説明

HCVタンパク質の翻訳を制御するための方法および組成物

【課題】ウイルス核酸(特にペスチウイルスおよびHCV)からのウイルスのペプチドおよびタンパク質の翻訳の制御。
【解決手段】C型肝炎ウイルス(HCV)核酸からのHCVタンパク質の翻訳を制御する、a)天然に存在しない第1の核酸であって、HCV核酸の5’UT領域内のセンス鎖に相補的な配列を含有する第1の核酸を提供する工程であって、第1の核酸は、ヘアピン形成領域、ペスチウイルスホモロジーボックスIV領域、および完全長HCV RNAを切断してサブゲノムHCV RNAを形成する切断領域からなる群より選択される配列の少なくとも1つに相補的であり、そしてこの第1の核酸は、3’末端に連結したコレステリル部分をさらに含有する、工程;および、(b)HCV核酸と第1の核酸とを、第1の核酸およびHCV核酸がハイブリダイズする条件下で接触させる工程、それによって、このHCV核酸の翻訳レベルを変える工程を包含する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、C型肝炎ウイルス(HCV)タンパク質の翻訳を制御するための方法および組成物に関する。HCVは血液由来(blood−borne)の非A非B型肝炎ウイルス(NANBV)感染症に言及されてきた。さらに詳細には、本発明の実施態様は、インビボでのHCV翻訳の制御および調節のための方法および組成物を特徴とする。この組成物および方法は、HCV複製を低減または増加するために、ならびにHCVタンパク質の発現を減少または増加するために適用される。
【背景技術】
【0002】
HCVのプロトタイプの分離株はEPO公開公報第318,216号;第388,232号において特徴付けられた。本明細書に用いられるように、用語「HCV」は同じウイルス種の新しい群、遺伝子型、および分離株を包含する。用語「HCV−1」は、EPO公開公報第318,216号中と同じ意味で用いる。
【0003】
HCVは、既知の肝炎ウイルス(例えばA型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、およびデルタ型肝炎ウイルス(HDV))により引き起こされる疾患、ならびにサイトメガロウイルス(CMV)またはエプスタイン−バーウイルス(EBV)により誘発される肝炎を包含する他の形態のウイルス関連肝疾患から区別し得る伝染性疾患である。HCVは輸血された個体で最初に同定された。輸血後肝炎(PTH)は、輸血患者の約10%で起こり、そしてHCVはこれらのケースの90%にまで数えられる。この疾患はしばしば慢性の肝障害(25〜55%)に進行する。
【0004】
現在、ウイルス核酸に関する翻訳プロセスの制御が大いに必要とされている。翻訳プロセスの制御は、効果的なウイルス疾患の治療を制定する。例えば限定はしないが、ウイルスタンパク質の発現を低減する能力は疾患を制限し得る。インビボでウイルスタンパク質の発現を増加する能力は、強い免疫刺激を誘発し得る。ウイルスタンパク質の発現を増加する能力はまた、より容易に精製し得る大量のウイルスタンパク質を産生し得る。
【0005】
HCVゲノムは一本のRNAポジティブ鎖から構成される。HCVゲノムの概略を図1に示す。HCVゲノムは約3,000のアミノ酸から成るポリタンパク質をコードする、連続して翻訳されるオープンリーディングフレーム(ORF)を有する。ORF中で、構造タンパク質はN−末端領域の最初の約4分の1にコードされているようであり、残りのポリタンパク質は非構造タンパク質をコードするのに関する。
【0006】
HCVゲノムは、5’末端にいかなるタンパク質またはポリタンパク質を翻訳するのか知られていない領域を有する。この領域は、5’非翻訳領域(5’UT領域または5’UTRという)あるいは5’リーダー領域と呼ばれる。
【0007】
5’UT領域は5つの上流のORFまで包含し、最初の4つはHCV−1(プロトタイプのHCV分離株)に重複する(Chooら、「C型肝炎ウイルスの遺伝子構成および変化」Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1991)88:2451−2455;Hanら、「C型肝炎ウイルスRNAの末端領域の特徴:5’非翻訳領域および3’末端のポリ(A)部における保存配列の同定」Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1991)88:1711−1715)。5’UT領域はヌクレオチド配列においてペスチウイルスと相同性がある(Hanら)。
【0008】
プライマー伸長分析で、HCV RNAの2つの顕著な種が感染患者由来のサンプル中に存在することが明らかにされた(Hanら)。1つの種はより長い完全長のゲノムRNAであると仮定される。より長い完全長のゲノムRNAは、ヘアピン構造を形成することが予測される5’末端を有する(Hanら;Inchauspeら、抜粋、HCVについての第3回国際シンポジウム、V.19、ストラスブルグ、フランス、1991;Okamotoら、「ヒトキャリアから単離されたC型肝炎ウイルスのゲノムRNAのヌクレオチド配列:報告された分離株との保存領域および可変領域についての比較」、J.Gen Virol.(1991)72:2697−2704)。もう一方の種は短い、おそらく5’サブゲノムRNAであり、その5’末端は、より長いRNAの5’末端から145番目のヌクレオチドから始まる(Hanら)。
【0009】
HCVのアンチセンスポリヌクレオチド分子は、一般的にはEP公開公報第388,232号に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、ウイルス核酸(特にペスチウイルスおよびHCV)からのウイルスのペプチドおよびタンパク質の翻訳を制御することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
1つの局面において、本発明は、C型肝炎ウイルス(HCV)核酸からのHCVタンパク質の翻訳を制御する、以下の工程を包含する方法を提供する:(a)天然に存在しない第1の核酸であって、HCV核酸の5’UT領域内にあるセンス鎖に相補的な配列を含有する第1の核酸を提供する工程であって、ここで、この第1の核酸は、ヘアピン形成領域、ペスチウイルスホモロジーボックスIV領域、および完全長HCV RNAを切断してサブゲノムHCV RNAを形成する切断領域からなる群より選択される配列の少なくとも1つに相補的であり、そしてこの第1の核酸は、3’末端に連結したコレステリル部分をさらに含有する、工程;および、(b)このHCV核酸とこの第1の核酸とを、この第1の核酸およびHCV核酸がハイブリダイズする条件下で接触させる工程、それによって、このHCV核酸の翻訳レベルを変える工程。
【0012】
本発明はまた、C型肝炎ウイルス(HCV)核酸からのHCVタンパク質の翻訳を制御するための組成物であって、HCVの5’UT領域内のセンス鎖の配列に相補的な配列を有する天然に存在しない第1の核酸を含有するか、あるいは転写されてこの相補的な配列を有する核酸を形成し得る天然に存在しない第1の核酸を含有し、ここでこの第1の核酸は、ヘアピン形成領域、ペスチウイルスホモロジーボックスIV領域、および完全長HCV RNAを切断してサブゲノムHCV RNAを形成する切断領域からなる群より選択される配列の少なくとも1つに相補的であり、そしてこの第1の核酸は、3’末端に連結したコレステリル部分をさらに含有する組成物を提供する。
【0013】
本発明は、HCV核酸からのHCVタンパク質の翻訳を制御する組成物および方法を特徴とする。本発明は、HCV RNAの5’末端由来の小領域に相補的な核酸の利用に基づく。本発明の1つの実施態様は、ハイブリダイズする条件下で天然に存在しない第1の核酸とHCV核酸とを接触させる工程を包含するHCV核酸からのHCVタンパク質の翻訳を制御する方法を特徴とする。第1の核酸はアンチセンス核酸であってHCV核酸の5’UT領域内にあるセンス鎖の配列と実質的に相補的な配列を有する。センス鎖は、翻訳プロセスに関与するゲノムまたはメッセンジャーRNAの鎖である。第1の核酸が、2つの核酸がハイブリダイゼーション産物を形成し得る条件下でHCV核酸に配置され、このハイブリダイゼーション産物がHCV核酸の翻訳レベルを変える。
