説明

HCVおよびHIV感染の治療への使用におけるシクロスポリン誘導体

【課題】
本明細書に提供するものとしては、疾患、特にC型肝炎ウィルス(HCV)感染を治療または予防することにおいて、SCY−635を使用した具体的な投薬量および投薬処方である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の説明
本願は2009年1月7日に出願された米国出願第61/143,062号、2009年2月27日に出願された米国出願第61/156,026号に基づく優先権を主張するものであり、その内容のすべてを本明細書に参照して援用することで本願に取り込む。
【0002】
本発明は疾患、特にC型肝炎ウィルス(HCV)感染を治療または予防するためのSCY−635の具体的な投薬量および剤形を提供する。
【背景技術】
【0003】
特定のウィルス感染の治療、予防または制御するための、3−置換エーテルシクロスポリンおよびチオエーテルシクロスポリン、ならびにこれらの使用については、文献によって公知である。これらの化合物の一つが、SCY−635(3−[(R)−2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルチオ−Sar]−4−(ガンマヒドロキシメチルロイシン)シクロスポリン)がある。HIVまたはAIDSを治療するためのSCY−635の使用は、米国特許第5,994,299号に、HCVを治療するための使用は、米国特許第7,196,161号に記載されている。SCY−635は、免疫抑制活性のない条件下で、HCV特異的なRNA複製を、サブゲノムおよび全長の複製系の双方において、有効に、且つ選択的に阻害する(Li, K., et al. (2006) "Preclinical evaluation of SCY-635, a cyclophilin inhibitor with potent anti-HCV activity," Abstract number 934, American Association for the Study of Liver Disease)。全ての薬物と同様に、HIVおよびHCVのような疾患有するヒトを対象とした治療において、適切な投薬量および投薬処方は、有害事象または望まれざる副作用を生じることなく、所望の、または最適な治療効果を達成するためには、必須である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,994,299号
【特許文献2】米国特許第7,196,161号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Li, K., et al. (2006) "Preclinical evaluation of SCY-635, a cyclophilin inhibitor with potent anti-HCV activity," Abstract number 934, American Association for the Study of Liver Disease
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、あらゆる有害事象もしくは望まれざる作用を防止もしくは低減するか、最適な治療効果を提供するか、またはその両方、即ち、望ましい治療プロフィールを提供する、安全、効率的且つ無害な投薬量および投薬処方が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここでは、投薬処方SCY−635、またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくは水和物を一定の時間間隔で投与し、疾患、特にHIV等のウィルス性疾患、特にHCVのような疾患を治療する投与計画を提供する。また本明細書は、SCY−635またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくは水和物の一定の投薬量および剤形単位を提供する。
【0008】
一つの実施形態にとして、ここでは、C型肝炎ウィルスに感染したか、その感染の危険性のあるヒトを対象にした、C型肝炎ウィルス感染症の治療、予防または制御の方法であり、対象のヒトにSCY−635またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくは水和物の有効量を含有する医薬品組成物を、24時間の一定期間のうちに少なくとも2回投与することを含む方法を提供する。また、本明細書は、薬剤投与の必要性を有する感染した対象のヒトに、SCY−635またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくは水和物の有効量を含有する医薬品組成物を、24時間の一定期間のうちに少なくとも2回投与する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】HCV感染した対象のヒトに、SCY−635(化合物1)を、以下の実施例4および5に示す異なる投薬濃度で、投与1日目に単回投与した後の、血漿濃度メジアンと時間の関係を示すグラフである。
【図2】HCV感染した対象のヒトに、SCY−635(化合物1)を、以下の実施例4および5に示す異なる投薬濃度で、1日当たり3回(t.i.d)投与した後の、血漿濃度メジアンと時間の関係を示すグラフである。
【図3】以下の実施例4および6における、SCY−635を300mgt.i.dで投与した対象のヒト(n=6)、及びプラシーボを投与した対象のヒト(n=3)の、血漿HCV RNA量の平均値及びメジアンを、基準線をLog10として示すグラフである。
【図4】非感染の対象のヒトにSCY−635(化合物1)を、以下の実施例7に示す400,500および600mgの濃度で、投与1日目に単回投与した場合の血漿濃度メジアンと時間の関係を示すグラフである。
【図5】以下の実施例8における、非感染の対象のヒトに、SCY−635(化合物1)を14日間連続で500mgb.i.d.で投与した後の、平均血漿濃度と時間の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここでは、SCY−635を供給するための、投与量および投薬処方を提供する。シクロスポリンは、サイクロフィリン阻害剤であり、ウィルス性NS5Bポリメラーゼ酵素の間接的な阻害剤とされている。シクロスポリンがNS5Bポリメラーゼと、サイクロフィリンA及びサイクロフィリンBのような、宿主のサイクロフィリンとの会合を防止することができると考えられている(例えばWatashi et al., Reviews in Medical Virology, (DOI: 10.1002/rmv) February 2007を参照のこと)。本明細書において、シクロスポリン誘導体は、必ずしも直接的なNS5Bポリメラーゼ阻害剤である必要はないと解釈される。サイクロフィリンAは、HIV−1のカプシドタンパク質内(p24)のグリシン89−プロリン90間のペプチド結合を中心とした、HIV−1のカプシドタンパク質領域に結合することができることと考えられている。ウィルスの侵入後の工程として、カプシドコアの脱穀が誘導され、ウィルスゲノムが感受性細胞のサイトソル内に導入されると考えられている。脱殻には、宿主のサイクロフィリンAの使用が必要と考えられている。生体外(in vitro)での研究結果では、SCY−635がサイクロフィリンAに結合することができ、その内因性のペプチジルプロリルイソメラーゼ活性を阻害することが示されている(Li et al., (2006), "SCY-635 and Related Cyclophilin inhibitors as Antiretroviral Agents," Abstract number H- 0255, Interscience Conference on Antimicrobial Agents and Chemotherapy)。これらの結果より、宿主のサイクロフィリンAに結合することによって、SCY−635がHIV−1の感染力を抑制することができ、このことによりウィルスコアの脱殻を防止することが示唆される。
【0011】
シクロスポリンAおよび一定の誘導体の薬物動態学については、文献内で検討されている(例えばFoxwell et al, Biophysica acta, Volume 938(3), pages 447-455 (1988)およびAwni W. and Sauchuk R, Drug Metabolism & Disposition, Volume 13(2), pages 133 - 135 (1985)を参照のこと)。シクロスポリン誘導体の投薬における具体的な課題は、全血細胞および血漿に化合物の分散が生じても、対象のヒトにおけるシクロスポリン誘導体の血漿濃度を維持することができるかである。実質的に飽和した全血細胞部分をシクロスポリン誘導体の供給する間、ずっと全血細胞部分を実質的に飽和した状態に維持することで、治療に関連する血漿中のシクロスポリン誘導体の濃度を維持することも可能であることが見出された。ここで提供する方法によると、具体的な分割投薬処方は、抗ウィルス活性を与えるのに十分なSCY−635血漿濃度の維持を可能とする一方、安全性を十分に確保することができる。
【0012】
