説明

ICカードリーダ

【課題】 非接触型ICカードが近接した場合でも内部ICの耐圧を超えることなく、且つ通信可能な距離をより遠方に伸ばすことができるICカードリーダを提供する。
【解決手段】 リーダライタは、アンテナ5の端子電圧によってICカードとの距離を検出し、CPU10は、その距離が短くなるのに応じて磁気信号の送信出力を低下させるように制御する。具体的には、アンテナ5に沿うように且つICカード22側のアンテナコイル外形と略等しくなるように閉ループ導体19を配置し、CPU10が、ICカード22との距離が短くなると判断するとスイッチ21をOFFして閉ループ導体19を閉路させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触型ICカードと電磁結合方式により通信を行うICカードリーダに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電磁結合方式により通信を行う無線カード用通信装置において、アンテナコイルを囲むように閉ループ導体を配置することで磁界密度分布を変化させ、通信装置近傍の磁界強度が強く、且つ遠方の電磁界強度が弱くなるように設定することで、無線カードとの通信が他の機器へ及ぼす影響を抑制すると共に、より離れた距離でも無線カードとの通信を可能とする技術が開示されている。
【特許文献1】特開2000−268138号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1の技術のように通信装置近傍の磁界強度を強くしすぎると、通信時にカードに内蔵されているICの耐圧を超えてしまう場合がある。また、特許文献1の技術では、近傍の磁界強度を強めることで近傍領域における距離を僅かに伸ばすことはできるが、遠方領域における距離は減少してしまう。
また、わが国においては、2002年10月に電波法が改正されているが、改正前の電波法の規制値では、非接触型ICカードと通信を行う装置については遠方において発生する磁界を押さえなければならないという事情もあった。しかし、上記改正によって通信装置の送信出力規制値は緩和されているため、その規制値に応じて最適となる送信出力制御を行うことが好ましい。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、非接触型ICカードが近接した場合でも内部ICの耐圧を超えることなく、且つ通信可能な距離をより遠方に伸ばすことができるICカードリーダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載のICカードリーダによれば、制御手段は、ICカードとの距離が短くなるのに応じて出力低下手段を切替え、磁気信号の送信出力を低下させるように制御する。従って、例えば、送信出力レベルを予め電波法の規制値付近に設定しておけば、ICカードとの通信可能距離をより伸ばすことが可能となる。そして、ICカードとの距離がより短くなった場合にはそれに応じて磁気信号の送信出力を低下させることで、カード内部のICの耐圧を超えてしまうことを回避できる。
【0006】
請求項2記載のICカードリーダによれば、出力低下手段を、アンテナと実質的に平行となるように形成された1つ以上の閉ループ導体と、当該アンテナが送信する磁気信号によって誘導されることにより前記閉ループ導体に流れる電流の大きさを制御する電流制御手段とで構成し、制御手段は、前記閉ループ導体に流れる電流の合計値が大きくなるように電流制御手段を制御する。即ち、1つ以上の閉ループ導体に誘導されて流れる電流が大きくなる程、磁気信号の送信出力を低下させることができる。
【0007】
請求項3記載のICカードリーダによれば、制御手段は、閉ループ導体のインピーダンスを可変制御可能な可変インピーダンス手段を制御して、閉ループ導体に流れる電流の大きさを制御する。即ち、閉ループ導体のインピーダンスを変化させて当該導体に流れる電流を制御する。
