説明

ICカード

【課題】アンテナコイルで誘起される電圧の振幅に応じた大きさにスイッチ回路の電源電圧を設定することが可能なICカードを提供する。
【解決手段】ICカードは、アンテナコイルと、接触・非接触兼用ICチップと、制御回路と、スイッチ回路と、整流回路と、を備える。接触・非接触兼用ICチップは、非接触通信用端子及び接触通信用端子を有している。アンテナコイルは非接触通信用端子と接続されている。制御回路は接触通信用端子と接続されている。スイッチ回路は、アンテナコイルと非接触通信用端子との間の接続及び遮断を行うことが可能に構成されている。整流回路は、アンテナコイルに対しスイッチ回路と並列に接続されており、スイッチ回路に電源電圧を供給する。これにより、アンテナコイルで誘起される電圧の振幅に応じた大きさにスイッチ回路の電源電圧を設定することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、札入れサイズ等のいわゆるICカードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、非接触ICカードは、簡易迅速に読み取りできる特性と、リーダライタのメンテナンスの容易性から極めて広範囲に使用されるようになってきている。例えば、交通機関のゲートパスや特定施設への入場パスとしての用途である。この非接触ICカードに蓄えられた「残高」や「残期間」などの可変情報を、当該非接触ICカード上に設けられた例えば電子ペーパーなどの表示部に表示できれば利便性が格段に向上することは明白である。
【0003】
しかしながら、非接触ICカードに装着された一般的な非接触用ICチップは、非接触通信用の端子を有するものの、接触通信用の端子を有していない。そのため、一般的な非接触用ICチップは、リーダライタからの電波による通信機能はあるものの、ICチップ内部の情報をICカードの表示部に出力することができない。
【0004】
なお、特許文献1〜3には、非接触通信用端子と接触通信用端子の両方を有する接触・非接触兼用ICチップが装着されたICカードの例が示されている。以下の特許文献1〜3に記載されたICカードの例では、接触・非接触兼用ICチップを用いて、外部のリーダライタと接触通信及び非接触通信を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−305736号公報
【特許文献2】特開2004−78834号公報
【特許文献3】特開2007−34786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ICチップ内部の情報をICカードの表示部に出力するために、ICカードのICチップとして上記の接触・非接触兼用ICチップを用いることが考えられる。このようなICカードの構成の例としては、接触・非接触兼用ICチップにおける非接触通信用端子にアンテナコイルを接続し、接触通信用端子に制御回路を介して表示部を接続する構成が挙げられる。
【0007】
ここで、接触・非接触兼用ICチップは、非接触通信用端子と接触通信用端子とを同時に用いて通信を行うことはできない。従って、接触・非接触兼用ICチップは、非接触通信用端子を用いて通信を行うモードとなっているときに、外部の非接触式リーダライタからのデータをアンテナコイルより受信する。そして、接触・非接触兼用ICチップは、接触通信用端子を用いて通信を行うモードとなっているときに、非接触式リーダライタより受信したデータを表示部に送信する。これにより、アンテナコイルより受信したデータはICカードの表示部に表示される。
【0008】
非接触式リーダライタからの電波をアンテナコイルが受信すると、アンテナコイルに誘起電圧が発生し、アンテナコイルと接続された非接触通信用端子に電力が供給される。接触・非接触兼用ICチップでは、その受電電力により、非接触通信用端子を用いて通信を行うモードに優先的に設定される。この場合には、接触通信用端子を用いて通信を行うことができない。接触通信用端子を用いて通信を行うモードに設定するには、非接触通信用端子への電力供給を絶つ必要がある。一方、非接触式リーダライタからの電波が届かない場所では、非接触通信用端子への電力供給が絶たれるため、接触・非接触兼用ICチップは、接触通信用端子を用いて通信を行うモードに設定される。しかしながら、ICカード内の回路は、非接触式リーダライタからの電波を電力供給源としても用いているため、非接触式リーダライタからの電波が届かない場所では、ICカード内の回路の動作が停止してしまい、ICチップ内の情報を取り出すことが出来ない。
【0009】
