説明

HCV薬剤抵抗性のほぼ全ゲノムのアッセイ

本発明は、抗HCV薬に対する抵抗性を示すC型肝炎ウイルス(HCV)の遺伝子型の変異の評価のためのアッセイに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗HCV薬に対する患者の抵抗性と関連するC型肝炎ウイルス(HCV)のゲノムにおける単一変異または伴性変異を検出し、かつ特徴づけるアッセイに関する。当該アッセイはまた、抗ウイルス療法の前もしくは早期に、HCVに感染している患者の抗HCV薬に対する抵抗性を予測するため、または特定の治療薬または合剤に対する抵抗性を生じたHCVに感染した患者のための代替療法の選択のためにも使用できる。本発明はまた、これらのアッセイを行うためのヌクレオチドプライマー対およびキットにも関する。
【背景技術】
【0002】
HCVは、約15年前に、Chooおよび共同研究者によってクローン化され、特徴付けられた(非特許文献1)。HCVは、フラビウイルス科のファミリーに属し、エンベロープを有するヌクレオカプシドおよび正極性の一本鎖RNAゲノムを含む(非特許文献2)。当該HCVゲノムは、単一の長いオープンリーディングフレーム(ORF)に隣接する5’および3’の非翻訳(UTRまたはNCR)領域からなる。このORFは、アミノ終端の3つの構造タンパク質、およびカルボキシ終端の6つの非構造(NS)タンパク質をコードする。当該構造タンパク質は、ヌクレオカプシド コアタンパク質(C)、および2つの糖タンパク質(エンベロープ 1(E1)およびエンベロープ 2(E2))である。当該非構造タンパク質は、NS2、NS3、NS4a、NS4b、NS5a、NS5bと命名される。5’NCRは、HCVゲノムの最も高度に保存された領域であり、一方、2つのエンベロープタンパク質(E1およびE2)の配列は、異なるHCV分離株の間で大きく変わる。最も高い度合いの変異性は、E2内の領域(現在では一般的に、超可変領域 1と呼ばれる)において認められる。
【0003】
HCVの最初の同定から、少なくとも7つの異なる主要なウイルス型が同定され、遺伝子型 1〜7と命名された。これらの遺伝子型は、多数のサブタイプ(例えば、HCV 1a、1b、1c)を含む。患者が感染したウイルスの遺伝子型およびサブタイプは、臨床予後、および様々な薬物療法に対する反応性に影響する可能性がある(非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5)。
【0004】
HCV感染は、現在まで、依然として深刻な医学上の問題である。現在、HCVに感染した約17億人がいる。HCVは、血液および血液製剤によって、ならびに妊娠中の垂直伝達によって第一に伝達される。感染の初期経過は、典型的に、穏やかである。しかし、免疫系は、しばしば、ウイルスを除去できず、持続感染している患者は、肝硬変および肝細胞癌についての高いリスクを有する(非特許文献6)。
【0005】
慢性HCV感染に対する現在の標準的な治療は、ペグ化インターフェロンαおよびリバビリンの組み合わせに基づく。この治療は、遺伝子型2および3に感染した患者のうち85−90%において、持続性の抗ウイルス反応を生じるが、残念ながら、流行性の遺伝子型1に感染した患者においては約45%のみで生じる(非特許文献7)。より高い抗ウイルス活性および優れた安全特性を与えられた他の薬物および合剤を使用したさらなる治療が、特にHCV再発の予防のために、明らかに必要とされている。
【0006】
血液製剤のスクリーニングのための診断検査の導入は、新たな感染の割合を顕著に減少させてきた。in vitroのモデル、すなわち、HCVサブゲノムのレプリコンモデルおよび感染細胞培養モデルの有効性、ならびに、分子研究技術(ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)など)の改善は、ウイルスタンパク質を直接的に標的にし、または、ウイルス感染に関与する宿主タンパク質を通じて間接的に作用する、HCV複製のさらに強力な阻害剤の開発を促進してきた(非特許文献8;非特許文献9)。これらの新規な化合物のうちのいくつかは、臨床治験に入っているか、または、既に市販されている(http://www.hcvadvocate.org/hepatitis/hepC/HCVDrugs_2007.pdf)。
【0007】
抗HCV治療に対する反応性の可能性についての予後診断の情報を与えることを目的とするアッセイが開発されてきた(非特許文献10;非特許文献11)。これらのアッセイとしては、血清学的試験および定性的または定量的な分子検査が挙げられる。HCVウイルス量のPCRベースのアッセイの例は、Cobas Amplicor(登録商標)(ロシュ)、およびm2000 Real−Time PCR Diagnostics System(登録商標)(アボット(Abott))である。例えば、Versant(登録商標)HCV遺伝子型同定アッセイ(バイエル ダイアグノスティックス)、INNO−LiPA HCV II(登録商標)(イノジェネティックス(Innogenetics))、GEN−ETI−K DEIA キット(イタリア、サルッジャ、ソーリン)および、TRUGENE HCV 5’NC 遺伝子型同定キット(Visible Genetics Europe、フランス、エヴリー)を含む他のPCRベースのアッセイは、HCVの遺伝子型およびサブタイプを同定する。HCVの遺伝子型は、最も効果的な抗HCV薬(例えば、リバビリンまたはインターフェロン)の選択および投与計画、ならびに治療の期間を決定するため、治療前のHCVの遺伝子型の系統的評価が近年提唱されている。現在の遺伝子型の同定は、主に、HCVゲノムの小領域(例えば、5’UTR)のシークエンシングに依存するが、全HCVゲノムまたはほぼ全HCVゲノムのシークエンシングには依存しない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Chooら(1989)Science 244、359−362
【非特許文献2】Bartenschlagerら(2003)Antiviral Res 60、91−102
【非特許文献3】Simmondsら(1995)Hepatology 21、570−582
【非特許文献4】Bukhら(1995)Semin Liver Dis 15、41−63
【非特許文献5】ChevaliezおよびPawlotsky(2007)World J Gastroenterol 13、2461−2466
【非特許文献6】Poynardら(1997)Lancet 349、825−832
【非特許文献7】Striblingら(2006)Gastroenterol Clin North Am vol、463−486
【非特許文献8】Bartenschlager(2002)Nat Rev Drug Discov 1、911−916
【非特許文献9】Wakitaら(2005)Nat Med 11、791−796
【非特許文献10】Gretchら(1997)Hepatology 26、43s−47s
【非特許文献11】Podzorski(2002)Arch Pathol Lab Med 126、285−290
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
その最も一般的な実施態様では、本発明は、試料中に存在するHCVのゲノムにおける変異を同定するためのアッセイに関する。当該アッセイは、順々に行われる下記の工程を含む:
a)当該HCVを含む試料からウイルスRNAを抽出する工程、
b)当該HCVの遺伝子型およびサブタイプを決定する工程、
c)3つの別々の逆転写反応において当該HCVのゲノムの部分的なcDNAを合成する工程であって、第1の逆転写反応は、同一の遺伝子型およびサブタイプのプロトタイプHCVゲノムの3’UTRにおける配列に特異的にハイブリダイズするように選択される第1の外側のアンチセンスプライマーから開始し、第2の逆転写反応は、当該プロトタイプHCVのゲノムのNS4B−NS5A領域における配列に特異的にハイブリダイズするように選択される第2の外側のアンチセンスプライマーから開始し、第3の逆転写反応は、当該プロトタイプHCVのゲノムのNS2領域における配列に特異的にハイブリダイズするように選択される第3の外側のアンチセンスプライマーから開始する工程、
d)3つの別々のPCR反応において工程c)の部分的なcDNAを第二鎖合成および増幅する工程であって、第1のPCR反応は、一定分量の第1の逆転写反応物、上記第1の外側のアンチセンスプライマーおよび当該プロトタイプHCVのゲノムのNS4B−NS5A領域における相補的配列に特異的にハイブリダイズするように選択される第1の外側のセンスプライマーを含み、第2のPCR反応は、一定分量の第2の逆転写反応物、上記第2の外側のアンチセンスプライマーおよび当該プロトタイプHCVのゲノムのNS2領域における相補的配列に特異的にハイブリダイズするように選択される第2の外側のセンスプライマーを含み、第3のPCR反応は、一定分量の第3の逆転写反応物、上記第3の外側のアンチセンスプライマーおよび当該プロトタイプHCVのゲノムの5’UTR領域における相補的配列に特異的にハイブリダイズするように選択される第3の外側のセンスプライマーを含み、当該第2の外側のアンチセンスプライマーは、当該第1の外側のセンスプライマーと相補的である領域に対して3’に位置するプロトタイプHCVのゲノムのNS4B−NS5A領域における配列にハイブリダイズし、当該第3の外側のアンチセンスプライマーは、当該第2の外側のセンスプライマーと相補的である領域に対して3’に位置するプロトタイプHCVのゲノムのNS2領域における配列にハイブリダイズする工程、
