグメントである。代替的には、このポリペプチドは、ヒトIgGのFc領域に等価である領域を含む融合タンパク質である。
【0047】
1つの態様において、本発明は、CD20に結合することについてマウスB−Ly1抗体と競合することが可能であり、かつフコシル化の減少を有する組換えキメラ抗体、またはそのフラグメントに関する。
【0048】
別の態様において、本発明は、GnTIII活性を有し、かつ異種ゴルジ存在性ポリペプチドのゴルジ局在化ドメインを含む融合ポリペプチドを使用することによって、本発明の組換え抗体またはそのフラグメントのグリコシル化を修飾する方法に向けられる。1つの実施形態において、本発明の融合ポリペプチドはGnTIIIの触媒ドメインを含む。別の態様において、このゴルジ局在化ドメインは、マンノシダーゼIIの局在化ドメイン、GnTIの局在化ドメイン、マンノシダーゼIの局在化ドメイン、GnTIIの局在化ドメイン、およびα1−6コアフコシルトランスフェラーゼの局在化ドメインからなる群より選択される。好ましくは、このゴルジ局在化ドメインは、マンノシダーゼIIまたはGnTI由来である。
【0049】
1つの実施形態において、本発明の方法は、修飾オリゴサッカリドを有する、組換えキメラ抗体またはそのフラグメントを産生することに向けられ、ここで、この修飾オリゴサッカリドは、非修飾オリゴサッカリドと比較した場合に、フコシル化の減少を有する。本発明に従うと、これらの修飾オリゴサッカリドはハイブリッドまたは複合体であってもよい。別の実施形態において、本発明の方法は、ポリペプチドのFc領域における二分枝でフコシル化されていないオリゴサッカリドの割合の増加を有する、組換えキメラ抗体またはそのフラグメントを産生することに向けられる。1つの実施形態において、二分枝でフコシル化されていないオリゴサッカリドはハイブリッドである。別の実施形態において、二分枝でフコシル化されていないオリゴサッカリドは複合体である。さらなる実施形態において、本発明の方法は、ポリペプチドのFc領域において少なくとも20%の二分枝でフコシル化されていないオリゴサッカリドを有する組換えキメラ抗体またはそのフラグメントを産生することに向けられる。好ましい実施形態において、ポリペプチドのFc領域における少なくとも30%のオリゴサッカリドが二分枝でフコシル化されていない。別の好ましい実施形態において、ポリペプチドのFc領域における少なくとも35%のオリゴサッカリドが二分枝でフコシル化されていない。
【0050】
さらなる態様において、本発明は、そのオリゴサッカリドの修飾の結果として、Fcレセプター結合親和性の増加および/またはエフェクター機能の増加を示す、組換えキメラ抗体またはそのフラグメントに向けられる。1つの実施形態において、結合親和性の増加は、Fc活性化レセプターへのものである。さらなる実施形態において、FcレセプターはFcγ活性化レセプター、特にFcγRIIIAレセプターである。本明細書で意図されるエフェクター機能は、Fc媒介性細胞傷害性;NK細胞への結合の増加;マクロファージへの結合の増加;多形核細胞への結合の増加;単球への結合の増加;直接的シグナル伝達誘導性アポトーシスの増加;樹状細胞成熟の増加;およびT細胞プライミングの増加を含むがこれらに限定されない群より選択されてもよい。
【0051】
別の態様において、本発明は、本発明の方法のいずれかによって産生されるエフェクター機能の増加を有するように操作された、マウスB−Ly1抗体の結合特異性を有し、かつFc領域を含む組換え抗体キメラフラグメントに向けられる。
【0052】
別の態様において、本発明は、配列番号1の配列を有するポリペプチド、ならびに免疫グロブリンのFc領域と等価であり、かつ本発明の方法のいずれかによって産生されるエフェクター機能の増加を有するように操作された領域を含む融合タンパク質に向けられる。
【0053】
別の態様において、本発明は、配列番号2の配列を有するポリペプチド、ならびに免疫グロブリンのFc領域と等価であり、かつ本発明の方法のいずれかによって産生されるエフェクター機能の増加を有するように操作された領域を含む融合タンパク質に向けられる。
【0054】
1つの態様において、本発明は、本発明の方法のいずれかによって産生される組換えキメラ抗体および薬学的に許容可能なキャリアを含む医薬組成物に向けられる。別の態様において、本発明は、本発明の方法のいずれかによって産生される組換えキメラ抗体フラグメントおよび薬学的に許容可能なキャリアを含む医薬組成物に向けられる。別の態様において、本発明は、本発明の方法のいずれかによって産生される融合タンパク質および薬学的に許容可能なキャリアを含む医薬組成物に向けられる。
【0055】
本発明はさらに、その必要があるヒト被験体に、本発明の方法のいずれかによって産生される組換えキメラ抗体またはそのフラグメントの治療有効量を投与する工程を含む、B細胞枯渇によって治療可能である疾患を治療する方法に向けられる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】マウスB−Ly1のVH領域のヌクレオチド配列(配列番号3)およびアミノ酸配列(配列番号1)。
【図2】マウスB−Ly1のVL領域のヌクレオチド配列(配列番号4)およびアミノ酸配列(配列番号2)。
【図3】Raji Bリンパ腫細胞CD20へのリツキシマブ(登録商標)(○)およびch−B Ly1(△)の結合。
【図4】FcγRIIIa−158V/F遺伝子型の3つの異なるクラスの全血中でのリツキシマブ(登録商標)(○)およびch−B Ly1(△)によるB細胞枯渇:(A)F/Fドナーからの全血、より低い親和性のレセプターについてホモ接合性:(B)F/Vドナーからの全血、親和性レセプターについてヘテロ接合性;および(C)V/Vドナーからの全血、より高い親和性レセプターについてホモ接合性。
【図5A】キメラ抗CD20抗体の重鎖のヌクレオチド配列(配列番号11)およびアミノ酸配列(配列番号13)。
【図5B】キメラ抗CD20抗体の重鎖のヌクレオチド配列(配列番号11)およびアミノ酸配列(配列番号13)。
【図5C】キメラ抗CD20抗体の重鎖のヌクレオチド配列(配列番号11)およびアミノ酸配列(配列番号13)。
【図6A】キメラ抗CD20抗体の軽鎖のヌクレオチド配列(配列番号12)およびアミノ酸配列(配列番号14)。
【図6B】キメラ抗CD20抗体の軽鎖のヌクレオチド配列(配列番号12)およびアミノ酸配列(配列番号14)。
【図7】B−Ly1抗体CDRのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列。(A)VH領域についての推定CDR。(B)VL領域についての推定CDR。
【図8A】糖付加操作されたキメラB−Ly1抗体のMALDI−TOFプロフィール。(A)特異的パーセンテージを詳細を示す表。
【図8B】(B)糖付加操作されたキメラB−Ly1についてのスペクトル。
【図8C】(C)Endo−Hで処理された、糖付加操作されたキメラB−Ly1についてのスペクトル。
【図9】Raji B細胞への異なるヒト化抗CD20抗体の結合。B−HH2構築物、B−HL8構築物、B−HL11構築物の間の違いは、フレームワーク1および2の領域に位置し、3つのCDRは同一である。B−HL8およびB−HL11はヒトVH3クラスに由来するそれらのFR1配列およびFR2配列を有するのに対して、完全なB−HH2フレームワークはヒトVH1由来である。B−HL11は、単一の変異Glu1Glnを有するB−HL8の誘導体であり、GlnはB−HH2構築物におけるアミノ酸残基である。このことは、Glu1Gln交換が結合の親和性または強度を変化させないことを意味する。B−HH2とB−HL8の間の他の違いは14FR残基であり、これから1つ以上がこの抗体の抗原結合挙動に影響を与える。
【図10】Raji標的細胞上でのヒト化抗CD20抗体BHL4−KV1の結合。B−HL4構築物は、B−HH2のFR1を、ヒト生殖系列配列VH1 45のそれと置換することによって、B−HH2から誘導体化される。この構築物は、FR1内の3つのみの位置に異なるアミノ酸を有するにも関わらず、非常に減少した抗原結合能力を示す。これらの残基は、Kabat番号付けに従って、2位、14位、および30位に位置する。当然、30位が最も影響力のある位置であるらしい。なぜなら、これはCDR1のChothia定義の部分であるからである。
【図11】B−HH1、B−HH2、B−HH3、および親の抗体B−ly1の間の結合挙動の比較。このデータは、全てのAbが同様のEC50値を示すが、B−HH1構築物は、改変体B−HH2およびB−HH3よりも低い強度/化学量論で結合することを示す。B−HH1は、その部分的なヒトCDR1およびCDR2領域(Kabat定義)によって、ならびに28位(Kabat番号付け)におけるAla/Thr多型によってB−HH2およびB−HH3から区別され得る。このことは、28位、完全なCDR1、および/または完全なCDR2のいずれかが抗体/抗原相互作用のために重要であることを示す。
【図12】B−HL1、B−HH1、および親のB−ly1抗体の比較。このデータは、B−HL1構築物におけるいかなる結合活性も非存在であること、およびB−ly1と比較してB−HH1の結合強度/化学量論が約半分であることを示した。B−HL1ならびにB−HH1の両方が、ヒトVH1クラスに由来するアクセプターフレームワークに基づいて設計される。他の違いの間では、B−HL1構築物の71位(Kabat番号付け)が顕著な違いであり、抗原結合についてのその推定的な重要性を示す。
【図13】抗CD20抗体のその抗原に対する能力のフルオロサイトメトリー分析。このデータは、B−HL2構築物およびB−HL3構築物がCD20結合活性を示さないことを示した。
【図14】Z−138 MCL細胞に対する抗CD20抗体のアポトーシス。
【図15】抗CD20抗体によるアポトーシス。アッセイの詳細:5×105細胞/ウェルを24ウェルプレート中(5×105細胞/ml)、培養培地中で播種した。10mgのそれぞれのAb、ネガティブコントロールのためのPBS、または5mM カンプトテシン(CPT)ポジティブコントロールをウェルに加えた。サンプルを一晩(16時間)インキュベートし、AnnV−FITCで染色し、そしてFACSによって分析した。アッセイを3連で行った(*):PBS単独についてのシグナルを減算した(PBS単独は、それぞれ、PR−1細胞およびZ−138細胞について、8%および2%のAnnV+を与えた)。使用した抗体は:C2B8(キメラ、非糖付加操作);BHH2−KV1(ヒト化、非糖付加操作)であった。注記:このアッセイは、任意のさらなるエフェクター細胞を含まず、標的プラス抗体またはコントロールのみである。
【図16】免疫エフェクター細胞を用いる抗CD20抗体による標的細胞の殺傷。アッセイの詳細:正常全血中のB細胞枯渇の一晩インキュベーションおよびFACSによるCD19+/CD3+についての分析。PBMCをエフェクターとして使用するADCC、4時間インキュベーション、25:1エフェクター:標的比率、標的殺傷は、界面活性剤溶解(100%)およびAbなしでの溶解(0%)と比較したカルセイン保持によって測定。使用した抗体:C2B8(キメラ、非糖付加操作型);BHH2−KV1−wt(BHH2−KV1のヒト化、非糖付加操作型);BHH2−KV1−GE(BHH2−KV1のヒト化、糖付加操作型)。
【図17】非修飾、非糖付加操作BHH2−KV1ヒト化IgG1 B−ly1抗ヒトCD20抗体の、PNGアーゼFによって遊離されたFc−オリゴサッカリドのMALDI/TOF−MSプロフィール。
【図18】糖付加操作BHH2−KV1g1ヒト化IgG1 B−ly1抗ヒトCD20抗体の、PNGアーゼFによって遊離されたFc−オリゴサッカリドのMALDI/TOF−MSプロフィール。糖付加操作を、抗体遺伝子およびβ−1,4−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnT−III)触媒活性を有する酵素をコードする遺伝子の、宿主細胞における同時発現によって行った。
【図19】糖付加操作BHH2−KV1g2ヒト化IgG1 B−ly1抗ヒトCD20抗体の、PNGアーゼFによって遊離されたFc−オリゴサッカリドのMALDI/TOF−MSプロフィール。糖付加操作を、抗体遺伝子およびβ−1,4−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnT−III)触媒活性を有する酵素をコードし、およびゴルジα−マンノシダーゼII触媒活性を有する酵素をコードする遺伝子の、宿主細胞における同時発現によって行った。
【図20】組換えCHO−CD16細胞の表面上に提示されるヒトFcガンマRIIIaレセプターへの非糖付加操作抗体および糖付加操作抗体の結合。
【図21】Z−138 MCL細胞上での非Fc操作された抗CD20抗体およびFc操作された抗CD20抗体のアポトーシス。アッセイの詳細:5×105細胞/ウェルを24ウェルプレートに(5×105細胞/ml)、培養培地中で播種した。10mgのそれぞれのAb、ネガティブコントロールのためのPBSをウェルに加えた。サンプルを一晩(16時間)インキュベートし、AnnV−FITCで染色し、そしてFACSで分析した。アッセイを3連で行った。使用した抗体:C2B8=リツキシマブ(キメラ、非糖付加操作型、市販の型と同じ);BHH2−KV1(ヒト化、非糖操作−グリコシル化プロフィールについては図6を参照のこと);BHH2−KV1g1(ヒト化、糖付加操作−グリコシル化プロフィールについては図7を参照のこと);BHH2−KV1g2(ヒト化、糖付加操作−グリコシル化プロフィールについては図8を参照のこと);注記:このアッセイは、任意のさらなるエフェクター細胞を含まず、標的プラス抗体またはコントロールのみである。(*):PBS単独についてのシグナルを減算した。
【発明を実施するための形態】
【0057】
本明細書で使用される用語は、以下のように他に定義されない限り、当分野において一般的に使用されている用語である。
【0058】
本明細書で使用される場合、用語、抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体および多特異性(例えば、二特異性)抗体を含む全体の抗体分子、ならびにFc領域を有しかつ結合特異性を保持している抗体フラグメント、および免疫グロブリンのFc領域に等価である領域を含みかつ結合特異性を保持している融合タンパク質を含むことが意図される。ヒト化抗体、霊長類化抗体、およびキメラ抗体もまた含まれる。
【0059】
本明細書で使用される場合、用語、Fc領域は、IgG重鎖のC末端領域をいうことが意図される。IgG重鎖のFc領域の境界はわずかに異なる可能性があるが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226位のアミノ酸残基からカルボキシル末端までに広がると通常定義される。
【0060】
本明細書で使用される場合、用語、免疫グロブリンのFc領域に等価である領域は、免疫グロブリンのFc領域の天然に存在する対立遺伝子改変体、ならびに置換、付加、または欠失を生じるが、免疫グロブリンがエフェクター機能を媒介する能力(抗体依存的な細胞傷害性)を実質的に減少しない変化を有する改変体を含むことが意図される。例えば、1つ以上のアミノ酸が、免疫グロブリンのFc領域のN末端またはC末端から、生物学的機能の実質的な損失を伴うことなく、欠失され得る。このような改変体は、活性に対して最小限の効果を有するように、当分野において公知である一般的規則に従って選択され得る(例えば、Bowie,J.U.ら、Science 247:1306−10(1990)を参照のこと)。
【0061】
本明細書で使用される場合、用語、抗原結合分子とは、その最も広い意味において、抗原決定基を特異的に結合する分子をいう。より詳細には、CD20を結合する抗原結合分子は、一般的にはCD20と呼ばれる、ヒトBリンパ球に制限された分化抗原Bp35として典型的には意味される、35,000ダルトンの細胞表面非グリコシル化リンタンパク質に特異的に結合する分子である。「特異的に結合する」によって、結合が抗原について選択的であり、かつ望ましくないまたは非特異的な相互作用から区別され得ることが意味される。
【0062】
本明細書で使用される場合、用語、融合物またはキメラは、ABMなどのポリペプチドに関連して使用される場合、異なる種からの抗体の部分などの2つ以上の異種ポリペプチドに由来するアミノ酸配列を含むポリペプチドをいう。キメラABMについては、例えば、非抗原結合成分が、チンパンジーおよびヒトなどの霊長類を含む広範な種々の種に由来されてもよい。キメラABMの定常領域は、最も好ましくは、天然のヒト抗体の定常領域と実質的に同一であり;キメラ抗体の可変領域は、最も好ましくは、マウスB−Ly1可変領域のアミノ酸配列を有する組換え抗CD−20抗体のそれと同一である。ヒト化抗体は、特に好ましい融合抗体またはキメラ抗体の型である。
【0063】
本明細書で使用される場合、「GnTIII活性」を有するポリペプチドとは、N連結オリゴサッカリドのトリマンノシルコアのβ連結マンノシドへのβ−1−4結合におけるN−アセチルグルコサミン(GlcNAc)残基の付加を触媒することができるポリペプチドをいう。これは、特定の生物学的アッセイにおいて測定した場合に、用量依存性を伴ってまたは伴わずに、国際生化学分子生物学連合の命名委員会に従うβ−1,4−マンノシル−糖タンパク質4−β−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(EC2.4.1.144)としても知られている、β(1,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIIIの活性に類似しているが、同一である必要はない酵素活性を示す融合ポリペプチドを含む。用量依存性が存在する場合において、これは、GnTIIIのそれと同一である必要はないが、むしろ、GnTIIIと比較して、所定の活性における用量依存性に実質的に類似する(すなわち、候補ポリペプチドは、GnTIIIと比較して、より高い活性または約25分の1以下、および好ましくは、約10分の1以下の活性、および最も好ましくは、約3分の1以下の活性を示す)。
【0064】
本明細書で使用される場合、用語、改変体(またはアナログ)とは、例えば、組換えDDNA技術を使用して作製された、アミノ酸の挿入、欠失、および置換によって、本発明の特に列挙されるポリペプチドとは異なるポリペプチドをいう。本発明のABMの改変体には、キメラ抗原結合分子、霊長類化抗原結合分子、またはヒト化抗原結合分子が含まれ、ここで、1個または数個のアミノ酸残基が、抗原(例えば、CD20)結合親和性には実質的に影響を与えないような様式で、置換、付加、および/または欠失によって修飾されている。どのアミノ酸残基が目的の活性を消滅させることなく置換、付加、または欠失され得るかを決定する際の手引きは、特定のポリペプチドの配列を同種ペプチドの配列と比較すること、および高い相同性の領域(保存性領域)において行われるアミノ酸配列変化の数を最小化することによって、またはコンセンサス配列でアミノ酸配列を置換することによって見いだされ得る。
【0065】
代替的には、これらの同じかまたは類似のポリペプチドをコードする組換え改変体は、遺伝コードの「冗長性」を利用することによって、合成または選択されてもよい。種々の制限部位を生じるサイレント変化などの種々のコドン置換が、プラスミドもしくはウイルスベクターへのクローニングまたは特定の原核系もしくは真核系における発現を最適化するために導入されてもよい。ポリヌクレオチド配列における変異は、ポリペプチド、またはポリペプチドの任意の部分の特性を修飾するために、リガンド結合親和性、鎖間親和性、または分解/代謝回転速度などの特性を変化させるために、そのポリペプチドに付加された他のペプチドのドメインにおいて反映され得る。
【0066】
好ましくは、アミノ酸「置換」は、1つのアミノ酸を、類似の構造および/または化学的特性を有する別のアミノ酸で置換すること、すなわち、保存性アミノ酸置換の結果である。「保存性」アミノ酸置換は、関与する残基の極性、電荷、溶解性、疎水性、親水性、および/または両親媒性の性質に基づいて行われ得る。例えば、非極性(疎水性)アミノ酸には、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、およびメチオニンが含まれ;極性中性アミノ酸には、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、およびグルタミンが含まれ;正電荷を有する(塩基性)アミノ酸には、アルギニン、リジン、およびヒスチジンが含まれ;ならびに負電荷を有するアミノ酸には、アスパラギン酸およびグルタミン酸が含まれる。「挿入」または「欠失」は、好ましくは、約1〜20アミノ酸、より好ましくは1〜10アミノ酸の範囲である。許容されるバリエーションは、組換えDNA技術を使用して、および活性について得られる組換え改変体をアッセイして、ポリペプチド分子中のアミノ酸の挿入、欠失、または置換を体系的に作製することによって、実験的に決定され得る。
【0067】
本明細書で使用される場合、用語、ヒト化は、親の分子の抗原結合特性を保持するかまたは実質的に保持するが、ヒトにおいて免疫原性が低い非ヒト抗原結合分子、例えば、マウス抗体に由来する抗原結合分子をいうために使用される。これは、(a)キメラ抗体を生成するためにヒト定常領域に全体の非ヒト可変ドメインを移植する工程、(b)決定的なフレームワーク残基(例えば、良好な抗原結合親和性または抗体機能を保持するために重要であるもの)の保持を伴うかもしくは伴わない、ヒトフレームワークおよび定常領域に非ヒトCDRのみを移植する工程、または(c)全体の非ヒト可変ドメインを移植するが、これらの表面残基の置換によってヒト様部分で「覆う」工程を含む種々の方法によって達成され得る。このような方法は、Jonesら、Morrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.,81:6851−6855(1984);MorrisonおよびOi、Adv.Immunol.,44:65−92(1988);Verhoeyenら、Science,239:1534−1536(1988);Padlan,Molec.Immun.,28:489−498(1991);Padlan,Molec.Immun.,31(3):169−217(1994)において開示されており、これらの全ては、それらの全体が本明細書に参照として組み込まれる。一般的に、3つの相補性決定領域、すなわちCDR(CDR1、CDR2およびCDR3)が、抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメインの各々に存在し、これらは、抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメインの各々において4つのフレームワークサブ領域(すわわち、FR1、FR2、FR3、およびFR4)によって隣接されている。FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4。ヒト化抗体の議論は、とりわけ、米国特許第6,632,927号および米国出願公開第2003/0175269号に見いだされ得、これらの両方は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0068】
同様に、本明細書で使用される場合、用語、霊長類化は、親の分子の抗原結合特性を保持するかまたは実質的に保持するが、霊長類において免疫原性が低い非霊長類抗原結合分子、例えば、マウス抗体に由来する抗原結合分子をいうために使用される。
【0069】
当分野において使用され、および/または受容される1つの用語の2つ以上の定義が存在する場合には、本明細書で使用される用語の定義は、明白に反対のことが言及されない限り、全てのこのような意味を含むことが意図される。特定の例は、重鎖と軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域中に見いだされる不連続抗原組み合わせ部位を説明するための用語「相補性決定領域」(「CDR」)の使用である。この特定の領域は、Kabatら、U.S.Dept.of Health and Human Services,「Sequences of Proteins of Immunological Interest」(1983)およびChothiaら、J.Mol.Biol.196:901−917(1987)によって記載されており、これらは参照により本明細書に援用され、ここでこの定義は、互いに対して比較した場合に、アミノ酸残基の重複またはサブセットを含む。それにも関わらず、抗体またはその改変体のCDRをいうためのいずれの定義の適用も、本明細書で定義され、および使用される用語の範囲内にあることが意図される。上記に引用した参考文献の各々によって定義されたCDRを含む適切なアミノ酸残基は、比較として表1において以下に記載される。特定のCDRを含む正確な残基の番号は、CDRの配列およびサイズに依存して変化する。当業者は、抗体の可変領域のアミノ酸配列が与えられると、どの残基が特定のCDRを含むかを慣用的に決定することができる。
【0070】
【表1】
【0071】
Kabatらはまた、任意の抗体に適用可能である可変ドメイン配列についての番号付けを定義した。当業者は、配列それ自体を超えたいかなる実験データにも頼ることなく、任意の可変ドメインに「Kabat番号付け」のこのシステムを明白に割り当てることができる。本明細書で使用される場合、「Kabat番号付け」とは、Kabatら、U.S.Dept.of Health and Human Services,「Sequence of Proteins of Immunological Interest」(1983)によって示される番号付けシステムをいう。他に特定されない限り、ABM中の特定のアミノ酸残基の位置の番号付けはKabat番号付けシステムに従う。配列表の配列(すなわち、配列番号1〜配列番号78)は、Kabat番号付けシステムに従って番号付けされていない。
【0072】
本発明の参照ヌクレオチド配列に対して、少なくとも、例えば、95%「同一である」ヌクレオチド配列を有する核酸またはヌクレオチドによって、ポリヌクレオチド配列が参照ヌクレオチド配列の各100ヌクレオチドあたり5個までの点変異を含んでもよいこと以外は、このポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は参照配列と同一であることが意図される。換言すれば、参照ヌクレオチド配列に対して少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを得るために、参照配列中の5%までのヌクレオチドが欠失されるかもしくは別のヌクレオチドで置換されてもよく、または参照配列中の全ヌクレオチドの5%までの数のヌクレオチドが参照ヌクレオチドに挿入されてもよい。問い合わせ配列は、図24または図25のいずれかに示される全体の配列であってもよい。
【0073】
実際問題として、任意の特定の核酸分子またはポリペプチドが、本発明のヌクレオチド配列またはポリペプチド配列に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるか否かは、公知のコンピュータプログラムを使用して慣用的に決定され得る。グローバル配列アラインメントとも呼ばれる、問い合わせ配列(本発明の配列)と対象配列との間の最良の全体の一致を決定するための好ましい方法は、Brutlagら、Comp.App.Biosci.6:237−245(1990)のアルゴリズムに基づくFASTDBコンピュータプログラムを使用して決定され得る。配列アラインメントにおいては、問い合わせ配列および対象配列は両方ともDNA配列である。RNA配列は、UをTに変換することによって比較され得る。このグローバル配列アラインメントの結果は同一性パーセントである。同一性パーセントを計算するためにDNA配列のFASTDBアラインメントにおいて使用される好ましいパラメーターは以下である。マトリックス=単一、k−タプル=4、ミスマッチペナルティー=1、結合ペナルティー=30、ランダム化グループ長=0、カットオフスコア=1、ギャップペナルティー=5、ギャップサイズペナルティー0.05、ウィンドウサイズ=500または対象ヌクレオチド配列の長さのどちらか短い方。
【0074】
内部の欠失のためではなく、5’欠失または3’欠失のために対象配列が問い合わせ配列よりも短い場合、手動の補正が結果に対して行わなければならない。これは、FASTDBプログラムが、同一性パーセントを計算する場合に、対象配列の5’および3’短縮を計算に入れないからである。5’末端または3’末端で短縮されている対象配列については、問い合わせ配列と比較して、同一性パーセントは、問い合わせ配列の全体の塩基のパーセントとして一致/アラインしない、対象配列の5’および3’である問い合わせ配列の塩基の数を計算することによって補正される。ヌクレオチドが一致/アラインされるか否かは、FASTDB配列アラインメントの結果によって決定される。次いで、このパーセンテージが、同一性パーセントから減算され、特定のパラメーターを使用して上記のFASTDBプログラムによって計算されて、最終的な同一性パーセントスコアに到達する。この補正されたスコアは、本発明の目的のために使用されるものである。問い合わせ配列と一致/アラインしない、FASTDBアラインメントによって示されるような、対象配列の5’塩基および3’塩基の外側の塩基のみが、同一性パーセントスコアを手動で調整する目的のために計算される。
【0075】
例えば、90塩基の対象配列が、同一性パーセントを決定するために100塩基の問い合わせ配列とアラインされる。欠失は対象配列の5’末端で起こり、それゆえに、FASTDBアラインメントは、5’末端における最初の10塩基の一致/アラインメントを示さない。この10個の対合しない塩基は配列の10%を表し(一致しない5’末端および3’末端の数/問い合わせ配列における塩基の総数)、従って、10%が、FASTDBプログラムによって計算されたパーセント同一性スコアから減算される。残りの90塩基が完全に一致するならば、最終的な同一性パーセントは90%である。別の例において、90塩基の対象配列が100塩基の問い合わせ配列と比較される。今回は欠失が内部欠失であり、その結果、問い合わせと一致/アラインしない、対象の5’末端または3’末端上の塩基は存在しない。この場合、FASTDBによって計算された同一性パーセントは手動で補正されない。再度、問い合わせ配列と一致/アラインしない対象配列の塩基の5’および3’のみが、手動で補正される。他の手動の補正は、本発明の目的のためには行われない。
【0076】
本発明の問い合わせアミノ酸配列に対して、少なくとも、例えば、95%「同一である」アミノ酸配列を有するポリペプチドによって、対象のポリペプチドのアミノ酸配列が、対象のポリペプチド配列が問い合わせアミノ酸配列の各100アミノ酸あたりに5個までのアミノ酸の変化を含んでもよいこと以外は、問い合わせ配列と同一であることが意図される。換言すれば、問い合わせヌクレオチド配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを得るために、対象配列中の5%までのアミノ酸残基が挿入、欠失、または別のアミノ酸で置換されてもよい。参照配列のこれらの変化は、参照アミノ酸配列のアミノ末端もしくはカルボキシ末端の位置で、または参照配列中の残基間に個々に、もしくは参照配列中の1つ以上の連続する基においてのいずれかで散在して、これらの末端間の任意の位置に存在してもよい。
【0077】
実際問題として、任意の特定のポリペプチドが、参照ポリペプチドに対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるか否かは、公知のコンピュータプログラムを使用して慣用的に決定され得る。グローバル配列アラインメントとも呼ばれる、問い合わせ配列(本発明の配列)と対象配列との間の最良の全体の一致を決定するための好ましい方法は、Brutlagら、Comp.App.Biosci.6:237−245(1990)のアルゴリズムに基づくFASTDBコンピュータプログラムを使用して決定され得る。配列アラインメントにおいては、問い合わせ配列および対象配列は両方ともヌクレオチド配列であるか、または両方ともアミノ酸配列であるかのいずれかである。このグローバル配列アラインメントの結果は同一性パーセントである。FASTDBアミノ酸アラインメントにおいて使用される好ましいパラメーターは以下である。マトリックス=PAM 0、k−タプル=2、ミスマッチペナルティー=1、結合ペナルティー=20、ランダム化グループ長=0、カットオフスコア=1、ウィンドウサイズ=配列長、ギャップペナルティー=5、ギャップサイズペナルティー0.05、ウィンドウサイズ=500または対象アミノ酸配列の長さのどちらか短い方。
【0078】
内部の欠失のためではなく、N末端欠失またはC末端欠失のために対象配列が問い合わせ配列よりも短い場合、手動の補正が結果に対して行わなければならない。これは、FASTDBプログラムが、全体同一性パーセントを計算する場合に、対象配列のN末端およびC末端短縮を計算に入れないからである。N末端またはC末端で短縮されている対象配列については、問い合わせ配列と比較して、同一性パーセントは、問い合わせ配列の全体の塩基のパーセントとして、対応する対象の残基と一致/アラインしない、対象配列のN末端およびC末端である問い合わせ配列の塩基の数を計算することによって補正される。残基が一致/アラインされるか否かは、FASTDB配列アラインメントの結果によって決定される。次いで、このパーセンテージが、同一性パーセントから減算され、特定のパラメーターを使用して上記のFASTDBプログラムによって計算されて、最終的な同一性パーセントスコアに到達する。この最終的な同一性パーセントスコアが、本発明の目的のために使用されるものである。問い合わせ配列と一致/アラインしない、対象配列のN末端およびC末端への残基のみが、同一性パーセントスコアを手動で調整する目的のためのものと見なされる。すなわち、対象配列の最も遠いN末端およびC末端の残基の外側の位置の問い合わせ残基のみである。
【0079】
例えば、90アミノ酸残基の対象配列が、同一性パーセントを決定するために100残基の問い合わせ配列とアラインされる。欠失は対象配列のN末端で起こり、それゆえに、FASTDBアラインメントは、N末端における最初の10残基の一致/アラインメントを示さない。この10個の対合しない残基は配列の10%を表し(一致しないN末端およびC末端の数/問い合わせ配列における残基の総数)、従って、10%が、FASTDBプログラムによって計算されたパーセント同一性スコアから減算される。残りの90残基が完全に一致するならば、最終的な同一性パーセントは90%である。別の例において、90残基の対象配列が100残基の問い合わせ配列と比較される。今回は欠失が内部欠失であり、その結果、問い合わせと一致/アラインしない、対象配列のN末端またはC末端上の残基は存在しない。この場合、FASTDBによって計算された同一性パーセントは手動で補正されない。再度、FASTDBによって示されるような、問い合わせ配列と一致/アラインしない、対象配列の残基のN末端およびC末端のみが手動で補正される。他の手動の補正は、本発明の目的のためには行われない。
【0080】
本明細書で使用される場合、本発明の核酸配列に「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」核酸とは、50%ホルムアミド、5×SSC(750mM NaCl、75mM クエン酸ナトリウム)、50mM リン酸ナトリウム(pH 7.6)、5×Denhardt’s溶液、10% 硫酸デキストラン、および20μg/ml 変性剪断サケ精子DNAを含む溶液中、42℃での一晩インキュベーション、続いて0.1×SSC中、65℃での洗浄でハイブリダイズするポリヌクレオチドをいう。
【0081】
本明細書で使用される場合、用語、ゴルジ局在化ドメインとは、ゴルジ複合体中での局在化においてポリペプチドを固定するための原因である、ゴルジ存在性ポリペプチドのアミノ酸配列をいう。一般的に、局在化ドメインは、酵素のアミノ末端「テール」を含む。
【0082】
本明細書で使用される場合、用語、エフェクター機能とは、抗体のFc領域(ネイティブ配列のFc領域またはアミノ酸配列改変体のFc領域)に起因し得る生物学的活性をいう。抗体エフェクター機能の例には、Fcレセプター結合親和性、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)、抗体依存性細胞食作用(ADCP)、サイトカイン分泌、抗原提示細胞による免疫複合体媒介性の抗原取り込み、細胞表面レセプターのダウンレギュレーションなどが含まれるがこれらに限定されない。
【0083】
本明細書で使用される場合、用語、操作する、操作された、操作すること、およびグリコシル化操作は、天然に存在するポリペプチドまたは組換えポリペプチドまたはそのフラグメントのグリコシル化パターンの任意の操作を含むと見なされる。グリコシル化操作には、細胞中で発現される糖タンパク質のグリコシル化の変化を達成するためのオリゴサッカリド合成経路の遺伝子操作を含む、細胞のグリコシル化機構の代謝的操作を含む。さらに、グリコシル化操作は、グリコシル化に対する変異および細胞環境の効果を含む。
【0084】
本明細書で使用される場合、用語、宿主細胞は、本発明のポリペプチドおよび抗原結合分子を生成するために操作され得る任意の種の細胞系を網羅する。1つの実施形態において、宿主細胞は、修飾糖タンパク質を有する抗原結合分子の産生を可能にするように操作される。好ましい実施形態において、抗原結合分子は、抗体、抗体フラグメント、または融合タンパク質である。特定の実施形態において、宿主細胞は、GnTIII活性を有する1つ以上のポリペプチドのレベルの増加を発現するようにさらに操作されている。宿主細胞には、培養細胞、例えば、哺乳動物培養細胞、ほんの少し例を挙げれば、例えば、CHO細胞、BHK細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、YO骨髄腫細胞、P3X63マウス骨髄腫細胞、PER細胞、PER.C6細胞、またはハイブリドーマ細胞など、酵母細胞、昆虫細胞、および植物細胞が含まれるが、トランスジェニック動物、トランスジェニック植物、または培養した植物もしくは動物の組織中に含まれる細胞もまた含まれる。
【0085】
本明細書で使用される場合、用語、Fc媒介性細胞傷害性は、抗体依存性細胞傷害性およびヒトFc領域を含む可溶性Fc融合タンパク質によって媒介される細胞傷害性を含む。これは「ヒト免疫エフェクター細胞」による「抗体標的化細胞」の溶解に導く免疫メカニズムである。ここで:
【0086】
ヒト免疫エフェクター細胞は、それらが抗体またはFc融合タンパク質のFc領域にそれを通して結合する、それらの表面上のFcレセプターを表示し、およびエフェクター機能を実行する白血球の集団である。このような集団には、末梢血単球細胞(PBMC)および/またはナチュラルキラー(NK)細胞が含まれ得るがこれらに限定されない。
【0087】
抗体標的化細胞は、抗体またはFc融合タンパク質によって結合される細胞である。抗体またはFc融合タンパク質は、Fc領域に対してN末端であるタンパク質部分を通して標的細胞に結合する。
【0088】
本明細書で使用される場合、用語、Fc媒介性細胞傷害性の増加は、標的細胞を取り囲む培地中で、上記に定義されたFc媒介性細胞傷害性のメカニズムによって、所定の時間内に、所定の抗体もしくFc融合タンパク質の濃度で溶解される「抗体標的化細胞」の数の増加、および/またはFc媒介性細胞傷害性のメカニズムによって、所定の時間内に、所定の数の「抗体標的化細胞」の溶解を達成するために必要とされる、標的細胞を取り囲む培地中の抗体もしくはFc融合タンパク質の濃度の減少のいずれかとして定義される。Fc媒介性細胞傷害性の増加は、当業者に公知である、同じ標準的な産生、精製、製剤、および保存の方法を使用して、同じ型の宿主細胞によって産生される、同じ型の抗体またはFc融合タンパク質によって媒介される細胞傷害性に比例するが、これは、本明細書に記載される方法によって、グリコシルトランスフェラーゼGnTIIIを発現するように操作された宿主細胞によって産生されなかった。
【0089】
抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を有する抗体によって、当業者に公知である任意の適切な方法によって決定されるような、ADCCの増加を有する抗体が意味され、この用語は本明細書で定義される通りのものである。1つの受容されるインビトロADCCアッセイは以下の通りである。
1)このアッセイは、抗体の抗原結合領域によって認識される標的抗原を発現することが知られている標的細胞を使用する;
2)このアッセイは、エフェクター細胞として、ランダムに選択された健常ドナーの血液から単離されたヒト末梢血単球細胞(PBMC)を使用する;
3)このアッセイは以下のプロトコールに従って使用される。
i)PBMCを、標準的な密度遠心分離手順を使用して単離し、RPMI細胞培養培地中、5×106細胞/mlで懸濁する;
ii)標的細胞を、90%よりも高い生存度を有する指数増殖期から、標準的な培養方法によって増殖させ、RPMI細胞培養培地中で洗浄し、100マイクロキュリーの51Crで標識し、細胞培養培地で2回洗浄し、そして105細胞/mlの密度で細胞培養培地中に再懸濁する;
iii)100マイクロリットルの上記の最終的な標的細胞懸濁物を、96ウェルマイクロタイタープレートの各ウェルに移す;
iv)抗体を、細胞培養培地中で4000ng/mlから0.04ng/mlまで段階希釈し、得られる抗体溶液の50マイクロリットルを96ウェルマイクロタイタープレート中の標的細胞に加えて、上記の全体の濃度範囲を網羅する種々抗体濃度を3連で試験する;
v)最大放出(MR)コントロールのために、標識された標的細胞を含む、プレート中の3つのさらなるウェルは、抗体溶液(上記の要点iv)の代わりに、50マイクロリットルの2%(V/V)非イオン性界面活性剤(Nonidet,Sigma,St.Louis)の水溶液を受容する;
vi)自発性放出(SR)コントロールのために、標識された標的細胞を含む、プレート中の3つのさらなるウェルに、抗体溶液(上記の要点iv)の代わりに、50マイクロリットルのRPMI細胞培養培地を受容する;
vii)次いで、96ウェルマイクロタイタープレートを、50×gで1分間遠心分離し、そして1時間4℃でインキュベートする;
viii)50マイクロリットルのPBMC懸濁液(上記の要点i)を各ウェルに加えて25:1のエフェクター:標的細胞比を生じ、そしてプレートをインキュベーター中、5% CO2大気、37℃下に4時間配置する;
ix)各ウェルからの無細胞上清を収集し、実験的に放出された放射能をガンマカウンターを使用して定量する;
x)特異的溶解のパーセンテージを、計算式(ER−MR)/(MR−SR)×100に従って各抗体について計算し、ここで、ERは抗体濃度について定量された平均放射能(上記の要点ixを参照のこと)であり、MRはMRコントロール(上記の要点vを参照のこと)についての定量された平均放射能(上記の要点ixを参照のこと)であり、そしてSRはSRコントロール(上記の要点viを参照のこと)についての定量された平均放射能(上記の要点ixを参照のこと)である;
4)「ADCCの増加」は、上記の試験された抗体濃度範囲内で観察される特異的溶解の最大パーセンテージの増加、および/または上記の試験された抗体濃度範囲内で観察される特異的溶解の最大パーセンテージの半分を達成するために必要とされる抗体の濃度の減少のいずれかとして定義される。ADCCの増加は、上記のアッセイを用いて測定される、当業者に公知である同じ標準的な産生、精製、製剤、および保存の方法を使用して、同じ型の宿主細胞によって産生される、同じ型の抗体によって媒介されるADCCに比例するが、これは、GnTIIIを過剰発現するように操作された宿主細胞によって産生されなかった。
【0090】
1つの態様において、本発明は、マウスB−ly1抗体の結合特異性を有する抗原結合分子、およびそれらのエフェクター機能がグリコシル化の変化によって増強され得るという発見に関する。1つの実施形態において、抗原結合分子はキメラ抗体である。好ましい実施形態において、本発明は、図7に示されるCDRを含むキメラ抗体またはそのフラグメントに向けられる。詳細には、好ましい実施形態において、本発明は、(a)配列番号5、配列番号6および配列番号7からなる群より選択される配列(CDR VH-1);ならびに(b)配列番号21、配列番号22および配列番号23からなる群より選択される配列(CDR VH-2);ならびに配列番号24を含む単離されたポリヌクレオチドに向けられる。別の好ましい実施形態において、本発明は、配列番号8、配列番号9および配列番号10を含む単離されたポリヌクレオチド(CDR VL)に向けられる。1つの実施形態において、任意のこれらのポリヌクレオチドは誘導ポリペプチドをコードする。
【0091】
別の実施形態において、抗原結合分子は、図1に示されるマウスB−Ly1抗体のVHドメインまたはその改変体;および非マウスポリペプチドを含む。別の好ましい実施形態において、本発明は、図2に示されるマウスB−Ly1抗体のVLドメインまたはその改変体;および非マウスポリペプチドを含む抗原結合分子に向けられる。
【0092】
別の態様において、本発明は、BLy−1の1つ以上の短縮型CDRを含む抗原結合分子に向けられる。このような短縮型CDRは、最小限、所定のCDRについての特異性を決定するアミノ酸残基を含む。「特異性を決定する残基」は、抗原との相互作用に直接的に関与する残基を意味する。一般的に、所定のCDRにおける残基の約5分の1から3分の1のみが抗原への結合に関与する。特定のCDRにおける特異性決定残基は、例えば、三次元モデリングからの原子間接触の計算およびPadlanら、FASEB J.9(1):133−139(1995)(この内容はそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)に従って、所定の残基の位置における配列の変動性の決定によって同定され得る。
【0093】
従って、本発明はまた、マウスB−Ly1抗体の少なくとも1つの相補性決定領域を含む単離されたポリヌクレオチド、または少なくともこの相補性決定領域についての特異性決定残基を含むその改変体もしくは短縮型に向けられ、ここで、この単離されたポリヌクレオチドは誘導ポリペプチドをコードする。好ましくは、このような単離されたポリヌクレオチドは、抗原結合分子である融合ポリペプチドをコードする。1つの実施形態において、このポリヌクレオチドは、マウスB−Ly1抗体の3つの相補性決定領域、または少なくともこの3つの相補性決定領域の各々についての特異性決定残基を含むその改変体もしくは短縮型を含む。別の実施形態において、ポリヌクレオチドはキメラ(例えば、ヒト化)抗体の軽鎖または重鎖の全体の可変領域をコードする。本発明はさらに、このようなポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドに向けられる。
