説明

FT合成炭化水素の精製方法及びFT合成炭化水素蒸留分離装置

【課題】FT合成炭化水素からナフサ相当の炭化水素を効率良く回収することが可能であるとともに、ナフサ分、中間留分、ワックス分を分離する際のエネルギーコストを低減することが可能なFT合成炭化水素の精製方法及びFT合成炭化水素蒸留分離装置を提供する。
【解決手段】フィッシャー・トロプシュ合成反応により生成されたFT合成炭化水素を、沸点に応じて分留するとともに、水素化及び精製処理を行って液体燃料製品を製造するFT合成炭化水素の精製方法であって、FT合成反応器から液体として製出される重質FT合成炭化水素を、第1中間留分とワックス分とに分留する重質FT合成炭化水素分留工程S3と、重質FT合成炭化水素分留工程S3とは別に、FT合成反応器からガスとして製出される軽質FT合成炭化水素を、軽質ガス分と第2中間留分とに分留する軽質FT合成炭化水素分留工程S5と、を備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィッシャー・トロプシュ合成反応より生成された炭化水素化合物を分離・精製するFT合成炭化水素の精製方法及びFT合成炭化水素蒸留分離装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、天然ガスから液体燃料を合成するための方法の一つとして、天然ガスを改質し一酸化炭素ガス(CO)と水素ガス(H)とを主成分とする合成ガスを生成し、この合成ガスを原料ガスとしてフィッシャー・トロプシュ合成反応(以下、「FT合成反応」という。)により炭化水素化合物(FT合成炭化水素)を合成し、さらにこの炭化水素化合物を水素化および分留することで、ナフサ(粗ガソリン)、灯油、軽油、WAX等の液体燃料製品を製造するGTL(Gas To Liquids:液体燃料合成)技術が開発されている。
このFT合成炭化水素を原料とした液体燃料製品は、パラフィン含有量が多く、硫黄分を含まないため、例えば特許文献1に示すように、環境対応燃料として注目されている。
【0003】
ところで、FT合成反応を行うFT合成反応器においては、炭素数が比較的多い重質のFT合成炭化水素が液体として、炭素数が比較的少ない軽質のFT合成炭化水素(ナフサ相当の炭化水素を主として含む)がガスとして製出されることになる。
これらの軽質及び重質FT合成炭化水素から液体燃料製品を得る方法の一例として、次のような処理を挙げることができる。まず、ガスとしてFT合成反応器から製出された軽質のFT合成炭化水素は、熱交換器等によって冷却されて液化され、気液分離器において分離・回収される。そして、FT合成反応器から液体として製出された重質のFT合成炭化水素と混合され、蒸留塔へと移送される。
【0004】
そして、FT合成炭化水素は、蒸留塔において沸点に応じて分留され、ナフサ留分(沸点が約150℃未満)と、灯油・軽油に相当する中間留分(沸点が約150〜360℃)と、ワックス分(沸点が約360℃より大)とに分留される。
これらナフサ留分、中間留分及びワックス分は、それぞれ水素化精製処理が施され、ナフサ、灯油、軽油、ワックス等の液体燃料製品とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−323626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、一例として挙げた上記方法では、前述のように、FT合成反応器から液体として製出された重質のFT合成炭化水素と、FT合成反応器から放出されたガス分から回収された軽質のFT合成炭化水素と、を混合した後に、蒸留塔で分留している。
軽質及び重質のFT合成炭化水素を混合したものを蒸留塔でナフサ留分、中間留分、ワックス分に分留する場合、ナフサ留分を主として含む軽質のFT合成炭化水素分を再度蒸留するような形となり、液体燃料製品を得るために掛かるエネルギーコストが高くなってしまうといった問題があった。
【0007】
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、FT合成反応器において生成されたFT合成炭化水素からナフサ相当の炭化水素を効率良く回収することが可能であるとともに、ナフサ分、中間留分、ワックス分を分離する際のエネルギーコストを低減することが可能なFT合成炭化水素の精製方法及びFT合成炭化水素蒸留分離装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明に係るFT合成炭化水素の精製方法は、フィッシャー・トロプシュ合成反応により生成されたFT合成炭化水素を、沸点に応じて分留するとともに、水素化及び精製処理を行って液体燃料製品を製造するFT合成炭化水素の精製方法であって、FT合成反応器から液体として製出される重質FT合成炭化水素を、重質炭化水素蒸留塔において第1中間留分とワックス分とに分留する重質FT合成炭化水素分留工程と、前記重質FT合成炭化水素分留工程とは別に、FT合成反応器からガスとして製出される軽質FT合成炭化水素を、軽質炭化水素蒸留塔において軽質ガス分と第2中間留分とに分留する軽質FT合成炭化水素分留工程と、を備えていることを特徴としている。
【0009】
