説明

ICカード発行システム、ICカード発行方法およびICカード

【課題】ICカード発行内容が同じ場合に、効率よくICカードを発行することのできるICカード発行システムを提供する。
【解決手段】ICカード1は、EEPROMのメモリマップをダンプするダンプコマンド10と、EEPROMにメモリマップをロードするロードコマンド11とを備えている。ダンプコマンド10とロードコマンド11以外の発行コマンド群12を用いて親発行カードとなるICカード1を発行し、親発行カードとなるICカード1のEEPROMの内容をダンプコマンド10とロードコマンド11とを用いて他のICカード1にコピーすることで、ICカード発行内容が同じ場合には、ICカード1へ送信するコマンドを減らすことができ、効率よくICカード1を発行することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、効率よくICカードを発行するICカードシステム、方法およびICカードに関し、更に詳しくは、効率よくICカードを発行するためのICカードシステム、方法およびICカードに関する。
【背景技術】
【0002】
ICカードとは、クレジットカードサイズのカード媒体にICチップを埋め込み、ICチップのメモリにデータを記録できるカードである。
近年ICカードはキャッシュカード、クレジットカードまたは電子マネーなどに幅広く応用されている。
【0003】
ICカードがユーザの手元に届く前には、カード製造会社やカード発行会社などのICカード発行者によってICカード発行処理が行われ、ICカードに埋め込まれたICチップの書換え可能な不揮発性メモリには、ICカードが運用されるときに必要となる様々なデータが書き込まれる。
【0004】
図6を参照しながら一般的なICカード発行処理の手順について説明する。図6は、一般的なICカード発行処理のフローを示した図である。
図6に示したように、ICカード発行処理では、0次発行工程(ステップS10)、1次発行工程(ステップS11)および2次発行工程(ステップS12)が順に実施される。
【0005】
0次発行工程(ステップS10)、1次発行工程(ステップS11)および2次発行工程(ステップS12)のそれぞれの工程で実行される処理の内容は厳密に定義されていないが、特許文献1(図8)でも説明されているように、主にカード製造会社で実施される0次発行工程(ステップS10)では、ICカードが動作するために必要な最小限のデータが書き込まれる。
【0006】
主にカード発行会社で実施される1次発行工程(ステップS11)では、ICカードが運用されるときに用いられるアプリケーションとICカードごとで共通のデータとが書き込まれる。
そして、主にカード発行会社で実施される2次発行工程(ステップS12)では、PIN(Personal Identification Number)などのユーザごとに個別なデータが書き込まれる。
【0007】
取り分け大量のICカードを発行するカード製造会社においては、上述したようなICカード発行処理の専用装置であるICカード発行機が用いられ、このICカード発行機には、ICカードを発行するための専用のコマンド群(例えば、非特許文献1に記述されたコマンド)が備えられている。
【0008】
このコマンド群には、ファイルを創生するコマンドであるCreateFileコマンドや、創生したファイルのセキュリティ属性を設定するManageAttributesコマンドに加え、創生したファイルにデータを書き込むWriteコマンドなどが含まれ、コマンド群に含まれる複数のコマンドをICカードに送信することでICカードは発行される。
【特許文献1】特開2001−147969号公報
【非特許文献1】JICSAP ICカード仕様 v2.0 第3部 共通コマンド 附属書I 発行系コマンド (平成13年7月 ICカードシステム利用促進協議会)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、これまで述べた従来の技術では、1次発行工程でICカード発行内容が同じであるにも係らず、ICカードを発行する際は、ICカード発行処理機に備えられたコマンド群に含まれるコマンドが一つずつに送信されるため大変非効率であった。
【0010】
例えば、ICカードに3つのファイルの創生を必要とする場合、ICカード発行処理機からICカードへ、異なるファイルを創生するCreateFileコマンドを3回送信する必要がある。
【0011】
