説明

HBx発現哺乳動物細胞における組み換えタンパク質の製造方法およびその組成物

本発明は、HKB11細胞、CHO細胞、BHK21細胞、C2C12細胞およびHEK293細胞からなる群から選択される哺乳動物宿主細胞を増殖させるか、非接着浮遊培養で哺乳動物宿主細胞を増殖させるか、または外因性X-ボックス結合タンパク質であるXBP1sを提供する核酸を含む哺乳動物宿主細胞を増殖させることにより、B型肝炎Xタンパク質をコードする核酸および異種タンパク質を有する哺乳動物宿主細胞において異種タンパク質を産生する方法を提供する。条件は、HBx、所望により外因性XBP1s、および異種タンパク質が、哺乳動物細胞で発現するような条件であるべきである。本発明は、当該方法を実施するための組成物を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本願は、2008年5月28日に出願された米国仮出願番号61/056,634に対する優先権を主張するものである。
【0002】
配列表
本願は、配列表の紙コピーおよび電子コピーの両方を含む。本願は、配列表の電子コピーに含まれる対象が紙コピーで提供されるものと同じであることを認証する。
【0003】
発明の分野
本発明は、一般に、B型肝炎ウイルスXタンパク質(HBx)を発現する組み換え哺乳動物宿主細胞により異種タンパク質を製造する組成物およびその方法に関する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
治療タンパク質を含む組み換えタンパク質は、緊急に必要とされるものであり、組み換えタンパク質の製造効率を改善する継続した必要性が存在する。商業的製造工程においてタンパク質収量を増加させることは、なお重要な課題である。
【0005】
HBxプラスミドを用いた一過的導入は、Huh7およびChang肝細胞癌細胞において異種リンフォトキシンαの発現の上方制御を生じ得ることが報告されている(Lee et al., Biochim Biophys Acta 1741, 75-84 (2005))。さらに、HBxを安定的に導入したChang肝細胞癌細胞は、リンフォトキシンαの発現を上方制御し得る。
【0006】
また、哺乳動物肝細胞癌浮遊細胞におけるHBxの導入は、用量依存的な方法でE-カドヘリン発現のレベルを減少させ得ることが報告されている(Lee et al., Oncogene 24, 6617-6625 (2005))。
【0007】
分泌型タンパク質および膜タンパク質は、一般に、宿主細胞の小胞体(ER)-ゴルジ系においてフォールディングおよび他の翻訳後修飾を受ける。小胞体ストレス応答(unfolded protein response) (UPR)シグナル伝達の機能は、変性タンパク質(unfolded protein)レベルを感知し、環境変化、例えば、ERストレスに対する細胞のタンパク質フォールディングおよび分泌能力を調整することである(Bernales et al., Annu. Rev. Cell Develop. Biology 22, 487-506 (2006))。ERストレスは、タンパク質を折り畳むERの能力が飽和した状態である。IRE1 (イノシトール要求性酵素1)およびATF6 (活性化転写因子6)は、細胞の内側にある2つの主要な変性タンパク質のセンサーであり、現在のところUPRの重要なトランスデューサーであると理解されている(Credle et al., Proc Natl Acad Sci USA 102, 18773-18748 (2005); Nadanaka et al., Mol. Cell. Biology 27, 1027-1043 (2007))。
【0008】
これらの代謝経路は、下記を含む多くのウイルス遺伝子により活性化される: a) 小特定領域11 (short unique region 11) (US11)内のヒトサイトメガロウイルス27 kDa ER-常在I型膜糖タンパク質(それは、ERから細胞質ゾルへの転位のための主要組織適合性複合体(MHC)クラスI分子を標的とする); b) C型肝炎ウイルス(HCV)によりコードされる非構造タンパク質NS4B(それは、CREB-RP/ATF6βと物理的に相互作用し、XBP1スプライシングを誘導することによりATF6およびIRE1経路を活性化する) (Zheng et al., J. Microbiology 43, 529-536 (2005)); およびc) 小オープンリーディングフレームX遺伝子(HBx)内のB型肝炎ウイルス17 kDaタンパク質(それは、さまざまな細胞イベント、例えば、細胞周期、生存およびアポトーシスを制御する多機能転写アクチベーターである)。
【0009】
内因性エキソヌクレアーゼであるIRE1は、X-ボックス結合タンパク質mRNA (XBP1)を修飾してスプライシングXBP1 mRNA (XBP1s)を形成し得て、その結果、翻訳フレームシフトを生じ、その産生は、UPR経路を介して増加したタンパク質分泌を活性化する(Tigges et al., Metab. Eng. 8, 264 (2006))。Tigges et al.はさらに、XBP1およびXBP1sを細胞に導入して、分泌型タンパク質治療薬の生物医薬製造のための分泌能力を増大させることを開示している。Tigges et al.はまた、XBP1sプラスミドと分泌型胚性アルカリホスファターゼ(hSEAP)、分泌型ホルモンVEGFもしくは分泌型α-アミラーゼをコードする遺伝子の一過的トランスフェクションは、それぞれ、hSEAP、VEGFおよびα-アミラーゼのタンパク質産生を生じ得ることを教示している。
【0010】
組み換えタンパク質は、宿主細胞を固相基質上、浮遊微小担体上で、および足場非依存性細胞については非接着浮遊培養で培養することを含むさまざまな技術により産生される。接着培養は、浮遊状態で維持され得る微小担体上での培養を含む。足場非依存性細胞の浮遊培養において、細胞は基質に接着しないが、適当な反応管内の栄養含有培地中で、浮遊状態で維持される。
【0011】
さまざまな懸濁法が特定の宿主細胞の産生および維持のために利用される。微小担体および足場非依存性細胞についての典型的な浮遊細胞培養法は、培養物またはバイオリアクターにおいて細胞培養培地と細胞を混合するシェーカー、ローラー、スターラーもしくはエアリフト系を使用する。通気、温度、撹拌速度などの条件は、培養物の増殖および組み換えタンパク質の高産生に適した条件を提供するように制御および調整され得る。
【発明の概要】
【0012】
発明の要約
本発明は、HBxの使用に関して、哺乳動物細胞の細胞培養により異種(組み換え)タンパク質の産生を増大させるという特定の予期せぬ結果を利用するものである。さまざまな態様において、本発明は、組み換えタンパク質を発現する哺乳動物宿主細胞においてHBxを発現させることにより(それにより、組み換えタンパク質の産生は、HBxを発現しない組み換え細胞と比較して当該細胞において高められる)、組み換えタンパク質を産生する方法およびそのための組成物を提供する。
【0013】
第1の態様において、本発明は、哺乳動物宿主細胞において異種タンパク質を産生する方法であって、HKB11細胞、CHO-S細胞、BHK21細胞、C2C12細胞およびHEK293細胞からなる群から選択される哺乳動物宿主細胞を、HBxおよび異種タンパク質が当該哺乳動物宿主細胞によって発現されるような条件下で増殖させることを含み、当該哺乳動物宿主細胞がHBxをコードする核酸および異種タンパク質をコードする核酸を含む、方法を提供する。
【0014】
さらなる態様において、本発明は、哺乳動物宿主細胞において異種タンパク質を産生する方法であって、非接着浮遊培養で哺乳動物宿主細胞を、HBxおよび異種タンパク質が当該哺乳動物宿主細胞によって発現されるような条件下で増殖させることを含み、当該哺乳動物宿主細胞がHBxをコードする核酸および異種タンパク質をコードする核酸を含む、方法を提供する。
【0015】
さらなる態様において、本発明は、哺乳動物宿主細胞において異種タンパク質を産生する方法であって、下記;
a) HBxをコードする核酸を含み、かつ、外因性XBP1sを提供する核酸を含む哺乳動物宿主細胞を提供し; そして
b) HBx、外因性XBP1sおよび異種タンパク質が哺乳動物細胞によって発現されるような条件下で当該哺乳動物細胞を増殖させること
を含む、方法を提供する。HBxおよび異種XBP1sをコードする核酸の共発現の効果は、相乗的であり得る。
【0016】
他の態様において、本発明は、異種タンパク質をコードする核酸およびHBxをコードする核酸を含む哺乳動物宿主細胞を含む組成物であって、当該哺乳動物宿主細胞がHKB11細胞、CHO-S細胞、BHK21細胞およびHEK293細胞からなる群から選択される細胞株に由来し、当該細胞がHBxおよび異種タンパク質を発現するか、またはそれらを発現するように誘導され得る、組成物を提供する。
【0017】
他の態様において、本発明は、足場非依存性哺乳動物宿主細胞の浮遊培養物を含む組成物であって、当該哺乳動物宿主細胞がHBxをコードする核酸および異種タンパク質をコードする核酸を含み、当該哺乳動物宿主細胞がHBxおよび異種タンパク質を発現するか、またはそれらを発現するように誘導され得る、組成物を提供する。
【0018】
他の態様において、本発明は、HBxをコードする核酸、外因性XBP1sを提供する核酸、および異種タンパク質をコードする核酸を含む哺乳動物宿主細胞を含む組成物であって、当該哺乳動物宿主細胞がHBx、外因性XBP1sおよび異種タンパク質を発現するか、またはそれらを発現するように誘導され得る、組成物を提供する。
【0019】
さらなる態様において、本発明は、上記組成物のうちの1つから得られる安定的に導入された細胞株、例えば、哺乳動物細胞の組成物から単離されたクローン(例えば、高産生クローン)であって、それは、当該クローンに基づいて哺乳動物細胞の新規培養物もしくは他の集団を発見するために使用される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、C2C12およびBHK21宿主細胞株における分泌されたMF-J抗体の産生について示されたとおり、3個のウイルス遺伝子の段階的な量での一過的トランスフェクションの効果を示す。
【図2】図2は、HBxをコードする段階的な量の核酸を有する組み換えBHK21およびHBK11細胞の一過的トランスフェクションで得られた、分泌されたMF-J抗体またはルシフェラーゼ(Gluc)産生の増加を示す。
【図3】図3は、段階的な量のHBxをコードする核酸を一過的に導入した組み換えC2C12骨格筋細胞からの分泌された胚性アルカリホスファターゼ、分泌された抗体、またはルシフェラーゼの産生を示す。
【図4】図4は、HBxを安定的に導入したBHK21細胞プール(パネルA)およびHKB11細胞プール(パネルB)における分泌された抗体またはルシフェラーゼの産生を示す。
【図5】図5は、HBxを安定的に導入した5個のBHK21クローン(クローン21、22、18、13および42)におけるHBx発現(パネルA)および分泌された抗体もしくはルシフェラーゼの産生(パネルB)を示す。
【図6】図6は、非導入細胞との関連で、一過的に導入した足場依存性卵巣(DG44)細胞および一過的に導入した足場非依存性浮遊培養適合卵巣(DG44sus)細胞におけるルシフェラーゼ産生を示す。
【図7】図7は、BHK21親(BHK21p)、HBx10プールおよびHBxを安定的に導入した5個のクローン(13、18、22、31および42)における内因性XBP1sおよびErdj4 mRNAレベルの発現を示す。
【図8】図8は、BHK21p、HBx10プール細胞、およびBHK21/HBxのクローン42もしくはクローン22による2個の分泌されたタンパク質産物の産生を示す(各々の細胞は、ウェルあたり0、0.1 μg、0.2 μg、0.4 μgまたは0.6 μgのpCMV-XBP1sを導入されている)。パネルAは、MF-J抗体レベル(ng/ml)を示す。パネルBは、相対発光量(RLU)でのGluc活性を示す。