この構成のFT合成炭化水素の精製方法においては、FT合成反応器から液体として製出される重質FT合成炭化水素を第1中間留分とワックス分とに分留する重質FT合成炭化水素分留工程と、FT合成反応器からガスとして製出される軽質FT合成炭化水素を軽質ガス分と第2中間留分とに分留する軽質FT合成炭化水素分留工程と、が別に設けられているので、重質FT合成炭化水素分留工程においては、ナフサ相当の軽質な炭化水素を考慮する必要がなくなる。よって、重質FT合成炭化水素を、必要以上に加熱することなく、ワックス分と第1中間留分とを分留することが可能となり、エネルギーコストの削減を図ることができる。なお、重質FT合成炭化水素にもナフサ相当の炭化水素が含有されているが、その含有量は極めて少ないので、ナフサの製出量に大きな影響はない。一方、軽質FT合成炭化水素分留工程において、ナフサ相当の炭化水素を多く含む軽質FT合成炭化水素を軽質ガス分と第2中間留分とに分留しているので、ナフサ相当の炭化水素を効率良く回収することができる。
【0010】
ここで、前記軽質FT合成炭化水素分留工程が、軽質炭化水素還流槽で前記軽質ガス分からナフサ相当の炭化水素を分離するナフサ分分離工程を備えていることが好ましい。
この場合、軽質FT合成炭化水素分留工程において分留された軽質ガス分中に存在するナフサ相当の炭化水素を分離することが可能となる。
また、前記ナフサ分分離工程において、分離されたナフサ相当の炭化水素の一部を軽質炭化水素蒸留塔へ還流させる還流工程を備えていることが好ましい。
【0011】
さらに、前記重質FT合成炭化水素分留工程で分留された第1中間留分と、前記軽質FT合成炭化水素分留工程において分留された第2中間留分と、軽質ガス分から分離されたナフサ相当の炭化水素と、を混合し、水素化精製処理を行うことが好ましい。
ナフサ相当の炭化水素と第1中間留分と第2中間留分との混合物は、ナフサ相当の炭化水素(C〜C10)と灯油相当の炭化水素(C11〜C15)と軽油相当の炭化水素(C16〜C20)とを含むものであり、これらの炭化水素の水素化精製処理は、同一の条件下で行うことが可能である。よって、これら第1中間留分と第2中間留分とナフサ相当の炭化水素を混合した上で水素化精製処理を行うことにより、水素化精製処理に掛かるコストを削減することができる。
【0012】
前記軽質FT合成炭化水素分留工程において、前記軽質ガス分から前記ナフサ相当の炭化水素を分離する前記軽質炭化水素還流槽の圧力が200〜600kPaの範囲内に設定されていることが好ましい。
この場合、前記軽質ガス分から前記ナフサ相当の炭化水素を分離する前記軽質炭化水素還流槽の圧力が、600kPa以下とされているので、軽質ガス分中の水分が凝縮して液化することを防止できる。一方、前記軽質ガス分から前記ナフサ相当の炭化水素を分離する前記軽質炭化水素還流槽の圧力が200kPa以上とされているので、軽質ガス分中に含まれるナフサ相当の炭化水素の含有量を少なく抑えることができる。
【0013】
また、前記軽質FT合成炭化水素分留工程において、前記軽質ガス分が取り出される軽質炭化水素蒸留塔の塔頂の温度が100〜120℃の範囲内に設定されていることが好ましい。
この場合、軽質炭化水素蒸留塔の塔頂の温度が100℃以上とされているので、軽質ガス分中の水分が凝縮して液化することを防止できる。また、軽質炭化水素蒸留塔の塔頂の温度が120℃以下とされているので、軽質FT合成炭化水素分留工程における熱負荷を抑えることができ、エネルギーコストを削減することができる。
【0014】
さらに、前記軽質FT合成炭化水素分留工程において、前記第2中間留分が取り出される前記軽質炭化水素蒸留塔の塔底の温度が250〜270℃の範囲内に設定されていることが好ましい。
この場合、前記第2中間留分が取り出される前記軽質炭化水素蒸留塔の塔底の温度が270℃以下とされているので、軽質FT合成炭化水素分留工程における熱負荷を抑えることができ、エネルギーコストを削減することができる。また、260〜300℃の高圧スチーム等を利用することも可能となる。一方、前記軽質炭化水素蒸留塔の塔底の温度が 250℃以上とされているので、第2中間留分と軽質ガス分とを効率良く分留することができる。
【0015】
本発明に係るFT合成炭化水素蒸留分離装置は、フィッシャー・トロプシュ合成反応により生成されたFT合成炭化水素を、沸点に応じて分留するFT合成炭化水素蒸留分離装置であって、FT合成反応器から液体として製出される重質FT合成炭化水素を第1中間留分とワックス分とに分留する重質炭化水素蒸留塔と、前記重質ガス蒸留塔とは別に、FT合成反応器からガスとして製出される軽質FT合成炭化水素を軽質ガス分と第2中間留分とに分留する軽質炭化水素蒸留塔と、を備えていることを特徴としている。
【0016】
この構成のFT合成炭化水素蒸留分離装置においては、FT合成反応器から液体として製出される重質FT合成炭化水素を第1中間留分とワックス分とに分留する重質炭化水素蒸留塔と、FT合成反応器からガスとして製出される軽質FT合成炭化水素を軽質ガス分と第2中間留分とに分留する軽質炭化水素蒸留塔と、を備えているので、FT合成反応器から製出される重質FT合成炭化水素と、軽質FT炭化水素をそれぞれ独立して分留することができる。よって、重質炭化水素蒸留塔において必要以上に加熱する必要がなくなり、エネルギーコストを大幅に削減することができる。また、軽質炭化水素蒸留塔において、ナフサ相当の炭化水素を効率的に製出することができる。
【0017】
ここで、前記軽質ガス分からナフサ相当の炭化水素を分離する軽質炭化水素還流槽を備えていることが好ましい。
この場合、軽質炭化水素蒸留塔において、軽質ガス分中にナフサ相当の炭化水素が含まれるような条件で分留を行っても、軽質炭化水素還流槽によって軽質ガス分からナフサ相当の炭化水素を分離することができる。
