説明

FRP補強用不織布

【課題】保管する際に合い紙が必要なく、施工作業に必要十分な強度とコシを持ち、均一性に優れるFRP補強用不織布を提供する。
【解決手段】少なくとも、主体繊維とバインダー繊維を含有するFRP補強用不織布であって、該バインダー繊維が、ポリエチレンテレフタレートを芯とし、芯部よりも融点の低い変性ポリエチレンテレフタレートを鞘とする芯鞘バインダー繊維及びアクリル樹脂、若しくはスチレン・アクリル樹脂を含有する不織布であって、該アクリル樹脂の含有量が不織布に対し1〜7質量%であり、且つ、芯鞘バインダー繊維の含有量が5〜20質量%である、FRP補強用不織布。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機繊維とPET芯鞘バインダー繊維を含有するFRP補強用不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高強度の繊維補強樹脂複合成型体(FRP)を得るため、未硬化若しくは半硬化の樹脂に、補強材として高強度のガラス繊維・カーボン繊維・アラミド繊維等を主体として構成されたシート状の基材を積層・貼り合わせることにより、加圧ローラー等で樹脂を含浸し硬化させる一般的にハンドレイアップ成型と呼ばれる方法が広く採用されている。
【0003】
このような強化繊維シート(基材)の形成に結合剤として使用されるバインダーについては、従来さまざまな検討がなされており、例えば特許文献1には、オレフィン系の芯鞘バインダー繊維を使用した補強用不織布が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、熱硬化性樹脂用硬化剤が付着してなる強化繊維が開示されている。
【0005】
これらはいずれも、主に成型後のFRPの強度を高めるための方法であり、ある一定の成果を上げている。
【0006】
ところで、特許文献1に採用されている芯鞘構造の繊維状バインダーは、不織布用途として他用途にも広く使用されているが、不織布用バインダーとして強度を発現させるだけでなく、先ず鞘部の融点よりも低い温度で不織布を製造した後に型に押し込み、鞘部が溶融する温度より高い温度にさらすことで成型性に有用であることが特許文献3〜6に開示されている。
【0007】
FRPでは、タンクなどの曲面から構成される成型体形状が少なくなく、これらの形状の成型体への補強材の施工方法としては、機械的な方法を採用するには複雑で、手作業で半硬化の樹脂を成型体に塗り、繊維シート(以下「FRP補強用不織布」と言う)を乗せてローラー等で樹脂を繊維シートに浸み込ませる工法を採ることが多い。
【0008】
このような用途に使用される、FRP補強用不織布は、必須特性として曲面への優れた沿型性・追従性が要求される。
【0009】
そのため、ガラス長繊維を主体とし、ポリエステル系バインダーを使用した不織布が商品化されており、現在広く使用されている。ポリエステル系バインダーは、FRPに使用される樹脂の溶剤として一般的な、スチレンに良く溶解するため、半硬化樹脂に貼り付けた際、容易に強度を失い、曲面に追従し、なじみやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3853774号
【特許文献2】特開平9−11347号
【特許文献3】特開2002−287767
【特許文献4】特開2002−283486
【特許文献5】特開2001−129926
【特許文献6】特開2001−098449
【特許文献7】特公平01−030926
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
現在使用されている不織布は、曲面への追従性を考慮し、少量のポリエステル系バインダーを使用している。
しかし、これらの不織布は、ポリエステル系バインダーがブロッキングしやすいため、不織布を巻き取りにして保管する際、合紙が必要である。そのため、巻取りが大きくなってしまい、特に手作業で巻取りから必要な量の不織布を切り出す作業の負荷が大きい上、合い紙が廃棄物として大量に発生し、環境上問題となる。
【0012】