【0014】
本方法はHCVで感染した被験体内で行われ得る。この方法はまた、インビトロで細胞内に用いて目的のウイルスタンパク質を生じさせ得る。この方法はHCV感染の治療として用いられ得る。
【0015】
従って、本発明の1つの局面では、HCV核酸からのC型肝炎ウイルス(HCV)タンパク質の翻訳を制御する方法は、以下の工程を包含して提供される:(a)天然に存在しない第1の核酸であって、HCV核酸の5’UT領域内にあるセンス鎖に相補的な配列を含有する、第1の核酸を提供する工程;および、(b)上記HCV核酸と上記第1の核酸とを、上記第1の核酸および上記HCV核酸がハイブリダイゼーション産物を形成し得る条件下で接触させる工程、ここで上記ハイブリダイゼーション産物は、上記HCV核酸の翻訳レベルを変え得る。
【0016】
本発明の他局面では、HCV核酸からのHCVタンパク質の翻訳を制御する組成物が提供される。この組成物は第1の核酸、またはHCV核酸の5’UT領域内にセンス鎖の配列に相補的な配列を有する第1の核酸を作製する手段を包含する。好ましくは、第1の核酸の配列は配列番号1の中から選択される配列に相補的である。
【0017】
本発明のさらなる局面では、HCVを制御する方法は以下の工程を包含して提供される:(a)プロモーターに作動可能に連結した第2の核酸の転写産物として第1の核酸を生じさせる工程;(b)HCVで感染した細胞に第2の核酸およびプロモーターを配置する工程、ここで該細胞は、第2の核酸を転写して第1の核酸を産生し得る。この方法はまた、HCVに感染していないが将来感染し得る細胞(「易感染」細胞という)内でのHCVタンパク質の発現を予防するために用いられ得る。
【0018】
本発明のさらに他の局面では、5’UTヘアピンのヌクレオチドを介してHCVタンパク質の翻訳を制御する方法が提供される。この方法では、2つの位置の1つにヘアピン配列を配置して保持する工程を包含し、ここで上記の位置の少なくとも1つはヘアピン状立体配置である。
【0019】
本発明のさらに他の局面では、HCV感染の治療および制御のためのキットが提供される。このキットは本発明の組成物を製造品目として含有する。好ましくは、このキットはその使用についての指示書を含有し、細胞または個体に核酸を配置するためのベクターおよび他の媒体を必要に応じて含み得る。
【0020】
本発明の他の局面では、第1の核酸の翻訳を増大させる方法が提供される。この方法はHCVのペスチウイルスホモロジーボックスIV内の配列と相補的な配列を有する天然に存在しない第2の核酸と第1の核酸とを作動可能に連結する工程を包含する。第1の核酸の翻訳を増大させる組成物もまた提供される。この組成物はHCVのペスチウイルスホモロジーボックスIV内の配列に対応する配列を有する天然に存在しない第2の核酸を含有し、この配列は第1の核酸に作動可能に連結され得る。
【0021】
(発明の効果)
本発明の方法および組成物は、ウイルス核酸(特にペスチウイルスおよびHCV)からのウイルスのペプチドおよびタンパク質の翻訳を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】HCVウイルスゲノムの概略を示す図である。
【図2】クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)のmRNA配列を含むように改変されているHCVウイルスRNAゲノムの概略を示す図である。
【図3】改変HCVウイルスRNAゲノムの概略を付随する欠失および改変とともに示す図である。
【図4】5つのRNA構築物、pSV2、CAT、SVCAT、SVACAT、pT7EMCAT、およびEMCVCATの概略を示す図である。
【図5】3つのRNA構築物、pCMV(CAT/SV40/LacZ)、pCMV(CAT/HCV/LacZ)、およびpCMV(CAT/ポリオ/LacZ)の概略を示す図である。
【図6】図5のLacZおよびLacZ/CAT構築物の活性を示すグラフである。
【図7】R6転写におけるAS5アンチセンス分子の効果の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明を、HCV核酸の翻訳を制御するための方法および組成物として詳述する。この組成物および方法をHCV核酸に関して詳述する。しかし、HCV核酸に関する記載は、本発明の特性を例示するためにのみ用いられ、本発明をHCVに限定する意図はない。
【0024】
本発明の実施は、他に記載がない限り、化学、分子生物学、微生物学、組換えDNA、および免疫学の従来技法を用い、これらは当該分野の範囲内にある。このような技法は文献に十分記載されている。例えば、Sambrook、Fitsch&Maniatis、Molecular Cloning;A Laboratory Manual(1989);DNA Cloning、I巻およびII巻(D.N Glover編、1985);Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait編、1984);Nucleic Acid Hybridization(B.D.Hames&S.J.Higgins編、1984);シリーズMethods in Enzymology(Academic Press, Inc.)、特に154巻および155巻(WuおよびGrossman編)を参照のこと。
【0025】
定義:
本明細書中に選択され用いられた用語の定義を、本発明の理解を速めるために以下に示す。用語「対応する」は、特定の核酸配列に相同的である、または相補的であることを意味する。核酸とペプチドとの間に関して、対応するとは、ある核酸またはその相補体の配列に由来する順序にあるペプチドのアミノ酸をいう。
【0026】
用語「天然に存在しない核酸」は、ゲノム核酸の一部、cDNA、半合成核酸、または合成由来の核酸をいい、その起源またはその操作により、(1)自然界において関連のある全ての核酸に関連がない、(2)自然界において連結している核酸以外の核酸または他の化学物質に連結している、あるいは(3)自然界に存在しないものをいう。
【0027】
本明細書に用いられるように、用語「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、および「核酸」は、ポリデオキシリボヌクレオチド(2−デオキシ−D−リボースを含有する)、ポリリボヌクレオチド(D−リボースを含有する)、プリンまたはピリミジン塩基のN−グリコシドである他のあらゆるタイプのポリヌクレオチド、ならびに非ヌクレオチド骨格(例えば、タンパク質核酸、およびNeugeneTMポリマーとしてAnti−Gene Development Group, Corvallis, Oregonから市販されている合成の配列特異的核酸ポリマー)または一般的ではない連結を含む他のポリマーの総称であるべきであり、このポリマーは、DNAおよびRNAに見出されるような塩基のペアまたは塩基の積み重ねを可能にする形状で塩基の核を含むものと規定する。用語「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」の間で長さを区別することは意図せず、これらの用語は交換して用いられる。これらの用語は分子の一次構造のみを言及する。従って、これらの用語は、二本鎖および一本鎖のDNAならびに二本鎖および一本鎖のRNA、ならびにDNA:RNAハイブリッドを包含し、そして既知のタイプの改変物、例えば当該分野で公知の標識、メチル化、1つまたはそれ以上の天然に存在するヌクレオチドのアナログでの「キャップ」置換、例えば非荷電結合(例えば、メチルホスホネート(methyl phosphonate)、ホスホトリエステル、ホスホルアミデート、カルバメートなど)、および荷電結合(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)を用いる改変のようなヌクレオチド間改変物、例えばタンパク質(ヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ポリ−L−リジンなど)のようなペンダント分子を含有するもの、挿入物(例えば、アクリジン、ソラレン(psoralen)など)を含有するもの、キレート(例えば、金属、放射活性金属、ボロン、酸化金属など)を含有するもの、アルキレーターを含有するもの、改変された結合をもつもの(例えば、αアノメリック核酸など)ならびにポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドの改変していないものもまた包含する。