また、前記軽質炭化水素還流槽には、分離されたナフサ相当の炭化水素の一部を前記軽質炭化水素蒸留塔へ還流させる還流路を備えていることが好ましい。
【0018】
さらに、前記重質炭化水素蒸留塔で分留された第1中間留分と、前記軽質炭化水素蒸留塔で分留された第2中間留分と、前記軽質ガス分から分離されたナフサ相当の炭化水素と、を混合する混合部を備えていることが好ましい。
ナフサ相当の炭化水素と、重質炭化水素蒸留塔で分留された第1中間留分と、軽質炭化水素蒸留塔で分留された第2中間留分とは、同一条件で水素化精製処理を行うことができる。したがって、混合部によって、これら第1中間留分、第2中間留分及び前記軽質ガス分から分離されたナフサ相当の炭化水素と、を混合し、水素化精製処理することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、FT合成反応器において生成されたFT合成炭化水素からナフサ相当の炭化水素を効率良く回収することが可能であるとともに、ナフサ分、中間留分、ワックス分を分離する際のエネルギーコストを低減することが可能なFT合成炭化水素の精製方法及びFT合成炭化水素蒸留分離装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係るFT合成炭化水素の精製方法及びFT合成炭化水素蒸留分離装置が用いられる炭化水素合成システムの全体構成を示す概略図である。
【図2】本発明の実施形態に係るFT合成炭化水素蒸留分離装置の周辺を示す説明図である。
【図3】本発明の実施形態に係るFT合成炭化水素の精製方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付した図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。
最初に、図1を参照して、本実施形態であるFT合成炭化水素の精製方法及びFT合成炭化水素蒸留分離装置が用いられる液体燃料合成システム(炭化水素合成反応システム)の全体構成及び工程について説明する。
【0022】
図1に示すように、本実施形態にかかる液体燃料合成システム(炭化水素合成反応システム)1は、天然ガス等の炭化水素原料を液体燃料に転換するGTLプロセスを実行するプラント設備である。この液体燃料合成システム1は、合成ガス生成ユニット3と、FT合成ユニット5と、製品精製ユニット7とから構成される。
合成ガス生成ユニット3は、炭化水素原料である天然ガスを改質して一酸化炭素ガスと水素ガスを含む合成ガス(原料ガス)を生成する。
FT合成ユニット5は、生成された合成ガス(原料ガス)からフィッシャー・トロプシュ合成反応(以下、「FT合成反応」という。)により液体炭化水素を生成する。
製品精製ユニット7は、FT合成反応により生成された液体炭化水素を水素化・分留して液体燃料製品(ナフサ、灯油、軽油、ワックス等)を製造する。以下、これら各ユニットの構成要素について説明する。
【0023】
合成ガス生成ユニット3は、脱硫反応器10と、改質器12と、排熱ボイラー14と、気液分離器16,18と、脱炭酸装置20と、水素分離装置26とを主に備える。
脱硫反応器10は、水添脱硫装置等で構成され、原料である天然ガスから硫黄成分を除去する。
改質器12は、脱硫反応器10から供給された天然ガスを改質して、一酸化炭素ガス(CO)と水素ガス(H)とを主成分として含む合成ガス(原料ガス)を生成する。
排熱ボイラー14は、改質器12にて生成した合成ガスの排熱を回収して高圧スチーム(260℃〜300℃程度)を発生する。
気液分離器16は、排熱ボイラー14において合成ガスとの熱交換により加熱された水を気体(高圧スチーム)と液体とに分離する。
気液分離器18は、排熱ボイラー14にて冷却された合成ガスから凝縮分を除去し気体分を脱炭酸装置20に供給する。
脱炭酸装置20は、気液分離器18から供給された合成ガスから吸収溶剤を用いて炭酸ガスを除去する吸収塔22と、当該炭酸ガスを含む吸収溶剤から炭酸ガスを放散させて再生する再生塔24とを有する。
水素分離装置26は、脱炭酸装置20により炭酸ガスが分離された合成ガスから、当該合成ガスに含まれる水素ガスの一部を分離する。
【0024】
FT合成ユニット5は、例えば、気泡塔型反応器(気泡塔型炭化水素合成反応器)30と、気液分離器34と、分離器36と、気液分離器38と、本実施形態であるFT合成炭化水素蒸留分離装置100と、を主に備える。
気泡塔型反応器30は、合成ガス(原料ガス)を液体炭化水素に合成する反応器の一例であり、FT合成反応により合成ガスから液体炭化水素を合成するFT合成反応器として機能する。この気泡塔型反応器30は、例えば、塔型の容器内部に、液体炭化水素(FT合成反応の生成物)中に固体の触媒粒子を懸濁させたスラリーが収容された気泡塔型スラリー床式反応器で構成される。この気泡塔型反応器30は、上記合成ガス生成ユニットで生成された合成ガス(一酸化炭素ガスと水素ガス)とを反応させて液体炭化水素を合成する。
気液分離器34は、気泡塔型反応器30内に配設された伝熱管32内を流通して加熱された水を、水蒸気(中圧スチーム:温度200℃程度)と液体とに分離する。
分離器36は、気泡塔型反応器30の内部に収容されたスラリー中の触媒粒子と液体炭化水素とを分離処理する。
気液分離器38は、気泡塔型反応器30の上部に接続され、未反応合成ガス及び気体炭化水素を冷却処理する。