請求項4記載のICカードリーダによれば、制御手段は、スイッチング手段を制御して、閉ループ導体に接続するインピーダンス素子を切り替え、閉ループ導体に流れる電流の大きさを制御する。従って、閉ループ導体のインピーダンスを、インピーダンス素子とスイッチング手段との組み合わせによって選択的に変化させることができる。
【0008】
請求項5記載のICカードリーダによれば、制御手段は、閉ループ導体の一端と、他端から途中部位にかかる間の位置に配置される複数のスイッチング手段を選択的に閉じることで閉ループ導体に誘導される電流の大きさを制御する。斯様に構成すれば、選択的に閉じられるスイッチング手段に応じて、誘導電流が流れる閉ループ導体の長さが実質的に変化するので誘起される電圧が大きくなり、当該導体に流れる電流を増加させることができる。
【0009】
請求項6記載のICカードリーダによれば、閉ループ導体を複数巻のループで構成するので、複数のスイッチング手段を選択的に閉じることで有効となる閉ループ導体の巻数を変化させることができる。従って、その巻数の変化により、閉ループ導体に流れる電流の大きさを変化させることができる。
請求項7記載のICカードリーダによれば、複数の閉ループ導体における閉ループがなす面積が夫々異なるように形成するので、それらの閉ループ導体を限られたスペースに集中的に配置することができる。
【0010】
請求項8記載のICカードリーダによれば、複数の閉ループ導体を実質的に同心となるように配置するので、複数の導体をより効率的に配置することができる。
請求項9記載のICカードリーダによれば、複数の閉ループ導体を中心位置が夫々異なるように配置するので、どの位置にある閉ループ導体に電流を誘導させるかによって、アンテナの発生磁界強度を変化させることができる。
【0011】
請求項10記載のICカードリーダによれば、複数の閉ループ導体を、相互に重ならないように配置するので、電流を誘導させた場合、導体間に干渉が発生することを回避できる。
請求項11記載のICカードリーダによれば、距離検出手段は、アンテナの端子電圧に基づいてICカードとの距離を検出する。即ち、ICカードがカードリーダに接近した状態になると、アンテナの端子電圧振幅は大きくなるため、その電圧振幅を参照することでICカードとの距離を検出することができる。
【0012】
請求項12記載のICカードリーダによれば、距離検出手段は、自身の消費電流に基づいてICカードとの距離を検出する。即ち、前記距離に応じて送信側の消費電流は変化するが、その増減方向は、送信回路を構成するインピーダンス整合回路の次数などによっても異なる場合がある。従って、消費電流を参照することでICカードとの距離を検出することができる。
【0013】
請求項13記載のICカードリーダによれば、距離検出手段は、赤外線センサを用いてICカードとの距離を検出するので、赤外線の反射状態に基づいてICカードとの距離を検出することができる。
請求項14記載のICカードリーダによれば、距離検出手段は、受光センサを、ICカードとの通信を行う面側に配置することで構成されている。即ち、ICカードがカードリーダの通信面側に接近していない場合、受光センサは周囲の光を受光可能な状態にある。そして、ICカードが通信面側に接近すれば受光センサの受光面を蔽うような状態になるため、センサの受光量は低下する。従って、当該センサの信号を参照することでICカードとの距離を検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(第1実施例)
以下、本発明の第1実施例について図1乃至図9を参照して説明する。図5は、非接触型ICカードに対してデータを読み書きするためのリーダライタ1の電気的構成を示す機能ブロック図である。リーダライタ(ICカードリーダ)1の送信系は、13.56MHzのキャリアを発生させる発振器2、そのキャリアを変調するための変調回路3、被変調信号を増幅する増幅回路4、その増幅回路4とループコイル状のアンテナ5との間に配置され、インピーダンスの整合を図るための整合回路6などで構成されている。アンテナ5からは、変調された磁気信号が送信されるようになっている。
【0015】