そこで、非接触式リーダライタからの電波が届く場所においても、接触通信用端子を用いて通信を行うモードに設定することが可能なように、アンテナコイルの一端と非接触通信用端子との間にスイッチ回路を設けることが考えられる。これにより、アンテナコイルと非接触通信用端子との間の接続をスイッチ回路により遮断することで、非接触通信用端子に電力が供給されないようにすることができ、接触通信用端子を用いて通信を行うことが可能になる。
【0010】
ここで、スイッチ回路は、例えばFET(Field Effect Transistor)などのトランジスタより構成されるアナログスイッチ回路である。スイッチ回路では、電源電圧が供給されており、非接触通信用端子を用いて通信が行われる場合において、電源電圧以上の大きさの入力電圧を通過させることができない。そのため、アンテナコイルに誘起された電圧に対し、スイッチ回路に供給される電源電圧が不足する場合には、スイッチ回路より出力される電圧の波形にひずみが生じる。接触・非接触兼用ICチップでは、波形にひずみが生じた電圧が入力されることは想定されていないため、このような場合に、動作に不具合が生じる恐れがある。そのため、スイッチ回路より出力される出力電圧の波形にひずみが発生するのを抑える必要がある。
【0011】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、スイッチ回路より出力される出力電圧の波形のひずみを抑えることが可能なICカードを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の1つの観点では、ICカードは、アンテナコイルと、非接触通信に用いる端子である非接触通信用端子、及び、接触通信に用いる端子である接触通信用端子を有し、前記アンテナコイルが前記非接触通信用端子に接続された接触・非接触兼用ICチップと、前記接触通信用端子に接続された制御回路と、前記アンテナコイルと前記非接触通信用端子との間に設けられ、前記制御回路からの制御信号により、前記アンテナコイルと前記非接触通信用端子との間の接続及び遮断を行うアナログスイッチ回路と、前記アンテナコイルに対し、前記アナログスイッチ回路と並列に接続された整流回路と、を備え、前記アナログスイッチ回路の電源電圧は、前記整流回路より供給される。
【0013】
上記のICカードは、アンテナコイルと、接触・非接触兼用ICチップと、制御回路と、アナログスイッチ回路と、整流回路と、を備える。アンテナコイルは、外部非接触リーダライタよりデータを受信するためのアンテナコイルである。接触・非接触兼用ICチップは、非接触通信に用いる端子である非接触通信用端子、及び、接触通信に用いる端子である接触通信用端子を有している。アンテナコイルは、非接触通信用端子に接続されている。制御回路は接触通信用端子と接続されている。アナログスイッチ回路は、アンテナコイルと非接触通信用端子との間に設けられ、前記制御回路からの制御信号により、アンテナコイルと非接触通信用端子との間の接続及び遮断を行うことが可能に構成されている。整流回路は、アンテナコイルに対し、アナログスイッチ回路と並列に接続されており、アナログスイッチ回路に電源電圧を供給する。これにより、アナログスイッチ回路の電源電圧として、アンテナコイルで誘起される電圧の振幅に応じた大きさの電圧を設定することが可能となり、アナログスイッチ回路より出力される電圧の波形にひずみが生じるのを抑えることができる。
【0014】
上記のICカードの他の一態様は、前記制御回路の電源電圧は、前記整流回路より供給される。これにより、回路規模の削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態に係るICカードの概略ブロック構成を示す図である。
【図2】本実施形態に係るICカードの使用状態を示す模式図である。
【図3】スイッチ回路におけるスイッチの基本構成を示す模式図である。
【図4】変形例に係るICカードの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のICカードについて図面を参照して説明する。
【0017】
[ICカードの構成]
まず、本実施形態に係るICカードの構成について説明する。図1は、本実施形態に係るICカード1の概略ブロック構成を示す図である。
【0018】
図1のように、本実施形態に係るICカード1は、表示機能付きのICカードであり、カード表面に電子ペーパーなどの表示部5を有している。カード基体10内には、制御回路2と、接触・非接触兼用ICチップ3と、第1のアンテナコイル4と、第2のアンテナコイル6と、スイッチ回路7と、整流回路9、19と、ロジック電源安定化回路8とが埋設されている。
【0019】