また、樹脂に貼り付けた際の曲面施工性を重視するあまり、強度が不十分で腰が弱いため、使用寸法に裁断した基材の取り扱い作業、施工現場への取り回し作業において形状が変形したり、破損などの不具合が生じる事がある。
【0013】
また、ハンドレイアップもしくはその他の成型方法で施工する際、シワになったり、樹脂の浸透が不均一になりやすく、作業に熟練を要する。
【0014】
また、バインダーのブロッキングに起因して、使用予定基材の定型裁断品を保管しておいた場合、抜き取る時の取り扱に時間がかかる。
【0015】
更に、FRP補強用不織布の地合が不均一であるため、積層、含浸作業時に不織布が破れやすく、ポリエステル系バインダーの含有率を管理する事に高い熟練技術が必要であった。
【0016】
そこで、この発明の目的は、保管する際に合い紙が必要なく、施工作業に必要十分な強度と腰を持ち、均一性に優れるFRP補強用不織布を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、ポリエチレンテレフタレート/変性ポリエチレンテレフタレート芯鞘構造バインダー(以下「PET芯鞘バインダー繊維」と記載する)を使用することにより、ブロッキングなどの問題が無く、しかもFRPに使用される溶剤であるスチレンに接すると速やかに強度を失い、曲面に馴染みやすくなることを見出し、更に、ある一定の割合でPET芯鞘バインダー繊維を含有する場合に限り、一定量のアクリルバインダーを使用しても、スチレンに接した場合速やかに強度を失い、しかも施工時の強度・腰は十分に強い不織布を製造できることを見出し本発明に到達した。
【0018】
芯鞘構造バインダー繊維は、前述のとおり、成型後の不織布の強度の向上に有用であること、或いは、型に押し込み、加熱成型する場合の成型性の向上に有用であることは公知であるが、スチレンなどの溶媒に接したときに溶解拡散し強度を失う性質をFRP補強用不織布に利用した技術は、これまで見出されていなかった。
【0019】
前記の問題点を解決するために、本発明は以下の発明を包含する。
【0020】
(1)主体繊維と、バインダー繊維を含有するFRP補強用不織布であって、該バインダー繊維が、ポリエチレンテレフタレートを芯とし、芯部よりも融点の低い変性ポリエチレンテレフタレートを鞘部とする芯鞘バインダー繊維であることを特徴とするFRP補強用不織布
(2)アクリル樹脂若しくはスチレン・アクリル樹脂を含有する不織布であって、該アクリル樹脂若しくはスチレン・アクリル樹脂の含有量が不織布に対し1〜7質量%であり、且つ、芯鞘バインダー繊維の含有量が5〜20質量%である、(1)に記載のFRP補強用不織布。
(3)不織布が、湿式不織布である、(1)〜(2)に記載のFRP補強用不織布
【発明の効果】
【0021】
本発明のFRP用補強材は、PET芯鞘バインダーを使用しているため、従来のポリエステル系バインダーを使用した不織布のようにブロッキングは発生しない。そのため、合い紙が不要であり、従来の合い紙を使用せざるを得なかったFRP補強材よりも巻取りを小さくできるので、手作業で巻取りから必要な量の不織布を切り出す作業の負荷が従来に比べて少なく、廃棄物である合い紙が発生しない。
【0022】
更に、適切な量のアクリルバインダーを使用することができるため、十分な強度と腰がある不織布とすることができる。そのため、使用寸法に裁断した機材の取り扱い作業、施工現場への取り回し作業において、形状が変形したり破損したりしにくい。
【0023】
また、PET芯鞘バインダー繊維のFRP補強用不織布への使用比率の変更、また使用比率が一定でも加工方法(製造過程での工程変更)により、最終的に用途・使用方法から要望される特性に微妙に対処が可能である。
【0024】
更にある一定の割合でPET芯鞘バインダー繊維を含有するものについて、一定量のアクリルバインダーを併用したものについては、最終的に用途・使用方法から要望される特性により適切な対処が可能である。
【0025】
鞘部は圧力の少ない状態で熱がかかると、繊維間の交点の接着面積が小さいため、ふんわりとして、それでいてそれなりの強度を持った製品が得られる。