そこで本発明は、1次発行工程のようにICカード発行内容が同じ場合に、ICカードへ送信するコマンドを減らすことで、効率よくICカードを発行することのできるICカード発行システム、方法およびICカードを提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決する第1の発明は、発行処理時に利用される複数の発行コマンドを備えたICカードと、前記発行コマンドを前記ICカードに送信し前記ICカードを発行するICカード発行機とから構成され、前記ICカードに備えられた前記発行コマンドには、前記ICカードの書換え可能な不揮発性メモリの指定されたアドレス領域からデータを読み出すダンプコマンドと、前記ICカードの書換え可能な不揮発性メモリの指定されたアドレス領域にデータを書き込むロードコマンドが含まれ、前記ICカード発行機は、前記ダンプコマンドと前記ロードコマンド以外の前記発行コマンドを用いて、親発行カードとなる前記ICカードを発行する手段、前記ダンプコマンドを用いて、前記親発行カードの書換え可能な不揮発性メモリの指定されたアドレス領域からメモリデータを読出し、前記ロードコマンドを用いて、前記親発行カード以外の前記ICカードの書換え可能な不揮発性メモリにおいて、前記メモリデータを読み出したときと同じアドレス領域に、前記メモリデータを書き込む手段を備えていることを特徴とする。
【0013】
更に、第2の発明は、ICカードの書換え可能な不揮発性メモリの指定されたアドレス領域からデータを読み出すダンプコマンドと、前記ICカードの書換え可能な不揮発性メモリの指定されたアドレス領域にデータを書き込むロードコマンドとを含む複数の発行コマンドを備えたICカードを発行する方法であって、前記ダンプコマンドと前記ロードコマンド以外の前記発行コマンドを用いて、親発行カードとなる前記ICカードを発行するステップ、前記ダンプコマンドを用いて、前記親発行カードの書換え可能な不揮発性メモリの指定されたアドレス領域からメモリデータを読出すステップ、前記ロードコマンドを用いて、前記親発行カード以外の前記ICカードの書換え可能な不揮発性メモリにおいて、前記メモリデータを読み出したときと同じアドレス領域に、前記メモリデータを書き込むステップを備えていることを特徴とする。
【0014】
更に、第3の発明は、ICカードの書換え可能な不揮発性メモリの指定されたアドレス領域からメモリデータを読み出すダンプコマンドと、前記ICカードの書換え可能な不揮発性メモリの指定されたアドレス領域にメモリデータを書き込むロードコマンドとを備えたICカードである。
【発明の効果】
【0015】
上述した本発明によれば、前記ダンプコマンドと前記ロードコマンド以外の前記発行コマンドを用いて前記親発行カードを発行し、前記親発行カードの書換え可能な不揮発性メモリの内容を前記ダンプコマンドと前記ロードコマンドとを用いて他の前記ICカードにコピーすることで、1次発行工程のようにICカード発行内容が同じ場合に、ICカードへ送信するコマンドを減らすことができ、効率よくICカードを発行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図を参照しながら本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1は本発明に係るICカード発行システムを説明する図、図2はICカード1に実装されるICチップ2のハードウェア資源を示した図、図3は本発明を実現するために必要なICカード1のコマンドを示した図である。
【0017】
図1で示したICカード発行システムは、ICチップ2が実装されたICカード1と、ICチップ2の書換え可能な不揮発性メモリ(ここでは、EEPROM)にデータを書き込むICカード発行機3とから、少なくとも構成される。
【0018】
図2に示したようにICカード1のICチップ2には、演算機能およびICチップ2が具備するデバイスを制御する機能を備えた中央演算装置20(CPU:Central Processing Unit)、読み出し専用の不揮発性メモリ22(ROM:Read Only Memory、)、電気的に書換え可能な不揮発性メモリとしてEEPROM23(EEPROM:Electrically Erasable Programmable Read-Only Memoryの略)、揮発性メモリとしてランダムアクセスメモリ21(RAM:Random Access Memory)、および、外部の端末装置とデータ通信するためのI/O回路24を少なくとも備なえている。
【0019】
本発明は、ICカード1に実装されるICチップ2の仕様をなんら限定するものではなく、ICカード1の用途に適した仕様のICチップ2を選択することができる。