第1のアンテナコイル4は、外部の非接触式リーダライタよりデータ(表示データ)を受信するためのアンテナコイルである。第1のアンテナコイル4は、スイッチ回路7を介して接触・非接触兼用ICチップ3の非接触通信用端子3a、3bに接続されている。第1のアンテナコイル4は、非接触式リーダライタから電波を受信することで誘起電圧を発生させ、それにより、接触・非接触兼用ICチップ3は、外部の非接触式リーダライタより表示データを取得する。制御回路2は、例えば1チップマイコンより構成され、接触・非接触兼用ICチップ3のI/O端子(接触通信用端子)3cに接続されている。また、制御回路2は、表示部5のドライバICに接続されており、接触・非接触兼用ICチップ3内の表示データは、制御回路2によって表示部5に供給される。なお、表示部5のドライバICとして、縦横の双方ドライブ用の2個を図示しているが、この代わりに、双方のドライブを兼ねる1個のみを設けてもよいのは言うまでもない。
【0020】
第2のアンテナコイル6は、ICカード1内における制御回路2などの各回路に電源電圧を供給するためのアンテナコイルであり、整流回路9に接続されている。第2のアンテナコイル6は、外部の非接触式リーダライタから電波を受信することで発生した誘起電圧を整流回路9に供給する。整流回路9に供給された電圧は、ロジック電源安定化回路8を介して、制御回路2及び表示部5のドライバICに供給される。ロジック電源安定化回路8は、例えば昇圧/分圧回路である。
【0021】
なお、ここで、双方のアンテナコイル4、6は短絡を防止するため場所を分けて設置するか、アンテナコイルおよび配線を形成したシートの表裏に分離して設けることが好ましい。
【0022】
スイッチ回路7は、第1のアンテナコイル4と非接触通信用端子3a、3bとの間に設けられている。スイッチ回路7は、アナログスイッチ回路であり、スイッチ7a、7bより構成される。スイッチ7aは、第1のアンテナコイル4の一端と非接触通信用端子3aとの間に設けられ、スイッチ7bは、第1のアンテナコイル4の他端と非接触通信用端子3bとの間に設けられている。制御回路2は、表示データの取得を完了するとスイッチ回路7に制御信号を送信し、スイッチ回路7は、制御回路2より送信された制御信号により作動して、第1のアンテナコイル4と非接触通信用端子3a、3bとの間の接続及び遮断を行う。
【0023】
スイッチ回路7は、整流回路19より電源電圧が供給される。具体的には、整流回路19は、第1のアンテナコイルに対し、スイッチ回路7と並列に接続され、第1のアンテナコイル4に発生した誘起電圧を整流してスイッチ回路7に供給する。
【0024】
ここで、通常の接触型と非接触型の2つのインターフェースをもつICカード(デュアルICカード)では、接触・非接触兼用ICチップは、I/O端子と接続された、カード表面に露出する接触端子板を有するICモジュールとして用いられ、カード内のアンテナコイルは、接触端子板の背面側の非接触通信用端子に接続される。これは、当該接触端子板を介して外部の接触式リーダライタから、供給電圧やリセット信号、クロック信号を得る使い方を行いうるからである。
【0025】
それに対し、本実施形態に係るICカードでは、接触・非接触兼用ICチップは、通常のデュアルICカードと同様の使用態様では用いられない。具体的には、本実施形態に係るICカードでは、接触・非接触兼用ICチップは、接触端子板を持たないベアチップの状態か、微小な接触端子板を有するモジュール形態でICカード基体内に埋設される。このように使用しても、接触・非接触兼用ICチップは、アンテナコイルが非接触通信用端子に接続されている限り、非接触通信機能を有し、外部の非接触式リーダライタからの電波をアンテナコイルで受信することにより動作し、表示データを取得することができる。
【0026】
図2は、ICカード1の使用状態を示す模式図であって、図2(a)は、ICカード1が非接触式リーダライタ20から表示データを取得するときの模式図であり、図2(b)は、ICカード1が表示データを表示するときの模式図である。
【0027】
図2(a)のようにICカード1が、非接触式リーダライタ20と通信して表示データを取得している状態では、接触・非接触兼用ICチップ3は、非接触通信用端子3a、3bを用いて通信を行うモードになっている。この状態では、制御回路2との間のデータのやり取りは行われない。矢印が破線であるのは通信が途絶していることを示す。
【0028】
