HIVTATタンパク質およびEnvタンパク質の共有結合的に連結された複合体
HIVのEnvおよびTatタンパク質の複合体は、TatまたはEnv単独に比較して免疫原として有利であるが、それらは、ワクチンアジュバントと組み合わせた場合、解離する。解離を回避するために、EnvおよびTatの複合体を共有結合的な架橋の使用によって安定化させる。架橋の程度は、複合体の結合特性に対して重要であり、そしてCDに対してEnvが特異的に結合する能力、および抗Tatモノクローナル抗体に対してTatが特異的に結合する能力の消失を回避するように制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に引用された全ての書類は、その全体が参考として本明細書に援用される。
【0002】
(関連出願)
本出願は、2006年3月28日に出願された米国仮出願第60/786,947号(この出願は、その全体が参考として本明細書に援用される)の利益を主張する。
【0003】
本発明は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、そして詳細には免疫原性タンパク質複合体の分野にある。
【背景技術】
【0004】
(発明の背景)
HIVゲノム内でコードされる種々のタンパク質としては、エンベロープ糖タンパク質(Env)およびトランス活性化転写因子(Tat)が挙げられる。
【0005】
HIV−1およびHIV−2の両方で、Envタンパク質は、長い前駆体タンパク質として最初に発現され、これがその後に切断されて、外部膜糖タンパク質および膜貫通糖タンパク質が得られる。簡便のために、これらのタンパク質はその後に、標準的なHIV−1の命名法によって呼ばれ、すなわち、この前駆体は、「gp160」であり、この膜糖タンパク質は、「gp120」であり、そしてこの膜貫通糖タンパク質は「gp41」である。これらの名称は、HIV−1糖タンパク質の適切な分子量に基づく。
【0006】
このgp120タンパク質は、HIVビリオンの表面にあり、そして宿主細胞CD4レセプターと相互作用し得る。この相互作用は、gp120タンパク質において構造の遷移を誘発し、これがその「V3」ループの露出をもたらす。次いで、この構造変化されたgp120タンパク質は、ウイルス進入機構の一部としてさらなる宿主レセプター、例えば、CCR5および/またはCXCR4と相互作用し得る。その表面露出のせいで、gp120は、ここ20年にわたってHIVワクチン研究の主な焦点であった。自然な感染の間に生じる抗Env抗体が、一次HIV単離体を中和することが見出されているが、同じことはEnvに基づくサブユニットワクチンによって惹起される抗体については成り立たなかった。従って、Envに基づくワクチンの改良が必要である。
【0007】
Tatタンパク質は、HIV遺伝子発現を調節するのに重要である。これは転写因子であるが、これはまた、感染細胞によって放出されることが見出されており、ワクチン抗原として提唱されている。
【0008】
引用文献1(特許文献1)は、複合体を形成するように相互作用し得るEnvおよびTatタンパク質を開示している。この相互作用は、Envタンパク質におけるV3ループの存在を必要とするとされる。Tatタンパク質はCCR5の構造的ループを模倣すると提唱される。複合体におけるEnvおよびTatタンパク質は、それらの自然な親和性に起因して会合され得るが、ジスルフィド結合を形成することによって、またはBS3架橋剤(ビス(スルホスクシンイミジル)スベリン酸ホモ二官能性架橋剤)のようなタンパク質架橋技術を用いることによって強化され得る。EnvおよびTatポリペプチドの組み合わせに基づくワクチンも引用文献2(非特許文献1)に開示される。
【特許文献1】国際公開第05/090391号パンフレット
【非特許文献1】Ensoliら、Microbes Infect(2005)7:1392−9
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
HIVのEnvおよびTatタンパク質のさらなる複合体および改良された複合体を得ることがこの目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
EnvおよびTatタンパク質の複合体は、TatまたはEnvの単独と比較して免疫原として有利であるが、それらは、ワクチンアジュバントと組み合わせた場合に解離され得る。従って、EnvおよびTatの複合体は、共有結合的な架橋の使用によって安定化され得るが、架橋の程度がその複合体の結合特性に対して重要であることが見出されている。詳細には、Envタンパク質によるCD4結合の消失、およびTatタンパク質によるエピトープの喪失を生じるのには多すぎる架橋が見出されている。
【0011】
従って、本発明は、HIVのEnvポリペプチドおよびHIVのTatポリペプチドを含む複合体であって、(i)この(i)EnvおよびTatポリペプチドが共有結合され、かつ(ii)この複合体はCD4に特異的に結合し得る、複合体を提供する。
【0012】
本発明はまた、HIVのEnvポリペプチドおよびHIVのTatポリペプチドを含む複合体を調製するためのプロセスであって、EnvおよびTatポリペプチドが、お互いに対して共有結合するようになり、CD4に対してEnvタンパク質が特異的に結合する能力を失うことのない反応条件下で相互作用することを可能にする工程を包含するプロセスを提供する。
【0013】
本発明はまた、HIVのEnvポリペプチドおよびHIVのTatポリペプチドを含む複合体であって、(i)このEnvおよびTatポリペプチドが共有結合され、かつ(ii)この複合体がHIVのTatタンパク質に特異的に結合するモノクローナル抗体に特異的に結合し得る、複合体を提供する。
【0014】
本発明はまた、HIVのEnvポリペプチドおよびHIVのTatポリペプチドを含む複合体を調製するためのプロセスであって、EnvおよびTatポリペプチドが、お互いに対して共有結合するようになる反応条件下で相互作用することを可能にし、抗Tatモノクローナル抗体に対してTatタンパク質が特異的に結合する能力を失うことのない工程を包含するプロセスを提供する。
【0015】
本発明はまた、HIVのEnvポリペプチドおよびHIVのTatポリペプチドを含む複合体であって、(i)このEnvおよびTatポリペプチドが共有結合され、かつ(ii)この複合体がCD4に特異的に結合し得、そして(iii)その複合体が、HIVのTatポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体に特異的に結合し得る、複合体を提供する。
【0016】
本発明はまた、HIVのEnvポリペプチドおよびHIVのTatポリペプチドを含む複合体を調製するためのプロセスであって、EnvおよびTatポリペプチドが、お互いに対して共有結合するようになり、CDに対してEnvポリペプチドが特異的に結合する能力を失うことなく、かつ抗Tatモノクローナル抗体に対してTatポリペプチドが特異的に結合する能力を失うことのない反応条件下で相互作用することを可能にする工程を包含するプロセスを提供する。
【0017】
(Env/Tat架橋)
EnvおよびTatタンパク質は、本発明の複合体中で一緒に共有結合する。タンパク質を共有結合するための種々の方法は、当該分野で公知であり、例えば、引用文献3および4を参照のこと。例えば、共有結合は、ホモ二官能性(homobifunctional)の架橋剤、ヘテロ二官能性の架橋剤または長さゼロの架橋剤の使用を包含し得る。これは、タンパク質中のスルフヒドリル基に対する試薬、タンパク質中のアミノ基に対する試薬、タンパク質中のカルボキシル基に対する試薬、チロシン選択性試薬、アルギニン特異的試薬、ヒスチジン特異的試薬、メチオニンアルキル化試薬、トリプトファン特異的試薬、セリン修飾試薬などを包含し得る。
【0018】
本発明での使用のための架橋試薬の好ましい基としては、アルデヒドが挙げられ、そして詳細には、ホルムアルデヒドおよびジアルデヒドが挙げられる。適切なジアルデヒドとしては、グリオキサール、マロンジアルデヒド、スクシンアルデヒド(succinialdehyde)、アジポアルデヒド(adipaldehyde)、α−ヒドロキシアジポアルデヒド(α−adipaldehyde)、グルタルアルデヒドおよびフタルアルデヒドが挙げられる。グルタルアルデヒドおよびその誘導体が特に好ましく、これには2−メトキシ−2,4−ジメチルグルタルアルデヒド、3−メトキシ−2,4−ジメチルグルタルアルデヒドおよび3−メチルグルタルアルデヒドが挙げられ、ピリドキサールリン酸も用いられ得る。他のアミノ基指向性架橋剤としては、ビスイミドエステル、ビス−スクシンイミジル誘導体(例えば、ビス(スルホスクシンイミジル)スベリン酸、すなわち「BS3」)、二官能性アリールハライド、二官能性アシル化剤(ジ−イソシアネート、ジ−イソチオシアネート、二官能性スルホニルハライド、ビス−ニトロフェニルエステルおよび二官能性のアシルアジド)、ジケトン、p−ベンゾキノン、2−イミノチオラン、エリトリトールビスカルボネート、ムコ臭素酸、ムコクロル酸、エチルクロロギ酸エステルおよびマルチジアゾニウム(multidiazonium)化合物が挙げられる。
【0019】
これらの試薬を用いてタンパク質を架橋するための方法は、当該分野で公知である。一般には、本発明は、Envポリペプチド、Tatポリペプチドおよび架橋試薬を、架橋反応が進行することを可能にする条件下で混合する工程を包含する。しかし、ヘテロ二官能性試薬を用いる工程のようないくつかの2工程手順では、2つのポリペプチドのうちの1つを、最初に架橋試薬と反応させて、活性化ポリペプチドを形成し、次いで、この活性化ポリペプチドを第二のポリペプチドと反応させる。
【0020】
光反応性の基を有するヘテロ二官能性リンカーも有用である。リンカーが1つの熱反応性(thermoreactive)基および1つの光反応性(photoreactive)基を有するならば、第一の工程が、熱反応性基を介して結合し得、次いでこの複合体を形成するための結合が、例えば、UV光の使用によって開始され得る。別の方法では、光反応性基が最初に用いられてもよい。
【0021】
上記で言及されるとおり、この架橋反応は、EnvおよびTatタンパク質の臨界結合活性を排除するほど大きくない程度まで行われる。従って、このEnvおよびTatタンパク質の濃度、架橋試薬の濃度、pH、反応温度および反応時間は、所望の架橋の程度を得るように制御されてもよい。Env、Tatおよび架橋試薬の特定の組み合わせを試験するならば、最初の一連の反応を行って、適切な反応条件を評価してもよい。
【0022】
(複合体)
本発明の複合体としては、共有結合するEnvおよびTatタンパク質が挙げられる。好ましい複合体は、本質的に1:1のモル比のEnvおよびTatを有する。従って、Envが三量体の形態である場合、好ましい複合体は3つのTat単量体を含む。
【0023】
複合体中のEnvおよびTatポリペプチドは好ましくは、HIVが、例えば両方ともHIV−1由来または両方ともHIV−2由来である場合、同じタイプである。同じHIVタイプが用いられる場合、両方ともM群、N群またはO群由来である、例えば、HIV−1内の同じ群由来のEnvおよびTatポリペプチドに連結することも有用である。M群内では、同じサブタイプ(またはクレード)由来、例えば、サブタイプA、B、C、D、F、G、H、JまたはK由来のEnvおよびTatポリペプチドを連結することが有用である。CRF(循環組み換え型(circulating recombinant form))サブタイプ、例えば、A/BまたはA/EのCRF由来のEnvまたはTatを用いることも可能である。サブタイプがサブ−サブタイプを含むならば、EnvおよびTatポリペプチドは、同じサブタイプ由来であってもよい。種々の群由来のEnvおよびTatを用いるなら、しかし、サブタイプおよび/またはサブ−サブタイプは除外されない、HIV−1命名法は、引用文献5にさらに詳細に考察される。
【0024】
サブタイプBまたはC由来のEnvおよびTatの使用が好ましい。単一のサブタイプ(または適用可能、サブ−サブタイプ)内では、同じ株由来または異なる株由来のEnvおよびTatを用いることが可能である。例えば、EnvおよびTatポリペプチドは、両方ともSF152由来であってもよいし、または本発明は、1つの株(例えば、SF162)由来のEnvおよび別の株(例えば、BH10)由来のTatを用いてもよい。
【0025】
本発明のEnv/Tat複合体は、(a)CD4および/または(b)モノクローナル抗体(HIVのTatポリペプチドに特異的に結合する)に特異的に結合し得る。従って、この複合体は、複合体でないEnvポリペプチドのCD4結合活性、および/または複合体でないTatポリペプチドのmAb結合活性を保持する。結合活性(a)および(b)の両方との複合体が特に好ましい。上で注記されるとおり、これらの2つの活性を保持するには、EnvとTatの間に適切な程度の共有結合的な架橋を要する。この程度の架橋は、かなり広範な範囲内で変化し得、従って絶対的な正確さで制御される必要はないが、架橋が少なすぎれば、不安定な複合体がもたらされ、架橋が多すぎれば、結合活性は失われる。
【0026】
複合体が特異的にCD4に結合する場合、この結合活性は、例えば、引用文献6に記載されるように、公知のアッセイを用いて評価され得る。そのアッセイは、天然のCD4を用いる必要はないが、CD4の外部ドメインに基づいて精製された可溶型のCD4を用いることがさらに代表的である(例えば、引用文献6の実施例5を参照のこと)。CD4はまた、このアッセイを促進するために標識され得る。CD4は好ましくはヒトCD4である。今まで少なくとも250個のSNPがCD4について記載されており、そして任意のこれらのポリペプチド、例えば、REFSEQ CD4(GI:10835167)が用いられてもよい。複合体でないEnvは、特にCD4に結合し、そしてこの特異的な結合活性は、Env/Tat複合体に保持され得る。結合活性は、除去されないが、実際の結合親和性は変化してもよい。
【0027】
この複合体が抗Tatモノクローナル抗体に特異的に結合する場合、好ましいモノクローナル抗体は8D1.8であり、これは、AIDS Research and Reference Reagent Program,Division of AIDS,NIAID,NIH[7]から入手可能である。Tat結合アッセイにおけるこの抗体の使用は、例えば、引用文献8〜10において以前に開示されている。
【0028】
架橋の間、Env/Tat複合体のより高次のオリゴマーが観察されている。本発明は、これらのオリゴマーを用いてもよく、これらのオリゴマーを形成していないEnv/Tat複合体を用いてもよく、または両方の混合物を用いてもよい。オリゴマーが望ましくないならば、それらの形成は、適切な架橋条件を用いて回避されてもよく、またはそれらは、適切な分離技術、例えば、サイズに基づく技術などを用いて除かれてもよい。
【0029】
(Envポリペプチド)
本発明の複合体は、HIVのEnvポリペプチドを含み、そして種々の形態のEnvポリペプチドがHIV−1またはHIV−2から用いられ得る。例えば、この複合体は、全長gp160Envポリペプチド、gp120Envポリペプチド、gp160またはgp120ポリペプチド(1つ以上の欠失を有する)、gp120またはgp160ポリペプチドを含む融合タンパク質などを含んでもよい。しかし、全長のEnv前駆体であるよりも、本発明は代表的には短くなったタンパク質を用いる。
【0030】
REFSEQデータベース由来の全長HIV−1 Env前駆体のアミノ酸配列(GI:9629363)は、下に示される856マー(本明細書においては配列番号1)である:
【0031】
【化1】
この野性型HIV−1前駆体タンパク質を切断して、表面糖タンパク質gp120(例えば、配列番号1のアミノ酸29〜511;本明細書においては配列番号2)および膜貫通ドメインgp41(例えば、配列番号1のアミノ酸512〜856;本明細書では配列番号3)を得る:
【0032】
【化2】
gp120領域内の超可変領域は、以下のように配置され、配列番号1:V1=131〜157;V2=157〜196;V3=296〜331;V4=385〜418;およびV5=461〜471に従って番号付けされる。従って、gp120の全体的なC1−V1−V2−C2−V3−C3−V4−C4−V5−C5の配列内で、このサブドメインは以下のとおりである(配列番号2に従って番号付けされる):1〜102;103〜129;129〜168;169〜267;268〜303;304〜356;357〜390;391〜432;433〜443;および444〜483。CD4結合に重要と特定されている残基としては(配列番号1に従って番号付けされる)Asp−368、Glu−370、Trp−427、Val−430およびPro−438が挙げられ、そして免疫優性(イムノドミナント)領域は、残基588〜607である。これらの特徴は、適切な配列アラインメントを行うことによって他のHIV−1 Env配列において特定され得る。これらの特徴でアノテートされた、多数の株由来の事前に配列された配列はまた、Los Alamos HIV Sequence Compendiaで見出され得る[11]。
【0033】
全長HIV−2 Env前駆体のアミノ酸配列(GI:2144996)は、下に示される852マーである(本明細書では配列番号4):
【0034】
【化3】
このHIV−2 Env前駆体タンパク質を切断して、表面糖タンパク質(例えば、配列番号4のアミノ酸20〜502;本明細書においては配列番号5)および膜貫通ドメイン(例えば、配列番号4のアミノ酸503〜852;本明細書においては配列番号6)を得る:
【0035】
【化4】
超可変領域などは、ここでも、参照アラインメントによって、そしてLos Alamos HIV Sequence Compendiaにおけるアラインメントを参照して特定され得る。例えば、V3ループは、Cys−296〜Cys−329である。
【0036】
用いられ得る他の特異的なEnv配列としては、引用文献12〜16に開示される配列が挙げられる。
【0037】
上記で言及されるとおり、本発明は代表的には、短縮されたEnvポリペプチドを用いる。この短縮は、全長配列からの1つ以上のアミノ酸の除去、例えば、C末端および/またはN末端での短縮、内部残基の欠失、サブドメインの除去[17]、およびこれらのアプローチの組み合わせを包含する。
【0038】
例えば、Env前駆体の膜貫通ドメインおよび細胞質テールを除去することによってEnv前駆体の可溶型を作成することが公知である。このポリペプチドは、gp120配列およびgp41のエクトドメインを含み、「gp140」[18]として公知であり、gp120よりも免疫原として優れていることが報告されている[19]。このような前駆体は、そのC末端、例えば、配列番号1のLys−665の後で短縮されて、配列番号1のアミノ酸Ser−29〜Lys−665を有する637マーの成熟gp140配列(本明細書においては配列番号7)が得られる。従って、本発明のEnvポリペプチドは、gp41の一部を包含するが、その膜貫通ドメインは含まない。
【0039】
Env前駆体のV2ループ内の欠失を作成して、「ΔV2」変異体を得ることも公知である。例えば、40マーのV2ループ内の1つ以上のアミノ酸が欠失されてもよい(例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、24、26、28、30、32、34、36、38またはそれ以上のアミノ酸)。V2ループ内の欠失は、Envポリペプチドの免疫原性を改善することが報告されている[20、21]。V2ループにおいて欠失および/または置換を有するEnvポリペプチドは、本発明で好ましい。なぜなら、これらは、Env/Tat複合体を形成するのに特に有用であることが見出されているからである。詳細には、Env/Tat複合体は、そのV2ループが変異されない限り、単量体gp120では見られない。V2ループから欠失したアミノ酸は、他のアミノ酸で置換されてもよく、例えば、Gly−Ala−GlyトリペプチドでV2ループの中央部分を置換することが公知である。例えば、ΔV2変異体は、以下の配列を有してもよい(配列番号8):
【0040】
【化5】
ここで、130位置の「X」は、例えば4〜15アミノ酸の間の変異体V2ループに相当する。本発明での使用のための特に好ましいEnvポリペプチドはgp140タンパク質であって、HIV−1株SF162からΔV2変異を有する。その成熟型では、単一の配列の切断および分泌後(引用文献12の図24を参照のこと)、このポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する(配列番号9):
【0041】
【化6】
HIVゲノムは、コンスタント・フラックス(constant flux)の状態であり、単離体の間の比較的高い程度の変動を示すいくつかのドメインを含むので、本発明は、公知のHIVポリペプチドの正確な配列を有するEnvポリペプチドの使用に限られない。従って、本発明に従って用いられるEnvポリペプチドは以下から選択され得る:
(i)配列番号1、2、4、5、7、8および9から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(ii)配列番号1、2、4、5、7、8および9から選択されるアミノ酸配列に対して配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(iii)配列番号1、2、4、5、7、8および9から選択されるアミノ酸配列に対して比較して、1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10など)の置換および/または欠失および/または挿入を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(iv)配列番号1、2、4、5、7、8および9から選択されるアミノ酸配列由来の少なくともn個の連続的なアミノ酸のフラグメントを含むアミノ酸配列を含み、ここでnが7以上であるポリペプチド;あるいは
(v)ペアワイズアラインメントを用いて配列番号1、2、4、5、7、8および9から選択されるアミノ酸配列と配列された場合、N末端からC末端に動くxアミノ酸の各々のウインドウにおいて少なくともx・y同一の配列された単量体を有するpアミノ酸の配列を含むポリペプチドであって、ここで:p>x;p−x+1ウインドウがあり;xが20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800または850から選択され;yが0.50、0.60、0.70、0.75、0.80、0.85、0.90、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98または0.99から選択され;そしてx・yが整数でない場合最も近い整数に切り上げられる、ポリペプチド。
【0042】
これらのポリペプチドは、配列番号1、2、4、5、7、8および9のホモログ、オルソログ、対立遺伝子改変体および変異体を含む。例えば、プロテアーゼに対する耐性を改善するために天然のEnv配列を変異することが公知である。このポリペプチドはまた、融合ポリペプチドを含み、ここではEnv配列が非Env配列に融合されている。例えば、天然のリーダーペプチドなしのEnv配列を非Envタンパク質由来のリーダーペプチド(例えば、組織プラスミノゲン活性化因子由来)に融合することが公知である。
【0043】
(ii)の範疇内では、配列同一性の程度は、50%より大きくてもよい(例えば、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上)。ポリペプチドの間の同一性は好ましくは、パラメーターのギャップ・オープン・ペナルティー=12およびギャップ・エクステンション・ペナルティー=1を用いるアフィン・ギャップ検索を用いて、MPSRCHプログラム(Oxford Molecular)で実現されるようなSmith−Watermanホモロジー検索プログラムによって決定される。
【0044】
(iii)の範疇では、各々の置換は、単一のアミノ酸を包含し、各々の欠失は好ましくは、単一のアミノ酸を包含し、そして各々の挿入は好ましくは、単一のアミノ酸を包含する。これらの変化は、意図的に(例えば、部位特異的突然変異誘発によって)生じても、または自然に(例えば、ウイルス進化を通じて、または自然な変異を通じて)生じてもよい。(iii)の範疇のポリペプチドは、配列番号1、2、4、5、7、8または9に対して1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10など)の単一のアミノ酸置換を有してもよい。これらのポリペプチドは配列番号1、2、4、5、7、8または9に対して1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10など)の単一のアミノ酸欠失を有してもよい。これらのポリペプチドは、配列番号1、2、4、5、7、8または9に対して1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10など)の単一のアミノ酸挿入を有してもよい。この置換、挿入および/または欠失は、別々の位置であってもよいし、または連続していてもよい。置換は、保存的、すなわち、関連の側鎖を有する別のアミノ酸でのあるアミノ酸の置換であってもよい。遺伝子コードされるアミノ酸は一般には、4つのファミリーに分けられる:(1)酸性、すなわち、アスパラギン酸、グルタミン酸;(2)塩基性、すなわち、リジン、アルギニン、ヒスチジン;(3)非極性、すなわち、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン;および(4)非荷電極性、すなわち、グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシン。フェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシンは時に、芳香族アミノ酸として一緒に分類される。一般には、これらのファミリー内の単一のアミノ酸の置換は、生物学的な活性に大きな影響を有さない。種々の置換が、Envポリペプチドとの使用について記載されており、例えば、全長型で保持するポリペプチドを提供するために、gp120とgp41との間の切断部位を不活性にすること(例えば、Lys→Ser置換)、またはV3ループにおいて「クリッピング」部位を除去すること[22]、またはグリコシル化部位、特にNグリコシル化部位(すなわち、アスパラギン残基)を欠失もしくは置換することが公知である。