【図9】図9は、BHK21p細胞との関連で、XBP1s、HBxの単独発現またはXBP1sとHBxの共発現後のMF-JまたはGluc産生の倍率変化を示す。
【図10】図10は、非導入細胞との関連で、一過的に導入したHEK293細胞株および一過的に導入した足場非依存性浮遊培養適合293F細胞株におけるルシフェラーゼ産生を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
好ましい態様の記載
「含む」および「有する」なる用語は、オープンかつ包括的な方法で使用される。
【0022】
治療タンパク質のようなタンパク質の商業規模での製造のために有用な培養細胞は、一般に、安定的な表現型、十分に規定された栄養要求、適当にタンパク質をグリコシル化する能力、および感染性ウイルスの欠損を含む特性を有する。いくつかの哺乳動物宿主細胞および細胞株がこの方法で特徴づけられており、本発明において有用である。
【0023】
宿主細胞型は、HKB11細胞(ヒト腎細胞とヒトB細胞の体細胞融合体)、CHO-S細胞(チャイニーズハムスター卵巣細胞株)、BHK21(ハムスター胎児腎細胞株)、ならびにHEK293細胞(ハムスター胚性腎細胞株)を含む。足場依存性増殖(すなわち、表面接着)のために適合した細胞および浮遊して増殖するために適合した細胞は、さまざまな態様において有用である。ある態様において、足場非依存性浮遊培養に適合した細胞が使用される。他の態様において、特定の哺乳動物宿主細胞、すなわち、HKB11、CHO-S、BHK21およびHEK293細胞のみが含まれる。異なる態様との関連で、CHO細胞、FRhL-2、MRC-5二倍体線維芽細胞、SP2/0-マウス骨髄腫およびNS0-マウス骨髄腫を含む他の製造細胞が使用され得る。
【0024】
一般に、組み換え哺乳動物宿主細胞の細胞培養は、組み換えタンパク質製造の分野における当業者に既知であり、本発明の特定の態様との関連で他に指示がなければ、細胞培養の任意の形態が本発明により意図されるものとする。
【0025】
特定の態様において、本発明は、足場依存性培養における宿主細胞の使用を含み、その培養のための細胞は、宿主細胞に核酸を導入する任意の方法により作製され、その結果、当該核酸は、足場依存性細胞培養物内で発現して組み換えタンパク質を産生する。
【0026】
組み換え宿主細胞の浮遊細胞培養はまた、組み換えタンパク質製造の分野における当業者に既知であり、1つの態様において、足場非依存性細胞の浮遊培養の任意の形態が本発明により意図される。この特定の態様において、本発明は、核酸を宿主細胞に導入する(それにより、核酸は発現し、当該足場非依存性浮遊培養物内に組み換えタンパク質を産生する)任意の方法により作製された足場非依存性浮遊培養における宿主細胞の使用を含む。
【0027】
核酸を細胞に導入する方法は、ウイルスまたは不完全ウイルスを用いたトランスフェクション、プラスミドの導入、および遺伝子銃を含むがこれらに限定されない。
【0028】
「異種タンパク質」は、本明細書に他に記載がなければ、一般に、XBP1またはXBP1sの産物以外のタンパク質を意味する。異種タンパク質は、通常宿主細胞と関連しないか、または天然において宿主細胞で発現しないタンパク質であり、外因性核酸の細胞への送達により導入されるタンパク質を含む。
【0029】
XBP1/XBP1sなる表記は、XBP1、XBP1s、またはXBP1とXBP1sの両方を示す。本発明は、推定される作用メカニズムに限定されるべきではないが、XBP1が発現するとmRNAを形成し、それは宿主細胞でスプライシングされてXBP1s (すなわち、スプライス型XBP1) mRNAを形成し、XBP1s mRNAは、細胞機能を制御するタンパク質に翻訳されることが現在理解されている。いくつかの著者は、非スプライス型XBP1をXBP1uと呼ぶ。「XBP1sを提供する核酸」なる用語は、特に、宿主細胞に導入され、発現すると、XBP1sのレベルを増加させる任意の核酸を含む。そのような核酸は、本質的に外因性である。1つの態様において、XBP1sをコードする核酸が好ましい。他の態様において、IRE1が細胞における律速因子ではないという条件で、XBP1 (非スプライス型)をコードする核酸が含まれる。さらに、XBP1およびIRE1をコードする核酸の組み合わせが包含される。また、XBP1sの発現を促進する制御エレメントを有する核酸が含まれる。したがって、宿主細胞内にXBP1sを提供することを含む本発明の態様において、XBP1sは、インサイチュでスプライシングされる前駆体転写産物を発現する形態で提供されるか、またはスプライシングを必要としないXBP1s転写産物を発現する形態で提供され得る。
【0030】
宿主細胞に導入される核酸は、一過的または安定的に発現し得る。1つの態様において、宿主細胞による異種XBP1sの安定な発現が生じる。他の態様において、宿主細胞によるHBxの安定な発現が生じる。また他の態様において、HBxおよび/またはXBP1sを安定に発現する宿主細胞による異種タンパク質の安定な発現が生じる。
【0031】
あるいは、宿主細胞は、HBxおよび/またはXBP1s、および/または異種タンパク質を一過的に発現し得る。
【0032】
HBxおよび異種タンパク質産物をコードする核酸は、当業者に既知の方法を用いて、別々のベクターで、または同じベクター上の異なるカセットとして宿主細胞に導入され得て、導入された細胞は、適当な選択を用いて同定され得る。
【0033】
HBxをコードする核酸および異種タンパク質産物をコードする核酸は、同時に、実質的に同時に、または所望により異なる時間点で、および連続して、宿主細胞に導入され得る。
【0034】
HBx、XBP1もしくはXBP1s、および異種タンパク質産物をコードする核酸は、当業者に既知の方法を用いて、別々のベクターで、または同じベクター上の異なるカセットとして宿主細胞に導入され得る。
【0035】
HBx、XBP1/XBP1s、および異種タンパク質産物をコードする核酸は、実質的に同時に、または所望により異なる時間点で、および連続して、宿主細胞に導入され得る。1つの態様において、宿主細胞は、XBP1sをコードする核酸を導入される。制御エレメントは、産業規模での製造のための条件を最適化するように調整され得る。HBx、XBP1s、および異種タンパク質の発現は、構成的であるか、または誘導可能条件下で生じ得る。誘導可能条件下において、遺伝子発現は、外因性の薬剤に応答して誘導され得る。そのような薬剤は、テトラサイクリン(Baron et al., Methods Enzymol. 327:401 (2000))、エクジソン(edysone) (Pollock et al., Curr Opin Biotechnol. 13:459 (2002))、ラパマイシン(No et al., Proc Natl Acad Sci USA 93:3346 (1996))、およびミフェプリストン(Nordstrom, Curr Opin Biotechnol. 13:453 (2002))を含むがこれらに限定されない。
【0036】
ある態様において、HBxをコードする核酸および/またはXBP1もしくはXBP1sをコードする核酸は、タンパク質産物を発現する前駆細胞に導入され得る。他の態様において、異種タンパク質産物をコードする核酸は、HBxおよび/またはXBP1/XBP1sを発現する前駆細胞に導入される。
【0037】
さらに、HBxをコードする核酸およびXBP1もしくはXBP1sをコードする核酸は、当該異種タンパク質を発現するトランスジェニック哺乳動物細胞である前駆細胞に導入され得る。
【0038】
HBx遺伝子配列は、Genebank、例えば、AM282986から入手され得る。あるいは、HBx遺伝子は、当該遺伝子が機能的なXタンパク質をコードし、かつ、本明細書で意図される発現ベクターへの操作のために必要であり得る任意の制限酵素部位を有するか、またはそれを含むように修飾され得るという条件で、B型肝炎ウイルスの株、遺伝子型もしくは亜型のいずれかから入手され得る。B型肝炎ウイルスの株、遺伝子型および亜型は、例えば、Hayashi et al., J. Med. Virology 79: 366-373 (2007)に記載されている。
【0039】
XBP1核酸およびXBP1s核酸は、当業者に利用可能であり、例えば、下記の受託番号で同定される:
【表1】

【0040】
XBP1核酸は任意の起源であり得るが、ある態様において、ヒトまたはマウス起源である。1つの態様において、XBP1sをコードする核酸は、宿主細胞によりインサイチュで容易に加工され、スプライス型(XBP1s)を産生する前駆体(イントロンを含むXBP1)をコードし得る。宿主細胞内に存在するエキソヌクレアーゼIRE1は、XBP1転写産物から26 bpのイントロンを除去し、その結果、翻訳フレームシフトを生じ、XBP1sタンパク質を転写的に活性にする。したがって、組み換えXBP1sは、前駆体をコードする核酸を用いて宿主細胞に導入することにより産生され得る。あるいは、核酸は、イントロンを欠損し、直接スプライス型をコードする転写産物をコードし得る。
【0041】
ある態様において、本発明の方法は、宿主細胞を浮遊培養することを含み、ある態様において、足場非依存性細胞を浮遊培養することを含む。「足場非依存性細胞を浮遊培養すること」または「非接着浮遊培養」は、培養物内で任意の基質に対して実質的に非接着である組み換え細胞培養物を培養することを意味する。「実質的に非接着」は、培養の1時間後、2時間後またはそれ以上後に、10%未満、およびある態様において5%未満の細胞が培養容器の表面(例えば、壁)に接着していることを意味する。接着は、例えば、無トリプシン、無カルシウムおよび無マグネシウム培地、または他の態様において、トリプシン含有培地での穏やかな撹拌時における非接着細胞と全細胞収量との比較により測定され得る。1つの局面において、宿主細胞の浮遊培養はバイオリアクター系において生じ、細胞は、組み換えタンパク質の製造の間に実質的に非接着な細胞として維持され得る。浮遊細胞は、エアリフトおよび撹拌を含む当分野において既知の方法により、またはバイオリアクター容器の回転もしくは旋回により混合され得る。
【0042】
足場非依存性浮遊細胞培養を実施するための装置および手順は当業者に既知であり、例えば、米国特許第7,294,484号; 第7,157,276号; 第6,660,501号; および第6,627,426号(その各々は、引用により本明細書の一部とする)に記載されている。一般に、足場非依存性浮遊細胞培養についての原理、プロトコール、装置および実践的技術は、Chu et al., Industrial choices for protein production by large-scale cell culture, 2001, Curr Opin Biotechnol. 12, 180-7; Warnock et al., Bioreactor systems for the production of biopharmaceuticals from animal cells, 2006, Biotechnol Appl Biochem. 45, 1-12(その各々は、引用により本明細書の一部とする)において見出され得る。
【0043】
足場非依存性浮遊細胞培養に適合して、そこで維持され、HBxが導入されるとタンパク質産生を増大させる任意の哺乳動物宿主細胞が本発明の方法により使用され得ることが意図される。特定の例において、宿主細胞は、DG44、チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)細胞、複製開始点を欠損したSV40により形質転換したサル線維芽細胞CV-1 (COS細胞)、およびヒト細胞株(HEK293、CEM)である。マウス、イヌおよび幹細胞株がまた意図される。現在のところ、ある態様において、細胞株は、DG44、CHO、CV-1、COSおよびHEK293細胞の浮遊適合型を含む。DG44細胞の特定の型は、DG44sus細胞であり得る。非接着浮遊培養において増殖するように接着細胞を適合させる方法は、当業者に既知である。