一つの実施形態として、ここでは、HCVと感染したか、その感染の危険性のある対象のヒトにおけるHCV感染の治療、予防または制御の方法であり、対象のヒトにSCY−635またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくは水和物の有効量を含有する医薬品組成物を24時間の一定期間のうちに分割投与量として投与することを含む方法を提供する。さらなる実施形態として、ここでは、HIVと感染したか、その感染の危険性のある対象のヒトにおけるHIV感染の治療、予防または制御の方法であり、ヒトの対象にSCY−635またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくは水和物の有効量を含有する医薬品組成物を24時間の一定期間のうちに2または3回投与することを含有する方法を提供する。またさらなる実施形態においては、対象のヒトが、HCVおよびHIVとに重複感染している。投与は、一日あたり2または3回、連続して数日間、数週間または数月間の間実施することが好ましい。感染または感染の危険性は、当業者に適当であると考えられるあらゆる技術によって判定することができる。
【0013】
ここで使用されるSCY−635の量は、遊離塩基(即ち、3−[(R)−2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルチオ−Sar]−4−(ガンマヒドロキシメチルロイシン)シクロスポリン)の量として表わされるものとする。
【0014】
さらなる実施形態として、ここでは、HCVと感染したか、その感染の危険性のある対象のヒトにおけるHCV感染の治療、予防または制御のための方法であり、ヒトの対象にSCY−635またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくは水和物の有効量を含有する医薬品組成物を24時間の期間のうちに少なくとも2回投与することを含有する方法を提供する。またさらなる実施形態において、投与は、一日あたり2回または3回、継続して数日間、数週間または数月間の間実施する。
【0015】
さらなる実施形態として、ここでは、SCY−635またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくは水和物を提供する方法であり、それを必要とする感染した対象のヒトに、24時間の期間に少なくとも2回活性剤を投与し、好ましくは約4から約14時間の投与間隔を設ける方法を提供する。
【0016】
他の実施形態として、ここでは、継続的な治療方法であり、SCY−635またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくは水和物を一定期間(例えば5、7、10、14、20、24、28、60、120、360日以上)、それを必要とする感染した対象のヒトに投与する方法を提供する。
【0017】
他の実施形態として、ここでは、HCVと感染したか、その感染の危険性のある対象のヒトに約4mg/kgから約50mg/kg;約10mg/kgから約50mg/kg;約10mg/kgから約34mg/kg;約13mg/kgから約27mg/kg;約14mg/kgから約20mg/kg;約15mg/kgから約19mg/kg;または約15mg/kgから約18mg/kgの分割投与量(例えば1日2回または3回)で、SCY−635またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくは水和物を投与する方法を提供する。具体的な実施形態において、SCY−635またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくは水和物を、約10mg/kg、約13mg/kg、約14mg/kg、約15mg/kg、約17mg/kgまたは約18mg/kgの投薬量で投与する。他の実施形態において、以下の実施形態に記載されたSCY−635またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくは水和物のあらゆる投薬量を24時間の一定期間に2または3回投与する。
【0018】
他の実施形態として、ここでは、HCVに感染した対象のヒトへの治療方法であり、対象のヒトにSCY−635を(a)1回に約200mgの量で1日3回;(b)1回に約250mgの量で1日3回;(c)1回に約280mgの量で1日3回;(d)1回に約300mgの量で1日3回;(e)1回に約330mgの量で1日3回;(f)1回に約350mgの量で1日3回;(g)1回に約400mgの量で1日3回;(h)1回に約500mgの量で1日3回;(i)1回に約600mgの量で1日3回投与する工程を備えた方法を提供する。上記実施形態の1つの態様において、SCY−635をヒトの対象に8時間おきに1回投与する。上記実施形態の1つの態様において、SCY−635を1日に7,7および10時間の間隔(例えば、午前7:00頃、午後2:00頃および午後9:00頃)で投与した。
【0019】
他の実施形態において、ここでは、HCVと感染した対象のヒトへの治療方法であり、対象のヒトにSCY−635を(a)1回に約300mgの量で1日2回、12時間おき;(b)1回に約400mgの量で1日2回、12時間おき;(c)1回に約425mgの量で1日2回、112時間おき;(d)1回に約450mgの量で1日2回、12時間おき;(e)1回に約500mgの量で1日2回、12時間おき;(f)1回に約550mgの量で1日2回、12時間おき;(g)1回に約600mgの量で1日2回、12時間おき;(h)1回に約625mgの量で1日2回、12時間おき;(i)1回に約650mgの量で1日2回、12時間おき;(j)1回に約700mgの量で1日2回、12時間おき;または(k)1回に800mgの量で1日2回、12時間おきに投与する方法を提供する。
【0020】
24時間の一定期間において、分割投与されるSCY量が約600mgを超える場合、効果として、血漿中のSCY−635のトラフ濃度が高くなる。ここで使用する「トラフ濃度」の用語は、体内に存在する最も低い薬物濃度を指すものとする。特にウィルス性疾患において、薬物濃度を一定の濃度を超えるように維持し、ウィルス複製の適度な阻害を維持するためにも重要である。特に、1回に約200mgを超えるSCY−635で、1日3回、8時間おきという投薬処方は、1日当たりの投薬量が低い場合にと比して、SCY−635の顕著に高いトラフ濃度を見出した。
【0021】
他の実施形態として、ここでは、HCVに感染した対象のヒトを治療する方法であり、24時間の一定期間において、SCY−635を(a)1日当たり800から999mgの量;(b)1日当たり810から997mgの量;(c)1日当たり820から995mgの量;(d)1日当たり850から950mgの量;(e)1日当たり870から930mgの量;(f)1日当たり880から920mgの量;(g)1日当たり890から910mgの量で対象のヒトに分割投与する方法を提供する。。これら実施形態の1つの態様において、SCY−635を24時間の一定期間において、2回の投薬量で与える。これら実施形態の他の態様において、SCY−635を24時間の期間において3回の投薬量で与える。
【0022】
他の実施形態として、ここでは、HCVに感染した対象のヒトの治療方法であり、24時間の一定期間において、SCY−635を(a)1日当たり約600から約1050mgの量、(b)1日当たり約600から約1000mgの量、(c)1日当たり約750から約1000mgの量、(d)1日当たり約800から約1000mgの量、(e)1日当たり約900から約1000mgの量で対象のヒトに分割投与する方法を提供する。これらの実施形態の1つの態様において、SCY−635を24時間の一定期間において2回分の投薬量で与える。これら実施形態の1つの態様において、SCY−635を24時間の期間において3回分の投薬量で与える。
【0023】
他の実施形態として、ここでは、HCVに感染した対象のヒトを治療する方法であり、対象のヒトにSCY−635を分割投与として24時間の期間において(a)1日当たり少なくとも1001mgの量;(b)1日当たり少なくとも1003mgの量;(c)1日当たり少なくとも1005mgの量;(d)1日当たり1010から1200mgの量;(e)1日当たり1020から1200mgの量;(e)1日当たり1040から1150mgの量;(f)1日当たり1050から1120mgの量;または(g)1日当たり1060から1100mgの量で投与する方法を提供する。これら実施形態の1つの態様において、SCY−635を24時間の一定期間において2回分の投薬量で与える。これら実施形態の他の態様において、SCY−635を24時間の期間において3回の投薬量で与える。
【0024】
1つの実施形態において、SCY−635を24時間において2回の投薬量として与え、投薬間隔を約8時間から約16時間あける。他の実施形態において、SCY−635を24時間において2回の投薬量として与え、投薬の間隔を約10時間から約14時間の範囲であける。
【0025】
1つの実施形態において、SCY−635を24時間に渡って3回の投薬量として与え、投薬間隔を約4時間から約12時間あける。他の実施形態において、SCY−635を24時間に渡って3回分の投薬量として与え、投薬間隔を約6時間から約10時間の範囲であける。
【0026】
他の実施形態において、SCY−635を治療に有効な血漿濃度とし、SCY−635の一定のトラフ濃度で定常状態に維持した。これらの方法は、SCY−635製剤を投与することによってHCVに感染したヒトを治療するために特に実用的であり、SCY−635の血漿トラフ濃度を定常状態で24時間に渡って、最低約110ng/mL、約115ng/mL、約135ng/mL、約216ng/mLまたは約400ng/mLに維持する。ある実施形態において、SCY−635のトラフ血漿濃度を、定常状態で、24時間の期間に渡って、少なくとも約115ng/mL以上で維持する投与方法は、HCV感染に罹患しているヒトの治療のためのSCY−635製剤投与において特に有用である。ある実施形態において、定常状態で、約115ng/mLを超える化合物の血漿トラフ濃度を維持するのに十分な化合物を投与する方法は、HCVに感染したか、その感染の危険性のある対象のヒトにおけるHCV感染症の治療、予防または処理において特に有用である。