【0094】
別の実施形態において、本発明は、マウスB−Ly1抗体の少なくとも1つの相補性決定領域、または少なくともこの相補性決定領域についての特異性決定残基を含むその改変体もしくは短縮型を含み、および異種ポリペプチドに由来する配列を含む、抗原組み合わせ分子に向けられる。1つの実施形態において、この抗原結合分子は、マウスB−Ly1抗体の3つの相補性決定領域、またはこの3つの相補性決定領域の各々についての少なくとも特異性決定残基を含む、その改変体もしくは短縮型を含む。別の態様において、この抗原結合分子は、抗体の軽鎖または重鎖の可変領域を含む。1つの特に有効な実施形態において、抗原結合分子は、キメラ、例えば、ヒト化抗体である。本発明はまた、このような抗原結合分子を作製する方法、およびB細胞リンパ腫を含む疾患の治療におけるその抗原結合分子の使用に向けられる。
【0095】
抗体依存性細胞傷害性(ADCC)、補体依存性細胞傷害性(CDC)、および増殖の停止またはアポトーシスの誘導を含むいくつかのメカニズムが、抗CD20抗体の治療的効力に関与していることが知られている。例えば、実験的な証拠の大部分は、リツキシマブがCDCアッセイおよびADCCアッセイによって測定される従来的なエフェクターメカニズムを通して作用することを示す。同様に、インビボでのリツキシマブに対する異なるリンパ腫細胞の耐性は、インビボでのCDCに対するそれらの感受性の関数であることが示されてきた。対照的に、治療的使用のために認可された別の抗体のインビボでの作用の様式、B1は、補体とナチュラルキラー(NK)細胞の活性のどちらも必要としない。むしろ、インビボでのB1の効力は、強力なアポトーシスを誘導するその能力に起因する。
【0096】
一般的に、抗CD20モノクローナル抗体は、リンパ腫細胞を根絶する際のそれらの作用のメカニズムに基づいて、2つの別個のカテゴリーに分類される。I型抗CD20抗体は、主として標的細胞を殺傷させるのに対して、II型抗体は、異なるメカニズム、主としてアポトーシスによって作用する。リツキシマブおよび1F5は、I型抗CD20抗体の例であり、一方B1はII型抗体の例である。例えば、Cragg,M.S.およびGlennie,M.J.,Blood 103(7):2738−2743(2004年4月);Teeling,J.L.ら、Blood 104(6):1793−1800(2004年9月)を参照のこと。これらの全体の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0097】
本発明は、強力なアポトーシス能力をなお保持しながら、II型抗CD20抗体がADCCなどのエフェクター機能の増加を有するように操作されている最初の知られた例である。従って、本発明は、この操作の結果としてADCCの増加を有し、かつアポトーシスを誘導する実質的な能力の損失を伴わない、操作されたII型抗CD20抗体に向けられる。1つの実施形態において、II型抗CD20抗体は、Fc領域におけるグリコシル化のパターンの変化を有するように操作されている。特定の実施形態において、グリコシル化の変化は、Fc領域における二分枝複合体残基のレベルの増加を含む。別の特定の実施形態において、グリコシル化の変化は、Fc領域におけるフコース残基のレベルの減少を含む。Shitaraらへの米国特許出願公開第2004 0093621号を参照のこと。この全体の内容は参照により本明細書に組み込まれる。別の実施形態において、II型抗CD20抗体は、Prestaへの米国特許第6,737,056号または米国特許出願公開第2004 0185045号(Macrogenics)または米国特許出願公開第2004 0132101号(Xencor)(これらの各々の全体の内容は参照により組み込まれる)において教示されているようなポリペプチド操作を受けている。本発明はさらに、このような操作されたII型抗体を作製する方法、およびB細胞リンパ腫を含む種々のB細胞障害の治療においてこのような抗体を使用する方法に向けられる。
【0098】
キメラマウス/ヒト抗体は記載されてきた。例えば、Morrison,S.L.ら、PNAS I1:6851−6854(1984年11月);欧州特許公開第173494号;Boulianna,G.L.ら,Nature 312:642(1984年12月);Neubeiger,M.S.ら、Nature 314:268(1985年3月);欧州特許公開第125023号;Tanら、J.Immunol.135:8564(1985年11月);Sun,L.Kら、Hybridoma 5(1):517(1986);Sahaganら、J.Immunol.137:1066−1074(1986)を参照のこと。一般的には、Muron,Nature 312:597(1984年12月);Dickson、Genetic Engineering News 5(3)(1985年3月);Marx、Science 229:455(1985年8月);およびMorrison、Science 229:1202−1207(1985年9月)を参照のこと。PCT公開番号WO/88104936において、Robinsonらは、CD20のエピトープに対する特異性を有する、ヒト定常領域およびマウス可変領域を有するキメラ抗体を記載し;Robinsonの引用文献のキメラ抗体のマウス部分は、2H7マウスモノクローナル抗体(ガンマ2b、カッパ)に由来する。この引用文献は、記載されたキメラ抗体がB細胞障害の治療のための「第1の候補」であると記述しているが、この記述は、当業者に対する示唆に過ぎず、この示唆は特定の抗体について正確であるか否かを決定するためであると見なされるべきである。特に、この引用文献は、治療的な有効性の主張を支持するいかなるデータも欠いており、および重要なことには、霊長類またはヒトなどの高等哺乳動物を使用するデータを欠いているからである。
【0099】
キメラ抗体を生成するための方法論は当業者に利用可能である。例えば、軽鎖および重鎖は、例えば、別々のプラスミド中、または単一の(例えば、ポリシストロン性)ベクター上での免疫グロブリン軽鎖および免疫グロブリン重鎖を使用して、別々に発現され得る。次いで、これらは精製され得、インビトロで完全な抗体にアセンブルされ得る;このようなアセンブリーを達成するための方法論は記載されている。例えば、Scharff,M.,Harvey Lectures 69:125(1974)を参照のこと。減少した単離された軽鎖および重鎖からのIgG抗体の形成のためのインビトロ反応パラメーターもまた記載されてきた。例えば、Searsら、Biochem.16(9):2016−25(1977)を参照のこと。
【0100】
特に好ましい実施形態において、本発明のキメラABMはヒト化抗体である。非ヒト抗体をヒト化するための方法は当分野において公知である。例えば、本発明のヒト化ABMは、Winterへの米国特許第5,225,539号、Queenらへの米国特許第6,180,370号、またはAdairらへの米国特許第6,632,927号(これらの各々の全体の内容は参照により本明細書に組み込まれる)の方法に従って調製され得る。好ましくは、ヒト化抗体は、ヒトでない供給源からそれに導入された1つ以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、「インポート」残基と呼ばれ、これは典型的には、「インポート」可変ドメインから取られる。ヒト化は、本質的にWinterおよび共同実験者らの方法(Jonesら、Nature,321:522−525(1986);Riechmannら、Nature,332:323−327(1988);Verhoeyenら、Science,239:1534−1536(1988))に従って、超可変領域配列をヒト抗体の対応する配列の代わりに置換することによって実行され得る。従って、このような「ヒト化」抗体はキメラ抗体であり(米国特許第4,816,567号)、ここで実質的にインタクトに満たないヒト可変ドメインが、非ヒト種からの対応する配列によって置換されている。実際上、ヒト化抗体は、典型的には、いくつかの超可変領域の残基およびおそらくいくつかのFR残基が、齧歯類抗体における類似の部位からの残基によって置換されているヒト抗体である。対象のヒト化抗CD20抗体は、ヒト免疫グロブリンの定常領域を含む。
【0101】
ヒト化抗体を作製する際に使用される軽鎖と重鎖の両方のヒト可変ドメインの選択は、抗原性を減少させるために非常に重要である。いわゆる「ベストフィット」法に従って、齧歯類抗体の可変ドメインの配列が、既知のヒト可変ドメイン配列の全体のライブラリーに対してスクリーニングされる。次いで、齧歯類の配列に最も近いヒト配列が、ヒト化抗体のためのヒトフレームワーク領域(FR)として受容される(Simsら、J.Immunol.,151:2296(1993);Chothiaら、J.Mol.Biol.,196:901(1987))。ヒトフレームワーク配列を選択する別の方法は、完全な齧歯類フレームワークの各個々のサブ領域(すなわち、FR1、FR2、FR3、およびFR4)または個々のサブ領域のいくつかの組み合わせ(例えば、FR1およびFR2)の配列を、フレームワークサブ領域に対応する既知のヒト可変領域配列のライブラリー(例えば、Kabat番号付けによって決定されるような)に対して比較し、そして齧歯類の配列と最も近い各サブ領域または組み合わせについてヒト配列を選択することである(Leung、米国特許出願公開第2003/0040606A1号、2003年2月27日公開)。別の方法は、軽鎖または重鎖の特定のサブグループの全てのヒト抗体のコンセンサス配列に由来する特定のフレームワーク領域を使用する。同じフレームワークが、いくつかの異なるヒト化抗体のために使用されてもよい(Carterら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285(1992);Prestaら、J.Immunol.151:2623(1993))。
【0102】
抗原についての高い親和性の保持および他の好ましい生物学的特性を有することがさらに重要である。この目的を達成するために、好ましい方法に従って、ヒト化抗体が、親の配列およびヒト化配列の三次元モデルを使用する、親の配列および種々の概念的なヒト化生成物の分析のプロセスによって調製される。三次元免疫グロブリンモデルは市販されており、当業者には知られている。コンピュータプログラムが利用可能であり、これは、選択された候補免疫グロブリン配列の可能性のある三次元コンホメーション構造を図示および表示する。これらの表示の精査は、候補免疫グロブリン配列の機能における残基のあり得る役割の分析、すなわち、その抗原に結合する候補免疫グロブリンの能力に影響を与える残基の分析を可能にする。このようにして、FR残基は、選択され得、およびレシピエント配列およびインポート配列から組み合わされ得、その結果、標的抗原についての親和性の増加などの、望ましい抗体特性が達成される。一般的に、超可変領域の残基は、直接的にかつ最も実質的に、抗原結合に影響を与える際に関与する。
【0103】
別の実施形態において、本発明の抗原結合分子は、例えば、Balintらへの米国特許出願公開第2004/0132066号(この全体の内容は、参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている方法に従って、結合親和性の増強を有するように操作される。
【0104】
1つの実施形態において、本発明の抗原結合分子は、放射性標識または毒素などのさらなる部分に結合体化される。このような結合体化されたABMは、当分野において周知である多数の方法によって産生され得る。
【0105】
種々の放射性核種が本発明に適用可能であり、当業者は、種々の状況下でどの放射性核種が最も適切であるかを容易に決定する能力を有すると信じられている。例えば、131ヨウ素は、標的化免疫療法のために使用される周知の放射性核種である。しかし、131ヨウ素の臨床的有用性は、8日間の物理的半減期;血液中および腫瘍部位の両方でのヨウ素化抗体の脱ハロゲン化;ならびに腫瘍中での局在化した用量沈着のために最適以下であり得る発光特性(例えば、大きなガンマ成分)を含むいくつかの要因によって制限され得る。優れたキレート剤の出現に伴って、金属キレート基をタンパク質に結合させるための機会は111インジウムおよび50イットリウムなどの他の放射性核種を利用するための機会の増加を有する。90イットリウムは、放射免疫治療適用における利用のためのいくつかの利点を提供する。90イットリウムの64時間の半減期は、腫瘍による抗体の蓄積を可能にするために十分に長く、例えば、131ヨウ素と違って、90イットリウムは、高エネルギーの純粋なβ放射体であり、その崩壊において付随するガンマ放射を伴わず、これは100〜1000細胞直径の組織の範囲である。さらに、最小量の透過する放射は、90イットリウム標識された抗体の外来患者のための投与を可能にする。さらに、標識された抗体の内在化は細胞殺傷のために必要とされず、そして電離放射線の局所的放射は、標的抗原を欠く隣接する腫瘍細胞にとって致死性であるはずである。
【0106】
90イットリウム標識された抗CD20抗体の有効な単回治療投薬量(すなわち、治療有効量)は、約5から約75mCiの間、より好ましくは約10から40mCiの間の範囲である。131ヨウ素標識抗CD20抗体の有効な単回治療非骨髄除去投薬量は、約5から70mCiの間、より好ましくは約5から約40mCiの間の範囲である。131ヨウ素標識抗CD20抗体の有効な単回治療除去投薬量(すなわち、自家骨髄移植を必要とするかもしれない)は、約30から約600mCiの間、より好ましくは約50から約500mCi未満の間の範囲である。キメラ抗CD20抗体とともに、マウス抗体に対してより長い循環半減期のために、131ヨウ素標識キメラ抗CD20抗体の有効な単回治療非骨髄除去投薬量は、約5から40mCiの間、より好ましくは約30mCi未満の範囲である。例えば、111インジウム標識についての画像化判断基準は、典型的には約5mCi未満である。
【0107】
放射性標識された抗CD20抗体に関して、それを用いる治療はまた、単回治療処置を使用して、または複数の処置を使用して行われ得る。放射性核種成分のために、治療の前に、末梢血幹細胞(「PSC」)または骨髄(「BM」)が、照射から生じる潜在的に致命的な骨髄毒性を受ける患者のために「収集される」ことが好ましい。BMおよび/またはPSCは標準的な技術を使用して収集され、次いで、可能な再輸液のためにパージおよび凍結される。さらに、治療の前に、診断用の標識された抗体を使用する(例えば、111インジウムを使用する)診断用線量測定研究が患者に対して行われることが最も好ましく、その目的は、治療用に標識された抗体(例えば、90イットリウムを使用する)が、任意の正常な器官または組織中で不必要に「濃縮され」ないことを確実にすることである。
【0108】
好ましい実施形態において、本発明は、以下の表3に示されるようなアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする配列を含む単離されたポリヌクレオチドに向けられる。本発明はさらに、以下の表2に示されるヌクレオチド配列に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である配列を含む単離された核酸に向けられる。別の実施形態において、本発明は、表3に示されるアミノ酸配列に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする配列を含む単離された核酸に向けられる。本発明はまた、保存性アミノ酸置換を有する、表3における構築物のいずれかのアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする配列を含む単離された核酸を含む。
【0109】
【表2】
【0110】
【表3】
【0111】
【表4】
【0112】
【表5】
【0113】
【表6】
【0114】
【表7】
【0115】
【表8】
【0116】
【表9】
【0117】
【表10】
【0118】
【表11】
【0119】
別の好ましい実施形態において、本発明は、図1または図2に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする配列を含む単離されたポリヌクレオチドに向けられる。本発明はさらに、図5または図6に示されるヌクレオチド配列に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である配列を含む単離された核酸に向けられる。別の実施形態において、本発明は、表5または表6に示されるアミノ酸配列に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする配列を含む単離された核酸に向けられる。本発明はまた、保存性アミノ酸置換を有する、図1、図2、図5、または図6のいずれかのアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする配列を含む単離された核酸を含む。
【0120】
別の実施形態において、本発明は、1つ以上の本発明の単離されたポリヌクレオチドを含む、発現ベクターおよび/または宿主細胞に向けられる。
【0121】
一般的に、任意の型の培養細胞系が本発明のABMを発現するために使用され得る。好ましい実施形態において、CHO細胞、BHK細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、YO骨髄腫細胞、P3X63マウス骨髄腫細胞、PER細胞、PER.C6細胞またはハイブリドーマ細胞、他の哺乳動物細胞、酵母細胞、昆虫細胞、または植物細胞が、本発明の操作された宿主細胞を生成するためにバックグラウンド細胞系として使用される。
【0122】
本発明のABMの治療的効力は、GnTIII活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをさらに発現する宿主細胞中で、それらを産生することによって増強され得る。好ましい実施形態において、GnTIII活性を有するポリペプチドは、ゴルジ存在性ポリペプチドのゴルジ局在化ドメインを含む融合ポリペプチドである。別の好ましい実施形態において、GnTIII活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを発現する宿主細胞中での本発明のABMの発現は、Fcレセプター結合親和性の増加およびエフェクター機能の増加を有するABMを生じる。従って、1つの実施形態において、本発明は、(a)GnTIII活性を有するポリペプチドをコードする配列を含む単離された核酸および(b)ヒトCD20に結合する、キメラであり、霊長類化抗体またはヒト化抗体などの、本発明のABMをコードする単離されたポリヌクレオチドを含む宿主細胞に向けられる。好ましい実施形態において、GnTIII活性を有するポリペプチドは、GnTIIIの触媒ドメインを含む融合ポリペプチドであり、ゴルジ局在化ドメインはマンノシダーゼIIの局在化ドメインである。このような融合ポリペプチドを生成し、およびエフェクター機能の増加を有する抗体を産生するためにそれらを使用するための方法は、米国仮特許出願第60/495,142号に開示されており、この全体の内容は、参照により本明細書に明白に組み込まれる。別の好ましい実施形態において、キメラABMは、マウスB−LY1抗体の結合特異性を有するキメラ抗体またはそのフラグメントである。特に好ましい実施形態において、このキメラ抗体はヒトFcを含む。別の好ましい実施形態において、この抗体は霊長類化されているかまたはヒト化されている。
【0123】
1つの実施形態において、本発明のABMをコードする1個または数個のポリヌクレオチドが、構成的プロモーター、または調節された発現系の制御下で発現されてもよい。適切な調節された発現系には、テトラサイクリンで調節される発現系、エクジソン誘導性発現系、lacスイッチ発現系、糖質コルチコイド誘導性発現系、温度誘導性発現系、およびメタロチオネイン金属誘導性発現系が含まれるがこれらに限定されない。本発明のABMをコードするいくつかの異なる核酸が宿主細胞系中に含まれる場合、それらのいくつかが構成的プロモーターの制御下で発現され得るのに対して、その他は調節プロモーターの制御下で発現される。最大発現レベルは、細胞増殖速度に顕著な有害な効果をおよぼさない安定なポリペプチド発現の最高の可能なレベルであると見なされ、日常的な実験を使用して決定される。発現レベルは、ABMに特異的である抗体またはABMに融合されたペプチドタグに特異的である抗体を使用するウェスタンブロット分析;およびノーザンブロット分析を含む、当分野において一般的に公知である方法によって決定される。さらなる代替において、このポリヌクレオチドは、レポーター遺伝子に作動可能に連結され得;マウスB−Ly1抗体の実質的に同じ結合特異性を有するキメラABMの発現レベルが、レポーター遺伝子の発現レベルと相関するシグナルを測定することによって決定される。このレポーター遺伝子は、単一のmRNA分子としてこの融合ポリペプチドをコードする核酸と一緒に転写され得る;それらのそれぞれのコード配列は、内部リボソームエントリー部位(IRES)によって、またはキャップ非依存性翻訳エンハンサー(CITE)によってのいずれかで連結され得る。このレポーター遺伝子は、単一のポリペプチド鎖が形成されるように、マウスB−Ly1抗体の実質的に同じ結合特異性を有するキメラABMをコードする少なくとも1つの核酸と一緒に翻訳され得る。本発明のABMをコードする核酸は、単一のプロモーターの制御下でレポーター遺伝子に作動可能に連結され得、その結果、融合ポリペプチドをコードする核酸およびレポーター遺伝子が、2つの別々のメッセンジャーRNA(mRNA)分子に選択的スプライシングされるRNA分子に転写される;得られるmRNAの1つはこのレポータータンパク質に翻訳され、そして他方がこの融合ポリペプチドに翻訳される。
【0124】
当業者に周知である方法が、適切な転写/翻訳制御シグナルとともに、マウスB−Ly1抗体の実質的に同じ結合特異性を有するABMのコード配列を含む発現ベクターを構築するために使用され得る。これらの方法には、インビトロ組換えDNA技術、合成技術およびインビボ組換え/遺伝子組換えが含まれる。例えば、Maniatisら、MOLECULAR CLONING A LABORATORY MANUAL,Cold Spring Harbor Laboratory,N.Y.(1989)およびAusubelら、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY,Greene Publishing Associates and Wiley Interscience,N.Y(1989)を参照のこと。
【0125】
種々の宿主発現ベクター系が本発明のABMのコード配列を発現するために利用されてもよい。好ましくは、哺乳動物細胞が、目的のタンパク質のコード配列および融合ポリペプチドのコード配列を含む組換えプラスミドDNAまたはコスミドDNA発現ベクターでトランスフェクトされた宿主細胞系として使用される。最も好ましくは、CHO細胞、BHK細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、YO骨髄腫細胞、P3X63マウス骨髄腫細胞、PER細胞、PER.C6細胞またはハイブリドーマ細胞、他の哺乳動物細胞、酵母細胞、昆虫細胞、または植物細胞が、宿主細胞系として使用される。発現系および選択方法のいくつかの例が、以下の参考文献およびその中の引用文献に記載されている。Borthら、Biotechnol.Bioen.71(4):266−73(2000−2001)、Wernerら、Arzneimittelforschung/Drug Res.48(8):870−80(1998)、AndersenおよびKrummen,Curr.Op.Biotechnol.13:117−123(2002)、ChaddおよびChamow、Curr.Op.Biotechnol.12:188−194(2001)、およびGiddings,Curr.Op.Biotechnol.12:450−454(2001)。代替的な実施形態において、以下を含む、他の真核生物宿主細胞系が意図され得る。本発明のABMのコード配列を含む組換え酵母発現ベクターで形質転換された酵母細胞;マウスB−Ly1抗体の実質的に同じ結合特異性を有するキメラABMのコード配列を含む組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)で感染された昆虫細胞系;本発明のABMのコード配列を含む、組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウィルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)で感染されるか、もしくはこの配列を含む組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換された植物細胞系;または安定に増幅されたか(CHO/dhfr)もしくは二重微小染色体(例えば、マウス細胞系)中で不安定に増幅されたかのいずれかである、マウスB−Ly1抗体の実質的に同じ結合特異性を有するキメラABMをコードするDNAの複数のコピーを含むように操作された細胞株を含む、組換えウイルス発現ベクター(例えば、アデノウイルス、ワクシニアウイルス)で感染された動物細胞系。1つの実施形態において、本発明のABMをコードするポリヌクレオチドを含むベクターはポリシストロン性である。また、1つの実施形態において、上記で議論したABMは、抗体またはそのフラグメントである。好ましい実施形態において、このABMはヒト化抗体である。
【0126】
本発明の方法のために、安定な発現が一過性の発現よりも好まれる。なぜなら、これは、典型的には、より再現性のある結果を達成し、およびまた、大スケール産生に対してより受け入れ可能であるからである。ウイルス起源の複製を含む発現ベクターを使用するよりはむしろ、宿主細胞は、適切な発現制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位など)によって制御されるそれぞれのコード核酸、および選択マーカーで形質転換され得る。外来性DNAの導入後に、操作された細胞は、富化培地中で1〜2日間増殖され得、次いで、選択培地に交換される。組換えプラスミド中の選択マーカーは選択に対する耐性を付与し、それらの染色体にプラスミドを安定に組み込んだ細胞の選択を可能にし、増殖して増殖巣を形成し、これは次にはクローニングされ得、そして細胞系に拡大され得る。
【0127】
多数の選択系が使用されてもよく、これには以下が含まれるがこれらに限定されない:単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子(Wiglerら、Cell 11:223(1977))、ヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(SzybalskaおよびSzybalski、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 48:2026(1962))、およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(Lowyら、Cell 22:817(1980))、これらは、tk-細胞、hgprt-細胞、またはaprt-細胞中でそれぞれ利用され得る。また、代謝拮抗物質は、メトトレキサートに対する耐性を付与するdhfr遺伝子(Wiglerら、Natl.Acad.Sci.USA 77:3567(1989);O’Hareら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:1527(1981));ミコフェノール酸に対する耐性を付与するgpt遺伝子(MulliganおよびBerg、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:2072(1981));アミノグリコシドG−418に対する耐性を付与するneo遺伝子(Colberre−Garapinら、J.Mol.Biol.150:1(1981));およびハイグロマイシンに対する耐性を付与するhygro遺伝子(Santerreら、Gene 30:147(1984))についての選択の基礎として使用され得る。最近、さらなる選択遺伝子、すなわち、細胞がトリプトファンの代わりにインドールを利用することを可能にするtrpB;細胞がヒスチジンの代わりにヒスチノールを利用することを可能にするhisD(HartmanおよびMulligan、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:8047(1988));グルタミン合成系;およびオルニチンデカルボキシラーゼインヒビターである2−(ジフルオロメチル)−DL−オルニチン、DFMOに対する耐性を付与するODC(オルニチンデカルボキシラーゼ)(McConlogue、Current Communications in Molecular Biology,Cold Spring Harbor Laboratory編(1987))が記載されている。
【0128】
本発明はさらに、本発明のABMをコードする核酸およびGnTIII活性を有するポリペプチドをコードする核酸、またはこのような核酸を含むベクターを、宿主細胞中で発現する工程を含む、宿主細胞によって産生される本発明のABMのグリコシル化プロフィールを修飾するための方法に向けられる。好ましくは、修飾ポリペプチドは、Fc領域を含むIgGまたはそのフラグメントである。特に好ましい実施形態において、ABMはヒト化抗体またはそのフラグメントである。
【0129】
本発明の宿主細胞によって産生される修飾ABMは、Fcレセプター結合親和性の増加および/または修飾の結果としてのエフェクター機能の増加を示す。特に好ましい実施形態において、ABMは、Fc領域を含むヒト化抗体またはそのフラグメントである。好ましくは、Fcレセプター結合親和性の増加がFcγRIIIaレセプターなどのFcγ活性化レセプターへの結合の増加である。エフェクター機能の増加は、好ましくは、以下の1つ以上の増加である。抗体依存性細胞傷害性の増加、抗体依存性細胞食作用(ADCP)の増加、サイトカイン分泌の増加、抗原提示細胞による免疫複合体媒介性の抗原取り込みの増加、Fc媒介性細胞傷害性の増加、NK細胞への結合の増加、マクロファージへの結合の増加、多形核細胞(PMN)への結合の増加、単球への結合の増加、標的結合抗体の架橋の増加、直接的シグナル伝達誘導性アポトーシスの増加、樹状細胞成熟の増加、およびT細胞プライミングの増加。
【0130】
本発明はまた、宿主細胞中に修飾オリゴサッカリドを有する、本発明のABMを産生するための方法に向けられ、この方法は、(a)本発明に従うABMの産生を可能にする条件下でGnTIII活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸を発現するように操作された宿主細胞を培養し、ここで、このGnTIII活性を有するポリペプチドは、この宿主細胞によって産生されるこのABMのFc領域においてオリゴサッカリドを修飾するために十分な量で発現される、工程;および(b)このABMを単離する工程を含む。好ましい実施形態において、GnTIII活性を有するポリペプチドは、GnTIIIの触媒ドメインを含む融合ポリペプチドである。特に好ましい実施形態において、この融合ポリペプチドは、ゴルジ存在性ポリペプチドのゴルジ局在化ドメインをさらに含む。
【0131】
好ましくは、このゴルジ局在化ドメインは、マンノシダーゼIIまたはGnTIの局在化ドメインである。代替的には、このゴルジ局在化ドメインは、マンノシダーゼIの局在化ドメイン、GnTIIの局在化ドメイン、およびα1−6コアフコシルトランスフェラーゼの局在化ドメインからなる群より選択される。本発明の方法によって産生されるABMは、Fcレセプター結合親和性の増加および/またはエフェクター機能の増加を有する。好ましくは、エフェクター機能の増加は、以下の1つ以上である。Fc媒介性細胞傷害性の増加(抗体依存性細胞傷害性の増加を含む)、抗体依存性細胞食作用(ADCP)の増加、サイトカイン分泌の増加、抗原提示細胞による免疫複合体媒介性の抗原取り込みの増加、NK細胞への結合の増加、マクロファージへの結合の増加、単球への結合の増加、多形核細胞への結合の増加、直接的シグナル伝達誘導性アポトーシスの増加、標的結合抗体の架橋の増加、樹状細胞成熟の増加、またはT細胞プライミングの増加。Fcレセプター結合親和性の増加は、好ましくは、FcγRIIIaなどのFc活性化レセプターへの結合の増加である。特に好ましい実施形態において、ABMはヒト化抗体またはそのフラグメントである。
【0132】
別の実施形態において、本発明は、ポリペプチドのFc領域において二分枝オリゴサッカリドの割合の増加を有する、本発明の方法によって産生されたマウスB−Ly1抗体の実質的に同じ結合特異性を有するキメラABMに向けられる。このようなABMは、Fc領域を含む抗体およびそのフラグメントを含むことが意図される。好ましい実施形態において、ABMはヒト化抗体である。1つの実施形態において、ABMのFc領域における二分枝オリゴサッカリドのパーセンテージは、全体のオリゴサッカリドの、少なくとも50%、より好ましくは、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%であり、および最も好ましくは、少なくとも90〜95%である。なお別の実施形態において、ABMは、本発明の方法によるそのオリゴサッカリドの修飾の結果として、Fc領域中のフコシル化されていないオリゴサッカリドの割合の増加を有する。1つの実施形態において、フコシル化されていないオリゴサッカリドのパーセンテージは、少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%〜70%、最も好ましくは少なくとも75%である。フコシル化されていないオリゴサッカリドは、ハイブリッド型または複合体型であり得る。特に好ましい実施形態において、本発明の宿主細胞および方法によって産生されるABMは、Fc領域における二分枝でフコシル化されていないオリゴサッカリドの割合の増加を有する。この二分枝でフコシル化されていないオリゴサッカリドは、ハイブリッドまたは複合体のいずれかであり得る。詳細には、本発明の方法は、ABMのFc領域におけるオリゴサッカリドの少なくとも15%、より好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも35%が二分枝でフコシル化されていないABMを産生するために使用され得る。本発明の方法はまた、ポリペプチドのFc領域におけるオリゴサッカリドの少なくとも15%、より好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも35%が二分枝でハイブリッドフコシル化されていないポリペプチドを産生するために使用され得る。
【0133】
別の実施形態において、本発明は、本発明の方法によって産生される、エフェクター機能の増加および/またはFcレセプター結合親和性の増加を有するように操作されたマウスB−Ly1抗体の実質的に同じ結合特異性を有するキメラABMに向けられる。好ましくは、エフェクター機能の増加は、以下の1つ以上である。Fc媒介性細胞傷害性の増加(抗体依存性細胞傷害性の増加を含む)、抗体依存性細胞食作用(ADCP)の増加、サイトカイン分泌の増加、抗原提示細胞による免疫複合体媒介性の抗原取り込みの増加、NK細胞への結合の増加、マクロファージへの結合の増加、単球への結合の増加、多形核細胞への結合の増加、直接的シグナル伝達誘導性アポトーシスの増加、標的結合抗体の架橋の増加、樹状細胞成熟の増加、またはT細胞プライミングの増加。好ましい実施形態において、Fcレセプター結合親和性の増加は、Fc活性化レセプター、最も好ましくはFcγRIIIaへの結合の増加である。1つの実施形態において、ABMは抗体、Fc領域を含む抗体フラグメント、または免疫グロブリンのFc領域に対して等価である領域を含む融合タンパク質である。特に好ましい実施形態において、ABMはヒト化抗体である。
【0134】
本発明はさらに、本発明のABMおよび薬学的に許容可能なキャリアを含む医薬組成物に向けられる。
【0135】
本発明はさらに、癌の治療の方法におけるこのような医薬組成物の使用に向けられる。詳細には、本発明は、本発明の薬学的組成物の治療有効量を投与する工程を含む、癌の治療のための方法に向けられる。
【0136】
本発明はさらに、Fcレセプター結合親和性の増加、好ましくはFc活性化レセプターへの結合の増加を有し、および/または抗体依存性細胞傷害性を含む、エフェクター機能の増加を有する、本発明のABMの糖型の産生のための宿主細胞系の生成および使用のための方法を提供する。本発明のABMとともに使用され得る糖付加操作の方法論は、米国特許第6,602,684号および米国仮特許出願第60/441,307号およびWO 2004/065540(これらの各々の全体の内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)においてより詳細に記載されている。本発明のABMは、代替的には、EP 1 176 195 A1(この全体の内容は参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている技術に従って、Fc領域中でフコース残基の減少を有するように糖付加操作され得る。
【0137】
グリコシル化パターンの変化を有するタンパク質の産生のための細胞系の生成
本発明は、グリコシル化パターンの修飾を有する本発明のABMの生成のための宿主発現系を提供する。特に、本発明は、改善された治療的価値を有する本発明のABMの糖型の生成のための宿主細胞系を提供する。それゆえに、本発明は、GnTIII活性を有するポリペプチドを発現するように選択または操作された宿主細胞発現系を提供する。1つの実施形態において、GnTIII活性を有するポリペプチドは、異種ゴルジ存在性ポリペプチドのゴルジ局在化ドメインを含む融合ポリペプチドである。詳細には、このような宿主細胞発現系は、構成的または調節されるプロモーター系に作動可能に連結された、GnTIIIを有するポリペプチドをコードする組換え核酸分子を含むように操作され得る。
【0138】
1つの特定の実施形態において、本発明は、GnTIII活性を有し、かつ異種ゴルジ存在性ポリペプチドのゴルジ局在化ドメインを含む融合ポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸を発現するように操作されている宿主細胞を提供する。1つの態様において、宿主細胞は、GnTIII活性を有し、かつ異種ゴルジ存在性ポリペプチドのゴルジ局在化ドメインを含む融合ポリペプチドをコードする少なくとも1つの遺伝子を含む核酸分子で操作されている。
【0139】
一般的に、上記に議論される細胞系を含む任意の型の培養細胞系が、本発明の宿主細胞株を操作するためにバックグラウンドとして使用され得る。好ましい実施形態において、CHO細胞、BHK細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、YO骨髄腫細胞、P3X63マウス骨髄腫細胞、PER細胞、PER.C6細胞またはハイブリドーマ細胞、他の哺乳動物細胞、酵母細胞、昆虫細胞、または植物細胞が、本発明の操作された宿主細胞を生成するためにバックグラウンド細胞系として使用される。
【0140】
本発明は、本明細書に定義されるような異種ゴルジ存在性ポリペプチドのゴルジ局在化ドメインを含む融合ポリペプチドを含む、GnTIII活性を有するポリペプチドを発現する任意の操作された宿主細胞を含むことを意図する。
【0141】
GnTIII活性を有するポリペプチドをコードする1つまたはいくつかの核酸が、構成的プロモーターまたは代替的には、調節された発現系の制御下で発現され得る。このような系は当分野において周知であり、これは上記に議論した系を含む。GnTIII活性を有し、かつ異種ゴルジ存在性ポリペプチドのゴルジ局在化ドメインを含む融合ポリペプチドをコードするいくつかの異なる核酸が宿主細胞系中に含まれる場合、それらのいくつかは構成的プロモーターの制御下で発現され得るのに対して、その他は調節されるプロモーターの制御下で発現される。GnTIII活性を有する融合ポリペプチドの発現レベルは、ウェスタンブロット分析、ノーザンブロット分析、レポーター遺伝子発現分析またはGnTIII活性の測定を含む、当分野において一般的に公知である方法によって決定される。代替的には、GnTIIIの生合成産物に結合するレクチン、例えば、E4−PHAレクチンが利用されてもよい。代替的には、GnTIII活性を有するポリペプチドをコードする核酸で操作された細胞によって産生される抗体によって媒介される、Fcレセプター結合の増加またはエフェクター機能の増加を測定する機能的アッセイが使用されてもよい。
【0142】
グリコシル化パターンの修飾を有するタンパク質を発現するトランスフェクト体または形質転換体の同定
マウスB−Ly1抗体の実質的に同じ結合特異性を有し、かつ生物学的に活性な遺伝子産物を発現するキメラABMのコード配列を含む宿主細胞は、少なくとも4つの一般的アプローチ:(a)DNA−DNAまたはDNA−RNAのハイブリダイゼーション;(b)「マーカー」遺伝子機能の存在または非存在;(c)宿主細胞中のそれぞれのmRNA転写物の発現によって測定されるような転写物のレベルを評価すること;および(d)免疫アッセイによって、またはその生物学的活性によって測定されるような遺伝子産物の検出によって同定されてもよい。
【0143】
第1のアプローチにおいて、マウスB−Ly1抗体の実質的に同じ結合特異性を有するキメラABMのコード配列およびGnTIII活性を有するポリペプチドのコード配列の存在は、それぞれのコード配列、またはその部分もしくは誘導体それぞれに相同であるヌクレオチド配列を含むプローブを使用するDNA−DNAまたはDNA−RNAハイブリダイゼーションによって検出され得る。
【0144】
第2のアプローチにおいて、組換え発現ベクター/宿主系は、特定の「マーカー」遺伝子機能(例えば、チミジンキナーゼ活性、抗生物質に対する耐性、メトトレキサートに対する耐性、形質転換表現型、バキュロウイルスにおける封入体(occlusion body)形成など)の存在または不存在に基づいて同定および選択され得る。例えば、本発明のABMのコード配列またはそのフラグメント、およびGnTIII活性を有するポリペプチドのコード配列がベクターのマーカー遺伝子配列中に挿入される場合、それぞれのコード配列を含む組換え体は、マーカー遺伝子機能の不存在によって同定され得る。代替的には、マーカー遺伝子は、コード配列の発現を制御するために使用される同じまたは異なるプロモーターの制御下でコード配列とともにタンデムに配置され得る。誘導または選択に応答したマーカーの発現は、本発明のABMのコード配列およびGnTIII活性を有するポリペプチドのコード配列の発現を示す。
【0145】
第3のアプローチにおいて、本発明のABMのコード領域、またはそのフラグメント、およびGnTIII活性を有するポリペプチドのコード配列についての転写活性は、ハイブリダイゼーションアッセイによって評価され得る。例えば、RNAは、本発明のABMのコード配列またはそのフラグメント、およびGnTIII活性を有するポリペプチドのコード配列またはその特定の部分に相同であるプローブを使用するノーザンブロットによって単離および分析され得る。代替的には、宿主細胞の全体の核酸は、抽出され得、およびこのようなプローブへのハイブリダイゼーションについてアッセイされ得る。
【0146】
第4のアプローチにおいて、タンパク質産物の発現が、例えば、ウェスタンブロット、放射性免疫沈降、酵素結合免疫アッセイなどの免疫アッセイによって、免疫学的に評価され得る。しかし、発現系の成功の究極的な試験は、生物学的に活性な遺伝子産物の検出を含む。
【0147】
抗体依存性細胞傷害性を含むエフェクター機能の増加を有するABMの生成および使用
好ましい実施形態において、本発明は、マウスB−Ly1抗体の実質的に同じ結合特異性を有し、かつ抗体依存性細胞傷害性を含むエフェクター機能の増加を有するキメラABMの糖型を提供する。抗体のグリコシル化操作は以前に記載されている。例えば、米国特許第6,602,684号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと。
【0148】
いくつかの型の癌の治療のための非結合体化モノクローナル抗体(mAb)の臨床試験が、最近、有望な結果を生じてきている。Dillman、Cancer Biother.& Radiopharm.12:223−25(1997);Deoら、Immunology Today 18:127(1997)。キメラの非結合体化IgG1は、軽度または濾胞性のB細胞非ホジキンリンパ腫のために認可されており(Dillman、Cancer Biother.& Radiopharm.12:223−25(1997))、一方別の非結合体化mAbである、ヒト化IgG1標的化固形胸部腫瘍はまた、フェーズIII臨床試験において有望な結果を示している。Deoら、Immunology Today 18:127(1997)。これらの2つのmAbの抗原は、それらのぞれぞれの腫瘍細胞中で高度に発現され、そして抗体は、インビトロおよびインビボにおいてエフェクター細胞による潜在的な腫瘍破壊を媒介する。対照的に、微細な腫瘍特異性を有する多くの他の非結合mAbは、臨床的に有用であるために十分な効力のエフェクター機能を誘発することができない。Frostら、Cancer 80:317−33(1997);Surfusら、J.Immunother.19:184−91(1996)。これらのより弱いmAbのいくつかについて、補助サイトカイン治療が現在試験されている。サイトカインの付加は、循環しているリンパ球の活性および数を増加させることによって、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を刺激し得る。Frostら、Cancer 80:317−33(1997);Surfusら、J.Immunother.19:184−91(1996)。ADCC、抗体標的化細胞に対する溶解性攻撃は、抗体の定常領域(Fc)への白血球レセプターの結合の際に誘発される。Deoら、Immunology Today 18:127(1997)。
【0149】
非結合体化IgG1sのADCC活性を増加させるための、異なるが補完的なアプローチは、抗体のFc領域を操作することである。タンパク質操作研究は、FcγRがIgG CH2ドメインのより下位のヒンジ領域と相互作用することを示してきた。Lundら、J.Immunol.157:4963−69(1996)。しかし、FcγR結合はまた、CH2領域における保存性Asn297に共有結合されたオリゴサッカリドの存在を必要とする。Lundら、J.Immunol.157:4963−69(1996);WrightおよびMorrison、Trends Biotech.15:26−31(1997)、いずれかオリゴサッカリドおよびポリペプチドの両方が相互作用部位に直接的に寄与すること、またはオリゴサッカリドが、活性なCH2ポリペプチドコンホメーションを維持するために必要とされることを示唆する。それゆえに、オリゴサッカリド構造の修飾は、相互作用の親和性を増加するための手段として探求され得る。
