説明

FCC触媒の製造方法

本発明は、改善された耐磨減性を持つ流動接触分解触媒を製造するための方法に関する。この製造によれば、ゼオライト、クレイ、およびxが少なくとも1であり、yが2よりも大きく、4よりも小さい、式[Al(OH)Cl6−yのポリ塩化アルミニウムを含む水性スラリーがスプレー乾燥され、引き続き焼成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼオライト、クレイ、およびポリ塩化アルミニウムを含む水性スラリーをスプレー乾燥することにより、流動接触分解(FCC)触媒を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ塩化アルミニウムは、ヒドロキシ塩化アルミニウム、オキシ塩化アルミニウムまたはクロロ水酸化アルミニウムとも呼ばれるが、通常、xが少なくとも1であり、yが約1から約5の範囲にあることができる、式[Al(OH)Cl6−yを有する。y=5である化合物は、普通、アルミニウムクロロヒドロールと呼ばれる。
【0003】
ポリ塩化アルミニウムは、FCC触媒の製造において以前には使用されてきた。例えば、(特許文献1)は、Y−タイプゼオライト、アルミナ含有結合剤、シリカ源、およびxが1から6の範囲にあり、yが4から5の範囲にある、式[Al(OH)Cl6−yのヒドロキシ塩化アルミニウム添加物を含有する水性スラリーをスプレー乾燥することにより、FCC触媒を製造するための方法を開示している。このヒドロキシ塩化アルミニウムのOH/Al比は2から2.5の範囲にある。Alとして計算し、スラリーの固体含量基準で0.5から2.5重量%の量でこのヒドロキシ塩化アルミニウム添加物がスラリーに添加された。
【0004】
(特許文献2)は、アルカリ金属含有ゼオライト、クレイ、および2から2.67のOH/Al比、したがって上述の式中で4から5.14の範囲のy値を持つアルミニウムクロロヒドロールの水性混合物のスプレー乾燥することを伴う、FCC触媒粒子を製造するための方法を開示している。
生成する粒子は引き続き焼成され、イオン交換される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4,443,553号
【特許文献2】GB2109696
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
流動床中で使用するためには、高耐磨減性の触媒粒子が望まれる。したがって、改善された耐磨減性のFCC触媒に対する必要性が継続している。
【0007】
驚くべきことには、y値、したがってOH/Al比が特定の範囲にある、ポリ塩化アルミニウム[Al(OH)Cl6−yを使用することにより、FCC触媒の耐磨減性を増加させることができるということが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0008】
それゆえ、本発明は、ゼオライト、クレイ、およびxが少なくとも1であり、yが2よりも大きく、4よりも小さい、式[Al(OH)Cl6−yのポリ塩化アルミニウムを含む水性スラリーがスプレー乾燥され、引き続き焼成される、流動接触分解触媒を製造するための方法に関する。言い換えれば、ポリ塩化アルミニウム中のOH/Al比は1よりも大きく、2よりも小さい。
【0009】
好ましい態様においては、y値は約2.2から約3.6の範囲にある。更に好ましい態様においては、y値は約2.4から約3.0の範囲にある。
【0010】
ポリ塩化アルミニウムを製造する慣用の方法は、アルミニウム金属を塩化水素により攻撃することである。他の方法はGB1,376,885とDE2907671に開示されている。最初の特許は、水酸化アルミニウム粒子(ジブサイト、ベーマイト、バイエライト)をHClにより攻撃し、続いて電気分解する方法を開示している。電気分解時に使用される電流は、生成するポリ塩化アルミニウムのCl/A1比、したがってOH/Al比を決定する。DE2907671は、8から13重量%のアルミニウム含量および0.48から0.75のAl/Cl比を持つ塩化アルミニウム溶液の40−60℃溶液を20℃の温度まで冷却することにより、0:9のAl/Cl比(OH/Al=1.9)のポリ塩化アルミニウムを製造する。
【0011】
本発明による方法において使用される水性スラリーは、ゼオライト、クレイ、およびポリ塩化アルミニウムを含む。
【0012】
このゼオライトは、好ましくはフォージャサイトゼオライト(例えばゼオライトXおよびY)、ZSM−5、リン交換ZSM−5、ゼオライトベータ、MCM−22、MCM−36、ITQ−ゼオライト、SAPO、ALPO、およびこれらの混合物の群から選択される。更に好ましいのは、ゼオライトY、超安定ゼオライトY(USY)、希土類交換(超安定)ゼオライトY(RE−YおよびRE−USY)、およびこれらY−タイプゼオライトとZSM−5との混合物などのY−タイプゼオライトである。
【0013】