【0027】
対象のヒトに追加投与をすることで、血漿濃度を比較的速く増加させることができる。1つの実施形態において、追加投与はSCY−635約400mgである。他の実施形態において、追加投与量はSCY−635約600mgである。さらなる実施形態において、追加投与量はSCY−635約800mgである。他の実施形態において、追加投与量はSCY−635約900mgである。他の実施形態において、追加投与量はSCY−635約1000mgである。
【0028】
1つの実施形態として、ここでは、SCY−635約300mgを含有する剤形(追加投与に使用する剤形以外の)であり、1日当たり3回投与(例えばt.i.d.)することができる剤形を提供する。他の実施形態において、剤形はSCY−635を約300mg含み、8時間に1回(即ちq8h)投与される。
【0029】
ある実施形態において、SCY−635の剤形を8時間おきに1回、投与することができる。他の実施形態において、SCY−635の剤形を7時間,7時間,10時間の間隔で(例えば午前7:00頃、午後2:00頃および午後9:00頃)投与することができる。
【0030】
ある実施形態において、SCY−635による治療期間は、従来の標準的な治療期間より短い。
【0031】
ある実施形態において、SCY−635を約182日間未満の期間投与する。
【0032】
ある実施形態において、SCY−635を約91日間未満の期間投与する。
【0033】
ある実施形態において、SCY−635を約28日間未満の期間投与する。
【0034】
他の実施形態として、ここでは、SCY−635またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくは水和物を、約600mgから約2000mg、約800mgから約1600mg、約850mgから約1200mg、約850mgから約1100mg、約900mgから約1100mg、または約900mgから約1050mg含有する単位投薬製剤を提供する。ある実施形態として、ここでは、SCY−635またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくは水和物を約800mgから約1600mg含有する単一投薬製剤を提供する。
【0035】
他の実施形態として、ここでは、SCY−635または薬学的に許容可能な塩、その溶媒和物または水和物を約100mg、約120mg、約150mg、約175mg、約200mg、約250mg、約280mg、約300mg、約330mg、約350mg、約400mg、約500mg、約550mg、約600mg、約625mg、約650mg、約700mg、約750mg、約900mg、約1000mg、約1050mg、約1200mg、約1250mg、約1600mgまたは約2000mg含有する単位投薬製剤を提供する。より好適な実施形態として、ここでは、SCY−635またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくは水和物を約200mg、約300mg、約350mg、約400mgまたは約500mg含む単一投薬製剤を提供する。
【0036】
他の実施形態として、ここでは、対象のヒトにおいて、約250ng/mL、約275ng/mL、約300ng/mL、約350ng/mL、約475ng/mLまたは約900ng/mLを超えるSCY−635またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくは水和物の定常状態の平均血漿濃度を、約4,6,8,12または24時間以上を維持する方法であり、HCVに感染したか、その感染の危険性のある対象のヒトにSCY−635またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくは水和物の有効量の投与を含有する方法を提供する。ある実施形態として、ここでは、対象のヒトにおいて約250ng/mLを超えるSCY−635またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくは水和物の定常状態の平均血漿濃度を、約4,6,8,12または24時間以上を維持する方法であり、HCVに感染したか、その感染の危険性のある対象のヒトにSCY−635またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくは水和物の有効量の投与を含有する方法を提供する。
【0037】
いかなる規定に制限されることなく、本明細書の一部として、HCVまたはHIVの治療のための、SCY−635またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくは水和物の一定の投薬量および投薬計画を提供する。
【0038】
ある実施形態において、HCVはジェノタイプ1型であり、あらゆるサブタイプとであってよい。例えば、ある実施形態において、HCVはサブタイプ1a型、1b型または1c型である。ジェノタイプ1型のHCV感染は、最近のインターフェロン療法に対して感受性が弱いと考えられる。本発明に提供する方法はジェノタイプ1型のHCV感染の療法に有利となり得る。
【0039】
ある実施形態において、HCVはジェノタイプ1型以外のものである。ある実施形態において、HCVはジェノタイプ2型であり、あらゆるサブタイプであってよい。例えば、ある実施形態において、HCVはサブタイプ2a型、2b型または2c型である。ある実施形態において、HCVはジェノタイプ3型であり、あらゆるサブタイプであってよい。例えば、ある実施形態において、HCVはサブタイプ3a型、3b型または10a型である。ある実施形態において、HCVはジェノタイプ4型であり、あらゆるサブタイプであってよい。例えば、ある実施形態において、HCVはサブタイプ4a型である。ある実施形態において、HCVはジェノタイプ5型であり、あらゆるサブタイプであってよい。例えば、ある実施形態において、HCVはサブタイプ5a型である。ある実施形態において、HCVはジェノタイプ6型であり、あらゆるサブタイプであってよい。例えば、ある実施形態において、HCVはサブタイプ6a型、6b型、7b型、8b型、9a型または11a型である。例えばSimmonds, 2004, J Gen Virol. 85: 3173-88; Simmonds, 2001, J. Gen. Virol. 82: 693-712を参照し、その内容のすべてをここに取り込む。
【0040】
ここで提供する方法として、例えば毒性または副作用を低減または回避する一方で、疾患の治療、予防および制御を含む方法を提供する。SCY−635は、従来のあらゆる経路、特に経口、非経口、直腸または吸入(例えばエアロゾルの形態)によって投与することが可能である。ここでの投薬および投薬処方に好ましい投与経路は、経口経路である。
【0041】
1つの実施形態として、ここでは、SCY−635またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくは水和物を提供する方法であり、処置を要する感染した対象のヒトに24時間の一定期間に、活性薬剤を少なくとも2回投与し、投与間隔を好ましくは約4〜6から14時間あけ、;ある実施形態では、好ましくは約12時間あける、方法を提供する。これらの実施形態において、例えば朝食や夕食等の食事の際、活性薬剤を投与することができる。
【0042】
他の実施形態として、ここでは、SCY−635またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくは水和物を提供する方法であり、活性薬剤を、処置を有する感染した対象のヒトに、12または24時間の一定期間に3回投与し、投与間隔を好ましくは約4から14時間あける方法を提供する。ある実施形態において、活性薬剤を朝に1回、昼に1回、夜に1回投与する。投薬間隔は、4,5,6,7,8,9,10,11,12,13および14時間が好ましい。
【0043】
ある好ましい投薬処方において、対象のヒトに、活性薬剤を、食後30分以内に7時間、7時間、10時間の間隔(例えば朝食後ほぼ7:00AM、昼食後ほぼ2:00PMおよび夕食後ほぼ9:00PM)で投与する。
【0044】
また他の実施形態として、ここでは、HCVに感染した処置の必要な対象のヒトに、約10mg/kgから約50mg/kg、約10mg/kgから約34mg/kg、約13mg/kgから約27mg/kg、約14mg/kgから約20mg/kg、約14mg/kgから約19mg/kg、約15mg/kgから約19mg/kgまたは約15mg/kgから約17.5mg/kgの分割投与量(例えば24時間の一定期間において2回または3回)のSCY−635またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくは水和物を投与する方法を提供する。ある実施形態において、SCY−635またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくは水和物を約14〜20mg/kg、約14〜19mg/kg、約15〜19mg/kgまたは約15〜17mg/kgの投薬量で投与する。ある実施形態において、SCY−635またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくは水和物を約10mg/kg、約13mg/kg、約14mg/kg、約15mg/kg、約18mg/kg、約19mg/kg、約20mg/kg、約33mg/kg、約34mg/kgまたは約50mg/kgの投薬量で投与する。他の実施形態において、以下の実施形態に記載されたSCY−635またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくは水和物の投薬量にかかわらず、24時間の一定期間に3回投与する。