【0150】
IgG分子は、そのFc領域中に2つのN連結オリゴサッカリドを有し、これは各重鎖に1つである。いかなる糖タンパク質とも同様に、抗体は、同じポリペプチドバックボーンを共有するが、グリコシル化部位に結合された異なるオリゴサッカリドを有する糖型の集団として産生される。血清IgGのFc領域中に通常見い出されるオリゴサッカリドは、複合体二アンテナ状型(Wormaldら、Biochemistry 36:130−38(1997))であり、低レベルの末端シアル酸および二分枝N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ならびに変動する程度の末端ガラクトシル化およびコアフコシル化を有する。いくつかの研究は、FcγR結合のために必要とされる最小の炭水化物構造はオリゴサッカリドコア中に存在することを示唆する。Lundら、J.Immunol.157:4963−69(1996)。
【0151】
非結合体化治療用mAbの産生のために産業界および学術研究において使用されるマウスまたはハムスター由来の細胞系は、通常、必要とされるオリゴサッカリド決定基をFc部位に結合する。しかし、これらの細胞系において発現されるIgGは、血清IgGにおいて少量見い出される二分枝GlcNAcを欠いている。Lifelyら、Glycobiology 318:813−22(1995)。対照的に、ラット骨髄腫により産生されるヒト化IgG1(CAMPATH−1H)が、いくつかのその糖型で二分枝GlcNAcを有したことが最近観察された。Lifelyら、Glycobiology 318:813−22(1995)。ラット細胞由来の抗体は、CAMPATH−1H抗体が標準的な細部系において産生されるにつれて、同様の最大インビトロADCC活性に到達したが、有意に低い抗体濃度であった。
【0152】
CAMPATH抗原は、通常、リンパ腫細胞上で高レベルで存在し、このキメラmAbは、二分枝GlcNAcの非存在下で高いADCC活性を有する。Lifelyら、Glycobiology 318:813−22(1995)。N連結グリコシル化経路において、二分枝GlcNAcはGnTIIIによって加えられる。Schachter、Biochem.Cell Biol.64:163−81(1986)。
【0153】
以前の研究は、単一の抗体産生CHO細胞系を使用した。これは、異なるレベルのクローニングしたGnT III遺伝子酵素を、外部から調節される様式で発現するように以前に操作された(Umana,P.ら、Nature Biotechnol.17:176−180(1999))。このアプローチは、GnTIIIの発現と、修飾抗体のADCC活性との間の厳格な相関を最初に確立した。従って、本発明は、GnTIII活性の増加から生じるグリコシル化の変化を有する、マウスB−Ly1抗体の結合特異性を伴う、組換えのキメラ抗体またはそのフラグメントを意図する。GnTIII活性の増加は、二分枝オリゴサッカリドのパーセンテージの増加、ならびにABMのFc領域中のフコース残基のパーセンテージの減少を生じる。この抗体またはそのフラグメントは、Fcレセプター結合親和性の増加およびエフェクター機能の増加を有する。さらに、本発明は、免疫グロブリンのFc領域に等価である領域を含む、抗体フラグメントおよび融合タンパク質に向けられる。
【0154】
本発明の方法に従って産生されるABMの治療的適用
本発明のABMは、インビボで腫瘍細胞を標的化および殺傷するために単独で使用され得る。このABMはまた、ヒト癌腫を治療するために、適切な治療剤とともに使用され得る。例えば、このABMは、化学療法、放射線療法などの標準的または従来的な治療方法と組み合わせて使用され得るか、または癌腫の部位への治療剤の送達のために、治療薬物または毒素、ならびにリンホカインまたは腫瘍阻害性増殖因子に、結合体化または連結され得る。最も重要である本発明のABMの結合体は(1)免疫毒素(ABMおよび細胞傷害性部分の結合体)および(2)標識が標識されたABMを含む免疫複合体を同定するための手段を提供する、標識された(例えば、放射標識、酵素標識、または蛍光標識)ABMである。ABMはまた、天然の補体プロセスを通して溶解を誘導するため、および通常存在する抗体依存性細胞傷害性細胞と相互作用するために使用され得る。
【0155】
免疫毒素の細胞傷害性部分は、細胞傷害性薬物または細菌もしくは植物起源の酵素的に活性な毒素、またはこのような毒素の酵素的に活性なフラグメント(「A鎖」)であってもよい。使用される酵素的に活性な毒素およびそのフラグメントは、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性フラグメント、エクソトキシンA鎖(Psedomonas aeruginosa)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、αサルシン、アレウリテス フォルジ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチンタンパク質、フィトラッカ アメリカーナ(Phytolacca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、およびPAP−S)、モモルジカ チャランチア(momordica charantia)インヒビター、クルシン(curcin)、クロチン、サパオナリア オフィシナリス(sapaonaria officinalis)インヒビター、ゲロニン(gelonin)、マイトジェリン、レスチクトシン、フェノマイシン、およびエノマイシンである。別の実施形態において、ABMは、低分子抗癌薬物に結合体化される。ABMの結合体およびこのような細胞傷害性部分は、種々の二官能性タンパク質カップリング剤を使用して作製される。このような剤の例は、SPDP、IT、ジメチルアジピミデートHClなどのイミドエステルの二官能性誘導体、ジサクシニミジルスベレートなどの活性エステル、グルタルアルデヒドなどのアルデヒド、ビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミンなどのビスアジド化合物、ビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)−エチレンジアミンなどのビス−ジアゾニウム誘導体、トルエン2,6−ジイソシアネートなどのジイソシアネート、および1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼンなどのビス−活性フルオリン化合物である。毒素の溶解性部分が、ABMのFabフラグメントに結合されてもよい。さらなる適切な毒素は、例えば、公開された米国特許出願第2002/0128448(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に証明されるように、当分野において公知である。
【0156】
1つの実施形態において、マウスB−Ly1抗体の実質的に同じ結合特異性を有するキメラの糖付加操作されたABMは、リシンA鎖に結合体化される。最も有利には、リシンA鎖は、脱グリコシル化され、および組換え手段を通して産生される。リシン免疫毒素を作製する有利な方法は、Vitettaら、Science 238,1098(1987)(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0157】
診断目的のためにインビトロでヒト癌細胞を殺傷するために使用される場合、結合体は、典型的には、少なくとも約10nMの濃度で細胞培養培地に加えられる。インビトロ使用のための製剤および投与の様式は決定的ではない。培養または灌流培地と適合可能である水溶性製剤が通常使用される。細胞毒性は、癌の存在または程度を決定するために従来的な技術によって読み取られ得る。
【0158】
上記に議論されたように、癌を治療するための細胞傷害性放射性医薬品は、マウスB−Ly1抗体の実質的に同じ結合特異性を有する、キメラの糖付加操作されたABMに、放射活性アイソトープ(例えば、I、Y、Pr)を結合体化することによって作製されてもよい。用語「細胞傷害性部分」は、本明細書で使用される場合、このようなアイソトープを含むことが意図される。
【0159】
別の実施形態において、リポソームが細胞傷害性薬物で満たされ、そしてこのリポソームが本発明のABMでコートされる。多くのCD20分子は悪性B細胞の表面上に存在するので、この方法は、正確な細胞型への大量の薬物の送達を可能にする。
【0160】
抗体にこのような治療剤を結合体化するための技術は周知である(例えば、Arnonら、「Monoclonal Antibodies for Immunotargeting of Drugs in Cancer Therapy」Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Reisfeldら(編)、243−56頁(Alan R.Liss,Inc.1985);Hellstromら、「Antibodies For Drug Delivery、Controlled Drug Delivery(第2版)、Robinsonら(編)、623−53頁(Marcel Dekker,Inc.1987);Thorpe、「Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review」、Monoclonal Antibodies’84:Biological And Clinical Applications、Pincheraら(編)、475−506頁(1985);およびThorpeら、「The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody−Toxin Conjugates」, Immunol.Rev.,62:119−58(1982)を参照のこと)。
【0161】
本発明のABMのためのなお他の治療的適用には、例えば組換えDNA技術による、プロドラッグを細胞傷害性薬物に転換することが可能である酵素への結合体化または連結、および腫瘍部位においてプロドラッグを細胞傷害性薬剤に転換するために、プロドラッグと組み合わせた抗体−酵素結合体の使用が含まれる(例えば、Senterら、「Anti−Tumor Effects of Antibody−alkaline Phosphatase」,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:4842−46(1988);「Enhancement of the in vitro and in vivo Antitumor Activites of Phosphorylated Mitocycin C and Etoposide Derivatives by Monoclonal Antibody−Alkaline Phosphatase Conjugates」, Cancer Research 49:5789−5792(1989);およびSenter、「Activation of Prodrugs by Antibody−Enzyme Conjugates:A New Approach to Cancer Therapy,「FASEB J.4:188−193(1990)を参照されたい)。
【0162】
本発明のABMのためのさらに別の治療的使用は、癌患者の骨髄から腫瘍細胞を除去するために、補体の存在下で結合体化されていないか、または抗体−薬物もしくは抗体−毒素結合体の一部としてのいずれかでの使用を含む。このアプローチに従って、自系の骨髄が、抗体および患者に戻して注入された骨髄を用いる処置によって、エキソビボでパージされる[例えば、Ramsayら、「Bone Marrow Purging Using Monoclonal Antibodies」,J.Clin.Immunol.,8(2):81−88(1988)を参照されたい]。
【0163】
さらに、本発明は、マウスB−Ly1抗体と実質的に同じ結合の特異性を可能にする抗原結合ドメイン(例えば、マウスB−Ly1抗体のCDRを含むポリペプチド)を含み、そしてさらに毒素ポリペプチドを含む単鎖免疫毒素を含むことが意図される。本発明の単鎖免疫毒素は、インビボでヒト癌腫を治療するために使用されてもよい。
【0164】
同様に、抗腫瘍活性、例えば、リンホカインまたはオンコスタチンを有する第2のタンパク質の少なくとも機能的な活性部分に結合された本発明のABMの抗原結合領域を少なくとも含む融合タンパク質が、インビボでヒト癌腫を治療するために使用され得る。
【0165】
本発明は、CD20を発現する腫瘍細胞を選択的に殺傷するための方法を提供する。この方法は、本発明の免疫結合体(例えば、免疫毒素)を腫瘍細胞と反応させる工程を含む。これらの腫瘍細胞はヒト癌腫からであってもよい。
【0166】
さらに、本発明は、インビボで癌腫(例えば、ヒト癌腫)を治療する方法を提供する。この方法は、本発明の免疫結合体(例えば、免疫毒素)の少なくとも1つを含む組成物の薬学的有効量を被験体に投与する工程を含む。
【0167】
さらなる態様において、本発明は、B細胞枯渇に基づいて、B細胞リンパ腫を含むB細胞増殖性障害並びに病原性自己抗体によって全体的にもしくは部分的に産生される自己免疫疾患を治療するための改善された方法に向けられ、この方法は、その必要があるヒト被験体に本発明のABMの治療有効量を投与する工程を含む。好ましい実施形態において、ABMは、マウスB−Ly1抗体のそれと実質的に同じ結合特異性を有する、糖付加操作された抗CD20抗体である。別の好ましい実施形態において、この抗体はヒト化されている。自己免疫疾患または障害の例には以下が含まれるがこれらに限定されない:急性特発性血小板減少性紫斑病および慢性特発性血小板減少性紫斑病などの免疫媒介血小板減少症、皮膚筋炎、シデナム舞踏病、ループス腎炎、リウマチ熱、多内分泌腺症候群、ヘノッホ−シェーンライン紫斑病、膿痂疹後腎炎、結節性紅斑、高安動脈炎、アジソン病、多形性紅斑、結節性多発性動脈炎、強直性脊椎炎、グッドパスチャー症候群、閉塞性血栓血管炎(thromboangitis ubiterans)、原発性胆汁性肝硬変、橋本甲状腺炎、甲状腺中毒症、慢性活動性肝炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、多発性軟骨炎、尋常性天疱瘡(pamphigus vulgaris)、ヴェグナー肉芽腫症、膜性腎症、筋萎縮性側索硬化症、脊髄癆、多発性筋痛、悪性貧血、急速進行性糸球体腎炎および線維化性肺胞炎、炎症性応答、例えば、以下を含む炎症性皮膚疾患:乾癬および皮膚炎(例えば、アトピー性皮膚炎);全身性強皮症および硬化症;炎症性腸疾患に関連する応答(例えば、クローン病および潰瘍性大腸炎);呼吸窮迫症候群(成人呼吸窮迫症候群;ARDSを含む);皮膚炎;髄膜炎;脳炎;ブドウ膜炎;大腸炎;糸球体腎炎;アレルギー状態、例えば、湿疹および喘息およびT細胞の浸潤を含む他の状態および慢性炎症性応答;アテローム性動脈硬化症;白血球接着不全;関節リウマチ;全身性エリテマトーデス(SLE);真性糖尿病(例えば、1型糖尿病またはインスリン依存性糖尿病);多発性硬化症;レーノー症候群;自己免疫性甲状腺炎;アレルギー性脳脊髄炎;Sjorgen症候群;若年発症糖尿病;ならびに結核、サルコイドーシス、多発性筋炎、肉芽腫症および脈管炎において典型的に見い出される、サイトカインおよびTリンパ球によって媒介される急性および遅発性過敏症と関連する免疫応答;悪性貧血(アジソン病);白血球漏出を含む疾患;中枢神経系(CNS)炎症性障害;多臓器損傷症候群;溶血性貧血(クリオグロブリン血症(cryoglobinemia)またはクームズ陽性貧血を含むがこれらに限定されない);重症筋無力症;抗原−抗体複合体媒介性疾患;抗糸球体基底膜疾患;抗リン脂質症候群;アレルギー性神経炎;グレーブス病;Lambert−Eaton筋無力症候群;水疱性類天疱瘡;天疱瘡;自己免疫多腺性内分泌障害;ライター症候群;スティフマン症候群;ベーチェット病;巨細胞性動脈炎;免疫複合体性腎炎;IgA腎症;IgM多発性神経障害;免疫血小板減少性紫斑病(ITP);または自己免疫血小板減少症など。本発明のこの態様において、本発明のABMは、長時間、血液の正常なB細胞を枯渇させるために使用される。
【0168】
本発明の実施に従って、被験体は、ヒト、ウマ、ブタ、ウシ、マウス、イヌ、ネコ、およびトリの被験体であってもよい。他の温血動物もまた、本発明に含まれる。
【0169】
本発明はさらに、ヒト腫瘍細胞の増殖を阻害するための方法、被験体における腫瘍を治療するための方法、および被験体における増殖型疾患を治療するための方法を提供する。これらの方法は、本発明の組成物の有効量を被験体に投与する工程を含む。
【0170】
それゆえに、本発明は、B細胞リンパ腫などのヒト癌腫を治療するための薬学的組成物、組み合わせ、および方法を含むことが明らかである。例えば、本発明は、本発明の抗体の薬学的有効量および薬学的に受容可能なキャリアを含む、ヒト癌腫の治療における使用のための薬学的組成物を含む。
【0171】
本発明のABM組成物は、静脈内、腹腔内、経口、リンパ内、または腫瘍への直接的投与を含むがこれらに限定されない、従来的な投与の様式を使用して投与され得る。静脈内投与が好ましい。
【0172】
本発明の1つの態様において、本発明のABMを含む治療用製剤は、望ましい程度の純度を有する抗体を、任意の薬学的に受容可能なキャリア、賦形剤または安定剤(Remington’s Pharmaceutical Sciences 第16版、Osol,A.編(1980))と混合することによって、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で保存のために調製される。受容可能なキャリア、賦形剤、または安定剤は、利用される投薬量および濃度においてレシピエントに対して非毒性であり、リン酸、クエン酸、および他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;保存剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド;ヘキサメトニウムクロライド;ベンズアルコニウムクロライド、ベンズエトニウムクロライド;フェノール、ブチルアルコールまたはベンジルアルコール;メチルパラベンまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;およびm−クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリジンなどのアミノ酸;モノサッカリド、ジサッカリド、およびグルコース、マンノース、またはデキストリンを含む他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn−タンパク質錯体);ならびに/あるいはTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)またはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤を含む。
【0173】
例示的な抗CD20 ABM製剤は、WO98/56418(参照により本明細書に明白に組み込まれる)に記載される。この公開は、2〜8℃での2年間の保存の最小有効期間を有する、pH 5.0の40mg/mL リツキシマブ、25mM 酢酸、150mM トレハロース、0.9% ベンジルアルコール、0.02% ポリソルベート20を含む液体複数用量製剤を記載している。目的の別の抗CD20製剤は、注射のための9.0mg/mL 塩化ナトリウム、7.35mg/mL クエン酸ナトリウム二水和物、0.7mg/mL ポリソルベート80、および滅菌水、pH6.5中に10mg/mL リツキシマブを含む。本発明において、RITUXAN(登録商標)は本発明のABMによって置換される。
【0174】
皮下投与のために適合される凍結乾燥製剤はWO97/04801に記載されている。このような凍結乾燥製剤は、高いタンパク質濃度まで適切な希釈剤で再構築され得、本明細書で治療される哺乳動物に皮下的に投与され得る。
【0175】
本明細書の製剤はまた、治療される特定の徴候のために必要とされるような1つより多くの活性化合物、好ましくは、互いに有害な影響を与えない相補的な活性を有するものを含んでもよい。例えば、細胞傷害性薬剤、化学療法剤、サイトカイン、または免疫抑制剤(例えば、シクロスポリンまたはT細胞に結合する抗体、例えば、LFA−1に結合するものなどのT細胞に作用するもの)をさらに提供することが望ましいかもしれない。このような他の薬剤の有効量は、製剤中に存在するアンタゴニストの量、疾患または障害または治療の型、および上記に議論された他の要因に依存する。これらは一般的に同じ投薬量で使用され、本明細書上記で使用されるような投与経路または従来利用された投薬量の約1〜99%を伴う。
【0176】
活性成分はまた、例えば、コアセルベーション技術によって、または界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースもしくはゼラチンマイクロカプセルおよびポリ(メチルメタクリレート(methylmethacylate))マイクロカプセル中に、コロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子およびナノカプセル)中に、またはマクロエマルジョン中にトラップされてもよい。このような技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 第16版、Osol,A.編(1980)に開示されている。
【0177】
持続放出調製物が調製されてもよい。持続放出調製物の適切な例には、アンタゴニストを含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが含まれ、このマトリックスは、成形された物品、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルの形態である。持続放出マトリックスの例には、ポリエステル、ハイドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール)、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸およびγエチル−L−グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン−ビニルアセテート、分解性の乳酸−グリコール酸コポリマー、例えば、LUPRON DEPOT(商標)(乳酸−グリコール酸コポリマーおよびロイプロリドアセテートから構成される注射可能なミクロスフェア)およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が含まれる。
【0178】
インビボ投与のために使用される製剤は無菌でなければならない。これは、滅菌濾過膜を通しての濾過によって容易に達成される。
【0179】
本発明の組成物は、種々の投薬量形態であってもよく、これには、液体溶液または懸濁液、錠剤、丸薬、散剤、坐剤、ポリマー製マイクロカプセルまたはマイクロベシクル、リポソーム、および注射可能なまたは注入可能な溶液が含まれるがこれらに限定されない。好ましい形態は、投与の様式および治療的適用に依存する。
【0180】
本発明の組成物はまた、好ましくは、当分野において公知である、従来的な薬学的に受容可能なキャリアおよびアジュバント、例えば、ヒト血清アルブミン、イオン交換体、アルミナ、レシチン、緩衝物質、例えばリン酸、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、および塩または電解質、例えば、硫酸プロタミンを含む。
【0181】
本発明の医薬組成物のための投与および投薬レジメンの最も有効な様式は、疾患の重篤度および経過、患者の健康および治療に対する応答、ならびに治療する医師の判断に依存する。従って、この組成物の投薬量は、個々の患者に対して力価測定されるべきである。それにも関わらず、本発明の組成物の有効用量は、一般的には約0.01〜約2000mg/kgの範囲である。
【0182】
本明細書に記載される分子は、種々の投薬量形態であってもよく、これには、液体溶液または懸濁液、錠剤、丸薬、散剤、坐剤、ポリマー製マイクロカプセルまたはマイクロベシクル、リポソーム、および注射可能なまたは注入可能な溶液が含まれるがこれらに限定されない。好ましい形態は、投与の様式および治療的適用に依存する。
【0183】
本発明のABMを含む組成物は、良好な医学的実施と一致する様式で、製剤化され、投薬され、および投与される。この状況において考慮のための要因には、治療される特定の疾患または障害、治療される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床的状態、疾患または障害の原因、薬剤の送達の部位、投与の方法、投与のスケジュール、および医学の実務者に公知である他の要因が含まれる。投与されるアンタゴニストの治療有効量は、このような考慮によって支配される。
【0184】
一般的な提案として、用量あたりに非経口的に投与される抗体の治療有効量は、1日あたり約0.1〜20mg/患者の体重kgの範囲内であり、使用されるアンタゴニストの典型的な初期範囲は、約2〜10mg/kgの範囲である。
【0185】
好ましい実施形態において、ABMは抗体、好ましくはヒト化抗体である。このような非結合体化抗体についての適切な投薬量は、例えば、約20mg/m2〜約1000mg/m2の範囲である。1つの実施形態において、抗体の投薬量は、RITUXAN(登録商標)について現在推奨されているものとは異なる。例えば、実質的に抗体の375mg/m2未満の1回以上の用量、例えば、用量が約20mg/m2〜約250mg/m2の範囲内の場合、例えば約50mg/m2〜約200mg/m2を患者に投与してもよい。
【0186】
さらに、1回以上の初期用量の抗体に続いて、1回以上の引き続く用量を投与してもよく、ここで、引き続く用量の抗体のmg/m2用量は、初期用量における抗体のmg/m2用量を超える。例えば、初期用量は約20mg/m2〜約250mg/m2(例えば、約50mg/m2〜約200mg/m2)の範囲内であってもよく、そして引き続く用量が約250mg/m2〜約1000mg/m2の範囲内であってもよい。
【0187】
しかし、上記に注記されるように、これらの示唆されるABMの量は、治療的な裁量に大きく支配される。適切な用量およびスケジューリングを選択する際の鍵となる要因は、上記に示されるように、得られる結果である。例えば、比較的高い用量が、進行中および急性の疾患の治療のために初期に必要とされ得る。最も有効な結果を得るためには、疾患または障害に依存して、アンタゴニストは、疾患もしくは障害の最初の徴候、診断、外見、または発生に可能な限り近接して、または疾患もしくは障害の寛解の間に投与される。
【0188】
本発明のABMは、非経口、皮下、腹腔内、肺内、および鼻内を含む任意の適切な手段によって、および所望される場合、局所的免疫抑制治療、病巣内投与のために投与される。非経口注入には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、または皮下の投与が含まれる。さらに、アンタゴニストは、パルス注入によって、例えば、アンタゴニストの減少用量を伴って適切に投与されてもよい。好ましくは、投薬は注射によって、最も好ましくは静脈内注射または皮下注射によって与えられ、部分的には投与が短期かまたは長期かに依存する。
【0189】
他の化合物、例えば、細胞傷害性薬剤、化学療法剤、免疫抑制剤、および/またはサイトカインを、本明細書のアンタゴニストとともに投与してもよい。組み合わせ投与には、別々の製剤または単一の薬学的製剤を使用する同時投与、およびいずれかの順番での連続的投与が含まれ、好ましくは、両方の(または全ての)活性薬剤が同時にそれらの生物学的活性を発揮する時間の期間が存在する。
【0190】
治癒を達成するために必要とされる本発明の組成物の用量は、スケジュールの最適化を用いてさらに減少され得ることが明らかである。
【0191】
本発明の実施に従うと、薬学的キャリアは脂質キャリアであってもよい。この脂質キャリアはリン脂質であってもよい。さらに、この脂質キャリアは脂肪酸であってもよい。また、この脂質キャリアは界面活性剤であってもよい。本明細書で使用される場合、界面活性剤は、脂質の表面張力を変化させる、一般的にはそれを低下させる任意の物質である。
【0192】
本発明の1つの例において、界面活性剤は非イオン性界面活性剤であってもよい。非イオン性界面活性剤の例には、ポリソルベート80(Tween 80またはポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートとしても知られている)、Brij、およびTriton(例えば、Triton WR−1339およびTriton A−20)が含まれるがこれらに限定されない。
【0193】
代替的には、界面活性剤はイオン性界面活性剤であってもよい。イオン性界面活性剤の例には、アルキルトリメチルアンモニウムブロミドが含まれるがこれに限定されない。
【0194】
さらに、本発明に従って、脂質キャリアはリポソームであってもよい。本願において使用される場合、「リポソーム」は、本発明の任意の物質またはその組み合わせを含む、任意の膜結合ベシクルである。
【0195】
以下の実施例は本発明をより詳細に説明する。以下に続く調製および例示は、当業者が本発明をより明確に理解し、かつ本発明を実施することを可能にするために与えられる。しかし、本発明は、本発明の単なる態様の例証として意図される例示された実施形態によっては範囲が限定されることはなく、そして機能的に等価な方法は本発明の範囲内にある。確かに、本明細書に記載されたものに加えて、本発明の種々の修飾が、前述の記載および付随する図面から、当業者には明らかになる。このような修飾は、添付の特許請求の範囲の範囲内にあることが意図される。
【実施例】
【0196】
[注記:他に特定されない限りは、以下の実施例中の特定のアミノ酸残基の位置の番号付けは、Kabat番号付けシステムに従っている]
【0197】
実施例1
材料および方法
組換え抗体B−Ly1のクローニングおよび発現
B−Ly1発現ハイブリドーマ細胞を、10% FBSおよび4mM L−グルタミンを含むRPMI中で増殖させた。>90%生存度を有する6×106細胞を収集し、全RNAを、Qiagen RNA easy midiキットを使用して単離した。B−Ly1の可変軽鎖および重鎖をコードするcDNAをRT−PCRによって増幅した。RT−PCR反応は、以下の条件:第1鎖cDNA合成のための30分間50℃;15分間95℃の初期変性;30サイクルの1分間94℃、1分間45℃、1.5分間72℃;および10分間72℃の最終伸長工程を使用して実行した。PCR産物の予想サイズは、ゲル電気泳動によって確認した。このPCR産物を適切な大腸菌ベクターにクローニングし、そしてDNA配列決定は、可変軽鎖および重鎖をコードする遺伝子が単離されたことを確認した。
【0198】
キメラB−Ly1発現ベクターの構築のために、合成シグナル配列および適切な制限部位を、さらなるPCR反応によって可変鎖に融合した。可変鎖の正確なDNA配列の最終的な確認後、これらを、対応するヒトIgG1定常領域と合わせた。一旦遺伝子が構築されると、これらを、各鎖について1つである2つの別々のベクターを使用して、MPSVプロモーターの制御下かつ合成ポリA部位の上流にクローニングして、プラスミドpETR1808(重鎖発現ベクター)およびpETR1813(軽鎖発現ベクター)を生じた。各ベクターは、EBV OriP配列を有した。
【0199】
キメラB−Ly1を、HEK293−EBNA細胞をベクターpETR1808およびpETR1813で、リン酸カルシウムトランスフェクションアプローチを使用して同時トランスフェクトすることによって産生した。指数増殖期のHEK293−EBNA細胞を、リン酸カルシウム法によってトランスフェクトした。細胞を、10% FCSを補充したDMEM培養培地を使用して、Tフラスコ中で接着性の単層培養として増殖させ、そしてそれらが50〜80%の間のコンフルエントであったときにトランスフェクトした。T75フラスコのトランスフェクションのために、800万個の細胞を、FCS(最終10% V/V)、250μg/mlネオマイシンを補充した14ml DMEM培養培地中でトランスフェクションの24時間前に播種し、そして細胞を37℃で、5% CO2大気を有するインキュベーター中に一晩配置した。トランスフェクトされる各T75フラスコについて、DNAの溶液、CaCl2および水の溶液を、軽鎖と重鎖の発現ベクター間で均等に分割した47μgの全プラスミドベクターDNA、235μlの1M CaCl2溶液を混合すること、および水を469μlの最終容量まで加えることによって調製した。この溶液に、469μlの50mM HEPES、280mM NaCl、1.5mM Na2HPO4溶液、pH 7.05を加え、すぐに10秒間混合し、そして20秒間室温に放置した。この懸濁液を、2% FCSを補充した12mlのDMEMで希釈し、そして既存の培地の代わりにT75を加えた。細胞を37℃、5% CO2で約17〜20時間インキュベートし、次いで培地を12ml DMEM、10% FCSで置き換えた。非修飾抗体「chB−Ly1」の産生のために、細胞を、1:1の比率の抗体発現ベクターpETR1808およびpETR1813のみでトランスフェクトした。糖付加操作した抗体「chB−Ly1−ge」の産生のために、細胞を4つのプラスミドで、2つは抗体発現のため(pETR1808およびpETR1813)、1つは融合GnTIIIポリペプチド発現のため(pETR1519)、および1つはマンノシダーゼII発現のため(pCLF9)に、それぞれ4:4:1:1の比率で同時トランスフェクトした。トランスフェクション後の5日目に、上清を収集し、5分間1200rpmで遠心分離し、続いて2回目の遠心分離を10分間4000rpmで行い、そして4℃に保った。
【0200】
chB−Ly1およびchB−Ly1−geを、3つの順次的なクロマトグラフィー工程、プロテインAクロマトグラフィー、カチオン交換クロマトグラフィー、およびSuperdex 200カラム(Amersham Pharmacia)上のサイズ排除クロマトグラフィー工程(緩衝液をリン酸緩衝化生理食塩水に交換し、この最後の工程からのモノマー性抗体ピークを収集する)を使用して、培養上清から精製した。抗体濃度を、280nmにおける吸収から、分光光度計を使用して見積もった。
【0201】
オリゴサッカリド分析
オリゴサッカリドを、PNGアーゼF消化によって抗体から酵素的に遊離させた。抗体はPVDF膜に固定化したか、または溶液中にあるかのいずれかであった。
【0202】
遊離したオリゴサッカリドを含む得られる消化溶液を、MALDI/TOF−MS分析のために直接的に調製したか、またはMALDI/TOF−MS分析のためのサンプル調製の前にEndoHグリコシダーゼでさらに消化した。
【0203】
PVDF膜固定化抗体のためのオリゴサッカリド遊離方法
PVDF(Immobilon P,Millipore,Bedford,Massachusetts)膜で作られた96ウェルプレートのウェルを、100μlメタノールで湿潤させ、そして液体を、Multiscreen vacuum manifold(Millipore,Bedford,Massachusetts)に適用された真空を使用してPVDF膜を通して吸引した。このPVDF膜を、300μlの水で3回洗浄した。次いで、ウェルを、50μl RCM緩衝液(8M 尿素、360mM Tris、3.2mM EDTA、pH 8.6)で洗浄した。30〜40μgの間の抗体を、10μl RCM緩衝液を含むウェル中に負荷した。ウェル中の液体を、適用した真空によって膜を通して吸引し、この膜を、引き続いて50μl RCM緩衝液で2回洗浄した。ジスルフィド架橋の還元を、50μlのRCM中0.1M ジチオスレイトールの付加、および37℃で1時間のインキュベーションによって実行した。
【0204】
還元後、真空を適用して、ウェルからジチオスレイトールを除去した。ウェルを300μlの水で3回洗浄し、その後50μlのRCM緩衝液中0.1M ヨード酢酸の付加および室温で暗所にて30分間のインキュベーションによってシステイン残基のカルボキシメチル化を実行した。
【0205】
カルボキシメチル化後、ウェルを真空で吸引し、続いて300μlの水で3回洗浄した。次いで、エンドグリコシダーゼの吸着を妨害するために、100μlのポリビニルピロリドン360の1%水溶液を室温で1時間インキュベートすることによってPVDF膜をブロックした。次いで、ブロッキング試薬を、穏やかな真空によって除去し、続いて300μlの水で3回洗浄した。
【0206】
任意の潜在的な荷電したモノサッカリド残基を除去するために、N連結オリゴサッカリドを、20mM NaHCO3、pH7.0中、25μlの最終容量中で、2.5mUのペプチド−N−グリコシダーゼF(組換えN−グリカナーゼ、GLYKO,Novato,CA)および0.1mUのシアリダーゼ(GLYKO,Novato,CA)の付加によって遊離させた。消化を3時間37℃で実行した。
【0207】
溶液中の抗体のためのオリゴサッカリド遊離法
40〜50μgの間の抗体を、2mM Tris、pH7.0中2.5mUのPNGアーゼF(Glyko,U.S.A.)と、25マイクロリットルの最終容量中で混合し、そして混合物を3時間37℃でインキュベートした。
【0208】
MALDI/TOF−MS中性オリゴサッカリドピークへのハイブリッド二分枝オリゴサッカリド構造の割り当てのための、PNGアーゼ遊離オリゴサッカリドのエンドグリコシダーゼH消化の使用
PNGアーゼF遊離オリゴサッカリドを、エンドグリコシダーゼH(EC 3.2.1.96)で引き続き消化した。EndoH消化のために、15mUのEndoH(Roche,Switzerland)をPNGアーゼF消化物(上記の溶液方法における抗体)に加え、30マイクロリットルの最終容量を得、この混合物を3時間37℃でインキュベートした。EndoHは、N連結オリゴサッカリドのキトビオースコアのN−アセチルグルコサミン残基の間を切断する。この酵素は、オリゴマンノースおよび大部分のハイブリッド型グリカンを消化できるのみであるのに対して、複合体型オリゴサッカリドは加水分解されない。
【0209】
MALDI/TOF−MSのためのサンプル調製
遊離したオリゴサッカリドを含む酵素消化物を、150mMの最終濃度までの酢酸の付加後に、さらに3時間室温でインキュベートし、引き続き、カチオンおよびタンパク質を取り除くために、マイクロバイオスピン(micro−bio−spin)クロマトグラフィーカラム(BioRad,Switzerland)に充填された0.6mlのカチオン交換レジン(AG50W−X8レジン、水素型、100〜200メッシュ、BioRad,Switzerland)に通した。1mlの得られるサンプルを、ステンレス鋼標的プレートに適用し、プレート上で1μlのsDHBマトリックスと混合した。sDHBマトリックスを、1mlのエタノール/10mM 塩化ナトリウム水溶液1:1(v/v)中に2mgの2,5−ジヒドロキシ安息香酸および0.1mgの5−メトキシサリチル酸を溶解することによって調製した。サンプルを風乾し、0.2μlエタノールを適用し、そしてサンプルを最終的に空気中で再結晶させた。
【0210】
MALDI/TOF−MS
質量スペクトルを得るために使用したMALDI/TOF−MS質量スペクトル分析装置はVoyager Elite(Perspective Biosystems)であった。この機器を、20kVの加速および80nsのディレイを用いて直線状配置で操作した。オリゴサッカリド標準を使用する外部較正を、イオンの質量割り当てのために使用した。200個のレーザーショットからのスペクトルを、最終的なスペクトルを得るために加算した。
【0211】
全血B細胞枯渇
健常ドナーからの495μlのヘパリン化血液を、5mlポリスチレンチューブ中でアリコートし、5μlの100倍濃縮抗体サンプル(1〜1000ng/ml最終濃度)またはPBSのみを加え、そしてチューブを37℃でインキュベートした。24時間後、50μlの血液を新鮮なチューブに移し、抗CD3−FITC、抗CD19−PEおよび抗CD45−CyChrome(Becton−Dickinson)で、15分間、室温にて、暗所で染色した。分析の前に、500μlのFACS緩衝液(2% FCSおよび5mM EDTAを含むPBS)をチューブに加えた。血液サンプルのCD3−FITCおよびCD19−PE蛍光を、閾値をCD45−CyChromeに設定することによって、フローサイトメトリーによって分析した。B細胞枯渇を、CD3+T細胞に対するCD19+B細胞の比率をプロットすることによって決定した。
【0212】
Raji細胞に対する抗CD20抗体の結合
180μlのFACS緩衝液(2% FCSおよび5mM EDTAを含むPBS)中の500.000を5mlのポリスチレンチューブに移し、20μlの10倍濃縮抗CD20抗体サンプル(1〜5000ng/ml最終濃度)またはPBSのみを加え、チューブを4℃で30分間インキュベートした。続いて、FACS緩衝液で2回洗浄し、300×gで3分間ペレット化した。上清を吸引して除き、細胞を100μlのFACS緩衝液中に取り、1μlの抗Fc特異的F(ab’)2−FITCフラグメント(Jackson Immuno Research Laboratories,USA)を加え、そしてチューブを4℃で30分間インキュベートした。サンプルをFACS緩衝液で2回洗浄し、フローサイトメトリーによる分析のために、0.5μg/ml PIを含む500μlのFACS緩衝液に取り込んだ。結合を、抗体濃度に対して幾何平均蛍光をプロットすることによって決定した。
【0213】
実施例2
高相同性アクセプターアプローチ
高相同性抗体アクセプターフレームワーク検索を、ヒト生殖系列配列のコレクションに対してB−ly1タンパク質配列をアラインさせること、および最大の配列同一性を示したヒト配列を取り出すことによって実行した。ここで、VBaseデータベースからの配列VH1 10を重鎖フレームワークアクセプター配列として選択し、そしてVK 2 40配列を、軽鎖についてのフレームワークアクセプターであると選択した。これらの2つのアクセプターフレームワークに、マウス重鎖および軽鎖の可変ドメインの3つの相補性決定領域(CDR)を移植した。フレームワーク4領域は生殖系列V遺伝子の可変領域の一部ではないので、この位置のアラインメントは個別に行った。JH4領域を重鎖について選択し、JK4領域を軽鎖について選択した。設計された免疫グロブリンドメインの分子モデリングは、1つのスポットが、CDRの外側のヒトアミノ酸残基の代わりにマウスアミノ酸残基を潜在的に必要とすることを明らかにした。ヒトフレームワークにマウスアミノ酸残基を再導入することは、いわゆる復帰突然変異を生成する。例えば、Kabat27位のヒトアクセプターアミノ酸残基はチロシン残基に復帰突然変異した。復帰突然変異を含むかまたはそれを除外したかのいずれかである、ヒト化抗体改変体を設計した。ヒト化抗体軽鎖はいかなる復帰突然変異も必要としなかった。タンパク質配列を設計した後で、これらのタンパク質をコードするDNA配列を、以下に詳述するように合成した。
【0214】
混合フレームワークアプローチ
ヒトアクセプターフレームワークの決定的である(良好な抗原結合親和性または抗体機能を保持するために決定的である)アミノ酸残基位置で復帰突然変異を導入することを回避するために、全体のフレームワーク領域1(FR1)またはフレームワーク領域1(FR1)および2(FR2)が一緒でのいずれかが、天然のヒト生殖系列配列中のこれらの重要な位置において、ドナー残基または機能的に等価な残基をすでに有するヒト抗体配列によって置き換えられ得るか否かを調べた。この目的のために、マウスBly1配列のVHフレームワーク1および2を、ヒト生殖系列配列に対して個々にアラインした。ここで、最大の配列同一性は重要ではなく、アクセプターフレームワークを選択するために使用しなかったが、その代わりに、いくつかの重要な残基の一致をより重要であると仮定した。これらの決定的な残基には、残基24、71、および94(Kabat番号付け)が含まれ、およびまた、27位、28位、および30位(Kabat番号付け)の残基も含まれ、これは、KabatによるCDR1の定義の外側に存在するが、しばしば、抗原結合に関与している。IMGT配列VH 3 15を適切なものとして選択した。タンパク質配列を設計した後、これらのタンパク質をコードするDNA配列を、以下に詳述するように合成した。このアプローチを使用すると、良好なレベルの抗原結合を保持するために、軽鎖または重鎖のいずれかについても、復帰卒然変異は必要とされなかった。
【0215】
抗体遺伝子の合成
ヒト化抗体V領域のアミノ酸配列を設計した後、DNA配列が生成されなくてはならなかった。個々のフレームワーク領域のDNA配列データは、ヒト生殖系列配列についてのデータベース中で見い出した。CDR領域のDNA配列は、対応するマウスcDNAデータから取った。これらの配列を用いて、全体のDNA配列を仮想的にアセンブルした。このDNA配列データを有するので、サイレント変異を導入することによって仮想配列に診断用制限部位を導入し、制限エンドヌクレアーゼのための認識部位を作製した。物質のDNA鎖を得るために、遺伝子合成を実行した(例えば、Wheelerら、1995)。この方法において、オリゴヌクレオチドは目的の遺伝子から設計され、一連のオリゴヌクレオチドがコード鎖に由来し、1つの他の一連のものは非コード鎖由来である。各オリゴヌクレオチドの3’末端および5’末端(行におけるまさに最初および最後を除く)は、反対の鎖に由来する2つのプライマーに対する相補的配列を常に示す。これらのオリゴヌクレオチドを、任意の熱安定ポリメラーゼのために適切な反応緩衝液中に配置し、およびMg2+、dNTP、およびDNAポリメラーゼを加えるときに、各オリゴヌクレオチドはその3’末端から伸長される。次いで、一方のプライマーの新規に形成された3’末端が反対の鎖の次のプライマーとアニールし、そして鋳型依存的なDNA鎖伸長のために適切な条件下でその配列をさらに伸長する。最終産物を大腸菌中での増殖のために従来的なベクターにクローニングした。
【0216】
抗体産生