FT合成炭化水素蒸留分離装置100は、重質炭化水素蒸留塔110と、軽質炭化水素蒸留塔(代表例として、デブタナイザー)120と、軽質炭化水素還流槽(リフラックスドラム)132と、を主に備えている。重質炭化水素蒸留塔110は、気泡塔型反応器30から分離器36を介して供給された重質FT合成炭化水素を蒸留する。軽質炭化水素蒸留塔120は、気泡塔型反応器30から気液分離器38を介して供給された軽質FT合成炭化水素を蒸留する。軽質炭化水素還流槽(リフラックスドラム)132は、軽質炭化水素蒸留塔120で分留された軽質ガス分からナフサ相当の炭化水素を分離する。
【0025】
製品精製ユニット7は、水素化分解反応器50と、水素化精製反応器52と、気液分離器56,58と、精留塔70と、ナフサスタビライザー72とを備える。
水素化分解反応器50は、FT合成炭化水素蒸留分離装置100の重質炭化水素蒸留塔110に接続されており、その下流側に気液分離器56が設けられている。
水素化精製反応器52は、FT合成炭化水素蒸留分離装置100の重質炭化水素蒸留塔110、軽質炭化水素蒸留塔120及び軽質炭化水素還流槽(リフラックスドラム)132に接続されており、その下流側に気液分離器58が設けられている。
精留塔70は、気液分離器56,58から供給された液体炭化水素(FT合成炭化水素)を沸点に応じて分留する。
ナフサスタビライザー72は、ナフサ相当の炭化水素を精留して、軽質成分はオフガス側へ排出し、重質成分は製品のナフサとして分離・回収する。
【0026】
次に、以上のような構成の液体燃料合成システム1により、天然ガスから液体燃料を合成する工程(GTLプロセス)について説明する。
【0027】
液体燃料合成システム1には、天然ガス田または天然ガスプラントなどの外部の天然ガス供給源(図示せず。)から、炭化水素原料としての天然ガス(主成分がCH)が供給される。上記合成ガス生成ユニット3は、この天然ガスを改質して合成ガス(一酸化炭素ガスと水素ガスを主成分とする混合ガス)を製造する。
【0028】
まず、上記天然ガスは、水素分離装置26によって分離された水素ガスとともに脱硫反応器10に供給される。脱硫反応器10は、当該水素ガスを用いて天然ガスに含まれる硫黄分を例えばZnO触媒で水添脱硫する。
脱硫された天然ガスは、二酸化炭素供給源(図示せず。)から供給される二酸化炭素(CO)ガスと、排熱ボイラー14で発生した水蒸気とが混合された後で、改質器12に供給される。改質器12は、水蒸気・炭酸ガス改質法により、二酸化炭素と水蒸気とを用いて天然ガスを改質して、一酸化炭素ガスと水素ガスとを主成分とする高温の合成ガスを生成する。
【0029】
このようにして改質器12で生成された高温の合成ガス(例えば、900℃、2.0MPaG)は、排熱ボイラー14に供給され、排熱ボイラー14内を流通する水との熱交換により冷却(例えば350℃)されて、排熱回収される。
排熱ボイラー14において冷却された合成ガスは、凝縮液分が気液分離器18において分離・除去された後、脱炭酸装置20の吸収塔22、又は気泡塔型反応器30に供給される。吸収塔22において炭酸ガスが吸収され、再生塔24において炭酸ガスが放出される。なお、放出された炭酸ガスは、再生塔24から改質器12に送られて、上記改質反応に再利用される。
【0030】
このようにして、合成ガス生成ユニット3で生成された合成ガスは、上記FT合成ユニット5の気泡塔型反応器30に供給される。このとき、気泡塔型反応器30に供給される合成ガスの組成比は、FT合成反応に適した組成比(例えば、H:CO=2:1(モル比))に調整されている。
【0031】
また、水素分離装置26は、圧力差を利用した吸着、脱着(水素PSA)により、合成ガスに含まれる水素ガスを分離する。当該分離された水素は、ガスホルダー(図示せず。)等から圧縮機(図示せず。)を介して、液体燃料合成システム1内において水素を利用して所定反応を行う各種の水素利用反応装置(例えば、脱硫反応器10、水素化分解反応器50、水素化精製反応器52など)に、連続して供給される。
【0032】
次いで、上記FT合成ユニット5は、上記合成ガス生成ユニット3によって生成された合成ガスから、FT合成反応により、液体炭化水素を合成する。
【0033】
上記合成ガス生成ユニット3によって生成された合成ガスは、気泡塔型反応器30の底部から流入されて、気泡塔型反応器30内に収容されたスラリー内を上昇する。この際、気泡塔型反応器30内では、上述したFT合成反応により、当該合成ガスに含まれる一酸化炭素と水素ガスとが反応して、FT合成炭化水素が生成される。
気泡塔型反応器30で合成された炭化水素の液体分(重質FT合成炭化水素)は、スラリーとして触媒粒子ともに分離器36に導入される。
【0034】
分離器36は、スラリーを触媒粒子等の固形分と、重質FT合成炭化水素を含んだ液体分と、に分離する。分離された触媒粒子等の固形分は、その一部が気泡塔型反応器30に戻され、重質FT合成炭化水素は、FT合成炭化水素蒸留分離装置100の重質炭化水素蒸留塔110に供給される。
また、気泡塔型反応器30の塔頂からは、未反応の合成ガス(原料ガス)と合成された炭化水素(軽質FT合成炭化水素)のガス分とを含むガス成分が放出され、気液分離器38で分離された液体分がFT合成炭化水素蒸留分離装置100の軽質炭化水素蒸留塔120に供給される。
ここで、気液分離器38で分離されたガス分は、その一部が気泡塔型反応器30の底部に再投入されてFT合成反応に再利用されるとともに、残りがオフガス側へ排出され、燃料ガスとして使用されたり、LPG(液化石油ガス)相当の燃料が回収されたり、合成ガス生成ユニットの改質器12の原料に再利用されたりする。
【0035】