例えば、ROM22およびEEPROM23の容量については限定しないし、書換え可能な不揮発性メモリはフラッシュメモリ等のEEPROM以外のメモリであっても構わない。
またICチップ2は乱数を生成する乱数生成回路、暗号演算回路等の図示していない他のデバイスを備えていても構わない。
【0020】
なお、図1においては、ICカード1を接触ICカードとして図示しているが、本発明は何らICカード1の通信方式に依存するものではなく、無線でデータ通信する非接触ICカード、または、接触データ通信と非接触データ通信の2つの通信機能を備えたデュアルインターフェースICカードであってもよい。
加えて、ICカード1は、ICチップ2の近辺を短冊状に切り取った形状をしているSIM(Subscriber Identity Module)であってもよい。
【0021】
図3に示したようにICカード1には、上述したCreateFileコマンドやManageAttributesコマンドなど一般的に用いられる発行コマンド群12に加え、EEPROM23のメモリデータをダンプするダンプコマンド10と、EEPROM23にメモリデータをロードするロードコマンド11とを備えている。
【0022】
図3で示したそれぞれのコマンドは、図2で示したICチップ2のハードウェア資源を利用し、それぞれのコマンドの機能をICチップ2のCPU20に実現させるためのプログラムで、それぞれのコマンドのプログラムコードはROM22に記憶されている。
【0023】
図4は、ICチップ1のEEPROM23のある一部のアドレス領域の状態を説明する図である。図4(a)は発行される前の状態で、図4(b)は発行された後の状態である。
図4(a)に示したように、発行前のメモリデータは初期値で、すべて同じ値であるが、ICカード1が発行コマンド群12に含まれる一つもしくは複数のコマンド(例えば、Writeコマンド)が実行されると、図4(b)に示したように、実行したコマンドの内容に従いEEPROM23のメモリデータは初期値から変化する。
【0024】
ダンプコマンド10が実行されると、指定されたEEPROM23のアドレス領域に記憶されているメモリデータを読取り、読取ったメモリデータがICカード発行機3に送信される。
例えば、図4(b)において、メモリデータを読取るアドレス領域が0000hから002Fh(hは16進数を示す)までと指定された場合は、0000hから002Fhまでのアドレス領域のメモリデータ、すなわち、「01h02h03h……2Eh2Fh」を読取り、読取ったメモリデータをICカード発行機3に送信する。
【0025】
ロードコマンド11が実行されると、指定されたEEPROM23のアドレス領域に、ICカード発行機3から送信されたメモリデータが書き込まれる。
例えば、図4(a)において、メモリデータを書き込むアドレス領域が0000hから002Fhまでと指定され、書き込むメモリデータが「01h02h03h……2Eh2Fh」であったときは、アドレスが0000hから002Fhまでのアドレス領域に「01h02h03h……2Eh2Fh」のメモリデータが書き込まれ、図4(b)の状態を再現できる。
【0026】
1次発行工程のようにICカード1の発行内容が同じ場合には、ICカード1に備えられたダンプコマンド10およびロードコマンド11を利用することで、ICカード1へ送信するコマンドを減らすことができ、効率よくICカード1を発行することができる。
【0027】
ダンプコマンド10およびロードコマンド11の作用をよりよく理解されるように、ダンプコマンド10およびロードコマンド11を利用した発行手順について、図1および図5を用いて説明する。図5は、ダンプコマンド10およびロードコマンド11を利用した発行手順を示したフロー図である。
【0028】
ダンプコマンド10およびロードコマンド11を利用した発行手順では、まず、ICカード発行機3は、ICカード1に備えられた発行コマンド群12に含まれるコマンドを利用して、親発行カードとなるICカード1を発行する(ステップS1)。
【0029】
このステップにおいて、ICカード1がICカード発行機3から送信されるコマンドを処理することで、ICカード1に実装されたICチップ2のEEPROM23は変化する。
【0030】
次に、ICカード発行機3はステップS1で発行した親発行カードとなるICカード1のEEPROM23からメモリデータを読取る(ステップS2)。
EEPROM23からメモリデータを読取るときには、ICカード発行機3から親発行カードとなるICカード1にダンプコマンド10が送信される。