e)3つの別々のネステッドPCR反応において工程d)の部分的なcDNAをさらに増幅する工程であって、第1のネステッドPCR反応は、一定分量の第1のPCR反応物、ならびに第1の内側のアンチセンスプライマーおよびセンスプライマーを含み、第2のネステッドPCR反応は、一定分量の第2のPCR反応物ならびに第2の内側のアンチセンスプライマーおよびセンスプライマーを含み、第3のネステッドPCR反応は、一定分量の第3のPCR反応物ならびに第3の内側のアンチセンスプライマーおよびセンスプライマーを含み、当該内側のプライマーは、当該外側のプライマーと重ならず、当該第2の内側のアンチセンスプライマーは、当該第1の内側のセンスプライマーと相補的である領域に対して3’に位置するプロトタイプHCVのゲノムのNS4B−NS5A領域における配列とハイブリダイズし、当該第3の内側のアンチセンスプライマーは、当該第2の内側のセンスプライマーと相補的である領域に対して3’に位置するプロトタイプHCVのゲノムのNS2領域における配列とハイブリダイズする工程、
f)工程e)のさらに増幅されたcDNAの配列を解析する工程、ならびに
g)工程f)から得られる配列と、当該プロトタイプHCVの配列とを比較する工程。
【0010】
別の実施態様では、本発明のアッセイは、特定の抗HCV薬または合剤に対するHCVに感染した患者の抵抗性に関連する個体変異および伴性変異を同定し、特徴付け、かつ、抗HCV薬の抵抗性に関連するHCV変異のデータバンクを作成または拡張するために使用される。当該アッセイは、順々に行われる下記の工程を伴う:
a)治療の不成功によって示された、患者が処置された抗HCV薬または合剤に対する抵抗性を有するHCVを有する患者から採取された試料からウイルスRNAを抽出する工程、
b)当該HCVの遺伝子型およびサブタイプを決定する工程、
c)3つの別々の逆転写反応において当該HCVのゲノムの部分的なcDNAを合成する工程であって、第1の逆転写反応は、同一の遺伝子型およびサブタイプのプロトタイプHCVゲノムの3’UTRにおける配列に特異的にハイブリダイズするように選択される第1の外側のアンチセンスプライマーから開始し、第2の逆転写反応は、当該プロトタイプHCVのゲノムのNS4B−NS5A領域における配列に特異的にハイブリダイズするように選択される第2の外側のアンチセンスプライマーから開始し、第3の逆転写反応は、当該プロトタイプHCVのゲノムのNS2領域における配列に特異的にハイブリダイズするように選択される第3の外側のアンチセンスプライマーから開始する工程、
d)3つの別々のPCR反応において工程c)の部分的なcDNAを第二鎖合成および増幅する工程であって、第1のPCR反応は、一定分量の第1の逆転写反応物、上記第1の外側のアンチセンスプライマーおよび当該プロトタイプHCVのゲノムのNS4B−NS5A領域における相補的配列に特異的にハイブリダイズするように選択される第1の外側のセンスプライマーを含み、第2のPCR反応は、一定分量の第2の逆転写反応物、上記第2の外側のアンチセンスプライマーおよび当該プロトタイプHCVのゲノムのNS2領域における相補的配列に特異的にハイブリダイズするように選択される第2の外側のセンスプライマーを含み、第3のPCR反応は、一定分量の第3の逆転写反応物、上記第3の外側のアンチセンスプライマーおよび当該プロトタイプHCVのゲノムの5’UTR領域における相補的配列に特異的にハイブリダイズするように選択される第3の外側のセンスプライマーを含み、当該第2の外側のアンチセンスプライマーは、当該第1の外側のセンスプライマーと相補的である領域に対して3’に位置するプロトタイプHCVのゲノムのNS4B−NS5A領域における配列にハイブリダイズし、当該第3の外側のアンチセンスプライマーは、当該第2の外側のセンスプライマーと相補的である領域に対して3’に位置するプロトタイプHCVのゲノムのNS2領域における配列にハイブリダイズする工程、
e)3つの別々のネステッドPCR反応において工程d)の部分的なcDNAをさらに増幅する工程であって、第1のネステッドPCR反応は、一定分量の第1のPCR反応物、ならびに第1の内側のアンチセンスプライマーおよびセンスプライマーを含み、第2のネステッドPCR反応は、一定分量の第2のPCR反応物ならびに第2の内側のアンチセンスプライマーおよびセンスプライマーを含み、第3のネステッドPCR反応は、一定分量の第3のPCR反応物ならびに第3の内側のアンチセンスプライマーおよびセンスプライマーを含み、当該内側のプライマーは、当該外側のプライマーと重ならず、当該第2の内側のアンチセンスプライマーは、当該第1の内側のセンスプライマーと相補的である領域に対して3’に位置するプロトタイプHCVのゲノムのNS4B−NS5A領域における配列とハイブリダイズし、当該第3の内側のアンチセンスプライマーは、当該第2の内側のセンスプライマーと相補的である領域に対して3’に位置するプロトタイプHCVのゲノムのNS2領域における配列とハイブリダイズする工程、
f)工程e)のさらに増幅されたcDNAの配列を解析する工程、
g)工程f)から得られる配列と、当該プロトタイプHCVの配列とを比較し、変異を同定する工程、ならびに
h)抗HCV薬の抵抗性に関連するHCV変異のデータバンクに、同定された変異を登録する工程。
【0011】
関連する実施態様では、本発明のアッセイは、施された治療に対するHCVに感染した患者の抵抗性に関連する個体変異および伴性変異を同定し、特徴付けるために利用され、抗HCV薬の抵抗性に関連するHCV変異のデータバンクを利用することで、当該患者のウイルス変異体が、当該患者のさらなる治療に対して抵抗があるとは予想されない別の抗HCV薬または合剤を選択できる。当該アッセイは、同定された変異についての抗HCV薬の抵抗性に関連するHCV変異のデータバンクの調査、および当該HCVが抵抗性を有すると予期されない抗HCV薬または合剤の、患者の引き続く治療のための選択を伴う工程によって置き換えられる工程h)以外は、前述の実施態様の工程と同様の工程を含む。
【0012】
別の実施態様では、前述の実施態様のアッセイは、HCVに感染している患者のいずれかの薬理学的治療の開始前に、当該患者から採取された試料を分析するために利用される。この分析から得られる情報によって、治療医が、HCV変異体または当該患者に存在する変異体に対する抵抗性を有すると予想されない抗HCV薬または合剤である、当該患者の治療のための抗HCV薬または合剤を選択することが可能になる。
【0013】
本発明のさらに特定の実施態様は、試料中に存在するHCV1bのゲノムにおける変異を同定するためのアッセイに関する。当該アッセイは、順々に行われる下記の工程を含む:
a)当該HCVを含む試料からウイルスRNAを抽出する工程、
b)当該HCVの遺伝子型およびサブタイプを決定する工程、
c)ただし、工程b)が、当該HCVは1b型のものであることを示した場合、3つの別々の逆転写反応において当該HCVのゲノムの部分的なcDNAを合成する工程であって、第1の逆転写反応はプライマー ポリ−Aから開始し、第2の逆転写反応はプライマー HCV1bOR6312から開始し、第3の逆転写反応はプライマー HCV1bOR3306から開始する工程、
d)3つの別々のPCR反応において工程c)の部分的なcDNAを第二鎖合成および増幅する工程であって、第1のPCR反応は、一定分量の第1の逆転写反応物およびプライマー対 ポリ−A/HCV1bOF6074を含み、第2のPCR反応は、一定分量の第2の逆転写反応物およびプライマー対 HCV1bOR6312/HCV1bOF1977を含み、第3のPCR反応は、一定分量の第3の逆転写反応物およびプライマー対 HCV1bOR3306/HCVOF129を含む工程、
e)3つの別々のネステッドPCR反応において工程d)の部分的なcDNAをさらに増幅する工程であって、第1のネステッドPCR反応は、一定分量の第1のPCR反応物およびプライマー対 HCV1bIR9339/HCV1bIF6126を含み、第2のネステッドPCR反応は、一定分量の第2のPCR反応物およびプライマー対 HCV1bIR6282/HCV1bIF2523を含み、第3のネステッドPCR反応は、一定分量の第3のPCR反応物およびプライマー対 HCV1bIR2770/HCVIF278を含む工程、
f)工程e)のさらに増幅されたcDNAの配列を解析する工程、および
g)工程f)から得られる配列と、プロトタイプHCV1bの配列とを比較する工程。
【0014】
別の実施態様では、本発明のアッセイは、特定の抗HCV薬または合剤に対するHCV1bに感染した患者の抵抗性に関連する個体変異および伴性変異を同定し、特徴付け、かつ、抗HCV薬の抵抗性に関連するHCV変異のデータバンクを作成または拡張するために使用される。当該アッセイは、順々に行われる下記の工程を伴う:
