説明

ICカードを用いた木材の管理方法

【課題】木材とその加工内容を確実に対応させると共に、情報管理においても記録の消失等による被害をより少なくすることができる木材の管理方法を提供する。
【解決手段】ICカードのメモリに木材の識別標識および加工情報等を書き込んだ後、前記識別標識に対応する木材にICカードを取り付け、加工工程で加工情報を読取装置で前記ICカードから読み取り、その加工情報に基づいて木材を加工し、加工したライン等の加工情報をICカードに書き込み、検査工程でICカードから加工情報を読み取り、その加工情報に基づいて木材を検査し、検査結果に基づいて木材の分別をする木材の管理方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレカット等の木材加工における木材の管理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原木から切り出した木材を木造建築物などに使用する場合、通常、木材加工工場内であらかじめ加工され建築材料の寸法形状とした後、建築現場に搬入して組み立てられるいわゆるプレカット工法が用いられる。プレカット工法における木材加工工場内での加工内容は主として木材の表面を平坦面に仕上げたり、建築材料同士を接続するためのほぞ等の成形するなどであり、長寸法の材木を建築部材の寸法に応じて複数本に切断する前加工を行うこともある。
【0003】
また、各木材を識別する識別標識や加工情報等を押印してし、その後の加工等の管理を行っている。
【0004】
しかしながら、木材に前記した押印する方法では記録できる情報量が少なく、詳細な加工情報は記録できないため、識別標識に対応した詳細な情報は外部に設けられた情報記録装置や管理台帳などに記録して管理および保管をしなければならない。
【0005】
したがって、前記情報を一括して管理している場合にあっては、情報記録装置のトラブルや管理台帳の紛失などで情報が失われた時には記録は残らず、情報管理上の問題もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記の問題を解決するためになされたものであり、加工される各木材に識別標識および加工情報を保持させて当該木材の加工内容を確実に対応させると共に、情報管理においても外部に設けられて一括管理している情報記録装置の記録の消失等により発生する被害をより少なくする木材の管理方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る手段は、ICカードのメモリに少なくとも木材の識別標識および加工情報を書込装置で書き込んだ後、前記識別標識に対応する木材に前記ICカードを取付け、加工工程で前記加工情報を読取装置で前記ICカードから読み取り、該加工情報に基づいて前記木材を加工し、加工したライン等の加工情報を書込装置で前記ICカードに書き込み、検査工程で前記ICカードから前記加工情報を読取装置で読み取り、該加工情報に基づいて前記木材を検査し、前記検査結果に基づいて前記木材の分別をするICカードを用いた木材の管理方法である。
【0008】
請求項2に係る手段は、ICカードのメモリに少なくとも木材の識別標識および加工情報を書込装置で書き込んだ後、前記識別標識に対応する木材に前記ICカードを取付け、加工工程で前記加工情報を読取装置で前記ICカードから読み取り、該加工情報に基づいて前記木材を加工し、加工したライン等の加工情報を書込装置で前記ICカードに書き込み、検査工程で前記ICカードから前記加工情報を読取装置で読み取り、該加工情報に基づいて前記木材を検査し、前記検査結果に基づいて前記木材の分別をした後、少なくとも木材の識別標識を記録したバーコードを前記木材に取付け、ICカードを取外して回収し、ICカードに書き込んだ情報を消去装置で消去して再使用するICカードを用いた木材の管理方法である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る手段によれば、ICカードを各木材に取り付けることで、該木材自身が加工情報等の多くの情報を保持できるため、例えば、木材の管理を行っているコンピュータのトラブルや管理台帳の紛失などにより外部で一括管理している情報が失われた場合であっても、被害を少なくすることができる。
【0010】
請求項2に係る手段によれば、ICカードが記録保持しているデータの全部又は一部を木材の加工後にバーコードに置き換えることによって、前記ICカードの再利用が可能となりコストを抑制することができる。また、バーコードとすることで、記録できる情報量はICカードよりも少ないものの電磁気ノイズの影響を受けないため、木材の情報を長期に渡ってよりいっそう安定して保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施の形態を図1〜図8に基づき説明する。なお、本発明には図2(a)または図2(b)に示したようなICカード1が用いられ、ICカード1内には多くのデータを書き込み、読み取り、消去が可能な公知技術を採用したICチップ11が埋め込まれている。
【0012】
また、識別標識や加工情報等の書込装置、読取装置、消去装置として、ICチップ11のメモリとの間で情報の書き込み、読み取り、消去ができる機能を備えたリーダライタを使用した。