一方、リーダライタ1の受信系は、アンテナ5を介して受信された信号を受けてその包絡線を検波するための検波回路(距離検出手段)7、受信信号をフィルタリングするフィルタ8、フィルタ8の出力信号を増幅する増幅回路9、その増幅信号を2値化してCPU(マイクロコンピュータ,制御手段,距離検出手段)10に出力する2値化回路11などで構成されている。
【0016】
検波回路7は、アンテナ5とフィルタ8の入力端子との間に接続される抵抗12及びダイオード13の直列回路と、電源とグランドとの間に接続され、共通接続点がフィルタ8の入力端子に接続される抵抗14及びコンデンサ15の直列回路と、コンデンサ15に並列接続される抵抗16とで構成されている。そして、検波回路7の出力端子(フィルタ8の入力端子)は、CPU10が備えているA/D変換器17の入力ポートに接続されており、CPU10は、検波回路7によって検波された信号をA/D変換して読み込むようになっている。尚、以上の構成よりアンテナ5及びCPU10を除いたものが、送受信回路18を構成している。
【0017】
図6は、検波回路7における信号の入出力状態を示すものである。入力信号は、略13.56MHzのキャリアであるが、出力信号は、そのキャリアの振幅レベルに応じた包絡線を略一定レベルで出力するものとなる。そして、その出力レベルは、リーダライタ1とICカード22との距離が短くなるのに応じて上昇する場合がある。
即ち、リーダライタ1における送信路のインピーダンスは、整合回路6によって整合が図られた状態にある。その状態からアンテナ5にICカード22が接近すると、相互インダクタンスなどの影響を受けてインピーダンスの整合にずれが生じる。その結果、アンテナ5の端子電圧は上昇し、流れる電流は減少するようになる。尚、これらの大小関係は、整合回路6の構成(素子接続における直並列の相違や、次数など)に応じて逆転する場合もある。
【0018】
図7は、上記の現象をより詳細に説明するものである。図7(a)は、送信系の等価回路であり、交流電圧源に送信インピーダンスZSとアンテナインピーダンスZLとの直列回路が接続されている。また、図7(b)は、アンテナインピーダンスZLの等価回路とICカード側の等価回路とを示すものである。アンテナインピーダンスZLは、コンデンサ及びコイルの直列回路と、そのコイルに並列接続されるコンデンサ(容量可変)として表される。また、ICカード側は、アンテナ用のコイルと、そのコイルの両端に接続されるカード負荷で表される。図7(b)に示すように、ICカード22がリーダライタ1のアンテナ5に接近すると、ICカード22側のコイルとの間に相互インダクタンスが作用することでアンテナインピーダンスZLが増加する。その結果、アンテナ5の端子電圧は上昇する。
【0019】
図8は、リーダライタ1とICカード22との距離(横軸)に応じてアンテナ5の端子電圧V1が変化する状態を示すものである。リーダライタ1の周辺に導電体がない場合は端子電圧V1が破線で示すように変化すると、周辺に導電体がある場合は、実線で閉めU用に変化する。このような関係より、端子電圧V1を参照することで、ICカード22とのおおよその距離を検出することができる。
【0020】
図1は、アンテナ5周辺の構成を中心として示すものである。アンテナ5は、ループ状のコイルアンテナであり、そのアンテナ5の形状に沿うようにして、内周側に閉ループ導体(出力低下手段)19が配置されている。また、閉ループ導体19は、ICカード22側に配置されているアンテナコイルの外形と略同じ外形をなすように形成されている。
尚、閉ループ導体19には、例えば抵抗値10Ω程度の抵抗(電流制御手段,可変インピーダンス手段,インピーダンス素子)20が挿入されており、その抵抗20を短絡するためのスイッチ(電流制御手段,可変インピーダンス手段,スイッチング手段)21が並列に接続されている。そして、スイッチ21のON/OFFは、CPU10によって制御されるようになっている。従って、アンテナ5と閉ループ導体19とは、近接して配置されることで相互インダクタンスによって結合した状態にある(図3参照)。また、抵抗20の抵抗値を極めて大きくし、スイッチ21のON/OFFによって閉ループ導体19が実質的に閉又は開となるようにすることも可能である。