a)患者が治療された、抗HCV薬または合剤に対して抵抗性を有するHCVを有する患者から採取された試料からウイルスRNAを抽出する工程、
b)当該HCVの遺伝子型およびサブタイプを決定する工程、
c)ただし、工程b)が、当該HCVは1b型のものであることを示した場合、3つの別々の逆転写反応において当該HCVのゲノムの部分的なcDNAを合成する工程であって、第1の逆転写反応はプライマー ポリ−Aから開始し、第2の逆転写反応はプライマー HCV1bOR6312から開始し、第3の逆転写反応はプライマー HCV1bOR3306から開始する工程、
d)3つの別々のPCR反応において工程c)の部分的なcDNAを第二鎖合成および増幅する工程であって、第1のPCR反応は、一定分量の第1の逆転写反応物およびプライマー対 ポリ−A/HCV1bOF6074を含み、第2のPCR反応は、一定分量の第2の逆転写反応物およびプライマー対 HCV1bOR6312/HCV1bOF1977を含み、第3のPCR反応は、一定分量の第3の逆転写反応物およびプライマー対 HCV1bOR3306/HCVOF129を含む工程、
e)3つの別々のネステッドPCR反応において工程d)の部分的なcDNAをさらに増幅する工程であって、第1のネステッドPCR反応は、一定分量の第1のPCR反応物およびプライマー対 HCV1bIR9339/HCV1bIF6126を含み、第2のネステッドPCR反応は、一定分量の第2のPCR反応物およびプライマー対 HCV1bIR6282/HCV1bIF2523を含み、第3のネステッドPCR反応は、一定分量の第3のPCR反応物およびプライマー対 HCV1bIR2770/HCVIF278を含む工程、
f)工程e)のさらに増幅されたcDNAの配列を解析する工程、
g)工程f)から得られる配列と、プロトタイプHCV1bの配列とを比較し、変異を同定する工程、および
h)抗HCV薬の抵抗性に関連するHCV変異のデータバンクに、同定された変異を登録する工程。
【0015】
有用なデータバンクが構築された時点で、同様のアッセイが、未治療のHCV1bに感染した患者、または治療され、かつ、治療計画に対する抵抗性を生じたHCV1bに感染した患者からの試料を分析するために利用でき、それぞれ、治療またはさらなる治療のための適切な抗HCV薬または合剤を選択できる。このような実施態様では、すぐ上に記載されたアッセイの工程h)は、同定された変異についての抗HCV薬の抵抗性に関連するHCV変異のデータバンクの調査、および当該HCVが抵抗性を有すると予期されない抗HCV薬または合剤の、患者の引き続く治療のための選択を伴う工程によって置き換えられる。
【0016】
本発明はまた、ポリ−AおよびHCV1bOF6074、HCV1bOR6312およびHCV1bOF1977、HCV1bOR3306およびHCVOF129、HCV1bIR9339およびHCV1bIF6126、HCV1bIR6282およびHCV1bIF2523、ならびにHCV1bIR2770およびHCVIF278からなるプライマー対に関する。HCVゲノム中の変異を検出するためのキットもまた、本発明の対象である。これらのキットは、少なくとも1つの、または全ての上述のプライマー対を含み、さらなる試薬(例えば、ポリメラーゼ、バッファー、およびヌクレオシド三リン酸など)を含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】HCV1b型の例についての本発明のアッセイの部分的なcDNAの合成および増幅工程を模式的に示す。
【図2】本発明の部分的なcDNA増幅方法の感度と、全長ウイルスゲノムの増幅の感度との比較。
【図3a】本発明のアッセイによって得られた、2人の感染した患者からの翻訳されたHCVのアミノ酸配列と、プロトタイプHCVゲノムの配列との比較。
【図3b】本発明のアッセイによって得られた、2人の感染した患者からの翻訳されたHCVのアミノ酸配列と、プロトタイプHCVゲノムの配列との比較。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の理解を助けるため、いくつかの用語が下記で定義される。
【0019】
用語「核酸」および「オリゴヌクレオチド」は、増幅され、または検出されるプライマーおよびオリゴマー断片を指し、ポリデオキシリボヌクレオチド(2−デオキシ−D−リボースを含む)(DNAとも命名される)、ポリリボヌクレオチド(D−リボースを含む)(RNAとも命名される)、および、プリンもしくはピリミジン塩基のN グリコシド、または修飾されたプリンもしくはピリミジン塩基のN グリコシドであるいずれかの他のタイプのポリヌクレオチドの総称であるものとする。用語「核酸」と「オリゴヌクレオチド」との間の長さにおける意図された区別はなく、これらの用語は、互換的に使用される。これらの用語は、当該分子の一次構造のみを指す。従って、これらの用語は、二本鎖および一本鎖のDNA、ならびに二本鎖および一本鎖のRNAを含む。
【0020】
用語「cDNA」は、RNA依存性 DNAポリメラーゼまたは逆転写酵素またはDNAポリメラーゼの作用によりRNA鋳型から合成されたDNAである相補的なDNAを指す。これらの用語は、二本鎖および一本鎖の相補的なDNAを含む。
【0021】
オリゴヌクレオチドは、例えば、適切な配列のクローニングおよび切断、ならびに、Narangら(1979)(Meth Enzymol 68、90−99)のホスホトリエステル法;Brownら(1979)(Meth Enzymol 68、109−151)のホスホジエステル法;Beaucageら(1981)(Tetrahedron Lett 22、1859−1862)のジエチルホスホルアミダイト法;および米国特許第4,458,066号明細書の固体担体法などの方法による直接的な化学合成を含む、いずれかの適した方法によって調製することができる。
【0022】
用語「ハイブリダイゼーション」および「ハイブリダイズ」は、相補的な塩基対形成による、2本の一本鎖の核酸による二本鎖構造の形成を指す。ハイブリダイゼーションは、完全に(正確に)相補的な核酸鎖の間、またはミスマッチの微小領域を含む「実質的に相補的な」核酸鎖の間で生じる可能性がある。完全に相補的な核酸鎖のみがハイブリダイズする条件は、「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」と呼ばれる。実質的に相補的な配列の安定な二本鎖は、ストリンジェンシーが少ないハイブリダイゼーション条件下で達成できる。核酸技術の当業者は、当該技術分野によって与えられる手引きに従って、経験的に、二本鎖の安定性を特定することができる(例えば、Sambrookら(1985)Molecular Cloning − A Laboratory Manual、コールド・スプリング・ハーバー研究所(ニューヨーク州、コールド・スプリング・ハーバー)を参照)。一般的に、ストリンジェントな条件は、規定のイオン強度およびpHでの、特定の配列についての熱融点(Tm)(thermal melting point)よりも約5℃低くなるように選択される。このTmは、塩基対の50%が解離する(規定のイオン強度およびpH下での)温度である。ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーの緩和によって、配列のミスマッチを許容することになるだろう。許容されるミスマッチの程度は、ハイブリダイゼーション条件の適した調整によって制御できる。正確に相補的な核酸鎖および実質的に相補的な核酸鎖の両方のハイブリダイゼーションは、本願明細書において、「特異的」と呼ばれる。
【0023】
用語「プライマー」は、核酸鎖と相補的なプライマー伸張産物の合成が誘導される条件下、すなわち、適切なバッファー中の、適した温度での、4つの異なるヌクレオシド三リン酸および重合のための薬剤(すなわち、DNAポリメラーゼまたは逆転写酵素)の存在下でのDNA合成の開始点として作用することができるオリゴヌクレオチドを指す。プライマーは、好ましくは、一本鎖のオリゴデオキシリボヌクレオチドである。プライマーの適切な長さは、プライマーの目的とする用途に依存するが、典型的に、約15〜約35ヌクレオチドの範囲である。短いプライマー分子は、一般的に、十分に安定なハイブリッド複合体を鋳型と形成するために、より冷たい温度を必要とする。プライマーは、鋳型核酸の正確な配列を反映する必要はないが、鋳型とハイブリダイズするために、十分に相補的でなければならない。プライマーは、当該プライマーを検出または固定化できるが、当該プライマーの基本的な特性、DNA合成の開始点としての作用の基本的な特性を変化させないさらなる特徴を包含することができる。ハイブリダイズする鋳型と十分に相補的であるプライマーの領域は、本願明細書においては、ハイブリダイズ領域と呼ばれる。
【0024】
本願明細書で使用される「センス」プライマーまたは「上流」プライマーは、その伸長産物がコード鎖のサブシーケンスであるプライマーを指す。「アンチセンス」プライマーまたは「下流の」プライマーは、その伸長産物が相補的な非コード鎖のサブシーケンスであるプライマーを指す。
【0025】