【0028】
本明細書中に用いられる用語「ヌクレオシド」、「ヌクレオチド」、および「核酸」は、既知のプリンおよびピリミジン塩基だけではなく、改変された他の複素環式塩基を包含する部分を含むことが認識される。このような改変は、メチル化プリンまたはメチル化ピリミジン、アシル化プリンまたはアシル化ピリミジン、あるいは他の複素環を包含する。改変ヌクレオシドまたは改変ヌクレオチドは、例えば1つまたはそれ以上の水酸基が、ハロゲン、脂肪族に置換されて、エーテル、アミンなどとして機能する糖部分の改変も包含する。
【0029】
HCVゲノムの構成:
HCVのcDNAライブラリーはHCV感染チンパンジーまたはヒトの血漿中に存在する核酸配列に由来する。これらのライブラリーの1つの構築物である「c」ライブラリー(ATCC番号40394)がPCT公開公報第WO90/14436号に記載されている。本発明に関連のある対応するDNA配列を、本明細書中では配列番号1として示した。
【0030】
これまで報告された少なくとも5つの推定の完全長HCVクローンに基づけば、5’UT領域は約341ヌクレオチド長である(Hanら、Inchauspeら、Okamotoら)。ポリタンパク質領域とは異なり、HCV分離株の5’UT領域は非常によく保存されている。図2に示すように、この5’UT領域は5つの上流のORFまで包含し、最初の4つは、プロトタイプのHCV分離株であるHCV−1に重複する(Chooら;Hanら)。この5’UT領域は、ヌクレオチド配列でペスチウイルスと実質的に相同である(Hanら)。従って、HCV核酸の翻訳の調節に関する考察は他のペスチウイルスに適用し得る。
【0031】
プライマー伸長分析で、2つの顕著な種のHCV RNAが見出された(Hanら)。1つの種のものはより長く、完全長のゲノムRNAと推測される。その5’末端はヘアピン構造を形成していると予測される(Hanら;Inchauspeら;Okamotoら)。より短い5’サブゲノムRNAの5’末端は、より長いRNAの5’末端から145番目のヌクレオチドから始まる(Hanら)。
【0032】
核酸:
本発明の実施態様は、異なるシスに作用するHCVの制御エレメントと相互作用し得る核酸を特徴とし、従ってHCV核酸の翻訳をブロック、抑制、または増大し得る。
【0033】
本発明の1つの実施態様は、天然に存在しない第1の核酸をHCV核酸に配置する工程を包含し、HCV核酸からのHCVタンパク質の翻訳を制御する方法を特徴とする。この第1の核酸は、HCV核酸の5’UT領域内のセンス鎖の配列と相補的な配列を有する。この第1の核酸は、第1の核酸がハイブリダイゼーション産物を形成し得、そしてHCV核酸の翻訳レベルを変え得る条件下でHCV核酸に配置される。
【0034】
好ましくは、本発明のアンチセンス核酸は、RNA、DNA、または改変された核酸である。改変された核酸の例は、分解抵抗性の硫化誘導体、チオホスフェート誘導体、ならびにポリヌクレオシドアミドであるがそれらに限定されない(StecらのPCT公開公報第WO91/16331号;ZonらのPCT公開公報第WO88/07544号;P.E.Nelsenら、Science(1991)254:1497−1500;M.Egholm, JACS,(1992)114;1895−1897)。本発明のアンチセンス核酸の特に好ましい設計改変は、(1)該核酸の細胞内安定性を増加するように、(2)該核酸の細胞透過性を増加するように、(3)センス鎖への該核酸の親和性を増加するように、または(4)該核酸の毒性(もしあれば)を低減するように設計される改変である。多くのこのような改変は、ANTISENSE RESEARCH AND APPLICATIONS(S.T.CrookeおよびB.Lebleu編、CRC Press, 1993)に記載されるように当該分野で公知である。従って、核酸は変更されたまたは改変された塩基、糖、または結合を含み得、リポソームまたは遺伝子治療によるような特殊なシステムで送達され、あるいは付着分子を有し得る。このような付着分子は、細胞膜との相互作用を増強する脂質のような疎水性分子、またはリン酸骨格の電荷中和剤として作用するポリリジンのようなポリカチオニック分子を含有する。付着し得る特に好ましい脂質はコレステロールである。この分子は核酸の3’末端または5’末端で付着し得、そしてまた塩基、糖、またはヌクレオシド間リンケージを介して付着し得る。
【0035】
他の分子はこの核酸の3’末端または5’末端に特異的に配置され、エキソヌクレアーゼ切断を防ぐキャッピング基であり得る。このようなキャッピング基は、ポリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのようなグリコールを含む当該分野で公知のヒドロキシル保護基が包含されるがこれに限定されない。
【0036】
好ましくは、第1の核酸はHCVの5’UT領域内のセンス鎖の配列に実質的に相補的な配列中の少なくとも10ヌクレオチドを有する。さらに好ましくは、第1の核酸は、このような相補的な配列中の少なくとも12ヌクレオチド、さらに好ましくは15ヌクレオチド、そしてさらに好ましくは20ヌクレオチドを有する。好ましくは、第1の核酸は、このような相補的な配列中の100ヌクレオチドより少なく、さらに好ましくは50ヌクレオチドより少ない。最も好ましくは、この核酸はHCVの5’UT領域のセンス配列と安定なハイブリダイゼーション産物を形成し得る約20〜30ヌクレオチドを有する。
【0037】
HCVウイルスの5’UT領域を配列番号1に示す。本発明の1つの好ましい核酸は、5’ヘアピン構造の約23ヌクレオチドを結合し得る。この23ヌクレオチドは配列番号1の1〜23の位置にある。好ましくは、この核酸はヘアピンに関連する配列と3重らせんを形成し、メッセンジャーRNAの残りの部分からの切断を阻害する。
【0038】
本発明の他の好ましい核酸は、ペスチウイルスホモロジーボックスIVとして知られている28ヌクレオチド領域に結合し得る。このペスチウイルスホモロジーボックスIV領域は配列番号1の291〜318塩基にわたる。
【0039】
本発明のさらに好ましい核酸は、上記長い完全長のゲノムRNAが切断されて短いサブゲノムRNAが形成される部位で規定される領域に結合し得る。この切断領域は、配列番号1の145位の上流および下流の約50ヌクレオチド領域にわたる。
【0040】
さらに他の好ましい核酸は、配列番号1の277〜300塩基にわたるペスチウイルスホモロジーボックスIVに重複する領域に結合し得る「AS5」をいう。本発明の好ましい実施態様では、このAS5核酸は完全にホスホロチオエート化されている。すなわち、天然のホスホジエステル結合に代わりホスホロチオエート結合のみを含有する。本発明の他の好ましい実施態様では、このAS5核酸はコレステロール分子に、(好ましくはヌクレオシドの3’末端を介して)共有結合している。
【0041】
核酸の送達:
上記核酸は、当該分野で公知のいくつもの方法を介して細胞内に配置し得る。細胞は、転写産物として第1の核酸が得られ得る第2の核酸でトランスフェクトし得る;例えばDulbeccoの米国特許第4,593,002号に示されるようなウイルス性キャリア中に第2の核酸を含むことにより;あるいはレトロウイルスベクター中の第2の核酸を含むような遺伝子治療の方法による。アンチセンス遺伝子治療の1つの例は、Mukhopadhyayら「アンチセンスRNAによるK−RAS発現および肺癌細胞の腫瘍形成の特異的阻害」、Cancer Research, 51:1744−1748(1991)による記事に記載されている。