【0013】
なお、後述する実施例においては図2(c)に示したように無線方式のリーダライタ3を使用し、 図2(b)に示したようなICカード1内にコイル状のアンテナ12を設けて非接触でデータの受け渡しを行う方式を用いたが、他に、図2(a)に示したようにICチップ11の表面に露出した端子にリーダライタの端子を直接接触させてデータの受け渡しを行う方式であっても構わない。
【実施例1】
【0014】
本発明の一実施例を図1および図3〜図6を用いて各工程に沿って説明する。
【0015】
まず、ICカード書込工程(図1の100)で、リーダライタを用いて識別標識および例えば出荷先、加工ライン、加工機、加工形状の加工情報(以下、「加工情報A」という。)を前記ICカード1に書き込む(図1の101)。
【0016】
ICカード取付工程(図1の200)では、加工情報Aの書き込まれたICカード1を、図3に示したように対応する木材b1の表面部位であって加工が行われずかつコンベアのローラーやクランプ等の当接しない部位に接着剤等で固着される(図1の201)。これはICカード1の刃物による切断やクランプによる押圧などによる損傷や外れを防止するためであり、適宜木材b1にシャクリ等の凹部を設けてその中にICカード1を固着してもよい。
【0017】
加工工程(図1の300)では、図4に示したようにリーダライタ31でICカード1のメモリに記録された識別標識および加工情報Aを読み取り、その情報に基づいて加工ライン、加工機を選択し、所定の形状に加工される(図1の301)。加工後には例えば実際に加工した加工ライン、加工機、加工日の加工情報(以下、「加工情報B」という。)をリーダライタ32でICカード1のメモリに書き込む(図1の302)。加工情報Bを書き込むのは、たとえば工程の途中で加工機等のトラブルがあった時には別の加工ラインや別の加工機に振り替えたりすることがあり、そのような加工情報も記録するためである。
【0018】
検査工程(図1の400)の手順は加工工程と同様であり、リーダライタで識別標識および加工情報Aを読み取った後、その情報に基づいて加工された形状寸法を検査して合否の判定を行う(図1の401)。また、例えば前記判定結果、寸法形状測定値、検査装置番号の情報(以下、「加工情報C」という。)がリーダライタでICカード1のメモリに書き込まれる(図1の402)。
【0019】
分別工程(図1の500)では、図5に示したようにコンベア91で搬送されてきた木材b2のICカード1のメモリからリーダライタ33で読み取った合否の判定結果に基づき合格した木材b3のみを分別してコンベア93に送出し、不合格の木材b4についてはコンベア92に送出して分別する(図1の501、502)。
【0020】
前記分別された合格した木材b3は伝票添付工程(図1の600)において、リーダライタ34でICカード1のメモリに記録された識別標識および加工情報A、B、Cを読み取り、その情報の全部または一部をプリンタ82を用いて視認できる文字として伝票72に印刷し、図6に示したように合格品(木材b3)に添付する。
【0021】
また、次の仕分け工程(図1の800)では、リーダライタ35で出荷に関する情報をICカード1から読み取り、前記合格した木材b3が仕分けコンベア94で図5のX、Y、Zのように出荷先ごとに仕分けをされる。一方、不合格の木材b4については適宜加工工程に戻して再加工をしたり、再加工が不可能な木材はICカード1が取り外されて他の用途として利用されたりする。この取り外されたICカード1はリーダライタでメモリ内の情報が消去され、ICカード書込工程(図1の100)で新たな木材の加工情報が書き込まれて、前記新たな木材に再び使用される。
【0022】
ところで、本実施例においてICカード1を木材に取り付けたのは、加工工程にあっては木材の識別標識と共に詳細な加工情報の書き込みや読み出しもできるためであり、加工途中の木材をコンベアから抜き取ったり、再加工をする木材を途中のコンベアに投入しても木材同士の混同や誤加工を引き起こすことがない。さらに、合格した木材b3の出荷以降にあっては、建築現場での加工情報の利用や経年時の保守等での利用ができて迅速に対応できる。
【0023】
なお、ICカード1は合格した木材b3に取り付けられて出荷されるため、建築現場ではリーダライタでメモリに保持されている記録を読み取って木材の詳細な内容を確認したり、手直し等の元データとすることができる。また、建築後の経年時においても前記した加工情報を保持しているため、たとえば地震等で前記木材が損傷を受けた場合などの保守情報や木材自身の履歴調査として使用することもできるため迅速な対応が可能となる。また、木材の記録保管を行っているコンピュータのトラブルや管理台帳の紛失などにより外部に記録された情報が失われた場合であっても被害を少なくすることができる。
【実施例2】
【0024】
次に、本発明の他の実施例について図7に示した工程図に沿って説明する。なお、ICカード書込工程(図7の100)から分別工程(図7の500)までは実施例1の工程と同様の工程であるため、その説明は省略する。また、同一の符号が付されているものは、同一または同種の工程、作業または物品を示すものとする。
【0025】