このように製造されたFRP補強用不織布は、スチレンに接してから強度を失うまでの時間が短いため、より複雑な形状の成型にも優れた均一沿型性を持つ。そのため、三次元曲面が多く、凹凸を持つ物、つまりタンクの蓋など半球面状のもの、大型玩具、イベント成型物などに適する。
【0026】
一方、PET芯鞘バインダー繊維の鞘部は、圧力の比較的大きい状態で熱がかかると、繊維間の交点の接着面積が大きくなるため、スチレンに接してから強度を失うまでの時間が長くなる。
このように製造されたFRP補強用不織布は、以下のような用途に適する。
すなわち、円筒形のFRPを製造する場合などには、ハンドレイアップではなく、成型型を回転させながらFRP補強用不織布を巻きつける場合などもあるが、この様な場合、樹脂が浸透してすぐに強度を失うと、加工中にFRP補強用不織布が断紙してしまうため、ある程度の時間を経た後にFRP補強用不織布が強度を失うほうが好ましい。
このような場合、FRP補強用不織布を製造する際、熱量を与えているときに、シートに圧力を加えることで、スチレンに接してから強度を失うまでの時間を長く調整したFRP補強用不織布が適する。
【0027】
すなわち、製造工程で加えられる熱量・圧力を調整することで、用途に適合したFRP補強用不織布を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
【0029】
本発明で使用される主体繊維は、特に限定するものではないが、寸法安定性に優れる強度が高い繊維が適切である。例示するならば、アラミド繊維などのような高強度の有機繊維、ガラス繊維、カーボン繊維、セラミック繊維、バサルト繊維などの無機繊維が挙げられるが、一般的にはコストが比較的安価であり、寸法安定性に優れるガラス繊維が多く使用される。
【0030】
本発明に使用されるPET芯鞘バインダー繊維は、芯成分が通常のポリエステルであり、鞘成分にはポリエステルを変性することで通常のポリエステルよりも融点を低下させたものであれば特に限定されるものではない。一例として、PET芯鞘バインダー繊維の芯部融点が230℃で鞘部融点が110℃のものや、特許文献7に開示されているようなものが挙げられる。
【0031】
本発明におけるFRP補強用不織布は、PET芯鞘バインダー繊維以外のバインダーも、要求される強度等の物性に応じて適宜使用することができる。PET芯鞘バインダー以外の繊維としては、EVA樹脂、酢ビ・アクリル樹脂、アクリル樹脂、スチレン・アクリル樹脂などのエマルジョン、或いは粒状若しくは繊維状のPVA、液状のPVA、でんぷん等が挙げられる。これらのバインダーは、多量に添加するとスチレンへの溶解性が悪くなるため沿型性が損ねられる。そのため、添加量は必要最低量にとどめることが肝要である。
【0032】
本発明において、PET芯鞘バインダー繊維以外のバインダーとして、アクリル樹脂が比較的スチレンへの溶解性を阻害しにくく、少量でも腰・強度が発現しやすいため、特に好適である。アクリル樹脂の種類は特に限定されるものではなく、一般的なアクリル酸エステル共重合体、スチレン・アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステル、メタクリル酸ヒドロキシエステル共重合体などのエマルジョン等が好適である。
【0033】
アクリル樹脂の含有量は、FRP補強用不織布に対し1〜7質量%であり、且つ、PET芯鞘バインダー繊維の含有量が5〜20質量%であることが好ましい。アクリル樹脂を含有させることにより、FRP補強用不織布は腰と強度が増し、ハンドリングが容易になるが、アクリル樹脂の含有量が7質量%超えたり、PET芯鞘バインダーの含有量が5質量%に満たない場合、スチレンに接した場合に強度が失われず、沿型性が損なわれる。
【0034】
アクリル樹脂は、強度と腰の発現には有用であるが、スチレンへの溶解性に乏しいため、多量に添加すると沿型性が損なわれる。そのため、添加量は7質量%以下が適切である。7質量%を超える場合であっても、PET芯鞘バインダー繊維を5%以上含有すれば、十分な沿型性が得られる。しかし、PET芯鞘バインダー繊維の含有量が少ない場合、アクリル樹脂の添加量が7%以下であっても、スチレンに接した場合におけるFRP補強用不織布の強度低下が十分でないため、十分な沿型性が得られない。