【0042】
本発明はまた、HCV感染細胞またはHCV感染から予防すべき細胞内に、第1の核酸または第2の核酸を配置するための媒体を意図する。このような媒体の例には、ベクター、リポソーム、および、N−(1−(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウムメチルスルフェート(DOTAP)、N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)などのような脂質懸濁液が包含される。あるいは、この脂質は第1の核酸に直接共有結合され得る。
【0043】
アンチセンス核酸はまた、該核酸の細胞取り込みを増加する分子と連結され得る。これらの分子は、リン脂質またはステロイド(例えば、コレステロール)のような脂質のごとき疎水性であり得るか、またはポリカチオニック(例えば、ポリリジン)であり得る。疎水性またはポリカチオニックな分子は、アンチセンス核酸のあらゆる所(3’末端および5’末端を含むアンチセンス核酸、塩基、糖ヒドロキシル、およびヌクレオチド間結合を包含する)で付着する。
【0044】
取り込みを増加する特に好ましい分子は、コレステリル基である。コレステリル様基は、例えば、活性化コレステリルクロロホルメート(cholesteryl chloroformate)またはコール酸を介してANTISENSE RESEARCH AND APPLICATIONS(前出)に反映されるような当該分野で公知の手段により、付着され得る。1つの例(318頁)では、コレステロール分子は、アミノリンカーおよびアミンと反応するコレステロール上の官能基を用いて2’ヒドロキシル基にコンジュゲートされ得る。他の方法では、コレステリル基は、R.L.Letsingerら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA(1989)86:6553−6556に記載されるように、CCl4およびコレステリルオキシカルボニルアミノエチルアミンを用いて3’ホスフェートに連結される。
【0045】
5’ヘアピンの使用:
翻訳の増大は、免疫応答を増強し得る。ウイルス核酸の翻訳のブロックまたは低減が、ウイルス感染の病因を低減し得る。本発明の1つの局面では、ヌクレオチド1〜23位でのヘアピンの中のヌクレオチドを介してHCVタンパク質の翻訳を制御する方法を提供する。この方法は2つの位置の1つにヘアピン配列を配置および維持する工程を包含し、ここで該位置の少なくとも1つはヘアピン状立体配置である。ヘアピン状立体配置において、インビボでのウイルス核酸の翻訳はブロックされるかまたは実質的に低減される。上記位置の少なくとも1つには、ヘアピンではない直線状立体配置またはヘアピンと関連するヌクレオチドの完全な除去が包含される。直線状立体配置により、ウイルス核酸が翻訳される。上記ヘアピンヌクレオチドの除去により、ウイルス核酸の翻訳が増大される。好ましくは、ヘアピン構造は、天然に存在しない第1の核酸がヘアピン構造と共に3重らせんを形成する条件下で、該第1の核酸をHCV核酸に配置することにより安定化される。
【0046】
ヘアピンに関連する配列は翻訳を阻害する。本発明の1つの実施態様は、ヘアピン状立体配置を形成し得る第1の配列およびmRNAに結合し得る第2の配列を有する第1の核酸を特徴とする。好ましくは、第1の配列は配列番号1の1〜23塩基に対応する配列を有する。好ましくは、第2の配列は上記のより短いサブゲノムRNAにハイブリダイズする。
【0047】
薬学的処方物:
本発明の組成物は、薬学的投与のために調製され得る。注射用調製物および坐薬は通常、1〜10mg/アンプルまたはカプセルの上記核酸または核酸アナログを含む。ヒトの患者に対して、一日投与量は約0.1〜1,000mgであり、好ましくは1〜100mgである(10〜20mg/kg体重から1000〜2000mg/kg体重)。しかし、各患者に応じた投与量は、広範囲の因子、例えば使用する特定の核酸または核酸アナログの有効性、年齢、体重、一般的な健康状態、性別、食事、投与の時点および形態、排出速度、一緒に用いられる他の薬剤との組合せ、治療が施される所定の疾患の重篤さに依存する。
【0048】
本発明の範囲内にある薬学的製造品は、その意図した目的を達成するために有効な量の活性成分を含んでいる製造品を包含する。好ましい範囲は上述した通りであり、各々のHCV感染症の治療用の最も有効な量の決定は当該分野に公知である。
【0049】
本発明の核酸ならびにそれらの硫化およびホスホロチオエートアナログに加えて、薬学的調製物には適切な賦形剤および活性化合物のプロセスが促進される補助物質を含み得る。この調製物、錠剤、糖衣錠、およびカプセルのような、特に経口投与され得るおよび好ましいタイプの投与に用いられ得る調製物、および坐薬のような直腸に投与し得る調製物、ならびに非経口または経口投与に適する溶液、および口腔内投与または舌下投与し得る組成物には、0.1%から99%重量の活性成分を賦形剤とともに含み得る。好ましい投与方法は非経口投与、特に静脈内投与である。
【0050】
非経口投与に適切な処方物には、水溶性のまたは水懸濁性の形態での活性化合物の水溶液が含まれる。さらに、適切な油性の注射用懸濁液として活性化合物の懸濁液が投与され得る。適切な親油性溶媒または媒体には、脂肪油(例えば、ゴマ油)あるいは合成脂肪酸エステル(例えば、エチルオレエートまたはトリグリセリド)が包含される。水性注射用懸濁液には、懸濁液の粘度を増加する物質(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、および/またはデキストラン)が含まれ得る。必要に応じて、この懸濁液はさらに安定剤を含み得る。
【0051】
さらに、本発明の化合物はリポソームにカプセル化された薬学的組成物に処理され得、ここで活性成分は分散されるかまたは脂質層に付着する水性の同心性の層からなる顆粒小体中に種々存在するかのいずれかで含まれる。活性成分は、その溶解性に依存して水層中および脂質層中の両方に、あるいは一般的にリポソーム懸濁液と呼ばれる液中に存在し得る。疎水性層には、一般的にしかし排他的ではなく、レシチンおよびスフィンゴミエリンのようなリン脂質、コレステロールのようなステロイド、ジセチルホスフェート、ステアリルアミン、またはホスファチジン酸のような多少のイオン性界面活性剤、および/または疎水性の他の物質が包含される。リポソームの直径は一般的に約15nm〜5ミクロンの範囲にわたる。リポソーム調製液および/または脂質懸濁液のための特に好ましい脂質は、DOTMAおよびDOTAPである。
【0052】
DOTAPは、Boehringer Mannheimから購入するか、あるいはL.Stamatatosら、Biochem, 27:3917−25(1988);H.Eiblら、Biophys Chem, 10:261−71(1979)に記載された以下の方法で調製し得る。DOTMAは、Lipofectin*の名で市販されている(BRL, Gaithersburg, MDから入手可能)、そしてP.L.Felgnerら、Proc Nat Acad Sci USA84:7413−17(1987)に記載されている。
【0053】
本発明は、特に有利な実施態様を示す以下の実施例を参照として例示する。しかし、これらの実施態様は例示であり、本発明はいかなる様にも制限されるように解釈されないことに気を付けるべきである。
【実施例】
【0054】
(I.材料と方法)
(A.細胞、細菌株、およびプラスミド)
HUH7、HeLa、およびHepG2細胞を、10%ウシ胎児血清(Gibco−BRL, Gaithersburg, MD)を補足したダルベッコの改変イーグル培地中で増殖させた。これらの細胞は7%CO2の存在下で増殖させた。全てのプラスミドは、Gibco−BRLから購入したEscherichia coli HB101中で増殖させた。
【0055】
(B.酵素)
制限酵素およびT4 DNAリガーゼをBoehringer Mannheim(Indianapolis, IN)から、TaqポリメラーゼをPerkin Elmer(Norwalk, CT)から、T7 RNAポリメラーゼおよびRNasinをPromega(Madison, WI)から購入した。