【0021】
次に、本実施例の作用について図2乃至図4、及び図9も参照して説明する。図9は、CPU10によって実行される本発明の要旨に係る部分の処理内容を示すフローチャートである。尚、初期状態としては、ICカード22がリーダライタ1を基点とする遠方領域にあるものとして、スイッチ21をOFFにしておく。即ち、閉ループ導体19は、抵抗20が挿入されることでインピーダンスが高い状態にあることから、アンテナ5との結合度合いは小さく、閉ループ導体19がアンテナ5に対して及ぼす影響は小さい状態となっている。
【0022】
先ず、CPU10は、A/D変換器17を介して検波回路7の出力電圧、即ち、キャリアの包絡検波電圧を監視すると(ステップS1)、その検波電圧を遠方監視電圧(図2(b)参照)と比較する(ステップS2)。そして、前者が後者よりも小さい場合は(「OK」)そのままステップS1に戻る。
一方、ステップS2において、検波電圧が遠方監視電圧以上である場合は(「NG」)、ICカード22がリーダライタ1の近傍領域にあると判断される。従って、CPU10はスイッチ21をONにする(ステップS3)。この場合、抵抗20が短絡されて閉ループ導体19のインピーダンスは低下するので、アンテナ5との結合度合いは大きくなる。従って、アンテナ5より送信される磁界信号の一部は、閉ループ導体19側にも誘導されて消費される。その結果、リーダライタ1の送信出力は低下するようになる。
【0023】
次に、CPU10は、ステップS1と同様にキャリアの包絡検波電圧を監視すると(ステップS4)、その検波電圧を近傍監視電圧(図2(b)参照)と比較する(ステップS5)。そして、前者が後者以上である場合は(「OK」)ステップS4に戻り、前者が後者未満であれば(「NG」)スイッチ21をOFFにして(ステップS6)ステップS1に移行する。
【0024】
即ち、検波電圧が近傍監視電圧よりも小さくなった場合は、ICカード22がリーダライタ1の近傍から遠方界に移行したものと推定される。そして、スイッチ21をOFFにすることで、閉ループ導体19のインピーダンスは抵抗20の抵抗値によって増大するため、アンテナ5との結合度合いは小さくなる。すると、アンテナ5より送信される磁界信号は閉ループ導体19側に誘導されにくくなるので、その結果、リーダライタ1の送信出力は上昇するようになる。
【0025】
ここで、図3には、リーダライタ1における送信系の等価回路と、ICカード22側の等価回路を示す。上述したように、リーダライタ1のアンテナ5と閉ループ導体19とは、相互インダクタンスによって結合した状態にあるが、抵抗20が挿入されるか否かによって結合度合い(結合係数)は変化する。
図4は、横軸にリーダライタとICカードとの距離をとり、リーダライタ側に閉ループ導体がない場合、リーダライタ側に閉ループ導体がある場合で、且つその外形が、ICカード側のアンテナコイルに略等しい場合とそのアンテナコイルよりも小さい場合とについて、縦軸に、リーダライタのアンテナとICカード側のアンテナとの結合係数をとって示すものである。この図4から明らかなように、リーダライタ側に閉ループ導体がない場合(実線)の結合係数が最も高く、閉ループ導体の外形がICカード側のアンテナコイルに略等しい場合(1点鎖線)の結合係数が最も低くなっている。斯様な原理によって、リーダライタ側の磁界信号の出力を変化させている。
【0026】
図2は、ICカード22が遠方界からリーダライタ1側に接近する場合の各信号の出力変化の一例を示すもので、(a)は、抵抗20が挿入されて閉ループ導体19が等価的に無いと想定される状態と、抵抗20がバイパスされて閉ループ導体19がある状態とについて、ICカード22側が受信する磁界強度を示したものである。また、図2(b)は、リーダライタ1側におけるアンテナ5のキャリア振幅(端子電圧)と、検波回路7の出力信号である包絡検波出力とを示す。尚、時間軸は、図中右から左方向に変化しているものとする。
【0027】
