説明

ID通知機能を有する移動型照明器具および巡回システム

【課題】光変調手段を利用してID情報を送出する照明装置において、当該照明装置を盗難された場合や紛失した場合であっても安全に利用できる技術を提供することにある。
【解決手段】
利用者が所持する利用者IDタグ300に保存されたID情報を、移動型照明器具100に内蔵する無線タグリーダ101が読み出し、ID情報に従って光源部105が光変調し、照射する。照射された変調光は、受光装置内蔵電話機200が受け取ると、光復調部202が復調し、受光情報としてサーバ400に送信し、サーバ400は受信した受光情報を記録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光変調及び無線タグリーダを有する移動型照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、手持ちの照明装置にIDを内蔵し、その光を光変調手段を利用して対象物にIDを送出し、施錠や解錠を行うシステムがある(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−40922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記発明において、ID情報は照明装置毎に保存されるため、照明装置を盗難された場合や紛失した場合、簡単に悪用されてしまう危険性があった。
【0005】
一方、無線タグ技術を応用して、同様の施錠、解錠システムも考えられるが、この場合無線タグがパッシブ型の場合は対象物を制御できる範囲が狭くなり施錠、解錠が煩雑であるという問題があり、無線タグがアクティブ型の場合は広範囲にタグIDの情報を送出するので、不用意にタグIDの情報を送信し悪用されてしまうという問題があった。本発明は上記課題に鑑み為されたものであって、本発明の目的は照明装置を盗難された場合や紛失した場合であっても安全に利用する事ができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に対し、本発明は、近傍に存在するIDタグからID情報を読み出す無線タグリーダを具備する移動型照明器具であって、前記無線タグリーダが読み出したID情報に従って自移動型照明器具が内蔵する光源のオン,オフまたは振幅または波長を変調する光変調手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、照明装置と無線IDタグを定期的に更新するため、盗難、紛失した場合でも悪用されることがない。さらに、光変調手段で変調された光を目で確認しながら送出できるので、ID情報の送出範囲を利用者が選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施形態を説明するための構成図である。
【図2】第1の実施形態の移動型照明器具の機能ブロック図である。
【図3】第1の実施形態の受光装置内蔵電話機の機能ブロック図である。
【図4】第1の実施形態の移動型照明器具の動作フローチャートである。
【図5】本発明の第2の実施形態を説明するための全体構成図である。
【図6】第2の実施形態の移動型照明器具の機能ブロック図である。
【図7】第2の実施形態の移動型照明器具の動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0009】
以下、本発明について実施例を用いて説明する。尚、本実施例で説明する各部位について同じ場合には説明を繰り返さない。
【0010】
図1は本発明の第1の実施形態を説明するための全体構成図である。
【0011】
本発明の構成は、移動型照明器具100と、ネットワークに接続した受光装置内蔵電話機200と、利用者用IDタグ300と、巡回者が巡回した場所及び時刻を履歴として記録するサーバ400とから構成される。
【0012】
利用者は利用者IDタグ300及び移動式照明器具100を所持した状態で巡回する。移動式照明器具100は利用者が具備する利用者IDタグ300を読み込み、そのID情報で移動式照明器具100の光源を変調して光を照射する。
【0013】
受光装置内蔵電話機200はID情報が変調された光を受光すると復調し、自電話機の自装置IDとともにサーバ400に送信され、サーバ400はこれを受信すると記録する。また、受光装置内蔵電話機200は巡回ルートに沿って設置されている。