【0045】
(iv)の範疇内では、nの値は、7より大きくても、例えば、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、550、600、650、700、750、800、850以上であってもよい。このフラグメントは、この配列の少なくとも1つのT細胞および/またはB細胞エピトープを含んでもよい。T細胞およびB細胞のエピトープは、経験的に特定されてもよいし(例えば、PEPSCAN[23、24]または類似の方法)、またはそれらは、予測されてもよい(例えば、Jameson−Wolf抗原性指数[25]、マトリックスベースのアプローチ[26]、TEPITOPE[27]、天然のネットワーク[28]、OptiMer&EpiMer[29,30]、ADEPT[31]、Tsites[32]、親水性[33]、抗原性指数[34]または引用文献35に開示される方法などを用いる)。
【0046】
(v)の範疇では、好ましいペアワイズアラインメントアルゴリズムは、デフォールトパラメーター(例えば、ギャップ・オープニング・ペナルティー=10.0、およびギャップ・エクステンション・ペナルティー=0.5を用い、EBLOSUM62スコアリングマトリックスを用いる)を用いる、Needleman−Wunschグローバルアラインメントアルゴリズム[36]である。このアルゴリズムは、EMBOSSパッケージにおけるニードル(needle)ツールで都合よく実現される[37]。
【0047】
Envポリペプチドは、HIVビリオン上でオリゴマー型で見出され、そして本発明で用いられる好ましいEnvポリペプチドはまた、オリゴマーを、そして詳細には三量体を形成し得る。例えば、gp140のΔV2変異体は、三量体を形成することが示されている[20]。下に考察されるとおり、Env/Tat複合体は、そのV2ループが変異されない限り、単量体gp120を用いて形成されないが、三量体gp140からV2変異を要することなく形成される。
【0048】
本発明で用いられ得るEnvポリペプチドのこの群内では、好ましい特徴は、このポリペプチドが、CD4に対して天然のEnvが結合する能力を保持しなければならないということである。本発明のEnv/Tat複合体がCD4に特異的に結合し得るならば、この複合体のEnv成分はそれ自体が、CD4に対して、Tatの非存在下でさえ結合し得る。この複合体を作製する場合、例えば、CD4結合Envポリペプチドは、Tatポリペプチドと混合され、そしてCD4結合活性は、複合体形成によって除かれないが、実際の結合親和性は変化し得る。
【0049】
(Tatポリペプチド)
本発明の複合体は、HIVのTatポリペプチドを包含し、そしてHIV−1またはHIV−2由来の種々の形態のTatポリペプチドが用いられ得る。Tatポリペプチドの長さは、ウイルス株に依存して変化する。REFSEQデータベース由来の全長HIV−1 Tatポリペプチドのアミノ酸配列(GI:9629358)は、下に示される86マーである(本明細書においては、配列番号10):
【0050】
【化7】
種々のHIV−1 Tatポリペプチド配列内で、Cys−22およびCys−37が保存され、そして分子内ジスルフィド結合を形成する。RKKRRQRRRの9マーは、核局在化シグナルである。これらの特徴は、適切な配列アラインメントを行うことによって他のHIV−1 Env配列中で特定され得る。これらの特徴でアノテートした、多数の株からの事前に整列させた配列はまた、Los Alamos HIV Sequence Compendiaで見出され得る[11]。
【0051】
全長HIV−2 Tatポリペプチドのアミノ酸配列(GI:41056781)は、下に示される130マーである(本明細書においては、配列番号11):
【0052】
【化8】
これ、および他のHIV−2のTat配列のアラインメントは、Los Alamos HIV Sequence Compendiaに見出され得る。
【0053】
用いられ得る他の特異的なtat配列としては、引用文献12〜15および38に開示される配列が挙げられる。
【0054】
本発明での使用のための特に好ましいTatポリペプチドは、HIV−1株BH10由来である。このポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する(配列番号12:GI:62291022):
【0055】
【化9】
HIVゲノムは、コンスタント・フラックス(constant flux)の状態であり、そして単離体の間で比較的高い程度の変動を示すいくつかのドメインを含むので、本発明は、公知のHIVポリペプチドの正確な配列を有するTatポリペプチドの使用に限定されない。従って本発明に従って用いられるTatポリペプチドは、以下から選択され得る:
(i)配列番号10、11および12から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(ii)配列番号10、11および12から選択されるアミノ酸配列に対して配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(iii)配列番号10、11および12から選択されるアミノ酸配列に対して比較して、1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10など)の置換および/または欠失および/または挿入を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(iv)配列番号10、11および12から選択されるアミノ酸配列由来の少なくともn個の連続的なアミノ酸のフラグメントを含むアミノ酸配列を含み、ここでnが7以上であるポリペプチド;あるいは
(v)ペアワイズアラインメントアルゴリズムを用いて配列番号10、11および12から選択されるアミノ酸配列と配列された場合、N末端からC末端に動くxアミノ酸の各々のウインドウにおいて少なくともx・y同一の配列された単量体を有するpアミノ酸の配列を含むポリペプチドであって、ここで:p>xである場合;p−x+1ウインドウがあり;xが20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、または85から選択され;yが0.50、0.60、0.70、0.75、0.80、0.85、0.90、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98または0.99から選択され;そしてx・yが整数でない場合、最も近い整数に切り上げられる、ポリペプチド。
【0056】
これらのポリペプチドは、配列番号10、11および12のホモログ、オルソログ、対立遺伝子改変体および変異体を含む。それらはまた、融合ポリペプチドを含み、ここではこのTat配列が、非Tat配列に融合される。
【0057】
(ii)の範疇では、配列同一性の程度は、50%より大きくてもよい(例えば、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上)。ポリペプチドの間の同一性は好ましくは、パラメーターのギャップ・オープン・ペナルティー=12およびギャップ・エクステンション・ペナルティー=1を用いるアフィン・ギャップ検索を用いて、MPSRCHプログラム(Oxford Molecular)で実現されるようなSmith−Watermanホモロジー検索プログラムによって決定される。
【0058】
(iii)の範疇では、各々の置換は、単一のアミノ酸を包含し、各々の欠失は好ましくは、単一のアミノ酸を包含し、そして各々の挿入は好ましくは、単一のアミノ酸を包含する。これらの変化は、意図的に(例えば、部位特異的突然変異誘発によって)生じても、または自然に(例えば、ウイルス進化を通じて、または自然な変異を通じて)生じてもよい。(iii)の範疇のポリペプチドは、配列番号10、11または12に対して1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10など)の単一のアミノ酸置換を有してもよい。これらのポリペプチドは配列番号10、11または12に対して1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10など)の単一のアミノ酸欠失を有してもよい。これらのポリペプチドは、配列番号10、11または12に対して1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10など)の単一のアミノ酸挿入を有してもよい。この置換、挿入および/または欠失は、別々の位置であってもよいし、または連続していてもよい。上で言及されるとおり、置換は、保存的であってもよい。
【0059】
(iv)の範疇内では、nの値は、7より大きくても、例えば、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、550、600、650、700、750、800、850以上であってもよい。このフラグメントは、この配列の少なくとも1つのT細胞および/またはB細胞エピトープを含んでもよい。上記のように、このようなエピトープは、経験的に特定されてもよいし、またはそれらは、予測されてもよい。
【0060】
(v)の範疇内では、好ましいペアワイズアラインメントアルゴリズムは、上記のような、Needleman−Wunschグローバルアラインメントアルゴリズムである。
【0061】
(薬学的組成物)
本発明の複合体は、免疫原性成分において活性成分として用いられ得る。これらの組成物は、免疫応答を惹起するために動物に投与され得る。この免疫応答としては好ましくは、体液性の応答(例えば、抗体応答、例えば、中和性の抗体応答)、ならびに/または、Envおよび/もしくはTatに対する細胞性応答が挙げられる。HIVに既に感染している患者では、免疫応答は、感染の重篤度を軽減(例えば、ウイルス負荷を軽減)し得、そしてHIV感染のクリアランスさえ生じ得る。HIVに感染していない患者では、免疫応答は、将来のHIV感染のリスクを軽減し得、そして将来のHIV感染に対して防御さえし得る。免疫原性組成物の投与から生じるこれらの効果は、他の抗HIVストラテジーの使用、例えば、限定はしないが、ヌクレオシド逆転写酵素インヒビター、非ヌクレオシド逆転写酵素インヒビター、プロテアーゼインヒビター、進入インヒビター、融合インヒビターなどを含む抗ウイルス剤の投与によって増強され得るか、またはそれらを要するかもしれない。
【0062】
免疫原性組成物は、免疫学的に有効な量の複合体を含む。「免疫学的に有効な量(immunologically effective amount)」とは、個体に対するその量の投与が、単一の用量でもまたは一連の一部としてでも、所望の処置または予防に有効であるということを意味する。この量は、処置されるべき個体の健康度および肉体的な条件、処置されるべき個体(例えば、非ヒト霊長類、霊長類、など)の分類群、固体の免疫系が抗体を合成する能力、所望される防御の程度、ワクチンの処方、医学的状態の処置医師の評価、および他の関連の要因に依存して変化し得る。この量は、慣用的なトライアルを通じて決定され得る比較的広範な範囲内におさまり、そして1用量あたりの複合体の代表的な量は、抗原あたり1μg〜10mgの間であることが期待される。
【0063】
本発明の免疫原性組成物は薬学的に受容可能である。それらは通常、その複合体に加えて成分を含む、例えば、それらは代表的には、1つ以上の薬学的なキャリアおよび/または賦形剤を含む。このような成分の詳細な考察は、引用文献39で得られる。
【0064】
組成物は一般には、水溶型である。
【0065】
張度を制御するために、生理学的な塩、例えば、塩化ナトリウムを含むことが好ましい。塩化ナトリウム(NaCl)が好ましく、これは、1〜20mg/mlで存在し得る。存在してもよい他の塩としては、塩化カリウム、リン酸二水素カリウム、無水リン酸ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウムなどが挙げられる。
【0066】
組成物は一般に、200mOsm/kg〜400mOsm/kg、好ましくは240〜360mOsm/kgの重量モル浸透圧濃度を有し、そしてさらに好ましくは、290〜310mOsm/kgの範囲内におさまる。
【0067】
組成物は、1つ以上の緩衝液を含んでもよい。代表的な緩衝液としては以下が挙げられる:リン酸緩衝液;Tris緩衝液;ホウ酸塩緩衝液;コハク酸エステル緩衝液;ヒスチジン緩衝液;またはクエン酸塩緩衝液。緩衝液は代表的には、5〜20mMの範囲で含まれる。
【0068】
組成物のpHは一般には5〜8、さらに代表的には6〜7の範囲である。
【0069】
この組成物は好ましくは無菌である。この組成物は好ましくは、非発熱性であり、例えば、1用量あたり1EU(内毒素単位、標準的な指標)未満を、そして好ましくは1用量あたり0.1EU未満を含む。この組成物は好ましくはグルテンを含まない。
【0070】
本発明の組成物は、界面活性剤、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンエステルサーファクタント(「Tewwns」として公知)、オクトキシノール(octoxynol)(例えば、オクトキシノール−9(Triton X−100)またはt−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール)などを含んでもよい。
【0071】
ワクチンは、約0.5mlの投薬容積で投与され得る。
【0072】
(ワクチンアジュバント)
本発明の組成物は有利には、組成物を投与される患者で惹起された免疫応答(体液性および/または細胞性)を増強するように機能し得るアジュバントを含んでもよい。本発明で用いられ得るアジュバントとしては、限定はしないが以下が挙げられる:
・ミネラル含有組成物であって、カルシウム塩およびアルミニウム塩(またはその混合物)を含む組成物。カルシウム塩は、リン酸カルシウム(例えば、引用文献40に開示される「CAP」粒子)を含む。アルミニウム塩としては、任意の適切な形態(例えば、ゲル、結晶、非結晶)をとる塩との、水酸化物、リン酸塩、硫酸塩などが挙げられる。これらの塩に対する吸着が好ましい。ミネラル含有組成物はまた、金属塩の粒子として処方されてもよい[41]。アルミニウム塩アジュバントは下にさらに詳細に記載される。
【0073】
・水中油型エマルジョン(下にさらに詳細に記載されるような)。
【0074】
・免疫刺激性オリゴヌクレオチド、例えば、Cpgモチーフ(グアノシンに対するリン酸結合によって結合される非メチル化シトシンを含むジヌクレオチド配列)を含むもの、TpGモチーフ[42]、二本鎖RNA、パリンドローム配列を含むオリゴヌクレオチド、またはポリ(dG)配列を含むオリゴヌクレオチド。免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエート改変のようなヌクレオチド改変/アナログを含んでもよく、そして二本鎖であっても、または(RNAを除く)一本鎖であってもよい。引用文献43〜45は、可能性のあるアナログ置換、例えば、2’−デオキシ−7−デアザグアノシンでのグアノシンの置換を開示する。CpGオリゴヌクレオチドのアジュバント効果はさらに、引用文献46〜51に考察される。CpG配列は、TLR9、例えば、モチーフGTCGTTまたはTTCGTTに対して関連し得る[52]。CpG配列は、CpG−A ODN(オリゴデオキシヌクレオチド)のように、Th1免疫応答を誘導するのに特異的であり得、またはそれは、CpG−BODNのようなB細胞応答を誘導するのにさらに特異的であり得る。CpG−AおよびCpG−BのODNは、引用文献53〜55に考察される。好ましくは、CpGは、CpG−A ODNである。好ましくはCpGオリゴヌクレオチドは、5’末端がレセプター認識に到達可能であるように構築される。必要に応じて、「イムノマー(immunomers)」を形成するために2つのCpGオリゴヌクレオチド配列が、それらの3’末端に付着されてもよい。例えば、引用文献52および56〜58を参照のこと。有用なCpGアジュバントはCpG7909であり、これはProMune(商標)(Coley Pharmaceutical Group,Inc.)としても公知である。免疫刺激性オリゴヌクレオチドは代表的には、少なくとも20ヌクレオチドを含む。それらが含むのは、100ヌクレオチドより少なくてもよい。
【0075】
・3−O−脱アシル化モノホスホリル脂質A(「3dMPL」であって、「MPL(商標)」としても公知)[59〜62]。3−dMPLは、Salmonella minnesotaのヘプトセレス(heptoseless)変異体から調製されており、そして脂質Aと化学的に類似であるが、酸性の不安定なホスホリル基および塩基性の不安定なアシル基を欠く。3dMPLの調製はもともと、引用文献63に記載された。3dMPLは、そのアシル化によって変化する(例えば、異なる長さであり得る、3、4、5または6つのアシル鎖を有する)、関連分子の混合物の形態をとってもよい。2つのグルコサミン(2−デオキシ−2−アミノ−グルコースとしても公知)単糖は、それらの2位置の炭素で(すなわち、2位置および2’位置で)Nアシル化され、そしてまた3’位置にO−アシル化が存在する。
【0076】
・イミダゾキノリン化合物、例えば、イミキモド(Imiquimod)(「R−837」)[64、65]、レシキモド(Resiquimod)(「R−848」)[66]、およびそれらのアナログ;ならびにそれらの塩(例えば、塩酸塩)。免疫刺激性のイミダゾキノリンについてのさらなる詳細は、引用文献67〜71に見出され得る。
【0077】
・チオセミカルバゾン化合物、例えば、引用文献72に開示されるもの。活性な化合物について処方する、製造する、そしてスクリーニングする方法はまた、引用文献72に記載される。このチオセミカルバゾンは、TNF−αのようなサイトカインの産生のためのヒト末梢血単核球の刺激において特に有効である。
【0078】
・トリプタンスリン(tryptanthrin)化合物、例えば、引用文献73に開示されるもの。活性な化合物について処方する、製造する、そしてスクリーニングする方法はまた、引用文献73に記載される。このチオセミカルバゾンは、TNF−αのようなサイトカインの産生のためのヒト末梢血単核球の刺激において特に有効である。
【0079】
・ヌクレオチドアナログ、例えば:(a)イサトラビン(Isatorabine)(ANA−245;7−チア−8−オキソグアノシン):
【0080】
【化10】
およびそのプロドラッグ;(b)ANA975;(c)ANA−025−1;(d)ANA380;(e)引用文献74〜76に開示される化合物;(f)以下の式:
【0081】
【化11】
を有する化合物であって、
ここで:
R1およびR2が各々独立して、H、ハロ、−NRaRb、−OH、C1−6アルコキシ、置換C1−6アルコキシ、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、C6−10アリール、置換C6−10アリール、C1−6アルキル、または置換C1−6アルキルであり;
R3が、存在しないか、H、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、C6−10アリール、置換C6−10アリール、ヘテロシクリル、または置換ヘテロシクリルであり;
R4およびR5が各々独立して、H、ハロ、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、−C(O)−Rd、C1−6アルキル、置換C1−6アルキルであるか、または一緒に結合して5員の環をR4−5:
【0082】
【化12】
の中において形成し:
この結合は、
【0083】
【化13】
によって示される結合で得られ、
X1およびX2は各々独立して、N、C、OまたはSである;
R8は、H、ハロ、−OH、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、−OH、−NRaRb、−(CH2)n−O−Rc、−O−(C1−6アルキル)、−S(O)pRe、または−C(O)−Rdであり;
R9は、H、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリルまたはR9aであり、
ここでR9aが:
【0084】
【化14】
であり、
この結合は、
【0085】
【化15】
によって示される結合で得られ、
R10およびR11は各々独立して、H、ハロ、C1−6アルコキシ、置換C1−6アルコキシ、−NRaRb、または−OHであり;
各々のRaおよびRbが独立して、H、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、−C(O)Rd、C6−10アリールであり;
各々のRcは独立して、H、リン酸塩、二リン酸塩、三リン酸塩、C1−6アルキル、または置換C1−6アルキルであり;
各々のRdは各々独立して、H、ハロ、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、置換C1−6アルコキシ、−NH2、−NH(C1−6アルキル)、−NH(置換C1−6アルキル)、−N(C1−6アルキル)2、−N(置換C1−6アルキル)2、C6−10アリールまたはヘテロシクリルであり;
各々のReは独立して、H、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、C1−6アリール、置換C6−10アリール、ヘテロシクリル、または置換ヘテロシクリルであり;
各々のRfは独立して、H、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、−C(O)Rd、リン酸塩、二リン酸塩、または三リン酸塩であり;
各々のnは独立して、0、1、2または3であり;
各々のpは独立して、0、1、2または3であるか;あるいは
(g)(a)〜(f)のいずれかの薬学的に受容可能な塩、(a)〜(f)のいずれかの互変異性体、またはその互変異性体の薬学的に受容可能な塩。
【0086】
・ロキソリビン(7−アリル−8−オキソグアノシン)[77]。
【0087】
・引用文献78に開示される化合物であって、以下を含む化合物:アシルピペラジン化合物、インドールジオン化合物、テトラヒドライソキノリン(THIQ)化合物、ベンゾシクロジオン化合物、アミノアザビニル化合物、アミノベンズイミダゾールキノリノン(BIQ)化合物[79、80]、ヒドラプタラミド(Hydrapthalamide)化合物、ベンゾフェノン化合物、イソオキサゾール化合物、ステロール化合物、キナジリノン化合物、ピロール化合物[81]、アントラキノン化合物、キノキサリン化合物、トリアジン化合物、ピラザロピリミジン化合物およびベンザゾール化合物[82]。
【0088】
・引用文献83に開示される化合物であって、3,4−ジ(1H−インドール−3−イル)−1H−ピロール−2,5−ジオン、スタウロスポリンアナログ、誘導体化ピリダジン、クロメン−4−オン、インドリノン、キナゾリン、およびヌクレオシドアナログを含む化合物。
【0089】
・アミノアルキルグルコサミニドリン酸塩誘導体、例えば、RC−529[84、85]。
【0090】
・ホスファゼン、例えば、引用文献86および87に記載されるような、ポリ[ジ(カルボキシルアトフェノキシ)ホスファゼン](「PCPP」)。
【0091】
・低分子免疫賦活薬(immunopotentiators)(SMIP)、例えば:
N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
N2,N2−ジメチル−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
N2−エチル−N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−N2−プロピル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
1−(2−メチルプロピル)−N2−プロピル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
N2−ブチル−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
N2−ブチル−N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−N2−ペンチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−N2−プロプ−2−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
1−(2−メチルプロピル)−2−[(フェニルメチル)チオ]−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン
1−(2−メチルプロピル)−2−(プロピルチオ)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン
2−[[4−アミノ−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2−イル](メチル)アミノ]エタノール
2−[[4−アミノ−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2−イル](メチル)アミノ]エチルアセテート
4−アミノ−1−(2−メチルプロピル)−1,3−ジヒドロ−2H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2−オン
N2−ブチル−1−(2−メチルプロピル)−N4,N4−ビス(フェニルメチル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
