説明

GUI画面合成処理装置

【課題】映像の内容を示す重要な部分に重ならないようGUI画面を当該映像に重ねて表示するための処理を行うGUI画面合成処理装置を提供する。
【解決手段】GUI画面合成処理装置は、映像を構成する複数のフレームにおいて、1フレームを構成する各画素の画像特徴量を検出する画像特徴量検出部と、画素特徴量に基づいて空き領域を抽出し、GUI表示候補領域を空き領域から抽出する領域抽出部と、GUI画面と形状及び大きさが等しいGUI対象をGUI表示候補領域に重ねたときの重なり程度に応じた重み付け点数を画素毎に割り当てる重み付け実行部と、複数のフレームにわたり同位置の画素の重み付け点数を画素毎に加算する重み付け点数加算部と、各画素の重み付け累計点数を合計した値に基づいて、GUI画面を表示する位置を決定するGUI画面表示位置決定部と、映像にGUI画面を決定した表示位置で重ね合わせてディスプレイに表示するよう処理する表示処理部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイに表示する映像にGUI画面を重ねて表示するための処理を行うGUI画面合成処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
映像機器のディスプレイに表示されている映像に、他の電子機器等におけるGUI(Graphical User Interface)画面を重ねて同ディスプレイに表示した上で、前記映像機器の入力インターフェイスを用いて前記他の電子機器を操作可能な機能が考えられている。図9は、映像機器のディスプレイに表示されている映像11に他の電子機器におけるGUI画面13を重ねて表示した一例を示す図である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−296397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
映像を表示するディスプレイの表示領域におけるGUI画面の表示位置又はGUI画面の大きさが固定されていると、図9に示したように、映像11の内容を示す重要な部分(例えば、人物の顔)にGUI画面13が重なり得る。図9に示した状態のとき、視聴者は映像11の内容を十分に理解することができない。
【0005】
なお、映像11が人物の顔を含む静止画の場合、特許文献1に開示の技術を適用又は応答することで、当該重要な部分にGUI画面13が重ならない映像を表示できる。しかし、映像11が動画の場合には当該技術を適用できない。
【0006】
本発明の目的は、映像の内容を示す重要な部分に重ならないようGUI画面を当該映像に重ねて表示するための処理を行うGUI画面合成処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ディスプレイに表示する映像にGUI画面を重ねて表示するための処理を行うGUI画面合成処理装置であって、前記映像を構成する複数のフレームにおいて、1フレームを構成する各画素の画像特徴量を検出する画像特徴量検出部と、前記画像特徴量検出部が検出した画素特徴量に基づいて、1フレームの画像内の空き領域を抽出し、前記GUI画面を表示する候補となるGUI表示候補領域を前記空き領域から抽出する領域抽出部と、前記GUI画面と形状及び大きさが等しいGUI対象を前記GUI表示候補領域に重ねたときの重なり程度に応じた重み付け点数を、前記GUI表示候補領域を構成する画素毎に割り当てる重み付け実行部と、前記複数のフレームにわたり同位置の画素の重み付け点数を画素毎に加算する重み付け点数加算部と、前記GUI対象の領域に含まれる各画素の重み付け累計点数を合計した重み付け累計点数合計値に基づいて、フレーム内での前記GUI画面を表示する位置を決定するGUI画面表示位置決定部と、前記映像に前記GUI画面を前記GUI画面表示位置決定部が決定した表示位置で重ね合わせて前記ディスプレイに表示するよう処理する表示処理部と、を備えたGUI画面合成処理装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るGUI画面合成処理装置によれば、映像の内容を示す重要な部分に重ならないようGUI画面を当該映像に重ねて表示するよう処理できる。したがって、GUI画面が映像に重ねて表示されても、視聴者は当該映像の内容を理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】一実施形態のGUI画面合成処理装置の内部構成及び周辺機器との関係を示すブロック図
【図2】映像の1フレームを構成する各画素の画像特徴量の一例を示す図
【図3】(a)〜(d)は、領域抽出部105による処理経過の一例を示す図
【図4】(a)〜(d)は、重み付け実行部107がGUI表示候補領域A2に対して行う重み付けについて説明する図
【図5】1フレームの重み付け点数配列データの一例を示す図