【0056】
(C.発現プラスミドの構築)
プラスミドpT7EMCATおよびpSV2CATの構築は記載されている(Elroy−Steinら、「脳心筋炎ウイルス5’配列により与えられたmRNAのキャップ依存性翻訳が、ワクシニアウイルス/バクテリオファージT7ハイブリッド発現システムの作用を改善する」Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)(1989)86:6126−6130;Gormanら、「哺乳類細胞中でクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼを発現する組換えゲノム」Mol. Cell Biol.(1989)2:1044−1051)。PCR(Saikiら、「熱安定DNAポリメラーゼを用いるプライマーによる酵素的DNA増幅」Science(1988)230:1350−1354)によりHCV cDNA(Hanら)の5’UT領域の両末端にHindIII部位を付着することにより、およびpSV2CATのHindIII部位に得られた断片をクローニングすることにより、プラスミドpHCVCATを構築した。
【0057】
プラスミドpEQ355を、βガラクトシダーゼ(βgal)発現プラスミドのpEQ176(Schleissら、「ヒトサイトメガロウイルスgp48発現における翻訳の制御」J.Virol.(1991)65:6782−6789)のマルチプルクローニングサイトに固有のHindIII/Asp718部位に、341bpのHCV−1の5’領域を挿入することにより構築した。HCV−1 5’UT領域を、テンプレートとしてラムダベクター由来EcoR1断片であるB114を用いてHindIII/Asp718 PCR断片として得た。
【0058】
プラスミドpEQ391[pCMV(CAT/HCV/LacZ)]を、プラスミドpSV2CAT(Gormanら)から単離されたCAT遺伝子をコードする716bpのHindIII/BanI断片を、プラスミドpEQ355中のHindIII部位で連結することにより得た。上記HindIII部位を連結し、そしてBanI部位およびpEQ355中の連結されていないHindIII部位をクレノウで平滑末端化し、再連結した。
【0059】
プラスミドpEQ416[pCMV/(CAT/ポリオ/LacZ)]を、pSV2CATをテンプレートとして用いて得られた716bpのHindIII/BamHI CAT遺伝子をコードするPCR断片、およびポリオウイルス5’UT領域をコードする995bpのBamHI/XhoI断片を、ポリリンカー中のHindIII/XhoI部位で切断したβgal発現プラスミドpEQ176に連結することにより構築した。
【0060】
pEQ396は、pLNPOZ(Adamら、「ピコルナウイルス5’非翻訳領域を有するレトロウイルスベクターにおける翻訳の内部開始」J.Virol.(1991)65:4985−4990)から得られた5’UT領域ポリオウイルス配列を、クレノウを用いて平滑末端化したXhoI/PstI断片として、ポリリンカー中のXbaI/SnaBI部位で切断したpEQ377中へクローニングすることにより構築されたβgal発現プラスミドである。上記XbaI部位もまた平滑末端を作製するためにクレノウで埋められた。pEQ377中のβgalの転写はT7バクテリオファージプロモーターにより進行する。
【0061】
プラスミドp(CAT/SV40/LacZ)を、716bpのHindIII/BamHI CAT遺伝子をコードする上記PCR断片を、SV40ポリアデニル化シグナル、およびHindIII/BglIIで切断したβgal発現プラスミドpEQ176とともに連結することにより構築した。全てのPCR産物の確実性を、プラスミド中の得られた各セグメントの配列決定をすることにより確認した(ChenおよびSeeburg、「スーパーコイル配列決定:プラスミドDNAを配列決定する迅速で簡易な方法」DNA(1985)4:165−170)。
【0062】
(D.ハイブリッドCAT RNAの構築)
pSV2CATベクターの各セグメントを、Saikiら;ShyamalaおよびAmes、「インビトロでの変異に基づく迅速なポリメラーゼ連鎖反応のためのエキソヌクレアーゼの使用」Gene(1991)97:1−6に記載のようにPCRで増幅した。各セグメントを図2および3に示す。各センスプライマー(PSVまたはP1〜P9)を、5’末端にバクテリオファージT7プロモーター(TAATACGACTCACTATAG)、および3’末端に16〜18塩基のSV40またはHCV配列を有するように設計した。アンチセンスプライマーは、5’末端に40個のTの長鎖、および3’末端に相補的なSV40配列(GGAGGAGTAG)を有していた。この配列は、CAT遺伝子の停止コドンの350bp後で、テンプレートDNAに存在する10個のヌクレオチドおよび付加ポリAトラックの完全な合致によりベクターに結合する。pT7EMCATのセグメントをプライマーT7およびT30により増幅した。
【0063】
各PCR産物を、キャップアナログ(Promega, P2010)を有するまたは有さないT7ポリメラーゼにより転写し、DNアーゼで処理し、フェノール−クロロホルムで抽出し、そして2.5Mの酢酸アンモニウムの存在下でエタノールにより2回沈澱させた。各ポリ(A)+RNAの濃度はUV吸収により見積もり、そしてHanら、「胎児の分化期間でのラット膵臓遺伝子の選択発現」Proc. Natl. Acad. Sci.(USA)(1986)83:110−114に記載されるように、JHC271をプローブとして用いたノーザンおよびドットブロットハイブリダイゼーションにより確認した。SV*CAT、R11、R13、およびR14において、配列を重複PCR法により内部挿入または削除した(ShyamalaおよびAmes)。上記PCR産物は配列決定により正確であることが確認された。
【0064】
(E.インビトロでのハイブリッドCAT RNAの翻訳)
合成RNAを、製造業者により指示されるように、140mMの酢酸カリウムの存在下でヌクレアーゼ処理されたウサギ網状赤血球溶解物(Gibco−BRL)中で翻訳した。キャップ依存性におけるK+イオン濃度の影響を試験する付随研究を、50、100、150、および200mMの酢酸カリウムの存在下で行った。[35S]メチオニンで標識した翻訳産物のアリコートを、以前に記載されているように(Laemmli、「バクテリオファージT4のヘッドのアセンブリ期間中の構造タンパク質の切断」Nature(1970)227:680−685)、12%のポリアクリルアミドゲルで電気泳動することにより分析した。
【0065】
(F.CATアッセイのための哺乳類細胞中へのハイブリッドCAT RNAのトランスフェクション)
各2マイクログラムの合成RNAを、製造業者により改変されたFelgnerら(「リポフェクション:高率の脂質媒介DNAトランスフェクション手法」Proc. Natl. Acad. Sci.(USA)(1987)84:7413−7417)の手法に従って、15mgのリポフェクチン(lipofectin)(Gibco−BRL)を用いて3.5cmのCostarプレート(Thomas Scientific, Swedesboro, NJ)中の1×106細胞にトランスフェクトした。その細胞を、以前に記載されたように(Gormanら)一晩インキュベートし、CATアッセイのために回収した。CATの相対活性は、トランスフェクトされたRNAが0.5mgと5mgとの間で直線関係を示した。6時間と一晩との間のトランスフェクション後のインキュベーションはCAT活性にあまり影響しなかった。
【0066】
ポリオウイルス感染細胞におけるRNAの翻訳のために、HUH7細胞を100の感染多重度(MOI)でポリオウイルス(Mahoney株、ATCC VR−59)に感染させた。細胞は感染後2時間でRNAでトランスフェクトし、トランスフェクション後4時間で回収した。感染6時間、細胞は通常の形態を維持し、その後、それらは形態を変え、培養ディッシュから剥がれた。