【0045】
他の実施形態として、ここでは、継続的な治療方法であり、SCY−635またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくは水和物を一定期間(例えば5、7、10、14、20、24、28、60、120、360日以上)、処置を要する感染した対象のヒトに投与すること方法を提供する。1つの実施形態において、活性薬剤を24時間につき3回、継続的に投与する。ある実施形態において、活性薬剤を約10mg/kg、約13mg/kg、約15mg/kgまたは約18mg/kgの投薬量で24時間の一定期間当たり3回、継続的に数日間、数週間、数ヶ月間または数年間、投与する。ある実施形態において、活性薬剤を約13mg/kg、約14mg/kg、約15mg/kg、約18mg/kgまたは約19mg/kgの投薬量で24時間の一定期間当たり3回、継続的に数日間、数週間、数ヶ月間または数年間、投与する。ある実施形態において、活性薬剤を約14mg/kg、約15mg/kgまたは約18mg/kgの投薬量で24時間の一定期間当たり3回、継続的に数日間、数週間または数ヶ月間投与する。
【0046】
1つの実施形態において、血漿中のHCV RNAを少なくとも0.7log10低減できる量の、SCY−635を投与する。他の実施形態において、血漿中のHCV RNAを少なくとも0.8log10低減できる量のSCY−635をする。さらなる実施形態において、血漿中のHCV RNAが少なくとも1.8log10低減できる量のSCY−635を投与する。
【0047】
ある実施形態において、ここに記載する投薬量および投薬処方に従って、1つ以上の併用活性薬剤(例えば同時または順次)と組み合わせて、SCY−635またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくは水和物を投与してもよい。ある実施形態において、本明細書に記載の投薬量および投薬処方に従って、1つ以上の併用活性薬剤と組み合わせて、SCY−635またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくは水和物を投与することが可能である。併用活性薬剤は、局所、腸内(例えば経口、十二指腸、直腸)、非経口(例えば静脈内、動脈内、筋肉内、皮下、皮内または腹腔内)または髄膜下の投与としてもよい。
【0048】
HCVを治療有効な併用活性薬剤としては、免疫抑制剤、HCV NS3−NS4Bプロテアーゼ、HCVポリメラーゼ、HCVタンパク質、HCVの侵入、HCVの構築、HCV NS5Aタンパク質、及びHCV NS5Bタンパク質の阻害剤、HCVライフサイクルにおける他の標的の阻害剤、ならびにその他の抗HCV薬が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。他の抗HCV薬としては、レベトール、コペガスおよびビラミジン(タリバビリン)等のリバビリン誘導体、アマンタジン、およびテルビブジンといったHCV感染症の治療のためのヌクレオシド誘導体、またはニタゾキサニドが挙げられるが、特にこれらに制限されるものではない。
【0049】
NS3−NS4Aプロテアーゼ阻害剤の例は、国際公開第99/07733号、第99/07734号、第00/09558号、第00/09543号、第00/59929号、第03/064416号、第03/064455号、第03/064456号、第2004/030670号、第2004/037855号、第2004/039833号、第2004/101602号、第2004/101605号、第2004/103996号、第2005/028501号、第2005/070955号、第2006/000085号、第2006/007700号、第2006/007708号、第2007/009227号、第02/060926号、第03/053349号、第03/099274号、第03/099316号、第2004/032827号、第2004/043339号、第2004/094452号、第2005/046712号、第2005/051410号、第2005/054430号(全てBMSによる)、国際公開第2004/072243号、第2004/093798号、第2004/113365号、第2005/010029号、第2005/037214号、第01/77113号、第01/81325号、第02/08187号、第02/08198号、第02/08244号、第02/08256号、第02/48172号、第03/062228号、第03/062265号、第2005/021584号、第2005/030796号、第2005/058821号、第2005/051980号、第2005/085197号、第2005/085242号、第2005/085275号、第2005/087721号、第2005/087725号、第2005/087730号、第2005/087731号、第2005/107745号、第2005/113581号、第2006/119061号、第2007/016441号、第2007/015855号、第2007/015787および第2006/043145号に記載されている。これら全てを引用文献として取り込み、候補薬剤としてテラプレビル(VX−950)、ボセプレビル、ITMN−191、MK−7009、PF−00868554、TMC435350、SCH900518、MK70009、BILN−2061、BILN−2065またはBMS−605339を挙げるが、特にこれらに制限されるものではない。
【0050】
HCVポリメラーゼの阻害剤としては、HCVポリメラーゼの機能を阻害するのに有効な薬剤(化合物および生物製剤)が挙げられる。該阻害剤としては、NS4A、NS5AおよびNS5Bポリメラーゼの非ヌクレオシドおよびヌクレオシド阻害剤が挙げられるが、特にこれらに制限されるものではない。HCVポリメラーゼの阻害剤の例は、国際公開第02/04425号、第03/007945号、第03/010140号、第03/010141号、第2004/064925号、第2004/065367号、第2005/080388号、第2006/007693号、第2007/019674号、第2007/087717号、第01/47883号、第03/000254号、第2007/033032号、第2007/033175号、第2006/020082、米国特許第2005/0119318号、国際公開第2005/034850号、第03/026587号、第2007/092000号、第2007/143521号、第2007/136982号、第2007/140254号、第2007/140200号、第2007/092888号、第2007/095269号、第2007/054741号、第03/062211号、第99/64442号、第00/06529号、第2004/110442号、第2005/034941号、第2006/119975号、第2006/046030号、第2006/046039号、第2005/023819号、第02/06246号、第2007/065883号、第2007/129119号、第2007/029029号、第2006/029912号、第2006/027628号、第2007/028789号、第2006/008556号、第2004/087714号、第2005/012288号、第2005/014543号、第2005/049622号(日本たばこ産業)、国際公開第2005/121132号、第2005/080399号、第2006/052013号、第2006/119646号、第2007/039146号、第2005/021568号、第2006/094347号(Biota)、国際公開第2006/093801号、第2005/019191号、第2004/041818号、米国特許第2004/0167123号、第2005/0107364号、国際公開第2007/034127号(これら全てを引用文献として本明細書に取り込む)に記載されている;また、候補薬剤としては、MK−0608,VCH−759,VCH−916,VCH−222,PF−868554,GS9190,NM283(バロピシタビン),PSI−6130,NM−107,R7128,GSK625433,R803,R−1626,BILB−1941,JTK−109およびJTK−003が挙げられるが、特にこれらに制限されるものではない。
【0051】