次いで、重質炭化水素蒸留塔110は、気泡塔型反応器30から分離器36を介して供給された重質FT合成炭化水素を加熱して、沸点の違いを利用して分留し、ガス分と、第1中間留分(沸点が約360℃以下の炭化水素)と、ワックス分(沸点が約360℃より大の炭化水素)とに分留する。
また、軽質炭化水素蒸留塔120は、気泡塔型反応器30から気液分離器38を介して供給された軽質FT合成炭化水素を加熱して、沸点の違いを利用して分留し、軽質ガス分(概ねC以下の炭化水素)と、第2中間留分(概ねC以上の炭化水素)とに分留する。軽質炭化水素蒸留塔120から取り出される軽質ガス分は、軽質炭化水素還流槽132に移送され、ナフサ相当の炭化水素が分離される。
そして、重質炭化水素蒸留塔110の底部から取り出されるワックス分(沸点が約360℃より大の炭化水素)は、水素化分解反応器50に移送される。
重質炭化水素蒸留塔110の中央部から取り出された第1中間留分は、軽質炭化水素蒸留塔120から取り出された第2中間留分及び軽質炭化水素還流槽132から取り出されたナフサ相当の炭化水素と混合され、水素化精製反応器52に移送される。
【0036】
水素化分解反応器50は、炭素数の多いワックス分(概ねC21以上)を、上記水素分離装置26から供給された水素ガスを利用して水素化分解して、炭素数をC20以下に低減する。この水素化分解反応では、触媒と熱を利用して、炭素数の多い炭化水素のC−C結合を切断して、炭素数の少ない低分子量の炭化水素を生成する。この水素化分解反応器50により、水素化分解された液体炭化水素を含む生成物は、気液分離器56で気体と液体とに分離され、そのうち液体炭化水素は、精留塔70に移送され、気体分(水素ガスを含む。)は、水素化精製反応器52に移送される。
【0037】
水素化精製反応器52は、炭素数が中程度である中間留分(概ねC11〜C20)及びナフサ相当のFT合成炭化水素(概ねC〜C10)を、水素分離装置26から水素化分解反応器50を介して供給された水素ガスを用いて、水素化精製する。この水素化精製反応は、上記FT合成炭化水素の異性化及び不飽和結合に水素を付加して飽和させ、主に側鎖状飽和炭化水素(イソパラフィン)を生成する反応である。この結果、水素化精製された液体炭化水素を含む生成物は、気液分離器58で気体と液体に分離され、そのうち液体炭化水素は、精留塔70に移送され、気体分(水素ガスを含む。)は、上記水素化反応に再利用される。
【0038】
次いで、精留塔70は、上記のようにして水素化分解反応器50及び水素化精製反応器52から供給された液体炭化水素を蒸留して、炭素数がC10以下の炭化水素(沸点が約150℃未満)と、灯油(沸点が約150〜250℃)と、軽油(沸点が約250〜360℃)及び水素化分解反応器50からの未分解ワックス分(沸点が360℃より大)とに分留する。精留塔70の塔底からは未分解ワックス分が得られ、これは水素化分解反応器50の前にリサイクルされる。精留塔70の中央部からは灯油及び軽油が取り出される。一方、精留塔70の塔頂からは、炭素数がC10以下の炭化水素ガスが取り出されて、ナフサスタビライザー72に供給される。
【0039】
さらに、ナフサスタビライザー72では、上記精留塔70から分留された炭素数がC10以下の炭化水素を蒸留して、製品としてのナフサ(C〜C10)を分留する。これにより、ナフサスタビライザー72の下部からは、高純度のナフサが取り出される。一方、ナフサスタビライザー72の塔頂からは、製品対象外である炭素数が所定数以下の炭化水素を主成分とするオフガスが排出される。このオフガスは、燃料ガスとして使用されたり、LPG相当の燃料が回収されたりする。
【0040】
以上、液体燃料合成システム1の工程(GTLプロセス)について説明した。係るGTLプロセスにより、天然ガスは、高純度のナフサ(C〜C10:粗ガソリン)、灯油(C11〜C15:ケロシン)及び軽油(C16〜C20:ガスオイル)等の液体燃料に転換されることになる。
【0041】
次に、図2を参照して、本実施形態であるFT合成炭化水素蒸留分離装置100周辺の構成について詳細に説明する。
このFT合成炭化水素蒸留分離装置100は、前述のように、重質炭化水素蒸留塔110と、軽質炭化水素蒸留塔120と、軽質炭化水素還流槽132と、を備えている。
【0042】
分離器36と重質炭化水素蒸留塔110との間には、移送される重質FT合成炭化水素を加熱する第1加熱ヒータ119が設けられている。また、重質炭化水素蒸留塔110においては、塔頂からガス分を抜き出すガス分移送路111と、中央部から第1中間留分を取り出す第1中間留分移送路112と、塔底からワックス分を抜き出すワックス分移送路113と、下部からストリッピングスチーム(例えば約150℃)を供給する供給路114と、が接続されている。
【0043】
ここで、ガス分移送路111には、ガス分を冷却する熱交換器115が設けられており、冷却されたガス分は還流槽(リフラックスドラム)116に移送される。この還流槽(リフラックスドラム)116において、凝縮した液体炭化水素及び水とオフガスとに分離され、液体炭化水素は重質炭化水素蒸留塔110に戻され、水及び排出ガスはそれぞれ外部に排出される構成とされている。
また、第1中間留分移送路112は、サイドストリッパー117及び混合路105を介して水素化精製反応器52に接続されている。
さらに、ワックス分移送路113は、水素化分解反応器50に接続されている。
【0044】
軽質炭化水素蒸留塔120においては、塔頂から軽質ガス分を抜き出す軽質ガス分移送路121と、塔底から第2中間留分を抜き出す第2中間留分移送路122と、が接続されている。