【0044】
本発明のある局面において、宿主細胞は、非肝細胞起源を有する。例えば、細胞は、好ましくは、腎細胞、卵巣細胞、リンパ球、クッパー細胞、融合体細胞、幹細胞または非肝細胞起源の任意の他の細胞であり得る。
【0045】
哺乳動物宿主細胞に適合し、それを維持することができる任意の細胞培養培地が適当である。細胞培養培地の選択は特定の組み換え系に依存し、適当な培地の決定は重要ではなく、当業者により容易に実施され得る。適当な培養培地は、MEM、DME-高グルコース、DME-低グルコース、Iscove's MDME、Medium 199、McCoy's、Ham's F10、Ham's F12、RPMI 1640、NCTC-109およびL-15 (Leibovitz)を含む。さらに、培養培地の混合物、例えば、DME/F12もしくはDME/M199が使用され得る。AthenaES(商標) Cell Culture Media BRFF-BMZERO(商標)、BRFF-EPM2(商標)、BRFF-HPC1(商標)およびBRFF-P4-8F(商標)に限定されない特定の培地がまた使用され得る。細胞増殖は、無血清で達成され得る。細胞増殖はまた、無動物産物で達成され得る。ヒトでの投与が意図される組み換え治療タンパク質の場合において、動物産物は、培地作製および使用のいずれの段階においても使用されない。治療タンパク質の産生のために、培地は、無血清および/または無動物由来タンパク質であり得て、その培地の例は、例えば、米国特許第5,804,420号および第7,094,574号; WO 97/05240; ならびにEP 0 872 487に記載されている。
【0046】
FreeStyle(商標)(Invitrogen, Carlsbad, CA)は、動物起源の構成要素を含まない有用な細胞培養培地であり、したがって、それは、ヒト治療薬としての使用が意図されるタンパク質の発現と関連した使用のために望ましい。
【0047】
ある局面において、細胞培養培地は、減少した有効濃度のカルシウムを有し得る。すなわち、遊離カルシウム濃度は、対応する標準培地の濃度よりも、約50%、約60%、約70%、約80%または少なくとも約90%低いものであり得る。1つの態様において、減少したカルシウムを有する培地は、足場非依存性浮遊培養で使用される。
【0048】
他の局面において、細胞培養のための培養培地は、空気の雰囲気下で、または好ましくは、CO2を例えば空気中に5-10% (vol/vol)含む空気の雰囲気下で使用され得る。
【0049】
足場非依存性細胞の浮遊培養は、生物学的タンパク質産物を産生するのに必要とされる物理的空間を減少させる。足場非依存性浮遊培養はまた、生物学的生産において利点を有する。足場非依存性浮遊培養の条件は、宿主細胞の特定の型および産生される組み換えタンパク質に基づいて、組み換えタンパク質産生を最適化するように調整され得る。
【0050】
哺乳動物細胞培養は、研究および臨床使用を目的とするヒト生物学的タンパク質の発現のために有用である。ある態様において、HBxを発現するBHK21またはHKB11細胞は、異種タンパク質産物の高められた発現を有する。DG44sus宿主細胞は、本発明の浮遊培養態様との関連で宿主細胞として有用であり、HBx導入細胞は、組み換え哺乳動物細胞の足場非依存性浮遊培養における異種タンパク質産物の高められた産生を示す。また他の態様において、HBxおよび異種XBP1sを発現するヒトHKB11細胞は、異種タンパク質産物の製造における増加、ある態様においてその相乗的増加を可能にする。
【0051】
一般に、異種遺伝子の哺乳動物宿主細胞への導入のための適当な発現ベクターは、異種遺伝子をコードする核酸配列と操作可能に結合したコントロールもしくは制御配列を提供するベクターである。制御配列は、宿主細胞内において、構成的もしくは誘導的に異種遺伝子の発現を生じることができる。適当なベクターおよび制御配列は、当業者に既知である。
【0052】
例えば、適当なベクターは、シミアンウイルスSV40、レトロウイルス、ウシパピローマウイルス、ワクシニアウイルスおよびアデノウイルスから選択されるウイルスベクター、または通常使用される細菌ベクターもしくは通常使用される昆虫および/または哺乳動物発現ベクター、または組み換えタンパク質産物を発現する安定な細胞株を生じる組み込みベクターであるか、またはそれに由来する構成要素を含み得る。
【0053】
ベクター、例えば、プラスミドの哺乳動物細胞への導入法は既知である。適当な方法は、例えば、デキストラン仲介トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿法、ポリブレン仲介トランスフェクション、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、ポリヌクレオチドのリポソームへの封入、ウイルス伝達およびDNAの核への直接マイクロインジェクションを含むがこれらに限定されない。さらに、下記の参照は、トランスフェクション法の詳細を提供する: Wigler et al., Cell 14:725, 1978; Corsaro and Pearson, Somatic Cell Genetics 7:603, 1981; Graham and Van der Eb, Virology 52:456, 1973; Neumann et al., EMBO J. 1:841-5, 1982; Hawley-Nelson et al., Focus 15:73, 1993; Ciccarone et al., Focus 15:80, 1993; Miller and Rosman, BioTechniques 7:980-90, 1989; およびWang and Finer, Nature Med. 2:714-6, 1996(その各々の開示は、引用により本明細書の一部とする)。培養哺乳動物細胞における組み換えポリペプチドの産生は、とりわけ、米国特許第4,713,339号; 第4,784,950号; 第4,579,821号; および第4,656,134号に開示されており、その開示は引用により本明細書の一部とする。
【0054】
ある態様において、本発明の方法は、1個またはそれ以上のプロモーター配列を含むベクター中にタンパク質産物をコードする核酸発現構築体の使用を含む。プロモーターは、実際に、特定のコード配列と結合していても結合していなくてもよい。ある態様において、HBxをコードする核酸および異種タンパク質産物をコードする核酸は、宿主細胞が異種タンパク質産物を発現し、ある態様において当該タンパク質産物を培養培地中に分泌するようにプロモーターと操作可能に結合する。適当なプロモーターは、当業者に既知であり、強力で構成的なプロモーター、例えば、CMVプロモーターを含む。また、当分野において既知の誘導性プロモーターを使用することが意図される。
【0055】
選択可能マーカーを含む配列がまた、細胞株に導入され得る。これらのマーカーは、異種タンパク質を含むベクター上に含まれるか、または本明細書に記載されたような慣用的な技術を用いて別々に導入され得る。哺乳動物細胞のための選択可能マーカーは、当分野において既知であり、例えば、チミジンキナーゼ、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ、ハイドロマイシンBホスホトランスフェラーゼ、アスパラギンシンターゼおよびアデノシンデアミナーゼを含む。他のマーカーは、所望により、当業者により容易に選択され得る。
【0056】
ある態様において、宿主細胞は、改良されたトランスフェクションもしくは導入の容易さを有するか、または他の望まれる質を有する、迅速に増殖する細胞株であり、HBxおよび異種タンパク質をコードする核酸が導入され得る。
【0057】
本発明のタンパク質産物は、食品タンパク質、特に、必須栄養素を提供する食品タンパク質、薬剤開発もしくは解析における使用のためのタンパク質、食品加工タンパク質および治療タンパク質を含み得る。タンパク質産物は、分泌性であるか、または非分泌性であり得る。回収の容易さのために、分泌性タンパク質が適当である。ある態様において、分泌産物として産生される治療タンパク質は、特に適当である。タンパク質産物の変異型(すなわち、野生型タンパク質の機能の全部または一部を保持するタンパク質の突然変異型、例えば、ヒト凝固因子VIIIのBドメイン欠失変異型)が産生され得る。
【0058】
本発明において有用な治療タンパク質は、血中に通常見出されるタンパク質、例えば、血液因子; ストレス、感染もしくは疾患に応答して血中に見出されるタンパク質; 哺乳動物母乳中に見出されるタンパク質; リンパ液中に通常見出されるタンパク質; ストレス、感染もしくは疾患に応答してリンパ液中に見出されるタンパク質; 脳脊髄液中に通常見出されるタンパク質; ストレス、感染もしくは疾患に応答して脳脊髄液中に見出されるタンパク質; 消化管内に通常見出されるタンパク質; または微生物由来のタンパク質; またはこれらのタンパク質の突然変異タンパク質を含むがこれらに限定されない。さらに、治療タンパク質は、例えば1個またはそれ以上のドメインのような部分の、例えば切断もしくは欠失により突然変異したものであり得る。さらに、突然変異タンパク質は、1個、2個、3個またはそれ以上のアミノ酸置換を含み得る。ある態様において、アミノ酸置換は、当分野において理解されるとおり保存的である。
【0059】
「治療タンパク質」または「治療ポリペプチド」は、疾患の予防および/または処置のために使用され得る、生物学的活性を有するポリペプチドまたはその前駆体を意味する。治療ポリペプチドは、例えば、代謝、免疫制御、ホルモン制御、酵素学的欠損、または膜関連構造機能における遺伝的もしくは非遺伝的遺伝学的欠損を予防、阻害、安定化または回復することができるものを含む。例えば、治療タンパク質は、非存在もしくは欠損細胞タンパク質または酵素を置換するか、または欠損もしくは低発現細胞タンパク質または酵素の産生を補充し得る。治療タンパク質は、融合タンパク質、抗体、抗体断片および抗体模倣剤、ならびに高められた活性を有する改良タンパク質変異型を含み得る。
【0060】
治療タンパク質は、凝固因子、抗体、ウイルス抗原、細菌抗原、真菌抗原、原虫抗原および代謝制御因子を含み得る。代謝制御因子は、ペプチドホルモン、ケモカイン、サイトカインおよび成長因子を含み得る。特定の態様において、治療タンパク質は、腫瘍サプレッサー、サイトカイン、アポトーシス誘発因子または微生物に由来するタンパク質であり得る。
【0061】
「血液タンパク質」なる用語は、ヒト血中に通常見出される1個もしくはそれ以上のタンパク質、または生物学的に活性なその断片を意味し、ヘモグロビン、α-1-抗トリプシン、フィブリノーゲン、ヒト血清アルブミン、プロトロンビン/トロンビン、抗体、血液凝固因子および生物学的に活性なその断片を含むがこれらに限定されない。凝固タンパク質は、第V因子、第VI因子、第VII因子、第VIII因子およびその誘導体、例えばB-ドメイン欠損FVIII、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子、第XIII因子、Fletcher因子、Fitzgerald因子およびvon Willebrand因子を含む。
【0062】
「母乳タンパク質」なる用語は、ヒト母乳中に通常見出される1個もしくはそれ以上のタンパク質、または生物学的に活性なその断片を意味し、カゼイン、ラクトフェリン、リゾチーム、α-1-抗トリプシン、抗体、タンパク質因子、免疫分子および生物学的に活性なその断片を含む。
【0063】
ある態様において、治療タンパク質が抗体であるとき、当該抗体をコードする任意の核酸が意図される。組み換え接着もしくは浮遊細胞培養で製造され得るモノクローナル抗体、一本鎖抗体、抗体断片、キメラ抗体、ヒト化抗体および他の抗体変形分子が含まれる。
【0064】
