説明

GNSS位置支援信号捕捉のためのシステムおよび方法

【課題】GNSS位置支援信号捕捉のためのシステムおよび方法を提供する。
【解決手段】全地球測位システムGPSデバイスなどの全地球航法衛星システムGNSSデバイスは、衛星信号捕捉時間が低減されるように、暦データおよび/または天体暦データからの衛星軌道位置情報を使用して、解析される周波数ビンの数を減少させる、または、信号強度閾値を設定するなどで、探索パラメータを変更する。例示的な実施形態は、暦データおよび天体暦データの少なくとも一方に基づいて少なくとも1つのGNSS衛星についての軌道位置を推定し、少なくとも1つのGNSS衛星から放射される信号を検出し、暦データおよび天体暦データから決定される少なくとも1つのGNSS衛星についての推定軌道位置情報に基づいて、検出される信号の解析で使用される少なくとも1つのパラメータを調整する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
その中の1つのコンポーネントが全地球測位システム(Global Positioning System)(GPS)である全地球航法衛星システム(Global Navigation Satellite System)(GNSS)は、衛星ベースの航法システムである。GNSSは、陸、海、および空のユーザが、ユーザの3次元位置、速度、および時間を決定することを可能にする。GPSは、NAVSTAR(NAVigation Satellite Timing and Ranging(航法衛星タイミングおよび測距))衛星を使用する。現在の衛星配置は、21の運転中の衛星と3つのアクティブなスペアからなる。この配置は、GNSSデバイスが、任意所与の時間に、4〜12のGNSS衛星から信号を受信するようにさせる。最低4つのGNSS衛星によって、GNSSデバイスがその位置(緯度、経度、および高度)およびGNSSシステム時間を計算することが可能になる。高度は、通常、平均海面のことを言う。GNSS衛星からのGNSS衛星信号は、GNSS衛星を識別すると共に、位置、タイミング、測距データ、衛星の状態、および更新された天体暦(軌道パラメータ)を提供するために使用される情報を含む。精度の粗い軌道情報は、暦データにおいて入手可能である。天体暦データは、精度の高い軌道位置情報を含む。
【0002】
衛星信号捕捉は、特に、GNSSデバイスのコールドスタート初期化中に、比較的長い期間を必要とする(GNSSデバイスは、自分自身および/または任意の衛星についての現在位置情報を全く持たない、かつ/または、GNSSデバイスは時間を知らない)。ウォームスタート初期化中、GNSSデバイスは、GNSS衛星信号捕捉プロセスを速めるのに使用されてもよい、比較的最近の暦データおよび/または天体暦データおよび/または時間の推定値などの一定の情報を実際に有する。しかし、1つのGNSS衛星についてのGNSS衛星信号を捕捉する時間および4つ以上のGNSS衛星信号を捕捉するのに必要とされる総時間は、GNSSデバイスユーザにとって非常に重要である。すなわち、GNSSデバイスのユーザは、位置情報が提示されるまで、ある識別可能な期間の間待たなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許公報2007/0046536
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そのため、GNSS衛星信号捕捉時間を低減することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
全地球測位システム(GPS)信号などの全地球航法衛星システム(GNSS)信号を捕捉するシステムおよび方法が開示される。例示的な実施形態は、GNSS衛星信号捕捉時間が低減されるように、暦(アルマナック)データおよび/または天体暦(エフェメリス)データからの衛星軌道位置情報を使用して、解析される周波数ビンの数を減少させる、または、信号強度閾値を設定するなどで、少なくとも1つの信号処理パラメータを調整する。
【0006】
例示的な実施形態は、暦データおよび天体暦データの少なくとも一方に基づいて少なくとも1つのGNSS衛星についての軌道位置を推定し、少なくとも1つのGNSS衛星から放射される信号を検出し、暦データおよび天体暦データから決定される少なくとも1つのGNSS衛星についての推定軌道位置情報に基づいて、検出される信号の解析で使用される少なくとも1つのパラメータを調整する。