第2中間留分移送路122は、混合路105を介して水素化精製反応器52に接続されるとともに、第2中間留分の一部を軽質炭化水素蒸留塔120に還流させる還流路128を備えている。なお、この還流路128には、第2中間留分を加熱する第2加熱ヒータ129が設けられている。また、軽質ガス分移送路121は、熱交換器131を経て軽質炭化水素還流槽132に接続されている。
ここで、軽質炭化水素蒸留塔120においては、軽質FT炭化水素を加熱する手段として、排熱ボイラー14において合成ガスとの熱交換により得られた高圧スチーム(260℃〜300℃程度)を利用するように構成されている。
【0045】
軽質炭化水素還流槽132は、軽質ガス分を冷却する熱交換器131を介して冷却された軽質ガス分をナフサ相当の炭化水素(ナフサ分)と水とオフガスとに分離する。この軽質炭化水素還流槽132で分離されたナフサ相当の炭化水素は、一部は還流路133を介して軽質炭化水素蒸留塔120へ還流され、残りは混合路105を介して第1中間留分、第2中間留分と混合され、水素化精製反応器52に移送される構成とされている。
【0046】
次に、このような構成とされたFT合成炭化水素蒸留分離装置100を用いた本実施形態であるFT合成炭化水素の精製方法について、図2及び図3を参照して説明する。
【0047】
まず、気泡塔型反応器30(FT合成反応器)において、FT合成炭化水素が合成される(FT合成炭化水素合成工程S1)。
気泡塔型反応器30から液体として製出された重質FT合成炭化水素は、触媒と混合されたスラリーとして分離器36に移送される。そして、分離器36において触媒と重質FT合成炭化水素とが分離される(重質FT合成炭化水素分離工程S2)。
【0048】
分離された重質FT合成炭化水素は、第1加熱ヒータ119で加熱されるとともに重質炭化水素蒸留塔110に移送され、この重質炭化水素蒸留塔110において、ガス分と、第1中間留分(沸点が約360℃以下の炭化水素)と、ワックス分(沸点が約360℃より大の炭化水素)とに分留される(重質FT合成炭化水素分留工程S3)。ここで、重質FT合成炭化水素分留工程S3においては、重質炭化水素蒸留塔110のうちガス分が放出される塔頂部分の圧力が、130〜170kPaとされ、このガス分を冷却する熱交換器115の出口温度が20〜50℃に設定されている。
重質炭化水素蒸留塔110で分留された第1中間留分は、水素化精製反応器52へと移送され、ワックス分は水素化分解反応器50へと移送される。
【0049】
一方、気泡塔型反応器30からガスとして製出される軽質FT合成炭化水素は、水分や未反応の合成ガスとともに気液分離器38に移送され、凝縮した液体分(軽質FT合成炭化水素等)が分離される(軽質FT合成炭化水素分離工程S4)。
【0050】
気液分離器38で分離された軽質FT合成炭化水素が軽質炭化水素蒸留塔120に移送され、この軽質炭化水素蒸留塔120において、軽質ガス分(概ねC以下の炭化水素)と第2中間留分(概ねC以上の炭化水素)とに分留される(軽質FT合成炭化水素分留工程S5)。ここで、軽質FT合成炭化水素分留工程S5においては、軽質炭化水素蒸留塔120の上部の温度が100〜120℃となるように設定されている。さらに、第2中間留分が取り出される塔底の温度が250〜270℃に設定されている。
【0051】
軽質炭化水素蒸留塔120で分留された軽質ガス分は、熱交換器131によって冷却(軽質ガス冷却工程S6)され、軽質炭化水素還流槽132において、凝縮して液化したナフサ相当の炭化水素が分離される(ナフサ分分離工程S7)。ここで、軽質ガス分を冷却する熱交換器131の出口温度は、10〜50℃に設定されている。また、軽質炭化水素還流槽132の圧力は、200〜600kPaに設定されている。
ナフサ分分離工程S7で分離されたナフサ相当の炭化水素の一部は、軽質炭化水素蒸留塔120へ還流される(還流工程S11)。
還流工程S11に供されなかった残りのナフサ相当の炭化水素と、軽質炭化水素蒸留塔120で分留された第2中間留分は、重質炭化水素蒸留塔110で分留された第1中間留分と混合され(混合工程S8)、水素化精製反応器52に移送される。
このような条件下においては、還流工程S11に供されずに第1中間留分と第2中間留分とに混合されるナフサ相当の炭化水素の割合が、軽質炭化水素蒸留塔120へのナフサ相当の炭化水素供給量全体の10〜25モル%とされている。
【0052】
そして、第1中間留分、第2中間留分及びナフサ相当の炭化水素は、水素化精製反応器52において、前述した水素化精製処理が施される(水素化精製処理工程S9)。
一方、水素化分解反応器50へと移送されたワックス分は、水素化分解反応器50において、前述した水素化分解処理が施される(水素化分解処理工程S10)。
【0053】
このようにして、水素化精製処理及び水素化分解処理されたFT合成炭化水素は、精留塔70で分留されるとともに、ナフサスタビライザー72で処理され、ナフサ、灯油、軽油、ワックス等の液体燃料製品とされる。
【0054】
以上のような構成とされた本実施形態であるFT合成炭化水素蒸留分離装置100及びこのFT合成炭化水素蒸留分離装置100を用いたFT合成炭化水素の精製方法によれば、気泡塔型反応器30から液体として製出される重質FT合成炭化水素を第1中間留分とワックス分とに分留する重質炭化水素蒸留塔110と、気泡塔型反応器30からガスとして製出される軽質FT合成炭化水素を軽質ガス分と第2中間留分とに分留する軽質炭化水素蒸留塔120と、が別に設けられているので、気泡塔型反応器30から液体として製出される重質FT合成炭化水素と、気泡塔型反応器30からガスとして製出される軽質FT合成炭化水素を混合して蒸留塔で各留分に分留する場合に較べて、重質炭化水素蒸留塔110においては、軽質な炭化水素を分留する必要がなくなり、重質FT合成炭化水素を必要以上に加熱することなく、ワックス分と第1中間留分とを分留することができる。また、軽質炭化水素蒸留塔120においては、ナフサ相当の炭化水素を多く含む軽質FT合成炭化水素を、軽質ガス分と第2中間留分とに分留しているので、ナフサ相当の炭化水素を効率良く回収することができる。