【図6】各画素の重み付け累計点数をフレーム中の画素位置に応じて配列した重み付け累計点数配列データとGUI対象141との関係の一例を示す図
【図7】一実施形態のGUI画面合成処理装置100がGUI画面153を映像151に重ねて表示した一例を示す図
【図8】シーンの変わり目でGUI表示位置を再決定する方法を示す図
【図9】映像機器のディスプレイに表示されている映像11に他の電子機器におけるGUI画面13を重ねて表示した一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、本実施形態で用いられるGUI画面とは、メニューやアイコン、ボタン等の要素を含むウインドウである。ユーザは、ポインティングデバイス等を操作してGUI画面内の要素を視覚的に選択することで、コマンド等を入力することなく所望の指示を行える。
【0011】
図1は、一実施形態のGUI画面合成処理装置の内部構成及び周辺機器との関係を示すブロック図である。図1に示すGUI画面合成処理装置100は、映像データ読込部101と、画像特徴量検出部103と、領域抽出部105と、重み付け実行部107と、重み付け点数配列データ加算部109と、GUI画面表示位置決定部111と、表示処理部113とを備える。なお、表示処理部113にはディスプレイ121が接続されている。
【0012】
以下、GUI画面合成処理装置100が備える各構成要素について説明する。
【0013】
映像データ読込部101は、映像データが格納されたDVD等の記録媒体である映像データ記憶部123から映像データを読み込む。映像データ読込部101が読みこんだ映像データは、画像特徴量検出部103及び表示処理部113に送られる。
【0014】
画像特徴量検出部103は、映像データ読込部101から得られた映像データによって示される映像の1フレーム(画像)を構成する各画素の画像特徴量を検出する。なお、画像特徴量とは、RGB表色系やYCbCr表色系,L表色系、XYZ表色系、xyY表色系、L表色系、HSV表色系等の色空間等を表すパラメータである。図2は、映像の1フレームを構成する各画素の画像特徴量の一例を示す図である。なお、図2に示した画像特徴量はYCbCr表色系の色空間を表すパラメータである。
【0015】
領域抽出部105は、画像特徴量検出部103が検出した1フレームを構成する各画素の画像特徴量に基づいて、GUI画面の表示に適当と考えられるフレーム内の領域を抽出する。図3(a)〜(d)は、領域抽出部105による処理経過の一例を示す図である。特に、図3(a)は、映像データ記憶部123から得られた映像データに基づく任意の1フレームの画像を示す図である。以下、任意の1フレームの画像を「フレーム画像」という。また、図3(b)は、領域抽出部105が抽出したフレーム画像で空き領域と認識された箇所をハッチングで示す図である。図3(c)は、空き領域と認識された箇所を凸形状のセグメントに分化した図である。図3(d)は、しきい値以上の面積を有するセグメントA1〜A6のみを残した図である。
【0016】
領域抽出部105は、図3(b)にハッチングで示した空き領域を抽出するために、隣り合う画素の画像特徴量の差分を算出する。映像の内容との関連性が低い部分の画素間における画像特徴量の差分は小さいと考えられる。したがって、領域抽出部105は、算出した差分値がしきい値以下の隣接した画素をグループ化した領域を、視聴者が映像の内容を理解するために重要ではない空き領域として抽出する。
【0017】
なお、領域抽出部105が空き領域を抽出する際、領域抽出部105は、数ピクセルのみの虫食い領域(missing area)等や、文字認識又は顔認識等の結果、領域抽出部105は、文字又は顔と認識されなかった領域を保管しても良い。すなわち、数ピクセルのみの虫食い領域のように数ピクセルだけ差分のある特徴量の画素が領域に紛れ込んでいても、ただの色むら等が原因と考えられるため、当該画素は空き領域に含めてしまっても良い。但し、虫食い領域を空き領域に含める場合、文字等を構成する細い線や顔の目等の重要な情報を誤って空き領域に含めてしまう可能性がある。このため、文字認識又は顔認識等で文字又は顔と認識された領域は別領域として扱う。
【0018】
また、図示しないメモリに、青空に雲(青色の中に白色)等の背景に係る空き領域を抽出するためのデータベースを設けても良い。この場合、領域抽出部105は、画像特徴量の差分がしきい値以上の領域であってもデータベースに示された条件を満たせば、当該領域を空き領域として抽出しても良い。
【0019】
次に、領域抽出部105は、図3(c)に示すように、空き領域を凸形状のセグメントに分化する。最後に、領域抽出部105は、図3(d)に示すように、しきい値以上の面積を有するセグメントA1〜A6のみを、GUI画面を表示する候補となる領域として残す。以下、これらの残ったセグメントを「GUI表示候補領域」という。
【0020】