【0007】
さらなる態様によれば、例示的な実施形態は、GNSS衛星信号を捕捉するように動作する装置であり、装置は、GNSSフロントエンドであって、少なくとも1つのGNSS衛星によって放射されるGNSS信号を受信するように動作し、かつ、GNSS衛星信号を局部発振器信号と混合して、到来するGNSS衛星信号の搬送波周波数をシフトさせることによって、GNSS信号を周波数ダウンコンバートして、ダウンコンバートされたGNSS衛星信号にするように動作する、GNSSフロントエンド、および、GNSSシステムプロセッサを備える。GNSSシステムプロセッサは、ダウンコンバートされたGNSS衛星信号をデジタルGNSS衛星信号に変換し、デジタルGNSS衛星信号を処理して、複数の周波数ビンにし、暦データおよび天体暦データの少なくとも一方に基づいて少なくとも1つのGNSS衛星についての軌道位置を推定し、少なくとも1つのGNSS衛星についての推定軌道位置情報に基づいて、GNSS衛星信号捕捉プロセスで使用される少なくとも1つの信号処理パラメータを調整し、調整された信号処理パラメータに基づいて、GNSS衛星によって放射されたGNSS信号に相当する周波数ビンのうちの少なくとも1つの周波数ビンを識別するように動作する。
【0008】
好ましい、また、代替の実施形態は、以下の図面を参照して以下で詳細に述べられる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】全地球航法衛星システム(GNSS)デバイスの実施形態の略ブロック図である。
【図2】高速フーリエ変換(FFT)解析プロセスを使用するGNSS衛星信号相関プロセスを示すブロック図である。
【図3】検出されたGNSS衛星信号に相当する複数の周波数ビンの概念的に例証的な3次元図である。
【図4】GNSS衛星信号捕捉プロセス中に探索される低減された数の周波数ビンの概念的に例証的な3次元図である。
【図5】GNSSデバイスの実施形態による信号強度閾値の調整後、GNSS衛星信号捕捉プロセス中に探索される周波数ビンの概念的に例証的な3次元図である。
【図6】GNSS衛星信号捕捉プロセス中に探索される、より微細な解像度の周波数ビンの概念的に例証的な3次元図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
全地球測位システム(GPS)デバイスなどの全地球航法衛星システム(GNSS)デバイス100の実施形態は、GNSS衛星信号捕捉時間が低減されるように、暦データおよび/または天体暦データから得られる、推定衛星軌道位置情報を使用して、信号強度閾値を設定する。暦データおよび/または天体暦データは、メモリから取出されてもよく、または、検出衛星信号において受信されてもよい。GNSSデバイス100は、交換可能に、GPSデバイス、衛星位置検出デバイスなどのことを指すことがある。
【0011】
図1は、GNSSデバイスの実施形態の略ブロック図である。GNSSデバイス100は、GNSSフロントエンド102およびGNSSプロセッサシステム104を含む。
GNSSフロントエンド102は、複数の可視GNSS衛星からの信号を検出するGNSSアンテナ106から、到来するアナログGNSS衛星信号を受信する。アナログGNSS衛星信号は、低雑音増幅器108によって増幅され、バンドパスフィルタ110によってフィルタリングされる。低雑音増幅器108およびバンドパスフィルタ110は、所望である場合、複数段で設けられてもよい。
【0012】
バンドパスフィルタ110の出力におけるアナログGNSS衛星信号は、周波数ダウンコンバータ112内で、アナログGNSS衛星信号を局部発振器信号と混合して、到来するアナログGNSS衛星信号の搬送波周波数を、より低くかつより管理し易い周波数帯にシフトさせることによってダウンコンバートされる。このダウン変換は、複数回実施されて、アナログGNSS衛星信号の周波数を複数ステップで最終的な所望の周波数まで減少させることができる。各混合動作は、低周波数帯と共に高周波数情報帯を生成する。したがって、周波数ダウンコンバータ112の各混合段は、対応する高周波数帯の情報を除去するためにバンドパスフィルタを必要する場合がある。周波数基準114は、周波数ダウンコンバータ112用の周波数基準を提供する。