N2−ブチル−N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−N4,N4−ビス(フェニルメチル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−N4,N4−ビス(フェニルメチル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
N2,N2−ジメチル−1−(2−メチルプロピル)−N4,N4−ビス(フェニルメチル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
1−{4−アミノ−2−[メチル(プロピル)アミノ]−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イル}−2−メチルプロパン−2−オール
1−{4−アミノ−2−(プロピルアミノ)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イル}−2−メチルプロパン−2−オール
N4,N4−ジベンジル−1−(2−メトキシ−2−メチルプロピル)−N2−プロピル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン。
【0092】
・サポニン[引用文献118の第22章]は、ステロールグリコシドおよびトリテルペノイドグリコシドの異種の群であり、これは、広範な種類の植物種の樹皮、葉、幹、根および花からさえ見出される。Quillaia saponariaのMolinaの木の樹皮からのサポニンは、アジュバントとして広範に研究されている。サポニンはまた、Smilax ornata(サルサパリラ)、Gypsophilla paniculata(brides veil)、およびSaponaria officianalis(soap root)から商業的に入手され得る。サポニンアジュバント処方物としては、精製処方物、例えば、QS21、ならびに液体処方物、例えば、ISCOMsが挙げられる。QS21は、Stimulon(商標)として市販される。サポニン組成物は、HPLCおよびRP−HPLCを用いて精製されている。これらの技術を用いる特定の精製された画分が特定されており、これにはQS7、QS17、QS18、QS21、QH−A、QH−BおよびQH−Cが挙げられる。好ましくは、サポニンはQS21である。QS21の産生方法は、引用文献88に開示される。サポニン処方物はまた、ステロール、例えば、コレステロールを含んでもよい[89]。サポニンおよびコレステロールの組み合わせを用いて、免疫刺激性複合体(immunostimulating complexs)(ISCOMs)と呼ばれる固有の粒子を形成してもよい[引用文献118の第23章]。ISCOMはまた代表的には、ホスファチジルエタノールアミンまたはホスファチジルコリンのようなリン脂質を包含する。任意の公知のサポニンがISCOMで用いられてもよい。好ましくは、ISCOMは、QuilA、QHA&QHCのうちの1つ以上を包含する。ISCOMはさらに引用文献89〜91に記載される。必要に応じて、ISCOMSはさらなる界面活性剤を欠いてもよい[92]。サポニンベースのアジュバントの開発の概説は、引用文献93および94に見出され得る。
【0093】
・細菌のADPリボシル化毒素(例えば、E.coli熱不安定性エンテロトキシン「LT」、コレラ毒素「CT」、または百日咳毒素「PT」)およびその無毒化誘導体、例えば、LT−K63およびLT−R72として公知の変異毒素[95]。粘膜アジュバントとしての無毒化ADPリボシル化毒素の使用は、引用文献96に記載されており、そして引用文献97においては非経口アジュバントとして記載されている。
【0094】
・生体接着材料および粘膜付着材、例えば、エステル化ヒアルロン酸マイクロスフェア[98]またはキトサンおよびその誘導体[99]。
【0095】
・微小粒子(すなわち、直径で約100nm〜150μm、より好ましくは直径で約200nm〜30μm、または直径で約500nm〜10μmの粒子)であって、生分解性でかつ非毒性である物質(例えば、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオリトエステル、ポリ無水物、ポリカプロラクトンなど)から形成され、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)が好ましく、必要に応じて、負に荷電された表面(例えば、SDSで)または正に荷電された表面(例えば、陽イオン性界面活性剤、例えば、CTABで)を有するように処理された、微小粒子。
【0096】
・リポソーム(引用文献118の第13章および14章)。アジュバントとしての使用に適切なリポソーム処方物の例は、引用文献100〜102に記載される。
【0097】
・ポリオキシエチレンエーテルおよびポリオキシエチレンエステル[103]。このような処方物はさらに、オクトキシノール[104]と組み合わせたポリオキシエチレンソルビタンエステルサーファクタント、ならびにポリオキシエチレンアルキルエーテルまたはエステルサーファクタントを、少なくとも1つのさらなる非イオン性サーファクタント、例えば、オクトキシノールと組み合わせて含む[105]。好ましいポリオキシエチレンエーテルは、以下の群から選択される:ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル(ラウレス(laureth)9)、ポリオキシエチレン−9−ステロイルエーテル、ポリオキシエチレン−8−ステロイルエーテル、ポリオキシエチレン−4−ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン−35−ラウリルエーテル、およびポリオキシエチレン−23−ラウリルエーテル。
【0098】
・ムラミルペプチド、例えば、N−アセチルムラミル−L−トレオニル−D−イソグルタミン(「thr−MDP」)、N−アセチル−ノルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(nor−MDP)、N−アセチルグルコサミニル−N−アセチルムラミル−L−Al−D−イソグル−L−Ala−ジパルミトキシプロピルアミド(「DTP−DPP」、または「Theramide(商標)」、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチレンアミン(「MTP−PE」)。
【0099】
・第二のグラム陰性細菌由来のリポポリサッカライド(LPS)調製物と組み合わされた第一のグラム陰性細菌から調製された外部膜タンパク質プロテアソーム調製物であって、ここで外部膜タンパク質プロテアソームおよびLPS調製物が安定な非共有結合性のアジュバント複合体を形成する調製物。このような複合体は、「IVX−908」、Neisseria meningitidis外部膜およびLPSからなる複合体を包含する。
【0100】
・メチルイノシン5’−一リン酸塩(「MIMP」)[106]。
【0101】
・ポリヒドロキシル化ピロリジン化合物[107]、例えば、以下の式:
【0102】
【化16】
を有する化合物であって、
Rが、水素、直鎖または分枝した、非置換または置換の、飽和したまたは不飽和のアシル、アルキル(例えば、シクロアルキル)、アルケニル、アルキニルおよびアリール基、またはその薬学的に受容可能な塩もしくは誘導体を含む群より選択される。例としては限定はしないが以下が挙げられる:カスアリン(casuarine)、カスアリン−6−α−D−グルコピラノース、3−エピ−カスアリン、7−エピ−カスアリン、3,7−ジエピ−カスアリンなど。
【0103】
・γインスリン[108]またはその誘導体、例えば、アルガムリン(algammulin)。
【0104】
・引用文献109に記載されるような、構造式I、IIもしくはIIIの化合物、またはその塩:
【0105】
【化17】
、例えば、「ER803058」、「ER803732」、「ER804053」、「ER804058」、「ER804059」、「ER804442」、「ER804680」、「ER804764」、「ER803022」、または「ER804057」、例えば:
【0106】
【化18】
【0107】
【化19】
・OM−174のようなEscherichia coli由来の脂質Aの誘導体(引用文献110および111に記載される)。
【0108】
・陽イオン性脂質および(通常は天然の)コ−脂質の処方物、例えば、アミノプロピル−ジメチル−ミリストールイルオキシ−プロパンアミニウム(propanaminium)ブロミド−ジフィタノイルホスファチジル−エタノールアミン(「Vaxfectin(商標)」)またはアミノプロピル−ジメチル−ビス−ドデシルオキシプロパンアミニウムブロミド−ジオレオイルホスファチジル−エタノールアミン(「GAP−DLRIE:DOPE」)。(±)−N−(3−アミノプロピル)−N,N−ジメチル−2,3−ビス(シン−9−テトラデセニルオキシ)−1−プロパンアミニウム塩を含む処方物が好ましい[112]。
【0109】
・リン酸塩含有非環式骨格に連結された脂質含有化合物、例えば、TLR4アンタゴニストE5564[113、114]:
【0110】
【化20】
これらおよび他のアジュバント活性物質は、引用文献118および119にさらに詳細に考察される。
【0111】
組成物は、このアジュバントの2つ以上を含んでもよい。
【0112】
組成物中の抗原およびアジュバントは、代表的には混合される。
【0113】
水中油型エマルジョンアジュバント
水中油型エマルジョンはアジュバントとして特に有用である。種々のこのようなエマルジョンが公知であり、そしてそれらは代表的には少なくとも1つのオイルおよび少なくとも1つのサーファクタントを含み、そしてこのオイルおよびサーファクタントは、生分解性(代謝可能)で、かつ生体適合性である。エマルジョン中の油滴は一般には直径5μm未満であり、サブミクロンの直径を有してさえよく、これらの小さいサイズは、安定なエマルジョンを得るためにマイクロフルイダイザーで達成される。濾過滅菌に供することができるので、サイズが220nm未満の小滴が好ましい。
【0114】
本発明は、動物(例えば、魚)または植物供給源由来のオイルのようなオイルと用いられてもよい。植物油のための供給源としては、ナッツ、種子、および穀類が挙げられる。ピーナツ油、大豆油、ココナツ油およびオリーブ油が最も一般的に入手可能であり、堅果油が例証される。例えば、ホホバマメ(jojoba bean)から得られるホホバ油が用いられ得る。種油としては、サフラワー油、綿実油、ヒマワリ(種子)油、ゴマ油などが挙げられる。穀物群では、コーン油は、最も容易に入手可能であるが、他の穀物、例えば、コムギ、カラスムギ、ライムギ、イネ(米)、テフ(teff)、ライコムギなどのオイルも用いられてもよい。6〜10炭素の脂肪酸エステルのグリセロールおよび1,2−プロパンジオールは、種油には天然には存在しないが、ナッツおよび種油から出発する適切な材料の加水分解、分離およびエステル化によって調製され得る。哺乳動物の乳汁由来の脂肪およびオイルは代謝可能であり、従って、本発明の実施において用いられ得る。動物の供給源から純粋なオイルを得るために必要な分離、精製、けん化および他の手段のための手順は、当該分野で周知である。ほとんどの魚は、容易に回収可能である代謝性オイルを含む。例えば、タラの肝油、サメの肝油および鯨油、例えば、鯨ろうが、例示される魚油のいくつかであり、これが本明細書で用いられてもよい。多数の分枝鎖オイルが、5炭素イソプレン単位で生化学的に合成され、そして一般にはテルペノイドと呼ばれる。サメ肝油は、スクアレンとして公知の、分枝した、不飽和のテルペノイド、2,6,10,15,19,23−ヘキサメチル−2,6,10,14,18,22−テトラコサヘキサンを含み、これが本明細書において特に好ましい。スクアレンに対する飽和アナログであるスクアランはまた、好ましいオイルである。スクアレンおよびスクアランを含む魚油は、市販の供給源から容易に入手可能であるか、または当該分野で公知の方法によって得られてもよい。他の好ましいオイルはトコフェロールである(下を参照のこと)。オイルの混合物が用いられてもよい。
【0115】
サーファクタントは、それらの「HLB」(ヒドロフィル/リポフィルのバランス)によって分類され得る。本発明の好ましいサーファクタントは、少なくとも10、好ましくは少なくとも15、そしてさらに好ましくは少なくとも16のHLBを有する。本発明は、サーファクタントとともに用いられてもよく、サーファクタントとしては限定はしないが以下が挙げられる:ポリオキシエチレンソルビタンエステルサーファクタント(Tweensと一般に呼ばれている)、特にポリソルベート20およびポリソルベート80;DOWFAX(商標)という商標で販売される、エチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)、および/またはブチレンオキシド(BO)のコポリマー、例えば、直鎖EO/POブロックコポリマー;オクトキシノールであって、反復するエトキシ(オキシ−1,2−エタンジイル)基の数を変化し得るもので、オクトキシノール−9(TritonX−100またはt−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール)が特に目的のものである;(オクチルフェノキシ)ポリエトキシエタノール(IGEPAL CA−630/NP−40);リン脂質、例えば、ホスファチジルコリン(レシチン);ラウリル、セチル、ステアリルおよびオレイルアルコール由来のポリオキシエチレン脂肪エーテル(Brijサーファクタントとして公知)、例えば、トリエチレングリコールモノラウリルエーテル(Brij30);ならびにソルビタンエステル(SPANとして一般に公知)、例えば、ソルビタントリオレエート(Span85)およびソルビタンモノラウレート。エマルジョンに含まれるのに好ましいサーファクタントは、Tween80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)、Span85(ソルビタントリオレエート)、レシチンおよびTritonX−100である。サーファクタントの混合物、例えば、Tween80/Span85混合物が用いられてもよい。
【0116】
本発明で有用な特異的な水中油型エマルジョンアジュバントとしては、限定はしないが以下が挙げられる:
・スクアレン、Tween80およびSpan85のサブミクロンのエマルジョン。容積あたりのエマルジョンの組成物は、約5%のスクアレン、約0.5%のポリソルベート80および約0.5%のSpan85であってもよい。重量に関しては、これらの比は、4.3%のスクアレン、約0.5%のポリソルベート80および約0.48%のSpan85になる。このアジュバントは、引用文献118の第10章、および引用文献119の第12章にさらに詳細に記載されるように、「MF59」として公知である[115〜117]。このMF59エマルジョンは有利には、クエン酸イオン、例えば、10mMのクエン酸ナトリウム緩衝液を含む。
【0117】
・スクアレン、トコフェロールおよびTween80のエマルジョン。このエマルジョンはリン酸緩衝化生理食塩水を含んでもよい。これはまた、Span85(例えば、1%で)および/またはレシチンを含んでもよい。これらのエマルジョンは、2〜10%のスクアレン、2〜10%のトコフェロールおよび0.3〜3%のTweeen80を有してもよく、そしてスクアレン:トコフェロールの重量比は好ましくは1以下であり、これによって、より安定なエマルジョンが得られる。このようなエマルジョンの1つは、PBS中にTween80を溶解して2%の溶液を得ること、次いでこの溶液と、ある混合物(5gのDL−αトコフェロールおよび5mlのスクアレン)の90mlを混合すること、次いで、この混合物を微小流体化することによって作成され得る。この得られたエマルジョンは、サブミクロンの油滴、例えば、100〜250nm、好ましくは約180nmの平均直径を有してもよい。
【0118】
・スクアレン、トコフェロールおよびTriton界面活性剤(例えば、TritonX−100)のエマルジョン。
【0119】
・スクアラン、ポリソルベート80およびポロキサマー401(「Pluronic(商標)L121」)のエマルジョン。このエマルジョンは、リン酸緩衝化生理食塩水、pH7.4の中で処方され得る。このエマルジョンは、ムラミルジペプチドの有用な送達ビヒクルであり、「SAF−1」アジュバント中でトレオニル−MDPと用いられ得る[120](0.05〜1%のThr−MDP、5%のスクアラン、2.5%のPluronic L121および0.2%のポリソルベート80)。これはまた、「AF」アジュバント中で、Thr−MDPなしでも用いられ得る[121](5%のスクアラン、1.25%のPluronic L121および0.2%のポリソルベート80)。微小流体化(microfluidisation)が好ましい。
【0120】
・0.5〜50%のオイル、0.1〜10%のリン脂質、および0.05〜5%の非イオン性サーファクタントを有するエマルジョン。引用文献122に記載されるとおり、好ましいリン脂質成分は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、スフィンゴミエリンおよびカルジオリピンである。サブミクロンの小滴サイズが有利である。
【0121】
・代謝性でないオイル(例えば、軽油)および少なくとも1つのサーファクタント(例えば、レシチン、Tween80またはSpan80)のサブミクロンの水中油型エマルション。添加物、例えば、QuilAサポニン、コレステロール、サポニン−脂溶性結合体(例えば、グルクロン酸のカルボキシル基を介したデサシルサポニンへの脂肪族アミンの付加によって生成される、引用文献123に記載される、GPI−0100)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミドおよび/またはN.N−ジオクタデシル−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)プロパンジアミンが含まれてもよい。
【0122】
・サポニン(例えば、QuilAまたはQS21)およびステロール(例えば、コレステロール)がヘリカル・ミセルとして会合されるエマルジョン[124]。
【0123】
そのエマルジョンは、送達の時点で、その場で抗原と混合されてもよい。従って、そのアジュバントおよび抗原は、使用の時点で最終処方の準備がととのった、別々にパッケージされるかまたは分配されたワクチン中に保持されてもよい。この抗原は一般には、そのワクチンが2つの液体を混合することによって最終的に調製されるように、水溶型である。混合のための2つの液体の容積比は、変化してもよい(例えば、5:1〜1:5)が、一般には1:1である。
【0124】
アルミニウム塩アジュバント
水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウムとして公知のアジュバントが用いられてもよい。これらの名称は慣習的であるが、存在する実際の化合物の正確な説明ではなく、簡便のために用いられているに過ぎない(例えば、引用文献118の第9章を参照のこと)。本発明は、アジュバントとして一般的に使用される任意の「水酸化物(hydroxide)」または「リン酸塩(phosphate)」アジュバントを用いてもよい。
【0125】
「水酸化アルミニウム(aluminium hydroxide)」として公知のアジュバントは代表的には、オキシ水酸化アルミニウム塩であり、これは通常少なくとも部分的に結晶である。化学式AlO(OH)で提示され得るオキシ水酸化アルミニウムは、他のアルミニウム化合物、例えば、水酸化アルミニウムAl(OH)3から、赤外線(IR)分光法によって、詳細には、1070cm−1の吸着バンドおよび3090−3100cm−1の強力なショルダーの存在によって識別され得る[引用文献118の第9章]。水酸化アルミニウムアジュバントの結晶化度の程度は、半分の高さでの回折帯の幅(width of the diffraction band at half height)(WHH)によって反映され、結晶粒子が乏しければより小さい結晶サイズに起因する、より大きい広幅化を示している。表面積は、WHHが増大するにつれて増大し、そしてより高いWHH値を有するアジュバントほど、有する抗原吸着の能力が大きいことが見られている。線維の形態(例えば、透過電子顕微鏡でみられる)は、水酸化アルミニウムアジュバントに代表的である。水酸化アルミニウムアジュバントのpIは代表的には、約11であり、すなわちこのアジュバント自体が、生理学的なpHで正の表面電荷を有する。pH7.4での1mgのAl+++あたり1.8〜2.6mgというタンパク質の吸着能力が、水酸化アルミニウムアジュバントについて報告されている。
【0126】
「リン酸アルミニウム」として公知のアジュバントは代表的には、アルミニウムヒドロキシホスフェートであり、しばしば少量の硫酸塩(すなわち、ヒドロキシリン酸アルミニウム硫酸塩)を含む。それらは、沈澱によって得られてもよく、そして沈澱の間の反応の条件および濃度が、塩におけるヒドロキシルのリン酸塩の置換の程度に影響する。ヒドロキシリン酸塩は一般には、0.3〜1.2の間のPO4/Alのモル比を有する。ヒドロキシリン酸塩は、ヒドロキシル基の存在によって厳密なAlPO4から識別され得る。例えば、3164cm−1(例えば、200℃に加熱された場合)のIRスペクトルのバンドは、構造的なヒドロキシルの存在を示す[引用文献118の第9章]。
【0127】
リン酸アルミニウムアジュバントのPO4/Al3+のモル比は一般的には0.3〜1.2の間、好ましくは0.8〜1.2の間、そしてより好ましくは0.95±0.1である。リン酸アルミニウムは一般には、特にヒドロキシリン酸塩については非結晶である。代表的なアジュバントは、0.6mgのAl3+/mlで含まれる、0.84〜0.92のPO4/Alモル比を有する非結晶性ヒドロキシリン酸アルミニウムである。リン酸アルミニウムは一般には、粒子性である(例えば、透過電子顕微鏡でみられるプレート状の形態)。粒子の代表的な直径は、任意の抗原吸着後に0.5〜20μm(例えば、約5〜10μm)の範囲である。pH7.4で1mgのAl+++あたり0.7〜1.5mgのタンパク質という吸着能力が、リン酸アルミニウムアジュバントについて報告されている。
【0128】
リン酸アルミニウムのゼロ荷電のポイント(point of zero charge)(PZC)は、ヒドロキシルのリン酸塩の置換の程度に反比例し、そしてこの置換の程度は、沈澱によって塩を調製するために用いられる反応条件および反応物の濃度に依存して変化し得る。PZCはまた、溶液中で遊離のリン酸塩イオンの濃度を変化することによって(リン酸塩が多ければ=より酸性PZCである)、またはヒスチジン緩衝液のような緩衝液を添加することによって(PZCをさらに塩基性にさせる)変更される。本発明に従って用いられるリン酸アルミニウムは一般には、4.0〜7.0、より好ましくは5.0〜6.5、例えば、約5.7のPZCを有する。
【0129】
本発明の組成物を調製するために用いられるアルミニウム塩の懸濁物は、緩衝液(例えば、リン酸塩またはヒスチジンまたはTris緩衝液)を含んでもよいが、これは、常に必要というわけではない。この懸濁液は好ましくは無菌であってかつ発熱物質を含まない(パイロジェンフリー)である。懸濁液は、1.0〜20mM、好ましくは5〜15mM、そしてさらに好ましくは約10mMの濃度で例えば存在する遊離の水溶性リン酸イオンを含んでもよい。その懸濁液はまた塩化ナトリウムを含んでもよい。
【0130】
本発明は、水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウムの両方の混合物を用い得る。この場合、水酸化アルミニウムよりも多くのリン酸アルミニウムが存在してもよい。例えば、少なくとも2:1、例えば、≧5:1、≧6:1、≧7:1、≧8:1、≧9:1などの重量比。
【0131】
患者に対する投与のための組成物中のAl+++の濃度は好ましくは、10mg/ml未満である。例えば≦5mg/ml、≦4mg/ml、≦3mg/ml、≦2mg/ml、≦1mg/mlなど。好ましい範囲は、0.3〜1mg/mlである。
【0132】
(本発明のキット)
ある組成物が、患者に対する送達のための2つの成分、例えば、Env/Tat複合体およびアジュバントを含む場合、これらは、製造の間に混合されてもよいし、またはそれらは、送達の時点で即席に混合されてもよい。従って、本発明は、混合の準備が整った種々の成分を含むキットを提供する。このキットによって、アジュバントおよび複合体は、使用時点まで別々に保持することが可能になる。この構成は水中油型エマルジョンアジュバントを用いる場合、特に有用である。
【0133】
この成分は、キット内でお互いから物理的に隔てられ、そしてこの分離は、種々の方法で達成され得る。例えば、2つの成分が、バイアルのような2つの別々の容器内にあってもよい。次いで、2つのバイアルの成分は、例えば、1つのバイアルの内容物を除去すること、そしてそれらを他のバイアルに添加することによって、または両方のバイアルの内容物を別々に取り出してそれらを第三の容器中で混合することによって、混合されてもよい。
【0134】
好ましい構成では、キットの構成要素の1つは、シリンジ中にあり、そして他は、バイアルのような容器中にある。このシリンジは、混合のために第二の容器中にその内容物を挿入するために(例えば、ニードル(ハリ)とともに)用いられてもよく、次いで、その混合物は、シリンジ中に吸引されてもよい。次いで、そのシリンジの混合された内容物は、代表的には新しい無菌のニードルを通じて患者に投与されてもよい。シリンジ中に1成分をパッキングすることによって、患者投与のために別のシリンジを用いる必要がなくなる。
【0135】
別の好ましい構成では、2つのキット構成要素を、一緒に、ただし同じシリンジ、例えば、引用文献125〜132などに開示されるシリンジなどの二重−チャンバ(dual−chamber)シリンジ中に別々に保持する。このシリンジが作動されれば(例えば、患者への投与の間)、2つのチャンバの内容物が混合される。この構成によって、使用時点における別々の混合工程の必要性が回避される。
【0136】