好適なクレイは、カオリン、ベントナイト、イングリッシュクレイ、およびメタ−カオリンなどの熱処理もしくは化学処理クレイを含む。このクレイは、好ましくは通常約0.1重量%NaO以下の低ナトリウム含量を有する。
【0014】
加えて、アルミナ(例えば、(プソイド)ベーマイト、ジブサイト、フラッシュ焼成ジブサイトなどのジブサイトの熱処理された形)、シリカ(例えばシリカゾル、ケイ酸ナトリウム、ナトリウムを含まないシリカ、(ポリ)ケイ酸)、アニオン性クレイ(例えばヒドロタルサイト)、サポナイト、モンモリロナイト、高結晶性アルミナ、チタン酸塩(例えばチタン酸バリウムまたはチタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、混合金属酸化物、層状ヒドロキシ塩、更なるゼオライト、マグネシウム酸化物、酸、塩基、およびTi、Zr、V、Nb、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Pt、Cu、Zn、La、およびCeを含有する化合物などの種々の金属化合物などの他の化合物をこのスラリーに添加することができる。
【0015】
特に好ましい更なる化合物はアルミナである。
【0016】
このスラリーは、好ましくはAlとして計算し、スラリーの全固体含量基準で約5から約30重量%、更に好ましくは約7から約20重量%、最も好ましくは約8から約12重量%のポリ塩化アルミニウムを含む。このスラリーは、好ましくは
−約10から約70重量%の、更に好ましくは約15から約50重量%の、最も好ましくは約15から約40重量%のゼオライト、
−約5から約70重量%の、更に好ましくは約10から約60重量%の、最も好ましくは約10から約50重量%のクレイ、および
−Alとして計算して、約1から約50重量%の、更に好ましくは約2から約40重量%の、最も好ましくは約3から約40重量%のアルミナ
を含む。これらの重量範囲はすべてスラリーの固体含量を基準とする。
【0017】
このスラリーの固体含量は、好ましくは約10から約60重量%、更に好ましくは約20から約50重量%、最も好ましくは約30から約46重量%である。
【0018】
このスラリーは、クレイ、ゼオライト、およびポリ塩化アルミニウムと、随意の他の成分(アルミナなどの)を水に添加することにより作製される。このクレイ、ゼオライト、および他の成分は、乾燥固体として、もしくは水性懸濁液中で添加可能である。ポリ塩化アルミニウムはゾルまたは溶液として添加される。いかなる添加順序も使用され得る。
【0019】
スプレー乾燥されるこのスラリーのpHは、好ましくは約3以上、更に好ましくは約3から約5.5の範囲に、最も好ましくは約3.5から約4.5の範囲にある。
【0020】
このスラリーをスプレー乾燥して、流動性粒子、すなわち約10から約200ミクロンの範囲の、好ましくは約20から約150ミクロンの粒子が形成される。スプレー乾燥器の入口温度は、好ましくは約300から約600℃の範囲にあり、出口温度は、好ましくは約105から約200℃の範囲にある。
【0021】
最後に、この触媒は焼成される。焼成温度は、好ましくは約120から約700℃の範囲に、更に好ましくは約400から約600℃の範囲にある。焼成は、好ましくは約5分から約3時間、更に好ましくは約10分から約60分行われる。生成するFCC触媒は高耐磨減性を有する。そのように所望する場合には、このFCC触媒は、FCC法で使用する前にイオン交換法により更に処理され得る。
【実施例】
【0022】
実施例1
30重量%のゼオライトY、50重量%のカオリンクレイ、10重量%のアルミナ、および10重量%のポリ塩化アルミニウムを水と35%固体で混合することにより、4つの触媒組成物を作製した。すべての重量パーセントは乾燥固体含量を基準としたものである。触媒は、作製に使用されたポリ塩化アルミニウムのOH/Al比(したがって、式[Al(OH)Cl6−y中のy値)が異なるものであった。これらの異なるポリ塩化アルミニウムはGulbrandsen Chemicalsからの購入品であった。
【0023】
この触媒の耐磨減性を標準の磨減試験により測定した。この試験においては、触媒床を3つのノズルを付けた磨減プレート上に置く。磨減プレートを外周温度にある磨減管内に配置する。空気をノズルに圧入し、生じるジェットによって触媒粒子と生成する微粉の上方輸送がもたらされる。磨減管の頂部には分離チャンバーがあり、そこで流れは消滅し、約16ミクロンよりも大きい大部分の粒子は磨減管の中に戻る。小さい粒子を捕集袋中で捕集する。
【0024】
触媒試料を600℃で焼成した後この試験を行った。最初にこれを5時間行い、50グラムの仮想取り込みに基づいて捕集袋中に捕集される微粉の重量パーセントを求めた。これが初期の磨減である。次に、更に15時間試験を行い、この時間の間(5−20時間)における微粉の重量パーセントを求めた。これが固有の磨減である。磨減指数(AI)は25時間後の外挿された重量%微粉である。したがって、触媒が耐磨減性である程AI値は小さい。
【0025】
異なる触媒の磨減指数を表1に掲げる。
【0026】
【表1】