接触・非接触兼用ICチップ3は、接触通信/非接触通信の双方の機能を有しているが、双方の機能を同時に動作させることはできないので、いずれかの動作モードを選択して働かせることになる。ただし、マイコンやEEPROM等のメモリは双方のモードが共有して使用するので、非接触通信用端子3a、3bを用いて通信を行うモード(非接触通信モード)で取得した表示データを、I/O端子3cを用いて通信を行うモード(接触通信モード)時に読み出して表示部に供給することはできる。
【0029】
通常の接触・非接触兼用ICチップ3の使用方法では、ICカードの該ICチップ3が非接触式リーダライタ20の通信可能範囲内にあるときは、自動的に非接触通信モードになり、通信可能範囲外になったときに、非接触通信モードがシャットダウンして、接触通信モードが起動するようにされている。しかしながら、そのような使い方では、表示書き換え電力を十分に得られなくなる問題がある。
【0030】
表示データの取得自体は、チケット用ICカードのように、1秒以下の短時間でも可能であるが、ICカード1では、ICチップより表示データを読み出す制御回路2を駆動させる電力を、第2のアンテナコイル6が、非接触式リーダライタ20から継続して得る必要があるため、表示データの取得後、直ちにICカード1を通信可能範囲外に取り出すことはできない。一方、ICカード1が、非接触式リーダライタ20の通信可能範囲内に存在する場合は、非接触式リーダライタ20の呼びかけに非接触通信モードが起動してしまい、接触通信モードが起動しないので、電子ペーパー表示部5に取得した表示データを表示させることができない。
【0031】
このため、ICカード1が、非接触式リーダライタ20の通信可能範囲内に存在する場合でも、接触通信モードを起動させる制御が必要となる。そこで、本発明では、第1のアンテナコイル4と非接触通信用端子3a、3bとの間にスイッチ回路7を設けることとしている。スイッチ回路7は、第1のアンテナコイル4の両端と非接触通信用端子3a、3bとの間の接続及び遮断を行うことが可能に構成されている。具体的には、スイッチ回路7は、第1のアンテナコイル4の両端にそれぞれ設けられたスイッチ7a、7bより構成され、第1のアンテナコイル4の一端は、スイッチ7aを介して非接触通信用端子3aに接続され、第1のアンテナコイル4の他端は、スイッチ7bを介して非接触通信用端子3bに接続されている。
【0032】
非接触通信が行われている状態では、図2(a)に示すように、スイッチ回路7におけるスイッチ7a、7bはそれぞれ閉じた状態となっており、接触・非接触兼用ICチップ3は、外部の非接触式リーダライタより表示データを取得できる。制御回路2は、非接触通信が行われてから所定時間経過した後に、スイッチ回路7を制御して、スイッチ7a、7bの両方を開いて、第1のアンテナコイル4と非接触通信用端子3a、3bとの間の接続を遮断する。このようにすることで、ICカード1が、非接触式リーダライタ20の通信可能範囲内に存在する場合でも、接触通信モードを起動させることが可能となる。
【0033】
所定時間とは、前記の1秒未満では不足の場合もあるが、最大1秒程度と考えることができる。従って、制御回路2はタイマー機能を有する必要がある。非接触通信開始後、制御回路2がパワーオンし、タイマーカウントを行う。
【0034】
所定時間経過後、スイッチ回路7により、第1のアンテナコイル4と非接触通信用端子3a、3bとの間の接続が遮断されるので、接触・非接触兼用ICチップ3は、接触通信モードとなる。一方、第2のアンテナコイル6はスイッチ回路7とは無関係であるから、継続して誘起電圧を得ることができる。そして、整流回路9からの電圧により制御回路2が言わばカード内リーダライタとして働く。具体的には、制御回路2は、接触・非接触兼用ICチップ3のメモリから表示データを読み取り、読み取った表示データを表示部5に表示する。
【0035】
図2(b)は、表示データを表示している状態であり、スイッチ回路7におけるスイッチ7a、7bが開いて、第1のアンテナコイル4と非接触通信用端子3a、3bとの間の接続が遮断されている。この状態では、ICカード1が、非接触式リーダライタ20面上にあっても、接触・非接触兼用ICチップ3は接触通信モードになる。そして、制御回路2は、メモリに蓄積された表示データ信号を、I/O端子3cから表示部5に送信する。これにより、表示部5にテキストや静止画像が表示されることになる。なお、第2のアンテナコイル6は、非接触式リーダライタ20面上または近接した位置にあるかぎり、誘起電圧を得ることができるので、制御回路2や表示部5のドライバICを駆動できる。
【0036】
このように、非接触通信が終了した後は、制御回路2は、第2のアンテナ6からの給電を受けて、クロック供給など通常の接触式リーダライタが行っている作業を行う。これに関わる作業に数秒(1〜10秒)が必要となる。時間は表示書き換え時間が支配的であるが、画面サイズ、表示方式によって可変する。