ICカード22が遠方界にある場合、リーダライタ1側への影響はなく発生磁界強度は一定となっているため、ICカード22側の受信磁界強度は、両者間の距離が接近するのに応じて漸増する。ICカード22がある程度接近することでリーダライタ1側に影響を及ぼすようになると、キャリア振幅が上昇すると共に受信磁界強度も上昇する。そして、包絡検波出力が遠方監視電圧を超えると、CPU10がスイッチ21をオフに切替える。すると、受信磁界強度は、閉ループ導体19の結合度合いの上昇によって低下する。
【0028】
以上のように本実施例によれば、リーダライタ1は、アンテナ5の端子電圧によってICカード22との距離を検出し、CPU10は、その距離が短くなるのに応じて、磁気信号の送信出力を低下させるように制御する。従って、例えば、送信出力レベルを予め電波法の規制値付近に設定しておけば、ICカード22との通信可能距離をより伸ばすことが可能となる。そして、ICカード22との距離がより短くなった場合には、それに応じて磁気信号の送信出力を低下させるので、カード22内部のICの耐圧を超えてしまうことを回避できる。
【0029】
また、アンテナ5に沿うように、また、ICカード22側のアンテナコイル外形と略等しくなるように閉ループ導体19を配置し、CPU10が、ICカード22との距離が短くなると抵抗20のスイッチ21をOFFして閉ループ導体19を閉路させ、カードリーダ1の近傍における磁界強度を弱めるように調整することができる。
【0030】
(第2実施例)
図10及び図11は本発明の第2実施例を示すものであり、第1実施例と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、以下異なる部分についてのみ説明する。図10は、リーダライタ(ICカードリーダ)23の図5相当図である。第2実施例では、ICカード22が接近したことを検出するのに、アンテナ5の端子電圧を検出することに替えて、リーダライタ23の消費電流を検出することで行うようにしたものである。
【0031】
即ち、第1実施例で述べたように、ICカード22が接近することでインピーダンス整合がずれると、アンテナ5の端子電圧は上昇し、出力電流は低下する。そこで、増幅回路4の電源電流を、抵抗(距離検出手段)24の負荷側においてその端子電圧変化として検出し、CPU10は、A/D変換器17によりA/D変換して読込むことで、図11に示すように、ICカード22が接近したことを検知できる。その他の構成は第1実施例と同様である。
以上のように構成された第2実施例による場合も、第1実施例と同様の効果を得ることができる。
【0032】
(第3実施例)
図12及び図13は本発明の第3実施例を示すものであり、第1実施例と異なる部分についてのみ説明する。第3実施例では、ICカード22が接近したことを検出するのに、例えばフォトトランジスタなどの受光素子(光電変換素子,距離検出手段)25を用いて行うようにしたものである。
【0033】
即ち、図12(a)に示すように、リーダライタ(ICカードリーダ)26の本体でICカード22が接近する側の面に受光素子25を配置しておく。ICカード22が接近しない状態においては、受光素子(受光センサ)25は外光を十分に受光可能な状態にある。そして、図12(b)に示すようにICカード22が接近すると、受光素子25の受光面が遮断されて受光レベルは低下する。従って、その受光レベルの変化を、図13に示すように、CPU10がA/D変換して読み込むことで、ICカード22が接近したか否かを判断する。その他の構成は第1実施例と同様である。
以上のように構成された第3実施例による場合も、第1実施例と同様の効果を得ることができる。
【0034】
(第4実施例)
図14は、本発明の第4実施例を示すものであり、カードリーダ側における閉ループ導体の他の配置例を示すものである。図14(a)は、アンテナ5の内周側に配置された閉ループ導体19に加えて、外周側にも抵抗27を挿入した閉ループ導体28を配置したものである。また、図14(b)は、アンテナ5の外周側に閉ループ導体28を配置すると共に、更にその外周側にも抵抗29を挿入した閉ループ導体30を配置したものである。尚、何れの場合も、抵抗20,27,29を短絡するためのスイッチについては図示を省略している。