なお、このステップで、メモリデータを読取るEEPROM23のアドレスは、ICカード1が運用時に利用されるアプリケーションが記憶されるアドレスとすればよい。
【0031】
次に、ICカード発行機3はステップS2で読取ったメモリデータをEEPROM23に書き込むためのロードコマンド11を生成し、生成したロードコマンド11を用いて、親発行カードとなるICカード1と同じメモリデータを有する子発行カードとなるICカード1を発行する(ステップ3)。
【0032】
このように、ダンプコマンド10とロードコマンド11以外の発行コマンド群12を用いて親発行カードとなるICカード1を発行し、親発行カードとなるICカード1のEEPROM23の内容をダンプコマンド10とロードコマンド11とを用いて他のICカード1にコピーすることで、1次発行工程のようにICカード発行内容が同じ場合には、ICカード1へ送信するコマンドを減らすことができ、効率よくICカード1を発行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係るICカード発行システムを説明する図。
【図2】ICチップのハードウェア資源を示した図。
【図3】本発明を実現するために必要なICカードのコマンドを示した図。
【図4】EEPROMのある一部の領域の状態を説明する図。
【図5】ダンプコマンドおよびロードコマンドを利用した発行手順を示したフロー図。
【図6】一般的なICカード発行処理のフローを示した図。
【符号の説明】
【0034】
1 ICカード
10 ダンプコマンド
11 ロードコマンド
12 発行コマンド群
2 ICチップ
20 CPU
21 RAM
22 ROM
23 EEPROM
24 I/O回路
25 バス
3 ICカード発行機


【特許請求の範囲】
【請求項1】
発行処理時に利用される複数の発行コマンドを備えたICカードと、前記発行コマンドを前記ICカードに送信し前記ICカードを発行するICカード発行機とから構成され、前記ICカードに備えられた前記発行コマンドには、前記ICカードの書換え可能な不揮発性メモリの指定されたアドレス領域からデータを読み出すダンプコマンドと、前記ICカードの書換え可能な不揮発性メモリの指定されたアドレス領域にデータを書き込むロードコマンドが含まれ、前記ICカード発行機は、前記ダンプコマンドと前記ロードコマンド以外の前記発行コマンドを用いて、親発行カードとなる前記ICカードを発行する手段、前記ダンプコマンドを用いて、前記親発行カードの書換え可能な不揮発性メモリの指定されたアドレス領域からメモリデータを読出し、前記ロードコマンドを用いて、前記親発行カード以外の前記ICカードの書換え可能な不揮発性メモリにおいて、前記メモリデータを読み出したときと同じアドレス領域に、前記メモリデータを書き込む手段を備えていることを特徴とするICカード発行システム。
【請求項2】
ICカードの書換え可能な不揮発性メモリの指定されたアドレス領域からデータを読み出すダンプコマンドと、前記ICカードの書換え可能な不揮発性メモリの指定されたアドレス領域にデータを書き込むロードコマンドとを含む複数の発行コマンドを備えたICカードを発行する方法であって、前記ダンプコマンドと前記ロードコマンド以外の前記発行コマンドを用いて、親発行カードとなる前記ICカードを発行するステップ、前記ダンプコマンドを用いて、前記親発行カードの書換え可能な不揮発性メモリの指定されたアドレス領域からメモリデータを読出すステップ、前記ロードコマンドを用いて、前記親発行カード以外の前記ICカードの書換え可能な不揮発性メモリにおいて、前記メモリデータを読み出したときと同じアドレス領域に、前記メモリデータを書き込むステップを備えていることを特徴とするICカード発行方法。
【請求項3】
ICカードの書換え可能な不揮発性メモリの指定されたアドレス領域からメモリデータを読み出すダンプコマンドと、前記ICカードの書換え可能な不揮発性メモリの指定されたアドレス領域にメモリデータを書き込むロードコマンドとを備えたICカード。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−179308(P2007−179308A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−376977(P2005−376977)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】