本発明の範囲内にある抗体は、下記を含むがこれらに限定されない: セツキシマブ、リツキシマブ、トラスツズマブ、ゲムツズマブ、アレムツズマブ、イブリツモマブ、トシツモマブ、ベバシズマブ、アレムツズマブ、HuPAM4、3F8、G250、HuHMFG1、Hu3S193、hA20、SGN-30、RAV12、ダクリズマブ、バシリキシマブ、アブシキシマブ、パリビズマブ、インフリキシマブ、エクリズマブ、オマリズマブ、エファリズマブ、パニツムマブ、抗HER2抗体(Carter et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285-4289 (1992), 米国特許第5,725,856号); 抗CD20抗体、例えば、米国特許第5,736,137号に記載されたキメラ抗-CD20である「C2B8」; 米国特許第5,721,108号に記載された2H7抗体のキメラもしくはヒト化変異型であるB1; または抗-IL-8 (St John et al., Chest, 103:932 (1993), WO 95/23865); ヒト化および/または親和性成熟抗-VEGF抗体、例えば、ヒト化抗-VEGF抗体huA4.6.1 AVASTIN(商標) (Kim et al., Growth Factors, 7:53-64 (1992)、WO 96/30046およびWO 98/45331)を含む抗-VEGF抗体; 抗PSCA抗体(WO01/40309); S2C6およびそのヒト化変異型(WO00/75348)を含む抗CD40抗体; 抗CD11a (米国特許第5,622,700号、WO 98/23761、Steppe et al., Transplant Intl. 4:3-7 (1991)、およびHourmant et al., Transplantation 58:377-380 (1994)); 抗-IgE (Presta et al., J. Immunol. 151:2623-2632 (1993), WO 95/19181); 抗-CD18 (米国特許第5,622,700号またはWO 97/26912); 抗-IgE (E25、E26およびE27を含む; 米国特許第5,714,338号または米国特許第5,091,313号、WO 93/04173またはPCT/US98/13410、米国特許第5,714,338号); 抗Apo-2受容体抗体(WO 98/51793); A2 (REMICADE(商標))、CDP571およびMAK-195 (米国特許第5,672,347号、Lorenz et al., J. Immunol. 156(4):1646-1653 (1996)、およびDhainaut et al., Crit. Care Med. 23(9):1461-1469 (1995)を参照のこと)を含む抗-TNF-α抗体; 抗-組織因子(TF) (欧州特許第0 420 937 B1号); 抗-ヒトα4β7 インテグリン(WO 98/06248); 抗-EGFR (WO 96/40210に記載されたキメラ化もしくはヒト化225抗体); 抗-CD3抗体、例えば、OKT3 (米国特許第4,515,893号); 抗-CD25または抗-tac抗体、例えば、CHI-621 (SIMULECT(商標))および(ZENAPAX(商標)) (米国特許第5,693,762号を参照のこと); 抗-CD4抗体、例えば、cM-7412抗体(Choy et al., Arthritis Rheum 39(1):52-56 (1996)); 抗-CD52抗体、例えば、CAMPATH-1H (Riechmann et al., Nature 332:323-337 (1988)); 抗-Fc受容体抗体、例えば、Graziano et al., J. Immunol. 155(10):4996-5002 (1995)に記載されたFcγRIを標的とするM22抗体; 抗-癌胎児性抗原(CEA)抗体、例えば、hMN-14 (Sharkey et al., Cancer Res. 55(23Suppl): 5935s-5945s (1995); huBrE-3、hu-Mc 3およびCHL6(Ceriani et al., Cancer Res. 55(23): 5852s-5856s (1995); およびRichman et al., Cancer Res. 55(23 Supp): 5916s-5920s (1995))を含む乳癌上皮細胞を標的とする抗体; 大腸癌細胞に結合する抗体、例えば、C242 (Litton et al., Eur J. Immunol. 26(1):1-9 (1996)); 抗-CD38抗体、例えば、AT 13/5 (Ellis et al., J. Immunol. 155(2):925-937 (1995)); 抗-CD33抗体、例えば、Hu M195 (Jurcic et al., Cancer Res 55(23 Suppl):5908s-5910s (1995))およびCMA-676またはCDP771; 抗-CD22抗体、例えば、LL2もしくはLymphoCide (Juweid et al., Cancer Res 55(23 Suppl):5899s-5907s (1995)); 抗-EpCAM抗体、例えば、17-1A (PANOREX(商標)); 抗-GpIIb/IIIa抗体、例えば、アブシキシマブもしくはc7E3 Fab (REOPRO(商標)); 抗-RSV抗体、例えば、MEDI-493 (SYNAGIS(商標)); 抗-CMV抗体、例えば、PROTOVIR(商標); 抗-HIV抗体、例えば、PRO542; 抗-肝炎抗体、例えば、抗-Hep B抗体OSTAVIR(商標); 抗-CA 125抗体OvaRex; 抗-イディオタイプGD3エピトープ抗体BEC2; 抗-α v.γ3抗体VITAXIN(商標); 抗-ヒト腎細胞癌抗体、例えば、ch-G250; ING-1; 抗-ヒト17-1A抗体(3622W94); 抗-ヒト大腸癌抗体(A33); GD3ガングリオシドを標的とする抗-ヒト黒色腫抗体R24; 抗-ヒト扁平上皮癌(SF-25); および抗-ヒト白血球抗原(HLA)抗体、例えば、Smart ID10; 抗-HLA DR抗体Oncolym (Lym-1)もしくはアダリムマブ、またはその活性な断片。本明細書に記載された抗体についての好ましい標的抗原は、HER2受容体、VEGF、IgE、CD20、CD11aおよびCD40である。
【0065】
治療タンパク質が代謝調節因子であるとき、任意のタンパク質もしくはポリペプチド代謝制御因子が意図される。治療タンパク質の任意の突然変異体もしくは変異型が本発明の方法を用いて発現され得ることが理解されるであろう。
【0066】
治療タンパク質は、例えば、エリスロポエチン、ヒト成長ホルモン、顆粒球コロニー刺激因子、インターフェロン-α、-x2b、-β、-βla、-βlbおよび-γ、第IX因子、卵胞刺激ホルモン、インターロイキン-2、エリスロポエチン、抗TNF-αおよびリソソーム加水分解酵素を含むがこれらに限定されない。治療タンパク質はまた、血管内皮成長因子(VEGF)、線維芽細胞成長因子(FGF、FGF1、FGF2およびFGF5)、上皮成長因子(EGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、神経細胞成長因子(NGF)および肝細胞成長因子(HGF)を含み得る。
【0067】
治療タンパク質がサイトカインであるとき、任意のサイトカインが意図される。特定の態様において、サイトカインは、GM-CSF、G-CSF、IL-1 α、IL-10、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、IL-19、IL-20、IL-21、IL-22、IL-23、IL-25、IL-26、IL-27、IL-28、IL-29、IL-30、IL-31、IL-32 IFN-α、IFN-β、IFN-γ、MIP-1α、MIP-1β、TNF-β、TNF-α、TNF-β、ケラチノサイト成長因子、TGF-α、TGF-β、VEGFまたはMDA-7である。
【0068】
本発明により製造され得る他のタンパク質およびポリペプチドは、インスリン、モチリン、ガストリン、プロラクチン、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、エリスロポエチン、成長ホルモン(GH)、幹細胞因子(SCF)、トロンボポエチン、破骨細胞分化抑制因子(OPG)、および肥満タンパク質、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、インスリン様成長因子(IGF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、コロニー刺激成長因子(CSF)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、黄体形成ホルモン(LH)、濾胞刺激ホルモン(FSH)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)、神経成長因子(NGF)、神経栄養因子3 (NT3)、神経栄養因子4 (NT4)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)、骨形成タンパク質(BMP)、巨核球系細胞増殖分化因子(MGDF)、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、組織型プラスミノーゲン活性化因子(TPA)、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、カリクレイン、α-ガラクトシダーゼ、膵臓RNAse、血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼ、インターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1ra)、REMICADE (Infliximab: 循環TNFαの生物学的活性を妨害するモノクローナル抗体)、α-1抗-トリプシン、抗-血管新生剤、カルシトニンおよび類似体、ケモカイン、エンケファリンおよび他のオピオイドペプチド、グルカゴン、グラニセトロン、成長ホルモンアンタゴニストペプチド、IgEサプレッサー、インスリノトロピンおよび類似体、黄体形成ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモンおよび類似体、副甲状腺ホルモンおよび類似体ペプチド、副甲状腺アンタゴニストペプチド、組み換え可溶性受容体、組織型プラスミノーゲン活性化因子、治療抗原、およびENBREL (エタネルセプト: ヒトIgG1のFc部分と結合したヒト75キロダルトン(p 75)の腫瘍壊死因子受容体(TNFR)の細胞外リガンド結合部分からなる二量体融合タンパク質)を含むがこれらに限定されない。
【0069】
治療タンパク質が腫瘍サプレッサーであるとき、任意の腫瘍サプレッサーが意図される。特定の態様において、腫瘍サプレッサーをコードする核酸は、APC、CYLD、HIN-1、KRAS2b、p16、p19、p21、p27、p27mt、p53、p57、p73、PTEN、MDA-7、Rb、Uteroglobin、Skp2、BRCA-1、BRCA-2、CHK2、CDKN2A、DCC、DPC4、MADR2/JV18、MEN1、MEN2、MTS1、NF1、NF2、VHL、WRN、WT1、CFTR、C-CAM、CTS-1、zac1、ras、MMAC1、FCC、MCC、FUS1、Gene 26 (CACNA2D2)、PL6、Beta* (BLU)、Luca-1 (HYAL1)、Luca-2 (HYAL2)、123F2 (RASSF1)、101F6、Gene 21 (NPRL2)またはSEM A3ポリペプチドをコードする遺伝子である。
【0070】
糖タンパク質IIb/IIIa血小板膜受容体アンタゴニスト抗体、組み換えヒルジンおよびトロンビン、トロンビン阻害剤、例えばAngiomax、アンギオペプチン、線維芽細胞成長因子(FGF)アンタゴニストペプチド、およびモノクローナル抗体、例えば血小板由来成長因子(PDGF)受容体に特異的な抗体、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ模倣剤、ならびにそれらの組み合わせが意図される。