以上のように構成される第4実施例によれば、リーダライタ側に閉ループ導体を複数備えることで、ICカードの接近距離に応じて発生させる磁界強度を多段階で変化させることができる。
【0035】
(第5〜第9実施例)
図15乃至図19は本発明の第5〜第9実施例を示すものである。これらの実施例は、何れも閉ループ導体のインピーダンスを変化させたり、或いは閉ループ導体に誘導される電流の大きさを変化させる構成に関するものである。
【0036】
(第5実施例)
図15に示す第5実施例では、複数例えば3回巻きのループとなっている閉ループ導体31の両端に、抵抗(インピーダンス素子)32とスイッチ(スイッチング手段)33との直列回路が3並列(a,b,c)で接続されている。そして、抵抗32及びスイッチ33は、可変インピーダンス手段34を構成している。そして、CPU10がスイッチ33a〜33cを段階的に閉じることで閉ループ導体31のインピーダンスを変化させ、リーダライタ1による発生磁界強度を変化させることができる。即ち、抵抗32をより多く接続すれば閉ループ導体31のインピーダンスは低下するので、アンテナ5との結合度合いが高くなり、発生磁界強度は低下するようになる。
【0037】
(第6実施例)
図16に示す第6実施例では、3つの閉ループ導体31a〜31cの夫々の両端に、第5実施例と同様の抵抗32とスイッチ33との直列回路を接続した構成となっている。この場合、CPU10がスイッチ33a〜33cを段階的に閉じることで、閉ループ導体31a〜31cを段階的に有効化して、アンテナ5より出力される磁界に基づく電流を誘導させることができる。即ち、スイッチ33をより多く閉じれば、より多くの閉ループ導体31が有効化され、リーダライタ1による発生磁界強度は低下する。
【0038】
(第7実施例)
図17に示す第7実施例では、第5実施例と同様の閉ループ導体31の一端と、閉ループ導体31の1ターン目の途中部位,2ターン目の途中部位,3ターン目、即ち他端との間にスイッチ33a,33b,33cを接続したものである。尚、閉ループ導体31とスイッチ33c〜33aとは電流制御手段35を構成する。
【0039】
この場合、CPU10がスイッチ33c〜33aを選択的に閉じることで、閉ループ導体31のターン数(巻数,導体長)を実質的に変化させることができる。前記ターン数が多くなる程、閉ループ導体31に誘起される電圧は大きくなり、誘導される電流量も多くなる。従って、リーダライタ1による発生磁界強度は低下する。
【0040】
(第8実施例)
図18に示す第8実施例では、独立した3つの閉ループ導体36,37,38(ループ面積:大,中,小)を同心に配置して、それらの共通に接続された一端と夫々の多端との間に第7実施例と同様のスイッチ33a,33b,33cを接続したものである。この場合、CPU10がスイッチ33a〜33cを段階的に閉じることで、有効化する閉ループ導体の数が変化する。即ち、有効化する閉ループ導体の数が多くなる程、リーダライタ1による発生磁界強度は低下する。
【0041】
(第9実施例)
図19に示す第9実施例では、ループ面積がほぼ同じである独立した3つの閉ループ導体40,41,42を並列に配置して、それらの共通に接続された一端と夫々の多端との間に、第7,第8実施例と同様のスイッチ33a,33b,33cを接続したものである。この場合、CPU10がスイッチ33a〜33cを段階的に閉じることで、第8実施例と同様に有効化する閉ループ導体の数が変化する。即ち、有効化する閉ループ導体の数が多くなる程、リーダライタ1による発生磁界強度は低下する。
【0042】
(第10実施例)
図20は本発明の第10実施例を示すものである。第10実施例では、距離検出手段として、リーダライタ1側に赤外線センサ44を配置して、ICカード22との距離を検出するように構成したものである。即ち、赤外線センサ44は、赤外線LED44Tより照射した赤外線が検出対象によって反射されたものをフォトトランジスタ44Rで受光し、その受光強度に応じて検出対象、この場合ICカード22との距離を検出することができる。