【0014】
尚、本実施例では、移動型照明器具100を懐中電灯として説明するが本願はこれに限定しない。例えば、キーライト、ペンライト、携帯電話のフォトライト、工事現場などで使用される移動式照明、自動車や自動二輪車や自転車や電車や船舶や航空機の前照灯または尾灯であってもよい。
【0015】
尚、本実施例では、受光装置内蔵電話機200を電話機として説明するが、本願はこれに限定しない。例えば、建物内に設置された無線アクセスポイントが受光装置を具備していてもよいし、受光装置単体が建物内に設置されてもよい。
【0016】
図2は第1の実施形態の移動型照明器具100の機能ブロック図である。
【0017】
移動型照明器具100は、無線タグリーダ部101と、光変調部102と、利用者ID保存部103と、制御部104と、光源部105と、電源スイッチ106と、レンズ107とから構成される。
【0018】
無線タグリーダ部101は、定期的に利用者IDタグ300を検索し、利用者IDタグ300を検出すると当該利用者IDタグのID情報を読取り、読取ったID情報を利用者ID保存部103に渡す。
【0019】
光変調部102は、制御部104からの指示に応じて光源部105を制御し、光源部105の光をオン、オフまたは振幅、波長を変調する。
【0020】
利用者ID保存部103は、無線タグリーダ部101から利用者IDタグのID情報を渡されると、ID情報を保存または更新する。また、利用者ID保存部103は、無線タグリーダ部101から所定期間(例えば3分)ID情報が渡されない場合は、記憶したID情報を削除する。
【0021】
制御部104は、利用者ID保存部103から利用者IDタグのID情報を渡されると、利用者IDタグのID情報を光変調部102に渡して当該ID情報の光変調を指示する。
【0022】
光源部105は制御部104からの指示に応じて発光する。また、光源部105は光源を高速でオン、オフすることができる。
【0023】
スイッチ106は移動型照明器具100の電源スイッチであり、オンすると制御部104を介して光源部105を発光する。
【0024】
レンズ107は光変調部102からの変調光を移動型照明器具100から外部に照射する。
【0025】
尚、本実施例ではレンズ700は照射範囲は固定であるが本願はこれに限定しない。例えば焦点を調製することで光の拡散、光変調部102で変調した光を拡散させ広範囲に照射または収れんし遠くまで届くようにしてもよい。
【0026】
図3は第1の実施形態の受光装置内蔵電話機200の機能ブロック図である。
【0027】
受光装置内蔵電話機200は受光部201と、光復調部202と、受光情報送信部203と、装置ID保存部204と、回線通信部205と、電話機能部206とから構成される。
【0028】
受光部201は、移動型照明器具100から光変調された光を受け取ると電磁的な情報に変換し、復調したデータを光復調部202に渡す。
【0029】
光復調部202は、受光部201からの電磁的な情報を復調し、利用者IDタグのID情報を取り出し、受光情報送信部203に渡す。
【0030】
受光情報送信部203は、光復調部202から利用者IDタグのID情報を受信すると、当該ID情報と共に装置ID保存部204から装置ID情報とを受取り、受光情報として回線通信部205に渡す。
【0031】
装置ID保存部204は、受光装置内蔵電話機200の装置固有のIDを保存しており、受光情報送信部203からの指示に応じて装置IDを渡す。
【0032】
回線通信部205は、受光情報送信部203からの受光情報を、電話回線またはIPネットワーク経由でサーバ400に送信する。また、電話機能部206とサーバ400との通話情報を電話回線またはIPネットワーク経由で送受信する。
【0033】
電話機能部206は、いわゆる電話機の機能で、回線通信部205と通話情報を送受信する。
【0034】
図4は第1の実施形態の移動型照明器具100の動作を示すフローチャートである。尚、本フローは、移動型照明器具100のスイッチ106が電源ONし、無線タグリーダ部101、光変調部102および光源部105を起動した状態から開始する。
【0035】
移動型照明器具100は電源ONになると通常発光する(S10)。尚、ここで通常発光とは、光変調していない光を照射することを意味する。
【0036】