さらに他の薬剤としては、ペグイントロン(登録商標)(シェリング社(ニュージャージー州ケニルワース)から入手可能なペグインターフェロンα−2b);イントロン−A(登録商標)(VIRAFERON(登録商標)、シェリング社(ニュージャージー州ケニルワース)から入手可能なインターフェロンα−2b);リバビリン(Valeant Pharmaceuticals社から入手可能な1−βD−リボフラノシル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−カルボキサミド);Human Genome Sciences社から入手可能なAlbuferon(登録商標)(アルブミン−インターフェロンα);レベトール(登録商標)(シェリング社(ニュージャージー州ケニルワース));コペガス(登録商標)(ホフマン−ラ−ロシュ社);ペガシス(登録商標)(ホフマン−ラ−ロシュ社から入手可能なペグインターフェロンα−2a);ロフェロン(登録商標)(ホフマン−ラ−ロシュ社から入手可能な組み換え個体インターフェロンα−2a);BEREFOR(登録商標)(ベーリンガーインゲルハイムファーマシューティカル社から入手可能なインターフェロンα2);スミフェロン(登録商標)(精製された天然αインターフェロンの混合物、例えば住友製薬から入手可能なスミフェロン);ALFERON(登録商標)(Interferon Sciencesで製造され、Purdue Frederick から入手可能な天然αインターフェロン混合物);WELLFERON(登録商標)(グラクソ ウェルカムから入手可能なインターフェロンα);[α]−インターフェロン;天然αインターフェロン2a;天然αインターフェロン2b;ペグαインターフェロン2aまたは2b;コンセンサスαインターフェロン(アムジェン社);レベトロン(登録商標)(シェリングプラウ社、インターフェロン−α2B+リバビリン);ペグインターフェロンα;リンパ芽球状または「天然」インターフェロン;インターフェロンτ;インターロイキン2;インターロイキン6;またはインターロイキン12が挙げられるが、特にこれらに制限されるものではない。また、細胞中におけるインターフェロンの合成を刺激する化合物として、二本鎖RNAが単独で、またはトブラマイシンおよびイミキモドと組み合わされて含まれるが、特にこれに制限されるものではない。
【0052】
具体的な実施形態として、以下の(a)SCY−635またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくは水和物、(b)αインターフェロン、および(c)リバビリンまたはそのプロドラッグの投与を含有する対象のヒトにおけるHCVの治療方法を提供する。
【0053】
さらなる実施形態として、ここでは、(a)SCY−635またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくは水和物、(b)αインターフェロンの投与を含有する対象のヒトにおけるHCVの治療方法を提供する。
【0054】
さらなる実施形態として、ここでは、(a)SCY−635またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくは水和物、(b)αインターフェロン(c)リバビリンまたはそのプロドラッグ(d)C型肝炎プロテアーゼ阻害剤の投与を含有する対象のヒトにおけるHCVの治療方法を提供する。この実施形態の一態様において、C型肝炎のプロテアーゼ阻害剤は、NS3−NS4A阻害剤、例えばテラプレビル、ボセプレビル、ITMN−191、MK−7009、PF−00868554またはTMC435350である。
【0055】
さらなる実施形態として、ここでは、(a)SCY−635またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくは水和物、(b)αインターフェロン(c)C型肝炎プロテアーゼ阻害剤の投与を含有する対象のヒトにおけるHCVの治療方法を提供する。この実施形態の一態様において、C型肝炎のプロテアーゼ阻害剤は、NS3−NS4A阻害剤(例えばテラプレビル、ボセプレビル、ITMN−191、MK−7009、PF−00868554またはTMC435350)である。
【0056】
さらなる実施形態として、ここでは、(a)SCY−635またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくは水和物および(b)NS3−NS4AC型肝炎プロテアーゼ阻害剤(例えばテラプレビル、ボセプレビル、ITMN−191、MK−7009、PF−00868554またはTMC435350)の投与を含有する対象のヒトにおけるHCVの治療方法を提供する。
【0057】
さらなる実施形態として、ここでは、(a)SCY−635またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくは水和物、(b)αインターフェロン(c)リバビリンおよび(d)ポリメラーゼ阻害剤(例えばR−7128等のヌクレオシドポリメラーゼ阻害剤)の投与を含有する対象のヒトにおけるHCVの治療方法を提供する。
【0058】
さらなる実施形態として、ここでは、(a)SCY−635またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくは水和物、(b)αインターフェロンおよび(c)ポリメラーゼ阻害剤(例えばR−7128等のヌクレオシドポリメラーゼ阻害剤)の投与を含有する対象のヒトにおけるHCVの治療方法を提供する。
【0059】
さらなる実施形態として、ここでは、(a)SCY−635または薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくは水和物、(b)ポリメラーゼ阻害剤(例えばR−7128等のヌクレオシドポリメラーゼ阻害剤)を含有する対象のヒトにおいてHCV治療方法を提供する。
【0060】
さらなる実施形態として、ここでは、(a)SCY−635またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくは水和物および(b)αインターフェロン、(c)NS3−NS4AのC型肝炎プロテアーゼ阻害剤(例えばテラプレビル、ボセプレビル、ITMN−191、MK−7009、PF−00868554またはTMC435350)、および(d)ポリメラーゼ阻害剤(例えばR−7128等のヌクレオシドポリメラーゼ阻害剤)の投与を含有する対象のヒトにおけるHCVの治療方法を提供する。
【0061】
さらなる実施形態として、ここでは、(a)SCY−635またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくは水和物(b)NS3−NS4AのC型肝炎プロテアーゼ阻害剤(例えばテラプレビル、ボセプレビル、ITMN−191、MK−7009、PF−00868554またはTMC435350)、および(c)ポリメラーゼ阻害剤(例えばR−7128等のヌクレオシドポリメラーゼ阻害剤)の投与を含有する対象のヒトにおけるHCVの治療方法を提供する。
【0062】
さらなる実施形態として、ここでは、(a)SCY−635またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくは水和物および(b)リバビリンまたはそのプロドラッグの投与を含有する対象のヒトにおけるHCVの治療方法を提供する。
【0063】
さらなる実施形態として、ここでは、(a)SCY−635またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくは水和物、(b)リバビリンまたはそのプロドラッグおよび(c)C型肝炎プロテアーゼ阻害剤の投与を含有する対象のヒトにおけるHCVの治療方法を提供する。この実施形態の一態様において、C型肝炎のプロテアーゼ阻害剤は、NS3−NS4A阻害剤、例えばテラプレビル、ボセプレビル、ITMN−191、MK−7009、PF−00868554またはTMC435350である。
【0064】
さらなる実施形態として、ここでは、(a)SCY−635またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくは水和物、(b)リバビリンまたはそのプロドラッグおよび(c)ポリメラーゼ阻害剤(例えばR−7128等のヌクレオシドポリメラーゼ阻害剤)の投与を含有する対象のヒトにおけるHCVの治療方法を提供する。
【0065】
さらなる実施形態として、ここでは、(a)SCY−635またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくは水和物、(b)リバビリンまたはそのプロドラッグ、(c)C型肝炎プロテアーゼ阻害剤および(d)ポリメラーゼ阻害剤(例えばR−7128等のヌクレオシドポリメラーゼ阻害剤)の投与を含有する対象のヒトにおけるHCVの治療方法を提供する。この実施形態の一態様において、C型肝炎のプロテアーゼ阻害剤は、NS3−NS4A阻害剤、例えばテラプレビル、ボセプレビル、ITMN−191、MK−7009、PF−00868554またはTMC435350である。
【0066】
いくつかの態様において、方法は、初期相および第2相の2相に渡った薬剤投与を含む。例えば、初期相は約12または24週間未満の一定期間とすることができ、第2相は約12週間以上とすることができ、例えば、第2相は約12〜36週間とすることができる。ある実施形態において、第2相を12週間とする。また他の実施形態において、第2相を36週間とする。ある実施形態において、初期相および第2相の合計を約24から48週間(例えば24,36または48週間)とする。いくつかの実施形態において、初期相および第2相を同じ長さとする。
【0067】
SCY−635は、初期相、第2相またはそれら双方の相のいずれかで投与することができる。いくつかの実施形態において、SCY−635を初期相でのみ投与した。SCY−635を初期相でのみ投与する場合、SCY−635を単独で、または他の薬剤と組み合わせて投与してもよく、1つ以上の薬剤を第2相において投与してもよい。他の薬剤としては、1つ以上の抗ウィルス剤、本明細書に記載の1つ以上のほかの薬剤、またはそれらの組み合わせを使用ができる。いくつかの実施形態において、初期相および第2相に投与した具体的な薬剤は同一である。
【0068】