【0055】
また、軽質ガス分からナフサ相当の炭化水素を分離する軽質炭化水素還流槽132を備えているので、軽質炭化水素蒸留塔120において、軽質ガス分中に含まれる炭化水素の含有量を多くなるように、塔内の条件を設定してもナフサ相当の炭化水素を効率良く回収することができる。
本実施形態では、軽質炭化水素蒸留塔120の上部の温度が100〜120℃となるように設定され、第2中間留分が取り出される塔底の温度が250〜270℃に設定され、液化したナフサ相当の炭化水素が分離される軽質炭化水素還流槽132の圧力が200〜600kPaに設定されており、第1中間留分と第2中間留分とに混合されるナフサ相当の炭化水素の割合が、軽質炭化水素蒸留塔120へのナフサ相当の炭化水素供給量全体の10〜25モル%とされている。
【0056】
このように、軽質炭化水素蒸留塔120の上部の温度を100〜120℃となるように設定することにより、軽質炭化水素蒸留塔120において水が凝縮することを防止できる。よって、軽質炭化水素蒸留塔120を安定して操業することが可能となる。
また、第2中間留分が取り出される塔底の温度を250〜270℃に設定しているので、軽質FT炭化水素の加熱に、排熱ボイラー14において合成ガスとの熱交換により得られた高圧スチーム(260〜300℃)を利用することが可能となる。
さらに、液化したナフサ相当の炭化水素が分離される軽質炭化水素還流槽132の圧力を200〜600kPaに設定しているので、軽質炭化水素蒸留塔120において水が凝縮することを防止できる。
【0057】
また、重質炭化水素蒸留塔110で分留された第1中間留分と、軽質炭化水素蒸留塔120で分留された第2中間留分と、軽質炭化水素還流槽132で分離されたナフサ相当の炭化水素とを混合路105で混合して、水素化精製反応器52において水素化精製処理を行う構成としているので、水素化精製処理を好適に行うことができる。
【0058】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、軽質炭化水素還流槽で分離したナフサ相当の炭化水素と第1中間留分と第2中間留分とを混合して、水素化精製処理を行う構成として説明したが、これに限定されることはなく、ナフサ相当の炭化水素を単独で水素化処理してもよい。
【0059】
また、合成ガス生成ユニット3、FT合成ユニット5、製品精製ユニット7の構成は、本実施形態に記載されたものに限定されることはなく、FT合成反応器で合成されたFT合成炭化水素のうち軽質FT合成炭化水素の分留と、重質FT合成炭化水素の分留とを、それぞれ独立して行う構成であればよい。
さらに、スラリー床式のFT合成反応器を例に挙げて説明したが、FT合成反応器の構成に限定はなく、固定床式であってもよい。
【実施例】
【0060】
以下に、本発明の効果を確認すべく実施した確認実験の結果について説明する。
従来例として、FT合成反応器からガスとして製出される軽質FT合成炭化水素と、FT合成反応器から液体として製出される重質FT合成炭化水素とを混合した上で、蒸留塔で分留した。なお、蒸留塔の後に設置される還流槽の圧力を500kPa、熱交換器の後の塔頂ガス(軽質ガス)凝縮温度を40℃とした。
本発明例として、FT合成反応器から液体として製出される重質FT合成炭化水素を重質炭化水素蒸留塔で分留し、FT合成反応器からガスとして製出される軽質FT合成炭化水素を軽質炭化水素蒸留塔120で分留した。なお、本発明例1では、軽質炭化水素蒸留塔120の後に設置される還流槽(軽質炭化水素還流槽132)の圧力を300kPa、軽質炭化水素蒸留塔120の塔頂温度が105℃、軽質炭化水素蒸留塔120の塔底温度が250℃、熱交換器131の後の塔頂ガス凝縮温度を40℃とした。また、重質炭化水素蒸留塔110の塔頂圧を500kPa、熱交換器115の後の塔頂ガス凝縮温度を40℃とした。本発明例2では、軽質炭化水素蒸留塔120の後に設置される還流槽(軽質炭化水素還流槽132)の圧力を300kPa、軽質炭化水素蒸留塔120の塔頂温度が 105℃、軽質炭化水素蒸留塔120の塔底温度が250℃、熱交換器131の後の塔頂ガス凝縮温度を40℃とした。また、重質炭化水素蒸留塔110の塔頂圧を500kPa、熱交換器115の後の塔頂ガス凝縮温度を25℃とした。
【0061】
従来例及び本発明例において、FT合成炭化水素蒸留分離装置で蒸留に必要とする熱量、及び、蒸留塔に供給される重質及び軽質FT合成炭化水素中に含まれるナフサ相当の炭化水素(C5以上、沸点150℃程度の炭化水素)に対する各々の還流槽から分離されたオフガス中に含まれるナフサ相当の炭化水素の割合(重量百分率)であるナフサ相当の炭化水素のロス率(質量%)を評価した。
評価結果を表1に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
従来例の熱量を1とした場合、本発明例1及び本発明例2の熱量は、それぞれ0.59,0.59となった。
また、従来例においては、ナフサ相当の炭化水素のロス率が13.6質量%であった。これに対して、本発明例1においては、ナフサ相当の炭化水素のロス率が5.2質量%、本発明例2においては、ナフサ相当の炭化水素のロス率が4.7質量%であった。