移動型照明器具100は近傍にある利用者IDタグ300を検索し、利用者IDタグ300を検出すると(S11,YES)、検出した利用者IDタグ300からが利用者ID情報を読み込み(S12)、利用者ID保存部103に保存または更新する(S13)。
【0037】
移動型照明器具100は、保存したID情報を、光源のオン、オフまたは振幅または波長を変調してレンズ107から照射する(S14)。そして、移動型照明器具100は、所定期間(例えば3分)待機して(S15)、ステップ11に戻る。
【0038】
尚、ステップ14で照射された光を受講した受光装置内蔵電話機200は、ID情報を復調し、受光情報をサーバ400に送信する。そして受光情報を受信したサーバ400は受光情報に含まれるID情報と装置ID情報を受信した時刻とともに記録する。
【0039】
また、移動型照明器具100は、利用者IDタグ300を検出できない場合は(S11,NO)、ID情報を消去し(S16)、光の変調を停止する(S17)。
【0040】
なお、変調されていない通常の光は照射を継続する。
【0041】
以上、実施例1について説明した。
【0042】
本実施例では、無線タグリーダが読み出したID番号で照射し対象物を制御する。従って、本発明によれば、照明装置と無線IDタグを定期的に更新するため、盗難、紛失した場合でも悪用されることがない。さらに、光変調手段で変調された光を目で確認しながら送出できるので、ID情報の送出範囲を利用者が選択することができる。
【0043】
そして、本発明を巡回システムに応用することにより、いつ誰がどこを巡回したか記録されるため、巡回システムの利便性が向上する。
【0044】
また、ID情報は、利用者ID保存部103に保存するため、無線タグリーダ部101は常時ではなく、定期的に周囲を検索すればよく、移動型照明器具100の電力消費を低減することができる。
【実施例2】
【0045】
図5は本発明の第2の実施形態を説明するための全体構成図である。
【0046】
本発明の構成は、移動型照明器具100と、ネットワークに接続した受光装置内蔵電話機200と、利用者用IDタグ300と、制御用IDタグ301と巡回した履歴を記録するサーバ400とから構成される。実施例1の構成との違いは移動型照明器具100が近傍に存在する利用者用IDタグ300以外に各受光装置内蔵電話機200の近傍に制御用IDタグ301を設置する点である。
【0047】
移動式照明器具100は利用者の利用者IDタグ300と共に制御用IDタグ301を読み取ると、利用者IDタグ300のID情報で移動式照明器具100の光源を変調し、照射する。
【0048】
図6は第2の実施形態の移動型照明器具100の機能ブロック図である。
【0049】
移動型照明器具100は、無線タグリーダ部101Aと、光変調部102と、利用者ID保存部103と、制御部104と、光源部105と、電源スイッチ106と、レンズ107と制御用IDタグ判定部110から構成される。
【0050】
無線タグリーダ部101Aは、定期的(例えば3秒)に利用者IDタグ300及び制御用IDタグを検索し、制御用IDタグ301を検出した場合、当該制御用IDタグ301の制御用ID情報を読取り、読取った制御用ID情報を制御用IDタグ判定部110に渡す。
【0051】
制御部104Aは、制御用IDタグ判定部110からIDタグ判定OKの情報を渡されると、利用者のID情報を光変調部102に渡し、光変調部102は制御部104からの指示に応じて光源部105を制御し、光源部105の光をオン、オフまたは振幅、波長を所定期間(例えば10秒間)だけ変調する。制御用IDタグ判定部110からのIDタグ判定NGの場合は動作しない。
【0052】
制御用IDタグ判定部110は無線タグリーダ部101から制御用IDタグの制御用ID情報を渡されると、有効なIDタグか判定し、判定OK、NGの情報を制御部104に渡す。
【0053】
図7は第2の実施形態の移動型照明器具100の動作を示すフローチャートである。尚、本フローは、移動型照明器具100のスイッチ106が電源ONし、無線タグリーダ部101、光変調部102および光源部105を起動した状態から開始する。
【0054】
移動型照明器具100は電源ONになると通常発光する(S30)。
【0055】
移動型照明器具100は近傍にある利用者IDタグ300を検索し、利用者IDタグ300を検出すると(S31,YES)、検出した利用者IDタグ300からが利用者のID情報を読み込み(S32)、利用者ID保存部103に保存または更新する(S33)。