【0037】
制御回路2は、非接触式リーダライタ20から離れてシャットダウンする前に、スイッチ回路7のスイッチ7a、7bを閉じることにより、第1のアンテナコイル4と非接触通信用端子3a、3bとの間を接続して、非接触通信モードが直ちに機能するようにする。これは、接触通信モードのままでは表示の終了を非接触式リーダライタ側が認識できないためである。
【0038】
「直ちに」とは、カードの用い方によってその時間が異なるものとなる。チケットの発行等の場合は、表示後直ちに非接触式リーダライタ20から離れる使い方になるので、表示直後にスイッチ回路7のスイッチ7a、7bを閉じる必要がある。しかし、ICカード1を非接触式リーダライタ20面上で使用する限り、1秒〜10秒程度の間隔で異なる画像を間欠的に順次表示できるので、一定の時間間隔を設けてもよい。このような使用方法は、非接触式リーダライタ20を使用して、カードゲーム遊びをする場合等に用いられ得る。
【0039】
ここで、スイッチ回路7の構造について図3を用いて説明する。図3は、スイッチ回路7におけるスイッチ7a、7bそれぞれについての基本構成例を示す模式図である。
【0040】
スイッチ回路7は、一般的なアナログスイッチ回路であり、FET(Field Effect Transistor)などのトランジスタTRより構成されている。トランジスタTRのドレイン端子には、キャパシタC1を介してスイッチ入力端子INが接続され、トランジスタTRのソース端子には、キャパシタC2を介してスイッチ出力端子OUTが接続されている。なお、ここで、FETは対称型素子なので、トランジスタTRのソース端子にスイッチ入力端子INがキャパシタを介して接続され、ドレイン端子にキャパシタを介してスイッチ出力端子OUTが接続されているとしてもよいのは言うまでもない。
【0041】
キャパシタC1、C2は、スイッチ入力端子INに入力される電圧の直流電圧成分をカットするためのものである。スイッチ入力端子INには、第1のアンテナコイル4の一端が接続され、スイッチ出力端子OUTには、接触・非接触兼用ICチップ3の非接触通信用端子が接続されている。また、トランジスタTRのソース端子とスイッチ出力端子OUTとの間には、電源電圧Vddが抵抗Rを介して入力される。従って、スイッチ出力端子OUTより出力される電圧は、電源電圧Vddを超えることがない。
【0042】
トランジスタTRのゲート端子には、制御信号入力端子CINが接続されている。制御信号入力端子CINには、制御回路2が接続されている。制御回路2からの制御信号は、入力端子CINを介してトランジスタTRのゲート端子に入力される。ゲート端子に入力された当該制御信号により、トランジスタTRにおけるソース端子−ドレイン端子間の導通及び非導通が制御される。つまり、スイッチ7a、7bが閉じたときとは、ソース端子−ドレイン端子間が導通状態となったときを示し、スイッチ7a、7bが開いたときとは、ソース端子−ドレイン端子間が非導通状態となったときを示す。従って、ソース端子−ドレイン端子間が導通状態となったときに、第1のアンテナコイル4に発生した誘起電圧が、トランジスタTRのソース−ドレイン端子間を介して、接触・非接触兼用ICチップ3の非接触通信用端子に入力される。
【0043】
ここで、先にも述べたように、トランジスタTRのソース端子とスイッチ出力端子OUTとの間には、電源電圧Vddが抵抗Rを介して入力されているので、スイッチ出力端子OUTより出力される電圧は、電源電圧Vddを超えることがない。従って、第1のアンテナコイルに発生した誘起電圧の波形の振幅が電源電圧Vddを超える場合には、スイッチ出力端子OUTより出力される電圧の波形は、誘起電圧の波形に対して電圧Vddを超える部分がカットされたひずみが生じた波形となる。非接触・接触兼用ICチップ3では、ひずみが生じた電圧が入力されることは想定されていない。そのため、非接触通信を行う場合において、非接触・接触兼用ICチップ3の非接触通信用端子3aに対し、このようなひずみが生じた電圧が入力されると動作に不具合が生じる恐れがある。
【0044】
しかしながら、非接触式リーダライタ20と第1のアンテナコイル4との間の結合の程度を予測することが出来ないため、第1のアンテナコイル4の誘起電圧の振幅の大きさを予測することは困難である。そこで、新たに別途、電源電圧供給回路を設けることが考えられるが、その場合には、想定される最大の振幅電圧を供給することが可能な電源電圧供給回路を設ける必要があるため得策ではない。また、第2のアンテナコイル6と接続された整流回路9より電源電圧Vddを供給することも考えられるが、この場合であっても、スイッチ出力端子OUTより出力される電圧の波形には、ひずみが生じる可能性がある。なぜならば、第1のアンテナコイル4に発生する誘起電圧の振幅よりも、第2のアンテナコイル6に発生する誘起電圧の振幅の方が小さくなる可能性があるからである。