また他の実施形態において、ペグインターフェロンα−2b(Peg−IFN)を併用させた、4から26週間のSCY−635投与(初期相)後、22週間PEG−IFNおよびリバビリンの併用投与(第2相)を行う。他の実施形態において、SCY−635とPEG−IFNの26週間の併用投与(初期相)後、22週間PEG−IFNおよびリバビリンの併用投与(第2相)を行う。また他の実施形態において、SCY−635を、PEG−IFNおよびリバビリンと併用して12週間投与(初期相)した後、36週間PEG−IFNおよびリバビリンの併用投与(第2相)を行う。他の実施形態において、SCY−635を、PEG−IFNおよびリバビリンと併用して12週間投与(初期相)した後、14週間PEG−IFNおよびリバビリンの併用投与(第2相)を行う。
【0069】
さらなる実施形態において、4から26週間PEG−IFN、リバビリンおよびプロテアーゼ阻害剤を併用してSCY−635を投与(初期相)した後、22週間PEG−IFNおよびリバビリンの併用投与(第2相)を行う。他の実施形態において、12週間PEG−IFNを併用してSCY−635およびプロテアーゼ阻害剤を投与(初期相)した後、22週間PEG−IFNおよびリバビリンの併用の投与(第2相)を行う。また他の実施形態において、12週間PEG−IFNおよびリバビリンを併用してSCY−635およびプロテアーゼ阻害剤を投与(初期相)した後、36週間PEG−IFNおよびリバビリンの併用投与(第2相)を行う。またさらなる実施形態において、12週間PEG−IFNおよびリバビリンを併用してSCY−635およびプロテアーゼ阻害剤を投与(初期相)した後、14週間PEG−IFNおよびリバビリンの併用投与(第2相)を行う。またさらなる実施形態において、12週間PEG−IFNおよびリバビリンを併用して、SCY−635およびプロテアーゼ阻害剤を投与(初期相)した後、14週間SCY−635、PEG−IFNおよびリバビリンの併用投与(第2相)を行う。またさらなる実施形態において、12週間PEG−IFNを併用して、SCY−635およびプロテアーゼ阻害剤を投与(初期相)した後、14週間SCY−635およびPEG−IFNの併用投与(第2相)を行う。
【0070】
医薬品組成物および単位投薬製剤
ここでは、SCY−635またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくは水和物を含む医薬品組成物、および単位投薬製剤を提供する。個々の剤形は経口、粘膜(舌下、口腔、直腸、鼻または膣を挙げる)または非経口(皮下、筋肉内、静脈内ボーラス、動脈内または静脈内)の投与に適切である。医薬品組成物および単位剤形は、好ましくは、経口投与に適した形態とする。
【0071】
1つの実施形態において、医薬品組成物は固形状経口剤形である。1つの実施形態において、医薬品組成物を液状経口剤形とする。ある実施形態において、ここでは、服用量、単位投薬製剤および医薬品組成物であり、SCY−635またはその薬学的に許容可能な塩、その溶媒和物もしくは水和物は、経口的な生物的利用可能性を有する。経口投与の利点としては、投与の容易さ、対象のヒトへの投薬処方に関する高いコンプライアンス、臨床効果、少ない合併症、短い入院、および総体的なコスト削減が挙げられる。
【0072】
他の実施形態として、ここでは、SCY−635またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくは水和物を、約30mgから約1400mg、約100mgから約1000mg、約200mgから約1000mgまたは約250mgから約1000mg含有する単位投薬製剤を提供する。1つの実施形態において、単位投薬製剤は、SCY−635またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくは水和物、およびボトル中の薬学的に許容可能な溶媒(例えば水、牛乳、炭酸飲料、ジュース、アップルソース、離乳食または粉ミルク)への懸濁に適した1つ以上の担体もしくは賦形剤を含有する。
【0073】
他の実施形態として、ここでは、SCY−635またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくは水和物を、約35mg、約50mg、約70mg、約100mg、約125mg、約140mg、約175mg、約200mg、約250mg、約280mg、約350mg、約500mg、約560mg、約700mg、約750mg、約1000mgまたは約1400mg含有する単位投薬製剤を提供する。単位投薬製剤は、SCY−635またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくは水和物を、約125mg、約250、約300mg、約500mgまたは約1000mg含有することが好ましい。1つの実施形態において、単位投薬製剤は、SCY−635またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくは水和物およびボトル中の薬学的に許容可能な溶媒(例えば水、牛乳、炭酸飲料、ジュース、アップルソース、離乳食または粉ミルク)への懸濁に適した1つ以上の担体もしくは賦形剤を含有する。好ましい単位投薬製剤としては、カプセル、粉末および小袋が挙げられる。特に好ましい単位投薬はカプセルである。
【0074】
経口投与に適切な単独の単位剤形としては、小袋;カシェ剤;錠剤;カプレット;カプセル、例えば軟ゼラチンカプセル剤;トローチ剤;菱形剤;分散剤;粉末;溶液;懸濁液を含む液体剤形(例えば水溶性または非水溶性の懸濁液);エマルジョン(例えば水中油滴エマルジョンまたは油中水滴液状エマルジョン);およびエリキシルが挙げられるが、特にこれらに制限されるものではない。1つの実施形態にとして、ここでは、コロイド溶液、飽和濃度を超える併用活性薬剤を含む溶液を提供する。本発明に包含される特徴的な剤形が多様な形態を示す、これらの方法及び他の方法は、当業者にとって、明確に理解できるであろう。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 20th ed., Mack Publishing, Easton PA (1990)、またはRemington: The Science and Practice of Pharmacy, 21st ed., Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, PA (2005)を参照のこと。
【0075】
他の実施形態として、ここでは、SCY−635またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくは水和物を含有する無水医薬品組成物および剤形を提供する。本発明の無水性医薬品組成物および剤形は、無水の、または含水量の低い材料を用いて、低水分または低湿度条件下で製造することができる。
【0076】
従来の薬学的合成技術に従って、活性薬剤を、少なくとも1つの担体または賦形剤と十分に混合して、本発明の特徴的な経口剤形を製造する。賦形剤は、投与に好ましい製造形態であれば、多種多様な形態とすることができる。例えば、経口液体またはエアロゾルの剤形としての使用に適切な賦形剤としては、水、グリコール、油、アルコール、香料(バニラ抽出物)、防腐剤および着色剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。固体経口剤形(例えば粉末、錠剤、小袋、カプセルおよびカプレット)における使用に適切な賦形剤の例として、澱粉、糖類、微結晶性セルロース、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤および崩壊剤が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0077】
1つの実施形態において、単位投薬製剤は、薬学的に許容可能な溶媒(例えば水、ミルク、炭酸飲料、ジュース、アップルソース、ベビーフードまたは粉ミルク)中の再組成、およびその後の経口投与に適切な活性薬剤の有効量を含有する粉末製剤とする。ある実施形態において、粉末は任意に1つ以上の担体または賦形剤と活性薬剤との組み合わせを含有する。他の実施形態において、投与または再組成の前に、粉末を密封容器に保存することができる。さらに他の実施形態において、粉末をカプセル化(例えばゼラチンカプセル中に)することができる。
【0078】
以下の実施例は本発明を例示する。これらの例は、本発明の範囲の限定を意図するものでも、そのように解釈されるべきものでもない。本明細書に具体的に記載された態様以外でも、本発明を実施することができることが明白である。本発明の多くの修正変更が本明細書の教示の観点から可能な、本発明の多くの修正・変更は、本発明の範囲内に含まれるものとする。
【0079】
<実施例1>
Conl(ジェノタイプIb型)バイシストロニックのサブゲノムレプリコンを含有するヒト肝癌細胞株(Huh−7)について、SCY−635の抗HCV活性を評価した。レプリコンは。安定的なルシフェラーゼレポーター遺伝子、および3つの細胞培養に適した変異を有する。サブゲノムレプリコンはネオマイシンホスホトランスフェラーゼタンパク質の産生を促進する5’末端(HCV配列内リボゾーム侵入部位およびのHCVコアタンパク質のアミノ酸)を含む。EMCVのIRES要素は、非構造的タンパク質NS3、NS4A、NS4B、NS5AおよびNS5Bをコードする第2のシストロンユニットの翻訳を導く。比較のため、HCVレプリコン由来のルシフェラーゼ活性を定量化し、逆転写酵素リアルタイムPCRを使用したHCV特異的なRNAを定量化することによって、HCVのRNA複製を評価する。二連のプレートに、様々な濃度のSCY−635を加えてインキュベートし、薬物処理後、24,48,72および120時間のルシフェラーゼ活性または全RNA抽出物を求めるための処理を行った。SCY−635を、0.00016から50μMの、12サンプルの半対数希釈範囲で試験した。それぞれの被験物の原液を培地で希釈し、プレートに添加した。インキュベーションから72時間後、細胞を処理し、抗ウィルス活性を求めるために、ルシフェラーゼ発光を測定した。3回繰り返して行い、その平均値を算出した。