【0067】
(G.ジシストロン性DNA構築物の細胞へのトランスフェクション)
CsClグラジエントでの分画により精製された各プラスミドDNA20マイクログラムを、リン酸カルシウム法(Gormanら)により2×106個のHUH7細胞にトランスフェクトした。その細胞をトランスフェクション後48時間で回収し、そして凍結融解を繰り返すことにより細胞抽出液を調製した。CATアッセイは、Gormanらに記載されたように行った。LacZアッセイはMillerに従った(Miller,βガラクトシダーゼアッセイ「分子遺伝子学の実験」352−355頁、Cold Spring Harbour Laboratory, Cold Spring Harbour, New York, 1972)。
【0068】
(実施例1)
(HCVゲノムの5’UT領域に欠失を有するRNAの構築およびこの方法に関する合理性)
HCVゲノム中で翻訳を制御する、シスに作用するエレメントの正確な位置を示すために、HCV−1 RNAの5’UT領域の完全長のもの(ヌクレオチド1〜341)または欠失したものを、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)mRNAのコーディング領域に連結した。この構築物を図3に例示し、そして以下の表1に記載する。
【0069】
【表1】

【0070】
T7ポリメラーゼでDNA断片を転写することにより各RNAを合成し、特定の5’または3’欠失を含むようにまずPCRにより増幅した。各RNAを、細胞中での安定性を増強するために、5’末端でのキャップおよび3’末端でのポリAテール(A40)を有するように設計した。このアプローチで、単一に規定された5’および3’末端を有する大量のRNAの効果的な生産を可能にした。従来のDNAトランスフェクション戦略とは異なり、このアプローチを用いる細胞のRNAトランスフェクションは、特定のRNA分子が核内で直面する、起こり得るスプライシングおよび輸送上の問題を回避する。
【0071】
同じ方法により2つの追加のRNAを合成した:1)従来のキャップ依存性翻訳(Kozak、「翻訳のスキャニングモデル:最新版」J. Cell Biol.(1989)108:229−241)の陽性コントロールとして作用する、SV40の初期mRNAの5’リーダーを有するSVCAT、およびキャップ非依存性内部開始(Jangら、「インビボでの脳心筋炎ウイルスRNAの5’非翻訳領域へのリボソームの内部エントリーによるタンパク質合成の開始」J.Virol.(1989)63:1651−1660)の陽性コントロールとして作用するEMCVの5’リーダーを有するEMCVCAT。
【0072】
(実施例2)
(インビトロでのハイブリッドCAT RNAの翻訳)
合成RNAが生物学的に活性であることを確認するために、およびインビトロでの翻訳特性を決定するために、実施例1のRNAをウサギ網状赤血球溶解物中で翻訳した。SVCATを含有する全てのRNAが、期待したサイズのCATタンパク質を生じた。
【0073】
インビトロの結果は以下のようにまとめ得る:1)HCVCAT構築物では、R1〜R5はCATタンパク質を産生するが、わずかに検出可能なレベルでのみであった。このレベルの翻訳は、R6およびR7で徐々に増加し、R8では最大12倍の増加に達する。2)140mMのKCl濃度では、キャッピングSVCATおよびHCVCAT RNA(R7,R8)のインビトロでの翻訳は、キャッピングされていないRNAの翻訳より平均20倍効果的であった。3)低KCl濃度(50〜100mM)では、キャッピングされていないR1テンプレートの翻訳で、キャッピングR1テンプレートの翻訳と同レベルのCATタンパク質が得られ、これはおそらく弱い内部開始の発生を示す。
【0074】
驚くべきことにそして予期されないことに、これらの結果は、ウサギ網状赤血球溶解物およびHeLa細胞抽出物を用いてHCV RNAの5’UT領域にある内部リボソームエントリー部位の検出を報告しているTsukiyama−Koharaら(「C型肝炎ウイルスのRNAにある内部リボソームエントリー部位」J.Virol.(1992)66:1476−1483)による最近のデータと対照的である。細胞溶解物を用いるインビトロでのタンパク質合成は常にインビボでの翻訳条件を正確に再現するわけではない(Kozak、「原核生物、真核生物、およびオルガネラ中におけるタンパク質合成開始の比較」Microbiol.Rev.(1983)47:1−45)。代わりのアプローチが用いられた。
【0075】
(実施例3)
(インビボでのハイブリッドCAT RNAの翻訳および制御エレメントの同定)
インビボでの単シストロン性構築物の翻訳特性を決定するために、上記各RNAを、コントロールRNAのSVCATも含めて、リポフェクチン(Felgnerら)を用いてヒト肝癌細胞株(HUH7)中にトランスフェクトした(R1〜R18)。CAT活性をモニターし、そして得られたデータを表2にまとめた。
【0076】
【表2】

【0077】
完全長の構築物R1ではRNAの量が10倍に増加し、そしてより多い細胞抽出液を用いたにもかかわらす、CAT活性は繰り返し検出されなかった。この結果は、完全長のHCV RNAが、インビボでの有効な翻訳テンプレートであり得ないことを示唆している。
【0078】
実施例1に記載されるような、一連の5’欠失構築物を分析した。CAT活性は、23個のヌクレオチドの5’末端ヘアピンが除去されたR2でまず検出された。この活性はR3で4倍に増加し、同レベルの活性を、R4、R5、およびR6で検出し、これはORF1〜4について規則的に欠失させたものである。
【0079】
R6の5’UT配列は、インビボで検出された5’サブゲノムRNAの配列に一致する(Hanら、1991)。CAT活性は、ORF5のAUGコドンが除去されたR7で2倍、および3’末端付近の配列の86ヌクレオチドのみを維持したR8でさらに1.5倍増加した。構築物R8は最大のCAT活性を示す。これらのデータは、上記の小さい各ORFを含むヌクレオチド255から上流の配列が、ポリタンパク質の主要開始コドンからの翻訳を阻害することを示唆する。
【0080】
R8で見られる最大のCAT活性は、R9構築物中の67個のヌクレオチドをさらに欠失させると急激に低減した。この結果は、翻訳を刺激する効果的な正に制御するエレメントがヌクレオチド255から下流に存在し得ることを示唆する。この86個のヌクレオチドからなる領域は、ペスチウイルスに対して90%の一致率を有する28個のヌクレオチドからなる配列を含み、そしてペスチウイルスホモロジーボックスIVと呼ばれ、図2および3にPEST−IVとして示した(Hanら、1991)。PEST−IVエレメントが観察される翻訳刺激に単独で関連するのかどうかを決定するために、RNA構築物R6を欠失分析に供した。
【0081】
構築物R6は、不活性構築物に結合しているHCV RNAの5’末端部分を除去した1−145配列を欠失した5’UT領域を有する。R6はR8までの欠失分析に好ましかった。R8における3’欠失は短い5’UT領域を有するRNAを生じた。
【0082】
トランスフェクションにおいて、R6で見られるCAT活性はR6の3’末端から20個のヌクレオチドを欠失させた構築物R17中で1.5倍、および28個のヌクレオチドをさらに欠失させた構築物R18中でさらに2.5倍低減した。
【0083】
これらのデータは、PEST−IVの上流および下流の配列が最大の翻訳増大に必要であることを示した。PEST−IV配列は、異種の5’リーダーに転移し得るポジティブシスエレメントの一部である。図4を見ると、この28塩基からなる配列を上記SVCATに挿入してSV*CATを作製し、CAT活性を3倍増加した。
【0084】
3’欠失によりその他のRNA構築物を作製した。CAT活性はR11およびR14、ならびにR13では検出さなかった。これらは全て、上記5’ヘアピンを含んでいた。これらのデータは、上記5’ヘアピンがHCV RNAの翻訳を阻害するという点からみて一貫している。
【0085】
(実施例4)
(CAT RNAの翻訳におけるHCVの5’ヘアピンの影響)