【0043】
本発明は、上記し図面に記載した実施例にのみ限定されるものではなく、以下のような変形が可能である。
第1実施例においてアンテナ5の端子電圧変化を検出する場合や、第2実施例においてリーダライタの消費電流変化を検出する場合、A/D変換器に代えてコンパレータを用いても良い。
閉ループ導体に挿入する抵抗素子の抵抗値は、個別の設計に応じて適宜変更すれば良い。
閉ループ導体を4つ以上設けても良い。
第6実施例において、閉ループ導体31a〜31cの夫々のインピーダンスを、第5実施例と同様の構成によって変化させるように構成しても良い。
第7実施例において、閉ループ導体のターン数を変化させることに替えて、複数のスイッチを選択的に閉じることで1ターンの閉ループ導体の長さを変化させても良い。
リーダライタに限ることなく、データの読取り機能のみを有するICカードリーダに適用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1実施例であり、リーダライタにおけるアンテナ周辺の構成を中心として示す図
【図2】ICカードが遠方界からリーダライタ側に接近する場合に、(a)はICカード側の受信磁界強度、(b)はリーダライタ側におけるアンテナの端子電圧及び検波回路の包絡検波出力を示す図
【図3】リーダライタにおける送信系の等価回路と、ICカード側の等価回路を示す図
【図4】横軸にリーダライタとICカードとの距離をとり、縦軸にリーダライタのアンテナとICカード側のアンテナとの結合係数をとって示す図
【図5】非接触型ICカードに対してデータを読み書きするためのリーダライタの電気的構成を示す機能ブロック図
【図6】検波回路における信号の入出力状態を示す図
【図7】(a)は送信系の等価回路、(b)は(a)におけるアンテナインピーダンスZLの等価回路とICカード側の等価回路とを示す図
【図8】リーダライタとICカードとの距離に応じてアンテナの端子電圧V1が変化する状態を示す図
【図9】リーダライタのCPUによって実行される本発明の要旨に係る部分の処理内容を示すフローチャート
【図10】本発明の第2実施例を示す図5相当図
【図11】ICカードの接近状態に応じて、CPUのA/D変換器に入力される電圧信号が変化する状態を示す図
【図12】本発明の第3実施例であり、(a)はリーダライタにICカードが接近していない状態、(b)はICカードが接近した状態を示す斜視図
【図13】図5の一部相当図
【図14】本発明の第4実施例であり、カードリーダ側における閉ループ導体の他の配置例を示す図
【図15】本発明の第5実施例であり、閉ループ導体部分を中心とする電気的構成を示す図
【図16】本発明の第6実施例を示す図15相当図
【図17】本発明の第7実施例を示す図15相当図
【図18】本発明の第8実施例を示す図15相当図
【図19】本発明の第9実施例を示す図15相当図
【図20】本発明の第10実施例を示すもので、(a)は赤外線センサを用いてICカードとの距離を検出する状態を示す図、(b)は赤外線センサの電気的構成を示す図
【符号の説明】
【0045】
図面中、1はリーダライタ(ICカードリーダ)、5はアンテナ、7は検波回路(距離検出手段)、10はCPU(制御手段,距離検出手段)、19は閉ループ導体(出力低下手段、20は抵抗(電流制御手段,可変インピーダンス手段,インピーダンス素子)、21はスイッチ(電流制御手段,可変インピーダンス手段,スイッチング手段)、23はリーダライタ(ICカードリーダ)、24は抵抗(距離検出手段)、25は受光素子(距離検出手段)、26はリーダライタ(ICカードリーダ)、28,30,31は閉ループ導体、33はスイッチ(スイッチング手段)、34は可変インピーダンス手段、35は電流制御手段、36,37,38,40,41,42は閉ループ導体、44は赤外線センサ(距離検出手段)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触型ICカードと電磁結合方式により通信を行うためのコイル状に形成されたアンテナを具えたICカードリーダにおいて、