このキット成分は一般には水溶型である。ある構成では、ある成分(代表的には、アジュバント成分ではなく抗原成分)は、乾燥型(例えば、凍結乾燥型)であり、他の成分が水性型としてある。この2つの成分は、乾燥成分を再活性化して患者への投与のための水性成分を得るために混合され得る。凍結乾燥成分は代表的には、シリンジでなくバイアル内に配置される。乾燥された成分は、安定化剤、例えば、ラクトース、スクロースまたはマンニトール、ならびにその混合物、例えば、ラクトース/スクロース混合物、スクロース/マンニトール混合物などを包含し得る。1つの可能な構成では、プレ・フィルド(pre−filled)シリンジ中の水性アジュバント成分、およびバイアル中の凍結乾燥された抗原成分を用いる。
【0137】
(処置の方法、およびワクチンの投与)
本発明は、患者において免疫応答を惹起する方法を提供し、この方法は、この患者に対して本発明の組成物を投与する工程を包含する。本発明の組成物はヒト患者に投与するために特に適切であるが、また研究目的のため、抗血清を惹起するためなどのために他の哺乳動物に投与されてもよい。
【0138】
本発明はまた、医薬としての投与のための本発明のキットまたは組成物を提供する。
【0139】
本発明はまた、患者において免疫応答を惹起するための医薬の製造における本発明のEnv/Tat複合体の使用を提供する。
【0140】
本発明の組成物は種々の方法で投与され得る。最も好ましい免疫経路は、注射による(例えば、筋肉内、皮下、静脈内)であるが、他の利用可能な経路としては限定はしないが、経鼻、口腔、皮内、皮下、経皮、肺内などが挙げられる。
【0141】
処置は、単回用量スケジュールまたは複数用量スケジュールによってもよい。複数用量は、(プライム)初回免疫スケジュールおよび/またはブースター(追加)免疫スケジュールで用いられ得る。複数用量スケジュールでは、種々の用量が同じまたは異なる経路、例えば、非経口の初回および粘膜の追加、粘膜の初回および非経口の追加などで与えられてもよい。2回以上の用量(代表的には2用量)の投与が代表的である。複数の用量が代表的には、少なくとも1週間あけて投与される(例えば、約2週、約3週、約4週、約6週、約8週など)。
【0142】
(全般)
「含む、包含する(comprising)」という用語は、「含む、包含する(including)」および「含む、からなる(consisting)」を包含する。例えば、ある組成物が、Xを「含む(cmprising)」とは、排他的にXからなってもよいし、または何か追加のものを含んでもよい、例えばX+Y。
【0143】
「実質的に(substantially)」という言葉は、「完全に(completely)」を排除せず、例えば、Yを「実質的に含まない(substantially free)」組成物は、完全にYを含まなくてもよい。必要に応じて、「実質的に(substantially)」という言葉は、本発明の定義から省略されてもよい。
【0144】
「約(about)」という用語は、ある数値xに関して、例えばx±10%を意味する。
【0145】
特に言及しない限り、2つ以上の成分を混合する工程を包含するプロセスは、なんら特異的な順序の混合を必要としない。従って、成分は任意の順序で混合されてもよい。3つの成分が存在するならば、2つの成分をお互いと合わせ、次いでその組み合わせを第三の成分と組み合わせるなどしてもよい。
【0146】
動物(そして特にウシ)の物質を細胞の培養に用いる場合、それらは感染性海綿状脳症(TSE)のない、そして詳細には、牛海綿状脳症(BSE)のない供給源から得られるべきである。全体として、動物由来の材料の全くなしで細胞を培養することが好ましい。
【0147】
タンパク質または複合体が特定の標的(例えば、CD4またはモノクローナル抗体に対して)「特異的に結合する(binds specifically)」場合、これは代表的には、その標的に対して、コントロールのタンパク質に対してよりも、例えば、CD3に対してよりも、または抗Rev抗体に対してよりも、少なくとも10倍大きい親和性で結合する。特異的な結合および非特異的な結合は、標準的な技術によって、例えば、相互作用に対するコントロールのタンパク質の影響をチェックすることによって、用量応答性をチェックすることによってなどによって識別され得る。
【0148】
「ポリペプチド(polypeptide)」という用語は、任意の長さのアミノ酸ポリマーをいう。このポリマーは直鎖であってもまたは分枝であってもよく、これは修飾されたアミノ酸を含んでもよく、そしてこれは非アミノ酸によって解釈されてもよい。この用語はまた、天然にもしくは介入によって改変されているアミノ酸ポリマーを包含する;例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、ホスホリル化または任意の他の操作もしくは修飾、例えば、標識成分との結合体化。また、例えば、アミノ酸の1つ以上のアナログ(例えば、天然でないアミノ酸などを含む)および当該分野で公知の他の改変体を含むポリペプチドもこの定義に含まれる。ポリペプチドは、単鎖または会合された鎖として存在してもよい。本発明のポリペプチドは、天然にまたは天然でなくグリコシル化されてもよい(すなわち、このポリペプチドは、対応する天然に存在するポリペプチドに見出されるグリコシル化パターンとは異なるグリコシル化パターンを有する)。
【0149】
本発明での使用のためのEnvおよびTatポリペプチドは、多くの方法で、例えば、化学合成によって(全体または部分的に)、プロテアーゼを用いてより長いポリペプチドを消化することによって、RNAからの翻訳によって、細胞培養物から(例えば、組み換え発現から)の精製によって、生物体自体から(例えば、細菌培養後、または患者から直接)などによって調製されてもよい。40アミノ酸長未満のペプチドの産生のための好ましい方法は、インビトロの化学合成を包含する[133、134]。tBocまたはFmoc[135]化学に基づく方法などの固相のペプチド合成が特に好ましい。酵素的な合成[136]も、部分的にまたは完全に用いられ得る。化学合成とは別に、生物学的な合成を用いてもよく、例えば、ポリペプチドは翻訳によって生成されてもよい。これはインビトロでおこなっても、またはインビボでおこなってもよい。生物学的な方法は一般に、Lアミノ酸に基づくポリペプチドの産生に限定されるが、翻訳機構(例えば、アミノアシルtRNA分子)の操作を用いることによって、Dアミノ酸(または他の非天然のアミノ酸、例えば、ヨードチロシンまたはメチルフェニルアラニン、アジドホモアラニンなど)の導入を可能にしてもよい[137]。しかし、Dアミノ酸が導入される場合、化学合成を用いることが好ましい。本発明のポリペプチドは、C末端および/またはN末端で共有結合的な修飾を有してもよい。
【0150】
EnvおよびTatポリペプチドは、種々の形態をとり得る(例えば、天然、融合、グリコシル化、非グリコシル化、脂質化、非脂質化、リン酸化、非リン酸化、ミリストイル化、非ミリストイル化、単量体、マルチマー、微粒子、変性など)。Envについては、オリゴマーのグリコシル化ポリペプチドが好ましい。単量体ポリペプチドが好ましい。
【0151】
EnvおよびTatポリペプチドは好ましくは、精製されるか、または実質的に精製された形態、すなわち、他のポリペプチドを実質的に含まない(例えば、天然に存在するポリペプチドを含まない)、特に他のHIVもしくは宿主細胞のポリペプチドを実質的に含まない形態で提供され、そして一般には、少なくとも約50%純粋(重量で)、そして通常は少なくとも約90%純粋、すなわち、約50%未満、そしてさらに好ましくは約10%未満(例えば、5%以下)の組成物が、他の発現されたポリペプチドから作成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0152】
(本発明を行うための方式)
(EnvおよびTatの非共有結合)
4つの形態のEnvタンパク質を、HIV−1のSF162株から調製した:gp120;gp120ΔV2;gp140;およびgp140ΔV2。gp120分子は、単量体であるが、gp140分子は三量体である。これらの4つのタンパク質は、前に記載されている(例えば、引用文献12、138および139)。要するに、HIV−1 SF162およびHIV−1 SF162ΔV2単離体由来のEnvエクトドメインをコードする配列を、前に記載されたように[138]コドン改変して、2.1kbのEcoRI−XbaIDNAフラグメントとして合成的に構築した。この遺伝子カセットは、効率的な分泌のためにヒト組織プラスミノーゲンアクチベータ(TPA)シグナル配列にインフレームで融合されたEnvタンパク質のタンパク質コード領域を含んだ。コードされたオリゴマータンパク質のオリゴマー構造を安定化するために、Envポリペプチドにおける一次(REKR)および二次(KAKRR)プロテアーゼ切断部位を改変した[138]。得られたEnv発現カセット(gp120SF162、gp120SF162ΔV2、gp140SF162およびgp140SF162ΔV2)を、293細胞の一過性トランスフェクションのため、そしてまた安定なCHO細胞株の発達のためにpCMV3発現ベクターのEcoRI−XbaI部位にクローニングした。このベクターは、サイトメガロウイルスのエンハンサー/プロモーターエレメント、アンピシリン耐性遺伝子、ならびにジヒドロ葉酸還元酵素および減弱ネオマイシン耐性タンパク質から構成される融合タンパク質をコードする配列を含む。
【0153】
gp120SF162、gp120ΔV2SF162、gp140SF162およびgp140SF162ΔV2を分泌する安定なCHO細胞株は、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子における二重の欠失を有するDG−44細胞を用いること、従って、前に記載された実験プロトコールに従う、増殖培地に対するヒポキサンチン、グリシンおよびチミジンの添加に依存して細胞株を作成することによって誘導された[138、139]。
【0154】
目的のタンパク質を産生するCHO細胞クローンを用いて、各々のタンパク質について3リットルのバイオリアクターに播種した。バイオリアクターを、細胞の密度、pH、CO2およびO2濃度などについて毎日モニターした。分泌されたEnvの構造、構成および発現のレベルを毎週モニターした。最高のプロデューサークローン由来の物質を、100kDaの細孔サイズの膜フィルターを通じて20倍に濃縮して、1mMのEDTAおよび1mMのEGTAの存在下で−80℃で保管した。
【0155】
全てのエンベロープタンパク質を、前に記載されたストラテジーに従って精製した[139]。要するに、濃縮されたCHO細胞上清を、20mMのTris−100mMNaCl(pH7.4)で平衡にしたGalanthus Nivalisのアガロースカラム(GNA)上にロードした。結合したEnvを500mMのメチルマンノースピラノシドで溶出した。GNAカラム後の溶出液を、20mMのTris、100mMのNaCl(pH8.0)を含有する緩衝液で平衡にしたDEAEカラム上にロードした。これらの条件下で、Envは、カラムには結合せず、しかし混入したタンパク質は、このカラム上に保持される。このDEAEのフロー・スルー(flow through)は、10mMのPO4濃度に調節して、pHを6.8に調節して、そしてそのフロー・スルーを、10mMのNa2HPO4、100mMのNaCl(pH6.8)を含有する緩衝液で平衡にしたセラミック・ヒドロキシアパタイト(CHAP)カラム上にロードさせた。これらの条件下で、envタンパク質は、CHAPカラムに結合せず、そしてこのフロー・スルー中で回収された。精製プロセスの間、画分を、標準的な方法に従って、そしてまたCD4レセプター結合アッセイにおいて、還元および変性の下ならびに天然の条件の下でポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)によって分析した。ゲルをクマーシー・ブリリアント・ブルーで染色するか、または免疫ブロッティングのために処理した。V2ループの有無のあるEnv単量体を含む全ての画分をプールして、濃縮し、そして−80℃で凍結保存した。o−gp140SF162およびo−gp140SF162ΔV2を含有するピーク画分をプールして、濃縮し、そして10mMのNaCitrateに加えて300mMのNaClで平衡にされた16×90mmのSuperdex−200カラムで分画して、三量体から単量体を分離した。三量体高次構造にEnvタンパク質を含有する画分をプールして、濃縮し、そして用いるまで−80℃で凍結して保持した。
【0156】
BH10株由来のTatタンパク質も発現させて精製した。
【0157】
Far−Western分析を用いて、これらのEnvとTatタンパク質との間の相互作用を研究する。要するに、TatおよびEnvタンパク質の公知の量を、4℃で2時間インキュベートして、複合体を形成する。次いで、5μlのモノクローナル抗Tat抗体(4.3mg/ml)を添加し、そしてその混合物を一晩4℃でインキュベートした。次いで、50μlのプロテインA(プロテインA Sepharoseビーズ、50%溶液)を添加し、そしてその混合物を攪拌しながらさらに2時間、4℃でインキュベートした。次いで、その混合物を3回洗浄して、50μlの容積中で4×サンプル緩衝液中に溶出した。次いでその溶出されたタンパク質を、SDS−PAGEによって分離し、そして半乾性のトランスファーを用いてニロトセルロース上に転写した。得られたブロットを、抗Envポリクローナルウサギ抗体とともに最初にインキュベートした。そのブロットを洗浄して、アレクサ・フルオア(alexa fluor)780に結合体化された抗ウサギ二次抗体とともにインキュベートした。次いでブロットをOdyssey赤外線検出器で読み取った。
【0158】
図1は、1μgのTatおよび8μgのEnvを用いる、Far−Western分析の結果を示す。バンドはレーン2、3、4および6において明らかに可視である。図2は、レーン1〜4における標識強度の定量的分析を示しており、これはEnv/Tat混合物を含む。最低の強度は、レーン1(gp120の単量体)である。レーン2(gp120ΔV2の単量体)およびレーン3(gp140の三量体)は、類似の強度を示した。最強の強度は、レーン4に示された(gp140ΔV2三量体)。
【0159】
1μgのTatおよび種々の量のEnv(図3)を用いるさらなる実験によって、EnvとTatとの間の相互作用が特異的であることが確認された。
【0160】
逆の実験では、Envの量を固定して、ただし種々の量のTatを用い、異なる結果がみられた。EnvおよびTatを1:2というEnv:Tatの質量比で混合した場合、最高の相互作用が観察された。増えた量のTatは、Env結合に対して有害な影響を有した(図4)。
【0161】
表面プラズモン共鳴(SPR)を用いて、速度実験においてEnv/Tat結合の強度を決定した。その結果(図5)によって、Far−Westernアッセイの結果が確認された。gp140ΔV2三量体(図5A)、gp140三量体(図5B)、およびgp120ΔV2単量体(図5C)の解離定数は、それぞれ、22nM、37nMおよび91nMであった。gp120単量体は、試験されたいずれの濃度でも、そして異なる実験条件下でさえTatに結合しなかった。
【0162】
さらなるSPR実験では、Tatタンパク質を、CM4チップに固定して、サブタイプC株TV1由来のEnvタンパク質に曝した。種々の濃度(63、125、250、および1000nM)のいずれかの天然のEnv三量体(o−gp140TV1)またはΔV2−Env三量体(o−gp140DV2TV1)を試験した。図15は、その結果を示す。
【0163】
Tatによるgp120に対する結合の欠失が、機能的に不活性なgp120に起因するか否かを決定するために、全てのEnvタンパク質を、機能的な活性の予測因子としてそれらがCD4に結合する能力について分析した。4つ全てのEnvタンパク質が、予想される範囲の解離定数でCD4に結合した(図6)。従って、単量体のgp120は機能的であった。
【0164】
TatおよびEnvの三量体の間の相互作用はまた、遊離の溶液における等温滴定熱量分析(ITC)を用いて検討した。予備的なITCデータは、前の実験と一致しており、このことは、gp140三量体が、gp140ΔV2三量体よりも弱くTatに結合することを示している(図7)。このデータはまた、Env三量体が3つのTat分子に結合する、例えば、各々のEnv単量体が単一のTat結合部位を有することを示唆している。
【0165】
Envタンパク質に対するTat結合の部位を検討するために、CD4との結合相互作用を比較した。Tatは、CD4に対する結合について競合しないので、TatおよびCD4についてのEnv上の結合部位は異なるとみなされる。
【0166】
(EnvおよびTatの共有結合)
Env/Tat複合体を安定化するために、ホルムアルデヒドおよびグルタルアルデヒドを、図14に図示される反応スキームに従い架橋試薬として用いた。それらは、18の異なる条件下で試験した:
【0167】
【化21】
得られた複合体を、種々の基準で試験した、この基準としては以下が挙げられる:Envの存在;Tatの存在;架橋の性質;エピトープの保存;および結合活性の保存。コントロールの複合体をまた、架橋なしで用いた。
【0168】
EnvおよびTatタンパク質を、上記のとおり混合した。架橋試薬を、種々の濃度で添加して、その反応を、種々の期間進行させた。反応をクエンチし、次いで透析を用いて未反応の架橋試薬を除去した。次いで、その複合体をSDS−PAGE、ウエスタンブロット、Far−Western分析、SPRおよびSEC−HPLCによって分析した。
【0169】
図8は、標識のために抗Tat抗体を用いるウエスタンブロットを示す。18の反応条件のうち、遊離のTatは、ナンバー4〜6および13〜15に存在せず、分子量の種として代わりに泳動された。従って、4〜8時間の0.01%〜0.04%の間のグルタルアルデヒド架橋というのが、有効な共有結合架橋のための条件の原型的なセットである。
【0170】
図9は、グルタルアルデヒドを0.02%、0.04%または0.08%で用いた後、(9A)抗Tatまたは(9B)抗Env抗体を用いるウエスタンブロットを示す。これらの結果によって、EnvおよびTatは両方とも、共有結合した高MW複合体として遊走することが確認された。還元および変性の条件下での、図9におけるのと同じ複合体のSDS−PAGE分析によって、250kDaより大きい複合体、そしてこの種の強度は、架橋試薬の濃度とともに増大することが確認される。
【0171】
EnvのCD4結合活性に対する架橋の効果を検討した。図11は、図9において分析された同じ複合体のSEC−HPLC分析の結果を示す。比較のために、架橋のないEnv/Tat複合体、純粋なEnv、純粋なTat、および事前に架橋した等モルのEnv/Tat混合物(「SM」)も分析した。この共有結合されたタンパク質は、CD4に対して結合する能力を保持する(レーン1および4、そして6も比較する)。SPRを同様の分析に用いた(図12)。架橋の程度が増大するにつれてCD4結合はgp140ΔV2に対して減少するが、0.08%のサンプル中でさえ明白なままであり、そして陰性コントロールでみられるレベルをかなり上回って保持される。
【0172】
Tatエピトープに対する架橋の効果も検討した。図13は、SPR分析の結果を示す。EnvによるCD4結合に関しては、架橋のレベルの増大によってエピトープ結合活性が減少するが、0.08%のサンプルでさえ明白なままであり、コントロールをかなり上回って保持される。
【0173】
従って、これらの結果を組み合わせれば、EnvおよびTatは、安定な複合体を形成するように共有結合的に架橋されてもよく、そしてそれらの結合活性は、機能的なレベルで維持され得ることが示される。
【0174】
本発明は、ほんの一例として記載されており、そして本発明の範囲および趣旨内に保持されたまま改変がなされ得るということが理解される。
【0175】
参考文献(これらの内容は、参考として本明細書に援用される)
【0176】
【化22】
【0177】
【化23】
【0178】
【化24】
【図面の簡単な説明】
【0179】
【図1】図1は、Far−Westernアッセイの結果を示す。レーンは以下である:(1)gp120およびTat;(2)gp120ΔV2およびTat;(3)gp140およびTat;(4)gp140ΔV2およびTat;(5)gp120およびCD4;ならびに(6)gp120、CD4およびEnv。
【図2】図2は、任意の単位で測定した、図1由来の結果の定量的分析を示す。
【図3】図3は、EnvおよびTatについてFar−Westernアッセイを4つの異なるEnv濃度で示す。
【図4】図4は、EnvおよびTatについてのFar−Werternアッセイを3つの異なるEnv:Tat比で示す。
【図5】図5は、EnvについてのSPRの結果をTat(図5)で示す。Envタンパク質は以下であった:(A)gp140ΔV2;(B)gp140;(C)gp120ΔV2;および(D)gp120。このX軸は、時間(秒)を示し、そしてY軸は相対単位を示した。各々のグラフの5つの異なる線は、異なるEnv濃度であり、これは1000nMおよび4つの連続的2倍希釈である。
【図6】図6は、EnvについてのSPRの結果をCD4(図6)で示す。Envタンパク質は以下であった:(A)gp140ΔV2;(B)gp140;(C)gp120ΔV2;および(D)gp120。このX軸は、時間(秒)を示し、そしてY軸は相対単位を示した。各々のグラフの5つの異なる線は、異なるEnv濃度であり、これは1000nMおよび4つの連続的2倍希釈である。
【図7】図7は、(A)gp140および(B)gp140ΔV2のITC分析をTatで示す。上のパネルでは、X軸は、時間(分)を示し、そしてY軸は、μcal/秒を示す。下のパネルでは、X軸は、モル比を示し、そしてY軸は、注入物のkcal/モルを示す。
【図8】図8は、異なる条件下で異なる架橋試薬とともにインキュベートしたEnv/Tat複合体のウエスタンブロットを示す。遊離のTatは、ブロットの底にむかって示され得る。
【図9】図9は、(9A)抗−Tatまたは(9B)抗Env抗体を用いた4つのEnv/Tat複合体のウエスタンブロットを示す。レーンは以下である:(1)0.02%グルタルアルデヒド;(2)0.04%のグルタルアルデヒド;(3)0.08%のグルタルアルデヒド;そして(4)非架橋剤。MWマーカーは、15、25、30、35、50、75、105、160および250kDaである。
【図10】図10は、同じ複合体のSDS−PAGE分析を示す。MWマーカーは、15、25、30、35、50、75、105、160および250kDaである。
【図11】図11は、SEC−HPLC分析を示す。プロット1〜4は、図8および9のレーン1〜4にマッチする。プロット5は、Tat単独であり、そしてプロット6はEnv単独である。プロット7はSMである。2つの矢印は、Env結合したCD4(左側)および遊離のCD4(右側)を示す。
【図12】図12は、図8および9のレーン1〜3と同じ3つの架橋された複合体について、およびgp140ΔV2についてもSPRプロットを示す。図12Aおよび13Aの4つの線は、上から下に以下のとおりである:gp140ΔV2;0.02%;0.04%;および0.08%。このX軸は、時間(秒)を示し、そしてY軸は、相対単位(RU)を示す。図12Bおよび13Bは、4つのサンプルについて、そしてまた陰性のコントロール(緩衝液のみ)についてピークRU値を示す。
【図13】図13は、図8および9のレーン1〜3と同じ3つの架橋された複合体について、およびgp140ΔV2についてもSPRプロットを示す。図12Aおよび13Aの4つの線は、上から下に以下のとおりである:gp140ΔV2;0.02%;0.04%;および0.08%。このX軸は、時間(秒)を示し、そしてY軸は、相対単位(RU)を示す。図12Bおよび13Bは、4つのサンプルについて、そしてまた陰性のコントロール(緩衝液のみ)についてピークRU値を示す。
【図14】図14は、EnvおよびTatの共有結合架橋についての一般的な反応スキームを図示する。
【図15】図15は、サブタイプC株由来のEnvでのSPRの結果を示す。このy軸は、相対的な単位を示し、そしてx軸は、時間(秒)を示す。各々の線は異なるEnv濃度である。
【技術分野】
【0001】
本明細書に引用された全ての書類は、その全体が参考として本明細書に援用される。
【0002】
(関連出願)
本出願は、2006年3月28日に出願された米国仮出願第60/786,947号(この出願は、その全体が参考として本明細書に援用される)の利益を主張する。
【0003】
本発明は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、そして詳細には免疫原性タンパク質複合体の分野にある。
【背景技術】
【0004】
(発明の背景)
HIVゲノム内でコードされる種々のタンパク質としては、エンベロープ糖タンパク質(Env)およびトランス活性化転写因子(Tat)が挙げられる。
【0005】
HIV−1およびHIV−2の両方で、Envタンパク質は、長い前駆体タンパク質として最初に発現され、これがその後に切断されて、外部膜糖タンパク質および膜貫通糖タンパク質が得られる。簡便のために、これらのタンパク質はその後に、標準的なHIV−1の命名法によって呼ばれ、すなわち、この前駆体は、「gp160」であり、この膜糖タンパク質は、「gp120」であり、そしてこの膜貫通糖タンパク質は「gp41」である。これらの名称は、HIV−1糖タンパク質の適切な分子量に基づく。
【0006】
このgp120タンパク質は、HIVビリオンの表面にあり、そして宿主細胞CD4レセプターと相互作用し得る。この相互作用は、gp120タンパク質において構造の遷移を誘発し、これがその「V3」ループの露出をもたらす。次いで、この構造変化されたgp120タンパク質は、ウイルス進入機構の一部としてさらなる宿主レセプター、例えば、CCR5および/またはCXCR4と相互作用し得る。その表面露出のせいで、gp120は、ここ20年にわたってHIVワクチン研究の主な焦点であった。自然な感染の間に生じる抗Env抗体が、一次HIV単離体を中和することが見出されているが、同じことはEnvに基づくサブユニットワクチンによって惹起される抗体については成り立たなかった。従って、Envに基づくワクチンの改良が必要である。