ヒト重鎖および軽鎖リーダー配列(分泌のため)を上記の可変領域配列の上流に加え、次いでこれらを、標準的な分子生物学技術を使用して、それぞれ、ヒトIgG1κ定常重鎖および軽鎖配列の上流に結合した。得られる完全な抗体重鎖および軽鎖DNA配列を、MPSVプロモーターの制御下で、かつ合成ポリA部位の上流で、哺乳動物発現ベクター(1つが軽鎖用、および1つが重鎖用)にサブクローニングした。各ベクターは、上記の実施例1に記載されるように、EBV OriP配列を有していた。上記の実施例1に記載されるように、すなわち、HEK293−EBNAを哺乳動物抗体重鎖および軽鎖発現ベクターとトランスフェクトすること、トランスフェクションの5〜7日後、順化培養培地を収集すること、ならびに純粋なモノマー性IgG1抗体を単離するためにプロテインAアフィニティークロマトグラフィー、続いてカチオン交換クロマトグラフィーおよび最終的なサイズ排除クロマトグラフィーの工程によって分泌抗体を精製することによって、抗体を産生した。抗体を25mM リン酸カリウム、125mM 塩化ナトリウム、100mM グリシン溶液、pH 6.7中で製剤化した。上記の実施例1においてキメラ抗体について記載されているように、GnT−IIIグリコシルトランスフェラーゼ発現ベクターとともに、またはGnT−III発現ベクターおよびゴルジマンノシダーゼII発現ベクターとともに、抗体発現ベクターの同時トランスフェクションによって、ヒト化抗体改変体の糖付加操作改変体を産生した。糖付加操作抗体を、非糖付加操作抗体について上記に記載されたように精製および製剤化した。抗体のFc領域に結合されたオリゴサッカリドを、以下に記載されるようにMALDI/TOF−MSによって分析した。
【0217】
オリゴサッカリド分析
溶液中の抗体に対するオリゴサッカリド遊離方法
40〜50μgの間の抗体を、2mM Tris、pH7.0中の2.5mU PNGアーゼF(Glyko,U.S.A.)と、25マイクロリットルの最終容量で混合し、そしてこの混合物を3時間37℃でインキュベートした。
【0218】
MALDI/TOF−MSのサンプル調製
遊離したオリゴサッカリドを含む酵素消化物を、150mMの最終濃度までの酢酸の付加後に、さらに3時間室温でインキュベートし、引き続き、カチオンおよびタンパク質を取り除くために、マイクロバイオスピン(micro−bio−spin)クロマトグラフィーカラム(BioRad,Switzerland)に充填された0.6mlのカチオン交換レジン(AG50W−X8レジン、水素型、100〜200メッシュ、BioRad,Switzerland)に通した。1mlの得られるサンプルを、ステンレス鋼標的プレートに適用し、プレート上で1μlのsDHBマトリックスと混合した。sDHBマトリックスを、1mlのエタノール/10mM 塩化ナトリウム水溶液1:1(v/v)中に2mgの2,5−ジヒドロキシ安息香酸および0.1mgの5−メトキシサリチル酸を溶解することによって調製した。サンプルを風乾し、0.2μlエタノールを適用し、そしてサンプルを最終的に空気中で再結晶させた。
【0219】
MALDI/TOF−MS
質量スペクトルを得るために使用したMALDI/TOF−MS質量スペクトル分析装置はVoyager Elite(Perspective Biosystems)であった。この機器を、20kVの加速および80nsのディレイを用いて直線状配置で操作した。オリゴサッカリド標準を使用する外部較正を、イオンの質量割り当てのために使用した。200個のレーザーショットからのスペクトルを、最終的なスペクトルを得るために加算した。
【0220】
抗原結合アッセイ
上記の実施例1においてキメラB−ly1抗体について記載されるようなフローサイトメトリーベースのアッセイを使用して、精製したモノマー性ヒト化抗体改変体を、Raji B細胞リンパ腫標的細胞上でのヒトCD20への結合について試験した。
【0221】
NK細胞およびFcγRIIIA発現CHO細胞株へのモノマー性IgG1糖改変体の結合
CD16−およびCD56陽性細胞(MACS system,Miltenyi Biotec GmbH,Bergisch Gladbach/Germany)についてネガティブ選択富化を適用して、ヒトNK細胞を、新鮮に単離された末梢血単核細胞(PBMC)から単離した。CD56発現によって決定された純度は、88〜95%の間であった。新鮮に単離されたNK細胞を、カルシウムイオンおよびマグネシウムイオンを含まないPBS中で(3×105細胞/ml)、20分間37℃にてインキュベートして、NK細胞結合IgGを除去した。細胞を、106細胞/mlにて、PBS、0.1% BSA中の異なる濃度の抗CD20抗体(0、0.1、0.3、1、3、10μg/ml)でインキュベートした。数回の洗浄後、抗体結合を、1:200 FITC結合体化F(ab’)ヤギ抗ヒト、F(ab’)2特異的IgG(Jackson ImmunoResearch,West Grove,PA/USA)および抗ヒトCD56−PE(BD Biosciences,Allschwil/Switzerland)とともにインキュベートすることによって検出した。抗FcγRIIIA 3G8F(ab’)2フラグメント(Ancell,Bayport,MN/USA)を、抗体糖改変体(3μg/ml)の結合と競合させるために10μg/mlの濃度で加えた。結合抗体改変体を参照する蛍光強度を、CD56陽性細胞について、FACSCalibur(BD Biosciences,Allschwil/Switzerland)上で決定した。CHO細胞を、FcγRIIIa−Val158α−鎖およびγ−鎖をコードする発現ベクターを用いるエレクトロポレーション(280V、950μf、0.4cm)によってトランスフェクトした。トランスフェクト体を、6μg/mlピューロマイシンの添加によって選択し、安定なクローンを、FACSによって、106細胞について10μl FITC結合体化抗FcγRIII 3G8モノクローナル抗体(BD Biosciences,Allschwil/Switzerland)を使用して分析した。FCγRIIIA−Val158−発現CHO細胞へのIgG1の結合を、上記に記載されるNK細胞結合と類似して実行した。
【0222】
ADCCアッセイ
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)をエフェクター細胞として使用し、ならびにHistopaque−1077(Sigma Diagnostics Inc.,St.Louis,MO63178 USA)を使用して、および本質的に製造業者の指示書に従って調製した。手短に述べると、静脈血をボランティアからヘパリン化シリンジを用いて採取した。血液をPBS(Ca++またはMg++を含まない)で1:0.75〜1.3に希釈し、Histopaque−1077に重層した。グラジエントを、壊すことなく400×gで30分間室温(RT)で遠心分離した。PBMCを含む界面を収集し、PBSで洗浄し(2つのグラジエントからの細胞あたり50ml)、そして室温にて10分間の300×gの遠心分離によって収集した。PBSを用いるペレットの再懸濁後、PBMCを計数し、RTで10分間、200×gで遠心分離によって2回目の洗浄を行った。次いで、細胞を、引き続く手順のために適切な培地中に再懸濁した。
【0223】
ADCCアッセイのために使用されるエフェクター対標的の比率は、PBMC細胞およびNK細胞について、それぞれ、25:1および10:1であった。丸底96ウェルプレートのウェルあたり50μlを加えるために、エフェクター細胞を、適切な濃度でAIM−V培地中で調製した。標的細胞は、10% FCSを含むDMEM中で増殖させたヒトBリンパ腫細胞(例えば、Raji細胞)であった。標的細胞をPBS中で洗浄し、計数し、そしてマイクロウェルあたり100μl中に30’000細胞を加えるために、mlあたり30万個でAIM−V中に再懸濁した。抗体をAIM−V中で希釈し、あらかじめプレートした標的細胞に50μlで加え、そして10分間RTで標的に結合させた。次いで、エフェクター細胞を加え、このプレートを、4時間、37℃で、5% CO2を含む加湿(humified)大気中でインキュベートした。標的細胞の殺傷を、細胞傷害性検出キット(Roche Diagnostics,Rotkreuz,Switzerland)を使用して、損傷した細胞からの乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)放出の測定によって評価した。4時間のインキュベーション後、プレートを800×gで遠心分離した。各ウェルからの100μl上清を新たな透明な平底96ウェルプレートに移した。キットからの100μlの着色基質緩衝液をウェルあたりに加えた。着色反応のVmax値を、ELISAリーダーで、少なくとも10分間、SOFTmaxPROソフトウェア(Molecular Devices,Sunnyvale,CA94089,USA)を使用して決定した。自発的LDH放出を、標的およびエフェクター細胞のみを含むが抗体を含まないウェルから測定した。最大放出は、標的細胞および1% Triton X−100のみを含むウェルから決定した。特異的抗体媒介性殺傷のパーセンテージを以下のように計算した:((x−SR)/(MR−SR)*100、ここでxは特異的抗体濃度におけるVmaxの平均であり、SRは自発的放出のVmaxの平均であり、そしてMRは最大放出のVmaxの平均である。
【0224】
補体依存性細胞傷害性アッセイ
標的細胞を計数し、PBSで洗浄し、AIM−V(Invitrogen)中に100万細胞/mlで再懸濁した。50μl細胞を、平底96ウェルプレート中のウェルあたりにプレートした。抗体希釈物をAIM−V中で調製し、50μlで細胞に加えた。抗体を、10分間室温で細胞に結合させた。ヒト血清補体(Quidel)を新鮮に融解し、AIM−Vで3倍希釈し、そして50μlでウェルに加えた。ウサギ補体(Cedarlane Laboratories)を、製造業者によって記載されるように調製し、AIM−Vで3倍希釈し、そして50μlでウェルに加えた。コントロールとして、補体供給源を30分間56℃に加熱し、その後アッセイへの添加を行った。
アッセイプレートを2時間37℃でインキュベートした。細胞の殺傷を、LDH放出を測定することによって決定した。手短に述べると、プレートを、300×gで3分間遠心分離した。ウェルあたり50μlの上清を新たな96ウェルプレートに移し、そして細胞傷害性キット(Roche)からの50μlのアッセイ試薬を加えた。ELISAリーダーを用いる反応速度論的測定は、上清中のLDH濃度に対応するVmaxを決定した。最大放出を、1% Triton X−100の存在下で細胞をインキュベートすることによって決定した。
【0225】
全血B細胞枯渇アッセイ
抗CD20抗体による全血中での正常B細胞枯渇を、上記の実施例1に記載されるように実行した。
【0226】
アポトーシスアッセイ
抗体のアポトーシス効力を、10μg/ml(抗原結合に関して飽和状態)である抗体を標的細胞(5×105細胞/mlの標的細胞濃度)とともに一晩(16〜24時間)インキュベートすることによってアッセイした。サンプルをAnnV−FITCで染色し、FACSによって分析した。アッセイを3連で行った。
【0227】
検出を、アネキシンVおよびホスファチジルセリンのようなアポトーシスマーカーの出現を追跡することによって、フローサイトメトリーによって実行する。ネガティブコントロール(アポトーシスの誘導なし)はいかなる抗体も含まず、リン酸緩衝化生理食塩水のみを含む。ポジティブコントロール(最大アポトーシス)は、5マイクロリットルの強力なアポトーシスインデューサー、カンプトテシン(CPT)を含む。
【0228】
結果および考察
キメラB−ly1軽鎖(上記の実施例1に記載されるようなmVL)で、またはヒト化B−ly1軽鎖(KV1)でのいずれかで複合体化された、抗体改変体B−HH1、B−HH2、B−HH3、および親のキメラ抗体chB−ly1(上記の実施例1に記載されている)のヒトCD20抗原への結合の比較は、全ての抗体が同様のEC50値を有するが、B−HH1構築物は改変体B−HH2およびB−HH3よりも低い強度/化学量論結合することを示す(図11)。B−HH1は、その部分的なヒトCDR1およびCDR2領域(Kabat定義)、ならびに28位(Kabat番号付け)におけるAla/Thr多型によって、B−HH2およびB−HH3から区別され得る。これは、28位、完全CDR1、および/または完全CDR2のいずれかが、抗体/抗原相互作用のために重要であることを示す。
【0229】
B−HLI、B−HHI、およびキメラchB−ly1親抗体の比較は、B−HL1構築物中でのいかなる結合活性もの非存在、およびB−ly1と比較したB−HH1の結合強度/化学量論が約半分であることを示した(図12)。B−HL1ならびにB−HH1の両方を、ヒトVH1クラスに由来するアクセプターネットワークに基づいて設計する。他の違いの間で、B−HL1構築物の71位(Kabat番号付け;Kabat71位は配列番号48の72位に相当する)は顕著は違いであり、抗原結合のためのその推定の重要性を示す。
【0230】
図9〜13の抗原結合データを比較したとき、改変体BHH2−KV1、BHL8−KV1、およびBHL11−KV1は、試験した異なるヒト化抗体の間で、ヒト細胞の表面上のヒトCD20への最高の結合親和性を示す。一方では、B−HH2との間の違い、および他方ではB−HL8およびB−HL11との間の違いは、FR1およびFR2領域においてのみ局在し、3つ全てのCDRは同一である(例えば、配列番号32、56、および60を比較のこと、これらはKabatに従って番号付けされていないが、これらのKabat番号付けは当業者によって容易に決定され得る)。B−HL8およびB−HL11は、ヒトVH3クラスに由来するFR1およびFR2配列を有するのに対して、完全なB−HH2フレームワークはヒトVH1由来である。B−HL11はB−HL8の誘導体であり、単一の変異Gln1Gluを有し(1位はKabat番号付けと配列表において使用される従来的な番号付けの両方で同じである)、GlnはB−HH2構築物におけるアミノ酸残基である。これは、Glu1Gln交換が結合親和性も強度も変化させないことを意味する。B−HH2とB−HL8の間の他の違いは、14個のフレームワーク残基であり、これらの1つ以上がこの抗体の抗原結合挙動に影響を与える。
【0231】
B−HL4構築物は、B−HH2のFR1をヒト生殖系列配列VH1 45のそれと置き換えることによってB−HH2抗体から誘導される。この構築物は、FR1中の3つのみの位置において異なるアミノ酸を有するにも関わらず、非常に減少した結合能力を示す。これらの残基は、2位、14位、および30位(Kabat番号付け)に位置する。当然、30位は、これがCDR1のChothia定義の部分であるので、影響のある位置であり得る。図9〜13からの全ての結合曲線の全体的な分析は、以下のヒト化B−ly1重鎖残基(Kabat番号付け)がCD20への結合のために重要であることを示す:N35(Kabat CDRの末端)、完全Kabat CDR1、完全Kabat CDR2および完全Kabat CD3、残基A71およびR94(この場合R94はスレオニンによって置き換えられることができない)およびY27。A28およびS30もまた、より低い程度で寄与する。さらに、Kabat CDR3および全ての正準の残基は抗原結合のために重要である。復帰突然変異は、完全Kabat CDR1、CDR2およびCDR3を移植したヒト化軽鎖に導入されなかった。アポトーシスの誘導において(図14、15および21)、最も強力な改変体は、ヒト化B−ly1改変体BHH2−KV1であった(もともとのchB−ly1よりもさらにより強力であり、リツキシマブと同一の配列を有する抗体、C2B8よりも大いに強力である)。アポトーシスの増加を回復し得る他のヒト化改変体(BHL8の誘導体)は:B−HL12〜B−HL17(表を参照されたい)およびBHH8(混合フレームワーク)およびBHH9(1つの復帰突然変異、S30Tを有する「混合フレームワーク」)である。9位および48位(Kabat番号付け)は抗原を接触し得る。改変体BHH4〜BHH7は、さらなる非ヒト配列を導入しない、他のヒト化B−ly1改変体である。
【0232】
ヒト化B−ly1抗体の重要な特性は、これが、Cragg,M.S.およびGlennie,M.J.,Blood 103(7):2738−2743(2004年4月)において定義されたII型抗CD20抗体であることである。それゆえに、これは、CD20への結合の際に、Polyak,M.J.およびDeans,J.P.,Blood 99(9):3256−3262(2002)においてこの目的のために記載されたアッセイを使用して、CD20+ヒト細胞の表面からのCD20の非イオン性界面活性剤抽出に対するいかなる有意な耐性も誘導しなかった。これは、確かに、C2B8抗体(リツキシマブと同一である配列を有する別の抗CD20抗体、Reffへの米国特許公開第2003 0003097号を参照のこと)よりも、CD20の非イオン性界面活性剤抽出に対して有意により低い耐性を誘導した。II型抗CD20抗体から予測される通り、ヒト化B−ly1はいかなる補体媒介溶解活性を有さず、そして抗CD20抗体C2B8(リツキシマブと同一の配列を有するキメラIgG1)よりも確かに大きな補体媒介溶解活性を有さなかった。ヒト化B−ly1の別の重要な特性は、これがホモタイプ凝集アッセイにおいて非常に強力であったことであった。このアッセイにおいて、CD20陽性ヒト細胞、Daudi細胞を、(Deansの参考文献)において詳細に記載されているように、哺乳動物細胞インキュベーター中で、24時間まで、37℃において5%Cお2雰囲気中で、細胞培養培地中でインキュベートし、mlあたり1マイクログラムの濃度、および並行してmlあたり5マイクログラムの濃度の抗体を用いた。比較として、細胞の並行インキュベーションを、同一の条件下で、しかし抗CD20抗体C2B8を使用して行った。8時間および24時間のインキュベーションを含む異なる時点において、細胞を、顕微鏡を使用して視覚的に検査した。ヒト化B−ly1抗体が強力なホモタイプ凝集に導かれ、凝集はC2B8コントロール抗体の富化によって誘導されるものよりも有意に大きかったことが見い出された。さらに、および抗CD20II型である抗体と一致して、これは、CD20陽性ヒト細胞がヒト化B−ly1抗体とともにインキュベートされたときに、同一の条件下で、リツキシマブと同一の配列を有するC2B8キメラIgG1抗体を使用するコントロールと比較して、より高いレベルのアポトーシスを誘導した。
【0233】
ヒト化抗体の糖付加操作改変体を、抗体遺伝子とともに、GnTIIIグリコシルトランスフェラーゼの同時発現によって哺乳動物細胞中で産生した。これは、WO 2004/065540において記載されているように、二分枝でフコシル化されていないオリゴサッカリドを含む、抗体のFc領域に結合されているフコシル化されていないオリゴサッカリドの画分の増加をもたらした(図17〜19)。糖付加操作された抗体は、糖付加操作されていない抗体と比較して、およびC2B8抗体と比較して、有意に高いレベルの、ヒトFcγRIIIレセプターへの結合(図20)および同様にADCC活性(図16)を有した。ヒト化B−ly1抗体はまた、全血アッセイにおいてヒトB細胞枯渇を誘導する際に、コントロールC2B8抗体よりもより強力であった(図16)。これは、糖付加操作されていないB−ly1抗体について、およびその糖付加操作バージョンについての両方で真実であった。この糖付加操作抗体は、全血アッセイにおいてB細胞を枯渇させる際に、C2B8コントロール抗CD20抗体よりも約1000倍強力であった。この比較は、B−ly1抗体の非糖付加操作型について、および糖付加操作ヒト型についての両方で重要である。なぜなら、ADCC、および補体媒介溶解、およびアポトーシスの誘導などのFcレセプター依存性活性を合わせたアッセイにおいて、両方の型のB−ly1はC2H8よりも有意により強力であるが、両方の型のB−ly1は、劇的により低い補体媒介溶解活性を有するからである。ADCC、Fcレセプター依存性細胞殺傷活性およびアポトーシス誘導は、ヒト化B−ly1抗体改変体のこの優れた活性において存在した。さらに、アポトーシスアッセイにおいて、このII型抗CD20抗体の糖付加操作型および非糖付加操作型の両方が強力であり、Fcγレセプターへの結合親和性の増加を有するFc操作改変体は、非Fc操作改変体よりもアポトーシス誘導がさらにより強力であり、および全ての改変体が、コントロール抗体C2B8よりも有意により強力であった。II型抗CD20抗体によって媒介されるホモタイプ凝集の増強およびアポトーシスの誘導についての正確なメカニズムは未知であり、CD20−陽性細胞の表面上の他の分子、例えば、Fcγレセプターへの同時に起こる結合は、この重要な特性に影響を与え得る。それゆえに、FcγRIIIを含むFcγレセプターへの結合親和性の増加のためにそれらのFc領域中で操作され、かつ付随するADCC活性の増加を有するII型の抗CD20抗体が、Fc操作されていないものよりもさらに高い、強力なアポトーシス、およびホモタイプ凝集をなお誘導することが可能であったことを実証することは重要であった。アポトーシス誘導は、インビボとして重要である。なぜなら、標的CD20−陽性細胞が見い出され得る身体中の位置が存在するからである。しかし、FcγRIII陽性細胞への接近が血液中よりも困難であり、このような位置は、例えば、リンパ節である。これらの位置において、抗CD20抗体それ自体によるアポトーシスの誘導は、非ホジキンリンパ腫およびB細胞慢性リンパ性白血病などの血液学的な悪性腫瘍の治療のため、ならびにB細胞枯渇アプローチを介する、関節リウマチおよび狼瘡などの自己免疫疾患の治療のための両方で、ヒトにおける抗CD20抗体治療の良好な効力のために決定的であり得る。FcγRIIIへの結合親和性の増加、およびヒト化されたFc操作されたII型抗CD20抗体のより高いADCCもまた、このような治療のための非常に重要な属性であり得る。最後に、ヒト化改変体およびFc操作された改変体を含む、このII型抗CD20抗体の、減少されたかまたは無視できる補体媒介溶解活性もまた重要であり得る。抗CD20抗体による、より高い補体活性化は、増加した、望ましくない副作用と相関してきた。
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗原結合分子(ABM)に関する。特定の実施形態において、本発明は、ヒトCD20に特異的であるキメラ抗体、霊長類化抗体、またはヒト化抗体を含む、組換えモノクローナル抗体に関する。さらに、本発明は、このようなABMをコードする核酸分子、ならびにこのような核酸分子を含むベクターおよび宿主細胞に関する。本発明はさらに、本発明のABMを製造するための方法、および疾患の治療においてこれらのABMを使用する方法に関する。さらに、本発明は、Fcレセプター結合の増加およびエフェクター機能の増加を有する抗体を含む改善された治療特性を有する、グリコシル化の修飾を有するABMに関する。
【背景技術】
【0002】
免疫系および抗CD20抗体
ヒトを含む脊椎動物の免疫系は、多数の器官および細胞型からなり、これらは、侵入する外来性の微生物(抗原)を正確かつ特異的に認識し、これらに結合し、およびこれらを破壊するように進化してきた。リンパ球は、免疫系の適切な機能のために決定的である。これらの細胞は、胸腺、脾臓、および骨髄(成人)において産生され、そして成人の循環系の中に存在する全体の白血球細胞の約30%を表す。2つの主要なリンパ球の亜集団が存在している。T細胞およびB細胞である。T細胞は細胞媒介性免疫の原因であるのに対して、B細胞は抗体産生(体液性免疫)の原因である。しかし、典型的な免疫応答においては、T細胞およびB細胞は相互依存的に機能する。T細胞は、T細胞レセプターが、抗原提示細胞の表面上の主要組織適合性複合体(「MHC」)糖タンパク質に結合される抗原のフラグメントに結合するときに活性化される;このような活性化は、生物学的メディエーターの放出を引き起こし、これは、分化し、かつその抗原に対する抗体(「免疫グロブリン」)を産生するようにB細胞を刺激する。
【0003】
宿主内の各B細胞は、1つの特定の型および特異性の抗体を発現し、そして異なるB細胞は異なる抗原に特異的である抗体を発現する。B細胞増殖および抗体産生は、外来性抗原に対する応答として急上昇し、両方ともが、典型的には、一旦その外来性抗原が中和されると、停止する(または実質的に減少する)。しかし、時折、特定のB細胞の増殖は除去されずに継続し、このような増殖は「B細胞リンパ腫」と呼ばれる癌を生じ得る。
【0004】
T細胞およびB細胞の両方が、区別および同定のための「マーカー」として利用され得る細胞表面タンパク質を含む。1つのこのようなヒトB細胞マーカーは、「CD20」と呼ばれる、ヒトB細胞リンパ球限定分化抗原Bp35である。CD20は初期前B細胞発生の間に発現され、血漿細胞分化まで残存する。具体的には、CD20分子は、細胞周期の開始および分化のために必要とされる活性化プロセスにおける工程を調節する可能性があり、通常は新生物(「腫瘍」)B細胞上で非常に高いレベルで発現される。CD20細胞は「悪性B細胞」、すなわち、除去されない増殖がB細胞リンパ腫をもたらし得るB細胞上で高レベルで存在するので、CD20表面抗原は、B細胞リンパ腫の「標的化」のための候補として働く潜在能力を有する。
【0005】
本質的に、このような標的化は次のように一般化され得る。B細胞のCD20表面抗原に特異的である抗体が、例えば、注射によって患者に導入される。これらの抗CD20抗体は、(表面上)正常B細胞と悪性B細胞の両方のCD20細胞表面抗原に特異的に結合する;CD20表面抗原に結合した抗CD20抗体は、新生物B細胞の破壊および枯渇を導き得る。さらに、腫瘍を破壊する潜在能力を有する化学薬剤または放射活性標識が抗CD20抗体に結合体化され得、その結果、この薬剤は、例えば、新生物B細胞に特異的に「送達」される。アプローチとは無関係に、主要な目的は腫瘍を破壊することである。具体的なアプローチは、利用される特定の抗CD20抗体によって決定され、および従って、CD20抗原を標的化するための利用可能なアプローチは、顕著に変化し得る。
【0006】
結合体化されていないモノクローナル抗体(mAb)は、CD20ポジティブなB細胞の、軽度な、または濾胞性の非ホジキンリンパ腫の治療のためのリツキシマブ(Rituxan(商標);IDEC Pharmaceuticals,San Diego,CA、およびGenentech Inc.,San Francisco,CA)、進行した乳癌の治療のためのトラスツズマブ(Herceptin(商標);Genentech Inc,)(Grillo−Lopez,A.−J.ら、Semin.Oncol 26:66−73(1999);Goldenberg,M.M.,Clin.Ther.21:309−18(1999))、再発した急性骨髄性白血病の治療のためのゲムツズマブ(Mylotarg(商標)、Celltech/Wyeth−Ayerst)、ならびにB細胞慢性リンパ球性白血病の治療のためのアレムツズマブ(CAMPATH(商標)、Millenium Pharmaceuticals/Schering AG)の、米国食品医薬品局の認可によって実証されているように、癌の治療のための有用な医薬であり得る。これらの製品の成功は、それらの効力に依存するのみならず、それらの卓越した安全プロフィールにもまた、依存している(Grillo−Lopez,A.−J.ら、Semin.Oncol.26:66−73(1999);Goldenberg,M.M.,Clin.Ther.21:309−18(1999))。これらの薬物の業績にも関わらず、結合体化されていないmAb治療によって典型的に与えられるものよりもより特異性が高い抗体活性を得ることに現在大きな関心が存在する。マウスモノクローナル抗体である、B−Ly1は、ヒトCD20に特異的であることが知られている別の抗体である(Poppema,S.およびVisser,L.,Biotest Bulletin 3 :131−139(1987))。
【0007】
多くの研究の結果は、Fc−レセプター依存性メカニズムが腫瘍に対する細胞傷害性抗体の作用に実質的に寄与することを示唆し、そして腫瘍に対する最適な抗体が活性Fcレセプターに優先的に結合し、阻害パートナーFcγRIIBに最小限に結合することを示す(Clynes,R.A.ら、Nature Medicine 6(4):443−446(2000);Kalergis,A.M.およびRavetch,J.V.,J.Exp.Med.195(12):1653−1659(2002年6月)。例えば、少なくとも1つの研究の結果は、FcγRIIIaレセプターが特に抗体治療の効力と強く関連していることを示唆する(Cartron,G.ら、Blood 99(3):754−757(2002年2月))。この研究は、FcγRIIIaについてホモ接合性である患者が、ヘテロ接合性の患者よりも、リツキシマブに対してより良好な応答を有することを示した。著者らは、優れた応答は、FcγRIIIaに対する抗体のインビボ結合により良好に依存し、これは、リンパ腫に対するより良好なADCC活性を生じた(Cartron,G.ら、Blood 99(3):754−757(2002年2月))。
【0008】
CD20表面抗原を標的化するための種々の試みが報告されている。報告によると、ネズミ(マウス)モノクローナル抗体1F5(抗CD20抗体)が、連続的な静脈内注入によってB細胞リンパ腫患者に投与された。報告によると、循環している腫瘍細胞を枯渇させるためには、極度に高いレベル(>2グラム)の1F5が必要であり、そして結果は「一過性」であった。Pressら、「Monoclonal Antibody 1F5(Anti−CD20)Serotherapy of Human B−Cell Lymphomas.」Blood 69/2:584−591(1987)。このアプローチに伴う潜在的な問題は、非ヒトモノクローナル抗体(例えば、マウスモノクローナル抗体)が、典型的には、ヒトエフェクター機能を欠いていること、すなわち、これらは、とりわけ、補体依存性溶解を媒介することができないか、または抗体依存性細胞傷害性もしくはFcレセプター媒介性食作用を通してヒト標的細胞を溶解することができない。さらに、非ヒトモノクローナル抗体は、ヒト宿主によって、外来性タンパク質として認識され得る;それゆえに、このような外来性抗体の反復注射は、有害な過敏性反応をもたらす免疫応答の導入をもたらし得る。マウスベースのモノクローナル抗体については、これは、しばしば、ヒト抗マウス抗体応答、すなわち「HAMA」応答と呼ばれる。さらに、これらの「外来性」抗体は、宿主の免疫系によって攻撃され得、その結果、これらは、事実上、これらが標的部位に到達する前に中和される。
【0009】
B細胞の障害の治療において有効であるマウスモノクローナル抗体の能力を改善する際の別の報告されているアプローチは、放射性標識または毒素が腫瘍部位に局在するように、抗体に放射性標識または毒素を結合体化することであった。例えば、上記に言及された1F5抗体は、ヨウ素−131(「131I」)で標識され、報告によれば、2名の患者において生物分布について評価された。Eary,J.F.ら、「Imaging and Treatment of B−Cell Lymphoma」J.Nuc.Med.31/8:1257−1268(1990)を参照のこと;Press,O.W.ら、「Treatment of Refractory Non−Hodgkin’s Lymphoma with Radiolabeled MB−1(Anti−CD37)Antibody」J.Clin.Onc.7/8:1027−1038(1989)(131I−標識されたIF−5で治療された1名の患者が「部分的応答」を達成したことの指摘);Goldenberg,D.M.ら、「Targeting,Dosimetry and Radioimmunotherapy of B−Cell Lymphomas with Iodine−131−Labeled LL2 Monoclonal Antibody」J.Clin.Onc.9/4:548−564(1991)(複数注射を受けた8名の患者のうちの3名がHAMA応答を発生したことを報告する);Appelbaum,F.R.「Radiolabeled Monoclonal Antibodies in the Treatment of Non−Hodgkin’s Lymphoma」Hem./Onc. Clinics of N.A.5/5:1013−1025(1991)(概説記事);Press,O.W.ら「Radiolabeled−Antibody Therapy of B−Cell Lymphoma with Autologous Bone Marrow Support.」New England J.Med.329/17:1219−1223(1993)(ヨウ素−131標識された抗CD20抗体IF5およびBl);およびKaminski,M.G.ら「Radioimmunotherapy of B−Cell Lymphoma with 131I Anti−B1(Anti−CD20)Antibody」.New England J.Med.329/7(1993)(ヨウ素−131 標識された抗CD20抗体B1;本明細書中以後では「Kaminski」)もまた参照のこと。毒素(すなわち、ドキソルビシンまたはマイトマイシンCなどの抗体)もまた、抗体に結合体化されてきた。例えば、PCT出願公開WO 92/07466(1992年5月14日公開)を参照のこと。
【0010】
2つまたはそれ以上の異なる種(例えば、マウスおよびヒト)からの抗体の部分を含むキメラ抗体は、「結合体化」抗体に対する代替として開発された。例えば、Liu,A.Y.ら、「Production of a Mouse−Human Chimeric Monoclonal Antibody to CD20 with Potent Fc−Dependent Biologic Activity」J.Immun.139/10:3521−3526(1987)は、CD20抗原に対して指向されるマウス/ヒトキメラ抗体を記載している。PCT公開番号WO 88/04936もまた参照されたい。例えば、キメラ抗CD20抗体であるリツキシマブ(RITUXAN(登録商標))は、非ホジキンリンパ腫の治療のために認可されている。
【0011】
B細胞リンパ腫の発現が与えられると、この抗原は、このようなリンパ腫の「標的化」のための候補として働き得る。本質的に、このような標的化は以下のように一般化され得る。B細胞上のCD20表面抗原に特異的な抗体が患者に投与される。これらの抗CD−20抗体は、(表面上)正常B細胞と悪性B細胞の両方のCD20細胞表面抗原に特異的に結合し、細胞表面上のCD20に結合した抗CD20抗体は、腫瘍形成性B細胞の破壊および枯渇を生じる。さらに、化学薬剤、細胞毒素または放射活性標識が、直接的または間接的に抗CD20抗体に結合体化され得、その結果、この薬剤は、CD20抗原を発現するB細胞に選択的に「送達」される。これらの両方のアプローチを用いると、主要な目的は腫瘍を破壊することである。具体的なアプローチは、利用される特定の抗CD20抗体に依存する。従って、CD20抗原を標的化するための種々なアプローチは、顕著に変化し得ることは明らかである。
【0012】
リツキシマブ(RITUXAN(登録商標))抗体は、ヒトCD20抗原に対して指向される、遺伝子操作されたキメラヒトγマウス定常ドメインを含有するモノクローナル抗体である。このキメラ抗体はヒトγ1定常ドメインを含み、名称「C2B8」によって、IDEC Pharmaceuticals Corporationに譲渡された、1998年4月17日に発行された米国特許第5,736,137号(Andersenら)において同定される。RITUXAN(登録商標)は、再発した、または屈折性の軽度の、または濾胞性の、CD20ポジティブの、B細胞非ホジキンリンパ腫を有する患者の治療のために認可される。作用のメカニズムのインビトロ研究は、RITUXAN(登録商標)がヒト補体依存性細胞毒性(CDC)を示すことを示した(Reffら、Blood 83(2):435−445(1994))。さらに、これは、抗体依存性細胞毒性を測定するアッセイ(ADCC)において有意な活性を示す。RITUXAN(登録商標)は、チミジン取り込みアッセイにおける抗増殖性活性、およびアポトーシスを直接的に誘導する限定的な能力を有することが示されたのに対して、CD20抗体はそうではない(Maloneyら、Blood 88(10):637a(1996))。
【0013】
抗体グリコシル化
オリゴサッカリド成分は、物理的安定性、プロテアーゼ攻撃に対する抵抗性、免疫系との相互作用、薬物動態学、および特異的生物学的活性を含む、治療用糖タンパク質の効力に関連する特性に有意に影響を与える。このような特性は、オリゴサッカリドの存在または非存在に依存するのみならず、オリゴサッカリドの特異的構造にもまた依存する可能性がある。オリゴサッカリド構造と糖タンパク質機能との間のある程度の一般化がなされ得る。例えば、特定のオリゴサッカリド構造は、特異的炭水化物結合タンパク質との相互作用を通して血流からの糖タンパク質の急速なクリアランスを媒介するが、他の構造は、抗体によって結合され得、そして望ましくない免疫反応を誘発し得る(Jenkinsら、Nature Biotechnol.14:975−81(1996))
【0014】
哺乳動物細胞は、ヒト適用のための大部分の適合性の型においてタンパク質をグリコシル化するそれらの能力に起因して、治療用糖タンパク質の産生のための好ましい宿主である(Cummingら、Glycobiology1:115−30(1991);Jenkinsら、Nature Biotechnol.14:975−81(1996))。細菌は非常にまれに、タンパク質、ならびに酵母、糸状菌、昆虫、および植物細胞などの一般的な宿主の同様の他の型をグリコシル化し、血流からの迅速なクリアランス、望ましくない免疫相互作用、およびある特定の場合においては、減少した生物学的活性と関連したグリコシレーションパターンを生じる。哺乳動物細胞の間で、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞は、過去20年間の間に最も一般的に使用されてきた。適切なグリコシル化パターンを与えることに加えて、これらの細胞は、遺伝的に安定な、高度に生産的なクローン性細胞系の一貫した生成を可能にする。これらは、無血清培地を使用する単純なバイオリアクター中で高密度で培養され得、安全かつ再生可能なバイオプロセスの開発を可能にする。他の一般的に使用される動物細胞には、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、NS0−およびSP2/0−マウス骨髄腫細胞が含まれる。より最近では、トランスジェニック動物からの産生もまた試験されてきた(Jenkinsら、Nature Biotechnol.14:975−81(1996))。
【0015】
全ての抗体は、重鎖定常領域の保存性位置に糖質構造を含み、各アイソタイプがN連結糖質構造の独特のアレイを有し、これはタンパク質のアセンブリー、分泌または機能的な活性に様々に影響を与える(Wright,A.およびMorrison,S.L.Trends Biotech.15:26−32(1997))。結合したN連結糖質の構造は、プロセシングの程度に依存して顕著に変化し、高マンノース、多分枝ならびに二アンテナ状複合体オリゴサッカリドを含み得る(Wright,A.およびMorrison,S.L.Trends Biotech.15:26−32(1997))。典型的には、特定のグリコシル化部位に結合されたコアオリゴサッカリド構造の均質でないプロセシングが存在し、その結果、モノクローナル抗体さえもが複数の糖型で存在する。同様に、抗体のグリコシル化における主要な違いは細胞系間で起こり、そしてマイナーな違いさえもが異なる培養条件下で増殖された所定の細胞系について見られることが示されてきた(Lifely,M.R.ら、Glycobiology 5(8):813−22(1995))。
【0016】
単純な製造プロセスを維持しながら、かつ有意な、望ましくない副作用を回避しながら、効力の大きな増加を得るための1つの方法は、Umana,P.ら、Nature Biotechnol.17:176−180(1999)および米国特許第6,602,684号(これらの内容はそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)において記載されるような、それらのオリゴサッカリドを操作することによってモノクローナル抗体の天然の、細胞媒介性エフェクター機能を増強することである。癌免疫治療において最も一般的に使用される抗体であるIgG1型抗体は、各CH2ドメイン中のAsn297において保存性N連結型グリコシル化部位を有する糖タンパク質である。Asn297に結合された2つの複合体二アンテナ状オリゴサッカリドは、CH2ドメイン間に包埋されて、ポリペプチドバックボーンとの広範な接触を形成しており、それらの存在は、抗体が、抗体依存的細胞傷害性(ADCC)などのエフェクター機能を媒介するために必須である(Lifely,M.R.ら、Glycobiology 5:813−822(1995);Jefferis,R.ら、Immunol Rev.163:59−76(1998);Wright,A.およびMorrison、S.L.Trends Biotechnol.15:26−32(1997))。
【0017】
以前に本発明者らは、チャイニーズハムスター卵巣細胞における、二分枝オリゴサッカリドの形成を触媒するグリコシルトランスフェラーゼである、β(1,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ III(「GnTIII」)の過剰発現が、操作されたCHO細胞によって産生される抗神経芽細胞腫キメラモノクローナル抗体(chCE7)のインビトロADCC活性を増加させることを示した(Umana,P.ら、Nature Biotechnol.17:176−180(1999);および国際公開番号WO 99/54342を参照のこと、これらの内容は参照により本明細書に組み込まれる)。抗体chCE7は、結合体化されていないmAbの大きなクラスに属し、これは、高い腫瘍親和性および特異性を有するが、GnTIII酵素を欠く標準的な工業用細胞系において産生される場合には、効力が小さすぎて臨床的には有用でない(Umana,P.ら、Nature Biotechnol.17:176−180(1999))。この研究は、ADCC活性の大きな増加が、GnTIIIを発現するために抗体産生細胞を操作することによって得られ得、これはまた、二分枝でフコシル化されていないオリゴサッカリドを含む、定常領域(Fc)結合した二分枝性オリゴサッカリドの割合の増加を、天然に存在する抗体において見いだされるレベルよりも上に導くことを最初に示した。
【0018】
ヒトを含むがこれに限定されない霊長類におけるB細胞リンパ腫の治療のためにCD20抗原を標的化する、増強された治療アプローチについての必要性が残っている。
【発明の概要】
【0019】
B−Ly1抗体の結合特異性を有し、かつFcレセプター結合親和性およびエフェクター機能を増強するように糖付加操作された抗原結合分子(ABM)の驚異的な治療的潜在能力を認識したので、本発明者らは、このようなABMを産生するための方法を開発した。とりわけ、本発明は、組換えの、キメラ抗体またはそのキメラフラグメント産生する工程を含む。これらのABMの効力は、抗体Fc領域のグリコシル化プロフィールを操作することによってさらに増強される。
【0020】
従って、1つの態様において、本発明は、(a)配列番号5、配列番号6および配列番号7(CDR VH-1)からなる群より選択される配列;(b)配列番号21、配列番号22および配列番号23(CDR VH-2)からなる群より選択される配列;ならびに配列番号24を含む単離されたポリヌクレオチドに向けられる。別の態様において、本発明は、配列番号8、配列番号9および配列番号10(CDR VL)を含む単離されたポリヌクレオチドに向けられる。1つの実施形態において、これらのポリヌクレオチドは融合ポリペプチドをコードする。
【0021】
さらなる態様において、本発明は、配列番号3を含む単離されたポリヌクレオチドに向けられる。別の態様において、本発明は、配列番号4を含む単離されたポリヌクレオチドに向けられる。さらなる態様において、本発明は、配列番号29;配列番号31;配列番号33;配列番号35;配列番号37;配列番号39;配列番号41;配列番号43;配列番号45;配列番号47;配列番号49;配列番号51;配列番号53;配列番号55;配列番号57;配列番号59;配列番号61;配列番号63;配列番号65;配列番号67;配列番号69;および配列番号71からなる群より選択される配列を含む単離されたポリヌクレオチドに向けられる。別の態様において、本発明は、配列番号75を含む単離されたポリヌクレオチドに向けられる。1つの実施形態において、このようなポリヌクレオチドは融合ポリペプチドをコードする。
【0022】
本発明はさらに、配列番号3に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含む単離されたポリヌクレオチドに向けられ、ここで、この単離されたポリヌクレオチドは融合ポリペプチドをコードする。さらなる態様において、本発明は、配列番号4に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含む単離されたポリヌクレオチドに向けられ、ここで、この単離されたポリヌクレオチドは融合ポリペプチドをコードする。本発明はさらに、配列番号29;配列番号31;配列番号33;配列番号35;配列番号37;配列番号39;配列番号41;配列番号43;配列番号45;配列番号47;配列番号49;配列番号51;配列番号53;配列番号55;配列番号57;配列番号59;配列番号61;配列番号63;配列番号65;配列番号67;配列番号69;および配列番号71からなる群より選択される配列に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含む単離されたポリヌクレオチドに向けられ、ここで、この単離されたポリヌクレオチドは融合ポリペプチドをコードする。さらなる態様において、本発明は、配列番号75に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含む単離されたポリヌクレオチドに向けられ、ここで、この単離されたポリヌクレオチドは融合ポリペプチドをコードする。
【0023】
本発明はさらに、配列番号11(全体の重鎖)を含むポリヌクレオチド、または配列番号11に対して80%、85%、90%、95%、もしくは99%の同一性を有するポリヌクレオチドに向けられる。本発明はまた、配列番号12(全体の軽鎖)を含むポリヌクレオチド、または配列番号12に対して80%、85%、90%、95%、もしくは99%の同一性を有するポリヌクレオチドに向けられる。
【0024】