【0080】
直線回帰を使用して、SCY−635に対するIC50、IC75、IC90およびIC95(それぞれ、50%、75%、90%及び95%のHCV複製を阻害するのに要する濃度)の平均値を算出したところ、それぞれ0.091,0.200,0.397および0.455μMであった。これはEC50、EC75、EC90およびEC95に対する平均有効濃度が、SCY−635に対してそれぞれ121,264,501および601ng/mLに相当することを示す。
【0081】
曲線解析によって、SCY−635に対して算出したIC50、IC75、IC90、IC95およびIC98の平均値は、それぞれ0.081,0.165,0.333,0.410,0.500および1.580μMであった。これはEC50、EC75、EC90、EC95、EC98およびEC99に対する平均有効濃度が、SCY−635に対してそれぞれ107,217,441,542,661および2088ng/mLに相当することを示す。
【0082】
細胞膜からの乳酸脱水素酵素の放出を測定し、全リボゾームRNAを測定することによって、細胞毒性を評価した。5μM以下のSCY−635存在下で72時間のインキュベーション後、レプリコン細胞またはバックグラウンドHuh−7細胞株上に著しい細胞障害性は観測されなかった。レプリコン細胞およびHuh−7細胞株の50%細胞生存率、CC50に係るSCY−635の濃度は、それぞれ14.2および13.7μMであった。選択指数(CC50/IC50)を算出したところ、レプリコン細胞およびHuh−7細胞株に対してそれぞれ129.0および124.5の値が得られた。SCY−635の、1次ヒト幹細胞における細胞毒性について評価した。48時間のインキュベーション後、20μMまでの濃度では著しい細胞毒性は観測されなかった。SCY−635の1次ヒト肝細胞における細胞生存率に対する50%阻害濃度は、33μMであり、選択指数は約300であった。SCY−635の1次ヒト腎尿細管上皮細胞への細胞毒性についても評価した。シクロスポリンAおよびSCY−635の、腎管状上皮細胞についての細胞生存率の50%阻害濃度は、それぞれ12.5μMおよび60.6μMであった。
【0083】
<実施例2>
ジェノタイプIb型由来のレプリコンの全長を含有するヒト肝癌細胞株において、SCY−635の抗HCV活性についても評価した。37℃、72時間のインキュベーション後、細胞に処理を施した。それぞれのウェルからの細胞内RNAを抽出し、HCV特異的なRNAの濃度を、逆転写酵素リアルタイムPCRによって測定した。全細胞数の指標として、リボゾームRNAを評価することによって、細胞毒性効果を測定した。10μMまでの濃度で、著しい細胞障害性は見られない状態で、HCV特異的な複製の用量依存的な抑制を観測した。0.13,0.16および0.21μMのEC50値、およびそれらに相応する、0.57,0.71および0.79μMのEC90の値を3つの独立した系験において観測した。これらの測定で、EC50およびEC90の値の平均値は、それぞれ0.17μMおよび0.69μMであった。
【0084】
<実施例3>
臨床試験のため、1つの活性薬剤であるSCY−635、および4つの不活性成分を含む硬いゼラチンカプセルとしてSCY−635を製剤した。SCY−635、予備ゼラチン化澱粉(スターチ1500)、微結晶性セルロース(Avicel(登録商標)PH102)、コロイド状二酸化ケイ素(Cab−O−Sil(登録商標)M5P)、ステアリン酸マグネシウム(ウシ以外のHyqual(登録商標))を含む乾燥混合物として製剤した。1つの活性剤であるSCY−635、および5つの不活性成分を含む丸みを帯びた凹状の錠剤としても、SCY−635を製剤した。予備ゼラチン化澱粉(Starch1500)、微結晶性セルロース(Avicel(登録商標)PH102)、澱粉グリコール酸ナトリウム(Explotab)、コロイド状二酸化ケイ素(Aerosil(登録商標)200)およびステアリン酸マグネシウムを含む乾燥混合物として錠剤製剤を調製した。
【0085】
<実施例4>
ランダム化された、二重盲検の、プラシーボを対照とした、多種用量の試験において、慢性C型肝炎(サブタイプ1型)に罹患した成人の志願者でSCY−635(上記実施例3に記載の経口カプセルとして与えた)を検討した。3つの集団について、経口で15日間連続して100,200または300mgのSCY−635を1日当たり3回(それぞれ100mg、200mgまたは300mgt.i.d.)を投与した。100mgt.i.d.集団は7人の対象のヒト(1プラシーボおよび6活性薬剤)であり、200mgt.i.d.集団は6人の対象のヒト(1プラシーボおよび5活性薬剤)であり、300mgt.i.d.集団は7人の対象のヒト(1プラシーボおよび6活性薬剤)とした。
【0086】
患者について、HIV−1感染症、HBV感染症、非代償性肝機能障害、肝臓癌の併発、健常人の上限の2.5倍のALT値、といった所見が明らかである場合、または、患者が臓器移植を受けている場合は、試験対象から除外した。全ての対象のヒトは男性(n=20)とし;75%はアフリカ系アメリカ人とした。平均年齢は53歳であった。試験登録者におけるウィルス感染血漿の平均HCV RNA濃度は、ロシュ コバスTaqManによる定量では、5,600,000IU/mLであった。対象のヒトの55%は治療に感受性を有した。
【0087】
1,2,3および14日目、8時間の投与間隔の間に、最初の服用投与後直ちに、それぞれの試験日の対象のヒトから、血液および尿のサンプルを採取した。さらに、トラフ薬剤濃度測定のための血液サンプルを、4,5,8,11,12および15日目の朝ならびに、13日目の夕方のSCY−635投薬直前に、全てのヒトの対象から収集した。
【0088】
SCY−635はいずれの投薬濃度においても、十分に許容され、試験中に深刻な有害事象も報告されなかった。軽度および中程度の有害事象は報告されたが、服用量を限定すべき毒性も観測されなかった。
【0089】
<実施例5>
全血に対して20から2000ng/mL、血漿に対して5から1000ng/mLの分析範囲のハイスループット液体クロマトグラフィ/タンデム質量分析(HTLC−MS/MS)によって、上記実施例4の試験におけるヒトの血液および血漿検体におけるSCY−635の濃度を測定した。図1は試験1日目に得られたSCY−635(化合物1)の血漿濃度を示す。これらのデータは、100mgのt.i.d.投薬量と比較して、200mgのt.i.d.を超えるSCY−635の投薬により、血漿中のSCY−635が過剰濃度(super−proportional)となることを示した。
【0090】
図2は、3つの集団に対する、薬物投与8時間後および/または次の投薬直前の、SCY−635の血漿濃度メジアンを示す。
【0091】
<実施例6>
上記実施例4の試験におけるウィルス濃度データを定量化ロシュ コバスTaqManによって測定した。リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)技術を用いた試験は、HCV RNAを1mL当たりの国際単位(IU)として算出する。それはHCV RNAを10から100,000,000IU/mLの範囲で定量化する。全ての臨床ウィルス濃度検体をLabCorpで分析した。
【0092】
図3はプラシーボを投与した対象のヒトと比較した、300mgのt.i.d.集団における平均およびメジアンのウィルス濃度の変動(基準線からのウィルス濃度をlog10減少として示す)を示す。これらの結果は本試験の血漿ウィルス血症において、SCY−635が臨床的に著しい減少をもたらすことを示し、最低値は基準線から0.8から5.5log10未満の最低値の範囲にあり、集団の最低値の平均は、基準線から2.33log10未満、集団の最低値のメジアンは、基準線から1.9log10未満であった。100mgのt.i.d.および200mgのt.i.d.の集団に対する、最低値の平均及びメジアンは、それぞれ基準線より半対数未満低下していた。
【0093】
<実施例7>
健常な成人志願者におけるSCY−635(上記実施例3に記載の経口カプセル[400mgの投薬量]または錠剤[500から600mgの投薬量])を、ランダム化した二重盲検で、プラシーボを対照として、薬物動態試験にて観測した。3つの集団は、SCY−635の400,500または600mgのいずれかの単一投薬を受けた。それぞれの集団は、8人の対象のヒトである(2プラシーボおよび6活性薬剤)。SCY−635の単回投薬直後から72時間、血液検体を対象のヒトから採取した。SCY−635は全ての投薬濃度において十分に許容され、試験中に深刻な有害事象も報告されなかった。軽度および中程度の有害事象が報告されたが、服用量を限定すべき毒性は観測されなかった。
【0094】
全血に対して50から5000ng/mLおよび血漿に対して15から2000ng/mLの分析範囲で、高圧液体クロマトグラフィ/タンデム質量分析(HPLC−MS/MS)を用いて、この実施例に記載された試験におけるヒトの血液および血漿検体州のSCY−635濃度を測定した。以下の表は得られた結果の要約である(「BLOQ」は定量限界未満を意味する)。