【0007】
Tatタンパク質は、HIV遺伝子発現を調節するのに重要である。これは転写因子であるが、これはまた、感染細胞によって放出されることが見出されており、ワクチン抗原として提唱されている。
【0008】
引用文献1(特許文献1)は、複合体を形成するように相互作用し得るEnvおよびTatタンパク質を開示している。この相互作用は、Envタンパク質におけるV3ループの存在を必要とするとされる。Tatタンパク質はCCR5の構造的ループを模倣すると提唱される。複合体におけるEnvおよびTatタンパク質は、それらの自然な親和性に起因して会合され得るが、ジスルフィド結合を形成することによって、またはBS3架橋剤(ビス(スルホスクシンイミジル)スベリン酸ホモ二官能性架橋剤)のようなタンパク質架橋技術を用いることによって強化され得る。EnvおよびTatポリペプチドの組み合わせに基づくワクチンも引用文献2(非特許文献1)に開示される。
【特許文献1】国際公開第05/090391号パンフレット
【非特許文献1】Ensoliら、Microbes Infect(2005)7:1392−9
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
HIVのEnvおよびTatタンパク質のさらなる複合体および改良された複合体を得ることがこの目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
EnvおよびTatタンパク質の複合体は、TatまたはEnvの単独と比較して免疫原として有利であるが、それらは、ワクチンアジュバントと組み合わせた場合に解離され得る。従って、EnvおよびTatの複合体は、共有結合的な架橋の使用によって安定化され得るが、架橋の程度がその複合体の結合特性に対して重要であることが見出されている。詳細には、Envタンパク質によるCD4結合の消失、およびTatタンパク質によるエピトープの喪失を生じるのには多すぎる架橋が見出されている。
【0011】
従って、本発明は、HIVのEnvポリペプチドおよびHIVのTatポリペプチドを含む複合体であって、(i)この(i)EnvおよびTatポリペプチドが共有結合され、かつ(ii)この複合体はCD4に特異的に結合し得る、複合体を提供する。
【0012】
本発明はまた、HIVのEnvポリペプチドおよびHIVのTatポリペプチドを含む複合体を調製するためのプロセスであって、EnvおよびTatポリペプチドが、お互いに対して共有結合するようになり、CD4に対してEnvタンパク質が特異的に結合する能力を失うことのない反応条件下で相互作用することを可能にする工程を包含するプロセスを提供する。
【0013】
本発明はまた、HIVのEnvポリペプチドおよびHIVのTatポリペプチドを含む複合体であって、(i)このEnvおよびTatポリペプチドが共有結合され、かつ(ii)この複合体がHIVのTatタンパク質に特異的に結合するモノクローナル抗体に特異的に結合し得る、複合体を提供する。
【0014】
本発明はまた、HIVのEnvポリペプチドおよびHIVのTatポリペプチドを含む複合体を調製するためのプロセスであって、EnvおよびTatポリペプチドが、お互いに対して共有結合するようになる反応条件下で相互作用することを可能にし、抗Tatモノクローナル抗体に対してTatタンパク質が特異的に結合する能力を失うことのない工程を包含するプロセスを提供する。
【0015】
本発明はまた、HIVのEnvポリペプチドおよびHIVのTatポリペプチドを含む複合体であって、(i)このEnvおよびTatポリペプチドが共有結合され、かつ(ii)この複合体がCD4に特異的に結合し得、そして(iii)その複合体が、HIVのTatポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体に特異的に結合し得る、複合体を提供する。
【0016】
本発明はまた、HIVのEnvポリペプチドおよびHIVのTatポリペプチドを含む複合体を調製するためのプロセスであって、EnvおよびTatポリペプチドが、お互いに対して共有結合するようになり、CDに対してEnvポリペプチドが特異的に結合する能力を失うことなく、かつ抗Tatモノクローナル抗体に対してTatポリペプチドが特異的に結合する能力を失うことのない反応条件下で相互作用することを可能にする工程を包含するプロセスを提供する。
【0017】
(Env/Tat架橋)
EnvおよびTatタンパク質は、本発明の複合体中で一緒に共有結合する。タンパク質を共有結合するための種々の方法は、当該分野で公知であり、例えば、引用文献3および4を参照のこと。例えば、共有結合は、ホモ二官能性(homobifunctional)の架橋剤、ヘテロ二官能性の架橋剤または長さゼロの架橋剤の使用を包含し得る。これは、タンパク質中のスルフヒドリル基に対する試薬、タンパク質中のアミノ基に対する試薬、タンパク質中のカルボキシル基に対する試薬、チロシン選択性試薬、アルギニン特異的試薬、ヒスチジン特異的試薬、メチオニンアルキル化試薬、トリプトファン特異的試薬、セリン修飾試薬などを包含し得る。
【0018】
本発明での使用のための架橋試薬の好ましい基としては、アルデヒドが挙げられ、そして詳細には、ホルムアルデヒドおよびジアルデヒドが挙げられる。適切なジアルデヒドとしては、グリオキサール、マロンジアルデヒド、スクシンアルデヒド(succinialdehyde)、アジポアルデヒド(adipaldehyde)、α−ヒドロキシアジポアルデヒド(α−adipaldehyde)、グルタルアルデヒドおよびフタルアルデヒドが挙げられる。グルタルアルデヒドおよびその誘導体が特に好ましく、これには2−メトキシ−2,4−ジメチルグルタルアルデヒド、3−メトキシ−2,4−ジメチルグルタルアルデヒドおよび3−メチルグルタルアルデヒドが挙げられ、ピリドキサールリン酸も用いられ得る。他のアミノ基指向性架橋剤としては、ビスイミドエステル、ビス−スクシンイミジル誘導体(例えば、ビス(スルホスクシンイミジル)スベリン酸、すなわち「BS3」)、二官能性アリールハライド、二官能性アシル化剤(ジ−イソシアネート、ジ−イソチオシアネート、二官能性スルホニルハライド、ビス−ニトロフェニルエステルおよび二官能性のアシルアジド)、ジケトン、p−ベンゾキノン、2−イミノチオラン、エリトリトールビスカルボネート、ムコ臭素酸、ムコクロル酸、エチルクロロギ酸エステルおよびマルチジアゾニウム(multidiazonium)化合物が挙げられる。
【0019】
これらの試薬を用いてタンパク質を架橋するための方法は、当該分野で公知である。一般には、本発明は、Envポリペプチド、Tatポリペプチドおよび架橋試薬を、架橋反応が進行することを可能にする条件下で混合する工程を包含する。しかし、ヘテロ二官能性試薬を用いる工程のようないくつかの2工程手順では、2つのポリペプチドのうちの1つを、最初に架橋試薬と反応させて、活性化ポリペプチドを形成し、次いで、この活性化ポリペプチドを第二のポリペプチドと反応させる。
【0020】
光反応性の基を有するヘテロ二官能性リンカーも有用である。リンカーが1つの熱反応性(thermoreactive)基および1つの光反応性(photoreactive)基を有するならば、第一の工程が、熱反応性基を介して結合し得、次いでこの複合体を形成するための結合が、例えば、UV光の使用によって開始され得る。別の方法では、光反応性基が最初に用いられてもよい。
【0021】
上記で言及されるとおり、この架橋反応は、EnvおよびTatタンパク質の臨界結合活性を排除するほど大きくない程度まで行われる。従って、このEnvおよびTatタンパク質の濃度、架橋試薬の濃度、pH、反応温度および反応時間は、所望の架橋の程度を得るように制御されてもよい。Env、Tatおよび架橋試薬の特定の組み合わせを試験するならば、最初の一連の反応を行って、適切な反応条件を評価してもよい。
【0022】
(複合体)
本発明の複合体としては、共有結合するEnvおよびTatタンパク質が挙げられる。好ましい複合体は、本質的に1:1のモル比のEnvおよびTatを有する。従って、Envが三量体の形態である場合、好ましい複合体は3つのTat単量体を含む。
【0023】
複合体中のEnvおよびTatポリペプチドは好ましくは、HIVが、例えば両方ともHIV−1由来または両方ともHIV−2由来である場合、同じタイプである。同じHIVタイプが用いられる場合、両方ともM群、N群またはO群由来である、例えば、HIV−1内の同じ群由来のEnvおよびTatポリペプチドに連結することも有用である。M群内では、同じサブタイプ(またはクレード)由来、例えば、サブタイプA、B、C、D、F、G、H、JまたはK由来のEnvおよびTatポリペプチドを連結することが有用である。CRF(循環組み換え型(circulating recombinant form))サブタイプ、例えば、A/BまたはA/EのCRF由来のEnvまたはTatを用いることも可能である。サブタイプがサブ−サブタイプを含むならば、EnvおよびTatポリペプチドは、同じサブタイプ由来であってもよい。種々の群由来のEnvおよびTatを用いるなら、しかし、サブタイプおよび/またはサブ−サブタイプは除外されない、HIV−1命名法は、引用文献5にさらに詳細に考察される。
【0024】
サブタイプBまたはC由来のEnvおよびTatの使用が好ましい。単一のサブタイプ(または適用可能、サブ−サブタイプ)内では、同じ株由来または異なる株由来のEnvおよびTatを用いることが可能である。例えば、EnvおよびTatポリペプチドは、両方ともSF152由来であってもよいし、または本発明は、1つの株(例えば、SF162)由来のEnvおよび別の株(例えば、BH10)由来のTatを用いてもよい。
【0025】
本発明のEnv/Tat複合体は、(a)CD4および/または(b)モノクローナル抗体(HIVのTatポリペプチドに特異的に結合する)に特異的に結合し得る。従って、この複合体は、複合体でないEnvポリペプチドのCD4結合活性、および/または複合体でないTatポリペプチドのmAb結合活性を保持する。結合活性(a)および(b)の両方との複合体が特に好ましい。上で注記されるとおり、これらの2つの活性を保持するには、EnvとTatの間に適切な程度の共有結合的な架橋を要する。この程度の架橋は、かなり広範な範囲内で変化し得、従って絶対的な正確さで制御される必要はないが、架橋が少なすぎれば、不安定な複合体がもたらされ、架橋が多すぎれば、結合活性は失われる。
【0026】
複合体が特異的にCD4に結合する場合、この結合活性は、例えば、引用文献6に記載されるように、公知のアッセイを用いて評価され得る。そのアッセイは、天然のCD4を用いる必要はないが、CD4の外部ドメインに基づいて精製された可溶型のCD4を用いることがさらに代表的である(例えば、引用文献6の実施例5を参照のこと)。CD4はまた、このアッセイを促進するために標識され得る。CD4は好ましくはヒトCD4である。今まで少なくとも250個のSNPがCD4について記載されており、そして任意のこれらのポリペプチド、例えば、REFSEQ CD4(GI:10835167)が用いられてもよい。複合体でないEnvは、特にCD4に結合し、そしてこの特異的な結合活性は、Env/Tat複合体に保持され得る。結合活性は、除去されないが、実際の結合親和性は変化してもよい。
【0027】
この複合体が抗Tatモノクローナル抗体に特異的に結合する場合、好ましいモノクローナル抗体は8D1.8であり、これは、AIDS Research and Reference Reagent Program,Division of AIDS,NIAID,NIH[7]から入手可能である。Tat結合アッセイにおけるこの抗体の使用は、例えば、引用文献8〜10において以前に開示されている。
【0028】
架橋の間、Env/Tat複合体のより高次のオリゴマーが観察されている。本発明は、これらのオリゴマーを用いてもよく、これらのオリゴマーを形成していないEnv/Tat複合体を用いてもよく、または両方の混合物を用いてもよい。オリゴマーが望ましくないならば、それらの形成は、適切な架橋条件を用いて回避されてもよく、またはそれらは、適切な分離技術、例えば、サイズに基づく技術などを用いて除かれてもよい。
【0029】
(Envポリペプチド)
本発明の複合体は、HIVのEnvポリペプチドを含み、そして種々の形態のEnvポリペプチドがHIV−1またはHIV−2から用いられ得る。例えば、この複合体は、全長gp160Envポリペプチド、gp120Envポリペプチド、gp160またはgp120ポリペプチド(1つ以上の欠失を有する)、gp120またはgp160ポリペプチドを含む融合タンパク質などを含んでもよい。しかし、全長のEnv前駆体であるよりも、本発明は代表的には短くなったタンパク質を用いる。
【0030】
REFSEQデータベース由来の全長HIV−1 Env前駆体のアミノ酸配列(GI:9629363)は、下に示される856マー(本明細書においては配列番号1)である:
【0031】
【化1】
この野性型HIV−1前駆体タンパク質を切断して、表面糖タンパク質gp120(例えば、配列番号1のアミノ酸29〜511;本明細書においては配列番号2)および膜貫通ドメインgp41(例えば、配列番号1のアミノ酸512〜856;本明細書では配列番号3)を得る:
【0032】
【化2】
gp120領域内の超可変領域は、以下のように配置され、配列番号1:V1=131〜157;V2=157〜196;V3=296〜331;V4=385〜418;およびV5=461〜471に従って番号付けされる。従って、gp120の全体的なC1−V1−V2−C2−V3−C3−V4−C4−V5−C5の配列内で、このサブドメインは以下のとおりである(配列番号2に従って番号付けされる):1〜102;103〜129;129〜168;169〜267;268〜303;304〜356;357〜390;391〜432;433〜443;および444〜483。CD4結合に重要と特定されている残基としては(配列番号1に従って番号付けされる)Asp−368、Glu−370、Trp−427、Val−430およびPro−438が挙げられ、そして免疫優性(イムノドミナント)領域は、残基588〜607である。これらの特徴は、適切な配列アラインメントを行うことによって他のHIV−1 Env配列において特定され得る。これらの特徴でアノテートされた、多数の株由来の事前に配列された配列はまた、Los Alamos HIV Sequence Compendiaで見出され得る[11]。
【0033】
全長HIV−2 Env前駆体のアミノ酸配列(GI:2144996)は、下に示される852マーである(本明細書では配列番号4):
【0034】
【化3】
このHIV−2 Env前駆体タンパク質を切断して、表面糖タンパク質(例えば、配列番号4のアミノ酸20〜502;本明細書においては配列番号5)および膜貫通ドメイン(例えば、配列番号4のアミノ酸503〜852;本明細書においては配列番号6)を得る:
【0035】
【化4】
超可変領域などは、ここでも、参照アラインメントによって、そしてLos Alamos HIV Sequence Compendiaにおけるアラインメントを参照して特定され得る。例えば、V3ループは、Cys−296〜Cys−329である。
【0036】
用いられ得る他の特異的なEnv配列としては、引用文献12〜16に開示される配列が挙げられる。
【0037】
上記で言及されるとおり、本発明は代表的には、短縮されたEnvポリペプチドを用いる。この短縮は、全長配列からの1つ以上のアミノ酸の除去、例えば、C末端および/またはN末端での短縮、内部残基の欠失、サブドメインの除去[17]、およびこれらのアプローチの組み合わせを包含する。
【0038】
例えば、Env前駆体の膜貫通ドメインおよび細胞質テールを除去することによってEnv前駆体の可溶型を作成することが公知である。このポリペプチドは、gp120配列およびgp41のエクトドメインを含み、「gp140」[18]として公知であり、gp120よりも免疫原として優れていることが報告されている[19]。このような前駆体は、そのC末端、例えば、配列番号1のLys−665の後で短縮されて、配列番号1のアミノ酸Ser−29〜Lys−665を有する637マーの成熟gp140配列(本明細書においては配列番号7)が得られる。従って、本発明のEnvポリペプチドは、gp41の一部を包含するが、その膜貫通ドメインは含まない。
【0039】
Env前駆体のV2ループ内の欠失を作成して、「ΔV2」変異体を得ることも公知である。例えば、40マーのV2ループ内の1つ以上のアミノ酸が欠失されてもよい(例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、24、26、28、30、32、34、36、38またはそれ以上のアミノ酸)。V2ループ内の欠失は、Envポリペプチドの免疫原性を改善することが報告されている[20、21]。V2ループにおいて欠失および/または置換を有するEnvポリペプチドは、本発明で好ましい。なぜなら、これらは、Env/Tat複合体を形成するのに特に有用であることが見出されているからである。詳細には、Env/Tat複合体は、そのV2ループが変異されない限り、単量体gp120では見られない。V2ループから欠失したアミノ酸は、他のアミノ酸で置換されてもよく、例えば、Gly−Ala−GlyトリペプチドでV2ループの中央部分を置換することが公知である。例えば、ΔV2変異体は、以下の配列を有してもよい(配列番号8):
【0040】
【化5】
ここで、130位置の「X」は、例えば4〜15アミノ酸の間の変異体V2ループに相当する。本発明での使用のための特に好ましいEnvポリペプチドはgp140タンパク質であって、HIV−1株SF162からΔV2変異を有する。その成熟型では、単一の配列の切断および分泌後(引用文献12の図24を参照のこと)、このポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する(配列番号9):
【0041】
【化6】
HIVゲノムは、コンスタント・フラックス(constant flux)の状態であり、単離体の間の比較的高い程度の変動を示すいくつかのドメインを含むので、本発明は、公知のHIVポリペプチドの正確な配列を有するEnvポリペプチドの使用に限られない。従って、本発明に従って用いられるEnvポリペプチドは以下から選択され得る:
(i)配列番号1、2、4、5、7、8および9から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(ii)配列番号1、2、4、5、7、8および9から選択されるアミノ酸配列に対して配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(iii)配列番号1、2、4、5、7、8および9から選択されるアミノ酸配列に対して比較して、1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10など)の置換および/または欠失および/または挿入を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(iv)配列番号1、2、4、5、7、8および9から選択されるアミノ酸配列由来の少なくともn個の連続的なアミノ酸のフラグメントを含むアミノ酸配列を含み、ここでnが7以上であるポリペプチド;あるいは
(v)ペアワイズアラインメントを用いて配列番号1、2、4、5、7、8および9から選択されるアミノ酸配列と配列された場合、N末端からC末端に動くxアミノ酸の各々のウインドウにおいて少なくともx・y同一の配列された単量体を有するpアミノ酸の配列を含むポリペプチドであって、ここで:p>x;p−x+1ウインドウがあり;xが20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800または850から選択され;yが0.50、0.60、0.70、0.75、0.80、0.85、0.90、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98または0.99から選択され;そしてx・yが整数でない場合最も近い整数に切り上げられる、ポリペプチド。
【0042】
これらのポリペプチドは、配列番号1、2、4、5、7、8および9のホモログ、オルソログ、対立遺伝子改変体および変異体を含む。例えば、プロテアーゼに対する耐性を改善するために天然のEnv配列を変異することが公知である。このポリペプチドはまた、融合ポリペプチドを含み、ここではEnv配列が非Env配列に融合されている。例えば、天然のリーダーペプチドなしのEnv配列を非Envタンパク質由来のリーダーペプチド(例えば、組織プラスミノゲン活性化因子由来)に融合することが公知である。
【0043】
(ii)の範疇内では、配列同一性の程度は、50%より大きくてもよい(例えば、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上)。ポリペプチドの間の同一性は好ましくは、パラメーターのギャップ・オープン・ペナルティー=12およびギャップ・エクステンション・ペナルティー=1を用いるアフィン・ギャップ検索を用いて、MPSRCHプログラム(Oxford Molecular)で実現されるようなSmith−Watermanホモロジー検索プログラムによって決定される。
【0044】
(iii)の範疇では、各々の置換は、単一のアミノ酸を包含し、各々の欠失は好ましくは、単一のアミノ酸を包含し、そして各々の挿入は好ましくは、単一のアミノ酸を包含する。これらの変化は、意図的に(例えば、部位特異的突然変異誘発によって)生じても、または自然に(例えば、ウイルス進化を通じて、または自然な変異を通じて)生じてもよい。(iii)の範疇のポリペプチドは、配列番号1、2、4、5、7、8または9に対して1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10など)の単一のアミノ酸置換を有してもよい。これらのポリペプチドは配列番号1、2、4、5、7、8または9に対して1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10など)の単一のアミノ酸欠失を有してもよい。これらのポリペプチドは、配列番号1、2、4、5、7、8または9に対して1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10など)の単一のアミノ酸挿入を有してもよい。この置換、挿入および/または欠失は、別々の位置であってもよいし、または連続していてもよい。置換は、保存的、すなわち、関連の側鎖を有する別のアミノ酸でのあるアミノ酸の置換であってもよい。遺伝子コードされるアミノ酸は一般には、4つのファミリーに分けられる:(1)酸性、すなわち、アスパラギン酸、グルタミン酸;(2)塩基性、すなわち、リジン、アルギニン、ヒスチジン;(3)非極性、すなわち、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン;および(4)非荷電極性、すなわち、グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシン。フェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシンは時に、芳香族アミノ酸として一緒に分類される。一般には、これらのファミリー内の単一のアミノ酸の置換は、生物学的な活性に大きな影響を有さない。種々の置換が、Envポリペプチドとの使用について記載されており、例えば、全長型で保持するポリペプチドを提供するために、gp120とgp41との間の切断部位を不活性にすること(例えば、Lys→Ser置換)、またはV3ループにおいて「クリッピング」部位を除去すること[22]、またはグリコシル化部位、特にNグリコシル化部位(すなわち、アスパラギン残基)を欠失もしくは置換することが公知である。
【0045】
(iv)の範疇内では、nの値は、7より大きくても、例えば、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、550、600、650、700、750、800、850以上であってもよい。このフラグメントは、この配列の少なくとも1つのT細胞および/またはB細胞エピトープを含んでもよい。T細胞およびB細胞のエピトープは、経験的に特定されてもよいし(例えば、PEPSCAN[23、24]または類似の方法)、またはそれらは、予測されてもよい(例えば、Jameson−Wolf抗原性指数[25]、マトリックスベースのアプローチ[26]、TEPITOPE[27]、天然のネットワーク[28]、OptiMer&EpiMer[29,30]、ADEPT[31]、Tsites[32]、親水性[33]、抗原性指数[34]または引用文献35に開示される方法などを用いる)。
【0046】
(v)の範疇では、好ましいペアワイズアラインメントアルゴリズムは、デフォールトパラメーター(例えば、ギャップ・オープニング・ペナルティー=10.0、およびギャップ・エクステンション・ペナルティー=0.5を用い、EBLOSUM62スコアリングマトリックスを用いる)を用いる、Needleman−Wunschグローバルアラインメントアルゴリズム[36]である。このアルゴリズムは、EMBOSSパッケージにおけるニードル(needle)ツールで都合よく実現される[37]。
【0047】
Envポリペプチドは、HIVビリオン上でオリゴマー型で見出され、そして本発明で用いられる好ましいEnvポリペプチドはまた、オリゴマーを、そして詳細には三量体を形成し得る。例えば、gp140のΔV2変異体は、三量体を形成することが示されている[20]。下に考察されるとおり、Env/Tat複合体は、そのV2ループが変異されない限り、単量体gp120を用いて形成されないが、三量体gp140からV2変異を要することなく形成される。
【0048】
本発明で用いられ得るEnvポリペプチドのこの群内では、好ましい特徴は、このポリペプチドが、CD4に対して天然のEnvが結合する能力を保持しなければならないということである。本発明のEnv/Tat複合体がCD4に特異的に結合し得るならば、この複合体のEnv成分はそれ自体が、CD4に対して、Tatの非存在下でさえ結合し得る。この複合体を作製する場合、例えば、CD4結合Envポリペプチドは、Tatポリペプチドと混合され、そしてCD4結合活性は、複合体形成によって除かれないが、実際の結合親和性は変化し得る。