重み付け実行部107は、領域抽出部105が抽出した各GUI表示候補領域に対してGUI画面と形状及び大きさが等しい対象(以下「GUI対象」という)を重ねたときの重なり程度に応じた点数(以下「重み付け点数」という)を、GUI表示候補領域を構成する画素毎に割り当てる。重み付け実行部107が割り当てる画素毎の重み付け点数は、GUI表示候補領域と重なるGUI対象の領域の割合によって異なる。本実施形態では、GUI表示候補領域と重なるGUI対象の領域の割合が高いほど、重み付け点数は高い。例えば、重なり程度が100%のときの重み付け点数は1.00であり、85%のときは0.85であり、60%のときは0.60である。
【0021】
図4(a)〜(d)は、重み付け実行部107がGUI表示候補領域A2に対して行う重み付けについて説明する図である。図4(a)はGUI表示候補領域A2とGUI対象131が100%重なった状態を示す図であり、図4(b)はGUI表示候補領域A2とGUI対象131が85%重なった状態を示す図であり、図4(c)はGUI表示候補領域A2とGUI対象131が60%重なった状態を示す図である。また、図4(d)は、GUI表示候補領域A2を構成する画素毎に最終的に割り当てられる重み付け点数を示す図である。
【0022】
図4(a)〜(c)に示すように、重み付け実行部107は、GUI表示候補領域A2にGUI対象131を重ねた状態で当該GUI対象131をずらしていき、各位置関係のときの重み付け点数を重なり領域の画素に対して仮に割り当てる。GUI対象131をずらしていくことによって、同じ画素であっても異なる重み付け点数が割り当てられる場合がある。この場合、重み付け実行部107は、図4(d)に示すように、最も高い重み付け点数を、最終的に割り当てる重み付け点数として残す。
【0023】
なお、重み付け実行部107は、各GUI表示候補領域に対して上記処理を行うが、フレーム内のGUI表示候補領域以外の領域の画素には重み付け点数を0に設定する。重み付け実行部107は、1フレームを構成する画素の配列に合わせて各画素の重み付け点数を配列したデータ(重み付け点数配列データ)を作成する。図5は、1フレームの重み付け点数配列データの一例を示す図である。
【0024】
また、重み付け実行部107は、各画素に重み付け点数を割り当てる際に、各GUI表示候補領域の面積、横方向の長さ、縦方向の長さ等のパラメータをGUI対象131と比較した結果に応じた重み付け点数を割り当てても良い。
【0025】
また、図示しないメモリに、背景の色として使われやすい色のデータベースを設けても良い。例えば、青色を空や海の色として、白色を壁の色として、茶色を土の色として、黒色は夜景の背景としてデータベースに登録しておく。この場合、重み付け実行部107は、画素の色に応じて割り増した重み付け点数を割り当てる。
【0026】
重み付け点数配列データ加算部109は、重み付け実行部107が作成した重み付け点数配列データに基づいて、ディスプレイ121には未表示の数百〜数千フレームにわたり同位置の画素の重み付け点数を画素毎に加算する。当該重み付け点数の加算を行うことによって、重み付け点数配列データ加算部109は、1フレームを構成する画素の配列に合わせて画素毎の重み付け累計点数が配列された重み付け累計点数配列データを作成する。
【0027】
GUI画面表示位置決定部111は、図6に示すように、GUI対象141の領域に含まれる各画素の重み付け累計点数を合計した値(以下「重み付け累計点数合計値」という)に基づいて、フレーム内でのGUI画面を表示する位置(以下「GUI表示位置」という)を決定する。図6は、各画素の重み付け累計点数をフレーム中の画素位置に応じて配列した重み付け累計点数配列データとGUI対象141との関係の一例を示す図である。GUI画面表示位置決定部111は、GUI対象141の領域の重み付け累計点数合計値が最大となる位置をGUI画面の表示位置に決定する。なお、図6に示したGUI対象141と図4(a)〜(c)に示したGUI対象131は同じものである。以下、GUI画面表示位置決定部111が決定したフレーム中におけるGUI画面の表示位置を「GUI表示位置」という。
【0028】
表示処理部113は、映像データ読込部101から得られた映像データの映像にGUI画面をGUI表示位置で重ね合わせるデータ処理を行う。さらに、表示処理部113は、当該データ処理によって得られた合成映像をディスプレイ121に表示するよう処理する。
【0029】
以上説明したように、本実施形態のGUI画面合成処理装置100は、ディスプレイ121に表示されている映像中の視聴者が当該映像の内容を理解するためには重要ではない空き領域にGUI画面を表示するよう処理する。例えば、図7に示す映像151では、2人の人物に重ならないようGUI画面153が表示される。このようなGUI画面の配置であれば、視聴者は映像の内容を理解できる。
【0030】