本発明はまた、配列番号1の配列を有するキメラポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドに向けられる。1つの実施形態において、このポリヌクレオチドは、配列番号1の配列を有するポリペプチドをコードする配列;およびマウス以外の種由来の、抗体Fc領域の配列を有するポリペプチドをコードする配列、またはそのフラグメントを含む。本発明はまた、配列番号30;配列番号32;配列番号34;配列番号36;配列番号38;配列番号40;配列番号42;配列番号44;配列番号46;配列番号48;配列番号50;配列番号52;配列番号54;配列番号56:配列番号58;配列番号60;配列番号62;配列番号64;配列番号66;配列番号68;配列番号70;および配列番号72からなる群より選択される配列を有するキメラポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドに向けられる。1つの実施形態において、このポリヌクレオチドは、配列番号30;配列番号32;配列番号34;配列番号36;配列番号38;配列番号40;配列番号42;配列番号44;配列番号46;配列番号48;配列番号50;配列番号52;配列番号54;配列番号56:配列番号58;配列番号60;配列番号62;配列番号64;配列番号66;配列番号68;配列番号70;および配列番号72からなる群より選択される配列を有するポリペプチドをコードする配列;ならびにマウス以外の種由来の、抗体Fc領域の配列を有するポリペプチドをコードする配列、またはそのフラグメントを含む。
【0025】
なお別の態様において、本発明は、配列番号2の配列を有するキメラポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドに向けられる。1つの実施形態において、このポリヌクレオチドは、配列番号2の配列を有するポリペプチドをコードする配列;およびマウス以外の種由来の、抗体Fc領域の配列を有するポリペプチドをコードする配列、またはそのフラグメントを含む。なお別の態様において、本発明は、配列番号76の配列を有するキメラポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドに向けられる。1つの実施形態において、このポリヌクレオチドは、配列番号76の配列を有するポリペプチドをコードする配列;およびマウス以外の種由来の、抗体Fc領域の配列を有するポリペプチドをコードする配列、またはそのフラグメントを含む。
【0026】
本発明はまた、マウスB−Ly1抗体のVH領域を有するポリペプチドまたはその機能的改変体をコードする配列、およびマウス以外の種由来の、抗体Fc領域の配列を有するポリペプチドをコードする配列またはそのフラグメントを含む単離されたポリヌクレオチドに向けられる。別の態様において、本発明は、マウスB−Ly1抗体のVL領域を有するポリペプチドまたはその機能的改変体をコードする配列、およびマウス以外の種由来の、抗体Fc領域の配列を有するポリペプチドをコードする配列またはそのフラグメントを含む単離されたポリヌクレオチドに向けられる。
【0027】
本発明はさらに、上記の単離されたポリヌクレオチドのいずれかを含む発現ベクター、およびこのような発現ベクターを含む宿主細胞に向けられる。さらなる態様において、本発明は、上記の単離されたポリヌクレオチドのいずれかを含む宿主細胞に向けられる。
【0028】
1つの態様において、本発明は、(a)配列番号15、配列番号16および配列番号17からなる群より選択される配列(CDR VH-1);(b)配列番号25、配列番号26および配列番号27からなる群より選択される配列(CDR VH-2);ならびに配列番号28を含む単離されたポリペプチドに向けられ、ここで、このポリペプチドは融合ポリペプチドである。別の態様において、本発明は、配列番号18、配列番号19および配列番号20を含む単離されたポリペプチドに向けられ、ここで、このポリペプチドは融合ポリペプチドである。
【0029】
本発明はまた、配列番号1の配列もしくはその改変体を含むキメラポリペプチドまたはその改変体に向けられる。本発明はさらに、配列番号2の配列を含むキメラポリペプチドまたはその改変体に向けられる。1つの実施形態において、これらのポリペプチドのいずれか1つが、ヒトFc領域をさらに含む。本発明はまた、配列番号30;配列番号32;配列番号34;配列番号36;配列番号38;配列番号40;配列番号42;配列番号44;配列番号46;配列番号48;配列番号50;配列番号52;配列番号54;配列番号56:配列番号58;配列番号60;配列番号62;配列番号64;配列番号66;配列番号68;配列番号70;および配列番号72からなる群より選択される配列を含むキメラポリペプチド、またはその改変体に向けられる。本発明はさらに、配列番号76の配列を含むキメラポリペプチドまたはその改変体に向けられる。1つの実施形態において、これらのポリペプチドのいずれか1つが、ヒトFc領域をさらに含む。
【0030】
別の態様において、本発明は、マウスB−Ly1抗体に由来する配列および異種ポリペプチドに由来する配列を含むポリペプチド、ならびにこのようなポリペプチドを含む抗原結合分子に向けられる。1つの実施形態において、この抗原結合分子は抗体である。好ましい実施形態において、この抗体はキメラである。別の好ましい実施形態において、この抗体はヒト化または霊長類化されている。
【0031】
さらなる態様において、本発明は、配列番号13を含む単離されたポリペプチドまたはその改変体に向けられる。別の態様において、本発明は、配列番号14を含む単離されたポリペプチドに向けられる。
【0032】
別の態様において、本発明はABMに向けられ、これは、CD20への結合についてマウスB−Ly1抗体と競合することが可能であり、かつこれはキメラである。1つの実施形態において、このABMは抗体またはそのフラグメントである。さらなる実施形態において、このABMは、配列番号1;配列番号30;配列番号32;配列番号34;配列番号36;配列番号38;配列番号40;配列番号42;配列番号44;配列番号46;配列番号48;配列番号50;配列番号52;配列番号54;配列番号56:配列番号58;配列番号60;配列番号62;配列番号64;配列番号66;配列番号68;配列番号70;および配列番号72からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するVH領域を含む組換え抗体である。別の実施形態において、このABMは、配列番号2および配列番号76からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するVL領域を含む組換え抗体である。さらなる実施形態において、このABMは霊長類化されている組換え抗体である。なおさらなる実施形態において、このABMはヒト化されている組換え抗体である。別の実施形態において、このABMはヒトFc領域を含む組換え抗体である。さらなる実施形態において、上記に議論されたABMのいずれかは、毒素または放射性標識などの部分に結合体化されてもよい。
【0033】
本発明はさらに、本発明のABMに関し、このABMは修飾オリゴサッカリドを有する。1つの実施形態において、この修飾オリゴサッカリドは、非修飾オリゴサッカリドと比較した場合に、フコシル化の減少を有する。他の実施形態において、この修飾オリゴサッカリドはハイブリッドまたは複合体である。さらなる実施形態において、このABMは、この分子のFc領域におけるフコシル化されていないオリゴサッカリド、または二分枝でフコシル化されていないオリゴサッカリド割合の増加を有する。1つの実施形態において、二分枝でフコシル化されていないオリゴサッカリドはハイブリッドである。さらなる実施形態において、二分枝でフコシル化されていないオリゴサッカリドは複合体である。1つの実施形態において、このポリペプチドのFc領域における少なくとも20%のオリゴサッカリドがフコシル化されていないか、または二分枝でフコシル化されていない。より好ましい実施形態において、少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、または75%またはそれ以上のオリゴサッカリドがフコシル化されていないか、または二分枝でフコシル化されていない。
【0034】
本発明はさらに、上記で議論したABMのいずれかをコードするポリヌクレオチド、ならびにこのようなポリヌクレオチドを含む発現ベクターおよび細胞に関する。
【0035】
本発明はさらに、CD20に結合することについてマウスB−Ly1抗体と競合することが可能であるABMを産生する方法に関し、ここで、このABMはキメラであり;この方法は、(a)本発明のABMをコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞を、ABMをコードするこのポリヌクレオチドの発現を可能にする条件下で、培地中で培養する工程;および(b)得られる培養液からこのABMを回収する工程を含む。
【0036】
別の態様において、本発明は、本発明のABMを含む薬学的組成物に関する。この薬学的組成物は、薬学的に受容可能なキャリア、アジュバント、またはそれらの組み合わせをさらに含んでもよいことが意図される。
【0037】
さらなる態様において、本発明は、B細胞枯渇によって治療可能である疾患を治療する方法に関する。この方法は、その必要があるヒト被験体に本発明のABMの治療有効量を投与する工程を含む。好ましい実施形態において、この疾患は、キメラ抗体またはキメラ抗体のフラグメントであるABMを投与することによって治療される。
【0038】
なお別の態様において、本発明は、宿主細胞によって産生されるFc領域におけるオリゴサッカリドを修飾するために十分な量で、GnTIII活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1種の核酸を発現するように操作された宿主細胞に関し、ここで、ABMはCD20に結合することについてマウスB−Ly1抗体と競合することが可能であり、ここで、ABMはキメラである。1つの実施形態において、GnTIII活性を有するポリペプチドは融合ポリペプチドである。別の実施形態において、宿主細胞によって産生されるABMは抗体または抗体フラグメントである。さらなる実施形態において、このABMは、ヒトIgGのFc領域に対して等価である領域を含む。
【0039】
本発明はまた、相補性決定領域についての少なくとも特異性決定残基を含む、マウスB−Ly1抗体、またはその改変体もしくは短縮型の少なくとも1つの相補性決定領域を含む単離されたポリヌクレオチドに向けられ、ここで、この単離されたポリヌクレオチドは融合ポリペプチドをコードする。好ましくは、このような単離されたポリヌクレオチドは、抗原結合分子である融合ポリペプチドをコードする。1つの実施形態において、このポリヌクレオチドは、3つの相補性決定領域の各々についての少なくとも特異性決定残基を含む、マウスB−Ly1抗体、またはその改変体もしくは短縮型の3つの相補性決定領域を含む。別の実施形態において、このポリヌクレオチドは、キメラ(例えば、ヒト化)抗体の軽鎖または重鎖の全体の可変領域をコードする。本発明はさらに、このようなポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドに向けられる。
【0040】
別の実施形態において、本発明は、相補性決定領域についての少なくとも特異性決定残基を含む、マウスB−Ly1抗体、またはその改変体もしくは短縮型の少なくとも1つの相補性決定領域を含み、および異種ポリペプチドに由来する配列を含む単離された抗原組み合わせ分子に向けられる。1つの実施形態において、この抗原結合分子は、3つの相補性決定領域の各々についての少なくとも特異性決定残基を含む、マウスB−Ly1抗体、またはその改変体もしくは短縮型の3つの相補性決定領域を含む。別の態様において、この抗原結合分子は抗体の軽鎖または重鎖の可変領域を含む。1つの特に有用な実施形態において、抗原結合分子は、キメラ抗体、例えば、ヒト化抗体である。本発明はまた、このような抗原結合分子を作製する方法、およびB細胞リンパ腫を含む疾患の治療におけるこのような抗原結合分子の使用に向けられる。
【0041】
本発明は、なお強力なアポトーシスの能力を保持しながらII型抗CD20抗体がADCCなどのエフェクター機能の増加を有するように操作された最初の知られている例である。従って、本発明は、捜査の結果として、およびアポトーシスを誘導する実質的な能力の喪失を伴わずに、ADCCの増加を有する操作されたII型抗CD20抗体に向けられる。1つの実施形態において、II型抗CD20抗体は、Fc領域におけるグリコシル化のパターンの変化を有するように操作されている。特定の実施形態において、グリコシル化の変化には、Fc領域における二分枝複合体残基のレベルの増加が含まれる。別の特定の実施形態において、グリコシル化の変化には、Fc領域におけるフコース残基のレベルの減少が含まれる。別の実施形態において、II型抗CD20抗体はポリペプチド操作を受けている。本発明はさらに、このような操作されたII型抗体を作製する方法、およびB細胞リンパ腫を含む、種々のB細胞障害の治療においてこのような抗体を使用する方法に向けられる。
【0042】
本発明の宿主細胞は、CHO細胞、BHK細胞、NSO細胞、SP2/0細胞、YO骨髄腫細胞、P3X63マウス骨髄腫細胞、PER細胞、PER.C6細胞またはハイブリドーマ細胞を含むがこれらに限定されない群より選択されてもよい。1つの実施形態において、本発明の宿主細胞は、マウスB−Ly1抗体のVL領域またはその改変体をコードするポリヌクレオチド、およびヒト免疫グロブリンのFc領域に等価である領域をコードする配列を含むトランスフェクトされたポリヌクレオチドをさらに含む。別の実施形態において、本発明の宿主細胞は、マウスB−Ly1抗体のVH領域またはその改変体をコードするポリヌクレオチド、およびヒト免疫グロブリンのFc領域に等価である領域をコードする配列を含むトランスフェクトされたポリヌクレオチドをさらに含む。
【0043】
さらなる態様において、本発明は、そのオリゴサッカリドの修飾の結果として、Fcレセプター結合親和性の増加および/またはエフェクター機能の増加を示すABMを産生する宿主細胞に向けられる。1つの実施形態において、結合親和性の増加は、Fcレセプター、特にFcγAレセプターへのものである。本明細書で意図されるエフェクター機能は、Fc媒介性細胞傷害性;NK細胞への結合の増加;マクロファージへの結合の増加;多形核細胞への結合の増加;単球への結合の増加;直接的シグナル伝達誘導性アポトーシスの増加;樹状細胞成熟の増加;およびT細胞プライミングの増加を含むがこれらに限定されない群より選択されてもよい。
【0044】
さらなる実施形態において、本発明の宿主細胞は、構成的プロモーターエレメントに作動可能に連結された、GnTIII活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸を含む。
【0045】
別の態様において、本発明は、宿主細胞におけるABMを産生するための方法に向けられ、この方法は、(a)このABMの産生を可能にし、かつこのABMのFc領域上に存在するオリゴサッカリドの修飾を可能にする条件下で、GnTIII活性を有する融合ポリペプチドをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを発現するように操作された宿主細胞を培養する工程;および(b)このABMを単離する工程を含み、ここで、このABMは、CD20に結合することについて、マウスB−Ly1抗体と競合することが可能であり、そしてこのABMはキメラである。1つの実施形態において、GnTIII活性を有するポリペプチドは、好ましくは、GnTIIIの触媒ドメイン、ならびにマンノシダーゼIIの局在化ドメイン、β(1,2)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼI(「GnTI」)の局在化ドメイン、マンノシダーゼIの局在化ドメイン、β(1,2)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼII(「GnTII」)の局在化ドメイン、およびα1−6コアフコシルトランスフェラーゼの局在化ドメインからなる群より選択される異種ゴルジ存在性ポリペプチドのゴルジ局在化ドメインを含む誘導ポリペプチドである。好ましくは、このゴルジ局在化ドメインは、マンノシダーゼIIまたはGnTI由来である。
【0046】
さらなる態様において、本発明は、本発明の少なくとも1つの核酸または発現ベクターを宿主細胞に導入する工程を含む、宿主細胞によって産生される抗CD20 ABMのグリコシル化プロフィールを修飾するための方法に向けられる。1つの実施形態において、このABMは、好ましくはIgGのFc領域を含む抗体またはそのフラグメントである。代替的には、このポリペプチドは、ヒトIgGのFc領域に等価である領域を含む融合タンパク質である。
【0047】
1つの態様において、本発明は、CD20に結合することについてマウスB−Ly1抗体と競合することが可能であり、かつフコシル化の減少を有する組換えキメラ抗体、またはそのフラグメントに関する。
【0048】
別の態様において、本発明は、GnTIII活性を有し、かつ異種ゴルジ存在性ポリペプチドのゴルジ局在化ドメインを含む融合ポリペプチドを使用することによって、本発明の組換え抗体またはそのフラグメントのグリコシル化を修飾する方法に向けられる。1つの実施形態において、本発明の融合ポリペプチドはGnTIIIの触媒ドメインを含む。別の態様において、このゴルジ局在化ドメインは、マンノシダーゼIIの局在化ドメイン、GnTIの局在化ドメイン、マンノシダーゼIの局在化ドメイン、GnTIIの局在化ドメイン、およびα1−6コアフコシルトランスフェラーゼの局在化ドメインからなる群より選択される。好ましくは、このゴルジ局在化ドメインは、マンノシダーゼIIまたはGnTI由来である。
【0049】
1つの実施形態において、本発明の方法は、修飾オリゴサッカリドを有する、組換えキメラ抗体またはそのフラグメントを産生することに向けられ、ここで、この修飾オリゴサッカリドは、非修飾オリゴサッカリドと比較した場合に、フコシル化の減少を有する。本発明に従うと、これらの修飾オリゴサッカリドはハイブリッドまたは複合体であってもよい。別の実施形態において、本発明の方法は、ポリペプチドのFc領域における二分枝でフコシル化されていないオリゴサッカリドの割合の増加を有する、組換えキメラ抗体またはそのフラグメントを産生することに向けられる。1つの実施形態において、二分枝でフコシル化されていないオリゴサッカリドはハイブリッドである。別の実施形態において、二分枝でフコシル化されていないオリゴサッカリドは複合体である。さらなる実施形態において、本発明の方法は、ポリペプチドのFc領域において少なくとも20%の二分枝でフコシル化されていないオリゴサッカリドを有する組換えキメラ抗体またはそのフラグメントを産生することに向けられる。好ましい実施形態において、ポリペプチドのFc領域における少なくとも30%のオリゴサッカリドが二分枝でフコシル化されていない。別の好ましい実施形態において、ポリペプチドのFc領域における少なくとも35%のオリゴサッカリドが二分枝でフコシル化されていない。
【0050】
さらなる態様において、本発明は、そのオリゴサッカリドの修飾の結果として、Fcレセプター結合親和性の増加および/またはエフェクター機能の増加を示す、組換えキメラ抗体またはそのフラグメントに向けられる。1つの実施形態において、結合親和性の増加は、Fc活性化レセプターへのものである。さらなる実施形態において、FcレセプターはFcγ活性化レセプター、特にFcγRIIIAレセプターである。本明細書で意図されるエフェクター機能は、Fc媒介性細胞傷害性;NK細胞への結合の増加;マクロファージへの結合の増加;多形核細胞への結合の増加;単球への結合の増加;直接的シグナル伝達誘導性アポトーシスの増加;樹状細胞成熟の増加;およびT細胞プライミングの増加を含むがこれらに限定されない群より選択されてもよい。
【0051】
別の態様において、本発明は、本発明の方法のいずれかによって産生されるエフェクター機能の増加を有するように操作された、マウスB−Ly1抗体の結合特異性を有し、かつFc領域を含む組換え抗体キメラフラグメントに向けられる。
【0052】
別の態様において、本発明は、配列番号1の配列を有するポリペプチド、ならびに免疫グロブリンのFc領域と等価であり、かつ本発明の方法のいずれかによって産生されるエフェクター機能の増加を有するように操作された領域を含む融合タンパク質に向けられる。
【0053】
別の態様において、本発明は、配列番号2の配列を有するポリペプチド、ならびに免疫グロブリンのFc領域と等価であり、かつ本発明の方法のいずれかによって産生されるエフェクター機能の増加を有するように操作された領域を含む融合タンパク質に向けられる。
【0054】
1つの態様において、本発明は、本発明の方法のいずれかによって産生される組換えキメラ抗体および薬学的に許容可能なキャリアを含む医薬組成物に向けられる。別の態様において、本発明は、本発明の方法のいずれかによって産生される組換えキメラ抗体フラグメントおよび薬学的に許容可能なキャリアを含む医薬組成物に向けられる。別の態様において、本発明は、本発明の方法のいずれかによって産生される融合タンパク質および薬学的に許容可能なキャリアを含む医薬組成物に向けられる。
【0055】
本発明はさらに、その必要があるヒト被験体に、本発明の方法のいずれかによって産生される組換えキメラ抗体またはそのフラグメントの治療有効量を投与する工程を含む、B細胞枯渇によって治療可能である疾患を治療する方法に向けられる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】マウスB−Ly1のVH領域のヌクレオチド配列(配列番号3)およびアミノ酸配列(配列番号1)。
【図2】マウスB−Ly1のVL領域のヌクレオチド配列(配列番号4)およびアミノ酸配列(配列番号2)。
【図3】Raji Bリンパ腫細胞CD20へのリツキシマブ(登録商標)(○)およびch−B Ly1(△)の結合。
【図4】FcγRIIIa−158V/F遺伝子型の3つの異なるクラスの全血中でのリツキシマブ(登録商標)(○)およびch−B Ly1(△)によるB細胞枯渇:(A)F/Fドナーからの全血、より低い親和性のレセプターについてホモ接合性:(B)F/Vドナーからの全血、親和性レセプターについてヘテロ接合性;および(C)V/Vドナーからの全血、より高い親和性レセプターについてホモ接合性。
【図5A】キメラ抗CD20抗体の重鎖のヌクレオチド配列(配列番号11)およびアミノ酸配列(配列番号13)。
【図5B】キメラ抗CD20抗体の重鎖のヌクレオチド配列(配列番号11)およびアミノ酸配列(配列番号13)。
【図5C】キメラ抗CD20抗体の重鎖のヌクレオチド配列(配列番号11)およびアミノ酸配列(配列番号13)。
【図6A】キメラ抗CD20抗体の軽鎖のヌクレオチド配列(配列番号12)およびアミノ酸配列(配列番号14)。
【図6B】キメラ抗CD20抗体の軽鎖のヌクレオチド配列(配列番号12)およびアミノ酸配列(配列番号14)。
【図7】B−Ly1抗体CDRのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列。(A)VH領域についての推定CDR。(B)VL領域についての推定CDR。
【図8A】糖付加操作されたキメラB−Ly1抗体のMALDI−TOFプロフィール。(A)特異的パーセンテージを詳細を示す表。
【図8B】(B)糖付加操作されたキメラB−Ly1についてのスペクトル。
【図8C】(C)Endo−Hで処理された、糖付加操作されたキメラB−Ly1についてのスペクトル。
【図9】Raji B細胞への異なるヒト化抗CD20抗体の結合。B−HH2構築物、B−HL8構築物、B−HL11構築物の間の違いは、フレームワーク1および2の領域に位置し、3つのCDRは同一である。B−HL8およびB−HL11はヒトVH3クラスに由来するそれらのFR1配列およびFR2配列を有するのに対して、完全なB−HH2フレームワークはヒトVH1由来である。B−HL11は、単一の変異Glu1Glnを有するB−HL8の誘導体であり、GlnはB−HH2構築物におけるアミノ酸残基である。このことは、Glu1Gln交換が結合の親和性または強度を変化させないことを意味する。B−HH2とB−HL8の間の他の違いは14FR残基であり、これから1つ以上がこの抗体の抗原結合挙動に影響を与える。
【図10】Raji標的細胞上でのヒト化抗CD20抗体BHL4−KV1の結合。B−HL4構築物は、B−HH2のFR1を、ヒト生殖系列配列VH1 45のそれと置換することによって、B−HH2から誘導体化される。この構築物は、FR1内の3つのみの位置に異なるアミノ酸を有するにも関わらず、非常に減少した抗原結合能力を示す。これらの残基は、Kabat番号付けに従って、2位、14位、および30位に位置する。当然、30位が最も影響力のある位置であるらしい。なぜなら、これはCDR1のChothia定義の部分であるからである。
【図11】B−HH1、B−HH2、B−HH3、および親の抗体B−ly1の間の結合挙動の比較。このデータは、全てのAbが同様のEC50値を示すが、B−HH1構築物は、改変体B−HH2およびB−HH3よりも低い強度/化学量論で結合することを示す。B−HH1は、その部分的なヒトCDR1およびCDR2領域(Kabat定義)によって、ならびに28位(Kabat番号付け)におけるAla/Thr多型によってB−HH2およびB−HH3から区別され得る。このことは、28位、完全なCDR1、および/または完全なCDR2のいずれかが抗体/抗原相互作用のために重要であることを示す。
【図12】B−HL1、B−HH1、および親のB−ly1抗体の比較。このデータは、B−HL1構築物におけるいかなる結合活性も非存在であること、およびB−ly1と比較してB−HH1の結合強度/化学量論が約半分であることを示した。B−HL1ならびにB−HH1の両方が、ヒトVH1クラスに由来するアクセプターフレームワークに基づいて設計される。他の違いの間では、B−HL1構築物の71位(Kabat番号付け)が顕著な違いであり、抗原結合についてのその推定的な重要性を示す。
【図13】抗CD20抗体のその抗原に対する能力のフルオロサイトメトリー分析。このデータは、B−HL2構築物およびB−HL3構築物がCD20結合活性を示さないことを示した。
【図14】Z−138 MCL細胞に対する抗CD20抗体のアポトーシス。
【図15】抗CD20抗体によるアポトーシス。アッセイの詳細:5×105細胞/ウェルを24ウェルプレート中(5×105細胞/ml)、培養培地中で播種した。10mgのそれぞれのAb、ネガティブコントロールのためのPBS、または5mM カンプトテシン(CPT)ポジティブコントロールをウェルに加えた。サンプルを一晩(16時間)インキュベートし、AnnV−FITCで染色し、そしてFACSによって分析した。アッセイを3連で行った(*):PBS単独についてのシグナルを減算した(PBS単独は、それぞれ、PR−1細胞およびZ−138細胞について、8%および2%のAnnV+を与えた)。使用した抗体は:C2B8(キメラ、非糖付加操作);BHH2−KV1(ヒト化、非糖付加操作)であった。注記:このアッセイは、任意のさらなるエフェクター細胞を含まず、標的プラス抗体またはコントロールのみである。
【図16】免疫エフェクター細胞を用いる抗CD20抗体による標的細胞の殺傷。アッセイの詳細:正常全血中のB細胞枯渇の一晩インキュベーションおよびFACSによるCD19+/CD3+についての分析。PBMCをエフェクターとして使用するADCC、4時間インキュベーション、25:1エフェクター:標的比率、標的殺傷は、界面活性剤溶解(100%)およびAbなしでの溶解(0%)と比較したカルセイン保持によって測定。使用した抗体:C2B8(キメラ、非糖付加操作型);BHH2−KV1−wt(BHH2−KV1のヒト化、非糖付加操作型);BHH2−KV1−GE(BHH2−KV1のヒト化、糖付加操作型)。
【図17】非修飾、非糖付加操作BHH2−KV1ヒト化IgG1 B−ly1抗ヒトCD20抗体の、PNGアーゼFによって遊離されたFc−オリゴサッカリドのMALDI/TOF−MSプロフィール。
【図18】糖付加操作BHH2−KV1g1ヒト化IgG1 B−ly1抗ヒトCD20抗体の、PNGアーゼFによって遊離されたFc−オリゴサッカリドのMALDI/TOF−MSプロフィール。糖付加操作を、抗体遺伝子およびβ−1,4−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnT−III)触媒活性を有する酵素をコードする遺伝子の、宿主細胞における同時発現によって行った。
【図19】糖付加操作BHH2−KV1g2ヒト化IgG1 B−ly1抗ヒトCD20抗体の、PNGアーゼFによって遊離されたFc−オリゴサッカリドのMALDI/TOF−MSプロフィール。糖付加操作を、抗体遺伝子およびβ−1,4−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnT−III)触媒活性を有する酵素をコードし、およびゴルジα−マンノシダーゼII触媒活性を有する酵素をコードする遺伝子の、宿主細胞における同時発現によって行った。
【図20】組換えCHO−CD16細胞の表面上に提示されるヒトFcガンマRIIIaレセプターへの非糖付加操作抗体および糖付加操作抗体の結合。
【図21】Z−138 MCL細胞上での非Fc操作された抗CD20抗体およびFc操作された抗CD20抗体のアポトーシス。アッセイの詳細:5×105細胞/ウェルを24ウェルプレートに(5×105細胞/ml)、培養培地中で播種した。10mgのそれぞれのAb、ネガティブコントロールのためのPBSをウェルに加えた。サンプルを一晩(16時間)インキュベートし、AnnV−FITCで染色し、そしてFACSで分析した。アッセイを3連で行った。使用した抗体:C2B8=リツキシマブ(キメラ、非糖付加操作型、市販の型と同じ);BHH2−KV1(ヒト化、非糖操作−グリコシル化プロフィールについては図6を参照のこと);BHH2−KV1g1(ヒト化、糖付加操作−グリコシル化プロフィールについては図7を参照のこと);BHH2−KV1g2(ヒト化、糖付加操作−グリコシル化プロフィールについては図8を参照のこと);注記:このアッセイは、任意のさらなるエフェクター細胞を含まず、標的プラス抗体またはコントロールのみである。(*):PBS単独についてのシグナルを減算した。
【発明を実施するための形態】
【0057】
本明細書で使用される用語は、以下のように他に定義されない限り、当分野において一般的に使用されている用語である。
【0058】
本明細書で使用される場合、用語、抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体および多特異性(例えば、二特異性)抗体を含む全体の抗体分子、ならびにFc領域を有しかつ結合特異性を保持している抗体フラグメント、および免疫グロブリンのFc領域に等価である領域を含みかつ結合特異性を保持している融合タンパク質を含むことが意図される。ヒト化抗体、霊長類化抗体、およびキメラ抗体もまた含まれる。
【0059】
本明細書で使用される場合、用語、Fc領域は、IgG重鎖のC末端領域をいうことが意図される。IgG重鎖のFc領域の境界はわずかに異なる可能性があるが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226位のアミノ酸残基からカルボキシル末端までに広がると通常定義される。
【0060】
本明細書で使用される場合、用語、免疫グロブリンのFc領域に等価である領域は、免疫グロブリンのFc領域の天然に存在する対立遺伝子改変体、ならびに置換、付加、または欠失を生じるが、免疫グロブリンがエフェクター機能を媒介する能力(抗体依存的な細胞傷害性)を実質的に減少しない変化を有する改変体を含むことが意図される。例えば、1つ以上のアミノ酸が、免疫グロブリンのFc領域のN末端またはC末端から、生物学的機能の実質的な損失を伴うことなく、欠失され得る。このような改変体は、活性に対して最小限の効果を有するように、当分野において公知である一般的規則に従って選択され得る(例えば、Bowie,J.U.ら、Science 247:1306−10(1990)を参照のこと)。
【0061】
本明細書で使用される場合、用語、抗原結合分子とは、その最も広い意味において、抗原決定基を特異的に結合する分子をいう。より詳細には、CD20を結合する抗原結合分子は、一般的にはCD20と呼ばれる、ヒトBリンパ球に制限された分化抗原Bp35として典型的には意味される、35,000ダルトンの細胞表面非グリコシル化リンタンパク質に特異的に結合する分子である。「特異的に結合する」によって、結合が抗原について選択的であり、かつ望ましくないまたは非特異的な相互作用から区別され得ることが意味される。
【0062】
本明細書で使用される場合、用語、融合物またはキメラは、ABMなどのポリペプチドに関連して使用される場合、異なる種からの抗体の部分などの2つ以上の異種ポリペプチドに由来するアミノ酸配列を含むポリペプチドをいう。キメラABMについては、例えば、非抗原結合成分が、チンパンジーおよびヒトなどの霊長類を含む広範な種々の種に由来されてもよい。キメラABMの定常領域は、最も好ましくは、天然のヒト抗体の定常領域と実質的に同一であり;キメラ抗体の可変領域は、最も好ましくは、マウスB−Ly1可変領域のアミノ酸配列を有する組換え抗CD−20抗体のそれと同一である。ヒト化抗体は、特に好ましい融合抗体またはキメラ抗体の型である。
【0063】
本明細書で使用される場合、「GnTIII活性」を有するポリペプチドとは、N連結オリゴサッカリドのトリマンノシルコアのβ連結マンノシドへのβ−1−4結合におけるN−アセチルグルコサミン(GlcNAc)残基の付加を触媒することができるポリペプチドをいう。これは、特定の生物学的アッセイにおいて測定した場合に、用量依存性を伴ってまたは伴わずに、国際生化学分子生物学連合の命名委員会に従うβ−1,4−マンノシル−糖タンパク質4−β−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(EC2.4.1.144)としても知られている、β(1,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIIIの活性に類似しているが、同一である必要はない酵素活性を示す融合ポリペプチドを含む。用量依存性が存在する場合において、これは、GnTIIIのそれと同一である必要はないが、むしろ、GnTIIIと比較して、所定の活性における用量依存性に実質的に類似する(すなわち、候補ポリペプチドは、GnTIIIと比較して、より高い活性または約25分の1以下、および好ましくは、約10分の1以下の活性、および最も好ましくは、約3分の1以下の活性を示す)。
【0064】
本明細書で使用される場合、用語、改変体(またはアナログ)とは、例えば、組換えDDNA技術を使用して作製された、アミノ酸の挿入、欠失、および置換によって、本発明の特に列挙されるポリペプチドとは異なるポリペプチドをいう。本発明のABMの改変体には、キメラ抗原結合分子、霊長類化抗原結合分子、またはヒト化抗原結合分子が含まれ、ここで、1個または数個のアミノ酸残基が、抗原(例えば、CD20)結合親和性には実質的に影響を与えないような様式で、置換、付加、および/または欠失によって修飾されている。どのアミノ酸残基が目的の活性を消滅させることなく置換、付加、または欠失され得るかを決定する際の手引きは、特定のポリペプチドの配列を同種ペプチドの配列と比較すること、および高い相同性の領域(保存性領域)において行われるアミノ酸配列変化の数を最小化することによって、またはコンセンサス配列でアミノ酸配列を置換することによって見いだされ得る。
【0065】
代替的には、これらの同じかまたは類似のポリペプチドをコードする組換え改変体は、遺伝コードの「冗長性」を利用することによって、合成または選択されてもよい。種々の制限部位を生じるサイレント変化などの種々のコドン置換が、プラスミドもしくはウイルスベクターへのクローニングまたは特定の原核系もしくは真核系における発現を最適化するために導入されてもよい。ポリヌクレオチド配列における変異は、ポリペプチド、またはポリペプチドの任意の部分の特性を修飾するために、リガンド結合親和性、鎖間親和性、または分解/代謝回転速度などの特性を変化させるために、そのポリペプチドに付加された他のペプチドのドメインにおいて反映され得る。
【0066】
好ましくは、アミノ酸「置換」は、1つのアミノ酸を、類似の構造および/または化学的特性を有する別のアミノ酸で置換すること、すなわち、保存性アミノ酸置換の結果である。「保存性」アミノ酸置換は、関与する残基の極性、電荷、溶解性、疎水性、親水性、および/または両親媒性の性質に基づいて行われ得る。例えば、非極性(疎水性)アミノ酸には、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、およびメチオニンが含まれ;極性中性アミノ酸には、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、およびグルタミンが含まれ;正電荷を有する(塩基性)アミノ酸には、アルギニン、リジン、およびヒスチジンが含まれ;ならびに負電荷を有するアミノ酸には、アスパラギン酸およびグルタミン酸が含まれる。「挿入」または「欠失」は、好ましくは、約1〜20アミノ酸、より好ましくは1〜10アミノ酸の範囲である。許容されるバリエーションは、組換えDNA技術を使用して、および活性について得られる組換え改変体をアッセイして、ポリペプチド分子中のアミノ酸の挿入、欠失、または置換を体系的に作製することによって、実験的に決定され得る。
【0067】
本明細書で使用される場合、用語、ヒト化は、親の分子の抗原結合特性を保持するかまたは実質的に保持するが、ヒトにおいて免疫原性が低い非ヒト抗原結合分子、例えば、マウス抗体に由来する抗原結合分子をいうために使用される。これは、(a)キメラ抗体を生成するためにヒト定常領域に全体の非ヒト可変ドメインを移植する工程、(b)決定的なフレームワーク残基(例えば、良好な抗原結合親和性または抗体機能を保持するために重要であるもの)の保持を伴うかもしくは伴わない、ヒトフレームワークおよび定常領域に非ヒトCDRのみを移植する工程、または(c)全体の非ヒト可変ドメインを移植するが、これらの表面残基の置換によってヒト様部分で「覆う」工程を含む種々の方法によって達成され得る。このような方法は、Jonesら、Morrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.,81:6851−6855(1984);MorrisonおよびOi、Adv.Immunol.,44:65−92(1988);Verhoeyenら、Science,239:1534−1536(1988);Padlan,Molec.Immun.,28:489−498(1991);Padlan,Molec.Immun.,31(3):169−217(1994)において開示されており、これらの全ては、それらの全体が本明細書に参照として組み込まれる。一般的に、3つの相補性決定領域、すなわちCDR(CDR1、CDR2およびCDR3)が、抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメインの各々に存在し、これらは、抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメインの各々において4つのフレームワークサブ領域(すわわち、FR1、FR2、FR3、およびFR4)によって隣接されている。FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4。ヒト化抗体の議論は、とりわけ、米国特許第6,632,927号および米国出願公開第2003/0175269号に見いだされ得、これらの両方は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0068】
同様に、本明細書で使用される場合、用語、霊長類化は、親の分子の抗原結合特性を保持するかまたは実質的に保持するが、霊長類において免疫原性が低い非霊長類抗原結合分子、例えば、マウス抗体に由来する抗原結合分子をいうために使用される。
【0069】
当分野において使用され、および/または受容される1つの用語の2つ以上の定義が存在する場合には、本明細書で使用される用語の定義は、明白に反対のことが言及されない限り、全てのこのような意味を含むことが意図される。特定の例は、重鎖と軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域中に見いだされる不連続抗原組み合わせ部位を説明するための用語「相補性決定領域」(「CDR」)の使用である。この特定の領域は、Kabatら、U.S.Dept.of Health and Human Services,「Sequences of Proteins of Immunological Interest」(1983)およびChothiaら、J.Mol.Biol.196:901−917(1987)によって記載されており、これらは参照により本明細書に援用され、ここでこの定義は、互いに対して比較した場合に、アミノ酸残基の重複またはサブセットを含む。それにも関わらず、抗体またはその改変体のCDRをいうためのいずれの定義の適用も、本明細書で定義され、および使用される用語の範囲内にあることが意図される。上記に引用した参考文献の各々によって定義されたCDRを含む適切なアミノ酸残基は、比較として表1において以下に記載される。特定のCDRを含む正確な残基の番号は、CDRの配列およびサイズに依存して変化する。当業者は、抗体の可変領域のアミノ酸配列が与えられると、どの残基が特定のCDRを含むかを慣用的に決定することができる。
【0070】
【表1】
【0071】
Kabatらはまた、任意の抗体に適用可能である可変ドメイン配列についての番号付けを定義した。当業者は、配列それ自体を超えたいかなる実験データにも頼ることなく、任意の可変ドメインに「Kabat番号付け」のこのシステムを明白に割り当てることができる。本明細書で使用される場合、「Kabat番号付け」とは、Kabatら、U.S.Dept.of Health and Human Services,「Sequence of Proteins of Immunological Interest」(1983)によって示される番号付けシステムをいう。他に特定されない限り、ABM中の特定のアミノ酸残基の位置の番号付けはKabat番号付けシステムに従う。配列表の配列(すなわち、配列番号1〜配列番号78)は、Kabat番号付けシステムに従って番号付けされていない。
【0072】
本発明の参照ヌクレオチド配列に対して、少なくとも、例えば、95%「同一である」ヌクレオチド配列を有する核酸またはヌクレオチドによって、ポリヌクレオチド配列が参照ヌクレオチド配列の各100ヌクレオチドあたり5個までの点変異を含んでもよいこと以外は、このポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は参照配列と同一であることが意図される。換言すれば、参照ヌクレオチド配列に対して少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを得るために、参照配列中の5%までのヌクレオチドが欠失されるかもしくは別のヌクレオチドで置換されてもよく、または参照配列中の全ヌクレオチドの5%までの数のヌクレオチドが参照ヌクレオチドに挿入されてもよい。問い合わせ配列は、図24または図25のいずれかに示される全体の配列であってもよい。
【0073】
実際問題として、任意の特定の核酸分子またはポリペプチドが、本発明のヌクレオチド配列またはポリペプチド配列に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるか否かは、公知のコンピュータプログラムを使用して慣用的に決定され得る。グローバル配列アラインメントとも呼ばれる、問い合わせ配列(本発明の配列)と対象配列との間の最良の全体の一致を決定するための好ましい方法は、Brutlagら、Comp.App.Biosci.6:237−245(1990)のアルゴリズムに基づくFASTDBコンピュータプログラムを使用して決定され得る。配列アラインメントにおいては、問い合わせ配列および対象配列は両方ともDNA配列である。RNA配列は、UをTに変換することによって比較され得る。このグローバル配列アラインメントの結果は同一性パーセントである。同一性パーセントを計算するためにDNA配列のFASTDBアラインメントにおいて使用される好ましいパラメーターは以下である。マトリックス=単一、k−タプル=4、ミスマッチペナルティー=1、結合ペナルティー=30、ランダム化グループ長=0、カットオフスコア=1、ギャップペナルティー=5、ギャップサイズペナルティー0.05、ウィンドウサイズ=500または対象ヌクレオチド配列の長さのどちらか短い方。
【0074】
内部の欠失のためではなく、5’欠失または3’欠失のために対象配列が問い合わせ配列よりも短い場合、手動の補正が結果に対して行わなければならない。これは、FASTDBプログラムが、同一性パーセントを計算する場合に、対象配列の5’および3’短縮を計算に入れないからである。5’末端または3’末端で短縮されている対象配列については、問い合わせ配列と比較して、同一性パーセントは、問い合わせ配列の全体の塩基のパーセントとして一致/アラインしない、対象配列の5’および3’である問い合わせ配列の塩基の数を計算することによって補正される。ヌクレオチドが一致/アラインされるか否かは、FASTDB配列アラインメントの結果によって決定される。次いで、このパーセンテージが、同一性パーセントから減算され、特定のパラメーターを使用して上記のFASTDBプログラムによって計算されて、最終的な同一性パーセントスコアに到達する。この補正されたスコアは、本発明の目的のために使用されるものである。問い合わせ配列と一致/アラインしない、FASTDBアラインメントによって示されるような、対象配列の5’塩基および3’塩基の外側の塩基のみが、同一性パーセントスコアを手動で調整する目的のために計算される。
【0075】
例えば、90塩基の対象配列が、同一性パーセントを決定するために100塩基の問い合わせ配列とアラインされる。欠失は対象配列の5’末端で起こり、それゆえに、FASTDBアラインメントは、5’末端における最初の10塩基の一致/アラインメントを示さない。この10個の対合しない塩基は配列の10%を表し(一致しない5’末端および3’末端の数/問い合わせ配列における塩基の総数)、従って、10%が、FASTDBプログラムによって計算されたパーセント同一性スコアから減算される。残りの90塩基が完全に一致するならば、最終的な同一性パーセントは90%である。別の例において、90塩基の対象配列が100塩基の問い合わせ配列と比較される。今回は欠失が内部欠失であり、その結果、問い合わせと一致/アラインしない、対象の5’末端または3’末端上の塩基は存在しない。この場合、FASTDBによって計算された同一性パーセントは手動で補正されない。再度、問い合わせ配列と一致/アラインしない対象配列の塩基の5’および3’のみが、手動で補正される。他の手動の補正は、本発明の目的のためには行われない。
【0076】