【0049】
(Tatポリペプチド)
本発明の複合体は、HIVのTatポリペプチドを包含し、そしてHIV−1またはHIV−2由来の種々の形態のTatポリペプチドが用いられ得る。Tatポリペプチドの長さは、ウイルス株に依存して変化する。REFSEQデータベース由来の全長HIV−1 Tatポリペプチドのアミノ酸配列(GI:9629358)は、下に示される86マーである(本明細書においては、配列番号10):
【0050】
【化7】
種々のHIV−1 Tatポリペプチド配列内で、Cys−22およびCys−37が保存され、そして分子内ジスルフィド結合を形成する。RKKRRQRRRの9マーは、核局在化シグナルである。これらの特徴は、適切な配列アラインメントを行うことによって他のHIV−1 Env配列中で特定され得る。これらの特徴でアノテートした、多数の株からの事前に整列させた配列はまた、Los Alamos HIV Sequence Compendiaで見出され得る[11]。
【0051】
全長HIV−2 Tatポリペプチドのアミノ酸配列(GI:41056781)は、下に示される130マーである(本明細書においては、配列番号11):
【0052】
【化8】
これ、および他のHIV−2のTat配列のアラインメントは、Los Alamos HIV Sequence Compendiaに見出され得る。
【0053】
用いられ得る他の特異的なtat配列としては、引用文献12〜15および38に開示される配列が挙げられる。
【0054】
本発明での使用のための特に好ましいTatポリペプチドは、HIV−1株BH10由来である。このポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する(配列番号12:GI:62291022):
【0055】
【化9】
HIVゲノムは、コンスタント・フラックス(constant flux)の状態であり、そして単離体の間で比較的高い程度の変動を示すいくつかのドメインを含むので、本発明は、公知のHIVポリペプチドの正確な配列を有するTatポリペプチドの使用に限定されない。従って本発明に従って用いられるTatポリペプチドは、以下から選択され得る:
(i)配列番号10、11および12から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(ii)配列番号10、11および12から選択されるアミノ酸配列に対して配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(iii)配列番号10、11および12から選択されるアミノ酸配列に対して比較して、1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10など)の置換および/または欠失および/または挿入を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(iv)配列番号10、11および12から選択されるアミノ酸配列由来の少なくともn個の連続的なアミノ酸のフラグメントを含むアミノ酸配列を含み、ここでnが7以上であるポリペプチド;あるいは
(v)ペアワイズアラインメントアルゴリズムを用いて配列番号10、11および12から選択されるアミノ酸配列と配列された場合、N末端からC末端に動くxアミノ酸の各々のウインドウにおいて少なくともx・y同一の配列された単量体を有するpアミノ酸の配列を含むポリペプチドであって、ここで:p>xである場合;p−x+1ウインドウがあり;xが20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、または85から選択され;yが0.50、0.60、0.70、0.75、0.80、0.85、0.90、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98または0.99から選択され;そしてx・yが整数でない場合、最も近い整数に切り上げられる、ポリペプチド。
【0056】
これらのポリペプチドは、配列番号10、11および12のホモログ、オルソログ、対立遺伝子改変体および変異体を含む。それらはまた、融合ポリペプチドを含み、ここではこのTat配列が、非Tat配列に融合される。
【0057】
(ii)の範疇では、配列同一性の程度は、50%より大きくてもよい(例えば、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上)。ポリペプチドの間の同一性は好ましくは、パラメーターのギャップ・オープン・ペナルティー=12およびギャップ・エクステンション・ペナルティー=1を用いるアフィン・ギャップ検索を用いて、MPSRCHプログラム(Oxford Molecular)で実現されるようなSmith−Watermanホモロジー検索プログラムによって決定される。
【0058】
(iii)の範疇では、各々の置換は、単一のアミノ酸を包含し、各々の欠失は好ましくは、単一のアミノ酸を包含し、そして各々の挿入は好ましくは、単一のアミノ酸を包含する。これらの変化は、意図的に(例えば、部位特異的突然変異誘発によって)生じても、または自然に(例えば、ウイルス進化を通じて、または自然な変異を通じて)生じてもよい。(iii)の範疇のポリペプチドは、配列番号10、11または12に対して1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10など)の単一のアミノ酸置換を有してもよい。これらのポリペプチドは配列番号10、11または12に対して1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10など)の単一のアミノ酸欠失を有してもよい。これらのポリペプチドは、配列番号10、11または12に対して1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10など)の単一のアミノ酸挿入を有してもよい。この置換、挿入および/または欠失は、別々の位置であってもよいし、または連続していてもよい。上で言及されるとおり、置換は、保存的であってもよい。
【0059】
(iv)の範疇内では、nの値は、7より大きくても、例えば、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、550、600、650、700、750、800、850以上であってもよい。このフラグメントは、この配列の少なくとも1つのT細胞および/またはB細胞エピトープを含んでもよい。上記のように、このようなエピトープは、経験的に特定されてもよいし、またはそれらは、予測されてもよい。
【0060】
(v)の範疇内では、好ましいペアワイズアラインメントアルゴリズムは、上記のような、Needleman−Wunschグローバルアラインメントアルゴリズムである。
【0061】
(薬学的組成物)
本発明の複合体は、免疫原性成分において活性成分として用いられ得る。これらの組成物は、免疫応答を惹起するために動物に投与され得る。この免疫応答としては好ましくは、体液性の応答(例えば、抗体応答、例えば、中和性の抗体応答)、ならびに/または、Envおよび/もしくはTatに対する細胞性応答が挙げられる。HIVに既に感染している患者では、免疫応答は、感染の重篤度を軽減(例えば、ウイルス負荷を軽減)し得、そしてHIV感染のクリアランスさえ生じ得る。HIVに感染していない患者では、免疫応答は、将来のHIV感染のリスクを軽減し得、そして将来のHIV感染に対して防御さえし得る。免疫原性組成物の投与から生じるこれらの効果は、他の抗HIVストラテジーの使用、例えば、限定はしないが、ヌクレオシド逆転写酵素インヒビター、非ヌクレオシド逆転写酵素インヒビター、プロテアーゼインヒビター、進入インヒビター、融合インヒビターなどを含む抗ウイルス剤の投与によって増強され得るか、またはそれらを要するかもしれない。
【0062】
免疫原性組成物は、免疫学的に有効な量の複合体を含む。「免疫学的に有効な量(immunologically effective amount)」とは、個体に対するその量の投与が、単一の用量でもまたは一連の一部としてでも、所望の処置または予防に有効であるということを意味する。この量は、処置されるべき個体の健康度および肉体的な条件、処置されるべき個体(例えば、非ヒト霊長類、霊長類、など)の分類群、固体の免疫系が抗体を合成する能力、所望される防御の程度、ワクチンの処方、医学的状態の処置医師の評価、および他の関連の要因に依存して変化し得る。この量は、慣用的なトライアルを通じて決定され得る比較的広範な範囲内におさまり、そして1用量あたりの複合体の代表的な量は、抗原あたり1μg〜10mgの間であることが期待される。
【0063】
本発明の免疫原性組成物は薬学的に受容可能である。それらは通常、その複合体に加えて成分を含む、例えば、それらは代表的には、1つ以上の薬学的なキャリアおよび/または賦形剤を含む。このような成分の詳細な考察は、引用文献39で得られる。
【0064】
組成物は一般には、水溶型である。
【0065】
張度を制御するために、生理学的な塩、例えば、塩化ナトリウムを含むことが好ましい。塩化ナトリウム(NaCl)が好ましく、これは、1〜20mg/mlで存在し得る。存在してもよい他の塩としては、塩化カリウム、リン酸二水素カリウム、無水リン酸ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウムなどが挙げられる。
【0066】
組成物は一般に、200mOsm/kg〜400mOsm/kg、好ましくは240〜360mOsm/kgの重量モル浸透圧濃度を有し、そしてさらに好ましくは、290〜310mOsm/kgの範囲内におさまる。
【0067】
組成物は、1つ以上の緩衝液を含んでもよい。代表的な緩衝液としては以下が挙げられる:リン酸緩衝液;Tris緩衝液;ホウ酸塩緩衝液;コハク酸エステル緩衝液;ヒスチジン緩衝液;またはクエン酸塩緩衝液。緩衝液は代表的には、5〜20mMの範囲で含まれる。
【0068】
組成物のpHは一般には5〜8、さらに代表的には6〜7の範囲である。
【0069】
この組成物は好ましくは無菌である。この組成物は好ましくは、非発熱性であり、例えば、1用量あたり1EU(内毒素単位、標準的な指標)未満を、そして好ましくは1用量あたり0.1EU未満を含む。この組成物は好ましくはグルテンを含まない。
【0070】
本発明の組成物は、界面活性剤、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンエステルサーファクタント(「Tewwns」として公知)、オクトキシノール(octoxynol)(例えば、オクトキシノール−9(Triton X−100)またはt−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール)などを含んでもよい。
【0071】
ワクチンは、約0.5mlの投薬容積で投与され得る。
【0072】
(ワクチンアジュバント)
本発明の組成物は有利には、組成物を投与される患者で惹起された免疫応答(体液性および/または細胞性)を増強するように機能し得るアジュバントを含んでもよい。本発明で用いられ得るアジュバントとしては、限定はしないが以下が挙げられる:
・ミネラル含有組成物であって、カルシウム塩およびアルミニウム塩(またはその混合物)を含む組成物。カルシウム塩は、リン酸カルシウム(例えば、引用文献40に開示される「CAP」粒子)を含む。アルミニウム塩としては、任意の適切な形態(例えば、ゲル、結晶、非結晶)をとる塩との、水酸化物、リン酸塩、硫酸塩などが挙げられる。これらの塩に対する吸着が好ましい。ミネラル含有組成物はまた、金属塩の粒子として処方されてもよい[41]。アルミニウム塩アジュバントは下にさらに詳細に記載される。
【0073】
・水中油型エマルジョン(下にさらに詳細に記載されるような)。
【0074】
・免疫刺激性オリゴヌクレオチド、例えば、Cpgモチーフ(グアノシンに対するリン酸結合によって結合される非メチル化シトシンを含むジヌクレオチド配列)を含むもの、TpGモチーフ[42]、二本鎖RNA、パリンドローム配列を含むオリゴヌクレオチド、またはポリ(dG)配列を含むオリゴヌクレオチド。免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエート改変のようなヌクレオチド改変/アナログを含んでもよく、そして二本鎖であっても、または(RNAを除く)一本鎖であってもよい。引用文献43〜45は、可能性のあるアナログ置換、例えば、2’−デオキシ−7−デアザグアノシンでのグアノシンの置換を開示する。CpGオリゴヌクレオチドのアジュバント効果はさらに、引用文献46〜51に考察される。CpG配列は、TLR9、例えば、モチーフGTCGTTまたはTTCGTTに対して関連し得る[52]。CpG配列は、CpG−A ODN(オリゴデオキシヌクレオチド)のように、Th1免疫応答を誘導するのに特異的であり得、またはそれは、CpG−BODNのようなB細胞応答を誘導するのにさらに特異的であり得る。CpG−AおよびCpG−BのODNは、引用文献53〜55に考察される。好ましくは、CpGは、CpG−A ODNである。好ましくはCpGオリゴヌクレオチドは、5’末端がレセプター認識に到達可能であるように構築される。必要に応じて、「イムノマー(immunomers)」を形成するために2つのCpGオリゴヌクレオチド配列が、それらの3’末端に付着されてもよい。例えば、引用文献52および56〜58を参照のこと。有用なCpGアジュバントはCpG7909であり、これはProMune(商標)(Coley Pharmaceutical Group,Inc.)としても公知である。免疫刺激性オリゴヌクレオチドは代表的には、少なくとも20ヌクレオチドを含む。それらが含むのは、100ヌクレオチドより少なくてもよい。
【0075】
・3−O−脱アシル化モノホスホリル脂質A(「3dMPL」であって、「MPL(商標)」としても公知)[59〜62]。3−dMPLは、Salmonella minnesotaのヘプトセレス(heptoseless)変異体から調製されており、そして脂質Aと化学的に類似であるが、酸性の不安定なホスホリル基および塩基性の不安定なアシル基を欠く。3dMPLの調製はもともと、引用文献63に記載された。3dMPLは、そのアシル化によって変化する(例えば、異なる長さであり得る、3、4、5または6つのアシル鎖を有する)、関連分子の混合物の形態をとってもよい。2つのグルコサミン(2−デオキシ−2−アミノ−グルコースとしても公知)単糖は、それらの2位置の炭素で(すなわち、2位置および2’位置で)Nアシル化され、そしてまた3’位置にO−アシル化が存在する。
【0076】
・イミダゾキノリン化合物、例えば、イミキモド(Imiquimod)(「R−837」)[64、65]、レシキモド(Resiquimod)(「R−848」)[66]、およびそれらのアナログ;ならびにそれらの塩(例えば、塩酸塩)。免疫刺激性のイミダゾキノリンについてのさらなる詳細は、引用文献67〜71に見出され得る。
【0077】
・チオセミカルバゾン化合物、例えば、引用文献72に開示されるもの。活性な化合物について処方する、製造する、そしてスクリーニングする方法はまた、引用文献72に記載される。このチオセミカルバゾンは、TNF−αのようなサイトカインの産生のためのヒト末梢血単核球の刺激において特に有効である。
【0078】
・トリプタンスリン(tryptanthrin)化合物、例えば、引用文献73に開示されるもの。活性な化合物について処方する、製造する、そしてスクリーニングする方法はまた、引用文献73に記載される。このチオセミカルバゾンは、TNF−αのようなサイトカインの産生のためのヒト末梢血単核球の刺激において特に有効である。
【0079】
・ヌクレオチドアナログ、例えば:(a)イサトラビン(Isatorabine)(ANA−245;7−チア−8−オキソグアノシン):
【0080】
【化10】
およびそのプロドラッグ;(b)ANA975;(c)ANA−025−1;(d)ANA380;(e)引用文献74〜76に開示される化合物;(f)以下の式:
【0081】
【化11】
を有する化合物であって、
ここで:
R1およびR2が各々独立して、H、ハロ、−NRaRb、−OH、C1−6アルコキシ、置換C1−6アルコキシ、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、C6−10アリール、置換C6−10アリール、C1−6アルキル、または置換C1−6アルキルであり;
R3が、存在しないか、H、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、C6−10アリール、置換C6−10アリール、ヘテロシクリル、または置換ヘテロシクリルであり;
R4およびR5が各々独立して、H、ハロ、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、−C(O)−Rd、C1−6アルキル、置換C1−6アルキルであるか、または一緒に結合して5員の環をR4−5:
【0082】
【化12】
の中において形成し:
この結合は、
【0083】
【化13】
によって示される結合で得られ、
X1およびX2は各々独立して、N、C、OまたはSである;
R8は、H、ハロ、−OH、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、−OH、−NRaRb、−(CH2)n−O−Rc、−O−(C1−6アルキル)、−S(O)pRe、または−C(O)−Rdであり;
R9は、H、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリルまたはR9aであり、
ここでR9aが:
【0084】
【化14】
であり、
この結合は、
【0085】
【化15】
によって示される結合で得られ、
R10およびR11は各々独立して、H、ハロ、C1−6アルコキシ、置換C1−6アルコキシ、−NRaRb、または−OHであり;
各々のRaおよびRbが独立して、H、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、−C(O)Rd、C6−10アリールであり;
各々のRcは独立して、H、リン酸塩、二リン酸塩、三リン酸塩、C1−6アルキル、または置換C1−6アルキルであり;
各々のRdは各々独立して、H、ハロ、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、置換C1−6アルコキシ、−NH2、−NH(C1−6アルキル)、−NH(置換C1−6アルキル)、−N(C1−6アルキル)2、−N(置換C1−6アルキル)2、C6−10アリールまたはヘテロシクリルであり;
各々のReは独立して、H、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、C1−6アリール、置換C6−10アリール、ヘテロシクリル、または置換ヘテロシクリルであり;
各々のRfは独立して、H、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、−C(O)Rd、リン酸塩、二リン酸塩、または三リン酸塩であり;
各々のnは独立して、0、1、2または3であり;
各々のpは独立して、0、1、2または3であるか;あるいは
(g)(a)〜(f)のいずれかの薬学的に受容可能な塩、(a)〜(f)のいずれかの互変異性体、またはその互変異性体の薬学的に受容可能な塩。
【0086】
・ロキソリビン(7−アリル−8−オキソグアノシン)[77]。
【0087】
・引用文献78に開示される化合物であって、以下を含む化合物:アシルピペラジン化合物、インドールジオン化合物、テトラヒドライソキノリン(THIQ)化合物、ベンゾシクロジオン化合物、アミノアザビニル化合物、アミノベンズイミダゾールキノリノン(BIQ)化合物[79、80]、ヒドラプタラミド(Hydrapthalamide)化合物、ベンゾフェノン化合物、イソオキサゾール化合物、ステロール化合物、キナジリノン化合物、ピロール化合物[81]、アントラキノン化合物、キノキサリン化合物、トリアジン化合物、ピラザロピリミジン化合物およびベンザゾール化合物[82]。
【0088】
・引用文献83に開示される化合物であって、3,4−ジ(1H−インドール−3−イル)−1H−ピロール−2,5−ジオン、スタウロスポリンアナログ、誘導体化ピリダジン、クロメン−4−オン、インドリノン、キナゾリン、およびヌクレオシドアナログを含む化合物。
【0089】
・アミノアルキルグルコサミニドリン酸塩誘導体、例えば、RC−529[84、85]。
【0090】
・ホスファゼン、例えば、引用文献86および87に記載されるような、ポリ[ジ(カルボキシルアトフェノキシ)ホスファゼン](「PCPP」)。
【0091】
・低分子免疫賦活薬(immunopotentiators)(SMIP)、例えば:
N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
N2,N2−ジメチル−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
N2−エチル−N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−N2−プロピル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
1−(2−メチルプロピル)−N2−プロピル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
N2−ブチル−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
N2−ブチル−N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−N2−ペンチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−N2−プロプ−2−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
1−(2−メチルプロピル)−2−[(フェニルメチル)チオ]−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン
1−(2−メチルプロピル)−2−(プロピルチオ)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン
2−[[4−アミノ−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2−イル](メチル)アミノ]エタノール
2−[[4−アミノ−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2−イル](メチル)アミノ]エチルアセテート
4−アミノ−1−(2−メチルプロピル)−1,3−ジヒドロ−2H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2−オン
N2−ブチル−1−(2−メチルプロピル)−N4,N4−ビス(フェニルメチル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
N2−ブチル−N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−N4,N4−ビス(フェニルメチル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−N4,N4−ビス(フェニルメチル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
N2,N2−ジメチル−1−(2−メチルプロピル)−N4,N4−ビス(フェニルメチル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
1−{4−アミノ−2−[メチル(プロピル)アミノ]−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イル}−2−メチルプロパン−2−オール
1−{4−アミノ−2−(プロピルアミノ)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イル}−2−メチルプロパン−2−オール
N4,N4−ジベンジル−1−(2−メトキシ−2−メチルプロピル)−N2−プロピル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン。
【0092】
・サポニン[引用文献118の第22章]は、ステロールグリコシドおよびトリテルペノイドグリコシドの異種の群であり、これは、広範な種類の植物種の樹皮、葉、幹、根および花からさえ見出される。Quillaia saponariaのMolinaの木の樹皮からのサポニンは、アジュバントとして広範に研究されている。サポニンはまた、Smilax ornata(サルサパリラ)、Gypsophilla paniculata(brides veil)、およびSaponaria officianalis(soap root)から商業的に入手され得る。サポニンアジュバント処方物としては、精製処方物、例えば、QS21、ならびに液体処方物、例えば、ISCOMsが挙げられる。QS21は、Stimulon(商標)として市販される。サポニン組成物は、HPLCおよびRP−HPLCを用いて精製されている。これらの技術を用いる特定の精製された画分が特定されており、これにはQS7、QS17、QS18、QS21、QH−A、QH−BおよびQH−Cが挙げられる。好ましくは、サポニンはQS21である。QS21の産生方法は、引用文献88に開示される。サポニン処方物はまた、ステロール、例えば、コレステロールを含んでもよい[89]。サポニンおよびコレステロールの組み合わせを用いて、免疫刺激性複合体(immunostimulating complexs)(ISCOMs)と呼ばれる固有の粒子を形成してもよい[引用文献118の第23章]。ISCOMはまた代表的には、ホスファチジルエタノールアミンまたはホスファチジルコリンのようなリン脂質を包含する。任意の公知のサポニンがISCOMで用いられてもよい。好ましくは、ISCOMは、QuilA、QHA&QHCのうちの1つ以上を包含する。ISCOMはさらに引用文献89〜91に記載される。必要に応じて、ISCOMSはさらなる界面活性剤を欠いてもよい[92]。サポニンベースのアジュバントの開発の概説は、引用文献93および94に見出され得る。