【0095】
【表1】

【0096】
図4は上記表に示すSCY−635(化合物1)の血漿濃度測定結果をグラフ表示したものである。これらのデータは、SCY−635全ての投薬量濃度が良く吸収されることを示す。
【0097】
<実施例8>
健常な成人志願者における二重盲検、プラシーボ対照の薬物動態試験においてSCY−635(上記実施例3の経口錠剤として与える)を観測した。2人を対象とした単独の集団に対して、1日2回500mg(500mgb.i.d.)を経口で14日間連続して、毎日1000mgのSCY−635の投与を続けた。第1日目及び第7日目、最初の投薬投与直後から12時間の間に、それぞれ試験日の対象のヒトの血液検体を採取した。14日目は朝のみ投薬し、最終投薬直後から72時間で血液検体を採取した。さらにトラフ薬物濃度の測定のため、2〜6および8〜13日目の朝、SCY−635の投与直前に対象から血液検体を採取した。2人の対象から収集されたデータは、試験最中にSCY−635が十分に許容され、深刻な有害事象が報告されていないことを示した。軽度および中程度の有害事象が報告されたが、服用量を限定すべき毒性は観測されなかった。
【0098】
全血に対して50から5000ng/mLおよび血漿に対して15から2000ng/mLの分析範囲で、高圧液体クロマトグラフィ/タンデム質量分析(HPLC−MS/MS)を用いて、2人の対象のヒトの血液および血漿検体におけるSCY−635の濃度を測定した。以下の表は時間とともに測定したSCY−635の平均血漿濃度を示し、時間は、第1日目の試験薬の最初の投薬からの時間として示す。
【0099】
【表2】

【0100】
図5は、SCY−635(化合物1)の上記表のデータを、平均血漿濃度を時間に基づいてグラフ表示したものである。前記データは、1日2回500mgずつ投与されたSCY−635が、定常状態で平均370ng/mLを超えるトラフ濃度(即ち、朝の投薬前に採取された検体の濃度)の結果に至ることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
C型肝炎ウィルスまたはヒト免疫不全ウィルスに感染したか、感染の危険性のある対象のヒトについて、C型肝炎ウィルス感染症またはヒト免疫不全ウィルス感染症を治療、予防または制御する方法であって、
対象のヒトに1日当たり約600mgを超える量の化合物 3−[(R)−2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルチオ−Sar]−4−(ガンマヒドロキシメチルロイシン)シクロスポリン、またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくは水和物を分割投与する工程を備える方法。
【請求項2】
C型肝炎ウィルスに感染したか、感染の危険性のある対象のヒトについて、C型肝炎ウィルス感染症を治療、予防または制御する方法であって、
対象のヒトに1日当たり約600mgを超える量の化合物 3−[(R)−2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルチオ−Sar]−4−(ガンマヒドロキシメチルロイシン)シクロスポリン、またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくは水和物を分割投与する工程を備える方法。
【請求項3】
前記化合物を1日当たり約800mgから約1600mg投与する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記化合物を1日当たり約800mgから約1000mg投与する、請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記化合物を1日当たり約900mg投与する、請求項2記載の方法。
【請求項6】
前記化合物を1日当たり2回投与する、請求項2〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記化合物を1日当たり3回投与する、請求項2〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
対象のヒトが、HIVに重感染している、請求項2〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記化合物を経口投与する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
対象のヒトが、HCVジェノタイプ1型と感染している、請求項2〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
対象のヒトに、さらに1以上の抗ウィルス剤を投与する工程を備える、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
C型肝炎ウィルスに感染したか、その危険性のある対象のヒトについて、C型肝炎ウィルス感染症を治療、予防または制御する方法であって、
ヒトの対象に化合物 3−[(R)−2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルチオ−Sar]−4−(ガンマヒドロキシメチルロイシン)シクロスポリン、またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくは水和物を投与する工程を備え、
定常状態で約115ng/mLを超える前記化合物のトラフ血漿濃度を維持するのに十分な量の前記化合物を投与する方法。
【請求項13】
C型肝炎ウィルスに感染したか、感染の危険性のある対象のヒトについて、C型肝炎ウィルス感染症を治療、予防または制御する方法であって、
対象のヒトに化合物 3−[(R)−2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルチオ−Sar]−4−(ガンマヒドロキシメチルロイシン)シクロスポリン、またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくは水和物を投与する工程を備え、
定常状態で約250ng/mLを超える前記化合物の平均血漿濃度を維持するのに十分な量の前記化合物を投与する方法。
【請求項14】
C型肝炎ウィルスに感染したか、感染の危険性のある対象のヒトについて、C型肝炎ウィルス感染症を治療、予防または制御する方法であって、
対象のヒトに1日当たり約10mg/kgから約50mg/kgの量の化合物 3−[(R)−2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルチオ−Sar]−4−(ガンマヒドロキシメチルロイシン)シクロスポリン、またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくは水和物を分割投与する工程を備える方法。
【請求項15】
C型肝炎ウィルスおよび/またはヒト免疫不全ウィルスに感染したか、感染の危険性のある対象のヒトについて、C型肝炎ウィルス感染症および/またはヒト免疫不全ウィルス感染症の治療、予防もしくは制御のために使用され、1日当たり約600mgを超える量で分割投与される、3−[(R)−2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルチオ−Sar]−4−(ガンマヒドロキシメチルロイシン)シクロスポリンまたは薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくは水和物。
【請求項16】
C型肝炎ウィルスに感染したか、感染の危険性のある対象のヒトについて、C型肝炎ウィルス感染症の治療、予防または制御のために使用され、定常状態で約115ng/mLを超えるトラフ血漿濃度を維持するのに十分な量として投与される、3−[(R)−2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルチオ−Sar]−4−(ガンマヒドロキシメチルロイシン)シクロスポリンまたは薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくは水和物。
【請求項17】
C型肝炎ウィルスに感染したか、感染の危険性のある対象のヒトについて、C型肝炎ウィルス感染症の治療、予防または制御のために使用され、定常状態で約250ng/mLを超える平均血漿濃度を維持するのに十分な量として投与される、3−[(R)−2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルチオ−Sar]−4−(ガンマヒドロキシメチルロイシン)シクロスポリンまたは薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくは水和物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−514605(P2012−514605A)
【公表日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−544684(P2011−544684)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際出願番号】PCT/US2010/020316
【国際公開番号】WO2010/080874
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(508296370)サイネクシス,インコーポレーテッド (9)
【Fターム(参考)】