【0045】
そこで、本実施形態に係るICカード1では、電源電圧Vddは、第2のアンテナコイル6と接続された整流回路9より供給されるのではなく、代わりに、第1のアンテナコイル4と接続された整流回路19より供給されるとしている。このようにすることで、第1のアンテナコイル4の誘起電圧が、スイッチ回路7の電源電圧Vddとして供給されることになるので、電源電圧Vddの波形の振幅の大きさと、スイッチ入力端子INに入力される電圧の波形の振幅の大きさとを略一致させることができる。即ち、スイッチ回路7の電源電圧として、第1のアンテナコイル4で誘起される電圧の振幅に応じた大きさの電圧を設定することが可能となる。
【0046】
このことから分かるように、本実施形態に係るICカード1によれば、スイッチ回路7の電源電圧として、第1のアンテナコイル4で誘起される電圧の振幅に応じた大きさの電圧を設定することが可能となるので、スイッチ回路7より出力される出力電圧の波形のひずみを抑えることができる。これにより、非接触・接触兼用ICチップ3の動作に不具合が生じるのを防ぐことができ、円滑に非接触通信を行うことができる。
【0047】
[変形例]
次に、本実施形態に係るICカード1の変形例について説明する。図4は、変形例に係るICカードの使用状態を示す模式図である。
【0048】
先に述べたICカード1では、それぞれ整流回路が接続された第1のアンテナコイル4及び第2のアンテナコイル6が設けられ、第1のアンテナコイル4に接続された整流回路19からは、スイッチ回路7の電源電圧が供給され、第2のアンテナコイル6に接続された整流回路9からは、表示部5のドライバICや制御回路2の電源電圧が供給されるとしていた。
【0049】
それに対し、図4に示すように、変形例に係るICカードでは、アンテナコイルとして第1のアンテナコイル4のみが設けられるとし、第1のアンテナコイル4に接続された整流回路19から、スイッチ回路7の電源電圧だけでなく、制御回路2や表示部5のドライバICの電源電圧が供給されるとしている。
【0050】
変形例に係るICカードによっても、先に述べた実施形態と同様の効果を得ることができる、即ち、スイッチ回路7より出力される出力電圧の波形のひずみを抑えることができる。また、変形例に係るICカードでは、整流回路19は、第1のアンテナコイル4に対し、スイッチ回路7と並列に接続されているので、スイッチ7a、7bの両方が開いて、第1のアンテナコイル4と非接触通信用端子3a、3bとの間の接続が遮断された場合であっても、制御回路2などに対し電源電圧を供給することができる。
【0051】
特に、変形例に係るICカードでは、先に述べた実施形態に係るICカード1と比較して、アンテナコイル、整流回路、ロジック電源安定化回路の数を減らすことができるので、回路規模の削減を図ることができる。
【符号の説明】
【0052】
1 ICカード、 2 制御回路、 3 接触・非接触兼用ICチップ、 4 第1のアンテナコイル、 5 表示部、 6 第2のアンテナコイル、 7 スイッチ回路、 9,19 整流回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナコイルと、
非接触通信に用いる端子である非接触通信用端子、及び、接触通信に用いる端子である接触通信用端子を有し、前記アンテナコイルが前記非接触通信用端子に接続された接触・非接触兼用ICチップと、
前記接触通信用端子に接続された制御回路と、
前記アンテナコイルと前記非接触通信用端子との間に設けられ、前記制御回路からの制御信号により、前記アンテナコイルと前記非接触通信用端子との間の接続及び遮断を行うアナログスイッチ回路と、
前記アンテナコイルに対し、前記アナログスイッチ回路と並列に接続された整流回路と、を備え、
前記アナログスイッチ回路の電源電圧は、前記整流回路より供給されることを特徴とするICカード。
【請求項2】
前記制御回路の電源電圧は、前記整流回路より供給されることを特徴とする請求項1に記載のICカード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−18180(P2011−18180A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−162088(P2009−162088)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【Fターム(参考)】