【0071】
適当なワクチン抗原は、下記についての抗原を含む(サブユニットタンパク質、ペプチドおよびトキソイドを含むがこれらに限定されない): ジフテリア、破傷風、HIB、ライム病、髄膜炎菌、ムンプス、風疹、水痘、黄熱病、呼吸器多核体ウイルス、ダニ媒介日本脳炎、肺炎球菌、連鎖球菌、腸チフス、インフルエンザ、A型、B型、C型およびE型肝炎を含む肝炎、中耳炎、狂犬病、ポリオ、パラインフルエンザ、ロタウイルス、エプスタイン・バール・ウイルス、CMV、クラミジア、無莢膜ヘモフィルス、カタラリス菌、ヒトパピローマウイルス、BCGを含む結核、淋病、喘息、アテローム性動脈硬化症、マラリア、大腸菌、アルツハイマー病、サルモネラ菌、糖尿病、癌、単純ヘルペス、ヒトパピローマ、HIV-1、HIV-2、SIV、FIV、FeLV、ウマ感染性アデノウイルス、貧血ウイルス、東部ウマ脳炎ウイルス、西部ウマ脳炎ウイルス、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、リフトバレー出血熱ウイルス、クリミア・コンゴ出血熱ウイルス、SARSコロナウイルス、サルポックスウイルス、アデノウイルス、天然痘、日本(蚊媒介)脳炎、黄熱病、デング熱、西ナイル脳炎、毒素原性大腸菌、ヘリコバクター・ピロリ菌(Campylobacter H. pylori, C. difficile)および麻疹。タンパク質は、アデノウイルスデスタンパク質(adenovirus death protein)であり得る。
【0072】
治療タンパク質がアポトーシス誘発因子である場合に、当該因子をコードするすべての核酸が意図される。ある態様において、アポトーシス誘発因子核酸は、CD95、カスパーゼ-3、Bax、Bag-1、CRADD、TSSC3、bax、hid、Bak、MKP-7、PARP、bad、bcl-2、MST1、bbc3、Sax、BIKまたはBIDである。
【0073】
ある態様において、治療タンパク質は、微生物に由来する。微生物に由来するすべてのタンパク質が意図されるが、ある態様においてタンパク質は、ウイルス、細菌、真菌または原虫に由来する抗原である。
【0074】
抗原はまた、ヒト型結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、ペスト菌(Yersinia pestis)、発疹チフスリケッチア(Rickettsia prowazekii)、発疹熱リケッチア(Rickettsia typhi)、ロッキー山紅斑熱リケッチア(Rickettsia rickettsii)、エーリキア・シャフェンシス(Ehrlichia chaffeensis)、野兎病菌(Francisella tularensis)、炭疽菌(Bacillus anthracis)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)およびライム病ボレリア(Borrelia burgdorferi)から選択されるものに由来し得る。
【0075】
ある態様において、抗原が由来する微生物は、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium flaciparum)、三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)、卵形マラリア原虫(Plasmodium ovale)、四日熱マラリア原虫(Plasmodium malariae)およびジアダリア・インテスティナリス(Giadaria intestinalis)から選択される。
【0076】
ある態様において、抗原が由来する微生物は、ヒトプラスマ(Hitoplasma)、シクシジス(Ciccidis)、イミティス(Immitis)、アスパルギルス(Aspargillus)、アクチノミセス(Actinomyces)、ブラストミセス(Blastomyces)、カンジダ(Candida)およびストレプトミセス(Streptomyces)から選択される。
【0077】
トリプシン-キモトリプシンファミリー(S1)は、例えば、下記のメンバーを含む: トリプシン(I型、II型、III型、IV型、Va型およびVb型); トリプシン様酵素; ヘプシン; TMPRSS2; ベノンビン; セルカリアエラスターゼ; ブラキュリ; C因子; プロ凝固酵素; easter遺伝子産物; snake遺伝子産物; stubble遺伝子産物; ビテリン分解エンドペプチダーゼ; ヒポデルミンC; セリンプロテアーゼ1および2; アキラーゼ(achelase); キモトリプシン(A型、B型、II型および2型); プロテイナーゼRVV-V (α型およびγ型); フラボドキシン; ベノンビンA; クロタラーゼ; エンテロペプチダーゼ; アクロシン; アンクロッド; セミニン; セメノゲラーゼ; 組織カリクレイン; 腎カリクレイン; 顎下腺カリクレイン; 7S神経成長因子(α鎖およびγ鎖); 上皮成長因子結合タンパク質(1型、2型および3型); トニン; アルギニンエステラーゼ; 膵エラスターゼI; 膵エラスターゼII (A型およびB型); 膵エンドペプチダーゼE (A型およびB型); 白血球エラスターゼ; メジュラシン; アズロシジン; カテプシンG; プロテイナーゼ3 (ミエロブラスチン); キマーゼ(I型およびII型); γ-レニン; トリプターゼ(1型、2型および3型); グランザイムA; ナチュラルキラー細胞プロテアーゼ1; ギラトキシン(gilatoxin); グランザイムB、C、D、E、F、GおよびY; カルボキシペプチダーゼA複合体コンポーネントIII; 補体因子D、B、I; 補体因子C1r、C1sおよびC2; カルシウム依存性セリンプロテアーゼ; ヒポデルミンA、BおよびC; ハプトグロビン(1型および2型); ハプトグロビン関連タンパク質; プラスミン; アポリポタンパク質(a); 肝細胞増殖因子; メジュラシン; トロンビン; 組織型プラスミノーゲン活性化因子; ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子; 唾液プラスミノーゲン活性化因子; 血漿カリクレイン; 凝固因子VII、IX、X、XIおよびXII; およびタンパク質CおよびZ、ならびに未だ同定されていないメンバー。すべてのトリプシン-キモトリプシンファミリーメンバーのタンパク質は、本発明のタンパク質産物であり得る。
【0078】
本発明の他のタンパク質産物は、受容体リガンド、酵素、接着ペプチド、凝固阻害剤または血栓溶解剤、例えば、ストレプトキナーゼおよび組織型プラスミノーゲン活性化因子、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤およびメタロプロテイナーゼの組織阻害剤、ならびにこれらの任意の組み合わせを含むがこれらに限定されない。
【0079】
本発明において有用なリソソーム加水分解酵素は、β-グルコシダーゼ、α-ガラクトシダーゼ-A、β-ヘキソサミニダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、α-ガラクトシダーゼ、α-マンノシダーゼ、β-マンノシダーゼ、α-L-フコシダーゼ、β-グルクロニダーゼ、α-グルコシダーゼ、α-N-アセチルガラクトサミニダーゼおよび酸性ホスファターゼを含むがこれらに限定されない。
【0080】
主要なポリペプチド治療薬(例えば風邪の薬剤)のすべてを含む治療抗原はまた、治療タンパク質である。
【0081】
本発明の方法および組み換え細胞培養はまた、市販のタンパク質、例えば表1に記載したタンパク質を含み得る。
【0082】
表1
【表2】

【0083】
【表3】

【0084】
【表4】

【0085】
上記タンパク質をコードする核酸は、当分野において既知であるか、または当業者に既知の方法を用いて取得され得る。例えば、高親和性抗体をコードする核酸は、ファージライブラリーをスクリーニングすることにより取得され得る。
【0086】
本発明の方法により産生される異種タンパク質は、PROポリペプチドを含み得る。PROポリペプチドは、N末端シグナル配列および/または開始メチオニンを欠失していてもよく、当該アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列によりコードされ得る。本発明の方法はまた、PRE PROポリペプチド、すなわちPROポリペプチドの前駆体の製造を含む。
【0087】
本発明の方法により産生される異種タンパク質は、非分泌型タンパク質を回収するための細胞の溶解または分泌型タンパク質を得るための培養培地からの単離を含む当分野において既知の方法により回収され得る。さらに、タンパク質は、沈殿、イオン交換もしくは親和性レジンもしくは膜への結合、およびサイズ排除クロマトグラフィーを含むがこれらに限定されない任意の有用な方法により精製され得る。哺乳動物細胞系により産生される組み換えタンパク質を発現させて回収する一般的な方法は、例えば、Etcheverry, Expression of Engineered Proteins in Mammalian Cell Culture, in Protein Engineering: Principles and Practice, Cleland et al. (eds.), pages 163 (Wiley-Liss, Inc. 1996)に記載されている。
【0088】
ある態様において、治療タンパク質の産生レベルは、HBxまたはHBxとXBP1sを導入されていない他の細胞における産生レベルと比較して、約1.1×、1.2×、1.4×、1.6×、1.8×、2×、2.2×、2.4×、2.6×、2.8×、3×、3.2×、3.4×、3.6×、3.8×、4×、4.2×、4.4×、4.6×、4.8×、5×もしくはそれ以上、またはそこから誘導され得る任意の範囲であり得る。
【0089】
本発明の方法は、特定の量の産生異種タンパク質を含み得る。ある態様において、細胞培養非接着懸濁液の1リットルあたりに産生される治療タンパク質の量は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、18、もしくは20 mgまたは潜在的にそれ以上、またはそこから誘導され得る任意の範囲もしくは組み合わせであり得る。したがって、本発明の組成物は、当該量の治療タンパク質を含み、それはさらに精製されるか、もしくは精製されなくてもよい。回収された異種タンパク質または非接着浮遊培養から回収されたタンパク質は、当分野において既知の方法によりさらに精製され得る。精製は、当分野において既知のすべての方法を含み得て、濃縮、タンジェンシャルフロー限外ろ過によるダイアフィルトレーション、クロマトグラフィーまたはサイズ排除精製(size resolution purification)、親和性精製およびイオン交換クロマログラフィーを含むがこれらに限定されない。ある態様において、クロマトグラフィーは、異種タンパク質精製において使用され得る。ある態様において、クロマトグラフィーは、親和性クロマログラフィーまたはイオン交換クロマログラフィーであり得る。また他の態様において、親和性クロマログラフィーにより精製される異種タンパク質をさらにイオン交換クロマログラフィーにかけることができる。本発明のある態様において、回収された異種タンパク質をサイズ排除精製にかけることができる。ある態様において、サイズ排除精製は、タンパク質ゲルまたはサイズ排除カラムを含み得る。本発明により製造された異種タンパク質は、1個またはそれ以上の担体、賦形剤などと共に薬学的に製剤化され得て、当該製剤は慣用的な方法により投与され得る。
【実施例】
【0090】
実施例
実施例1.US11およびNS4BではなくHBxがBHK21細胞におけるタンパク質産生を増加させる
プラスミド構築