前記ICカードとの距離を検出する距離検出手段と、
前記距離検出手段が検出した距離が短くなるのに応じて、磁気信号の送信出力を低下させるための切替え制御が可能に構成される出力低下手段と、
この出力低下手段を切替えて、前記送信出力を低下させるように制御する制御手段とを備えたことを特徴とするICカードリーダ。
【請求項2】
前記出力低下手段は、
前記アンテナと実質的に平行となるように形成された1つ以上の閉ループ導体と、
当該アンテナが送信する磁気信号によって誘導されることにより前記閉ループ導体に流れる電流の大きさを制御する電流制御手段とを備えて構成され、
前記制御手段は、前記閉ループ導体に流れる電流の大きさを変化させるように電流制御手段を制御することを特徴とする請求項1記載のICカードリーダ。
【請求項3】
前記電流制御手段は、前記閉ループ導体のインピーダンスを可変制御可能な可変インピーダンス手段を具え、
前記制御手段は、前記可変インピーダンス手段を制御して、前記閉ループ導体に流れる電流の大きさを制御することを特徴とする請求項2記載のICカードリーダ。
【請求項4】
前記可変インピーダンス手段は、
夫々のインピーダンス値が異なる複数のインピーダンス素子と、
これら複数のインピーダンス素子を夫々前記閉ループ導体に断続するためのスイッチング手段とを具え、
前記制御手段は、前記スイッチング手段を制御して、前記閉ループ導体に接続するインピーダンス素子を切り替えることを特徴とする請求項3記載のICカードリーダ。
【請求項5】
前記電流制御手段は、前記閉ループ導体の一端と、他端から途中部位にかかる間の位置に配置される複数のスイッチング手段を備え、
前記制御手段は、前記スイッチング手段を選択的に閉じることで、前記閉ループ導体に流れる電流の大きさを制御することを特徴とする請求項2記載のICカードリーダ。
【請求項6】
前記閉ループ導体は、複数巻きのループによって構成されていることを特徴とする請求項5記載のICカードリーダ。
【請求項7】
前記閉ループ導体を複数設け、それらの閉ループがなす面積が夫々異なるように形成されていることを特徴とする請求項2乃至6の何れかに記載のICカードリーダ。
【請求項8】
前記複数の閉ループ導体は、実質的に同心となるように配置されていることを特徴とする請求項7記載のICカードリーダ。
【請求項9】
前記閉ループ導体を複数設け、それらの閉ループ導体は、中心位置が夫々異なるように配置されていることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載のICカードリーダ。
【請求項10】
前記複数の閉ループ導体は、相互に重ならないように配置されていることを特徴とする請求項9記載のICカードリーダ。
【請求項11】
前記距離検出手段は、前記アンテナの端子電圧に基づいて、前記ICカードとの距離を検出することを特徴とする請求項1乃至10の何れかに記載のICカードリーダ。
【請求項12】
前記距離検出手段は、自身の消費電流に基づいて、前記ICカードとの距離を検出することを特徴とする請求項1乃至10の何れかに記載のICカードリーダ。
【請求項13】
前記距離検出手段は、前記ICカードとの距離を検出する赤外線センサによって構成されていることを特徴とする請求項1乃至10の何れかに記載のICカードリーダ。
【請求項14】
前記距離検出手段は、前記ICカードとの通信を行う面側に配置されている受光センサによって構成されていることを特徴とする請求項1乃至10の何れかに記載のICカードリーダ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2006−72901(P2006−72901A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−258381(P2004−258381)
【出願日】平成16年9月6日(2004.9.6)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【出願人】(399131770)デンソーエレックス株式会社 (10)
【Fターム(参考)】