【0056】
そして、移動型照明器具100は近傍にある制御用IDタグ301を検索し、制御用IDタグ301を検出すると(S34,YES)、検出した制御用IDタグ301からが制御用ID情報を読み込み、制御用IDタグ判定部110で有効なIDタグか判定し、判定OKなら(S35、YES)、移動型照明器具100は、利用者ID保存部103に保存したID情報を、光源のオン、オフまたは振幅または波長を変調してレンズ107から照射する(S36)。
【0057】
そして、移動型照明器具100は、一定期間待機して(S37)、光変調を停止し(S39)、ステップ31に戻る。
【0058】
なお、変調されていない通常の光は照射を継続する。
【0059】
また、移動型照明器具100は、利用者IDタグ300を検出できない場合は(S31,NO)、利用者のID情報を消去し(S38)、光の変調を停止する(S39)。
【0060】
また、移動型照明器具100は近傍にある制御用IDタグ301を検索し、制御用IDタグ301を検出できない場合(S34、NO)または、検出した制御用IDタグ301の制御用ID情報が判定NGの場合(S35、NO)、光の変調を停止し(S39)、ステップ31に戻る。
【0061】
受光装置内蔵電話機200およびサーバ400の動作は実施例1の動作と同じなので説明を省略する。
【0062】
以上、実施例2について説明した。
【0063】
本実施例では、制御用IDタグ301を受光装置内蔵電話機200の近傍に設置し、利用者のID情報を照射する場所、時間(例えば10秒)を限定することで、不用意にID情報を送出することが無く、セキュリティを向上させることができる。
【符号の説明】
【0064】
100:移動型照明器具
101、101A:無線タグリーダ部
102:光変調部
103:利用者ID保存部
104、104A:制御部
105:光源
106:電源スイッチ
107:レンズ
110:制御用IDタグ判定部
200:受光装置内蔵電話機
201:受光部
202:光復調部
203:受光情報送信部
204:装置ID保存部
205:回線通信部
206:電話機能部
300:利用者用IDタグ
301:制御用IDタグ
400:サーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
近傍に存在するIDタグからID情報を読み出す無線タグリーダを具備する移動型照明器具であって、
前記無線タグリーダが読み出したID情報に従って自移動型照明器具が内蔵する光源のオン,オフまたは振幅または波長を変調する光変調手段を有することを特徴とするID通知機能を有する移動型照明器具。
【請求項2】
請求項1に記載の移動型照明器具であって、
前記無線タグリーダが読み取ったID情報を記憶しておくID情報記憶手段をさらに有し、
前記無線タグリーダは、自移動型照明器具の光源が点灯されてから予め定められた期間のみ、近傍に存在するID情報を読み取ると共に、当該読み取ったID情報を記憶しておくことを特徴とするID通知機能を有する移動型照明器具。
【請求項3】
請求項1に記載の移動型照明器具であって、
前記無線タグリーダは第1のIDタグと第2のIDタグから別のIDを読み取り、
前記光変調手段は、前記第1のIDタグを読み取った後に前記第2のIDタグを読み取った場合に、前記第1のID情報に従って自移動型照明器具が内蔵する光源のオン,オフまたは振幅または波長を変調することを特徴とするID通知機能を有する移動型照明器具。
【請求項4】
請求項1に記載の移動型照明器具とID受光装置と記録装置を含む巡回システムであって、
前記ID受光装置は、
前記移動型照明器具から変調された光を受光し、受光した光からID情報を復調するID復調手段と、前記復調したID情報と自装置のID情報を受光情報として前記記録装置に送信する受光情報送信手段と、を有し、
前記記録装置は、
前記ID受光装置からの受光情報を受信する受光情報受信手段と、受信した前記受光情報を記録する受光情報記録手段と、を有することを特徴とする巡回システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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