説明

FRP棒の端末固定構造

【課題】ポリマー碍子のテンションメンバーなどとして用いられる、疲労破壊が起き難いFRP棒の端末固定構造を提供する。
【解決手段】FRP棒3の端部3aが筒状金具1内に挿入され、筒状金具1が径方向に圧縮されたFRP棒3の端末固定構造において、筒状金具1の内面に軸方向に平行な溝2が設けられているFRP棒3の端末固定構造。本発明のFRP棒3の端末固定構造では、FRP棒3の端部3aが挿入される筒状金具1の内面に軸方向に平行な溝2が設けられているので、FRP棒3の端部が筒状金具1内で捻回するのが阻止される。従ってポリマー碍子の捻れに伴うFRP棒3の機械的強度の低下が防止される。また筒状金具1内面に溝2が設けられているので筒状金具1内面とFRP棒3との接触面積が増大して筒状金具1とFRP棒3間の接続強度が向上する。従って本発明の端末固定構造は信頼性が高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送電線に取り付けられるポリマー碍子のテンションメンバーなどとして使用されるFRP棒の端末固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー碍子は、図3(イ)に示すように、ゴムまたは合成樹脂からなる笠部4と胴体部5とが交互に配設された碍子部6の両端に筒状金具1を取り付けたもので、碍子部6内にはテンションメンバーのFRP棒3が配置され、FRP棒3の両端部3aはそれぞれ筒状金具1内に挿入され、筒状金具1は、図3(ロ)に示すように、径方向に3方から押圧されてFRP棒3の両端部3aが筒状金具1に圧縮固定されている(特許文献1、2)。
図3(イ)で、7はポリマー碍子を架空線などに取付けるための取付金具である。また図3(ロ)で、白抜矢印は押圧方向を示す。
【0003】
【特許文献1】特開平09−259674号公報
【特許文献2】特開平10−125155号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、送電線やジャンパ線が風圧を受けて振動(ギャロッピング)すると、ポリマー碍子に捻れが生じ、この捻れによりFRP棒が筒状金具の口元付近などで捻れ、圧縮の弱い口元付近でFTR棒に摩耗が生じ機械的強度が低下するという問題があった。
なお、前記FRP棒は、補強繊維(ガラスファイバーなど)を軸方向に束ねて複合しているため捻回し易く、また前記筒状金具が多角形状に圧縮されている場合は、圧縮強度の低い部分が生じ、FRP棒は前記圧縮強度が低い部分で機械的強度が低下するものである。
本発明は、FRP棒が筒状金具内で捻回して機械的強度が低下するのを防止した、信頼性の高いFRP棒の端末固定構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、FRP棒の端部が筒状金具内に挿入され、前記筒状金具が径方向に圧縮されたFRP棒の端末固定構造において、前記筒状金具の内面に軸方向に平行な溝が設けられていることを特徴とするFRP棒の端末固定構造である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のFRP棒の端末固定構造は、FRP棒の端部が挿入される筒状金具の内面に軸方向に平行な溝が設けられているので、FRP棒の端部が筒状金具内で捻回するのが抑制される。従ってポリマー碍子などの捻れに伴うFRP棒の機械的強度の低下が防止される。また筒状金具内面とFRP棒との接触面積が増大して筒状金具とFRP棒間の接合強度が向上する。さらに前記軸方向に平行な溝は、FRP棒の強化繊維の配置方向と平行なため強化繊維が溝縁部に押圧されて損傷することもない。従って本発明のFRP棒の端末固定構造は信頼性が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に、本発明を、図を参照して具体的に説明する。
なお本発明を説明するための全図において符号の繰り返しの説明は省略する。
図1は本発明のFRP棒の端末固定構造の実施形態を示す(イ)側面図および(ロ)A−A断面図である。
筒状金具1の内面1aに軸方向に平行な溝2が設けられており、筒状金具1内に、FRP棒3の端部3aが挿入され、筒状金具1は径方向に圧縮されている。筒状金具1の溝2にFRP棒端部3aの表層部分が食い込んでおり、FRP棒端部3aが筒状金具1内で捻回するのが抑制される。