この結果、本発明例によれば、熱量を少なく抑えることができるとともに、ナフサ相当の炭化水素を効率的に回収できることが確認された。
【符号の説明】
【0064】
30 気泡塔型反応器(FT合成反応器)
100 FT合成炭化水素蒸留分離装置
105 混合路
110 重質炭化水素蒸留塔
120 軽質炭化水素蒸留塔
132 軽質炭化水素還流槽(リフラックスドラム)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィッシャー・トロプシュ合成反応により生成されたFT合成炭化水素を、沸点に応じて分留するとともに、水素化及び精製処理を行って液体燃料製品を製造するFT合成炭化水素の精製方法であって、
FT合成反応器から液体として製出される重質FT合成炭化水素を、重質炭化水素蒸留塔において第1中間留分とワックス分とに分留する重質FT合成炭化水素分留工程と、
前記重質FT合成炭化水素分留工程とは別に、FT合成反応器からガスとして製出される軽質FT合成炭化水素を、軽質炭化水素蒸留塔において軽質ガス分と第2中間留分とに分留する軽質FT合成炭化水素分留工程と、
を備えていることを特徴とするFT合成炭化水素の精製方法。
【請求項2】
前記軽質FT合成炭化水素分留工程が、軽質炭化水素還流槽で前記軽質ガス分からナフサ相当の炭化水素を分離するナフサ分分離工程を備えていることを特徴とする請求項1に記載のFT合成炭化水素の精製方法。
【請求項3】
前記ナフサ分分離工程において、分離されたナフサ相当の炭化水素の一部を軽質炭化水素蒸留塔へ還流させる還流工程を備えていることを特徴とする請求項2に記載のFT合成炭化水素の精製方法。
【請求項4】
前記重質FT合成炭化水素分留工程で分留された第1中間留分と、前記軽質FT合成炭化水素分留工程において分留された第2中間留分と、軽質ガス分から分離されたナフサ相当の炭化水素と、を混合し、水素化精製処理を行うことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のFT合成炭化水素の精製方法。
【請求項5】
前記軽質FT合成炭化水素分留工程において、前記軽質ガス分から前記ナフサ相当の炭化水素を分離する前記軽質炭化水素還流槽の圧力が200〜600kPaの範囲内に設定されていることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか一項に記載のFT合成炭化水素の精製方法。
【請求項6】
前記軽質FT合成炭化水素分留工程において、前記軽質ガス分が取り出される前記軽質炭化水素蒸留塔の塔頂の温度が100〜120℃の範囲内に設定されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のFT合成炭化水素の精製方法。
【請求項7】
前記軽質FT合成炭化水素分留工程において、前記第2中間留分が取り出される前記軽質炭化水素蒸留塔の塔底の温度が250〜270℃の範囲内に設定されていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のFT合成炭化水素の精製方法。
【請求項8】
フィッシャー・トロプシュ合成反応により生成されたFT合成炭化水素を、沸点に応じて分留するFT合成炭化水素蒸留分離装置であって、
FT合成反応器から液体として製出される重質FT合成炭化水素を第1中間留分とワックス分とに分留する重質炭化水素蒸留塔と、
前記重質ガス蒸留塔とは別に、FT合成反応器からガスとして製出される軽質FT合成炭化水素を軽質ガス分と第2中間留分とに分留する軽質炭化水素蒸留塔と、
を備えていることを特徴とするFT合成炭化水素蒸留分離装置。
【請求項9】
前記軽質ガス分からナフサ相当の炭化水素を分離する軽質炭化水素還流槽を備えていることを特徴とする請求項8に記載のFT合成炭化水素蒸留分離装置。
【請求項10】
前記軽質炭化水素還流槽には、分離されたナフサ相当の炭化水素の一部を前記軽質炭化水素蒸留塔へ還流させる還流路を備えていることを特徴とする請求項8に記載のFT合成炭化水素蒸留分離装置。
【請求項11】
前記重質炭化水素蒸留塔で分留された第1中間留分と、前記軽質炭化水素蒸留塔で分留された第2中間留分と、前記軽質ガス分から分離されたナフサ相当の炭化水素と、を混合する混合部を備えていることを特徴とする請求項8に記載のFT合成炭化水素蒸留分離装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−202678(P2010−202678A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−46152(P2009−46152)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(504117958)独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構 (101)
【出願人】(509001630)国際石油開発帝石株式会社 (57)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【出願人】(591090736)石油資源開発株式会社 (70)
【出願人】(000105567)コスモ石油株式会社 (443)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)