【0093】
・細菌のADPリボシル化毒素(例えば、E.coli熱不安定性エンテロトキシン「LT」、コレラ毒素「CT」、または百日咳毒素「PT」)およびその無毒化誘導体、例えば、LT−K63およびLT−R72として公知の変異毒素[95]。粘膜アジュバントとしての無毒化ADPリボシル化毒素の使用は、引用文献96に記載されており、そして引用文献97においては非経口アジュバントとして記載されている。
【0094】
・生体接着材料および粘膜付着材、例えば、エステル化ヒアルロン酸マイクロスフェア[98]またはキトサンおよびその誘導体[99]。
【0095】
・微小粒子(すなわち、直径で約100nm〜150μm、より好ましくは直径で約200nm〜30μm、または直径で約500nm〜10μmの粒子)であって、生分解性でかつ非毒性である物質(例えば、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオリトエステル、ポリ無水物、ポリカプロラクトンなど)から形成され、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)が好ましく、必要に応じて、負に荷電された表面(例えば、SDSで)または正に荷電された表面(例えば、陽イオン性界面活性剤、例えば、CTABで)を有するように処理された、微小粒子。
【0096】
・リポソーム(引用文献118の第13章および14章)。アジュバントとしての使用に適切なリポソーム処方物の例は、引用文献100〜102に記載される。
【0097】
・ポリオキシエチレンエーテルおよびポリオキシエチレンエステル[103]。このような処方物はさらに、オクトキシノール[104]と組み合わせたポリオキシエチレンソルビタンエステルサーファクタント、ならびにポリオキシエチレンアルキルエーテルまたはエステルサーファクタントを、少なくとも1つのさらなる非イオン性サーファクタント、例えば、オクトキシノールと組み合わせて含む[105]。好ましいポリオキシエチレンエーテルは、以下の群から選択される:ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル(ラウレス(laureth)9)、ポリオキシエチレン−9−ステロイルエーテル、ポリオキシエチレン−8−ステロイルエーテル、ポリオキシエチレン−4−ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン−35−ラウリルエーテル、およびポリオキシエチレン−23−ラウリルエーテル。
【0098】
・ムラミルペプチド、例えば、N−アセチルムラミル−L−トレオニル−D−イソグルタミン(「thr−MDP」)、N−アセチル−ノルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(nor−MDP)、N−アセチルグルコサミニル−N−アセチルムラミル−L−Al−D−イソグル−L−Ala−ジパルミトキシプロピルアミド(「DTP−DPP」、または「Theramide(商標)」、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチレンアミン(「MTP−PE」)。
【0099】
・第二のグラム陰性細菌由来のリポポリサッカライド(LPS)調製物と組み合わされた第一のグラム陰性細菌から調製された外部膜タンパク質プロテアソーム調製物であって、ここで外部膜タンパク質プロテアソームおよびLPS調製物が安定な非共有結合性のアジュバント複合体を形成する調製物。このような複合体は、「IVX−908」、Neisseria meningitidis外部膜およびLPSからなる複合体を包含する。
【0100】
・メチルイノシン5’−一リン酸塩(「MIMP」)[106]。
【0101】
・ポリヒドロキシル化ピロリジン化合物[107]、例えば、以下の式:
【0102】
【化16】
を有する化合物であって、
Rが、水素、直鎖または分枝した、非置換または置換の、飽和したまたは不飽和のアシル、アルキル(例えば、シクロアルキル)、アルケニル、アルキニルおよびアリール基、またはその薬学的に受容可能な塩もしくは誘導体を含む群より選択される。例としては限定はしないが以下が挙げられる:カスアリン(casuarine)、カスアリン−6−α−D−グルコピラノース、3−エピ−カスアリン、7−エピ−カスアリン、3,7−ジエピ−カスアリンなど。
【0103】
・γインスリン[108]またはその誘導体、例えば、アルガムリン(algammulin)。
【0104】
・引用文献109に記載されるような、構造式I、IIもしくはIIIの化合物、またはその塩:
【0105】
【化17】
、例えば、「ER803058」、「ER803732」、「ER804053」、「ER804058」、「ER804059」、「ER804442」、「ER804680」、「ER804764」、「ER803022」、または「ER804057」、例えば:
【0106】
【化18】
【0107】
【化19】
・OM−174のようなEscherichia coli由来の脂質Aの誘導体(引用文献110および111に記載される)。
【0108】
・陽イオン性脂質および(通常は天然の)コ−脂質の処方物、例えば、アミノプロピル−ジメチル−ミリストールイルオキシ−プロパンアミニウム(propanaminium)ブロミド−ジフィタノイルホスファチジル−エタノールアミン(「Vaxfectin(商標)」)またはアミノプロピル−ジメチル−ビス−ドデシルオキシプロパンアミニウムブロミド−ジオレオイルホスファチジル−エタノールアミン(「GAP−DLRIE:DOPE」)。(±)−N−(3−アミノプロピル)−N,N−ジメチル−2,3−ビス(シン−9−テトラデセニルオキシ)−1−プロパンアミニウム塩を含む処方物が好ましい[112]。
【0109】
・リン酸塩含有非環式骨格に連結された脂質含有化合物、例えば、TLR4アンタゴニストE5564[113、114]:
【0110】
【化20】
これらおよび他のアジュバント活性物質は、引用文献118および119にさらに詳細に考察される。
【0111】
組成物は、このアジュバントの2つ以上を含んでもよい。
【0112】
組成物中の抗原およびアジュバントは、代表的には混合される。
【0113】
水中油型エマルジョンアジュバント
水中油型エマルジョンはアジュバントとして特に有用である。種々のこのようなエマルジョンが公知であり、そしてそれらは代表的には少なくとも1つのオイルおよび少なくとも1つのサーファクタントを含み、そしてこのオイルおよびサーファクタントは、生分解性(代謝可能)で、かつ生体適合性である。エマルジョン中の油滴は一般には直径5μm未満であり、サブミクロンの直径を有してさえよく、これらの小さいサイズは、安定なエマルジョンを得るためにマイクロフルイダイザーで達成される。濾過滅菌に供することができるので、サイズが220nm未満の小滴が好ましい。
【0114】
本発明は、動物(例えば、魚)または植物供給源由来のオイルのようなオイルと用いられてもよい。植物油のための供給源としては、ナッツ、種子、および穀類が挙げられる。ピーナツ油、大豆油、ココナツ油およびオリーブ油が最も一般的に入手可能であり、堅果油が例証される。例えば、ホホバマメ(jojoba bean)から得られるホホバ油が用いられ得る。種油としては、サフラワー油、綿実油、ヒマワリ(種子)油、ゴマ油などが挙げられる。穀物群では、コーン油は、最も容易に入手可能であるが、他の穀物、例えば、コムギ、カラスムギ、ライムギ、イネ(米)、テフ(teff)、ライコムギなどのオイルも用いられてもよい。6〜10炭素の脂肪酸エステルのグリセロールおよび1,2−プロパンジオールは、種油には天然には存在しないが、ナッツおよび種油から出発する適切な材料の加水分解、分離およびエステル化によって調製され得る。哺乳動物の乳汁由来の脂肪およびオイルは代謝可能であり、従って、本発明の実施において用いられ得る。動物の供給源から純粋なオイルを得るために必要な分離、精製、けん化および他の手段のための手順は、当該分野で周知である。ほとんどの魚は、容易に回収可能である代謝性オイルを含む。例えば、タラの肝油、サメの肝油および鯨油、例えば、鯨ろうが、例示される魚油のいくつかであり、これが本明細書で用いられてもよい。多数の分枝鎖オイルが、5炭素イソプレン単位で生化学的に合成され、そして一般にはテルペノイドと呼ばれる。サメ肝油は、スクアレンとして公知の、分枝した、不飽和のテルペノイド、2,6,10,15,19,23−ヘキサメチル−2,6,10,14,18,22−テトラコサヘキサンを含み、これが本明細書において特に好ましい。スクアレンに対する飽和アナログであるスクアランはまた、好ましいオイルである。スクアレンおよびスクアランを含む魚油は、市販の供給源から容易に入手可能であるか、または当該分野で公知の方法によって得られてもよい。他の好ましいオイルはトコフェロールである(下を参照のこと)。オイルの混合物が用いられてもよい。
【0115】
サーファクタントは、それらの「HLB」(ヒドロフィル/リポフィルのバランス)によって分類され得る。本発明の好ましいサーファクタントは、少なくとも10、好ましくは少なくとも15、そしてさらに好ましくは少なくとも16のHLBを有する。本発明は、サーファクタントとともに用いられてもよく、サーファクタントとしては限定はしないが以下が挙げられる:ポリオキシエチレンソルビタンエステルサーファクタント(Tweensと一般に呼ばれている)、特にポリソルベート20およびポリソルベート80;DOWFAX(商標)という商標で販売される、エチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)、および/またはブチレンオキシド(BO)のコポリマー、例えば、直鎖EO/POブロックコポリマー;オクトキシノールであって、反復するエトキシ(オキシ−1,2−エタンジイル)基の数を変化し得るもので、オクトキシノール−9(TritonX−100またはt−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール)が特に目的のものである;(オクチルフェノキシ)ポリエトキシエタノール(IGEPAL CA−630/NP−40);リン脂質、例えば、ホスファチジルコリン(レシチン);ラウリル、セチル、ステアリルおよびオレイルアルコール由来のポリオキシエチレン脂肪エーテル(Brijサーファクタントとして公知)、例えば、トリエチレングリコールモノラウリルエーテル(Brij30);ならびにソルビタンエステル(SPANとして一般に公知)、例えば、ソルビタントリオレエート(Span85)およびソルビタンモノラウレート。エマルジョンに含まれるのに好ましいサーファクタントは、Tween80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)、Span85(ソルビタントリオレエート)、レシチンおよびTritonX−100である。サーファクタントの混合物、例えば、Tween80/Span85混合物が用いられてもよい。
【0116】
本発明で有用な特異的な水中油型エマルジョンアジュバントとしては、限定はしないが以下が挙げられる:
・スクアレン、Tween80およびSpan85のサブミクロンのエマルジョン。容積あたりのエマルジョンの組成物は、約5%のスクアレン、約0.5%のポリソルベート80および約0.5%のSpan85であってもよい。重量に関しては、これらの比は、4.3%のスクアレン、約0.5%のポリソルベート80および約0.48%のSpan85になる。このアジュバントは、引用文献118の第10章、および引用文献119の第12章にさらに詳細に記載されるように、「MF59」として公知である[115〜117]。このMF59エマルジョンは有利には、クエン酸イオン、例えば、10mMのクエン酸ナトリウム緩衝液を含む。
【0117】
・スクアレン、トコフェロールおよびTween80のエマルジョン。このエマルジョンはリン酸緩衝化生理食塩水を含んでもよい。これはまた、Span85(例えば、1%で)および/またはレシチンを含んでもよい。これらのエマルジョンは、2〜10%のスクアレン、2〜10%のトコフェロールおよび0.3〜3%のTweeen80を有してもよく、そしてスクアレン:トコフェロールの重量比は好ましくは1以下であり、これによって、より安定なエマルジョンが得られる。このようなエマルジョンの1つは、PBS中にTween80を溶解して2%の溶液を得ること、次いでこの溶液と、ある混合物(5gのDL−αトコフェロールおよび5mlのスクアレン)の90mlを混合すること、次いで、この混合物を微小流体化することによって作成され得る。この得られたエマルジョンは、サブミクロンの油滴、例えば、100〜250nm、好ましくは約180nmの平均直径を有してもよい。
【0118】
・スクアレン、トコフェロールおよびTriton界面活性剤(例えば、TritonX−100)のエマルジョン。
【0119】
・スクアラン、ポリソルベート80およびポロキサマー401(「Pluronic(商標)L121」)のエマルジョン。このエマルジョンは、リン酸緩衝化生理食塩水、pH7.4の中で処方され得る。このエマルジョンは、ムラミルジペプチドの有用な送達ビヒクルであり、「SAF−1」アジュバント中でトレオニル−MDPと用いられ得る[120](0.05〜1%のThr−MDP、5%のスクアラン、2.5%のPluronic L121および0.2%のポリソルベート80)。これはまた、「AF」アジュバント中で、Thr−MDPなしでも用いられ得る[121](5%のスクアラン、1.25%のPluronic L121および0.2%のポリソルベート80)。微小流体化(microfluidisation)が好ましい。
【0120】
・0.5〜50%のオイル、0.1〜10%のリン脂質、および0.05〜5%の非イオン性サーファクタントを有するエマルジョン。引用文献122に記載されるとおり、好ましいリン脂質成分は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、スフィンゴミエリンおよびカルジオリピンである。サブミクロンの小滴サイズが有利である。
【0121】
・代謝性でないオイル(例えば、軽油)および少なくとも1つのサーファクタント(例えば、レシチン、Tween80またはSpan80)のサブミクロンの水中油型エマルション。添加物、例えば、QuilAサポニン、コレステロール、サポニン−脂溶性結合体(例えば、グルクロン酸のカルボキシル基を介したデサシルサポニンへの脂肪族アミンの付加によって生成される、引用文献123に記載される、GPI−0100)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミドおよび/またはN.N−ジオクタデシル−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)プロパンジアミンが含まれてもよい。
【0122】
・サポニン(例えば、QuilAまたはQS21)およびステロール(例えば、コレステロール)がヘリカル・ミセルとして会合されるエマルジョン[124]。
【0123】
そのエマルジョンは、送達の時点で、その場で抗原と混合されてもよい。従って、そのアジュバントおよび抗原は、使用の時点で最終処方の準備がととのった、別々にパッケージされるかまたは分配されたワクチン中に保持されてもよい。この抗原は一般には、そのワクチンが2つの液体を混合することによって最終的に調製されるように、水溶型である。混合のための2つの液体の容積比は、変化してもよい(例えば、5:1〜1:5)が、一般には1:1である。
【0124】
アルミニウム塩アジュバント
水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウムとして公知のアジュバントが用いられてもよい。これらの名称は慣習的であるが、存在する実際の化合物の正確な説明ではなく、簡便のために用いられているに過ぎない(例えば、引用文献118の第9章を参照のこと)。本発明は、アジュバントとして一般的に使用される任意の「水酸化物(hydroxide)」または「リン酸塩(phosphate)」アジュバントを用いてもよい。
【0125】
「水酸化アルミニウム(aluminium hydroxide)」として公知のアジュバントは代表的には、オキシ水酸化アルミニウム塩であり、これは通常少なくとも部分的に結晶である。化学式AlO(OH)で提示され得るオキシ水酸化アルミニウムは、他のアルミニウム化合物、例えば、水酸化アルミニウムAl(OH)3から、赤外線(IR)分光法によって、詳細には、1070cm−1の吸着バンドおよび3090−3100cm−1の強力なショルダーの存在によって識別され得る[引用文献118の第9章]。水酸化アルミニウムアジュバントの結晶化度の程度は、半分の高さでの回折帯の幅(width of the diffraction band at half height)(WHH)によって反映され、結晶粒子が乏しければより小さい結晶サイズに起因する、より大きい広幅化を示している。表面積は、WHHが増大するにつれて増大し、そしてより高いWHH値を有するアジュバントほど、有する抗原吸着の能力が大きいことが見られている。線維の形態(例えば、透過電子顕微鏡でみられる)は、水酸化アルミニウムアジュバントに代表的である。水酸化アルミニウムアジュバントのpIは代表的には、約11であり、すなわちこのアジュバント自体が、生理学的なpHで正の表面電荷を有する。pH7.4での1mgのAl+++あたり1.8〜2.6mgというタンパク質の吸着能力が、水酸化アルミニウムアジュバントについて報告されている。
【0126】
「リン酸アルミニウム」として公知のアジュバントは代表的には、アルミニウムヒドロキシホスフェートであり、しばしば少量の硫酸塩(すなわち、ヒドロキシリン酸アルミニウム硫酸塩)を含む。それらは、沈澱によって得られてもよく、そして沈澱の間の反応の条件および濃度が、塩におけるヒドロキシルのリン酸塩の置換の程度に影響する。ヒドロキシリン酸塩は一般には、0.3〜1.2の間のPO4/Alのモル比を有する。ヒドロキシリン酸塩は、ヒドロキシル基の存在によって厳密なAlPO4から識別され得る。例えば、3164cm−1(例えば、200℃に加熱された場合)のIRスペクトルのバンドは、構造的なヒドロキシルの存在を示す[引用文献118の第9章]。
【0127】
リン酸アルミニウムアジュバントのPO4/Al3+のモル比は一般的には0.3〜1.2の間、好ましくは0.8〜1.2の間、そしてより好ましくは0.95±0.1である。リン酸アルミニウムは一般には、特にヒドロキシリン酸塩については非結晶である。代表的なアジュバントは、0.6mgのAl3+/mlで含まれる、0.84〜0.92のPO4/Alモル比を有する非結晶性ヒドロキシリン酸アルミニウムである。リン酸アルミニウムは一般には、粒子性である(例えば、透過電子顕微鏡でみられるプレート状の形態)。粒子の代表的な直径は、任意の抗原吸着後に0.5〜20μm(例えば、約5〜10μm)の範囲である。pH7.4で1mgのAl+++あたり0.7〜1.5mgのタンパク質という吸着能力が、リン酸アルミニウムアジュバントについて報告されている。
【0128】
リン酸アルミニウムのゼロ荷電のポイント(point of zero charge)(PZC)は、ヒドロキシルのリン酸塩の置換の程度に反比例し、そしてこの置換の程度は、沈澱によって塩を調製するために用いられる反応条件および反応物の濃度に依存して変化し得る。PZCはまた、溶液中で遊離のリン酸塩イオンの濃度を変化することによって(リン酸塩が多ければ=より酸性PZCである)、またはヒスチジン緩衝液のような緩衝液を添加することによって(PZCをさらに塩基性にさせる)変更される。本発明に従って用いられるリン酸アルミニウムは一般には、4.0〜7.0、より好ましくは5.0〜6.5、例えば、約5.7のPZCを有する。
【0129】
本発明の組成物を調製するために用いられるアルミニウム塩の懸濁物は、緩衝液(例えば、リン酸塩またはヒスチジンまたはTris緩衝液)を含んでもよいが、これは、常に必要というわけではない。この懸濁液は好ましくは無菌であってかつ発熱物質を含まない(パイロジェンフリー)である。懸濁液は、1.0〜20mM、好ましくは5〜15mM、そしてさらに好ましくは約10mMの濃度で例えば存在する遊離の水溶性リン酸イオンを含んでもよい。その懸濁液はまた塩化ナトリウムを含んでもよい。
【0130】
本発明は、水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウムの両方の混合物を用い得る。この場合、水酸化アルミニウムよりも多くのリン酸アルミニウムが存在してもよい。例えば、少なくとも2:1、例えば、≧5:1、≧6:1、≧7:1、≧8:1、≧9:1などの重量比。
【0131】
患者に対する投与のための組成物中のAl+++の濃度は好ましくは、10mg/ml未満である。例えば≦5mg/ml、≦4mg/ml、≦3mg/ml、≦2mg/ml、≦1mg/mlなど。好ましい範囲は、0.3〜1mg/mlである。
【0132】
(本発明のキット)
ある組成物が、患者に対する送達のための2つの成分、例えば、Env/Tat複合体およびアジュバントを含む場合、これらは、製造の間に混合されてもよいし、またはそれらは、送達の時点で即席に混合されてもよい。従って、本発明は、混合の準備が整った種々の成分を含むキットを提供する。このキットによって、アジュバントおよび複合体は、使用時点まで別々に保持することが可能になる。この構成は水中油型エマルジョンアジュバントを用いる場合、特に有用である。
【0133】
この成分は、キット内でお互いから物理的に隔てられ、そしてこの分離は、種々の方法で達成され得る。例えば、2つの成分が、バイアルのような2つの別々の容器内にあってもよい。次いで、2つのバイアルの成分は、例えば、1つのバイアルの内容物を除去すること、そしてそれらを他のバイアルに添加することによって、または両方のバイアルの内容物を別々に取り出してそれらを第三の容器中で混合することによって、混合されてもよい。
【0134】
好ましい構成では、キットの構成要素の1つは、シリンジ中にあり、そして他は、バイアルのような容器中にある。このシリンジは、混合のために第二の容器中にその内容物を挿入するために(例えば、ニードル(ハリ)とともに)用いられてもよく、次いで、その混合物は、シリンジ中に吸引されてもよい。次いで、そのシリンジの混合された内容物は、代表的には新しい無菌のニードルを通じて患者に投与されてもよい。シリンジ中に1成分をパッキングすることによって、患者投与のために別のシリンジを用いる必要がなくなる。
【0135】
別の好ましい構成では、2つのキット構成要素を、一緒に、ただし同じシリンジ、例えば、引用文献125〜132などに開示されるシリンジなどの二重−チャンバ(dual−chamber)シリンジ中に別々に保持する。このシリンジが作動されれば(例えば、患者への投与の間)、2つのチャンバの内容物が混合される。この構成によって、使用時点における別々の混合工程の必要性が回避される。
【0136】
このキット成分は一般には水溶型である。ある構成では、ある成分(代表的には、アジュバント成分ではなく抗原成分)は、乾燥型(例えば、凍結乾燥型)であり、他の成分が水性型としてある。この2つの成分は、乾燥成分を再活性化して患者への投与のための水性成分を得るために混合され得る。凍結乾燥成分は代表的には、シリンジでなくバイアル内に配置される。乾燥された成分は、安定化剤、例えば、ラクトース、スクロースまたはマンニトール、ならびにその混合物、例えば、ラクトース/スクロース混合物、スクロース/マンニトール混合物などを包含し得る。1つの可能な構成では、プレ・フィルド(pre−filled)シリンジ中の水性アジュバント成分、およびバイアル中の凍結乾燥された抗原成分を用いる。
【0137】
(処置の方法、およびワクチンの投与)
本発明は、患者において免疫応答を惹起する方法を提供し、この方法は、この患者に対して本発明の組成物を投与する工程を包含する。本発明の組成物はヒト患者に投与するために特に適切であるが、また研究目的のため、抗血清を惹起するためなどのために他の哺乳動物に投与されてもよい。
【0138】
本発明はまた、医薬としての投与のための本発明のキットまたは組成物を提供する。
【0139】
本発明はまた、患者において免疫応答を惹起するための医薬の製造における本発明のEnv/Tat複合体の使用を提供する。
【0140】
本発明の組成物は種々の方法で投与され得る。最も好ましい免疫経路は、注射による(例えば、筋肉内、皮下、静脈内)であるが、他の利用可能な経路としては限定はしないが、経鼻、口腔、皮内、皮下、経皮、肺内などが挙げられる。
【0141】
処置は、単回用量スケジュールまたは複数用量スケジュールによってもよい。複数用量は、(プライム)初回免疫スケジュールおよび/またはブースター(追加)免疫スケジュールで用いられ得る。複数用量スケジュールでは、種々の用量が同じまたは異なる経路、例えば、非経口の初回および粘膜の追加、粘膜の初回および非経口の追加などで与えられてもよい。2回以上の用量(代表的には2用量)の投与が代表的である。複数の用量が代表的には、少なくとも1週間あけて投与される(例えば、約2週、約3週、約4週、約6週、約8週など)。
【0142】
(全般)
「含む、包含する(comprising)」という用語は、「含む、包含する(including)」および「含む、からなる(consisting)」を包含する。例えば、ある組成物が、Xを「含む(cmprising)」とは、排他的にXからなってもよいし、または何か追加のものを含んでもよい、例えばX+Y。
【0143】