【0013】
GNSSプロセッサシステム104は、アナログ−デジタル(A/D)サンプラー116を含み、アナログ−デジタル(A/D)サンプラー116は、周波数基準114からの信号に応答して、ダウンコンバートされたアナログGNSS衛星信号をデジタルGNSS衛星信号に変換する。GNSSプロセッサ118は、ダウンコンバートされたデジタルGNSS信号を使用して、その時アンテナが見える所において、GNSS衛星についての測距および衛星情報を最初に決定し、次に、緯度、経度、高度、および/またはGNSSシステム時間を決定する。
【0014】
捕捉および追跡は、GNSSプロセッサ118によってソフトウェアで実施されることができる。GNSS衛星信号を捕捉し追跡することは、主に、GNSS衛星とGNSSデバイス100との間でコードおよび周波数オフセットが、定期的に決定され、追跡されることを意味する。追跡ループを実行する回数の典型的な値は、1000回/秒である。GNSS衛星位置は、これらのオフセットから決定されるが、それは、GNSS受信機において利用可能な処理能力に応じて速く、または、遅く行われることができる。
【0015】
GNSS衛星は、GNSSデバイス100によって検出される信号を送信する。各GNSS衛星からの送信されるGNSS信号は、1023個のチップのシーケンスである擬似雑音(PN)コードで変調される。さらに、GNSS衛星信号は、暦データおよび天体暦データを含むさらなるデータストリームによって変調される。
【0016】
受信されたGNSS衛星信号内のPNコードは、周期的に繰返される。GNSSデバイス100は、多くの異なる周波数で複数のレプリカPNコードを生成し、複数のレプリカPNコードは、相関プロセスを使用して、受信されたGNSS衛星信号と比較される。高速フーリエ変換(FFT)技法が使用されて、相関プロセスを容易にする。例示的なFFTプロセスは、参照により本明細書に組込まれる、「Fast Fourier Transform with Down Sampling Based Navigational Satellite Signal Tracking(航法衛星信号追跡に基づくダウンサンプリングを備えた高速フーリエ変換)」という名称のZhike他に対する米国特許公報2007/0046536に記載される。複数の周波数ビンを使用して信号を解析する任意の適したGNSS衛星追跡システムは、本明細書で述べられる実施形態を使用して、より迅速に、かつ/または、より正確にGNSS衛星信号を捕捉することができる。
【0017】
FFT解析プロセスは、GNSS衛星信号情報の相関をとって、相関値を生成し、相関値は、ある時間範囲にわたって一連の周波数ビン内に格納される。GNSS衛星信号は、少なくとも1つの特定の周波数ビンに相当する一意のPNコードを有するであろう。こうして、PN信号は、GNSS信号捕捉プロセス中にGNSSデバイス100によって探索される周波数ビンのうちの少なくとも1つの周波数ビンに相当する。PNコードは、比較的狭い周波数範囲にわたって検出可能であってよく、そのため、GNSS衛星信号は、FFT解析プロセス中に規定される周波数ビンの周波数範囲に応じていくつかの隣接する周波数ビン内で検出可能であってよい。
【0018】
GNSS信号が「捕捉される(acquired)」と(GNSS衛星信号の周波数と時間が、相関プロセスによって特定されるとき)、GNSSプロセッサ118は、GNSS衛星に対する相対距離を決定することができる。少なくとも4つのGNSS衛星信号が捕捉され、かつ、対応するGNSS衛星軌道位置が決定されるとき、最小2乗誤差三角測量プロセスが使用されて、GNSS衛星に対するGNSSデバイス100のロケーション(GNSS位置)が決定される。
【0019】
GNSS衛星の位置が、地球に対してわかっているため、GNSSプロセッサ118は、GNSSデバイス100の緯度および経度を決定する。GNSSプロセッサ118は、また、GNSSデバイス100が3次元空間内で動作する場合、高度(または深さ)を決定することができる。GNSSプロセッサ118は、さらに、捕捉されたGNSS信号から、レートおよびGNSSシステム時間を決定してもよい。