一過的トランスフェクションのために使用されるすべてのトランスジーンを、全長ヒトCMVプロモーター、Promegaキメライントロン、MCS (マルチクローニングサイト)およびSV40ポリA (Gene Therapy Program)を含む発現ベクターpZac2.1 (Gene Therapy Program, Penn Vector core, University of Pennsylvania)にクローン化した。
【0091】
pBSプラスミドに含まれたHBV株ADW2ゲノムからHBx遺伝子を得た。当該プラスミドにおいて、HBxは、MluIおよびXbaI制限酵素部位に隣接しており、2個のプライマー(フォワードプライマーGER270: GATCACGCGTGCCACCATGGCTGCTAGGCTG、配列番号1およびリバースプライマーGER271: GTCGACTCTAGATTAGGCAGAGGTGAAAAAGTTG、配列番号2)を用いて、PCRによりそれを増幅した。増幅したHBxを発現ベクターpZac2.1に挿入し、pHBxプラスミドを作製した。
【0092】
Gretch and Stinski Virology, 174 (2) 522-532 (1990)に記載されたヒトCMVのUS11遺伝子を、2個のプライマー(フォワードプライマーGER275: GATCACGCGTGCCACCATGAACCTTGTAATG、配列番号3およびリバースプライマーGER276: GTCGACTCTAGATCACCACTGGTCCGAAAAC、配列番号4)を用いてPCRにより増幅し、pZac2.1に挿入し、プラスミドpUS11を作製した。
【0093】
Invitrogene (BlueHeron Biotechnology)を介してHCVのNS4B遺伝子(Gene bank: M588335)を合成した。当該遺伝子は、MluIおよびXbaIに隣接しており、それをpZac2.1にクローン化し、プラスミドpNS4Bを作製した。
【0094】
全長ヒト抗体MF-J(ヒトメソテリンに特異的に結合する)を代表的な異種タンパク質として使用した。MF-Jにおいて、重鎖および軽鎖をfurin/2A切断部位で結合させる。一過的トランスフェクションのためのpMF-J/fu/2Aの最終産物を作製するために、鋳型プラスミドpMorphH.Fur2A.kappanlight (pGT149)を作製した。pGT149を構築するために、BbvC1およびBlpIで消化して、アニール化オリゴGER212 (5'-TCAGCAGCACCCTGACCC-3'、配列番号5)およびGER213 (5'-TCAGGGTCAGGGTGCTGC-3'、配列番号6)で連結することにより、pMORPH h Igκ1 (HuCal technology from MorphoSys AG, Gemany)中のヒトκ定常領域からBlpI部位を除去した。次いで、3個の断片のライゲーションによりpGT149を作製した。第1の断片は、NheI+NotIで開裂された骨格であるpZac2.1であった。第2の断片は、pMORPH h IgG1-1プラスミド(NheI部位-VHリーダー-EcoR1/BlpIスタッファー-hH定常領域-Ngo MIVで終わるfur2A配列のN末端部分を含む)からのオリゴGER204 (5'-GGAGACCCAAGCTGGCTAGC-3'、配列番号7)およびGER205 (5'-ACGTCGCCGGCCAGCTTCAGCAGGTCGAAGTTCAGGGTCTGCTTCACGGGGGCTCTCTTGGCCCGTTTACCCGGAGACAGGGAGAG-3'、配列番号8)を有するPCR産物であり、NheIおよびNgo MIVで消化された。また第3の断片は、pMORPH h Igκ1プラスミド(BlpI部位を欠損している) (Fur2A配列のNgoMIV C-末端-Vκリーダー-EcoRV/BsiWIスタッファー-ヒトκ定常領域-NotI断片を含む)からのオリゴGER206 (5'-GAAGCTGGCCGGCGACGTGGAGTCCAACCCCGGCCCCATGGTGTTGCAGACCCAGGTC-3'、配列番号9)およびGER207 (5'-ATCAGTGCGGCCGCCTAACACTCTCCCCTGTTGAAGC-3'、配列番号10)を有するPCR産物であり、NgoMIVおよびNotIで消化された。
【0095】
抗体がκ軽鎖を有するので、pMF-J/fu/2Aを構築するために、MF-J抗体可変重鎖(VH)および軽鎖(VL)を4ウェイ(four-way)ライゲーションによりpGT149鋳型に挿入した。MF-J VHおよびVL断片を、各々MfeI-BlpIまたはEcoRV-BsiWI消化によりpMORPH9 MF-Jから得た。骨格として、pGT149をEcoRIおよびBlpIで開裂した。また、pGT149をBlpIおよびEcoRVで消化して、VHとVLを結合する中間断片を得た。
【0096】
pCMV-Glucプラスミド(Sigma, St. Louis, MO)から分泌化Gaucissaルシフェラーゼ遺伝子(図中の「Gluc」)を得て、KpnI+NotIの制限酵素消化によりpZac2.1にサブクローン化して、pGlucを作製した。
【0097】
マウスSEAP (分泌型アルカリホスファターゼ)遺伝子をプラスミドpGT36 (Szymanski et al, Molecular Therapy 15 (7) 1340-1347 (2007)に記載されている)からSal IおよびNot I制限酵素で切断し、次いで、Not IおよびSal Iで開裂したpZac2.1にサブクローン化し、pmuSEAPプラスミドを作製した。
【0098】
細胞培養
5%ウシ胎児血清、非必須アミノ酸およびピルビン酸ナトリウムを補充した増殖培地でBHK21細胞を維持した。接着培養のために5%ウシ胎児血清を補充した増殖培地でHKB11細胞を維持した。
【0099】
一過的トランスフェクション
pHBxとpMF-J/fu/2AもしくはpGlucの共トランスフェクションのために、Fugene6法(Roche, Indianapolis, IN)を用いて、BHK21およびHKB11細胞に一過的に導入した。トランスフェクションの24時間前に、BHK21について約1.5x105 細胞/ウェルの細胞濃度で、およびHKB11について約2x105 細胞/ウェルの細胞濃度で、細胞を12ウェルプレートに播種した。表2で示されたとおり、各トランスジーンについて、6個のウェルに異なる量のプラスミドを導入した。標的遺伝子プラスミドの量を一定に保ち、pHBxの量を変えた。ウェルあたりの全DNA量を平衡化するためにpBlueScript (pBS)を使用し、トランスフェクション条件をウェル間で一致させた。4.8μlのFugene6を含む50μlのopti-MEMに望まれる量のDNAを混合した。96時間後に、細胞培養上清または細胞を回収した。各実験を少なくとも3回繰り返した。
【0100】
表2
【表5】

【0101】
Fugene6を用いた単一プラスミドトランスフェクションのために、DNA:Fugene6の比率を約1:6 (12ウェルあたり0.8 μg DNA:4.8 μl Fugene6)に維持した。pMF-J/fu/2AまたはpGlucのみを細胞に導入する場合には、プラスミドは、約0.8 μg/ウェルであった。各トランスフェクションをデュプリケートおよびトリプリケートで行い、トランスフェクションの群を2-3回繰り返した。pHBxを細胞に導入する場合には、pHBx量を約0 μg-0.8 μgの間で変えて、pBSを細胞あたりに導入された全DNA量についてのコントロールとして使用した。トランスフェクション手順は、上記と同じであった。
【0102】
ELISAによる全長抗体MF-J/fu/2Aの検出
Immulon 4 HBXプレートを、重炭酸塩バッファー中、25ng/50μl/ウェルのメソテリン(c-末端Flagタグ、SECプール、1.41mg/mlのストック濃度)を用いて、4℃で一晩被覆した。200 μl/ウェルのブロッキングバッファー(PBS中、3% BSA)を用いて、プレートを撹拌しながら1時間ブロックした。標準MF-J抗体(1.66 mg/ml)およびサンプルを、培養培地の望まれる割合内で50 μl/ウェルとして調製し、室温で2時間インキュベートした。MF-J抗体標準曲線の開始点は、1 μg/mlであり、次いで、1:3の連続希釈を行い、全部で11点とった。細胞培養上清について、少なくとも2個の点が標準曲線の直線範囲内になるように、各サンプルについて2〜4個の希釈点をとった。次いで、プレートウォッシャー(Bio-tek)を用いて、プレートを0.05% PBST (PBSバッファー中、0.05% TWEEN 20)洗浄バッファーで4回洗浄した。50 μl/ウェルのHRP共役ヤギ抗-ヒトIgG (Pierce, 1:5000希釈)を室温で1時間インキュベートし、その後、PBST (0.05% TWEEN)で4回洗浄した。100 μl/ウェルのABTS (Sigma)添加後に、405nmでの吸光度を測定した。Softmax pro 4.3.1ソフトウェアにより、各サンプルの抗体濃度を計算した。
【0103】
分泌化Gaussiaルシフェラーゼ(Gluc)アッセイ
Renillaルシフェラーゼキット(Promega, Madison, WI)を用いて、分泌化Gluc活性をアッセイした。1x Passive溶解バッファー(Promega)により、細胞上清を104〜105に希釈した。20 μlの希釈サンプルを測定のために使用した。相対発光量(RLU)として結果を示した。
【0104】
muSEAP活性アッセイ
化学発光活性アッセイキット(Applied Biosystems, Bedford, MA)によりmuSEAP活性を決定した。
【0105】
ウエスタンブロッティング
RIPAバッファー(Sigma, St. Louis, MO)または1xLDSバッファー(Invitrogen, Carlsbad, CA)で細胞を溶解した。次いで、12% Bis-Trisゲル(Invitrogen, Carlsbad, CA)に溶解物を載せ、分離した。iBlot (Invitrogen, Carlsbad, CA)を介してニトロセルロース膜にゲルをブロットし、速やかにPBS中、5%ミルクで、4℃で一晩ブロッキングした。その後、膜を、ウサギ抗-ヒトHBxポリクローナル抗体(Abcam, Cambridge, MA. 0.05% PBST中、1:2000)を用いて、室温で2時間インキュベートし、その後、HPR共役ヤギ抗-ウサギIgG (Jackson Labs, 0.05% PBST中、1:5000)でさらに1時間インキュベートした。ECL Plus (Amersham Biosciences, Pittsburgh, PA)を用いてバンドを検出した。
【0106】
多くの異なる細胞株における一過的トランスフェクションで、タンパク質産生に関する3個のウイルス遺伝子の効果をスクリーニングした。段階的に増加した量のpUS11、pNS4BおよびpHBx発現プラスミドを一定量(0.5 μg)のpMF-J/fu/2Aと共に、C2C12およびBHK21に共トランスフェクションした(図1)。培養の96時間後に上清を回収した。機能的な全長抗体MF-Jの発現レベルをELISAにより検出した。0.5 μgの標的遺伝子プラスミドを含むが、ウイルス遺伝子添加を有さないコントロールウェルに対するタンパク質発現の割合として、倍率変化を計算した。図1に示された結果は、US11またはNS4Bの発現ではなくHBxの発現が、C2C12およびBHK2細胞の両方においてタンパク質産生を約2-3倍増大させることを示す。MF-J抗体または分泌化Glucとの共発現を用いて、CHO-K1細胞におけるUS11遺伝子およびCHO-SおよびHKB11細胞におけるNS4B遺伝子を試験した。US11およびNS4Bの両方の細胞株において、タンパク質産生の増加は観察されなかった。
【0107】
実施例2.標的遺伝子とHBxの一過的共トランスフェクションは、産生細胞株BHK21およびHKB11におけるタンパク質産生を促進する