インタクトな5’末端を有するRNAは、下流の配列に関わりなく全て不活性であったので、最も末端の23個のヌクレオチドに内在する潜在的5’ヘアピン構造を、観察される翻訳阻害に関して評価した。すなわち、この5’ヘアピンを上記2つの活性RNA(R6およびR8)の5’末端に連結した。これらのRNA(R6hp、R8hp)をHUH7細胞にトランスフェクトし、CAT活性を測定した。
【0086】
表2に、これらの構築物においてヘアピンを並置すると、CATの相対活性により示されるように、翻訳はほとんど停止した。このデータは、完全な阻害には上記23ヌクレオチドヘアピンのみより多いヌクレオチド部分を必要とするが、5’ヘアピンが潜在的な翻訳インヒビターであることを示唆している。
【0087】
(実施例5)
(ポリオウイルス感染細胞におけるハイブリッドCAT RNAの翻訳)
ポリオウイルス感染は細胞のmRNAのキャップ依存性翻訳を阻害し、それにより自身のRNAまたは5’UT領域の内部リポソームエントリー部位(IRES)を含む異種RNAの翻訳を促進することが知られている(Jangら、「インビボで脳心筋炎ウイルスRNAの5’非翻訳領域中へのリボソーム内部エントリーによるタンパク質合成の開始」J.Virol.(1989)63:1651−1660;MacejakおよびSarnow、「細胞mRNAの5’リーダーにより介される翻訳の内部開始」Nature(1991)353:90−94;PelletierおよびSonenberg、「ポリオウイルスRNA由来の配列による真核細胞mRNAの翻訳の内部開始」Nature(1988)334:320−325)。この阻害は、細胞のキャップ結合タンパク質複合体(elF−4F)の成分であるp220を順に切断する、同定されていない潜在性の細胞プロテアーゼの活性化により、プロテアーゼ2Aをコードするポリオウイルスにより間接的に媒介されると考えられている(Soneneberg、「真核細胞のmRNAのキャップ結合タンパク質:翻訳の開始および制御における機能」Prog. Nucleic Acid Res. Molec. Biol.(1988)35:173−297)。
【0088】
種々の5’UT領域を有するハイブリッドCAT RNAをポリオウイルスで感染したHUH7細胞にトランスフェクトした。この戦略は、各RNAのキャップ依存性を決定するように、およびHCV5’UT領域中に存在し得る弱い内部リボソームエントリー部位(IRES)の潜在的な存在を検出するように設計された。
【0089】
予測されるように、ポリオウイルス感染は、EMCVCATでCAT活性を内部開始のための陽性コントロールRNAの7倍増加した(Elroy−Steinら)。対照的に、上記ポリオ感染は、SVCATならびに2つのHCV構築物(R6およびR8)におけるCAT活性を実質的に低減した。ポリオウイルス感染細胞に見られる低減されたCAT活性は、感染細胞がRNAトランスフェクションに先立ってより長い時間(2.5時間)インキュベートされた場合にはさらに減少した。R1のCAT活性は、ポリオウイルス感染にかかわらず検出不可能のままであった。この結果は、IRESがHCV RNAの5’UT領域に存在しないことを強く示唆している。
【0090】
R1構築物を除いて、上記の実験で試験した構築物は5’UT領域に大きな欠失を含んでいた。このような欠失は推定のIRES構造および/または機能に影響し得る。このような欠失の影響を評価するために、広範囲にわたらない欠失を有する構築物を、ポリオウイルス感染細胞中のCATタンパク質を翻訳する能力について試験した。以前の結果と一致して、R1構築物のCAT活性は、ポリオウイルス感染の存在または非存在において検出不可能なままであった。構築物R2〜R5は、ポリオウイルス感染の非存在下で試験した場合に、以前に記載されたレベルと似ているCAT活性の相対レベルを示した。しかし、HCVリーダーテンプレートのCAT活性は、ポリオウイルス感染細胞で事実上停止された。
【0091】
さらに、テンプレートSVCATおよびR1〜R3について、非キャッピングメッセージを用いて同様のプロトコールで試験した。上記非キャッピングテンプレートは、細胞をポリオウイルスで連続的に感染してもしなくてもトランスフェクト細胞中で不活性であった。これらの結果は、HCV5’UT領域由来のシス調節エレメントを有する単シストロン性メッセージがキャップ依存的に翻訳されることおよびHCVの5’非コーディング領域がIRESエレメントを有しないことを強く支持している。
【0092】
(実施例6)
(HUH7細胞中でのジシストロン性mRNAの翻訳)
HCVの5’UT領域内のIRESの潜在的な存在を、ジシストロン性のmRNAを転写するように設計されたDNA構築物でHUH7細胞をトランスフェクトすることによりさらに試験した。すなわち、HCV RNAの5’UT領域を第1のシストロンとしてのCATと第2のシストロンとしてのLacZとの間のシストロン間スペーサーとして配置した。この連結したDNAを、翻訳がサイトメガロウイルス(CMV)中の主要な初期遺伝子の強力なエンハンサー/プロモーターにより支配される発現ベクター中にクローニングした。陽性および陰性コントロールとしてのジシストロン性ベクターは、HCVの5’UT領域とポリオウイルスの5’UT領域およびSV40初期遺伝子の3’UT領域とを置換して図5に示すように構築された。
【0093】
HUH7細胞へのトランスフェクションにおいては、3つ全ての構築物は、第1のCATシストロンの翻訳を同レベルで維持した。図6に、3つの構築物の酵素活性を棒グラフの形で示した。HCVリーダーを有するジシストロン性構築物は、第2のLacZシストロンの翻訳を、ポリオウイルスリーダーを用いている上記ジシストロン性コントロール構築物と同レベルでは維持しなかった。これらのデータは、単シストロン性の構築物を用いて得られたHCVゲノムの完全長5’UT領域がIRESを含まないことの先の証拠を支持するものである。
【0094】
(実施例7)
(HeLa細胞およびHepG2細胞におけるHCV RNA構築物の翻訳)
トランジェントトランスフェクションアッセイは、細胞株に依存する種々のリードアウト(readout)を与え得る。得られた結果がHUH7細胞に限られないことを確認するために、R1、R7、およびR8構築物をHeLa細胞およびHepG2細胞にトランスフェクトした。得られたCAT活性パターンはHUH7細胞で観察されたものに質的に類似していた。
【0095】
(実施例8)
(アンチセンス分子によるHCV 5’UT領域の制御エレメントの制御)
オリゴヌクレオチドアナログおよびその誘導体を作製する方法およびそれらの抗ウイルス剤としての使用は、特にPCT WO88/07544号およびPCT WO91/16331号に報告されている。
【0096】
硫化オリゴヌクレオチドアナログを、PCT WO91/16331号の教示に従ってアンチセンス剤として用いるために調製する。配列番号1の1〜23塩基のアンチセンスに対応する23塩基からなるホスホロチオエートオリゴヌクレオチドを、自動合成機(380B型 Applied Biosystems, Foster City, California)でホスホルアミダイト法により合成する。酸化工程のかわりに硫化工程(硫化工程はキャッピング工程に先立つ)で置き換えられる以外は、標準合成プロトコールに従った。すなわち、この合成は、脱トリチル化、カップリング、硫化、およびキャッピングのサイクルの繰り返しからなる。合成カラムからの最終産物の分離および精製は標準の手段により完了する。
【0097】
硫化工程は、0.2MのO,O−ジイソプロピルホスホロジチオ酸ジスルフィドのピリジン溶液に室温で1分間、伸長している鎖をさらすことにより行う。脱トリチル化工程の間に放出されたトリチルカチオンの収率は平均99%と予測される。オリゴヌクレオチドにおける非硫化または酸化された3価のリン酸結合は、脱トリチル化期間に不安定化されて切断されるので、トリチル収率はカップリング効果および硫化測定の両方の尺度である。
【0098】