【0020】
先に述べたように、受信されたGNSS衛星信号内のGNSSデータは、GNSSプロセッサ118によって(時間領域の代わりに)周波数領域で処理される。周波数領域処理技法は、ウェーブレット多重解像度解析(Wavelet Multiresolution Analysis)(WMA)のためにFFTを使用する。こうしたソフトウェアベースGNSS信号捕捉は、ハードウェアベース信号捕捉より速くてもよく、また、ソフトウェア処理は、フロントエンド処理の多くをなくす可能性がある。しかし、信号捕捉中に使用される周波数領域技法は、従来の時間領域技法より速いが、GNSS衛星信号捕捉に必要とされる計算を終了させるために必要とされる識別可能な時間量が依然として存在するであろう。こうして、プロセッサ118の速度に応じて、バッチデータ採取の終りから信号捕捉段階の終了までに遅延が発生する可能性がある。
【0021】
GNSSシステムプロセッサ118は、さらに、メモリ120を含む。先に述べたように、受信されたGNSS衛星信号は、暦データおよび天体暦データを含む。受信された暦データおよび/または天体暦データ内の情報は、データベースまたはテーブルなどのメモリ120の暦データベース122および/または天体暦データベース124内に適したフォーマットで保存される。複数のGNSS衛星についての精度の粗い衛星軌道位置情報は、暦データベース122内に存在する。より正確な衛星軌道位置情報は、天体暦データベース124内に存在する。他の実施形態は、受信される暦データおよび/または天体暦データを、他のフォーマットで、メモリ領域またはさらに他のメモリデバイス内に格納してもよい。
【0022】
GNSS推定ロジック126は、GNSS衛星位置を推定するのに使用される、メモリ120内に格納されたソフトウェアである。GNSS推定ロジック126は、任意のコンピュータおよび/またはプロセッサ関連システムまたは方法によって、または、それと共に使用するための任意のコンピュータ読取り可能媒体上に格納されることができることを当業者は理解するであろう。GNSS位置推定ロジック126(GNSSプロセッサ118によって取出され、実行される)は、暦データベース122および/または天体暦データベース124内の衛星軌道位置情報に基づいて、選択された可視GNSS衛星の軌道位置を推定する。
【0023】
暦データおよび天体暦データは、GNSS衛星信号内の複数の部分で送信され、相応して、暦データおよび天体暦データの完全なセットを受信するために、ある期間が必要とされる。比較的最近捕捉された暦データおよび天体暦データは、メモリ120の、それぞれ、暦データベース122および天体暦データベース124内に保存される。暦データおよび天体暦データの受信日時もまた、保存され、それにより、暦データおよび天体暦データの有効性の評価が、GNSS信号捕捉プロセス中に、GNSSプロセッサ118によって行われてもよい。すなわち、暦データベース122および/または天体暦データベース124は、GNSSデバイス100のロケーションに対するGNSS衛星軌道位置の推定について、比較的最新でなければならない。GNSSデバイス100に対するGNSS衛星の軌道位置を推定するための任意の適したプロセスは、GNSSデバイス100の種々の実施形態によって使用されてもよい。
【0024】
相応して、暦データベース122および/または天体暦データベース124内の情報が、適した正確度でGNSS衛星軌道位置を推定するのに使用される場合、暦データベース122および/または天体暦データベース124内の情報は、比較的最新でなければならない。一実施形態では、精度の粗い衛星軌道位置は、暦データベース122内の暦情報に基づいて推定される。あるいは、精度の高い衛星軌道位置は、天体暦データベース124内の情報に基づいて推定されてもよい。現在時間の推定が、両方の推定について必要とされてもよい。
【0025】
しかし、暦データベース122および/または天体暦データベース124内の情報が最新でない、かつ/または、現在時間の推定が利用可能でない場合、GNSS衛星の推定される軌道位置は、比較的不正確になるため、信号捕捉プロセスは、本明細書に述べる種々の実施形態の特徴を利用することができないことになる。こうした状況では、GNSS衛星信号捕捉プロセスは、レガシーGNSS信号捕捉技法を使用して実施される。