「実質的に(substantially)」という言葉は、「完全に(completely)」を排除せず、例えば、Yを「実質的に含まない(substantially free)」組成物は、完全にYを含まなくてもよい。必要に応じて、「実質的に(substantially)」という言葉は、本発明の定義から省略されてもよい。
【0144】
「約(about)」という用語は、ある数値xに関して、例えばx±10%を意味する。
【0145】
特に言及しない限り、2つ以上の成分を混合する工程を包含するプロセスは、なんら特異的な順序の混合を必要としない。従って、成分は任意の順序で混合されてもよい。3つの成分が存在するならば、2つの成分をお互いと合わせ、次いでその組み合わせを第三の成分と組み合わせるなどしてもよい。
【0146】
動物(そして特にウシ)の物質を細胞の培養に用いる場合、それらは感染性海綿状脳症(TSE)のない、そして詳細には、牛海綿状脳症(BSE)のない供給源から得られるべきである。全体として、動物由来の材料の全くなしで細胞を培養することが好ましい。
【0147】
タンパク質または複合体が特定の標的(例えば、CD4またはモノクローナル抗体に対して)「特異的に結合する(binds specifically)」場合、これは代表的には、その標的に対して、コントロールのタンパク質に対してよりも、例えば、CD3に対してよりも、または抗Rev抗体に対してよりも、少なくとも10倍大きい親和性で結合する。特異的な結合および非特異的な結合は、標準的な技術によって、例えば、相互作用に対するコントロールのタンパク質の影響をチェックすることによって、用量応答性をチェックすることによってなどによって識別され得る。
【0148】
「ポリペプチド(polypeptide)」という用語は、任意の長さのアミノ酸ポリマーをいう。このポリマーは直鎖であってもまたは分枝であってもよく、これは修飾されたアミノ酸を含んでもよく、そしてこれは非アミノ酸によって解釈されてもよい。この用語はまた、天然にもしくは介入によって改変されているアミノ酸ポリマーを包含する;例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、ホスホリル化または任意の他の操作もしくは修飾、例えば、標識成分との結合体化。また、例えば、アミノ酸の1つ以上のアナログ(例えば、天然でないアミノ酸などを含む)および当該分野で公知の他の改変体を含むポリペプチドもこの定義に含まれる。ポリペプチドは、単鎖または会合された鎖として存在してもよい。本発明のポリペプチドは、天然にまたは天然でなくグリコシル化されてもよい(すなわち、このポリペプチドは、対応する天然に存在するポリペプチドに見出されるグリコシル化パターンとは異なるグリコシル化パターンを有する)。
【0149】
本発明での使用のためのEnvおよびTatポリペプチドは、多くの方法で、例えば、化学合成によって(全体または部分的に)、プロテアーゼを用いてより長いポリペプチドを消化することによって、RNAからの翻訳によって、細胞培養物から(例えば、組み換え発現から)の精製によって、生物体自体から(例えば、細菌培養後、または患者から直接)などによって調製されてもよい。40アミノ酸長未満のペプチドの産生のための好ましい方法は、インビトロの化学合成を包含する[133、134]。tBocまたはFmoc[135]化学に基づく方法などの固相のペプチド合成が特に好ましい。酵素的な合成[136]も、部分的にまたは完全に用いられ得る。化学合成とは別に、生物学的な合成を用いてもよく、例えば、ポリペプチドは翻訳によって生成されてもよい。これはインビトロでおこなっても、またはインビボでおこなってもよい。生物学的な方法は一般に、Lアミノ酸に基づくポリペプチドの産生に限定されるが、翻訳機構(例えば、アミノアシルtRNA分子)の操作を用いることによって、Dアミノ酸(または他の非天然のアミノ酸、例えば、ヨードチロシンまたはメチルフェニルアラニン、アジドホモアラニンなど)の導入を可能にしてもよい[137]。しかし、Dアミノ酸が導入される場合、化学合成を用いることが好ましい。本発明のポリペプチドは、C末端および/またはN末端で共有結合的な修飾を有してもよい。
【0150】
EnvおよびTatポリペプチドは、種々の形態をとり得る(例えば、天然、融合、グリコシル化、非グリコシル化、脂質化、非脂質化、リン酸化、非リン酸化、ミリストイル化、非ミリストイル化、単量体、マルチマー、微粒子、変性など)。Envについては、オリゴマーのグリコシル化ポリペプチドが好ましい。単量体ポリペプチドが好ましい。
【0151】
EnvおよびTatポリペプチドは好ましくは、精製されるか、または実質的に精製された形態、すなわち、他のポリペプチドを実質的に含まない(例えば、天然に存在するポリペプチドを含まない)、特に他のHIVもしくは宿主細胞のポリペプチドを実質的に含まない形態で提供され、そして一般には、少なくとも約50%純粋(重量で)、そして通常は少なくとも約90%純粋、すなわち、約50%未満、そしてさらに好ましくは約10%未満(例えば、5%以下)の組成物が、他の発現されたポリペプチドから作成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0152】
(本発明を行うための方式)
(EnvおよびTatの非共有結合)
4つの形態のEnvタンパク質を、HIV−1のSF162株から調製した:gp120;gp120ΔV2;gp140;およびgp140ΔV2。gp120分子は、単量体であるが、gp140分子は三量体である。これらの4つのタンパク質は、前に記載されている(例えば、引用文献12、138および139)。要するに、HIV−1 SF162およびHIV−1 SF162ΔV2単離体由来のEnvエクトドメインをコードする配列を、前に記載されたように[138]コドン改変して、2.1kbのEcoRI−XbaIDNAフラグメントとして合成的に構築した。この遺伝子カセットは、効率的な分泌のためにヒト組織プラスミノーゲンアクチベータ(TPA)シグナル配列にインフレームで融合されたEnvタンパク質のタンパク質コード領域を含んだ。コードされたオリゴマータンパク質のオリゴマー構造を安定化するために、Envポリペプチドにおける一次(REKR)および二次(KAKRR)プロテアーゼ切断部位を改変した[138]。得られたEnv発現カセット(gp120SF162、gp120SF162ΔV2、gp140SF162およびgp140SF162ΔV2)を、293細胞の一過性トランスフェクションのため、そしてまた安定なCHO細胞株の発達のためにpCMV3発現ベクターのEcoRI−XbaI部位にクローニングした。このベクターは、サイトメガロウイルスのエンハンサー/プロモーターエレメント、アンピシリン耐性遺伝子、ならびにジヒドロ葉酸還元酵素および減弱ネオマイシン耐性タンパク質から構成される融合タンパク質をコードする配列を含む。
【0153】
gp120SF162、gp120ΔV2SF162、gp140SF162およびgp140SF162ΔV2を分泌する安定なCHO細胞株は、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子における二重の欠失を有するDG−44細胞を用いること、従って、前に記載された実験プロトコールに従う、増殖培地に対するヒポキサンチン、グリシンおよびチミジンの添加に依存して細胞株を作成することによって誘導された[138、139]。
【0154】
目的のタンパク質を産生するCHO細胞クローンを用いて、各々のタンパク質について3リットルのバイオリアクターに播種した。バイオリアクターを、細胞の密度、pH、CO2およびO2濃度などについて毎日モニターした。分泌されたEnvの構造、構成および発現のレベルを毎週モニターした。最高のプロデューサークローン由来の物質を、100kDaの細孔サイズの膜フィルターを通じて20倍に濃縮して、1mMのEDTAおよび1mMのEGTAの存在下で−80℃で保管した。
【0155】
全てのエンベロープタンパク質を、前に記載されたストラテジーに従って精製した[139]。要するに、濃縮されたCHO細胞上清を、20mMのTris−100mMNaCl(pH7.4)で平衡にしたGalanthus Nivalisのアガロースカラム(GNA)上にロードした。結合したEnvを500mMのメチルマンノースピラノシドで溶出した。GNAカラム後の溶出液を、20mMのTris、100mMのNaCl(pH8.0)を含有する緩衝液で平衡にしたDEAEカラム上にロードした。これらの条件下で、Envは、カラムには結合せず、しかし混入したタンパク質は、このカラム上に保持される。このDEAEのフロー・スルー(flow through)は、10mMのPO4濃度に調節して、pHを6.8に調節して、そしてそのフロー・スルーを、10mMのNa2HPO4、100mMのNaCl(pH6.8)を含有する緩衝液で平衡にしたセラミック・ヒドロキシアパタイト(CHAP)カラム上にロードさせた。これらの条件下で、envタンパク質は、CHAPカラムに結合せず、そしてこのフロー・スルー中で回収された。精製プロセスの間、画分を、標準的な方法に従って、そしてまたCD4レセプター結合アッセイにおいて、還元および変性の下ならびに天然の条件の下でポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)によって分析した。ゲルをクマーシー・ブリリアント・ブルーで染色するか、または免疫ブロッティングのために処理した。V2ループの有無のあるEnv単量体を含む全ての画分をプールして、濃縮し、そして−80℃で凍結保存した。o−gp140SF162およびo−gp140SF162ΔV2を含有するピーク画分をプールして、濃縮し、そして10mMのNaCitrateに加えて300mMのNaClで平衡にされた16×90mmのSuperdex−200カラムで分画して、三量体から単量体を分離した。三量体高次構造にEnvタンパク質を含有する画分をプールして、濃縮し、そして用いるまで−80℃で凍結して保持した。
【0156】
BH10株由来のTatタンパク質も発現させて精製した。
【0157】
Far−Western分析を用いて、これらのEnvとTatタンパク質との間の相互作用を研究する。要するに、TatおよびEnvタンパク質の公知の量を、4℃で2時間インキュベートして、複合体を形成する。次いで、5μlのモノクローナル抗Tat抗体(4.3mg/ml)を添加し、そしてその混合物を一晩4℃でインキュベートした。次いで、50μlのプロテインA(プロテインA Sepharoseビーズ、50%溶液)を添加し、そしてその混合物を攪拌しながらさらに2時間、4℃でインキュベートした。次いで、その混合物を3回洗浄して、50μlの容積中で4×サンプル緩衝液中に溶出した。次いでその溶出されたタンパク質を、SDS−PAGEによって分離し、そして半乾性のトランスファーを用いてニロトセルロース上に転写した。得られたブロットを、抗Envポリクローナルウサギ抗体とともに最初にインキュベートした。そのブロットを洗浄して、アレクサ・フルオア(alexa fluor)780に結合体化された抗ウサギ二次抗体とともにインキュベートした。次いでブロットをOdyssey赤外線検出器で読み取った。
【0158】
図1は、1μgのTatおよび8μgのEnvを用いる、Far−Western分析の結果を示す。バンドはレーン2、3、4および6において明らかに可視である。図2は、レーン1〜4における標識強度の定量的分析を示しており、これはEnv/Tat混合物を含む。最低の強度は、レーン1(gp120の単量体)である。レーン2(gp120ΔV2の単量体)およびレーン3(gp140の三量体)は、類似の強度を示した。最強の強度は、レーン4に示された(gp140ΔV2三量体)。
【0159】
1μgのTatおよび種々の量のEnv(図3)を用いるさらなる実験によって、EnvとTatとの間の相互作用が特異的であることが確認された。
【0160】
逆の実験では、Envの量を固定して、ただし種々の量のTatを用い、異なる結果がみられた。EnvおよびTatを1:2というEnv:Tatの質量比で混合した場合、最高の相互作用が観察された。増えた量のTatは、Env結合に対して有害な影響を有した(図4)。
【0161】
表面プラズモン共鳴(SPR)を用いて、速度実験においてEnv/Tat結合の強度を決定した。その結果(図5)によって、Far−Westernアッセイの結果が確認された。gp140ΔV2三量体(図5A)、gp140三量体(図5B)、およびgp120ΔV2単量体(図5C)の解離定数は、それぞれ、22nM、37nMおよび91nMであった。gp120単量体は、試験されたいずれの濃度でも、そして異なる実験条件下でさえTatに結合しなかった。
【0162】
さらなるSPR実験では、Tatタンパク質を、CM4チップに固定して、サブタイプC株TV1由来のEnvタンパク質に曝した。種々の濃度(63、125、250、および1000nM)のいずれかの天然のEnv三量体(o−gp140TV1)またはΔV2−Env三量体(o−gp140DV2TV1)を試験した。図15は、その結果を示す。
【0163】
Tatによるgp120に対する結合の欠失が、機能的に不活性なgp120に起因するか否かを決定するために、全てのEnvタンパク質を、機能的な活性の予測因子としてそれらがCD4に結合する能力について分析した。4つ全てのEnvタンパク質が、予想される範囲の解離定数でCD4に結合した(図6)。従って、単量体のgp120は機能的であった。
【0164】
TatおよびEnvの三量体の間の相互作用はまた、遊離の溶液における等温滴定熱量分析(ITC)を用いて検討した。予備的なITCデータは、前の実験と一致しており、このことは、gp140三量体が、gp140ΔV2三量体よりも弱くTatに結合することを示している(図7)。このデータはまた、Env三量体が3つのTat分子に結合する、例えば、各々のEnv単量体が単一のTat結合部位を有することを示唆している。
【0165】
Envタンパク質に対するTat結合の部位を検討するために、CD4との結合相互作用を比較した。Tatは、CD4に対する結合について競合しないので、TatおよびCD4についてのEnv上の結合部位は異なるとみなされる。
【0166】
(EnvおよびTatの共有結合)
Env/Tat複合体を安定化するために、ホルムアルデヒドおよびグルタルアルデヒドを、図14に図示される反応スキームに従い架橋試薬として用いた。それらは、18の異なる条件下で試験した:
【0167】
【化21】
得られた複合体を、種々の基準で試験した、この基準としては以下が挙げられる:Envの存在;Tatの存在;架橋の性質;エピトープの保存;および結合活性の保存。コントロールの複合体をまた、架橋なしで用いた。
【0168】
EnvおよびTatタンパク質を、上記のとおり混合した。架橋試薬を、種々の濃度で添加して、その反応を、種々の期間進行させた。反応をクエンチし、次いで透析を用いて未反応の架橋試薬を除去した。次いで、その複合体をSDS−PAGE、ウエスタンブロット、Far−Western分析、SPRおよびSEC−HPLCによって分析した。
【0169】
図8は、標識のために抗Tat抗体を用いるウエスタンブロットを示す。18の反応条件のうち、遊離のTatは、ナンバー4〜6および13〜15に存在せず、分子量の種として代わりに泳動された。従って、4〜8時間の0.01%〜0.04%の間のグルタルアルデヒド架橋というのが、有効な共有結合架橋のための条件の原型的なセットである。
【0170】
図9は、グルタルアルデヒドを0.02%、0.04%または0.08%で用いた後、(9A)抗Tatまたは(9B)抗Env抗体を用いるウエスタンブロットを示す。これらの結果によって、EnvおよびTatは両方とも、共有結合した高MW複合体として遊走することが確認された。還元および変性の条件下での、図9におけるのと同じ複合体のSDS−PAGE分析によって、250kDaより大きい複合体、そしてこの種の強度は、架橋試薬の濃度とともに増大することが確認される。
【0171】
EnvのCD4結合活性に対する架橋の効果を検討した。図11は、図9において分析された同じ複合体のSEC−HPLC分析の結果を示す。比較のために、架橋のないEnv/Tat複合体、純粋なEnv、純粋なTat、および事前に架橋した等モルのEnv/Tat混合物(「SM」)も分析した。この共有結合されたタンパク質は、CD4に対して結合する能力を保持する(レーン1および4、そして6も比較する)。SPRを同様の分析に用いた(図12)。架橋の程度が増大するにつれてCD4結合はgp140ΔV2に対して減少するが、0.08%のサンプル中でさえ明白なままであり、そして陰性コントロールでみられるレベルをかなり上回って保持される。
【0172】
Tatエピトープに対する架橋の効果も検討した。図13は、SPR分析の結果を示す。EnvによるCD4結合に関しては、架橋のレベルの増大によってエピトープ結合活性が減少するが、0.08%のサンプルでさえ明白なままであり、コントロールをかなり上回って保持される。
【0173】
従って、これらの結果を組み合わせれば、EnvおよびTatは、安定な複合体を形成するように共有結合的に架橋されてもよく、そしてそれらの結合活性は、機能的なレベルで維持され得ることが示される。
【0174】
本発明は、ほんの一例として記載されており、そして本発明の範囲および趣旨内に保持されたまま改変がなされ得るということが理解される。
【0175】
参考文献(これらの内容は、参考として本明細書に援用される)
【0176】
【化22】
【0177】
【化23】
【0178】
【化24】
【図面の簡単な説明】
【0179】
【図1】図1は、Far−Westernアッセイの結果を示す。レーンは以下である:(1)gp120およびTat;(2)gp120ΔV2およびTat;(3)gp140およびTat;(4)gp140ΔV2およびTat;(5)gp120およびCD4;ならびに(6)gp120、CD4およびEnv。
【図2】図2は、任意の単位で測定した、図1由来の結果の定量的分析を示す。
【図3】図3は、EnvおよびTatについてFar−Westernアッセイを4つの異なるEnv濃度で示す。
【図4】図4は、EnvおよびTatについてのFar−Werternアッセイを3つの異なるEnv:Tat比で示す。
【図5】図5は、EnvについてのSPRの結果をTat(図5)で示す。Envタンパク質は以下であった:(A)gp140ΔV2;(B)gp140;(C)gp120ΔV2;および(D)gp120。このX軸は、時間(秒)を示し、そしてY軸は相対単位を示した。各々のグラフの5つの異なる線は、異なるEnv濃度であり、これは1000nMおよび4つの連続的2倍希釈である。
【図6】図6は、EnvについてのSPRの結果をCD4(図6)で示す。Envタンパク質は以下であった:(A)gp140ΔV2;(B)gp140;(C)gp120ΔV2;および(D)gp120。このX軸は、時間(秒)を示し、そしてY軸は相対単位を示した。各々のグラフの5つの異なる線は、異なるEnv濃度であり、これは1000nMおよび4つの連続的2倍希釈である。
【図7】図7は、(A)gp140および(B)gp140ΔV2のITC分析をTatで示す。上のパネルでは、X軸は、時間(分)を示し、そしてY軸は、μcal/秒を示す。下のパネルでは、X軸は、モル比を示し、そしてY軸は、注入物のkcal/モルを示す。
【図8】図8は、異なる条件下で異なる架橋試薬とともにインキュベートしたEnv/Tat複合体のウエスタンブロットを示す。遊離のTatは、ブロットの底にむかって示され得る。
【図9】図9は、(9A)抗−Tatまたは(9B)抗Env抗体を用いた4つのEnv/Tat複合体のウエスタンブロットを示す。レーンは以下である:(1)0.02%グルタルアルデヒド;(2)0.04%のグルタルアルデヒド;(3)0.08%のグルタルアルデヒド;そして(4)非架橋剤。MWマーカーは、15、25、30、35、50、75、105、160および250kDaである。
【図10】図10は、同じ複合体のSDS−PAGE分析を示す。MWマーカーは、15、25、30、35、50、75、105、160および250kDaである。
【図11】図11は、SEC−HPLC分析を示す。プロット1〜4は、図8および9のレーン1〜4にマッチする。プロット5は、Tat単独であり、そしてプロット6はEnv単独である。プロット7はSMである。2つの矢印は、Env結合したCD4(左側)および遊離のCD4(右側)を示す。
【図12】図12は、図8および9のレーン1〜3と同じ3つの架橋された複合体について、およびgp140ΔV2についてもSPRプロットを示す。図12Aおよび13Aの4つの線は、上から下に以下のとおりである:gp140ΔV2;0.02%;0.04%;および0.08%。このX軸は、時間(秒)を示し、そしてY軸は、相対単位(RU)を示す。図12Bおよび13Bは、4つのサンプルについて、そしてまた陰性のコントロール(緩衝液のみ)についてピークRU値を示す。
【図13】図13は、図8および9のレーン1〜3と同じ3つの架橋された複合体について、およびgp140ΔV2についてもSPRプロットを示す。図12Aおよび13Aの4つの線は、上から下に以下のとおりである:gp140ΔV2;0.02%;0.04%;および0.08%。このX軸は、時間(秒)を示し、そしてY軸は、相対単位(RU)を示す。図12Bおよび13Bは、4つのサンプルについて、そしてまた陰性のコントロール(緩衝液のみ)についてピークRU値を示す。
【図14】図14は、EnvおよびTatの共有結合架橋についての一般的な反応スキームを図示する。
【図15】図15は、サブタイプC株由来のEnvでのSPRの結果を示す。このy軸は、相対的な単位を示し、そしてx軸は、時間(秒)を示す。各々の線は異なるEnv濃度である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
HIVのEnvポリペプチドおよびHIVのTatポリペプチドを含む複合体であって、(i)該EnvおよびTatポリペプチドが共有結合され、かつ(ii)該複合体がCD4に特異的に結合し得る、複合体。
【請求項2】
HIVのEnvポリペプチドおよびHIVのTatポリペプチドを含む複合体を調製するためのプロセスであって、CD4に対してEnvタンパク質が特異的に結合する能力を除去することなくEnvおよびTatポリペプチドが互いに共有結合するようになる反応条件下で、EnvおよびTatポリペプチドを相互作用させる工程を包含する、プロセス。
【請求項3】
前記EnvおよびTatがHIV−1由来である、請求項1〜2のいずれか一項に記載の複合体またはプロセス。
【請求項4】
前記EnvおよびTatがHIV−1のM群由来である、請求項3に記載の複合体またはプロセス。
【請求項5】
前記EnvおよびTatがサブタイプB株由来である、請求項4に記載の複合体またはプロセス。
【請求項6】
前記EnvおよびTatがサブタイプC株由来である、請求項4に記載の複合体またはプロセス。
【請求項7】
前記EnvおよびTatがホモ二官能性架橋剤を介して連結される、請求項1〜6のいずれか一項に記載される複合体またはプロセス。
【請求項8】
前記EnvおよびTatがホルムアルデヒドまたはジアルデヒドとの反応を介して連結される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の複合体またはプロセス。
【請求項9】
前記EnvおよびTatが本質的に1:1のモル比で存在する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の複合体またはプロセス。
【請求項1】
HIVのEnvポリペプチドおよびHIVのTatポリペプチドを含む複合体であって、(i)該EnvおよびTatポリペプチドが共有結合され、かつ(ii)該複合体がCD4に特異的に結合し得る、複合体。
【請求項2】
HIVのEnvポリペプチドおよびHIVのTatポリペプチドを含む複合体を調製するためのプロセスであって、CD4に対してEnvタンパク質が特異的に結合する能力を除去することなくEnvおよびTatポリペプチドが互いに共有結合するようになる反応条件下で、EnvおよびTatポリペプチドを相互作用させる工程を包含する、プロセス。
【請求項3】
前記EnvおよびTatがHIV−1由来である、請求項1〜2のいずれか一項に記載の複合体またはプロセス。
【請求項4】
前記EnvおよびTatがHIV−1のM群由来である、請求項3に記載の複合体またはプロセス。
【請求項5】
前記EnvおよびTatがサブタイプB株由来である、請求項4に記載の複合体またはプロセス。
【請求項6】
前記EnvおよびTatがサブタイプC株由来である、請求項4に記載の複合体またはプロセス。
【請求項7】
前記EnvおよびTatがホモ二官能性架橋剤を介して連結される、請求項1〜6のいずれか一項に記載される複合体またはプロセス。
【請求項8】
前記EnvおよびTatがホルムアルデヒドまたはジアルデヒドとの反応を介して連結される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の複合体またはプロセス。
【請求項9】
前記EnvおよびTatが本質的に1:1のモル比で存在する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の複合体またはプロセス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【公表番号】特表2009−531444(P2009−531444A)
【公表日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−502966(P2009−502966)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【国際出願番号】PCT/US2007/007635
【国際公開番号】WO2007/126856
【国際公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【国際出願番号】PCT/US2007/007635
【国際公開番号】WO2007/126856
【国際公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】
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