用語「外側のプライマー」(単数または複数)は、核酸の伸長を逆転写または最初に増幅するために使用される第1のプライマーまたはプライマー対を指す。用語「内側のプライマー」(単数または複数)は、最初の増幅産物をさらに増幅するために使用されるプライマーまたはプライマー対を指す。内側のプライマーは、対応する外側のプライマーと、著しい配列の相同性を共有せず、内側のプライマーによる増幅は、典型的に、最初の増幅産物よりもわずかに短い二次増幅産物を生じる。
【0026】
本願明細書で使用されるオリゴヌクレオチドプライマーは、オリゴヌクレオチドと標的配列との間に存在するミスマッチの数が、オリゴヌクレオチドと非標的配列との間に存在するミスマッチの数よりも少ない場合、標的配列に対して「特異的」である。ハイブリダイゼーション条件は、存在するミスマッチの数が、オリゴヌクレオチドと標的配列との間に存在するミスマッチの数以下である場合のみに、安定な二本鎖が形成されるものを選択できる。このような条件下では、標的特異的なオリゴヌクレオチドは、標的配列とのみ、安定な二本鎖を形成することができる。適切にストリンジェントな増幅条件下での標的特異的なプライマーの使用によって、標的プライマー結合部位を含むこれらの標的配列の特異的な増幅が可能になる。
【0027】
用語「標的領域」および「標的核酸」は、増幅され、あるいは分析される核酸の領域を指す。プライマーがハイブリダイズする配列は、「標的」と呼ぶことができる。
【0028】
用語「変異体」または「HCV変異体」は、ウイルスタンパク質産物における少なくとも1つのアミノ酸変化を引き起こす少なくとも1つの変異の存在だけが対応するプロトタイプウイルスのゲノムと異なるゲノムを有するHCVを指す。従って、用語「変異」は、少なくとも1つのアミノ酸がプロトタイプウイルスのウイルスタンパク質産物と異なるウイルスタンパク質産物をもたらす変異体のゲノムにおけるこのような変化を指す。
【0029】
用語「プロトタイプウイルス」または「プロトタイプHCV」は、本発明のアッセイにおいて生じたウイルス配列が比較され、当該アッセイにおいて使用されるcDNAの合成プライマー、増幅プライマーおよびシークエンス用プライマーの設計のための基礎としての役割を果たす参照ゲノムを与える参照HCVウイルスを意味する。プロトタイプウイルスは、特定のウイルス分離株を指す可能性がある。あるいは、これは、複数のウイルス分離株のゲノム配列の比較から生じるコンセンサスゲノムを含む仮定上のHCVウイルスを指す可能性がある。1つのこのようなプロトタイプウイルスである、HCV株 H77(ジェンバンク受入番号 AF011751)は、HCV1b プライマーを設計するために実施例1において使用された。HCV con1(ジェンバンク受入番号 AJ238799)は、実施例3のアッセイにおいて、プロトタイプHCV1bのゲノム配列として使用された。当業者ならば、他の遺伝子型およびサブタイプについてのプロトタイプHCV配列を選択する方法が分かるだろう。例えば、HCV株 HC−J6(ジェンバンク受入番号 D00944)またはJFH1(ジェンバンク受入番号 AB047639)は、プロトタイプHCV 2aであると考えられる可能性がある。
【0030】
用語「疑似種」は、感染した患者において頻繁に存在する同一の遺伝子型およびサブタイプの、高度に関連したHCVの群に関する。
【0031】
用語「抗HCV薬または合剤」は、それぞれ、少なくとも一部の、HCVに感染した患者におけるHCVのウイルス量またはウイルス価を減少させることができるいずれかの薬物または合剤を指す。特に、これらの用語はまた、それぞれ、少なくとも一部の、HCVに感染した患者におけるHCVのウイルス量またはウイルス価を実質的に、または顕著に減少させることができるいずれかの薬物または合剤を指す。抗HCV薬としては、HCVの複製阻害剤(ポリメラーゼ阻害剤、プロテアーゼ阻害剤およびシクロフィリン阻害剤など)、免疫反応修飾因子または宿主応答修飾因子、ウイルス侵入阻害剤および宿主因子阻害剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
用語「抗HCV薬の抵抗性に関連するHCV変異のデータバンク」は、いずれかの抗HCV薬または合剤に対する抵抗性(抵抗性は、ウイルス量を実質的に減少させる抗HCV薬または合剤による治療の過程の不成功(治療の不成功とも呼ばれる)によって示される)に関連する変異を、いずれかの形態で編集したものを指す。このようなデータバンクは、当該技術分野で入手できる情報、または当該技術分野で入手できるようになる情報、および、本発明のアッセイを利用して行われる、薬剤抵抗性の、感染した患者からの試料の分析から得られる情報を使用して構築される可能性がある。
【0033】
現在利用できるアッセイは、HCV変異体の集団のメンバーが患者に存在するかどうか(疑似種)、または優勢な変異体が特定の抗HCV薬、または抗HCV薬の併用による治療に対して抵抗性であるかどうかについてさえも示さない。さらに、これらの試験は、ウイルスのゲノム内のどの個体変異、伴性変異またはフィンガープリントが、特定の抗HCV治療に対するウイルスの抵抗性と関連するかを特定しない。HCVに対する大部分の治療は、非常に高価であり、かつ、長期にわたる。利用される特定の抗HCV薬または合剤に対して先天的に抵抗性であるかどうかを知らずに、HCVに感染した患者を治療すると、高いレベルでウイルスが存在し続ける結果、および抗HCV治療の二次的効果(毒性)によって、患者に副作用をもたらす可能性がある。
【0034】
特定の抗HCV薬または合剤に対する抵抗性と関連する、特定の遺伝子型および/もしくはサブタイプの完全な、またはほぼ完全なHCVゲノムにおける変異を特徴付けるための診断上のアッセイは、当業者(すなわち、病院または医療施設の、医師、臨床医または看護師)にとっての長年にわたるニーズである。本発明は、このようなアッセイを提供する。当該アッセイは、類似する長さの3つの重複DNA断片としての、HCVゲノムの逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)による増幅物に依存している。発明者らは、3つの断片としてのゲノムの増幅物は、当該アッセイの感度についてのニーズと、ウイルスの変異配列を選択することの回避との間の最良の折衷を表わしていることを見出した。限度内で、当該アッセイの感度は増幅される別々の断片の数とともに増加し、一方、選択を最小限にするには、増幅される別々の断片の数を減少させることが必要となる。本発明のアッセイは高感度であり、全長ウイルスゲノムの逆転写および増幅に基づくアッセイと対照的に、非常に低いウイルス量を有する患者から採取された試料からのHCVゲノムの検出および分析を可能にする。
【0035】
本発明のアッセイは、特定の抗HCV薬に対する抵抗性に関連する変異のデータバンクの系統的な構築を可能にし、有用なデータセットが構築された時点で、特定の抗HCV薬(単数または複数)による治療に対して抵抗性を有するHCV変異体の感染した患者における存在を特定するための予後のアッセイとして利用できる。このような情報に基づき、治療前の患者に既に存在する検出可能なHCV変異体の薬剤抵抗性によって妨害されない、感染した患者の治療のための適切な抗HCV薬または合剤を選択することが可能になる。さらに、特定の治療法が選択され、かつ、患者の治療が開始した時点で、当該患者から単離されたウイルスを感染細胞培養モデルに導入することがき、当該患者に使用される薬物または合剤の選択圧下で、数回の複製を起こすことができる。次いで、本発明のアッセイは、増幅がこのような増幅の前に検出することができない少数の薬剤抵抗性の変異体を出現させたかどうかを特定するために、選択されたウイルス集団において行うことができる。得られる結果は、患者に施された薬物療法を迅速に順応させ、または変化させるために利用できる。
【0036】
ウイルス量の測定に加えて、本発明のアッセイは、抗HCV薬または合剤で治療された患者における薬剤抵抗性の発生をモニターするために利用することができる。ウイルスは、治療の過程の終了時点、または治療中の様々な時点で単離され、本発明のアッセイを使用して分析される。公知の耐性変異または一連の伴性変異を含む主要な変異体の検出は、ウイルス量の決定とは別に、当該治療法は、別の治療法に順応される必要がある、または置き換えられる必要があるという指標を与えるだろう。変異の上記のデータバンクは、順応された治療法または別の治療法の選択について、治療医を支援するだろう。
【0037】
本発明のアッセイは高感度であり、1つの手順によって、1つ以上の抗HCV薬のいずれかの組み合わせによる治療に対する抵抗性に関連するHCVゲノム中において基本的にどこにでも生じる、個体変異または伴性変異の検出を可能にする。
【0038】