【0027】
この表は、生成する触媒の耐磨減性に及ぼすポリ塩化アルミニウムOH/Al比の影響を明らかに示す。1よりも大きく2よりも小さいOH/Al比(2よりも大きく4よりも小さいy)は、この範囲外のOH/Al比よりも高い耐磨減性(すなわち、AI値)を生じる。
【0028】
実施例2
30重量%のゼオライトY、50重量%のカオリンクレイ、10重量%のアルミナ、および10重量%のポリ塩化アルミニウムを水と35%固体において混合することにより、4つの触媒組成物を作製した。すべての重量パーセントは乾燥固体含量を基準としたものである。この触媒は、作製に使用されたポリ塩化アルミニウムのOH/Al比が異なるものであった。
【0029】
式[Al(OH)Cl6−yにしたがって所望のOH/Al比に相当するAl/Cl比においてアルミニウム金属とHClの混合物を沸騰させることにより、この異なるポリ塩化アルミニウムを作製した。
【0030】
実施例1に概述した磨減試験によりこの触媒の耐磨減性を測定した。この異なる触媒の磨減指数を表2に掲げる。
【0031】
【表2】

【0032】
また、この表は、1よりも大きく2よりも小さいOH/Al比(2よりも大きく4より
も小さいy)がこれらの範囲外のOH/Al比よりも高い耐磨減性(すなわち、低い磨減)を生じるということも示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼオライト、クレイ、およびxが少なくとも1であり、yが2よりも大きく、4よりも小さい、式[Al(OH)Cl6−yのポリ塩化アルミニウムを含む水性スラリーがスプレー乾燥され、引き続き焼成される、流動接触分解触媒を製造するための方法。
【請求項2】
yが約2.2から約3.6の範囲にある、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
yが約2.4から約3.0の範囲にある、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
水性スラリーがAlとして計算し、スラリーの全固体含量基準で約5から約30重量%の前記ポリ塩化アルミニウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
水性スラリーが更にベーマイト、プソイドベーマイト、ジブサイト、および/またはフラッシュ焼成ジブサイトを含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ゼオライトがY−タイプゼオライトである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
クレイがカオリンクレイである、請求項1に記載の方法。

【公表番号】特表2010−509044(P2010−509044A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−535716(P2009−535716)
【出願日】平成19年11月7日(2007.11.7)
【国際出願番号】PCT/EP2007/061992
【国際公開番号】WO2008/058875
【国際公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(509129255)
【Fターム(参考)】