【0026】
GNSSプロセッサ118が、少なくとも1つの可視GNSS衛星について軌道位置を推定すると、GNSSデバイス100の実施形態は、推定された衛星軌道位置情報を使用して、検出されたGNSS衛星信号のFFT解析で使用される少なくとも1つのパラメータを調整する。1つまたは複数の信号処理パラメータは、GNSSデバイス100の種々の実施形態によって調整されてもよい。
【0027】
付加的に、または、別法として、GNSSデバイス100の一部の実施形態は、信号閾値128パラメータを使用する。信号閾値128は、GNSSデバイス100の始動中に初期化される予め定義されたパラメータである。信号閾値128が使用されて、到来するGNSS衛星信号から、到来する弱い信号および/または高い雑音レベルを有する信号を区別する。
【0028】
種々の実施形態では、信号閾値128は、調整可能な信号パワー閾値である、かつ/または、調整可能な信号対雑音閾値である。GNSS衛星の推定軌道位置に基づいて、GNSS衛星によって放射される信号について、受信信号強度および/または信号対雑音(SN)比が推定されてもよい。たとえば、水平に近い軌道位置においてGNSS衛星から放射される信号は、地球大気によって、著しく減衰する、かつ/または、歪むことになる。一方、実質的に頭上である軌道位置においてGNSS衛星から放射される信号は、地球大気によって、あまり減衰しない、かつ/または、歪まないことになる。
【0029】
推定されるパワーおよび/またはSN比に基づいて、推定されるパワーおよび/またはSN比に相当する特性を有するGNSS衛星信号は、容易に特定されることができる。たとえば、FFT解析プロセスによって生成される複数の周波数ビンでは、GNSS衛星に相当する周波数ビンは、識別可能な相関ピーク(たとえば、比較的高い捕捉比)を有することになる。こうした周波数ビンは、その相関ピークによって特定されることができる。こうして、相関ピークが、予想される雑音と比べてどれほど高くあるべきかを決定する推定が行われる。
【0030】
信号パワー閾値および/またはSN比閾値は、GNSS衛星の推定される軌道位置から決定される被推定信号強度または予想SN比に基づいて調整されてもよい。相応して、調整された信号強度閾値より大きな対応する信号強度を有するか、または、SN比閾値より大きなSN比を有する周波数ビンは、GNSS衛星信号捕捉プロセス中に特定される。特定された周波数ビンは、その後、GNSS衛星信号捕捉プロセスのために使用される。
【0031】
図2は、FFT解析プロセスを使用するGNSS衛星信号相関プロセスを示すブロック図である。到来するデジタル化されかつダウンコンバートされたGNSS衛星信号[r(n)]は、ある範囲の周波数(f,f,…,f)にわたってFFT技法を使用してGNSSシステムプロセッサ104(図1)によって処理される。それぞれの特定の周波数において、GNSS衛星信号r(n)は、余弦および正弦関数によって乗算される。その混合信号からFFTが計算される。得られるFFTは、その後、探索される各周波数において探索される衛星についてレプリカコードの複素共役によって乗算される。以前に決定されたこの複素共役FFTは、ルックアップテーブルなどから取出される。得られる複素共役は、さらに、逆FFT(iFFT)を計算して、選択された周波数のそれぞれについてマグニチュード値を導出することによって処理される。値は、その後、周波数ビン内に格納される。
【0032】
図3は、検出されたGNSS衛星信号に相当する複数の周波数ビン300の概念的に例証的な3次元図である。周波数ビン302のほとんどは、捕捉比の比較的小さい数値を有する。捕捉比の数値は、GNSSデバイス100によって生成される信号仮説と受信されたGNSS衛星信号との間の相関の程度に相当する。捕捉比の小さい数値は、その特定の周波数ビンについてGNSS衛星信号内の検出された雑音などを示す。
【0033】
しかし、周波数ビン304の一部は、その捕捉比について非常に高い値を有する。本明細書では、捕捉比の大きな値は、検出されたGNSS衛星信号の周波数および時間を識別する周波数ビン304に相当する。レガシーGNSSデバイスは、周波数ビン300の全セットを探索し、周波数ビン304を探す。周波数ビン302において情報の処理を不必要に含む探索プロセスは非常に時間がかかることが理解される。