本発明の問い合わせアミノ酸配列に対して、少なくとも、例えば、95%「同一である」アミノ酸配列を有するポリペプチドによって、対象のポリペプチドのアミノ酸配列が、対象のポリペプチド配列が問い合わせアミノ酸配列の各100アミノ酸あたりに5個までのアミノ酸の変化を含んでもよいこと以外は、問い合わせ配列と同一であることが意図される。換言すれば、問い合わせヌクレオチド配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを得るために、対象配列中の5%までのアミノ酸残基が挿入、欠失、または別のアミノ酸で置換されてもよい。参照配列のこれらの変化は、参照アミノ酸配列のアミノ末端もしくはカルボキシ末端の位置で、または参照配列中の残基間に個々に、もしくは参照配列中の1つ以上の連続する基においてのいずれかで散在して、これらの末端間の任意の位置に存在してもよい。
【0077】
実際問題として、任意の特定のポリペプチドが、参照ポリペプチドに対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるか否かは、公知のコンピュータプログラムを使用して慣用的に決定され得る。グローバル配列アラインメントとも呼ばれる、問い合わせ配列(本発明の配列)と対象配列との間の最良の全体の一致を決定するための好ましい方法は、Brutlagら、Comp.App.Biosci.6:237−245(1990)のアルゴリズムに基づくFASTDBコンピュータプログラムを使用して決定され得る。配列アラインメントにおいては、問い合わせ配列および対象配列は両方ともヌクレオチド配列であるか、または両方ともアミノ酸配列であるかのいずれかである。このグローバル配列アラインメントの結果は同一性パーセントである。FASTDBアミノ酸アラインメントにおいて使用される好ましいパラメーターは以下である。マトリックス=PAM 0、k−タプル=2、ミスマッチペナルティー=1、結合ペナルティー=20、ランダム化グループ長=0、カットオフスコア=1、ウィンドウサイズ=配列長、ギャップペナルティー=5、ギャップサイズペナルティー0.05、ウィンドウサイズ=500または対象アミノ酸配列の長さのどちらか短い方。
【0078】
内部の欠失のためではなく、N末端欠失またはC末端欠失のために対象配列が問い合わせ配列よりも短い場合、手動の補正が結果に対して行わなければならない。これは、FASTDBプログラムが、全体同一性パーセントを計算する場合に、対象配列のN末端およびC末端短縮を計算に入れないからである。N末端またはC末端で短縮されている対象配列については、問い合わせ配列と比較して、同一性パーセントは、問い合わせ配列の全体の塩基のパーセントとして、対応する対象の残基と一致/アラインしない、対象配列のN末端およびC末端である問い合わせ配列の塩基の数を計算することによって補正される。残基が一致/アラインされるか否かは、FASTDB配列アラインメントの結果によって決定される。次いで、このパーセンテージが、同一性パーセントから減算され、特定のパラメーターを使用して上記のFASTDBプログラムによって計算されて、最終的な同一性パーセントスコアに到達する。この最終的な同一性パーセントスコアが、本発明の目的のために使用されるものである。問い合わせ配列と一致/アラインしない、対象配列のN末端およびC末端への残基のみが、同一性パーセントスコアを手動で調整する目的のためのものと見なされる。すなわち、対象配列の最も遠いN末端およびC末端の残基の外側の位置の問い合わせ残基のみである。
【0079】
例えば、90アミノ酸残基の対象配列が、同一性パーセントを決定するために100残基の問い合わせ配列とアラインされる。欠失は対象配列のN末端で起こり、それゆえに、FASTDBアラインメントは、N末端における最初の10残基の一致/アラインメントを示さない。この10個の対合しない残基は配列の10%を表し(一致しないN末端およびC末端の数/問い合わせ配列における残基の総数)、従って、10%が、FASTDBプログラムによって計算されたパーセント同一性スコアから減算される。残りの90残基が完全に一致するならば、最終的な同一性パーセントは90%である。別の例において、90残基の対象配列が100残基の問い合わせ配列と比較される。今回は欠失が内部欠失であり、その結果、問い合わせと一致/アラインしない、対象配列のN末端またはC末端上の残基は存在しない。この場合、FASTDBによって計算された同一性パーセントは手動で補正されない。再度、FASTDBによって示されるような、問い合わせ配列と一致/アラインしない、対象配列の残基のN末端およびC末端のみが手動で補正される。他の手動の補正は、本発明の目的のためには行われない。
【0080】
本明細書で使用される場合、本発明の核酸配列に「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」核酸とは、50%ホルムアミド、5×SSC(750mM NaCl、75mM クエン酸ナトリウム)、50mM リン酸ナトリウム(pH 7.6)、5×Denhardt’s溶液、10% 硫酸デキストラン、および20μg/ml 変性剪断サケ精子DNAを含む溶液中、42℃での一晩インキュベーション、続いて0.1×SSC中、65℃での洗浄でハイブリダイズするポリヌクレオチドをいう。
【0081】
本明細書で使用される場合、用語、ゴルジ局在化ドメインとは、ゴルジ複合体中での局在化においてポリペプチドを固定するための原因である、ゴルジ存在性ポリペプチドのアミノ酸配列をいう。一般的に、局在化ドメインは、酵素のアミノ末端「テール」を含む。
【0082】
本明細書で使用される場合、用語、エフェクター機能とは、抗体のFc領域(ネイティブ配列のFc領域またはアミノ酸配列改変体のFc領域)に起因し得る生物学的活性をいう。抗体エフェクター機能の例には、Fcレセプター結合親和性、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)、抗体依存性細胞食作用(ADCP)、サイトカイン分泌、抗原提示細胞による免疫複合体媒介性の抗原取り込み、細胞表面レセプターのダウンレギュレーションなどが含まれるがこれらに限定されない。
【0083】
本明細書で使用される場合、用語、操作する、操作された、操作すること、およびグリコシル化操作は、天然に存在するポリペプチドまたは組換えポリペプチドまたはそのフラグメントのグリコシル化パターンの任意の操作を含むと見なされる。グリコシル化操作には、細胞中で発現される糖タンパク質のグリコシル化の変化を達成するためのオリゴサッカリド合成経路の遺伝子操作を含む、細胞のグリコシル化機構の代謝的操作を含む。さらに、グリコシル化操作は、グリコシル化に対する変異および細胞環境の効果を含む。
【0084】
本明細書で使用される場合、用語、宿主細胞は、本発明のポリペプチドおよび抗原結合分子を生成するために操作され得る任意の種の細胞系を網羅する。1つの実施形態において、宿主細胞は、修飾糖タンパク質を有する抗原結合分子の産生を可能にするように操作される。好ましい実施形態において、抗原結合分子は、抗体、抗体フラグメント、または融合タンパク質である。特定の実施形態において、宿主細胞は、GnTIII活性を有する1つ以上のポリペプチドのレベルの増加を発現するようにさらに操作されている。宿主細胞には、培養細胞、例えば、哺乳動物培養細胞、ほんの少し例を挙げれば、例えば、CHO細胞、BHK細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、YO骨髄腫細胞、P3X63マウス骨髄腫細胞、PER細胞、PER.C6細胞、またはハイブリドーマ細胞など、酵母細胞、昆虫細胞、および植物細胞が含まれるが、トランスジェニック動物、トランスジェニック植物、または培養した植物もしくは動物の組織中に含まれる細胞もまた含まれる。
【0085】
本明細書で使用される場合、用語、Fc媒介性細胞傷害性は、抗体依存性細胞傷害性およびヒトFc領域を含む可溶性Fc融合タンパク質によって媒介される細胞傷害性を含む。これは「ヒト免疫エフェクター細胞」による「抗体標的化細胞」の溶解に導く免疫メカニズムである。ここで:
【0086】
ヒト免疫エフェクター細胞は、それらが抗体またはFc融合タンパク質のFc領域にそれを通して結合する、それらの表面上のFcレセプターを表示し、およびエフェクター機能を実行する白血球の集団である。このような集団には、末梢血単球細胞(PBMC)および/またはナチュラルキラー(NK)細胞が含まれ得るがこれらに限定されない。
【0087】
抗体標的化細胞は、抗体またはFc融合タンパク質によって結合される細胞である。抗体またはFc融合タンパク質は、Fc領域に対してN末端であるタンパク質部分を通して標的細胞に結合する。
【0088】
本明細書で使用される場合、用語、Fc媒介性細胞傷害性の増加は、標的細胞を取り囲む培地中で、上記に定義されたFc媒介性細胞傷害性のメカニズムによって、所定の時間内に、所定の抗体もしくFc融合タンパク質の濃度で溶解される「抗体標的化細胞」の数の増加、および/またはFc媒介性細胞傷害性のメカニズムによって、所定の時間内に、所定の数の「抗体標的化細胞」の溶解を達成するために必要とされる、標的細胞を取り囲む培地中の抗体もしくはFc融合タンパク質の濃度の減少のいずれかとして定義される。Fc媒介性細胞傷害性の増加は、当業者に公知である、同じ標準的な産生、精製、製剤、および保存の方法を使用して、同じ型の宿主細胞によって産生される、同じ型の抗体またはFc融合タンパク質によって媒介される細胞傷害性に比例するが、これは、本明細書に記載される方法によって、グリコシルトランスフェラーゼGnTIIIを発現するように操作された宿主細胞によって産生されなかった。
【0089】
抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を有する抗体によって、当業者に公知である任意の適切な方法によって決定されるような、ADCCの増加を有する抗体が意味され、この用語は本明細書で定義される通りのものである。1つの受容されるインビトロADCCアッセイは以下の通りである。
1)このアッセイは、抗体の抗原結合領域によって認識される標的抗原を発現することが知られている標的細胞を使用する;
2)このアッセイは、エフェクター細胞として、ランダムに選択された健常ドナーの血液から単離されたヒト末梢血単球細胞(PBMC)を使用する;
3)このアッセイは以下のプロトコールに従って使用される。
i)PBMCを、標準的な密度遠心分離手順を使用して単離し、RPMI細胞培養培地中、5×106細胞/mlで懸濁する;
ii)標的細胞を、90%よりも高い生存度を有する指数増殖期から、標準的な培養方法によって増殖させ、RPMI細胞培養培地中で洗浄し、100マイクロキュリーの51Crで標識し、細胞培養培地で2回洗浄し、そして105細胞/mlの密度で細胞培養培地中に再懸濁する;
iii)100マイクロリットルの上記の最終的な標的細胞懸濁物を、96ウェルマイクロタイタープレートの各ウェルに移す;
iv)抗体を、細胞培養培地中で4000ng/mlから0.04ng/mlまで段階希釈し、得られる抗体溶液の50マイクロリットルを96ウェルマイクロタイタープレート中の標的細胞に加えて、上記の全体の濃度範囲を網羅する種々抗体濃度を3連で試験する;
v)最大放出(MR)コントロールのために、標識された標的細胞を含む、プレート中の3つのさらなるウェルは、抗体溶液(上記の要点iv)の代わりに、50マイクロリットルの2%(V/V)非イオン性界面活性剤(Nonidet,Sigma,St.Louis)の水溶液を受容する;
vi)自発性放出(SR)コントロールのために、標識された標的細胞を含む、プレート中の3つのさらなるウェルに、抗体溶液(上記の要点iv)の代わりに、50マイクロリットルのRPMI細胞培養培地を受容する;
vii)次いで、96ウェルマイクロタイタープレートを、50×gで1分間遠心分離し、そして1時間4℃でインキュベートする;
viii)50マイクロリットルのPBMC懸濁液(上記の要点i)を各ウェルに加えて25:1のエフェクター:標的細胞比を生じ、そしてプレートをインキュベーター中、5% CO2大気、37℃下に4時間配置する;
ix)各ウェルからの無細胞上清を収集し、実験的に放出された放射能をガンマカウンターを使用して定量する;
x)特異的溶解のパーセンテージを、計算式(ER−MR)/(MR−SR)×100に従って各抗体について計算し、ここで、ERは抗体濃度について定量された平均放射能(上記の要点ixを参照のこと)であり、MRはMRコントロール(上記の要点vを参照のこと)についての定量された平均放射能(上記の要点ixを参照のこと)であり、そしてSRはSRコントロール(上記の要点viを参照のこと)についての定量された平均放射能(上記の要点ixを参照のこと)である;
4)「ADCCの増加」は、上記の試験された抗体濃度範囲内で観察される特異的溶解の最大パーセンテージの増加、および/または上記の試験された抗体濃度範囲内で観察される特異的溶解の最大パーセンテージの半分を達成するために必要とされる抗体の濃度の減少のいずれかとして定義される。ADCCの増加は、上記のアッセイを用いて測定される、当業者に公知である同じ標準的な産生、精製、製剤、および保存の方法を使用して、同じ型の宿主細胞によって産生される、同じ型の抗体によって媒介されるADCCに比例するが、これは、GnTIIIを過剰発現するように操作された宿主細胞によって産生されなかった。
【0090】
1つの態様において、本発明は、マウスB−ly1抗体の結合特異性を有する抗原結合分子、およびそれらのエフェクター機能がグリコシル化の変化によって増強され得るという発見に関する。1つの実施形態において、抗原結合分子はキメラ抗体である。好ましい実施形態において、本発明は、図7に示されるCDRを含むキメラ抗体またはそのフラグメントに向けられる。詳細には、好ましい実施形態において、本発明は、(a)配列番号5、配列番号6および配列番号7からなる群より選択される配列(CDR VH-1);ならびに(b)配列番号21、配列番号22および配列番号23からなる群より選択される配列(CDR VH-2);ならびに配列番号24を含む単離されたポリヌクレオチドに向けられる。別の好ましい実施形態において、本発明は、配列番号8、配列番号9および配列番号10を含む単離されたポリヌクレオチド(CDR VL)に向けられる。1つの実施形態において、任意のこれらのポリヌクレオチドは誘導ポリペプチドをコードする。
【0091】
別の実施形態において、抗原結合分子は、図1に示されるマウスB−Ly1抗体のVHドメインまたはその改変体;および非マウスポリペプチドを含む。別の好ましい実施形態において、本発明は、図2に示されるマウスB−Ly1抗体のVLドメインまたはその改変体;および非マウスポリペプチドを含む抗原結合分子に向けられる。
【0092】
別の態様において、本発明は、BLy−1の1つ以上の短縮型CDRを含む抗原結合分子に向けられる。このような短縮型CDRは、最小限、所定のCDRについての特異性を決定するアミノ酸残基を含む。「特異性を決定する残基」は、抗原との相互作用に直接的に関与する残基を意味する。一般的に、所定のCDRにおける残基の約5分の1から3分の1のみが抗原への結合に関与する。特定のCDRにおける特異性決定残基は、例えば、三次元モデリングからの原子間接触の計算およびPadlanら、FASEB J.9(1):133−139(1995)(この内容はそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)に従って、所定の残基の位置における配列の変動性の決定によって同定され得る。
【0093】
従って、本発明はまた、マウスB−Ly1抗体の少なくとも1つの相補性決定領域を含む単離されたポリヌクレオチド、または少なくともこの相補性決定領域についての特異性決定残基を含むその改変体もしくは短縮型に向けられ、ここで、この単離されたポリヌクレオチドは誘導ポリペプチドをコードする。好ましくは、このような単離されたポリヌクレオチドは、抗原結合分子である融合ポリペプチドをコードする。1つの実施形態において、このポリヌクレオチドは、マウスB−Ly1抗体の3つの相補性決定領域、または少なくともこの3つの相補性決定領域の各々についての特異性決定残基を含むその改変体もしくは短縮型を含む。別の実施形態において、ポリヌクレオチドはキメラ(例えば、ヒト化)抗体の軽鎖または重鎖の全体の可変領域をコードする。本発明はさらに、このようなポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドに向けられる。
【0094】
別の実施形態において、本発明は、マウスB−Ly1抗体の少なくとも1つの相補性決定領域、または少なくともこの相補性決定領域についての特異性決定残基を含むその改変体もしくは短縮型を含み、および異種ポリペプチドに由来する配列を含む、抗原組み合わせ分子に向けられる。1つの実施形態において、この抗原結合分子は、マウスB−Ly1抗体の3つの相補性決定領域、またはこの3つの相補性決定領域の各々についての少なくとも特異性決定残基を含む、その改変体もしくは短縮型を含む。別の態様において、この抗原結合分子は、抗体の軽鎖または重鎖の可変領域を含む。1つの特に有効な実施形態において、抗原結合分子は、キメラ、例えば、ヒト化抗体である。本発明はまた、このような抗原結合分子を作製する方法、およびB細胞リンパ腫を含む疾患の治療におけるその抗原結合分子の使用に向けられる。
【0095】
抗体依存性細胞傷害性(ADCC)、補体依存性細胞傷害性(CDC)、および増殖の停止またはアポトーシスの誘導を含むいくつかのメカニズムが、抗CD20抗体の治療的効力に関与していることが知られている。例えば、実験的な証拠の大部分は、リツキシマブがCDCアッセイおよびADCCアッセイによって測定される従来的なエフェクターメカニズムを通して作用することを示す。同様に、インビボでのリツキシマブに対する異なるリンパ腫細胞の耐性は、インビボでのCDCに対するそれらの感受性の関数であることが示されてきた。対照的に、治療的使用のために認可された別の抗体のインビボでの作用の様式、B1は、補体とナチュラルキラー(NK)細胞の活性のどちらも必要としない。むしろ、インビボでのB1の効力は、強力なアポトーシスを誘導するその能力に起因する。
【0096】
一般的に、抗CD20モノクローナル抗体は、リンパ腫細胞を根絶する際のそれらの作用のメカニズムに基づいて、2つの別個のカテゴリーに分類される。I型抗CD20抗体は、主として標的細胞を殺傷させるのに対して、II型抗体は、異なるメカニズム、主としてアポトーシスによって作用する。リツキシマブおよび1F5は、I型抗CD20抗体の例であり、一方B1はII型抗体の例である。例えば、Cragg,M.S.およびGlennie,M.J.,Blood 103(7):2738−2743(2004年4月);Teeling,J.L.ら、Blood 104(6):1793−1800(2004年9月)を参照のこと。これらの全体の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0097】
本発明は、強力なアポトーシス能力をなお保持しながら、II型抗CD20抗体がADCCなどのエフェクター機能の増加を有するように操作されている最初の知られた例である。従って、本発明は、この操作の結果としてADCCの増加を有し、かつアポトーシスを誘導する実質的な能力の損失を伴わない、操作されたII型抗CD20抗体に向けられる。1つの実施形態において、II型抗CD20抗体は、Fc領域におけるグリコシル化のパターンの変化を有するように操作されている。特定の実施形態において、グリコシル化の変化は、Fc領域における二分枝複合体残基のレベルの増加を含む。別の特定の実施形態において、グリコシル化の変化は、Fc領域におけるフコース残基のレベルの減少を含む。Shitaraらへの米国特許出願公開第2004 0093621号を参照のこと。この全体の内容は参照により本明細書に組み込まれる。別の実施形態において、II型抗CD20抗体は、Prestaへの米国特許第6,737,056号または米国特許出願公開第2004 0185045号(Macrogenics)または米国特許出願公開第2004 0132101号(Xencor)(これらの各々の全体の内容は参照により組み込まれる)において教示されているようなポリペプチド操作を受けている。本発明はさらに、このような操作されたII型抗体を作製する方法、およびB細胞リンパ腫を含む種々のB細胞障害の治療においてこのような抗体を使用する方法に向けられる。
【0098】
キメラマウス/ヒト抗体は記載されてきた。例えば、Morrison,S.L.ら、PNAS I1:6851−6854(1984年11月);欧州特許公開第173494号;Boulianna,G.L.ら,Nature 312:642(1984年12月);Neubeiger,M.S.ら、Nature 314:268(1985年3月);欧州特許公開第125023号;Tanら、J.Immunol.135:8564(1985年11月);Sun,L.Kら、Hybridoma 5(1):517(1986);Sahaganら、J.Immunol.137:1066−1074(1986)を参照のこと。一般的には、Muron,Nature 312:597(1984年12月);Dickson、Genetic Engineering News 5(3)(1985年3月);Marx、Science 229:455(1985年8月);およびMorrison、Science 229:1202−1207(1985年9月)を参照のこと。PCT公開番号WO/88104936において、Robinsonらは、CD20のエピトープに対する特異性を有する、ヒト定常領域およびマウス可変領域を有するキメラ抗体を記載し;Robinsonの引用文献のキメラ抗体のマウス部分は、2H7マウスモノクローナル抗体(ガンマ2b、カッパ)に由来する。この引用文献は、記載されたキメラ抗体がB細胞障害の治療のための「第1の候補」であると記述しているが、この記述は、当業者に対する示唆に過ぎず、この示唆は特定の抗体について正確であるか否かを決定するためであると見なされるべきである。特に、この引用文献は、治療的な有効性の主張を支持するいかなるデータも欠いており、および重要なことには、霊長類またはヒトなどの高等哺乳動物を使用するデータを欠いているからである。
【0099】
キメラ抗体を生成するための方法論は当業者に利用可能である。例えば、軽鎖および重鎖は、例えば、別々のプラスミド中、または単一の(例えば、ポリシストロン性)ベクター上での免疫グロブリン軽鎖および免疫グロブリン重鎖を使用して、別々に発現され得る。次いで、これらは精製され得、インビトロで完全な抗体にアセンブルされ得る;このようなアセンブリーを達成するための方法論は記載されている。例えば、Scharff,M.,Harvey Lectures 69:125(1974)を参照のこと。減少した単離された軽鎖および重鎖からのIgG抗体の形成のためのインビトロ反応パラメーターもまた記載されてきた。例えば、Searsら、Biochem.16(9):2016−25(1977)を参照のこと。
【0100】
特に好ましい実施形態において、本発明のキメラABMはヒト化抗体である。非ヒト抗体をヒト化するための方法は当分野において公知である。例えば、本発明のヒト化ABMは、Winterへの米国特許第5,225,539号、Queenらへの米国特許第6,180,370号、またはAdairらへの米国特許第6,632,927号(これらの各々の全体の内容は参照により本明細書に組み込まれる)の方法に従って調製され得る。好ましくは、ヒト化抗体は、ヒトでない供給源からそれに導入された1つ以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、「インポート」残基と呼ばれ、これは典型的には、「インポート」可変ドメインから取られる。ヒト化は、本質的にWinterおよび共同実験者らの方法(Jonesら、Nature,321:522−525(1986);Riechmannら、Nature,332:323−327(1988);Verhoeyenら、Science,239:1534−1536(1988))に従って、超可変領域配列をヒト抗体の対応する配列の代わりに置換することによって実行され得る。従って、このような「ヒト化」抗体はキメラ抗体であり(米国特許第4,816,567号)、ここで実質的にインタクトに満たないヒト可変ドメインが、非ヒト種からの対応する配列によって置換されている。実際上、ヒト化抗体は、典型的には、いくつかの超可変領域の残基およびおそらくいくつかのFR残基が、齧歯類抗体における類似の部位からの残基によって置換されているヒト抗体である。対象のヒト化抗CD20抗体は、ヒト免疫グロブリンの定常領域を含む。
【0101】
ヒト化抗体を作製する際に使用される軽鎖と重鎖の両方のヒト可変ドメインの選択は、抗原性を減少させるために非常に重要である。いわゆる「ベストフィット」法に従って、齧歯類抗体の可変ドメインの配列が、既知のヒト可変ドメイン配列の全体のライブラリーに対してスクリーニングされる。次いで、齧歯類の配列に最も近いヒト配列が、ヒト化抗体のためのヒトフレームワーク領域(FR)として受容される(Simsら、J.Immunol.,151:2296(1993);Chothiaら、J.Mol.Biol.,196:901(1987))。ヒトフレームワーク配列を選択する別の方法は、完全な齧歯類フレームワークの各個々のサブ領域(すなわち、FR1、FR2、FR3、およびFR4)または個々のサブ領域のいくつかの組み合わせ(例えば、FR1およびFR2)の配列を、フレームワークサブ領域に対応する既知のヒト可変領域配列のライブラリー(例えば、Kabat番号付けによって決定されるような)に対して比較し、そして齧歯類の配列と最も近い各サブ領域または組み合わせについてヒト配列を選択することである(Leung、米国特許出願公開第2003/0040606A1号、2003年2月27日公開)。別の方法は、軽鎖または重鎖の特定のサブグループの全てのヒト抗体のコンセンサス配列に由来する特定のフレームワーク領域を使用する。同じフレームワークが、いくつかの異なるヒト化抗体のために使用されてもよい(Carterら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285(1992);Prestaら、J.Immunol.151:2623(1993))。
【0102】
抗原についての高い親和性の保持および他の好ましい生物学的特性を有することがさらに重要である。この目的を達成するために、好ましい方法に従って、ヒト化抗体が、親の配列およびヒト化配列の三次元モデルを使用する、親の配列および種々の概念的なヒト化生成物の分析のプロセスによって調製される。三次元免疫グロブリンモデルは市販されており、当業者には知られている。コンピュータプログラムが利用可能であり、これは、選択された候補免疫グロブリン配列の可能性のある三次元コンホメーション構造を図示および表示する。これらの表示の精査は、候補免疫グロブリン配列の機能における残基のあり得る役割の分析、すなわち、その抗原に結合する候補免疫グロブリンの能力に影響を与える残基の分析を可能にする。このようにして、FR残基は、選択され得、およびレシピエント配列およびインポート配列から組み合わされ得、その結果、標的抗原についての親和性の増加などの、望ましい抗体特性が達成される。一般的に、超可変領域の残基は、直接的にかつ最も実質的に、抗原結合に影響を与える際に関与する。
【0103】
別の実施形態において、本発明の抗原結合分子は、例えば、Balintらへの米国特許出願公開第2004/0132066号(この全体の内容は、参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている方法に従って、結合親和性の増強を有するように操作される。
【0104】
1つの実施形態において、本発明の抗原結合分子は、放射性標識または毒素などのさらなる部分に結合体化される。このような結合体化されたABMは、当分野において周知である多数の方法によって産生され得る。
【0105】
種々の放射性核種が本発明に適用可能であり、当業者は、種々の状況下でどの放射性核種が最も適切であるかを容易に決定する能力を有すると信じられている。例えば、131ヨウ素は、標的化免疫療法のために使用される周知の放射性核種である。しかし、131ヨウ素の臨床的有用性は、8日間の物理的半減期;血液中および腫瘍部位の両方でのヨウ素化抗体の脱ハロゲン化;ならびに腫瘍中での局在化した用量沈着のために最適以下であり得る発光特性(例えば、大きなガンマ成分)を含むいくつかの要因によって制限され得る。優れたキレート剤の出現に伴って、金属キレート基をタンパク質に結合させるための機会は111インジウムおよび50イットリウムなどの他の放射性核種を利用するための機会の増加を有する。90イットリウムは、放射免疫治療適用における利用のためのいくつかの利点を提供する。90イットリウムの64時間の半減期は、腫瘍による抗体の蓄積を可能にするために十分に長く、例えば、131ヨウ素と違って、90イットリウムは、高エネルギーの純粋なβ放射体であり、その崩壊において付随するガンマ放射を伴わず、これは100〜1000細胞直径の組織の範囲である。さらに、最小量の透過する放射は、90イットリウム標識された抗体の外来患者のための投与を可能にする。さらに、標識された抗体の内在化は細胞殺傷のために必要とされず、そして電離放射線の局所的放射は、標的抗原を欠く隣接する腫瘍細胞にとって致死性であるはずである。
【0106】
90イットリウム標識された抗CD20抗体の有効な単回治療投薬量(すなわち、治療有効量)は、約5から約75mCiの間、より好ましくは約10から40mCiの間の範囲である。131ヨウ素標識抗CD20抗体の有効な単回治療非骨髄除去投薬量は、約5から70mCiの間、より好ましくは約5から約40mCiの間の範囲である。131ヨウ素標識抗CD20抗体の有効な単回治療除去投薬量(すなわち、自家骨髄移植を必要とするかもしれない)は、約30から約600mCiの間、より好ましくは約50から約500mCi未満の間の範囲である。キメラ抗CD20抗体とともに、マウス抗体に対してより長い循環半減期のために、131ヨウ素標識キメラ抗CD20抗体の有効な単回治療非骨髄除去投薬量は、約5から40mCiの間、より好ましくは約30mCi未満の範囲である。例えば、111インジウム標識についての画像化判断基準は、典型的には約5mCi未満である。
【0107】
放射性標識された抗CD20抗体に関して、それを用いる治療はまた、単回治療処置を使用して、または複数の処置を使用して行われ得る。放射性核種成分のために、治療の前に、末梢血幹細胞(「PSC」)または骨髄(「BM」)が、照射から生じる潜在的に致命的な骨髄毒性を受ける患者のために「収集される」ことが好ましい。BMおよび/またはPSCは標準的な技術を使用して収集され、次いで、可能な再輸液のためにパージおよび凍結される。さらに、治療の前に、診断用の標識された抗体を使用する(例えば、111インジウムを使用する)診断用線量測定研究が患者に対して行われることが最も好ましく、その目的は、治療用に標識された抗体(例えば、90イットリウムを使用する)が、任意の正常な器官または組織中で不必要に「濃縮され」ないことを確実にすることである。
【0108】
好ましい実施形態において、本発明は、以下の表3に示されるようなアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする配列を含む単離されたポリヌクレオチドに向けられる。本発明はさらに、以下の表2に示されるヌクレオチド配列に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である配列を含む単離された核酸に向けられる。別の実施形態において、本発明は、表3に示されるアミノ酸配列に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする配列を含む単離された核酸に向けられる。本発明はまた、保存性アミノ酸置換を有する、表3における構築物のいずれかのアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする配列を含む単離された核酸を含む。
【0109】
【表2】
【0110】
【表3】
【0111】
【表4】
【0112】
【表5】
【0113】
【表6】
【0114】
【表7】
【0115】
【表8】
【0116】
【表9】
【0117】
【表10】
【0118】
【表11】
【0119】
別の好ましい実施形態において、本発明は、図1または図2に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする配列を含む単離されたポリヌクレオチドに向けられる。本発明はさらに、図5または図6に示されるヌクレオチド配列に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である配列を含む単離された核酸に向けられる。別の実施形態において、本発明は、表5または表6に示されるアミノ酸配列に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする配列を含む単離された核酸に向けられる。本発明はまた、保存性アミノ酸置換を有する、図1、図2、図5、または図6のいずれかのアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする配列を含む単離された核酸を含む。
【0120】
別の実施形態において、本発明は、1つ以上の本発明の単離されたポリヌクレオチドを含む、発現ベクターおよび/または宿主細胞に向けられる。
【0121】
一般的に、任意の型の培養細胞系が本発明のABMを発現するために使用され得る。好ましい実施形態において、CHO細胞、BHK細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、YO骨髄腫細胞、P3X63マウス骨髄腫細胞、PER細胞、PER.C6細胞またはハイブリドーマ細胞、他の哺乳動物細胞、酵母細胞、昆虫細胞、または植物細胞が、本発明の操作された宿主細胞を生成するためにバックグラウンド細胞系として使用される。
【0122】
本発明のABMの治療的効力は、GnTIII活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをさらに発現する宿主細胞中で、それらを産生することによって増強され得る。好ましい実施形態において、GnTIII活性を有するポリペプチドは、ゴルジ存在性ポリペプチドのゴルジ局在化ドメインを含む融合ポリペプチドである。別の好ましい実施形態において、GnTIII活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを発現する宿主細胞中での本発明のABMの発現は、Fcレセプター結合親和性の増加およびエフェクター機能の増加を有するABMを生じる。従って、1つの実施形態において、本発明は、(a)GnTIII活性を有するポリペプチドをコードする配列を含む単離された核酸および(b)ヒトCD20に結合する、キメラであり、霊長類化抗体またはヒト化抗体などの、本発明のABMをコードする単離されたポリヌクレオチドを含む宿主細胞に向けられる。好ましい実施形態において、GnTIII活性を有するポリペプチドは、GnTIIIの触媒ドメインを含む融合ポリペプチドであり、ゴルジ局在化ドメインはマンノシダーゼIIの局在化ドメインである。このような融合ポリペプチドを生成し、およびエフェクター機能の増加を有する抗体を産生するためにそれらを使用するための方法は、米国仮特許出願第60/495,142号に開示されており、この全体の内容は、参照により本明細書に明白に組み込まれる。別の好ましい実施形態において、キメラABMは、マウスB−LY1抗体の結合特異性を有するキメラ抗体またはそのフラグメントである。特に好ましい実施形態において、このキメラ抗体はヒトFcを含む。別の好ましい実施形態において、この抗体は霊長類化されているかまたはヒト化されている。
【0123】
1つの実施形態において、本発明のABMをコードする1個または数個のポリヌクレオチドが、構成的プロモーター、または調節された発現系の制御下で発現されてもよい。適切な調節された発現系には、テトラサイクリンで調節される発現系、エクジソン誘導性発現系、lacスイッチ発現系、糖質コルチコイド誘導性発現系、温度誘導性発現系、およびメタロチオネイン金属誘導性発現系が含まれるがこれらに限定されない。本発明のABMをコードするいくつかの異なる核酸が宿主細胞系中に含まれる場合、それらのいくつかが構成的プロモーターの制御下で発現され得るのに対して、その他は調節プロモーターの制御下で発現される。最大発現レベルは、細胞増殖速度に顕著な有害な効果をおよぼさない安定なポリペプチド発現の最高の可能なレベルであると見なされ、日常的な実験を使用して決定される。発現レベルは、ABMに特異的である抗体またはABMに融合されたペプチドタグに特異的である抗体を使用するウェスタンブロット分析;およびノーザンブロット分析を含む、当分野において一般的に公知である方法によって決定される。さらなる代替において、このポリヌクレオチドは、レポーター遺伝子に作動可能に連結され得;マウスB−Ly1抗体の実質的に同じ結合特異性を有するキメラABMの発現レベルが、レポーター遺伝子の発現レベルと相関するシグナルを測定することによって決定される。このレポーター遺伝子は、単一のmRNA分子としてこの融合ポリペプチドをコードする核酸と一緒に転写され得る;それらのそれぞれのコード配列は、内部リボソームエントリー部位(IRES)によって、またはキャップ非依存性翻訳エンハンサー(CITE)によってのいずれかで連結され得る。このレポーター遺伝子は、単一のポリペプチド鎖が形成されるように、マウスB−Ly1抗体の実質的に同じ結合特異性を有するキメラABMをコードする少なくとも1つの核酸と一緒に翻訳され得る。本発明のABMをコードする核酸は、単一のプロモーターの制御下でレポーター遺伝子に作動可能に連結され得、その結果、融合ポリペプチドをコードする核酸およびレポーター遺伝子が、2つの別々のメッセンジャーRNA(mRNA)分子に選択的スプライシングされるRNA分子に転写される;得られるmRNAの1つはこのレポータータンパク質に翻訳され、そして他方がこの融合ポリペプチドに翻訳される。
【0124】
当業者に周知である方法が、適切な転写/翻訳制御シグナルとともに、マウスB−Ly1抗体の実質的に同じ結合特異性を有するABMのコード配列を含む発現ベクターを構築するために使用され得る。これらの方法には、インビトロ組換えDNA技術、合成技術およびインビボ組換え/遺伝子組換えが含まれる。例えば、Maniatisら、MOLECULAR CLONING A LABORATORY MANUAL,Cold Spring Harbor Laboratory,N.Y.(1989)およびAusubelら、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY,Greene Publishing Associates and Wiley Interscience,N.Y(1989)を参照のこと。
【0125】
種々の宿主発現ベクター系が本発明のABMのコード配列を発現するために利用されてもよい。好ましくは、哺乳動物細胞が、目的のタンパク質のコード配列および融合ポリペプチドのコード配列を含む組換えプラスミドDNAまたはコスミドDNA発現ベクターでトランスフェクトされた宿主細胞系として使用される。最も好ましくは、CHO細胞、BHK細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、YO骨髄腫細胞、P3X63マウス骨髄腫細胞、PER細胞、PER.C6細胞またはハイブリドーマ細胞、他の哺乳動物細胞、酵母細胞、昆虫細胞、または植物細胞が、宿主細胞系として使用される。発現系および選択方法のいくつかの例が、以下の参考文献およびその中の引用文献に記載されている。Borthら、Biotechnol.Bioen.71(4):266−73(2000−2001)、Wernerら、Arzneimittelforschung/Drug Res.48(8):870−80(1998)、AndersenおよびKrummen,Curr.Op.Biotechnol.13:117−123(2002)、ChaddおよびChamow、Curr.Op.Biotechnol.12:188−194(2001)、およびGiddings,Curr.Op.Biotechnol.12:450−454(2001)。代替的な実施形態において、以下を含む、他の真核生物宿主細胞系が意図され得る。本発明のABMのコード配列を含む組換え酵母発現ベクターで形質転換された酵母細胞;マウスB−Ly1抗体の実質的に同じ結合特異性を有するキメラABMのコード配列を含む組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)で感染された昆虫細胞系;本発明のABMのコード配列を含む、組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウィルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)で感染されるか、もしくはこの配列を含む組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換された植物細胞系;または安定に増幅されたか(CHO/dhfr)もしくは二重微小染色体(例えば、マウス細胞系)中で不安定に増幅されたかのいずれかである、マウスB−Ly1抗体の実質的に同じ結合特異性を有するキメラABMをコードするDNAの複数のコピーを含むように操作された細胞株を含む、組換えウイルス発現ベクター(例えば、アデノウイルス、ワクシニアウイルス)で感染された動物細胞系。1つの実施形態において、本発明のABMをコードするポリヌクレオチドを含むベクターはポリシストロン性である。また、1つの実施形態において、上記で議論したABMは、抗体またはそのフラグメントである。好ましい実施形態において、このABMはヒト化抗体である。
【0126】
本発明の方法のために、安定な発現が一過性の発現よりも好まれる。なぜなら、これは、典型的には、より再現性のある結果を達成し、およびまた、大スケール産生に対してより受け入れ可能であるからである。ウイルス起源の複製を含む発現ベクターを使用するよりはむしろ、宿主細胞は、適切な発現制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位など)によって制御されるそれぞれのコード核酸、および選択マーカーで形質転換され得る。外来性DNAの導入後に、操作された細胞は、富化培地中で1〜2日間増殖され得、次いで、選択培地に交換される。組換えプラスミド中の選択マーカーは選択に対する耐性を付与し、それらの染色体にプラスミドを安定に組み込んだ細胞の選択を可能にし、増殖して増殖巣を形成し、これは次にはクローニングされ得、そして細胞系に拡大され得る。
【0127】
多数の選択系が使用されてもよく、これには以下が含まれるがこれらに限定されない:単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子(Wiglerら、Cell 11:223(1977))、ヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(SzybalskaおよびSzybalski、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 48:2026(1962))、およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(Lowyら、Cell 22:817(1980))、これらは、tk-細胞、hgprt-細胞、またはaprt-細胞中でそれぞれ利用され得る。また、代謝拮抗物質は、メトトレキサートに対する耐性を付与するdhfr遺伝子(Wiglerら、Natl.Acad.Sci.USA 77:3567(1989);O’Hareら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:1527(1981));ミコフェノール酸に対する耐性を付与するgpt遺伝子(MulliganおよびBerg、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:2072(1981));アミノグリコシドG−418に対する耐性を付与するneo遺伝子(Colberre−Garapinら、J.Mol.Biol.150:1(1981));およびハイグロマイシンに対する耐性を付与するhygro遺伝子(Santerreら、Gene 30:147(1984))についての選択の基礎として使用され得る。最近、さらなる選択遺伝子、すなわち、細胞がトリプトファンの代わりにインドールを利用することを可能にするtrpB;細胞がヒスチジンの代わりにヒスチノールを利用することを可能にするhisD(HartmanおよびMulligan、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:8047(1988));グルタミン合成系;およびオルニチンデカルボキシラーゼインヒビターである2−(ジフルオロメチル)−DL−オルニチン、DFMOに対する耐性を付与するODC(オルニチンデカルボキシラーゼ)(McConlogue、Current Communications in Molecular Biology,Cold Spring Harbor Laboratory編(1987))が記載されている。
【0128】
本発明はさらに、本発明のABMをコードする核酸およびGnTIII活性を有するポリペプチドをコードする核酸、またはこのような核酸を含むベクターを、宿主細胞中で発現する工程を含む、宿主細胞によって産生される本発明のABMのグリコシル化プロフィールを修飾するための方法に向けられる。好ましくは、修飾ポリペプチドは、Fc領域を含むIgGまたはそのフラグメントである。特に好ましい実施形態において、ABMはヒト化抗体またはそのフラグメントである。
【0129】
本発明の宿主細胞によって産生される修飾ABMは、Fcレセプター結合親和性の増加および/または修飾の結果としてのエフェクター機能の増加を示す。特に好ましい実施形態において、ABMは、Fc領域を含むヒト化抗体またはそのフラグメントである。好ましくは、Fcレセプター結合親和性の増加がFcγRIIIaレセプターなどのFcγ活性化レセプターへの結合の増加である。エフェクター機能の増加は、好ましくは、以下の1つ以上の増加である。抗体依存性細胞傷害性の増加、抗体依存性細胞食作用(ADCP)の増加、サイトカイン分泌の増加、抗原提示細胞による免疫複合体媒介性の抗原取り込みの増加、Fc媒介性細胞傷害性の増加、NK細胞への結合の増加、マクロファージへの結合の増加、多形核細胞(PMN)への結合の増加、単球への結合の増加、標的結合抗体の架橋の増加、直接的シグナル伝達誘導性アポトーシスの増加、樹状細胞成熟の増加、およびT細胞プライミングの増加。