本発明の実行においては、他に指定がない限り、分子生物学、微生物学、組み換えDNA、ポリペプチドおよび核酸の合成、ならびに免疫学の従来技術(これらは当該技術分野における技能の範囲内である)を利用する。このような技術は、文献において十分に説明される。例えば、Sambrookら(1989)Molecular Cloning − A Laboratory Manual、コールド・スプリング・ハーバー研究所(ニューヨーク州、コールド・スプリング・ハーバー);DNA Cloning − a Practical Approach、第1巻および第2巻(D.M.Glover、編集、1985);Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait、編集、1984);Nucleic Acid Hybridization(B.D.HamesおよびS.J.Higgins、編集、1984);Transcription and Translation(B.D.HamesおよびS.J.Higgins、編集、1984);Animal Cell Culture − a Practical Approach(R.I.Freshney、編集、1986);Immobilized Cells and Enzymes − A Practical Approach(J.Woodward、編集、1985);B.Perbal(1984)A Practical Guide to Molecular Cloning、John Wiley & Sons(ニューヨーク州、ニューヨーク);the series Methods in Enzymology、Academic Press社、第154巻(R.WuおよびL.Grossman、編集、1987)および第155巻(R.Wu、編集、1987)を含む;Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.H.MillerおよびM.P.Calos、編集、1987);Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology(R.J.MayerおよびJ.H.Walker、編集、1987)、Protein Purification − Principles and Practice(R.K.Scopes、1987);ならびにHandbook of Experimental immunology、第1−4巻(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell、編集、1986)を参照。
【0039】
最も一般的な実施態様では、本発明は、試料に存在するHCV変異体のゲノム中の単一変異および伴性変異を同定し、特徴付けることができるアッセイに関し、当該アッセイは連続的に行われる下記の工程を含む:
工程1:HCVを含む試料からウイルスRNAを抽出する工程、
工程2:当該HCVの遺伝子型およびサブタイプを決定する工程、
工程3:3つの別々の逆転写反応において当該HCVのゲノムの部分的なcDNAを合成する工程であって、第1の逆転写反応は、同一の遺伝子型およびサブタイプのプロトタイプHCVの3’UTRにおける配列に特異的にハイブリダイズするように選択される第1の外側のアンチセンスプライマーから開始し、第2の逆転写反応は、当該プロトタイプHCVのゲノムのNS4B−NS5A領域における配列に特異的にハイブリダイズするように選択される第2の外側のアンチセンスプライマーから開始し、第3の逆転写反応は、当該プロトタイプHCVのゲノムのNS2領域における配列に特異的にハイブリダイズするように選択される第3の外側のアンチセンスプライマーから開始する工程、
工程4:3つの別々のPCR反応においてHCVのゲノムの部分的なcDNAを第二鎖合成および増幅する工程であって、第1のPCR反応は、一定分量の第1の逆転写反応物、上記第1の外側のアンチセンスプライマーおよびプロトタイプHCVのゲノムのNS4B−NS5A領域における配列の補完物に特異的にハイブリダイズするように選択される第1の外側のセンスプライマーを含み、第2のPCR反応は、一定分量の第2の逆転写反応物、上記第2の外側のアンチセンスプライマーおよびプロトタイプHCVのゲノムのNS2領域における配列の補完物に特異的にハイブリダイズするように選択される第2の外側のセンスプライマーを含み、第3のPCR反応は、一定分量の第3の逆転写反応物、上記第3の外側のアンチセンスプライマーおよびプロトタイプHCVのゲノムの5’UTR領域における配列の補完物に特異的にハイブリダイズするように選択される第3の外側のセンスプライマーを含み、当該第2の外側のアンチセンスプライマーは、当該第1の外側のセンスプライマーと相補的である領域に対して3’に位置するプロトタイプHCVのゲノムのNS4B−NS5A領域における配列にハイブリダイズし、当該第3の外側のアンチセンスプライマーは、当該第2の外側のセンスプライマーと相補的である領域に対して3’に位置するプロトタイプHCVのゲノムのNS2領域における配列にハイブリダイズする工程、
工程5:3つの別々のネステッドPCR反応において工程4の部分的なcDNAをさらに増幅する工程であって、第1のネステッドPCR反応は、一定分量の第1のPCR反応物、ならびに第1の内側のアンチセンスプライマーおよびセンスプライマーを含み、第2のネステッドPCR反応は、一定分量の第2のPCR反応物、ならびに第2の内側のアンチセンスプライマーおよびセンスプライマーを含み、第3のネステッドPCR反応は、一定分量の第3のPCR反応物ならびに第3の内側のアンチセンスプライマーおよびセンスプライマーを含み、当該内側のプライマーは、当該外側のプライマーと重ならず、当該第2の内側のアンチセンスプライマーは、第1の内側のセンスプライマーと相補的である領域に対して3’に位置するプロトタイプHCVのゲノムのNS4B−NS5A領域における配列とハイブリダイズし、当該第3の内側のアンチセンスプライマーは、第2の内側のセンスプライマーと相補的である領域に対して3’に位置するプロトタイプHCVのゲノムのNS2領域における配列とハイブリダイズする工程、
工程6:工程5のさらに増幅されたcDNAの配列を解析する工程、および
工程7:得られる配列と、プロトタイプHCVの配列とを比較する工程。
【0040】
さらに特定の実施態様では、本発明は、抗HCV薬または合剤による治療を受けている患者から採取された試料中の、抗HCV薬または合剤に対して抵抗性を有するHCV変異体のゲノム中の単一変異および伴性変異を同定し、かつ特徴付けることができるアッセイに関する。当該アッセイは、連続的に行われる下記の工程を含む:
工程1:患者が処置された抗HCV薬または合剤に対して抵抗性を有するHCVを有する患者から採取されたウイルスRNAを抽出する工程、
工程2−6は上記アッセイと同様であり、
工程7:工程6において得られる配列とプロトタイプHCVのゲノムの配列とを比較し、変異を同定する工程、および
工程8:抗HCV薬の抵抗性に関連する変異のデータバンクに、同定された変異を登録する工程。
【0041】
薬剤抵抗性に関連する変異の有用なデータバンクが確立された時点で、本発明はまた、工程8が、同定された変異についてのデータバンクの調査、および患者の引き続く治療のための、HCVが抵抗性を有すると予期されない別の抗HCV薬または合剤の選択からなること以外は、直前に記載されたアッセイと同一のアッセイにも関する。
【0042】
本発明の後者のアッセイはまた、HCVに感染している患者のいずれかの薬理学的治療の開始前に、当該患者から採取された試料について行われてもよい。当該アッセイからの結果によって、医師は、患者が感染したHCVが抵抗性を有さない抗HCV薬または合剤を選択することができる。患者が、優性変異体および複数の微量変異体を含むHCVの疑似種に頻繁に感染することが理解される。当該アッセイは、主に、優性変異体に存在する変異を明らかにする。微量変異体に存在する変異も発見できるかどうかは、複数の要因(特に、微量変異体の相対的な存在量、および利用されるシークエンシング技術)に依存する。微量変異体における変異は、微量変異体の相対的な存在量が少なくとも約20%である場合、ルーチンキャピラリーシークエンシング、すなわち、標準的な自動化されたシークエンシングによって同定可能であるはずである。変異体の発現量がより低い場合、高度なシークエンシングの方法論(合成による高処理量のシークエンシング技術など)は、変異の情報を得るために利用される必要がある。このようなシークエンシングの技術は、例えば、Illumina社(カリフォルニア州、サンディエゴ)、454 Life Sciences(コネチカット州、ブランフォード)およびApplied Biosciences(カリフォルニア州、フォスターシティ)によって開発された。シークエンシングの設備およびサービスは、市販されている。
【0043】
HCV1b変異体を含む試料とともに使用するためのアッセイの特定の実施態様は、下記に示され、実施例の項においてさらに記載される。1つのこのようなアッセイは、順々に行われる下記の工程を含む:
工程1:HCVを含む試料からウイルスRNAを抽出する工程、
工程2:当該HCVの遺伝子型およびサブタイプを決定する工程、
工程3:ただし、工程2でHCVが1b型のものであることが示された場合、3つの別々の逆転写反応において当該HCVのゲノムの部分的なcDNAを合成する工程であって、第1の逆転写反応はプライマー ポリ−Aから開始し、第2の逆転写反応はプライマー HCV1bOR6312から開始し、第3の逆転写反応はプライマー HCV1bOR3306から開始する工程、
工程4:3つの別々のPCR反応においてHCVのゲノムの部分的なcDNAを第二鎖合成および増幅する工程であって、第1のPCR反応は、一定分量の第1の逆転写反応物およびプライマー対 ポリ−A/HCV1bOF6074を含み、第2のPCR反応は、一定分量の第2の逆転写反応物およびプライマー対 HCV1bOR6312/HCV1bOF1977を含み、第3のPCR反応は、一定分量の第3の逆転写反応物およびプライマー対 HCV1bOR3306/HCVOF129を含む工程、