【0034】
1つの調整可能なパラメータは、GNSS衛星信号捕捉プロセス中に処理される周波数ビンの数(および/または行列内のそれぞれのロケーション)である。図4は、GNSSデバイス100の実施形態によって実施されるGNSS衛星信号捕捉プロセス中に探索される低減された数の周波数ビンの概念的に例証的な3次元図である。たとえば、一実施形態は、GNSS衛星信号に相当する情報を含むことを予想されない周波数ビン302の一部または全てを選択解除する。たとえば、周波数f〜f(図2)の特定される周波数は、選択解除されてもよい。
【0035】
選択解除される周波数ビンは、GNSS衛星の推定されるロケーションに基づいて特定される。探索可能な周波数ビンの全範囲は、捕捉されるGNSS衛星の考えられるロケーションの範囲に相当する。たとえば、暦データおよび/または天体暦データが使用されて、GNSS衛星がすぐ頭上にあることが推定される場合、実質的に頭上以外の位置に相当する周波数ビンは、探索される必要がないことが理解される。こうして、GNSSデバイス100の実施形態は、実質的に頭上の位置に相当しない周波数ビンを選択解除される。
【0036】
一実施形態は、暦データおよび/または天体暦データに基づいてGNSS衛星のロケーションを推定する。その実施形態は、推定されたロケーションに相当する周波数ビン(複数可)に関して周波数ビンの予め定義された範囲を識別する。その範囲外のビンは選択解除される。
【0037】
こうして、周波数ビンは、スクリーニング除去されるか、削除されるか、そうでなければ、GNSS衛星信号捕捉プロセス中に処理される必要がない周波数ビンとして特定される。相応して、低減された数の周波数ビン402は、GNSS衛星信号捕捉プロセス中にGNSSデバイス100によって処理される。別の実施形態は、周波数ビン304を含むと予想される複数の周波数ビンについて周波数を選択してもよい。たとえば、周波数f〜f(図2)のうちの選択される周波数が選択されてもよい。こうして、信号捕捉周波数ビンは、GNSS衛星信号捕捉プロセス中の処理のために選択される。
【0038】
別の実施形態では、上述した信号閾値128(図1)は、GNSS衛星信号の予想される特性に基づいて調整されてもよい。図5は、GNSSデバイス100の実施形態による信号強度閾値502の調整後、GNSS衛星信号捕捉プロセス中に探索される周波数ビンの概念的に例証的な3次元図である。信号強度閾値502が使用されて、閾値より小さな信号強度を有する信号を効率的にスクリーニング除去してもよい。先に述べたように、捕捉されたGNSS衛星信号に相当する周波数ビンは、捕捉比の識別可能な数値を有する。GNSS衛星信号に相当しない他の周波数ビンは、その捕捉比について、全く数値を持たないか、または、比較的小さな数値を有し、特定されることができる。こうした周波数ビンは、スクリーニング除去されるか、削除されるか、そうでなければ、GNSS衛星信号捕捉プロセス中に処理される必要がない周波数ビンとして特定される。
【0039】
図5に示す例示的な周波数ビンでは、信号強度閾値502は、信号強度閾値502より小さい信号強度に相当する情報を有する周波数ビン504が、スクリーニング除去されるか、削除されるか、そうでなければ、GNSS衛星信号捕捉プロセス中に処理される必要がない周波数ビンとして特定されるように調整される。一部の周波数ビン506は、信号強度閾値502を超える捕捉比の対応する数値を有してもよい。これらの周波数ビン506は、処理のために選択される。一実施形態では、他のスクリーニングプロセスまたは技法が使用されて、これらの残りの周波数ビン506の一部を、スクリーニング除去するか、削除するか、そうでなければ、GNSS衛星信号捕捉プロセス中にさらに処理される必要がない周波数ビンとして特定してもよい。
【0040】
GNSS衛星信号に相当する周波数ビン304は、信号強度閾値502以上である信号強度を有することに相当する捕捉比の数値によって特定可能である。相応して、周波数ビン304は、容易に特定可能である。これらの周波数ビン304は、GNSS衛星信号捕捉プロセス中のGNSSデバイス100による処理のために選択されてもよい。
【0041】