【0130】
本発明はまた、宿主細胞中に修飾オリゴサッカリドを有する、本発明のABMを産生するための方法に向けられ、この方法は、(a)本発明に従うABMの産生を可能にする条件下でGnTIII活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸を発現するように操作された宿主細胞を培養し、ここで、このGnTIII活性を有するポリペプチドは、この宿主細胞によって産生されるこのABMのFc領域においてオリゴサッカリドを修飾するために十分な量で発現される、工程;および(b)このABMを単離する工程を含む。好ましい実施形態において、GnTIII活性を有するポリペプチドは、GnTIIIの触媒ドメインを含む融合ポリペプチドである。特に好ましい実施形態において、この融合ポリペプチドは、ゴルジ存在性ポリペプチドのゴルジ局在化ドメインをさらに含む。
【0131】
好ましくは、このゴルジ局在化ドメインは、マンノシダーゼIIまたはGnTIの局在化ドメインである。代替的には、このゴルジ局在化ドメインは、マンノシダーゼIの局在化ドメイン、GnTIIの局在化ドメイン、およびα1−6コアフコシルトランスフェラーゼの局在化ドメインからなる群より選択される。本発明の方法によって産生されるABMは、Fcレセプター結合親和性の増加および/またはエフェクター機能の増加を有する。好ましくは、エフェクター機能の増加は、以下の1つ以上である。Fc媒介性細胞傷害性の増加(抗体依存性細胞傷害性の増加を含む)、抗体依存性細胞食作用(ADCP)の増加、サイトカイン分泌の増加、抗原提示細胞による免疫複合体媒介性の抗原取り込みの増加、NK細胞への結合の増加、マクロファージへの結合の増加、単球への結合の増加、多形核細胞への結合の増加、直接的シグナル伝達誘導性アポトーシスの増加、標的結合抗体の架橋の増加、樹状細胞成熟の増加、またはT細胞プライミングの増加。Fcレセプター結合親和性の増加は、好ましくは、FcγRIIIaなどのFc活性化レセプターへの結合の増加である。特に好ましい実施形態において、ABMはヒト化抗体またはそのフラグメントである。
【0132】
別の実施形態において、本発明は、ポリペプチドのFc領域において二分枝オリゴサッカリドの割合の増加を有する、本発明の方法によって産生されたマウスB−Ly1抗体の実質的に同じ結合特異性を有するキメラABMに向けられる。このようなABMは、Fc領域を含む抗体およびそのフラグメントを含むことが意図される。好ましい実施形態において、ABMはヒト化抗体である。1つの実施形態において、ABMのFc領域における二分枝オリゴサッカリドのパーセンテージは、全体のオリゴサッカリドの、少なくとも50%、より好ましくは、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%であり、および最も好ましくは、少なくとも90〜95%である。なお別の実施形態において、ABMは、本発明の方法によるそのオリゴサッカリドの修飾の結果として、Fc領域中のフコシル化されていないオリゴサッカリドの割合の増加を有する。1つの実施形態において、フコシル化されていないオリゴサッカリドのパーセンテージは、少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%〜70%、最も好ましくは少なくとも75%である。フコシル化されていないオリゴサッカリドは、ハイブリッド型または複合体型であり得る。特に好ましい実施形態において、本発明の宿主細胞および方法によって産生されるABMは、Fc領域における二分枝でフコシル化されていないオリゴサッカリドの割合の増加を有する。この二分枝でフコシル化されていないオリゴサッカリドは、ハイブリッドまたは複合体のいずれかであり得る。詳細には、本発明の方法は、ABMのFc領域におけるオリゴサッカリドの少なくとも15%、より好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも35%が二分枝でフコシル化されていないABMを産生するために使用され得る。本発明の方法はまた、ポリペプチドのFc領域におけるオリゴサッカリドの少なくとも15%、より好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも35%が二分枝でハイブリッドフコシル化されていないポリペプチドを産生するために使用され得る。
【0133】
別の実施形態において、本発明は、本発明の方法によって産生される、エフェクター機能の増加および/またはFcレセプター結合親和性の増加を有するように操作されたマウスB−Ly1抗体の実質的に同じ結合特異性を有するキメラABMに向けられる。好ましくは、エフェクター機能の増加は、以下の1つ以上である。Fc媒介性細胞傷害性の増加(抗体依存性細胞傷害性の増加を含む)、抗体依存性細胞食作用(ADCP)の増加、サイトカイン分泌の増加、抗原提示細胞による免疫複合体媒介性の抗原取り込みの増加、NK細胞への結合の増加、マクロファージへの結合の増加、単球への結合の増加、多形核細胞への結合の増加、直接的シグナル伝達誘導性アポトーシスの増加、標的結合抗体の架橋の増加、樹状細胞成熟の増加、またはT細胞プライミングの増加。好ましい実施形態において、Fcレセプター結合親和性の増加は、Fc活性化レセプター、最も好ましくはFcγRIIIaへの結合の増加である。1つの実施形態において、ABMは抗体、Fc領域を含む抗体フラグメント、または免疫グロブリンのFc領域に対して等価である領域を含む融合タンパク質である。特に好ましい実施形態において、ABMはヒト化抗体である。
【0134】
本発明はさらに、本発明のABMおよび薬学的に許容可能なキャリアを含む医薬組成物に向けられる。
【0135】
本発明はさらに、癌の治療の方法におけるこのような医薬組成物の使用に向けられる。詳細には、本発明は、本発明の薬学的組成物の治療有効量を投与する工程を含む、癌の治療のための方法に向けられる。
【0136】
本発明はさらに、Fcレセプター結合親和性の増加、好ましくはFc活性化レセプターへの結合の増加を有し、および/または抗体依存性細胞傷害性を含む、エフェクター機能の増加を有する、本発明のABMの糖型の産生のための宿主細胞系の生成および使用のための方法を提供する。本発明のABMとともに使用され得る糖付加操作の方法論は、米国特許第6,602,684号および米国仮特許出願第60/441,307号およびWO 2004/065540(これらの各々の全体の内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)においてより詳細に記載されている。本発明のABMは、代替的には、EP 1 176 195 A1(この全体の内容は参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている技術に従って、Fc領域中でフコース残基の減少を有するように糖付加操作され得る。
【0137】
グリコシル化パターンの変化を有するタンパク質の産生のための細胞系の生成
本発明は、グリコシル化パターンの修飾を有する本発明のABMの生成のための宿主発現系を提供する。特に、本発明は、改善された治療的価値を有する本発明のABMの糖型の生成のための宿主細胞系を提供する。それゆえに、本発明は、GnTIII活性を有するポリペプチドを発現するように選択または操作された宿主細胞発現系を提供する。1つの実施形態において、GnTIII活性を有するポリペプチドは、異種ゴルジ存在性ポリペプチドのゴルジ局在化ドメインを含む融合ポリペプチドである。詳細には、このような宿主細胞発現系は、構成的または調節されるプロモーター系に作動可能に連結された、GnTIIIを有するポリペプチドをコードする組換え核酸分子を含むように操作され得る。
【0138】
1つの特定の実施形態において、本発明は、GnTIII活性を有し、かつ異種ゴルジ存在性ポリペプチドのゴルジ局在化ドメインを含む融合ポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸を発現するように操作されている宿主細胞を提供する。1つの態様において、宿主細胞は、GnTIII活性を有し、かつ異種ゴルジ存在性ポリペプチドのゴルジ局在化ドメインを含む融合ポリペプチドをコードする少なくとも1つの遺伝子を含む核酸分子で操作されている。
【0139】
一般的に、上記に議論される細胞系を含む任意の型の培養細胞系が、本発明の宿主細胞株を操作するためにバックグラウンドとして使用され得る。好ましい実施形態において、CHO細胞、BHK細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、YO骨髄腫細胞、P3X63マウス骨髄腫細胞、PER細胞、PER.C6細胞またはハイブリドーマ細胞、他の哺乳動物細胞、酵母細胞、昆虫細胞、または植物細胞が、本発明の操作された宿主細胞を生成するためにバックグラウンド細胞系として使用される。
【0140】
本発明は、本明細書に定義されるような異種ゴルジ存在性ポリペプチドのゴルジ局在化ドメインを含む融合ポリペプチドを含む、GnTIII活性を有するポリペプチドを発現する任意の操作された宿主細胞を含むことを意図する。
【0141】
GnTIII活性を有するポリペプチドをコードする1つまたはいくつかの核酸が、構成的プロモーターまたは代替的には、調節された発現系の制御下で発現され得る。このような系は当分野において周知であり、これは上記に議論した系を含む。GnTIII活性を有し、かつ異種ゴルジ存在性ポリペプチドのゴルジ局在化ドメインを含む融合ポリペプチドをコードするいくつかの異なる核酸が宿主細胞系中に含まれる場合、それらのいくつかは構成的プロモーターの制御下で発現され得るのに対して、その他は調節されるプロモーターの制御下で発現される。GnTIII活性を有する融合ポリペプチドの発現レベルは、ウェスタンブロット分析、ノーザンブロット分析、レポーター遺伝子発現分析またはGnTIII活性の測定を含む、当分野において一般的に公知である方法によって決定される。代替的には、GnTIIIの生合成産物に結合するレクチン、例えば、E4−PHAレクチンが利用されてもよい。代替的には、GnTIII活性を有するポリペプチドをコードする核酸で操作された細胞によって産生される抗体によって媒介される、Fcレセプター結合の増加またはエフェクター機能の増加を測定する機能的アッセイが使用されてもよい。
【0142】
グリコシル化パターンの修飾を有するタンパク質を発現するトランスフェクト体または形質転換体の同定
マウスB−Ly1抗体の実質的に同じ結合特異性を有し、かつ生物学的に活性な遺伝子産物を発現するキメラABMのコード配列を含む宿主細胞は、少なくとも4つの一般的アプローチ:(a)DNA−DNAまたはDNA−RNAのハイブリダイゼーション;(b)「マーカー」遺伝子機能の存在または非存在;(c)宿主細胞中のそれぞれのmRNA転写物の発現によって測定されるような転写物のレベルを評価すること;および(d)免疫アッセイによって、またはその生物学的活性によって測定されるような遺伝子産物の検出によって同定されてもよい。
【0143】
第1のアプローチにおいて、マウスB−Ly1抗体の実質的に同じ結合特異性を有するキメラABMのコード配列およびGnTIII活性を有するポリペプチドのコード配列の存在は、それぞれのコード配列、またはその部分もしくは誘導体それぞれに相同であるヌクレオチド配列を含むプローブを使用するDNA−DNAまたはDNA−RNAハイブリダイゼーションによって検出され得る。
【0144】
第2のアプローチにおいて、組換え発現ベクター/宿主系は、特定の「マーカー」遺伝子機能(例えば、チミジンキナーゼ活性、抗生物質に対する耐性、メトトレキサートに対する耐性、形質転換表現型、バキュロウイルスにおける封入体(occlusion body)形成など)の存在または不存在に基づいて同定および選択され得る。例えば、本発明のABMのコード配列またはそのフラグメント、およびGnTIII活性を有するポリペプチドのコード配列がベクターのマーカー遺伝子配列中に挿入される場合、それぞれのコード配列を含む組換え体は、マーカー遺伝子機能の不存在によって同定され得る。代替的には、マーカー遺伝子は、コード配列の発現を制御するために使用される同じまたは異なるプロモーターの制御下でコード配列とともにタンデムに配置され得る。誘導または選択に応答したマーカーの発現は、本発明のABMのコード配列およびGnTIII活性を有するポリペプチドのコード配列の発現を示す。
【0145】
第3のアプローチにおいて、本発明のABMのコード領域、またはそのフラグメント、およびGnTIII活性を有するポリペプチドのコード配列についての転写活性は、ハイブリダイゼーションアッセイによって評価され得る。例えば、RNAは、本発明のABMのコード配列またはそのフラグメント、およびGnTIII活性を有するポリペプチドのコード配列またはその特定の部分に相同であるプローブを使用するノーザンブロットによって単離および分析され得る。代替的には、宿主細胞の全体の核酸は、抽出され得、およびこのようなプローブへのハイブリダイゼーションについてアッセイされ得る。
【0146】
第4のアプローチにおいて、タンパク質産物の発現が、例えば、ウェスタンブロット、放射性免疫沈降、酵素結合免疫アッセイなどの免疫アッセイによって、免疫学的に評価され得る。しかし、発現系の成功の究極的な試験は、生物学的に活性な遺伝子産物の検出を含む。
【0147】
抗体依存性細胞傷害性を含むエフェクター機能の増加を有するABMの生成および使用
好ましい実施形態において、本発明は、マウスB−Ly1抗体の実質的に同じ結合特異性を有し、かつ抗体依存性細胞傷害性を含むエフェクター機能の増加を有するキメラABMの糖型を提供する。抗体のグリコシル化操作は以前に記載されている。例えば、米国特許第6,602,684号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと。
【0148】
いくつかの型の癌の治療のための非結合体化モノクローナル抗体(mAb)の臨床試験が、最近、有望な結果を生じてきている。Dillman、Cancer Biother.& Radiopharm.12:223−25(1997);Deoら、Immunology Today 18:127(1997)。キメラの非結合体化IgG1は、軽度または濾胞性のB細胞非ホジキンリンパ腫のために認可されており(Dillman、Cancer Biother.& Radiopharm.12:223−25(1997))、一方別の非結合体化mAbである、ヒト化IgG1標的化固形胸部腫瘍はまた、フェーズIII臨床試験において有望な結果を示している。Deoら、Immunology Today 18:127(1997)。これらの2つのmAbの抗原は、それらのぞれぞれの腫瘍細胞中で高度に発現され、そして抗体は、インビトロおよびインビボにおいてエフェクター細胞による潜在的な腫瘍破壊を媒介する。対照的に、微細な腫瘍特異性を有する多くの他の非結合mAbは、臨床的に有用であるために十分な効力のエフェクター機能を誘発することができない。Frostら、Cancer 80:317−33(1997);Surfusら、J.Immunother.19:184−91(1996)。これらのより弱いmAbのいくつかについて、補助サイトカイン治療が現在試験されている。サイトカインの付加は、循環しているリンパ球の活性および数を増加させることによって、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を刺激し得る。Frostら、Cancer 80:317−33(1997);Surfusら、J.Immunother.19:184−91(1996)。ADCC、抗体標的化細胞に対する溶解性攻撃は、抗体の定常領域(Fc)への白血球レセプターの結合の際に誘発される。Deoら、Immunology Today 18:127(1997)。
【0149】
非結合体化IgG1sのADCC活性を増加させるための、異なるが補完的なアプローチは、抗体のFc領域を操作することである。タンパク質操作研究は、FcγRがIgG CH2ドメインのより下位のヒンジ領域と相互作用することを示してきた。Lundら、J.Immunol.157:4963−69(1996)。しかし、FcγR結合はまた、CH2領域における保存性Asn297に共有結合されたオリゴサッカリドの存在を必要とする。Lundら、J.Immunol.157:4963−69(1996);WrightおよびMorrison、Trends Biotech.15:26−31(1997)、いずれかオリゴサッカリドおよびポリペプチドの両方が相互作用部位に直接的に寄与すること、またはオリゴサッカリドが、活性なCH2ポリペプチドコンホメーションを維持するために必要とされることを示唆する。それゆえに、オリゴサッカリド構造の修飾は、相互作用の親和性を増加するための手段として探求され得る。
【0150】
IgG分子は、そのFc領域中に2つのN連結オリゴサッカリドを有し、これは各重鎖に1つである。いかなる糖タンパク質とも同様に、抗体は、同じポリペプチドバックボーンを共有するが、グリコシル化部位に結合された異なるオリゴサッカリドを有する糖型の集団として産生される。血清IgGのFc領域中に通常見い出されるオリゴサッカリドは、複合体二アンテナ状型(Wormaldら、Biochemistry 36:130−38(1997))であり、低レベルの末端シアル酸および二分枝N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ならびに変動する程度の末端ガラクトシル化およびコアフコシル化を有する。いくつかの研究は、FcγR結合のために必要とされる最小の炭水化物構造はオリゴサッカリドコア中に存在することを示唆する。Lundら、J.Immunol.157:4963−69(1996)。
【0151】
非結合体化治療用mAbの産生のために産業界および学術研究において使用されるマウスまたはハムスター由来の細胞系は、通常、必要とされるオリゴサッカリド決定基をFc部位に結合する。しかし、これらの細胞系において発現されるIgGは、血清IgGにおいて少量見い出される二分枝GlcNAcを欠いている。Lifelyら、Glycobiology 318:813−22(1995)。対照的に、ラット骨髄腫により産生されるヒト化IgG1(CAMPATH−1H)が、いくつかのその糖型で二分枝GlcNAcを有したことが最近観察された。Lifelyら、Glycobiology 318:813−22(1995)。ラット細胞由来の抗体は、CAMPATH−1H抗体が標準的な細部系において産生されるにつれて、同様の最大インビトロADCC活性に到達したが、有意に低い抗体濃度であった。
【0152】
CAMPATH抗原は、通常、リンパ腫細胞上で高レベルで存在し、このキメラmAbは、二分枝GlcNAcの非存在下で高いADCC活性を有する。Lifelyら、Glycobiology 318:813−22(1995)。N連結グリコシル化経路において、二分枝GlcNAcはGnTIIIによって加えられる。Schachter、Biochem.Cell Biol.64:163−81(1986)。
【0153】
以前の研究は、単一の抗体産生CHO細胞系を使用した。これは、異なるレベルのクローニングしたGnT III遺伝子酵素を、外部から調節される様式で発現するように以前に操作された(Umana,P.ら、Nature Biotechnol.17:176−180(1999))。このアプローチは、GnTIIIの発現と、修飾抗体のADCC活性との間の厳格な相関を最初に確立した。従って、本発明は、GnTIII活性の増加から生じるグリコシル化の変化を有する、マウスB−Ly1抗体の結合特異性を伴う、組換えのキメラ抗体またはそのフラグメントを意図する。GnTIII活性の増加は、二分枝オリゴサッカリドのパーセンテージの増加、ならびにABMのFc領域中のフコース残基のパーセンテージの減少を生じる。この抗体またはそのフラグメントは、Fcレセプター結合親和性の増加およびエフェクター機能の増加を有する。さらに、本発明は、免疫グロブリンのFc領域に等価である領域を含む、抗体フラグメントおよび融合タンパク質に向けられる。
【0154】
本発明の方法に従って産生されるABMの治療的適用
本発明のABMは、インビボで腫瘍細胞を標的化および殺傷するために単独で使用され得る。このABMはまた、ヒト癌腫を治療するために、適切な治療剤とともに使用され得る。例えば、このABMは、化学療法、放射線療法などの標準的または従来的な治療方法と組み合わせて使用され得るか、または癌腫の部位への治療剤の送達のために、治療薬物または毒素、ならびにリンホカインまたは腫瘍阻害性増殖因子に、結合体化または連結され得る。最も重要である本発明のABMの結合体は(1)免疫毒素(ABMおよび細胞傷害性部分の結合体)および(2)標識が標識されたABMを含む免疫複合体を同定するための手段を提供する、標識された(例えば、放射標識、酵素標識、または蛍光標識)ABMである。ABMはまた、天然の補体プロセスを通して溶解を誘導するため、および通常存在する抗体依存性細胞傷害性細胞と相互作用するために使用され得る。
【0155】
免疫毒素の細胞傷害性部分は、細胞傷害性薬物または細菌もしくは植物起源の酵素的に活性な毒素、またはこのような毒素の酵素的に活性なフラグメント(「A鎖」)であってもよい。使用される酵素的に活性な毒素およびそのフラグメントは、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性フラグメント、エクソトキシンA鎖(Psedomonas aeruginosa)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、αサルシン、アレウリテス フォルジ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチンタンパク質、フィトラッカ アメリカーナ(Phytolacca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、およびPAP−S)、モモルジカ チャランチア(momordica charantia)インヒビター、クルシン(curcin)、クロチン、サパオナリア オフィシナリス(sapaonaria officinalis)インヒビター、ゲロニン(gelonin)、マイトジェリン、レスチクトシン、フェノマイシン、およびエノマイシンである。別の実施形態において、ABMは、低分子抗癌薬物に結合体化される。ABMの結合体およびこのような細胞傷害性部分は、種々の二官能性タンパク質カップリング剤を使用して作製される。このような剤の例は、SPDP、IT、ジメチルアジピミデートHClなどのイミドエステルの二官能性誘導体、ジサクシニミジルスベレートなどの活性エステル、グルタルアルデヒドなどのアルデヒド、ビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミンなどのビスアジド化合物、ビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)−エチレンジアミンなどのビス−ジアゾニウム誘導体、トルエン2,6−ジイソシアネートなどのジイソシアネート、および1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼンなどのビス−活性フルオリン化合物である。毒素の溶解性部分が、ABMのFabフラグメントに結合されてもよい。さらなる適切な毒素は、例えば、公開された米国特許出願第2002/0128448(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に証明されるように、当分野において公知である。
【0156】
1つの実施形態において、マウスB−Ly1抗体の実質的に同じ結合特異性を有するキメラの糖付加操作されたABMは、リシンA鎖に結合体化される。最も有利には、リシンA鎖は、脱グリコシル化され、および組換え手段を通して産生される。リシン免疫毒素を作製する有利な方法は、Vitettaら、Science 238,1098(1987)(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0157】
診断目的のためにインビトロでヒト癌細胞を殺傷するために使用される場合、結合体は、典型的には、少なくとも約10nMの濃度で細胞培養培地に加えられる。インビトロ使用のための製剤および投与の様式は決定的ではない。培養または灌流培地と適合可能である水溶性製剤が通常使用される。細胞毒性は、癌の存在または程度を決定するために従来的な技術によって読み取られ得る。
【0158】
上記に議論されたように、癌を治療するための細胞傷害性放射性医薬品は、マウスB−Ly1抗体の実質的に同じ結合特異性を有する、キメラの糖付加操作されたABMに、放射活性アイソトープ(例えば、I、Y、Pr)を結合体化することによって作製されてもよい。用語「細胞傷害性部分」は、本明細書で使用される場合、このようなアイソトープを含むことが意図される。
【0159】
別の実施形態において、リポソームが細胞傷害性薬物で満たされ、そしてこのリポソームが本発明のABMでコートされる。多くのCD20分子は悪性B細胞の表面上に存在するので、この方法は、正確な細胞型への大量の薬物の送達を可能にする。
【0160】
抗体にこのような治療剤を結合体化するための技術は周知である(例えば、Arnonら、「Monoclonal Antibodies for Immunotargeting of Drugs in Cancer Therapy」Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Reisfeldら(編)、243−56頁(Alan R.Liss,Inc.1985);Hellstromら、「Antibodies For Drug Delivery、Controlled Drug Delivery(第2版)、Robinsonら(編)、623−53頁(Marcel Dekker,Inc.1987);Thorpe、「Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review」、Monoclonal Antibodies’84:Biological And Clinical Applications、Pincheraら(編)、475−506頁(1985);およびThorpeら、「The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody−Toxin Conjugates」, Immunol.Rev.,62:119−58(1982)を参照のこと)。
【0161】
本発明のABMのためのなお他の治療的適用には、例えば組換えDNA技術による、プロドラッグを細胞傷害性薬物に転換することが可能である酵素への結合体化または連結、および腫瘍部位においてプロドラッグを細胞傷害性薬剤に転換するために、プロドラッグと組み合わせた抗体−酵素結合体の使用が含まれる(例えば、Senterら、「Anti−Tumor Effects of Antibody−alkaline Phosphatase」,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:4842−46(1988);「Enhancement of the in vitro and in vivo Antitumor Activites of Phosphorylated Mitocycin C and Etoposide Derivatives by Monoclonal Antibody−Alkaline Phosphatase Conjugates」, Cancer Research 49:5789−5792(1989);およびSenter、「Activation of Prodrugs by Antibody−Enzyme Conjugates:A New Approach to Cancer Therapy,「FASEB J.4:188−193(1990)を参照されたい)。
【0162】
本発明のABMのためのさらに別の治療的使用は、癌患者の骨髄から腫瘍細胞を除去するために、補体の存在下で結合体化されていないか、または抗体−薬物もしくは抗体−毒素結合体の一部としてのいずれかでの使用を含む。このアプローチに従って、自系の骨髄が、抗体および患者に戻して注入された骨髄を用いる処置によって、エキソビボでパージされる[例えば、Ramsayら、「Bone Marrow Purging Using Monoclonal Antibodies」,J.Clin.Immunol.,8(2):81−88(1988)を参照されたい]。
【0163】
さらに、本発明は、マウスB−Ly1抗体と実質的に同じ結合の特異性を可能にする抗原結合ドメイン(例えば、マウスB−Ly1抗体のCDRを含むポリペプチド)を含み、そしてさらに毒素ポリペプチドを含む単鎖免疫毒素を含むことが意図される。本発明の単鎖免疫毒素は、インビボでヒト癌腫を治療するために使用されてもよい。
【0164】
同様に、抗腫瘍活性、例えば、リンホカインまたはオンコスタチンを有する第2のタンパク質の少なくとも機能的な活性部分に結合された本発明のABMの抗原結合領域を少なくとも含む融合タンパク質が、インビボでヒト癌腫を治療するために使用され得る。
【0165】
本発明は、CD20を発現する腫瘍細胞を選択的に殺傷するための方法を提供する。この方法は、本発明の免疫結合体(例えば、免疫毒素)を腫瘍細胞と反応させる工程を含む。これらの腫瘍細胞はヒト癌腫からであってもよい。
【0166】
さらに、本発明は、インビボで癌腫(例えば、ヒト癌腫)を治療する方法を提供する。この方法は、本発明の免疫結合体(例えば、免疫毒素)の少なくとも1つを含む組成物の薬学的有効量を被験体に投与する工程を含む。
【0167】
さらなる態様において、本発明は、B細胞枯渇に基づいて、B細胞リンパ腫を含むB細胞増殖性障害並びに病原性自己抗体によって全体的にもしくは部分的に産生される自己免疫疾患を治療するための改善された方法に向けられ、この方法は、その必要があるヒト被験体に本発明のABMの治療有効量を投与する工程を含む。好ましい実施形態において、ABMは、マウスB−Ly1抗体のそれと実質的に同じ結合特異性を有する、糖付加操作された抗CD20抗体である。別の好ましい実施形態において、この抗体はヒト化されている。自己免疫疾患または障害の例には以下が含まれるがこれらに限定されない:急性特発性血小板減少性紫斑病および慢性特発性血小板減少性紫斑病などの免疫媒介血小板減少症、皮膚筋炎、シデナム舞踏病、ループス腎炎、リウマチ熱、多内分泌腺症候群、ヘノッホ−シェーンライン紫斑病、膿痂疹後腎炎、結節性紅斑、高安動脈炎、アジソン病、多形性紅斑、結節性多発性動脈炎、強直性脊椎炎、グッドパスチャー症候群、閉塞性血栓血管炎(thromboangitis ubiterans)、原発性胆汁性肝硬変、橋本甲状腺炎、甲状腺中毒症、慢性活動性肝炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、多発性軟骨炎、尋常性天疱瘡(pamphigus vulgaris)、ヴェグナー肉芽腫症、膜性腎症、筋萎縮性側索硬化症、脊髄癆、多発性筋痛、悪性貧血、急速進行性糸球体腎炎および線維化性肺胞炎、炎症性応答、例えば、以下を含む炎症性皮膚疾患:乾癬および皮膚炎(例えば、アトピー性皮膚炎);全身性強皮症および硬化症;炎症性腸疾患に関連する応答(例えば、クローン病および潰瘍性大腸炎);呼吸窮迫症候群(成人呼吸窮迫症候群;ARDSを含む);皮膚炎;髄膜炎;脳炎;ブドウ膜炎;大腸炎;糸球体腎炎;アレルギー状態、例えば、湿疹および喘息およびT細胞の浸潤を含む他の状態および慢性炎症性応答;アテローム性動脈硬化症;白血球接着不全;関節リウマチ;全身性エリテマトーデス(SLE);真性糖尿病(例えば、1型糖尿病またはインスリン依存性糖尿病);多発性硬化症;レーノー症候群;自己免疫性甲状腺炎;アレルギー性脳脊髄炎;Sjorgen症候群;若年発症糖尿病;ならびに結核、サルコイドーシス、多発性筋炎、肉芽腫症および脈管炎において典型的に見い出される、サイトカインおよびTリンパ球によって媒介される急性および遅発性過敏症と関連する免疫応答;悪性貧血(アジソン病);白血球漏出を含む疾患;中枢神経系(CNS)炎症性障害;多臓器損傷症候群;溶血性貧血(クリオグロブリン血症(cryoglobinemia)またはクームズ陽性貧血を含むがこれらに限定されない);重症筋無力症;抗原−抗体複合体媒介性疾患;抗糸球体基底膜疾患;抗リン脂質症候群;アレルギー性神経炎;グレーブス病;Lambert−Eaton筋無力症候群;水疱性類天疱瘡;天疱瘡;自己免疫多腺性内分泌障害;ライター症候群;スティフマン症候群;ベーチェット病;巨細胞性動脈炎;免疫複合体性腎炎;IgA腎症;IgM多発性神経障害;免疫血小板減少性紫斑病(ITP);または自己免疫血小板減少症など。本発明のこの態様において、本発明のABMは、長時間、血液の正常なB細胞を枯渇させるために使用される。
【0168】
本発明の実施に従って、被験体は、ヒト、ウマ、ブタ、ウシ、マウス、イヌ、ネコ、およびトリの被験体であってもよい。他の温血動物もまた、本発明に含まれる。
【0169】
本発明はさらに、ヒト腫瘍細胞の増殖を阻害するための方法、被験体における腫瘍を治療するための方法、および被験体における増殖型疾患を治療するための方法を提供する。これらの方法は、本発明の組成物の有効量を被験体に投与する工程を含む。
【0170】
それゆえに、本発明は、B細胞リンパ腫などのヒト癌腫を治療するための薬学的組成物、組み合わせ、および方法を含むことが明らかである。例えば、本発明は、本発明の抗体の薬学的有効量および薬学的に受容可能なキャリアを含む、ヒト癌腫の治療における使用のための薬学的組成物を含む。
【0171】
本発明のABM組成物は、静脈内、腹腔内、経口、リンパ内、または腫瘍への直接的投与を含むがこれらに限定されない、従来的な投与の様式を使用して投与され得る。静脈内投与が好ましい。
【0172】
本発明の1つの態様において、本発明のABMを含む治療用製剤は、望ましい程度の純度を有する抗体を、任意の薬学的に受容可能なキャリア、賦形剤または安定剤(Remington’s Pharmaceutical Sciences 第16版、Osol,A.編(1980))と混合することによって、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で保存のために調製される。受容可能なキャリア、賦形剤、または安定剤は、利用される投薬量および濃度においてレシピエントに対して非毒性であり、リン酸、クエン酸、および他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;保存剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド;ヘキサメトニウムクロライド;ベンズアルコニウムクロライド、ベンズエトニウムクロライド;フェノール、ブチルアルコールまたはベンジルアルコール;メチルパラベンまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;およびm−クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリジンなどのアミノ酸;モノサッカリド、ジサッカリド、およびグルコース、マンノース、またはデキストリンを含む他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn−タンパク質錯体);ならびに/あるいはTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)またはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤を含む。
【0173】
例示的な抗CD20 ABM製剤は、WO98/56418(参照により本明細書に明白に組み込まれる)に記載される。この公開は、2〜8℃での2年間の保存の最小有効期間を有する、pH 5.0の40mg/mL リツキシマブ、25mM 酢酸、150mM トレハロース、0.9% ベンジルアルコール、0.02% ポリソルベート20を含む液体複数用量製剤を記載している。目的の別の抗CD20製剤は、注射のための9.0mg/mL 塩化ナトリウム、7.35mg/mL クエン酸ナトリウム二水和物、0.7mg/mL ポリソルベート80、および滅菌水、pH6.5中に10mg/mL リツキシマブを含む。本発明において、RITUXAN(登録商標)は本発明のABMによって置換される。
【0174】
皮下投与のために適合される凍結乾燥製剤はWO97/04801に記載されている。このような凍結乾燥製剤は、高いタンパク質濃度まで適切な希釈剤で再構築され得、本明細書で治療される哺乳動物に皮下的に投与され得る。
【0175】
本明細書の製剤はまた、治療される特定の徴候のために必要とされるような1つより多くの活性化合物、好ましくは、互いに有害な影響を与えない相補的な活性を有するものを含んでもよい。例えば、細胞傷害性薬剤、化学療法剤、サイトカイン、または免疫抑制剤(例えば、シクロスポリンまたはT細胞に結合する抗体、例えば、LFA−1に結合するものなどのT細胞に作用するもの)をさらに提供することが望ましいかもしれない。このような他の薬剤の有効量は、製剤中に存在するアンタゴニストの量、疾患または障害または治療の型、および上記に議論された他の要因に依存する。これらは一般的に同じ投薬量で使用され、本明細書上記で使用されるような投与経路または従来利用された投薬量の約1〜99%を伴う。
【0176】
活性成分はまた、例えば、コアセルベーション技術によって、または界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースもしくはゼラチンマイクロカプセルおよびポリ(メチルメタクリレート(methylmethacylate))マイクロカプセル中に、コロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子およびナノカプセル)中に、またはマクロエマルジョン中にトラップされてもよい。このような技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 第16版、Osol,A.編(1980)に開示されている。
【0177】
持続放出調製物が調製されてもよい。持続放出調製物の適切な例には、アンタゴニストを含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが含まれ、このマトリックスは、成形された物品、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルの形態である。持続放出マトリックスの例には、ポリエステル、ハイドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール)、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸およびγエチル−L−グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン−ビニルアセテート、分解性の乳酸−グリコール酸コポリマー、例えば、LUPRON DEPOT(商標)(乳酸−グリコール酸コポリマーおよびロイプロリドアセテートから構成される注射可能なミクロスフェア)およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が含まれる。
【0178】
インビボ投与のために使用される製剤は無菌でなければならない。これは、滅菌濾過膜を通しての濾過によって容易に達成される。
【0179】
本発明の組成物は、種々の投薬量形態であってもよく、これには、液体溶液または懸濁液、錠剤、丸薬、散剤、坐剤、ポリマー製マイクロカプセルまたはマイクロベシクル、リポソーム、および注射可能なまたは注入可能な溶液が含まれるがこれらに限定されない。好ましい形態は、投与の様式および治療的適用に依存する。
【0180】
本発明の組成物はまた、好ましくは、当分野において公知である、従来的な薬学的に受容可能なキャリアおよびアジュバント、例えば、ヒト血清アルブミン、イオン交換体、アルミナ、レシチン、緩衝物質、例えばリン酸、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、および塩または電解質、例えば、硫酸プロタミンを含む。
【0181】
本発明の医薬組成物のための投与および投薬レジメンの最も有効な様式は、疾患の重篤度および経過、患者の健康および治療に対する応答、ならびに治療する医師の判断に依存する。従って、この組成物の投薬量は、個々の患者に対して力価測定されるべきである。それにも関わらず、本発明の組成物の有効用量は、一般的には約0.01〜約2000mg/kgの範囲である。
【0182】
本明細書に記載される分子は、種々の投薬量形態であってもよく、これには、液体溶液または懸濁液、錠剤、丸薬、散剤、坐剤、ポリマー製マイクロカプセルまたはマイクロベシクル、リポソーム、および注射可能なまたは注入可能な溶液が含まれるがこれらに限定されない。好ましい形態は、投与の様式および治療的適用に依存する。
【0183】
本発明のABMを含む組成物は、良好な医学的実施と一致する様式で、製剤化され、投薬され、および投与される。この状況において考慮のための要因には、治療される特定の疾患または障害、治療される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床的状態、疾患または障害の原因、薬剤の送達の部位、投与の方法、投与のスケジュール、および医学の実務者に公知である他の要因が含まれる。投与されるアンタゴニストの治療有効量は、このような考慮によって支配される。
【0184】
一般的な提案として、用量あたりに非経口的に投与される抗体の治療有効量は、1日あたり約0.1〜20mg/患者の体重kgの範囲内であり、使用されるアンタゴニストの典型的な初期範囲は、約2〜10mg/kgの範囲である。
【0185】
好ましい実施形態において、ABMは抗体、好ましくはヒト化抗体である。このような非結合体化抗体についての適切な投薬量は、例えば、約20mg/m2〜約1000mg/m2の範囲である。1つの実施形態において、抗体の投薬量は、RITUXAN(登録商標)について現在推奨されているものとは異なる。例えば、実質的に抗体の375mg/m2未満の1回以上の用量、例えば、用量が約20mg/m2〜約250mg/m2の範囲内の場合、例えば約50mg/m2〜約200mg/m2を患者に投与してもよい。
【0186】
さらに、1回以上の初期用量の抗体に続いて、1回以上の引き続く用量を投与してもよく、ここで、引き続く用量の抗体のmg/m2用量は、初期用量における抗体のmg/m2用量を超える。例えば、初期用量は約20mg/m2〜約250mg/m2(例えば、約50mg/m2〜約200mg/m2)の範囲内であってもよく、そして引き続く用量が約250mg/m2〜約1000mg/m2の範囲内であってもよい。
【0187】
しかし、上記に注記されるように、これらの示唆されるABMの量は、治療的な裁量に大きく支配される。適切な用量およびスケジューリングを選択する際の鍵となる要因は、上記に示されるように、得られる結果である。例えば、比較的高い用量が、進行中および急性の疾患の治療のために初期に必要とされ得る。最も有効な結果を得るためには、疾患または障害に依存して、アンタゴニストは、疾患もしくは障害の最初の徴候、診断、外見、または発生に可能な限り近接して、または疾患もしくは障害の寛解の間に投与される。
【0188】
本発明のABMは、非経口、皮下、腹腔内、肺内、および鼻内を含む任意の適切な手段によって、および所望される場合、局所的免疫抑制治療、病巣内投与のために投与される。非経口注入には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、または皮下の投与が含まれる。さらに、アンタゴニストは、パルス注入によって、例えば、アンタゴニストの減少用量を伴って適切に投与されてもよい。好ましくは、投薬は注射によって、最も好ましくは静脈内注射または皮下注射によって与えられ、部分的には投与が短期かまたは長期かに依存する。
【0189】
他の化合物、例えば、細胞傷害性薬剤、化学療法剤、免疫抑制剤、および/またはサイトカインを、本明細書のアンタゴニストとともに投与してもよい。組み合わせ投与には、別々の製剤または単一の薬学的製剤を使用する同時投与、およびいずれかの順番での連続的投与が含まれ、好ましくは、両方の(または全ての)活性薬剤が同時にそれらの生物学的活性を発揮する時間の期間が存在する。
【0190】
治癒を達成するために必要とされる本発明の組成物の用量は、スケジュールの最適化を用いてさらに減少され得ることが明らかである。
【0191】
本発明の実施に従うと、薬学的キャリアは脂質キャリアであってもよい。この脂質キャリアはリン脂質であってもよい。さらに、この脂質キャリアは脂肪酸であってもよい。また、この脂質キャリアは界面活性剤であってもよい。本明細書で使用される場合、界面活性剤は、脂質の表面張力を変化させる、一般的にはそれを低下させる任意の物質である。
【0192】
本発明の1つの例において、界面活性剤は非イオン性界面活性剤であってもよい。非イオン性界面活性剤の例には、ポリソルベート80(Tween 80またはポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートとしても知られている)、Brij、およびTriton(例えば、Triton WR−1339およびTriton A−20)が含まれるがこれらに限定されない。
【0193】
代替的には、界面活性剤はイオン性界面活性剤であってもよい。イオン性界面活性剤の例には、アルキルトリメチルアンモニウムブロミドが含まれるがこれに限定されない。
【0194】
さらに、本発明に従って、脂質キャリアはリポソームであってもよい。本願において使用される場合、「リポソーム」は、本発明の任意の物質またはその組み合わせを含む、任意の膜結合ベシクルである。
【0195】
以下の実施例は本発明をより詳細に説明する。以下に続く調製および例示は、当業者が本発明をより明確に理解し、かつ本発明を実施することを可能にするために与えられる。しかし、本発明は、本発明の単なる態様の例証として意図される例示された実施形態によっては範囲が限定されることはなく、そして機能的に等価な方法は本発明の範囲内にある。確かに、本明細書に記載されたものに加えて、本発明の種々の修飾が、前述の記載および付随する図面から、当業者には明らかになる。このような修飾は、添付の特許請求の範囲の範囲内にあることが意図される。
【実施例】
【0196】
[注記:他に特定されない限りは、以下の実施例中の特定のアミノ酸残基の位置の番号付けは、Kabat番号付けシステムに従っている]
【0197】
実施例1
材料および方法
組換え抗体B−Ly1のクローニングおよび発現