【0008】
図2(イ)〜(ハ)は本発明のFRP棒の端末固定構造を形成する実施形態を示す工程説明図である。
内面1aに軸方向に平行な溝2が設けられた筒状金具1(図2(イ))内にFRP棒3の端部3aを挿入し(図2(ロ))、次いで筒状金具1を径方向に3方向から押圧する(図2(ハ))。ここでは筒状金具の断面形状は、押圧を3方向から行ったので六角形であるが、四〜八角形などの他の多角形状でも、或いは円形状でも差し支えない。
【0009】
本発明において、筒状金具1内面に設ける溝2の本数および断面形状は、FRP棒3の捻回を阻止できるものであれば任意である。溝2の代わりに軸方向に連続する凸部を設けても同様の効果が得られる。
【0010】
本発明において、筒状金具1を径方向に押圧する方法としては、例えば、筒状金具1の上下に半割りダイスを配置し押圧する方法、型鍛造法など任意の方法が用いられる。
【0011】
本発明において、筒状金具には、例えば、鉄、アルミニウムまたはアルミニウム合金などの金属材料が使用できる。
【0012】
本発明において、筒状金具は、押出加工法、金型鋳造法、切削加工法、溝加工した金属板を溝を内側にして筒状に成形し端部を溶接する方法など任意の方法で製造できる。
【0013】
本発明において、取付金具は、筒状金具と一体に設けるのが望ましいが、溶接などにより接合することも可能である。
【0014】
本発明のFRP棒の端末固定構造は、ポリマー碍子のみならず、ポリマー避雷碍子や絶縁アームなどFRP棒をテンションメンバーとして用いた架空線用絶縁部材、或いは架空線以外の部材に適用しても同様の効果が得られる。
【0015】
本発明において、FRP棒が、中実棒であっても、或いは軽量化を目的にした中空棒であっても同様の効果が得られる。
【実施例1】
【0016】
内面全体に軸方向に平行な断面四角形の溝(幅1mm、深さ0.3mm)を1mm間隔に設けたアルミ製筒状金具をダイス押出法により製造し、この筒状金具内にFRP棒を挿入し、次いで前記筒状金具を径方向に押圧して前記FRP棒を前記筒状金具内に圧縮固定した(図1(ロ)参照)。
【0017】
このFRP棒を固定した筒状金具を把持し、前記FRP棒に所定のトルクを付与して捻回角を測定したところ、本発明の固定構造の捻回角は、従来のもの(図3(ロ)参照)に比べて5%減少した。これはFRP棒が筒状金具内面の溝に食い込み捻回が抑制されたためである。
【0018】
またFRP棒と筒状金具間の接合強度を引張試験により調べたところ、本発明の固定構造の引張強度は、従来のもの(図3(ロ)参照)に比べて10%向上した。これはFRP棒が溝に食い込んで両者の接触面積が増大したためである。
【0019】
なお、図1に示した本発明のポリマー碍子を架空送電線に取付けて用いたが、FRP棒が筒状金具内で疲労破断するような兆候は全く認められなかった。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のFRP棒の端末固定構造の実施形態を示す(イ)側面説明図および(ロ)A−A断面説明図である。
【図2】(イ)、(ロ)、(ハ)は本発明のFRP棒の端末固定構造を形成する実施形態を示す工程説明図である。
【図3】従来のFRP棒の端末固定構造を示す(イ)側面説明図および(ロ)A−A断面説明図である。
【符号の説明】
【0021】
1 筒状金具
1a筒状金具内面
2 筒状金具内面に設けられた軸方向に平行な溝
3 FRP棒
3aFRP棒の端部
4 笠部
5 胴体部
6 碍子部
7 取付金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
FRP棒の端部が筒状金具内に挿入され、前記筒状金具が径方向に圧縮されたFRP棒の端末固定構造において、前記筒状金具の内面に軸方向に平行な溝が設けられていることを特徴とするFRP棒の端末固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−286333(P2006−286333A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−103123(P2005−103123)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】