なお、GUI画面表示位置決定部111によるGUI表示位置の決定にはヒステリシス性を設けても良い。すなわち、GUI画面表示位置決定部111は、重み付け累計点数合計値が最大であったGUI表示位置における重み付け累計点数合計値が低下して、他の位置の重み付け累計点数合計値が最大値となっても、GUI画面153の表示位置を変更するまでの待ち時間を設定する。また、GUI画面表示位置決定部111は、GUI画面153を実際に表示している位置での重み付け累計点数合計値を割り増して、GUI画面153の表示位置が変更されにくくする。
【0031】
また、重み付け点数配列データ加算部109が、未表示の数百〜数千フレームにわたり同位置の画素の重み付け点数を画素毎に加算する際、GUI画面合成処理装置100は、チャプター構成やシーンチェンジ検出などにより映像の切れ目を判別し、シーン毎に異なる重み付け点数の加算を行っても良い。この場合、GUI画面表示位置決定部111は、シーンの変わり目でGUI表示位置を再決定する。例えば、図8に示すように、GUI画面表示位置決定部111は、シーン1を再生している間は重み付け加算配列1でGUI表示位置を決定し、シーン2を再生している間は重み付け加算配列2でGUI表示位置を決定し、シーン3を再生している間は重み付け加算配列3でGUI表示位置を決定する。なお、シーンの長さに閾値を設け、閾値以下の長さのシーンでは各画素に重み付け点数を割り当てないことで、短いシーンでGUI表示位置が移動してしまうことを防止することもできる。例えば、シーン2が短いシーンだった場合に、重み付け点数配列データ加算部109が加算配列を参照しなければ、シーン1でのGUI表示位置を維持できる。
【0032】
また、GUI画面表示位置決定部111は、GUI画面153のユーザ操作を検出して所定時間の間はGUI表示位置の決定動作を行わなくても良い。このとき、GUI画面153の位置は、ユーザによるGUI画面153の操作が行われると所定時間の間は変更されない。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明に係るGUI画面合成処理装置は、GUI画面を映像に重ねて表示するための処理を行う映像処理装置等として有用である。
【符号の説明】
【0034】
100 GUI画面合成処理装置
101 映像データ読込部
103 画像特徴量検出部
105 領域抽出部
107 重み付け実行部
109 重み付け点数配列データ加算部
111 GUI画面表示位置決定部
113 表示処理部
121 ディスプレイ
123 映像データ記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイに表示する映像にGUI画面を重ねて表示するための処理を行うGUI画面合成処理装置であって、
前記映像を構成する複数のフレームにおいて、1フレームを構成する各画素の画像特徴量を検出する画像特徴量検出部と、
前記画像特徴量検出部が検出した画素特徴量に基づいて、1フレームの画像内の空き領域を抽出し、前記GUI画面を表示する候補となるGUI表示候補領域を前記空き領域から抽出する領域抽出部と、
前記GUI画面と形状及び大きさが等しいGUI対象を前記GUI表示候補領域に重ねたときの重なり程度に応じた重み付け点数を、前記GUI表示候補領域を構成する画素毎に割り当てる重み付け実行部と、
前記複数のフレームにわたり同位置の画素の重み付け点数を画素毎に加算する重み付け点数加算部と、
前記GUI対象の領域に含まれる各画素の重み付け累計点数を合計した重み付け累計点数合計値に基づいて、フレーム内での前記GUI画面を表示する位置を決定するGUI画面表示位置決定部と、
前記映像に前記GUI画面を前記GUI画面表示位置決定部が決定した表示位置で重ね合わせて前記ディスプレイに表示するよう処理する表示処理部と、
を備えたことを特徴とするGUI画面合成処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のGUI画面合成処理装置であって、
前記領域抽出部は、前記空き領域を凸形状のセグメントに分化し、所定値以上の面積を有するセグメントを前記GUI表示候補領域として抽出することを特徴とするGUI画面合成処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のGUI画面合成処理装置であって、
前記重み付け実行部は、前記GUI表示候補領域に前記GUI対象を重ねた状態で当該GUI対象をずらしていき、各位置関係のときの重み付け点数の内、最も高い重み付け点数を割り当てることを特徴とするGUI画面合成処理装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のGUI画面合成処理装置であって、
前記GUI画面表示位置決定部は、前記重み付け累計点数合計値が最大となる位置を前記GUI画面の表示位置に決定することを特徴とするGUI画面合成処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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