B−Ly1発現ハイブリドーマ細胞を、10% FBSおよび4mM L−グルタミンを含むRPMI中で増殖させた。>90%生存度を有する6×106細胞を収集し、全RNAを、Qiagen RNA easy midiキットを使用して単離した。B−Ly1の可変軽鎖および重鎖をコードするcDNAをRT−PCRによって増幅した。RT−PCR反応は、以下の条件:第1鎖cDNA合成のための30分間50℃;15分間95℃の初期変性;30サイクルの1分間94℃、1分間45℃、1.5分間72℃;および10分間72℃の最終伸長工程を使用して実行した。PCR産物の予想サイズは、ゲル電気泳動によって確認した。このPCR産物を適切な大腸菌ベクターにクローニングし、そしてDNA配列決定は、可変軽鎖および重鎖をコードする遺伝子が単離されたことを確認した。
【0198】
キメラB−Ly1発現ベクターの構築のために、合成シグナル配列および適切な制限部位を、さらなるPCR反応によって可変鎖に融合した。可変鎖の正確なDNA配列の最終的な確認後、これらを、対応するヒトIgG1定常領域と合わせた。一旦遺伝子が構築されると、これらを、各鎖について1つである2つの別々のベクターを使用して、MPSVプロモーターの制御下かつ合成ポリA部位の上流にクローニングして、プラスミドpETR1808(重鎖発現ベクター)およびpETR1813(軽鎖発現ベクター)を生じた。各ベクターは、EBV OriP配列を有した。
【0199】
キメラB−Ly1を、HEK293−EBNA細胞をベクターpETR1808およびpETR1813で、リン酸カルシウムトランスフェクションアプローチを使用して同時トランスフェクトすることによって産生した。指数増殖期のHEK293−EBNA細胞を、リン酸カルシウム法によってトランスフェクトした。細胞を、10% FCSを補充したDMEM培養培地を使用して、Tフラスコ中で接着性の単層培養として増殖させ、そしてそれらが50〜80%の間のコンフルエントであったときにトランスフェクトした。T75フラスコのトランスフェクションのために、800万個の細胞を、FCS(最終10% V/V)、250μg/mlネオマイシンを補充した14ml DMEM培養培地中でトランスフェクションの24時間前に播種し、そして細胞を37℃で、5% CO2大気を有するインキュベーター中に一晩配置した。トランスフェクトされる各T75フラスコについて、DNAの溶液、CaCl2および水の溶液を、軽鎖と重鎖の発現ベクター間で均等に分割した47μgの全プラスミドベクターDNA、235μlの1M CaCl2溶液を混合すること、および水を469μlの最終容量まで加えることによって調製した。この溶液に、469μlの50mM HEPES、280mM NaCl、1.5mM Na2HPO4溶液、pH 7.05を加え、すぐに10秒間混合し、そして20秒間室温に放置した。この懸濁液を、2% FCSを補充した12mlのDMEMで希釈し、そして既存の培地の代わりにT75を加えた。細胞を37℃、5% CO2で約17〜20時間インキュベートし、次いで培地を12ml DMEM、10% FCSで置き換えた。非修飾抗体「chB−Ly1」の産生のために、細胞を、1:1の比率の抗体発現ベクターpETR1808およびpETR1813のみでトランスフェクトした。糖付加操作した抗体「chB−Ly1−ge」の産生のために、細胞を4つのプラスミドで、2つは抗体発現のため(pETR1808およびpETR1813)、1つは融合GnTIIIポリペプチド発現のため(pETR1519)、および1つはマンノシダーゼII発現のため(pCLF9)に、それぞれ4:4:1:1の比率で同時トランスフェクトした。トランスフェクション後の5日目に、上清を収集し、5分間1200rpmで遠心分離し、続いて2回目の遠心分離を10分間4000rpmで行い、そして4℃に保った。
【0200】
chB−Ly1およびchB−Ly1−geを、3つの順次的なクロマトグラフィー工程、プロテインAクロマトグラフィー、カチオン交換クロマトグラフィー、およびSuperdex 200カラム(Amersham Pharmacia)上のサイズ排除クロマトグラフィー工程(緩衝液をリン酸緩衝化生理食塩水に交換し、この最後の工程からのモノマー性抗体ピークを収集する)を使用して、培養上清から精製した。抗体濃度を、280nmにおける吸収から、分光光度計を使用して見積もった。
【0201】
オリゴサッカリド分析
オリゴサッカリドを、PNGアーゼF消化によって抗体から酵素的に遊離させた。抗体はPVDF膜に固定化したか、または溶液中にあるかのいずれかであった。
【0202】
遊離したオリゴサッカリドを含む得られる消化溶液を、MALDI/TOF−MS分析のために直接的に調製したか、またはMALDI/TOF−MS分析のためのサンプル調製の前にEndoHグリコシダーゼでさらに消化した。
【0203】
PVDF膜固定化抗体のためのオリゴサッカリド遊離方法
PVDF(Immobilon P,Millipore,Bedford,Massachusetts)膜で作られた96ウェルプレートのウェルを、100μlメタノールで湿潤させ、そして液体を、Multiscreen vacuum manifold(Millipore,Bedford,Massachusetts)に適用された真空を使用してPVDF膜を通して吸引した。このPVDF膜を、300μlの水で3回洗浄した。次いで、ウェルを、50μl RCM緩衝液(8M 尿素、360mM Tris、3.2mM EDTA、pH 8.6)で洗浄した。30〜40μgの間の抗体を、10μl RCM緩衝液を含むウェル中に負荷した。ウェル中の液体を、適用した真空によって膜を通して吸引し、この膜を、引き続いて50μl RCM緩衝液で2回洗浄した。ジスルフィド架橋の還元を、50μlのRCM中0.1M ジチオスレイトールの付加、および37℃で1時間のインキュベーションによって実行した。
【0204】
還元後、真空を適用して、ウェルからジチオスレイトールを除去した。ウェルを300μlの水で3回洗浄し、その後50μlのRCM緩衝液中0.1M ヨード酢酸の付加および室温で暗所にて30分間のインキュベーションによってシステイン残基のカルボキシメチル化を実行した。
【0205】
カルボキシメチル化後、ウェルを真空で吸引し、続いて300μlの水で3回洗浄した。次いで、エンドグリコシダーゼの吸着を妨害するために、100μlのポリビニルピロリドン360の1%水溶液を室温で1時間インキュベートすることによってPVDF膜をブロックした。次いで、ブロッキング試薬を、穏やかな真空によって除去し、続いて300μlの水で3回洗浄した。
【0206】
任意の潜在的な荷電したモノサッカリド残基を除去するために、N連結オリゴサッカリドを、20mM NaHCO3、pH7.0中、25μlの最終容量中で、2.5mUのペプチド−N−グリコシダーゼF(組換えN−グリカナーゼ、GLYKO,Novato,CA)および0.1mUのシアリダーゼ(GLYKO,Novato,CA)の付加によって遊離させた。消化を3時間37℃で実行した。
【0207】
溶液中の抗体のためのオリゴサッカリド遊離法
40〜50μgの間の抗体を、2mM Tris、pH7.0中2.5mUのPNGアーゼF(Glyko,U.S.A.)と、25マイクロリットルの最終容量中で混合し、そして混合物を3時間37℃でインキュベートした。
【0208】
MALDI/TOF−MS中性オリゴサッカリドピークへのハイブリッド二分枝オリゴサッカリド構造の割り当てのための、PNGアーゼ遊離オリゴサッカリドのエンドグリコシダーゼH消化の使用
PNGアーゼF遊離オリゴサッカリドを、エンドグリコシダーゼH(EC 3.2.1.96)で引き続き消化した。EndoH消化のために、15mUのEndoH(Roche,Switzerland)をPNGアーゼF消化物(上記の溶液方法における抗体)に加え、30マイクロリットルの最終容量を得、この混合物を3時間37℃でインキュベートした。EndoHは、N連結オリゴサッカリドのキトビオースコアのN−アセチルグルコサミン残基の間を切断する。この酵素は、オリゴマンノースおよび大部分のハイブリッド型グリカンを消化できるのみであるのに対して、複合体型オリゴサッカリドは加水分解されない。
【0209】
MALDI/TOF−MSのためのサンプル調製
遊離したオリゴサッカリドを含む酵素消化物を、150mMの最終濃度までの酢酸の付加後に、さらに3時間室温でインキュベートし、引き続き、カチオンおよびタンパク質を取り除くために、マイクロバイオスピン(micro−bio−spin)クロマトグラフィーカラム(BioRad,Switzerland)に充填された0.6mlのカチオン交換レジン(AG50W−X8レジン、水素型、100〜200メッシュ、BioRad,Switzerland)に通した。1mlの得られるサンプルを、ステンレス鋼標的プレートに適用し、プレート上で1μlのsDHBマトリックスと混合した。sDHBマトリックスを、1mlのエタノール/10mM 塩化ナトリウム水溶液1:1(v/v)中に2mgの2,5−ジヒドロキシ安息香酸および0.1mgの5−メトキシサリチル酸を溶解することによって調製した。サンプルを風乾し、0.2μlエタノールを適用し、そしてサンプルを最終的に空気中で再結晶させた。
【0210】
MALDI/TOF−MS
質量スペクトルを得るために使用したMALDI/TOF−MS質量スペクトル分析装置はVoyager Elite(Perspective Biosystems)であった。この機器を、20kVの加速および80nsのディレイを用いて直線状配置で操作した。オリゴサッカリド標準を使用する外部較正を、イオンの質量割り当てのために使用した。200個のレーザーショットからのスペクトルを、最終的なスペクトルを得るために加算した。
【0211】
全血B細胞枯渇
健常ドナーからの495μlのヘパリン化血液を、5mlポリスチレンチューブ中でアリコートし、5μlの100倍濃縮抗体サンプル(1〜1000ng/ml最終濃度)またはPBSのみを加え、そしてチューブを37℃でインキュベートした。24時間後、50μlの血液を新鮮なチューブに移し、抗CD3−FITC、抗CD19−PEおよび抗CD45−CyChrome(Becton−Dickinson)で、15分間、室温にて、暗所で染色した。分析の前に、500μlのFACS緩衝液(2% FCSおよび5mM EDTAを含むPBS)をチューブに加えた。血液サンプルのCD3−FITCおよびCD19−PE蛍光を、閾値をCD45−CyChromeに設定することによって、フローサイトメトリーによって分析した。B細胞枯渇を、CD3+T細胞に対するCD19+B細胞の比率をプロットすることによって決定した。
【0212】
Raji細胞に対する抗CD20抗体の結合
180μlのFACS緩衝液(2% FCSおよび5mM EDTAを含むPBS)中の500.000を5mlのポリスチレンチューブに移し、20μlの10倍濃縮抗CD20抗体サンプル(1〜5000ng/ml最終濃度)またはPBSのみを加え、チューブを4℃で30分間インキュベートした。続いて、FACS緩衝液で2回洗浄し、300×gで3分間ペレット化した。上清を吸引して除き、細胞を100μlのFACS緩衝液中に取り、1μlの抗Fc特異的F(ab’)2−FITCフラグメント(Jackson Immuno Research Laboratories,USA)を加え、そしてチューブを4℃で30分間インキュベートした。サンプルをFACS緩衝液で2回洗浄し、フローサイトメトリーによる分析のために、0.5μg/ml PIを含む500μlのFACS緩衝液に取り込んだ。結合を、抗体濃度に対して幾何平均蛍光をプロットすることによって決定した。
【0213】
実施例2
高相同性アクセプターアプローチ
高相同性抗体アクセプターフレームワーク検索を、ヒト生殖系列配列のコレクションに対してB−ly1タンパク質配列をアラインさせること、および最大の配列同一性を示したヒト配列を取り出すことによって実行した。ここで、VBaseデータベースからの配列VH1 10を重鎖フレームワークアクセプター配列として選択し、そしてVK 2 40配列を、軽鎖についてのフレームワークアクセプターであると選択した。これらの2つのアクセプターフレームワークに、マウス重鎖および軽鎖の可変ドメインの3つの相補性決定領域(CDR)を移植した。フレームワーク4領域は生殖系列V遺伝子の可変領域の一部ではないので、この位置のアラインメントは個別に行った。JH4領域を重鎖について選択し、JK4領域を軽鎖について選択した。設計された免疫グロブリンドメインの分子モデリングは、1つのスポットが、CDRの外側のヒトアミノ酸残基の代わりにマウスアミノ酸残基を潜在的に必要とすることを明らかにした。ヒトフレームワークにマウスアミノ酸残基を再導入することは、いわゆる復帰突然変異を生成する。例えば、Kabat27位のヒトアクセプターアミノ酸残基はチロシン残基に復帰突然変異した。復帰突然変異を含むかまたはそれを除外したかのいずれかである、ヒト化抗体改変体を設計した。ヒト化抗体軽鎖はいかなる復帰突然変異も必要としなかった。タンパク質配列を設計した後で、これらのタンパク質をコードするDNA配列を、以下に詳述するように合成した。
【0214】
混合フレームワークアプローチ
ヒトアクセプターフレームワークの決定的である(良好な抗原結合親和性または抗体機能を保持するために決定的である)アミノ酸残基位置で復帰突然変異を導入することを回避するために、全体のフレームワーク領域1(FR1)またはフレームワーク領域1(FR1)および2(FR2)が一緒でのいずれかが、天然のヒト生殖系列配列中のこれらの重要な位置において、ドナー残基または機能的に等価な残基をすでに有するヒト抗体配列によって置き換えられ得るか否かを調べた。この目的のために、マウスBly1配列のVHフレームワーク1および2を、ヒト生殖系列配列に対して個々にアラインした。ここで、最大の配列同一性は重要ではなく、アクセプターフレームワークを選択するために使用しなかったが、その代わりに、いくつかの重要な残基の一致をより重要であると仮定した。これらの決定的な残基には、残基24、71、および94(Kabat番号付け)が含まれ、およびまた、27位、28位、および30位(Kabat番号付け)の残基も含まれ、これは、KabatによるCDR1の定義の外側に存在するが、しばしば、抗原結合に関与している。IMGT配列VH 3 15を適切なものとして選択した。タンパク質配列を設計した後、これらのタンパク質をコードするDNA配列を、以下に詳述するように合成した。このアプローチを使用すると、良好なレベルの抗原結合を保持するために、軽鎖または重鎖のいずれかについても、復帰卒然変異は必要とされなかった。
【0215】
抗体遺伝子の合成
ヒト化抗体V領域のアミノ酸配列を設計した後、DNA配列が生成されなくてはならなかった。個々のフレームワーク領域のDNA配列データは、ヒト生殖系列配列についてのデータベース中で見い出した。CDR領域のDNA配列は、対応するマウスcDNAデータから取った。これらの配列を用いて、全体のDNA配列を仮想的にアセンブルした。このDNA配列データを有するので、サイレント変異を導入することによって仮想配列に診断用制限部位を導入し、制限エンドヌクレアーゼのための認識部位を作製した。物質のDNA鎖を得るために、遺伝子合成を実行した(例えば、Wheelerら、1995)。この方法において、オリゴヌクレオチドは目的の遺伝子から設計され、一連のオリゴヌクレオチドがコード鎖に由来し、1つの他の一連のものは非コード鎖由来である。各オリゴヌクレオチドの3’末端および5’末端(行におけるまさに最初および最後を除く)は、反対の鎖に由来する2つのプライマーに対する相補的配列を常に示す。これらのオリゴヌクレオチドを、任意の熱安定ポリメラーゼのために適切な反応緩衝液中に配置し、およびMg2+、dNTP、およびDNAポリメラーゼを加えるときに、各オリゴヌクレオチドはその3’末端から伸長される。次いで、一方のプライマーの新規に形成された3’末端が反対の鎖の次のプライマーとアニールし、そして鋳型依存的なDNA鎖伸長のために適切な条件下でその配列をさらに伸長する。最終産物を大腸菌中での増殖のために従来的なベクターにクローニングした。
【0216】
抗体産生
ヒト重鎖および軽鎖リーダー配列(分泌のため)を上記の可変領域配列の上流に加え、次いでこれらを、標準的な分子生物学技術を使用して、それぞれ、ヒトIgG1κ定常重鎖および軽鎖配列の上流に結合した。得られる完全な抗体重鎖および軽鎖DNA配列を、MPSVプロモーターの制御下で、かつ合成ポリA部位の上流で、哺乳動物発現ベクター(1つが軽鎖用、および1つが重鎖用)にサブクローニングした。各ベクターは、上記の実施例1に記載されるように、EBV OriP配列を有していた。上記の実施例1に記載されるように、すなわち、HEK293−EBNAを哺乳動物抗体重鎖および軽鎖発現ベクターとトランスフェクトすること、トランスフェクションの5〜7日後、順化培養培地を収集すること、ならびに純粋なモノマー性IgG1抗体を単離するためにプロテインAアフィニティークロマトグラフィー、続いてカチオン交換クロマトグラフィーおよび最終的なサイズ排除クロマトグラフィーの工程によって分泌抗体を精製することによって、抗体を産生した。抗体を25mM リン酸カリウム、125mM 塩化ナトリウム、100mM グリシン溶液、pH 6.7中で製剤化した。上記の実施例1においてキメラ抗体について記載されているように、GnT−IIIグリコシルトランスフェラーゼ発現ベクターとともに、またはGnT−III発現ベクターおよびゴルジマンノシダーゼII発現ベクターとともに、抗体発現ベクターの同時トランスフェクションによって、ヒト化抗体改変体の糖付加操作改変体を産生した。糖付加操作抗体を、非糖付加操作抗体について上記に記載されたように精製および製剤化した。抗体のFc領域に結合されたオリゴサッカリドを、以下に記載されるようにMALDI/TOF−MSによって分析した。
【0217】
オリゴサッカリド分析
溶液中の抗体に対するオリゴサッカリド遊離方法
40〜50μgの間の抗体を、2mM Tris、pH7.0中の2.5mU PNGアーゼF(Glyko,U.S.A.)と、25マイクロリットルの最終容量で混合し、そしてこの混合物を3時間37℃でインキュベートした。
【0218】
MALDI/TOF−MSのサンプル調製
遊離したオリゴサッカリドを含む酵素消化物を、150mMの最終濃度までの酢酸の付加後に、さらに3時間室温でインキュベートし、引き続き、カチオンおよびタンパク質を取り除くために、マイクロバイオスピン(micro−bio−spin)クロマトグラフィーカラム(BioRad,Switzerland)に充填された0.6mlのカチオン交換レジン(AG50W−X8レジン、水素型、100〜200メッシュ、BioRad,Switzerland)に通した。1mlの得られるサンプルを、ステンレス鋼標的プレートに適用し、プレート上で1μlのsDHBマトリックスと混合した。sDHBマトリックスを、1mlのエタノール/10mM 塩化ナトリウム水溶液1:1(v/v)中に2mgの2,5−ジヒドロキシ安息香酸および0.1mgの5−メトキシサリチル酸を溶解することによって調製した。サンプルを風乾し、0.2μlエタノールを適用し、そしてサンプルを最終的に空気中で再結晶させた。
【0219】
MALDI/TOF−MS
質量スペクトルを得るために使用したMALDI/TOF−MS質量スペクトル分析装置はVoyager Elite(Perspective Biosystems)であった。この機器を、20kVの加速および80nsのディレイを用いて直線状配置で操作した。オリゴサッカリド標準を使用する外部較正を、イオンの質量割り当てのために使用した。200個のレーザーショットからのスペクトルを、最終的なスペクトルを得るために加算した。
【0220】
抗原結合アッセイ
上記の実施例1においてキメラB−ly1抗体について記載されるようなフローサイトメトリーベースのアッセイを使用して、精製したモノマー性ヒト化抗体改変体を、Raji B細胞リンパ腫標的細胞上でのヒトCD20への結合について試験した。
【0221】
NK細胞およびFcγRIIIA発現CHO細胞株へのモノマー性IgG1糖改変体の結合
CD16−およびCD56陽性細胞(MACS system,Miltenyi Biotec GmbH,Bergisch Gladbach/Germany)についてネガティブ選択富化を適用して、ヒトNK細胞を、新鮮に単離された末梢血単核細胞(PBMC)から単離した。CD56発現によって決定された純度は、88〜95%の間であった。新鮮に単離されたNK細胞を、カルシウムイオンおよびマグネシウムイオンを含まないPBS中で(3×105細胞/ml)、20分間37℃にてインキュベートして、NK細胞結合IgGを除去した。細胞を、106細胞/mlにて、PBS、0.1% BSA中の異なる濃度の抗CD20抗体(0、0.1、0.3、1、3、10μg/ml)でインキュベートした。数回の洗浄後、抗体結合を、1:200 FITC結合体化F(ab’)ヤギ抗ヒト、F(ab’)2特異的IgG(Jackson ImmunoResearch,West Grove,PA/USA)および抗ヒトCD56−PE(BD Biosciences,Allschwil/Switzerland)とともにインキュベートすることによって検出した。抗FcγRIIIA 3G8F(ab’)2フラグメント(Ancell,Bayport,MN/USA)を、抗体糖改変体(3μg/ml)の結合と競合させるために10μg/mlの濃度で加えた。結合抗体改変体を参照する蛍光強度を、CD56陽性細胞について、FACSCalibur(BD Biosciences,Allschwil/Switzerland)上で決定した。CHO細胞を、FcγRIIIa−Val158α−鎖およびγ−鎖をコードする発現ベクターを用いるエレクトロポレーション(280V、950μf、0.4cm)によってトランスフェクトした。トランスフェクト体を、6μg/mlピューロマイシンの添加によって選択し、安定なクローンを、FACSによって、106細胞について10μl FITC結合体化抗FcγRIII 3G8モノクローナル抗体(BD Biosciences,Allschwil/Switzerland)を使用して分析した。FCγRIIIA−Val158−発現CHO細胞へのIgG1の結合を、上記に記載されるNK細胞結合と類似して実行した。
【0222】
ADCCアッセイ
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)をエフェクター細胞として使用し、ならびにHistopaque−1077(Sigma Diagnostics Inc.,St.Louis,MO63178 USA)を使用して、および本質的に製造業者の指示書に従って調製した。手短に述べると、静脈血をボランティアからヘパリン化シリンジを用いて採取した。血液をPBS(Ca++またはMg++を含まない)で1:0.75〜1.3に希釈し、Histopaque−1077に重層した。グラジエントを、壊すことなく400×gで30分間室温(RT)で遠心分離した。PBMCを含む界面を収集し、PBSで洗浄し(2つのグラジエントからの細胞あたり50ml)、そして室温にて10分間の300×gの遠心分離によって収集した。PBSを用いるペレットの再懸濁後、PBMCを計数し、RTで10分間、200×gで遠心分離によって2回目の洗浄を行った。次いで、細胞を、引き続く手順のために適切な培地中に再懸濁した。
【0223】
ADCCアッセイのために使用されるエフェクター対標的の比率は、PBMC細胞およびNK細胞について、それぞれ、25:1および10:1であった。丸底96ウェルプレートのウェルあたり50μlを加えるために、エフェクター細胞を、適切な濃度でAIM−V培地中で調製した。標的細胞は、10% FCSを含むDMEM中で増殖させたヒトBリンパ腫細胞(例えば、Raji細胞)であった。標的細胞をPBS中で洗浄し、計数し、そしてマイクロウェルあたり100μl中に30’000細胞を加えるために、mlあたり30万個でAIM−V中に再懸濁した。抗体をAIM−V中で希釈し、あらかじめプレートした標的細胞に50μlで加え、そして10分間RTで標的に結合させた。次いで、エフェクター細胞を加え、このプレートを、4時間、37℃で、5% CO2を含む加湿(humified)大気中でインキュベートした。標的細胞の殺傷を、細胞傷害性検出キット(Roche Diagnostics,Rotkreuz,Switzerland)を使用して、損傷した細胞からの乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)放出の測定によって評価した。4時間のインキュベーション後、プレートを800×gで遠心分離した。各ウェルからの100μl上清を新たな透明な平底96ウェルプレートに移した。キットからの100μlの着色基質緩衝液をウェルあたりに加えた。着色反応のVmax値を、ELISAリーダーで、少なくとも10分間、SOFTmaxPROソフトウェア(Molecular Devices,Sunnyvale,CA94089,USA)を使用して決定した。自発的LDH放出を、標的およびエフェクター細胞のみを含むが抗体を含まないウェルから測定した。最大放出は、標的細胞および1% Triton X−100のみを含むウェルから決定した。特異的抗体媒介性殺傷のパーセンテージを以下のように計算した:((x−SR)/(MR−SR)*100、ここでxは特異的抗体濃度におけるVmaxの平均であり、SRは自発的放出のVmaxの平均であり、そしてMRは最大放出のVmaxの平均である。
【0224】
補体依存性細胞傷害性アッセイ
標的細胞を計数し、PBSで洗浄し、AIM−V(Invitrogen)中に100万細胞/mlで再懸濁した。50μl細胞を、平底96ウェルプレート中のウェルあたりにプレートした。抗体希釈物をAIM−V中で調製し、50μlで細胞に加えた。抗体を、10分間室温で細胞に結合させた。ヒト血清補体(Quidel)を新鮮に融解し、AIM−Vで3倍希釈し、そして50μlでウェルに加えた。ウサギ補体(Cedarlane Laboratories)を、製造業者によって記載されるように調製し、AIM−Vで3倍希釈し、そして50μlでウェルに加えた。コントロールとして、補体供給源を30分間56℃に加熱し、その後アッセイへの添加を行った。
アッセイプレートを2時間37℃でインキュベートした。細胞の殺傷を、LDH放出を測定することによって決定した。手短に述べると、プレートを、300×gで3分間遠心分離した。ウェルあたり50μlの上清を新たな96ウェルプレートに移し、そして細胞傷害性キット(Roche)からの50μlのアッセイ試薬を加えた。ELISAリーダーを用いる反応速度論的測定は、上清中のLDH濃度に対応するVmaxを決定した。最大放出を、1% Triton X−100の存在下で細胞をインキュベートすることによって決定した。
【0225】
全血B細胞枯渇アッセイ
抗CD20抗体による全血中での正常B細胞枯渇を、上記の実施例1に記載されるように実行した。
【0226】
アポトーシスアッセイ
抗体のアポトーシス効力を、10μg/ml(抗原結合に関して飽和状態)である抗体を標的細胞(5×105細胞/mlの標的細胞濃度)とともに一晩(16〜24時間)インキュベートすることによってアッセイした。サンプルをAnnV−FITCで染色し、FACSによって分析した。アッセイを3連で行った。
【0227】
検出を、アネキシンVおよびホスファチジルセリンのようなアポトーシスマーカーの出現を追跡することによって、フローサイトメトリーによって実行する。ネガティブコントロール(アポトーシスの誘導なし)はいかなる抗体も含まず、リン酸緩衝化生理食塩水のみを含む。ポジティブコントロール(最大アポトーシス)は、5マイクロリットルの強力なアポトーシスインデューサー、カンプトテシン(CPT)を含む。
【0228】
結果および考察
キメラB−ly1軽鎖(上記の実施例1に記載されるようなmVL)で、またはヒト化B−ly1軽鎖(KV1)でのいずれかで複合体化された、抗体改変体B−HH1、B−HH2、B−HH3、および親のキメラ抗体chB−ly1(上記の実施例1に記載されている)のヒトCD20抗原への結合の比較は、全ての抗体が同様のEC50値を有するが、B−HH1構築物は改変体B−HH2およびB−HH3よりも低い強度/化学量論結合することを示す(図11)。B−HH1は、その部分的なヒトCDR1およびCDR2領域(Kabat定義)、ならびに28位(Kabat番号付け)におけるAla/Thr多型によって、B−HH2およびB−HH3から区別され得る。これは、28位、完全CDR1、および/または完全CDR2のいずれかが、抗体/抗原相互作用のために重要であることを示す。
【0229】
B−HLI、B−HHI、およびキメラchB−ly1親抗体の比較は、B−HL1構築物中でのいかなる結合活性もの非存在、およびB−ly1と比較したB−HH1の結合強度/化学量論が約半分であることを示した(図12)。B−HL1ならびにB−HH1の両方を、ヒトVH1クラスに由来するアクセプターネットワークに基づいて設計する。他の違いの間で、B−HL1構築物の71位(Kabat番号付け;Kabat71位は配列番号48の72位に相当する)は顕著は違いであり、抗原結合のためのその推定の重要性を示す。
【0230】
図9〜13の抗原結合データを比較したとき、改変体BHH2−KV1、BHL8−KV1、およびBHL11−KV1は、試験した異なるヒト化抗体の間で、ヒト細胞の表面上のヒトCD20への最高の結合親和性を示す。一方では、B−HH2との間の違い、および他方ではB−HL8およびB−HL11との間の違いは、FR1およびFR2領域においてのみ局在し、3つ全てのCDRは同一である(例えば、配列番号32、56、および60を比較のこと、これらはKabatに従って番号付けされていないが、これらのKabat番号付けは当業者によって容易に決定され得る)。B−HL8およびB−HL11は、ヒトVH3クラスに由来するFR1およびFR2配列を有するのに対して、完全なB−HH2フレームワークはヒトVH1由来である。B−HL11はB−HL8の誘導体であり、単一の変異Gln1Gluを有し(1位はKabat番号付けと配列表において使用される従来的な番号付けの両方で同じである)、GlnはB−HH2構築物におけるアミノ酸残基である。これは、Glu1Gln交換が結合親和性も強度も変化させないことを意味する。B−HH2とB−HL8の間の他の違いは、14個のフレームワーク残基であり、これらの1つ以上がこの抗体の抗原結合挙動に影響を与える。
【0231】
B−HL4構築物は、B−HH2のFR1をヒト生殖系列配列VH1 45のそれと置き換えることによってB−HH2抗体から誘導される。この構築物は、FR1中の3つのみの位置において異なるアミノ酸を有するにも関わらず、非常に減少した結合能力を示す。これらの残基は、2位、14位、および30位(Kabat番号付け)に位置する。当然、30位は、これがCDR1のChothia定義の部分であるので、影響のある位置であり得る。図9〜13からの全ての結合曲線の全体的な分析は、以下のヒト化B−ly1重鎖残基(Kabat番号付け)がCD20への結合のために重要であることを示す:N35(Kabat CDRの末端)、完全Kabat CDR1、完全Kabat CDR2および完全Kabat CD3、残基A71およびR94(この場合R94はスレオニンによって置き換えられることができない)およびY27。A28およびS30もまた、より低い程度で寄与する。さらに、Kabat CDR3および全ての正準の残基は抗原結合のために重要である。復帰突然変異は、完全Kabat CDR1、CDR2およびCDR3を移植したヒト化軽鎖に導入されなかった。アポトーシスの誘導において(図14、15および21)、最も強力な改変体は、ヒト化B−ly1改変体BHH2−KV1であった(もともとのchB−ly1よりもさらにより強力であり、リツキシマブと同一の配列を有する抗体、C2B8よりも大いに強力である)。アポトーシスの増加を回復し得る他のヒト化改変体(BHL8の誘導体)は:B−HL12〜B−HL17(表を参照されたい)およびBHH8(混合フレームワーク)およびBHH9(1つの復帰突然変異、S30Tを有する「混合フレームワーク」)である。9位および48位(Kabat番号付け)は抗原を接触し得る。改変体BHH4〜BHH7は、さらなる非ヒト配列を導入しない、他のヒト化B−ly1改変体である。
【0232】
ヒト化B−ly1抗体の重要な特性は、これが、Cragg,M.S.およびGlennie,M.J.,Blood 103(7):2738−2743(2004年4月)において定義されたII型抗CD20抗体であることである。それゆえに、これは、CD20への結合の際に、Polyak,M.J.およびDeans,J.P.,Blood 99(9):3256−3262(2002)においてこの目的のために記載されたアッセイを使用して、CD20+ヒト細胞の表面からのCD20の非イオン性界面活性剤抽出に対するいかなる有意な耐性も誘導しなかった。これは、確かに、C2B8抗体(リツキシマブと同一である配列を有する別の抗CD20抗体、Reffへの米国特許公開第2003 0003097号を参照のこと)よりも、CD20の非イオン性界面活性剤抽出に対して有意により低い耐性を誘導した。II型抗CD20抗体から予測される通り、ヒト化B−ly1はいかなる補体媒介溶解活性を有さず、そして抗CD20抗体C2B8(リツキシマブと同一の配列を有するキメラIgG1)よりも確かに大きな補体媒介溶解活性を有さなかった。ヒト化B−ly1の別の重要な特性は、これがホモタイプ凝集アッセイにおいて非常に強力であったことであった。このアッセイにおいて、CD20陽性ヒト細胞、Daudi細胞を、(Deansの参考文献)において詳細に記載されているように、哺乳動物細胞インキュベーター中で、24時間まで、37℃において5%Cお2雰囲気中で、細胞培養培地中でインキュベートし、mlあたり1マイクログラムの濃度、および並行してmlあたり5マイクログラムの濃度の抗体を用いた。比較として、細胞の並行インキュベーションを、同一の条件下で、しかし抗CD20抗体C2B8を使用して行った。8時間および24時間のインキュベーションを含む異なる時点において、細胞を、顕微鏡を使用して視覚的に検査した。ヒト化B−ly1抗体が強力なホモタイプ凝集に導かれ、凝集はC2B8コントロール抗体の富化によって誘導されるものよりも有意に大きかったことが見い出された。さらに、および抗CD20II型である抗体と一致して、これは、CD20陽性ヒト細胞がヒト化B−ly1抗体とともにインキュベートされたときに、同一の条件下で、リツキシマブと同一の配列を有するC2B8キメラIgG1抗体を使用するコントロールと比較して、より高いレベルのアポトーシスを誘導した。
【0233】
ヒト化抗体の糖付加操作改変体を、抗体遺伝子とともに、GnTIIIグリコシルトランスフェラーゼの同時発現によって哺乳動物細胞中で産生した。これは、WO 2004/065540において記載されているように、二分枝でフコシル化されていないオリゴサッカリドを含む、抗体のFc領域に結合されているフコシル化されていないオリゴサッカリドの画分の増加をもたらした(図17〜19)。糖付加操作された抗体は、糖付加操作されていない抗体と比較して、およびC2B8抗体と比較して、有意に高いレベルの、ヒトFcγRIIIレセプターへの結合(図20)および同様にADCC活性(図16)を有した。ヒト化B−ly1抗体はまた、全血アッセイにおいてヒトB細胞枯渇を誘導する際に、コントロールC2B8抗体よりもより強力であった(図16)。これは、糖付加操作されていないB−ly1抗体について、およびその糖付加操作バージョンについての両方で真実であった。この糖付加操作抗体は、全血アッセイにおいてB細胞を枯渇させる際に、C2B8コントロール抗CD20抗体よりも約1000倍強力であった。この比較は、B−ly1抗体の非糖付加操作型について、および糖付加操作ヒト型についての両方で重要である。なぜなら、ADCC、および補体媒介溶解、およびアポトーシスの誘導などのFcレセプター依存性活性を合わせたアッセイにおいて、両方の型のB−ly1はC2H8よりも有意により強力であるが、両方の型のB−ly1は、劇的により低い補体媒介溶解活性を有するからである。ADCC、Fcレセプター依存性細胞殺傷活性およびアポトーシス誘導は、ヒト化B−ly1抗体改変体のこの優れた活性において存在した。さらに、アポトーシスアッセイにおいて、このII型抗CD20抗体の糖付加操作型および非糖付加操作型の両方が強力であり、Fcγレセプターへの結合親和性の増加を有するFc操作改変体は、非Fc操作改変体よりもアポトーシス誘導がさらにより強力であり、および全ての改変体が、コントロール抗体C2B8よりも有意により強力であった。II型抗CD20抗体によって媒介されるホモタイプ凝集の増強およびアポトーシスの誘導についての正確なメカニズムは未知であり、CD20−陽性細胞の表面上の他の分子、例えば、Fcγレセプターへの同時に起こる結合は、この重要な特性に影響を与え得る。それゆえに、FcγRIIIを含むFcγレセプターへの結合親和性の増加のためにそれらのFc領域中で操作され、かつ付随するADCC活性の増加を有するII型の抗CD20抗体が、Fc操作されていないものよりもさらに高い、強力なアポトーシス、およびホモタイプ凝集をなお誘導することが可能であったことを実証することは重要であった。アポトーシス誘導は、インビボとして重要である。なぜなら、標的CD20−陽性細胞が見い出され得る身体中の位置が存在するからである。しかし、FcγRIII陽性細胞への接近が血液中よりも困難であり、このような位置は、例えば、リンパ節である。これらの位置において、抗CD20抗体それ自体によるアポトーシスの誘導は、非ホジキンリンパ腫およびB細胞慢性リンパ性白血病などの血液学的な悪性腫瘍の治療のため、ならびにB細胞枯渇アプローチを介する、関節リウマチおよび狼瘡などの自己免疫疾患の治療のための両方で、ヒトにおける抗CD20抗体治療の良好な効力のために決定的であり得る。FcγRIIIへの結合親和性の増加、およびヒト化されたFc操作されたII型抗CD20抗体のより高いADCCもまた、このような治療のための非常に重要な属性であり得る。最後に、ヒト化改変体およびFc操作された改変体を含む、このII型抗CD20抗体の、減少されたかまたは無視できる補体媒介溶解活性もまた重要であり得る。抗CD20抗体による、より高い補体活性化は、増加した、望ましくない副作用と相関してきた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離されたポリヌクレオチドであって、
a.配列番号5、配列番号6および配列番号7からなる群より選択される配列;ならびに
b.配列番号21、配列番号22および配列番号23からなる群より選択される配列;ならびに
c.配列番号24
を含む、ポリヌクレオチド。
【請求項2】
配列番号8、配列番号9および配列番号10を含む、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項3】
融合ポリペプチドをコードする、請求項1または請求項2に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項4】
融合ポリペプチドをコードする、配列番号3に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含む単離されたポリヌクレオチド。
【請求項5】
融合ポリペプチドをコードする、配列番号4に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含む単離されたポリヌクレオチド。
【請求項6】
配列番号11または配列番号12に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含む、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項7】
配列番号11または配列番号12に対して少なくとも85%の同一性を有する配列を含む、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項8】
配列番号11または配列番号12に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を含む、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項9】
単離されたポリヌクレオチドであって、
a.マウスB−Ly1抗体またはその改変体のVH領域を有するポリペプチドをコードする配列;および
b.マウス以外の種由来の、抗体Fc領域またはそのフラグメントの配列を有するポリペプチドをコードする配列
を含む、ポリヌクレオチド。
【請求項10】
単離されたポリヌクレオチドであって、
a.マウスB−Ly1抗体またはその改変体のVL領域を有するポリペプチドをコードする配列;および
b.マウス以外の種由来の、抗体Fc領域またはそのフラグメントの配列を有するポリペプチドをコードする配列
を含む、ポリヌクレオチド。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の単離されたポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項12】
ポリシストロン性である、請求項11に記載のベクター。
【請求項13】
請求項12に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の単離されたポリヌクレオチドを含む宿主細胞。
【請求項15】
マウスB−Ly1抗体由来の配列および異種ポリペプチド由来の配列を含むポリペプチド。
【請求項16】
請求項15に記載のポリペプチドを含む抗原結合分子。
【請求項17】
ヒトCD20に結合する、請求項16に記載の抗原結合分子。
【請求項18】
抗体である、請求項17に記載の抗原結合分子。
【請求項19】
キメラ抗体である、請求項18に記載の抗原結合分子。
【請求項20】
ヒト化抗体である、請求項19に記載の抗原結合分子。
【請求項21】
配列番号1またはその改変体の配列を含むキメラポリペプチド。
【請求項22】
配列番号2またはその改変体の配列を含むキメラポリペプチド。
【請求項1】
単離されたポリヌクレオチドであって、
a.配列番号5、配列番号6および配列番号7からなる群より選択される配列;ならびに
b.配列番号21、配列番号22および配列番号23からなる群より選択される配列;ならびに
c.配列番号24
を含む、ポリヌクレオチド。
【請求項2】
配列番号8、配列番号9および配列番号10を含む、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項3】
融合ポリペプチドをコードする、請求項1または請求項2に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項4】
融合ポリペプチドをコードする、配列番号3に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含む単離されたポリヌクレオチド。
【請求項5】
融合ポリペプチドをコードする、配列番号4に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含む単離されたポリヌクレオチド。
【請求項6】
配列番号11または配列番号12に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含む、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項7】
配列番号11または配列番号12に対して少なくとも85%の同一性を有する配列を含む、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項8】
配列番号11または配列番号12に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を含む、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項9】
単離されたポリヌクレオチドであって、
a.マウスB−Ly1抗体またはその改変体のVH領域を有するポリペプチドをコードする配列;および
b.マウス以外の種由来の、抗体Fc領域またはそのフラグメントの配列を有するポリペプチドをコードする配列
を含む、ポリヌクレオチド。
【請求項10】
単離されたポリヌクレオチドであって、
a.マウスB−Ly1抗体またはその改変体のVL領域を有するポリペプチドをコードする配列;および
b.マウス以外の種由来の、抗体Fc領域またはそのフラグメントの配列を有するポリペプチドをコードする配列
を含む、ポリヌクレオチド。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の単離されたポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項12】
ポリシストロン性である、請求項11に記載のベクター。
【請求項13】
請求項12に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の単離されたポリヌクレオチドを含む宿主細胞。
【請求項15】
マウスB−Ly1抗体由来の配列および異種ポリペプチド由来の配列を含むポリペプチド。
【請求項16】
請求項15に記載のポリペプチドを含む抗原結合分子。
【請求項17】
ヒトCD20に結合する、請求項16に記載の抗原結合分子。
【請求項18】
抗体である、請求項17に記載の抗原結合分子。
【請求項19】
キメラ抗体である、請求項18に記載の抗原結合分子。
【請求項20】
ヒト化抗体である、請求項19に記載の抗原結合分子。
【請求項21】
配列番号1またはその改変体の配列を含むキメラポリペプチド。
【請求項22】
配列番号2またはその改変体の配列を含むキメラポリペプチド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2010−81940(P2010−81940A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−268995(P2009−268995)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【分割の表示】特願2006−538995(P2006−538995)の分割
【原出願日】平成16年11月5日(2004.11.5)
【出願人】(506153815)グリクアート バイオテクノロジー アクチェンゲゼルシャフト (25)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【分割の表示】特願2006−538995(P2006−538995)の分割
【原出願日】平成16年11月5日(2004.11.5)
【出願人】(506153815)グリクアート バイオテクノロジー アクチェンゲゼルシャフト (25)
【Fターム(参考)】
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