工程5:3つの別々のネステッドPCR反応において工程4の部分的なcDNAをさらに増幅する工程であって、第1のネステッドPCR反応は、一定分量の第1のPCR反応物およびプライマー対 HCV1bIR9339/HCV1bIF6126を含み、第2のネステッドPCR反応は、一定分量の第2のPCR反応物およびプライマー対 HCV1bIR6282/HCV1bIF2523を含み、第3のネステッドPCR反応は、一定分量の第3のPCR反応物およびプライマー対 HCV1bIR2770/HCVIF278を含む工程、
工程6:工程5のさらに増幅されたcDNAの配列を解析する工程、および
工程7:得られる配列とプロトタイプHCV1bの配列とを比較する工程。
【0044】
患者が受けた治療に対して抵抗性を有するHCV1bを有する患者から得られる試料とともに使用するための、別のこのようなアッセイは、順々に行われる下記の工程を含む:
工程1:患者が処置された抗HCV薬または合剤に対して抵抗性を有するHCVに感染した患者から採取された試料からウイルスRNAを抽出する工程、
工程2−6は、前述のアッセイと同様であり、
工程7:工程6において得られる配列とプロトタイプHCVのゲノムの配列とを比較し、変異を同定する工程、および
工程8:抗HCV薬の抵抗性に関連する変異のデータバンクに、同定された変異を登録する工程。
【0045】
薬剤抵抗性に関連するHCV1b 変異の有用なデータバンクが作成された時点で行うことができる同様のアッセイは、工程8が、特定された変異についての最新のデータバンクの調査、および患者の引き続く治療のための、当該HCVが抵抗性を有すると予期されない、別の抗HCV薬または合剤の選択からなること以外は、直前に記載されたアッセイと同一である。
【0046】
上記アッセイはまた、HCVに感染している患者のいずれかの薬理学的治療の開始前に、当該患者から採取された試料において行われてもよい。患者のHCVが1b型のものである場合、当該アッセイからの結果によって、医師は、患者が感染しているHCVが抵抗性を有さない抗HCV薬または合剤を選択することが可能になるだろう。
【0047】
上記HCV1b特異的なアッセイの主要な態様はまた、図1および実施例の項において示される。cDNA合成プライマーおよび増幅プライマー、ならびに一連の提案されたシークエンシング用プライマーのヌクレオチド配列は、表1において与えられる。
【0048】
【表1】



【0049】
本発明の他の特定の実施態様は、他の遺伝子型およびサブタイプのHCV(特に、HCV1a、HCV2およびHCV3)に感染した患者から得られた試料とともに使用するための同様のアッセイに関する。当業者ならば、プロトタイプウイルスのゲノム配列への参照により、本発明の方法の適切なcDNA合成プライマーおよび増幅プライマー、ならびにシークエンシング用プライマーを設計するための方法が分かるだろう。
【0050】
試料は、HCVに感染した患者、またはHIVおよびHCVに同時感染した患者の血液試料からなっていてもよく(しかしこれらに限定されない)、この試料は、抗HCV薬または合剤による治療の過程の前、治療の過程中、または治療の過程の後における患者から採取されてもよい。本発明のアッセイは、他の用途のために使用されてもよい。例えば、患者からの試料に存在するHCV変異体は、感染性HCVベクターにクローン化され、哺乳類細胞に形質導入されてもよい(Katoら(2007)J Virol 81、4405−4411)。HCV変異配列を含む感染性ウイルスは、その後、哺乳類の培養物を感染させるのに使用できる可能性があり、抗HCV薬もしくは合剤の存在または不存在下での1以上のサイクルの感染後に得られる試料は、本発明のアッセイによって分析できる可能性がある。
【0051】
試料からのHCV RNA抽出は、市販のキット(例えば、QIAamp(登録商標)Viral RNA mini kit、QIAamp(登録商標)Utralsens(商標)ウイルスキット、トリゾール試薬(インビトロジェン)、またはVivaspin濃縮)の使用を含む様々な方法によって行われてもよい。
【0052】
当該アッセイの一部である逆転写反応およびPCR反応は、実施例および本願明細書において引用される参考文献に記載されたような標準的な反応混合物および条件を使用して行われる。典型的に、試料から抽出される核酸は、工程4のPCR反応における20−40の増幅サイクル、および工程5のネステッドPCR反応における2−10サイクルにかけられる。
【0053】
本願明細書において引用された全ての出版物および特許は、参照によってその全体が組み込まれるものとみなされるものとする。
【0054】
本発明は、下記実施例によってさらに詳述される。当該実施例は、当業者に対する説明の目的で与えられ、請求項に記載される本発明の範囲が限定されることは意図されていない。従って、本発明は、与えられた実施例に限定されるように解釈されるべきではなく、本願明細書において与えられる教示の結果として明らかになるいずれかの変異性、および全ての変異性を含むように解釈されるべきである。
【実施例】
【0055】
(実施例1:本発明のアッセイにおいて使用される詳細な方法)
【0056】
試料:未治療の患者からの血漿試料を、2つの異なる病院から得た。ウイルス量は、HCV Viral Load COBAS AMPLICOR system(ロシュ・モレキュラー・ダイアグノスティックス(スイス、バーゼル)製)を使用して測定した。
【0057】
試料を、InnoLipa test(Innogenetics、ベルギー、ズウェイナールデ)によって特定された1b型のHCVの存在に基づいて選択した。遺伝子型を確認するため、1セットの外側のプライマー対によるcDNA合成およびPCR増幅後、当該プライマーのうちの1つによってシークエンシングを行った。得られた配列について、Oxford Automated HCV Subtyping toolを使用して、遺伝子型およびサブタイプを同定した(De Oliveiraら(2005)Bioinformatics 21、3797−3800)。
【0058】
プライマーの選択および合成:逆転写、PCR増幅およびシークエンシングのためのプライマーを、OLIGO software(Medprobe、ノルウェー、オスロ)を使用して開発した。アラインメントされたほぼ全長のゲノム配列を、Los Alamos HCV database(http://hcv.lanl.gov/content/sequence/HCV/ToolsOutline.html)からダウンロードした。HCV1bのプライマー配列は、表1において与えられる。当該プライマーは、Applera Europe(ベルギー、レニク)で合成した。
【0059】
RNA抽出:RNA抽出は、QIAamp Viral RNA mini kit(キアゲン(オランダ、ルースデン、ヴェストブルグ)製)を使用し、製造者の手順書に従って行った。
【0060】
cDNA合成およびPCR増幅:RNAを、3つの別々の反応(3つの外側のアンチセンスプライマーによって開始した)において、ロシュ(ロシュ・ダイアグノスティックス(ドイツ、マンハイム))製のTranscriptor RTを用いて逆転写した。第1に、2.5μMの外側のアンチセンスプライマーおよび10μlのRNAを、マイクロチューブ中で、5分間、65℃で変性させ、即座に冷却した(snap−cooled)。次に、逆転写混合物を20μlの最終量にした。当該混合物は、下記のさらなる成分を含む:1×Transcriptor RT−buffer、1mM dNTP、20UのProtector RNase Inhibitor、10UのTranscriptor Reverse Transcriptase、およびMilliQ水。cDNA合成を50℃で90分間行い、次いで、反応物を4℃まで冷却した。PCR増幅を、Expand Long Template PCR System(ロシュ・ダイアグノスティックス(ドイツ、マンハイム)製)を使用して、2工程で行った。第1のセットのPCRを、下記の条件下で行った:50μlの最終量中、1×Expand Long Template Buffer 1、0.350mM dNTP、0.3μM 外側のセンスプライマー、0.3μM 外側のアンチセンスプライマー、3.75U Expand Long Template DNAポリメラーゼ、5μl 鋳型cDNA、およびMilliQ水。変性工程(94℃、2分間)の後、10秒、94℃、30秒、57℃、および4分間、68℃を10サイクル行った。この増幅の後、20秒/サイクルの時間増分(time increment)で、15秒、94℃、30秒、57℃、および4分間、68℃で25サイクル行い、7分間、68℃で最終的な伸長工程を行った。次いで、当該反応物を4℃まで冷却した。第2のセットのPCRを下記の条件下で行った:50μlの最終量中、1×Expand Long Template Buffer 1、0.350mM dNTP、0.3μM 内側のセンスプライマー、0.3μM 内側のアンチセンスプライマー、3.75U Expand Long Template DNAポリメラーゼ、2μlの第1のセットのPCRからの増幅産物、およびMilliQ水。サイクル条件は、3サイクルのみを行ったこと以外は、第1のセットのPCRのものと同一であった。