タンパク質産生についてのHBxの効果を、特定の哺乳動物宿主細胞株での一過的トランスフェクション様式においてさらに評価した。増加した量のpHBx発現プラスミドを一定量のpMF-J/fu/2AまたはpGlucと共にBHK21およびHKB11細胞に導入した(図2)。トランスフェクションの96時間後に細胞を溶解し、ウエスタンブロット解析を行い、HBxが用量依存的な方法で発現していることを確認した。図2は、BHK21細胞を用いた結果を示す。同様の結果は、HKB11細胞において見られた。
【0108】
pMF-J/fu/2Aを一過的に共導入したBHK21細胞におけるHBx発現のウエスタンブロット解析を行った。全細胞抽出物を12% Bis-Trisゲルで分離し、抗ヒトHBx抗体で探索した。等量のタンパク質を各レーンに載せた。17.5 kDaのバンドがすべての導入ウェルで観察されたが、コントロールウェルでは観察されなかった。発現するHBxの量は、導入のために使用される0.1〜0.8 μgのpHBxについてのおおよそ単調な方法で増加した。
【0109】
実施例3.HBxとの一過的共導入は、タンパク質産生を増加させる
また、実施例2におけるウエスタンブロット解析のために使用されたものと同じサンプルから、96時間後に上清を回収した。結果は、HBxとMF-J Abの共トランスフェクションが、BHK21およびHKB11細胞において、pHBx:pMF-J比率の広い範囲にわたって(0.2:1から1.6:1まで)、2.5-3.5倍のMF-J抗体発現の増加を生じることを示した(図2Aおよび2C)。HBxとレポーター遺伝子Glucの共トランスフェクションは、BHK21およびHKB11細胞において1.5-2.5倍のGluc発現の増加を生じた。
【0110】
図2は、HBxが一過的共トランスフェクションにおけるタンパク質産生を促進することを示す。増加した量のpHBxと固定量(0.5 μg)のpMF-J/fu/2A全長抗体(2Aおよび2C)またはレポーター遺伝子pGluc (2Bおよび2D)を、BHK21 (2Aおよび2B)ならびにHKB11 (2Cおよび2D)細胞に共トランスフェクションした。上清培地に分泌されたタンパク質産生を、MF-J抗体についてELISAにより(2Aおよび2C)、またはGlucについてRenillaルシフェラーゼキットにより(2Bおよび2D)、96時間後に測定した。0.5 μgの標的遺伝子プラスミドを含むが、HBx添加を有さないコントロールウェルに対するタンパク質発現の割合として、倍率変化を計算した。グラフは、3回の実験の平均を示す。
【0111】
実施例4.標的遺伝子とHBxの一過的共トランスフェクションは、C2C12細胞におけるタンパク質産生を増加させた
タンパク質発現についてのHBxの効果をまた、マウス骨格筋C2C12細胞において評価した。再び、一定の範囲のpHBxプラスミド(0-0.8 μgの量)を0.5 μgのpMF-J/fu/2A、pGlucまたはpmuSEAPと共に導入した。図3に示されるデータは、HBxが一定の範囲のpHBx: pTransgene比率(0.05:1〜1.6:1)を有するC2C12細胞においてタンパク質発現を促進することを示す。
【0112】
図3は、HBxがC2C12細胞での一過的共トランスフェクションにおいてタンパク質産生を促進することを示す。C2C12細胞に構成的発現HBxとMF-J全長抗体またはレポーター遺伝子GlucまたはmuSEAPを共導入した。上清からのタンパク質産生を、MF-J抗体についてELISAにより、分泌されたGluc活性についてRenillaルシフェラーゼキットにより、または分泌されたmuSEAP活性についてSEAPキットにより、96時間後に測定した。0.5 μgの標的遺伝子プラスミドを含むが、HBx添加を有さないコントロールウェルに対するタンパク質発現の割合として、倍率変化を計算した。図3のグラフは、3回の実験の平均を示す。
【0113】
したがって、HBxと異種核酸の共発現は、特定の宿主細胞および宿主細胞株におけるタンパク質産物の収量をかなり促進し得る。
【0114】
実施例5.BHK21およびHKB11細胞の安定的プールにおけるHBxの発現
レンチウイルス作製
HBxレンチウイルスを作製するために、HBx遺伝子をpHBxからNheIおよびNotIで切り出し、レンチウイルスベクターpCDH1-MCS1-EF1-Puro (System Biosciences, Mountain View, CA)にサブクローン化してpCDH1-HBxプラスミドを作製した。このプラスミドは、最少CMVプロモーターを有する。293 T細胞を、15 cmディッシュを用いて、成長培地(DMEM + 10% FBS + 1X L-グルタミン)中、6x106細胞の密度で播種し、37℃、5% CO2でインキュベートした。翌日、培地を吸引し、プラスミドpLP1 (gag-polをコードする; Invitrogen)、pLP2 (revをコードする; Invitrogen)およびpLP (VSV-Gをコードする; Invitrogen)opti-MEM (Invitrogen)、遺伝子送達プラスミド(HBxタンパク質をコードする)ならびにlipofectamine 2000試薬(Invitrogen)を含むトランスフェクション培地で置換した。24時間後にトランスフェクション培地を維持培地(DMEM + 5% FBS + 1X L-グルタミン)で置換した。トランスフェクションの48時間後に、培地を回収し、Millex-HV 0.45 μm PVDFフィルター(Millipore)を用いてろ過し、超遠心分離法によりウイルス粒子を濃縮した。
【0115】
安定的プールおよびクローンの確立
HBx保有プールおよびクローンを作製するために、レンチウイルス導入の前日に、BHK21およびHKB11細胞を1x106細胞/ウェルで6ウェルプレートに播種した。0.1、1および10の感染多重度(MOI)を有する200 μlのレンチウイルスを細胞に添加した。インキュベーションの4時間後、レンチウイルスを含む培地を除去し、細胞を新鮮な培地で2-3回洗浄し、その後、最終的に2 mlの培養培地を加えた。48時間後に、BHK21について2 μg/ml、およびHKB11について2.5〜5 μg/mlの濃度で、ピューロマイシンを細胞に加えた。
【0116】
単一クローンのために、プール化細胞を、96ウェルプレートの各々のウェルに選択薬剤を含む100 μlの培地を用いて、1細胞/ウェルおよび0.1細胞/ウェルで播種した。インキュベーションの約1-2週間後、80-90%のコンフルエンスに到達するまで、細胞を24ウェルプレートで増殖させた。次いで、クローンをさらなる解析のために凍結するか、または増殖させた。
【0117】
BHK21およびHKB11細胞に0.1、1および10 MOIのLenti-HBx (全長HBxを発現するレンチウイルス)を導入した。安定的なプールは、その対応するMOIからのピューロマイシン選択後、細胞の混合物であった。BHK21およびHKB11プールにおけるHBx発現レベルは、ウエスタンブロットにより示された。ウイルスのMOIが増加すると、HBx発現レベルは増加した。
【0118】
全細胞抽出物を12% Bis-Trisゲルで分離し、抗ヒトHBx抗体で探索した。等量のタンパク質を各レーンに載せた。BHK21およびHKB11安定的プールにおけるHBx発現のウエスタンブロット解析は、コントロールトランスフェクションでは発現が見られず、0.1、1.0および10 MOIのLenti-HBxを有する場合には17.5 kDaのHBxの段階的に増加する発現が見られたことを示した。
【0119】
実施例6.タンパク質産生は、HBx発現安定化プールにおいて増加する
安定的HBxプールをパイロット実験において使用し、細胞生産性についてHBxの全体指標および平均的な効果を評価した。pMF-J/fu/2AおよびpGlucを異なるレベルのHBxを発現するBHK21およびHKB11安定的プールに一過的に導入した。図4に示されるとおり、BHK21/HBxおよびHKB11/HBxプールは、2倍以上のタンパク質産生の増加を示す。
【0120】
図4は、構成的にHBxを発現するBHK21およびHKB11安定的プールにおいてタンパク質産生が増加したことを示す。12ウェルプレートを用いて、BHK21/HBxおよびHKB11/HBx安定的プールにpMF-J/fu/2AまたはpGlucを導入した。96時間後に上清を回収した。MF-J抗体レベルおよびGluc活性を、それぞれELISAおよびRenillaルシフェラーゼキットにより測定した。親コントロール細胞に対する割合として、倍率変化を計算した。
【0121】
実施例7.安定的BHK21/HBxおよびHKB11/HBxクローンの作製
3個の安定的プール(0.1、1および10のMOI)から、細胞を、ピューロマイシン選択下、100 μlの増殖培地を用いて、0.1細胞/ウェルおよび1細胞/ウェルの濃度で96ウェルプレートに播種した。全42クローンを単離した。24個のクローンをさらにHBx発現レベルおよびタンパク質生産性について評価した。HBx発現レベルとタンパク質生産性間の明確な相関関係は観察されなかった。したがって、その後、異なるレベルのHBx発現(低、中および高)ならびにMF-JおよびGlucの比較可能な発現レベルに基づいて、5個のクローンを選択した。クローンは、下記の明確なHBx発現を有していた: クローン31、低; クローン22、中; クローン18、高; クローン13、高; およびクローン42、高。図5で示されるとおり、これらのBHK21/HBxクローンは、MF-J抗体およびGlucレポーター遺伝子タンパク質産生を約2〜5倍増加させ得る。
【0122】
図5は、構成的にHBxを発現するBHK21安定的クローンにおいてタンパク質産生が増加したことを示す。さまざまなクローンからのHBxタンパク質のウエスタンブロットのために、各クローンからの3x106細胞を300 μlの1xLDSサンプルバッファーに溶解し、加熱し、超音波処理した。30 μl (3x105細胞)を各レーンに載せ、12% Bis-Trisゲルで分離し、抗ヒトHBx抗体で探索した。図5は、12ウェルプレートを用いて、pMF-J/fu/2AまたはpGlucが導入されたBHK21/HBx安定的クローンを示す。96時間後に上清を回収した。MF-J抗体レベルおよびGluc活性を、それぞれELISAおよびRenillaルシフェラーゼキットにより測定した。親コントロール細胞に対する割合として、倍率変化を計算した。
【0123】
したがって、HBxを安定的に発現するように改変された特定の細胞株は、異種タンパク質産物の収量を増加し得る。
【0124】
実施例8.標的遺伝子とHBxの一過的共トランスフェクションにおけるタンパク質産生についての非接着DG44sus浮遊細胞と接着DG44細胞の効果
DG44細胞株は、CHO pro3細胞由来のジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)欠損細胞株である(Urlaub et al., 1983, Cell, 33:405-12 (1983))。DG44細胞株を非接着浮遊培養に適合させて、DG44sus株を作製した。タンパク質発現についてのHBxの効果を両細胞株において評価した。DG44およびDG44sus細胞に0-0.8 μgの範囲のpHBxプラスミドおよび0.5 μgのpGlucを導入した。上清からのタンパク質産生を、分泌されたGluc活性についてRenillaルシフェラーゼキットにより(2Bおよび2D)、72時間後に測定した。0.5 μgの標的遺伝子プラスミドを含むが、HBx添加を有さないコントロールウェルに対するタンパク質発現の割合として、倍率変化を計算した。グラフは、3回の実験の平均を示す。
【0125】
図6は、HBxが、DG44接着細胞ではなくDG44sus細胞(「DG44s」で示す)において、Gluc発現を2-2.5倍増加し得ることを示す。この増加は、同じ起源の細胞株においてさえ、細胞培養状態(非接着浮遊培養と接着培養)がタンパク質産生に影響を与え得ることを示す。
【0126】