【0035】
一方、芯鞘バインダーの含有量が20質量%を超えると、FRPを製造するための樹脂に多量のPET芯鞘バインダー繊維の鞘部が溶け込む。PET芯鞘バインダー繊維の鞘部成分が多量に溶け込んだ樹脂は粘度が上昇し、FRP製造時に発生する泡が抜けにくくなるという不具合が発生する。
【0036】
本発明におけるFRP補強用不織布は、湿式抄紙法によって製造された、湿式不織布であることが、より好ましい。湿式不織布は、水に繊維を分散させ、水の粘度を適宜調整し、脱水速度をコントロールすることにより、乾式不織布等に比べ均一性に優れ、強度バラツキの少ないFRP補強用不織布を得ることができる。
【0037】
本発明のFRP補強用不織布は、長網抄紙機、短網抄紙機、傾斜ワイヤー型抄紙機等、既知の抄紙機を用いることによって可能である。
【0038】
<実施例>
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、勿論本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例において%とあるのは特に断わらない限り質量%を表す。
【0039】
<実施例1>
繊維長25mm、繊維径19μmのアルミナ珪酸ガラス繊維(以下「ガラス繊維A」と記す。)と、繊維長13mm、繊維径17μmのアルミナ珪酸ガラス繊維(以下「ガラス繊維B」と記す。)と、繊維径2デニール、繊維長5mmの芯鞘PET繊維(クラレ製 「N−720」、以下「芯鞘PET」と記す。)を水中に投入し、あらかじめ溶解した分散剤(花王製、「エマノーン3199」)を原料に対し0.5%となるよう添加し、攪拌して繊維を分散させ、1.0%濃度のガラス繊維スラリーを作成した。このスラリーを用いて湿式抄紙法でウエブを作成し、加熱加圧した後、アクリル樹脂エマルジョン(昭和高分子製、「AG−100」、以下「アクリルEm.」と記す。)を含浸法で添加し、過熱乾燥後、FRP補強用不織布を製造した。
ガラス繊維A30%、ガラス繊維B46%、芯鞘PET22%、アクリルEm.2%となるよう配合し製造した。
【0040】
<実施例2>
ガラス繊維B58%、芯鞘PET5%、アクリルEm.7%となるよう配合した以外は、実施例1と同様に製造した。
【0041】
<実施例3>
ガラス繊維B62%、芯鞘PET3%、アクリルEm.5%となるよう配合した以外は、実施例1と同様に製造した。
【0042】
<実施例4>
ガラス繊維B43%、芯鞘PET20%、アクリルEm.7%となるよう配合した以外は、実施例1と同様に製造した。
【0043】
<実施例5>
ガラス繊維B50%、芯鞘PET20%、アクリルEm.1%となるよう配合した以外は、実施例1と同様に製造した。
【0044】
<実施例6>
ガラス繊維B64%、芯鞘PET5%、アクリルEm.1%となるよう配合した以外は、実施例1と同様に製造した。
【0045】
<実施例7>
ガラス繊維B60%、芯鞘PET5%、アクリルEm.5%となるよう配合した以外は、実施例1と同様に製造した。
【0046】
<実施例8>
ガラス繊維B45%、芯鞘PET20%、アクリルEm.5%となるよう配合した以外は、実施例1と同様に製造した。
【0047】
<実施例9>
ガラス繊維B61%、芯鞘PET8%、アクリルEm.の変わりに酢ビ・アクリルエマルジョン(日本合成化学製、「モビニール780A」)を1%となるよう配合した以外は、実施例1と同様に製造した。
【0048】
<実施例10>
ガラス繊維B61%、芯鞘PET8%、アクリルEm.の変わりにスチレン・アクリル樹脂エマルジョン(日本合成化学製、「モビニール1752」)を1%となるよう配合した以外は、実施例1と同様に製造した。
【0049】
<比較例1>
ガラス繊維Aと、ガラス繊維Bを水中に投入し、あらかじめ溶解した分散剤(花王製、「エマノーン3199」)を原料に対し0.5%となるよう添加し、攪拌して繊維を分散させ、1.0%濃度のガラス繊維スラリーを作成した。この際、芯鞘PETバインダーは使用しなかった。