【0061】
ゲル電気泳動:PCR産物をアガロースゲル電気泳動によって分析した。7.5μlのPCR産物を1.5% アガロースゲル上にロードし、電気泳動を100Vで行った。DNA断片を視覚化するため、ゲルを、10分間エチジウムブロマイドで染色した。
【0062】
PCR産物の精製:Qiaquick PCR purification kit(キアゲン(オランダ、ライデン、ヴェストブルグ)製)を使用し、製造者の手順書に従って、PCR産物を精製した。精製されたPCR産物の濃度を分光測定で測定した。シークエンシング反応には、約2ng/100bpのDNAが必要だった。
【0063】
ヌクレオチドのシークエンシング:シークエンシング反応は、Fasteris SA(スイス、ジュネーブ)で、BigDye Terminator v3.1 Cycle Sequencing kit(アプライドバイオシステムズ社、米国、フォスターシティ)を使用して行った。コンティグを集め、データをSeqscape(アプライドバイオシステムズ社、米国、フォスターシティ)で分析した。
【0064】
(実施例2:本発明のアッセイの検証:PCRの成功率、ならびに本発明のアッセイの再現性および感度)
【0065】
HCV1b含有試料から得たほぼ全ウイルスゲノムを示す3つの重複PCR産物の、視覚化でき、かつシークエンスできる量を得る成功率は、Inno−LiPA HCV IによってHCV1bとして最初に遺伝子型を同定された、感染した患者から得た60の試料を使用して測定した。遺伝子型/サブタイプは、多義的な結果を有する試料についてのシークエンシングおよび系統発生解析によって再度分析した。
【0066】
当該アッセイの再現性を、確認された遺伝子型 1bの試料のトリプリケートの試験によって、部分的なゲノムPCRのそれぞれについて評価した。3回繰り返した試験のうち少なくとも2つは、血漿試料から開始して行った。例外的に、3番目の繰り返し試験は、不十分な血漿量の試料についての抽出されたRNAから開始した。
【0067】
当該アッセイの感度を10の試料で検証した。
【0068】
当該アッセイの特異性は、8試料という一部から生じたPCR産物の部分的なシークエンシングによって評価した。全ての配列は、HCV1bまたはHCV1aのいずれかであった。これらの分析の結果を下記表2にまとめた。感度測定の結果の例は図2に示す。
【0069】
表2に示されるデータは、PCRの成功率が、サブタイプの補正後に100%に近づいたことを示す。当該アッセイは、HCVの遺伝子型1に特異的であった。良好な再現性が認められた。感度は、5’UTR−NS2領域およびNS2−NS5A領域について優れており、NS4B−NS5B領域については許容できるものだった。
【0070】
【表2】

【0071】
(実施例3:本発明のアッセイによる、未治療のHCVに感染した患者からの試料の分析)
【0072】
未治療のHCVに感染した患者の一定分量の血漿試料を本発明のアッセイ(請求項5のアッセイ)によって分析した。シークエンシング後に得た核酸配列をアミノ酸に自動的に翻訳し、(EBIsiteの)clustalw2.0 programを使用して、HCV1b コンセンサス配列、HCV con1(ジェンバンク受入番号 AF011751)と比較/アラインメントした。配列 5306および5415は、2人の未治療の感染した患者に由来する。当該2人の患者に存在するHCV由来の翻訳されたアミノ酸配列を、図3aおよび図3b中のcon1 配列と比較する。コンセンサス配列との配列の同一性は、感染した患者由来の配列中のダッシュによって示す。各ウイルスタンパク質についてのコード配列の起点を示す(CORE、E1、E2、P7、NS2,NS3、NS4A、NS4B、NS5A、NS5B)。
【0073】
未処置の感染した患者に存在するHCV由来のアミノ酸配列は、IFN/リバビリン治療に対する抵抗性に関連するコアタンパク質中の変異 L91M、および非ヌクレオシド阻害剤またはベンゾイミダゾール化合物に対する抵抗性に関連するNS5B中の変異 V499Aの存在を明らかにする。関連する、公表された情報については表3を参照。
【0074】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中に存在するHCVのゲノムにおける変異を同定するためのアッセイであって、前記アッセイは、以下の連続的な工程を含む:
a)前記HCVを含む試料からウイルスRNAを抽出する工程、
b)前記HCVの遺伝子型およびサブタイプを決定する工程、
c)3つの別々の逆転写反応において前記HCVのゲノムの部分的なcDNAを合成する工程であって、第1の逆転写反応は、同一の遺伝子型およびサブタイプのプロトタイプHCVゲノムの3’UTRにおける配列に特異的にハイブリダイズするように選択される第1の外側のアンチセンスプライマーから開始し、第2の逆転写反応は、前記プロトタイプHCVのゲノムのNS4B−NS5A領域における配列に特異的にハイブリダイズするように選択される第2の外側のアンチセンスプライマーから開始し、第3の逆転写反応は、前記プロトタイプHCVのゲノムのNS2領域における配列に特異的にハイブリダイズするように選択される第3の外側のアンチセンスプライマーから開始する工程、
d)3つの別々のPCR反応において工程c)の部分的なcDNAを第二鎖合成および増幅する工程であって、第1のPCR反応は、一定分量の第1の逆転写反応物、前記第1の外側のアンチセンスプライマーおよび前記プロトタイプHCVのゲノムのNS4B−NS5A領域における相補的配列に特異的にハイブリダイズするように選択される第1の外側のセンスプライマーを含み、第2のPCR反応は、一定分量の第2の逆転写反応物、前記第2の外側のアンチセンスプライマーおよび前記プロトタイプHCVのゲノムのNS2領域における相補的配列に特異的にハイブリダイズするように選択される第2の外側のセンスプライマーを含み、第3のPCR反応は、一定分量の第3の逆転写反応物、前記第3の外側のアンチセンスプライマーおよび前記プロトタイプHCVのゲノムの5’UTR領域における相補的配列に特異的にハイブリダイズするように選択される第3の外側のセンスプライマーを含み、前記第2の外側のアンチセンスプライマーは、前記第1の外側のセンスプライマーと相補的である領域に対して3’に位置する前記プロトタイプHCVのゲノムのNS4B−NS5A領域における配列にハイブリダイズし、前記第3の外側のアンチセンスプライマーは、前記第2の外側のセンスプライマーと相補的である領域に対して3’に位置する前記プロトタイプHCVのゲノムのNS2領域における配列にハイブリダイズする工程、
e)3つの別々のネステッドPCR反応において工程d)の部分的なcDNAをさらに増幅する工程であって、第1のネステッドPCR反応は、一定分量の第1のPCR反応物、ならびに第1の内側のアンチセンスプライマーおよびセンスプライマーを含み、第2のネステッドPCR反応は、一定分量の第2のPCR反応物ならびに第2の内側のアンチセンスプライマーおよびセンスプライマーを含み、第3のネステッドPCR反応は、一定分量の第3のPCR反応物ならびに第3の内側のアンチセンスプライマーおよびセンスプライマーを含み、前記内側のプライマーは、前記外側のプライマーと重ならず、前記第2の内側のアンチセンスプライマーは、第1の内側のセンスプライマーと相補的である領域に対して3’に位置する前記プロトタイプHCVのゲノムのNS4B−NS5A領域における配列とハイブリダイズし、前記第3の内側のアンチセンスプライマーは、前記第2の内側のセンスプライマーと相補的である領域に対して3’に位置する前記プロトタイプHCVのゲノムのNS2領域における配列とハイブリダイズする工程、
f)工程e)のさらに増幅されたcDNAの配列を解析する工程、ならびに
g)工程f)から得られる配列と前記プロトタイプHCVの配列とを比較する工程。
【請求項2】
抗HCV薬に対して抵抗性を有するHCV変異体のゲノムにおける単一変異および伴性変異を同定し、かつ特徴付けることができるアッセイであって、前記アッセイは、下記の連続的な工程を含む:
a)治療の不成功によって示された、患者が処置された抗HCV薬または合剤に対する抵抗性を有するHCVを有する患者から採取された試料からウイルスRNAを抽出する工程、
b)前記HCVの遺伝子型およびサブタイプを決定する工程、
c)3つの別々の逆転写反応において前記HCVのゲノムの部分的なcDNAを合成する工程であって、第1の逆転写反応は、同一の遺伝子型およびサブタイプのプロトタイプHCVゲノムの3’UTRにおける配列に特異的にハイブリダイズするように選択される第1の外側のアンチセンスプライマーから開始し、第2の逆転写反応は、前記プロトタイプHCVのゲノムのNS4B−NS5A領域における配列に特異的にハイブリダイズするように選択される第2の外側のアンチセンスプライマーから開始し、第3の逆転写反応は、前記プロトタイプHCVのゲノムのNS2領域における配列に特異的にハイブリダイズするように選択される第3の外側のアンチセンスプライマーから開始する工程、