実施例1と同様な工程を経て分別工程(図7の500)を通過し、合格となって分別された木材b3は、伝票添付工程(図7の600)において、ICカードのメモリからリーダライタで読み取った識別標識や加工情報A,B,Cの全部または一部、あるいは追加情報を含めてプリンタ82を用いて視認できる文字として伝票72に印刷し、バーコード71としても印刷される。前記のバーコード71および伝票72は図8に示したように木材b3に添付される。
【0026】
取外し工程(図7の700)では、ICカード1が木材b3から取り外されて回収される。この回収されたICカード1は再使用が可能かどうかチェックした後に、再使用可能と判断されたICカードについては再利用される。一方、再使用不可と判断されたICカードは廃棄物として処理される。
【0027】
消去工程(図7の900)では、リーダライタを用いて前記した再使用可能なICカードのメモリに記録された識別標識や加工情報A,B,Cのデータが消去され、ICカード書込工程(図7の100)で再び使用される。
【0028】
ところで、本実施例において識別標識や加工情報等をバーコードに書き込んで木材b3に取り付けたのは、記録保持できる情報量は比較的少ないものの、電磁気ノイズの影響を受けないため、木材の情報を長期に渡ってよりいっそう安定的に保持できるためである。また、伝票72を併用したのは出荷先、納期などの出荷に関する情報が即時に認識できるためである。
【0029】
なお、本発明で使用されるバーコード71は、一次元バーコードあるいは二次元バーコードが使用される。特に、二次元バーコードを使用した場合には記録できる情報量が比較的多いため、バーコードにより詳細な情報を記録できる。バーコード71の記録内容は建築現場での材料確認時や経年後のトラブル時に図示していないバーコードリーダで前記情報を読み取ることができるため、より迅速に対応することが可能となる。
【0030】
前記した実施例1および実施例2においては加工情報等を記録する媒体としてICカードおよびバーコードについて説明したが、これらの媒体と外部に設けられたコンピュータ等の情報記録装置や制御装置とを併用して前記した加工情報等を共有したり、この情報に基づいて加工ライン等を制御する方法としてもよい。また、書き込み、読み取り、消去ができる機能を備えたリーダライタを使用したが、書込装置、読取装置、消去装置ごとに独立した装置としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施例における木材管理の流れを示す図である。
【図2】本発明に用いるICカードの斜視図である。
【図3】本発明において、加工する木材にICカードを取り付けた図である。
【図4】本発明の加工工程を示す図である。
【図5】本発明の分別工程以降の工程を示す図である。
【図6】本発明の一実施例において、加工された木材にバーコードおよび伝票を取り付けた斜視図である。
【図7】本発明の他の実施例における木材管理の流れを示す図である。
【図8】本発明の他の実施例において、加工された木材にバーコードおよび伝票を取り付けた斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
b1,b2,b3,b4 木材
1 ICカ−ド
11 ICチップ
31 読取装置
32 書込装置
5 加工装置
6 検査装置
71 バーコード
72 伝票

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICカードのメモリに少なくとも木材の識別標識および加工情報を書込装置で書き込んだ後、前記識別標識に対応する木材に前記ICカードを取付け、加工工程で前記加工情報を読取装置で前記ICカードから読み取り、該加工情報に基づいて前記木材を加工し、加工したライン等の加工情報を書込装置で前記ICカードに書き込み、検査工程で前記ICカードから前記加工情報を読取装置で読み取り、該加工情報に基づいて前記木材を検査し、前記検査結果に基づいて前記木材の分別をすることを特徴とする木材の管理方法。
【請求項2】
ICカードのメモリに少なくとも木材の識別標識および加工情報を書込装置で書き込んだ後、前記識別標識に対応する木材に前記ICカードを取り付け、加工工程で前記加工情報を読取装置で前記ICカードから読み取り、該加工情報に基づいて前記木材を加工し、加工したライン等の加工情報を書込装置で前記ICカードに書き込み、検査工程で前記ICカードから前記加工情報を読取装置で読み取り、該加工情報に基づいて前記木材を検査し、前記検査結果に基づいて前記木材の分別をした後、ICカードを取外して回収すると共に少なくとも木材の識別標識を記録したバーコードを前記木材に取り付け、ICカードに書き込んだ情報を消去装置で消去して再使用することを特徴とする木材の管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−130853(P2006−130853A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−324507(P2004−324507)
【出願日】平成16年11月9日(2004.11.9)
【出願人】(591009370)株式会社三ツワ (2)
【Fターム(参考)】