このスラリーを用いて湿式抄紙法でウエブを作成し、加熱加圧した後、水溶性ポリエステルエマルジョン(互応化学工業製、「プラスコートZ−880」)を含浸法で添加し、過熱乾燥後、FRP補強用不織布を製造した。
ガラス繊維A30%、ガラス繊維B60%、水溶性ポリエステル・エマルジョンが10%の配合となるように製造した。
【0050】
<比較例2>
ガラス繊維B67%、水溶性ポリエステル・エマルジョンの変わりにアクリルEm.3%となるよう配合した以外は比較例1と同様に製造した。
【産業上の利用可能性】
【0051】
実施例及び比較例の評価結果を表1及び表2に示す。
実施例はいずれも、シートを、合い紙無しで重ねておいてもブロッキングが発生しなかった。
また、1m角程度の大きさのFRP補強用不織布を手作業で運んだり、広げたりする際に変形・破れが発生しにくく、更に、球面や円筒面などの曲面への沿型性に優れ、施工時にシワが発生しにくい。
また、半硬化のFRP補強用樹脂に施工する際、樹脂とFRP補強用不織布の間に発生する泡抜けにも問題がない。
また、PET芯鞘バインダーを22%配合した実施例1は、FRP用樹脂の増粘により、泡抜けが若干遅くなる傾向は認められたが、実用上問題になるほどではなかった。
その他の実施例では、FRP用樹脂の増粘により泡抜けが遅くなる傾向は認められないか、認められたとしても僅かであり実用上問題となることはなかった。
【0052】
一方、比較例1のようにPET芯鞘バインダーを使用せず、水溶性ポリエステルバインダーを使用した場合、FRP補強用シートを合い紙を使用しないで重ねておいておくと、ブロッキング(シート同士がくっついてしまう現象)が発生したため、1枚を剥がし取る際に破れが発生し、使用不能となった。そのため、合い紙を使用しない限り、このFRP補強用不織布は使用できなかった。
また、1m角程度の大きさのFRP補強用不織布を手作業で運んだり、広げたりする際、実施例と比較して、変形・破れが発生しやすかった。
【0053】
また、比較例2のようにPET芯鞘バインダーを使用せず、アクリルバインダーのみでFRP補強用不織布を製造した場合、FRP樹脂に接触してもFRP補強用不織布が強度を失わず、曲面への沿型性に劣り、曲面施工時にシワが発生した。
【0054】
(評価方法)
<シートを重ねて置いた場合のブロッキングの発生>
FRP補強用不織布を1m角に切断し、合い紙を挟まずに20枚重ねて気温30℃の部屋に2時間放置した後、FRP補強用不織布を上から1枚ずつ取り上げた。
その際、全て1枚1枚バラバラに取り上げられた場合、「ブロッキング発生無し」と評価し、FRP補強用不織布同士がくっついている、又はくっついていて1枚を剥がし取る際に破れが発生した場合を「ブロッキング発生」と評価した。
【0055】
<FRP補強用不織布取り扱い時の変形・破断の発生しにくさ>
1m角に裁断したFRP補強用不織布を作業者2名で広げてシワを伸ばし、運搬する作業を行った際の変形・破断の起こしやすさを
<変形・破断が起こりにくい>◎、○、△、×、××、<変形・破断が起こりやすい>
の5段階で評価した。
【0056】
<タンクの蓋(半球面状)への沿型性>
半球状の型にPET製剥離シートを貼り、その上にFRP用樹脂半球状の型にPET製剥離シートを貼り、その上にFRP用樹脂(6%Co−Naph.入りビス系ビニルエステル (昭和高分子(株):リポキシ R806 B) 100phr硬化剤 (55%−MEKPO)0.7 phr)を塗布した。
その樹脂に、ハンドレイアップ工法でFRP補強用不織布を施工し、その際、FRP補強用不織布が速やかに強度を失い型になじんだものを◎(良)、強度を失いにくく、型になじみにくいものを××(悪)として、
<型へなじみやすい>◎、○、△、×、××<型へなじみにくい>の5段階で評価した。
【0057】
<タンクの蓋(半球面状)に施工した場合のシワの発生のしにくさ>
半球状の型にPET製剥離シートを貼り、その上にFRP用樹脂半球状の型にPET製剥離シートを貼り、その上にFRP用樹脂(6%Co−Naph.入りビス系ビニルエステル (昭和高分子製:リポキシ R806 B) 100phr硬化剤 (55%−MEKPO)0.7 phr)を塗布した。