図6は、GNSS衛星信号捕捉プロセス中に探索される、より微細な解像度の周波数ビン602の概念的に例証的な3次元図である。GNSS衛星の軌道位置が、先に述べたように、暦データベース122および/または天体暦データベース124を使用して推定されるとき、GNSS衛星信号に相当する情報を含むと予想される周波数ビンが特定されてもよい。こうしたビンは、その時間によって、また、その周波数によって特定可能である。GNSSデバイス100の代替の実施形態は、この情報を使用して、高解像度周波数ビン602を構築する。すなわち、処理される周波数ビン602の数は、同じままであるか、または、少なくとも、ビン402(図4)の数と比較して比較的大きな数のままである。しかし、各周波数ビン602は、狭い期間および/または狭い周波数範囲に相当する。たとえば、処理される周波数ビン602の総周波数範囲は、1.0415×10Hz〜1.0420×10Hzである。対照的に、処理される周波数ビン300(図3)の総周波数範囲は、1.0415×10Hz〜1.0425×10Hzである。こうして、各周波数ビン602の周波数範囲は、周波数ビン300(図3)の周波数範囲の半分である。
【0042】
周波数ビンが高解像度を有するように期間および/または周波数範囲を調整することは、GNSS衛星信号の高精度での特定を可能にする。こうして、衛星の軌道位置は、高精度で決定されることができる。さらに、短い期間および/または周波数範囲に相当する高解像度周波数ビン602を使用することによって、高い正確度でGNSS衛星信号が突き止められるため、後続の追跡プロセス中に、GNSS衛星信号はより正確に追跡される可能性がある。
【符号の説明】
【0043】
100 GNSSデバイス
102 GNSSフロントエンド
104 GNSSプロセッサシステム
106 GNSSアンテナ
108 低雑音増幅器
110 バンドパスフィルタ
112 周波数ダウンコンバータ
114 周波数基準
116 アナログ−デジタル(A/D)サンプラー
118 GNSSプロセッサ
120 メモリ
122 暦データ
124 天体暦データ
126 位置推定ロジック
128 信号パワー閾値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
暦データおよび天体暦データの少なくとも一方に基づいて少なくとも1つのGNSS衛星についての軌道位置を推定するステップと、
前記少なくとも1つのGNSS衛星から放射される信号を検出するステップと、
前記少なくとも1つのGNSS衛星についての前記推定軌道位置情報に基づいて、GNSS衛星信号捕捉プロセスで使用される少なくとも1つの信号処理パラメータを調整するステップと、
を含む全地球航法衛星システム(GNSS)信号を捕捉する方法。
【請求項2】
少なくとも1つの信号処理パラメータを調整するステップは、
前記少なくとも1つのGNSS衛星についての前記推定軌道位置情報に基づいて、前記検出された信号の特性を推定するステップと、
前記推定された特性に基づいて信号閾値を調整するステップと、
識別された周波数ビンが前記GNSS衛星信号捕捉プロセスにおいて使用されるように、前記調整された信号閾値に相当する、対応する信号特性を有する少なくとも1つの周波数ビンを識別するステップと、
を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つの信号処理パラメータを調整するステップは、
前記少なくとも1つのGNSS衛星についての前記推定軌道位置情報に基づいて、前記少なくとも1つのGNSS衛星によって放射された信号の信号対雑音比を推定するステップと、
前記推定された信号対雑音比に基づいて信号対雑音比閾値を調整するステップと、
識別された少なくとも1つの周波数ビンは前記GNSS衛星信号捕捉プロセスで使用されるように、前記調整された信号対雑音比閾値より大きい、対応する信号対雑音比を有する少なくとも1つの周波数ビンを識別するステップと、を含む、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−198499(P2009−198499A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−28543(P2009−28543)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】