d)3つの別々のPCR反応において工程c)の部分的なcDNAを第二鎖合成および増幅する工程であって、第1のPCR反応は、一定分量の第1の逆転写反応物、前記第1の外側のアンチセンスプライマーおよび前記プロトタイプHCVのゲノムのNS4B−NS5A領域における相補的配列に特異的にハイブリダイズするように選択される第1の外側のセンスプライマーを含み、第2のPCR反応は、一定分量の第2の逆転写反応物、前記第2の外側のアンチセンスプライマーおよび前記プロトタイプHCVのゲノムのNS2領域における相補的配列に特異的にハイブリダイズするように選択される第2の外側のセンスプライマーを含み、第3のPCR反応は、一定分量の第3の逆転写反応物、前記第3の外側のアンチセンスプライマーおよび前記プロトタイプHCVのゲノムの5’UTR領域における相補的配列に特異的にハイブリダイズするように選択される第3の外側のセンスプライマーを含み、前記第2の外側のアンチセンスプライマーは、前記第1の外側のセンスプライマーと相補的である領域に対して3’に位置する前記プロトタイプHCVのゲノムのNS4B−NS5A領域における配列にハイブリダイズし、前記第3の外側のアンチセンスプライマーは、前記第2の外側のセンスプライマーと相補的である領域に対して3’に位置する前記プロトタイプHCVのゲノムのNS2領域において配列にハイブリダイズする工程、
e)3つの別々のネステッドPCR反応において工程d)の部分的なcDNAをさらに増幅する工程であって、第1のネステッドPCR反応は、一定分量の第1のPCR反応物、ならびに第1の内側のアンチセンスプライマーおよびセンスプライマーを含み、第2のネステッドPCR反応は、一定分量の第2のPCR反応物ならびに第2の内側のアンチセンスプライマーおよびセンスプライマーを含み、第3のネステッドPCR反応は、一定分量の第3のPCR反応物ならびに第3の内側のアンチセンスプライマーおよびセンスプライマーを含み、前記内側のプライマーは、前記外側のプライマーと重ならず、前記第2の内側のアンチセンスプライマーは、前記第1の内側のセンスプライマーと相補的である領域に対して3’に位置する前記プロトタイプHCVのゲノムのNS4B−NS5A領域における配列とハイブリダイズし、前記第3の内側のアンチセンスプライマーは、前記第2の内側のセンスプライマーと相補的である領域に対して3’に位置する前記プロトタイプHCVのゲノムのNS2領域における配列とハイブリダイズする工程、
f)工程e)のさらに増幅されたcDNAの配列を解析する工程、
g)工程f)から得られる配列と前記プロトタイプHCVの配列とを比較し、変異を同定する工程、ならびに
h)抗HCV薬の抵抗性に関連するHCV変異のデータバンクに、同定された変異を登録する工程。
【請求項3】
工程h)は、同定された変異についての抗HCV薬の抵抗性に関連するHCV変異のデータバンクの調査、および前記HCVが抵抗性を有すると予期されない抗HCV薬または合剤の患者の引き続く治療のための選択からなる請求項2記載のアッセイ。
【請求項4】
前記試料は、HCVに感染している患者のいずれかの薬理学的治療の開始前に、前記患者から採取される請求項3記載のアッセイ。
【請求項5】
試料中に存在するHCVのゲノムにおける変異を同定するためのアッセイであって、前記アッセイは、下記の連続的な工程を含む:
a)前記HCVを含む試料からウイルスRNAを抽出する工程、
b)前記HCVの遺伝子型およびサブタイプを決定する工程、
c)ただし、工程b)が、前記HCVは1b型のものであることを示した場合、3つの別々の逆転写反応において前記HCVのゲノムの部分的なcDNAを合成する工程であって、第1の逆転写反応はプライマー ポリ−Aから開始し、第2の逆転写反応はプライマー HCV1bOR6312から開始し、第3の逆転写反応はプライマー HCV1bOR3306から開始する工程、
d)3つの別々のPCR反応において工程c)の部分的なcDNAを第二鎖合成および増幅する工程であって、第1のPCR反応は、一定分量の第1の逆転写反応物およびプライマー対 ポリ−A/HCV1bOF6074を含み、第2のPCR反応は、一定分量の第2の逆転写反応物およびプライマー対 HCV1bOR6312/HCV1bOF1977を含み、第3のPCR反応は、一定分量の第3の逆転写反応物およびプライマー対 HCV1bOR3306/HCVOF129を含む工程、
e)3つの別々のネステッドPCR反応において工程d)の部分的なcDNAをさらに増幅する工程であって、第1のネステッドPCR反応は、一定分量の第1のPCR反応物およびプライマー対 HCV1bIR9339/HCV1bIF6126を含み、第2のネステッドPCR反応は、一定分量の第2のPCR反応物およびプライマー対 HCV1bIR6282/HCV1bIF2523を含み、第3のネステッドPCR反応は、一定分量の第3のPCR反応物およびプライマー対 HCV1bIR2770/HCVIF278を含む工程、
f)工程e)のさらに増幅されたcDNAの配列を解析する工程、および
g)工程f)から得られる配列とプロトタイプHCV1bの配列とを比較する工程。
【請求項6】
抗HCV薬に対して抵抗性を有するHCV変異体のゲノムにおける単一変異および伴性変異を同定し、かつ特徴付けることができるアッセイであって、前記アッセイは、下記の連続的な工程を含む:
a)患者が処置された抗HCV薬または合剤に対して抵抗性を有するHCVを有する患者から採取された試料からウイルスRNAを抽出する工程、
b)前記HCVの遺伝子型およびサブタイプを決定する工程、
c)ただし、工程b)が、前記HCVは1b型のものであることを示した場合、3つの別々の逆転写反応において前記HCVのゲノムの部分的なcDNAを合成する工程であって、第1の逆転写反応はプライマー ポリ−Aから開始し、第2の逆転写反応はプライマー HCV1bOR6312から開始し、第3の逆転写反応はプライマー HCV1bOR3306から開始する工程、
d)3つの別々のPCR反応において工程c)の部分的なcDNAを第二鎖合成および増幅する工程であって、第1のPCR反応は、一定分量の第1の逆転写反応物およびプライマー対 ポリ−A/HCV1bOF6074を含み、第2のPCR反応は、一定分量の第2の逆転写反応物およびプライマー対 HCV1bOR6312/HCV1bOF1977を含み、第3のPCR反応は、一定分量の第3の逆転写反応物およびプライマー対 HCV1bOR3306/HCVOF129を含む工程、
e)3つの別々のネステッドPCR反応において工程d)の部分的なcDNAをさらに増幅する工程であって、第1のネステッドPCR反応は、一定分量の第1のPCR反応物およびプライマー対 HCV1bIR9339/HCV1bIF6126を含み、第2のネステッドPCR反応は、一定分量の第2のPCR反応物およびプライマー対 HCV1bIR6282/HCV1bIF2523を含み、第3のネステッドPCR反応は、一定分量の第3のPCR反応物およびプライマー対 HCV1bIR2770/HCVIF278を含む工程、
f)工程e)のさらに増幅されたcDNAの配列を解析する工程、
g)工程f)から得られる配列とプロトタイプHCV1bの配列とを比較し、変異を同定する工程、および
h)抗HCV薬の抵抗性に関連するHCV変異のデータバンクに、同定された変異を登録する工程。
【請求項7】
工程h)は、同定された変異についての抗HCV薬の抵抗性に関連するHCV変異のデータバンクの調査、および前記HCVが抵抗性を有すると予期されない抗HCV薬または合剤の患者の引き続く治療のための選択からなる請求項6記載のアッセイ。
【請求項8】
前記試料は、HCVに感染している患者のいずれかの薬理学的治療の開始前に、前記患者から採取される請求項7記載のアッセイ。
【請求項9】
ポリ−AおよびHCV1bOF6074からなるプライマー対。
【請求項10】
HCV1bOR6312およびHCV1bOF1977からなるプライマー対。
【請求項11】
HCV1bOR3306およびHCVOF129からなるプライマー対。
【請求項12】
HCV1bIR9339およびHCV1bIF6126からなるプライマー対。
【請求項13】
HCV1bIR6282およびHCV1bIF2523からなるプライマー対。
【請求項14】
HCV1bIR2770およびHCVIF278からなるプライマー対。
【請求項15】
請求項9〜14いずれか1項に記載のプライマー対を含む、HCVゲノム中の変異を検出するためのキット。
【請求項16】
請求項9〜14のうちのプライマー対を含む、HCVゲノム中の変異を検出するためのキット。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【公表番号】特表2011−501957(P2011−501957A)
【公表日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−531604(P2010−531604)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【国際出願番号】PCT/IB2008/002924
【国際公開番号】WO2009/056966
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(510121617)デバイオファーム エスエイ (2)
【出願人】(510121628)カトリーク ユニヴェルシテ ルーヴェン (1)
【Fターム(参考)】