実施例9.標的遺伝子とHBxの一過的共トランスフェクションにおけるタンパク質産生についての293F浮遊細胞とHEK293接着細胞の効果
タンパク質発現についてのHBxの効果をまたHEK293細胞株および293F細胞株(Invitrogen)において評価した。0-0.8 μgの範囲のpHBxプラスミドを0.5 μgのpGlucまたはpMF-Jと共に導入した。上清からのタンパク質産生を、分泌されたGluc活性についてRenillaルシフェラーゼキットにより、および分泌されたMF-J抗体についてELISAにより、72時間後に測定した。0.5 μgの標的遺伝子プラスミドを含むが、HBx添加を有さないコントロールウェルに対するタンパク質発現の割合として、倍率変化を計算した。グラフは、2-3回の実験の平均を示す。
【0127】
図10は、HBxが、293F浮遊細胞において2-6倍およびHEK293接着細胞において約2倍、GlucまたはMF-J抗体発現を増加させ得ることを示す。これはまた、同じ起源の細胞株においてさえ、細胞培養状態(非接着浮遊培養と接着培養)がタンパク質産生に影響を与え得ることを示す。
【0128】
実施例10.HBx仲介産生の増加は、XBP1の活性化から独立している
定量的PCR (qRT-PCR)を用いたXBP1sおよびその推定上の標的Erdj4 mRNAの測定により、XBP1sの活性化についてのHBx仲介タンパク質産生の増加効果を調べた。データは、HBxがこの系においてXBP1sまたはその標的Erdj4 mRNAレベルを誘導しないことを示す。図7を参照のこと。全RNAを抽出し、等量の全RNAを各々の反応にかけた。GAPDHを内部コントロールとして使用した。mRNAレベルの倍率変化をBHK21親細胞(BHK21p)に対する割合として計算した。さらに、BHK21/HBx細胞株におけるXBP1sタンパク質発現レベルはまた、BHK21親細胞と比較して増加を示さなかった。
【0129】
実施例10.XBP1sのBHK21/HBx安定化細胞株への添加は、タンパク質産生を増加させる
本明細書で提供されるデータは、一過的共トランスフェクションにより、XBP1s単独の促進された発現がBHK21親細胞における異種タンパク質発現を増加させ得ることを示す(図8Aおよび8B)。図3に示されたのと同様の方法を用いて、HBxとXBP1sのコンビナトリアルエンジニアリング実験を行った。12ウェルプレートを用いて、固定量のpMF-J/fu/2AまたはpGLucと段階的な量のpXBP1sをBHK21親細胞、BHK21/HBx安定的プールおよびBHK21/HBxクローンに一過的共導入した。120時間後に、上清培地中のタンパク質発現レベルを測定し、それを図8A (MF-J)および8B (Gluc)に示す。XBP1sをBHK21/HBx安定的細胞に添加すると、BHK21/HBx/XBP1sは、XBP1sの添加を有さないその対応するBHK21/HBxプールおよびクローンと比較して、2.6〜4.7倍以上のMF-Jの増加および1.9〜3.4倍以上のGlucの増加を産生した。コントロールとしてXBP1sを一過的に導入したBHK21親細胞を用いると、BHK21/HBx/XBP1s細胞は、2.5〜6倍以上のMF-J抗体産生の増加および1.4〜3.6倍以上のGluc産生の増加を示した。これらの結果は、HBxまたはXBP1s単独を導入した細胞と比較して、XBP1sがさらにBHK21/HBx安定的形質転換体においてタンパク質産生を促進し得ることを示す。
【0130】
実施例11.HBxとXBP1sの共トランスフェクションは、タンパク質産生についての相乗効果を有する
BHK21親細胞に、HBxまたはXBP1sの非存在下でMF-JまたはGlucを一過的に導入し、それを図8で示される実験のためのコントロールとして使用した。12ウェルプレートを用いて、BHK21親細胞およびBHK21/HBx#22クローンに0.2 μgのpXBP1sと0.5 μgのpMF-J/fu/2A全長抗体またはpGlucレポーター遺伝子を共導入した。上清からのタンパク質産生を、120時間後にMF-JについてELISAにより、および96時間後にGluc活性についてRenillaキットにより測定した。0.5 μgの標的遺伝子プラスミドを含むが、HBxまたはXBP1s添加を有さないBHK21親細胞に対するタンパク質発現の割合として、倍率変化を計算した。グラフは、2-4回の実験の平均および範囲を示す。これらの結果は、HBxおよびXBP1sをコードする核酸を用いた共トランスフェクションがBHK21細胞において相乗的な方法でタンパク質産生を高め得ることを示す。
【0131】
MF-J抗体発現について図9で示されるとおり、0.2 μgのpXBP1s用量でのXBP1s添加単独では3.76倍の増加を示し、HBx添加単独では4.3倍の増加を示した。BHK21細胞にHBxおよびXBP1sを導入すると、15倍のMF-J抗体分泌が観察された。Gluc発現は、XBP1sトランスフェクションにより2.84倍、HBxトランスフェクションにより4.37倍、および共トランスフェクションにより10.53倍促進された。
【0132】
表3は、コントロールとしてBHK21親細胞を用いた、より詳細なHBxおよびXBP1s核酸の別々のおよび協同した効果の比較を示す。タンパク質産物産生の促進は、BHK21/HBxプール化安定体(stables)およびクローンにおいてあてはまる(表3)。細胞の安定的プールは、効果がクローニングから生じている訳ではないことを示す。これらの測定にしたがって、HBxおよびXBP1sの共発現は、BHK21細胞におけるタンパク質産生について相乗的効果を有する。表3を参照のこと。例えば、BHK21/ HBx#22/XBP1s細胞は、0.4 μg〜0.6 μgのpXBP1s用量でその最大Glucタンパク質産生に達し、BHK21/HBx#42細胞は、0.1 μgのpXBP1s用量でその最大Glucタンパク質産生に達した。
【0133】
【表6】

【0134】
したがって、XBP1sおよび標的遺伝子のBHK21/HBx安定的細胞株への一過的共発現は、親細胞およびHBxもしくはXBP1s単独を導入した細胞と比較して、タンパク質産生を促進する。さらに、HBxおよびXBP1sの共トランスフェクションは、タンパク質産生についての相乗効果を有する。
【0135】
本明細書に開示されたすべての参照は、特許請求の範囲に記載された発明を記載し、作製し、および使用することに関連のある範囲内で、引用により本明細書の一部とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養哺乳動物宿主細胞において異種タンパク質を産生する方法であって、HKB11細胞、CHO細胞、BHK21細胞、C2C12細胞およびHEK293細胞からなる群から選択される哺乳動物宿主細胞を、HBxおよび異種タンパク質が当該哺乳動物宿主細胞によって発現されるような条件下で増殖させることを含み、当該哺乳動物宿主細胞がHBxをコードする核酸および異種タンパク質をコードする核酸を含む、方法。
【請求項2】
培養哺乳動物宿主細胞において異種タンパク質を産生する方法であって、非接着浮遊培養で哺乳動物宿主細胞を、HBxおよび異種タンパク質が当該哺乳動物宿主細胞によって発現されるような条件下で増殖させることを含み、当該哺乳動物宿主細胞がHBxをコードする核酸および異種タンパク質をコードする核酸を含む、方法。
【請求項3】
培養哺乳動物宿主細胞において異種タンパク質を産生する方法であって、下記;
a) HBxをコードする核酸を含み、かつ、外因性XBP1sを提供する核酸を含む哺乳動物宿主細胞を提供すること; および
b) HBx、外因性XBP1sおよび異種タンパク質が哺乳動物細胞によって発現されるような条件下で当該哺乳動物細胞を増殖させること
を含む、方法。
【請求項4】
HBxをコードする核酸が哺乳動物宿主細胞に導入されて一過的に発現する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
HBxをコードする核酸および/またはXBP1sを提供する核酸が哺乳動物宿主細胞に導入されて一過的に発現する、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
培養が培養培地を含み、異種タンパク質が培養培地中に分泌される、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
さらに異種タンパク質を回収および/または精製することを含む、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
HBxをコードする核酸が哺乳動物宿主細胞で安定的に発現する、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
異種タンパク質をコードする核酸が哺乳動物宿主細胞で安定的に発現する、請求項1から3および8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
異種タンパク質をコードする核酸が哺乳動物宿主細胞で一過的に発現する、請求項1から3および8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
外因性XBP1sを提供する核酸が哺乳動物宿主細胞で安定的に発現する、請求項3に記載の方法。
【請求項12】
哺乳動物宿主細胞が非肝細胞由来である、請求項2または3に記載の方法。
【請求項13】
哺乳動物宿主細胞がDG44sus細胞である、請求項2に記載の方法。
【請求項14】
哺乳動物宿主細胞がHEK293細胞である、請求項2に記載の方法。
【請求項15】
異種タンパク質をコードする核酸およびHBxをコードする核酸を含む哺乳動物宿主細胞を含む組成物であって、当該哺乳動物宿主細胞がHKB11細胞、CHO細胞、BHK21細胞、C2C12細胞およびHEK293細胞からなる群から選択される細胞株に由来し、当該細胞がHBxおよび異種タンパク質を発現するか、またはそれらを発現するように誘導され得る、組成物。
【請求項16】
足場非依存性哺乳動物宿主細胞の浮遊培養物を含む組成物であって、当該哺乳動物宿主細胞がHBxをコードする核酸および異種タンパク質をコードする核酸を含み、当該哺乳動物宿主細胞がHBxおよび異種タンパク質を発現するか、またはそれらを発現するように誘導され得る、組成物。
【請求項17】
下記:
(a) HBxをコードする核酸、
(b) 外因性XBP1sを提供する核酸、および
(c) 異種タンパク質をコードする核酸
を含む哺乳動物宿主細胞を含む組成物であって、当該哺乳動物宿主細胞がHBx、外因性XBP1sおよび異種タンパク質を発現するか、またはそれらを発現するように誘導され得る、組成物。
【請求項18】
哺乳動物宿主細胞がHBx、異種タンパク質またはその両方を安定的に発現する、請求項15または16に記載の組成物。
【請求項19】
哺乳動物宿主細胞がHBx、XBP1sおよび/または異種タンパク質を安定的に発現する、請求項17に記載の組成物。
【請求項20】
哺乳動物宿主細胞がHBx、異種タンパク質またはその両方を一過的に発現する、請求項15または16に記載の組成物。
【請求項21】
哺乳動物宿主細胞がHBx、XBP1sおよび/または異種タンパク質を一過的に発現する、請求項17に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2012−507259(P2012−507259A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−511790(P2011−511790)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【国際出願番号】PCT/US2009/045352
【国際公開番号】WO2009/155008
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(503106111)バイエル・ヘルスケア・エルエルシー (154)
【Fターム(参考)】