その樹脂に、ハンドレイアップ工法でFRP補強用不織布を施工し、その際のシワの発生のしにくさを、
<良>容易にシワ無く施工できた、

シワを伸ばすため、何度もローラーでこすらなければならなかったもの

<悪>ハンドレイアップ工法ではシワが解消できなかったものとして評価し、
<しわが発生しにくい>◎、○、△、×、××<しわが発生しやすい>の5段階で評価した。
【0058】
<パイプ(円筒形)への沿型性>
パイプ状の型の表面にPET剥離シートを巻き、その上にFRP用樹脂(6%Co−Naph.入りビス系ビニルエステル (昭和高分子製:リポキシ R806 B) 100phr硬化剤 (55%−MEKPO)0.7 phr)を塗布した。
その状態で、パイプ状の型を回転させることによってFRP補強用不織布をパイプ表面に施工した。
その際、FRP補強用不織布が速やかに型になじんだものを◎(良)、型になじむのに時間がかかり、生産効率の低いもの、或いは型になじまなかったものを××(悪)として、型へのなじみやすさを
<型へなじみやすい>◎、○、△、×、××<型へなじみにくい>の5段階で評価した。
【0059】
<パイプ(円筒形)に施工した場合のシワの発生のしにくさ>
パイプ状の型の表面にPET剥離シートを巻き、その上にFRP用樹脂(6%Co−Naph.入りビス系ビニルエステル (昭和高分子製:リポキシ R806 B) 100phr硬化剤 (55%−MEKPO)0.7 phr)を塗布した。
その状態で、パイプ状の型を回転させることによってFRP補強用不織布をパイプ表面に施工した。
その際、FRP補強用不織布にシワが発生しないもの、或いはシワが発生しても僅かにローラーでこする程度でシワが解消されたものを◎(良)、シワが発生しやすく、ローラーで何度もこすらなければシワが解消しないもの、或いはローラーでこすってもシワが解消しないものを××(悪)として、
<しわが発生しにくい>◎、○、△、×、××<しわが発生しやすい>の5段階で評価した。
【0060】
<樹脂の泡の抜けやすさ(脱泡性)>
半球状の型にPET製剥離シートを貼り、その上にFRP用樹脂半球状の型にPET製剥離シートを貼り、その上にFRP用樹脂(6%Co−Naph.入りビス系ビニルエステル (昭和高分子製:リポキシ R806 B) 100phr硬化剤 (55%−MEKPO)0.7 phr)を塗布した。
その樹脂に、ハンドレイアップ工法でFRP補強用不織布を施工し、その際に発生した泡が速やかに抜けたものを◎、樹脂が増粘して、泡抜けが遅くなり、泡を除去するためにローラーで何度もこすらなければならなかったもの、或いはローラー等でこすっても泡が除去できなかったものを××として、
泡の抜けやすさを
<泡が抜けやすい>◎、○、△、×、××<泡が抜けにくい>の5段階で評価した。
【0061】
【表1】


【0062】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、主体繊維とバインダー繊維を含有するFRP補強用不織布であって、該バインダー繊維が、ポリエチレンテレフタレートを芯とし、芯部よりも融点の低い変性ポリエチレンテレフタレートを鞘とする芯鞘バインダー繊維であることを特徴とするFRP補強用不織布
【請求項2】
アクリル樹脂、若しくはスチレン・アクリル樹脂を含有する不織布であって、該アクリル樹脂若しくはスチレン・アクリル樹脂の含有量が不織布に対し1〜7質量%であり、且つ、芯鞘バインダー繊維の含有量が5〜20質量%である、請求項1に記載のFRP補強用不織布。
【請求項3】
不織布が、湿式不織布である、請求項1〜2に記載のFRP補強用不織布

【公開番号】特開2011−102453(P2011−102453A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−257983(P2009−257983)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(000191320)王子特殊紙株式会社 (79)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】