配列番号1の1−23塩基のアンチセンスに対応する23merを、支持体から切断し、そして55℃で6時間、濃水酸化アンモニウムで脱保護基する。トリチル化オリゴヌクレオチドはHPLCにより単離し、脱トリチル化し、そしてナトリウム塩として沈澱させる。ホスホロチオエートアナログは、通常細胞内に存在するヌクレアーゼに耐性である。
【0099】
ホスホロチオエートオリゴマーの濃縮物とともに培養された細胞は、0.5mMと同じくらい低い濃度でHCVウイルス感染に耐性であることが予期される。
【0100】
センスRNAの1−23配列に相補的な23merのオリゴヌクレオチドアナログは、ヘアピン状立体配置に結合して安定化することによりHCVメッセンジャーRNAの翻訳を低減する。
【0101】
(実施例9)
(抗ヘアピン分子を用いる5’UT領域の制御)
この実施例は、ペスチウイルスホモロジーボックスIVの配列に対応する28個からなるヌクレオチド配列を用いる。国際特許出願番号PCT WO88/07544号に従って、配列番号1の291〜318塩基に相補するホスホロチオエートオリゴヌクレオチドアナログを合成する。
【0102】
本発明のホスホロチオエート物はApplied Biosystems 380−B DNA Synthesizerで、O−メチルホスホルアミダイトを用いる通常のリン酸オリゴヌクレオチドの合成サイクルと同じように合成される。主な違いは酸化工程の間に用いられる試薬にある。
【0103】
7.5グラムのS8分子の硫黄をまず71mlのピリジンおよび7.5mlのトリエチルアミンとともに71mlの二硫化炭素に溶解した5%硫黄溶液を酸化試薬として用いる。得られた全量は3つのカラムでの30merの合成に十分である。
【0104】
上記酸化工程の前後に、カラムを二硫化炭素とピリジンとの1:1溶液で繰り返し洗浄してライン上に沈澱し得るあらゆる残留硫黄を除去する。30merの3つのカラムでの合成には、総量380mlのこの溶液で十分である。この溶液はできるだけ無水であるべきであり、各々新しい合成のために再調製するべきである。
【0105】
硫黄酸化はヨウ素酸化ほどは速くなく、従って合成サイクル間でのヨウ素酸化の待ち時間30秒に比べて、450秒の待ち時間が必要である。さらに最後の手順を、チオフェノールがカラムに送達された後、メタノール中に溶解している生じたあらゆる塩の除去を確実にするために、逆洗浄(reverse flush)を通常より5秒間長く、全部で10秒行うように少し変える。
【0106】
28個からなるヌクレオチドホスホロチオエート核酸アナログを、必要な時点で酸化サイクルを自動的に変化させることにより合成する。カラムから切断して、アンモニア水(60°、10時間)で脱保護した後、ホスホロチオエートオリゴマーおよびブロックコポリマーを逆相HPLC(PRP−1カラム、1%酢酸トリエチルアンモニウム緩衝液(pH7)−アセトニトリル(20分間で20%から40%に増加))を介して精製し、そしてこの溶液を2等量の酢酸エチルで抽出し、ドライアイスで凍結し、そして凍結乾燥する。
【0107】
この固形物を0.3mlの1M NaClに溶解し、そして生成物を3.5倍容量の無水エタノールを添加して沈澱させる。ホスホロチオエートオリゴマーの酢酸塩(特にホモポリマーdC28)は、1M NaClにほとんど不溶性である。パスツールピペットによる少量のアンモニア蒸気(アンモニア水ではない)の導入は、全ての固形物を溶解する。
【0108】
0.5mM濃度の上記28ヌクレオチドアナログを含む溶液と接触させた細胞は、HCV感染またはHCVのウイルスタンパク質の発現に耐性を示す。
【0109】
(実施例10)
(AS5アンチセンス分子を用いる5’UT領域の制御)
AS5という24merのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、HCVの5’UT領域のヌクレオチド277位〜300位に結合するが、以下の配列を有し上記のように合成された:
5’CCTATCAGGCAGTACCACAAGGCC3’ (配列番号2)
AS5−POは通常のホスホジエステル結合を有するAS5オリゴヌクレオチドを指す。AS5−PSはAS5オリゴヌクレオチドをいい、ここで全てのヌクレオシド間結合がホスホロチオエート結合であり、そして上記の実施例9のように合成される。AS5−3’CHOL−PSおよびAS5−3’CHOL−POはそれぞれAS5−PSおよびAS5−POオリゴヌクレオチドを指し、コレステリル基がこの分子の3’末端に付加され、そして「Lynx Pharmaceuticals(Foster City, CA)」により合成された。コレステリル基はまた、本明細書中に記載された方法によっても3’末端に付着し得る。
【0110】
上記各アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)を以下のアッセイで試験し、HCVの5’UT領域により制御される翻訳を阻害する能力を測定した。HUH7細胞を「材料と方法」に記載したように増殖させた。種々のアンチセンス分子(AS5−PO、AS5−PS、AS5−3’CHOL−PS、ならびに−PO、−PS、および3’−CHOLの実施態様の単純ヘルペスウイルス(HSV)由来のコントロール21mer配列)を、最終濃度を0.1〜1.0μMに変化させてHUH7細胞培地に補充し、12〜24時間インキュベートした。
【0111】
上記ASOでのインキュベーション後、次いで細胞を試験RNA(実施例5ならびに図2および3に記載のR6およびSVCAT RNA)で、以下のようにトランスフェクトした:2〜4μgの各RNAを、200μlのリン酸緩衝生理食塩水中の15μgのリポフェクチン(Gibco−BRL)と混合し、15分間インキュベートし、そして上記の「材料と方法」の項目Fに記載のように細胞に添加した。CAT活性を上記の項目Fにおけるようにアッセイした(C.M.Gormanら、Mol.Cell.Biol.(1982)2:1044−1051)。図7に結果を示す。
【0112】
カラム2および11〜13は、SVCATテンプレートRNAを含むが、カラム3〜9および14〜18はR6テンプレートRNAを含む。カラム1〜3、10〜11、および14は、上記ASOインキュベーションしていないコントロールである。残りのカラムは、示されるようにAS5またはHSVコントロールASOを含む。データは、AS5−3’CHOL−POおよびAS5−3’CHOL−PSのASOが、HCV5’UT領域の制御下においてCAT転写および翻訳を特異的に阻害し、SV40プロモーター領域の制御下ではこのような転写および翻訳を阻害しないことを示す。
【0113】
これまでの特定の実施態様の記載は本発明の一般的性質を十分に開示しており、第三者が一般概念から離れることなく現在の知識を適用することにより、このような特定の実施態様を種々の適用に容易に修正および/または改造し得、従ってこのような改造および修正は、開示された実施態様の均等の意味および範囲内に含まれることを意図する。
【0114】
本発明は、ウイルス核酸からのウイルスのペプチドおよびタンパク質の翻訳を制御するための方法および組成物であって、特にペスチウイルスおよびHCVに適用することを特徴とする。本方法および組成物はウイルスゲノムの5’UT領域の制御エレメントを特徴とする。
【0115】
(配列表)
【0116】
【表3】

【0117】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書中に記載される発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−120950(P2010−120950A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4460(P2010−4460)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【分割の表示】特願平6−509245の分割
【原出願日】平成5年9月28日(1993.9.28)
【出願人】(591076811)ノバルティス バクシンズ アンド ダイアグノスティックス,インコーポレーテッド (265)
【Fターム(参考)】